関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条により、2013年8月30日出願の米国仮特許出願第61/872,043号、および、米国特許法第120条により、2013年10月18日出願の米国特許出願第14/057,638号の優先権の利益を主張し、それらの内容は依拠され、参照により、全体として本明細書に組み込まれる。
本開示は、本願と所有者および譲受人が共通である、米国特許出願公開第2012/0281292号として公開された2012年4月5日出願の米国特許出願第13/440,183号と、米国仮特許出願第61/557,490号であり、現在の2012年11月5日出願の米国特許出願第13/668,537号と、2012年11月30日出願の米国仮特許出願第61/731,924号と、2011年4月20日出願の米国特許出願第13/090,561号と、2012年10月29日出願の米国特許出願第13/662,789号と、2013年5月23日出願の米国特許出願第13/900,659号と、2013年8月30日出願の米国仮特許出願第61/872,037号とに関連するものであり、それらの開示は、全て、参照により本明細書に組み込まれるが、優先権の利益は主張しないものである。
本開示は、概して、低反射率または反射防止(AR)表面と、その物品と、その表面を作製および使用する方法とに関するものである。
実施形態において、本開示は、ナノ粒子単分子層またはナノ粒子略単分子層を含む少なくとも1つの層を有する低反射率膜を提供する。
実施形態において、本開示は、その低反射率膜を組み込んだ物品を提供する。
実施形態において、本開示は、その物品を作製する方法を提供し、その方法は、基板の表面上に、一体化した、または、一時的なバインダー層またはバインダー領域を、局所加熱または照射等により生成する工程と、ナノ粒子単分子層または略単分子層を、その一体化したバインダー上に堆積させる工程とを有してなる。
実施形態において、本開示は、その物品を、例えば、表示装置で使用する方法を提供するものであり、その方法は、本開示の物品の、表示装置への組み込みを含む。
1Aおよび1Bは、それぞれ、例示的な非稠密六方構造を有する略単分子層のAR膜の側面図(1A)および上面図(1B)を示す。
球体状または略球体状粒子の直径(D)の関数としてのバインダー領域のナノ粒子浸漬深さ(g)を有する、一連の相対的なバインダーレベルについて、最低反射率構造物の一連のシミュレートした断面図を示す。
3Aから3Dは、選択された構造パラメータの点から選択された一連のバインダーレベルの厚さ(g)ついて、波長の関数として、反射率をパーセントで表した一連のグラフを示す。
3Eおよび3Fは、選択された構造パラメータの点から選択された一連のバインダーレベルの厚さ(g)ついて、波長の関数として、反射率をパーセントで表した一連のグラフを示す。
3Gから3Jは、選択された構造パラメータの点から選択された一連のバインダーレベルの厚さ(g)ついて、波長の関数として、反射率をパーセントで表した一連のグラフを示す。
4Aから4Dは、平均反射率の等高線の一連のグラフを示しており、パーセントで表した平均反射率を求めるために、450から650nmの分光反射率を平均し、その反射率を200nmで正規化した。
4Eから4Hは、平均反射率の等高線の一連のグラフを示しており、パーセントで表した平均反射率を求めるために、450から650nmの分光反射率を平均し、その反射率を200nmで正規化した。
5Aから5Dは、対比させた好適な設計パラメータのプロットを示す
6Aから6Dは、粒子密度の差異の、光学ヘイズへの影響を示す。
120nmのシリカ球体を有する粒子が付与された基板表面を提供するためにディップコートされ、かつ、別のバインダー層なしの、つまり、別のバインダー層がない例示的なガラス表面の、原子間力顕微鏡による高さ画像の一例を示す。
イオン交換されたガラス基板に被膜された2つの異なるナノスケールの直径のシリカ球体を用いて、300から800nmの波長にわたり、一群のサンプルの鏡面反射%について測定したデータを示す。
実効屈折率モデル(EIM)を用いて計算した反射率%データを示し、図8で述べたイオン交換されたサンプルのデータと比較している。
EIMの結果と図7に示されたサンプルの測定された反射スペクトルとの比較を示す。
本開示の様々な実施形態を、図面がある場合は参照しながら、詳細に記載する。様々な実施形態に言及しても、発明の範囲を限定するものではなく、発明の範囲は、この明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。さらに、この明細書で示される例は、どれも限定するものではなく、特許請求された発明の多数の可能な実施形態のうちの幾つかを示すものにすぎない。
実施形態において、本開示の物品、並びに、その物品を作製および使用する本開示の方法は、例えば、下記のようなものを含む1つ以上の有利な特徴またはアスペクトを提供する。任意の請求項に記載された特徴またはアスペクトは、概して、発明の全ての面に応用できる。任意の1つの請求項に記載された、任意の1つまたは多数の特徴またはアスペクトは、任意の他の請求項または複数の請求項に記載された、任意の他の特徴またはアスペクトと組み合わせ、または、入れ替えてもよい。
定義
「反射防止」および類似した用語は、本開示の膜または表面処理によって起こされうる、全ての反射(鏡面および拡散)の低減を指す。
「反射率」および類似した用語は、例えば、400から700nmの可視波長スペクトルの少なくとも一部分を網羅する少なくとも100nmのスペクトル幅にわたり、0.1未満から0.2%の平均反射率を有する本開示の物品を指す。
「バインダー」、「バインダー領域」および類似した用語は、粒子間、または、粒子とガラス基板表面間等の表面間の接合または結合強化のために使用することができる基板表面材料を指す。
「一体化したバインダー」、「一体化したバインダー領域」および類似した用語は、例えば、非接着性または非結合性の固体表面を、粒子間、または、粒子とガラス基板表面間等の表面間で接合または結合強化のために使用することができる接着性または結合性の粘性液体表面に、仮に、または、一時的に変えることができる、基板表面材料の少なくとも一部分を指す。一体化したバインダーは、例えば、仮に若しくは一時的に実現された粒子接着性若しくは粘着性表面、または、結合性の粘性液体表面を、非接着性若しくは非結合性の固体表面に、少なくとも一度、可逆的に変えられることが好ましい。
「ナノ粒子単分子層」および類似した用語は、粒子の単層を指し、代表的なものでは、基板の表面と接触しており、粒子は、概して約500nm以下の平均サイズまたは平均直径を有し、大多数の粒子は、約プラスまたはマイナス(+/−)100%未満のサイズの差異を有する。粒子間の間隔は、実質的に均一で、例えば、それらの中心間の間隔の差異は、約プラスまたはマイナス(+/−)50%未満であることが好ましい。
「含む」または類似した用語は、包含することを意味するが、それに限定されるものではなく、つまり、含むこと、および、除外しないことを意味する。
本開示の実施形態の記載で、例えば、組成物中の成分の量、濃度、体積、処理温度、処理時間、収率、流量、圧力、粘度および類似した値並びにそれらの範囲、または、構成要素の寸法および類似した値並びにそれらの範囲を修飾するのに採用した「約」は、例えば、材料、組成物、複合体、濃縮物、構成部品、製造物または使用配合物を調製するために用いられる代表的な測定および取扱い手順を通じて、これらの手順中の不注意によるエラーを通じて、並びに、製造、ソース、または、方法を実施するのに使用される開始材料または成分の純度の違いを通じて、並びに、類似した留意事項を通じて起こりうる、数値で表された量の差異を指す。また、「約」という用語は、特定の初期濃度または混合比を有する組成物または配合物の経年変化によって異なる量、および、特定の初期濃度または混合比を有する組成物または配合物の混合または処理によって異なる量をも含有する。
「随意の」、または、「随意的に」は、その次に記載された事象若しくは状況、条件、または、工程が起こりうるか、または、起こりえないこと、および、その記載が、その事象若しくは状況、条件、または、工程が起きる場合および起きない場合を含むことを意味する。
この明細書で用いられる、名詞は、特に断りのない限り、少なくとも1つ、または、1つ以上の対象を指す。
当業者によく知られた略語を用いる場合がある(例えば、時間を表す「h」または「hrs」、グラムを表す「g」または「gm」、ミリリットルを表す「mL」、室温を表す「rt」、ナノメートルを表す「nm」および類似した略語)。
構成要素、成分、添加剤、寸法、条件および類似したアスペクト、並びに、それらの範囲について開示される特定および好適な値は、単に例示するためのものであり、他の定義された値または定義された範囲内の他の値を除外するものではない。本開示の装置および方法は、この明細書に記載されたような、任意の値、または、それらの値と、特定の値と、より特定の値と、好適な値との任意の組合せを含むことができ、明示または暗示した中間の値および範囲を含む。
実施形態において、本開示は、特に表示装置で、または、光が類似しない材料(例えば、ガラスと空気)間の界面に入射する度に、多く応用される低反射または反射防止(AR)表面を提供する。類似しない界面は、結果として、多くの応用において問題となる反射光を生む。多くの場合、これらの反射を抑制または除去するために、フィルムまたはテクスチャーを、表面に施すことができる。しかし、例えば、真空蒸着された薄膜を使用するというアプローチは、高価である可能性がある。さらに、特に、広い面積の膜または複雑な構造物については、反射を除去するためのフィルムの厚さについての許容度を実現かつ制御するのは、困難である。
界面での反射を低下させる、その他のアプローチは、表面へのテクスチャーの付与を用いることである。表面へのテクスチャーの付与は、例えば、表面を粒子で被膜することを含んでもよい。表面への粒子の塗布は、例えば、フォトリソグラフィで実現できるが、このアプローチは高価であると共に、大きなサイズの基板に対して行うのは困難である。表面への粒子の接着は、静電またはファンデルワールス力に関わるものでもよいが、不十分である可能性があり、結果として、軟らかいか、または、破損しやすい膜になる。その粒子を付与された基板表面を覆う保護膜層を塗布することによって、粒子でテクスチャーを付与された表面の破損耐性を、さらに改善することができる。
表示装置、および、光に関わる界面に関わる他の装置は、低下した反射率に加え、制御された光の散乱による利点を享受しうる。界面または界面近くでの散乱は、反射した画像と、ディスプレイに送信された画像との干渉を減らすように、その反射した画像を広げにじませることができる。ある範囲の角度にわたって、その光を広げ伸ばすことによって、反射の輝度、つまり、単位立体角あたりの反射されたパワーの量を低減することができる。
実施形態において、本開示は、広いスペクトル領域にわたり低反射率を実現する表面処理および表面構造を提供する。本開示の表面処理は、基板と粒子間の界面に塗布または生成された結合材料の層と結びついた球体状粒子が略単分散した膜を提供する。その表面処理および表面構造は、ナノ粒子等のサブ波長粒子に依存する。平均粒子密度(ρ)が中間の値および範囲を含む、例えば、約1から100/平方マイクロメートル、好ましくは約5から55/平方マイクロメートルである限りは、サブ波長粒子の使用は、粒子局所密度の変動に対する許容度を生むと共に、粒子を表面に配置するのにランダムな処理を用いることを可能にする。粒子の塗布は、例えば、ディップコーティングおよび類似した処理である、低コスト、かつ、スケールを変えられる処理で実現することができる。
実施形態において、本開示は、一体化したバインダー領域または一体化したバインダー層を有する基板上の球体状粒子のランダムな膜から得られる、広帯域、低ヘイズおよび低反射率の特性を有する物品を提供する。その特性は、選択されたパラメータ、例えば、平均粒子密度(ρ)、粒子直径(D)、および、一体化したバインダー層または一体化したバインダー領域の厚さ(g)によって特徴付けられることができる。それらの特性は、パラメータ空間内の極小値であり、結果として、反射率性能は、選択されたパラメータの小さな変化に反応しない。さらに、均一な一体化したバインダー膜のヘイズは、粒子が付与されていない最大領域、つまり、球体状粒子がない領域の面積を最小にすることによって制御することができる。
