JP2016538001A - 体細胞半数体ヒト細胞株 - Google Patents

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Abstract

本発明は、体細胞的に完全な半数体であり、核型が安定したヒト細胞株、例えばほぼ半数体である体細胞ヒト親細胞の1またはそれより多い二染色体領域のターゲティング欠失によって得られうるもの、該細胞を産生する方法、ならびに異なるゲノムターゲット部位でゲノム突然変異を含む同質遺伝子細胞変異体を産生するための該細胞株の使用、およびこうした細胞変異体のライブラリーを提供する。

Description

本発明は、完全に半数体である、突然変異体体細胞ヒト細胞株に関する。
背景
ゲノム完全性を保護するため、ヒトは二倍体であり、すなわちヒトは、各染色体を2コピー所有し(1コピーでしか存在しないXおよびY染色体を例外とする)、1つは父親由来であり、そして1つは母親由来である。1つの染色体上の1つの遺伝子が損傷を受けたとしても、多くの場合、残りの第二のコピーは、遺伝子機能を維持するために十分であり、それによってそうでなければ有害であろう影響を軽減する。種としてのヒト生存に必須であるこのフェールセーブメカニズムは、ヒト遺伝学者にとっては悪夢になる:遺伝子の1つのコピーを不活性化した際はいつでも、第二のコピーが通常、その影響を和らげ、それによってその特定の遺伝子の表現型をマスキングする。
長い間、半数体であることが知られている唯一のヒト細胞は生殖細胞、すなわち精子細胞および卵母細胞であった。しかし、これらの細胞は、増殖不能であるため、これらは、(倫理的制限は別にして)遺伝的実験には使用不能であった。15年以上前、タフツ大学の科学者グループは、慢性骨髄性白血病(CML)患者から単離されている細胞株を偶然見つけた。KBM−7と称されるこの細胞株[1]は、二染色体であることが見出された8番染色体および15番染色体の一部を除いて大部分の染色体に関して半数体であった。このほぼ半数体の状態は、培養中で数ヶ月間維持可能であった。しかし、最終的に、KBM−7細胞は二倍体に変換され[1]、このことから、ほぼ半数体である核型はむしろ、「準安定」状態に相当することが示唆される。
著者ら[1]は、この細胞株を用いて、「哺乳動物細胞生物学の研究に対して体細胞遺伝学を適用することが促進され」うることに注目しているが、ホワイトヘッド・バイオ医療研究所のThijn Brummelkampおよびその同僚が、ヒト細胞における遺伝的実験に対してKBM−7細胞を成功裡に適用するまでに、10年以上掛かった[2]。この画期的な論文において、著者らは、宿主ゲノム内に慣用的な遺伝子トラップを挿入して、そしてそれによって組み込み部位で遺伝子発現を破壊するため、レトロウイルスベクターを用いた。最も重要には、レトロウイルスは、非常に高い力価で増殖可能であるため、この方法は、突然変異細胞プールにおいて、非常に高い適用範囲で大部分の非必須ヒト遺伝子の同時破壊を可能にし、それによって、15年以上前に酵母において行われたスクリーンと同様、非バイアス化ポジティブ選択スクリーンを可能にした[3]。
非バイアス化遺伝学スクリーンに加えて、Brummelkampによって開発された技術は、すべての細胞株が1つの定義された位に1つの遺伝子トラップ挿入を所持する、ヒト細胞株のユニークなライブラリーの生成を可能にした。重要なことに、こうしたライブラリーは、逆遺伝学、すなわち考慮中の特定の表現型に関する個々の突然変異体の研究を可能にする。こうしたライブラリーは、最近確立された。これは、ほぼ10,000の細胞株を含有し、3,500を超えるヒト遺伝子を含む[4]。さらに、この刊行物はまた、次世代配列決定および一塩基多型(SNP)アレイによる親KBM−7細胞の詳細なゲノム特徴付けも含有する。これらのデータに基づいて、15番染色体上の二染色体部分は、ほぼchr15:61,105,000−89,890,000の領域にマッピング可能であった。
上記の遺伝子スクリーンは非常に強力であるが、これらは明らかに、ほぼ半数体のヒト細胞株の入手可能性によって制限された。当時は、KBM−7が唯一の入手可能な細胞株であった。Brummelkampおよび同僚は、したがって、KBM−7細胞を再プログラミングして、人工多能性幹細胞(iPCS)を得ようと決定した。これは実現可能であることがわかったが、KBM−7由来iPSCは脱分化処置中にそのほぼ半数体の核型を喪失した[5]。しかし、この反応の1つの副産物は、ほぼ半数体のままであり、そして線維芽細胞様形態を示す、HAP1と呼ばれる接着細胞株であった[6]。重要なことに、HAP1細胞は多能性ではないが、増殖、形態および遺伝子発現に関して、そのKBM−7親細胞とはかなり異なる。注目すべきことに、HAP1細胞はまた、8番染色体に関して一染色体性であり、そしてしたがってそのKBM−7親細胞よりも「より半数体」である。しかし、HAP1細胞は、15番染色体由来の二染色体断片を保持し、そしてしたがって、完全に半数体と見なすことは不可能である。さらに、HAP1細胞は、そのほぼ半数体である核型に関して、KBM−7よりもより安定でなく、すなわちこれらはKBM−7細胞よりもより容易に二倍体状態に変換される。
細菌は、そのゲノム完全性を維持し、そして侵入するウイルスおよびプラスミドに対して防御する必要性を有する。近年、クラスター形成され、規則的に間隔を置いた、短いパリンドローム反復(CRISPR)を有するゲノム遺伝子座が細菌において見出され、そしてこれは侵入ファージに対する適応免疫を仲介することが示された[7]:細菌は、ファージから短い核酸配列を捕捉し、そしてこれらをCRISPR遺伝子座に組み込むことが可能である。CRISPR遺伝子座の転写によって産生される小分子RNAは、細菌エンドヌクレアーゼセットを導いて、侵入病原体ゲノムを切断することも可能である。
1つの細菌エンドヌクレアーゼ、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のCAS9が必要最小条件であることが、該酵素を精製し、そしてin vitroで切断反応を再構築することによって特徴付けられた[8]。驚くべきことに、CAS9自体がエンドヌクレアーゼ切断に十分であり、そして切断反応には、さらなるポリペプチドは必要ではなかった。さらに、CAS9は、2つのRNA補因子:定常tracrRNAおよび可変crRNAを必要とする。重要なことに、crRNAを用いて、CAS9の切断特異性を再プログラミングすることが可能であり、それによって、CAS9を、関心対象のゲノム遺伝子座にターゲティングすることが可能である。切断特異性は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)によって限定され、これはCAS9に特異的であり、そして切断部位に隣接して存在する。この系を単純化する試みの中で、crRNAおよびtracrRNAは融合されて、ガイドRNAと称される1つのキメラRNA分子が生じた。
US 2010/0076057 A1は、crRNAおよびCRISPR会合(cas)タンパク質とのターゲットDNA干渉、特にCRISPR配列の使用に基づく水平遺伝子トランスファーに関するものを開示する。
CAS9−crRNA複合体によるRNA配向性DNA切断は、WO 2013/141680 A1およびWO 2013/142578 A1によって記載される。
本発明の目的は、ほぼ半数体である細胞を操作して、細胞の二倍性を減少させることである。さらなる目的は、核型的に安定である、半数体核型の細胞株を提供することである。
目的は、請求するような主題によって解決される。
本発明にしたがって、体細胞的に完全な半数体であり、核型が安定したヒト細胞株を提供する。特に、細胞株は、ほぼ半数体である体細胞ヒト親細胞の1またはそれより多い二染色体(本明細書において、二倍体とも称される)染色体領域のターゲティング欠失によって得られうる。
特に、細胞株は接着細胞株である。
特定の態様にしたがって、細胞株は、DSM ACC3220の下に寄託されたHAP2細胞株またはその機能的変異体、好ましくは類似の遺伝子発現プロファイルを持つものである。特に、機能的変異体は、実質的に同じ遺伝子発現プロファイルによって特徴付けられ、すなわち、機能的変異体は、遺伝子発現レベルが実質的に同じである、例えば1000遺伝子未満、好ましくは750未満、または500未満、または300遺伝子未満の遺伝子発現レベルが異なるであろうゲノムを含む。
HAP2と称される細胞株は、完全に半数体であるヒト細胞株であり、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Mascheroder Weg 1b/Inhoffenstrasse 7B, 38124 Braunschweig(DE)に、寄託番号DSM ACC3220(寄託日:2013年11月21日;寄託者:Haplogen GmbH、オーストリア・ウィーン)の下で寄託された生物材料として提供される。HAP2細胞株および機能的変異体は、少なくとも20継代に渡っても、一染色体状態のヒト染色体の完全なセットを含む。機能的変異体は、好ましくは、類似の遺伝子発現パターンによって特徴付けられる。細胞株の異なるクローンは、同じまたは類似の遺伝子発現パターンを示すことも可能である。例えば、親クローンを突然変異させることによって、独立のクローンを産生することも可能であり、この独立のクローンは核型的に安定であり、そして実質的に同じ遺伝子発現プロファイルを有する。
本発明の細胞株は、核型が安定であることがわかり、好ましい例は、例えば寄託された材料またはその機能的変異体である。HAP2細胞株および機能的変異体は、少なくとも20継代に渡ってさえ、一染色体状態のヒト染色体の完全なセットを含む。機能的変異体は、好ましくは、類似の遺伝子発現パターンによって特徴付けられる。
本発明の細胞株の異なるクローンは、同じまたは類似の遺伝子発現パターンを示すことも可能である。例えば、寄託されるようなHAP2細胞株を産生する際、Cas9およびガイドRNAでのトランスフェクションの独立のラウンドから、少なくとも2つのクローンが得られてきており、そして核型に安定しており、そして実質的に同じ遺伝子発現プロファイルを有することが同定されてきている。例えば、本発明にしたがって提供される2つの異なるクローンは、284遺伝子のみの発現が異なる。
特定の側面にしたがって、細胞株の細胞は、一染色体状態のヒト染色体の完全なセットを含む。
特に、半数体核型は、少なくとも10継代、好ましくは少なくとも20継代に渡って、核型として安定である。
特定の側面にしたがって、細胞株は、関心対象のあらかじめ定義されたゲノム部位(GOI)に1またはそれより多い関心対象のゲノム突然変異(MOI)を含む。
MOIは、特に
(i)遺伝子の機能をノックアウトする突然変異;
(ii)1またはそれより多いヌクレオチドの欠失、置換、または挿入の少なくとも1つを導入する突然変異;および/または
(iii)相同性テンプレートの交換配列を導入する突然変異
の少なくとも1つである。
こうしたMOIには、特に、遺伝子機能または遺伝子発現を破壊するフレームシフト突然変異(遺伝子ノックアウト)、定義された点突然変異(ノックイン)、天然に存在しない外来(foreign)DNA配列(例えばGFPまたはTAPタグなどのタグ)の挿入または天然に存在する配列の欠失(例えば全遺伝子、エクソンまたは制御要素の欠失)が含まれることも可能である。
遺伝子の機能をノックアウトする突然変異は、例えばDNAの発現を下方調節し、遺伝子の少なくとも一部を欠失させ、そして/または遺伝子のオープンリーディングフレームを破壊することも可能である。
特に、細胞は、全体としてまたは部分的に交換配列を含んでもよく、例えば、交換配列の一部が細胞内に導入されて、GOIに比較した際、該細胞が少なくとも1つの点突然変異を、そして場合によって、交換配列内に存在しうるさらなる突然変異を含んでもよい。
交換配列は、特に、相同性テンプレートによって導入されることも可能であり、該テンプレートは、GOIに少なくとも90%の配列相同性を有し、そしてGOIと相同組換え可能である少なくとも20bpの組換え配列、および少なくとも1つの点突然変異でGOIと異なるヒトヌクレオチド配列を含む交換配列を含む、ヒトDNA断片またはこうした断片を含有するプラスミドである。特に、細胞は、全体としてまたは部分的に交換配列を含んでもよく、例えば、交換配列の一部が細胞内に導入されて、GOIに比較した際、該細胞が少なくとも1つの点突然変異を、そして場合によって、交換配列内に存在しうるさらなる突然変異を含んでもよい。
こうした交換配列によって、突然変異はあらかじめ決定された位にノックインされることも可能である。ノックイン突然変異である突然変異は、例えば、個々の点突然変異またはSNPのノックインを含むことも可能である。
特に、相同性テンプレートは
a)長さ20〜200bp、特に20〜100bpのオリゴヌクレオチド;または
b)長さ20〜5000bp、特に20〜1000bpのPCR産物;または
c)ドナープラスミド中に含まれるa)またはb)のいずれか
である。
交換配列は、1つのみの点突然変異、例えばそれによって異なるアミノ酸をコードする、1またはそれより多いヌクレオチドの置換、あるいは例えば時にSNP(一塩基多型)と称される突然変異パターンであって、例えば内因性遺伝子が修飾されて特定の配列タグ(mycタグ、Hisタグ、HAタグ、V5タグ、TAPタグ、LAPタグ、GFP、RFP、dsRed、mCherry)を含有するように、ゲノム中の単一ヌクレオチド、A、T、CまたはGが、ヒトまたは対染色体、またはより大きい構築物の挿入物間で異なる突然変異パターンを得るような、一連の点突然変異を含むことも可能である。交換配列は、非コードまたはコード領域を含むことも可能である。典型的には、交換配列は、特定の遺伝子発現パターンまたは産物、あるいは遺伝的素因もしくは障害、または疾患状態を含む、特定の表現型を同定する。
特に、交換配列は、組換え配列内に包埋されるか、あるいは組換え配列と重複するか、あるいは1またはそれより多い組換え配列に隣接され、好ましくは、交換配列、ならびにGOIと相同組換えが可能な5’端および3’端の隣接配列を含む。特定の例は、相同テンプレートを指し、ここで組換え配列は突然変異を取り込み、したがって交換配列は、組換え配列内に取り込まれる。別の例にしたがって、組換え配列より大きい交換配列を用いる。それによって、例えば1より多い点突然変異を導入するため、GOI内のより大きいセグメントが交換可能である。典型的には、交換配列は、長さ1〜1000bp、典型的には少なくとも10bp、または少なくとも20bpを有し、そしてさらに、1000bpより長く、最大5000bpであることも可能である。
特に、交換配列は、GOIに対して、少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列相同性を有し、好ましくはここで、交換配列は、1またはそれより多い点突然変異を含み、特に、GOIに比較した際、99.9%未満または99.5%未満の配列相同性であるか、あるいは修飾DNA領域は、異なるDNA発現および/または異なる表現型を引き起こす。
特定の突然変異または突然変異パターンを、CRISPR/CAS9法、あるいは突然変異誘発の代替法によって導入することも可能である。
細胞株を用いて、姉妹染色体を得るような染色体の複製によって、あるいは染色体セットの核内倍加により、複製または同一姉妹染色体を得ることによって、二倍体細胞株を産生することも可能である。
こうした二倍体細胞株は、特に、ほぼ二倍体または完全に二倍体の細胞が得られるように、例えばほぼ半数体のまたは完全に半数体の細胞の複製染色体を含むことが理解される。複製染色体は、特に、複製姉妹染色体セット、または少なくともその一部であり、ここで複製領域はホモ接合性SNPを含み、そして特に、ヘテロ接合性SNPが存在しないことで特徴付けられる。
特に、本発明の細胞株において、姉妹染色体のアレルは同一であり、そしてヘテロ接合性一塩基多型(SNP)を含有しない。同一の姉妹染色体は、特に、ホモ接合性SNPまたはSNPパターン(またはヘテロ接合性SNPの非存在)によって特徴付けられる。
特に、複製姉妹染色体の2セットを含む二倍体細胞を、体細胞性半数体(またはほぼ半数体の細胞)の接着細胞株から、例えば細胞内で染色体を無性複製する単層細胞培養において前記細胞株を培養し、それによって個々の細胞、特に接着細胞の集団を得て、そして個々の細胞の核型決定に際して、二倍体細胞を選択し、そして二倍体細胞を拡大して、二倍体核型を含む接着細胞株を得ることによって産生する。
C665と称される(二倍体eHAPとも称される)細胞株は、ほぼ二倍体であると考えられ(ほぼ半数体である細胞株HAP1の複製染色体を含有するため)、そしてDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Mascheroder Weg 1b/Inhoffenstrasse 7B, 38124 Braunschweig(DE)に、寄託日:2014年10月29日;寄託者Haplogen Genomics GmbH、オーストリア・ウィーン、DSM ACC3250の下で寄託された生物材料として提供される、二倍体ヒト細胞株である。
本明細書に記載するような完全に半数体である細胞株の二倍体化によって得られる二倍体細胞株は、完全に二倍体であると見なされる。染色体の複製に際して、細胞は、複製染色体の完全なセットを含むことも可能である。特に、細胞は、二染色体状態のヒト染色体の完全なセットを含むことも可能である。複製に際して、姉妹染色体のアレルは同一であり、そしてヘテロ接合性一塩基多型(SNP)を含有しない。同一姉妹染色体は、ホモ接合性SNPまたはSNPパターン(またはヘテロ接合性SNPの非存在)によって特に特徴付けられる。本発明の細胞株の二倍体化に際して得られるような特定の二倍体細胞は接着細胞である。
したがって、本発明は、本発明の細胞株を培養し、細胞内の染色体を無性複製し、それによって個々の細胞の集団を得て、そして個々の細胞の核型決定に際して、二倍体細胞を選択し、そして二倍体細胞をさらに拡大して、二倍体核型を含む突然変異体細胞株を得る方法をさらに提供する。
特に、半数体細胞株は、二倍体化のための細胞ストレス条件下で培養され、それによって二倍体状態への自発的変換が加速される。
特に、細胞ストレス条件は:
a)好ましくは熱または低温ショックによる、温度ストレス;
b)好ましくは剪断力による、物理的ストレス;
c)好ましくは少なくとも20または25継代による連続継代;
d)高細胞密度、好ましくは少なくとも24時間に渡る飽和;
e)最適未満であるが許容されうる量の栄養素、代謝物および/または毒素を含む培地組成;
f)最適未満のレベルへの一時的な酸素レベル低下;および
g)好ましくは少なくとも2時間の、培地中の活性酸素種の存在
の少なくとも1つを使用する。
こうしたストレス条件は、例えば、以下である:
−熱ショック:より高い温度、特に温度(±1℃):40℃、42℃、44℃、46℃、48℃、または50℃のいずれかへの定義された期間(例えば少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、最長16時間)の細胞の曝露;
−低温ショック:より低い温度、特に温度(±2℃、しかし、凍結する温度より上):0℃、4℃、8℃、12℃、16℃、20℃、24℃、28℃、または32℃のいずれかへの定義された期間(例えば少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、最長16時間)の細胞の曝露;
−細胞歪み負荷(straining)および剪断:例えば、トリプシンまたは他の酵素の処理によるなどで、接着細胞を処理して、懸濁中の細胞を得て、そして針を通じて細胞を吸引する(例えば20、25または30ゲージ針を通じて、少なくとも4、8、12、16、または20継代)か、または物理的手段によって懸濁物を混合するか、または固体キャリアーに接着した場合、物理的処理によって、細胞に対する剪断ストレスを使用することによる、剪断力への細胞の曝露;
