JP2017009918A - 光導波路デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】光干渉回路を有する基板に、薄膜素子を挿入する複数の溝を形成しても、溝が回路配置上の制約となることがなく、溝ごとに充填剤量の調整が必要とせず、製造工程が煩雑にならない光導波路型デバイスを提供する。
【解決手段】光導波路型デバイスは、少なくとも1つの溝25、26、27は、薄膜素子を挿入する対応する1本の光導波路23、24、28aのみを横切り、対応する1本の光導波路に隣接する他の光導波路を横切らないよう構成される。溝25、26、27は概ね矩形状で、溝25、26、27内に薄膜素子を安定して保持・固定できるように、挿入される薄膜素子のサイズに適合した最小のものとする。矩形状の溝25、26、27の少なくともいずれかの端部には、溝25、26、27から連続して形成された拡張部を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、光導波路型デバイスの基板に挿入された薄膜素子を持つ光回路およびそれを用いて実現する光デバイスに関する。
スマートフォン・携帯型タブレット端末などの爆発的普及や、映像配信サービスの開始を背景として、光ネットワークの伝送容量増大への要求が日増しに高まっている。光通信技術はこの要求に対応してさらに発展することが求められており、光通信システムで使用される部品の小型化、低コスト化を実現する技術が益々重要となっている。光通信システム用の部品を実現するのに重要な役割を果たしてきた技術として、導波路型デバイスが挙げられる。導波路型デバイスでは、光の干渉原理を応用することによって、光信号の分岐結合器、波長合分波器、インターリーブフィルタ、光スイッチ、可変光減衰器(VOA:Variable Optical Attenuator)などさまざまな基本的機能が実現されている。これらデバイスは導波路型の構造を持つことから、回路設計に柔軟性があり、大規模化かつ高集積化が容易であるという特徴を持つ。さらに、導波路型デバイスはLSIなどの半導体部品製造プロセスを流用して製造されるため、量産性に優れたデバイスとしても大きく期待されている。導波路部分の材料としては、半導体や高分子材料などさまざまなものが実用化されている。特に、シリコン基板上に作製された石英系光導波路は、低損失であって安定性および光ファイバとの整合性に優れるといった特徴を持っており、実用化が最も進んだ導波路型デバイスの一つである。
上述の光ネットワークの伝送容量増大の要求に応えるため、デジタルコヒーレント光伝送技術が普及してきている。導波路型デバイスを用いて構成される光通信用部品の中で、デジタルコヒーレント光伝送に用いられる光送受信器がとりわけ着目される。この光送受信器は、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)された光信号において、1波長当たりの伝送レートが100Gb/sの高速動作を実現するに至っている。
デジタルコヒーレント光伝送技術において主に用いられる光信号変調方式は、位相変調である。具体的には、位相シフトキーイング(PSK:Phase Shift Keying)、または、強度変調と組み合わせられた位相変調方式である直角位相振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)方式が用いられている。さらにデジタルコヒーレント光伝送技術では、位相変調に加えて、位相変調された複数の光信号を直交する2つの光偏波によって多重化する偏波多重方式を組み合わせることによって、上述の高速の伝送レートを実現している。
デジタルコヒーレント光伝送システムにおける光受信器は、そのフロントエンドに光信号のままで信号処理を行う光干渉回路を備えている。光干渉回路から得られた干渉光を受光素子(PD:Photo Detector)によって検出して電気信号に変換し、受信信号が得られる。光干渉回路からの受信信号は、さらに後続のデジタル信号処理を経て、偏波多重された位相変調信号の復調が実現される。
上述の光干渉回路には光導波路型デバイスが広く用いられており、信号光の光強度を調整するVOA、信号光の偏波を分離する偏波ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)、信号光または局所光の偏波を回転する偏波ローテータ(偏波回転器)、信号光および局所光の間の干渉によって位相差を検波する90度ハイブリッドなどの基本要素から構成される。取り分け、石英系光導波路を用いた光導波路型デバイスは一般に平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)とも呼ばれる。今後のさらなるデジタルコヒーレント光伝送システムの普及および大容量化を実現するにあたって、PLCを含む光受信器は鍵になる部品となっている。
図1は、PLCによって構成された従来技術の光受信器における光干渉回路の構成を示した図であって、光干渉回路が構成されたシリコン基板の基板面を見た上面図である。ここではその詳細な動作説明は省略するが、光干渉回路の異なる機能を実現する光導波路型デバイスの各基本要素の実際の形状に概ねしたがって描かれている。光干渉回路100は、主な基本要素として、VOA15、PBS12、偏波ローテータ13、90度ハイブリッド16a、16bなどを備えている。さらに、信号光の入力導波路11、局部光の入力導波路14、干渉光の出力導波路18a、18b、信号光モニタ導波路17なども備えている。図1に示したようなPLCで構成され、異なる機能を実現する各基本要素の組み合わせを含む光干渉回路では、小型化が非常に重要な技術課題となっている。
PLCにおいてPBSまたは偏波ローテータを実現するために、光導波路を横切るように、光波長板を光干渉回路内に挿入する構成を用いることができる。光波長板は、これを通過する光信号の偏波に応じて、光信号に位相差を生じさせる素子であり、例えばポリイミドフィルムを用いて作製されたものが広く知られている。
