JP2017001901A - 炭化物接合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭化構造物への接合剤の塗布を必要とせず、接合強度に優れた炭化物接合体及びその製造方法を提供すること。【解決手段】積層工程、成形工程、及び加熱工程を行うことにより、炭化構造物同士が一体的に接合された炭化物接合体を製造方法、及びこの製造方法によって得られる炭化物接合体である。積層工程においては、熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなる樹脂フィルムAと、熱分解温度以下に融点を有する樹脂からなる樹脂フィルムBとからなる積層フィルム2を作製する。成形工程においては、積層フィルム2を成形して成形体3を作製する。加熱工程においては、成形体3同士を当接させた状態で加熱を行うことにより、成形体3同士を接合させると共に、成形体3を炭化させる。【選択図】図6
Description
本発明は、炭化構造物同士が接合された炭化物接合体及びその製造方法に関する。
炭化構造物は、強度が高く、耐熱性や熱伝導性にも優れている。そのため、炭化構造物は、高温度で使用される用途、高強度が要求される用途、熱伝導性が要求される用途等への適用が想定される。炭化構造物を様々な用途に適用するためには、複雑な形状への対応が望まれており、複数の炭化構造物を接着剤等により互いに接合していた。ところが、接着剤による接合方法においては、接着剤を塗布するための工程が必要であるため、生産性が低いという問題があった。また、接着剤による接合は、強度が低く、耐久性が悪いという問題があった。そこで、例えば特許文献1のように、黒鉛材料等の炭素質材料を接合剤により接合し、焼成により接合剤を炭化させる技術が開発されている。
しかしながら、接合剤を用いた接合においては、接合剤部分と炭化構造物との間に界面が生じ易いため、接合強度が不十分であるという問題がある。また、炭化構造物に接合剤を塗布する工程が必要となるため、接合体を得るための製造工程が増え、生産性が低下するという問題がある。また、接合剤の管理が必要となるという観点からも、生産性の低下や製造コストの増大という問題がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、炭化構造物への接合剤の塗布を必要とせず、接合強度に優れた炭化物接合体及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、炭化構造物同士が一体的に接合された炭化物接合体の製造方法において、
樹脂フィルムAと、該樹脂フィルムAを挟む樹脂フィルムBとからなる積層フィルムを作製する積層工程と、
上記積層フィルムを成形して成形体を作製する成形工程と、
複数の上記成形体同士を当接させた状態で加熱することにより、上記成形体同士を接合させると共に、該成形体を炭化させる加熱工程とを有し、
上記樹脂フィルムAは、該樹脂フィルムAの熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなり、上記樹脂フィルムBは、該樹脂フィルムBの熱分解温度以下に融点を有する樹脂からなることを特徴とする炭化物接合体の製造方法にある。
樹脂フィルムAと、該樹脂フィルムAを挟む樹脂フィルムBとからなる積層フィルムを作製する積層工程と、
上記積層フィルムを成形して成形体を作製する成形工程と、
複数の上記成形体同士を当接させた状態で加熱することにより、上記成形体同士を接合させると共に、該成形体を炭化させる加熱工程とを有し、
上記樹脂フィルムAは、該樹脂フィルムAの熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなり、上記樹脂フィルムBは、該樹脂フィルムBの熱分解温度以下に融点を有する樹脂からなることを特徴とする炭化物接合体の製造方法にある。
本発明の他の態様は、上記製造方法によって得られた炭化物接合体にある。