実施形態において、本開示は、反射防止に応用する場合の本開示の物品の作製方法、および、本開示の物品の使用方法を提供する。
実施形態において、本開示の物品および方法は、多くの点で有利である。低反射率表面を作製する本開示の方法は、広い面積の基板に対し、スケールを変えられる処理で行うことが可能であり、結果として、高性能および低コストを可能にする。本開示の低反射率表面、および、その物品は、低コスト処理で直面する製造差異のタイプについて、ロバストな性能を有する。低反射率性能は、大きな範囲の光入射角度にわたり、および、広い範囲の波長にわたり存続する。
実施形態において、本開示は、一連のバインダーレベルを有する物品を作製する方法を、提供し、それは、特定の応用のために望ましいレベルの靱性の選択および実現を可能にする。粒子がサブ波長のサイズなので、波長の二乗(λ2)程度の面積にわたり計測した等の局所密度の差異は、光学的性能に、ほとんど影響がない。このことは、処理を、例えば、ディップコーティングおよび類似した処理のランダムな性質と共存しうるものにする。
実施形態において、本開示は、基板と、基板の表面の少なくとも一部分上の一体化したバインダー領域または層と、一体化したバインダー領域または層に部分的に埋め込まれたナノ粒子単分子層とを備えた反射防止物品であって、一体化したバインダー領域または層の厚さまたは粒子浸漬深さ(g)の、ナノ粒子単分子層の厚さまたは直径(D)に対する比(g:D)が、中間の値および範囲を含む、約1:50から3:5、約1:50から1:2、または、1:10から1:2であってもよい反射防止物品を提供する。
実施形態において、ナノ粒子単分子層は、それぞれ独立して、ガラス、ポリマー、セラミック、複合体および類似した材料のうち、少なくとも1つ、または、それらの組合せから選択される。
実施形態において、一体化したバインダー層または一体化したバインダー領域は、中間の値および範囲を含む、例えば、1nmから5,000nm、または、5nmから5,000nmの厚さ(t)を有する基板の表面領域であってもよく、ナノ粒子単分子層は、50nmから約300nmの平均直径(D)を有するナノ粒子を含む。
実施形態において、一体化したバインダー層は、5nmから約150nmの浸漬深さ(g)で基板の表面中に部分的に沈められたナノ粒子を有する、基板の前記表面を含み、前記ナノ粒子単分子層は、50nmから約300nmの平均直径(D)を有するナノ粒子を含む。
実施形態において、ナノ粒子単分子層のナノ粒子は、可視光の少なくとも1波長未満の平均直径(D)を有する、シリカまたは類似した酸化物または混合酸化物の球体を含む。
実施形態において、ナノ粒子単分子層は、少なくとも1つ、また、あるいは、複数の、少なくとも0.1から1平方マイクロメートルの、粒子が付与されていない空隙、または、粒子エリアを有する。
実施形態において、本開示は、任意のg:D比を提供するように、ナノ粒子単分子層を、基板の表面の一体化したバインダー領域に塗布する工程を有してなる、上記反射防止物品を作製する方法を提供する。
実施形態において、ナノ粒子単分子層を、基板の少なくとも1つの表面に塗布する工程は、基板を、一体化したバインダーとナノ粒子との混合物中にディップコーティングすることによって実現される。
実施形態において、一体化したバインダー領域は、例えば、基板の表面の一部分であってもよく、ナノ粒子単分子層が、一体化したバインダー領域または一体化したバインダー層中に、部分的に埋め込まれていてもよい。
実施形態において、前記方法は、例えば、基板の表面にナノ粒子単分子層を塗布する前に、基板の表面を仮に軟化させることによって、一体化したバインダー領域を一時的に生成する工程を、さらに有してもよく、塗布したナノ粒子は、一時的に軟化された基板の、一体化したバインダー領域の表面中に、部分的に沈み込む。
実施形態において、上記作製方法は、例えば、前記ナノ粒子単分子層を、基板の一時的に軟化された少なくとも1つの表面(つまり、一体化されたバインダー領域または一体化されたバインダー層)に塗布する前、後、または、前後両方に、基板をイオン交換により強化する工程を含んでも、または、さらに有してもよい。
実施形態において、本開示は、例えば、一体化したバインダー(つまり、バインダーが基板と同じ材料を含む)によって、外部のバインダーであると共に基板材料と同じまたは異なる材料を含むものである随意のバインダーによって、または、それらの組合せによって基板に取り付けられた、サブ波長の球体状シリカ粒子の1つ以上の単分子層を含む、低反射率表面を提供する。
実施形態における「から実質的になる」または「からなる」は、例えば、この明細書で定義された、低反射率表面を有する物品、この明細書で定義された、その低反射率の物品を作製若しくは使用する方法、または、この明細書で定義された、その物品を組み込んだ表示システムを指してもよい。
本開示の物品、表示システム、作製および使用方法、組成物、配合物、または、任意の装置は、請求の範囲に列挙された構成要素または工程、および、それに加えて、選択された特定の反応物質、特定の添加剤若しくは成分、特定の薬剤、特定の表面修飾材料若しくは条件、または、類似した構造、材料若しくは処理変数等の、本開示の組成物、物品、装置、または、作製および使用方法の基本的および新規の特性に実質的に影響しない他の構成要素または工程を含んでもよい。本開示の構成要素または工程の基本的特性に実質的に影響するか、または、本開示に望ましくない特徴を付与するかもしれない項目は、例えば、中間の値および範囲を含む、この明細書で定義および特定した値を超えるような、好ましくない高反射率の特性を有する表面を含む。
本開示の物品、その物品の作製方法およびその物品の使用方法は、請求の範囲に列挙された構成要素または工程、および、それに加えて、選択された特定の物品構成、特定の添加剤若しくは成分、特定の薬剤、特定の構成材料若しくは構成要素、特定の照射、圧力若しくは温度条件、または、類似した構造、材料若しくは処理変数等の、本開示の組成物、物品、装置、または、作製および使用方法の基本的および新規の特性に実質的に影響しない他の構成要素または工程を含んでもよい。
図面を参照すると、図1Aおよび1Bは、例示的な、非稠密六方構造を有する略単分子層のAR膜を表しており、それぞれ、側面図(1A)および上面図(1B)である。図1Aは、所定の一体化したバインダー領域若しくは一体化したバインダー層の厚さ、または、それに相当する、ナノ粒子球体の浸漬若しくは沈みレベル(g)について、最低反射率を実現するために好適な、球体状粒子の直径(D)を表した断面図であり、図中、
nsは、基板の屈折率、
ngは、一体化したバインダー領域の屈折率、
npは、ナノ粒子の屈折率、
noは、自由空間の屈折率、および
pは、隣接または最近傍のナノ粒子の中心間のピッチまたは離間距離である。
図2は、球体状粒子直径(D)の関数としての、ナノ粒子浸漬深さ、または、一体化したバインダー領域の厚さ(g)等の、一連の相対的な一体化したバインダーレベルについて、最低反射率構造物をシミュレートした一連の断面図を表している。シミュレーションでは、3つの屈折率(ns、ngおよびnp)を、全て1.5に等しいものとして扱った。
図3Aから3Jは、例えば、一体化したバインダーレベルまたは粒子浸漬寸法の度合または沈み量(g)、平均中心間粒子間隔またはピッチ(p)、および、球体状粒子直径(D)等の構造パラメータの点から好適な設計点での、一連の一体化されたバインダーレベルの厚さについて、波長の関数として、反射率をパーセント(%)で表した一連のグラフを示している。これらのグラフにおいて、浸漬寸法(g)およびピッチ(p)は、球体状粒子直径(D)を単位として示されている。グラフは、誘電体構造物と相互に作用しあう電磁場を厳蜜にシュミレーションするものである時間領域差分(FDTD)(実線)、および、三次元の誘電体構造物を平面スライスに分割し、それぞれのスライスで実効屈折率を確定し、次に、誘電体層を積み重ねたものの反射率を確定するものである実効屈折率モデル(EIM)(破線)の2つの曲線を示している。EIMは、構造物の横方向のスケールが波長より非常に小さい場合に、優れた近似法である。FDTDは、全ての十分にサンプルが集められたスケールで、応用が可能である。FDTDモデルが、400nm未満で、いかに共振性を示すか注目してほしい。これは、EIMについてのサブ波長の構造物の仮定が、400nmより長い波長についての良い近似法であることを示しており、400nmより長い波長についてFDTDとEIMの結果が非常によく一致することによって補強される。表1は、図3Aから3Jにプロットされた波長対反射率のモデル化された(FDTDおよびEIM)結果について、一体化したバインダー領域の厚さの、粒子直径に対する比(g/D)、ピッチの粒子直径に対する比(p/D)、および、粒子サイズ直径(D)を、表に示したものである。
実施形態において、表面に結びついた粒子を有する本開示の物品は、例えば、粒子が付与された表面上へ、随意の保護膜または層を堆積または追加することによって調製することができ、その保護膜または層は、例えば、少なくとも一部の粒子を埋めるか、または、覆う等、部分的に粒子を被膜する。
実施形態において、本開示の反射防止物品は、一体化したバインダー領域に完全に沈められて、表面に結びついた粒子を有していてもよい(つまり、gがDに、略等しい)。一体化したバインダーおよび粒子の屈折率は、例えば、同等になるように、中間の値および範囲を含む、1.1から1.8、1.2から1.8、1.25から1.8、1.3から1.8、1.3から1.75、1.25から1.7、1.3から1.65、1.3から1.6、1.3から1.55、1.35から1.50等から、または、それらの中で選択されてもよい。一体化したバインダー領域または層の屈折率(ng)、粒子(np)の屈折率、および、基板(ns)の屈折率は、例えば、1.3≦ng≦1.8、1.3≦np≦1.8、および、1.3≦ns≦1.8となるように選択されてもよい。
実施形態において、表面に結びついた粒子を有する本開示の物品は、例えば、加熱(または、照射)によって、例えば基板を軟化することにより、表面に結びついた粒子を、軟化された基板、つまり、一体化したバインダー層の表面中に沈み込ませることによっても、調製できる。モデル化計算において、一体化したバインダー層について、1.5の屈折率が使用された。
図4Aから4Hは、平均反射率(「<R>」)の等高線を示す一連のグラフであり、パーセントで表した平均反射率を求めるために、450から650nmの分光反射率を平均してから、200nmで正規化したものである。各グラフ中、一体化したバインダーレベル、または、粒子球体が基板表面(一体化したバインダー)若しくは外部のバインダー中に沈んだ量は、球体の粒子直径(D)の一定のパーセントである。最も小さい等高曲線は、450から650nmにわたり、0.2%の平均反射率を示している。その実線の等高線内の点は、0.2%未満の平均反射率<R>を有している。それより大きな他の曲線は、それぞれ、0.5%、1.0%および2.0%の平均反射率を有している。直線は、六方稠密構造を示している。一体化したバインダーの量をナノ粒子直径(D)の小数百分率で表したものは、図4Aおよび4Eでは、16.7%であり、図4Bおよび4Fでは、25%であり、図4Cおよび4Gでは、33.3%であり、図4Dおよび4Hでは、40%である。平均密度(ρ)(図4Eから4H)は、平均粒子間隔またはピッチ(p)(図4Aから4D)に、式(1)の関係を介して関連している。
ρ=2/(√3p2) (1)
図5Aから5Dは、対比させた好適な設計パラメータのプロットを示している。図5Aは、粒子間の好適な平均中心間間隔またはピッチ(p)の範囲を、粒子の好適な直径(D)の範囲に対する一体化したバインダーレベルの厚さ(g)の範囲(g/D)の関数として示している。図5Bは、粒子の好適な平均密度(ρ)の範囲を、粒子の好適な直径(D)の範囲に対する一体化したバインダーレベルの厚さ(g)の範囲(g/D)の関数として示している。図5Cは、好適な一体化したバインダーレベルの厚さ(g)の範囲を、粒子の好適な直径(D)の範囲に対する関数として示している。図5Dは、好適な粒子密度(ρ)の範囲を、粒子の好適な直径(D)の範囲の関数として示している。各点は、図4に示されたような等高線のプロットから得た最小値である。