−細胞高密度:細胞は適時にトリプシン処理されず、単層密度より、より高い密度が得られるように(例えば飽和で少なくともさらに6時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間)、細胞培養プレート中でより高い細胞密度に曝露される;
−毒素:細胞培養中、許容されうる量、例えば少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%または少なくとも70%の生存細胞レベルが得られるような量の、毒性化合物(例えばリシン毒素、志賀毒素またはツニカマイシン)での細胞の処理;
−低酸素症:酸素レベルの一時的な低下、特に、量(±1% v/v):1%、2%。、4%、または8%Oのいずれかでの、定義される期間、例えば少なくとも24時間、48時間、最長72時間の一時的低下;
−活性酸素種の存在:過酸化水素での6時間、12時間、18時間、24時間の細胞の処理
−最適未満または最適な細胞培養条件下での、接着細胞の連続継代、例えば少なくとも20、25、30または35継代。
細胞株をさらに用いて、DNA抽出法によって、ゲノムDNAの調製物を得ることも可能である。したがって、本発明はさらに、本明細書に記載するような細胞株から抽出したゲノムDNAを含むDNA調製物をさらに提供する。
本明細書に記載するような半数体または二倍体細胞株のいずれかを、例えば当該技術分野に周知のDNA抽出法を通じて、例えば有機抽出、シリカスピンカラム、および磁気ビーズを用いて、ゲノムDNA抽出物に供することも可能である。
したがって、本発明は、本明細書に記載するような細胞株から抽出されたゲノムDNAを含むDNA調製物をさらに提供する。半数体細胞から抽出されたゲノムDNAは、各遺伝子を1コピーしか所持しないユニークな特性を有し、そしてゲノムDNAの混合物を調製する際には、これは、より均一な混合物を生成する能力に対して有意な影響を有しうる。ゲノムDNAのこうした調製物は、ゲノムDNAの均一な標準調製物として、例えば突然変異体または天然(非突然変異体)細胞いずれかの参照標準として使用するために、使用可能である。半数体細胞またはさらに二倍体状態に駆動された半数体細胞(半数体細胞のゲノムが複製されて二倍体状態を得ている、二倍体化細胞)を用いることによって、アレル間のこれらの相違が有意に減少し、より均一な標準調製物を作製している。
本発明は、少なくとも2つの異なるまたは独立のクローンの細胞株で構成される接着性体細胞のポリクローナル集団であって、細胞株各々が本明細書に記載するような半数体または二倍体細胞株である、前記集団をさらに提供する。
特に、集団は、異種混合物であり、例えば1つのみの固形キャリアー上あるいは異なるキャリアーまたは区画上に、少なくとも2、3、4、5、10、または20の異なるクローンを含み、例えば各クローンが空間的に別個の位置に位置する、例えば望ましい核型を有する単離クローンの混合物である。こうしたクローン混合物は、単離された単一クローンの遺伝的浮動が混合物のポリクローナル的性質によって補償される、安定な集団を提供するために特に適している。
特に、集団は、独立クローンである機能的変異体を含む。こうした集団の個々のクローンのゲノムまたは核型安定性を決定して、本明細書に定義するように核型が安定であり、そして商業的製品として提供可能である細胞株としてさらに産生可能であるか、または突然変異体を得るようにさらに操作可能であるものを選択することも可能である。
本発明にしたがって、
a)ほぼ半数体である体細胞ヒト親細胞を提供し;
b)親細胞ゲノムにおいて二染色体領域を同定し;
c)各々、ターゲット部位とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列を含むcrRNAと組み合わせたtracrRNAを含むガイドRNA(gRNA)によって、染色体領域のDNAの5’および3’端に隣接する外側部位をターゲティングし;
d)gRNAとハイブリダイズした際に、DNA二本鎖切断を触媒する、RNA誘導性(guided)エンドヌクレアーゼとの接触に際して、ターゲット部位でDNAを切断し、それによって、染色体領域を欠失させて、そして完全に半数体の細胞を得て;そして
e)細胞を拡大して、完全に半数体である細胞株を得る
工程を含む、本発明の半数体細胞株を産生する方法をさらに提供する。
平行トランスフェクション・ラウンドにおいて、独立クローンである機能的変異体を産生することが可能である。個々のクローンのゲノムまたは核型安定性をさらに決定して、本明細書に定義するように、核型が安定し、そして商業的製品として提供可能である細胞株としてさらに産生可能であるか、または突然変異体を得るようにさらに操作可能であるものを選択することが好ましい。
各々、ex vivoでまたは細胞内で会合する別個の構成要素として提供される、tracrRNAおよびcrRNAの二成分複合体、ならびに場合によるさらなるリンカー配列として、ガイドRNAを提供することも可能である。あるいは、また、tracrRNAおよびcrRNAを、別個の構成要素として提供することも可能である。好ましくは、ガイドRNAは、例えばリンカー配列、例えば配列番号48の配列を含みまたは含まず、crRNAがtracrRNAの5’端に直接連結される連結によって、互いに連結された構成要素tracrRNAおよびcrRNAを含む、キメラまたは組換え産物として提供される。
crRNAは、典型的には、tracrRNAとの会合または連結を提供する3’部分である定常部分を含む。crRNAは、典型的には、それぞれcrRNAおよびgRNAの5’部分または5’端に取り込まれた、特異的ターゲット部位とハイブリダイズするよう設計された可変部分をさらに含む。
特定の側面にしたがって、tracrRNAと組み合わされたRNA誘導性エンドヌクレアーゼからなる構成要素を用いてもよい。こうした構成要素は、好ましくは、ターゲット特異的RNA(crRNA)との組み合わせで用いられる。
ガイドRNAおよびRNA誘導性エンドヌクレアーゼは、各々、ex vivoで、または細胞内で会合する別個の構成要素として提供される、tracrRNAおよびcrRNAと、エンドヌクレアーゼの三元複合体として、好適に提供されうる。好ましくは、各々、ex vivoで、または細胞内で会合する別個の構成要素として提供される、ガイドRNAとエンドヌクレアーゼの二元複合体が提供される。エンドヌクレアーゼとのこうした複合体において、ガイドRNAは、好ましくは、互いに連結されたtracrRNAおよびcrRNAを含み、したがって、キメラRNA産物である。
好ましくは、RNA誘導性エンドヌクレアーゼと対形成するtracrRNAまたはgRNAの機能的対を用い、例えばgRNAの定常部分およびエンドヌクレアーゼの機能的対、特に複合体中のまたは別個の構成要素としての機能的対を用いる。特に、機能的対は、適切なII型CRISPR系のものであり、例えば細菌起源のCRISPR系のものである。
tracrRNA/gRNAおよびマッチするエンドヌクレアーゼの機能的対は、好ましくは、1またはそれより多い異なるcrRNA構成要素とともに、例えば異なるゲノムターゲット部位をターゲティングする一連のcrRNAオリゴヌクレオチドとともに、用いられる。
特に、細胞は、細胞性修復機構、例えば非相同端連結であって、場合によってDNA切断に続く機構が可能である。
特に、親細胞は、癌患者、好ましくは白血病、例えば慢性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病、あるいは固形腫瘍、例えば末梢軟骨肉腫に罹患した患者から得られる。
特定の側面にしたがって、gRNAの少なくとも1つは、配列番号3、配列番号13、配列番号19、および配列番号24〜47のいずれかからなる群より選択される配列、またはエンドヌクレアーゼの共基質である前述のいずれかの機能的変異体を含む。
別の特定の側面にしたがって、エンドヌクレアーゼは、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophiles)、髄膜炎菌(Neisseria meningitis)またはトレポネーマ・デンティコラ(Treponema Denticola)のいずれかに由来するCAS9酵素、およびCas9ニッカーゼまたは人工酵素を含む、特に組換え酵素、例えば突然変異体またはキメラ酵素を含む、前述のいずれかの機能的変異体からなる群より選択される。特定のCas9ニッカーゼは、化膿性連鎖球菌のCas9由来であり、そしてポジションD10AまたはH840Aでアミノ酸突然変異を含む結果、1つのヌクレアーゼドメインの触媒活性を不活性化し、そしてCas9を、ターゲット部位で一本鎖分解を作製する「ニッカーゼ」酵素に変換する。
好ましい態様にしたがって、方法は、

・配列番号3、25、もしくは26のいずれか、または前述のいずれかの機能的変異体のヌクレオチド配列を含むgRNA;および
・配列番号1、5、7、8、もしくは9のいずれか、または前述のいずれかの機能的変異体のアミノ酸配列を含むエンドヌクレアーゼ;あるいは

・配列番号13、27〜40のいずれか、または前述のいずれかの機能的変異体のヌクレオチド配列を含むgRNA;および
・配列番号10もしくは15、または前述のいずれかの機能的変異体のアミノ酸配列を含むエンドヌクレアーゼ;あるいは

・配列番号19、41〜47のいずれか、または前述のいずれかの機能的変異体のヌクレオチド配列を含むgRNA;および
・配列番号16もしくは21、または前述のいずれかの機能的変異体のアミノ酸配列を含むエンドヌクレアーゼ
の少なくとも1つを使用する。
特に、細胞は、CAS9エンドヌクレアーゼを、場合によってgRNAの1またはそれより多い構成要素と、あるいはgRNAとともに発現するように操作される。
特に、DNA切断は、プロトスペーサー関連モチーフ(PAM)に対して近位の、好ましくはPAMの3bp上流の二本鎖切断または対の一本鎖切断である。例示的なPAM配列は、配列番号2、配列番号11、配列番号12、配列番号17、配列番号18、配列番号23、配列番号75および配列番号76、または前述のいずれかの相補配列からなる群より選択される。対の一本鎖切断は、本明細書において、時に、「二本鎖」切断の特定の態様と称される。対のニック形成(一本鎖切断)は、各々の一本鎖切断に対して1つのPAMの、2つのPAMに対して特に近位である。
相補的DNA配列は、典型的には、相補鎖のDNA切断に関して認識される。特異的エンドヌクレアーゼおよび特異的CRISPR系によって認識される、適切なPAM配列が選択されることが好ましい。
さらなる特定の側面にしたがって、DNA切断によって誘導される細胞性修復機構によって、好ましくは、1またはそれより多いヌクレオチドの少なくとも1つのフレームシフト突然変異、挿入、置換および/または欠失を導入することによって、ゲノム突然変異が得られる。
さらなる特定の側面にしたがって、突然変異は、突然変異のより大きい領域を指す。例えば、遺伝子のエクソンまたは全遺伝子が欠失される。
したがって、方法は、特に、少なくとも2つのDNA二本鎖切断(DSB)を使用し、ここで、少なくとも1つのDSBは、5’端に対して近位であるターゲット部位内で行われ、そして少なくとも1つのDSBは、染色体領域の3’端に対して近位であるターゲット部位内で行われる。こうしたDSBは、ターゲット領域内の2つの一本鎖切断から生じることも可能であり、これは、各DNA鎖上のターゲット部位上の異なる位に位置し、例えば互いに対して近位であり、そして総合するとDSBを提供するか、または各DNA鎖上のターゲット部位の同じ位のDSBを生じることも可能である。
特定の側面にしたがって、欠失される染色体領域は、少なくとも100万bp、好ましくは少なくとも1000万bpまたは少なくとも2000万bpの長さを有する。ヒトのほぼ半数体の細胞を用いて、核型が安定している、本発明の完全に半数体である細胞株を得るために、3000万bpのメガ塩基規模の欠失でさえ可能であることは驚くべきことであった。
特に、本発明にしたがって、切除しようとするゲノム(染色体)領域に対して外側の両側、例えばゲノム領域の5’および3’端に対して近位または隣接している領域にハイブリダイズする2つのcrRNA分子を使用して、二本鎖DNA切断を誘導してもよい。こうしたDNA切断に際して、細胞性修復は、未結合(free)末端の連結を提供し、それによってゲノム領域を切除する。
さらなる特定の側面にしたがって、tracrRNAおよびエンドヌクレアーゼの同じまたは異なる機能的対、あるいはgRNAの定常部分およびエンドヌクレアーゼの機能的対を使用して、少なくとも2つの異なるターゲット部位を、異なるcrRNAまたはgRNAによってターゲティングする。
本発明にしたがって、異なるゲノムターゲット部位にゲノム突然変異を含む、同質遺伝子細胞変異体を産生するための、本発明の細胞株の使用をさらに提供する。例えば個々の遺伝子のノックアウトを含む、こうしたゲノム突然変異を、あらかじめ定義されたゲノムターゲット部位で、ゲノム突然変異を含む細胞の突然変異体体細胞ヒト細胞株を産生する方法によって産生することも可能であり、該方法は:
a)ターゲット部位とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列を含むcrRNAと組み合わされたtracrRNAを含むガイドRNAを提供し;
b)gRNAとハイブリダイズした際に、ターゲット部位でDNA切断を触媒するRNA誘導性エンドヌクレアーゼを提供し;
c)エンドヌクレアーゼの存在下で、細胞内にガイドRNAを導入して、ターゲット部位で多様なゲノム突然変異を含む細胞レパートリーを得て;
d)前記レパートリーから、遺伝子の機能をノックアウトする突然変異を含む細胞を選択し;そして
e)細胞を拡大して、突然変異体細胞株を得る
工程を含む。
特に、該方法は
a)細胞を形質転換し、そしてターゲット部位で、例えばターゲット部位に対して近位に、多様なゲノム突然変異を含む形質転換細胞のレパートリーを得るために用いられるガイドRNAを発現する核酸配列を取り込んだ、発現プラスミドを使用し;そして
b)前記レパートリーから、遺伝子の機能をノックアウトする突然変異を含む形質転換細胞を選択する。
さらなる方法は、挿入性突然変異誘発要因、例えばレトロウイルスまたはトランスポゾンによって送達される遺伝子トラップ、あるいは他のデザイナーヌクレアーゼ、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼまたはTALENを使用することも可能である。
特に、ゲノム突然変異は、DNA切断によって誘導される細胞性修復機構によって、好ましくは、1またはそれより多いヌクレオチドの少なくとも1つのフレームシフト突然変異、挿入、置換および/または欠失を導入して得られる。
例えば、ゲノム突然変異は、ドナーテンプレートの存在下で、HDRによって、またはフレームシフト突然変異体を得ようとする場合、NHEJによって、得られうる。
特に、MOIは、以下の方法のいずれかによって得られうる:
1.突然変異を、DNAのCRISPR/Cas仲介切断によって導入する。この目的に向けて、少なくとも1つのガイドRNAおよびCas9ニッカーゼを用いて、一本鎖切断を導入することも可能である。しかし、1より多いガイドRNA(特定の態様においては2つ:対ニック形成)を用いることも可能であり、そしてCas9野生型またはニッカーゼを使用してもよい。
2.切断後、細胞はNHEJまたは相同配向性(homology−directed)修復(HDR)、または他の機構のいずれかによって、DNA損傷を修復するであろう。例えば塩基切除修復、ミスマッチ修復または一本鎖アニーリングを含む、さらなるありうる修復経路がある。
3.突然変異には、以下が含まれる:
a.欠失の小さい挿入(インデル)。エクソンをターゲットとする場合、こうした突然変異は、フレームシフトを破壊し(フレームシフト突然変異)、そして生じる細胞株は遺伝子ノックアウトと見なされるであろう。こうした突然変異は、例えば
i.単一ガイドおよびCas9 wt、その後、NHEJ;
ii.対のガイドおよびCas9ニッカーゼ、その後、NHEJ
によって得られる;
b.単一ヌクレオチド置換または点突然変異。こうした突然変異は、例えば
i.単一ガイド、Cas9 wtおよびドナーテンプレート、その後、HDR;
ii.対のガイド、Cas9ニッカーゼおよびドナーテンプレート、その後、HDR
によって得られる;
c.天然に存在する配列の欠失。こうした突然変異は、例えば
i.対のガイド(欠失配列は、2つのガイドRNAの間に位置する)およびCas9 wt,その後、自発的端連結(NHEJ)
によって得られる;
d.天然に存在する配列(例えば遺伝子またはエクソンとして)または非天然存在である配列(例えばGFP、Mycタグ)の挿入。こうした突然変異は、例えば
i.単一ガイド、Cas9 wtおよびドナーテンプレート、その後、HDR;
ii.対のガイド、Cas9ニッカーゼおよびドナーテンプレート、その後、HDR
によって得られる。
例えば、ヌクレオチド配列を組み込む特定の修復機構には、以下のいずれかが含まれる:
1. NHEJ仲介組み込み
外来交換配列(例えばGFP)の組み込みは、通常、相同配向性修復によって達成されるが、これはまた、非相同端連結によって得ることも可能である。この目的に向けて、ヒトゲノムには存在しないガイドRNA認識部位によって隣接された、交換配列を含有するプラスミドを用いることも可能である。こうしたプラスミドと、Cas9、ヒトゲノムをターゲットとするガイドRNA、およびプラスミド中に存在する認識部位をターゲットとするガイドRNAを同時トランスフェクションすると、交換配列は、Cas9を発現している細胞において解放されるであろう。解放後、該交換配列はターゲティングされた様式で、ヒトゲノム中に組み込まれることが可能である。生じた細胞株は、ヒトゲノムにおいてターゲティングされる部位に対して近位に交換配列の単一組み込みを所持するであろう。
2. DNA修復機構
Cas9によって誘導されるDNA二本鎖切断は、NHEJまたはHDRによって修復される。NHEJはよく理解されているが、HDRを支配する機構はよりよく特徴付けられていない。HDRは、相同組換えと同義に用いられるが、これはより複雑である可能性があり、そして他の修復経路がさらに寄与する可能性もある。例えば、ミスマッチ修復経路がHDRを抑制し、そしてその結果、MSH2またはPMS2ノックアウト細胞は、より高い率のHDRを示すことが示されてきている。さらに、他の修復経路の寄与は、ドナーテンプレートの性質および長さに依存する可能性もある。例えば、短いオリゴヌクレオチドをドナーとして用いる場合、取り込みは、岡崎フラグメントと類似のDNA複製因子によって補助されると推測されてきている。より長いドナーでは、相同組換えに関与する因子がより多く寄与する可能性もある。
こうした突然変異(単数または複数)は、典型的には、DNA二本鎖切断の20bp上流および下流以内、特にDNA切断の15bpまたは10bp上流および下流以内に位置する。特に提供される突然変異(単数または複数)は、1またはそれより多い位に位置し、例えば、1またはそれより多い塩基対の単一挿入、欠失または置換を含む、少なくとも1または2の点突然変異、特に少なくとも3、4、5、最大10の点突然変異である。
特定の側面にしたがって、交換配列の取り込み(本明細書において、突然変異(単数または複数)とも称される)は、DNA切断の500bp上流および下流以内、特にDNA切断の250bpまたは100bp上流および下流以内、そしてより具体的には、DNA切断の50bpまたは10bp上流および下流以内に位置する。
特に、本発明は、本発明の細胞株の細胞を突然変異誘発することによって、異なるゲノムターゲット部位(GOI)でゲノム突然変異(MOI)を含む、完全に半数体である体細胞ヒト細胞のライブラリーを産生する方法を提供する。
本発明にしたがって、異なるゲノムターゲット部位にゲノム突然変異を含む同質遺伝子細胞変異体のレパートリーを含む、完全に半数体であり、核型が安定している体細胞ヒト細胞のライブラリーをさらに提供する。
