JP2016537971A - 多能性幹細胞の培養 - Google Patents

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Abstract

未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持する方法が提供されている。本方法はMEK阻害剤、GSK3阻害剤、AMPK及び/又はBMPシグナル伝達の二重阻害剤、並びにLIFを含む培地でその多能性幹細胞を培養する工程を含む。本方法により作製した細胞、細胞培養培地及び記載の方法を実施するためのキットも提供されている。【選択図】なし

Description

本発明は幹細胞に関する。特に、本発明は、未分化状態で多能性幹細胞を培養し維持する方法に関する。
胚性幹細胞(ESC)は胚盤胞の内細胞塊(ICM)に由来している。ESCは3タイプの胚葉及び成体からの潜在的にすべての細胞に分化することができる。
この多能特性は、こうした細胞を再生医療の分野において好ましいものにするものであり、初期胚発生を詳細に検討するための極めて貴重なツールとなる。ESCはこの特性を内細胞塊の多能性エピブラスト細胞と共有しているが、相違点も認められている。
生体内における発生によく似たヒト胚性幹細胞(hESC)の状態を備えていることは非常に有益であると思われるが、hESCの生体外培養条件が、多能性が一時的にしか存在しない胚盤胞の環境を再現する際にどれ程までに限定されるかは明らかではない。
マウスでは、多種類の細胞が多能性の要件を満たし、これらのはっきりと異なる細胞が異なる胚発生段階に対応していることが報告されている。
また、異なる多能性状態の因子を媒介とする分離がヒト細胞に成功裏に適用されており、多種類の多能性細胞間で原則相互変換可能であることが明らかになっている。
天然の多能性エピブラストにさらに酷似しているhESCを得るためには、導入遺伝子を用いない方法が有利であると思われる。
そこで、本発明は、従来技術の欠点を改善し、より効率的に分化する多能性幹細胞状態を提供し、維持することを目的とする。
第一の態様において、未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持する方法であって、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、AMPK及び/又はBMPシグナル伝達の二重阻害剤、並びにLIFを含む培地でその多能性幹細胞を培養することを含む方法を提供する。
第二の態様において、本明細書に記載した方法により作製した多能性幹細胞を提供する。
第三の態様において、多能性幹細胞から系譜特異的細胞を生じさせる方法であって、a)本明細書に記載の方法に従って未分化状態で多能性幹細胞を培養する工程、b)この未分化多能性幹細胞を単離する工程、及びc)この単離した多能性幹細胞を系譜特異的細胞に分化させるのに適した培養培地中でこの単離した未分化多能性幹細胞を培養する工程、を含む方法を提供する。
第四の態様において、未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持するための、本明細書に記載の方法で使用されるキットであって、記載したような培養培地及び使用説明書を含むキットを提供する。
定義
本明細書で用いている「培養培地」という語句は、幹細胞及び上記細胞諸系譜のいずれかの成長を支持するのに使用される液状物質のことをいう。一部の実施態様において本発明により使用する培養培地は、塩類、栄養素、ミネラル、ビタミン類、アミノ酸類、核酸類、サイトカイン類、成長因子類などのタンパク質及びホルモン類などの諸物質の組合せを含むことがある水基性の培地とすることができる。
本明細書で用いている「フィーダー細胞」という用語は、幹細胞をフィーダー細胞上で共培養した時に、又はこの多能性幹細胞をフィーダー細胞によって作られた馴化培地の存在下にマトリクス(例えば、細胞外マトリクス若しくは合成マトリクス)上で培養した時にこの幹細胞を増殖状態に維持するフィーダー細胞(例えば、線維芽細胞)のことをいう。このフィーダー細胞の支持は、培養中のフィーダー細胞群の構造(例えば、組織培養皿におけるフィーダー細胞群の培養により形成される三次元マトリクス)、フィーダー細胞の機能(例えば、フィーダー細胞による成長因子、栄養素及びホルモンの分泌、フィーダー細胞の成長速度、老化前のフィーダー細胞の増殖能)及び/又は幹細胞のフィーダー細胞層(単数又は複数)への付着に依存している。
本明細書で用いている「ラミニン」という用語は、通常は細胞外マトリクスの形成及び維持に関与している糖タンパク質のファミリーのいずれかのことをいう。ラミニンはα鎖、β鎖及びγ鎖から形成されるヘテロ三量体である。本開示の一部の態様では、各種ラミニンの断片、誘導体又は類似体、例えば、少なくとも一部分がラミニンα1鎖と少なくとも実質的に相同であるラミニン類、を用いることができる。
本明細書で用いている「コラーゲン」という用語は、全てのコラーゲン類並びに天然のものかどうかを問わず、任意の形態のコラーゲン、アテロコラーゲン、不溶性コラーゲン、コラーゲン線維、可溶性コラーゲン及び酸可溶性コラーゲンを意味するものとする。
本明細書で用いている「フィブロネクチン」という用語は、ジスルフィド結合した二量体糖タンパク質のことをいう(これは血漿及などの体液中に可溶型で存在し、疎性結合組織の細胞外マトリクスの主要成分の1つとして線維状に沈着している。これは、フィブロネクチン分子のモジュール構造化をもたらすI、II及びIII型同族体と称する3種の異なる構造モチーフからなり、この分子のいくつかの生物活性はそれぞれ特定のドメインに起因するものである。
本明細書で用いている「プロテオグリカン」という用語は、「ヒト分泌型プロテオグリカン」のことを意味し、プロテオグリカンのコアタンパク質に共有結合したグリコサミノグリカン鎖を含有するものと含有しないものがある。この用語は、ヒト分泌型プロテオグリカンのペプチド断片であって、そのペプチドコアタンパク質が生物学的(機能的又は構造的)活性を保持しているプロテオグリカンの部分断片といった天然のものよりも少ない数のアミノ酸を含むヒト分泌型プロテオグリカンのペプチド断片をも意味するものである。
本明細書で用いている「機能的」という用語は、天然の非組み換え型タンパク質と同様に特定の生物反応を誘導することができることである。構造的活性の一例は、天然の非組み換え型タンパク質をも認識する抗体に結合できることである。また、この用語は、生物学的(機能的又は構造的)活性を示す、天然型タンパク質又はその類似体の配列を1個以上の隣接アミノ酸と共に含む任意のペプチドをも含めるために用いている。
「機能的誘導体」は、非組み換え型タンパク質又は他の生体分子の生物学的活性と実質的に類似している生物学的活性(機能的又は構造的)に関係したものである。機能的誘導体は翻訳後の改変箇所を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「機能的誘導体」という用語には、分子の「断片」、「変異体」、「類似体」、又は「化学的誘導体」を含めるものとする。
本明細書で用いている「断片」という用語は、上記分子の任意の変異体、例えば、そのペプチドコア、又は機能的であってもなくてもよいそのペプチドコアの変異体を指すものとする。
本明細書で用いている「変異体」という用語は、構造及び生物学的活性が上記分子全体又はその断片に実質的に類似している分子を指すものとする。従って、2種の分子が類似の活性を有する限り、これらの分子の一方の組成又は二次、三次若しくは四次構造が他方のそれと同一でなくても、或いはアミノ酸残基の配列が同一でなくても、これらは、その用語が本明細書で用いられているような変異体とみなす。
本明細書で用いている分子の「類似体」は、機能がその分子全体又はその断片に実質的に類似している分子のことを指すものとする。本明細書で用いている「分子」は、これが本来なら分子の一部ではない化学的部分を更に含む場合の別の分子の「化学的誘導体」という。このような部分は、分子の溶解性、吸収、生物学的半減期などを改善することができる。その他、こうした部分は、分子の毒性の低下、分子の望ましくない副作用の除去又は低減などをもたらすこともできる。このような効果を媒介することができる部分はレミントン(Remington)のファーマシューティカル・サイエンシズ(Pharmaceutical Sciences)(1980)に開示されている。このような部分を分子に連結させる手法は当該分野において周知である。
本明細書で用いている「エンタクチン」という用語は、ニドゲン−1(NID−1)を指すものとする。エンタクチンは、IV型コラーゲン、プロテオグリカン類(ヘパラン硫酸及びグリコサミノグリカン類)、ラミニン及びフィブロネクチンなどの他の成分と共に基底膜の一成分である。
本明細書で用いている「ヘパラン硫酸」とは、炭水化物類のグリコサミノグリカンファミリーの一員であり、構造上ヘパリンに極めて密接に関連している。いずれも可変的に硫酸化された繰り返し二糖類単位からなる。
本明細書で用いている「生体高分子」という用語は、単一の生体高分子又は2種以上の生体高分子の混合物のことを指す。「生体高分子類」は、多糖類(セルロース、澱粉など)を含むがこれに限定されるものではない天然の高分子並びに天然産物から合成された高分子類及び副産物の両者を表すのに用いている。
本明細書で用いているRNAの塩基配列決定法とは、RNA分子の配列を決定し、及び/又は試料中のRNA分子の量を定量するのに用いる技術のことをいう。RNA分子としては、全RNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)又はRNA断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で用いている実時間PCRとは、アッセイシグナルをPCR反応の終点で検出する従来型のPCR法に対して、各PCR増幅サイクル中の単位複製配列産生の指標としてPCRアッセイから反応中に(即ち、「実時間」で)発せられるシグナルをモニターするのに用いられるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術のことをいう。
本明細書で用いている「MEK阻害剤」とは、マイトジェン活性化蛋白質キナーゼ酵素MEK1及び/又はMEK2を阻害する化学物質又は薬物である。
本明細書で用いているGSK3阻害剤とは、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3を阻害する化学物質又は薬物である。
本明細書で用いているAMPK阻害剤とは、5’アデノシン一リン酸活性化蛋白質キナーゼを阻害する化学物質又は薬物である。
本明細書で用いているBMPシグナル伝達阻害剤とは、骨形態形成タンパク質(BMP)シグナル伝達を阻害する化学物質又は薬物である。
本明細書で用いている「LIF」とは、白血病阻止因子のことをいう。
本明細書で用いている「系譜特異的細胞」という用語は、体細胞又はオルガノイド細胞とすることができる。別の実施態様では、この系譜特異的細胞は内胚葉系譜細胞とすることができる。別の実施態様では、この体細胞は、1種若しくは数種の体細胞系譜細胞又は完全に成熟した分化体細胞へ自己複製又は分化することができる委任前駆細胞とすることができる。