上記製造方法においては、上記積層工程、上記成形工程、及び上記加熱工程を行うことにより、炭化物接合体を製造する。積層工程においては、熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなる樹脂フィルムAと、熱分解温度以下に融点を有する樹脂からなる樹脂フィルムBとからなる積層フィルムを作製する。積層フィルムにおいては、樹脂フィルムAが樹脂フィルムBによって挟まれている。次いで、成形工程においては、積層フィルムを所望の形状に成形して成形体を得る。また、加熱工程においては、複数の成形体同士を当接させた状態で加熱する。この加熱時に、熱分解温度以下に融点を有する樹脂フィルムBが溶融することにより、成形体同士が当接部において接合される。さらに加熱時には、樹脂フィルムA及び樹脂フィルムBからなる成形体を炭化させる。これにより、炭化構造物同士が一体的に接合した炭化物接合体を得ることができる。
上記製造方法においては、熱分解温度以下に融点を有する樹脂フィルムBの加熱工程時における溶融を利用して接合を行うことができる。そのため、接合剤等を用いることなく接合を行うことができる。また、樹脂フィルムAは、上述のように熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなるため、加熱工程においても樹脂フィルムAが成形後の形状を維持することができる。したがって、所望形状の炭化物接合体を得ることができる。さらに、加熱工程においては接合状態を保ちつつ炭化させることができるため、接合剤等を用いた接合に比べてより優れた接合強度の実現が可能になる。
上記製造方法により得られる炭化物接合体は、炭化構造物への接合剤の塗布を必要とせずに作製が可能であり、優れた接合強度を示すことができる。さらに、炭化構造物同士の接触部の面積が小さくても、高い接合強度を発揮することができる。また、炭化物接合体においては、炭化構造物だけでなく、接合部分も炭化物によって形成されている。そのため、炭化物接合体は、接合部分だけでなく全体の強度も高く、さらに熱伝導性にも優れている。
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
積層工程においては、上述のように熱分解温度及び融点に基づいて、樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとを選択的に組み合わせて積層フィルムを作製する。樹脂フィルムAは、熱分解温度TdA以下に融点TmAを有さない樹脂からなる。具体的には、樹脂フィルムAは、例えばTdA<TmAという関係を満足する樹脂(すなわち、非熱可塑性樹脂)、あるいはTmAを有さない樹脂(すなわち、熱硬化性樹脂)からなる。非熱可塑性樹脂の方が熱硬化性樹脂よりも炭化後の熱伝導率が高くなるため、樹脂フィルムAは非熱可塑性樹脂からなることが好ましい。また、樹脂フィルムAが融点TmAを有する場合には、TmAはTdAよりも十分に高いことが好ましい。この場合には、加熱工程における成形体の変形をより確実に防止することができ、所望形状の炭化物接合体をより確実に得ることが可能になる。同様の観点から、樹脂フィルムAが融点TmAを有する場合には、TmA−TdA≧50を満足することがより好ましく、TmA−TdA≧100を満足することがさらに好ましく、TmA−TdA≧200を満足することがさらにより好ましい。また、樹脂フィルムAが融点を有さない場合にも、加熱工程における成形体の変形をより確実に防止することができ、所望形状の炭化物接合体をより確実に得ることが可能になる。
積層工程においては、上述のように熱分解温度及び融点に基づいて、樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとを選択的に組み合わせて積層フィルムを作製する。樹脂フィルムAは、熱分解温度TdA以下に融点TmAを有さない樹脂からなる。具体的には、樹脂フィルムAは、例えばTdA<TmAという関係を満足する樹脂(すなわち、非熱可塑性樹脂)、あるいはTmAを有さない樹脂(すなわち、熱硬化性樹脂)からなる。非熱可塑性樹脂の方が熱硬化性樹脂よりも炭化後の熱伝導率が高くなるため、樹脂フィルムAは非熱可塑性樹脂からなることが好ましい。また、樹脂フィルムAが融点TmAを有する場合には、TmAはTdAよりも十分に高いことが好ましい。この場合には、加熱工程における成形体の変形をより確実に防止することができ、所望形状の炭化物接合体をより確実に得ることが可能になる。同様の観点から、樹脂フィルムAが融点TmAを有する場合には、TmA−TdA≧50を満足することがより好ましく、TmA−TdA≧100を満足することがさらに好ましく、TmA−TdA≧200を満足することがさらにより好ましい。また、樹脂フィルムAが融点を有さない場合にも、加熱工程における成形体の変形をより確実に防止することができ、所望形状の炭化物接合体をより確実に得ることが可能になる。
