JP2016539926A - 抗凝血薬の解毒剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、抗凝固薬(特にダビガトラン)に対する抗体分子、及び、このような抗凝固薬の解毒剤としてのそれらの使用に関する。

Description

本発明は、医薬の分野、特に抗凝血薬治療の分野に関する。
背景情報
抗凝血薬は、凝血を防止する物質である;すなわち、抗凝血薬は血液が凝固するのを妨げる。抗凝血薬は、血栓性障害のための薬物療法としてヒトの治療に、例えば、易罹患患者における深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、及び脳卒中の一次予防並びに二次予防に広く使用されている。
重要なクラスの経口抗凝血薬(例えばワルファリンを含むクマリン類)は、ビタミンKの作用に拮抗することによって作用する。第二のクラスの化合物は、アンチトロンビンIII又はヘパリン補因子IIなどの補因子を介して間接的に凝血を阻害する。これには、アンチトロンビンIIIを介して主に第Xa因子(及びそれよりも低い程度でトロンビン)の阻害を触媒するいくつかの低分子量ヘパリン製品(ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン)が挙げられる。より小さなオリゴ糖鎖(フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス)はアンチトロンビンIIIを介して第Xa因子のみを阻害する。ヘパリノイド(ダナパロイド、スロデキシド、デルマタン硫酸)は両方の補因子を介して作用し、第Xa因子及びトロンビンの両方を阻害する。第三のクラスは、凝血の直接阻害剤に相当する。直接第Xa因子阻害剤としては、アピキサバン、エドキサバン、オタミキサバン、リバーロキサバンが挙げられ、直接トロンビン阻害剤としては、二価ヒルジン(ビバリルジン、レピルジン、デシルジン)、並びに一価化合物であるアルガトロバン及びダビガトランが挙げられる。
血液凝固は出血を止める生物学的機序であるので、抗凝血療法の副作用は望まれない出血事象であり得る。それ故、このような抗凝血薬に関連した出血事象が起こった場合にそれらを止めることのできる解毒剤を提供することが望ましい(非特許文献1)。これを達成する1つの方法は、投与後に患者に存在する抗凝血化合物の活性を中和することによる。
抗凝血薬の現在入手可能な解毒剤は、プロタミン(ヘパリンの中和用)、及びワルファリンのようなビタミンKアンタゴニストを中和するためのビタミンKである。新鮮凍結血漿及び組換え第VIIa因子もまた、低分子量ヘパリン処置下の患者であって、大きな外傷又は重度の出血を患っている患者において、非特異的解毒剤として使用されている(非特許文献2)。また、ヘパリン又は低分子量ヘパリンの解毒剤としてのプロタミンフラグメント(特許文献1)及び小型合成ペプチド(特許文献2);並びにトロンビン阻害剤用の解毒剤としてのトロンビンムテイン(特許文献3)も報告されている。プロトロンビンの中間体及び誘導体は、ヒルジン及び合成トロンビン阻害剤に対する解毒剤として報告されている(特許文献4及び特許文献5)。直接第Xa因子阻害剤については、不活性第Xa因子アナログが解毒剤として提案されている(特許文献6)。更に、組換え第VIIa因子は、間接アンチトロンビンIII依存性第Xa因子阻害剤(例えばフォンダパリヌクス及びイドラパリヌクス)の作用を逆転させるのに使用されている(非特許文献3、非特許文献4)。抗凝血薬を逆転させる方法の総説は、非特許文献5に提供されている。
特許文献7及び特許文献8には、ダビガトランに結合し、ダビガトランの活性を中和し得る抗体分子が開示されている。
抗凝血療法についての改良された解毒剤を提供する、特に、具体的な解毒剤がこれまでのところ開示されていないダビガトランのような直接トロンビン阻害剤のための解毒剤を提供する必要性がある。
米国特許第6624141号明細書 米国特許第6200955号明細書 米国特許第6060300号明細書 米国特許第5817309号明細書 米国特許第6086871号明細書 国際公開第2009/042962号 国際公開第2011/089183号 国際公開第2012/130834号
Zikria and Ansell, Current Opinion in Hematology 2009, 16(5): 347-356 Lauritzen, B. et al, Blood, 2005, 607A-608A Bijsterveld, NR et al, Circulation, 2002, 106: 2550-2554 Bijsterveld, NR et al, British J. of Haematology, 2004 (124): 653-658 Schulman and Bijsterveld, Transfusion Medicine Reviews 2007, 21(1): 37-48
発明の簡単な要旨
一局面では、本発明は、抗凝血薬の活性を中和できる抗体分子に関する。
更なる局面では、該抗体分子は抗凝血薬に対する結合特異性を有する。
更なる局面では、抗凝血薬は直接トロンビン阻害剤である。
更なる局面では、抗凝血薬はダビガトランである。
別の局面では、本発明は、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、及び/又はダビガトランのO−アシルグルクロニドに対する抗体分子に関する。
更なる局面では、本発明は、ヒトにおける減少した免疫原性を有する、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、及び/又はダビガトランのO−アシルグルクロニドに対する抗体分子に関する。
更なる局面では、本発明は、改善された物理化学的特性、特に改善された水性溶媒溶解性を有する、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、及び/又はダビガトランのO−アシルグルクロニドに対する抗体分子に関する。
更なる局面では、本発明は、宿主細胞における改善された生産性、特に結果として改善された生産収率を有する、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、及び/又はダビガトランのO−アシルグルクロニドに対する抗体分子に関する。
更なる局面では、抗体分子は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体のフラグメント、特にFab、Fab’又はF(ab’)フラグメント、一本鎖抗体、特に一本鎖可変フラグメント(scFv)、ドメイン抗体、ナノボディ、ダイアボディ、又はDARPinである。
更なる局面では、本発明は、医薬に使用するための上記の抗体分子に関する。
更なる局面では、本発明は、抗凝血療法の副作用の治療又は予防に使用するための上記の抗体分子に関する。
更なる局面では、副作用は出血事象である。
更なる局面では、本発明は、上記の抗体分子の有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、抗凝血療法の副作用の治療法又は予防法に関する。
別の局面では、本発明は、容器及びラベルと一緒に前記の抗体分子を含むキットに関する。
重鎖5Cの可変ドメイン(配列番号8)及びFAB6の重鎖の可変ドメインの配列アラインメント。 ダビガトラン−Fabの結合曲線。一定濃度のFabを漸増濃度のダビガトランと共にインキュベーションした。次いで、遊離Fabの濃度を、ニュートラアビジンビーズに結合させたダビガトラン−ビオチンコンジュゲート上に、結合していないFabを捕捉することによって決定した。 構造データ:一連の実験的に決定されたFAB5C/18 / FAB5C/21との複合体中のダビガトランの結合様式は、ダビガトランがそのベンズアミジン部分を用いて疎水性ポケット(上の図の左下)において堅く結合し、一方、ベンゾイミダゾール部分、カルボキシアミド部分、ピリジン部分及びカルボキシル部分は、異なる結晶系及び結晶学的に独立したプロトマーにおいて僅かに異なる配向を示すことを示しており、このことは、ダビガトランがFabとの複合体中で結合している時にはこれらの基の位置はある程度変動することを示している。後者の基が上記の配向において右へとシフトすればするほど、ダビガトランはFabパラトープの右部分へとより良くフィットするようになり(例えばベンゾイミダゾールの右へのTyr33とのл−スタッキング相互作用、及びTyr33とArg54との間のポケットにおけるピリジン部分のより深い貫入)、一方、左側では、Tyr103へのedge-to-face相互作用が失われるか、又は、Tyr33はAsp33L(Asp33Lは示されていない)とのそのOH基の水素結合を壊さなければならないかのいずれかである。Tyr103は左上に示される。Tyr103をTrp103で置換すると、ベンゾイミダゾール部分の芳香族edge-to-face(Trp103)又はface-to-face(Tyr33)のその両側における相互作用により結合部位にダビガトランがより堅くフィットする。 構造データ:表面の図は、FAB5C/18(左)と比較してFAB6(右の画像)におけるダビガトランの改善された部位の占有を示す。 ダビガトランの連続注入を用いて前処置されたラットにおける、静脈内投与後のFAB6によるダビガトラン抗凝血活性の中和。抗凝血活性は、3U/mLのトロンビンを使用してトロンビン時間として測定された。データは平均値±標準誤差として示した。n=4〜8。
発明の詳細な説明
一局面では、本発明は、ダビガトランの活性を中和できる抗体分子に関する。
国際公開第2012/130834号は、タンパク質データバンクにおける既知の抗体の平均と比べてあまり溶媒に露出されていない疎水性表面を有する抗ダビガトラン抗体分子VH5c/Vk18及びVH5c/Vk21(本明細書ではそれぞれFAB5C/18及びFAB5C/21と称する)を中和することを開示する。このことは、これらの化合物が、水性媒体中での優れた溶解度及び低い凝集傾向を有し、これによりそれらは高い抗体濃度を有する安定な薬物製剤に特に適したものとなることを意味している。更に、これらの分子は非常に高い産生力価で産生され得る。
本発明は今回、前記の抗体によって共有される重鎖可変ドメイン5Cと比較して、重鎖のCDR3において単一のアミノ酸の置換を有する抗ダビガトラン抗体分子を提供する。この単一の点突然変異(重鎖の103位において、チロシンをトリプトファン残基で置換)によって、結合親和性を10倍増加させることができ、一方で改変された分子は依然として、その親分子の有益な物理化学的特性(溶解度、無凝集)を有する。
以下において、配列番号への言及は、特記しない限り本出願の一部である表1及び配列表の配列を指す。
本発明の一局面では、抗体分子はダビガトランに対する結合特異性を有し、配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号4のCDR3を有する重鎖可変ドメインと、配列番号5のCDR1、配列番号6のCDR2、及び配列番号7のCDR3を有する軽鎖可変ドメインとを含む。
本発明の別の局面では、抗体分子は、配列番号9の重鎖可変ドメインと配列番号10の軽鎖可変ドメインとを含む。
本発明の別の局面では、抗体分子は、配列番号9の重鎖可変ドメインと配列番号11の軽鎖可変ドメインとを含む。
本発明の別の局面では、抗体分子は、配列番号13の重鎖と配列番号14の軽鎖とを含む。
本発明の別の局面では、抗体分子は、配列番号13の重鎖と配列番号15の軽鎖とを含む。
本発明の別の局面では、抗体分子は、配列番号13の重鎖と配列番号14の軽鎖とからなる。
