JP2017001284A - インク収容容器及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Yoshitaka Miyajima
佳孝 宮島
奥山 智幸
Tomoyuki Okuyama
智幸 奥山
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Abstract

【課題】色材に由来する異物を効率的に除去することのできるインク収容容器を提供する。
【解決手段】インク収容容器100は、平板状の骨格を有する分子からなる色材と、デオキシリボ核酸及び修飾デオキシリボ核酸の少なくとも一種が担持され、磁性体を含むDNA担体と、溶媒と、を含む、インクジェットインクを収容し、磁力印加手段40を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、インク収容容器及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出して飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で印刷可能であるという特徴を有する。
インクジェット記録に使用される典型的なインクとしては、染料インク、顔料インク等がある。顔料インクは、例えば、インク中の水分が蒸発して固化すると、再度分散させにくく、インクジェット記録装置のインク吐出ヘッドのノズル先端部等で目詰まりを起こしやすい。そのため、記録ヘッドを洗浄液、メンテナンス液、又はクリーニング液等と称される液体で洗浄することが試みられている。
例えば、特許文献1には、アルカン−1,2−ジオールモノアルキルエーテルを含むメンテナンス液が開示され、インクと、メンテナンス液と、を含むインクジェット記録用インクセットが開示されている。
特許第5566741号
一般に、顔料や染料等の色材は、その製造(合成)工程において、不純物を完全に除去することは難しく、純度の高いグレードの製品であっても、ある程度の量の不純物が含まれることが通常である。そのような不純物の例としては、色材を構成する色素分子に構造的に類似する色素類似体がある。すなわち、顔料や染料の精製において、構造的に類似している分子を分離することは困難な状況である。そのような色材を液体(溶媒)中に分散させると、液体中に不純物が溶出して析出することがある。しかもこの現象は経時的に生じる。特に色素分子が平面的な構造を有する色材の場合には、色素分子が互いにスタックした状態で溶媒に分散されており、そのようなスタック状態から色素類似体が徐々に溶媒に溶け出してゆくと考えられる。平面的な色素分子の構造類似体は、本来の色素分子とは異なる溶解特性や分散特性を示すため、構造類似体が溶媒に溶け出すと、顔料や染料とは異なる析出物を生じ、異物となって溶媒中に析出、分散、浮遊することになる。
この異物の性格は、分析が進められた結果把握されたものであり、これらの異物を総合的に効率よく洗浄除去することは、従来からある洗浄液(メンテナンス液)を用いるだけでは困難であることが分かってきた。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、色材に由来する異物を効率的に除去することのできるインク収容容器及びインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]本発明に係るインク収容容器の一態様は、
平板状の骨格を有する分子からなる色材と、デオキシリボ核酸及び修飾デオキシリボ核酸の少なくとも一種が担持され、磁性体を含むDNA担体と、溶媒と、を含む、インクジェットインクを収容し、
磁力印加手段を備える。
本適用例のインク収容容器は、インクジェットインクに含まれる磁性体を含むDNA担体を、磁力印加手段によって収集し、インク収容室内に捕集することができる。また、DNA担体に担持されたデオキシリボ核酸、及び/又は、修飾デオキシリボ核酸によって、平板状の骨格を有する分子をトラップし捕集することができる。そして、DNA担体を磁力印加手段により容器内に留めることができる。したがって、本適用例のインク収容容器は、色材に由来する異物(例えば色素分子の類似体)を除去ないし低減し、かつ、DNA担体が、例えば記録ヘッドに流入しないように、インクジェットインクを排出することができる。これにより、本適用例のインク収容容器は、収容されたインクジェットインクの保存安定性を高め、かつ、例えば記録ヘッドの吐出安定性が良好なインクジェットインクを排出することができる。
[適用例2]適用例1において、
前記磁力印加手段は、永久磁石を含んでもよい。
このようなインク収容容器は、DNA担体を磁力印加手段により容器内に留めることができる。
[適用例3]適用例1又は適用例2において、
前記磁力印加手段は、電磁石を含んでもよい。
このようなインク収容容器は、DNA担体を自由に分散させることができ、かつ、磁力印加手段により容器内に留めることができる。
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記色材は、顔料、分散染料及び昇華染料から選択される少なくとも一種であってもよい。
このようなインク収容容器は、色材に由来する異物(例えば色素分子の類似体)を除去ないし低減することができる。
[適用例5]本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか一例に記載のインク収容容器を備える。
本適用例のインクジェット記録装置は、インクジェットインクに含まれる磁性体を含むDNA担体を、インク収容容器の磁力印加手段によって収集し、例えば、記録ヘッドにDNA担体を流入させないようにすることができる。また、DNA担体には、デオキシリボ核酸、及び/又は、修飾デオキシリボ核酸が担持されており、平板状の骨格を有する分子をトラップし捕集することができる。したがって、本適用例のインクジェット記録装置は、色材に由来する異物(例えば色素分子の類似体)を除去ないし低減し、かつ、DNA担体が、記録ヘッドに流入しないようにすることができる。これにより、本適用例のインクジェット記録装置は、インクジェットインクの保存安定性を高め、かつ、記録ヘッドの吐出安定性を良好に保つことができる。
実施形態に係るインクカートリッジの一例の概念図。 実施形態に係るインクタンクの一例の概念図。 実施形態に係るインクパックの一例の概念図。 実施形態に係るインクジェット記録装置の一例の概念図。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インク収容容器
本発明に係るインク収容容器は、インクジェットインクを収容し、磁力印加手段を備える。本発明に係るインク収容容器は、インクジェットインクを収容する限り、インクカートリッジ、インクタンク、インクパック、その他どのような態様であってもよい。以下、インク収容容器の例として、インクカートリッジ、インクタンク、インクパックを例として説明する。また、磁力印加手段40についての詳細は後述する。
1.1.インクカートリッジ
本実施形態のインクカートリッジ100は、インク収容室10と、インク排出口20と、インク導入口30と、磁力印加手段40と、を有している。図1は、本発明に係るインク収容容器の一態様である本実施形態のインクカートリッジ100の概念図である。図1では、インクカートリッジ100の断面が模式的に示されている。インクカートリッジ100の形状は、例えば、インクジェット記録装置に用いる場合には、当該装置に適合するカートリッジの形状とすることができる。
<インク収容室>
本実施形態のインクカートリッジ100は、インクジェットインク(以下、単に「インク」ともいう。)を収容するインク収容室10を有している。インク収容室10は、インクを収容して保持することができれば、特に限定されない。インク収容室10は、例えば、フィルム、成形体等により形成されることができる。インク収容室10がフィルムで形成される場合には、インクカートリッジ100は、インク収容室10を形成するフィルムを収容するような成形体(筐体)を含んで形成されてもよい。また、インク収容室10は、比較的堅牢な成形体によって形成されてもよい。図1の例では、インクカートリッジ100は、可撓性の小さい成形体12の内側にインク収容室10が形成されている。
インク収容室10を形成する成形体12は、例えば、高分子、金属の蒸着膜等で構成され、多層構造であってもよい。インクカートリッジ100が成形体12を含む複数の部材(例えば、図示せぬフィルム等)で形成される場合には、溶着部分や接着部分が形成されてもよい。成形体12は、インクに含まれる有機溶媒又は水が揮発して発散してしまうことを防止するため気体透過率が小さい材質で形成されることが好ましい。インク収容室10を形成する材質のうち、収容されるインクに接する部分の材質は、インクに対して安定であることが好ましい。
インク収容室10の形状及び容積は、特に限定されない。インク収容室10には、インクが収容されるが、インクとともに気体が収容されてもよい。インク収容室10に収容されるインクの体積も特に限定されない。
インク収容室10は、インク収容室10内部とインクカートリッジ100の外部とを連通するインク排出口20に連通している。インク収容室10は、インク排出口20以外の
他の流通路に連通してもよい。このような他の流通路としては、インク導入口30であり、例えば、大気にインク収容室10の内部を開放する開放弁等により構成されてもよい。また、インク導入口30からは、インクが導入されてもよい。
<インク排出口>
本実施形態のインクカートリッジ100は、インク収容室10に連通しインクを流通させるインク排出口20を有している。インク排出口20は、インク収容室10の内部のインクをインクカートリッジ100の外部へと流出させることのできるインクの流路である。インク排出口20は、気体を流通させることもできる。また、インク排出口20は、例えば、記録ヘッドに直接又は間接に接続され、インクを記録ヘッドに対して供給するように構成されてもよい。
インク排出口20の形状は、特に限定されず、例えば、インクカートリッジ100が、インクジェット記録装置のカートリッジである場合には、インクジェット記録装置の記録ヘッドにインクを導くための流通経路への接続に適した形状とすることができる。また、インク排出口20の接続方法や接続位置等も特に限定されない。
インク排出口20は、例えば、金属のチューブ、高分子材料の成形体などにより形成される。高分子材料の成形体により形成される場合には、当該成形体は、インク収容室10を形成する部材と一体的に形成されてもよいし、別体として形成された後に融着・接着等によって接続されてもよい。例えば、インク排出口20は、筒状に成形された樹脂により形成されてもよい。
1.2.インクタンク
本実施形態のインクタンク150は、インク収容室10と、インク排出口20と、インク導入口30と、磁力印加手段40と、を有している。図2は、本発明に係るインク収容容器の一態様である本実施形態のインクタンク150の概念図である。図2では、インクタンク150の断面が模式的に示されている。インクタンク150の形状は、例えば、インクジェット記録装置に用いる場合には、当該装置に適合するタンクの形状とすることができる。
<インク収容室>