樹脂フィルムBは、熱分解温度TdB以下に融点TmBを有する樹脂からなる。具体的には、樹脂フィルムBは、例えばTdB≧TmBという関係を満足する樹脂(熱可塑性樹脂)からなる。TmBは、TdBよりも十分に低いことが好ましく、TdB−TmB≧10を満足することがより好ましく、TdB−TmB≧20を満足することがさらに好ましく、TdB−TmB≧50を満足することがさらにより好ましい。この場合には、炭化の前に樹脂フィルムBを確実かつ十分に溶融させることができ、より十分な接合が可能になる。また、加熱工程において、樹脂フィルムA及び樹脂フィルムBが炭化する温度以上の最高温度まで所定の昇温速度で昇温させても、溶融による接合及び炭化をより確実に行うことができるため、加熱工程における温度制御が容易になる。また、樹脂フィルムBの融点TmBは、樹脂フィルムAの熱分解温度TdAとの関係において、TmB≦TdAという関係を満足することが好ましく、TdA−TmB≧10を満足することがより好ましく、TdA−TmB≧20を満足することがさらに好ましく、TdA−TmB≧50を満足することがさらにより好ましい。この場合には、樹脂フィルムAの炭化開始前に、樹脂フィルムBの溶融による接合が可能になる。そのため、炭化時に隙間や界面が形成されにくいという利点がある。なお、炭化開始前に成形体同士を十分に接合させるという観点からは、TmBは500℃以下であることが好ましく、450℃以下であることがより好ましく、400℃以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、熱分解温度とは、不活性ガス雰囲気中あるいは真空中における熱重量(TG)測定により5%の重量減少が観測された温度である。なお、ダイナミックレート法においては、重量変化の度合いに従って加熱速度をコントロールし、分解能が向上する測定モードを選択する。具体的な測定装置及び分析条件は次の通りである。
装置:ティー・エイ・インスツルメント製熱重量測定装置
パン:アルミパン
試料重量:3mg
昇温開始温度:30℃
測定モード:ダイナミックレート法
雰囲気:窒素
装置:ティー・エイ・インスツルメント製熱重量測定装置
パン:アルミパン
試料重量:3mg
昇温開始温度:30℃
測定モード:ダイナミックレート法
雰囲気:窒素
また、本明細書において、融点は、示差走査熱量(DSC)分析によって測定される値である。具体的な分析装置及び分析条件は次の通りである。
装置:ティー・エイ・インスツルメント製示差走査熱量分析装置
パン:アルミパン
試料重量:2〜3mg
昇温開始温度:30℃
昇温速度:1回目;10℃/min、2回目;5℃/min
雰囲気:窒素
装置:ティー・エイ・インスツルメント製示差走査熱量分析装置
パン:アルミパン
試料重量:2〜3mg
昇温開始温度:30℃
昇温速度:1回目;10℃/min、2回目;5℃/min
雰囲気:窒素
樹脂フィルムA及び樹脂フィルムBとしては、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリオキサゾール等からなるフィルムを用いることができる。樹脂フィルムの熱分解温度及び融点は、樹脂フィルム中の樹脂を構成するモノマー成分の種類や結合の仕方等によって変化する。樹脂フィルムA及び樹脂フィルムBとしては、上述の熱分解温度及び融点の関係を満足する組み合わせを適宜選択することができる。
好ましくは、樹脂フィルムA及び樹脂フィルムBは、ポリイミドからなることがよい。この場合には、十分な炭化をより確実に行うことができ、強度及び熱伝導性に優れた炭化物接合体をより確実に得ることができる。ポリイミドは、例えばテトラカルボン酸及び/又はその誘導体と、ジアミンとを原料に用いて合成することができる。原料を適宜選択することにより、所望の組み合わせの融点及び熱分解温度を有する樹脂フィルムA及び樹脂フィルムBを得ることができる。