実施形態において、粒子の直径(D)の範囲は、中間の値および範囲を含む、例えば、50nmから約350nm、または、100から300nmであってもよい。実施形態において、粒子間のピッチ(p)の範囲は、中間の値および範囲を含む、例えば、120から450nmであってもよい。実施形態において、粒子平均密度(ρ)の範囲は、中間の値および範囲を含む、例えば、5から55(毎平方マイクロメートル)であってもよい。実施形態において、一体化したバインダーレベルの厚み(g)の範囲は、中間の値および範囲を含む、例えば、0から(つまり、バインダーが基板に一体化し、別のバインダー層自体がない場合)5,000nm、5nmから5,000nm、5nmから2,500nm、5nmから1,000nm、5nmから500nm、5nmから250nm、5nmから200nm、5nmから約150nm、または、10nmから100nm(つまり、バインダーが別の層自体であり、gがゼロに等しくない場合)であってもよい。
図6Aから6Dは、粒子密度の差異の、光学ヘイズへの影響を示す。
図6Aは、不被膜の空隙領域からの反射光と、直径(D)のシリカ球体の単分子層からの反射光との位相差、および、一体化したバインダー層の厚さ、または、粒子沈み度(g)を示しており、それは、低反射率の設計点におけるものである。一体化したバインダー層の厚さが増加し、好適な直径が増加するのにつれて、より短い波長で、構造物の共振が微分位相シフト(differential phase shift)に影響し始めるのがわかる。
図6Bは、ディップコーティングにより基板上に被膜された120nmの直径の粒子について測定された、不被膜領域の確率密度を、その不被膜面積の関数として示している。
図6Cは、一定の微分位相について、100マイクロメートル×100マイクロメートルの被膜領域中の1つの不被膜領域からのヘイズ(%)を、その1つの不被膜領域の面積の関数として示している。
図6Dは、平均ヘイズ(%)を、ランダムに粒子で被膜された表面の被膜領域と不被膜領域間の微分位相シフトの関数として示している。この場合、不被膜領域の分布にわたり、ヘイズが平均されている。ナノメートルで表されるエアギャップ距離は、不被膜領域から反射された時に、その光場が伝播する、平均粒子密度で被膜された領域から反射された光場と比べて、追加の距離である。
図7は、例えば、120nmのシリカ球体を有する粒子が付与された基板表面を提供するためにディップコートされ、かつ、別のバインダー層なしの、つまり、別のバインダー層がない例示的なガラス表面の、原子間力顕微鏡による高さ画像の一例を示す。画像の明るい斑点または領域は、膜(つまり、二重層)の第1の単分子層の上面に留まる粒子である。暗いエリアは、膜のうち、粒子のない領域であり、中間のグレイのエリアは、ナノ粒子単分子層のクラスターである。
実施形態において、作製方法は、例えば、ナノ粒子単分子層を、基板の一時的に軟化された少なくとも1つの表面に塗布する前、後、または、前後両方に、基板をイオン交換により強化する工程を含んでも、または、さらに有してもよい(イオン交換法については、例えば、本願と所有者および譲受人が共通である、後に米国特許出願公開第2011/0045961号として公開された、同時係属出願の米国特許出願第12/856,840号明細書を参照)。
図8は、イオン交換されたガラス基板に被膜された100nm(800)および250nm(810)の直径のシリカ球体を用いて、300から800nmの波長にわたり、一群のサンプルの鏡面反射%について測定したデータを含む。
図9は、実効屈折率モデル(EIM)を用いて計算した反射率%データを含み、図8で言及したイオン交換されたサンプルのデータと比較している。図9に示された、EIMでモデル化された結果は、両方の粒子サイズ(つまり、100nmおよび250nm)について、前記反射スペクトル(つまり、全反射率%)の形状とよく一致している。
充填密度なしでも、実際の結果とモデル化された結果との間で、非常に高い一致が観察された。充填密度、または、ピッチの直径に対する比(p/D)は、SEMから1.07と推定された。選択された粒子直径(D)は、100nm(800)および250nm(810)だった。
図9で、反射は、垂直入射で計算され(theta=0)、p/Dは1.07に等しく、nsは1.51に等しく、npは1.457に等しく、ngは1.52に等しかった。さらに、裏面の反射および散乱を考慮するために、6%のオフセット分がモデル化されたデータに加算された。1つの面からの反射がモデル化された。しかし、測定は、少なくとも2面または2表面を有する実際のガラス基板サンプルについて実施されるものである。したがって、裏面からの追加の反射を、データに追加する必要がある。追加されたオフセット分は、曲線のスペクトルの形に影響しないが、グラフに表したデータを都合よく比較することを可能にする。
図10は、EIMの結果(単線の曲線)(1010)と、図7に示されたサンプルの測定された反射スペクトル(複合曲線)(1020)との比較を示しており、ヘイズを推定する計算のために使用されたものである。図10で、Dは120nmに等しく、ピッチの直径に対する比(p/D)は、1.3に等しく、nsは1.51に等しく、npは1.46に等しく、モデル化された曲線は、測定されたデータに存在する裏面の反射を考慮するために、標準の4%のオフセット分を有していた。スペクトルの形状だけでなく、反射の絶対値も、そのモデルによって予想されることに注目することが大切である。実験による比較が、両方とも、EIMと一致した。モデル化および実験によるスペクトル形状および全般的な反射率のレベルとが、非常によく一致していることは、本開示のサンプル作製処理が、高い確率で予想可能であることを示している。実験による観察は、モデルが、反射の形状および絶対値の両方を予測するものであることを実証している。
実施形態において、本開示は、略単分散であるシリカ粒子等のサブ波長の球体状酸化物粒子のランダムな単分子層膜を含み、粒子と基板との間に限られた厚さのバインダー領域を有する低反射率表面を提供する。あるいは、粒子は部分的に基板の表面(つまり、一体化したバインダー)中に沈められていても、または、浸漬されていてもよい。
実施形態において、ランダムに分布した粒子の単層は、前記表面を平均密度(ρ)で覆う。平均粒子密度(ρ)は、基板表面上の単位面積当たりの平均粒子数として定義され、その平均は、その表面上の粒子のランダムな分布にわたって取得される。平均粒子間隔またはピッチ(p)は、隣接する粒子間の平均中心間間隔であり、平均粒子密度(ρ)に、(上記式(1)を変形した)
p=√(2/(√(3)ρ)
により、関連している。
球体状粒子は直径(D)を有し、一体化したバインダー層は厚さ(g)を有する。これらのパラメータは、少なくとも、例えば、粒子直径(D)、一体化したバインダー層の厚さ(g)、および、ピッチ(p)を含んでおり、望ましいAR特性を有する望ましい構造物を確定するには、これらの3つのパラメータで十分である。
実施形態において、本開示は、ナノ粒子の単分子層または略単分子層を有する広帯域反射防止膜を提供する。「ナノ粒子の略単分子層」は、例えば、0.1から5%の覆われていない表面積によっては不完全であると共に、95から99.9%の表面積をナノ粒子が覆っていることによっては完全である単分子層を指す。単分子層を構成するナノ粒子は、例えば、50から500nmの直径(D)を有していてもよく、直径は、100から300nmであることが好ましく、150から280nmであることが、より好ましい。ナノ粒子の単分子層は、ナノ球体、半球および類似した形状、または、それらの組合せから構成されていてもよい。
実施形態において、ナノ粒子層は、中間の値および範囲を含む、1平方マイクロメートル未満、好ましくは0.5平方マイクロメートル未満、より好ましくは0.25平方マイクロメートル未満等の、例えば、約0.1から約1.5平方マイクロメートルの、粒子の存在しない1つ以上の領域である空隙またはギャップを有していてもよい。
実施形態において、一体化したバインダー領域または層は、基板自身を含んでいてもよい。つまり、一体化したバインダー領域またはバインダー層が、例えば、堆積または塗布された粒子が、軟化された基板表面上または中に部分的に浸漬または沈むことを可能にするように、仮に軟化または他の方法で変更された基板の表面の少なくとも部分を有し、次に、軟化され基板は、例えば周囲温度で冷却することによって再凝固されてもよい。
ナノ粒子単分子層と基板との界面では、基板、ナノ粒子、または、基板およびナノ粒子の両方の屈折率と同一または同等の屈折率を有する、少なくとも1つの一体化したバインダー領域が配置されていてもよい。一体化したバインダー領域の屈折率は、例えば、軟化等によって一体化したバインダー領域が一時的に生成されている間に、例えば、添加物またはドーパントを一体化したバインダー領域に含めることによって、基板の屈折率と異なるように変更されてもよい。この一体化したバインダー領域は、反射を低下させるか、または、AR膜によって生成される低反射の帯域を広げると共に、粒子を基板に取り付け、または、接着するのを助ける。透明な基板は、例えば、ポリマー、プラスチック、複合体、透明なゾル‐ゲル製品、透明なガラスーセラミック材料、または、それらの組合せ等の、ガラスまたは他の透明材料および類似した材料であってもよい。
粒子直径(D)の関数としての好適な粒子密度(ρ)の傾きは、これらの2つのパラメータ(粒子密度および粒子直径)の変動に対する表面構造の感度の尺度を示す。50から約200nmの直径を有する小さい球体に関して、小さい球体は薄い一体化したバインダー領域に対応するものであるが、図5Dに示されたような急な傾きは、表面構造が平均粒子密度(ρ)に相対的に反応しないことを示している。200から約500nmの直径を有する大きな球体に関して、大きな球体は厚い一体化したバインダー領域に対応するものであるが、表面構造が球体状粒子の直径に反応しなくなることを示しており、球体状粒子構造が、球体状粒子の非単分散分布を採用することができるだろうということを意味している。さらに、図4Aから4H等の平均反射率の等高線プロットを使用して、直径(D)および平均粒子間隔(p)の変化に対する感度を確定することができる。
表示装置にとっての反射防止特性は、特に、可視スペクトルで重要である。しかし、スケール不変性(scale invariance)を通して、本開示の構造物は、任意の波長範囲の応用例に適用することができる。より高い屈折率の材料については、ここで開示された構造物に含まれているものと同じ光路および相対屈折率勾配を提供するために、球体のスケールまたはサイズを縮小してもよい。
計算は、1.5に等しい、同じ(等しい)若しくは実質的に同じ屈折率(n)または同等の屈折率を有する全ての材料について実施された。球体、基板、または、一体化したバインダー領域の屈折率の小さな変化は、本開示の設計主要点および構造物からの重大な逸脱には繋がらないことが観察された。このようにして、1.4から1.6の屈折率について、同様の性能が期待できる。より高い(または、より低い)屈折率の材料について構造物を開発することへのアプローチは、有効なままだが、その場合、屈折率およびヘイズが、ここで開示された構造体から逸脱すると予想されうる。ヘイズは、散漫散乱(つまり、鏡面反射方向から2.5度より大きな角度で外れた角度散乱)を全散乱で割った尺度である。周期的なサブ波長の構造物については、全ての回折次数がエバネッセントなので、散乱がない。サブ波長粒子の集まりからの散乱は、粒子が周期的格子から逸脱する時のみ起きる。本開示の低コスト製造プロセスで表面上に堆積された粒子の画像は、主に単分子層のクラスター中に集まる粒子を示しており、クラスター間には不被膜の空隙がある。空隙からの反射光は、不被膜領域を囲む粒子列からの反射光の位相シフトと異なる位相シフトを蓄積する。この微分位相シフトは、波長および構造に依存する。微分位相シフトが、図6A等の図面に示されている。好適な粒子直径(D)の約45%または0.45×D未満の一体化したバインダーレベル(g)を伴う好適な設計パラメータについて、微分位相シフトは、全ての構造物で同様である。粒子のクラスターに囲まれた不被膜領域により生成されたヘイズは、空隙面積の増加および微分位相シフトの増加に伴って増加する。低反射率構造物の微分位相シフトは非常に似ているので、ヘイズは、構造選択による大きな影響を受けないが、不被膜領域の面積確率密度によって最も大きな影響を受けるだろう。