抗体(免疫グロブリンとしても知られる。Igと略称される)は、脊椎動物の血液又は他の体液中に見られ得るガンマグロブリンタンパク質であり、細菌及びウイルスなどの外来物質を同定及び中和するために免疫系によって使用される。それらは典型的には、基本的な構造単位(各々2本の大きな重鎖及び2本の小さな軽鎖を有する)からできており、例えば、1つの単位を有するモノマー、2つの単位を有するダイマー、又は5つの単位を有するペンタマーを形成する。抗体は、非共有結合的な相互作用によって、抗原として知られる他の分子又は構造に結合することができる。この結合は、抗体が高い親和性で特定の構造にのみ結合するという意味で特異的である。抗体によって認識される抗原の独特な部分はエピトープ、又は抗原性決定基と呼ばれる。エピトープに結合する抗体の部分は時にパラトープと呼ばれ、いわゆる可変ドメイン、すなわち抗体の可変領域(Fv)に存する。可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)によって隔てられた3つのいわゆる相補性決定領域(CDR)を含む。
本発明の文脈内で、CDRへの参照は、Kabat(E.A. Kabat, T.T. Wu, H. Bilofsky, M. Reid-Miller and H. Perry, Sequence of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda (1983))とともに、Chothia(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 1987, 196: 901-917)の定義に基づいている。
当該技術では抗体が更に開発されており、抗体を医学及び科学技術における多用途の道具としている。したがって、本発明の文脈において、「抗体分子」又は「抗体」(本明細書において同義的に使用される)という用語は、例えば2本の軽鎖及び2本の重鎖、又はラクダ科の種におけるように2本の重鎖だけを含む、自然界に見出され得る抗体だけを包含するのではなく、抗原への結合特異性及び免疫グロブリンの可変ドメインとの構造的類似性を有する少なくとも1つのパラトープを含む全ての分子も更に包含する。
したがって、本発明の抗体分子は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体のフラグメント、特にFv、Fab、Fab’又はF(ab’)フラグメント、一本鎖抗体、特に一本鎖可変フラグメント(scFv)、小モジュラー免疫薬(Small Modular Immunopharmaceutical)(SMIP)、ドメイン抗体、ナノボディ、ダイアボディであり得る。
ポリクローナル抗体は、異なるアミノ酸配列を有する抗体分子の集合を表し、当技術分野で周知のプロセスにより抗原で免疫化した後に脊椎動物の血液から得られ得る。
モノクローナル抗体(mAb又はmoAb)は、アミノ酸配列が同一の単一特異性抗体である。それらは、ハイブリドーマ技術によって、特異的抗体を産生するB細胞と骨髄腫(B細胞癌)細胞の融合体のクローンを示すハイブリッド細胞株(ハイブリドーマと呼ばれる)から製造され得る(Kohler G, Milstein C. Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature 1975; 256: 495-7)。或いは、モノクローナル抗体は、宿主細胞での組換え発現によって製造され得る(Norderhaug L, Olafsen T, Michaelsen TE, Sandlie I. (May 1997). 「Versatile vectors for transient and stable expression of recombinant antibody molecules in mammalian cells」、J Immunol Methods 204 (1): 77-87;下記も参照されたい)。
ヒトに適用するために、マウスのような他の種に本来は由来する抗体の免疫原性を減少させることがしばしば望ましい。これは、キメラ抗体の構築によって、又は「ヒト化」と呼ばれるプロセスによって、行なうことができる。この文脈において、「キメラ抗体」は、別の種(例えばヒト)に由来する配列部分(例えば定常ドメイン)に融合したある種(例えばマウス)に由来する配列部分(例えば可変ドメイン)を含む抗体であると理解される。「ヒト化抗体」は、非ヒト種に本来は由来する可変ドメインを含む抗体であって、その可変ドメインの全体的な配列がヒト可変ドメインの配列により密接に類似するように、特定のアミノ酸を変異させた抗体である。抗体をキメラ化及びヒト化する方法は当技術分野において周知である(Billetta R, Lobuglio AF. 「Chimeric antibodies」. Int Rev Immunol. 1993; 10(2-3): 165-76; Riechmann L, Clark M, Waldmann H, Winter G (1988). 「Reshaping human antibodies for therapy」. Nature: 332: 323)。
更に、例えばファージディスプレイによって又はトランスジェニック動物を使用して、ヒトゲノムに由来する配列に基づき抗体を作り出すための技術が開発されている(国際公開第90/05144号; D. Marks, H.R. Hoogenboom, T.P. Bonnert, J. McCafferty, A.D. Griffiths and G. Winter (1991) 「By-passing immunisation. Human antibodies from V-gene libraries displayed on phage」 J.Mol.Biol., 222, 581-597; Knappik et al., J. Mol. Biol. 296: 57-86, 2000; S. Carmen and L. Jermutus, 「Concepts in antibody phage display」. Briefings in Functional Genomics and Proteomics 2002 1(2): 189-203; Lonberg N, Huszar D. 「Human antibodies from transgenic mice」 Int Rev Immunol. 1995; 13(1): 65-93.; Brueggemann M, Taussig MJ. 「Production of human antibody repertoires in transgenic mice」 Curr Opin Biotechnol. 1997 Aug; 8(4): 455-8)。このような抗体は本発明の文脈において「ヒト抗体」である。
本発明の抗体分子には、Fab、Fab’又はF(ab’)フラグメントのような抗原結合特性を保持する免疫グロブリンのフラグメントも挙げられる。このようなフラグメントは、免疫グロブリンのフラグメント化によって、例えばタンパク質分解によって、又はこのようなフラグメントの組換え発現によって、得られ得る。例えば、免疫グロブリンの消化は、慣用の技術によって、例えばパパイン若しくはペプシン(国際公開第94/29348号)又はエンドプロテイナーゼLys−C(Kleemann, et al, Anal. Chem. 80, 2001-2009, 2008)を使用して、達成することができる。抗体のパパイン又はLys−C消化によって、典型的には、それぞれが単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合フラグメント(いわゆるFabフラグメント)及び残余のFcフラグメントが製造される。ペプシン処理によってF(ab’)が生産される。宿主細胞での組換え発現によってFab分子を製造する方法について、下記により詳細に概説する。
免疫グロブリンの可変ドメイン又はこのような可変ドメインに由来する分子を異なる分子事情に配置するために、多くの技術が開発されている。それらもまた、本発明による「抗体分子」と見なすべきである。一般に、これらの抗体分子は、免疫グロブリンと比較してサイズが小さく、単一のアミノ酸鎖を含み得るか、又は数本のアミノ酸鎖から構成され得る。例えば、一本鎖可変フラグメント(scFv)は、免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが、短いリンカー、通常はセリン(S)又はグリシン(G)で互いに連結されている、融合体である(国際公開第88/01649号;国際公開第91/17271号;Huston et al; International Reviews of Immunology, Volume 10, 1993, 195-217)。「単一ドメイン抗体」又は「ナノボディ」は、単一のIg様ドメインに抗原結合部位を有する(国際公開第94/04678号;国際公開第03/050531号、Ward et al., Nature. 1989 Oct 12; 341(6242): 544-6; Revets et al., Expert Opin Biol Ther. 5(1): 111-24, 2005)。同一抗原又は異なる抗原に対して結合特異性を有する1つ以上の単一ドメイン抗体を互いに連結させてもよい。ダイアボディは、2つの可変ドメインを含む2本のアミノ酸鎖からなる二価抗体分子である(国際公開第94/13804号, Holliger et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1993 Jul 15; 90(14): 6444-8)。抗体様分子の他の例は、免疫グロブリンスーパーファミリー抗体である(IgSF;Srinivasan and Roeske, Current Protein Pept. Sci. 2005, 6(2): 185-96)。異なる考え方が、定常ドメインCH1を持たない一本鎖ヒンジドメイン及びエフェクタードメインに連結されたFvドメインを含む、いわゆる小モジュラー免疫薬(SMIP)につながっている(国際公開第02/056910号)。
抗体分子は、その抗体分子の特性に所望の影響を有する他の分子実体に融合されていても(融合タンパク質として)、又は別の方法で(共有結合又は非共有結合により)連結されていてもよい。例えば、特に一本鎖抗体又はドメイン抗体の場合、抗体分子の薬物動態特性、例えば血液などの体液中での安定性、を改善することが望ましいことがあり得る。これに関して、特に循環中でのこのような抗体分子の半減期を延長するために多数の技術が開発されている(例えば、PEG化(国際公開第98/25971号;国際公開第98/48837号;国際公開第2004/081026号)、抗体分子を、アルブミンのような血清タンパク質に対して親和性を有する別の抗体分子に融合させるか若しくは別の方法で共有結合させること(国際公開第2004/041865号;国際公開第2004/003019号)、又はアルブミン若しくはトランスフェリンのような血清タンパク質の全部若しくは一部との融合タンパク質として抗体分子を発現させること(国際公開第01/79258号))。
更なる局面では、抗体分子は、抗凝血薬に対する結合特異性を有する。「結合特異性」は、抗体分子が、構造的に無関係の分子よりも抗凝血薬に対して有意に高い結合親和性を有することを意味する。
親和性は、抗体分子上の単一の抗原結合部位と単一のエピトープとの間の相互作用である。親和性は、会合定数K=kass/kdiss、又は解離定数K=kdiss/kassによって表わされる。