図1を再び参照すれば、PBS12および偏波ローテータ13では、光導波路を横切るようにして光波長板を挿入するための溝3が形成されている。それぞれの光導波路を伝搬する光が光波長板を通過するように、この溝3の内部に光波長板が挿入される。このような基板面上に溝を備えた構成によって、光波長板を透過した光偏波に回転を生じさせることが可能となる。例えば、PBS12を構成するためには、2本の光導波路によって構成されるマッハ・ツェンダー光干渉回路で、各光導波路にそれぞれλ/4波長板を互いの複屈折光学軸が直交するように挿入すれば良い。また、偏波ローテータ13を実現するためには、対象となる光導波路中に複屈折光学軸が45度となるような向きでλ/2波長板をすれば良い(非特許文献1)。
特許第2614365号公報 明細書
S. Tsunashima, et. al., "Silica-based, compact and variable-optical-attenuator integrated coherent receiver with stable optoelectronic coupling system", November 19, 2012/Vol. 20, No. 24/OPTICS EXPRESS 27174
しかしながら、上述の光波長板を溝内に挿入する構成の光導波路型デバイスにおいては、デバイスの小型化および製造工程の効率化において、以下に述べるような問題があった。PLCにおいて光波長板を挿入するための溝は、例えば特許文献1にも記載されているように、ダイシング装置を用いた機械加工によって形成されていた。図1の下方には、光干渉回路100の基板面および溝3の長手方向に対して垂直な断面を見たときの溝3近傍の構造を示している。溝3は、光干渉回路の最上面から、光導波路が形成されるコア層およびクラッド層を含む導波路層2を越えて、シリコン基板1にまで達するように、所定の値まで切断深さを調整しながら加工されていた。しかしながらこのような機械加工による方法では、ダイシングブレードの大きさによって決まる溝加工を行うための作業エリア内(ワークサイズ)には、他の回路を構成することができない。ダイシング装置自体の加工精度、加工作業に必要なワークサイズを考慮すると、溝の周辺では、1mm×5mm程度の面積にわたって回路配置の禁止領域が必要となってしまう。
ダイシングブレードは光導波路に対して非常に大きく、作業エリアと各基本要素とのレイアウトの干渉のため、異なる大きさの多数の溝を基板上に形成することはできなかった。基板上に形成した溝のために、本来溝が不要な光導波路が切断されてしまえば、無駄な光損失を生じてしまう。結局、溝加工を行うための作業エリア内には、波長板挿入が必要な光導波路を除いた他の回路を近接して柔軟に配置することができなかった。このような状況下ではまず溝の配置が優先され、図1に示したように単一の共通の溝を形成し、これに合わせて単一の溝内の異なる部分を利用して異なる機能の光回路を構成していた。
図1の溝3の他の形成方法として、レーザ加工を利用することもできる。しかしながら、レーザ加工ではガラス(SiO2)を熱で溶かして溝を形成するため、加工された部分の熱収縮によって応力が発生したり、溝内面が荒れたりするなどの問題が生じ得る。波長板挿入部における光損失を最小限に留める形状に加工することが難しく、加工によって生じる光導波路部分の歪による光学特性劣化も懸念される。ダイシングおよびレーザのいずれの機械加工手段によっても、その加工精度やワークサイズの点から光回路の小型化の制約となっていた。
光干渉回路の基板上に溝を形成する技術としては、ドライエッチングまたはウェットエッチングによるウェハプロセスを用いることもできる。これらのエッチング方法は、加工精度および形状制御のいずれの点でも、光波長レベルでの制御が可能なため、溝形成の方法として有望である。しかしながら、光波長板などの薄膜を挿入する深い溝を形成するのに適した加工方法である必要がある。具体的には、加工形状については溝の深さ方向への垂直性が求められ、光導波路と溝の境界面の粗さを抑えおよび溝開口の加工トレランスが精緻な技術が必要である。引用文献1記載された光干渉回路の構成例では、水平方向と深さ方向との間でエッチングされる比率(選択比)の差のため、十分な精度で深い溝を加工する時には溝の長さおよび幅のサイズを一定値以上の大きさにする必要があった。光導波路を作製する一般的なエッチング技術では、基板面に垂直な深さ方向のエッチング速度は、基板面に平行な水平方向のエッチング速度に比べて遅い。このため、光波長板を挿入するのに十分な深い垂直な溝を形成するには、溝の幅または長さを、光波長板を挿入するために本来必要なサイズよりも大きくする必要があった。結局、光波長板を溝内に挿入するための小さな溝を形成することは、光導波路を作製する一般的なドライエッチングまたはウェットエッチングでは難しかった。
したがって特許文献1に記載されているように、例えば隣接する光導波路との距離を500μm以下に近づけて配置する場合には、複数の光導波路に渡って1つの連続した溝を配置するなどの工夫が必要となる。特に光回路の小型化が必要な場合では、損失を止むを得ないものとして許容して本来溝を必要としない光導波路にまで渡って溝を形成するか、溝を避けるようなレイアウト上の工夫をしながら光回路を配置する必要があり、回路設計の柔軟性および光学的な性能上での大きな制約があった。
従来技術の光波長板を溝内に挿入する構成の光導波路型デバイスにおいては、光波長板を挿入し固定する製造工程の上でも、次に述べるような問題があった。特許文献1に記載されているように、複数の光導波路に渡った共通の大きな溝を形成した場合は、溝の内部に余分な接着剤を収容する空間が確保されている。このため、実装時に光波長板の固定のための適量を超えた充填剤が導入されても、余分な充填剤が溝から流れ出し、基板内の他の光素子に影響を与える可能性はなかった。