特に、本発明の方法は、異なるあらかじめ定義されたゲノムターゲット部位で、多様なゲノム突然変異を持つ同質遺伝子細胞のこうした突然変異体ヒト体細胞細胞株のライブラリーを産生する方法を提供する。こうしたライブラリーは、先行技術のライブラリーとは異なり、これは、安定な半数体核型および特徴的な突然変異、特にCRISPR系に特徴的であるフレームシフト突然変異またはノックアウト突然変異、すなわちPAM配列に対して近位である突然変異を持つ、完全に半数体である細胞であるためである。
したがって、本発明は、異なるあらかじめ定義されたゲノムターゲット部位で、多様なゲノム突然変異を持つ、同質遺伝子細胞の突然変異体ヒト体細胞細胞株のライブラリーをさらに提供し、該細胞は、本発明の方法によって得られうる、ターゲット部位のゲノム遺伝子座に関して安定な半数体核型を持つ半数体である。
特に、ライブラリーは、異なるゲノムターゲット部位で突然変異を持つ少なくとも50、好ましくは少なくとも100、好ましくは少なくとも300、少なくとも1,000または少なくとも10,000の細胞株のレパートリーを含む。
特定の態様にしたがって、細胞株レパートリーまたはライブラリーの各々の細胞株を別個の容器中に提供する。
さらなる特定の態様にしたがって、ライブラリーは、マイクロアレイを含むアレイ中に含まれ、ここで、各細胞株は、空間的に別個の位置、例えばスポットに位置する。したがって、本発明は、本発明のライブラリーを含むこうしたアレイを提供する。
ライブラリーを特定のスクリーニング目的のために使用することも可能である。したがって、本発明は、本明細書に記載するようなライブラリーの1またはそれより多い細胞株の機能的特性を決定し、そしてMOIの指標としてその機能にしたがって細胞株を選択することによって、あらかじめ定義されたGOIでMOIを含むヒト細胞株を同定する方法を提供する。
化膿性連鎖球菌のtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:A) ・CAS9のアミノ酸配列(配列番号1);・PAMモチーフ(配列番号2);・gRNA(配列番号3);・crRNAの定常部分、リンカーおよびtracrRNAを含む、gRNAの定常部分(配列番号4) 化膿性連鎖球菌のtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:B) ・配列番号1のアミノ酸配列のN末端伸長中に位置するさらなるNLS配列を含む、CAS9のアミノ酸配列(配列番号5);・NLS配列(配列番号6) 化膿性連鎖球菌のtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:C) ・配列番号1のアミノ酸配列のC末端伸長中に位置するさらなるNLS配列を含む、CAS9のアミノ酸配列(配列番号7) 化膿性連鎖球菌のtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:D) ・配列番号1のアミノ酸配列のN末端伸長中に位置するさらなるNLS配列、およびC末端伸長中に位置するさらなるNLS配列を含む、CAS9のアミノ酸配列(配列番号8) 化膿性連鎖球菌のtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:E) ・配列番号1のアミノ酸配列のN末端伸長中に位置するさらなるNLS配列、およびC末端伸長中に位置するさらなるNLS配列を含む、CAS9のアミノ酸配列(配列番号9) S.サーモフィルスのtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:A) ・CAS9のアミノ酸配列(配列番号10);・PAMモチーフ(配列番号11);・例示的なPAMモチーフ(配列番号12);・gRNA(配列番号13);・crRNAの定常部分、リンカーおよびtracrRNAを含む、gRNAの定常部分(配列番号14) S.サーモフィルスのtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:B) ・配列番号10のアミノ酸配列のC末端伸長中に位置する3つのさらなるNLS配列(配列番号6)を含む、CAS9のアミノ酸配列(配列番号15) 髄膜炎菌のtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:A) ・CAS9のアミノ酸配列(配列番号16);・PAMモチーフ(配列番号17)、または(配列番号75)、または(配列番号76);・例示的なPAMモチーフ(配列番号18);・gRNA(配列番号19);・crRNAの定常部分、リンカーおよびtracrRNAを含む、gRNAの定常部分(配列番号20) 髄膜炎菌のtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:B) ・配列番号16のアミノ酸配列のC末端伸長中に位置する3つのさらなるNLS配列(配列番号6)を含む、CAS9のアミノ酸配列(配列番号21) T.デンティコラのtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:A) ・CAS9のアミノ酸配列(配列番号22);・PAMモチーフ(配列番号23) T.デンティコラのtracrRNAまたはgRNAおよびRNA誘導性CAS9エンドヌクレアーゼの機能的対の配列情報:B) ・配列番号22のアミノ酸配列のC末端伸長中に位置する3つのさらなるNLS配列(配列番号6)を含む、CAS9のアミノ酸配列(配列番号24) 親配列の機能的変異体(配列番号25〜47)、リンカーGAAA(配列番号48)を含む、機能的gRNA配列。 親配列の機能的変異体(配列番号25〜47)、リンカーGAAA(配列番号48)を含む、機能的gRNA配列。 親配列の機能的変異体(配列番号25〜47)、リンカーGAAA(配列番号48)を含む、機能的gRNA配列。 親配列の機能的変異体(配列番号25〜47)、リンカーGAAA(配列番号48)を含む、機能的gRNA配列。 KBM−7細胞に関するスペクトル核型決定(SKY)データは、2コピーの染色体8、および染色体19に付着した染色体15の一部を明らかにする。 HAP1細胞のトランスフェクションプール由来のT7エンドヌクレアーゼアッセイ。HAP1細胞を、2つのCRISPRの4つの異なる組み合わせ(C1&3、C1&4、C2&3、C2&4)でトランスフェクションし、これらは、1つのCRISPRで二染色体領域の各境界をターゲティングする。形質導入細胞プールからゲノムDNAを単離した。PCRおよびT7エンドヌクレアーゼ消化によって、各遺伝子座での編集を評価した。 CRISPRトランスフェクション細胞プール由来の欠失PCR。HAP1細胞を、2つのCRISPRの4つの異なる組み合わせ(C1&3、C1&4、C2&3、C2&4)でトランスフェクションし、これらは、1つのCRISPRで二染色体領域の各境界をターゲティングする。形質導入細胞プールからゲノムDNAを単離した。欠失領域に隣接する2つのプライマー対をPCR増幅に用い、HAP1野生型細胞には存在しない、欠失特異的PCRアンプリコンの検出を可能にした。 個々のクローンに対する欠失PCR。個々のHAP1クローン(A11、A8、B11、F6およびH1と称される)を限界希釈によって、CRISPRトランスフェクション細胞プールから単離した。各クローンからゲノムDNAを単離し、そしてHAP1野生型細胞には存在しない欠失特異的PCRアンプリコンの検出を可能にするプライマー対を用いたPCRによって分析した。 クローンA11は、HAP1細胞がヘテロ接合性である5つのゲノム遺伝子座で半接合性である。15番染色体上の二染色体領域内にヘテロ接合性SNPを含有する5つの領域をPCRによって増幅し、そしてサンガー配列決定法に供した。HAP1細胞がすべての5つのSNPに関してヘテロ接合性であるが、クローン11は、ヘテロ接合性の喪失を示す。 クローンA11は半数体である。3つの細胞株(クローンA11、半数体対照(KBM−7)および二倍体KBM−7クローンC85)をヨウ化プロピジウムで染色した。ヨウ化プロピジウムは、ゲノムDNAにインターカレートし、そしてしたがって、総DNA含量の定量的測定値を提供する。ヨウ化プロピジウム染色をフローサイトメトリーによって定量化した。 HAP1細胞のスペクトル核型決定染色。スペクトル核型決定によってHAP1細胞を分析し、これらのクローンの包括的ゲノムランドスケープを評価した。 クローンA11およびE9、ならびにHAP1 wt細胞に関する欠失PCR。ガイドRNA1および3の間の断片がCas9切断後に切除されているかどうかを評価するため、位、chr15:61,105,055に結合する順方向プライマー(HG6090)および位、chr15:89,889,818に結合する逆方向プライマー(HG6093)を用いて、欠失PCRを行った。 異なる編集事象から生じるクローンA11およびE9。クローンA11およびE9から得た欠失PCR産物(図1)をサンガー配列決定のために送り、そしてヒトゲノムに整列させた。
クローンA11に関して示される配列(配列番号95):
クローンE9に関して示される配列(配列番号96):
クローンA11およびE9におけるヘテロ接合性喪失。クローンA11およびE9におけるヘテロ接合性喪失を評価するため、ゲノムDNAを単離し、そしてHAP1細胞においてヘテロ接合性であるSNPを含有する5つのゲノム遺伝子座を選択した。適切なPCRプライマーによって各遺伝子座を増幅し、そしてPCR産物をサンガー配列決定のために送った。図15に含有される配列: wt中の61,113,214: AACACNACCAG(配列番号80);A11中の61,113,214: AACACTACCAG(配列番号81);E9中の61,113,214: AACACTACCAG(配列番号82);wt中の74,153,876: ACTCCNTCTCT(配列番号83);A11中の74,153,876: ACTCCGTCTCT(配列番号84);E9中の74,153,876: ACTCCGTCTCT(配列番号85);wt中の81,960,730: AATTTNAGCTA(配列番号86);A11中の81,960,730: AATTTGAGCTA(配列番号87);E9中の81,960,730: AATTTGAGCTA(配列番号88);wt中の84,578,780: TCAACNCTGCA(配列番号89);A11中の84,578,780: TCAACACTGCA(配列番号90);E9中の84,578,780: TCAACACTGCA(配列番号91);wt中の89,868,948: TGTCANGATGG(配列番号92);A11中の89,868,948: TGTCACGATGG(配列番号93);E9中の89,868,948: TGTCACGATGG(配列番号94);式中、N=A、C、T、またはGのいずれかである。 クローンA11およびE9は、完全に半数体のヒト細胞株である。スペクトル核型決定によってクローンA11およびE9を分析し、これらのクローンの包括的ゲノムランドスケープを評価した。 クローンA11およびE9の核型安定性。クローンA11およびE9、ならびにHAP1 wt細胞を、示すように継代した(2継代または20継代)。継代後、ヨウ化プロピジウム染色によって細胞を染色して、倍数性を評価した。二倍体対照細胞株を参考に含めた。 クローンE9におけるゲノム変化は、主に15番染色体に限定される。親HAP1細胞およびクローンE9に対して、全ゲノム配列決定を行った。このパネルにおいては、HAP1およびE9データ間の相対被覆度は、コピー数喪失が、編集されたchr15断片に限定されたことを明らかにする。広範囲の白い領域は、ヒトゲノムの組み立てられていない片に対応する。 RNA配列決定は、HAP1親に対するクローンA11およびE9の全体の類似性を強調する。(A)HAP1細胞の2つの生物学的複製物およびE9クローンの2つの技術的複製物をRNA配列決定に供した。試料間のスピアマン相関は、全体の発現が親株および編集されたクローンの間で一定であることを示す。(B)各細胞株の2つの複製物を対で比較した。高発現され(FPKM>5)、そして二倍、示差的に発現された遺伝子の数を示す。 クローンE9におけるトランスクリプトーム変化は、主に15番染色体に限定される。非バイアス化RNA配列決定によってHAP1細胞およびクローンE9を分析して、遺伝子発現における包括的変化を評価した。HAP1およびE9細胞間の発現比をセグメント化分析に供した。ヒートマップは、発現変化が、主に、編集された染色体上に位置することを示す。挿入図は、セグメント化の詳細を明らかにする。 HAP1集団から単離した単細胞クローンは半数体または二倍体でありうる。限界希釈によって6つのクローン(クローン1〜6と称される)を単離し、そしてヨウ化プロピジウム染色およびFACSによって分析した。クローン1、3および6は半数体であり、一方、クローン2、4および5は二倍体である。 KBM−7およびHAP1細胞から半数体および二倍体細胞株が得られうる。KBM−7およびHAP−1由来の多数の半数体クローンまたは二倍体クローンをプールして、安定な半数体または二倍体細胞株を生じさせた。生じた細胞株を、ヨウ化プロピジウム染色およびFACSによって分析した。パネルAおよびBは、KBM−7由来細胞株を示し、パネルCおよびDはHAP1由来細胞株を示す。 細胞株C665のスペクトル核型決定分析。スペクトル核型決定によって、細胞株C665(二倍体HAP1細胞)を分析した。パネルA、BおよびCは、別個の核型を示す独立のC665サブクローンに相当する。
本明細書全体で用いるような特定の用語は、以下の意味を有する。
用語「細胞株」は、本明細書において、不死細胞株、細胞株および細胞の初代培養を含めて、長期間に渡って増殖する能力を獲得している特定の細胞タイプの樹立されたクローンを意味するものとする。該用語は、半数体または二倍体細胞株に関して、特に体細胞細胞株に関して用いられる。該用語は、特に、野生型、例えば天然存在であり、そして天然で見出されうるか、または天然の供給源から単離可能であり、そして実験室でヒトの手によって意図的に修飾されていない細胞、あるいは野生型細胞株に比較した際、ゲノム中の例えばコード部位または非コード部位にゲノム突然変異を含む、突然変異体細胞株を含む。また、GOIで関心対象の突然変異を導入する際、非突然変異ヌクレオチド配列は、本明細書において、野生型または親のものと称される。さらに、細胞が天然存在ではなく、人工的に産生されるという事実にもかかわらず、ゲノム内に突然変異がまったく導入されていない場合、細胞は野生型と見なされる。したがって、用語「野生型」は、ヒトから得られた親細胞を培養することによって得られるヒト細胞株にのみ適用されるものではなく、半数体または二倍体のいずれであっても、ヒトゲノムを含む人工細胞にも適用されるものとする。該用語は、特に、ヒトから生じる細胞を操作することによって得られるヒト細胞株、特に染色体の二倍性または半数性の改変を含む細胞を含む。親細胞は、さらに、個々のエクソンまたは遺伝子の突然変異、特に導入部位配向性突然変異を含むことも可能である。
細胞株は、真核であることも可能であり、そして特にヒト細胞株であることも可能であり、突然変異または別の改変を含むまたは含まない、ヒト遺伝暗号を含む細胞株と理解される。したがって、該用語は、ヒトから得られる親細胞由来のヒト細胞株にのみ適用されるものではない。該用語はまた、ヒトから生じる細胞を操作することによって得られるヒト細胞株、特に染色体の二倍性または半数性の改変、あるいは個々のエクソンまたは遺伝子の突然変異を含み、特に遺伝子の機能をノックアウトし、そして/または部位特異的突然変異を導入することによって得られるヒト細胞株も含む。
単離クローンあるいは単離クローンの集団または混合物、特に天然存在でないクローンは、本明細書において、人工的産物と称される。具体的には;複製姉妹染色体およびホモ接合性SNPを含む、本明細書に記載するような二倍体細胞株は、天然には存在せず、これは天然(天然存在)体細胞二倍体細胞は、常に、ヘテロ接合性SNPを含むであろうためである。
突然変異体細胞株は、組換えDNAを得るための組換え手段および方法を使用した組換え細胞株であることも可能であり、したがって、細胞ゲノムを組換え的に操作することによって得られうる。こうした組換え操作は、典型的には、プラスミドまたはオリゴヌクレオチドまたはRNA/DNAあるいはそれぞれの断片のような人工的構築物を、組換えDNAを産生するためのツールとして使用する。特定の突然変異体は、(染色体)領域を突然変異させ、それによって染色体の特定の遺伝子座でゲノム突然変異を得ることによって得られうる。突然変異組換えDNAは、特に、ランダムまたはターゲティング組換えのいずれかによって産生可能である。例示的な突然変異細胞は、細胞ゲノム内に組み込まれる、細胞に対して外因性である少なくとも1つの遺伝要素を含む。いくつかの側面において、外因性遺伝要素を細胞ゲノム中のランダムな位置に組み込むことも可能である。他の側面において、遺伝要素をゲノム中の特定の部位に組み込む。例えば、遺伝要素を内因性配列に対して変化を提供するような特定の位に組み込むことも可能である。
さらに例示的な突然変異細胞は、コードまたは非コード配列の挿入または欠失を含み、例えば親細胞とは異なる表現型を生じる。突然変異細胞にはまた、個々のヌクレオチドが置換されている細胞株も含まれることも可能である。
あるいは、進化的機構によって、例えば正常のまたは増加した自発的突然変異率を持つ細胞を用いて、細胞を突然変異誘発することも可能である。組換えまたは突然変異誘発に際して、例えば配列の特異的改変を決定することによって、特定の遺伝配列にしたがって、適切な突然変異細胞株を選択することも可能である。
突然変異細胞株を、例えば研究、産業または分析使用のための、培養準備が出来た製品として提供することも可能である。本明細書に特に記載するようなヒト細胞株は体細胞細胞株であり、したがって、本発明の範囲は、ヒト生殖系列操作またはヒトクローニングに直接関連するヒトまたは技術を含まないことがよく理解される。
本明細書に記載するような特定の細胞株は、接着細胞株であり、したがって表面への接着細胞として、または懸濁中で、例えば固形キャリアーの存在下または非存在下で、培養可能である。細胞株培養は、例えばプレート、ローラーボトル中、またはバイオリアクター中で、バッチ、流加培養、連続系、中空ファイバー等を用いて行うことも可能である。
接着細胞は、典型的には、単層培養の形の固体表面上での培養である。単層で増殖する係留依存性細胞株を、典型的には、規則的な間隔で継代培養して、指数関数的増殖を維持する。細胞が指数関数的増殖の終点に近づいたら(ほぼ70〜90%飽和)、これらは通常継代培養され、それによって継代を経る。初代培養から二次培養への継代は、所定の細胞密度でさらなる培養デバイスに植え付け、そしてそれによって二次培養を提供するために必要な脱離細胞の形の初代細胞の比率に相当するスプリット比によって特徴付けられる。
接着細胞は、典型的には、細胞支持体またはキャリアー上にゆるくまたは強く係留される。細胞が増殖する例示的なキャリアーが当該技術分野に知られ、そして好ましくは細胞培養の目的に適応している。キャリアーは、適切には粒子状キャリアーである。キャリアーは、細胞増殖を支持する任意の適切な材料で作製されていてもよく、例えばデキストラン、プラスチック、ゼラチン、コラーゲンまたはセルロース、ガラスあるいはその他であってもよい。慣用的な接着細胞培養は、組織培養ボトル、バイアル、ウェルスライドまたは他の容器、あるいはマイクロキャリアーの表面を使用し、通常、培地中に懸濁される小さいミクロン範囲の直径の粒子の表面上で、単層として接着細胞を増殖させることを伴う。
接着細胞の細胞培養において、大部分の細胞は、固体表面に堅固に付着する。いくつかの場合、細胞は丸くなり、そして有糸分裂中に幾分脱離する。有糸分裂後、細胞は再び付着するであろう。