加熱工程における加熱温度(最高温度)Thは、樹脂フィルムBの融点TmB℃以上であり、かつ樹脂フィルムAの熱分解温度TdA℃及び樹脂フィルムBの熱分解TdB℃を超える温度であることが好ましい。より好ましくは、Th>TdA>TmB、Th>TdB>TmBを満足することが好ましい。この場合には、加熱温度Thに到達する前に、温度TmB以上で樹脂フィルムBが溶融するため、炭化の前に確実かつ十分な接合が可能になる。また、Thは、TdA及びTdBよりも十分に高い温度であることが好ましい。この場合には、炭化を確実かつ十分に行うことが可能になる。なお、本明細書において、炭化はグラファイト化を含む概念である。すなわち、加熱工程における加熱温度Thを樹脂フィルムが炭化する温度以上にまで高めることにより炭化を行うことができるが、加熱温度をさらに樹脂フィルムがグラファイト化する温度以上に高めることによりグラファイト化を行うことができる。この場合には、炭化構造物だけでなく接合部もグラファイト化された、熱伝導性により優れた炭化物接合体を得ることができる。炭化やグラファイト化のための加熱温度Thは、材料に応じて適宜選択可能である。具体的には、TdA≧TdBの場合には、確実かつ十分に炭化を行うために、Th≧TdA+100であることが好ましく、Th≧TdA+200であることがより好ましく、Th≧TdA+300であることがさらに好ましい。同様の観点から、TdB>TdAの場合には、Th≧TdB+100であることが好ましく、Th≧TdB+200であることがより好ましく、Th≧TdB+300であることがさらに好ましい。なお、樹脂フィルムA及び樹脂フィルムBが例えばポリイミドからなる場合には、好ましくはThを温度700℃以上、より好ましくは800℃以上にすることにより、炭化を確実かつ十分に行うことができる。また、TdA≧TdBの場合には、確実かつ十分にグラファイト化を行うためには、Th≧TdA+1500であることが好ましく、Th≧TdA+2000であることがより好ましい。同様の観点から、TdB>TdAの場合には、Th≧TdB+1500であることが好ましく、Th≧TdB+2000であることがより好ましい。なお、樹脂フィルムA及び樹脂フィルムBが例えばポリイミドからなる場合には、好ましくはThを温度2000℃以上にすることにより、より好ましくは2500℃以上にすることにより、フラファイト化を確実かつ十分に行うことができる。
(実施例1)
本例は、炭化物接合体を製造する例である。図1〜図3に示すごとく、本例の炭化物接合体1は、複数の炭化物構造物11同士を接合してなる熱交換器である。炭化物接合体(熱交換器)1は、炭化物構造物11によって一体的に形成されたチューブ12とタンクヘッダ13とを備えている。同図に示すごとく、炭化物接合体(熱交換器)1においては、2つのタンクヘッダ13はチューブ12によって連結されており、一方のタンクヘッダ13(13a)内の冷媒がチューブ12を通って他方のタンクヘッダ13(13b)へ送られるように構成されている。炭化物接合体1は、積層工程と成形工程と加熱工程とを行うことによって製造される。以下、本例における各工程について詳細に説明する。
本例は、炭化物接合体を製造する例である。図1〜図3に示すごとく、本例の炭化物接合体1は、複数の炭化物構造物11同士を接合してなる熱交換器である。炭化物接合体(熱交換器)1は、炭化物構造物11によって一体的に形成されたチューブ12とタンクヘッダ13とを備えている。同図に示すごとく、炭化物接合体(熱交換器)1においては、2つのタンクヘッダ13はチューブ12によって連結されており、一方のタンクヘッダ13(13a)内の冷媒がチューブ12を通って他方のタンクヘッダ13(13b)へ送られるように構成されている。炭化物接合体1は、積層工程と成形工程と加熱工程とを行うことによって製造される。以下、本例における各工程について詳細に説明する。
[積層工程]
まず、樹脂フィルムAの前駆体として前駆体フィルムAを作製した。具体的には、既知の方法により、ジメチルアセトアミド(DMA)溶媒中において下記式(1)で表されるピロメリット酸二無水物(PMDA)と、下記式(2)で表される4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とを等モルで重合反応させることにより、式(3)で表される構造(nは1以上の整数)を有するポリアミド酸を合成した。ポリアミド酸の合成は、撹拌下において、PMDAとODAとを温度30℃で3時間反応させることにより行った。このようにして、高粘度のポリアミド酸溶液を得た。次いで、ガラス板上でポリアミド酸溶液をシート状に広げ、温度80℃で1時間乾燥させることにより溶媒を蒸発させた。これにより、図4(a)に示すごとく、式(3)で表される構造のポリアミド酸からなる前駆体フィルムA210をガラス板90上に形成した。