本実施形態のインクタンク150は、インクジェットインクを収容するインク収容室10を有している。インクタンク150のインク収容室10は、上述のインクカートリッジ100のインク収容室10と同様であるため、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。図2の例では、インクタンク150は、可撓性の小さい成形体12の内側にインク収容室10が形成されている。また、インクタンク150のインク収容室10を形成する成形体12も上述のインクカートリッジ100の成形体12と同様であるため、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。インクタンク150においても、インク収容室10は、インク収容室10内部とインクタンク150の外部とを連通するインク排出口20に連通している。インクタンク150のインク収容室10は、インク導入口30に連通している。インク導入口30からは、インクを導入できるようになっており、適宜のタイミングで適量のインクがインク収容室10へと導入される。
<インク排出口>
本実施形態のインクタンク150は、インク収容室10に連通しインクを流通させるインク排出口20を有している。インクタンク150のインク排出口20は、上述のインクカートリッジ100のインク排出口20と同様であるため、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
1.3.インクパック
本実施形態のインクパック160は、インク収容室10と、インク排出口20と、インク導入口30と、磁力印加手段40と、を有している。図3は、本発明に係るインク収容容器の一態様である本実施形態のインクパック160の概念図である。図3では、インクパック160の断面が模式的に示されている。インクパック160の形状は、例えば、インクジェット記録装置に用いる場合や、販売等のためのインクの輸送に用いる場合には、当該装置や荷姿に適合するパックの形状とすることができる。
<インク収容室>
本実施形態のインクパック160は、インクジェットインクを収容するインク収容室10を有している。インクパック160のインク収容室10は、インクを収容して保持することができれば、特に限定されない。インク収容室10は、例えば、フィルム、成形体等により形成されることができる。インク収容室10がフィルムで形成される場合には、インクパック160は、インク収容室10を形成するフィルムを収容するような成形体(筐体)を含んで形成されてもよい。また、インク収容室10は、比較的堅牢な成形体によって形成されてもよい。図3の例では、インクパック160は、可撓性の大きい(柔らかい)成形体12(フィルム)の内側にインク収容室10が形成されている。また図示しないが、フィルムの外周部分を熱融着することによってフィルムを袋状に形成してもよいし、接着剤等を用いて袋状の形状としてもよい。
インク収容室10は、インク収容室10内部とインクパック160の外部とを連通するインク排出口20に連通している。図3の例では、インク排出口20は、筒状の形状となっており、フィルムによって形成されたインク収容室10に連通している。図3の例では、インクパック160は、インク排出口20以外の他の流通路を有していない。しかし、上述のインクカートリッジ100、インクタンク150と同様に、例えば、インク導入口30が設けられてもよく、大気にインク収容室10の内部を開放する開放弁等により構成されてもよい。また、インク導入口30からは、インクが導入されてもよい。
<インク排出口>
本実施形態のインクパック160は、インク収容室10に連通しインクを流通させるインク排出口20を有している。インクパック160のインク排出口20は、上述のインクカートリッジ100のインク排出口20と同様であるため、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
1.4.磁力印加手段
本実施形態のインク収容容器は、磁力印加手段40を備える。磁力印加手段40は、インク収容容器内のインクに対して磁力を印加できる位置であれば、任意の位置に設けることができる。また、磁力印加手段40は、磁力印加手段40は、インク収容容器の内側(例えば、インク収容室10の壁面等)に設けられてもよいし、インク収容容器の外側(例えば、成形体12の外壁面等)に設けられてもよい。
磁力印加手段40は、後述するインク中の磁気ビーズ(DNA担体)を磁力によって引きつけて、DNA担体がインク排出口20を通ってインク収容容器から外へ流出しないようにする機能を有する。磁力印加手段40は、インク中に浮遊するDNA担体を、磁力によって捕集(収集)することができる。磁力印加手段40は、例えば、インク収容室10内でDNA担体を引きつけて留める。また、磁力印加手段40がDNA担体を留める位置は、特に限定されない。
磁力印加手段40の形状は任意であり、DNA担体を点状の形状に集める形状や、面状の形状で集める形状とすることができる。磁力印加手段40の形状としては、塊状、シー
ト状、薄膜状等が挙げられる。磁力印加手段40の大きさも任意であり、インク収容容器のスケールや種類に応じて適宜に設計される。
磁力印加手段40は、例えば、永久磁石、電磁石、及びその組み合わせを含んで構成することができる。これらの磁石は、公知のものを用いることができる。永久磁石のうち、フェライトをゴムに練り込んだようなシート状に成形されたいわゆる磁性シートを用いれば、形状を加工しやすく、インク収容容器に合わせた形状としやすい。また、電磁石を用いる場合には、磁力のON、OFFを任意に行うことができるため、例えば、DNA担体の捕集(収集)及び分散(リリース)を任意のタイミングで行うことができ、異物の除去効率を高めることができる場合がある。なお、電磁石への電力の供給のために、磁力印加手段40は、電池やスイッチを含んで構成されてもよく、さらに電力は、インクジェット記録装置等のインク収容容器以外の構成から供給されるようにしてもよい。
さらに、永久磁石を用いる場合であっても、例えば、磁性シート中の磁石の濃度を変化させる等により、磁性シート(磁石)の磁力を調節することができる。磁力を適宜の強さに設定すれば、例えば、引きつけられたDNA担体を、インク収容容器を振とうする等により、再分散させることができる。また、永久磁石を用いる場合には、インク収容容器は、永久磁石をインクに接近、離間させるような機構を含んでもよい。このようにすれば、永久磁石がインクに接近して引きつけられたDNA担体を、永久磁石を離間させることにより、再分散させることができる。これらにより、異物の除去効率を高めることができる場合がある。
また、磁力印加手段40は、複数設けられてもよい。磁力印加手段40が設けられる数は限定されないし、複数設けられる場合には互いに異なる構成としてもよい。図1のインクカートリッジ100の例では、磁力印加手段40は、インクカートリッジ100内に形成されたインク流路において、インク排出口20側及びインク導入口30側にそれぞれ設けられている。
磁力印加手段40が設けられる位置は、任意であるが、インク排出口20の近傍(インク収容室10から突出した部分)に設けられると、インク収容室10内ではDNA担体が分散状態を保ち、必要に応じてインクが排出される際に、DNA担体を収集することができるため、より効率よく異物を除去することができる。
1.5.その他の構成
本実施形態のインク収容容器は、上記の構成以外に、用途に応じて他の構成を有してもよい。そのような構成としては、例えば、インクから発生する気体を外部に放出する開放弁、インク収容容器の変形を抑制するためのピラー等の構造体(図1、図2参照)、インクの撹拌を行うための機構(例えば、インク収容室10内に配置されたボール)、インク排出口20に設けられる継手などが挙げられる。また、開放弁を設ける場合には、該開放弁は、能動的な動作をするものであっても受動的な動作をするものであってもよい。
2.インクジェットインク
本実施形態のインク収容容器に収容されるインクジェットインクは、平板状の骨格を有する色材と、デオキシリボ核酸及び修飾デオキシリボ核酸の少なくとも一種が担持され、磁性体を含むDNA担体(以下、単に「DNA担体」ということがある。)を含む。
インクジェットインクには、必ず色材及びDNA担体が含まれるが、これ以外に含まれる成分によって、水系インクと、溶剤系インクと、光硬化型インクとに大別することができる。以下、水系インク、溶剤系インク、光硬化型インクの順に、各インクに含まれる成分について説明する。
2.1.水系インク
本明細書における「水系インク」とは、インクの全質量(100質量%)に対して、水を30質量%以上含有するインクのことをいう。
2.1.1.色材
本実施形態に係る水系インクは、色材を含有する。本発明における「色材」には、顔料、並びに、溶媒に完全に溶解せず分散状態となる染料、例えば分散染料等も含まれる。異物発生のメカニズムが、顔料と分散染料とで同じであると考えられるからである。色材種としては、特に制限されるものではないが、平面的な骨格を有する分子を含む顔料を用いた場合に、色材由来の異物の抑制効果が高くなる。
顔料の色素分子は、このような平板状の骨格を有するため、複数の分子がスタック(重畳)する性質を有し、溶媒等の周囲の環境によっては、スタックして存在することがエネルギー的に有利である場合が多い。
平面的な骨格を有する分子を含む顔料の場合には、色素分子が互いにスタックした状態で溶媒に分散されており、そのようなスタック状態から色素類似体が徐々に溶媒中に溶け出していくと考えられる。このような平面的な色素分子の構造類似体は、本来の色素分子とは異なる溶解特性や分散特性を示すため、構造類似体が溶媒に溶け出すと、顔料とは異なる析出物を生じ、異物となって溶媒中に析出、分散、浮遊することになる。本実施形態に係る水系インクに含まれるDNA担体は、平面的な色素分子の構造類似体をトラップする能力が高いため、色材由来の異物の発生を効果的に抑制することができる。
ここで「平面的な骨格」とは、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゼンが平面的に縮合したナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の縮合多環骨格、ポルフィリンのような多環骨格で窒素、酸素、硫黄、リン等の複素環を含む複素多環骨格、アゾベンゼン、ビシクロペンタジエニリデン等の2つの環系が平面性を保つ結合により連結された環集合骨格等の、平面的な共役系を有する骨格や共役系により平面性が保たれている骨格のことをいう。
したがって、色材の分子が平面的な骨格を有するとは、色材を構成する色素分子が、上記の骨格を有していればよく、色素分子の全体がそのような骨格となっている必要はない。そのため、例えば一つの色素分子が平面的な骨格を複数有する場合でも、その色素分子は平面的な骨格を有することになる。さらに、色材の色素分子は、全体が平面的である必要はなく、例えば平面的な骨格に、各種の置換基等が配置されて、当該置換基が平面的な骨格の平面から外れていても構わない。また、例えば、複数の平面的な骨格が、互いに同一の平面に沿わなくてもよいし、平面的な骨格の平面が互いに平行でなくてもよい。
このような色材としては、共役系を有し、当該共役系が光のエネルギーを吸収して呈色する有機色素分子が挙げられる。このような有機色素分子からなる顔料としては、例えばアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、縮合多環系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料が挙げられる。これらの顔料は、溶媒に単分子のレベルで溶解しにくく、溶媒中で複数の色素分子がスタックした状態となっている。
