以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、被撮像物として雄ねじ体を選定し、この雄ねじの螺旋溝の形成状態を検査するために、撮像システムを用いる場合について例示するが、被撮像物としては雄ねじ体に限定されるものではなく、適宜、所望の物体を被撮像物とすることができる。
図1は、第一実施形態に係る撮像システム1を示す。この撮像システム1は、反射機構10と、被撮像物(ここでは、以下、被撮像物を雄ねじ体5として説明する。)を撮像する撮像手段160,260とを備える。更に、反射機構10内において被撮像物(以下、雄ねじ体5)を位置させ得、また、雄ねじ体5を移動させ得る配位手段30と、画像一致度算出手段70と、合否判定手段75と、照明手段90を備える。
反射機構10は、雄ねじ体5の体軸方向に沿って配置される複数の反射手段(ここでは、第一反射手段110、第二反射手段210の二つとしているが、数量は三つ以上であってもよい。)を含む。更に、図1に示すように、これらの反射手段の反射像を更に反射させる複数の補助反射手段(第一補助反射手段197、第二補助反射手段297)を用いても好いが、反射機構の配置構成によっては必ずしも補助反射手段は必要ではない。。第一反射手段110及び第二反射手段210は、それぞれ、内側に設けられる撮像空間120、220を有する。
第一及び第二反射手段110、210は、一端側が小径となる狭空間116A、216Aで、他端側が大径となる広空間116B、216Bに開口した錐形筒状を成しており、その内周を反射面112、212としている。従って、反射面112、212は、軸方向を基準にして互いに非平行状態で対向して設けられる。本実施形態では、特に、第一及び第二反射手段110、210が円錐となっており、その反射面112、212の角度は、錐軸14に対して略45°となっている。
反射面112、212は、所謂表面反射鏡とすることが好ましい。この表面反射鏡は金属表面に鏡面仕上げ加工等を施して得ることが出来る。他にも、図1の反射面112の領域Xに拡大して示されるように、スパッタリングミラーとも呼ばれる、ガラス等の基材12Aの表面に鏡面材料を付着させて金属膜12Bを形成し、この金属膜12Bの反ガラス側面を鏡面処理した構造を採用できる。従って、反射面112、212は、金属膜12Bの反ガラス側に形成され、ガラスを介することなく、直接、反射面112、212に雄ねじ体5を映り込ませる。結果、ガラスの厚さの影響(屈折や多重反射等の影響)を受けることなく映像を反射することができるので、反射像の形状の乱れが大幅に抑制される。勿論、通常の光透過性材料の背面に金属膜が形成される一般的な鏡を用いることもできる。
次に、反射機構10における第一反射手段110と第二反射手段210の配置態様について説明する。配置態様には、錐軸が同軸化された反射面開放型配置態様と反射面対向型配置態様、並びに、錐軸が非同軸化(これは互いに平行でオフセットされる場合、互いに角度を有する場合の双方を含む)された反射面開放型配置態様と反射面対向型配置態様との四通りがあり、第一実施形態は反射面対向型配置態様を採用している。具体的に、第一反射手段110の狭空間116Aと第二反射手段210の狭空間216Aが互いにより離れ、かつ、第一反射手段110の広空間116Bと第二反射手段210の広空間216Bが互いにより近い状態となる。また、第一反射手段110と第二反射手段210の錐軸14は互いに一致しており、所謂同軸状態となっている。結果、互いの反射面112,212が対向状態となる。
また、第一反射手段110は、小径の開口となる狭空間116Aが鉛直上方となり、大径の開口となる広空間116Bが鉛直下方となる。第二反射手段210は、小径の開口となる狭空間216Aが鉛直下方となり、大径の開口となる広空間216Bが鉛直上方となる。錐軸14は鉛直方向と平行となる。勿論、錐軸14は鉛直方向と平行にすることに限定されるものではなく、鉛直方向から傾斜していても、直交していてもよい。
撮像空間120,220は、第一及び第二反射手段110,210の内側に形成される円錐台形空間となる。この円錐台形空間内に雄ねじ体5を位置させると、雄ねじ体5の周囲を取り囲む反射手段110,210により、雄ねじ体5の中心を通る体軸5Aの直角方向の全方位の反射像を同時に得ることができる。
