JP2017005895A - 回転機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
この回転機の制御装置は、電圧振幅算出部、直流電流制限判定部、電圧パルス設定部、及びゲート信号生成部を備える。
直流電流制限判定部は、直流電源と電力変換器との間に流れる直流電流のピーク値が所定の直流電流制限値以下であるか否かを判定する。
ゲート信号生成部は、電圧パルス設定部が設定した電圧パルスに基づいて、電力変換器を操作するゲート信号を生成する。
そして、電圧パルス設定部は、直流電流のピーク値が制限値以下となるまでパルス数を増加させ電圧パルスを設定する。このとき、直流電流の平均電流は変化しない。
これにより、本発明の回転機の制御装置は、回転機のトルクを低下させることなく、直流電流を適切に制限することができる。よって、例えばハイブリッド自動車の主機モータに適用される場合、ドライバビリティの低下を回避することができる。
この回転機の制御装置は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の主機モータの制御装置として適用される。以下の実施形態の説明では、特許請求の範囲の「回転機」に相当する部分を「モータ」と記す。また、「本実施形態」とは、第1〜第3実施形態を包括していう。
第1実施形態による回転機の制御装置について、図1〜図10を参照して説明する。
図1に示すモータ駆動システム90は、「直流電源」としてのバッテリ50、直流電流センサ55、「電力変換器」としてのインバータ60、及び、交流電力によって駆動されるモータ80等を備える。モータ駆動システム90に適用されるモータ制御装置101は、インバータ60を操作してモータ80の通電を制御する。
インバータ60には、バッテリ50から電源電圧Vdcが入力される。インバータ60は、上下アームの複数のスイッチング素子がブリッジ接続されており、スイッチング素子のスイッチング動作により直流電圧を交流電圧に変換し、モータ80の巻線に印加する。インバータ60の構成は周知であるため、図示及び詳細な説明を省略する。
回転角センサ85は、モータ80の回転角を検出し電気角θeとして出力する。電気角θeは、モータ制御装置101でベクトル制御の座標変換演算に用いられる。また、微分器86で電気角θeが時間微分され、電気角速度ω[deg/s]が算出される。電気角速度ωは比例定数を乗じることにより回転数N[rpm]に換算されるため、本明細書では「電気角速度ωを換算した回転数」を省略して「回転数ω」という。
ここで、特許文献1(特開2013−162561号公報)に開示されているように、直流電流Idcが所定の制限値以上になると、給電経路上の発熱、電子部品の破壊、バッテリの劣化等の問題を引き起こすおそれがある。そこで特許文献1の従来技術では、直流電流の検出値と直流電流制限値との偏差から交流回転機電圧制限値を算出し、電圧を制限することで、直流電流を制限する。
三相交流モータの駆動システムでは、直流電流の0次成分に、相電流1次成分の6倍の周波数を有する6次成分等の高次成分が重畳する。つまり、直流電流には、電気数周期にわたって一定である0次成分の他、周期的に変動する6次成分等の高次成分が含まれる。この高次成分のピーク値が直流電流のピーク値Idc_pとなる。
また、第1実施形態のモータ制御装置101は、トルクフィードバック制御特有の構成として、dq変換部34、トルク推定部35、減算器36及び制御器37を備えている。
ここで、連続する制御タイミングにおける電圧振幅指令Vampの変化率制限について図2を参照する。図2の横軸は、制御周期ΔTcで連続する制御タイミングt0〜t3を示し、縦軸は、各制御タイミングで算出される電圧振幅指令Vampの値を示す。
Rv1=(Vamp(t1)−Vamp(t0))/ΔTc ・・・(1.1)
Rv2=(Vamp(t2)−Vamp(t1))/ΔTc ・・・(1.2)
Rv3=(Vamp(t3)−Vamp(t2))/ΔTc ・・・(1.3)
なお、電圧振幅指令Vampが減少する場合は、変化率を制限する必要はない。
電圧パルス設定部16は、電圧振幅指令Vampに基づいて、電圧パルスを設定する。電圧パルスのパルス数nは、各相の電気1周期あたりのON/OFF回数で定義される。