まず、樹脂フィルムAの前駆体として前駆体フィルムAを作製した。具体的には、既知の方法により、ジメチルアセトアミド(DMA)溶媒中において下記式(1)で表されるピロメリット酸二無水物(PMDA)と、下記式(2)で表される4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とを等モルで重合反応させることにより、式(3)で表される構造(nは1以上の整数)を有するポリアミド酸を合成した。ポリアミド酸の合成は、撹拌下において、PMDAとODAとを温度30℃で3時間反応させることにより行った。このようにして、高粘度のポリアミド酸溶液を得た。次いで、ガラス板上でポリアミド酸溶液をシート状に広げ、温度80℃で1時間乾燥させることにより溶媒を蒸発させた。これにより、図4(a)に示すごとく、式(3)で表される構造のポリアミド酸からなる前駆体フィルムA210をガラス板90上に形成した。
また、上述のODAの代わりに、下記の式(4)で表される1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いた点を除いては、上記前駆体フィルムAと同様の操作を行うことにより、図4(b)に示すごとく、下記の式(5)で表される構造(nは1以上の整数)を有するポリアミド酸からなる前駆体フィルムB220をガラス板90上に形成した。
次に、図4(c)に示すごとく、前駆体フィルムA210の両面に前駆体B220を貼り合わせることにより、前駆体の積層フィルム20を得た。前駆体の積層フィルム20においては、前駆体フィルムA210が2枚の前駆体フィルムB220によって挟まれている。次いで、前駆体の積層フィルム20を加熱した。加熱は、積層フィルム20を、温度100℃で1時間保持し、次いで温度200℃で1時間保持し、さらに温度300℃で1時間保持することにより行った。この加熱により、前駆体フィルムA210及び前駆体フィルムB220中のポリアミド酸の脱水反応が起こり、ポリイミドが生成する。このようにして、下記式(6)で表される構造(nは1以上の整数)を有するポリイミドからなる樹脂フィルムA21と、この樹脂フィルムAを挟むと共に下記式(7)で表される構造(nは1以上の整数)を有するポリイミドからなる樹脂フィルムB22とからなる積層フィルム2を得た(図5参照)。なお、本例における樹脂フィルムA21の熱分解温度TdAは500℃であり、融点TmAは熱分解温度TdAを超える温度にあり、理論値がするものの測定はできない。また、樹脂フィルムB22の熱分解温度TdBは500℃であり、融点TmBは320℃である。
[成形工程]
次に、積層フィルム2の成形を行った。具体的には、図6に示すごとく、ホットプレス成形により、積層フィルム2にチューブを形成するための複数の溝31を形成し、成形体3を得た。ホットプレス成形は、例えば温度200〜400℃の金型91を用いて行うことができる。なお、図示を省略するが、積層フィルム2には、成形時に、図6の紙面と垂直な方向における溝31の両端にタンクを形成するための窪みも形成される。また、図6においては、図面作成の便宜のため、積層フィルム2及び成形体3の断面を単層で示しているが、実際には図5に示すごとく樹脂フィルムA21及び樹脂フィルムB22とからなる3層構造を示す。
次に、積層フィルム2の成形を行った。具体的には、図6に示すごとく、ホットプレス成形により、積層フィルム2にチューブを形成するための複数の溝31を形成し、成形体3を得た。ホットプレス成形は、例えば温度200〜400℃の金型91を用いて行うことができる。なお、図示を省略するが、積層フィルム2には、成形時に、図6の紙面と垂直な方向における溝31の両端にタンクを形成するための窪みも形成される。また、図6においては、図面作成の便宜のため、積層フィルム2及び成形体3の断面を単層で示しているが、実際には図5に示すごとく樹脂フィルムA21及び樹脂フィルムB22とからなる3層構造を示す。
[加熱工程]