しかしながら、溝の形成方法として適切な手段が実現され、隣接する光導波路同士の距離を近づけて配置して個々の光導波路ごとに小さな溝を形成が可能となったとしても、大きさの異なる小さな溝に対しては組み立て工程上の別の問題が生じる。具体的には、大きさの異なる複数の小さな溝に対しては、それぞれの波長板の接着・固定のために、適量の接着剤または充填剤の量を設定する必要があり、製造工程が煩雑化する問題がある。溝のサイズを大きめに設定して、接着剤などを収容する溝の容積を確保できれば、接着剤の量を共通にして製造工程を簡単化できるが、これでは溝および光干渉回路の小型化の要請にそもそも反する。
近年、ディープエッチングと呼ばれる深さ方向のエッチング速度を向上させたシリコン深堀り技術が実現されている。このようなエッチング技術の向上によって光導波路ごとに別個の溝を作ることが可能になったとしても、光波長板を固定する際の接着剤などを個々の溝で適切に収容するためには、個々に製造工程の最適化および調整が必要である。光波長板を挿入し固定する製造工程においても、依然として小型の溝を形成して光干渉回路を小型化する上の障害となっていた。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、光波長板などの薄膜素子を挿入する溝を有する光干渉回路の小型化を実現し、同時に製造組み立て時における煩雑な調整工程が不要な溝の構成を提案することにある。より集積度の高い光干渉回路、光導波路型デバイスを提供するができる。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基板上に構成された複数の光導波路を持ち、1つ以上の薄膜素子が光導波路を横切って概ね基板面に対して垂直に挿入された光導波路デバイスにおいて、前記複数の光導波路の内のいずれかの光導波路を横切る溝であって、前記いずれかの光導波路の各々に対して対応する別個の溝を備え、前記溝の各々は、対応する1本の光導波路のみを横切り、前記対応する1本の光導波路に隣接する他の光導波路は横切らないように構成され、前記溝は、薄膜素子が挿入される矩形部分と、前記矩形部分の端部から連続して形成された少なくとも1つの拡張部とを有することを特徴とする光導波路デバイスである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の光導波路デバイスであって、前記拡張部は、前記薄膜素子を固定するために寄与しない余分な接着剤を収容することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の光導波路デバイスであって、前記拡張部は、前記矩形部分の一端から前記矩形部分の長手方向に向かって連続して形成された第1の拡張部、または、前記矩形部分の他端から前記対応する1本の光導波路が構成された方向に向かって連続して形成された第2の拡張部を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3の光導波路デバイスであって、前記第1の拡張部は、少なくとも一部に、前記一端から離れるにしたがって幅が広がる形状を持ち、前記対応する1本の光導波路の導波路に最も隣接する他の光導波路は、前記第2の拡張部の側に形成されることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3または4の光導波路デバイスであって、前記第1の拡張部は、前記一端から離れた側に幅の広い底辺を持つ概ね台形の形状を有しており、前記第2の拡張部は、前記矩形部分の長辺上の前記他端近傍の一部を一辺とする三角形の形状を有していることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5いずれかの光導波路デバイスであって、前記拡張部の形状の頂点に相当する部分が、半径50μm以下の円弧状に形成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6いずれかの光導波路デバイスであって、前記溝および前記拡張部は、前記複数の光導波路を構成する材料に関して、前記基板面に垂直な深さ方向に選択比が大きいディープエッチングプロセスによって形成されることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7いずれかの光導波路デバイスであって、前記矩形部分の長さは2mm以下であって、前記矩形部分および前記拡張部の前記基板面に垂直な方向の深さは300μm以下であることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8いずれかの光導波路デバイスであって、前記溝に挿入される薄膜素子によって、偏波ビームスプリッタ(PBS)、偏波ビームコンバイナまたは偏波ローテータのいずれかの機能が実現されることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によって光波長板などの薄膜素子を挿入する溝を有する光干渉回路の小型化を実現する。また、薄膜素子を固定する製造組み立て工程における煩雑な調整を不要とすることもできる。
図1は、PLCによって構成された従来技術の光受信器における光干渉回路の構成を示した図である。 図2は、本発明の実施例1の光導波路デバイスの構成を示す図である。 図3は、本発明の光導波路デバイスにおける溝のより詳細な形状を説明する図である。 図4は、本発明の光導波路デバイスにおける溝の他の形状を説明する図である。 図5は、本発明の実施例2の光導波路デバイスの構成を示す図である。