接着細胞を培養する標準的プロトコルが当該技術分野に知られ、例えばLife Technologiesのものがある。これらには、細胞を培養し、細胞を解離させ、細胞を計数し、最適な植え付け密度を決定し、そして継代された細胞のための新規培養容器を用意する方法工程が含まれる。接着細胞株は、細胞が表面を覆うまで、または培地の栄養素が枯渇するまで、in vitroで増殖するであろう。この時点で、細胞株は、典型的には、培養の死を防止するために継代培養される。細胞を継代培養するため、これらは、例えば脱離緩衝液を用いて懸濁される必要がある。接着の度合いは、細胞株間で多様であるが、大部分の場合で、プロテアーゼ、例えばトリプシンを用いて、固体表面から細胞を脱離させ、そして遊離させる。キャリアーへの細胞の接着は、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウム塩によって促進される。したがって、脱離緩衝液は、適切には、細胞接着を促進するいかなる構成要素も含有せず、そして例えば、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウム塩は適切に回避される。原理的に、細胞は、いくつかの周知の酵素手段によって、接着したキャリアーから脱離する。脱離の最も一般的な手段は、タンパク質分解を用い、最も典型的には、システインまたはセリン・エンドペプチダーゼ、例えばトリプシンを用いるが、パパイン、アクチニジン、ブロメラインまたはフィシンもまた使用可能である。
用語「細胞ストレス条件」は、本明細書において、以下のように理解される。細胞が、例えば酸化、熱、感染、毒性混入または任意の他のストレス性条件から生じるストレス下にある場合、細胞は、多様な反応を開始しうる。これらのいくつかは一般的であり;他のものはストレス誘導剤に対してより特異的である。生理学的または非生理学的(例えば物理的)ストレス要因は、細胞を、ストレスに対して多様な特異的な方式で反応させるであろう。ストレスに関するよく確立されたマーカーには(i)熱ショックタンパク質(例えばHSP70またはHSP90)の上方制御、(ii)ストレス誘導性キナーゼ(例えばSAPK、CHK1またはCHK2)の活性化、(iii)カスパーゼ(例えばCASP3またはCASP7)の活性化、(iv)HIF−1および低酸素症に反応する他の低酸素症誘導性因子の上方制御、(v)小胞体での、細胞性ストレスに反応したアンフォールディングタンパク質反応の活性化、(vi)高細胞密度に反応した一時的細胞周期抑止が含まれる。
本明細書に記載するようなこうした細胞ストレス条件は、半数体ゲノムの自発的二倍体化を増進させるであろう。固体表面上に付着した際、または脱離に際して、細胞を固体表面に再付着させて、細胞をさらに培養する前に、接着細胞培養に対してストレス条件を使用することも可能である。剪断は、脱離後適切に適用され、毒素での処理は、好適に接着細胞に適用される。
用語「細胞性修復機構」は、本明細書において、特に、DNAに対して起こりうる多様なタイプの損傷を検出し、そして修復する機構と理解される。特定のDNA損傷は一本鎖または二本鎖分解であり、これは非常に有害である可能性があり、ゲノム配列の喪失または再編成を導く可能性がある。二本鎖切断は、非相同端連結(NHEJ)または相同組換え修復(HR)を通じて修復される。NHEJにおいて、このプロセス中に、さらなるエラーが導入されて、DNA切断に対して近位に特定の突然変異を導く可能性もある。したがって、NHEJは、連結しようとする2つのDNA断片の一本鎖テール間の微小相同性と称される偶然の対形成に依存するため、NHEJは本質的に突然変異誘発性であると見なされる。HRは、修正のためにDNAテンプレートを用いる修復プロセスである。これはNHEJより正確であるが、より効率的でない。適切な外因性DNAテンプレートを細胞に提供した場合、HRは、特定のGOIにおいて突然変異を操作する可能性を提供する。
用語「発現」は、本明細書において、転写を指示することが可能な核酸分子に基づく、RNAおよび/またはタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの産生を指すものとする。発現は、一過性であってもよいし、または安定であってもよい。本発明の文脈において、用語「転写」は、プロセスに関し、ここでDNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される。
「発現構築物」または「ベクター」または「プラスミド」は、これらの配列で形質転換されるかまたはトランスフェクションされた宿主が、コードされる分子を産生することが可能であるように、機能可能であるような連結で、望ましいヌクレオチド配列および制御配列を含有する核酸分子を指す。形質転換を達成するため、発現系には、ベクターが含まれることも可能である;が、適切なDNAはまた、宿主染色体内に組み込まれることも可能である。発現プラスミドは、ヒト細胞を形質転換するように設計されている場合、本明細書において、「ヒト発現プラスミド」と称される。
本発明にしたがって、RNAガイド系において特異的に用いられるRNAは、in vitro転写によって提供されることも可能であり、ここで、RNAは、細胞不含系において、好ましくは適切な細胞抽出物または化学的合成を用いて、in vitroで合成されるか、あるいはin vivo転写によって提供されることも可能であり、ここで、RNAは、特に、ヒトの体の外の環境において細胞を使用するex vivo産生を含む細胞に基づく系において、in vivo合成される。
好ましくは、発現プラスミドは、適切なDNAテンプレートの転写によって得られる転写物の生成のために適用され、このプラスミドは、本明細書において、特に、クローニングベクターとして理解される。特に、本発明の目的のために使用される発現プラスミドを、gRNA、あるいはgRNAのtracrRNAおよびcrRNA構成要素のいずれかの一過性発現に用いることも可能である。
用語「プラスミド」は、本明細書において、in vitroまたはin vivoいずれかで、宿主細胞に送達しようとするポリヌクレオチドを含む巨大分子または分子複合体を指す。プラスミドは、典型的には、ベクターの一般的なタイプと理解され、染色体DNAと独立に複製可能である、染色体DNAとは別個の染色体外DNA分子である。特定の場合で、プラスミドは環状であり、そして二本鎖である。したがって、プラスミドには、特に、自律複製ヌクレオチド配列、ならびにゲノム組み込みヌクレオチド配列が含まれる。発現プラスミドは、通常、宿主細胞における自律複製の起点、選択可能マーカー(例えばアミノ酸合成遺伝子、あるいはブラスチシジン、ゼオシン、カナマイシン、G418またはハイグロマイシンなどの抗生物質に対する耐性を与える遺伝子)、いくつかの制限酵素切断部位、適切なプロモーター配列および転写ターミネーターを含み、これらの構成要素は、ともに機能可能であるように連結されている。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼに関する任意のプロモーターであることも可能である。転写がex vivoで起こる場合、典型的には、バクテリオファージ由来T7、T3、およびSP6 RNAポリメラーゼを、同族(cognate)プロモーターと組み合わせて用いる。転写がヒト細胞で起こるよう意図される場合、典型的には、ヒトRNAポリメラーゼIIIを通じた転写を駆動する、ヒトU6 snRNA遺伝子座に由来する、U6プロモーターを用いる。
転写のためのDNAテンプレートは、核酸をクローニングし、そして転写のために適切なプロモーターを使用する、送達のためのベクター内にこれを導入することによって、得られうる。DNAを、RNAの逆転写によって得ることも可能である。
用語「RNA」は、本明細書において、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離RNA、例えば部分的または完全精製RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、および組換え生成RNA、例えば機能的に同じかまたは同様であるが、1またはそれより多いヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって、天然存在RNAと異なる、修飾RNAを含む。こうした改変には、例えばRNA末端(単数または複数)への、あるいは内部での、例えばRNAの1またはそれより多いヌクレオチドでの、非ヌクレオチド物質の付加が含まれることも可能である。RNA分子中のヌクレオチドはまた、非標準ヌクレオチド、例えば非天然存在ヌクレオチドまたは化学合成ヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドも含むことも可能である。これらの改変RNAは、類似体または天然存在RNAの類似体と称されうる。
用語「ガイドRNA」、「tracrRNA」、および「crRNA」は、以下のように理解される。
ガイドRNA(gRNA、キメラガイドRNAとも称される)は、crRNAの定常部分と一緒に、マッチするRNA誘導性エンドヌクレアーゼに共基質を提供するために必要なgRNAの構造を特異的に決定するtracrRNAを含む、キメラガイドRNA足場とも称されるキメラRNA分子であり、gRNAによって誘導されるエンドヌクレアーゼと機能的対を形成する定常RNA配列と理解される。crRNAは、tracrRNAと相互作用可能またはtracrRNAに連結可能な定常部分、およびヒトゲノム中のDNAターゲット部位に相補的な小分子オリゴヌクレオチド配列で構成される可変部分(オリゴRNAとも称される)を含む。crRNAの定常部分は、典型的には、分子の3’部分に位置する一方、可変部分は、典型的には、分子の5’端に位置する。tracrRNAおよびcrRNAは、ハイブリダイズ部分を通じて直接関連することも可能であるし、またはリンカー配列で連結されることも可能である。
gRNAは、gRNAが(crRNA構成要素を通じて)ターゲットとハイブリダイズするゲノムターゲット部位にRNA誘導性エンドヌクレアーゼ活性を方向付けるための共基質を形成する。したがって、crRNAは、相補配列(GC塩基対とともにGUも可能にする)の形でゲノム編集情報をコードする部分を含有すると理解され、そしてRNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼは、特定の部位でターゲットDNAを切断するヌクレアーゼと理解される。例えば、CAS9は、ヒト細胞においてキメラgRNAとともに集合し、そしてゲノムDNA中のgRNA配列に相補的な部位で、DNA切断、例えば二本鎖DNA切断の形成を誘導することも可能である。この切断活性は、CAS9および可変crRNA部分を通じたガイドRNAの相補的結合両方を必要とする。
したがって、本明細書に記載するようなgRNAは、典型的には非コードRNAであり、DNAターゲット部位に特異的にハイブリダイズし、そしてRNA誘導性エンドヌクレアーゼをDNAターゲット部位に導き、ハイブリダイゼーション領域内でDNA切断を誘導する。この系は、CRISPR−CAS系を再プログラミングして、ヒト細胞におけるRNA誘導性ゲノム操作を達成することによって、細胞レベルでのヒトゲノム操作のための貴重なツールを提供する。
マッチするRNA誘導性エンドヌクレアーゼおよびtracrRNAまたはgRNAまたはgRNAの定常部分のセットは、本明細書において、機能的対と理解され、これらを1またはそれより多い可変部分とともに、すなわち1またはそれより多いcrRNAまたはcrRNA可変部分、例えば20b、22b、24bまたは26b RNA型オリゴヌクレオチドとともに用いて、1またはそれより多いあらかじめ決定されたランダムまたは異なるヒトゲノムターゲット部位をターゲティングすることも可能である。例えば、CASエンドヌクレアーゼ、例えばII型、およびマッチするtracrRNAのセットを、crRNA(tracrRNAの5’端に、例えばリンカーを使用してコンジュゲート化されるオリゴヌクレオチド)とターゲット核酸配列の、可変crRNAオリゴ配列を通じた干渉に用いる。ターゲティングは、crRNAの相補的ターゲット部位へのハイブリダイゼーションに際して起こる。tracrRNAおよびエンドヌクレアーゼの例示的な機能的対、またはgRNAおよびエンドヌクレアーゼの機能的対を図1〜4に例示する。特異的gRNA変異体を、図5に例示する。エンドヌクレアーゼ、tracrRNAまたはgRNAの機能的変異体が実現可能である。特に、gRNA変異体は、例えば20、または15、または10、または6末端塩基の領域内に、可変3’端、例えば3’末端RNA配列の塩基いずれかの一部切除、伸長および/または点突然変異を含むことも可能である。
RNA誘導性エンドヌクレアーゼの機能的変異体は、特に、細菌供給源から得られるかまたは細菌起源のアミノ酸配列に由来するものと同じタイプまたはサブタイプのものであり、例えば野生型配列に対する1またはそれより多い突然変異および特定の配列同一性を含む、同じまたは突然変異配列を含む人工的または組換え酵素が含まれる。
CASエンドヌクレアーゼの機能的変異体は、CAS9ニッカーゼであることも可能であり、該酵素は、本明細書において、ヌクレアーゼ活性を持つ1つのドメインの不活性化を生じ、そしてCAS9を、二本鎖切断の代わりにターゲット部位で一本鎖切断を作製する「ニッカーゼ」酵素に変換する、特定の点突然変異、例えば1またはそれより多い単一(非連続)アミノ酸の交換を含む、CAS9突然変異体として理解される。こうしたニッカーゼはまた、二本鎖DNA切断にも使用可能であり、例えば対のガイドRNAと共に用いて、ターゲティング二本鎖切断を導入する際に使用可能である。
野生型酵素および配列の例を図1〜4に提供する。親CAS9酵素配列を、例えば配列番号1、6、7、8、9、10、15、16、21、22、または24のアミノ酸配列いずれかを含むかまたはいずれかからなる、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィルス、髄膜炎菌またはT.デンティコラの細菌CAS9のそれぞれのコードDNA配列またはアミノ酸配列から得ることも可能である。親酵素の機能的変異体は、例えば類似体、例えば他の種、例えば親エンドヌクレアーゼと同じ属または科の他の細菌種から得られる野生型配列、あるいは類似体の突然変異野生型配列であることも可能である。エンドヌクレアーゼの類似体を用いる場合、特に、同じ種または同じ科の類似のtracrRNAまたはgRNA配列を用いて、例えば構成要素が天然に対形成する機能的対を形成することも可能である。
本明細書において、特異的共基質構造を与えると理解され、したがってgRNAの構造部分と称される野生型tracrRNAまたはgRNA配列、特に、gRNAまたはtracrRNAの定常部分を用いて、エンドヌクレアーゼの機能的変異体と機能的対を形成させることも可能である。あるいは、tracrRNAまたはgRNA(特にgRNAの定常部分)の機能的変異体、例えば親配列として用いる野生型配列の突然変異誘発によって得られるものを用いてもよい。
RNAの機能的活性変異体、例えばgRNAまたはgRNAの構成要素、例えば本発明のtracrRNAは、特に、マッチするRNA誘導性エンドヌクレアーゼ、および/または野生型RNAの一部切除型または断片、突然変異体またはハイブリッド核酸配列を含む、機能的に活性であるサイズ変異体いずれかに対する機能的共基質を形成するヌクレオチド配列を含むと理解される。本明細書に記載するようなRNA分子の機能的変異体は、例えば親(野生型)RNAのヌクレオチド配列中の1またはそれより多い突然変異によって得られることも可能であり、ここで突然変異RNAはなお機能的であり、そしてストリンジェントな条件下で、親RNAに対して相補的な鎖にハイブリダイズする。
RNA配列またはRNA配列の部分に関して、用語「定常」は、本明細書において、ターゲットDNAとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(crRNAの部分である)の可変性とは独立に、特定の種の細菌起源の配列によって決定される、RNAの配列を指すものとする。こうした定常RNA分子またはgRNAの部分は、典型的には、特定の種のすべての細胞に関して同じまたは類似の構造のものであり、そして同じ種のRNA誘導性エンドヌクレアーゼとの相互作用を提供し、それによって、ゲノムターゲット部位のタイプまたは起源とは独立に、機能的対を形成する。こうした定常分子または分子の部分は、種間でなお多様でありうるか、または機能的変異体として使用可能である突然変異体を産生するための親分子として使用可能であることがよく理解される。
本明細書に記載するようなcrRNAの「可変」部分は、ターゲットDNAの特定の部分とハイブリダイズし、したがって任意の特異的部位に相補的である部分と理解される。ヒトゲノムターゲット部位はヒトゲノム全体に位置するため、crRNAまたはgRNAと、あらかじめ決定したターゲット部位またはヒトゲノムをランダムにターゲティングするものいずれかの、ターゲット部位をハイブリダイズさせるために、複数のオリゴヌクレオチドを用いることも可能である。したがって、この部分は、特異的ハイブリダイゼーションターゲットにしたがって、可変であると見なされる。
crRNAまたはgRNAまたはgRNAの定常部分の機能的変異体は、親配列をテンプレートとして用いるか、あるいは例えば突然変異誘発または配向性操作を通じて、例えば断片または末端伸長を操作することによって、および/または1またはそれより多い点突然変異によって、突然変異させた際、実現可能である。親野生型tracrRNA配列またはgRNAの定常部分は、例えば、gRNAまたはgRNAの定常部分として示される図1〜5の配列(すなわちリンカー配列を含んでもまたは含まなくてもよいcrRNA可変部分を排除するgRNA)いずれか、特に配列番号3、配列番号13、配列番号19、および配列番号24〜47のいずれかの、tracrRNAおよびcrRNAまたはgRNAの定常部分を含むことも可能である。
RNAは、特定の修飾を含むことも可能である。例えば、本発明で用いるRNAのさらなる修飾は、天然存在ポリ(A)テールの伸長または一部切除、あるいは5’または3’非翻訳領域(UTR)の改変であることも可能である。
本明細書で用いるようなヌクレオチドまたはアミノ酸配列の「機能的に活性である変異体」または「機能的変異体」は、特に、例えば、配列内での、あるいは配列の遠位端のいずれかまたは両方での、1またはそれより多いヌクレオチドまたはアミノ酸の挿入、欠失または置換による親配列の修飾から生じ、そしてこうした修飾がこの配列の活性に影響を及ぼさない(特に損なわない)、突然変異体配列を意味する。
特に、配列の機能的活性変異体は、親配列と実質的に同じ活性を有し、そして
−親配列に対して、少なくとも約60%のヌクレオチド配列同一性、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の度合いの相同性または配列同一性を持つ相同体;および/または
−親配列、あるいは配列内または配列の遠位端のいずれかもしくは両方で1またはそれより多いヌクレオチドの挿入、欠失または置換による突然変異のために提供されるテンプレートとして用いられるサイズ変異体の配列を修飾することによって得られうる相同体;
−親配列の伸長および/または断片化、例えば長さの±50%、または±25%、または±10%によって本明細書に記載するような親または野生型配列から得られる配列変異体;あるいは
−化膿性連鎖球菌、S.サーモフィルス、髄膜炎菌またはT.デンティコラ以外の種から得られる類似体
からなる群より選択される。
本明細書に記載するような機能的に活性である変異体はまた、例えば機能的活性を持つ親配列として適切である配列の組み合わせから生じる、2またはそれより多い親配列のハイブリッドまたはキメラを含むともまた理解される。
適切な変異体は、「実質的に同じ活性」を有し、該用語は、本明細書において、成功したDNA切断および/または組換えの率によって決定されるような、例えば±50%または±25%、または±10%の配向性DNA切断および/または突然変異誘発の実質的に同じかまたは改善された効率によって示されるような活性を指すと特に理解される。