また、平板状の骨格を有する分子からなる色材としては、分散染料及び昇華染料を挙げ
ることができる。分散染料及び昇華染料は、溶媒中で必ずしも一分子ごとに溶解(溶媒和)しておらず、スタック構造を形成することが知られている。したがって本実施形態では、分散染料及び昇華染料は顔料の一種として扱う。
顔料が溶媒中でスタック構造を有しているか否かについては、例えば、光散乱法を用いた粒径測定等により、粒径が測定できるか否かで判定することができる。すなわち、色素がスタック構造を有して溶媒中で分散構造を採る場合には、粒径を計測することができ、色素が溶媒に溶解して溶液状である場合には、光散乱の波長では粒径を計測できないということから、顔料のスタック構造の有無を把握することができる。
顔料は、これを構成する色素分子が純物質であることは希であり、一般的に、顔料には不純物が含まれる。不純物の典型としては、色素分子の類似体が挙げられる。色素分子の類似体とは、例えば、色素分子と骨格が同一で置換基が異なるものや、色素分子と骨格がある程度異なるものを挙げることができる。このような色素分子の類似体は、例えば、色素分子の合成の際の副生成物として生じたり、色素分子が光(例えば紫外線)を吸収することにより構造変化を起こして生じたりすることがある。
このような色素分子の類似体(本明細書では、色素類似体と称することがある。)は、色素分子と似た化学的性質、光学的性質を示すことが多いが、化学構造が異なるため、完全に同じ性質を示すことはほとんどない。そのため、例えば、抽出等の分離操作での精製は非常に難しく、小さい含有量で色素分子とともに顔料中に存在することになる。
上述のとおり、色素分子のスタック構造は、板状の色素分子が重なって形成されるが、色素類似体は、色素分子のスタック構造に組み込まれてスタックされることがある。また、色素類似体は、色素分子と溶媒への溶解性が異なり、例えば、色素分子よりも溶媒に溶解しやすい場合や溶解しにくい場合がある。また、色素類似体は色素分子のスタック構造とは別に、色素類似体のスタック構造を形成する場合がある。
いずれの場合でも、顔料の副成分である色素類似体は、溶媒中で色素分子とは異なる挙動を示すため、例えば、色素分子のスタック構造から外れて分離すること、色素類似体のスタック構造を形成すること、溶媒に溶解できずに析出すること、などの現象が生じて顔料インク中あるいは溶媒中で異物となりやすい。
平板状の骨格を有する顔料の具体例を例示すると、イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、及びC.I.ピグメント ヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、1
5、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、及びC.I.バットブルー 4、60等が挙げられる。
ブラック、ホワイト、イエロー、マゼンタ及びシアン以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、及びC.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
インクは、上記顔料の複数種を含有してもよく、また、平板状骨格を有する顔料のみ、平板状骨格を有する顔料及びその他の顔料の両者を含有してもよい。
本実施形態に係る水系インク中における色材の含有量は、特に制限されないが、水性インクの全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下、特に好ましくは3質量%以上8質量%以下である。
本実施形態に係る水系インクでは、色材(顔料、分散染料及び/又は昇華染料)を均一かつ安定に分散させる観点から、上記の顔料を樹脂で分散させた樹脂分散顔料又は自己分散顔料を用いることが好ましい。
<樹脂分散顔料>
樹脂分散顔料に用いられる樹脂分散剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
前記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、前記樹脂分散剤の中和当量以上であれば特に制限はない。
樹脂分散剤の分子量は、重量平均分子量として1,000以上100,000以下の範囲であることが好ましく、3,000以上10,000以下の範囲であることがより好ましい。分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中でより安定的に分散し、またインクに適用した際の粘度制御等がしやすい。
樹脂分散剤としては、市販品を用いることもできる。具体的には、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョ
ンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
樹脂分散顔料を水中に分散させる方法としては、上記の顔料、樹脂分散剤、水、必要に応じて水溶性有機溶剤、中和剤等を加えて、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の従来用いられている分散機にて行うことができる。この場合、顔料の粒径としては、平均粒子径が20nm以上500nm以下になるまで、より好ましくは40nm以上200nm以下になるまで分散することが、顔料の水中での分散安定性を確保する点で好ましい。
前記樹脂分散剤の添加量は、顔料100質量部に対し、好ましくは10質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは30質量部以上80質量部以下である。樹脂分散剤の添加量が前記範囲内であることにより、顔料の水中での分散安定性が一層良好となる。
<自己分散顔料>
本実施形態に係る水系インクは、顔料として自己分散顔料を含有することができる。自己分散顔料を用いることにより、水系インクの粘度を適正な範囲に調整しやすくなるため、取扱いが容易となる。また、自己分散顔料は、分散剤を別途配合しなくても、水系インク中で均一に分散させることができる。
本明細書における「自己分散顔料」とは、その表面にカルボニル基、カルボキシ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、スルホン基、アンモニウム基、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基が、直接またはアルキル基、アリール基等を介して間接に結合してなる表面改質された顔料のことをいう。
自己分散顔料を調製するには、真空プラズマ等の物理的処理や化学的処理により、官能基または官能基を含んだ分子を顔料の表面に配位、グラフト等の化学的結合をさせること等によって得ることができる。例えば、特開平8−3498号公報に記載の方法によって得ることができる。また、自己分散顔料としては、市販品を利用することも可能であり、例えば、オリエント化学工業(株)製の「マイクロジェットCW1」、「マイクロジェットCW2」、キャボット社製の「CAB−O−JET 200」、「CAB−O−JET
300」等を用いることができる。
以下、自己分散顔料の調製方法の具体的な一例について説明する。まず、溶剤に上記の顔料(表面改質される前の顔料)を添加し、これをハイスピードミキサー等で高速剪断分散するか、または、ビーズミルやジェットミル等で衝撃分散してスラリー状の顔料分散液を得る。該顔料分散液をゆっくり攪拌しながら、硫黄を含む処理剤(スルファミン酸、発煙硫酸、硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸等)を添加し、該顔料分散液を60℃以上200℃以下に加熱処理して、前記顔料表面に前記分散性付与基を導入する。該顔料分散液から溶剤を除去した後、水洗、限外濾過、逆浸透、遠心分離、濾過等を繰り返して前記硫黄を含む処理剤を取り除くことにより、自己分散顔料を得ることができる。自己分散顔料の平均粒子径は、20nm以上500nm以下であることが好ましく、40nm以上200nm以下であることがより好ましい。これにより、顔料の水中での分散安定性が一層良好となる。
2.1.2.DNA担体
本実施形態のインクジェットインクは、磁性体を含むDNA担体を含有する。DNA担
体は、デオキシリボ核酸(DNA)及び修飾デオキシリボ核酸(修飾DNA)の少なくとも一種が、磁性体を含む担体に担持された構成を有する。
2.1.2.1.担体
本実施形態のDNA担体は、磁性体として、例えば、フェライト粒子等を含む。磁性体を含む担体としては、特に限定されず、各種の公知のものを挙げることができる。担体としては、インクジェットインク中で分散させやすい点で、ビーズ状(粒子状)のものが好ましい。担体の材質についても特に限定されない。担体の比重については、インクジェットインク中で分散が容易な限り限定されない。さらに、担体の大きさ(粒子径)についても、特に限定されない。
担体は、DNAや修飾DNAを担持させるための官能基を有していることが好ましい。このような官能基についても、公知のものでよく、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、チオール基等である。また、担体にDNAや修飾DNAを担持させる場合には、担体が有する官能基にDNAや修飾DNAを直接結合させて担持させてもよいし、カルボジイミド等のカップリング剤を用いてリンカーを介して結合させて担持させてもよい。
2.1.2.2.デオキシリボ核酸及び修飾デオキシリボ核酸
上記DNA担体の磁性担体には、デオキシリボ核酸(DNA)及び修飾デオキシリボ核酸(修飾DNA)の少なくとも一方が担持される。DNA及び修飾DNAは、特に限定されず、天然のもの、フラグメント、人工のもの、のいずれでも用いることができる。また、DNA、修飾DNAは、通常の2本鎖の二重らせん(ダブルへリックス)構造を有するものであってもよいし、3本鎖の三重らせん(トリプルへリックス)構造、4本鎖の四重らせん(クワドルプルへリックス)構造を有するものであってもよい。
DNA及び修飾DNAは、らせん構造を有しており、そのらせんの内部には、平面的な構造を有する塩基対が密にパッキングしている。このような構造を有するため、DNA及び修飾DNAは、らせんの内部に平板状の構造を有する分子をインターカレートすることができ、平板状の構造を有する分子をトラップすることができる。
DNAは、二重らせんの外側は水との親和性が高く、水溶性であり、例えば水中で分子鎖が広がって存在することができ、平板状の分子をトラップした後、さらにその状態で安定に存在することができる。
修飾DNAは、DNAのらせんの外側を各種の官能基や脂質によって修飾したものであり、DNAの極性(親水性や親油性)を適宜に設定することができる。例えば、修飾DNAが、脂質修飾DNAであって極性が小さい場合には、極性の小さい有機溶剤中で凝集することなく広がって存在することができ、平板状の分子をトラップした後、さらにその状態で安定に存在することができる。
DNAの二重らせんの外側には、リン酸基が位置しており、例えばナトリウムイオンと対イオンを形成している。そのため、DNAは水溶性を有するが、係るリン酸基にカチオン性を有する高分子を結合させる(ナトリウムイオンとの置換)ことができる。このとき、係る高分子がアルキル鎖等の脂質を有している場合には、高分子がDNAを包む形状となるとともに、脂質を外側に向けて配置した状態となる。このような脂質修飾DNAは、修飾の程度に従った疎水性を示すことになり、親水性及び疎水性の程度の調節を行うことができる。