本発明の光導波路型デバイスは、溝の形成のために近年のウェハプロセス技術の進展に伴って可能となったディープエッチング技術を用いる。これまで光導波路型デバイスで使用されてきたウェットエッチングまたはドライエッチング技術は、基板面に水平方向のエッチング速度に比べて垂直方向のエッチング速度(深さ方向の選択比)が非常に小さいものであった。近年では、基板面の垂直方向、すなわち深さ方向に選択比の高いエッチングプロセスが開発されており、ボッシュプロセスとしてシリコン基板に広く適用されている。本発明の光導波路型デバイスでは導波路の構成材料であるSiO2に対して深さ方向の選択比が大きいディープエッチング技術を使用して、薄膜素子を挿入するための溝を形成する。ディープエッチング技術によって、薄膜素子を適切に挿入できる必要最小限の開口部のサイズと、十分な垂直深さを確保した溝を形成することができる。
本発明の光導波路型デバイスでは、少なくとも1つの溝は、薄膜素子を挿入する対応する1本の光導波路のみを横切り、この対応する1本の光導波路に隣接する他の光導波路を横切らないよう構成される。この溝は、概ね矩形状をしており、溝内に薄膜素子を安定して保持・固定できるように、挿入される薄膜素子のサイズに適合した最小のものとすることができる。本発明の光導波路型デバイスでは、矩形状の溝の少なくともいずれかの端部に、溝から連続して形成された拡張部を備える。溝および拡張部に対して、適切な形状の選択および光導波路に対する配置を行うことによって、光回路内の複数の光導波路毎に溝を形成することが可能となる。本発明により作製される光導波路デバイスのより一層の小型化を実現できる。拡張部は溝内の余った充填剤、接着剤などを収容するように働き、薄膜素子を挿入して固定する製造工程において、煩雑な調整プロセスを簡略化できる。
以下、図面を参照しながら本発明の光導波路型デバイスの実施例を詳細に説明する。以下の実施例では、シリコン基板上に形成した石英系材料の単一モード光導波路を使用した光導波路デバイスを例として説明する。これは、この構成がPLCに現在広く利用されており集積化が容易であって、さらに石英系光ファイバとの整合性に優れ、低損失な光デバイスを提供できるためである。しかしながら、以下に述べる溝の構成は、シリコン基板および石英系材料の単一モード光導波路だけに限定されず、基板面上に溝を形成して、薄膜素子を基板上に挿入する構成を持つ光デバイスに適用できる。
[実施例1]
図2は、本発明の実施例1の光導波路デバイスの構成を示す図である。図2の光導波路型デバイスは、PLCによって構成されたデジタルコヒーレント光伝送用受信器の光干渉回路200である。光干渉回路200は、信号光入力導波路30、局発光入力導波路32、干渉光の出力導波路33a、33b、信号光モニタ導波路34を備える。また、光干渉回路200は、信号光の伝搬する順に、VOA31、PBS21、偏波ローテータ22、および2つの90度ハイブリッド29a、29bを備える。PBS21および偏波ローテータ22は、薄膜素子である波長板を各々の光導波路を横切るように各溝に挿入して実現される。
PBS21は、マッハ・ツェンダー干渉計の2つのアーム導波路23、24上にそれぞれ形成された溝25、26の中に、2つのλ/4波長板を互いの複屈折軸が直交するような向きで挿入して構成される。PBS21は、入力された信号光を2つの偏波に分離するよう動作する。また偏波ローテータ22は、2つの光導波路28a、28bの内の一方の光導波路28aに形成された溝27の中に、λ/2波長板を挿入して構成される。偏波ローテータ22は、PBS21の後段側に配置され、一方の光の偏波を90度回転させる。偏波ローテータ22において隣接して配置される光導波路28a、28bは、お互いの間隔が500μmとなるように近接して配置した。
薄膜素子が挿入される溝25、26、27は、SiO2の深堀りエッチングのために最適化されたディープエッチング技術を使用して形成された。各々の機能に応じて挿入される波長板のサイズに応じて、溝のサイズを設計した。PBS21の溝25については、その長さを1mmとして、長さ0.75mmのλ/4波長板を挿入した。溝26については、その長さを2mmとして、長さ1.8mmのλ/4波長板を挿入した。2つのλ/4波長板の長さが異なるのは、長方形のλ/4波長板の長さ方向に相当する光学軸に対して一方のλ/4波長板は垂直に、他方のλ/4波長板は平行に挿入して、直交する偏波にそれぞれ光学軸に応じた位相差を生じさせるためである。また、偏波ローテータ22の溝27についてはその長さを1.5mmとして、長さ1.0mmのλ/2波長板を挿入した。いずれの波長板も、組み立て時の作業の容易性を考慮して、最小でも概ね1mm程度の長さとしている。
図2では、光導波路のレイアウトは概ね実際のデバイスのイメージに近いが、光導波路に対する溝の幅や長さなどは実際の構成とは異なる点に留意されたい。実際の寸法関係で記載すると、溝および波長板などは視認できなくなるので、溝の幅、波長板の厚さを相対的に拡大して誇張して描いてある。
波長板として用いた薄膜素子はポリイミドフィルムで構成されており、厚さ10μm程度のものを使用した。挿入する薄膜素子の厚さに応じて、溝の幅は15〜30μm程度とした。溝内に挿入された薄膜素子を、石英ガラスに近い屈折率を持つ樹脂を溝内の薄膜素子との隙間に充填して、接着固定することにより、溝が横切る光導波路の過剰損失を最小限に抑えた。溝の深さは100μm以上300μm以下とし、光導波路部分のエッチング断面は基板面に対して垂直方向に垂直性を保ち、かつその表面は平滑である。薄膜素子は、組み立て時の扱いやすさを考慮して、基板表面よりも上方に500μm程度はみ出る高さを持つ。
本発明の光導波路デバイスの溝を作製するディープエッチングプロセスは、光導波路部分のSiO2に対して深堀りエッチングを行うのに最適化されたプロセスである。したがって、光導波路部分以外のエッチング断面、特にSiO2の光導波路部分を越えてシリコン基板部に達した溝のエッチング断面においては、基板面に対する厳密な垂直性は必ずしも必要ない。信号光に対して位相変化を生じさせるSiO2の光導波路部分のエッチング断面で垂直性が確保されていれば、SiO2の溝で十分に薄膜素子を保持できる。したがって、溝の奥深くにあるシリコン基板のエッチング断面については垂直状態からやや外れていても許容できる。波長板を挿入するために必要十分な開口部の大きさ(溝の幅)、並びに、光導波路部分のエッチング断面での垂直性および平滑性を得られる溝を実現するディープエッチングプロセスを利用することで、薄膜素子を保持し固定するのに十分な作製トレランスを有する構造を実現できる。