直流電流のピーク値Idc_pが制限値Idc_limを超えているとき、電圧パルス設定部16は、直流電流のピーク値Idc_pが制限値Idc_lim以下となるようにパルス数を変更し、電圧パルスを設定する。
ただし、必要以上にパルス数を増加させるとスイッチング損失が増大することとなる。そこで、電圧パルス設定部16は、直流電流のピーク値Idc_pが制限値Idc_lim以下となるまでパルス数を増加させ、それ以上にはパルス数を増加させない。
モータ回転数ωが小さいほど、すなわち低回転であるほど、電気1周期が長くなり高次成分の影響が相対的に大きくなる。そこで、図6(a)に示すように、モータ回転数ωが小さいほど、パルス数nを増加させることが好ましい。
なお、図6(a)、(b)の特性線は相関の方向のみを示すものであり、線形、反比例形等の具体的な特性プロファイルは、図示の例に限らない。
ゲート信号生成部18は、電圧パルスの電圧振幅指令Vamp、及び電圧位相Vθに基づいて、PWM制御等により、インバータ60を操作するゲート信号を生成する。このとき、ゲート信号生成部18は、電気角θeを用いて、電圧指令を三相指令値に座標変換する。ゲート信号は、各相上下アームのスイッチング素子に対応するUH、UL、VH、VL、WH、WLの6信号からなる。各スイッチング素子は、ゲート信号に従って、ON/OFF動作する。
これにより、第1実施形態の効果[1]として、モータ80のトルクを低下させることなく、直流電流Idcを適切に制限することができる。よって、ハイブリッド自動車の主機モータに適用される場合、ドライバビリティの低下を回避することができる。
dq変換部34は、電流センサ71、72から相電流検出値を取得する。本実施形態では、V相、W相に設けられた電流センサ71、72からV相電流Iv及びW相電流Iwの検出値が入力され、残るU相の電流Iuをキルヒホッフの法則に基づいて推定している。他の実施形態では、どの二相の電流を検出してもよく、三相の電流を検出してもよい。或いは、一相の電流検出値に基づいて他の二相の電流を推定する技術を採用してもよい。
dq変換部34は、電気角θeを用いて、三相電流検出値Iu、Iv、Iwをdq軸電流Id、Iqにdq変換する。
T_est=pm×{Iq×φα+(Ld−Lq)×Id×Iq}・・・(2)
ただし、
pm:電動機の極対数
φα:永久磁石の電機子鎖交磁束
Ld、Lq:d軸インダクタンス、q軸インダクタンス
「電圧位相演算部」としての制御器37は、トルク偏差をゼロに収束させるように、PI制御演算等によって電圧位相Vθを算出する。こうして第1実施形態では、モータ80の出力トルクがトルク指令T*と一致するように算出された電圧位相Vθがゲート信号生成部18に入力される。
そのため、直流電流のピーク値Idc_pが制限値Idc_limを超えているとき、電圧パルス設定部16によるパルス数nの調整のみでは、直流電流のピーク値Idc_pを十分に下げることができず、電圧振幅指令Vampを低下させざるを得ない場合が想定される。
図8に示すdq軸電流座標において、上記の式(2)に基づく等トルクラインは、dq軸電流Id、Iqの関数として規定される。また、位相操作前の電圧指令をV* 1、位相操作後の電圧指令をV* 2とすると、電圧指令ベクトルV* 1、V* 2と対応する電流指令ベクトルI* 1、I* 2の振幅Iamp1、Iamp2が同心の楕円で表される。
電圧指令ベクトルについて言うと、電圧指令ベクトルV* 1からV* 2に電圧位相Vθを進角させることにより、電圧振幅指令をVamp1からVamp2に低下させつつ、出力トルクを同等に維持することができる。
Idc2≦Idc_lim<Idc1 ・・・(3.1)
図9(b)において、パルス1による出力トルクT1とパルス2による出力トルクT2との関係は、式(3.2)で示される。
T2=T1 ・・・(3.2)
また、図9(a)より、電圧位相Vθの進角限界値θMAXは、直流電流制限値Idc_limに基づいて決定される。
S01では、電圧パルス設定部16は、電圧振幅算出部13で算出された電圧振幅指令Vampに基づき電圧パルスを初期設定する。S02では、直流電流センサ55が直流電流Idcを検出し、その検出値を直流電流制限判定部15が取得する。