「実質的に同じ遺伝子発現プロファイル」を有する機能的変異体は、各遺伝子の同じまたは類似の発現によって特徴付けられる。
用語、細胞株に関する「機能的変異体」は、親(または匹敵する)クローンとは異なるクローンと特に理解される。こうした機能的変異体は、例えば別個のまたは平行操作手段によって、独立に産生されることも可能であり、そしてしたがって、独立と称されうる。機能的変異体は、また、親クローンのサブクローンであることも可能である。
HAP2クローンの機能的変異体、例えば本明細書に言及される寄託材料は、完全に半数体であるヒト染色体の完全なセットによって特徴付けられ、そしてさらに、安定な半数体核型によって特徴付けられる。HAP2クローンの好ましい機能的変異体は、例えば多くの個々の遺伝子の遺伝子発現レベルによって決定した際、同じかまたは類似の遺伝子発現プロファイルを有する。
特に、本発明は、DSM ACC3220の下に寄託されたHAP2細胞株、またはその機能的変異体、好ましくは類似の遺伝子発現プロファイルを持つものを指す。特に、機能的変異体は、実質的に同じ遺伝子発現プロファイルによって特徴付けられ、すなわち、機能的変異体はヒトゲノムを含み、ここで遺伝子の発現レベルは実質的に同じであり、例えば1000遺伝子未満の遺伝子発現レベルが異なり、好ましくは750未満、または500未満、または300遺伝子未満の発現レベルが異なるであろう。
例えば、独立に産生されるクローンは、500遺伝子未満のみに関して異なる、実質的に同じ遺伝子発現プロファイルを有することも可能である。
例えば、本明細書にさらに記載するような、独立に産生されるクローンA11およびE9は、実質的に同じ遺伝子発現プロファイルを有し、これは284遺伝子に関してのみ異なる。
対照的に、2つの細胞株、例えばKBM−7は、〜3,000ヒト遺伝子の発現レベルで異なるならば、HAP2細胞株と機能的に同等であると見なされることは不可能である。
個々のクローンにおいて、1つの遺伝子に関する発現レベルの同一性は、本明細書において、個々の遺伝子に関する遺伝子発現の同じまたは類似のレベル(例えば±2倍の相違)と理解される。したがって、発現レベルは、前記遺伝子の発現レベルが少なくとも2倍高い(≧200%)か、または半分未満(<50%)である場合、個々の遺伝子に関して異なると見なされる。これは、参照クローンに比較した際、遺伝子発現の同じまたは類似のレベルを決定するため、2の保存的カットオフとして理解される。
より保存的でないカットオフは、3、または4、または5であり、すなわち、3倍の相違、または4倍の相違、または5倍の相違を示す。したがって、前記遺伝子の発現レベルが、少なくとも3倍高い(≧300%)か、または1/3未満(<33%)であるか;あるいは少なくとも4倍高い(≧400%)か、または1/4未満(<25%)であるか;あるいは少なくとも5倍高い(≧500%)か、または1/5未満(<20%)である場合、個々の遺伝子に関して発現レベルが異なると見なされる。
用語「関心対象のゲノム部位」または「GOI」は、本明細書において、細胞に対して内因性である任意の核酸配列、例えば遺伝子、あるいは遺伝子内のまたは遺伝子に隣接した非コード配列であって、ターゲティング突然変異誘発および/またはターゲティング相同組換えによって修飾することが望ましい、関心対象の遺伝子配列を指すものとする。GOIは、染色体、エピソーム、細胞内小器官ゲノム、例えばミトコンドリアゲノム中に存在することも可能である。GOIは、遺伝子のコード配列内、例えば転写される非コード配列、例えばプロモーターもしくはリーダー配列、またはイントロン内、あるいはコード配列の上流または下流いずれかの非転写配列内にあることも可能である。
用語「相同体」または「相同性」は、2つまたはそれより多いヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、対応する位で、特定の度合いに、最大100%に近い度合いまで、同じかまたは保存された対を有することを示す。機能的に活性である変異体の相同配列は、典型的には、少なくとも約60%のヌクレオチドまたはアミノ酸配列同一性、好ましくは少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、より好ましくは少なくとも約90%の同一性、より好ましくは少なくとも約95%の同一性、より好ましくは少なくとも約98%または99%の同一性を有する。用語「相同」にはまた、類似の配列も含まれることも可能である。
用語「相同性テンプレート」は、本明細書において、GOIに少なくとも部分的にハイブリダイズし、そしてドナーとして作用して、特定の挿入物を導入するか、あるいは相同組換えまたは相同配向性修復によって、GOI内の1またはそれより多いヌクレオチドを交換することが可能なDNAあるいはDNA配列または断片を指す。相同組換えは、典型的には、内因性遺伝子配列(すなわち細胞内に最初から存在するGOI)、およびドナーとして作用する相同性テンプレートの間の遺伝子情報の交換を促進しうる、二本鎖切断の修復に関与する。ドナーの設計に応じて、GOI上に存在するコードまたは非コード領域は、合理的で、正確で、そして効率的な方式でのノックイン(本明細書にさらに記載する)であってもよい。プロセスは、ドナー上に存在する、相同または組換え配列と称される1つの配列、および内因性のターゲティングされるGOIの間の配列相同性を必要とする。好ましくは、より正確な組み込みを作製するため、内因性GOIとの同一性を有する2つの隣接配列を用いて、相同組換えを行う。
特異的相同性テンプレートは、2つの一本鎖オリゴヌクレオチドが、部分的にともにハイブリダイズ可能であるように、一本鎖オリゴヌクレオチドの少なくとも部分に相補的である組換え配列を含む。一本鎖オリゴヌクレオチドの相補配列は、反応条件下で、2つの一本鎖オリゴヌクレオチド間の、特異的なそして安定なハイブリダイゼーションを支持する、任意の長さであることが可能である。組換え配列は、一般的に、相同性テンプレートおよびGOI間で、少なくとも10bp、好ましくは少なくとも20bpに渡る、少なくとも部分的な二本鎖重複を許可する。
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列に関する「パーセント(%)同一性」は、配列を整列させ、そして必要であればギャップを導入して、最大のパーセント配列同一性を達成した後、そして配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮せずに、DNA配列中のヌクレオチドまたはペプチド/ポリペプチド/タンパク質配列におけるアミノ酸と同一の候補DNA配列中のヌクレオチドの割合として定義される。パーセントヌクレオチド配列同一性を決定する目的のための整列は、例えば公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当該技術分野の範囲内の多様な方式で達成可能である。当業者は、比較中の配列の全長に渡る最大整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めて、整列を測定するために適したパラメータを決定することも可能である。
本明細書に記載するような親配列の機能的に活性である変異体は、特に、突然変異誘発法を通じて得られうる。用語「突然変異誘発」は、本発明の文脈において用いられる際、配列の突然変異体を、例えば、1またはそれより多いヌクレオチドまたはアミノ酸の挿入、欠失および/または置換を通じて提供し、したがってその変異体を得る方法を指すものとする。突然変異誘発は、ランダム、半ランダムまたは部位特異的突然変異を通じてであってもよい。典型的には、高い遺伝子多様性を持つ巨大なランダム化遺伝子ライブラリーを産生し、これは特に望ましい遺伝子型または表現型にしたがって選択可能である。
好ましくは、機能的に活性であるtracrRNAは、少なくとも50塩基、特に少なくとも60塩基、典型的には最大90または100塩基のヌクレオチド配列を含むかまたはこれらからなる。特定の例にしたがって、一部切除tracrRNAは、典型的には長さ約60塩基、好ましくは60〜70塩基、例えば長さ66塩基であり、全長tracrRNAは典型的には長さ90塩基である。本発明にしたがったtracrRNAの、好ましい機能的に活性である変異体のいくつかは、サイズ変異体または特に一部切除型を含むtracrRNAの断片、好ましくはtracrRNA分子の3’部分を含むもの、例えばヌクレオチド配列の一部切除5’部分を含むものである。例えば、ヌクレオチド配列は、特定の長さを有し、そして3’端から多様な5’端までの範囲を持つ特定の長さ、例えば少なくとも50塩基、好ましくは少なくとも60塩基のヌクレオチド配列の長さが得られるように、5’末端領域の挿入または欠失、例えば5’端のヌクレオチド配列の伸長または一部切除を有する、例示的なtracrRNAヌクレオチド配列の1つに由来する。本発明の伸長したサイズ変異体は、好ましくはtracrRNA配列の5’端に、1またはそれより多いさらなるヌクレオチド(単数または複数)を含む。
好ましくは、機能的に活性であるcrRNAは、少なくとも25塩基、特に少なくとも30塩基、典型的には最長70または80または90または100塩基を含むかまたはこれらからなる。特定の例にしたがって、一部切除crRNAは、典型的には、長さ約30塩基、好ましくは30〜40塩基、例えば長さ32塩基であり、全長crRNAは、典型的には、長さ50〜60塩基、例えば55塩基である。本発明にしたがったcrRNAの好ましい機能的に活性である変異体のいくつかは、サイズ変異体、または特に、一部切除型を含むcrRNAの断片、好ましくは、crRNAの5’部分を含むもの、例えばヌクレオチドの一部切除3’部分を含むものである。例えば、ヌクレオチド配列は、特定の長さを有し、そして5’端から多様な3’端の範囲を持つ特定の長さ、例えば少なくとも25塩基、好ましくは少なくとも30塩基のヌクレオチド配列の長さが得られるように、3’末端領域の挿入または欠失、例えば3’端のヌクレオチド配列の伸長または一部切除を有する、例示的なcrRNAヌクレオチド配列の1つに由来する。本発明の伸長したサイズ変異体は、好ましくはcrRNA配列の3’端に、1またはそれより多いさらなるヌクレオチド(単数または複数)を含む。
機能的に活性であるtracrRNA変異体には、なお、crRNAの定常部分と相互作用する相補性領域が含まれることも可能である。他方で、機能的に活性であるcrRNA変異体には、なお、trcrRNAと相互作用する相補性領域が含まれることも可能である。典型的には、crRNAまたはcrRNAの機能的変異体の3’部分は、相補性領域を通じて、(リンカーを含みまたは含まず)tracrRNAの5’部分と相互作用する。したがって、tracrRNAおよびcrRNAの機能的変異体は、なお、tracrRNAの5’部分に、そしてcrRNAの3’部分に特異的に位置する、少なくとも5bp、好ましくは少なくとも10bpの相補性領域を含む。
好ましくは、機能的に活性であるRNA誘導性エンドヌクレアーゼは、500〜3000アミノ酸、好ましくは少なくとも1000アミノ酸のアミノ酸配列を含むかまたはこれらからなる。本発明にしたがって用いられるようなエンドヌクレアーゼの好ましい機能的活性変異体のいくつかは、サイズ変異体または特に親酵素の断片であり、特に機能的に活性である変異体が、なおRuvCIドメイン(触媒性Asp残基を含有する)およびHNHドメイン(触媒性His残基を含有する)を含む酵素の活性部位を含む場合である。
crRNAの機能的に活性である変異体、特に、crRNAの可変部分、または本発明の目的のために記載されるようなオリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるためにそのターゲット配列に対して100%相補的である必要はない。オリゴヌクレオチドは、特に、ターゲットDNA分子へのオリゴヌクレオチドの結合が、ターゲットDNAの正常な機能と干渉し、そして特異的結合が望ましい条件下、例えばin vivoアッセイまたは系の場合、生理学的条件下で、非ターゲット配列へのオリゴヌクレオチドの非特異的結合を回避するために十分な度合いの相補性がある場合、特異的にハイブリダイズ可能である。こうした結合は、特異的ハイブリダイゼーション、例えばストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションと称される。
DNAターゲット部位は、典型的には、プロトスペーサー関連モチーフ(PAM)によって特徴付けられ、該モチーフは、ヒトDNA配列においてターゲット部位に隣接して位置し、そしてRNAハイブリダイゼーションおよびDNA切断の部位を定義する、短いDNA認識部位である。典型的には、RNAハイブリダイゼーションは、crRNAがPAMモチーフ上流のDNA配列、例えばモチーフの5’端に連結されるDNA配列とハイブリダイズするようなものである。次いで、DNA切断は、ハイブリダイゼーションの領域内で触媒され、例えばDNA切断はPAMモチーフに対して近位であり、大部分の場合、モチーフの5’に非常に近接しており、例えばPAMモチーフの10位以内上流、または5位以内/5位上流、または3位以内/3位上流である。DNA切断後、細胞性修復機構は、突然変異を取り込みまたは取り込まず、典型的にはDNA切断に対して近位に、例えばDNA切断の5’端または3’端に対して非常に近位に、例えば20位以内、または10位以内、または5位以内または3位以内上流または下流での再連結を提供する。
関心対象の特異的ゲノムターゲット部位は、ランダムに選ばれてもよいし、あるいはDNA切断(一本鎖または二本鎖DNA切断)および場合によって組換えおよび/または突然変異が望ましい場合、そしてコード配列および非コード配列内のターゲット部位を含めて、PAMモチーフが存在するかまたは導入されている場合、ヒト染色体ゲノムの任意の位であらかじめ決定され、そして選択されていることも可能である。
例えばフレームシフト突然変異を生じるためには、1またはそれより多いヌクレオチドの小規模(ランダム)挿入または欠失が望ましい可能性もある。特に、こうした欠失または挿入またはフレームシフト突然変異は、ノックアウト突然変異を提供し、これは、遺伝子配列または制御配列内の、遺伝子機能を指示する、例えばタンパク質レベルで評価されるような異なる遺伝子発現または異なる表現型を導き、例えば遺伝子の機能の有意な喪失(部分的ノックアウト)または遺伝子の完全なノックアウトを導く、任意の突然変異を含むと理解される。遺伝子の有意な機能的喪失は、ノックアウト突然変異を持たない親または参照(例えば同質遺伝子性)細胞に比較した際、10%未満、好ましくは5%未満の遺伝子発現レベルまたは遺伝子機能を特に提供するか、あるいは検出可能な遺伝子発現または機能をまったく提供しない。特定の突然変異は、異なる遺伝子発現または異なる表現型を導く。また、一連の遺伝子を含む、エクソンまたは遺伝子または染色体部分を交換し、そしてマーカー部位、例えば制限部位、またはタグを導入してもよい。
したがって、gRNAを用いて、CAS9を誘導して、ガイドRNA配列によって定義され、そしてPAMモチーフを含む任意の部位で、DNAを切断することも可能である。CAS9は発現されて、そしてヒト細胞の核に局在することが可能であり、例えば好ましくはCAS9アミノ酸配列のN末端またはC末端伸長内に位置する、1またはそれより多いさらなる核局在化シグナル(NLS)、例えば少なくとも1、2、3、4、または5リピートのNLSを使用する。例えばNLSは、RNA誘導性エンドヌクレアーゼとgRNAの複合体の、核孔を通じた能動輸送を促進する、3〜15アミノ酸、例えば5〜10、例えば7アミノ酸の小分子ペプチド配列であることも可能である。推定上のNLS配列は、SV40ラージT抗原またはヌクレオプラスミンから見出され、そしてこれに由来することも可能である。例示的なNLS配列は、例えばPKKKRKV(配列番号6、SV40ラージT抗原由来)、KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号49、ヌクレオプラスミン由来)、PAAKRVKLD(配列番号50、c−Myc由来)、PPRKKRTVV(配列番号51、HCV NS5A由来)またはPRPPKMARYDN(配列番号52、ヒトRNAヘリカーゼA由来)である。
細胞へのRNA分子の送達に、一般的に用いられるRNA発現系を使用することも可能である。特定の態様にしたがって、エンドヌクレアーゼを、特定のヒトコードまたは非コード配列、例えばヒト遺伝子をターゲティングして、遺伝子の機能を損なうかまたはノックアウトするように設計された、tracrRNAおよび/またはcrRNAおよび/またはgRNAと一緒に同時発現させる。適切なDNAを発現構築物中で用いて、tracrRNAおよび/またはcrRNAおよび/またはgRNA、あるいはtracrRNAまたはgRNAまたはgRNAの定常部分およびRNA誘導性エンドヌクレアーゼの機能的対を発現させることも可能である。したがって、テンプレートDNAである、例えばtracrRNAおよび/またはcrRNAおよび/またはgRNAおよび/またはgRNAの定常部分をコードする配列、そして場合によってRNA誘導性エンドヌクレアーゼをコードするDNA、特に、こうした分子をin vivoまたはin vitroで発現させるように、制御配列に機能可能であるように連結されたものを含むDNAを、さらに提供する。
RNAは、ex vivoで合成可能であり、例えば、in vitro転写RNAまたは合成RNAであることも可能であり、そして適切な手段によって、送達されて、例えば細胞内に(同時)トランスフェクションされる。
RNAまたはこうしたRNAをコードするDNAのトランスフェクションは、例えば、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクチンを含む、当該技術分野に知られる多様な手段によって達成可能である。
特定の側面にしたがって、形質転換またはトランスフェクション細胞は、限定された期間に渡って、挿入されたDNAまたはRNAを一過性に発現する。例えば、外来DNAまたはRNAは、数日間、細胞の核内で存続する。
トランスフェクションはまた、安定なトランスフェクタントを生じ、例えば外来(foreign)DNAまたはRNAをトランスフェクションされた細胞内に導入し、そして場合によって組み込むように安定であることも可能である。
同様に、エンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼをコードするDNA、特にコドン最適化DNAによって形質転換された細胞によって産生されるか、あるいは細胞とは別個に産生されて、そしてエレクトロポレーションを含む適切な手段によって細胞に送達されることも可能である。例えば、エンドヌクレアーゼを、形質膜の貫通を可能にするペプチド配列(例えばHIV−1 Tat由来の陽イオン性ペプチドまたはアンテナペディア・ホメオドメイン由来のペプチド)に融合させ、それによって細胞に精製タンパク質を直接適用することを可能にしてもよい。
用語「単離された」または「単離」は、本明細書において、核酸、例えば単離gRNA、gRNAの単離定常部分、単離tracrRNAまたはcrRNA、あるいは単離タンパク質、例えば単離RNA誘導性エンドヌクレアーゼ、あるいは単離機能的対、例えばRNA誘導性エンドヌクレアーゼに会合するかまたは結合したgRNAまたはtracrRNAの単離対または複合体に関して用いた際、「実質的に純粋な」型で存在するように、天然に会合するであろう環境から十分に分離されている化合物を指すものとする。「単離された」は、必ずしも他の化合物または物質との人工的または合成混合物、あるいは基本的活性に干渉せず、そして例えば不完全な精製のために存在している可能性がある、不純物の存在の排除を意味しない。特に、本発明の単離核酸分子はまた、化学的に合成されているものも含むと意味される。