本明細書に例示的に記載されている本発明は、本明細書で具体的に開示されていないいかなる1つ又は複数の要素、或いは1つ又は複数の限定が存在しない限り適宜に実施することができる。従って、例えば、本明細書に記載されている「comprising(含む)」、「including(含む)」、「containing(含有する)」などの用語は拡張的に、かつ、限定されることなく解釈されるべきである。さらに、本明細書で用いられている用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用には、図示され説明された特徴のいかなる均等物又はそれらの部分も除外を意図するものではなく、当然のことながら、様々な修正が、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲内で可能である。従って、本発明を好ましい実施態様及び任意選択の特徴により具体的に開示してきたが、本明細書に開示されている具体化された発明の修正及び変更を当業者は行使することができ、そのような修正及び変更は、本発明の範囲内にあると見なされることは理解されよう。
本明細書において、本発明を幅広く且つ一般的に説明してきた。一般的開示に含まれるより狭い種及び亜属集団の各々も、本発明の一部を形成する。これには、削除された材料が本明細書で具体的に挙げられているか否かに関係なく、その属由来の対象物を除くという条件又は消極的な限定で本発明の一般的説明が含まれる。
他の実施態様は、以下の特許請求の範囲及び限定されない実施例の範囲内にある。さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュグループの用語で記載されている場合、当業者には当然のことながら、本発明は、マーカッシュグループの個々のメンバー又は下位グループのメンバーの用語でも記載される。
本発明は、詳細な説明を参照し、以下の限定されない実施例及び添付図面を合わせて考慮すれば、よりよく理解できよう。
図1は、ヒト多能性細胞状態を支持する新規培養条件に関する小分子スクリーニングの結果を示す図である。A)は、新規多能性細胞状態を支持する培養条件を特定するために用いた小分子のリストである。これらの化学物質及びこれらが標的とするそれぞれの経路の名称が示されている。 B)は、多能性マーカNANOG、OCT4及びTRA−1−60に関して各化学物質で処理したhESCの染色結果を示す。hESCは、1:12の割合で接種し、4日間、接種後48時間に各化学物質で処理する。多能性マーカのレベルは、DMSOで処理した対照細胞に比してほとんど不変のままである。目盛り尺は200μmを表す。 C)は、各化学物質で処理したhESCにおける各多能性マーカの遺伝子発現量を示す。TGFβ阻害剤RepSOX及びA83−01並びにGSK3β阻害剤BIOで処理したhESCは、NANOG及びPOU5F1の下方制御を示す。 D)は、本研究で用いている小分子化合物の24種の組合せを示したものである。 E)は、小分子の24種の組合せで処理後のhESCコロニーの形態を示す。目盛り尺は200μmを表す。 F)は、細胞を組合せ22(PD03/BIO/DOR)の各化学物質で処理し、フィーダー上で継代培養し、4日後採取して多能性マーカの発現を調べた結果を示す。PD03又はDORで処理した細胞ではNANOG及びPOU5F1の発現は同等の範囲に留まっている。NANOG及びPOU5F1はBIO処理細胞では下方制御された。系譜マーカの発現量についても分析した。PD03処理細胞においてはPAX6転写産物が増加し、BIOで処理した細胞ではT及びGATA6の上方制御の増強が認められている。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 G)は、変換時の3iL hESC培養条件から各小分子又はLIFを除去した結果を示す。hESCは、3iL hESC条件を用い、上記3種の小分子のうちの1種又はLIFを用いずに処理した。hESCコロニーがもはや維持できなくなった時に細胞を採取して発現を解析した。PD03又はLIFを用いずに培養した細胞は2継代後に採取したが、BIO又はDORを用いずに培養した細胞は4継代後に採取した。小分子及びLIFを除去すると、多能性遺伝子の発現が低下した。対照の3iL hESCに対して正規化することにより相対的発現量が得られている。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 図2は、hESCの小分子処理による新規LIF依存性hESC状態の誘導を示す図である。A)は、接種後48時間における小分子の24種の組合せによる処理を4日間行ったhESCに関する多能性マーカNANOG(上段)及びPOU5F1(下段)の発現量を示す。DMSOで処理した対照試料に対する正規化により相対的発現量が得られている。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 B)は、マウス線維芽細胞フィーダー上において化学物質の組合せ21乃至24で処理したhESCの増殖を示す。組合せ22で処理したhESCのみが小さく密なコロニーを形成している。目盛り尺は200μmを表す。 C)は、組合せ22で処理した細胞はヒトLIFの存在下でのみ増殖することを示している。組合せ22で処理した細胞は、LIFを用いて又は用いずに連続的に継代培養した。各継代(P1乃至P3)において、細胞は集密化時に固定し、hESC特異的表面マーカTRA−1−60で染色した。目盛り尺は200μmを表す。 D)は、LIFを用い、又は用いずに3iで培養したhESCに関するTRA−1−60陽性コロニー数を示す(P1乃至3)。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 E)は、3iL hESC及びhESCの形態を示す。目盛り尺は200μmを表す。 F)は、3iL hESCが単一細胞として継代培養することができることを示している。3iL hESC及びhESCは、96穴培養皿中にクローン密度で単一細胞として継代培養した。ROCK阻害剤(1μMチアゾビビン)を用い、又は用いずに処理したhESCを対照とした。この細胞は5日間維持し、固定してOCT4について染色した。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 図3は、3iL hESCの自己複製がLIFシグナル伝達に依存していることを示す図である。A)は、3iL hESCを0.6μMのJak阻害剤(inh)で処理した結果を示す。対照細胞はDMSOで処理した。細胞は10日間の処理後固定し、多能性マーカNANOG、OCT4及びTRA−1−60について染色した。 B)は、Jak阻害剤を用いた、又は用いなかった場合の3iL hESCにおけるTRA−1−60陽性コロニー数を示す。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 C)は、Jak阻害剤を用いた、又は用いなかった場合のhESCにおける多能性遺伝子及びLIFシグナル伝達反応性遺伝子の発現量を示す。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 D)は、hESCにおけるLIFシグナル伝達成分の発現を示す。STAT3、LIFR、GP130及びハウスキーピング遺伝子GAPDHの平均Ct値が示されている。高いCt値は、hESCにおけるGP130の発現が乏しいことを示している。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 E)は、hESCを3iで処理した場合のGP130発現の誘導を示している。DMSOで処理した対照試料に対する正規化により相対的発現量が得られた。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 F)は、3iL hESC及びhESCにおけるGP130の相対的発現量を示す。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 G)は、hESCと比し、3iL hESCにおいてGP130タンパク質が上方制御されることを示す。GP130に特異的な抗体を用いて3iL hESC及びhESCの全細胞抽出物におけるGP130の存在を検出した。 H)は、3iL hESCではLIF処理したhESCに比し、リン酸化STAT3レベルがより高いことを示す。hESC、10ng/mlのLIFと培養したhESC及び3iL hESCの全抽出物を用いてそれぞれの培養条件におけるSTAT3のリン酸化レベルを測定した。GAPDHタンパク質レベルを負荷対照とした。LIFを添加すると、3iL培養条件に比し、STAT3リン酸化が弱いながら活性化されている。 I)は、3i、3iL又はLIFで4日間処理後のhESCにおいてSTAT3反応性遺伝子SOCS3及びKLF4が活性化されることを示す。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 図4は、3iL培養の条件にとってシグナル伝達経路が重要であることを示す図である。A)は、NANOG発現量が3iで処理したhESCにおけるLIFシグナル伝達に感受性があることを示す。hESCは、3iの存在下及び非存在下に培養し、漸増量のヒト組み換えLIFで処理した。5日間の処理後、細胞を採取して発現解析を行った。多能性遺伝子NANOGの量は、DMSOで処理した対照hESCに比し、3i小分子の存在下に投与量依存性にLIFシグナル伝達に感受性を示している。 B)は、重要なhESCシグナル伝達経路を阻害すると3iL hESCの分化が生じることを示している。3iL hESCは、TGFβシグナル伝達経路(A83−01)、FGFシグナル伝達経路(PD173074)、PI3K経路(LY294002)及びEGF経路(PD15035)を阻害する化学物質で処理した。3iL hESCは10日間かけて処理した後、多能性マーカについて染色した。3iL hESCのTGFβ、FGF及びPI3K経路を阻害すると、3iL hESCの対照に比し、多能性マーカNANOG、OCT4及びTRA−1−60の減少が生じる。目盛り尺は200μmを表す。 C)は、シグナル伝達経路阻害剤で処理した3iL hESCにおいて多能性遺伝子が下方制御されることを示している。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 図5は、3iL hESCが多能性であることを示す図である。A)は、多能性マーカNANOG及びOCT4並びにhESC特異的細胞表面マーカTRA−1−60及びTRA−1−81について3iL hESC及びhESCを染色した結果を示す。目盛り尺:200μm。 B)は、hESC及び3iL hESCにおける多能性関連遺伝子及びエピブラスト遺伝子の相対的な発現を示す。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 C)は、hESC及び3iL hESCにおけるNANOG及びOCT4についてのタンパク質レベルのウエスタンブロット分析の結果を示す。NANOG遺伝子発現量の増加に対応して、3iL hESCにおけるNANOGタンパク質レベルは、hESCに比し、高い。 D)は、3iL hESC及びhESCにおける多能性マーカのFACS分析の結果、3iL hESCではNANOG、TRA−1−60及びTRA−1−81の発現量が増加することを示している。 E)は、3iL hESCが懸濁培養液中で胚様体(EB)を形成し、生体外で3胚葉及び栄養外胚葉に分化することを示している。懸濁液中20日間培養し3iL hESC由来胚様体(上段左パネル)及びゼラチンプレート上に平板培養した胚様体の接着及び拡張(上段右パネル)が示されている。3iL hESCは、外胚葉(PAX6)、胚体内胚葉(SOX17)、中胚葉(GATA4)及び栄養外胚葉(p57Kip2)に分化することができる。目盛り尺:200μm。 F)は、3iL hESCが、SCIDマウスに注射されると、奇形腫を形成することを示している。示されているのは、3種の胚性胚葉の全てを表す組織を含有する奇形腫切片である。目盛り尺:50μm。 G)は、3iL hESCがhESCよりも効率的に奇形腫を形成することを示している。3iL hESCにより形成された奇形腫の容積(左パネル)及びこの奇形腫の形成にかかった平均時間(右パネル)。