粒子被膜表面のヘイズは、所定の不被膜面積によって生成されるヘイズに、そのサイズの不被膜面積を有する確率を掛けることで得られる積を、合計することによって、推定することが可能である。したがって、この合計は、その不被膜面積確率密度に続く、オープンな領域の集まりの予測平均ヘイズを算出する。
本開示の低反射率構造物は、その表面の被膜領域と被膜領域との間で、略同一の微分位相シフトを有するので、平均ヘイズは、主に、不被膜領域の確率密度関数によって確定できる。100と300nmの間の粒子直径についての粒子被膜処理が、同様の面積確率密度を有する不被膜領域を生成するなら、次にこれらの構造物から予想されるヘイズは、同様である。しかし、空隙の相対的面積が、粒子サイズによって変わるなら、次に、空隙の面積は、粒子直径の二乗の相対的増加に比例して増加するだろう(例えば、直径が、100から300nmなると、ヘイズは、9倍に増加するだろう)。より小さい直径の粒子を有する、本開示の低反射率またはAR膜構造物は、より大きな直径の粒子構造物より、より低いヘイズ値を示すはずである。粒子の膜は、直径100から300nmの範囲にわたりスケール不変であるという仮定のもとで、異なったスケールでは、粒子に作用する異なった自己組織化力の相対的な強さが、相対的重要性で変化する可能性があるから、その仮定は欠陥があるかもしれない。例えば、球体の表面積は、球体の直径が100nmから直径300nmになると、およそ10倍に増加し、体積は、27倍に増加する。
さらに、ヘイズは、面積が波長の二乗と同等か、または、もっと大きな不被膜領域によって、より劇的な影響を受けるだろう。波長の二乗と比較して小さい不被膜面積を有するか、または、波長の二乗より大きいか若しく同程度の不被膜面積を有する確率が相対的に低いものであるランダムな被膜処理は、そのような大きな不被膜面積を含む表面よりも、少ないヘイズを生成するだろう。これは、主に、光学遠距離場の光学分解能によるものである。遠距離場は、波長と比べて小さい横方向のスケールについての情報を含まないので、小さい空隙は、遠距離場に影響しないと共に、遠距離場を使用する観察者から見えない。
実施形態において、一体化したバインダー領域は、例えば、透明な基板の表面を、加熱、照射、摩擦、力学的衝撃、スタンピング(stamping)および類似した方法、または、それらの組合せ等の様々な公知の任意の方法で軟化させることによって、一時的に生成することができる。
ナノ粒子単分子層は、例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングおよび類似した方法、または、それらの組合せにより、水または溶剤系の懸濁液から堆積されてもよい。ナノ粒子単分子層は、随意的に、例えば、ナノ粒子が基板上に堆積される前または後に、基板表面の熱化、粒子の熱化、または、その両方によって、基板表面に融合されてもよい。ナノ粒子単分子層は、随意的に、例えば、非常に薄い層を、例えば、粒子表面上に、または、一体化したバインダー領域とナノ粒子との界面で追加することによって、一体化したバインダー領域の表面に融合されてもよい。例えば、ディップコーティングまたはスプレーコーティングによって塗布された、例えばシロキサン、ゾル‐ゲルSiO2若しくはフュームド(fumed)シリカスート材料の、または、さらにその他の材料の1から10nm等の厚さを有する非常に薄い層が、二次バインダー材料として作用してもよい。
実施形態において、ナノ粒子単分子層は、まず、アルカリケイ酸塩ガラス基板上に、例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングおよび類似した方法、または、それらの組合せを用いて形成されてもよい。ナノ粒子単分子層を、随意的に、アルカリケイ酸塩ガラス等のガラス表面に、熱焼結によって融合されてもよい。アルカリケイ酸塩ガラスは、次に、随意的に、例えば、元来のナトリウムイオンがカリウムイオンと交換される等、ガラス中のより小さい元来のイオンを、より大きなイオンとイオン交換することによって、化学的に強化されてもよい。
実施形態において、ガラス基板またはガラス物品は、ソーダ石灰ガラス、アルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリホウケイ酸塩ガラス、および、それらの組合せのうち1つを含むか、から実質的になるか、または、からなってもよい。実施形態において、ガラス物品は、例えば、以下の組成を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであってもよい。組成は、60〜72モル%のSiO
2、9〜16モル%のAl
2O
3、5〜12モル%のB
2O
3、8〜16モル%のNa
2Oおよび0〜4モル%のK
2Oであり、比は以下の通りである。
尚、アルカリ金属修飾剤は、アルカリ金属酸化物である。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板は、例えば、61〜75モル%のSiO2、7〜15モル%のAl2O3、0〜12モル%のB2O3、9〜21モル%のNa2O、0〜4モル%のK2O、0〜7モル%のMgOおよび0〜3モル%のCaOであってもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板は、例えば、60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl2O3、0〜15モル%のB2O3、0〜15モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、0〜1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3および50pp未満のSb2O3であり、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%であってもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板は、例えば、64〜68モル%のSiO2、12〜16モル%のNa2O、8〜12モル%のAl2O3、0〜3モル%のB2O3、2〜5モル%のK2O、4〜6モル%のMgOおよび0〜5モル%のCaOであり、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8mol%、(Na2O+B2O3)−Al2O3≦2モル%、2モル%≦Na2O−Al2O3≦6モル%、および、4モル%≦(Na2O+K2O)−Al2O3≦10モル%であってもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、例えば、50〜80質量%のSiO2、2〜20質量%のAl2O3、0〜15質量%のB2O3、1〜20質量%のNa2O、0〜10質量%のLi2O、0〜10質量%のK2Oおよび0〜5質量%の(MgO+CaO+SrO+BaO)、0〜3質量%の(SrO+BaO)および0から5質量%の(ZrO2+TiO2)であり、0≦(Li2O+K2O)/Na2O≦0.5であってもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、例えば、リチウムを実質的に有していなくてもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、例えば、ヒ素、アンチモン、バリウム、または、それらの組合せのうち少なくとも1つを実質的に有していなくてもよい。実施形態において、ガラスは、随意的に、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、KBr、SnO2および類似した物質、または、それらの組合せ等の、0から2モル%の少なくとも1つの清澄剤と共にバッチ処理されてもよい。
実施形態において、選択されたガラスは、例えば、ダウンドロー、つまり、公知のスロットドローまたはフュージョンドロー処理等の方法によって形成することができる。これらの場合、ガラスは、少なくとも130kpoiseの液相粘度を有していてもよい。アルカリアルミノケイ酸塩ガラスの具体例は、本願と所有者および譲受人が共通である、2007年5月22日出願の米国仮特許出願第60/930,808号の優先権を主張する、2007年7月31日出願のEllisonらの「Down−Drawable,Chemically Strengthend Glass for cover Plate」というタイトルの米国特許出願第11/888,213号明細書、2007年11月29日出願の米国仮特許出願第61/004,677号の優先権を主張する、2008年11月25日出願のDejnekaらの「Glasses Having Improved Toughness and Scratch Resistance」というタイトルの米国特許出願第12/277,573号明細書、2008年2月26日出願の米国仮特許出願第61/067,130の優先権を主張する、2009年2月25日出願のDejnekaらの「Fining Agents for Silicate Glasses」というタイトルの米国特許出願第12/392,577号明細書、2008年2月29日出願の米国仮特許出願第61/067,732号の優先権を主張する、2009年2月26日出願のDejnekaらの「Ion−Exchanged, Fast Cooled Glasses」というタイトルの米国特許出願第12/393,241号明細書、2008年8月8日出願の「Chemically Tempered Cover Glass」というタイトルの米国特許仮出願第61/087,324号の優先権を主張する、2009年8月7日出願のBarefootらの「Strengthened Glass Articles and Methods of Making」というタイトルの米国特許出願第12/537,393号明細書、2009年8月21日出願のBarefootらの「Crack and Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom」というタイトルの米国仮特許出願第61/235,767号明細書、および、2009年8月21日出願のDejnekaらの「Zircon Compatible Glasses for Down Draw」というタイトルの米国仮特許出願第61/235,762号明細書に記載されている。
以下の具体例に記載されるガラス表面およびシートは、任意の適切な粒子で被膜可能なガラス基板、または、イオン交換された基板等の類似した基板であってもよく、例えば、表2に列挙したガラス組成1から11、または、それらの組合せを含んでいてもよい。
Shinotsukaの米国特許第8,202,582号明細書は、反射防止表面を作製するのに単粒子フィルムエッチングマスクとして使用される二次元稠密微細構造に言及している。エッチングマスクは、滴下工程、蒸発工程、および、単粒子フィルムが基板に転写される転写工程によって作製される。単粒子フィルムエッチングマスクは、
D(%)=|B−A|×100/A
によって定義される、粒子アレイの位置ずれD(%)を有し、D(%)は10%以下であり、Aは粒子の平均直径であり、Bはフィルム内の粒子間平均ピッチである。
以下の実施例は、上記開示を使用する方法を、より完全に記載すると共に、さらに、開示の様々なアスペクトを実施するために考えられたベストモードを示す役割を果たすものである。これらの実施例は、開示の範囲を限定するものではなく、むしろ例示のために提示されるものである。実施例は、開示されたものを調製する方法をさらに記載する。
粒子を付与された表面の調製
実施例1(仮想的)