DNA及び修飾DNAの塩基対の数は、平板状の分子をトラップできる限り、特に限定
されず、例えば、10塩基対以上100000000塩基対以下とすることができる。また、DNA担体には、DNA又は修飾DNAのみが担持されてもよいし、DNA及び修飾DNAが担持されてもよい。さらに、担体1個あたりの、DNAが担持される数や修飾DNAか担持される数についても特に限定されない。DNA担体に担持するDNAの種類は、トラップする平板状の分子の種類、溶媒の種類等により適宜に設計することができる。
本実施形態のインクジェットインクに含まれるDNA担体の含有量は、特に限定されず、インターカレートする対象(例えば色素類似体)の予想される濃度に合わせて配合される。DNA担体の含有量は、例えば、0.00001質量%以上10質量%以下、好ましくは0.0001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.001質量%以上1質量%以下である。
本実施形態に係る水系インクには、上記のDNA担体が2種以上含まれてもよい。DNAや修飾DNAは、その種類によってインターカレートできる分子のサイズや種類が異なっている。そのため、2種以上のDNAや修飾DNAを含むことにより、複数種の異物や、異物を構成する化合物が複数種である場合などに、それぞれの化合物を溶解させることができる。したがって、異物の発生をより効果的に抑制することや、発生した異物をより効率的に溶解(トラップ)することができる。また、2種以上のDNA担体を添加することで、添加するDNA担体全体の合計量を少量とすることができる場合がある。なおDNA担体や修飾DNA担体は、定法に従って適宜に合成することができるし、市販品を入手して用いてもよい。
2.1.3.その他の成分
<水>
本実施形態に係る水系インクは、溶剤として水を含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。本実施形態に係る水系インク中における水の含有量は、水系インクの全質量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上95質量%以下、特に好ましくは60質量%以上90質量%以下である。ここで、水の含有量は、水を添加した量に限られず、他の添加剤等を加える場合には添加剤中の水分も含むものである。
<極性有機溶剤>
本実施形態に係る水系インクは、記録媒体上での濡れ拡がり性、浸透性、乾燥性を制御する観点から極性溶剤を含有することが好ましい。しかしながら、極性溶剤の中には、上述の顔料由来成分を僅かではあるが溶解させるものが存在する。この溶解された顔料由来成分の一部が、温度環境の変化などに伴って再析出することにより結晶性の異物を形成することが分かってきており、この異物が徐々にヘッドフィルターを詰まらせることで、インクの吐出不良を引き起こすという課題があった。本実施形態に係る水系インクによれば、顔料由来成分による異物をDNA担体でトラップすることにより、かかる課題を解決することができる。
本実施形態に係る水系インクで使用される極性溶剤としては、アルカンジオール類、アルキレングリコールエーテル類、ピロリドン類、アミド類及びラクトン類等が挙げられる。このような極性溶剤を含有する水系インクは、他の溶剤に比べて上述の顔料由来成分が溶解させやすいため、上述の異物によるインク吐出不良の問題が発生しやすい傾向がある。以下、本実施形態に係る水系インクで使用可能な極性溶剤の具体例を列挙する。
(1)アルカンジオール類
アルカンジオール類としては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1
,2−オクタンジオール等の1,2−アルカンジオール;1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,3−ヘプタンジオール、1,3−オクタンジオール等の1,3−アルカンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオール等のその他のジオール類が挙げられる。
(2)アルキレングリコールエーテル類
アルキレングリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類が挙げられる。
(3)ピロリドン類
ピロリドン類としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン等が挙げられる。
(4)アミド類
アミド類としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、エクアミドM100(商品名、出光興産株式会社製)、エクアミドB100(商品名、出光興産株式会社製)等が挙げられる。
(5)ラクトン類
ラクトン類としては、α−アセトラクトン、α−エチルラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナンチオラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ノナラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、2−ブチル−2−エチルプロピオラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン等が挙げられる。
本実施形態に係る水系インク中における極性溶剤の含有量は、水系インクの全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
<その他の有機溶剤>
本実施形態に係る水系インクは、上記極性溶剤以外の水溶性有機溶剤を含有してもよい。このような水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール類(例えば、エチルアルコール、1−プロパノール、フッ化アルコール等)や、多価アルコール類(例えば、ポリアルキレングリコール、グリセリン等)を例示することができる。特にグリセリンは保湿剤として機能し、水系インクが空気に触れている状態で放置しても、より乾燥し難くするという効果がある。これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの水溶性有機溶媒を配合する場合には、水溶性有機溶剤の含有量は、水系インクの総質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%である。
<定着樹脂>
本実施形態に係る水系インクは、上述の顔料を記録媒体に定着させるための樹脂(本明細書において「定着樹脂」ともいう。)を含有してもよい。定着樹脂は、水溶性、ディスパージョンまたはエマルジョンの形態で供給されることが好ましい。
定着樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びスチレン−アクリレート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。これらの定着樹脂を含有することにより、記録媒体への定着性を向上でき、また耐擦性も向上する。
ウレタン樹脂としては、分子中にウレタン結合を有するものであれば特に制限されないが、ウレタン結合に加えて、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等も使用することができる。
定着樹脂は、自己反応型の、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリレート樹脂を使用してもよい。このような自己反応型の樹脂としては、親水性基を有するブロック剤でブロック化したウレタン樹脂;親水性セグメントを付与したブロック化ウレタン樹脂;カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メチロール基等の官能基を有するアクリルモノマーを共重合して得られるアクリル樹脂等が挙げられる。
ウレタン樹脂エマルションの市販品としては、例えばサンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製)、パーマリンUA−150(三洋化成工業株式会社製)、スーパーフレックス150、420、460、470、610、700(以上、第一工業製薬株式会社製)、NeoRez R−9660、R−9637、R−940(以上、楠本化成株式会社製)、アデカボンタイター HUX−380,290K(以上、株式会社ADEKA製)、タケラック(R) W−605、W−635、WS−6021(以上、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
スチレンアクリレート樹脂やアクリル樹脂の市販品としては、例えばモビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、マイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(以上、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001、ボンコート5454(以上、株式会社DIC製)、SAE1014(日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(サイデン化学株式会社製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンク
リル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上、BASF社製)、NKバインダー R−5HN(新中村化学工業株式会社製)、パラロイドB60(ローム・アンド・ハース社製)等が挙げられる。
本実施形態に係る水系インク中における定着樹脂(固形分)の含有量は、水系インクの全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上4質量%以下である。
<界面活性剤>
本実施形態に係る水系インクは、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコン系界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのノニオン性界面活性剤は、水系インクの表面張力及び界面張力を適正に保つ能力に優れている。これにより、表面張力及びヘッドノズル面等のインクと接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができるため、これをインクジェット記録方式に適用した場合、吐出安定性を高めることができる。
上記のアセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤としては、以下に限定されないが、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上を例示できる。また、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、メガファックF−479(DIC株式会社製)、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