各条件につき6回の反復実験の結果を示す。 H)は、3iL hESCが培養2ヶ月後に正常な核型を呈することを示している。 図6は、3iL培養条件が他のhESC細胞株及びiPSCの安定な培養を支持することを示す図である。A)は、hES3hESC及びhES3由来3iL hESCの形態を示す。目盛り尺は200μmを表す。 B)は、多能性マーカNANOG及びOCT4並びに細胞表面マーカTRA−1−60及びTRA−1−81についてhES3hESC及びhES3由来3iL hESCを染色した結果を示す。目盛り尺は200μmを表す。 C)は、hES3由来3iL hESCのNANOG発現量がhES3hESCに比し、高いことを示している。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 D)は、hES3由来3iL hESCをSCIDマウスに注射すると、奇形腫が形成されることを示している。示されているのは、3種の胚性胚葉の全てを表す組織を含有する奇形腫切片である。目盛り尺は50μmを表す。 E)は、hES3由来3iL hESCが培養2ヶ月後に正常な核型を呈することを示している。 F)は、hES3由来3iL hESCにおけるエピブラスト特異的遺伝子(ヤン(Yan)他、2013年)の発現量を示す。エピブラスト特異的遺伝子は、hESCに比し、3iL hESCでは上方制御される。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 G)は、hES2hESC及びhES2由来3iL hESCの形態を示す。目盛り尺は200μmを表す。 H)は、多能性マーカNANOG及びOCT4並びに細胞表面マーカTRA−1−60及びTRA−1−81についてhES2hESC及びhES2由来3iL hESCを染色した結果を示す。目盛り尺は200μmを表す。 I)は、hES2由来3iL hESCのNANOG発現量がhES2hESCに比し、高いことを示している。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 J)は、hES2由来3iL hESCをSCIDマウスに注射すると、奇形腫が形成されることを示している。示されているのは、3種の胚性胚葉の全てを表す組織を含有する奇形腫切片である。目盛り尺は50μmを表す。 K)は、hES2由来3iL hESCが培養2ヶ月後に正常な核型を呈することを示している。 L)は、hES2由来3iL hESCにおけるエピブラスト特異的遺伝子の発現量を示す。エピブラスト特異的遺伝子は、hESCに比し、3iL hESCでは上方制御されている。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 M)は、ヒトMRC5線維芽細胞に山中の4種のリプログラミング因子(OCT4、SOX2、KLF4及びMYC)並びにpMX−GFPを用いてレトロウイルスにより形質導入したグラフを示す。3週間後、細胞を標準培地又は3i+LIF培地で処理した。1週間の処理後、TRA−1−60コロニー数をカウントした。 N)は、3iL処理(M参照)によりTRA−1−60陽性で同時にGFP陰性のコロニー数が増加したことから、3iL処理後、質の高いiPSCコロニーが得られたことを示している。 O)は、3iL条件で培養したiPSCにおいてウイルス性導入遺伝子の下方制御の増大が認められる定量的PCRデータを示す。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 P)は、3iL 培養条件で6継代後のこれまでに特性化されたヒトiPSCの形態を示す。目盛り尺は200μmを表す。 Q)は、多能性マーカNANOG及びOCT4並びに細胞表面マーカTRA−1−60及びTRA−1−81についてヒトiPSC及び6継代にわたって3iL条件で培養した同細胞を染色した結果を示す。目盛り尺は200μmを表す。 R)は、3iL hiPSCにおけるエピブラスト特異的遺伝子の発現量を示す。エピブラスト特異的遺伝子は、iPSCに比し、3iL hiPSCでは上方制御されている。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 図7は、3iL hESCのトランスクリプトームが生体内着床前エピブラストと類似していることを示す図である。A)は、hESC及び3iL hESCにおけるNANOG、KLF4、TBX3、DPPA3及びGAPDHの正規化されたRNA−Seqリード数を示す。黒線は3回の反復実験の平均値を示し、個々の反復実験値はそれぞれ灰色の陰影で示されている(覆われている)。リード数は全ての繰り返し実験についてマッピングされたリードの数によって正規化した。座標はヒトゲノムバージョンhg19に対するものである。 B)は、着床前胚における3iL特異的遺伝子の発現のhESC特異的遺伝子の発現との比較を示す。示されているのは対応のないt−検定による検定統計量であり、正の値は3iL 特異的遺伝子がhESC特異的遺伝子よりも高い発現を示し、負の値の場合はその逆である。有意差(多重検定により調整されたp値<0.05)は*で表されている。データはテスト前の試料及び遺伝子ごとに正規化された。 C)は、3iL hESCとhESCとの間で発現が異なる遺伝子に関する着床前胚盤胞及びhESCからの単一細胞遺伝子発現を示すヒートマップである。このセットの遺伝子において階層的クラスタ分析法によりクラスタ分析を行った。遺伝子は胚盤胞とhESCとの間の平均発現量の倍率変化によって分類されている(黒から白への目盛り尺)。発現が異なる遺伝子(3iL hESC対hESC)は黒線による印がついている。 D)は、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)の結果を示す。遺伝子は3iL hESCとhESCとの間の発現量の倍率変化に従ってランク付けされる。示されているのは、hESC及びヒトエピブラストで発現が異なる遺伝子についての濃縮である。3iL hESCで発現の増大を示す遺伝子はエピブラスト特異的遺伝子のセットで濃縮される(点線、ウイルコクソンの順位和検定;p値=1.03e−48)のに対し、従来型hESCで発現の増大を示す遺伝子はヒトエピブラストに比しhESCで発現の増大を示す遺伝子のセットで濃縮される(実線p値=1.61e−20)。 E)は、3iL hESC、hESC、ヒト着床前エピブラスト(単一細胞データからの平均)、0継代目のhESC(単一細胞データからの平均)、10継代目のhESC(単一細胞データからの平均)におけるhESC特異的遺伝子及び3iL hESC特異的遺伝子の正規化された発現を示す。p値は対応のあるt−検定を用いて計算した。遺伝子数は、3iL hESC及びhESCにおいて発現が異なり、発現が前もって得られている遺伝子に対応する。 F)は、hESCに比して3iL hESCで上方制御されるエピブラスト特異的遺伝子の実時間qPCR検証の結果を示す。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 図8は、3iL培養hESCにおける天然エピブラストマーカ及びGATA6の発現を示す図である。A)は、hESCに比し3iL hESCにおいて発現の増大を示す遺伝子とhESCに比しエピブラスト細胞において発現の増大を示す遺伝子との重複を示したものである。有意度のスコアはフィッシャーの直接確率検定を用いて求めた。 B)は、hESCに比し3iL hESCにおいて発現の低下を示す遺伝子とhESCに比しエピブラスト細胞において発現の増大を示す遺伝子との重複を示したものである。有意度のスコアはフィッシャーの直接確率検定を用いて求めた。 C)は、hESCに比し3iL hESCにおいて発現の低下を示す遺伝子とhESCに比しエピブラスト細胞において発現の低下を示す遺伝子との重複を示したものである。有意度のスコアはフィッシャーの直接確率検定を用いて求めた。 D)は、hESCに比し3iL hESCにおいて発現の増大を示す遺伝子とhESCに比しエピブラスト細胞において発現の低下を示す遺伝子との重複を示したものである。有意度のスコアはフィッシャーの直接確率検定を用いて求めた。 E)は、hESC及び3iL hESCの単一細胞遺伝子発現分析の結果を示す。POU5F1の発現量はhESCと3iL hESCとの間で同等である。3iL hESCではNANOGをはじめとするエピブラスト遺伝子の発現が増大しており、これらのデータから3iL hESCではこれらの遺伝子が共発現していることが明らかである。分化遺伝子はhESC及び3iL hESCの両者で低く、同程度の量で発現されている。 F)は、hESC及び3iL hESCにおける正規化されたRNA−Seqリード数を示すGATA6のゲノム遺伝子座を示す。黒線は3回の生物学的反復実験の平均値を示し、個々の反復実験値はそれぞれ灰色の陰影で示されている(覆われている)。リード数は全ての繰り返し実験についてマッピングされたリードの数によって正規化した。座標はヒトゲノムバージョンhg19に対するものである。 G)は、3iL hESC及びhESCにおけるhESC特異的遺伝子についての対数変換FPKM値を示す。有意性は対応のあるウイルコクソン検定により求めた。 H)は、外胚葉、内胚葉及び中胚葉に関連する遺伝子の定量的PCR検証の結果を示すものである。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 I)は、3iL hESCにおけるGATA6発現の定量的PCR検証の結果を示すものである。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である。 J)は、3iL hESC及びhESCにおけるGATA6のタンパク質レベルを示すものである。β−アクチンを負荷対照とした。 K)は、GATA6及びNANOGの免疫蛍光共染色により3iL hESCにおけるこれら2タンパク質の共発現が明らかにされることを示している。目盛り尺は200μmを表す。 L)は、3iL hESC及びhESCにおけるNANOG及びGATA6の共発現のFACS分析の結果を示す。アイソタイプ対照は二次抗体のみで染色されている。 M)は、3iL hESC及びhESCにおけるOCT4及びGATA6の共発現のFACS分析の結果を示す。アイソタイプ対照は二次抗体のみで染色されている。 N)は、3iL hESC及びhESCにおけるTRA−1−60及びGATA6の共発現のFACS分析の結果を示す。アイソタイプ対照は第二抗体のみで染色されている。 O)は、3iL hESC及びhESCにおけるOCT4及びNANOGの結合プロフィールを示したものである。リード数はマッピングされたリードの全数によって正規化した。 図9は、3iL hESCの系統的エピゲノム情報解析の結果を示す図である。A)は、hESCに比し3iL hESCにおいてプロモータにH3K4me3、H3K27ac及びH3K27me3の増加(点線)又は減少(実線)を示す遺伝子の濃縮を示すGSEAプロットを示すものである。遺伝子はカフディフ(cuffdiff)検定統計量によって順序付けられている。3iL hESCにおいて発現の増大を示す遺伝子は、H3K27acの増大(ウイルコクソンの順位和検定p値=8.83e−263)、H3K4me3の増大(p値=2.4e−69))及びH3K27me3の減少(p値=4.90e−92)を示す遺伝子のセットにおいて濃縮されている。3iL hESCにおいて発現の低下を示す遺伝子は、H3K27acの減少(p値<1.0e−300)、H3K4me3の減少(p値=3.38e−193))及びH3K27me3の増大(p値=1.44e−12)を示す遺伝子のセットにおいて濃縮されている。 B)は、DESeq2を用いて評価された、発現の異なる遺伝子のプロモータにおけるヒストン修飾についての正規化されたリード数の倍率変化を示す。