図3は、本発明の光導波路デバイスにおける溝のより詳細な形状を説明する図である。図3の(a)は、光導波路デバイスの基板面上を見た溝の形状を示しており、溝の中央部を省略して溝の両端部を示している。図2の全体構成図では詳細を示していなかったが、本発明の光導波路デバイスにおいて、薄膜素子が挿入される溝は、薄膜素子44が挿入され収まる矩形部分42と、矩形部分42の少なくとも一方の端部から連続して形成された1つ以上の拡張部とを備える。具体的には、矩形部分42の一方の端部には、矩形部分42の長手方向に沿って伸びた概ね台形状の第1の拡張部41が形成されている。さらに、溝のもう一方の端部には、この溝が横切る光導波路と概ね同じ方向49に向かって伸びた三角形状の第2の拡張部43を形成することができる。
したがって、本発明の光導波路デバイスにおける溝は、薄膜素子が挿入される矩形部分42と、前記矩形部分の端部から連続して形成された少なくとも1つの拡張部を有する。さらに拡張部は、前記矩形部分の一端から前記矩形部分の長手方向に向かって連続して形成された第1の拡張部(41)、または、前記矩形部分の他端から前記対応する1本の光導波路が構成された方向に向かって連続して形成された第2の拡張部(43)を有する。また、第1の拡張部は、前記一端から離れた側に幅の広い底辺を持つ概ね台形の形状を有しており、第2の拡張部は、前記矩形部分の長辺上の前記他端近傍の一部を一辺とする三角形の形状を有している。
矩形部分42の端部から延長され、連続して形成された第1の拡張部41、第2の拡張部43は、それぞれ、溝に挿入される波長板44などを固定する際に充填される接着剤(充填剤)を収容するためのものである。従来技術の光導波路デバイスにおける溝は、非常に大きなサイズであって複数の薄膜素子が挿入される共通の溝であったため、溝の内部には、余った接着剤を収容するのに十分な空間(容積)があった。本発明の光導波路デバイスにおける溝は、溝が必要な光導波路の各々に対して、薄膜素子を挿入・固定できる範囲で、できる限りコンパクトなサイズとなるように形成される。したがって、各々の溝は薄膜素子を固定するために寄与しない余分な接着剤を収容する材料収容機能を備えていることが望ましい。
第1の拡張部41および第2の拡張部43の形状を、使用する薄膜素子の形状や矩形部分の容積に基づいて決定することで、各拡張部を含めた溝全体の接着剤または充填剤の収容容積を設定できる。各拡張部の容積は、回路に形成する個々の溝の矩形部分42の大きさにより決められる。溝の矩形部分42の大きさは、溝に挿入される薄膜素子の形状(溝内に収まる部分の長さおよび厚さ)と、溝を形成するエッチング工程に生じる容積バラツキ(深さ、幅W1など)を考慮して決められる。各拡張部のサイズは、上記で決定された矩形部分42の容積に基づいて、さらに充填する接着剤の特性(粘性、チクソ性)、量なども考慮しながら、各拡張部を含む溝内の全容積が、光回路内の各溝でほぼ同じくらいになるように設定する。接着剤の特性を適切に選択すれば、薄膜素子が保持される矩形部分に接着固定に必要十分な接着剤が行き渡った上で、余った接着剤が拡張部に収まり、接着剤の量のバッファすなわち材料の収容機能を果たすことができる。
このように第1の拡張部41および第2の拡張部43の形状を決定することで、個々の溝に対する薄膜素子のサイズが異なり、また、溝のエッチング形成時に容積のばらつきがあっても、溝ごとに個別に接着剤の量を調整する必要が無い。予め決めた充填接着剤の量を溝ごとに変更する必要がないので、接着剤を充填する工程が簡略化され、接着剤の過不足に起因する不良が減って、光導波路デバイスの歩留まり向上を実現することができる。本発明の光導波路デバイスにおける溝に少なくとも1つの拡張部を設けて、接着剤のバッファすなわち材料収容機能を備えることで、溝自体の小型化を実現しながら、製造工程の煩雑化を防ぐことができる。
したがって、本発明の光導波路デバイスは、基板上に構成された複数の光導波路を持ち、1つ以上の薄膜素子が光導波路を横切って概ね基板面に対して垂直に挿入された光導波路デバイスにおいて、前記複数の光導波路の内のいずれかの光導波路を横切る溝であって、前記いずれかの光導波路の各々に対して対応する別個の溝を備え、前記溝の各々は、対応する1本の光導波路のみを横切り、前記対応する1本の光導波路に隣接する他の光導波路は横切らないように構成され、前記溝は、薄膜素子が挿入される矩形部分と、前記矩形部分の端部から連続して形成された少なくとも1つの拡張部であって、その形状が、前記挿入される薄膜素子の形状および前記矩形部分の容積に少なくとも基づいて決定される拡張部とを有するものとして実施できる。
それぞれの拡張部41、43は、矩形部分42をエッチングで形成するのと同時に形成し、挿入する薄膜素子44に対して入射する信号光に対して影響を与えないような形状を選択し配置される。溝は、その溝に挿入される薄膜素子が光導波路を横切るような向きに形成される。溝が形成される光導波路と、これに最も隣接する他の光導波路とは、これら2つの光導波路の間隔ができる限り小さくなるよう配置される。したがって、隣接する他の光導波路は、光導波路が構成された方向49に向かって伸びる第2の拡張部43が形成される端部側に配置されるのが好ましい。矩形部分42の長手方向に向かって伸びる第1の拡張部41は、隣接する光導波路に向かって伸びているので、光導波路間の間隔を詰めたい場合には適さない。隣接する導波路が、光導波路が構成された方向49に向かって伸びる第2の拡張部側に配置されるよう、光干渉回路の全体レイアウトを決定すれば良い。