シリコン系界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えば、オルフィンPD−501、オルフィンPD−502、オルフィンPD−570(いずれも、日信化学工業株式会社製)、BYK−347、BYK−348(いずれも、ビックケミー株式会社製)等が挙げられる。
さらに、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等を用いてもよい。
また、ノニオン性界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力及び界面張力を適正に保つ能力が特に優れており、かつ、気泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。すなわち、気泡性が小さいため、例えば、水系インクをインクジェット記録装置に適用する場合には、インク流路の段差部に気泡が固定されにくく望ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、石けん、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム系としてアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩およびアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系としてN−メチルビスヒドロキエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸系としてアルキルアミノ脂肪酸塩、ベタイン系としてアルキルカルボキシルベタイン、アミンオキシド系としてアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。両性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
界面活性剤の含有量は、水系インクの総質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.2〜1質量%である。
<pH調整剤>
本実施形態に係る水系インクは、pH調整剤を添加して好ましくはpHを6.0以上10.0以下、より好ましくは7.0以上9.5以下に調整するとよい。
pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;タウリン等のアミノスルホン酸等が挙げられる。
<その他の成分>
キレート剤、防腐剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤等については、公知の物質を用いることができる。
2.1.4.物性
本実施形態に係る水系インクはインクジェット用インクとして用いられることを想定している。したがって例えば組成や配合を調節することで、粘度(25℃における粘度)を好ましくは2mPa・s以上20mPa・s以下、より好ましくは3mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましい。これにより、インクジェット用インクの吐出安定性(吐出量の安定性、液滴の飛行特性等)、吐出応答性(応答速度、高周波対応性(周波数特性等)等)を優れたものとすることができる。なお、インクジェット用インクの粘度は、振動式粘度計を用いた、JIS Z8809に準拠した測定により求めることができる。
2.2.溶剤系インク
本明細書における「溶剤系インク」とは、有機溶剤を主成分とするインクであり、実質的に水を含まないインクを意味する。ここで、「実質的に水を含まない」とは、インクを製造する際に水を意図的に添加しないという意味であり、インクを製造中または保管中に不可避的に混入する微量の水分を含んでいても構わない。
なお、「実質的に水を含まないインク」の具体的な水の含有量は、好ましくはインク中の水の含有量が3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましく0.05質量%未満であり、一層好ましくは0.01質量%未満、さらに一層好ましくは0.005質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることをいう。
2.2.1.色材
本実施形態に係る溶剤系インクは、色材を含有する。顔料は、上述の水系インクと同様の種類及び含有量とすることができる。
2.2.2.DNA担体
本実施形態に係る溶剤系インクは、DNA担体を含有する。DNA担体は、上述の水系インクと同様の種類及び含有量とすることができる。なお、本実施形態に係る溶剤系インクに含まれるDNA担体は、溶剤系になじみやすいように修飾されたDNAが担持されていることが好ましい。
また、本発明における「非水溶性」とは、上記「水溶性」でないことを指すが、25℃の疎水性有機溶剤(混合溶媒を含む)100gに対して溶質が0.5g以上相溶することができる性質としてもよい。
2.2.3.その他の成分
<極性溶剤>
本実施形態に係る溶剤系インクは、極性溶剤を含有する。この極性溶剤は、インク特性を制御する重要な成分であり、溶剤系インク中に含まれる。極性溶剤の中には、上述の顔料由来成分を僅かではあるが溶解させるものが存在する。この溶解された色材由来成分の一部が、温度環境の変化などに伴って再析出することにより結晶性の異物を形成することが分かってきており、この異物が徐々にヘッドフィルターを詰まらせることで、インクの吐出不良を引き起こすという課題があった。本実施形態に係る溶剤系インクによれば、色材由来成分による異物をDNA担体でトラップすることにより、かかる課題を解決することができる。
本実施形態に係る溶剤系インクで使用される極性溶剤としては、アルカンジオール類、アルキレングリコールエーテル類、ピロリドン類、アミド類及びラクトン類等が挙げられる。このような極性溶剤を含有する溶剤系インクは、上述の顔料由来成分が溶解しやすい
ため、上述の異物によるインク吐出不良の問題が発生しやすい傾向がある。本実施形態に係る溶剤系インクでは、このような異物がトラップされて除去されるため、インク吐出不良の問題が発生しにくい。
本実施形態に係る溶剤系インク中における極性溶剤の含有量は、インクの全質量(100質量%)に対して、好ましくは50質量%以上95質量%以下、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。以下、本実施形態に係る溶剤系インクで使用可能な極性溶剤の具体例を挙げる。
(1)アルカンジオール類
(2)アルキレングリコールエーテル類
(3)ピロリドン類
これら(1)〜(3)は、上述の水系インクに用いると同様のものを用いることができる。
(4)アミド類
アミド類を含有することにより、低吸収性記録媒体上に付着したインクの定着性を向上させることができる。溶剤系インク(油性インク)は、アミド類の中でも下記一般式(1)で示される化合物そ用いることが好ましい。
Figure 2017001284
式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、当該アルキル基はエーテル基を含んでいてもよい。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基である。R及びRは環状アルキル基で結合されていてもよい。炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で示される化合物は、低吸収性記録媒体に記録する場合に、記録面を溶解して内部にインクを効果的に浸透させることができる。このようにインクが浸透することで、インクが強固に定着し、かつ、インクの表面が乾燥しやすくなる。そのため、得られる画像は、表面乾燥性及び定着性に優れたものとなる。その反面、他の溶剤に比べて上述の色材由来成分が溶解しやすいため、上述の異物によるインク吐出不良の問題が発生しやすい傾向がある。本実施形態に係る溶剤系インクでは、このような異物がトラップされて除去されるため、インク吐出不良の問題が発生しにくい。
これらのアミド類の中でも、表面乾燥性及び定着性の観点から、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、エクアミドM100(商品名、出光興産株式会社製)、エクアミドB100(商品名、出光興産株式会社製)がより好ましい。
本実施形態に係る溶剤系インク中におけるアミド類の含有量は、インクの全質量(10
0質量%)に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
(5)ラクトン類
ラクトン類を含有することにより、低吸収性記録媒体上に付着したインクの定着性を向上させることができる。溶剤系インク(油性インク)は、ラクトン類の中でも下記一般式(2)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 2017001284
式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、当該アルキル基はエーテル基を含んでいてもよい。R及びRは環状アルキル基で結合されていてもよい。炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
上記一般式(2)で示される化合物は、低吸収性記録媒体に記録する場合に、記録面を溶解して内部にインクを効果的に浸透させることができる。このようにインクが浸透することで、インクが強固に定着しやすくなる。そのため、得られる画像は、定着性に優れたものとなる。その反面、他の溶剤に比べて上述の色材由来成分が溶解しやすいため、上述の異物によるインク吐出不良の問題が発生しやすい傾向がある。本実施形態に係る溶剤系インクでは、このような異物がトラップされて除去されるため、インク吐出不良の問題が発生しにくい。
これらのラクトン類の中でも、定着性の観点から、α−アセトラクトン、α−エチルラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナンチオラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ノナラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、2−ブチル−2−エチルプロピオラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン等が好ましい。
本実施形態に係る溶剤系インク中におけるラクトン類の含有量は、インクの全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。
<その他の有機溶剤>
上記極性溶剤以外の有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール類(例えば、エチルアルコール、1−プロパノール、フッ化アルコール等)やエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等)を例示することができる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの有機溶剤を配合する場合には、有機溶剤の含有量は、インクの総質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
<定着樹脂>