遺伝子はカフディフ検定統計量によってランク付けされており、遺伝子ごとに正規化されている。 は、0継代目のhESC特異的遺伝子及びエピブラスト特異的遺伝子のプロモータ(転写開始部位(TSS))におけるヒストン修飾についての正規化されたリード数の倍率変化を示す。有意性はウイルコクソンの順位和検定を用いて評価された。 D)は、3iL hESC及びhESCにおけるH3K4me3、H3K27ac及びH3K27me3のChIP−Seqプロフィールを示す。強調表示された領域は、観察されたヒストンメチル化プロフィールの変化を表す。TBX3、ZNF600、KLF5及びHOXBクラスタの場合、強調表示された領域は、3iL hESCにおけるH3K27acの増加及び/又はH3K27me3の減少を示す遺伝子座を表示した。C19orf66及びOLFM2の場合、強調表示された領域は、3iL hESCにおけるH3K27acの減少及び/又はH3K27me3の増加を示す遺伝子座を表示した。リード数はマッピングされたリードの全数によって正規化した。 図10は、胚盤胞細胞及びhESCにおける選択された天然のエピブラストマーカの発現を示す図である。A)は、胚盤胞、P0(0継代目)のhESC及びP10(10継代目)のhESCにおける3iL hESCのH3K27ac増加(TBX3、KLF5及びZNF600)を示す遺伝子並びに3iL hESCのH3K27me3増加(C19orf66及びOLFM2)を示す遺伝子についての平均FPKM値を示す。 図11は、3iL hESCにおける新規NANOG及びOCT4結合部位を示す図である。A)は、3iL特異的NANOG結合事象がもとのままのNANOG結合事象よりも最も近い遺伝子に対して有意により遠位にあることを示している。有意性はウイルコクソンの順位和検定を用いて評価された。p値=1.19e−166 B)は、3iL hESC及びhESCにおけるOCT4、NANOG及びSTAT3の結合プロフィールを示したものである。強調表示された領域は、3iL hESCにおけるNANOG結合の増加を示す遺伝子座を表示した。リード数はマッピングされたリードの全数によって正規化した。 図12は、3iL hESCにおける多能性転写ネットワークのリモデリングを示す図である。A)は、すぐ近くに結合するNANOG、OCT4又はp300の増加(点線)又は減少(実線)を示す遺伝子の濃縮を示すGSEAプロットを示すものである。遺伝子はカフディフ(cuffdiff)検定統計量によって順序付けられている。3iL hESCにおいて発現の増大を示す遺伝子は、NANOG結合(ウイルコクソンの順位和検定p値=3.97e−38)、OCT4結合(p値=4.43e−11)及びp300結合(p値=8.81e−24)の増加を示す遺伝子のセットにおいて濃縮されている。3iL hESCにおいて発現の減少を示す遺伝子は、NANOG結合の減少(p値=7.16e−06)及びOCT4結合の減少(p値=5.5e−08)を示す遺伝子のセットにおいて濃縮されている。 B)は、3iL hESC及びhESCにおけるOCT4、NANOG及びSTAT3の結合プロフィールを示したものである。強調表示された領域は、3iL hESCにおけるOCT4及び/又はNANOGの増加を示す遺伝子座を表示した。リード数はマッピングされたリードの全数によって正規化した。 C)は、3iL hESCにおける転写回路の再構成を示す。3iL誘導回路は、3iL hESCにおいて上方制御され、天然のエピブラストにおいて発現される遺伝子、特にTBX3、DPPA3及びKLF5を含む。POU5F1及びSOX2などの遺伝子からなるコアの多能性回路ネットワークは、依然として新しいネットワークの一部であり、3iLネットワークは再構成されるが置き換えられるものではないことを強調している。また、STAT3はこのネットワークの遺伝子に結合する(示された矢印は有意度スコア>150でピークに達する)ことから、外部シグナル伝達ネットワークが転写ネットワークと協働して3iL hESCにおける天然のエピブラストの特徴を誘導する可能性があることが示唆される。 D)は、3iLが天然の着床前エピブラスト状態によりよく似ているLIF依存性hESC状態を支持することを示している。各小円は転写因子又は細胞型特異的因子を表している。円間の実線又は点線は異なる多能性状態を調節する際のこれらの因子間の相互作用を示している。明から暗への灰色の勾配は、3iL hESC及びhESCのヒト胚盤胞の多能性エピブラスト細胞への近接を表している。 図13は、3iL hESCにおける発生遺伝子の誘導が3iL hESCの分化を増強することを示す図である。A)は、3iL hESCにおける胚体外系譜遺伝子の上方制御を示す。初期栄養膜マーカCDX2及びBMP4並びに胚盤葉下層マーカGATA4及びGATA6の発現は、hESCに比し3iL hESCでは上方制御された。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である(n=3)。 B)は、3iL hESCにおける内胚葉系中胚葉遺伝子の上方制御を示す。内胚葉系中胚葉マーカT、MIXL1及びEOMESの発現は、hESCに比し、3iL hESCでは上方制御された。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である(n=3)。 C)は、3iL hESCがアクチビンA及びIDE−1処理で内胚葉系譜に沿って効率的に分化することを示している。3iL hESC及びhESCを、マトリゲル被覆皿に同様の密度で接種し、アクチビンA及びIDE−1で処理して内胚葉系譜に向けて分化させた。これらの細胞は、処理の5日目に固定し、胚体内胚葉マーカSOX17及びFOXA2について染色した。SOX17及びFOXA2陽性細胞のクラスタは検出された3iL hESC試料であったが、hESC試料ではこれらのマーカについて陽性に染色される細胞はほとんどなかった。 D)は、アクチビンA及びIDE−1で処理されたhESC試料に比して3iL hESC試料では内胚葉マーカがより強く誘導されることを示している。内胚葉マーカSOX17、FOXA2、HNF4A及びCXCR4の遺伝子発現は、hESC試料に比して3iL hESC試料では極めて高度に上方制御された。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である(n=3)。 E)は、3iL hESC及びhESCがアクチビンA/FGF2/BMP4処理で内胚葉系譜に沿って効率的に分化することを示している。内胚葉系譜に向けて分化させためにマトリゲル被覆皿に同様の密度で接種し、アクチビンA/FGF2/BMP4で処理した3iL hESC及びhESC。これらの細胞は、処理の5日目に固定し、胚体内胚葉マーカSOX17及びFOXA2について染色した。hESC試料中の細胞に比し、3iL hESC試料ではより多くの細胞がより多くの量のFOXA2を発現している。 F)は、アクチビンA/FGF2/BMP4で処理したhESC試料に比し、3iL hESC試料では内胚葉マーカがより強く誘導されることを示している。内胚葉マーカFOXA2、HNF4A及びCXCR4の遺伝子発現は、hESC試料に比して3iL hESC試料では極めて高度に上方制御された。全ての値は独立した3実験の平均値±s.d.である(n=3)。
第一の態様において、本発明は、未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持する方法であって、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、AMPK及び/又はBMPシグナル伝達の二重阻害剤、並びにLIFを含む培地でその多能性幹細胞を培養する工程を含む方法に関係している。
一実施態様において、上記多能性幹細胞は人工多能性幹細胞である。
別の実施態様において、上記培地は馴化培地である。
別の実施態様において、この培地はフィーダー細胞を含むことができる。別の実施態様において、この培地はフィーダー細胞を含まないものとすることができる。
上記多能性幹細胞はマトリクス上で培養することができる。このマトリクスは基底膜マトリクスとすることができる。一実施態様において、このマトリクスは、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、ヘパラン硫酸、合成生体高分子又は合成ペプチドの1種以上を含む細胞外マトリクスとすることができる。
この多能性幹細胞は胚性幹細胞とすることができる。この胚性幹細胞はヒトのものであることが好ましい。しかしながら、他の種からの幹細胞が適している場合があることも理解されたい。例えば、マウス胚性幹細胞又は霊長類の胚性幹細胞が適している場合もある。
本明細書に記載した方法は、未分化状態で多能性幹細胞をさらに継代する工程を含むことができる。
MEK阻害剤は、トラメチニブ(GSK1120212)、セルメチニブ、ビニメチニブ即ちMEK162、PD−0325901、コビメチニブ即ちXL518、CI−1040、PD98059、PD184352、U0126又はこれら既存の化合物の任意の誘導体からなる群から選ぶことができる。
このMEK阻害剤は、約0.1乃至5μM、約0.2乃至4μM、約0.3乃至3μM、約0.4乃至2μM及び約0.5乃至1μMの濃度とすることができる。一実施態様において、このMEK阻害剤は、約0.5乃至1μMの濃度とすることができる。
GSK3阻害剤は、6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(BIO)、CHIR−99021、SB216763、CHIR−98014、TWS119、IM−12、1−アザケンパウロン、AR−A014418、SB415286、AZD1080、AZD2858、インジルビン及びこれらの化合物の任意の誘導体から選ぶことができる。
このGSK3阻害剤は、約0.5乃至5μM、約0.75乃至4μM、約0.8乃至3μM、約0.85乃至2μM、約0.9乃至2μM、約0.95乃至2μM、約1乃至2μM及び約1.5乃至2μMの濃度とすることができる。一実施態様において、このGSK3阻害剤は、約1乃至2μMの濃度とすることができる。
BMP4シグナル伝達及びAMPK阻害剤は、6−[4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)フェニル−3−ピリジン−4−イルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(ドルソモルフィン)、LDN−193189、LDN212854、K02288、A−769662、アカデシン、フェンホルミン及びこれらの化合物の任意の誘導体から選ぶことができる。
このBMP4シグナル伝達及びAMPK阻害剤は、約0.5μM、約1μM、約1.25μM、約1.5μM、約1.75μM及び約2μMの濃度とすることができる。一実施態様において、このAMPK阻害剤は、約2μMの濃度とすることができる。
LIFは約1乃至20ng/ml、約2乃至20ng/ml、約2乃至18ng/ml、約3乃至16ng/ml、約4乃至14ng/ml、約5乃至12ng/ml、約6乃至10ng/ml、約7乃至10ng/ml、約8乃至10ng/mlの濃度とすることができる。一実施態様において、このLIFは約8乃至10ng/mlの濃度とすることができる。
MEK阻害剤、GSK3阻害剤、AMPK及び/又はBMPシグナル伝達の二重阻害剤、並びにLIFを含む上記の培地は、さらに後成的修飾剤、例えば、後成的阻害剤を含むことができる。後成的阻害剤としては、DNAメチル基転移酵素阻害剤及びヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、例えば、RG108、BIX、DNZEP、バルプロ酸、酪酸ナトリウム及び5−アザ−2’−デオキシシチジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