本発明の一局面では、抗体は、例えば、表面プラズモン共鳴分析によって決定される場合に、0.1pM〜100μM、好ましくは1pM〜100μM、好ましくは1pM〜1μMの範囲のK値を有する親和性で抗凝血薬に結合する(Malmqvist M., 「Surface plasmon resonance for detection and measurement of antibody-antigen affinity and kinetics」, Curr Opin Immunol. 1993 Apr; 5(2): 282-6)。抗体親和性はまた、結合平衡除外アッセイ(kinetic exclusion assay)(KinExA)技術を使用して測定することもできる(Darling, R.J., and Brault P-A., 「Kinetic exclusion assay technology: Characterization of Molecular Interactions」 ASSAY and Drug Development Technologies. 2004, Dec 2(6): 647-657)。
抗体分子の結合親和性は、親和性成熟として公知のプロセスによって高められ得る(Marks et al., 1992, Biotechnology 10: 779-783; Barbas, et al., 1994, Proc. Nat. Acad. Sci, USA 91: 3809-3813; Shier et al., 1995, Gene 169: 147-155)。それ故、親和性成熟抗体もまた、本発明に包含される。
本発明の更なる局面では、抗体分子は、抗凝血薬の活性を中和できる。すなわち、抗凝血薬は、抗体分子に結合すると、もはやその抗凝血活性を発揮することができないか、又は、有意に減少した大きさでこの活性を発揮する。好ましくは、抗凝血活性は、抗体が結合すると、問題の当該抗凝血薬にとって適切な活性アッセイで、特にエカリン凝固時間又はトロンビン凝固時間などのトロンビン感受性の凝固アッセイで決定される場合に、少なくとも2倍、5倍、10倍、又は100倍減少する(H. Bounameaux, Marbet GA, Lammle B, et al. 「Monitoring of heparin treatment. Comparison of thrombin time, activated partial thromboplastin time, and plasma heparin concentration, and analysis of the behaviour of antithrombin III」 American Journal of Clinical Pathology 1980 74(1): 68-72)。
本発明の抗体分子を製造するために、当業者は、当技術分野で周知の多様な方法から選択し得る(Norderhaug et al., J Immunol Methods 1997, 204 (1): 77-87; Kipriyanow and Le Gall, Molecular Biotechnology 26: 39-60, 2004; Shukla et al., 2007, J. Chromatography B, 848(1): 28-39)。
本発明の文脈における好ましい抗凝血薬は、化学式(II)
Figure 2016539926

を有するダビガトラン(CAS 211914−51−1、N−[2−(4−アミジノフェニルアミノメチル)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−5−イルカルボニル]−N−(2−ピリジル)−β−アラニン)である。
ダビガトランは、トロンビン阻害作用及びトロンビン時間延長作用を有する化合物を1−メチルー2−[N−(4−アミジノフェニル)−アミノメチル]−ベンゾイミダゾール−5−イル―カルボン酸−N−(2−ピリジル)−N−(2−ヒドロキシカルボニルエチル)−アミドの名称で開示している国際公開第98/37075号から公知である。Hauel et al. J Med Chem 2002, 45(9): 1757-66も参照されたい。
ダビガトランは、式(III)
Figure 2016539926

のプロドラッグとして適用される。
式IIIの化合物(名称 ダビガトランエテキシラート、CAS 211915−06−9;エチル3−[(2−{[4−(ヘキシルオキシカルボニルアミノ−イミノ―メチル)−フェニルアミノ]−メチル}−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−5−カルボニル)−ピリジン−2−イル―アミノ]−プロピオネート)は体内に入った後で活性化合物(II)に変換される。ダビガトランエテキシラートの好ましい多形体はダビガトランエテキシラートメシラートである。
ダビガトランの主な適応症は、深部静脈血栓症の術後予防、確立した深部静脈血栓症の処置、及び心房細動を有する患者における脳卒中の予防である(Eriksson et al., Lancet 2007, 370(9591): 949-56; Schulman S et al, N Engl J Med 2009, 361(24): 2342-52; Connolly S et al., N Engl J Med 2009, 361(12): 1139-51; Wallentin et al., Lancet 2010, 376(9745): 975-983)。
ヒトの体内では、カルボキシラート部分のグルクロン酸抱合がダビガトランの主なヒト代謝経路である(Ebner et al., Drug Metab. Dispos. 2010, 38(9): 1567-75)。それは1−O−アシルグルクロニド(βアノマー)の形成をもたらす。1−O−アシルグルクロニドは、わずかに加水分解されてアグリコンになるのに加えて、水溶液中で非酵素的アシル転移を受けて、2−O−アシルグルクロニド、3−O−アシルグルクロニド、及び4−O−アシルグルクロニドを形成し得る。精製した1−O−アシルグルクロニド及びその異性体転位生成物を用いた実験により、ダビガトランと比較して活性化部分トロンボプラスチン時間の等効力の延長が明らかになった。
本発明の別の局面では、抗体分子はダビガトラン及びダビガトランエテキシラートの両方に結合する。
本発明の別の局面では、抗体分子は、ダビガトラン及びダビガトランのO−アシルグルクロニド(特にダビガトランの1−O−アシルグルクロニド)の両方に結合する。
本発明の別の局面では、抗体分子は、ダビガトランの2−O−アシルグルクロニド、3−O−アシルグルクロニド、及び4−O−アシルグルクロニドに更に結合する。
本発明の別の局面では、抗体分子は、ダビガトラン及びダビガトランのO−アシルグルクロニド、特にダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性を中和できる。
本発明の別の局面では、抗体分子は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体のフラグメント、特にFab、Fab’又はF(ab’)フラグメント、一本鎖抗体、特に一本鎖可変フラグメント(scFv)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、ドメイン抗体、ナノボディ、ダイアボディ、又は設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)である。
本発明の別の局面では、本明細書に記載される抗体分子は、医薬に使用するためのものである。
本発明の別の局面では、本明細書に記載される抗体分子は、抗凝血療法の副作用の治療若しくは予防に使用するため、及び/又は抗凝血薬の過剰投与を逆転させるためのものである。一局面では、副作用は出血事象である。
別の局面では、本発明は、先行する請求項のいずれか一項の抗体分子の有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、抗凝血療法の副作用を治療若しくは予防する方法、又は抗凝血療法における過剰投与事象を治療若しくは予防する方法に関する。
別の局面では、本発明は、発現制御配列と機能的に関連している本明細書に記載の抗体分子をコードする1つ以上の核酸を含む宿主細胞を提供すること、該宿主細胞を培養すること、及び細胞培養物から抗体分子を回収することを含む、抗体分子を製造する方法に関する。
別の局面では、本発明は、記載された抗体分子又はその医薬組成物を含むキットに関する。
別の局面では、本発明は、記載された抗体分子又はその医薬組成物;容器;及びラベルを含む、キットに関する。
別の局面では、本発明は、記載された抗体分子と、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩とを含む、キットに関する。
別の局面では、本発明は、本明細書に記載の抗体分子又はその医薬組成物を投与することを含む、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者におけるダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドを中和又は部分的に中和するための方法に関する。
別の局面では、本発明は、
(a)ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で患者が処置されていたこと及び当該患者によって取り込まれた量を確認すること;
(b)凝固若しくは凝血の試験又はアッセイを行なう前に、本明細書に記載の抗体分子で、ダビガトラン又は1−O−アシルグルクロニドを中和すること(ここで、ダビガトラン又はダビガトランの当該1−O−アシルグルクロニドは試験又はアッセイの結果の正確な読み出しを妨害するであろう);
(c)患者から採取されたサンプルで凝固若しくは凝血の試験又はアッセイを行なって、ダビガトランもダビガトランの1−O−アシルグルクロニドも存在しない場合の血塊形成レベルを決定すること;及び
(d)患者における血塊の形成と分解との間の適切なバランスを達成するために、患者に投与されるダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩の量を調整すること
を含む、患者におけるダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドを中和又は部分的に中和するための方法に関する。
別の局面では、本発明は、本明細書に記載の抗体分子を患者に投与する工程を含む、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者の血漿中のダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの濃度を低下させるための方法に関する。
別の局面では、本発明は、本明細書に記載の抗体分子を患者に投与する工程を含む、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者における、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの抗凝固作用を逆転させる方法であって、該患者は生命を脅かすか若しくは血行動態の悪化に至ると考えられる大量出血を有しているか、又は該患者は緊急の医療措置を必要としている、方法に関する。