隣接する粒子間に実質的に均一な間隔または離間距離を有する、つまり、非稠密六方配置を有する粒子が付与された表面、および、一体化したバインダー層の調製。様々な基板上に、粒子間の間隔を制御しながら、非稠密ナノ粒子単分子層を作製するための多数の方法が明らかにされており、反射防止効果を示すものも含まれていた。これらの方法は、リソグラフパターン上の伝達性集積物(例えば、Hoogenboom,et.al.,「Template−Induced Growth of Close−Packed and Non−Close−Packed Colloidal Crystals during Solvent Evaporation」,Nano Letters,4,2,p.205,2004を参照)、堆積後の乾燥または加熱中に被収縮可能なヒドロゲル球体のディップコーティング(Zhang,et.al.「Two−Dimensional Non−Close−Packing Arrays Derived from Self−Assembly of Biomineralized Hydrogel Spheres and Their Patterning Applications」,Chem.Mater.17,p.5268,2005、図3および関連したテキストを参照)、SiO2のナノ球体のスピンコーティング、および、ずり配列であって、随意的に、このテンプレートにさらに材料を追加(Venkatesh, et. al.,「Generalized Fabrication of Two−Dimensional Non−Close−Packed Colloidal Crystals,」Langmuir,23,p.8231,2007、図5および関連したテキストを参照)、並びに、空気‐水、または、アルカン‐水界面における、基板に転写される、静電的に制御された自己集積物であって、随意的に非常に薄い(約17nm)の接着層を使用(Ray,et.al.,「Submicrometer Surface Patterning Using Interfacial Colloidal Particle Self−Assembly」,Langmuir,25,p.7265,2009、図8および関連したテキスト、および、Bhawalkar, et. al.「Development of a Colloidal Lithography Method for Patterning Nonplanar Surfaces」,Langmuir,26,p.16662,2010を参照)を含む。しかしながら、従来のこれらの研究は、粒子サイズと、粒子間隔と、基板の一体化したバインダー領域中への粒子の沈み込みとの間の望ましい関係を特定していなかった。それを、本開示では、粒子の沈込せ、または、焼結を随意的に行うことによる耐久性の強化と共に、可視光について優れた低反射性能を実現するために特定している。
D 粒子直径
p ピッチ
g 一体化したバインダー領域の厚さ
ρ 粒子密度
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条により、2013年8月30日出願の米国仮特許出願第61/872,043号、および、米国特許法第120条により、2013年10月18日出願の米国特許出願第14/057,638号の優先権の利益を主張し、それらの内容は依拠され、参照により、全体として本明細書に組み込まれる。
本開示は、本願と所有者および譲受人が共通である、米国特許出願公開第2012/0281292号として公開された2012年4月5日出願の米国特許出願第13/440,183号と、米国仮特許出願第61/557,490号であり、現在の2012年11月5日出願の米国特許出願第13/668,537号と、2012年11月30日出願の米国仮特許出願第61/731,924号と、2011年4月20日出願の米国特許出願第13/090,561号と、2012年10月29日出願の米国特許出願第13/662,789号と、2013年5月23日出願の米国特許出願第13/900,659号と、2013年8月30日出願の米国仮特許出願第61/872,037号とに関連するものであり、それらの開示は、全て、参照により本明細書に組み込まれるが、優先権の利益は主張しないものである。
本開示は、概して、低反射率または反射防止(AR)表面と、その物品と、その表面を作製および使用する方法とに関するものである。
実施形態において、本開示は、ナノ粒子の単層(モノレイヤー;monolayer)またはナノ粒子の略単層(near-monolayer)を含む少なくとも1つの層を有する低反射率膜を提供する。
実施形態において、本開示は、その低反射率膜を組み込んだ物品を提供する。
実施形態において、本開示は、その物品を作製する方法を提供し、その方法は、基板の表面上に、一体化した、または、一時的なバインダー層またはバインダー領域を、局所加熱または照射等により生成する工程と、ナノ粒子単層または略単層を、その一体化したバインダー上に堆積させる工程とを有してなる。
実施形態において、本開示は、その物品を、例えば、表示装置で使用する方法を提供するものであり、その方法は、本開示の物品の、表示装置への組み込みを含む。
1Aおよび1Bは、それぞれ、例示的な非稠密六方構造を有する略単層のAR膜の側面図(1A)および上面図(1B)を示す。
球体状または略球体状粒子の直径(D)の関数としてのバインダー領域のナノ粒子浸漬深さ(g)を有する、一連の相対的なバインダーレベルについて、最低反射率構造物の一連のシミュレートした断面図を示す。
3Aから3Dは、選択された構造パラメータの点から選択された一連のバインダーレベルの厚さ(g)ついて、波長の関数として、反射率をパーセントで表した一連のグラフを示す。
3Eおよび3Fは、選択された構造パラメータの点から選択された一連のバインダーレベルの厚さ(g)ついて、波長の関数として、反射率をパーセントで表した一連のグラフを示す。
3Gから3Jは、選択された構造パラメータの点から選択された一連のバインダーレベルの厚さ(g)ついて、波長の関数として、反射率をパーセントで表した一連のグラフを示す。
4Aから4Dは、平均反射率の等高線の一連のグラフを示しており、パーセントで表した平均反射率を求めるために、450から650nmの分光反射率を平均し、その反射率を200nmで正規化した。
4Eから4Hは、平均反射率の等高線の一連のグラフを示しており、パーセントで表した平均反射率を求めるために、450から650nmの分光反射率を平均し、その反射率を200nmで正規化した。
5Aから5Dは、対比させた好適な設計パラメータのプロットを示す
6Aから6Dは、粒子密度の差異の、光学ヘイズへの影響を示す。
120nmのシリカ球体を有する粒子が付与された基板表面を提供するためにディップコートされ、かつ、別のバインダー層なしの、つまり、別のバインダー層がない例示的なガラス表面の、原子間力顕微鏡による高さ画像の一例を示す。
イオン交換されたガラス基板に被膜された2つの異なるナノスケールの直径のシリカ球体を用いて、300から800nmの波長にわたり、一群のサンプルの鏡面反射%について測定したデータを示す。
実効屈折率モデル(EIM)を用いて計算した反射率%データを示し、図8で述べたイオン交換されたサンプルのデータと比較している。
EIMの結果と図7に示されたサンプルの測定された反射スペクトルとの比較を示す。
本開示の様々な実施形態を、図面がある場合は参照しながら、詳細に記載する。様々な実施形態に言及しても、発明の範囲を限定するものではなく、発明の範囲は、この明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。さらに、この明細書で示される例は、どれも限定するものではなく、特許請求された発明の多数の可能な実施形態のうちの幾つかを示すものにすぎない。
実施形態において、本開示の物品、並びに、その物品を作製および使用する本開示の方法は、例えば、下記のようなものを含む1つ以上の有利な特徴またはアスペクトを提供する。任意の請求項に記載された特徴またはアスペクトは、概して、発明の全ての面に応用できる。任意の1つの請求項に記載された、任意の1つまたは多数の特徴またはアスペクトは、任意の他の請求項または複数の請求項に記載された、任意の他の特徴またはアスペクトと組み合わせ、または、入れ替えてもよい。
定義
「反射防止」および類似した用語は、本開示の膜または表面処理によって起こされうる、全ての反射(鏡面および拡散)の低減を指す。
「反射率」および類似した用語は、例えば、400から700nmの可視波長スペクトルの少なくとも一部分を網羅する少なくとも100nmのスペクトル幅にわたり、0.1未満から0.2%の平均反射率を有する本開示の物品を指す。
「バインダー」、「バインダー領域」および類似した用語は、粒子間、または、粒子とガラス基板表面間等の表面間の接合または結合強化のために使用することができる基板表面材料を指す。
「一体化したバインダー」、「一体化したバインダー領域」および類似した用語は、例えば、非接着性または非結合性の固体表面を、粒子間、または、粒子とガラス基板表面間等の表面間で接合または結合強化のために使用することができる接着性または結合性の粘性液体表面に、仮に、または、一時的に変えることができる、基板表面材料の少なくとも一部分を指す。一体化したバインダーは、例えば、仮に若しくは一時的に実現された粒子接着性若しくは粘着性表面、または、結合性の粘性液体表面を、非接着性若しくは非結合性の固体表面に、少なくとも一度、可逆的に変えられることが好ましい。
「ナノ粒子単層(nanoparticulate monolayer)」および類似した用語は、粒子の単一層を指し、代表的なものでは、基板の表面と接触しており、粒子は、概して約500nm以下の平均サイズまたは平均直径を有し、大多数の粒子は、約プラスまたはマイナス(+/−)100%未満のサイズの差異を有する。粒子間の間隔は、実質的に均一で、例えば、それらの中心間の間隔の差異は、約プラスまたはマイナス(+/−)50%未満であることが好ましい。
「含む」または類似した用語は、包含することを意味するが、それに限定されるものではなく、つまり、含むこと、および、除外しないことを意味する。
本開示の実施形態の記載で、例えば、組成物中の成分の量、濃度、体積、処理温度、処理時間、収率、流量、圧力、粘度および類似した値並びにそれらの範囲、または、構成要素の寸法および類似した値並びにそれらの範囲を修飾するのに採用した「約」は、例えば、材料、組成物、複合体、濃縮物、構成部品、製造物または使用配合物を調製するために用いられる代表的な測定および取扱い手順を通じて、これらの手順中の不注意によるエラーを通じて、並びに、製造、ソース、または、方法を実施するのに使用される開始材料または成分の純度の違いを通じて、並びに、類似した留意事項を通じて起こりうる、数値で表された量の差異を指す。また、「約」という用語は、特定の初期濃度または混合比を有する組成物または配合物の経年変化によって異なる量、および、特定の初期濃度または混合比を有する組成物または配合物の混合または処理によって異なる量をも含有する。
「随意の」、または、「随意的に」は、その次に記載された事象若しくは状況、条件、または、工程が起こりうるか、または、起こりえないこと、および、その記載が、その事象若しくは状況、条件、または、工程が起きる場合および起きない場合を含むことを意味する。
この明細書で用いられる、名詞は、特に断りのない限り、少なくとも1つ、または、1つ以上の対象を指す。
当業者によく知られた略語を用いる場合がある(例えば、時間を表す「h」または「hrs」、グラムを表す「g」または「gm」、ミリリットルを表す「mL」、室温を表す「rt」、ナノメートルを表す「nm」および類似した略語)。
構成要素、成分、添加剤、寸法、条件および類似したアスペクト、並びに、それらの範囲について開示される特定および好適な値は、単に例示するためのものであり、他の定義された値または定義された範囲内の他の値を除外するものではない。本開示の装置および方法は、この明細書に記載されたような、任意の値、または、それらの値と、特定の値と、より特定の値と、好適な値との任意の組合せを含むことができ、明示または暗示した中間の値および範囲を含む。