図3の(b)は、複数の溝を近接させる場合の配置方法を示す図である。2つの溝45、46を近接させる場合、それぞれの第2の拡張部47、48が背中合わせとなるような向きに配置すれば良い。第2の拡張部47は相対する溝46の反対側に、第2の拡張部48は、相対する溝45の反対側にそれぞれ形成される。このため、第2の拡張部47、48は2つの溝45、46を近接させて配置する際の障害とはならない。
図3の(a)において、第1の拡張部41および第2の拡張部43は、余分な接着剤を収容する材料収容機能を実現できる限り、1つの溝に両方の拡張部を備えても良いし、いずれか一方だけを備えていても良い。適切な収容容積を確保できる限り、どのような組み合わせも可能である。また、矩形部分の長手方向に伸びる第1の拡張部41は、台形形状のものとして説明したが、後述するようなクラックの問題が生じず光回路の小型化に反しない範囲であれば、その形状には何ら制限がない。したがって、余分な接着剤の収容ができる限り、矩形部を除いた第1の拡張部41の形状は、図3のような台形状だけに限られず、3角形、正方形、四角形、五角形などの3辺以上を持つ多角形、さらには少なくとも一部に曲面を含む形状であっても良い。同様に、光導波路の構成される方向に伸びる第2の拡張部43も、薄膜素子44の溝内の固定に影響を及ぼさない限り、三角形状に限られずどのような形状も可能である。すなわち、矩形部を除いた第2の拡張部43の形状は、図3のような三角形状だけに限られず、正方形、四角形、五角形などの3辺以上を持つ多角形、さらには少なくとも一部に曲面を含む形状であっても良い。また、第1の拡張部は、矩形部分42の長手方向に沿って伸びたものとして説明したが、矩形部分42と台形部分41との間に、方向を曲げる中間部を備えて、台形部分41の伸びる方向を曲げて、隣接する光導波路との距離を取ることもできる。
第1の拡張部は、接着剤を収容するための容量を確保するために、前記第1の拡張部は、少なくとも一部に、前記一端から離れるにしたがって幅が広がる形状を持ち、前記対応する1本の光導波路の導波路に最も隣接する他の光導波路は、前記第2の拡張部の側に形成されるのが好ましい。
図4は、本発明の光導波路デバイスにおける溝の別の形状を説明する図である。図4の構成例では、溝の矩形部分52に対して、一端から溝の長手方向に沿って拡張部51が形成される。拡張部51は概略台形の形状をしているが、角の頂点部分が滑らかに丸まっている。例えば溝の最も端にある頂点部55a、55bは、半径10〜50μmの円弧に近い形状を持つ。溝の輪郭に急激な形状変動があると、この部分からクラックが生じる場合がある。図4のように頂点部を丸めた形状とすることによって、デバイスの信頼性を向上させる。円弧状の丸めた形状は、図3の(a)に示した第2の拡張部43の頂点部に適用できることは言うまでもない。
光波長板の機能を持つ薄膜素子は、概ね矩形または正方形に近い形状を持つ。薄膜素子は、取り扱いの容易さから、溝に沿った方向に概ね1〜2mmの長さ、10μm程度の厚さを持つ。溝の矩形部分42、52の幅W1は15〜30μm程度、溝の深さは100〜300μm程度である。図3、図4に例示的に示した形状の各拡張部は、以下のような大きさで実現できる。第1の拡張部41、51の長さL2は、50〜400μm程度、台形の長い辺の幅W2は30〜300μm程度、また第2の拡張部43の長さL3、幅W3とも50〜200μm程度となる。上記の各数値は、薄膜素子の大きさ、ディープエッチングの条件、溝の深さ、接着剤の性状などによって変動し得るものであって、上記の数値範囲のものだけに限定する趣旨ではない。
ここで、再び図2を参照すれば、本発明の光導波路デバイスでは、PBS21、偏波ローテータ22および90度ハイブリッド29を、それぞれを接続する光導波路を折り返しながら配置する。折り返し曲線光導波路の半径を放射損失が発生しない最小値とすることで、3つの基本要素を大きく縦方向に並べて、互いに近接して配置した。溝25、26とともに、PBS21におけるマッハ・ツェンダー干渉計のアーム部分に相当する2本の光導波路23、24の間隔を500μm以下になるように近接させて配置することで、回路全体のサイズを大幅に縮小することが可能である。従来技術で問題となった、溝の通過を避けるための光回路のレイアウト制限や、溝の通過を許容することによる望まない損失の発生を解消することができる。
具体的には、図1に示したデジタルコヒーレント光伝送システムにおける光受信器で、光干渉回路内に共通の1つの大きな溝を形成した場合、チップサイズは17×9mmであった。一方、図2に示した本発明の光導波路デバイスで、必要な光導波路に対して個々に別個の溝を形成した場合、図1と同じ機能を実現するためのチップサイズは12×7mmであった。本発明の光導波路デバイスの特徴的な構成の溝を利用することで、回路面積の比較で従来技術の構成よりも45%の削減を実現できる。
本発明の光導波路デバイスでは光回路サイズが小さくなったことに伴って、光導波路と薄膜を挿入する溝との境界面で発生する光反射が光受信器としての性能に影響を及ぼす可能性がある。光反射減衰量を十分抑制するため、図2に示したように、各溝25、26、27の光導波路と溝の境界面の角度が98度となるように溝を構成した。溝の向きを直角よりも所定の角度を付けて設定することで、隣り合う溝25、26を光導波路に垂直な軸上で一部重複させ、各溝はそれぞれが横切る対応する光導波路のみを横切るようにレイアウトされている。1つの溝は、1つの光導波路のみを横切る様に構成される。言い換えると、本発明における溝は、対応する光導波路のみを横切り、近接して配置されている他の光導波路を横切らない。
本発明の光導波路デバイスは、従来技術の光導波路設計技術を用いたままで、ディープエッチング技術を使用しながら溝の形状を変更するだけで、光回路のサイズの縮小を可能とする。一方で、光干渉回路の光学特性、すなわち挿入損失、PBSにおける偏波消光比、90度ハイブリッドにおける位相誤差、同相信号除去比などは、従来技術による光回路の場合と全く同等の性能を得ることが可能である。