本発明の別の局面は、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者で使用するための前記の抗体分子であって、該患者は生命を脅かすか若しくは血行動態の悪化に至ると考えられる大量出血をしているか、又は該患者は緊急の医療措置を必要としている、抗体分子である。
特定の局面では、本発明は、水性媒体中で高い溶解度と低い凝集傾向とを有する、ダビガトランに対する抗体に関する。
本発明の別の局面では、抗体分子はscFv分子である。この形式では、本明細書に開示された可変ドメインは、適切なリンカーペプチドで互いに融合されていてもよい。その構築物は、N末端からC末端にかけて(重鎖可変ドメイン)−(リンカーペプチド)−(軽鎖可変ドメイン)、又は(軽鎖可変ドメイン)−(リンカーペプチド)−(重鎖可変ドメイン)の順序でこれらの要素を含み得る。
sFv構築物をコードする核酸を宿主細胞(大腸菌(E.coli)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、又は哺乳動物細胞株、例えばCHO又はNS0のような)で組換え発現させて、機能的なscFv分子を得る方法は、当技術分野において公知である(例えば、Rippmann et al., Applied and Environmental Microbiology 1998, 64(12): 4862-4869; Yamawaki et al., J. Biosci. Bioeng. 2007, 104(5): 403-407; Sonoda et al., Protein Expr. Purif. 2010, 70(2): 248-253参照)。
特に、本発明のscFv抗体分子を、以下のように製造することができる。構築物を、W3110、TG1、BL21、BL21(DE3)、HMS174、HMS174(DE3)、MM294のような異なるE.coli株において誘導性プロモーターの制御下で発現させることができる。このプロモーターを、lacUV5、tac、T7、trp、trc、T5、araBより選択することができる。培養培地は、好ましくは、Wilms et al., 2001(Wilms et al., Biotechnology and Bioengineering 2001, 73(2): 95-103)、DeLisa et al., 1999(DeLisa et al., Biotechnology and Bioengineering 1999, 65(1): 54-64)に従って十分に定義されているものか、又は同等のものである。しかし、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、及びバリンなどのアミノ酸、又はダイズペプトン若しくは酵母抽出物などの複合培地成分を、バッチ培地及び/又はフィード培地に補充することは有益であり得る。発酵のためのプロセスはフェドバッチモードで行なわれる。条件:温度20〜40℃、pH5.5〜7.5、DOは20%より高く保つ。初期炭素源の消費後に、培養物に、上記フィード培地(又は同等物)を供給する。発酵槽中で40〜100g/Lの乾燥細胞重量に達したときに、使用されるプロモーター系に対応する適切な誘導物質(例えば、IPTG、ラクトース、アラビノ―ス)で培養物を誘導する。誘導を、パルス完全誘導として、若しくはそれぞれの誘導物質を発酵槽中に長時間かけて供給することによる部分的誘導として、又はそれらの組合せのいずれかで行なうことができる。生産相は少なくとも4時間持続すべきである。細胞をボウル遠心分離機、管状ボウル遠心分離機、又はディスクスタック遠心分離機での遠心分離によって回収し、培養上清は廃棄する。
E.coli細胞塊を、4〜8倍量の溶解緩衝液(リン酸緩衝液又はトリス緩衝液、pH7〜8.5)中に再懸濁する。細胞溶解は、好ましくは、高圧ホモジナイズによって行なわれ、続いて、ボウル遠心分離機、管状ボウル遠心分離機、又はディスクスタック遠心分離機での遠心分離によってペレットを回収する。scFv封入体を含有するペレットを20mMトリス、150mM NaCl、5mM EDTA、2M尿素、0.5%トリトンX−100(pH8.0)を用いて2〜3回洗浄した後に、20mMトリス、150mM NaCl、5mM EDTA(pH8.0)を使用して2回の洗浄工程を行なった。scFv封入体を最終的に、ボウル遠心分離機、管状ボウル遠心分離機、又はディスクスタック遠心分離機での遠心分離によって回収する。scFv封入体の可溶化は、6Mグアニジン−HCl又は8〜10mMの尿素などのカオトロピック剤を含有する、100mMグリシン/NaOH、5mM EDTA、20mMジチオトレイトール(pH9.5〜10.5)中で行なうことができる。30〜60分間インキュベーションした後に、溶液を遠心分離にかけ、その後の再フォールディングのために標的タンパク質を含有する上清を回収する。再フォールディングは、好ましくは、フェドバッチモードで、最終タンパク質濃度0.1〜0.5mg/mLまで、タンパク質溶液を、再フォールディング緩衝液中に1:10〜1:50で希釈することによって行なわれる。再フォールディング緩衝液は50〜100mMトリス及び/又は50〜100mMグリシン、50〜150mM NaCl、1〜3M尿素、0.5〜1Mのアルギニン、2〜6mMの酸化還元系、例えばシステイン/シスチン又は酸化/還元型グルタチオン(pH9.5〜10.5)を含有し得る。4℃で24〜72時間インキュベーションした後に、再フォールディング溶液を場合により0.22μmのフィルターを使用して濾過し、希釈し、pHをpH7.0〜8.0に調整する。タンパク質を、結合モードの陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Toyopearl GigaCap S-650M、SPセファロースFF、又はS HyperCel(商標))を介してpH7.0〜8.5で分離する。溶出を漸増するNaCl直線勾配によって行なう。標的タンパク質を含有する画分をプールし、次に、非結合モードの陰イオン交換カラム(例えば、Toyopearl GigaCap Q-650M、Q−セファロースFF、Q HyperCel(商標))で分離した後に、陽イオン交換の仕上げ工程(例えば、SPセファロースHP)を行なう。最低90%の純度レベルの標的タンパク質を含有する画分をプールし、PBS中、ダイアフィルトレーション又はサイズ排除クロマトグラフィーによって製剤化する。製造されたscFv分子の同一性及び製品品質を還元SDS−PAGEによって分析し、還元SDS−PAGEでは、scFvは、約26kDaの1本の主バンドで検出することができる。scFvのキャラクタリゼーションのための更なるアッセイには、質量分析、RP−HPLC及びSE−HPLCが挙げられる。
本発明の別の局面では、抗体分子はFab分子である。その形式では、上記に開示された可変ドメインは各々、好ましくはヒト起源の、免疫グロブリン定常ドメインに融合されていてもよい。したがって、重鎖可変ドメインはCHドメイン(いわゆるFdフラグメント)に融合されていてもよく、軽鎖可変ドメインはCLドメインに融合されていてもよい。
Fab構築物をコードする核酸を使用して、E.coli、ピキア・パストリス、又は哺乳動物細胞株(例えば、CHO又はNS0)のような宿主細胞においてこのような重鎖及び軽鎖を発現させてもよい。これらの鎖を適切にフォールディング、会合、及びジスルフィド結合させて、Fdフラグメントと軽鎖とを含む機能的なFab分子にする方法は当技術分野において公知である(Burtet et al., J. Biochem. 2007, 142(6), 665-669; Ning et al., Biochem. Mol. Biol. 2005, 38: 204-299; Quintero-Hernandez et al., Mol. Immunol. 2007, 44: 1307-1315; Willems et al. J. Chromatogr. B. Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. 2003; 786: 161-176)。
特に、本発明のFab分子は、以下のようにCHO細胞において製造することができる。無血清培地中に懸濁状態で増殖しているCHO−DG44細胞(Urlaub,G., Kas,E., Carothers,A.M., and Chasin,L.A. (1983). Deletion of the diploid dihydrofolate reductase locus from cultured mammalian cells. Cell 33, 405-412)に、Lipofectamine(商標)及びPlus(商標)試薬(Invitrogen)を製造業者の説明書に従って使用して、Fab分子の重鎖及び軽鎖をコードする発現構築物をトランスフェクションする。48時間後、200μg/mLの抗生物質G418を含有し、ヒポキサンチン及びチミジンを含まない培地における選択に細胞を供し、安定にトランスフェクションされた細胞集団を作製する。続いて、メトトレキサート(MTX)を漸増濃度(最大100又は400nM)で培養培地に添加することによって、これらの安定なトランスフェクション体を遺伝子増幅に供する。一旦細胞が適応したら、それらを10〜11日間にわたるフェドバッチ発酵に供し、Fabタンパク質材料を製造する。
CHO−DG44細胞及びその安定なトランスフェクション体の懸濁培養物を、化学的に明確な無血清培養培地中でインキュベーションする。播種用ストック培養物を2〜3日毎にそれぞれ3×10〜2×10個の細胞/mLの播種密度で継代培養する。細胞を5%CO、37℃及び120rpmのMultitron HTインキュベーター(Infors)中の振盪フラスコ中で増殖させる。フェドバッチ実験のために、振盪フラスコ中の抗生物質もMTXも含まないBI社所有の産生培地中に、細胞を3×10個細胞/mLで播種する。培養物を37℃で5%CO(これはその後、細胞数が増加するにつれて2%へと減少させる)中120rpmでアジテーションする。細胞数、生存率、pH、グルコース及び乳酸の濃度を含む培養パラメーターを毎日決定し、必要に応じて炭酸塩を使用してpHをpH7.0に調整する。BI社所有のフィード溶液を24時間毎に加える。異なる時点で上清からサンプルを採取し、ELISAによってFab産物濃度を決定する。10〜11日後、細胞培養液を遠心分離によって回収し、精製研究室に移送する。
Fab分子を、フェドバッチ培養物の上清からクロマトグラフィー及び濾過によって精製する。一次捕捉工程として、アフィニティクロマトグラフィー、例えばプロテインG又はプロテインLを適用する。或いは、低結合親和性及び低結合能の場合、Fabを分子のpIを利用する陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって捕捉する。更なる直交精製工程によって、宿主細胞のタンパク質及び混入物、例えばDNA又はウイルスを除去する。
製造されたFab分子の同一性及び製品品質を、約50kDaの1本の主バンドとしてFabを検出することができる電気泳動法、例えばSDS−PAGEによって分析する。Fab産物のキャラクタリゼーションのための更なるアッセイには、質量分析、等電点電気泳動、及びサイズ排除クロマトグラフィーが挙げられる。結合活性はBIAcore分析によって追跡される。
細胞培養物の上清中のFab又は完全長IgG分子の定量を、サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により行なう。完全長IgGを、ヒト−Fcフラグメント(Jackson Immuno Research Laboratories)及びヒトκ軽鎖に対して産生された抗体(ペルオキシダーゼにコンジュゲートされたもの、Sigma)を使用して検出することができる。Fabフラグメントをヤギポリクローナル抗ヒトIgG(H及びL、Novus)によって固定化し、ヒトIgGに対して産生されたヒツジポリクローナル抗体(ペルオキシダーゼにコンジュゲートされたもの、The Binding Site)によって検出する。