本実施形態に係る溶剤系インクは、上述の顔料を記録媒体に定着させるための樹脂(定着樹脂)を含有してもよい。
定着樹脂としては、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。これらの定着樹脂を含有することにより、記録媒体への定着性を向上でき、また耐擦性も向上する。
本実施形態に係る溶剤系インク中における定着樹脂の固形分含有量は、好ましくは0.05質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。定着樹脂の含有量が前記範囲であると、極性溶剤中に溶解した定着樹脂によって、低吸収性記録媒体に対して優れた定着性が得られる。
<アクリル系樹脂>
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂などが挙げられる。
上記のアクリル樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えばアクリペットMF(商品名、三菱レイヨン社製、アクリル樹脂)、スミペックスLG(商品名、住友化学社製、アクリル樹脂)、パラロイドBシリーズ(商品名、ローム・アンド・ハース社製、アクリル樹脂)、パラペットG−1000P(商品名、クラレ社製、アクリル樹脂)などが挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味するものとし、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味するものとする。
<塩化ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂>
塩化ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル及び酢酸ビニルに由来する構成単位を含む共重合体(以下、「塩酢ビ共重合体」ともいう。)等が挙げられるが、これらの中でも塩酢ビ共重合体が好ましい。塩酢ビ共重合体は、上記極性溶剤に溶解させることができる。その結果、極性溶剤に溶解した塩酢ビ共重合体により、記録媒体の表面にインクを強固に定着させることができる。
塩酢ビ共重合体は、常法によって得ることができ、例えば懸濁重合によって得ることができる。具体的には、重合器内に水と分散剤と重合開始剤を仕込み、脱気した後、塩化ビニル及び酢酸ビニルを圧入し懸濁重合を行うか、塩化ビニルの一部と酢酸ビニルを圧入して反応をスタートさせ、残りの塩化ビニルを反応中に圧入しながら懸濁重合を行うことができる。
塩酢ビ共重合体は、その構成として、塩化ビニル単位を70〜90質量%含有することが好ましい。上記範囲であれば、インク中に安定して溶解するため長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。
また、塩酢ビ共重合体は、塩化ビニル単位及び酢酸ビニル単位とともに必要に応じて、
その他の構成単位を備えていても良く、例えばカルボン酸単位、ビニルアルコール単位、ヒドロキシアルキルアクリレート単位が挙げられ、とりわけビニルアルコール単位が好ましく挙げられる。前述の各単位に対応する単量体を用いることで得ることができる。カルボン酸単位を与える単量体の具体例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。ヒドロキシアルキルアクリレート単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。これらの単量体の含有量は、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、例えば単量体全量の15質量%以下の範囲で共重合させることができる。
また、塩酢ビ共重合体は市販されているものを用いてもよく、例えば、ソルバインCN、ソルバインCNL、ソルバインC5R、ソルバインTA5R、ソルバインCL、ソルバインCLL(以上、日信化学工業社製)などが挙げられる。
これらの樹脂の平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは150〜1100、より好ましくは200〜750である。これらの樹脂の平均重合度が上記の範囲である場合、本実施形態に係るインク中に安定して溶解するため、長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。なお、これらの樹脂の平均重合度は、比粘度を測定し、これから算出されるものであり、「JIS
K6720−2」に記載の平均重合度算出方法に準じて求めることができる。
また、これらの樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは10000〜50000、より好ましくは12000〜42000である。なお、数平均分子量は、GPCによって測定することが可能であり、ポリスチレン換算とした相対値として求めることができる。
<界面活性剤>
本実施形態に係る溶剤系インクは、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−315N、347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
また、ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。具体例としては、サーフィノール82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィンSTG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(いずれも日油株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態に係る溶剤系インク中における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
<その他の成分>
本実施形態に係る溶剤系インクには、上記の成分以外にも、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等のキレート剤、防腐剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、及び防黴剤など、所定の性能を付与するための物質を含有することができる。
2.2.4.物性
本実施形態に係る溶剤系インクは、インクジェット用インクを想定している。そのため、例えば組成や配合を調節することで、粘度(25℃における粘度)を好ましくは2mPa・s以上20mPa・s以下、より好ましくは3mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましい。これにより、インクジェット用インクの吐出安定性(吐出量の安定性、液滴の飛行特性等)、吐出応答性(応答速度、高周波対応性(周波数特性等)等)を優れたものとすることができる。なお、インクジェット用インクの粘度は、振動式粘度計を用いた、JIS Z8809に準拠した測定により求めることができる。
本実施形態に係る溶剤系インクは、記録品質とインクジェット用インクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上50mN/mであることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
2.2.5.用途
本実施形態に係る溶剤系インクは、低吸収性記録媒体、特に塩化ビニル系記録媒体などのフィルムメディアに記録した時の画質が優れるため、屋外で展示するサイン用途などに好適となる。塩化ビニル系記録媒体としては、塩化ビニル系樹脂を含有するものであれば特に限定されない。塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体としては、硬質もしくは軟質の塩化ビニル系フィルムまたはシート等が挙げられる。本実施形態に係る溶剤系インクは、塩化ビニル系樹脂基材における無処理表面への画像の記録を可能ならしめるものであり、従来の受容層を有する記録媒体のごとく、高価な記録媒体の使用を不要とする優れた効果を有するが、インク受容層により表面処理された基材であっても適用できることは言うまでもない。
2.3.光硬化型インク
本明細書における「光硬化型インク」とは、重合性化合物を含むインクに光を照射することにより、重合性化合物が重合して固化するインクのことをいう。本実施形態に係る光硬化型インクは、色材並びにDNA担体及び/又は修飾DNA担体の他、重合性化合物や光重合開始剤を含有する。
2.3.1.色材
本実施形態に係る光硬化型インクは、色材を含有する。顔料は、上述の水系インクと同様の種類及び含有量とすることができる。
2.3.2.DNA担体
本実施形態に係る光硬化型インクは、DNA担体及び/又は修飾DNA担体を含有する。DNA担体及び/又は修飾DNA担体は、上述の水系インクと同様の種類及び含有量とすることができる。なお、本実施形態に係る溶剤系インクに含まれるDNA担体は、溶剤系になじみやすいように修飾されたDNAが担持されていることが好ましい。
2.3.3.その他の成分
<重合性化合物>
上記インクに含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により、光照射時
に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる。
重合性化合物としては、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々の重合性基を有する化合物が使用可能である。その具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及びマレイン酸などの不飽和カルボン酸並びにそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、及び不飽和ウレタン、N−ビニル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
重合性化合物の含有量は、硬化性及び吐出安定性が優れたものとなるため、インクの総質量(100質量%)に対し、好ましくは1質量%以上60質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上20質量%以下、特に好ましくは5質量%以上15質量%以下である。当該含有量は少ない方が吐出安定性により優れるが、吐出安定性は重合性化合物の種類などにもよる。そのため、含有量の上限は上記の範囲に限られるものではなく、硬化性がより優れたものとなる点で言えば、含有量は多い方が好ましい。
<光重合開始剤>
本実施形態に係る光硬化型インクは、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて画像を形成するために用いられる。紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
上記光ラジカル重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線が照射されることによる光開裂や水素引抜き等によって、ラジカル(光ラジカル重合開始剤ラジカル)が生成し、ウレタン(メタ)アクリレートやラジカル重合性基を有する化合物(好ましくはラジカル重合性(メタ)アクリレート)を攻撃することで光ラジカル重合を引き起こす。