上述のように、本発明の光導波路デバイスでは、特徴的な溝の構成を備えることによって、溝の構成に関する回路設計の柔軟性および光学的な性能上での大きな制約を解消し、光回路のサイズの大幅な小型化を実現する。同時に、溝の数が増えても製造組み立て工程の煩雑化の問題を生じない。次の実施例でも、本発明の光導波路デバイスにおける特徴的な溝を有効に利用できる光干渉回路の構成例を示す。
[実施例2]
図5は、本発明の実施例2の光導波路デバイスの構成を示す図である。図5は、アレイ化された複数のPBS61a〜61d、並びに、各PBSの両脇に用途を特定しないスルー接続の複数の光導波路62a〜62eを備えたえPBSアレイ回路500を示す。各PBSの入力導波路には信号光67が入力され、PBSによってそれぞれ基板水平方向と基板垂直方向の2つの偏波に分離して、2本の出力光導波路から光出力68a、68bを出力する。1つのPBSにおいて、マッハ・ツェンダー干渉計のアーム導波路に相当する2本の光導波路65、66の間隔を300μmとした。
本実施例の光導波路デバイスでは、各PBSの2つの光導波路65、66にそれぞれλ/4波長板を挿入する。波長板を挿入する溝63、64における反射に起因する光反射減衰量を抑制するため、光導波路と矩形状の溝の境界面の角度が98度となるように配置した。溝63、64はいずれも、それぞれ通過をするアーム導波路の一方の光導波路のみを横切るように構成されており、近接して配置されているアーム導波路の他方の光導波路、さらにはスルー接続の複数の光導波路62a〜62eを横切ることはない。
溝63、64は、導波路部分のSiO2に対して深堀りエッチングを行うのに最適化されたプロセスであるディープエッチング技術を使用して形成される。一方の溝63についてはその長さを1mmとし、長さ0.75mmのλ/4波長板を挿入した。他方の溝64についてはその長さを2mmとし、長さ1.8mmのλ/4波長板を挿入した。波長板として使用した薄膜素子はポリイミドフィルムを使用しており、厚さ10μm程度のものを使用した。薄膜を挿入する溝の幅は15〜30μm程度とし、石英ガラスに近い屈折率を持つ樹脂を用いて薄膜素子を溝内に接着固定することによって、溝を通過する光導波路の過剰損失を最小限に抑えた。溝の深さは100μm以上300μm以下とし、光導波路部分のSiO2のエッチング断面は基板面に対して垂直性を保ち、かつその表面は平滑である。
図5でも、光導波路に対する溝の幅や長さなどは実際のパターン構成イメージとは異なる点に留意されたい。実際の寸法関係で描くと、溝および波長板などは視認できなくなるので、溝の幅、波長板の厚さを相対的に拡大して誇張して描いてある。
本実施例の光回路では、PBSアレイ61a〜61dを構成する場合において、PBSとPBSの間に、PBSと接続されない別の光導波路62a〜62eを接近して配置する必要が生じた場合でも、溝63、64は、それぞれ必要な光導波路に対して横切るように配置される。したがって、溝を必要とする光導波路と、対応する溝とが1対1に対応している。溝が不要な光導波路62a〜62eには、当然、溝は形成されない。アーム導波路である光導波路65および光導波路66については、それぞれの溝の影響が同等に及ぶため導波路間隔についての制限は特にない。それぞれの溝の影響を同じとするために、アーム導波路を構成する対となる2つの導波路では、各溝から隣接する各光導波路62a〜62eまでの距離は、同じとするのが好ましい。
図5のPBSアレイおよびスルー接続の複数の光導波路62a〜62eが交互に配置された構成を、従来技術によって実現するためには、図5に示したように個々のPBSの溝が形成された位置に、貫通する1本の共通の溝を形成するしかなかった。このような場合、アーム導波路65、66に対して異なるλ/4波長板を挿入するためには、アーム導波路65、66の間隔を十分広く取る必要があった。その上、本来溝を形成する必要がなかった別の光導波路62a〜62eに対しても、溝が横切ることになる。これらの導波路では損失を減らすために接着剤または屈折率整合剤を充填するか、無用な過剰損失を許容するしかなく、光回路の性能上でも著しく不利となっていた。
図5の本発明の光導波路デバイスでは、最小限の長さの溝を、溝を必要とする光導波路に対してそれぞれ別個に備える特徴的な構成の溝によって、アーム導波路の間隔も狭く設定できる。さらに、PBSアレイ61a〜61dに接続されない他の光導波路62a〜62eに対して過剰損失の発生を考慮する必要もない。回路基板上に無駄なスペースを生じることなく、効率的に基本要素を配置して光干渉回路を実現できる。従来技術の共通の溝を利用する場合と比べて、光干渉回路をよりコンパクトに構成することができる。
本実施例では、図5の左側の入力導波路より信号光67を入力して光出力68a、68bを偏波分離するPBSとしての機能を説明したが、図5の右側の光出力68a、68bが出力された導波路から、基板に対して水平方向、垂直方向の直線偏波をそれぞれ入力することによって、偏波ビームコンバイナとして動作することも可能である。この場合、本実施例における信号光67が入力された入力導波路から直交偏波多重された光が出力される。
本実施例における溝は薄膜素子が挿入される矩形部分42(図3)に加えて、図3で説明したような台形状または三角形状の拡張部を設けるのが好ましい。薄膜素子を溝内に固定するための樹脂(または接着剤)を導入するため、やや大きめの台形状の拡張部41(図3)を矩形部分の一端に備え、さらに、導入した樹脂(接着剤)を溝全体に十分行き渡らせるために樹脂溜まりとして三角形状の溝43(図3)を矩形部分の他端に配置できる。これらの拡張部は溝の形成と同時に、ディープエッチング技術を利用して形成が可能であって、図5の本実施例の構成でも、光回路のサイズを十分に小型化できる範囲で適用することが可能である。拡張部の形状が様々に変形可能なことは言うまでもない。例えば、台形状の拡張部は、溝の矩形部分の長手方向に連続して形成されるものとして説明したが、矩形部分の端部から緩やかに90度曲げる中間部を経て、光導波路の同じ方向に台形状の拡張部を構成しても良い。どのような構成でも、溝内に薄膜素子を接着固定するための材料を導入可能であって、矩形部分を含めた溝の容量を予め適切な量に設定して、余った材料を収容する材料収容機能を実現できれば良い。