次に、複数の成形体3同士を積層すると共に当接させた。このとき、図6に示すように、2つの成形体3における溝31同士が対向し、対向する溝31によって形成されるチューブ形状の位置が交互に配置されるように複数の成形体3を積層した。なお、この積層により、チューブを形成するための溝31の両端には、上述の窪みによってタンク形状が形成されており、タンク同士が相互に当接している(図示略)。このように、積層後の成形体3は、互いに少なくとも部分的に当接しており、当接部32が形成されている。
次いで、積層後の成形体3を加熱した。具体的には、所定の昇温速度で最高温度800℃まで昇温させ、この最高温度で保持することにより加熱を行った。この加熱により、成形体3同士が当接部32において接合すると共に、接合した成形体3が炭化する。このようにして、熱交換器として用いられる炭化物接合体1を得た(図1〜図3参照)。
次に、複数の成形体3同士を積層すると共に当接させた。このとき、図6に示すように、2つの成形体3における溝31同士が対向し、対向する溝31によって形成されるチューブ形状の位置が交互に配置されるように複数の成形体3を積層した。なお、この積層により、チューブを形成するための溝31の両端には、上述の窪みによってタンク形状が形成されており、タンク同士が相互に当接している(図示略)。このように、積層後の成形体3は、互いに少なくとも部分的に当接しており、当接部32が形成されている。
次いで、積層後の成形体3を加熱した。具体的には、所定の昇温速度で最高温度800℃まで昇温させ、この最高温度で保持することにより加熱を行った。この加熱により、成形体3同士が当接部32において接合すると共に、接合した成形体3が炭化する。このようにして、熱交換器として用いられる炭化物接合体1を得た(図1〜図3参照)。
本例の製造方法においては、上述のように積層工程において、熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなる樹脂フィルムA21と、熱分解温度以下に融点を有する樹脂からなる樹脂フィルムB22とからなる積層フィルム2を作製している。次いで、成形工程においては、積層フィルム2を所望の形状に成形して成形体3を得る。さらに、加熱工程においては、2以上の成形体3同士を当接させた状態で加熱を行う。したがって、熱分解温度以下に融点を有する樹脂フィルムB22の加熱工程時における溶融を利用して接合を行うことができるため、本例の製造方法においては接合時に接合剤等を用いる必要がない。
また、樹脂フィルムA21は、上述のように熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなるため、加熱工程における樹脂フィルムAの変形を防止することができる。したがって、樹脂フィルムB22が溶融しても2枚の樹脂フィルムの間に存在する樹脂フィルムA21が成形後の形状を維持することができるため、加熱工程後に所望形状の炭化物接合体を得ることができる。さらに、加熱工程においては接合状態を保ちつつ炭化させることができるため、接合剤等を用いた接合に比べてより優れた接合強度の実現が可能になる。
本例の製造方法により得られる炭化物接合体1は、上述のように炭化構造物11への接合剤等の塗布を必要とせずに作製が可能であるため、上述のように優れた接合強度を示すことができる。さらに、炭化構造物11同士の接触部の面積が小さくても、高い接合強度を発揮することができる。また、炭化物接合体1においては、炭化構造物11だけでなく、接合部分も炭化構造物11と一体的に形成される。したがって、炭化物接合体1は、接合部分だけでなく全体の強度も高く、さらに熱伝導性にも優れている。また、本例の加熱工程においては、樹脂フィルムが炭化する温度以上かつグラファイト化する温度未満の温度(例えば800℃)で加熱を行っているが、樹脂フィルムがグラファイト化する温度以上の温度(例えば2500℃)で加熱を行うことにより、グラファイトからなる炭化物接合体1を得ることができる。この場合には、炭化物接合体1の熱伝導性がより向上する。