本発明の核酸は、特に、「単離核酸」として、または「単離核酸配列」として提供される。この用語は、RNAまたはDNAに適用された場合、天然存在生物において、すぐ近接した配列から分離される分子を指す。例えば「単離核酸」は、こうしたDNAにコードされるそれぞれのgRNAを発現させるため、プラスミドなどのベクター内に挿入されるDNA分子を含むことも可能である。「単離核酸」(DNAまたはRNAいずれか)は、生物学的または合成手段によって直接産生され、そして産生中に存在する他の構成要素から分離される分子にさらに相当することも可能である。
単離RNA誘導性エンドヌクレアーゼは、典型的には、天然供給源、例えば細菌細胞培養から単離された分子として提供されるか、または組換え宿主細胞培養から得られる組換え分子として提供されるか、または適切な合成法によって得られる人工的産物として提供される。こうした単離は、典型的には、例えば、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%または少なくとも95%、最大100%(w/w)の純度で得られる、適切な精製法を伴う。
用語「単離された」は、本明細書において、細胞またはクローンに関して、例えば限界希釈によって単離され、場合によってその後、単細胞を培養してクローン(単細胞クローン)を増殖させたものであり、「実質的に純粋な」型で存在するように、天然に会合するであろう環境から十分に分離されている、細胞またはクローンを指すものとする。単離されたクローンは、例えば異なるゲノム特性を持つ単離細胞に由来する、異なるクローンの生存細胞を含有しないであろう。典型的には、異なるクローンまたはサブクローンは、少なくとも1つのゲノム突然変異またはSNPにおいて異なり、したがって、ゲノム分析によって、同じクローンまたはサブクローンの細胞から分化していることも可能である。「単離された」は、必ずしも他のクローンまたは物質との人工的または合成混合物、あるいは基本的活性に干渉せず、そして例えば不完全な単離のために存在している可能性がある、不純物、特に生存細胞以外の細胞構成要素の存在の排除を意味しない。
用語「二倍体」は、本明細書において、細胞が、1またはそれより多い特定のまたはあらかじめ決定されたゲノム遺伝子座、例えば遺伝子座の大部分、またはさらに全ゲノムに関して、二染色体性または二倍性であるゲノムを含む細胞または細胞株を特に指すものとする。
特定の二倍体細胞株は、本明細書において、2セットの姉妹染色体を含み、これらは少なくとも部分的に複製されるか、または(ほぼ)完全に複製され、そして単一染色体の無性複製によって形成される2コピー(染色分体)を含有すると理解され、両コピーは、1つの細胞内に存在する。1つの姉妹染色体は、したがって、複製染色体の半分と理解される。姉妹染色体セットは、特に、相同染色体を含み、これらは、少なくとも実質的に同一(ほぼ二倍体)または同一(二倍体)である。実質的に同じ遺伝子配列を有する染色体対は、姉妹染色体が1つの親半数体細胞のみから生じるため、実質的に同じヌクレオチド配列によって特徴付けられる。用語「実質的に同一の染色体」または「実質的に同じヌクレオチド配列」は、本明細書にさらに記載するように、ほぼ二倍体の細胞を得るためなど、複製染色体に関連して、特に理解される。姉妹染色体の複製セットは、本明細書にさらに記載するように、半数体細胞の二倍体化中に生成される。
用語「二倍体」には、特に、ほぼ二倍体の細胞および完全に二倍体の細胞が含まれる。
用語「ほぼ二倍体」は、本明細書において、以下のように理解される。ほぼ二倍体の細胞は、5以下の染色体が1コピーまたは2コピーより多く、例えば4コピー(特定のゲノム遺伝子座に関して四染色体)存在する細胞である。いくつかの態様において、ほぼ二倍体のヒト細胞は、2コピーより多く存在する1、2、3、または4以下の染色体を有する。ほぼ二倍体の細胞は、培養中で数ヶ月間その状態をゲノム的に安定に維持しうる。例示的なほぼ二倍体の体細胞ヒト細胞は、染色体的に安定な結腸癌細胞株HCT116[20]、またはほぼ半数体の細胞株HAP1細胞株を二倍体化した際、本明細書記載の方法によって得られる接着細胞株であり、HAP1細胞株は、再び、KBM−7細胞株を操作することによって得られ、8番染色体の第二のコピーを喪失しており、そしてしたがって、KBM−7親よりも「より半数体」であるが、なお15番染色体の部分が残っており、そしてしたがって、完全に半数体とは見なされえない。ほぼ半数体の細胞株の二倍体化は、本明細書に記載するようなほぼ二倍体の細胞株を生じ、これは、例えば、数個の四染色体ゲノム遺伝子座しか含有しない。
ほぼ二倍体の体細胞ヒト細胞株の特定の例は、本明細書にさらに記載するような方法にしたがって、HAP1の二倍体化によって得られる細胞株C665である。
用語「完全に二倍体」は、本明細書において、ヒト染色体または姉妹染色体を二染色体状態で含むゲノムを含む細胞または細胞株を特に指すものとする。特に、姉妹染色体は1つの親半数体細胞のみから生じているため、同じ遺伝子配列によって特徴付けられるように、または同じヌクレオチド配列によって特徴付けられるように、染色体対は同一である。完全に二倍体である細胞は、例えば、完全なセットの姉妹染色体におけるヘテロ接合性SNPの非存在によって特徴付けられる。
用語「半数体」は、本明細書において、一染色体状態のヒト染色体を含む、細胞が完全に半数体であるゲノムを含む細胞または細胞株を指す。半数性は、既知の方法、例えばスペクトル核型決定、比較ゲノムハイブリダイゼーションまたは比較ヨウ化プロピジウム染色によって、決定または試験可能である。
用語「ほぼ半数体」は、本明細書において、以下のように理解される。ほぼ半数体の細胞は、5以下の染色体が2またはそれより多いコピーで存在する細胞である。いくつかの態様において、ほぼ半数体のヒト細胞は、2またはそれより多いコピーで存在する1、2、3、または4以下の染色体を有する。ほぼ半数体の細胞は、培養中で数ヶ月間その状態を維持することが見出された。例示的なほぼ半数体の体細胞ヒト細胞は、8番染色体、および場合によって15番染色体の部分を除いて、大部分の染色体に関して半数体であり、例えばKBM−7細胞株の細胞(WO 2011/006145 A2)であり、これは非接着細胞株である。ほぼ半数体の細胞株のさらなる例は、HAP1細胞株[6]であり、該細胞は、KBM−7細胞株を操作することによって得られる接着細胞株であり、8番染色体の第二のコピーを喪失しており、そしてしたがって、KBM−7親よりも「より半数体」であるが、なお15番染色体の部分が残っており、そしてしたがって、完全に半数体とは見なされえない。さらなるほぼ半数体の細胞株(特に接着細胞)は、癌患者、特に固形腫瘍、例えば二倍性が減少した細胞をもたらす末梢軟骨肉腫に罹患した患者から得られうる。いくつかの場合、さらなる接着性のほぼ半数体の細胞株は、白血病、例えば慢性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病に罹患した患者から得られうる。
完全に半数体である体細胞ヒト細胞株の特定の例は、HAP1細胞株において二倍性を保持する15番染色体の部分の切除を通じて、HAP1細胞を操作することによって得られ、したがって真にまたは完全に半数体であると見なされる、HAP2細胞株である。HAP2細胞株は、一染色体状態で、ヒト染色体の完全なセットを含むことがわかった。HAP2細胞株は、DSM ACC3220として寄託される。
親細胞株をサブクローニングし、そしてそれぞれ、半数体および二倍体サブクローンを摘み取ることによって、半数体または二倍体子孫を得ることも可能である。好ましくは、本明細書に記載するような細胞株は、少なくとも10継代、好ましくは少なくとも15または少なくとも20継代に渡って、例えば細胞ストレス条件を回避しながら、ゲノム安定性を示す。ヨウ化プロピジウム染色(総DNA含量)またはスペクトル核型決定(単一染色体の解像度)によって、遺伝的安定性を評価することも可能である。
本発明において、用語「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズ」は、適切な条件下で、二本鎖が形成されるように、2つの核酸配列が、安定でそして特異的な水素結合で互いにアニーリングする間のプロセスを意味するよう意図される。2つの相補配列または十分に相補的な配列の間のハイブリダイゼーションは、用いられる操作条件、そして特にストリンジェンシーに応じる。ストリンジェンシーは、相同性の度合いを示すと理解されることも可能であり;ストリンジェンシーが高ければ高いほど、配列間の相同性パーセントはより高い。ストリンジェンシーは、特に、2つの核酸配列の塩基組成によって、そして/またはこれらの2つの核酸配列間のミスマッチの度合いによって、定義されることも可能である。条件、例えば塩濃度および温度を変化させることによって、所定の核酸配列は、その正確な相補体とのみハイブリダイズが許される(高ストリンジェンシー)ことも可能であるし、または任意の幾分関連する配列とハイブリダイズが許される(低ストリンジェンシー)ことも可能である。温度を増加させるかまたは塩濃度を減少させると、ハイブリダイゼーション反応の選択性を増加させる傾向がありうる。
本発明で用いる際、句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする」は、好ましくは、特定のストリンジェンシーの条件下でのハイブリダイズを指すと理解される。好ましい態様において、本明細書に記載するようなcrRNAは、「ストリンジェントなハイブリダイズ条件」下で、ゲノムターゲット部位にハイブリダイズし、ここで2つの核酸配列の相同性は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%であり、すなわち、このハイブリダイゼーション中に得られる二本鎖が、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のA−TまたはA−U結合およびC−G結合を含む場合にのみ、ハイブリダイゼーションが可能である条件下である。
ストリンジェンシーは、反応パラメータ、例えばハイブリダイゼーション溶液中に存在するイオン種の濃度およびタイプ、変性剤の性質および濃度、ならびに/あるいはハイブリダイゼーション温度に依存することも可能である。適切な条件は、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, 1989)に記載されるように、当業者によって決定可能である。
用語「核型的に安定な」または「安定な核型」は、細胞に関して、本明細書において、ゲノム的に安定な細胞と理解され、該細胞は、延長された期間に渡って、または数回の継代に渡って、特定のゲノム遺伝子座に関する核型を有意に変化させない。短期および長期ゲノム安定性は、ルーチンの方法によって分析可能な安定な細胞株の品質基準である。核型安定性は、特に、ヒト染色体の完全なセットに関して半数体または二倍体の核型が、細胞培養中の細胞の90%より多くで立証されている場合、特に決定される。こうした細胞は、本質的に、一染色体DNA含量より多く(半数体細胞の場合)、または二染色体DNA含量より多く(二倍体細胞の場合)を含まないであろう。ゲノムまたは核型安定性は、本発明の細胞株の特定の特徴であり、該細胞株は、遺伝子または遺伝子発現があらかじめ定義された位置でのみ異なる、一連の同質遺伝子突然変異体細胞株を操作するために使用可能である。
用語「ライブラリー」は、本明細書において、例えば同質遺伝子細胞の突然変異体細胞株に関して、または発現プラスミドのライブラリーに関して、またはオリゴヌクレオチドのライブラリーに関して、ライブラリーメンバーのレパートリーまたは多様なライブラリーメンバー、例えば細胞株、発現プラスミドまたはオリゴヌクレオチドであると理解され、ライブラリーメンバーは他のライブラリーメンバーとは区別される。
本明細書に記載するような細胞株のライブラリーは、特に、株、例えば少なくとも1つの遺伝子型および/または表現型特性を有するヒト細胞株を含む。特定のライブラリーメンバーは、異なるゲノム突然変異、例えば異なるノックアウト突然変異を含み、多様な遺伝子型および場合によって多様な表現型を生じることも可能である。多様なライブラリーメンバーを含むライブラリーを提供することが好ましく、ここで各ライブラリーメンバーは、機能するORFまたは異なる単一遺伝子のコード配列を欠く。
本発明の細胞株ライブラリーは、好ましくは少なくとも50、または少なくとも100、または少なくとも300、または少なくとも1,000、または少なくとも10,000のライブラリーメンバーを含み、これらは異なる突然変異、例えば細胞ゲノムにおける異なる遺伝子のノックアウトによって特徴付けられる。突然変異体が、親細胞株の突然変異誘発によって産生される場合、同じタイプの親細胞の多様な同質遺伝子細胞が産生される。
各ライブラリーメンバーを、選択可能マーカーまたはバーコードによって個々に特徴付け、そしてマークして、ライブラリーにおけるライブラリーメンバーの選択を容易にすることも可能である。あるいは、適切な決定法によって、例えば突然変異領域とハイブリダイズする特異的プローブを使用して、突然変異を含む細胞株を選択して、遺伝子突然変異を直接決定づけることも可能である。
ライブラリーメンバーを別個の容器中に位置づけて、容器中の細胞コレクションのライブラリーを得ることが望ましい可能性もある。特定の態様にしたがって、ライブラリーをアレイで、例えば細胞チップで提供し、ここでアレイは、固体キャリアー上の一連のスポットを含み、一連のスポットには細胞コレクション由来の1またはそれより多い細胞の懸濁物が含まれる。同様に、細胞ライブラリーを、核酸アレイに対してインデックス化してもよい。
こうしたライブラリーを用いて、あらかじめ定義された物質、例えば化学的または生物学的物質、例えば阻害剤または増進剤との相互作用を研究するために、特定のライブラリーメンバーを選択することも可能である。こうしたライブラリーの特異的適用は(i)多様な生物学的プロセス、例えばウイルスの生活環または増殖因子もしくはサイトカインに対する反応に関与する遺伝子の同定、(ii)抗体の特異性の決定、あるいは(iii)生物学的物質(抗体、サイトカイン)の産生のための突然変異体細胞株の使用である。
用語「突然変異誘発」は、本発明の背景において、配列の突然変異体を、変異体が得られるように、例えば1またはそれより多いヌクレオチドまたはアミノ酸の挿入、欠失および/または置換を通じて提供する方法を指すものとする。突然変異誘発は、ランダム、半ランダムまたは部位特異的突然変異を通じてであってもよい。
特定の適用は、組換え産物を発現するために適した宿主細胞の選択であることも可能である。細胞アレイを使用して、細胞増殖および形態、タンパク質発現レベル、ならびに組織画像化を評価するための努力を補完する、非常に平行な、ハイスループット分析を可能にすることも可能である。
特定の例にしたがって、効率的なゲノム編集を行う一方、各遺伝子の1コピーのみが存在し、したがって、関心対象の遺伝子が、半分の遺伝子量で存在するため、ノックアウトを得ることが少なくとも2倍容易である。さらに、遺伝子不活性化のために、一般的にはフレームシフト突然変異を目的とし、そして読み枠を破壊しない3/6/9塩基の欠失/挿入を無視するため、半数体ヒト細胞を用いる利点は、さらにより大きい。フレームシフト突然変異を得る可能性は、正確には修復されないすべての切断事象に関して2/3(66%)である。したがって、細胞の100%で切断が生じ、その後、誤った修復が起きた半数体ヒト細胞株において、66%の可能性でフレームシフトアレルが得られる。両方のアレルが100%の効率で切断される二倍体細胞集団においては、最大で〜44%の可能性(66%x66%)でフレームシフトアレルが得られるであろう。もちろん、ヌクレアーゼが100%より低い効率で切断を誘導する場合、2つのフレームシフトアレルを生じる可能性はさらに低く、そして半数体細胞を用いる利点はより大きい。さらに、単一アレルのみの存在によって、相同組換えを通じた遺伝子修復が妨げられ、そしてそれによって、フレームシフトアレルを得る率がさらに増加する。
半数体ヒト細胞において、すべての遺伝子が1コピーのみで存在する。その結果、例えばPCR増幅およびそれに続くPCR産物のサンガー配列決定によって、突然変異は直接視覚化可能である。特定の例にしたがって、M13配列決定プライマーを用いた一般的な配列決定プロトコルを可能にするM13部位に、順方向プライマーを融合させるプロトコルを用いる。
このプロトコルを用いて、前述のアプローチによって、編集された細胞から得られる個々のクローンを容易に特徴付け可能であることが示されうる。対照的に、同じガイドRNAで形質導入された二倍体細胞からのクロマトグラムは、不確定の配列決定トレースを示す。
特定の例にしたがって、(i)半数体ヒト細胞におけるCRISPRの使用は、より高い編集効率を導き;そして(ii)編集事象の特徴付けは、単純なPCRをサンガー配列決定と組み合わせることによって可能であることが確認される。
さらに、本発明は、本明細書に記載するような半数体細胞株の二倍体化によって得られうる体細胞ヒト二倍体細胞株を提供する。半数体体細胞は天然には存在しないため、これらの細胞において生じる結果は、科学コミュニティによって疑問視される。その結果、半数体細胞の二倍体誘導体が価値ある資源と見なされる。これは特に、天然ゲノム背景および天然ゲノムコピー数が品質管理の前提条件である、PCRに基づく診断のためのゲノム標準の領域で当てはまる。
例として、半数体細胞の二倍体集団への「変換」を可能にするプロトコルを記載する。この目的に向けて、半数体ヒト細胞を、GOIでのゲノム突然変異(関心対象の突然変異)を生じるゲノム操作に用いる。突然変異がPCRによって確認されたら、細胞をストレスに曝露する。細胞ストレス条件後、半数体細胞は、二倍体細胞に変換される天然の傾向を増加させる。次いで、限界希釈によって二倍体サブクローンを単離し、そしてヨウ化プロピジウム染色によって品質管理する。このプロセスの結果として、関心対象の突然変異に関してホモ接合性である二倍体ヒト細胞の均質集団を産生する。
こうした二倍体細胞または細胞集団の商業的適用は、例えば以下のいずれかである:
i)個体間の遺伝子変動は、主に、一塩基多型(SNP)による。したがって、すべてのSNPに関して、1つのSNP変異体しか存在しない細胞株は、多様な細胞表現型(例えば遺伝子発現、DNA損傷修復、細胞増殖、代謝、ヒストン修飾)に対する遺伝子変動(特定のSNPの存在または非存在)の影響を研究するために有用でありうる。
ii)SNPによって影響を受ける可能性が特に高い細胞表現型または実験結果には、以下が含まれる
a. エピジェネティクス。エピジェネティクスは、DNA配列によって引き起こされない遺伝性変化の研究である。エピジェネティック制御の根底にある機構には、ヒストン修飾(例えばメチル化またはアセチル化による)およびDNAの修飾(例えばメチル化またはヒドロキシメチル化による)が含まれる。こうした修飾は、特定の遺伝子座からの転写を抑制するかまたは活性化する際に役割を果たすことが示されてきている。
b. エンハンサー。エンハンサーは、特定の遺伝子または遺伝子クラスターの発現を制御するヒトゲノム中の制御要素である。
iii)特定の遺伝子は、親特異的発現パターンで発現される。これは、これらが、母系または父系遺伝子コピーから選択的に発現されることを意味する。2つの同一コピーを有する細胞株は、この現象を研究する興味深いモデル系に相当する可能性もある。
iv)相同組換え(HR)の効率は、SNPの存在に非常に依存する:関心対象の所定の領域が多くのヘテロ接合性SNPを示す場合、HRの効率は劇的に減少する。HRの二倍体細胞株を用いようとする場合、したがって、両方の遺伝子コピーが完全に同一であり、そしてしたがって、HRがより高い成功可能性を有する細胞株へのアクセスを有することが好ましいであろう。