別の態様において、本明細書に記載した方法によって作製された多能性幹細胞が提供される。この本明細書に記載した方法によって作製された多能性幹細胞は、NANOG、TRA−1−60、OCT4、TRA−1−81、SOX2、LIN28、PRDM14及びZFP42からなる群から選ばれる少なくとも1種の多能性マーカを発現することができる。別の実施態様において、本明細書に記載した多能性幹細胞は、DPPA3、KLF4、KLF5、TBX3、DNMT3L、AHNAK、ARRB1、CLEC4D、GGT5、IL6R、LIMCH1、MFAP3L、SLC25A16、SMYD2、SOAT1及びZNF600からなる群から選ばれる少なくとも1種のエピブラスト様遺伝子発現マーカを発現することができる。
別の実施態様において、本明細書に記載した多能性幹細胞は、CDX2、BMP4、GATA4及びGATA6からなる群から選ばれる少なくとも1種の胚体外マーカを発現することができる。
別の実施態様において、本明細書に記載した多能性幹細胞は、T、EOMES又はMIXL1から選ばれる少なくとも1種の内胚葉系中胚葉マーカを発現することができる。
本明細書に記載した多能性幹細胞は、本明細書に記載の方法に従って培養されなかった細胞に比して発現量が増加した少なくとも1種のマーカを含むことができる。
この少なくとも1種のマーカの発現量は、RNA配列決定法又は実時間PCR法によって測定することができる。
一実施態様において、この少なくとも1種のマーカの発現量は、本明細書に記載の方法に従って培養されなかった細胞に対して少なくとも約1.5乃至5倍増加させることができる。
一実施態様において、この少なくとも1種のマーカはNANOGであり、その発現量は本明細書に記載の方法に従って培養されなかった細胞に対して1.5乃至2倍増加させることができる。
一実施態様において、内胚葉、神経又は中胚葉細胞への、本明細書に記載した多能性幹細胞の分化は、本明細書に記載の方法に従って培養されなかった細胞の分化に比して増強される。
一実施態様において、未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持するための培養培地であって、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、AMPK阻害剤及びLIFを含む前記培養培地も提供する。
別の態様において、多能性幹細胞から系譜特異的細胞を生じさせる方法であって、a)本明細書に記載の方法に従って未分化状態で多能性幹細胞を培養する工程、b)この未分化多能性幹細胞を単離する工程及びc)この単離した多能性幹細胞を系譜特異的な細胞に分化させるのに適した培養培地においてこの単離した未分化多能性幹細胞を培養する工程を含む方法も提供する。
一実施態様において、この系譜特異的な細胞は体細胞又はオルガノイド細胞とすることができる。別の実施態様において、この系譜特異的な細胞は内胚葉系譜細胞とすることができる。
別の実施態様において、上記体細胞は、1種若しくは数種の体細胞系譜細胞又は完全に成熟した分化体細胞へ自己複製又は分化することができる委任前駆細胞とすることができる。
別の態様において、未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持するための、本明細書に記載した方法において用いられるキットであって、本明細書に記載した培養培地及び使用説明書を含むキットを提供する。
実験の項
材料及び方法
細胞培養
本研究にはhESC H1株(WA−01、28継代目)を使用した。TeSR1(Stem cell technologies(ステムセルテクノロジーズ))におけるhESCのルーチン培養のために、細胞をマトリゲル(BD)上でフィーダー無しで培養した。細胞培地は毎日交換した。hESCは、1mg/mlのディスパーゼ(ステムセルテクノロジー)と共に5乃至7日毎に継代培養した。3iL hESC培養培地は、TeSR1中1μMのPD0325901(Sigma(シグマ))、2μMのBIO(シグマ)、2μMのドルソモルフィン(シグマ)及び10ng/mlのヒトLIF(Millipore(ミリポア))を含む。3iL培地は新規に調製し、2週間を超えることなく4℃で保存する。3iL条件での処理のため、TeSR1中で培養したhESCを接種後48時間に3iLで処理する。その後、細胞をマイトマイシンC不活化マウス線維芽細胞上で継代培養する。細胞はTrypLE(Life Technologies(ライフテクノロジーズ))を用いて単一細胞に分離する。3iL培地は毎日新しくし、細胞を集密化時に継代培養する。ROCK阻害剤チアゾビビンを最終濃度1μMで加えて最初の数継代の間の細胞の生存を増強する。全ての実験に用いる3iL hESCは、新しい培養条件に十分に順化させるために少なくとも10継代にわたって培養した。
小分子化合物処理
hESCをディスパーゼで分離し、接種後48時間に処理を開始する。単一化学処理及び組み合わせ化学処理のために、以下の小分子を以下の最終濃度で用いた:0.5μMのA83−01(Stemgent(ステムジェント))、2μMのBIO(シグマ)、3μMのCHIR99021(ステムジェント)、2μMのドルソモルフィン(シグマ)、8μMのホルスコリン(ステムジェント)、2μMのIDE−1(ステムジェント)、0.5μMのPD153035(シグマ)、1μMのPD173074(シグマ)、1μMのPD0325901(シグマ)、5μMのピフィスリン−α(シグマ)及び1μMのレプソックス(シグマ)。全ての小分子はDMSO中で再構成される。PI3K経路阻害のために、LY294002(シグマ)を10μMの最終濃度で用いた。
RNA抽出、逆転写、定量的実時間PCR及びRNA配列決定(RNA−Seq)プレパレーション
発現分析のために、クロロホルムと共にトリゾール試薬(インビトロジェン)を用いて全RNAを抽出し、イソプロパノールで沈殿させた。沈殿させたRNAを4℃13,000rpmで10分間遠心した。このRNAペレットを70%エタノールで洗浄し、次いでDEPC処理した水(AMBION(アンビオン))で元に戻した。DNアーゼI(アンビオン)を用いてDNA夾雑物を37℃で30分間消化した。DNアーゼI酵素を70℃で10分間加熱不活化する。ナノドロップ2000(Thermo Scientific(サーモサイエンティフィック))を用いてRNA濃度を測定した。500ngのRNAを用いてスーパースクリプトIIキット(Invitrogen(インビトロジェン))による各逆転写反応を行い、その後の定量分析のためのcDNAを作製した。ABIプリズム7900配列検出システムを用いてSYBRグリーンマスターミックス(KAPA)により定量的実時間PCR(qPCR)分析を行った。RNA−Seqライブラリ調製のために、全RNAをさらにカラム(ピュアリンクRNAミニキット、アンビオン)により精製した。メーカーの(TruSeqRNA試料調製キットv2、Illumina(イルミナ))に従って4μgの全RNAを用いてRNA−Seqライブラリを調製した。手短に言えば、ポリTオリゴ付着磁気ビーズによる精製を2回繰り返してmRNAを得た。次に、このmRNAを断片化して第1及び第2鎖cDNA合成に付した後、末端修復、アデニル化、アダプタを結合させ、最後に15サイクルのPCRにかけた。試料を多重化し、シングルリード76bp(ハイセック2000、イルミナ)を塩基配列を決定した。
クロマチン免疫沈降
クロマチン免疫沈降(ChIP)をこれまでに報告されている方法(カーワッキ−ネイシウス(Karwacki−Neisius)ほか、2013年)により実施した。簡単に述べると、細胞を1%ホルムアルデヒドを用い10分間室温で固定した後、グリシンを最終濃度0.2Mまで添加してホルムアルデヒドを不活化した。細胞溶解液を超音波処理し、OCT4(abcam abl9857)、Nanog(R&D AF1997)、STAT3(セルシグナリング(Cell Signaling)9145)、p300(サンタ・クルス(Santa Cruz)sc585)、H3K4me3(ミリポア04−745)、H3K27ac(abeam ab4729)又はH3K27me3(ミリポア、07−449)に対する抗体と結合させたプロテインG・ダイナル・マグネチック・ビーズを用い、クロマチン抽出物を4℃で一夜免疫沈降させた。NEBNext(登録商標)ChIP−Seqライブラリ・キット(NEBバイオラボ)を用い、メーカーの使用説明書に従ってクロマチン免疫沈降塩基配列決定(ChIP−Seq)ライブラリを作製し、ハイセック2000システム(イルミナ)により塩基配列を決定した。
単一細胞遺伝子発現解析
単一細胞遺伝子発現に引き続いて、バイオマーク・システム・アドバンスト・デベロップメント・プロトコル41で低ROXのSsoFastエバグリーン・スーパーミックスを用い、単一細胞遺伝子発現データを収集した。簡単に述べると、BD FACSAria II(BD Bioscience(BDバイオサイエンス))を用いて逆転写特異的標的増幅溶液(ライフ・テクノロジーズ)を入れた96穴PCRプレートにhESC及び3iL培養hESCをそのまま分取した。逆転写、20サイクル・プレ増幅及びエキソヌクレアーゼ1(NEB)処理を行った後、プレ増幅産物を7倍希釈した。増幅単一細胞試料は、バイオマーク・システム(Fluidigm(フルイディグム))で48×48ダイナミック・アレイを用い、低ROXの2×SsoFastエバグリーン・スーパーミックス(Bio−Rad(バイオ−ラド))及び各qPCRプライマを用いて解析した。バイオマーク実時間PCR解析ソフトウェア(フルイディグム)を用いて閾値交差(Ct)値を計算した。
生体外分化
胚様体形成を介した自発的分化を起こさせるために、3iL hESCをTrypLEにより分離し、低接着の10cm皿中で懸濁培養した。2乃至3週間後、胚様体をゼラチン被覆プレートに移し、さらに6日間培養した。成長因子により分化を誘導するために、細胞をマトリゲル上に接種し、種々の系譜に沿った分化を起こさせるための以下のそれぞれの培地で処理した:胚体内胚葉分化のための、100ng/mlのアクチビンAを含有する2%FBS(GIBCO)含有RPMIアドバンスト培地(GIBCO)、中胚葉分化のための、100ng/mlのBMP4及び4ng/mlのbFGFを含有する20%KSR(GIBCO)含有F12 DMEM(GIBCO)、栄養外胚葉分化のための、100ng/mlのBMP4及び1μMのPD0325901を含有する20%KSR(GIBCO)含有F12 DMEM(GIBCO)並びに神経外胚葉分化のための、10μMのSB431542及び2μMのドルソモルフィンを含有する0.5×N2及びB27サプリメントが補充された神経用基礎培地。
奇形腫の形成
標準培地中で培養したhESC又は3iL hESCをTryp1Eで分離し、30%マトリゲル/F12 DMEM(GIBCO)中1×10細胞/mlの濃度で再懸濁した。Rock阻害剤チアゾビビン(ステムジェント)を標準培地中のhESC培養物に0.5μMの最終濃度で加えた。この細胞懸濁液200μlをアベルチンで麻酔したSCIDマウスの背側側腹に注射した。6乃至8週間後に奇形腫が形成されたので、これを外科的に切り取り、ブーアン液で固定し、パラフィンで包埋した。これを切片にし、マロリー4色染色法で分析した。
ウエスタンブロット分析