なお、本撮像システム1のように、反射手段110,210の円錐形状の反射面112,212を、錐軸14からの傾斜角を略45°とすると次の利点が得られる。撮像空間120,220内の錐軸14に沿った様々な箇所を始点とし、反射面112,212でそれぞれ反射され錐軸14に対して直交する直交面(ここでは撮像面160A,260A)中に対応する各点を終点とした場合、始点から終点まで光路長が至る所で等しくなる。結果、各部の至る所で、撮像手段160,260のピントを合わせることが可能となる。従って、この錐軸14に対して同心となる棒状材料(ここでは雄ねじ体5の軸部)を撮像する場合に、表面の凹凸相当距離を除けば、上述と同様の結果を得ることが出来る。勿論、ここで、被写界深度の深い光学系を採用した撮像手段を用いる場合には、被撮像物の表面に多少の凹凸があっても全周に亘って高度にピントを合わせることが可能となる。また、撮像される映像の縮尺が、従来のように反射手段110,210を用いずに、錐軸14を側面から撮像した状態の尺度と一致させることもできる。
第一及び第二反射手段110,210にそれぞれ配置される照明手段90は、内側に向かって光を放射する円筒形状の発光面94を有している。この照明手段90は、第一及び第二反射手段110,210の大径となる広空間116B,216Bにおいて、これらと撮像手段160,260の間を結ぶ反射光の光路の周辺を取り囲むように、反射面112,212と略同軸状に配置される。発光面90の軸方向の長さは、雄ねじ体5の軸方向長さ(撮像長さ)又は撮像空間120,220の軸方向寸法と比較して、同等又は大きい方が好ましい。発光面94は、例えば有機ELのように、積層材料自体が拡散光として直接発光するものが好ましいが、この他にも、LED等の光を円筒面内に導く筒面状発光化手段を用いることも出来る。この筒面状発光化手段は、LED等の光を導く導光機能と、光拡散機能を有し、これらの機能によって発光面94をほぼ均等に発光させることが出来るように構成しても良い。この際、導光機能を有する導光板は、LED等の自発光光源の半径方向内側又は軸方向内側に配置して光を拡散板(光拡散機能)まで案内する。このように、照明手段90の円筒状の発光面94を、雄ねじ体5に対して軸方向にずらしつつ、発光面の角度も雄ねじ体5と対向しない状態で配置し、発光面94から軸心方向に拡散的に光を照射して間接的に雄ねじ体5を照らす。この結果、撮像手段160、260によって撮像される映像のハレーション(局所的に白くぼやける現象)を著しく抑制できる上、被撮像物自信の影を消失させることが出来る。因みに、照明手段の発光面を雄ねじ体5側に向けて直接的に照らすと、撮像手段160、260によって撮像される映像にハレーションが生じ易いことが、本発明者の検証で明らかとなっている。また、上述のように照明手段を構成することによれば、被撮像体自身の影を消す消影効果を発揮し、自身の影の撮像画像への写り込みを防止することができる。勿論、照明手段90の構成や配置は、これに限定されるものではなく、撮像空間120,220内に配置された被撮像物を所望の解像度で撮像することが出来るように構成されていればよく、構成や配置は特に限定されない。
更にこの照明手段90は、発光面94内において部分的に光を放射できる複数の部分、ここでは四つの部分発光領域95A〜95Dを有する。部分発光領域95A〜95Dは円筒形状となっていて、これらが軸方向に連なって発光面94を構成する。
各部分発光領域95A〜95Dは、互いに独立した有機EL層で構成されており、個別に電圧を印加することで互いに独立して発光する。一つの部分発光領域が発光している間は、残りの部分発光領域が消灯するように制御すれば、各部分発光領域95A〜95Dが、部分的に光を照射することになる。四つの部分発光領域95A〜95Dを適宜点灯させれば、結果として、部分発光領域が軸方向に推移する状態を作り出すことができる。
このように、部分発光領域95A〜95Dを経時的に軸方向に推移(移動)させながら、雄ねじ体5の複数の映像を撮像すると、発光領域と光量の調整により、ねじ山の影の状態が異なる複数の映像を取得できる。これらの映像を比較することで、影の変動や色調等の差異から、ねじ山の形状や深さ、見え難い欠陥等を推測できる。
なお、ここでは各部分発光領域95A〜95Dは、互いに独立した有機EL層とする場合を例示したが、発光面94全体を、ドット状又はマトリクス状の有機EL層とすることで、任意の領域を自在に部分発光領域にすることもできる。また、発光面の表面に液晶層を配置して、任意の領域の光を液晶で遮ることによって、残りの範囲を部分発光領域にすることもできる。また、発光面を適宜にカラー発光させて、特定色の発光に対する被撮像物の反応や反射の具合を捉えることができるように構成してもよい。