さらに、こうした二倍体細胞の1つの重要な利点は、すべての生じるクローンが、任意の関心対象の所定の突然変異に関して、ホモ接合性であり、そしてしたがって、100%突然変異負荷を所持し、一方、二倍体細胞の突然変異誘発が、しばしば、ヘテロ接合性(50%突然変異負荷)である細胞株を生じるであろうことである。これは、表現型が第二の(野生型)アレルの存在によって遮蔽されるであろうため、単一突然変異アレルを所持する二倍体細胞においてはその表現型が研究不能である、劣性突然変異に関して、特に有益である。
特に、本発明は、例えば体細胞または生殖系列突然変異またはSNPによって引き起こされる多様な疾患に関して、細胞疾患モデルまたは診断標準を確立するための、価値あるツールを提供する。特に、細胞株は、特定の染色体配列(例えばエクソン、遺伝子、スプライスアクセプター、プロモーター、エンハンサー)が欠失されている細胞株を樹立可能である。
前述の説明は、以下の実施例を参照すると、より完全に理解されるであろう。しかし、こうした実施例は、本発明の1またはそれより多い態様を実施する方法の代表に過ぎず、そして本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
実施例1:例示的な完全に半数体であるヒト細胞の生成
HAP1は、ほぼ半数体であるヒト細胞株KBM−7から得られる。これらは、再プログラミング中に予期せず得られた([6]と比較されたい)。KBM−7細胞同様、HAP1細胞は、ほぼ半数体の状態を非常に安定に維持する。KBM−7とは対照的に、HAP1細胞は、細胞培養フラスコに接着し、そしてHAP1細胞は、8番染色体の単一コピーしか所持しない。しかし、KBM−7細胞同様、HAP1細胞は、染色体15:61,105,002−89,890,003の部分に関して二倍体である。KBM−7細胞の全ゲノム配列決定によって、どちらの細胞株もこの領域内ではヘテロ接合性であることが示される。KBM−7細胞のスペクトル核型決定(SKY)によって、chr15:61,105,002−89,890,003の第二のコピーは、19番染色体に付着していることが明らかになった(図6を参照されたい)。
完全に半数体であるヒト細胞株を得るため、本発明者らは、近年公開されたCRISPR/CAS9系を用いて、chr15:61,105,002−89,890,003の第二のコピーを欠失させた。CAS9は、ヒト細胞において、関心対象の特定の遺伝子座を切断する、小分子RNAによって方向付けされうる細菌ヌクレアーゼである。本発明者らが、巨大な染色体領域である、封入(enclosed)領域の欠失を誘導可能であったことは驚くべきことであった。
本発明者らは、15番染色体上のヘテロ接合性/二倍体領域(61,105,002または89,890,003)の2つの境界のいずれかをターゲティングする、2つのガイドRNAの2セットを生成した:
本発明者らは、ガイドRNAとCAS9の組み合わせを同時トランスフェクションして、以下の条件を得た:
ブラスチシジン耐性遺伝子を含有するプラスミドの存在下で、同時トランスフェクションを行った。20μg/mlブラスチシジンを24時間用いて、トランスフェクション細胞を選択した。
形質導入細胞の耐性プールがかなりの数に拡大したら、DNAを抽出し、そしてT7エンドヌクレアーゼアッセイに供して、上述のような4つの条件下で2つのゲノム遺伝子座での編集を評価した。図7に示すように、編集は、4つのCRISPRターゲット部位のうち3つ(CRISPR C1、C3およびC4)で起こった。CRISPR C2は、いかなるゲノム編集も誘導しなかった。
試料の同じセットを用いて、本発明者らは、chr15:61,105,002−89,890,003の欠失が形質導入細胞プールにおいて検出可能であるかどうかを分析した。本発明者らは、この目的のため、2つのプライマー対を用いた:
プライマー対2は、いかなる特異的増幅も示さなかったが、プライマー対1は、条件C1および3において、シグナルを特異的に増幅し、これは親HAP1細胞も含めて、いかなる他の条件においても検出されなかった(図8)。これに基づいて、本発明者らは、限界希釈によって、この条件から単細胞クローンを単離することを決定した。前述の「欠失PCR」(プライマー対1)を用いてスクリーニングした、〜200のクローンのうち、本発明者らは、陽性である5つのクローンを単離し、欠失が起こった可能性があることを示した(図9)。これらのクローンを、元来のウェルにしたがって命名し、そしてこれには、クローンA11、A8、B11、F6およびH1が含まれる。注目すべきことに、クローンH1は、前述のPCRにおいていくつかのバンドを示し、より複雑な編集事象が起こった可能性があることを示唆した。
次に、本発明者らは、本発明者らのクローンにおいて、ヘテロ接合性の喪失を評価するため、ヘテロ接合性のマーカーを探した。この目的に向けて、本発明者らは、KBM−7細胞由来の全ゲノム配列決定データセットを再分析して、そしてヘテロ接合性領域の境界に近い2つのSNPを同定した。これらのSNPのゲノム位置、およびPCRによって各SNPを増幅するために用いる対応するプライマー配列を以下の表に要約する:
順方向プライマーをM13配列決定プライマー結合部位に融合させて(太字で強調する)、PCR産物の直接配列決定を可能にした。
これらの診断PCRを用いて、本発明者らは、ヘテロ接合性の喪失が、クローンA11およびクローンH1(データ未提示)で起こったことを確立した。他のクローンはなおヘテロ接合性であり(そしてしたがって二倍体であり)、chr15:61,105,002−89,890,003断片がこれらのクローンにおいては欠失されていないことが示唆された。
次に、本発明者らは、クローンA11およびH1において、ヘテロ接合性の喪失がまた、chr15:61,105,002−89,890,003の全領域を通じて検出されたかどうかを確立した。この目的に向けて、本発明者らは、親HAP1細胞株においてヘテロ接合性であることが見出された5つのSNPを調べた:
SNP PCRの結果は以下の通りであった:親HAP1細胞は、本明細書で調べたすべてのSNPに関してヘテロ接合性である。しかし、驚くべきことに、クローンA11はすべての5つの遺伝子座でヘテロ接合性を喪失し(図10)、編集が実際に全chr15:61,105,002−89,890,003断片を欠失させたことを示した。クローンH1は、ヘテロ接合性喪失の類似のパターンを示した(データ未提示)。
最後に、本発明者らは、クローンA11がなお半数体であるかどうかを評価した。この実験の理論的根拠は、HAP1細胞がその半数体核型に関して、KBM−7細胞よりもより安定でないことであった。図11上に示すように、クローンA11は、強度180/360での2つのピークによって示されるように、なお完全に半数体である。重要なことに、2つの参照細胞株(1つは半数体、1つは二倍体)がこの測定に含まれた。対照的に、クローンH1は、二倍体であることがわかり、そしてしたがって廃棄された。
したがって、要約すると、前述の研究によって、15番染色体のヘテロ接合性部分が欠失されている、HAP1由来のヒト細胞株の生成が可能になった。この細胞株は、現在のところ、最初の完全な半数体であるヒト細胞株である。
実施例2:Cas9およびガイドRNAでの独立トランスフェクションに由来するさらなるクローンの産生
要約
ほぼ半数体のヒト細胞株は、遺伝子スクリーンに役立ち、そして遺伝子不活性化としてのゲノム操作は、第二の遺伝子コピーの非存在によって非常に容易になる。しかし、完全に半数体であるヒト細胞株は記載されてきておらず、遺伝子サブセットの遺伝的アクセス可能性を妨げている。ほぼ半数体であるヒト細胞株HAP1は、15番染色体のヘテロ接合性30メガ塩基断片を除いて、すべての染色体の単一コピーを含有する。この巨大断片は330遺伝子を含み、そして19番染色体の長腕上に組み込まれている。ここで、本発明者らは、CRISPR/Cas9に基づくゲノム操作戦略を使用して、このかなり大きな染色体断片を切除し、そしてその半数体状態を保持するクローンを効率的にそして再現可能に得た。重要なことに、スペクトル核型決定および一塩基多型(SNP)遺伝子型決定によって、これらの細胞が完全に半数体であり、Cas9によって誘導される著しい染色体異常はまったくないことが明らかになった。さらに、親HAP1ならびにクローンA11およびE9の全ゲノム配列およびトランスクリプトーム分析によって、転写変化は、切除された15番染色体断片に限定されることが示された。総合すると、本発明者らは、CRISPR/Cas9技術を用いて、メガ塩基欠失を効率的に操作する実現可能性を立証し、そして最初の完全に半数体であるヒト細胞株を報告する。
序論
脊椎動物において、単一コピーのゲノムの存在である半数性は、天然には、配偶子の段階に限定される。しかし、実験的には、半数体体細胞は、メダカ(medaka)、マウスおよびラットを含む、多くの生物から得られうる。ヒトにおいて、ほぼ半数体の体細胞は、白血病(Oshimuraら 1977[9];Anderssonら 1995[10])および軟骨肉腫(Boveeら 1999[19])を含む特定の腫瘍に見出されてきている。重要なことに、ほぼ半数体のヒト細胞株が、慢性骨髄性白血病患者から単離されて、そして数ヶ月に渡って安定に培養された(Koteckiら 1999[1])。KBM−7と称されるこの細胞株は、二染色体性である8番染色体および15番染色体の一部を除いて、大部分の染色体で1コピーを含有する。
KBM−7細胞のほぼ半数性は、ヒト細胞における大規模な機能喪失スクリーンを行うために利用されてきている(Caretteら 2009[2])。こうしたスクリーンは、宿主・病原体相互作用からシグナル伝達および薬剤作用機構までに渡る、KBM−7細胞における多様なプロセスの研究に使用されてきている。さらに、KBM−7細胞は、ヒト同質遺伝子細胞株の巨大ライブラリーを組み立てるために用いられ(Burckstummerら 2013[4])、それによってヒト細胞における順方向および逆方向遺伝学実験の両方が可能となった。
OCT4、SOX2、KLF4およびMYCの過剰発現によって、KBM−7細胞を人工多能性幹細胞に再プログラミングすることも可能である(Caretteら 2010[5])。これらの再プログラミング実験はまた、HAP1と称される線維芽細胞様形態を持つほぼ半数体の細胞株も生じた(Caretteら 2011b[6])。KBM−7細胞とは対照的に、HAP1細胞は接着性であり、そして8番染色体の第二のコピーを欠く。しかし、HAP1細胞は15番染色体断片を2コピー保持し、断片の一方は19番染色体に融合しているため、完全には半数体ではない。
Cas9は、化膿性連鎖球菌から最初に単離されたエンドヌクレアーゼである。Cas9は、小分子ガイドRNA(gRNA)によってプログラミングされて、ガイドRNAに相補的であり、そしてその後にプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM;化膿性連鎖球菌Cas9に関してはNGG)が続く、任意のゲノム遺伝子座を切断可能である(Maliら 2013[12])。Cas9によるゲノムDNAの切断は、切断点の不正確な修復を導き、それによって関心対象の特定の遺伝子座で突然変異を引き起こす、非相同端連結(NHEJ)などの内因性修復機構を誘発する。Cas9仲介ゲノム操作は、酵母からヒトまで、多様な生物において、用いられてきている(概説には、(Maliら 2013[12])を参照されたい)。重要なことに、Cas9はまた、関心対象の遺伝子座を欠失させるためにも用いられてきており(Xiaoら 2013[13])、それによって合成生物学に関する魅力的な視点も提供する。しかし、今日まで、キロ塩基サイズの欠失しか報告されてきておらず、遺伝的に修飾されたクローンを得るために十分に高い効率で、より大きな欠失が操作可能であるかという疑問が生じていた。本文書において、HAP1細胞に存在する15番染色体の二染色体部分の1コピーを欠失させるため、本発明者らは多用途CRISPR/Cas9系を使用した。欠失させる断片は、3000万塩基対を含み、330ヒト遺伝子をコードし、そして15番染色体の総サイズのほぼ1/3に相当する。
材料および方法
KBM−7細胞およびHAP1細胞を、10%FCSを補充したIMDM中で培養した。細胞を48時間ごとに継代した。
WiCell Cytogeneticsによって、スペクトル核型決定を行い、そして分析した。簡潔には、標準的細胞遺伝学的手技にしたがって、分裂中期染色体スプレッドをスライド上で調製した。次いで、Applied Spectral Imaging(ASI)によって提供されるDNAスペクトル核型決定ハイブリダイゼーションおよび検出プロトコルにしたがって、供給されるSKYプローブおよび検出系を用いて、これらのスライド調製をハイブリダイズさせた。ASIのHiSKYVスペクトル画像化システムを用いて、画像を捕捉し、そして分析した。
SNPの選択
KBM−7親細胞株の全ゲノム配列決定から得られる、(Burckstummerら 2013[4])に公表されるSNPリストから、ヘテロ接合性SNPを選択した。全ゲノムおよびエクソーム配列決定実験の両方に由来する累積変異体リストに基づいて、カスタムRスクリプト(Rバージョン3.0.1;パッケージ「ggplot2」)によって、SNPの等間隔配置および遺伝子型の視覚化を行った((Burckstummerら 2013[4])もまた参照されたい)。
CRISPR/Cas9仲介ゲノム操作
ガイドRNAとして以下の配列を選択した:
製造者の指示にしたがって、Turbofectin(Origene)を用いて、化膿性連鎖球菌Cas9および適切なガイドRNAの発現プラスミドで、HAP1細胞を一過性にトランスフェクションした。トランスフェクション細胞を濃縮するため、本発明者らは、ブラスチシジン耐性遺伝子をコードするプラスミドを同時トランスフェクションし、20μg/mlブラスチシジンでの一過性選択に細胞を供した。トランスフェクション細胞をゲノムDNA単離のため、または限界希釈のため拡大した。
欠失PCR
chr15:61,105,002−89,890,003を含む断片の欠失を評価するため、本発明者らは、QIAamp DNAミニキット(Qiagen)を用いてゲノムDNAを単離し、そしてこれを、GoTaqポリメラーゼ(Promega)ならびにオリゴヌクレオチドHG6090およびHG6093を用いたPCRに供した(上記配列を参照されたい)。
単細胞クローンの単離
限界希釈によって単一HAP1クローンを得た。この目的に向けて、細胞をトリプシン処理し、そして1mlあたり15細胞の濃度まで連続希釈した。この懸濁物50μlを、384ウェルプレートの各ウェルに植え付けた。個々のウェルを顕微鏡によって調べて、ポリクローナル細胞株を排除した。モノクローナル細胞株を拡大した。
ヘテロ接合性SNPを検出するためのPCRおよびサンガー配列決定
GoTaqポリメラーゼ(Promega)を用い、以下のプライマー対を用いて、HAP1細胞(または対応するクローン)から、ヘテロ接合性SNPを増幅させた:
各順方向プライマーは、太字で示すM13プライマー結合部位を含有した。PCR産物を精製し、そしてM13配列決定プライマー(TGTAAAACGACGGCCAG、配列番号111)を用いたサンガー配列決定に直接供した。
ヨウ化プロピジウム染色
細胞を100ng/mlのKaryoMax(GIBCO)で6時間処理するか、または未処理で放置し、トリプシン処理によって採取して、そしてPBSで2回洗浄した。Nicoletti緩衝液(0.1%クエン酸ナトリウム、0.1% Triton X−100、0.5U/ml RNアーゼA、20U/ml RNアーゼT1、50μg/mlヨウ化プロピジウム)を用いて、細胞を溶解し、そして同時に染色した。半数体および二倍体参照細胞株を対照として含めた。フローサイトメトリーによって、ヨウ化プロピジウム染色を定量化した。
全ゲノム配列決定および分析
製造者の指示にしたがって、Illumina TruSeq DNA PCR不含試料調製キットを用いて、ゲノムDNAを、全ゲノム配列決定のためのライブラリー調製に供した。対形成末端100bp読み取り化学反応を用いて、Illumina HiSeq 2000上でライブラリーを配列決定した。本発明者らは、Bowtie2を用いて、ヒトゲノム(hg19)に対してデータを整列させ、そしてBamformatics(sourceforge.net/projectus/bamformatics)およびカスタムRスクリプトを用いて、変異体を分析した。本発明者らは、GSNAPによって生じた二次整列を用いて、人為現象的な整列に関してチェックした。全ゲノム配列決定データをShort Read Archive上に寄託した(HAP1細胞:SRP044390;eHAP A11およびE9:SRP044387)。
RNA配列決定および分析
製造者の指示にしたがって、Illumina TruSeq RNA試料調製キットを用いたライブラリー調製に、総RNA(1μg)を供した。50bp単一読み取り化学反応を用い、Illumina HiSeq 2000上で、DNAライブラリーを配列決定した。本発明者らは、Gencode(V19)遺伝子注釈を用いて、Tophatで読み取りを整列させた。本発明者らは、読み取りをカウントし、そして多重度をマッピングすることにより加重することによって、遺伝子の発現を評価した。過剰/過少発現分析のため、本発明者らは、最小発現レベル(FPKM 5)、2の倍変化、および不確実性レベルに対するクリアランスを伴う遺伝子を考慮した。セグメント化分析のため、本発明者らは、すべての発現される遺伝子に関する倍変化の対数を計算し(FPKM 0.2)、これらを染色体の順序に配置し、そして次いで区分フラットセグメント化を適用した。次いで、セグメント化値を用いて、ゲノム全体の増幅マップをコンパイルした。すべてのRNA配列決定データを、Short Read Archive上に寄託した(SRP044391)。
結果
HAP1細胞のスペクトル核型決定によって、親KBM−7細胞株に存在する15番染色体断片がHAP1で保持されることが明らかになった(図12)。これは、19番染色体の長腕に融合している。15番染色体上の二染色体領域の境界をマッピングするため、本発明者らは、KBM−7細胞由来の小分子ヌクレオチド多型(SNP)アレイデータを分析した(Burckstummerら 2013[4])。これらのデータによって、二染色体断片が、ほぼ3000万塩基対を含むことが示される(ほぼchr15:61,105,000−ほぼchr89,890,000)。この領域由来のヘテロ接合性SNPの存在は、二染色体領域が複製によって生じたのではなかったことを示す。そうではなく、これは、二倍体ヘテロ接合性起源の残余物に相当する。
完全に半数体である体細胞ヒト細胞株を生成するため、本発明者らは、CRISPR/Cas9仲介ゲノム操作によって、15番染色体由来の二染色体領域の1コピーを排除することを目的とした。本発明者らは、二染色体領域の境界に配置された2つのガイドRNAの同時適用が、Cas9による両端の同時切断を生じ、介在断片の除去を導くであろうと推論した。19番/15番染色体融合の正確な配列が未知であったため、本発明者らは、15番染色体由来の二染色体領域内を切断するガイドRNAを選択した。本発明者らは、各端に関して2つずつ、4つのgRNAを設計した。HAP1細胞の一過性トランスフェクションによって、Cas9およびガイドRNA発現プラスミドを導入した。本発明者らは、ブラスチシジン耐性遺伝子を所持するプラスミドを含め、そしてブラスチシジン選択を用いて、未トランスフェクション細胞を排除した。HAP1細胞の一過性トランスフェクション後、本発明者らは、T7エンドヌクレアーゼアッセイを用いて、4つの遺伝子座で、Cas9切断を監視した。本発明者らは、gRNA1、3および4が、設計された遺伝子座で効率的な切断を誘発することを見出したが、gRNA2は、いかなる検出可能なゲノム修飾も引き起こさなかった(実施例1にデータを示す)。次に、本発明者らは、欠失が、トランスフェクション細胞プール中で検出可能であるかどうかを評価した。本発明者らは、欠失させようとする15番染色体由来の3000万塩基対領域に隣接する2つのプライマー対を設計した。予期されるように、野生型HAP1細胞にはいかなるPCRバンドも検出不能であった。しかし、本発明者らは、gRNA1および3が組み合わされた試料中でPCR産物を容易に検出し(実施例1にデータを示す)、二本鎖切断に曝露されたDNA端がともに連結されていることが示された。