上記光ラジカル重合開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、α−アミノアルキルフェノン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、インクの硬化性を一層優れたものとすることができるため、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物の組み合わせがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、以下に限定されないが、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ジクロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾフィルフォーメート、アゾビスイソブチリロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、及びジ−tert−ブチルペルオキシドが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、Speedcure TPO、Speedcure DETX(2,4−ジエチルチオキサントン)、Speedcure ITX(2−イソプロピルチオキサントン)(以上、Lambson社製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。上記光重合開始剤は
、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上8質量%以下である。含有量が前記範囲内であると、紫外線硬化速度を十分に発揮させ、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けることができる。
<その他の成分>
本実施形態に係る光硬化型インクは、上記の成分以外にも、スリップ剤(界面活性剤)、重合禁止剤、重合促進剤、浸透促進剤、溶剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤を含有することができる。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、及び増粘剤が挙げられる。
2.3.4.物性
本実施形態に係る光硬化型インクをインクジェットヘッドのノズルから吐出する際、吐出安定性を良好なものとするため、インクの20℃での粘度を35mPa・s以下とするのが好ましく、25mPa・s以下とするのがより好ましい。
また、本実施形態に係る光硬化型インクは、通常のインクジェット用インクで使用される水系インクよりも粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。このようなインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
2.4.作用効果
本実施形態のインク収容容器は、インクジェットインクに含まれる磁性体を含むDNA担体を、磁力印加手段によって収集し、インク収容室内に捕集することができる。また、DNA担体に担持されたデオキシリボ核酸、及び/又は、修飾デオキシリボ核酸によって、平板状の骨格を有する分子をトラップし捕集することができる。そして、DNA担体を磁力印加手段により容器内に留めることができる。したがって、本実施形態のインク収容容器は、色材に由来する異物(例えば色素分子の類似体)を除去ないし低減し、かつ、DNA担体が、例えば記録ヘッドに流入しないように、インクジェットインクを排出することができる。これにより、本実施形態のインク収容容器は、収容されたインクジェットインクの保存安定性を高め、かつ、例えば記録ヘッドの吐出安定性が良好なインクジェットインクを排出することができる。
3.記録装置
本発明に係るインクジェット記録装置(単に「記録装置」ともいう。)は、上述のインク収容容器を備える。本実施形態に係る記録装置は、インク収容容器を備える。記録装置が備えるインク収容容器は、上記の「1.インク収容容器」の項で述べたインク収容容器である。以下、上述のインクカートリッジ100を備えた記録装置1000について例示的に説明する。
記録装置1000は、インクカートリッジ100と、インクカートリッジ100に収容されたインクを記録媒体に付着させる記録ヘッド200と、インクカートリッジ100のインク排出口20と記録ヘッド200とを連通させる流通経路300と、を備える。図4は、記録装置1000を模式的に示す斜視図である。
本実施形態に係る記録装置1000は、インクを吐出する記録ヘッド200を備えてお
り、各種記録媒体に対してインクを付着させて情報を記録することができる。記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、紙、フィルム、布帛、印刷本紙、金属、ガラス、高分子などが挙げられる。また、媒体は、無色透明、半透明、着色透明、有彩色不透明、無彩色不透明のいずれであってもよい。
図4では、カートリッジが4つ装着された状態を示している。これら4つのうち少なくとも1つが上述のインクカートリッジ100であることができる。図4では、すべてがインクカートリッジ100である例を示している。
図4には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。本実施形態において、記録装置1000の使用姿勢では、Z軸が鉛直方向(重力方向)であり、Y軸は、カートリッジホルダー120に対するインクカートリッジ100の着脱方向、X軸は、複数のインクカートリッジ100が並ぶ方向である。より具体的には、+Z軸方向が鉛直上向き方向、−Z軸方向が鉛直下向き方向、+Y軸方向がインクカートリッジ100の引き抜き方向、−Y軸方句がインクカートリッジ100の挿入方向である。
記録装置1000は、インク消費装置ということもできる。記録装置1000の前面のほぼ中央には前面カバー110が設けられ、その+X軸方向側には複数の操作ボタン130が設けられている。前面カバー110は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷用紙が排出される排紙口112が現れる。また、記録装置1000の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられている。給紙トレイに印刷用紙をセットして操作ボタン130を操作すると、給紙トレイから印刷用紙が給紙され、内部で表面に画像等が印刷された後、排紙口112から印刷用紙が排出される。
記録装置1000の上面側には上面カバー114が設けられている。上面カバー114は、奥側で軸支されており、手前側を持ち上げて上面カバー114を開くと、記録装置1000の内部の状態を確認したり、あるいは記録装置1000の修理などを行ったりすることができる。
記録装置1000の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙上にインクドットを形成する記録ヘッド200や、記録ヘッド200を往復動させる駆動機構230が搭載されている。記録ヘッド200の底面側(印刷用紙に向いた側)には、複数のノズルが設けられており、ノズルから印刷用紙に向かってインクが吐出される。
インクカートリッジ100に収容されているインクジェットインクは、磁性体を含むDNA担体を除いて記録ヘッド200に導入される。インクカートリッジ100は、記録ヘッド200とは別の位置に設けられたカートリッジホルダー120に装填される。インクカートリッジ100内のインクは、流通経路300を介して記録ヘッド200に供給される。流通経路300は、例えば、高分子で成形されたチューブとすることができる。流通経路300は、インクカートリッジ100のインク排出口20と記録ヘッド200とを連通させている。
記録ヘッド200には、インクの種類毎にノズルが設けられている。それぞれのノズルには、対応するカートリッジ内のインクが、流通経路300を介して供給される。なお、本実施形態では、記録装置1000は4種類のインクを用いて印刷を行うが、5種類以上あるいは3種類以下の種類のインクを用いて印刷を行うこととしてもよい。
記録ヘッド200を往復動させる駆動機構230は、タイミングベルトと、タイミングベルトを駆動するための駆動モーターなどを備える。
記録ヘッド200を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられている。ホームポジションにはメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、記録ヘッド200の底面側で噴射ノズルが形成されている面(ノズル面)に押し付けられて、噴射ノズルを取り囲むように閉空間を形成するキャップ280や、記録ヘッド200のノズル面に押し付けるためにキャップ280を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ280が記録ヘッド200のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などを備える。
記録装置1000の内部には、印刷用紙を紙送りするための図示しない紙送り機構や、記録装置1000の全体の動作を制御する制御部240が搭載されている。制御部240は、外部装置とのインターフェース、CPU、ROM、RAM等を備えている。記録ヘッド200を往復動させる動作や、印刷用紙を紙送りする動作、ノズルからインクを吐出する動作、正常に印刷可能なようにメンテナンスを実行する動作などは、制御部240によって制御されてもよい。
なお、ここではシリアル型のインクジェット記録装置を例示しているが、記録装置は、ライン型のインクジェット記録装置であってもよい。また、記録の方式としては、記録ヘッドのノズル孔から液滴として吐出して該液滴を媒体に付着させることができれば、特に制限されない。例えば、記録の方式としては、静電吸引方式、ポンプ圧力により液滴を噴射させる方式、圧電素子を用いる方式、インクを微小電極で加熱発泡させ液滴を噴射させる方式、などを挙げることができる。
また、インクジェット記録装置は、上記の構成の他に、装置筐体、記録ヘッドのキャリッジ機構、ローラー、各種駆動部、各種制御部、センサー類、媒体搬送機構、トレイ、操作パネル等の構成を適宜含むことができる。また、記録装置は、インク収容容器が電磁石を含む場合に、必要に応じて電力を供給できる構成を含んでもよい。
3.2.その他の態様
本実施形態の記録装置1000として、上述のインクカートリッジ100を備えたものを例示した。しかし、本実施形態の記録装置1000は、上述のインクタンク150を備えていてもよいし、上述のインクパック160を備えていてもよい。インクカートリッジ、インクタンク、インクパックのいずれの場合であっても、既述のインク収容容器であり、磁力印加手段40が備わっている。記録装置1000が、これらのインクタンクやインクパックを備える場合であっても、上記説明したインクカートリッジ100を備えた場合と、実質的に同様に構成することができる。
3.3.作用効果