第一及び第二補助反射手段197,297は、第一及び第二反射手段110、210の間に配置される。第一補助反射手段197の第一補助反射面197Bは、錐軸14の延長線上において、第一反射手段110の光路に対して45°で傾斜する状態で配置される。従って、この第一補助反射面197Bが、第一反射手段110の反射光の光路を、錐軸14の直角方向に変更して、その先に配置される撮像装置160に案内する。第二補助反射手段297の第二補助反射面297Bは、錐軸14の延長線上において、第二反射手段210の光路に対して45°で傾斜する状態で配置される。従って、この第二補助反射面297Bが、第二反射手段210の反射光の光路を、錐軸14の直角方向に変更して、その先に配置される撮像装置260に案内する。
特に本実施形態では、共通のプレートの両表面を利用して、第一及び第二補助反射手段197,297が形成されており、換言すると、単一の補助反射手段が、第一補助反射面197Bと第二補助反射面297Bを有することになる。結果として、第一補助反射面197Bと第二補助反射面297Bの反射方向は互いに正反対となる。第一補助反射面197Bと第二補助反射面297Bは、表面反射鏡であることが好ましい。
また。第一及び第二補助反射手段197,297は、中央に雄ねじ体5が通過可能な開口197A,297Aが形成されている。この開口197A,297Aは、雄ねじ体5が通過可能に構成され且つ極力小さい貫通孔とすることが好ましく、例えば、被撮像物が円柱状を成す物体である場合には、図12に示すように、第一補助反射手段197及び/又は第二補助反射手段297のそれぞれの面方向視において楕円形で、且つ、錐軸14に沿った視点からは正円形として捉えられる形状の、楕円形に設定することが好ましい。なお、楕円形でなくても、第一方向(ここでは傾斜方向)が長く且つ該第一方向に対して直角となる第二方向(ここでは傾斜幅方向)に短い長孔であれば、他の形状であってもよい。この場合、錐軸14に沿った視点では正多角形等になるようにしても良い。
配位手段30は、反射機構10における錐軸14と雄ねじ体5の体軸5Aを同軸化しつつ、雄ねじ体5を保持して、雄ねじ体5を体軸5Aの方向に位置させ、各撮像空間内120、220の所定位置に雄ねじ体5を位置決めする。なお、本実施形態では、反射機構10の錐軸14が鉛直方向に平行となっているので、雄ねじ体5の体軸5Aも鉛直方向に平行となる。
配位手段30は、鉛直方向に配置される軸部32と、この軸部32の先端に配置される保持機構40を備える構成とすることができる。軸部32は、反射機構10の錐軸14と同軸状に配置され、特に図示しない駆動手段によって、錐軸14方向に移動する。このような構成を有する配位手段の一例としては、ロボットアームを挙げることもできる。
保持機構40は、雄ねじ体5の端部(ここでは頭部)を保持する。なお、保持機構40は、所謂チャック機構或いはグリップ機構となっており、雄ねじ体5の保持・開放を切り替えることができる。保持機構40が雄ねじ体5を保持した状態で、雄ねじ体5の体軸5Aが、錐軸14と一致するようになっている。なお、雄ねじ体5の体軸5Aと錐軸14に同軸度に誤差が生じる場合は、特に図示しないX−Yステージ等により、保持機構40及び軸部32を体軸直角方向に移動させて、雄ねじ体5の体軸5Aと錐軸14を一致させるように制御しても良い。
配位手段30は、図1に示すように、第二反射手段210の狭空間216Aから雄ねじ体5を内部に挿入して、第二反射手段210の撮像空間220内に雄ねじ体5を位置決めする。結果、撮像手段260は、雄ねじ体5の体軸5Aの直角方向の全方位の反射像を撮像できる。その後、配位手段30は、図2に示すように、第二反射手段210から、開口197A,297Aを通過して、第一反射手段110側へ雄ねじ体5を移動させて、第一反射手段120の広空間116Bから雄ねじ体5を内部に挿入し、第一反射手段110の撮像空間120内に雄ねじ体5を位置決めする。結果、撮像手段160は、雄ねじ体5の体軸5Aの直角方向の全方位の反射像を撮像できる。勿論、撮像空間120,220内に被撮像体を位置決めして留めておくような配位手段30は必ずしも必要なく、例えば、本実施形態のように、錐軸14が鉛直方向と平行な場合、被撮像物の体軸を錐軸14と一致させておきながら、被撮像物を狭空間116A側から落下させて、高速度で撮像手段160,260を作動させて高速撮像することで、所望の高さ位置における被撮像体物の準静的な画像を取得することができる。