プロテアーゼ阻害剤カクテル(Merck(メルク))を補充した溶解緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH8.0、150mMのNaCl、10μMのZnCl、0.5%のノニデットP−40、5%のグリセロール)を用いてhESCを溶解した。タンパク質濃度はブラッドフォードアッセイキット(バイオラド)で測定した。50μgの細胞溶解液を10%SDS−ポリアクリルアミドゲルで分離し、二フッ化ポリビニリデン膜(ミリポア)に移した。0.1%トウィーン20含有PBS(0.1%PBST)に溶解した5%スキムミルクでこの膜をブロックした。ブロック後、ブロットを抗OCT4(アブカム)、抗NANOG(R&D)、GP130(サンタ・クルス)、抗STAT3(セルシグナリング)、抗ホスホTyr705 STAT3(セルシグナリング)又は抗GAPDH(サンタ・クルス)一次抗体と共に一夜インキュベートした後、0.1%PBSTで洗浄し、それぞれセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ウサギIgG(サンタ・クルス)又はHRP結合抗ヤギIgG(サンタ・クルス)と共にインキュベートした。PBSTで洗浄後、ウエスタンブロッティングルミノール試薬(サンタ・クルス)を用いてシグナルを検出した。
免疫蛍光染色
hESC又は分化培養物をパラホルムアルデヒドの4%PBS溶液で固定した。1%トリトンX−100/PBSで30分間透過化処理した後、以下に対する一次抗体を用いて免疫染色を行った:NANOG(R&Dシステム)、OCT4(アブカム)、TRA−1−60(サンタ・クルス)、TRA−1−81(サンタ・クルス)、PAX6(Covance(コバンス))、GATA4(サンタ・クルス)、SOX17(アブカム)又はp57kip2(Neomarkers(ネオマーカーズ))。二次抗体として、アレクサフルオール488/546抗マウスIgM、アレクサフルオール488/546抗ヤギIgG及びアレクサフルオール488/546抗マウスもしくは抗ウサギIgG(インビトロジェン)を用いた。核の染色にはDAPI又はヘキスト(インビトロジェン)を用いた。
免疫染色細胞のフローサイトメトリー分析
3iL又は標準培地で培養した細胞を採取し、80%エタノールで一夜固定した。氷上でトリトンX−100の0.5%PBS溶液200μlに10分間かけて細胞を溶解した。その後、細胞を1%BSAでブロックし、氷上でTRA−1−60(サンタ・クルス)、TRA−1−81(サンタ・クルス)、NANOG(R&D)又はOCT4(アブカム)に対する抗体により2時間かけて染色した。細胞は二次抗体による染色の前後で3回洗浄した。アイソタイプ対照として二次抗体による染色のみを行った。細胞の分析はBD LSR IIフローサイトメーターシステムを用いて実施した。収集したデータはFlowJo vxにより分析した。
染色体分析
細胞をコルセミドで処理して核分裂を停止させ、標準的低張処理及びメタノール:酢酸(3:1)固定して採取した。標準的空気乾燥法によりスライドを作製し、G−バンド染色体分析を行った。
バイオインフォマティクス分析
パラメータ−b2−極センシティブを有するTopHat2バージョン2.0.9を用いてRNA−Seqリードをヒトゲノムアセンブリhg19にマッピングし、さらにエンセンブル(GRCh37.69)からのトランスクリプトームアノテーションを有する−GTFオプションを使用した。カフディフ(cuffdiff)バージョン2.1.1を用いて差次的発現を評価した。カフディフ検定統計量を用いて遺伝子をランク付けし、遺伝子セット濃縮分析を行った。オプション−b、−−マルチ・リード・コレクト、−gを有するカフリンクス・バージョン2.1.1を用いて各試料の発現データを評価し、リピートマスカーアノテーションを用いてrRNA、tRNA、snRNA及びsrpRNA遺伝子をマスクした。着床前ヒト胚からの単一細胞RNA−Seq発現データを3iL及びTesr RNA−Seqデータと合わせてダウンロードした後、クオンタイル正規化した。全ての試料の全ての遺伝子についての発現値をさらに各遺伝子の発現の合計値で除した。図4Bについての平均発現量の差はmulttestパッケージを用いて計算し、検定統計量はt−テストからのものであり、p値は多重検定補正している。図4Cの遺伝子は、さらに遺伝子及び試料のサブセットに関して正規化した。特定のゲノム遺伝子座におけるRNA−Seqデータの可視化のために、リードをマップしたリードの数によって正規化した。
Bowtie(0.12.5)を用いてhg19基準ゲノムに対してCHIP−Seqリードをマッピングし、MACS(1.4.0)を用いてピーク呼び出しを行った。ピークは最も近いTSSと関連付けられた。リードは、現在アノテーションされている(Ensembl version 69(エンセンブル バージョン69)、総数:19,978)全てのコーディング遺伝子について転写開始部位周辺の4kbウインドウ内でカウントした。TSSが多数ある場合、最大数のPolII ChIP−Seqリードを有するTSSのみを、これがhESCにおけるそれぞれの遺伝子の主要なTSSであると仮定して、選んだ。ヒストン修飾及び転写因子占有状態の対数倍の変化をDESeq2を用いて計算した。3iL hESCとhESCとの間で最大倍率変化を有するトップ1000の遺伝子座を用いてChIP−SeqデータについてのGSEAプロットを作成した。標準設定値を用い、Rにおいてボックスプロットを作出した。全てのバイオインフォマティクス分析はRバージョン3.0及びバイオコンダクタバージョン2.12を用いて実施した。
受託番号
RNA−Seq及びChIP−Seqデータは、アレイエクスプレスデータベース(www.ebi.ac.uk/arrayexpress)において受託番号E−MTAB−2031(RNA−Seq)、E−MTAB−2041(ヒストン修飾)、MTAB−2042(STAT3)及びE−MTAB−2044(OCT4、NANOG、p300、インプツト・コントロール)で利用可能である。
実施例1
小分子同士の組み合わせは特有なhESCの状態を誘導する
生体内の着床前エピブラスト状態により近い可能性のある代替的なhESC状態を誘導するために、8つのシグナル伝達経路を標的とする11種の小分子を用いてNANOGの発現を増加させる条件をスクリーニングした(図1A)。NANOGは、着床前胚の内細胞塊中の胚盤葉下層からの多能性エピブラストの分離において決定論的マーカとして使える。マウス胚盤胞におけるNANOGのレベルは着床時に減少し、NANOGレベルが多能性の種々の状態を反映することが示唆される。また、NANOGの発現はhESCに比し、ヒト天然の着床前エピブラストにおいて強化される。まず、これらの阻害剤の影響を個々に調べた。これらの小分子の多くにより処理した細胞はhESCマーカについては染色陽性であったが、形態の変化を示さず、NANOG転写産物の上方制御も誘導しなかった(図1B乃至C)。従って、その後、これらの分子の組み合わせを用いた(図1D)。個々の分子の使用の場合と対照的に、数種の組み合わせによる処理の結果、hESCの形態及びNANOGの上方制御はいずれも変化を示した(図2A、図1E)。特に、組み合わせ21、22、23及び24はNANOG転写産物の1.5乃至2.0倍の増加を誘導した。POU5F1レベルは、これらの組み合わせでは概して不変であり(図2A)、この細胞が依然として多能性であることが示唆された。
次に、化学物質の組み合わせ21乃至24を調べてこれらがhESCの自己複製を安定的に支持することができるかを明らかにした。しかしながら、上記条件の中3条件について増殖の強い阻害が認められたので、最初の継代後に生存するコロニーはほとんど無かった。組み合わせ22(本明細書で3iと称するPD03/BIO/DOR)で処理したhESCのみが、マウス線維芽細胞フィーダー上に小さく密なコロニーを形成することができた(図2B)。しかしながら、コロニー数はその後の各継代で減少したことから、自己複製は阻害されることが分かる(図2C乃至D)。これらの細胞の形態がマウス胚幹細胞(mESC)の形態に類似しているので、mESCの自己複製を促進するシグナル伝達経路の活性化が細胞の生存を改善することができるかどうかを調べた。LIFシグナル伝達は、mESC、ICM及びマウス多能性諸状態間の変換の維持における重要なシグナル伝達経路である。驚くべきことに、LIFを添加すると、3i hESCの自己複製の阻害が救われ、これらの細胞は30継代を超えて安定的に増殖することが可能となった(図2C乃至D)。これらの3i+LIF処理hESC(本明細書では3iL hESCと称する)は、TeSR1培地で培養したhESC(本明細書ではhESCと称する)に比し、より小さくてより密なコロニーを形成する(図2E)。hESCとは対照的に、3iL hESCはROCK阻害剤を添加しなくても単一細胞としてこの継代を生き延びることができる(図2F)。上記3種の阻害剤の組み合わせ使用は、3iL hESCの状態を維持するのに重要である。というのは、個々の化学物質を培地から除くとこの細胞を維持することができないからである(図1G)。要するに、3種の阻害剤及びLIFを適用すると、従来のhESCと異なるhESCの効率的な増殖が可能となる。
実施例2
3iL hESCにおける活動性LIFシグナル伝達
LIFシグナル伝達に依存しない従来型のhESCと対照的に、LIFは3iL hESCの自己複製に不可欠であるように思われる。3iL hESCにおけるLIFの役割をさらに調べるために、LIFシグナル伝達経路を標的とするJak阻害剤(inh)を用いた。3iL hESCをJak阻害剤で処理すると、多能性マーカ発現の減少及びコロニー数の強い減少が誘導された(図3A乃至B)。NANOG及びLIFシグナル伝達感受性遺伝子KLF4及びSOCSの遺伝子発現は低下した(図3C)。これらの結果から、さらに、LIFシグナル伝達はhESCの維持に必要とされることが分かる。
LIFシグナル伝達はhESCにおいて誘導することができる。しかしながら、3iL hESCとは対照的に、LIFはhESCの自己複製に不可欠ではない。LIFの必要性のこの相違の原因を調べるために、両細胞状態におけるLIFシグナル伝達活性を比較した。hESCでは、LIF活性に不可欠な補助受容体であるGP130の転写産物は、LIFシグナル伝達経路の他の成分に比し、発現が不十分である(図3D)。hESCの3iによる短時間処理及びhESCの3iLにおける安定的な培養は、いずれもGP130転写産物(図3E乃至F)及びタンパク質レベル(図3G)の上方制御をもたらし、これらの細胞はLIFシグナル伝達に対してより感受性になっていることがわかった。それに対応して、リン酸化STAT3のレベルもLIF単独と共に培養したhESCに比し、3iL hESCにおいて有意により高く(図3H)、LIFシグナル伝達は3iL hESCにおいてより活動性であることが示唆された。また、既知のSTAT3の標的SOCS3及びKLF4の発現量は、LIF単独に比し、3i+LIFで処理したhESCでは増加した(図3I)。興味深いことに、NANOG発現量は、3i処理下にLIFを用量依存性に添加していくと増加したことから、NANOGはLIFシグナル伝達の直接の標的であることが示唆された(図4A)。これらの結果から、3i処理はhESCの自己複製を支持できないであろうが、LIFシグナル伝達に高度に感受性であるhESC状態を誘導することが分かる。LIFシグナル伝達の向上は、3i培養条件下の多能性細胞状態の維持に不可欠になる。
次に、hESCにおいて重要な他のシグナル伝達経路も3iL hESCにおいて役割を果たしているのかどうかを調べた。FGF、PI3K及びアクチビンシグナル伝達経路はhESCの維持に重要な役割を果たしていることが報告されている。これら3つのシグナル伝達経路の、さらには陰性対照としてhESCで役割を果たしていないと報告されているEGFシグナル伝達のそれぞれの小分子阻害剤で3iL hESCを処理した。FGF、PI3K及びアクチビンシグナル伝達経路を阻害すると、10日間の処理後に多能性マーカの減少が生じた(図4B乃至C)。この結果は、やはり他のシグナル伝達経路がLIFシグナル伝達経路と共に作用して特有の3iL hESC状態を支持することが必要とされることを示唆している。
実施例3
3iL hESCは多能性の特質を呈する