また、四角形または多角形状に形成した拡張部を持つ溝の場合、溝の頂点部分に基板の応力が集中してクラック等が発生する可能性もある。図4に示したように、頂点部分を半径10〜50μm程度の円弧状として角が丸い形状とすることが可能である。
上述の実施例1、実施例2では、シリコン基板上に構成された石英系ガラス導波路型デバイスを例として説明したが、本発明は、光導波路を構成する他の材料、例えば高分子、半導体、シリコン、イオン拡散型のニオブ酸リチウムなどを用いた光導波路デバイスすべてに対しても適用可能である。SiO2以外の各々の光導波路材料においても、基板の水平方向に対して垂直な深さ方向に選択比の高いディープエッチング技術を利用することは可能である。ディープエッチング技術を利用して、溝を必要とする光導波路に対して、対応する溝を1対1に構成することで、溝の構成に関する回路設計の柔軟性および光学的な性能に対する制約を解消し、光回路の小型化を実現できる。さらに本発明に特有の拡張部を持つ溝構成を採用することで、溝の数が増えても製造組み立て工程の煩雑化の問題を生じない。本発明の光導波路デバイスは、光干渉回路を含むデジタルコヒーレント光伝送に用いられる光送受信器に非常に有効である。
以上、詳細に説明してきたように、本発明の光導波路デバイスにより、光波長板などの薄膜素子を挿入する溝を有する光干渉回路の小型化を実現し、同時に製造組み立て時における煩雑な調整工程が不要な光干渉回路を提供することができる。
本発明は、一般的に通信システムに利用することができる。特に、光通信システムの光導波路型デバイスに利用できる。
1 基板
2 導波路部
3、25、26、27、63、64 溝
11、14、30、32 入力導波路
12、21、61a〜61d PBS
13、22 偏波ローテータ
15、31 VOA
16a、16b、29、29a、29b 90度ハイブリッド
17、34 信号光モニタ導波路
18a、18b、33a、33b 出力導波路
23、24、65、66 アーム導波路
28a、28b、62a〜62e 光導波路
41、43、47、48、51 拡張部
42、45、46、52 矩形部分
44、54 波長板
49 導波方向
55a、55b 頂点部
67 信号光
68a、68b 出力光
100、200、500 光干渉回路

Claims (9)

  1. 基板上に構成された複数の光導波路を持ち、1つ以上の薄膜素子が光導波路を横切って概ね基板面に対して垂直に挿入された光導波路デバイスにおいて、
    前記複数の光導波路の内のいずれかの光導波路を横切る溝であって、前記いずれかの光導波路の各々に対して対応する別個の溝を備え、
    前記溝の各々は、対応する1本の光導波路のみを横切り、前記対応する1本の光導波路に隣接する他の光導波路は横切らないように構成され、
    前記溝は、
    薄膜素子が挿入される矩形部分と、
    前記矩形部分の端部から連続して形成された少なくとも1つの拡張部と
    を有することを特徴とする光導波路デバイス。
  2. 前記拡張部は、前記薄膜素子を固定するために寄与しない余分な接着剤を収容することを特徴とする請求項1に記載の光導波路デバイス。
  3. 前記拡張部は、
    前記矩形部分の一端から前記矩形部分の長手方向に向かって連続して形成された第1の拡張部、または、
    前記矩形部分の他端から前記対応する1本の光導波路が構成された方向に向かって連続して形成された第2の拡張部
    を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路デバイス。
  4. 前記第1の拡張部は、少なくとも一部に、前記一端から離れるにしたがって幅が広がる形状を持ち、
    前記対応する1本の光導波路の導波路に最も隣接する他の光導波路は、前記第2の拡張部の側に形成されることを特徴とする請求項3に記載の光導波路デバイス。
  5. 前記第1の拡張部は、前記一端から離れた側に幅の広い底辺を持つ概ね台形の形状を有しており、
    前記第2の拡張部は、前記矩形部分の長辺上の前記他端近傍の一部を一辺とする三角形の形状を有していることを特徴とする請求項3または4に記載の光導波路デバイス。
  6. 前記拡張部の形状の頂点に相当する部分が、半径50μm以下の円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2乃至5いずれかに記載の光導波路デバイス。
  7. 前記溝および前記拡張部は、前記複数の光導波路を構成する材料に関して、前記基板面に垂直な深さ方向に選択比が大きいディープエッチングプロセスによって形成されることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の光導波路デバイス。
  8. 前記矩形部分の長さは2mm以下であって、前記矩形部分および前記拡張部の前記基板面に垂直な方向の深さは300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の光導波路デバイス。
  9. 前記溝に挿入される薄膜素子によって、偏波ビームスプリッタ(PBS)、偏波ビームコンバイナまたは偏波ローテータのいずれかの機能が実現されることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の光導波路デバイス。
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