JP2017002335A - アルミニウム合金製鋳物部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、Mg:0.2%以上0.4%以下、Si:1.2%以上5.0%以下を含有し、かつ、全Si量からMg2Siに含まれるSi量を減じた値を過剰Si量とする所定の関係式を満足し、かつ、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Mg−Si系のアルミニウム合金製鋳物部材の製造方法であって、鋳造された鋳造物の温度を500〜560℃の溶体化温度に1Hr以上保持する処理である溶体化工程と、溶体化工程で得られた溶体化処理物を焼入れ処理する焼入れ工程とを備え、焼入れ工程は、溶体化処理物を、溶体化温度より低く、かつ、常温より高い温度である焼入れ温度まで急冷して当該焼入れ温度に所定時間保持し、その後、常温まで冷却する2段階の焼入れ処理である。
【選択図】図1
Description
7.7×[過剰Si量]+9×[Mg2Si量]≦14
80×[過剰Si量]+55×[Mg2Si量]≧112
かつ、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Mg−Si系のアルミニウム合金製鋳物部材の製造方法であって、鋳造された鋳造物の温度を500〜560℃の溶体化温度に1Hr以上保持する処理である溶体化工程と、前記溶体化工程で得られた溶体化処理物を焼入れ処理する焼入れ工程とを備え、前記焼入れ工程は、前記溶体化処理物を、前記溶体化温度より低く、かつ、常温より高い温度である焼入れ温度まで急冷して当該焼入れ温度に所定時間保持し、その後、常温まで冷却する2段階の焼入れ処理であることを特徴とする、鋳物部材の製造方法を提供する。
本実施形態で用いられるアルミニウム合金(以下、「本アルミニウム合金」と称する)は、Al−Mg−Si系のアルミニウム合金であって、質量%で、Mg:0.2%以上0.4%以下、Si:1.2%以上5.0%以下、Cu:0.4%以上0.6%以下、Ti:0.020%以上0.035%以下を含有し、かつ、全Si量からMg2Siに含まれるSi量を減じた値を過剰Si量とする下記の式(1)、(2)を満足し、
7.7×[過剰Si量]+9×[Mg2Si量]≦14…(1)
80×[過剰Si量]+55×[Mg2Si量]≧112…(2)
かつ、残部がAl及び不可避的不純物よりなるものである。なお、以下の説明では、化学組成を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
上記溶体化処理(溶体化工程)は、上記鋳造物の温度を500〜560℃の溶体化温度に1Hr以上保持する処理であり、上記溶体化温度に保持する時間は、好ましくは3〜8Hrとされる。鋳造物を500℃以上の溶体化温度に加熱し且つその温度に1Hr以上保持することで、溶質元素を母相中に拡散および固溶させることができるが、溶体化温度が500℃未満であるか、もしくは、その温度に保持する時間が1Hr未満である場合には、溶質元素の固溶が不充分となる。また、溶体化温度が560℃を超える温度である場合には、共晶融解が生じて強度低下を生じる可能性がある。
上記焼入れ処理(焼入れ工程)は、溶体化処理で得られた溶体化処理物を、上記溶体化温度より低く、かつ、常温より高い温度である焼入れ温度まで急冷して当該焼入れ温度に所定時間保持し(図1における焼入れ温度保持領域H)、その後、常温まで冷却する2段階の焼入れ処理である。
人工時効処理(人工時効工程)は、上記焼入れ処理で得られた焼入れ処理物を、120〜160℃の温度にて0〜6Hr加熱する処理である。この人工時効処理により、母相に固溶した溶質元素が析出し、この析出過程において上記有効クラスタがβ”相に遷移する(β”相が析出する)。β”相は、人工時効およびその後の自然時効により、β’相、β相へと順次遷移する。β相の析出により、アルミニウム合金製鋳物部材の強度および伸びが向上する。
[製造方法]
下記の表1に示される化学成分よりなる本アルミニウム合金を電気炉によって溶解し、これを、溶融温度740℃、金型温度200℃の条件下で、金型重力鋳造法に基づき、JISH5202に記載の金型試験片鋳型に鋳込むことにより実施例1〜4に係る鋳造物を得た。
[製造方法]
実施例1〜4と同様の方法で得た鋳造物に対し、図2および下記の表3に示される熱処理(溶体化処理、焼入れ処理、および人工時効処理)を施すことにより、比較例1,2に係るアルミニウム合金製鋳物部材を得た。
実施例1〜4および比較例1,2の製造方法で得られたアルミニウム合金製鋳物部材の中央からJIS14A号の引張試験片を採取し、島津製作所製オートグラフを用いて、常温(室温)の下で試験速度3mm/minにて引張試験を実施し、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、および伸び(%)を測定した。試験結果を図3に示す。
図3に示されるように、T6処理がなされた比較例1は、強度重視の観点から人工時効温度が175℃と高く設定されており、比較例2は伸び重視の観点から人工時効温度が140℃と低く設定されている。このため、比較例1では強度(引張強度)が高く、比較例2では伸びが高い結果が得られている。しかしながら、T6処理がなされたものは強度と伸びがトレードオフの関係にあるため、比較例1では伸びが低く、比較例2では強度が低くなっており、いずれの時効処理温度でも、強度と伸びの両方を高めることはできていない。特に、伸びを重視した比較例2では、強度(特に耐力)の低下が著しい。