本実施形態の記録装置1000によれば、インクジェットインクに含まれる磁性体を含むDNA担体を、インク収容容器の磁力印加手段40によって収集し、例えば、記録ヘッド200にDNA担体を流入させないようにすることができる。また、DNA担体には、デオキシリボ核酸、及び/又は、修飾デオキシリボ核酸が担持されており、平板状の骨格を有する分子をトラップし捕集することができる。したがって、本実施形態のインクジェット記録装置1000は、色材に由来する異物(例えば色素分子の類似体)を除去ないし低減し、かつ、DNA担体が、記録ヘッド200に流入しないようにすることができる。これにより、本実施形態のインクジェット記録装置1000は、インクジェットインクの保存安定性を高め、かつ、記録ヘッド200の吐出安定性を良好に保つことができる。
4.実施例
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らな
い限り質量基準である。
4.1.水性インクの作製
表1に示す水性インクを、下記に従って作製した。表1に示す材料を表1に示す含有量で(単位:質量%)で、それぞれ混合し、十分に撹拌した。この混合液を孔径5μmの金属フィルターでろ過した後、真空ポンプを用いて脱気処理して、実施例及び比較例で用いる水性インク(水系顔料インク)を得た。表1に示す水性顔料インクは、インク収容容器として、図1に示すようなインクカートリッジに充填した。
Figure 2017001284
また、表2に示す水性インクを、下記に従って作製した。まず、分散染料としてC.I.ディスパースレッド60(DR60)と、アニオン性界面活性剤としてのリグニンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(日本製紙ケミカル社製、商品名「パールレックスDP」)と、イオン交換水とからなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散処理を行った。分散処理後、イオン交換水を用いて希釈し、次いで、該分散液をガラス繊維濾紙GC−50(東洋濾紙株式会社製、フィルター孔径0.5μm)でろ過し、粒子サイズの大きい成分を除去することで水性分散体を得た。次に、上記のようにして得られた水性分散液と、表2に示す材料とを所定の割合で混合することにより、各水性インクを得た。表2に示す水性分散染料インクは、インク収容容器として、図2に示すようなインクタンクに充填した。
Figure 2017001284
4.2.油性インクの作製
表3に示す油性インク(溶剤インク)を、下記に従って作製した。まず容器に、表3に示す含有量(単位:質量%)で、有機溶剤を混合し、スターラーを用いて30分間撹拌した。次に、得られた混合溶剤の一部を取り分けて、Solsperse37500(LUBRIZOL社製)およびシアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、クラリアント社製)を所定量添加して、ホモジナイザーを用いて粉砕処理した。その後、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルで分散処理を行うことにより、顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液に、有機溶剤の残部よび表3に記載の材料を所定量添加し、さらに1時間混合撹拌してから、5μmのPTFE製メンブレンフィルターを用いてろ過することで、表3に記載の各油性インクを得た。表3に示す油性インクは、インク収容容器として、図3に示すようなインクパックに充填した。なお、表3に示す各成分の略称は以下の通りである。
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(日信化学工業株式会社製、商品名「ソルバインCL」)
・BYK315(ビックケミージャパン株式会社製)
・パラロイドB60(ローム・アンド・ハース社製、アクリル樹脂)
・エクアミドM100(出光興産株式会社製、塩化ビニル膨潤剤)
Figure 2017001284
4.3.UVインク(光硬化型インク)の作製
表4中の各材料を表4に示す含有量で十分に混合撹拌した後、真空ポンプで脱気することで、各UVインクを得た。表4に示すUVインクは、インク収容容器として、図3に示すようなインクパックに充填した。なお、表4に示す各成分の略称は以下の通りである。<色材>
・PV19(C.I.ピグメントバイオレット19)
<ラジカル重合性化合物>
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社製)
・PEA(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学社製)
・DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート、サートマー社製)
<光重合開始剤>
・IRGACURE819(BASF社製商品名、固形分100%)
・DAROCURE TPO(BASF社製商品名、固形分100%)
・Speedcure DETX(Lambson社製商品名、固形分100%)
<重合禁止剤>
・MEHQ(p−メトキシフェノール)
<シリコン系界面活性剤>
・UV3500(ビックケミージャパン株式会社製)
Figure 2017001284
4.4.水性インク用DNA担体(A)の調製
機能性ナノ磁性粒子FG beads(多摩川精機株式会社製:型式TAS8848N1010)に二本鎖DNAを固定化(担持)した。固定化は、多摩川精機株式会社が提唱する実験プロトコルに従って行った。この操作により、2μg/mg beadsの濃度で二本鎖DNAが固定化された。
このようにして作製したDNA担体(A)を水性インクに加えると、インク中に溶解している微量の色素分子及び色素類似体分子が、担体上に固定化された二本鎖DNA中にインターカレートするため、インクから除去できる。
4.5.油性インク又はUVインク用修飾DNA担体(B)の調製
パラトルエンスルホン酸−水和物の存在下で、n−ドデカノールとL−アラニンから人工脂質を合成した。生成物は赤外線分析、核磁気共鳴の機器分析結果および元素分析値に
基づき同定した。次に、上記で作製した水性インク用DNA担体(A)中のリン酸アニオンに対して、1.2当量の人工脂質を反応させた。反応はDNA担体(A)を含む水溶液に人工脂質水溶液を滴下することで行った。反応後、DNA担体を反応液中から取り出し、イオン交換水を用いてDNA担体を洗浄することで、脂質によって修飾された修飾DNA担体(B)(油性又はUVインク用)を得た。
このようにして作製した修飾DNA担体(B)を油性インク又はUVインクに加えると、インク中に溶解している微量の色素分子ならびに色素類似体分子が、担体上に固定化された二本鎖DNA中にインターカレートするため、インクから除去できる。
4.6.各インクの初期充填について
各表に従い作製したインクに、DNA担体を加え、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月常温で放置した後、インクカートリッジ又はインクタンクに各インクを充填した(表5)。その後、インクを充填した専用プリンターを用いて10分間連続して印刷を行い、全てのノズルから正常にインクが吐出していることを確認した(初期充填性の確認)。
Figure 2017001284
なお、インク中に含まれるDNA担体は、図1〜図3に示す各インクカートリッジ、インクタンク及びインクパック中の磁性シートにより回収されるため、記録ヘッドにはDNA担体を含まない状態で各インクが供給されるようにした。
4.7.水性インクの評価
各インクをプリンターに初期充填後、下記に示す評価を行い、結果を表に記載した。
4.7.1.不純物評価
水性インクを充填したプリンターを40℃で3ヶ月間放置後、プリンターからヘッドを取りはずし、ノズル先端を観察することで異物の有無を確認した。
4.7.2.目詰まり放置回復性評価
水性インクを充填したプリンターを40℃で3ヶ月間放置後、全ノズルが初期と同等に吐出するまで、クリーニング動作を繰り返し、以下の判断基準により目詰まり回復性を評価した。
○:ヘッドクリーニング2回以内で初期と同等に印刷できる。
△:ヘッドクリーニング2回以内では初期と同等の印刷ができないが、ヘッドクリーニングを繰り返すことで、初期と同等の印刷ができる。
×:ヘッドクリーニングを何度繰り返しても、初期と同等の印刷ができない。
4.7.3.吐出安定性評価
水性インクを充填したプリンターを40℃で3ヶ月間放置後、クリーニング動作を繰り返し、全ノズルが初期と同等に吐出することを確認したのち、マイクロソフトワード文章(文字サイズ111ポイント、標準、MSPゴシック)を4000字/頁の割合で500頁印刷し、500頁目の文章に関して、下記評価基準に従って吐出安定性の評価を行った。
○:全く印字乱れがない。
△:1〜3カ所の印字乱れがある。
×:4カ所以上の印字乱れがある、又は、クリーニングをしても全ノズルから初期同等にインクが吐出しない。
4.8.油性インク及びUVインクの評価
各インクをプリンターに初期充填後、それぞれ、不純物評価、目詰まり放置回復性評価、及び吐出安定性評価を、水性インクと同様の方法で行った。
4.9.評価結果
表1〜4の結果をみると、各実施例では、いずれの種のインクであっても、長期間保存後に、不純物(異物)が生じず、目詰まりも生じず、かつ、吐出安定性も良好であった。このことから、DNA担体によって、色材に由来する異物がトラップされ、異物の発生が抑制されていることが分かった。また、目詰まりが生じないことから、磁性体を含む担体(DNA担体)が磁性シート(磁力印加手段)によって収集され、記録ヘッドにDNA担体が流入していないことが分かった。
一方、比較例1,5,8,11をみると、色材が配合されていないインクでは、異物の発生がないことが分かる。このことから、異物は色材に由来していると考えられる。さらに、各比較例の結果から、色材が配合され、DNA担体が配合されない場合には、異物が発生し、各評価結果が不十分となることが分かった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…液体収容室、12…成形体、20…インク排出口、30…インク導入口、40…磁力印加手段、100…インクカートリッジ(インク収容容器)、150…インクタンク(インク収容容器)、160…インクパック(インク収容容器)、110…前面カバー、112…排紙口、114…上面カバー、120…カートリッジホルダー、130…操作ボタン、200…記録ヘッド、230…駆動機構、240…制御部、280…キャップ、300…流通経路、1000…記録装置

Claims (5)

  1. 平板状の骨格を有する分子からなる色材と、デオキシリボ核酸及び修飾デオキシリボ核酸の少なくとも一種が担持され、磁性体を含むDNA担体と、溶媒と、を含む、インクジェットインクを収容し、
    磁力印加手段を備えた、インク収容容器。
  2. 請求項1において、
    前記磁力印加手段は、永久磁石を含む、インク収容容器。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記磁力印加手段は、電磁石を含む、インク収容容器。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記色材は、顔料、分散染料及び昇華染料から選択される少なくとも一種である、インク収容容器。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインク収容容器を備えた、インクジェット記録装置。
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