トランスフェクション細胞のプールにおいて、欠失が検出されたことは有望であったが、これはなお、欠失を所持するクローン細胞株単離を複雑にする、非常に稀な事象に相当する可能性もある。本発明者らは、gRNA1および3が組み合わされている試料からクローンを単離し、そしてPCRによって欠失の存在を評価した。200クローンの最初のバッチは、4つのクローン(A8、A11、B11およびF6と称される)を含有し、該クローン中、PCRによって欠失が検出可能であった(実施例1にデータを示す)。クローンを単離し、そして実施例1の一部としてさらに特徴付けた。このセットからの最も有望なクローンはクローンA11であった。これは欠失PCRに関して陽性であり、ヘテロ接合性喪失を示し、そしてなお半数体であった。この理由のため、クローンA11を本明細書に提示する実験セットに含めた。
独立に得られた200クローンの第二のバッチは、1つのさらなるこうしたクローンを含有した(E9と称される;図13)。クローンA11およびE9から得られた欠失PCR産物のサンガー配列決定は、2つのクローンにおいて異なる切断ポイントを示し(図14)、これらのクローンが独立の編集事象から得られたことを立証した。
15番染色体の切除された領域が、ゲノムの別のどこかに組み込まれることによって保持されている可能性を排除するため、本発明者らは、HAP1細胞においてヘテロ接合性であることが見出された15番染色体由来の二染色体領域由来のSNPを分析した(図15)。本発明者らは、両方のクローン(A11およびE9)がこれらのSNPに関してホモ接合性であることを観察した(図15)。これは、クローンA11およびE9において、適切な欠失が生じたことを示す。
多様なクローンにおいて、染色体ランドスケープを特徴付けるため、本発明者らは各クローンをスペクトル核型決定に供した。クローンA11およびE9は、完全に半数体であることが見出され、そして19番染色体は損なわれておらず(図16)、19番/15番不全染色体融合が意図された通りに修復されていることが示された。これらの2つのクローンは、したがって、完全に半数体のヒト細胞株であると見なされうる。
HAP1細胞は、二倍体状態に自発的に変換可能であるため、本発明者らは、欠失が生じたクローンの安定性を評価した。ヨウ化プロピジウム染色は、クローンA11およびE9の両方が半数体であり(図17)、そして半数体HAP1細胞と区別不能であることを示した。20継代に渡って継代した際、HAP1細胞ならびにクローンE9は、完全な半数性を保持し、一方、クローンA11は、部分的に二倍体に変換されており、これはおそらく核内倍加によるものであった。これによって、完全に半数体であるヒト細胞が生存可能であり、そしてその半数体核型を安定に維持可能であることが示される。
本発明者らは、全ゲノム配列決定を実行することによって、クローンA11およびE9をさらに特徴付けることを決定し、そして本発明者らは、これらの分析に親HAP1細胞を含めた。全ゲノム配列決定を、それぞれ、HAP1において〜20x被覆度で、そしてクローンA11およびE9において〜6x被覆度で行った。HAP1およびクローンE9間の包括的比較は、HAP1細胞がクローンE9に比較して2倍の被覆度を示した15番染色体由来の断片を例外として、ゲノムに渡る類似の相対被覆を示した(図18)。クローンA11に関して類似の結果が得られた(データ未提示)。この観察によって、15番染色体由来の完全二染色体領域がクローンA11およびE9で欠失されているという知見が支持される。
単一ヌクレオチド置換および小さいインデルの包括的分析によって、HAP1親に比較して、クローンにおいて喪失されている一ヌクレオチド置換の大部分は、欠失された15番染色体断片に起因していた可能性があることが明らかになった(データ未提示)。どちらのクローンも遺伝子ドリフトのため、いくつかの突然変異を獲得した(データ未提示)。全体として、全ゲノム配列決定によって、スペクトル核型決定によって得られたデータが確認され、15番染色体断片の欠失が強調されて、そしてこれらの細胞において、さらなる重要でない改変しかないことが示唆された。
最後に、本発明者らは、RNA配列決定によって、ほぼ半数体のHAP1細胞を完全に半数体であるクローンA11およびE9に比較した。本発明者らはまた、KBM−7細胞を対照として含めた。培養条件による可変性に関して制御するため、本発明者らは平行培養由来の2つの複製物を含めた。驚くべきことに、HAP1およびクローンE9の間のスピアマン相関は、同じ細胞株の複製物間とちょうど同程度に強かった(図19A)。これは、HAP1およびクローンE9細胞の包括的発現プロファイルが、ほぼ同一であることを示す。注目すべきことに、HAP1およびクローンE9の間で少なくとも2倍異なる遺伝子の数はほぼ600であった一方、KBM−7細胞と比較するとこの数は3000遺伝子を超えた(図19B)。さらに、HAP1およびクローンE9の間で示差的に発現される遺伝子の大部分は、15番染色体の欠失された断片上にクラスター形成した(図20)。総合すると、本発明者らのRNA配列決定データは、クローンA11またはE9およびHAP1の間の大きな相違を示さず、そして主な相違は本発明者らが操作した大きな染色体欠失から生じることを示す。
考察
本発明者らは、本明細書において、公表された欠失(Xiaoら 2013[13])をはるかに超えた、CRISPR/Cas9によって操作されるメガ塩基規模の欠失を提示し、したがって染色体規模のゲノム操作の実現可能性を立証する。重要なことに、操作された染色体的に安定なクローンは、標準的サブクローニングおよびPCRスクリーニング法を用いて得られうる。ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(Leeら 2010[14])またはTALEN(Kimら 2013[15])を用いた24メガ塩基までの巨大な欠失が報告されてきているが、これらの欠失を所持する単一クローンの単離を報告した研究がほとんどないため、常に効率を推測可能ではない。単一クローンが単離された場合、一般的にTALENがCRISPR/Cas系よりもより低い効率であると考えられるという事実を踏まえると、これらは驚くほど高頻度で(ほぼ0.5%)回収された(Kimら 2013[15])。この原稿を完成させるに当たって、本発明者らは、対形成CRISPR/Cas切断の結果としての、巨大欠失(Canverら 2014[16])または染色体再編成(ChoiおよびMeyerson 2014[17])を示すいくつかの最近の報告に気が付いた。単一アレルのメガ塩基規模欠失に関して報告された効率は、1%の範囲であり(Canverら 2014[16])、そしてしたがって、本発明者らの知見に匹敵する。
本発明者らは、切除戦略の基本に、利用可能なSNPアレイデータを置き、このデータは、ヘテロ接合性SNPの存在に依存し、そしてしたがって、全ゲノム配列決定より低い解像度を提供する。その間、本発明者らが得た全ゲノム配列決定データは、15番染色体由来の二染色体領域が、以下の位:chr15:61,103,219−89,893,074を含むことを明らかにした。その結果、本発明者らは、15番染色体断片を完全には切除しなかった。実際、クローンA11およびE9において、19番染色体はなお、数キロ塩基(chr15:61M周囲から〜2kb、およびchr15:89M周囲から〜4kb)の断片を含有する。
CRISPR/Cas9系の使用に関する1つの大きな懸念は、オン−ターゲット部位に非常に関連した望ましくない部位での切断であり、そしていくつかの近年の報告は、オフ−ターゲット編集の可能性を強調する。しかし、オフ−ターゲット編集が観察される頻度は、低いものからある程度まで多様であることが観察される。これらの明らかな相違のうちのいくつかは、Cas9の発現レベルが、トランスフェクション効率に応じて、異なる細胞タイプの間で多様であることに起因する可能性がある。他のこうした相違は、検出法に起因しうる。本発明者らは、クローンA11またはE9細胞において、あるとしても非常に限られたオフ−ターゲット編集しか観察しない(データ未提示)。
関心対象の特異的ゲノム領域の欠失に関するCRISPR/Cas9系の使用は、ヒトゲノムにおいて、プロモーター、エンハンサーおよび他の制御領域の機能的な特徴付けに関する道を拓く。さらに、欠失による遺伝子クラスター全体の不活性化は、重複性の機能を伴う個々のメンバーで構成される遺伝子ファミリーの研究を可能にするであろう。この技術の魅力的な適用は、ヒト細胞が生存し、そして培養中で増殖するために十分な最小必須ゲノムの生成である。
さらに、本発明者らは、最初の完全に半数体であるヒト細胞株を提示する。他の生物由来の半数体細胞は、以前、単離されてきているが、ほぼ半数体であるヒト細胞株しか報告されてこなかった。にもかかわらず、ほぼ半数体の細胞株KBM−7およびHAP1は、機能的ゲノミクスのための二倍体以下核型の価値を示してきている(Caretteら 2009[2];Caretteら 2011a[11])。細胞の倍数性は、いかなるゲノム編集技術でも成功のための非常に重要な決定要因である:二倍体または多数体細胞株とは異なり、編集事象をPCRおよびサンガー配列決定によって容易に追跡可能である。実際、HeLaおよびA549などの頻繁に用いられる細胞株の様式的な(modal)遺伝子コピー数は、二倍体細胞株のものをはるかに超えており、これはゲノム編集を非常に妨げる可能性がある。したがって、ゲノム操作および機能的ゲノミクスの観点からは、半数体細胞は非常に魅力的である。この考慮と一致して、最初のゲノム全体のCRISPR/Cas9スクリーンの1つは、KBM−7細胞で行われた(Wangら 2014[18])。本発明者らはしたがって、この完全に半数体であるヒト細胞株が、より広い科学コミュニティにおけるゲノム操作およびスクリーニングに大きく貢献するようになると予期する。
実施例3:接着性体細胞半数体細胞の二倍体化
以下の実施例は、二倍体化の方法論を記載する。
半数体ヒト細胞は、二倍体状態に変換する天然の傾向を有する。半数体細胞は、したがって、本明細書において、最終的には安定な二倍体状態に変換する「準安定」状態と見なされる。この実験において、この変換は制御された方式で実行されて、そして、例えば定期的な間隔で細胞が継代されず、そして新鮮な培地が供給されない場合、最適以下の細胞培養条件によって誘発される。細胞ストレスは、特に接着細胞に適用された際、半数体体細胞ヒト細胞株の二倍体化を促進するであろう。
連続継代によって誘導されるようなストレスへの曝露後、例えば少なくとも25回の継代後、単細胞クローンを限界希釈によって単離した。この目的に向けて、半数体および二倍体サブクローンを含有する細胞集団をトリプシン処理し、そして1ミリリットルあたり〜20細胞まで希釈した。次いで、細胞を384ウェルプレートに植え付け(「限界希釈」)、そして14日間増殖させた。単一ウェルを視覚的に検査して、単一の細胞クローンが回収されることを確認した。
単一クローンを384ウェルプレートから6ウェルプレートに拡大した。個々のクローンをヨウ化プロピジウム染色によって染色した。この目的に向けて、トリプシン処理によってHAP1細胞を採取し、そしてPBSで2回洗浄した。Nicoletti緩衝液(0.1%クエン酸ナトリウム、0.1% Triton X−100、0.5U/ml RNアーゼA、20U/ml RNアーゼT1、50μg/mlヨウ化プロピジウム)を用いて、細胞を溶解し、そして同時に染色した。半数体および二倍体参照細胞株を対照として含めた。フローサイトメトリーによって、ヨウ化プロピジウム染色を定量化した。
代表的な結果を図21に示す。クローン1、3および6は半数体であり、そして〜190の蛍光強度に大きな(1N)ピークを示し、そして〜380の蛍光強度に小さな(2N)ピークを示す。後者は、S期にそのゲノムを複製した半数体細胞から生じ、そして有糸分裂を経るところである。クローン2、4および5は、二倍体であり、そして〜380の蛍光強度に大きな(2N)ピークを示し、そして〜760の蛍光強度に小さな(4N)ピークを示す。したがって、要約すると、ヨウ化プロピジウム染色および分析FACSによって、半数体および二倍体クローンが明らかに分離可能であり、そして同定可能である。
二倍体クローンの均質な下位集団を生成し、そしてクローン・アーチファクトを回避するため、いくつかの二倍体クローンをプールして、二倍体細胞のポリクローナル集団を得た。半数体HAP1細胞の親集団とは対照的に、この集団は、もはや準安定性ではなく、その二倍体またはほぼ二倍体の核型を安定に維持する。この集団は、ヨウ化プロピジウム染色によって、元来の半数体集団とは区別可能である(図22)。半数体HAP1およびKBM−7細胞(図22Aおよび22B)は、申し分なく半数体であり、〜220(1N)および〜440(2N)の蛍光強度に大きなピークがある。対照的に、二倍体KBM−7細胞および細胞株C665に関するピークは、〜2倍シフトし(図22Cおよび22D)、これが二倍体であるかまたはほぼ二倍体であることを示す。
C665はまた、スペクトル核型決定によっても特徴付けられた(図23)。パネルA、BおよびCは、C665の集団中に存在する多様なサブクローンを示す。集団中のいくつかのクローンは、完全にほぼ二倍体であり、すなわちこれらは半数体HAP1細胞において単一コピーで存在する各染色体を2コピー有する(図23C)。他のクローンは、重要でない染色体異常、例えば8番染色体のトリソミー(図23B)または8番染色体の一部の10番染色体への転位置(図23A)を含有する。総合すると、スペクトル核型決定データによって、ほぼ半数体のHAP1細胞がほぼ二倍体の細胞に変換可能であることが示される。
こうした実験から得られる細胞集団は、二倍体またはほぼ二倍体であり、そして2つの同一セットの姉妹染色体を含有するため、ユニークである。対照的に、天然に存在する二倍体細胞は、父由来の1つの染色体セットおよび母由来の1つの染色体セットを含有し、これらは特定の一塩基多型(SNP)に関して異なる。半数体細胞に由来する二倍体細胞は、2つのゲノムコピーが同じ半数体コピーから生じ、そしてしたがって、ヘテロ接合性SNPが存在しないため、天然の二倍体細胞とは異なる。
参考文献

Claims (20)

  1. 体細胞的に完全な半数体であり、核型が安定したヒト細胞株。
  2. 接着細胞株である、請求項1の細胞株。
  3. DSM ACC3220の下に寄託されたHAP2細胞株またはその機能的変異体、好ましくは実質的に同じ遺伝子発現プロファイルを持つものである、請求項1または2の細胞株。
  4. 一染色体状態でヒト染色体の完全なセットを含む、請求項1〜3のいずれかの細胞株。
  5. 半数体核型が、少なくとも10継代、好ましくは少なくとも20継代に渡って、核型として安定である、請求項1〜4のいずれかの細胞株。
  6. ほぼ半数体である体細胞ヒト親細胞の1またはそれより多い二染色体領域のターゲティング化欠失によって得られうる、請求項1〜5のいずれかの細胞株。
  7. 関心対象のあらかじめ決定されたゲノム部位(GOI)に1またはそれより多い関心対象のゲノム突然変異(MOI)を含む、請求項1〜6のいずれかの細胞株。
  8. MOIが
    (i)遺伝子の機能をノックアウトする突然変異;
    (ii)1またはそれより多いヌクレオチドの欠失、置換、または挿入の少なくとも1つを導入する突然変異;および/または
    (iii)相同性テンプレートの交換配列を導入する突然変異
    の少なくとも1つである、請求項7の細胞株。
  9. 請求項1〜8のいずれかの細胞株から抽出されたゲノムDNAを含む、DNA調製物。
  10. a)ほぼ半数体である体細胞ヒト親細胞を提供し;
    b)親細胞ゲノムにおいて二染色体領域を同定し;
    c)各々、ターゲット部位とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列を含むcrRNAと組み合わせたtracrRNAを含むgRNAによって、染色体領域のDNAの5’および3’端に隣接する外側部位をターゲティングし;
    d)gRNAとハイブリダイズした際に、DNA二本鎖切断を触媒する、RNA誘導性エンドヌクレアーゼとの接触に際して、ターゲット部位でDNAを切断し、それによって、染色体領域を欠失させて、そして完全に半数体の細胞を得て;そして
    e)細胞を拡大して、完全に半数体である細胞株を得る
    工程を含む、請求項1〜8のいずれかの細胞株を産生する方法。
  11. 親細胞が、癌患者、好ましくは白血病、例えば慢性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病、あるいは固形腫瘍、例えば末梢軟骨肉腫に罹患した患者から得られる、請求項10の方法。
  12. gRNAの少なくとも1つが、配列番号3、配列番号13、配列番号19、および配列番号24〜47のいずれかからなる群より選択される配列、またはエンドヌクレアーゼの共基質である前述のいずれかの機能的変異体を含む、請求項10または11の方法。
  13. 少なくとも1つのエンドヌクレアーゼが、化膿性連鎖球菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス、髄膜炎菌、またはトレポネーマ・デンティコラのいずれかに由来するCAS9酵素、およびCas9ニッカーゼまたは人工酵素を含む、前述のいずれかの機能的変異体からなる群より選択される、請求項10または11の方法。

  14. ・配列番号3、25、もしくは26のいずれか、または前述のいずれかの機能的変異体のヌクレオチド配列を含むgRNA;および
    ・配列番号1、5、7、8、もしくは9のいずれか、または前述のいずれかの機能的変異体のアミノ酸配列を含むエンドヌクレアーゼ;あるいは

    ・配列番号13、27〜40のいずれか、または前述のいずれかの機能的変異体のヌクレオチド配列を含むgRNA;および
    ・配列番号10もしくは15、または前述のいずれかの機能的変異体のアミノ酸配列を含むエンドヌクレアーゼ;あるいは

    ・配列番号19、41〜47のいずれか、または前述のいずれかの機能的変異体のヌクレオチド配列を含むgRNA;および
    ・配列番号16もしくは21、または前述のいずれかの機能的変異体のアミノ酸配列を含むエンドヌクレアーゼ
    の少なくとも1つを使用する、請求項10または101の方法。
  15. DNA切断が、プロトスペーサー関連モチーフ(PAM)に対して近位の、好ましくはPAMの3bp上流の二本鎖切断であり、そしてゲノム突然変異が、相同配向性修復によって、または非相同端連結によって得られる、請求項10〜14のいずれかの方法。
  16. 欠失される染色体領域が、少なくとも100万bp、好ましくは少なくとも1000万または少なくとも2000万bpの長さを有する、請求項10〜15のいずれかの方法。
  17. 異なるゲノムターゲット部位でゲノム突然変異を含む、同質遺伝子細胞変異体を産生するための、請求項1〜6のいずれかの細胞株の使用。
  18. 請求項1〜6のいずれかの細胞株の細胞を突然変異誘発することにより、異なるゲノムターゲット部位でゲノム突然変異を含む、体細胞的に完全な半数体であり、核型が安定したヒト細胞のライブラリーを産生する方法。
  19. 異なるGOIでMOIを含む同質遺伝子細胞変異体のレパートリーを含む、体細胞的に完全な半数体であり、核型が安定したヒト細胞のライブラリー。
  20. 請求項19のライブラリーの1またはそれより多い細胞株の機能的特性を決定し、そしてMOIの指標としてその機能にしたがって細胞株を選択することによって、あらかじめ定義されたGOIでMOIを含むヒト体細胞株を同定する方法。
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