実施形態において、本開示は、特に表示装置で、または、光が類似しない材料(例えば、ガラスと空気)間の界面に入射する度に、多く応用される低反射または反射防止(AR)表面を提供する。類似しない界面は、結果として、多くの応用において問題となる反射光を生む。多くの場合、これらの反射を抑制または除去するために、フィルムまたはテクスチャーを、表面に施すことができる。しかし、例えば、真空蒸着された薄膜を使用するというアプローチは、高価である可能性がある。さらに、特に、広い面積の膜または複雑な構造物については、反射を除去するためのフィルムの厚さについての許容度を実現かつ制御するのは、困難である。
界面での反射を低下させる、その他のアプローチは、表面へのテクスチャーの付与を用いることである。表面へのテクスチャーの付与は、例えば、表面を粒子で被膜することを含んでもよい。表面への粒子の塗布は、例えば、フォトリソグラフィで実現できるが、このアプローチは高価であると共に、大きなサイズの基板に対して行うのは困難である。表面への粒子の接着は、静電またはファンデルワールス力に関わるものでもよいが、不十分である可能性があり、結果として、軟らかいか、または、破損しやすい膜になる。その粒子を付与された基板表面を覆う保護膜層を塗布することによって、粒子でテクスチャーを付与された表面の破損耐性を、さらに改善することができる。
表示装置、および、光に関わる界面に関わる他の装置は、低下した反射率に加え、制御された光の散乱による利点を享受しうる。界面または界面近くでの散乱は、反射した画像と、ディスプレイに送信された画像との干渉を減らすように、その反射した画像を広げにじませることができる。ある範囲の角度にわたって、その光を広げ伸ばすことによって、反射の輝度、つまり、単位立体角あたりの反射されたパワーの量を低減することができる。
実施形態において、本開示は、広いスペクトル領域にわたり低反射率を実現する表面処理および表面構造を提供する。本開示の表面処理は、基板と粒子間の界面に塗布または生成された結合材料の層と結びついた球体状粒子が略単分散した膜を提供する。その表面処理および表面構造は、ナノ粒子等のサブ波長粒子に依存する。平均粒子密度(ρ)が中間の値および範囲を含む、例えば、約1から100/平方マイクロメートル、好ましくは約5から55/平方マイクロメートルである限りは、サブ波長粒子の使用は、粒子局所密度の変動に対する許容度を生むと共に、粒子を表面に配置するのにランダムな処理を用いることを可能にする。粒子の塗布は、例えば、ディップコーティングおよび類似した処理である、低コスト、かつ、スケールを変えられる処理で実現することができる。
実施形態において、本開示は、一体化したバインダー領域または一体化したバインダー層を有する基板上の球体状粒子のランダムな膜から得られる、広帯域、低ヘイズおよび低反射率の特性を有する物品を提供する。その特性は、選択されたパラメータ、例えば、平均粒子密度(ρ)、粒子直径(D)、および、一体化したバインダー層または一体化したバインダー領域の厚さ(g)によって特徴付けられることができる。それらの特性は、パラメータ空間内の極小値であり、結果として、反射率性能は、選択されたパラメータの小さな変化に反応しない。さらに、均一な一体化したバインダー膜のヘイズは、粒子が付与されていない最大領域、つまり、球体状粒子がない領域の面積を最小にすることによって制御することができる。
実施形態において、本開示は、反射防止に応用する場合の本開示の物品の作製方法、および、本開示の物品の使用方法を提供する。
実施形態において、本開示の物品および方法は、多くの点で有利である。低反射率表面を作製する本開示の方法は、広い面積の基板に対し、スケールを変えられる処理で行うことが可能であり、結果として、高性能および低コストを可能にする。本開示の低反射率表面、および、その物品は、低コスト処理で直面する製造差異のタイプについて、ロバストな性能を有する。低反射率性能は、大きな範囲の光入射角度にわたり、および、広い範囲の波長にわたり存続する。
実施形態において、本開示は、一連のバインダーレベルを有する物品を作製する方法を、提供し、それは、特定の応用のために望ましいレベルの靱性の選択および実現を可能にする。粒子がサブ波長のサイズなので、波長の二乗(λ2)程度の面積にわたり計測した等の局所密度の差異は、光学的性能に、ほとんど影響がない。このことは、処理を、例えば、ディップコーティングおよび類似した処理のランダムな性質と共存しうるものにする。
実施形態において、本開示は、基板と、基板の表面の少なくとも一部分上の一体化したバインダー領域または層と、一体化したバインダー領域または層に部分的に埋め込まれたナノ粒子単層とを備えた反射防止物品であって、一体化したバインダー領域または層の厚さまたは粒子浸漬深さ(g)の、ナノ粒子単層の厚さまたは直径(D)に対する比(g:D)が、中間の値および範囲を含む、約1:50から3:5、約1:50から1:2、または、1:10から1:2であってもよい反射防止物品を提供する。
実施形態において、ナノ粒子単層は、それぞれ独立して、ガラス、ポリマー、セラミック、複合体および類似した材料のうち、少なくとも1つ、または、それらの組合せから選択される。
実施形態において、一体化したバインダー層または一体化したバインダー領域は、中間の値および範囲を含む、例えば、1nmから5,000nm、または、5nmから5,000nmの厚さ(t)を有する基板の表面領域であってもよく、ナノ粒子単層は、50nmから約300nmの平均直径(D)を有するナノ粒子を含む。
実施形態において、一体化したバインダー層は、5nmから約150nmの浸漬深さ(g)で基板の表面中に部分的に沈められたナノ粒子を有する、基板の前記表面を含み、前記ナノ粒子単層は、50nmから約300nmの平均直径(D)を有するナノ粒子を含む。
実施形態において、ナノ粒子単層のナノ粒子は、可視光の少なくとも1波長未満の平均直径(D)を有する、シリカまたは類似した酸化物または混合酸化物の球体を含む。
実施形態において、ナノ粒子単層は、少なくとも1つ、また、あるいは、複数の、少なくとも0.1から1平方マイクロメートルの、粒子が付与されていない空隙、または、粒子エリアを有する。
実施形態において、本開示は、任意のg:D比を提供するように、ナノ粒子の単層を、基板の表面の一体化したバインダー領域に塗布する工程を有してなる、上記反射防止物品を作製する方法を提供する。
実施形態において、ナノ粒子の単層を、基板の少なくとも1つの表面に塗布する工程は、基板を、一体化したバインダーとナノ粒子との混合物中にディップコーティングすることによって実現される。
実施形態において、一体化したバインダー領域は、例えば、基板の表面の一部分であってもよく、ナノ粒子単層が、一体化したバインダー領域または一体化したバインダー層中に、部分的に埋め込まれていてもよい。
実施形態において、前記方法は、例えば、基板の表面にナノ粒子の単層を塗布する前に、基板の表面を仮に軟化させることによって、一体化したバインダー領域を一時的に生成する工程を、さらに有してもよく、塗布したナノ粒子は、一時的に軟化された基板の、一体化したバインダー領域の表面中に、部分的に沈み込む。
実施形態において、上記作製方法は、例えば、前記ナノ粒子の単層を、基板の一時的に軟化された少なくとも1つの表面(つまり、一体化されたバインダー領域または一体化されたバインダー層)に塗布する前、後、または、前後両方に、基板をイオン交換により強化する工程を含んでも、または、さらに有してもよい。
実施形態において、本開示は、例えば、一体化したバインダー(つまり、バインダーが基板と同じ材料を含む)によって、外部のバインダーであると共に基板材料と同じまたは異なる材料を含むものである随意のバインダーによって、または、それらの組合せによって基板に取り付けられた、サブ波長の球体状シリカ粒子の1つ以上の単層を含む、低反射率表面を提供する。
実施形態における「から実質的になる」または「からなる」は、例えば、この明細書で定義された、低反射率表面を有する物品、この明細書で定義された、その低反射率の物品を作製若しくは使用する方法、または、この明細書で定義された、その物品を組み込んだ表示システムを指してもよい。
本開示の物品、表示システム、作製および使用方法、組成物、配合物、または、任意の装置は、請求の範囲に列挙された構成要素または工程、および、それに加えて、選択された特定の反応物質、特定の添加剤若しくは成分、特定の薬剤、特定の表面修飾材料若しくは条件、または、類似した構造、材料若しくは処理変数等の、本開示の組成物、物品、装置、または、作製および使用方法の基本的および新規の特性に実質的に影響しない他の構成要素または工程を含んでもよい。本開示の構成要素または工程の基本的特性に実質的に影響するか、または、本開示に望ましくない特徴を付与するかもしれない項目は、例えば、中間の値および範囲を含む、この明細書で定義および特定した値を超えるような、好ましくない高反射率の特性を有する表面を含む。
本開示の物品、その物品の作製方法およびその物品の使用方法は、請求の範囲に列挙された構成要素または工程、および、それに加えて、選択された特定の物品構成、特定の添加剤若しくは成分、特定の薬剤、特定の構成材料若しくは構成要素、特定の照射、圧力若しくは温度条件、または、類似した構造、材料若しくは処理変数等の、本開示の組成物、物品、装置、または、作製および使用方法の基本的および新規の特性に実質的に影響しない他の構成要素または工程を含んでもよい。
図面を参照すると、図1Aおよび1Bは、例示的な、非稠密六方構造を有する略単層のAR膜を表しており、それぞれ、側面図(1A)および上面図(1B)である。図1Aは、所定の一体化したバインダー領域若しくは一体化したバインダー層の厚さ、または、それに相当する、ナノ粒子球体の浸漬若しくは沈みレベル(g)について、最低反射率を実現するために好適な、球体状粒子の直径(D)を表した断面図であり、図中、
nsは、基板の屈折率、
ngは、一体化したバインダー領域の屈折率、
npは、ナノ粒子の屈折率、
noは、自由空間の屈折率、および
pは、隣接または最近傍のナノ粒子の中心間のピッチまたは離間距離である。
図2は、球体状粒子直径(D)の関数としての、ナノ粒子浸漬深さ、または、一体化したバインダー領域の厚さ(g)等の、一連の相対的な一体化したバインダーレベルについて、最低反射率構造物をシミュレートした一連の断面図を表している。シミュレーションでは、3つの屈折率(ns、ngおよびnp)を、全て1.5に等しいものとして扱った。
図3Aから3Jは、例えば、一体化したバインダーレベルまたは粒子浸漬寸法の度合または沈み量(g)、平均中心間粒子間隔またはピッチ(p)、および、球体状粒子直径(D)等の構造パラメータの点から好適な設計点での、一連の一体化されたバインダーレベルの厚さについて、波長の関数として、反射率をパーセント(%)で表した一連のグラフを示している。これらのグラフにおいて、浸漬寸法(g)およびピッチ(p)は、球体状粒子直径(D)を単位として示されている。グラフは、誘電体構造物と相互に作用しあう電磁場を厳蜜にシュミレーションするものである時間領域差分(FDTD)(実線)、および、三次元の誘電体構造物を平面スライスに分割し、それぞれのスライスで実効屈折率を確定し、次に、誘電体層を積み重ねたものの反射率を確定するものである実効屈折率モデル(EIM)(破線)の2つの曲線を示している。EIMは、構造物の横方向のスケールが波長より非常に小さい場合に、優れた近似法である。FDTDは、全ての十分にサンプルが集められたスケールで、応用が可能である。FDTDモデルが、400nm未満で、いかに共振性を示すか注目してほしい。これは、EIMについてのサブ波長の構造物の仮定が、400nmより長い波長についての良い近似法であることを示しており、400nmより長い波長についてFDTDとEIMの結果が非常によく一致することによって補強される。表1は、図3Aから3Jにプロットされた波長対反射率のモデル化された(FDTDおよびEIM)結果について、一体化したバインダー領域の厚さの、粒子直径に対する比(g/D)、ピッチの粒子直径に対する比(p/D)、および、粒子サイズ直径(D)を、表に示したものである。