また、本例のように、樹脂フィルムA21及び樹脂フィルムB22がポリイミドからなる場合には、強度及び熱伝導性により優れた炭化物接合体1を得ることができる。また、樹脂フィルムA21と樹脂フィルムB22との積層フィルム2の製造時には、本例のように、ポリアミド酸を含有する前駆体フィルムA210の両面に、ポリアミド酸を含有する前駆体フィルムB220を貼り合わせた後、加熱することが好ましい。この場合には、加熱により、樹脂フィルムA21と樹脂フィルムB22との界面にも化学結合を形成させることができる。そのため、一体的な積層フィルム2を得ることができ、その結果、炭化物接合体1における接合強度や熱伝導性をより一層向上させることができる。なお、本例においては、上述のように、前駆体フィルムAと前駆体フィルムBとを予め作製し、これらを積層して加熱することにより、積層フィルム2を作製したが(図4及び図5参照)、前駆体フィムAの両面に、式(5)で表される構造を有するポリアミド酸を含有するポリアミド酸溶液を塗布し、乾燥後、加熱することにより、積層フィルム2を作製することもできる。
本例においては、上述のように、上記式(1)で表されるPMDAと、上記式(4)で表される1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを原料として、ポリアミド酸からなる前駆体フィルムBを作製し、さらにこれを用いてポリイミドからなる樹脂フィルムBを作製した。樹脂フィルムBを形成するための原料としては、他にもODAと、下記の式(8)で表される1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンとの組み合わせが挙げられる。
本例においては、特定のポリイミドからなる樹脂フィルムAと、特定のポリイミドからなる樹脂フィルムBとを用いて、上述の炭化物接合体を製造する例を説明したが、本発明は、これらの樹脂の組み合わせに限定されない。即ち、熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなる樹脂フィルムAと、熱分解温度以下に融点を有する樹脂からなる樹脂フィルムB22との適宜組み合わせることにより、本実施例と同様の効果を奏する炭化物接合体を得ることができる。
また、本例においては、炭化物接合体として熱交換器の例を用いて説明したが、炭化物接合体の上述の優れた強度及び熱伝導性をいかして、炭化物接合体を熱ワイヤ等に利用することもできる。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
1 炭化物接合体
11 炭化構造物
2 積層フィルム
21 樹脂フィルムA
22 樹脂フィルムB
3 成形体
11 炭化構造物
2 積層フィルム
21 樹脂フィルムA
22 樹脂フィルムB
3 成形体
Claims (6)
- 炭化構造物(11)同士が一体的に接合された炭化物接合体(1)の製造方法において、
樹脂フィルムA(21)と、該樹脂フィルムA(21)を挟む樹脂フィルムB(22)とからなる積層フィルム(2)を作製する積層工程と、
上記積層フィルム(2)を成形して成形体(3)を作製する成形工程と、
複数の上記成形体(3)同士を当接させた状態で加熱することにより、上記成形体(3)同士を接合させると共に、該成形体(3)を炭化させる加熱工程とを有し、
上記樹脂フィルムA(21)は、該樹脂フィルムA(21)の熱分解温度以下に融点を有さない樹脂からなり、上記樹脂フィルムB(22)は、該樹脂フィルムB(22)の熱分解温度以下に融点を有する樹脂からなることを特徴とする炭化物接合体(1)の製造方法。 - 上記樹脂フィルムA(21)及び上記樹脂フィルムB(22)は、ポリイミドからなることを特徴とする請求項1に記載の炭化物接合体(1)の製造方法。
- 上記積層工程においては、ポリアミド酸を含有する前駆体フィルムA(210)の両面に、ポリアミド酸を含有する前駆体フィルムB(220)を貼り合わせた後、加熱することによって上記積層フィルム(2)を得ることを特徴とする請求項2に記載の炭化物接合体(1)の製造方法。
- 上記積層工程においては、ポリアミド酸を含有する前駆体フィルムA(210)の両面にポリアミド酸溶液を塗布し、乾燥させた後、加熱することによって上記積層フィルム(2)を得ることを特徴とする請求項2に記載の炭化物接合体(1)の製造方法。
- 上記炭化物接合体(1)は、熱交換器又は熱ワイヤであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化物接合体(1)の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた炭化物接合体(1)。
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