Fab分子はまた、酵素的切断によって完全長抗体分子から作製することができる。このアプローチの利点は、堅調かつ効率的な発酵及び精製のためのプラットフォームプロセスであって、所望の製品品質でのアップスケール及び高収率に修正可能なプラットフォームプロセスが適用可能であることである。精製のために、組換えプロテインA樹脂を使用するアフィニティクロマトグラフィーを一次捕捉工程として使用することができ、それにより通常、高い純度が得られる。
この目的のために、Fab配列をコードする重鎖を、ヒトIgG抗体分子のFc領域に融合する。次に、得られた発現構築物を、無血清培地中に懸濁状態で増殖しているCHO−DG44細胞にリポフェクションを使用してトランスフェクションする。48時間後に、200μg/mLの抗生物質G418を含有し、ヒポキサンチン及びチミジンを含まない培地における選択に細胞を供し、安定にトランスフェクションされた細胞集団を作製する。続いて、メトトレキサート(MTX)を漸増濃度(最大100又は400nM)で培養培地中に添加することによって、これらの安定なトランスフェクション体を遺伝子増幅に供する。一旦細胞が適応したら、それらを10〜11日間にわたるフェドバッチ発酵に供し、IgGタンパク質材料を製造する。
IgGタンパク質を、組換えプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを使用することによって培養上清から精製する。次に、所望の中和Fabフラグメントを得るために、ヒンジ領域内でIgGを切断するパパインの存在下で完全長のIgGをインキュベーションし、それにより2本のFabフラグメントとFc部分とを放出させる。
Fab分子をアフィニティクロマトグラフィー、例えばプロテインG又はプロテインLによって単離する。或いは、低結合親和性及び低結合能の場合、Fabを、分子のpIを利用する陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって捕捉する。更なる直交精製工程によって、宿主細胞タンパク質及び混入物、例えばパパイン、DNA又はウイルスを除去する。
本発明の別の局面では、抗体分子は、本明細書に記載の抗体分子のアミノ酸配列変異体である。
抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体のDNAに適切なヌクレオチド変化を導入することによって、又はペプチド合成によって調製することができる。このような変異体には、例えば、本明細書における実施例の抗体のアミノ酸配列内の残基から欠失させたもの、及び/又はそれに挿入したもの、及び/又はそれを置換したものが挙げられる。最終構築物が所望の性質を有する限り、その最終構築物に到達するために、欠失、挿入、及び置換の任意の組合せが行われる。また、アミノ酸の変化により、グリコシル化部位の数又は位置が変化するなど、ヒト化抗体又は変異抗体の翻訳後プロセスが改変され得る。
抗体の特定の残基又は領域であって、突然変異誘発に好ましい位置である残基又は領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham及びWells(Science, 244:1081-1085 (1989))によって記載されるような「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基のうちの一残基又は群(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電残基)を同定し、中性又は負電荷のアミノ酸(典型的にはアラニン)により置換して、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を与える。次に、置換部位で若しくは置換部位のために更なる変異又は他の変異を導入することによって、置換に対する機能的な感受性を示すアミノ酸位置を改良する。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位を予め決定しつつ、突然変異自体の性質を予め決定しなくてもよい。例えば、所定部位での突然変異の成果を分析するために、アラニンスキャニング突然変異誘発又はランダム突然変異誘発を、標的コドン又は標的領域で実行し、所望の活性について、発現した抗体変異体をスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入体には、1残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端融合体及び/又はカルボキシ末端融合体、並びに、単一若しくは複数のアミノ酸残基の配列内挿入体が挙げられる。末端挿入体の例としては、エピトープタグに融合された抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増大する酵素又はポリペプチドの抗体のN末端又はC末端への融合が挙げられる。
別の種類の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子内で少なくとも1個のアミノ酸残基が除去されており、その位置に異なる残基が挿入されている。置換突然変異誘発について最も関心のある部位には、超可変領域が挙げられるが、FR改変も企図される。保存的置換を、以下の表に「好ましい置換」の見出しで示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、「例示的な置換」と命名されたより実質的な変化、又はアミノ酸クラスに関して以下に更に記載されているようなより実質的な変化を導入して、その産物をスクリーニングしてもよい。
本来の残基 例示的な置換 好ましい置換
Ala (A) val; leu; ile val
Arg (R) lys; gln; asn lys
Asn (N) gln; his; asp, lys; arg gln
Asp (D) glu;asn glu
Cys (C) ser;ala ser
Gln (Q) asn;glu asn
Glu (E) asp;gln asp
Gly (G) ala ala
His (H) arg;asn;gln;lys; arg
Ile (I) leu;val;met; ala;phe;ノルロイシン leu
Leu (L) ile;ノルロイシン; val;met; ala;phe ile
Lys (K) arg;gln;asn arg
Met (M) leu;phe;ile leu
Phe (F) tyr;leu;val;ile;ala tyr
Pro (P) ala ala
Ser (S) thr thr
Thr (T) ser ser
Trp (W) tyr;phe tyr
Tyr (Y) phe;trp;thr;ser phe
Val (V) leu;ile;met;phe ala;ノルロイシン leu
タンパク質化学において、抗体の生物学的特性は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えばシート若しくはヘリックスコンフォメーション、(b)標的部位での分子の荷電若しくは疎水性、又は(c)側鎖の嵩、を維持することに対するその作用において有意に異なる置換を選択することによって達成できることが一般的に認められている。天然の残基は、共通の側鎖の性質に基づいて、群に分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性;cys、ser、thr;
(3)酸性;asp、glu;
(4)塩基性;asn、gin、his、lys、arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:gly、pro;及び
(6)芳香族;trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴うものである。
ヒト化抗体又は変異抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基もまた、分子の酸化安定性を改善するか、異常な架橋を防止するか、又は細胞毒性化合物若しくは細胞増殖抑制性化合物への所定の結合点を与えるために、(一般的にはセリンで)置換してもよい。逆に、その安定性を改善するために、抗体にシステイン結合(単数又は複数)を加えてもよい(特に、抗体がFvフラグメントなどの抗体フラグメントの場合)。
置換変異体の1つの種類は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、更なる開発のために選択されて得られた変異体(単数又は複数)は、それらが作製された親抗体と比較して改善された生物学的特性を有する。このような置換変異体を作製するのに便利な方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟である。簡潔に言えば、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7個の部位)を突然変異させて、考えられる全てのアミノ置換を各部位に作製する。このようにして作製された抗体変異体は、線維状ファージ粒子から、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物との融合物として一価的にディスプレイされる。次に、ファージディスプレイされた変異体をそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。改変のための候補となる超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を行なって、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定することができる。或いは、又は加えて、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体とヒトダビガトランとの間の接触点を同定することが有益であり得る。このような接触残基及び隣接残基は、本明細書において詳述される技術による置換の候補である。一旦このような変異体を作製したら、変異体のパネルを本明細書に記載されるスクリーニングに供し、1つ以上の関連アッセイで優れた特性を有する抗体を更なる開発のために選択し得る。
抗体のアミノ酸変異体の別の種類は、抗体の元のグリコシル化パターンを変化させる。「変化させる」とは、抗体に見られる1つ以上の炭水化物部分を除去すること、及び/又は、抗体に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加することを意味する。