撮像手段160,260は、反射機構10の錐軸14に対して直角方向に配置されるカメラであり、補助反射手段197,297から得られる反射光の光軸(進行方向)と、自身の光軸(撮像方向)が一致する。この撮像手段160,260は、本実施形態ではCCDカメラ又はCMOSカメラ等の受光素子からなる平坦な受光面160A,260Aを有し、反射機構10の各反射面112 ,212で反射した反射像、具体的には雄ねじ体5の軸部の全方位像を撮像する。なお、この撮像手段160,260は、できる限り被写界深度が大きい状態、又は焦点深度が大きい状態で用いることが望ましい。
次に、この撮像システム1の作用について説明する。
図1に示すように、雄ねじ体5の軸部の先端側の半分を先端側領域5S、基部側の半分を基部側領域5Kと定義した場合、配位手段30は、雄ねじ体5の基部側領域5Kを、第二反射手段210の反射面212に接近する姿勢で位置決めする。即ち、配位手段30は、基部側領域5Kを、狭空間216A近傍に位置決めする。結果、図3(B)に示すように、基部側領域5Kの反射面212における反射像の解像度が高く、先端側領域5Sの反射像は解像度が低くなる。なお、本実施形態では、第二反射手段210の錐軸14方向の長さが、雄ねじ体5よりも短く設定されることから、先端側領域5Sの一部は、撮像空間220(反射面212)からはみ出てしまって、撮像手段260では撮像されない。
一方、図2に示すように、配位手段30は、雄ねじ体5の先端側領域5Sを、第一反射手段110の反射面112に接近する姿勢で位置決めする。即ち、配位手段30は、先端側領域5Sを、狭空間116A近傍に位置決めする。結果、図3(A)に示すように、先端側領域5Sの反射面112における反射像の解像度が高く、基部側領域5Kの反射像は解像度が低くなる。なお、本実施形態では、第一反射手段110の錐軸14方向の長さが、雄ねじ体5よりも短く設定されることから、基部側領域5Kの一部は、撮像空間120(反射面112)からはみ出ており、撮像手段160では撮像されない。なお、図2に示すように、反射面112によって雄ねじ体5の先端側領域5Sの像を反射させて、更に第一補助反射手段197の第一補助反射面197Bによって再反射させることで、撮像手段160によって先端側領域5Sを撮像しようとする場合、配位手段30の軸部32が反射光の経路上に位置するため、反射光の一部が軸部32によって遮られてしまい、得られる像が欠損した像になってしまう。そこで、軸部32を光透過性の高い透明素材で構成し、且つ、撮像手段160の撮像面に対して、平行な一対の面を有する軸部32形状とすることで、撮像光を極力遮らないように構成することが可能である。
撮像手段160、260によって撮像された図3(A)及び(B)の画像データは、ケーブルや無線等を含む情報伝達手段を介して画像一致度算出手段70に出力される。画像一致度算出手段70は、所謂演算装置であり、画像データに基づいて各種画像処理や演算処理を実行する。具体的には、予めシミュレーションで作成された、或いは理想的な雄ねじ体を用いて撮像された図3(A)及び(B)のそれぞれに対応するマスター画像を備えており、これらと、撮像手段160、260で実際の雄ねじ体5を撮像して得られた撮像画像を比較するなどして、画像マッチング等によりこれらの一致度等を算出する。この際、図3(A)の画像データでは、主として解像度の高い先端側領域5Sを利用して画像マッチングを行う。また、図3(B)の画像データでは、主として解像度の高い基部側領域5Kを利用して画像マッチングを行うことが可能であり、こうすることによって雄ねじ体5の軸直角方向の全周の全体像を高解像度で分析可能となる。結果として、雄ねじ体5の軸部全体の画像マッチング等を高精度に行うことができる。それぞれの一致度等に関するデータは、合否判定手段75に提供される。
合否判定手段75は、画像一致度等に応じて合否判定を行う。具体例としては、二枚の画像データの一方でも、画像一致度が所定の閾値を超えて、不一致と判断される場合は、雄ねじ体5の螺旋溝の品質が悪いと判定する。二枚の画像データの双方において、マスター画像との画像一致度が所定の閾値内に収まることで一致と判断される場合は、雄ねじ体5の螺旋溝の品質が良好と判定する。
なお、画像一致度算出手段70及び合否判定手段75は、コンピュータにおいてプログラムが実行されることで実現される。この演算処理の詳細については説明を省略するが、各種の既知の手法を採用することができる。マスター画像、撮像手段160、260によって撮像された複数の画像データ、画像一致度算出手段70や合否判定手段75によって導出された測定データは、図示を省略したハードディスク等の記憶媒体に記憶されると共に、必要であれば図示を省略した表示装置やプリンタ等に出力する。