第2実施形態による回転機の制御装置について、図11〜図13を参照して説明する。
第2実施形態のモータ制御装置102は、第1実施形態の構成に加え、高次成分抽出部25、減算器26、制御器27、及び減算器28をさらに有している。
高次成分抽出部25は、直流電流の0次成分に重畳した高次成分Idc_hをハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ等によって抽出する。図7に示すように、三相交流モータ80を駆動するシステムにおける主な高次成分は、相電流1次成分の6倍の周波数を有する6次成分である。なお、6次成分の他に、12次、18次等の高次成分も含まれるが、ピーク値Idc_pを低減させる目的からは6次成分を抽出すれば十分である。
図12に、高次成分の1周期を4分割した演算タイミングで電圧位相Vθを操作する例を示す。このように、高次成分の周期に対しk分の1の周期で電圧位相Vθを操作することにより、高次成分を適切に相殺する方向に電圧位相Vθを操作することができる。
S05では、高次成分抽出部25にて、直流電流Idcに含まれる高次成分Idc_hをハイパスフィルタで抽出する。S06では、減算器26にて、抽出した高次成分Idc_hと直流電流センサ55のゼロ点との差分を算出する。
このように第2実施形態では、第1実施形態の作用効果に加え、更に、直流電流のピーク値Idc_pが制限値Idc_limを超えたとき、高次成分の周期に対しk分の1の周期で電圧位相補正量Vθ_compを減算することにより電圧位相Vθを操作する。これにより、直流電流Idcに含まれる高次成分を適切に減らし、直流電流Idcを制限することができる。
第3実施形態による回転機の制御装置について、図14を参照して説明する。
第3実施形態のモータ制御装置103は、電流フィードバック制御方式の制御装置である。第1実施形態と異なる構成として、電流指令演算部31、減算器32、制御器33、電圧振幅位相算出部14を有している。一方、第1実施形態が有するトルク推定部35、減算器36を有していない、
減算器32は、dq変換部34からフィードバックされるdq軸電流Id、Iqをdq軸電流指令値Id*、Iq*から減算してdq軸電流偏差を算出する。
制御器33は、dq軸電流偏差をゼロに収束させるように、PI制御演算等によってdq軸電圧指令値Vd*、Vq*を演算する。
[Vd*>0、Vq*≧0] Vθ=arctan(Vq*/Vd*)・・・(4.1)
[Vd*<0] Vθ=arctan(Vq*/Vd*)+180 ・・・(4.2)
[Vd*>0、Vq*<0] Vθ=arctan(Vq*/Vd*)+360
・・・(4.3)
第3実施形態による電圧パルスの設定は、要求トルクを満足するように電圧位相Vθを操作する点を除き、第1実施形態と同様である。すなわち、図10にてS01からS04までのステップが実行される。したがって、第1実施形態の効果[1]を共通に奏する。
(ア)電圧パルス設定部16による電圧パルス生成法として、図5では、正弦波PWM制御における電圧指令とキャリアとの比較による方法を示している。この方法は、正弦波PWM制御に限らず、図15に示す過変調PWM制御や矩形波制御にも適用可能である。
また、キャリア比較による電圧パルス生成法の他、各パルスのエッジタイミング及びパルス幅(ON期間)を規定したパルスパターンを予め複数種類記憶しておき、モータ80の動作条件に応じて最適なパルスパターンを選択する等の方法を採用してもよい。
[トルクT]
dq軸電流から算出する推定トルクに代えて、トルクセンサでモータトルクを直接検出してもよい。また、電流振幅から、おおよそのトルクを推定してもよい。
ハイブリッド自動車では、エンジン回転数や車軸(車輪又はドライブシャフト)の回転数等、モータ80の回転が伝達される各部の回転数を取得し、ギア比を用いてモータ回転数ωに換算してもよい。
[電源電圧Vdc]
バッテリ50のSOC(充電率)から換算してもよい。また、バッテリ50の放電能力は「出力可能な電流の総量」であるため、入出力される直流電流Idcの積算値に基づいて、現在の電源電圧Vdcを推定することができる。