次に、こうした3iL hESCが実際に多能性であるかどうかを明らかにする特性評価を行った。この細胞は多能性マーカOCT4、NANOG、TRA−1−60及びTRA−1−81について染色陽性であった(図5A)。これらの多能性マーカの転写産物のレベルは3iL hESCと未処理hESCとの間で同等のままであった(図5B)。3iL hESCは2倍より高いNANOG発現量を維持した(図5B)が、これはタンパク質レベルでも反映された(図5C)。興味深いことに、3iL hESCにおいてDPPA3及びTBX3をはじめとするエピブラスト特異的遺伝子の上方制御が認められた(図5B)。蛍光活性化細胞選別(FACS)分析から、3iL hESCはOCT4を発現したのは明らかであり、NANOG、TRA−1−60及びTRA−1−81レベルが著しく増加していることが分かる(図5D)。
次に、3iL hESCが全ての生殖系譜細胞に分化することができるかを調べた。3iL hESCは、胚体外系譜及び3つの胚葉全ての細胞に分化することができる大きな胚様体を形成する(図5E)。また、生体内では、3iL hESCは、免疫不全マウスに注射したときに、3種の生殖系譜全ての組織を生じた(図5F)。興味深いことに、この3iL hESCは、hESCよりもより短時間でより大きな容量の奇形腫を生じた(図5G)。重要なことには、3iL hESCは、3iL条件で2ヶ月間培養した後に正常な核型を維持していた(図5H)。これらの結果から、3iL hESCは実際に多能性であることが分かる。3iL hESC状態がH1hESCに特有のものではないことを確認するために、3i+LIF小分子組み合わせを他の2種のヒトhESC細胞株hES2及びhES3に対して試験した(図6A乃至L)。奇形腫における再現可能な形態変化、マーカ発現の誘導及び3種の胚葉の全てに分化する能力が認められた。次に、3iL条件が人工多能性幹細胞(iPSC)の維持を可能にするかどうかを明らかにするために試験した。この細胞を3週間のウイルス誘導後に3iL条件で処理した。その結果、iPSCの全コロニー数の増加は認められなかった(図6M)が、こうしたiPSCコロニーにおけるウイルスサイレンシングの有意な改善が認められ(図6N乃至O)、真のiPSCコロニーの数の増加が示唆された。また、iPSCコロニーは3iL条件で安定的に培養することができる(図6P乃至R)。以上のデータから、3iLによる別個の細胞状態の誘導は種々のヒト多能性細胞にまたがって達成可能であることが裏付けられる。
実施例4
3iL hESCのトランスクリプトームは天然の着床前エピブラストと類似している
以上の結果は3iL hESCがhESCと異なることを示している。これらの違いを特徴付けるために、3iL hESC及びhESCのトランスクリプトームをRNA−Seqを用いて比較した。3iL hESCとhESCとの間で発現量の有意な変化を示す最初の遺伝子、さらには3iL hESC特異的(3iL hESCで発現が増加する)及びhESC特異的(3iL hESCで発現が減少する)遺伝子、が特定された。表1は3iL hESC特異的遺伝子のリストを示す。
Figure 2016537971
Figure 2016537971
3iL hESC特異的遺伝子としてはNANOG、DPPA3、KLF4及びTBX3が挙げられ(図7A)、初期の観察結果を裏付けている。3iL hESCが生体内多能性細胞と類似しているかどうかを調べるために、3iL hESC発現データをヒト着床前胚及び0及び10継代目の胚盤胞由来の初代hESCからの単一細胞RNA−Seqデータと比較した。驚くべきことに、3iL hESC特異的遺伝子はhESC特異的遺伝子におけるよりも着床前胚盤胞細胞において有意に高い発現を示すことが分かった(図7B)。これに対して、hESC特異的遺伝子は、胚盤胞からの初代hESC成長において3iL hESC特異的遺伝子よりも高い発現を示す(図7B)。重要なことには、3iL hESC特異的及びhESC特異的遺伝子のセットは、単一細胞RNA−Seqデータに基づいて着床前胚盤胞細胞からhESCを区別するのに十分である(図7C)。プロファイルされた胚盤胞のICMは多能性エピブラスト(EPI)の細胞及び原始内胚葉(PE)の細胞からなる。胚盤胞のエピブラスト細胞は特に興味深いので、推定上のEPI特異的遺伝子の発現を3iL hESCにおいて評価した。hESCに比しEPI細胞でより高い量で発現される遺伝子(エピブラスト特異的遺伝子)は3iL hESCにおいて有意に濃縮される(図7D乃至E、図8A乃至D)。3iL hESCにおけるこうしたエピブラスト特異的遺伝子の発現の増大は更に定量的PCRによって裏付けられる(図7F)。単一細胞PCRデータは、多能性遺伝子及びエピブラスト遺伝子が実際に共発現され、不均一な細胞集団の所産ではないことを裏付けている(図8E)。従って、3iL処理は、ヒト着床前胚からの多能性細胞により酷似する細胞状態に向けてhESCの変換を誘導する。
実施例5
3iL hESCにおけるGATA6及びNANOGの共発現
胚盤胞及び3iL hESCにおいて発現され、従来型のhESCでは発現されない遺伝子の1つはGATA6である(図8F)。GATA6はリプログミング時にOCT4に取って代わることができると報告されており、初期着床前胚において発現される。GATA6は原始内胚葉及び中胚葉の分化にも関与しているので、我々は、GATA6の発現が自発的分化によって引き起こされるという可能性を排除したいと思った。多能性関連遺伝子の発現を調べると、こうした遺伝子が3iL hESC及びhESCにおいて同様な発現量を示すことが分かった(図8G)。また、定量的PCRによる検証は、分化関連遺伝子が3iL hESCにおいて上方制御されないことを裏付けている(図8H)。3iL hESCにおけるGATA6の発現については更に定量的PCRによって確認され、更にタンパク質レベルがウエスタンブロット分析によって確認された(図8I乃至J)。GATA6及びNANOGの共免疫染色により3iL hESCにおいてこれら2種のタンパク質の共発現が明らかにされている(図8K)。この結果を更に裏付けるために、フローサイトメトリー分析を行った結果、50%を著しく超える3iL hESCがhESCの5%未満に比しNANOG及びGATA6のいずれをも発現することが分かった(図8L)。また、GATA6はOCT4及びTRA−1−60と共発現される(図8M乃至N)。これらの結果から、GATA6の発現は分化又は多能性の喪失によって引き起こされず、むしろ3iL hESCの特異的性質を反映している。NANOG及びGATA6は胚盤葉下層からの多能性エピブラストの分離の前に胚盤胞のICM内の細胞で共発現される。これらの結果は、3iL hESCがこうしたNANOG及びGATA6共発現細胞に類似している可能性があることを示唆している。従って、3iL hESCは、多能性におけるGATA6及び他の初期胚発生遺伝子の役割を研究するためのモデルとなりえよう。
実施例6
3iL hESCにおける着床前エピブラスト関連遺伝子の抑制解除
3iL hESCの遺伝子発現プロフィールが後成的遺伝風景の同時変化によって安定化されるかどうかを調べるために、活性(H3K27ac、H3K4me3)及び抑制性(H3K27me3)クロマチンと関連するヒストン修飾のゲノムレベルのプロフィールを作成した。全ての遺伝子について、3iL hESCとhESCとの間のそれぞれのヒストンマークの標準化倍率変化値を計算した。実際、遺伝子発現の変化はプロモータにおけるヒストン修飾の広範囲な変化において反映されていることが分かった(図9A乃至B)。3iL hESCにおいて発現の増大を示す遺伝子は活性ヒストン修飾H3K27ac(p値=8.83e−263)及びH3K4me3(p値=2.38e−69)の増加並びに通常発生遺伝子と関連づけられる抑制的マークであるH3K27me3(p値=4.90e−92)の減少を示す遺伝子のセットにおいて有意に濃縮される(図9B)。驚くべきことに、天然の着床前エピブラスト及び生体外hESCにおいて発現の異なる遺伝子のプロモータを調べたところ、エピブラスト特異的遺伝子においてH3K27me3の減少が生じることが分かった(図9C)。従って、TBX3、KLF5、ZNF600及びHOXBクラスタなど、胚盤胞からのhESCの誘導時に抑制されている遺伝子(図9D、図10)は3iL hESCにおいて再活性化を示す。以上を総合すると、これらのデータから、3iL hESCは着床前胚形成のエピジェネティックスを研究するための優れたモデルを提供する特異な状態にあることが分かる。
実施例7
3iL hESCにおける調節回路の再構成
多能性を制御する遺伝子調節ネットワークをESCにおいて研究し、胚幹細胞の独自性の調節について基本的な洞察が得られた。遺伝子発現及び後成的修飾に関するこうした分析結果から、3iL hESCは従来型のhESCとは異なる多能性状態を示していることが示唆される。転写調節ネットワークが両細胞状態間で変化しているかどうかを調べるために、主要な多能性調節因子NANOG及びOCT4並びに一般的なエンハンサ結合タンパク質P300のゲノムレベルの結合マップを作成した。OCT4、NANOG及びP300の全ての結合部位について、3iL hESC特異的及びhESC特異的結合事象を特定するための3iL hESC及び従来型hESC間の結合の差を計算した。驚くべきことに、何千という結合事象がこれら2つの多能性状態間で変化し、調節ネットワークが実際に再構成されることが分かった(図11A、図12A、B及びC)。ネットワークの再構成を支持することとして、転写因子結合の差はそれらの標的遺伝子の発現の差と有意に関連付けられることが分かった(図12A)。
3iL hESCが従来型hESCでは抑制されているエピブラスト特異的遺伝子の後成的及び転写的再活性化を示すことから、3iL hESCを用いてがヒト着床前発生において活性でありうる新規エンハンサを特定することができるか調べた。確かに、遠位エンハンサにおけるNANOG占有率の増加はエピブラスト特異的遺伝子の上方制御と有意に関連付けられることが分かった(図12B)(フィッシャー検定、p値=5.46e−13、図12B及びC)。天然の着床前エピブラストにおいて発現され、新規の結合部位、即ち結合部位の増加を示す遺伝子としては、NANOG、KLF4、DPPA3、KLF5、DNMT3L、TBX3、ZNF600及びLAMB1が挙げられる(図12B及びC、図11B)。興味深いことに、これらの遺伝子の一部の近くにはSTAT3結合が検出され(図12B及びC)、LIFシグナル伝達は3iL細胞における中核的な多能性ネットワークと統合される可能性があることが示唆された(図12B及びC)。
本研究では、3種の小分子による組み合わせ処理により特異なhESC状態がうまく誘導されることが示されている。こうした3iL hESCは自己複製するのにLIFを必要とし、天然のヒト胚盤胞細胞の中の多能性エピブラスト細胞と発現パターンの特性を共有している。ヒト着床前胚及びhESCの単一細胞分析では両者の間に有意な差異があることが明らかにされている。本研究の新規3iL hESC状態は、これら生体内及び生体外の多能性状態間のギャップを縮めるものである(図12D)。3iL hESCと天然の着床前エピブラスト細胞とのこの類似性は、多能性を規定する分子経路を把握する際に将来の研究の足場となる。
hESCは、LIFを初めとする種々の外部シグナル伝達因子を用いた多くの化学的限定条件で維持されている。これまでのLIF依存性hESCはmESCの天然状態と類似性を示している。これに対して、同様にLIF依存性である3iL hESCは、天然の着床前エピブラスト細胞の多能性状態と類似性を示す。STAT3結合部位は、LIFシグナル伝達が中核的転写ネットワークと協働して3iL hESCの発現パターン特性に寄与する可能性があることを示唆する回路の再構成において認められた。LIFシグナル伝達は生体外でのヒト胚盤胞の形成を増強すると報告されている。しかしながら、LIFシグナル伝達が胚盤胞の多能性細胞においてどのように役割を果たしているのかは依然として不明である。それ故に、3iL hESCにおけるLIFの役割を詳細に分析することにより、LIFシグナル伝達が胚盤胞の発生にどのように寄与しているのかについて理解を深めることができよう。