Al−Si−Mg系のアルミニウム合金では、溶体化および焼入れ後、常温(室温)に一定期間放置(自然時効)すると、人工時効後の強度が減少することが知られており(いわゆる「負の効果」)、この負の効果を解消するための研究が盛んに行われている。近年の析出過程の研究から、溶体化処理後、母相内に比較的低温で生成されるクラスタには、図4に示されるように、常温(室温)〜70℃で生成される有害クラスタ(I)と、70〜130℃付近で生成される有効クラスタ(II)の2種類のMg−Siナノクラスタがあり、有効クラスタ(II)と比べて熱的に安定な有害クラスタ(I)の量が優位にあると、強化相(時効硬化に寄与する相)であるβ”相の形成が阻害されると言われている。従来のT6処理では、溶体化処理物は水冷により溶体化温度から常温まで一気に急冷されるため、図4に示されるように、焼入れ時の冷却過程(温度変化および時間経過)を示す冷却経路L1が有効クラスタ(II)の生成領域を通過せず、その結果、有効クラスタ(II)がほとんど生成されず、常温に到達したときに有害クラスタ(I)が数多く生成される。その結果、有害クラスタ(I)の量が有効クラスタ(II)の量よりも優位となり、焼入れ処理後の人工時効時にβ”相の形成が阻害されて、機械的特性の改善が図れないものと推察される。
2段階焼入れ処理における焼入れ温度の適正化を図るために、上記実施例4における熱処理条件の一部を変更した実施例5,6を作製し、以下の試験を行った。
図5に示されるように、実施例5に係るアルミニウム合金製鋳物部材の製造方法は、焼入れ温度を180℃に設定した点以外は、上記実施例4と同じ条件とした。
実施例5,6に係るアルミニウム合金製鋳物部材について、実施例1〜4と同じ方法で引張試験を実施した。試験結果を図6に示す。なお、実施例5,6との比較のために、上記実施例4についての試験結果も図6に示した。
図6に示されるように、焼入れ温度を一般的な時効処理の温度である180℃に設定した場合には、実施例4と比べて強度は高いものの伸びの改善は見られなかった。これは、焼入れ温度が図4に示されるβ”相のノーズ温度に相当するため、有効クラスタ(II)の生成が少なかったためと考える。
L2 2段階焼入れ処理(焼入れ温度140℃)での冷却過程を示す冷却経路
Claims (5)
- 質量%で、Mg:0.2%以上0.4%以下、Si:1.2%以上5.0%以下を含有し、かつ、全Si量からMg2Siに含まれるSi量を減じた値を過剰Si量とする下記の関係式を満足し、
7.7×[過剰Si量]+9×[Mg2Si量]≦14
80×[過剰Si量]+55×[Mg2Si量]≧112
かつ、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Mg−Si系のアルミニウム合金製鋳物部材の製造方法であって、
鋳造された鋳造物の温度を500〜560℃の溶体化温度に1Hr以上保持する処理である溶体化工程と、
前記溶体化工程で得られた溶体化処理物を焼入れ処理する焼入れ工程とを備え、
前記焼入れ工程は、前記溶体化処理物を、前記溶体化温度より低く、かつ、常温より高い温度である焼入れ温度まで急冷して当該焼入れ温度に所定時間保持し、その後、常温まで冷却する2段階の焼入れ処理であることを特徴とする、鋳物部材の製造方法。 - 前記アルミニウム合金は、質量%で、Cu:0.4%以上0.6%以下、Ti:0.020%以上0.035%以下をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋳物部材の製造方法。
- 前記焼入れ工程は、前記焼入れ温度である120〜160℃に加熱されたソルト炉または流動層炉により、前記溶体化処理物を前記焼入れ温度まで急冷して当該焼入れ温度に2Hr以下の時間保持する前段処理と、当該前段処理で得られた前段処理物を常温まで冷却する後段処理とからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の鋳物部材の製造方法。
- 前記焼入れ工程で得られた焼入れ処理物を、120〜160℃の温度にて0〜6Hr加熱する処理である人工時効工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の鋳物部材の製造方法。
- 前記溶体化処理工程は、前記鋳造物の温度を前記溶体化温度に3〜8Hr保持する処理であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の鋳物部材の製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN117004851A (zh) * | 2023-08-10 | 2023-11-07 | 西安西开精密铸造有限责任公司 | 一种高导电率铝合金铸件及其制备方法 |
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JPH06240424A (ja) * | 1993-02-18 | 1994-08-30 | Sky Alum Co Ltd | 成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 |
US20100101691A1 (en) * | 2008-10-23 | 2010-04-29 | Gm Global Technology Operations, Inc. | Direct quench heat treatment for aluminum alloy castings |
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JP2014114482A (ja) * | 2012-12-10 | 2014-06-26 | Mazda Motor Corp | アルミニウム合金およびアルミニウム合金製鋳物 |
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