実施形態において、表面に結びついた粒子を有する本開示の物品は、例えば、粒子が付与された表面上へ、随意の保護膜または層を堆積または追加することによって調製することができ、その保護膜または層は、例えば、少なくとも一部の粒子を埋めるか、または、覆う等、部分的に粒子を被膜する。
実施形態において、本開示の反射防止物品は、一体化したバインダー領域に完全に沈められて、表面に結びついた粒子を有していてもよい(つまり、gがDに、略等しい)。一体化したバインダーおよび粒子の屈折率は、例えば、同等になるように、中間の値および範囲を含む、1.1から1.8、1.2から1.8、1.25から1.8、1.3から1.8、1.3から1.75、1.25から1.7、1.3から1.65、1.3から1.6、1.3から1.55、1.35から1.50等から、または、それらの中で選択されてもよい。一体化したバインダー領域または層の屈折率(ng)、粒子(np)の屈折率、および、基板(ns)の屈折率は、例えば、1.3≦ng≦1.8、1.3≦np≦1.8、および、1.3≦ns≦1.8となるように選択されてもよい。
実施形態において、表面に結びついた粒子を有する本開示の物品は、例えば、加熱(または、照射)によって、例えば基板を軟化することにより、表面に結びついた粒子を、軟化された基板、つまり、一体化したバインダー層の表面中に沈み込ませることによっても、調製できる。モデル化計算において、一体化したバインダー層について、1.5の屈折率が使用された。
図4Aから4Hは、平均反射率(「<R>」)の等高線を示す一連のグラフであり、パーセントで表した平均反射率を求めるために、450から650nmの分光反射率を平均してから、200nmで正規化したものである。各グラフ中、一体化したバインダーレベル、または、粒子球体が基板表面(一体化したバインダー)若しくは外部のバインダー中に沈んだ量は、球体の粒子直径(D)の一定のパーセントである。最も小さい等高曲線は、450から650nmにわたり、0.2%の平均反射率を示している。その実線の等高線内の点は、0.2%未満の平均反射率<R>を有している。それより大きな他の曲線は、それぞれ、0.5%、1.0%および2.0%の平均反射率を有している。直線は、六方稠密構造を示している。一体化したバインダーの量をナノ粒子直径(D)の小数百分率で表したものは、図4Aおよび4Eでは、16.7%であり、図4Bおよび4Fでは、25%であり、図4Cおよび4Gでは、33.3%であり、図4Dおよび4Hでは、40%である。平均密度(ρ)(図4Eから4H)は、平均粒子間隔またはピッチ(p)(図4Aから4D)に、式(1)の関係を介して関連している。
ρ=2/(√3p2) (1)
図5Aから5Dは、対比させた好適な設計パラメータのプロットを示している。図5Aは、粒子間の好適な平均中心間間隔またはピッチ(p)の範囲を、粒子の好適な直径(D)の範囲に対する一体化したバインダーレベルの厚さ(g)の範囲(g/D)の関数として示している。図5Bは、粒子の好適な平均密度(ρ)の範囲を、粒子の好適な直径(D)の範囲に対する一体化したバインダーレベルの厚さ(g)の範囲(g/D)の関数として示している。図5Cは、好適な一体化したバインダーレベルの厚さ(g)の範囲を、粒子の好適な直径(D)の範囲に対する関数として示している。図5Dは、好適な粒子密度(ρ)の範囲を、粒子の好適な直径(D)の範囲の関数として示している。各点は、図4に示されたような等高線のプロットから得た最小値である。
実施形態において、粒子の直径(D)の範囲は、中間の値および範囲を含む、例えば、50nmから約350nm、または、100から300nmであってもよい。実施形態において、粒子間のピッチ(p)の範囲は、中間の値および範囲を含む、例えば、120から450nmであってもよい。実施形態において、粒子平均密度(ρ)の範囲は、中間の値および範囲を含む、例えば、5から55(毎平方マイクロメートル)であってもよい。実施形態において、一体化したバインダーレベルの厚み(g)の範囲は、中間の値および範囲を含む、例えば、0から(つまり、バインダーが基板に一体化し、別のバインダー層自体がない場合)5,000nm、5nmから5,000nm、5nmから2,500nm、5nmから1,000nm、5nmから500nm、5nmから250nm、5nmから200nm、5nmから約150nm、または、10nmから100nm(つまり、バインダーが別の層自体であり、gがゼロに等しくない場合)であってもよい。
図6Aから6Dは、粒子密度の差異の、光学ヘイズへの影響を示す。
図6Aは、不被膜の空隙領域からの反射光と、直径(D)のシリカ球体の単層からの反射光との位相差、および、一体化したバインダー層の厚さ、または、粒子沈み度(g)を示しており、それは、低反射率の設計点におけるものである。一体化したバインダー層の厚さが増加し、好適な直径が増加するのにつれて、より短い波長で、構造物の共振が微分位相シフト(differential phase shift)に影響し始めるのがわかる。
図6Bは、ディップコーティングにより基板上に被膜された120nmの直径の粒子について測定された、不被膜領域の確率密度を、その不被膜面積の関数として示している。
図6Cは、一定の微分位相について、100マイクロメートル×100マイクロメートルの被膜領域中の1つの不被膜領域からのヘイズ(%)を、その1つの不被膜領域の面積の関数として示している。
図6Dは、平均ヘイズ(%)を、ランダムに粒子で被膜された表面の被膜領域と不被膜領域間の微分位相シフトの関数として示している。この場合、不被膜領域の分布にわたり、ヘイズが平均されている。ナノメートルで表されるエアギャップ距離は、不被膜領域から反射された時に、その光場が伝播する、平均粒子密度で被膜された領域から反射された光場と比べて、追加の距離である。
図7は、例えば、120nmのシリカ球体を有する粒子が付与された基板表面を提供するためにディップコートされ、かつ、別のバインダー層なしの、つまり、別のバインダー層がない例示的なガラス表面の、原子間力顕微鏡による高さ画像の一例を示す。画像の明るい斑点または領域は、膜(つまり、二重層)の第1の単層の上面に留まる粒子である。暗いエリアは、膜のうち、粒子のない領域であり、中間のグレイのエリアは、ナノ粒子の単層のクラスターである。
実施形態において、作製方法は、例えば、ナノ粒子の単層を、基板の一時的に軟化された少なくとも1つの表面に塗布する前、後、または、前後両方に、基板をイオン交換により強化する工程を含んでも、または、さらに有してもよい(イオン交換法については、例えば、本願と所有者および譲受人が共通である、後に米国特許出願公開第2011/0045961号として公開された、同時係属出願の米国特許出願第12/856,840号明細書を参照)。
図8は、イオン交換されたガラス基板に被膜された100nm(800)および250nm(810)の直径のシリカ球体を用いて、300から800nmの波長にわたり、一群のサンプルの鏡面反射%について測定したデータを含む。
図9は、実効屈折率モデル(EIM)を用いて計算した反射率%データを含み、図8で言及したイオン交換されたサンプルのデータと比較している。図9に示された、EIMでモデル化された結果は、両方の粒子サイズ(つまり、100nmおよび250nm)について、前記反射スペクトル(つまり、全反射率%)の形状とよく一致している。
充填密度なしでも、実際の結果とモデル化された結果との間で、非常に高い一致が観察された。充填密度、または、ピッチの直径に対する比(p/D)は、SEMから1.07と推定された。選択された粒子直径(D)は、100nm(800)および250nm(810)だった。
図9で、反射は、垂直入射で計算され(theta=0)、p/Dは1.07に等しく、nsは1.51に等しく、npは1.457に等しく、ngは1.52に等しかった。さらに、裏面の反射および散乱を考慮するために、6%のオフセット分がモデル化されたデータに加算された。1つの面からの反射がモデル化された。しかし、測定は、少なくとも2面または2表面を有する実際のガラス基板サンプルについて実施されるものである。したがって、裏面からの追加の反射を、データに追加する必要がある。追加されたオフセット分は、曲線のスペクトルの形に影響しないが、グラフに表したデータを都合よく比較することを可能にする。
図10は、EIMの結果(単線の曲線)(1010)と、図7に示されたサンプルの測定された反射スペクトル(複合曲線)(1020)との比較を示しており、ヘイズを推定する計算のために使用されたものである。図10で、Dは120nmに等しく、ピッチの直径に対する比(p/D)は、1.3に等しく、nsは1.51に等しく、npは1.46に等しく、モデル化された曲線は、測定されたデータに存在する裏面の反射を考慮するために、標準の4%のオフセット分を有していた。スペクトルの形状だけでなく、反射の絶対値も、そのモデルによって予想されることに注目することが大切である。実験による比較が、両方とも、EIMと一致した。モデル化および実験によるスペクトル形状および全般的な反射率のレベルとが、非常によく一致していることは、本開示のサンプル作製処理が、高い確率で予想可能であることを示している。実験による観察は、モデルが、反射の形状および絶対値の両方を予測するものであることを実証している。
実施形態において、本開示は、略単分散であるシリカ粒子等のサブ波長の球体状酸化物粒子のランダムな単層膜を含み、粒子と基板との間に限られた厚さのバインダー領域を有する低反射率表面を提供する。あるいは、粒子は部分的に基板の表面(つまり、一体化したバインダー)中に沈められていても、または、浸漬されていてもよい。
実施形態において、ランダムに分布した粒子の単一層は、前記表面を平均密度(ρ)で覆う。平均粒子密度(ρ)は、基板表面上の単位面積当たりの平均粒子数として定義され、その平均は、その表面上の粒子のランダムな分布にわたって取得される。平均粒子間隔またはピッチ(p)は、隣接する粒子間の平均中心間間隔であり、平均粒子密度(ρ)に、(上記式(1)を変形した)
p=√(2/(√(3)ρ)
により、関連している。
球体状粒子は直径(D)を有し、一体化したバインダー層は厚さ(g)を有する。これらのパラメータは、少なくとも、例えば、粒子直径(D)、一体化したバインダー層の厚さ(g)、および、ピッチ(p)を含んでおり、望ましいAR特性を有する望ましい構造物を確定するには、これらの3つのパラメータで十分である。
実施形態において、本開示は、ナノ粒子の単層または略単層を有する広帯域反射防止膜を提供する。「ナノ粒子の略単層(near monolayer)」は、例えば、0.1から5%の覆われていない表面積によっては不完全であると共に、95から99.9%の表面積をナノ粒子が覆っていることによっては完全である単層を指す。単層を構成するナノ粒子は、例えば、50から500nmの直径(D)を有していてもよく、直径は、100から300nmであることが好ましく、150から280nmであることが、より好ましい。ナノ粒子の単層は、ナノ球体、半球および類似した形状、または、それらの組合せから構成されていてもよい。
実施形態において、ナノ粒子層は、中間の値および範囲を含む、1平方マイクロメートル未満、好ましくは0.5平方マイクロメートル未満、より好ましくは0.25平方マイクロメートル未満等の、例えば、約0.1から約1.5平方マイクロメートルの、粒子の存在しない1つ以上の領域である空隙またはギャップを有していてもよい。
実施形態において、一体化したバインダー領域または層は、基板自身を含んでいてもよい。つまり、一体化したバインダー領域またはバインダー層が、例えば、堆積または塗布された粒子が、軟化された基板表面上または中に部分的に浸漬または沈むことを可能にするように、仮に軟化または他の方法で変更された基板の表面の少なくとも部分を有し、次に、軟化され基板は、例えば周囲温度で冷却することによって再凝固されてもよい。
ナノ粒子の単層と基板との界面では、基板、ナノ粒子、または、基板およびナノ粒子の両方の屈折率と同一または同等の屈折率を有する、少なくとも1つの一体化したバインダー領域が配置されていてもよい。一体化したバインダー領域の屈折率は、例えば、軟化等によって一体化したバインダー領域が一時的に生成されている間に、例えば、添加物またはドーパントを一体化したバインダー領域に含めることによって、基板の屈折率と異なるように変更されてもよい。この一体化したバインダー領域は、反射を低下させるか、または、AR膜によって生成される低反射の帯域を広げると共に、粒子を基板に取り付け、または、接着するのを助ける。透明な基板は、例えば、ポリマー、プラスチック、複合体、透明なゾル‐ゲル製品、透明なガラスーセラミック材料、または、それらの組合せ等の、ガラスまたは他の透明材料および類似した材料であってもよい。