いくつかの実施態様では、本発明の抗体を改変してグリコシル化部位を付加することが望ましくあり得る。抗体のグリコシル化は、典型的には、N−結合型又はO−結合型のいずれかである。N−結合型は、アスパラギン残基の側鎖に炭水化物部分を結合させることを指す。アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−トレオニン(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖に炭水化物部分を酵素的に結合させるための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのいずれかのトリペプチド配列が存在することで、潜在的なグリコシル化部位が生じる。O−結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニン(しかしまた、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンを使用してもよい)に、糖であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの1つを結合させることを指す。したがって、所定のタンパク質(例えば、抗体)をグリコシル化するためには、1つ以上の上記のトリペプチド配列を含有するようにタンパク質のアミノ酸配列を操作する(N−結合型グリコシル化部位の場合)。1つ以上のセリン又はトレオニン残基を元の抗体の配列に付加するか、又はそれらの残基によって置換することによって、変化させてもよい(O−結合型グリコシル化部位の場合)。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の多様な方法によって調製される。これらの方法には、天然の供給源からの単離(天然のアミノ酸配列の変異体の場合)、又は、本明細書に記載される抗体分子の先に調製された変異体若しくは非変異体型のオリゴヌクレオチド介在性(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。上で概説されているように、本発明の抗体分子の抗原は抗凝固薬である。抗原は、動物の免疫化によって、又は、ファージディスプレイ法のように配列ライブラリーから抗体配列を選択することによって、抗体分子を作製するのに使用される。
動物のための免疫化プロトコールは、当技術分野において周知である。適切な免疫応答を達成するために、抗原を、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、スクアレン、又はフロイント完全アジュバント/フロイント不完全アジュバントのようなアジュバントと組み合わせることが必要であり得る。ダビガトランのような本発明の文脈における抗原は、主に比較的小型の有機分子であって、動物に投与されたときに抗体の形成を時には刺激しない。それ故、(ハプテンとして)抗原を巨大分子に結合させることが必要であり得る。
更なる局面では、本発明は、前記の抗体分子及び薬学的担体を含む、医薬組成物に関する。
治療に使用されるために、抗体分子は、動物又はヒトへの投与を容易にするのに適切な医薬組成物中に含められる。抗体分子の典型的な製剤は、抗体分子を生理学的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤と混合することによって、凍結乾燥若しくは別の方法で乾燥された製剤、或いは水性溶液又は水性懸濁液若しくは非水性懸濁液の形態で、調製することができる。担体、賦形剤、調整剤、又は安定化剤は、採用される投薬量及び濃度で無毒性である。それらには、緩衝系、例えばリン酸、クエン酸、酢酸、及び他の無機酸又は有機酸、並びにそれらの塩;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン;保存剤、例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール(PEG);アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン;単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖、及び他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、スクロース、トレハロース、デキストリン、又はデキストラン;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成性対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn−タンパク質複合体);及び/又はイオン性界面活性剤若しくは非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)(ポリソルベート)、PLURONICS(商標)若しくは脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、若しくは糖エステルが挙げられる。エタノール又はイソプロパノールなどの有機溶媒も抗体製剤に含められ得る。賦形剤はまた、放出改変機能又は吸収改変機能を有していてもよい。
一局面では、医薬組成物は、水性緩衝化溶液中に10〜20mg/mLの濃度で抗体分子を含むか、又はこのような溶液から作られた凍結乾燥物を含む。
好ましい適用態様は、注入又は注射(静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、皮内)による非経口的なものであるが、吸入、経皮、鼻腔内、バッカル、経口などの他の適用態様もまた適用可能であり得る。
好ましい実施態様では、本明細書に記載のダビガトランに対する抗体分子は、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、及び/又は1−O−アシルグルクロニドの抗凝固活性を中和するために使用される。
好ましくは、血漿中のダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの濃度は0nMよりも高いが1000μM未満であり、ダビガトラン又は1−O−アシルグルクロニドの活性を中和するのに使用される逆転剤は、逆転剤に対するダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの化学量論量で存在する。
更なる局面では、血漿中のダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの濃度は0nMより高いが1000μM未満であり、ダビガトラン又は1−O−アシルグルクロニドの活性を中和するのに使用される逆転剤は、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニド:逆転剤のモル比が1:1〜1:100で存在する。
更なる局面では、血漿中のダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの濃度は30nM〜1000μMであり、ダビガトラン又は1−O−アシルグルクロニドの活性を中和するのに使用される逆転剤は、逆転剤に対してダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドが30nM〜1000μMの割合で存在する。
別の局面では、本発明は、凝固能力障害又は外傷により、出血を経験しているか又は出血のリスクがある患者において、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性を逆転又は低下させるための方法であって、
(a)患者に存在するダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの量を決定する工程;
(b)患者において決定されたダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性を逆転又は低下させるのに有効な量の本明細書に記載の抗体を投与する工程;及び
(c)患者のトロンビン凝固時間又は類似の凝固試験をモニタリングして、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性の逆転又は低下が達成されたことを確認する工程
を含む、方法に関する。
好ましい局面では、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性の逆転は100%である。更に好ましい局面では、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性の低下は、患者におけるダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの10〜99%である。
投与されるべき抗体の「治療有効量」は、抗凝固療法の副作用を予防、寛解、又は治療するのに必要な最小量であり、特に、出血を止めるのに有効な最小量である。これは、抗体分子の化学量論量を用いて達成することができる。
ダビガトランは、例えば、推奨用量で投与された場合に、200nM程度の血漿濃度に達し得る。分子量約50kDの一価抗体分子が使用される場合、ボーラスとして静注内投与されると、例えば約1mg/kgの用量で中和が達成され得る。別の実施態様では、ヒト患者に適用されるFab分子の用量は、適用1回あたり50〜1000mg、例えば100、200、500、750、又は1000mgであり得る。状況に応じて、例えばダビガトランが患者に過剰投与された場合、更に高い用量、例えば適用1回あたり1250、1500、1750、又は2000mgを適用することが適切であり得る。適切な用量は、投与される抗凝固薬の種類及び用量;このような投与からの経過時間;抗原分子の性質、患者の状態、並びに他の要因に応じて相違し得る。当業者は、治療的に有効かつ安全な用量を確立するための方法を知っている。
更なる局面では、本発明は、ダビガトラン及び/又はダビガトランエテキシラートに対する結合親和性を有する本明細書に記載の抗体分子に関する。好ましくは、抗体分子は、例えば表面プラズモン共鳴分析(Malmqvist M., 「Surface plasmon resonance for detection and measurement of antibody-antigen affinity and kinetics」, Curr Opin Immunol. 1993 Apr;5(2):282-6)又は結合平衡除外アッセイ(KinExA)技術(Darling, R.J., and Brault P-A., 「Kinetic exclusion assay technology: Characterization of Molecular Interactions」 ASSAY and Drug Development Technologies. 2004, Dec 2(6): 647-657)により決定される場合、0.1pM〜100μM、好ましくは1pM〜100μM、より好ましくは1pM〜1μMの範囲のK値を有する親和性でダビガトラン及び/又はダビガトランエテキシラートに結合する。
また、本発明の抗体分子を分析及び診断の手順に使用して、例えば血漿、血清、又は他の体液などのサンプル中の抗原濃度を決定することができる。例えば、抗原分子を、実施例に記載されているような、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に使用してもよい。したがって、更なる局面では、本発明は、本明細書に記載の抗体分子を含む分析キット及び診断キット、並びに、分析及び診断の各方法に関する。
本発明は、経口抗凝固薬、特に直接トロンビン阻害剤の中和に有用な材料を含有する製品及びキットを更に提供する。製品は、ラベル付きの容器を含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、及び試験管が挙げられる。容器は、ガラス、金属、プラスチック、又はそれらの組合せなどの多様な材料から形成されてもよい。容器は、本明細書に記載の抗体、或いはダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を収容する。医薬組成物中の活性剤は、特定の抗体、或いはダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩である。抗体の容器上のラベルは、医薬組成物が、インビボでダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩を中和又は部分的に中和するのに使用されることを示す。