3iL hESCの特質の1つは、一部が系譜指定因子の役目をなすと考えられている、初期ヒト胚形成において発現される一群の遺伝子の上方制御である。これについての一例が、マウス及びヒト胚の両者の初期ICMにおいて発現されるGATA6である。興味深いことに、GATA3、GATA4及びGATA6は、リプログラミング時にOCT4に取って代わることができたことにより、多能性における系譜指定因子の役割が示された。GATA6の遺伝子座はOCT4、NANOG及びSTAT3によって制約されているが、3iL hESCにおけるGATA6の役割はまだ検討されていない。3iL hESCでは、GATA6は中核的多能性関連転写因子との相互作用を介する多能性ネットワークの一成分でありえよう。或いは、GATA6は系譜特異的分化時に誘導される遺伝子を指し示すことができよう。従って、3iL hESCは多能性関連転写因子と系譜指定因子との相互作用を理解するための代表的な例として用いることができるかもしれない。
3iLがhESCにおいて広範囲な転写的及び後成的変化を誘発することは示されたが、この変換のメカニズムは完全には理解されていない。本研究からのデータから、3iLは、hESCにおけるLIFシグナル伝達の活性化の律速因子の1つと思われるGP130の発現を誘導することができることが分かる。また、3iLは、細胞内シグナル伝達の調節を介して、新しい部位を創出することにより多能性関連転写因子の結合を変えることができることも考えられる。事実、多くの新しい結合部位が3iL hESCにおいて生じ、これらは発現の変化と有意に関連付けられることが認められた(図12A乃至C)。従って、3i及びLIFによる処理に対応した調節ネットワークの再構成はそうした細胞状態の変換に関与していると思われる。
調節ゲノム研究にはヒト胚用に利用できない多数の細胞が必要とされることから、3iL hESCは胚盤胞における多能性の遺伝子調節を研究するためのシステムとして役立ち得る。クロマチン標識及び転写因子結合部位のChIP−seqプロファイリングを用いて、ヒト胚盤胞で発現されるが、hESCで抑制されている遺伝子のこれまでに知られていない多くのエンハンサを特定した結果、3iL hESCは本研究を行う前には理解し難かった機能について洞察をもたらすことが分かった。遺伝子調節以外に、後成的特性も3iL hESCとhESCとでは異なっている。例えば、ヒト着床前胚からの細胞において発現される遺伝子の広範囲な抑制解除が認められ、DNMT3Lなどの数種の後成的調節因子の発現が異なることが分かった。DNMT3Lは、初期胚発生時の重要なプロセスの1つであるDNAメチル化を調節している。3iL hESCは、こうした後成的経路及び多能性の調節におけるその役割を研究するためのモデル系として役立たせることができる。
結論として、hESCを3iLで処理すると、従来型のhESCと後成的、転写的及び形態的に異なる多能性状態が誘発されることが分かる。3iL hESCにおける調節回路の再構成は天然の着床前エピブラスト様発現パターン特性を支持することが論証される。3iL hESCのより天然の状態は新しい機会を与える。従って、3iL hESCを研究することによりヒト細胞の多能性への我々の理解を見直し、広げる多くの可能性がもたらされる。
実施例8
3iL hESCにおける発生遺伝子の誘導は3iL hESCの分化を増強する
3iL hESCにおいて胚体外系譜指定因子CDX2、GATA4及びGATA6並びに内胚葉系中胚葉マーカT及びMIXLの強い上方制御が認められた(図13A及び13B)。同時に、多能性関連遺伝子は3iL hESC及びhESCにおいて同様な発現量を示し(図8G)、これは分化又は多能性の喪失によるものではなく、むしろ3iL hESCの特異的性質を反映したものであることが分かる。
発生遺伝子の発現が増大するにもかかわらず多能性状態が維持されることは驚くべきことである。こうした発生遺伝子の発現が生物学的に細胞をプライミングして分化させることができるかを明らかにするための研究をおこなった。この仮説を検証するために、2種の内胚葉分化プロトコルを用いて、3iL hESCの内胚葉分化効率をhESCと比較した。最初のプロトコルでは、小分子阻害剤IDE−1及びアクチビンAを用いてhESCを分化させた。3iL hESCを用いた場合、hESCから分化した細胞に比し、内胚葉マーカSOX17及びFOXA2について陽性に染色される細胞がより多く認められた(図13C)。これに対応して、3iL hESCから分化した細胞においては内胚葉遺伝子SOX17、FOXA2、HNF4A及びCXCR4がより強く上方制御される(図13D)。次に、第2の分化プロトコルを用いて、3iL hESC及びhESCから分化した多くの細胞において内胚葉前駆細胞マーカSOX17の発現の強い誘導が認められた(図13E)。しかしながら、3iL hESCを用いた場合、より多くの細胞が内胚葉前駆細胞マーカFOXA2について陽性に染色された(図13E)。また、3iL hESCから分化した細胞において内胚葉遺伝子HNF4A及びCXCR4がより強く上方制御されている(図13F)。従って、3iL hESCは内胚葉系譜に向かってより容易に分化するように思われる。

Claims (30)

  1. 未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持する方法であって、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、AMPK及び/又はBMPシグナル伝達の二重阻害剤、並びにLIFを含む培地で前記多能性幹細胞を培養する工程を含む方法。
  2. 前記培地が順化培地である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記培地がフィーダー細胞を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記培地がフィーダー細胞を含まない、請求項1に記載の方法。
  5. 前記多能性幹細胞がマトリクス上で培養される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記マトリクスが基底膜マトリクスである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記マトリクスがラミニン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、ヘパラン硫酸又は合成生体高分子の1種以上を含む細胞外マトリクスである、請求項5に記載の方法。
  8. 前記多能性幹細胞が胚性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記胚性幹細胞がヒトのものである、請求項8に記載の方法。
  10. 未分化状態で前記多能性幹細胞を継代する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記MEK阻害剤が0.5乃至1μMの濃度である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記GSK3阻害剤が1乃至2μMの濃度である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記AMPK及び/又はBMPシグナル伝達の二重阻害剤が2μMの濃度である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記LIFが8乃至10ng/mlの濃度である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により作製した多能性幹細胞。
  16. 前記細胞がNANOG、TRA−1−60、OCT4及びTRA−1−81からなる群から選ばれる少なくとも1種の多能性マーカを発現する、請求項15に記載の多能性幹細胞。
  17. 前記細胞がDPPA3、KLF4、KLF5及びTBX3からなる群から選ばれる少なくとも1種のエピブラスト様遺伝子発現マーカを発現する、請求項15に記載の多能性幹細胞。
  18. 前記細胞がCDX2、BMP4、GATA4及びGATA6からなる群から選ばれる少なくとも1種の胚体外マーカを発現する、請求項15に記載の多能性幹細胞。
  19. 前記細胞がT又はMIXL1から選ばれる少なくとも1種の内胚葉系中胚葉マーカを発現する、請求項15に記載の多能性幹細胞。
  20. 少なくとも1種のマーカの発現量が請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法に従って培養されなかった細胞に比して増加する、請求項15〜19のいずれか一項に記載の多能性幹細胞。
  21. 前記少なくとも1種のマーカの発現量がRNA配列決定法又は実時間PCR法によって測定される、請求項20に記載の多能性幹細胞。
  22. 前記少なくとも1種のマーカの発現量が請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法に従って培養されなかった細胞に対して少なくとも1.5乃至5倍増加する、請求項20〜21のいずれか一項に記載の多能性幹細胞。
  23. 前記少なくとも1種のマーカがNANOGであり、発現量が請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法に従って培養されなかった細胞に対して1.5乃至2倍増加する、請求項20〜22のいずれか一項に記載の多能性幹細胞。
  24. 内胚葉、神経又は中胚葉細胞への前記細胞の分化が請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法に従って培養されなかった細胞の分化に比して増強される、請求項15〜19のいずれか一項に記載の多能性幹細胞。
  25. 未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持するための培養培地であって、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、AMPK及び/又はBMPシグナル伝達の二重阻害剤、並びにLIFを含む前記培養培地。
  26. 多能性幹細胞から系譜特異的細胞を生じさせる方法であって、
    a)請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法に従って未分化状態で多能性幹細胞を培養する工程、
    b)前記未分化多能性幹細胞を単離する工程及び
    c)前記単離した多能性幹細胞を系譜特異的な細胞に分化させるのに適した培養培地において前記単離した未分化多能性幹細胞を培養する工程
    を含む方法。
  27. 前記系譜特異的細胞が体細胞又はオルガノイド細胞である、請求項26に記載の方法。
  28. 前記系譜特異的細胞が内胚葉系譜細胞である、請求項27に記載の方法。
  29. 前記体細胞が1種若しくは数種の体細胞系譜細胞又は完全に成熟した分化体細胞へ自己複製又は分化することができる委任前駆細胞である、請求項27に記載の方法。
  30. 未分化状態で多能性幹細胞を培養し、維持するための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法において用いられるキットであって、請求項24に記載の培養培地及び使用説明書を含むキット。

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