以上、本実施形態の撮像システム1によれば、配位手段30によって、反射機構10内で雄ねじ体5を体軸5A方向に移動させ、異なる場所に位置決めされる雄ねじ体5のそれぞれの反射像を、撮像装置160、260で撮像する。結果、雄ねじ体5の特定領域に限って高解像度となる複数種類の撮像データを得ることが可能になる。結果、これらの複数の撮像データを組み合わせて、雄ねじ体5の外観検査を行えば、全体として高解像度の撮像データで外観検査を行うことが可能となり、高精度な合否判定を実現する。
特に第一実施形態の撮像システム1では、反射機構10が複数の反射手段110、210を軸方向に備えており、これらの間を雄ねじ体5が移動しながら、複数の画像データを得るようにしている。この際、雄ねじ体5の軸方向の一部(ここでは基部側領域5K)を第二反射手段210の反射面212に接近させ、雄ねじ体5の軸方向の他部(ここでは先端側領域5S)を、第一反射手段110の反射面112に接近させて、撮像を行う。結果、反射面が雄ねじ体5から離反することで、解像度が低下してしまう領域を、互いに補い合うことができる。
また、各反射手段110、210では、雄ねじ体5の軸部の一部(例えば、半分)を撮像できれば十分となるので、反射面112、212の錐軸14方向の寸法を小さく設定でき、結果、反射面112、212の径方向の最大径も小さくすることができる。結果、撮像システム1自体をコンパクトにすることができ、同時に、撮像手段160、260の撮像範囲(画角)も小さくて済む。
また、本実施形態の撮像システム1によれば、第一及び第二反射手段110、210が円錐形の筒状となることから、両端の開口を介して、雄ねじ体5を搬入・搬出できる。従って、パーツフィーダ等の自動供給装置と組みあわせることで大量の雄ねじ体5を連続的に撮像することができ、量産ラインに適したシステム構成とすることが出来る。
なお、ここでは反射面112、212を円錐形状としたが、略多角錐状にすることも可能である。例えば、図4(A)に示されるように、被撮像物が略円柱状を成す物であれば反射面112、212を円錐にし、図4(B)に示されるように、被撮像物が略三角柱状を成す物であれば反射面112、212を略三角錐状とし、図4(C)に示されるように、被撮像物が略四角柱状を成す物であれ反射面112、212を略四角錐状とすることで、適切な撮像が可能となる。この場合は、照明手段90の発光面94も、略三角筒状や略四角筒状にすることが好ましい。勿論、この他の錐体形状を選定することもできる。
更に、本撮像システム1では、反射面112、212が表面反射鏡で構成されるので、一般的な鏡と比較してガラスの屈折や多重反射等の影響を受けないため、撮像結果の形状精度を高めることができる。
因みに、反射面112、212の傾斜角が略45°に設定すると以下の利点が得られる。雄ねじ体5の軸部の軸方向に沿った様々な箇所を始点とし、反射面112、212及び第一補助反射手段197、第二補助反射手段297でそれぞれ反射されて、撮像面160A、260Aに対応する各点を終点とした場合、始点から終点まで光路長が至る所で等しくなる。更に、雄ねじ体5(被撮像体)の軸部(測定対象表面)の体軸直角方向の断面形状と、反射面112、212の錐軸直角方向の断面形状を略相似させているので、雄ねじ体5の軸部の周方向に沿った様々な箇所を始点とし、同様に始点から終点まで光路長が至る所で等しくなる。結果、雄ねじ体5の軸部のあらゆる表面の至る所で、その表面自体の凹凸(螺旋溝)の差異を除けば、全ての光路長が等しくなるので、全方位について同時に撮像手段160、260のピントを合わせることが可能となる。結果、この錐軸14に対して同心となる棒状材料(ここでは雄ねじ体5の軸部)を撮像する場合に、螺旋溝の凹凸相当距離を除けば、ピント合わせが極めて容易となる。また、雄ねじ体5の体軸5Aの軸方向の実寸と、同心円状となる撮像結果の半径方向の実寸が、正確に対応するので、高精度の形状判定に適している。
次に、図5乃至図7を参照して、第二実施形態の撮像システム1を説明する。なお、第一実施形態と同一又は類似する部品又は部材については、図中及び文中の符号を一致させることで説明を省略し、ここでは第一実施形態と異なる点について説明する。