本発明のキットは、1つ以上の上記容器を含む。キットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を含む添付文書を含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
本発明の一実施態様では、キットは、本明細書に記載のいずれか一抗体のうちの抗体又はその医薬組成物を含む。例えば、キットは(1)本明細書に記載のいずれか一抗体又はその医薬組成物、(2)容器、及び(3)ラベルを含み得る。
別の実施態様では、キットは、本明細書に記載のいずれか一抗体のうちの抗体又はその医薬組成物、及びダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩を含む。ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩の形態は、固体、液体、又はゲルの形態であり得る。好ましい実施態様では、ダビガトランエテキシラートの薬学的に許容される塩はメシラート塩である。更に別の好ましい実施態様では、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩の一投薬単位あたりの強さは、約50mg〜約400mg、約75mg〜約300mg、約75mg〜150mg、又は約110mg〜約150mgであり、1日1回(QD)又は1日2回(BID)投与される。例えば、キットは、(1)本明細書に記載のいずれか一抗体又はその医薬組成物、(2)ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩の医薬組成物、(3)容器、及び(4)ラベルを含み得る。
別の実施態様では、キットは、(1)ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩を含む第1の医薬組成物、(2)本明細書に記載のいずれか一抗体又はその組合せを含む第2の医薬組成物、(3)患者に、該第1の医薬組成物及び該第2の医薬組成物を別々に投与するための説明書を含み、ここで、該第1医薬組成物及び該第2医薬組成物は別々の容器に含められており、該第2の医薬組成物は、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの中和又は部分的中和を必要としている患者に投与される。
本発明はまた、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者においてダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドを中和又は部分的に中和するための診断方法であって、本明細書に記載の抗体のいずれか1つ、その組合せ、又はそれらの医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。具体的には、本発明は、患者においてダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドを中和又は部分的に中和するための方法であって、(a)患者がダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されていたこと、及び患者によって取り込まれた量を確認する工程;(b)凝固若しくは血液凝固の試験又はアッセイを行なう前に、本明細書に記載の抗体のいずれか1つ又はその組合せで、ダビガトラン又は1−O−アシルグルクロニドを中和する工程、ここで、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドは試験又はアッセイの結果の正確な読み出しを妨害するであろう;(c)患者から採取されたサンプルについて凝固又は血液凝固の試験又はアッセイを行なって、ダビガトランもダビガトランの1−O−アシルグルクロニドも存在しない場合の血塊形成レベルを決定する工程;並びに(d)患者において血塊形成と分解との間の適切なバランスを達成するために、患者に投与されるダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩の量を調整する工程を含む、方法を提供する。ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドに対する抗体のモル比は、0.1〜100、好ましくは0.1〜10のモル比である。試験又はアッセイの結果の正確な読み出しは、フィブリノーゲンレベル、活性化プロテインC抵抗性、又は関連試験の正確な読み出しであってよい。
1.抗ダビガトラン抗体及びFabの作製及びキャラクタリゼーション
表1は、本発明の代表的な化合物の配列、並びに、実施例で使用された参照化合物を含んでいる。全ての化合物は、標準的な方法によって製造することができる。
Fab化合物Fab 5C/18は重鎖としてHCVH5C(配列番号12)及び軽鎖としてLCVK18(配列番号14)を含む。その構造の化合物は、国際公開第2012/130834号(この文書中ではVH5c/Vk18と称されている)に開示されており、そこに記載されているように製造することができる。
Fab化合物Fab 5C/21は重鎖としてHCVH5C(配列番号12)及び軽鎖としてLCVK21(配列番号15)を含む。その構造の化合物は、国際公開第2012/130834号(この文書中ではVH5c/Vk21と称されている)に開示されており、そこに記載されているように製造することができる。
Fab化合物FAB6は、それぞれ、配列番号1の重鎖相補性決定領域(CDR)CDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号4のCDR3を含む。FAB6は、それぞれ、配列番号5の軽鎖相補性決定領域(CDR)CDR1、配列番号6のCDR2、及び配列番号7のCDR3を含む。Fab化合物FAB6は、重鎖可変領域としてVHFAB6(配列番号9)及び軽鎖可変領域としてVK18(配列番号10)を含む。Fab化合物FAB6は、重鎖としてHCFAB6(配列番号13)及び軽鎖としてLCVK18(配列番号14)を含む。
Fab化合物ENG15/18は、重鎖としてENGVH15(配列番号16)及び軽鎖としてENGVK18(配列番号17)を含む。その構造の化合物は、国際公開第2011/089183号に記載されており、そこに記載されているように製造することができる。
表1では、「CDR」という文字は相補性決定領域を示し、「VH」は重鎖の可変領域を示し、「VK」はκ軽鎖の可変領域を示し、「LC」は抗体分子の軽鎖を示し、「HC」は抗体分子の重鎖を示す。例えば、「VHCDR1 5C」は5Cと呼ばれる重鎖の可変ドメインの第1のCDR(CDR1)を示し、「VH5C」は5Cと呼ばれる重鎖の可変領域を示す。
Figure 2016539926

Figure 2016539926
2.トロンビン凝固時間アッセイ
簡潔に言えば、ヒト血漿を、全血を3.13%クエン酸ナトリウムに入れることによって得る。次に、これを遠心分離にかけて無血小板血漿を得て、別々のチューブに移し、アッセイの日に必要とされるまで凍結する。アッセイの日に血漿を37℃で解凍する。
トロンビン凝固時間の決定を、以下のように行う。まず、供給された緩衝液(Dade Behring試験キット)中で、製造業者の仕様(3IU/mLのトロンビン)までトロンビンを希釈し、37℃まで予熱する。調製してから2時間以内に、それを使用する。全てのアッセイを、市販のCL4凝固測定器(Behnk Electronics、ノルダーシュテット、ドイツ)で行なった。磁気スターラーを備える供給されたキュベット中に50μLの血漿をピペットで入れ、CL4機器において、37℃まで予熱したウェル中で2分間撹拌させる。この時点で、100μLのトロンビン溶液を添加し、血漿サンプルが凝固するのに必要とされる時間をCL4によって自動的に記録する。供給されたキュベット中の血漿中でダビガトランを5分間プレインキュベーションしてから、トロンビンを添加し、測定を開始する。抗体も試験する場合(最大50μLのストック溶液)、37℃で更に5分間インキュベーションしてから、凝固を開始する(すなわち、ダビガトランと一緒に合計10分間インキュベーションし、抗体と一緒に合計5分間インキュベーションし、次にトロンビンで凝固を開始させる)。
Figure 2016539926
3.親和性決定(Kinexa法)
Fab及びマウス−ヒトキメラ抗体の親和性を、KinExA(登録商標)技術を用いて決定した。一定濃度のFab又はキメラ抗体を、様々な濃度のダビガトランと一緒に、平衡に達するまでインキュベーションした。このインキュベーションの後に、ビオチンをコンジュゲートしたダビガトランアナログと結合させたニュートラアビジンビーズ上に抗体を捕捉することによって、遊離の抗体の濃度を決定した。捕捉されたFabを、FITCで標識した抗ヒトIgG(Fab特異的)F(ab’)2フラグメントを用いて検出した。捕捉されたキメラ抗体を、Cy5とコンジュゲートした抗ヒトIgGを用いて検出した。解離定数(K)を、1:1結合モデルを用いて計算した。
KinExA(登録商標)機器を用いて速度定数(kon及びkoff)を測定するために、Kinetics Direct法を使用した。この方法では、結合ペアを溶液中で混合し、活性結合部位が複合体の形成により使い尽くされるので、遊離の活性結合部位の濃度を経時的に調べる。データ点を特定の時間間隔で収集し、シグナルを分析する。このようにして、konを直接測定し、off速度koffをkoff=K×konとして計算する。
Figure 2016539926
4.Fab/ダビガトランの共結晶化及び構造分析
Fabを10mg/mLまで濃縮し、2モル過剰のダビガトランと混合し、4℃で1時間インキュベーションした。複合体及び結晶化溶液を1:1で混合した。複合体は25%PEG1500、0.1M SPG緩衝液(pH7)中で結晶化する。
全ての結晶のデータセットを、ポール・シェラー研究所のSwiss light SourceビームラインPXI-X06SAで収集した。すべてのデータセットを、autoPROCパッケージ(Vonrhein, C., Flensburg, C., Keller, P., Sharff, A., Smart, O., Paciorek, W., Womack, T. & Bricogne, G. (2011). Data processing and analysis with the autoPROC toolbox. Acta Cryst. D67, 293-302.)で処理した。