(エ)本発明の制御対象とする回転機は、三相回転機に限らず、四相以上の多相回転機であってもよい。p相の回転機に適用される場合、相間での対称性を担保するため、パルス数nはpの倍数とすることが好ましい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
13、14・・・電圧振幅算出部、
15・・・直流電流制限判定部、
16・・・電圧パルス設定部、
18・・・ゲート信号生成部、
37・・・制御器(電圧位相演算部)、
50・・・バッテリ(直流電源)、
60・・・インバータ(電力変換器)、
80・・・モータ(回転機)、
90・・・モータ駆動システム(回転機駆動システム)。
Claims (12)
- 直流電源(50)の直流電圧を電力変換器(60)で交流電圧に変換し回転機(80)に印加する回転機駆動システム(90)に用いられ、前記電力変換器を操作して前記回転機の通電を制御する回転機の制御装置であって、
少なくとも前記回転機のトルク指令に基づいて電圧振幅指令を算出する電圧振幅算出部(13、14)と、
前記直流電源と前記電力変換器との間に流れる直流電流のピーク値が所定の直流電流制限値以下であるか否かを判定する直流電流制限判定部(15)と、
直流電流のピーク値が前記直流電流制限値以下となるように、各相の電気1周期あたりのON/OFF回数であるパルス数を有する電圧パルスを前記電圧振幅指令に基づいて設定する電圧パルス設定部(16)と、
前記電圧パルス設定部が設定した前記電圧パルスに基づいて、前記電力変換器を操作するゲート信号を生成するゲート信号生成部(18)と、
を備えることを特徴とする回転機の制御装置。 - 前記電圧パルス設定部は、前記回転機のトルク、回転数、又は、前記電力変換器に入力される電源電圧のうち一つ以上の値に応じて、前記電圧パルスのパルス数を変更することを特徴とする請求項1に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧パルス設定部は、前記回転機の回転数が小さいほど前記電圧パルスのパルス数を増加させることを特徴とする請求項2に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧パルス設定部は、前記電源電圧が高いほど前記電圧パルスのパルス数を増加させることを特徴とする請求項2または3に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧パルス設定部は、前記電圧パルスのパルス数を奇数に設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転機の制御装置。
- 前記回転機のトルクをトルク指令に追従させるように電圧位相(Vθ)を演算し、前記ゲート信号生成部に出力する電圧位相演算部(37)をさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧位相の進角限界値は、前記直流電流制限値に基づいて決定されることを特徴とする請求項6に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧振幅算出部は、前記電圧振幅指令を増加させる場合の変更率に上限を設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の回転機の制御装置。
- 前記電圧振幅指令の上限変化率は、トルク指令の変化率以下に設定されることを特徴とする請求項8に記載の回転機の制御装置。
- 直流電流に含まれる高次成分を解析する高次成分抽出部(25)をさらに有し、
前記直流電流制限判定部によって直流電流のピーク値が前記直流電流制限値を超えていると判定されたとき、
前記高次成分抽出部は、抽出した前記高次成分に応じて電圧位相を操作することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転機の制御装置。 - 前記高次成分抽出部は、前記高次成分の周期に対しk分の1の周期(kは自然数)で電圧位相を操作することを特徴とする請求項10に記載の回転機の制御装置。
- 前記回転機は三相交流回転機であり、
前記高次成分は6次成分であることを特徴とする請求項10または11に記載の回転機の制御装置。
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