図5に示す撮像システム1では、反射機構10における第一反射手段110と第二反射手段210が、反射面開放型配置態様で配置される。具体的には、一方の第一反射手段110の広空間116Bと第二反射手段210の広空間216Bが比較的互いに離れた位置関係であり、かつ、第一反射手段110の狭空間116Aと第二反射手段210の狭空間216Aが比較的互いに接近した位置関係となる。また、第一反射手段110と第二反射手段210の錐軸14は互いに一致しており、所謂同軸状態となっている。結果、互いの反射面112、212が、軸方向の両外側に向いた開放状態となる。
また、第一反射手段110は、小径の開口となる狭空間116Aが鉛直下方となり、大径の開口となる広空間116Bが鉛直上方となる。第二反射手段210は、小径の開口となる狭空間216Aが鉛直上方となり、大径の開口となる広空間216Bが鉛直下方となる。錐軸14は鉛直方向と平行となる。勿論、錐軸14は必ずしも鉛直と平行に設定しなければならないと言うものではなく、錐軸14が鉛直から傾斜していたり、或いは直交していたりしてもよい。
本実施形態では、第一実施形態の補助反射手段が省略されており、第一及び第二反射手段110、210の錐軸14の延長線上に、撮像手段160、260が配置される。具体的に撮像手段160は、第一反射手段110の錐軸14と同軸状態で鉛直上方に配置されるカメラであり、反射面112から得られる反射光の光軸(進行方向)と、自身の光軸(撮像方向)が一致する。撮像手段260は、第二反射手段210の錐軸14と同軸状態で鉛直下方に配置されるカメラであり、反射面212から得られる反射光の光軸(進行方向)と、自身の光軸(撮像方向)が一致する。
配位手段30は、第一反射手段110と第二反射手段210の間に設置される。具体的に配位手段30は、水平方向に配置される軸部32と、この軸部32の先端に配置される保持機構40を備える。軸部32は、特に図示しない駆動手段によって、錐軸14方向に往復移動する。
保持機構40は、雄ねじ体5の軸部等を保持する。なお、保持機構40は、所謂チャック機構となっており、雄ねじ体5の保持・開放を切り替えることができる。
配位手段30は、図5に示すように、第一反射手段110の狭空間116Aから雄ねじ体5を内部に挿入して、第一反射手段110の撮像空間120内に雄ねじ体5を位置決めする。結果、撮像手段160は、雄ねじ体5の体軸5Aの直角方向の全方位の反射像を撮像できる。その後、配位手段30は、図6に示すように、第一反射手段110から第二反射手段210側へ雄ねじ体5を移動させて、第二反射手段210の狭空間216Aから雄ねじ体5を内部に挿入し、第二反射手段210の撮像空間220内に雄ねじ体5を位置決めする。結果、撮像手段260は、雄ねじ体5の体軸5Aの直角方向の全方位の反射像を撮像できる。
次に、この撮像システム1の作用について説明する。
図5に示すように、配位手段30は、雄ねじ体5の基端側領域5Kを保持しながら、雄ねじ体5の先端側領域5Sを、第一反射手段110の反射面112に接近する姿勢で位置決めする。即ち、配位手段30は、先端側領域5Sを狭空間116A近傍に位置決めする。結果、図7(A)に示すように、先端側領域5Sの反射面112における反射像の解像度が高くなる。なお、本実施形態では、基部側領域5Kの一部は、撮像空間120(反射面112)からはみ出す場所に位置決めされるので、撮像手段160では撮像されない。
一方、図6に示すように、配位手段30は、雄ねじ体5の先端側領域5Sを保持しながら、雄ねじ体5の基端側領域5Kを、第二反射手段210の反射面212に接近する姿勢で位置決めする。即ち、配位手段30は、基端側領域5Kを狭空間216A近傍に位置決めする。結果、図7(B)に示すように、基端側領域5Kの反射面212における反射像の解像度が高くなる。なお、本実施形態では、先端側領域5Sの一部は、撮像空間220(反射面212)からはみ出ており、撮像手段260では撮像されない。
以上のように構成される撮像システム1によれば、第一反射手段110において、雄ねじ体5の先端側領域5Sの高解像度の撮像データを得ることができ、第二反射手段210において、雄ねじ体5の基端側領域5Kの高解像度の撮像データを得ることができる。
更に本撮像システム1では、配位手段30による、雄ねじ体5の体軸5A方向の移動距離を小さくすることができるので、撮像効率を高めることができる。また、反射手段110、210の錐軸14及び雄ねじ体5の体軸5Aを鉛直方向にしているので、撮像後は、配位手段30が雄ねじ体5を開放して自然落下させれば、反射機構10から雄ねじ体5を搬出できる。従って、雄ねじ体5の搬送機構を簡略化することが可能となる。この際、例えば図7に示すように、撮像装置260の手前に、透明材料によるすべり面98を配置して、雄ねじ体5がこのすべり面98に沿って水平方向に移動しながら排出されるようにすれば、雄ねじ体5と撮像装置260の衝突を回避できる。