Fab FAB 5C/21:ダビガトランの結晶は、空間群P2で成長し、a=59.97Å、b=78.39Å、c=87.67Åの単位格子寸法及び2.2Å分解能までの回折を有していた。複合体の構造は、開始サーチモデルとして相同的Fab構造(PDB−ID 1C1E)を使用して、program phaser (Collaborative Computational Project, number 4. 1994. 「The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography」. Acta Cryst. D50, 760-763. Phaser crystallographic software. McCoy AJ, Grosse-Kunstleve RW, Adams PD, Winn MD, Storoni LC, Read RJ. J. Appl. Cryst. (2007). 40, 658-674.)を用いた分子置換によって解明した。電子密度図の分析により、ダビガトランの明確な電子密度が示された。完全な構造は、Cootによるモデル構築及びautoBUSTERによる改良を複数ラウンド行うことにより改善された(「Coot: model-building tools for molecular graphics」 Emsley P, Cowtan K Acta Crystallographica Section D-Biological Crystallography 60: 2126-2132 Part 12 Sp. Iss. 1 DEC 2004. Bricogne G., Blanc E., Brandl M., Flensburg C., Keller P., Paciorek W., Roversi P, Sharff A., Smart O.S., Vonrhein C., Womack T.O. (2011). BUSTER version 2.11.2. Cambridge, United Kingdom: Global Phasing Ltd)。
Fab FAB 5C/18:ダビガトランの結晶は、空間群P2及びP2でそれぞれ成長した。空間群P2の結晶は、a=51.81Å、b=128.92Å、c=60.26Åの単位格子寸法及び1.9Å分解能までの回折を示した。空間群P2の結晶は、a=48.20Å、b=59.74Å、c=127.69Åの単位格子寸法及び2.2Å分解能までの回折を示した。両複合体の構造を、開始サーチモデルとしてFab VH5C/VK21の構造を使用して、program phaserを用いた分子置換によって解明した。電子密度図の分析により、ダビガトランの明確な電子密度が示された。完全な構造は、Cootによるモデル構築及びautoBUSTERによる改良を複数ラウンド行うことにより改善された。
5.空間的凝集傾向(SAP)のin silico分析
残基の疎水性パラメーターを(Cowan and Whittaker, Pept Res; 1990, 3(2), pg 75-80)から取り入れた以外は、各原子及び各残基の空間的凝集傾向(SAP)を、(Chennamsetty et. al., Proc Natl Acad Sci; 2009, 106(29), pg 11937-11942)に記載されるように計算した。Fv SAPを、抗体の可変ドメインにおける全正電荷残基のSAP値の合計として計算する。CDR SAPを、抗体の相補性決定領域における全正電荷残基のSAP値の合計として計算する。タンパク質データバンク(PDB)からの850個の異なる抗体構造についてFv SAP及びCDR SAPを計算して、両特性について平均(μFv及びμCDR)及び標準偏差(σFv及びσCDR)の値を得た。
Z−スコア(Fv SAP)=(Fv SAP−μFv)/σFv及び
Z−スコア(CDR SAP)=(CDR SAP−μCDR)/σCDR
に従って次いで計算した、抗体のFv SAP及びCDR SAPについてのZ−スコア。
結果(図11):
ヒト化Fab 18/15:
Z−スコア(Fv SAP)=1.06
Z−スコア(CDR SAP)=1.00
ヒト化Fab VH5C/VK18:
Z−スコア(Fv SAP)=−0.61
Z−スコア(CDR SAP)=−0.84
ヒト化Fab VH5C/VK21:
Z−スコア(Fv SAP)=−0.61
Z−スコア(CDR SAP)=−0.78

Claims (19)

  1. 配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号4のCDR3を有する重鎖可変ドメインと、配列番号5のCDR1、配列番号6のCDR2、及び配列番号7のCDR3を有する軽鎖可変ドメインとを含む、ダビガトランに対する抗体分子。
  2. 配列番号9の重鎖可変ドメインと配列番号10の軽鎖可変ドメインとを含むか、又は、配列番号9の重鎖可変ドメインと配列番号11の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1記載の抗体分子。
  3. 配列番号13の重鎖と配列番号14の軽鎖とを含むか、又は、配列番号13の重鎖と配列番号15の軽鎖とを含む、請求項1記載の抗体分子。
  4. 配列番号13の重鎖と配列番号14の軽鎖とからなるか、又は、配列番号13の重鎖と配列番号15の軽鎖とからなる、請求項3記載の抗体分子。
  5. ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体のフラグメント、特にFab、Fab’又はF(ab’)のフラグメント、一本鎖抗体、特に一本鎖可変フラグメント(scFv)、小モジュール免疫薬(SMIP)、ドメイン抗体、ナノボディ、ダイアボディ、又は設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)である、先行する請求項のいずれか一項記載の抗体分子。
  6. 医薬に使用するための、先行する請求項のいずれか一項記載の抗体分子。
  7. 抗凝固療法の副作用の治療若しくは予防に使用するための、及び/又は抗凝固薬の過剰投与を逆転させるための、先行する請求項のいずれか一項記載の抗体分子。
  8. 副作用が出血事象である、請求項7記載の抗体分子。
  9. 抗凝固療法の副作用若しくは抗凝固療法での過剰投与事象を治療又は予防する方法であって、それを必要とする患者に先行する請求項のいずれか一項記載の抗体分子の有効量を投与することを含む、方法。
  10. 先行する請求項のいずれか一項記載の抗体分子を製造する方法であって、
    (a)発現制御配列と機能的に結合した前記抗体分子をコードする1つ以上の核酸を含む宿主細胞を提供すること、
    (b)該宿主細胞物から抗体分子を回収すること
    を含む、方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子又はその医薬組成物を含む、キット。
  12. (a)請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子又はその医薬組成物;
    (b)容器;及び
    (c)ラベル
    を含む、キット。
  13. 請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子と、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩とを含む、キット。
  14. 請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子又はその医薬組成物を投与することを含む、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者におけるダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドを中和又は部分的に中和するための方法。
  15. 患者におけるダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドを中和又は部分的に中和するための方法であって、
    (a)患者がダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されていたこと、及び該患者によって取り込まれた量を確認すること;
    (b)凝固若しくは血液凝固の試験又はアッセイを行なう前に、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子で、ダビガトラン又は1−O−アシルグルクロニドを中和すること、ここでダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドは該試験又はアッセイの結果の正確な読み出しを妨害するであろう;
    (c)該患者から採取されたサンプルで凝固若しくは血液凝固の試験又はアッセイを行なって、ダビガトランもダビガトランの1−O−アシルグルクロニドも存在しない場合の血塊形成レベルを決定すること;及び
    (d)患者における血塊形成と分解との間の適切なバランスを達成するために、患者に投与されるダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩の量を調整すること
    を含む、方法。
  16. 請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子を患者に投与する工程を含む、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者の血漿中のダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの濃度を低下させるための方法。
  17. 請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子を患者に投与する工程を含む、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者において、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの抗凝固作用を逆転させる方法であって、該患者が生命を脅かすか若しくは血行動態の悪化に至ると考えられる大量出血をしているか、又は該患者が緊急の医療措置を必要としている、方法。
  18. 凝固能力障害又は外傷により、出血を経験しているか又は出血のリスクがある患者において、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性を逆転又は低下させるための方法であって、
    (a)該患者に存在するダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの量を決定する工程;
    (b)該患者において決定されたダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性を逆転又は低下させるのに有効な量の請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子を投与する工程;及び
    (c)該患者のトロンビン凝固時間をモニタリングして、ダビガトラン又はダビガトランの1−O−アシルグルクロニドの活性の逆転又は低下が達成されたことを確認する工程
    を含む、方法。
  19. ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、ダビガトランのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩で処置されている患者において使用するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体分子であって、該患者が生命を脅かす若しくは血行動態の悪化に至ると考えられる大量出血をしているか、又は該患者が緊急の医療措置を必要としている、抗体分子。
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