次に、図8及び図10を参照して、第三実施形態の撮像システム1を説明する。なお、第一及び第二実施形態と同一又は類似する部品又は部材については、図中及び文中の符号を一致させることで説明を省略し、ここでは第一及び第二実施形態と異なる点について説明する。
撮像システム1の反射機構10は、単一の反射手段310を備える。また、反射手段310の狭空間316A近傍には、配位手段330が配置される。
配位手段330は、鉛直方向に配置される筒状部332と、この筒状部332の下端側に配置される開放保持機構340を備える。筒状部332は、自身の筒軸が、反射手段310の錐軸14の延長線上に沿って配置され、一端となる上方の開口は、雄ねじ体5が投入される投入口なり、他端となる下方の開口は、雄ねじ体5を放出する放出口となる。この放出口は、狭空間316Aの近傍に位置する。筒状部332の内径は、雄ねじ体5の頭部外形と比較して、少しだけ大きく設定されており、一つ以上、好ましくは複数の雄ねじ体5を内部に軸方向に収容し、且つ鉛直方向に整列させる。
開放保持機構340は、筒状部232内の最下端の雄ねじ体5を、体軸方向に沿って異なる2段階の位置(上段と下段)で位置決めする。これより、雄ねじ体5を体軸方向に移動させながら、異なる二箇所(上段と下段)以上の撮像を実現できる。
具体的に開放保持機構340は、雄ねじ体5の軸部の付け根を三方向から保持する上段保持部342A及び下段保持部342Bと、この上段及び下段保持部342A、342Bを、雄ねじ体5の体軸を中心とした半径方向にスライドさせるスライダ344と、上段及び下段保持部342A、342Bを、半径方向内側に付勢するばね346と、上段及び下段保持部342A、342Bに設けられるカム受け348と、このカム受け348と係合して、ばね346の力に抗して、上段及び下段保持部342A、342Bを半径方向外側に移動させる板カム350と、板カム350をベルト駆動するモータ352を備えることも好ましい。
図9に示されるように、板カム350は、筒状部332に対して、特に図示しないベアリングを介して回転自在に配置される。板カム350の外寸(半径方向寸法)は、周方向に沿って少なくとも二段階以上(ここでは三段階)に変化しており、もっとも大きい「雄ねじ体解放領域350A」と、中間の「雄ねじ体受け止め領域350B」と、最も小さい「雄ねじ体固定領域350C」が周方向にこの順番に形成される。各領域350A〜350Cは、それぞれ120度間隔で三カ所に設けられることによって、一つの板カム350で三つの上段及び下段保持部342A、342Bを同時に移動させる。
因みに、図9は、板カム350の雄ねじ体固定領域350Cにカム受け348が係合している状態を示しており、この状態では、三本の上段及び下段保持部342A,342Bの突端が最も半径方向内側に突出することによって、雄ねじ体5の軸部を挟み込んで固定する。結果、雄ねじ体5の体軸5Aと錐軸14を同軸化できるので、撮像が実行される。また、図10(A)は、板カム350の雄ねじ体開放領域350Aに、カム受け349が係合している状態を示しており、三本の上段及び下段保持部342A、342Bが、雄ねじ体5の頭部よりも半径方向外側に退避することによって雄ねじ体5を開放する。これにより雄ねじ体5が落下する。図10(B)は、板カム350の雄ねじ体受け止め領域350Bに、カム受け348が係合している状態を示しており、三本の上段及び下段保持部342A、342Bの突端が、雄ねじ体5の頭部よりも半径方向内側、且つ軸部外形よりも半径方向外側に待機することによって、上方から落下してくる雄ねじ体5の軸部を通過させつつ、頭部を受け止める。
板カム350をモータ352によって一方向に等速回転させることで、雄ねじ体5の解放、雄ねじ体5の受け止め、雄ねじ体の固定が繰り返されることになり、連続的に雄ねじ体5を繰り出して上段と下段で位置決めし、順番に搬出(自然落下)させる。なお、ここでは、板カム350の外寸が階段状に変位する場合を例示したが、滑らかに変位するように設計することも勿論可能である。
図9(A)は、上段保持部342Aによって、雄ねじ体5の軸部の付根(頭部との境界)を挟み込んで固定される状態を示す。この状態では、雄ねじ体5の先端側領域5Sが、反射手段310の撮像空間320内に位置決めされ、撮像手段360によって撮像される。配位手段330は、先端側領域5Sを、狭空間316A近傍に位置するように保持する結果、先端側領域5Sの反射面312における反射像の解像度が高くなる。
図9(B)は、図9(A)の状態から雄ねじ体5を一旦開放して自然落下させ、この雄ねじ体5の頭部を受け止めてから、下段保持部342Bによって再度挟み込んで固定した状態を示す。この状態では、雄ねじ体5の基部側領域5Kが、反射手段310の撮像空間320内に位置決めされ、撮像手段360によって撮像される。配位手段330は、基端側領域5Kを、狭空間316A近傍に位置するように保持する結果、基端側領域5Kの反射面312における反射像の解像度が高くなる。
共通の雄ねじ体5が、上段と下段において位置決めされて、撮像手段360によって撮像された例えば二枚の画像データは、画像一致度算出手段に出力されて、マスター画像と比較して、画像マッチング等によりこれらの一致度を算出する。
本第三実施形態の撮像システム1によれば、共通の反射手段310の撮像空間320内において、雄ねじ体5を体軸5A方向に移動させながら、複数の反射像を撮像装置360で撮像できる。得られた複数の撮像データにおいて、解像度の高い部分を利用して外観検査を行えば、高精度な合否判定を行うことが可能となる。
本実施形態では、被撮像体として、軸部に螺旋溝又は螺旋突起を有する雄ねじ体5を撮像する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、様々な部品、部材を撮像することができる。一方で、本撮像システムでは、被撮像体が棒状部位を有しており、その棒状部位の全周を撮像する際に好適である。例えば第一実施形態の撮像システム1に関して、図11に示すように、被撮像体として、長尺の棒状部材6を採用することができる。棒状部材6を、一対のローラで挟持しながら搬送する移動装置30によって体軸方向に連続移送しながら、撮像装置160、260で、撮像空間120、220を通過する領域を順番に撮像することで、外観検査を連続的に行うことも可能である。
また、上記第一実施形態では、第一の補助反射手段197と第二の補助反射手段297が一体化した単一の補助反射手段の両面に、第一補助反射面197Bと第二補助反射面297Bが形成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図13(A)に示すように、第一の補助反射手段197と、第二の補助反射手段297が別々に配置されており、第一補助反射面197Bの反射方向と、第二補助反射面297Bの反射方向が、錐軸14に対して直角且つ互いに平行となるようにしても良い。また、同反射方向が、互いに角度を有する関係に設定することも可能であり、例えば、第一補助反射面197Bの反射方向と、第二補助反射面297Bの反射方向が、錐軸14に対して直角且つ互いに角度を有する(例えば直角)ようにしても良い。
更に、上記第二実施形態では、補助反射手段を配置しない場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図13(B)に示すように、第一反射手段110と第二反射手段210の錐軸14の延長線上に、それぞれ、第一の補助反射手段197と第二の補助反射手段297を別々に配置し、第一補助反射面197Bと第二補助反射面297Bによって更に反射させることもできる。
また更に、上記第一又は第二実施形態では、第一反射手段110と第二反射手段210が、反射面対向型配置態様、または反射面開放型配置態様で配置される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図13(C)に示すように第一反射手段110と第二反射手段210の双方の反射面112,212が、錐軸14に対して同一方向に開放されるようにしても良い。
更にまた、上記第一又は第二実施形態では、第一反射手段110と第二反射手段210の錐軸が同軸となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図13(D)に示すように、第一反射手段110の錐軸14Aと第二反射手段210の錐軸14Bが、非同軸且つ互いに平行となるようにしても良く、また、図13(E)に示すように、第一反射手段110の錐軸14Aと第二反射手段210の錐軸14Bが、角度を有する(例えば直角)ようにしても良い。
本発明の実施例は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。