粒子直径(D)の関数としての好適な粒子密度(ρ)の傾きは、これらの2つのパラメータ(粒子密度および粒子直径)の変動に対する表面構造の感度の尺度を示す。50から約200nmの直径を有する小さい球体に関して、小さい球体は薄い一体化したバインダー領域に対応するものであるが、図5Dに示されたような急な傾きは、表面構造が平均粒子密度(ρ)に相対的に反応しないことを示している。200から約500nmの直径を有する大きな球体に関して、大きな球体は厚い一体化したバインダー領域に対応するものであるが、表面構造が球体状粒子の直径に反応しなくなることを示しており、球体状粒子構造が、球体状粒子の非単分散分布を採用することができるだろうということを意味している。さらに、図4Aから4H等の平均反射率の等高線プロットを使用して、直径(D)および平均粒子間隔(p)の変化に対する感度を確定することができる。
表示装置にとっての反射防止特性は、特に、可視スペクトルで重要である。しかし、スケール不変性(scale invariance)を通して、本開示の構造物は、任意の波長範囲の応用例に適用することができる。より高い屈折率の材料については、ここで開示された構造物に含まれているものと同じ光路および相対屈折率勾配を提供するために、球体のスケールまたはサイズを縮小してもよい。
計算は、1.5に等しい、同じ(等しい)若しくは実質的に同じ屈折率(n)または同等の屈折率を有する全ての材料について実施された。球体、基板、または、一体化したバインダー領域の屈折率の小さな変化は、本開示の設計主要点および構造物からの重大な逸脱には繋がらないことが観察された。このようにして、1.4から1.6の屈折率について、同様の性能が期待できる。より高い(または、より低い)屈折率の材料について構造物を開発することへのアプローチは、有効なままだが、その場合、屈折率およびヘイズが、ここで開示された構造体から逸脱すると予想されうる。ヘイズは、散漫散乱(つまり、鏡面反射方向から2.5度より大きな角度で外れた角度散乱)を全散乱で割った尺度である。周期的なサブ波長の構造物については、全ての回折次数がエバネッセントなので、散乱がない。サブ波長粒子の集まりからの散乱は、粒子が周期的格子から逸脱する時のみ起きる。本開示の低コスト製造プロセスで表面上に堆積された粒子の画像は、主に単層のクラスター中に集まる粒子を示しており、クラスター間には不被膜の空隙がある。空隙からの反射光は、不被膜領域を囲む粒子列からの反射光の位相シフトと異なる位相シフトを蓄積する。この微分位相シフトは、波長および構造に依存する。微分位相シフトが、図6A等の図面に示されている。好適な粒子直径(D)の約45%または0.45×D未満の一体化したバインダーレベル(g)を伴う好適な設計パラメータについて、微分位相シフトは、全ての構造物で同様である。粒子のクラスターに囲まれた不被膜領域により生成されたヘイズは、空隙面積の増加および微分位相シフトの増加に伴って増加する。低反射率構造物の微分位相シフトは非常に似ているので、ヘイズは、構造選択による大きな影響を受けないが、不被膜領域の面積確率密度によって最も大きな影響を受けるだろう。
粒子被膜表面のヘイズは、所定の不被膜面積によって生成されるヘイズに、そのサイズの不被膜面積を有する確率を掛けることで得られる積を、合計することによって、推定することが可能である。したがって、この合計は、その不被膜面積確率密度に続く、オープンな領域の集まりの予測平均ヘイズを算出する。
本開示の低反射率構造物は、その表面の被膜領域と被膜領域との間で、略同一の微分位相シフトを有するので、平均ヘイズは、主に、不被膜領域の確率密度関数によって確定できる。100と300nmの間の粒子直径についての粒子被膜処理が、同様の面積確率密度を有する不被膜領域を生成するなら、次にこれらの構造物から予想されるヘイズは、同様である。しかし、空隙の相対的面積が、粒子サイズによって変わるなら、次に、空隙の面積は、粒子直径の二乗の相対的増加に比例して増加するだろう(例えば、直径が、100から300nmなると、ヘイズは、9倍に増加するだろう)。より小さい直径の粒子を有する、本開示の低反射率またはAR膜構造物は、より大きな直径の粒子構造物より、より低いヘイズ値を示すはずである。粒子の膜は、直径100から300nmの範囲にわたりスケール不変であるという仮定のもとで、異なったスケールでは、粒子に作用する異なった自己組織化力の相対的な強さが、相対的重要性で変化する可能性があるから、その仮定は欠陥があるかもしれない。例えば、球体の表面積は、球体の直径が100nmから直径300nmになると、およそ10倍に増加し、体積は、27倍に増加する。
さらに、ヘイズは、面積が波長の二乗と同等か、または、もっと大きな不被膜領域によって、より劇的な影響を受けるだろう。波長の二乗と比較して小さい不被膜面積を有するか、または、波長の二乗より大きいか若しく同程度の不被膜面積を有する確率が相対的に低いものであるランダムな被膜処理は、そのような大きな不被膜面積を含む表面よりも、少ないヘイズを生成するだろう。これは、主に、光学遠距離場の光学分解能によるものである。遠距離場は、波長と比べて小さい横方向のスケールについての情報を含まないので、小さい空隙は、遠距離場に影響しないと共に、遠距離場を使用する観察者から見えない。
実施形態において、一体化したバインダー領域は、例えば、透明な基板の表面を、加熱、照射、摩擦、力学的衝撃、スタンピング(stamping)および類似した方法、または、それらの組合せ等の様々な公知の任意の方法で軟化させることによって、一時的に生成することができる。
ナノ粒子単層は、例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングおよび類似した方法、または、それらの組合せにより、水または溶剤系の懸濁液から堆積されてもよい。ナノ粒子単層は、随意的に、例えば、ナノ粒子が基板上に堆積される前または後に、基板表面の熱化、粒子の熱化、または、その両方によって、基板表面に融合されてもよい。ナノ粒子単層は、随意的に、例えば、非常に薄い層を、例えば、粒子表面上に、または、一体化したバインダー領域とナノ粒子との界面で追加することによって、一体化したバインダー領域の表面に融合されてもよい。例えば、ディップコーティングまたはスプレーコーティングによって塗布された、例えばシロキサン、ゾル‐ゲルSiO2若しくはフュームド(fumed)シリカスート材料の、または、さらにその他の材料の1から10nm等の厚さを有する非常に薄い層が、二次バインダー材料として作用してもよい。
実施形態において、ナノ粒子単層は、まず、アルカリケイ酸塩ガラス基板上に、例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングおよび類似した方法、または、それらの組合せを用いて形成されてもよい。ナノ粒子単層は、随意的に、アルカリケイ酸塩ガラス等のガラス表面に、熱焼結によって融合されてもよい。アルカリケイ酸塩ガラスは、次に、随意的に、例えば、元来のナトリウムイオンがカリウムイオンと交換される等、ガラス中のより小さい元来のイオンを、より大きなイオンとイオン交換することによって、化学的に強化されてもよい。
実施形態において、ガラス基板またはガラス物品は、ソーダ石灰ガラス、アルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリホウケイ酸塩ガラス、および、それらの組合せのうち1つを含むか、から実質的になるか、または、からなってもよい。実施形態において、ガラス物品は、例えば、以下の組成を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであってもよい。組成は、60〜72モル%のSiO
2、9〜16モル%のAl
2O
3、5〜12モル%のB
2O
3、8〜16モル%のNa
2Oおよび0〜4モル%のK
2Oであり、比は以下の通りである。
尚、アルカリ金属修飾剤は、アルカリ金属酸化物である。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板は、例えば、61〜75モル%のSiO2、7〜15モル%のAl2O3、0〜12モル%のB2O3、9〜21モル%のNa2O、0〜4モル%のK2O、0〜7モル%のMgOおよび0〜3モル%のCaOであってもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板は、例えば、60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl2O3、0〜15モル%のB2O3、0〜15モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、0〜1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3および50pp未満のSb2O3であり、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%であってもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板は、例えば、64〜68モル%のSiO2、12〜16モル%のNa2O、8〜12モル%のAl2O3、0〜3モル%のB2O3、2〜5モル%のK2O、4〜6モル%のMgOおよび0〜5モル%のCaOであり、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8mol%、(Na2O+B2O3)−Al2O3≦2モル%、2モル%≦Na2O−Al2O3≦6モル%、および、4モル%≦(Na2O+K2O)−Al2O3≦10モル%であってもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、例えば、50〜80質量%のSiO2、2〜20質量%のAl2O3、0〜15質量%のB2O3、1〜20質量%のNa2O、0〜10質量%のLi2O、0〜10質量%のK2Oおよび0〜5質量%の(MgO+CaO+SrO+BaO)、0〜3質量%の(SrO+BaO)および0から5質量%の(ZrO2+TiO2)であり、0≦(Li2O+K2O)/Na2O≦0.5であってもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、例えば、リチウムを実質的に有していなくてもよい。実施形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、例えば、ヒ素、アンチモン、バリウム、または、それらの組合せのうち少なくとも1つを実質的に有していなくてもよい。実施形態において、ガラスは、随意的に、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、KBr、SnO2および類似した物質、または、それらの組合せ等の、0から2モル%の少なくとも1つの清澄剤と共にバッチ処理されてもよい。
実施形態において、選択されたガラスは、例えば、ダウンドロー、つまり、公知のスロットドローまたはフュージョンドロー処理等の方法によって形成することができる。これらの場合、ガラスは、少なくとも130kpoiseの液相粘度を有していてもよい。アルカリアルミノケイ酸塩ガラスの具体例は、本願と所有者および譲受人が共通である、2007年5月22日出願の米国仮特許出願第60/930,808号の優先権を主張する、2007年7月31日出願のEllisonらの「Down−Drawable,Chemically Strengthend Glass for cover Plate」というタイトルの米国特許出願第11/888,213号明細書、2007年11月29日出願の米国仮特許出願第61/004,677号の優先権を主張する、2008年11月25日出願のDejnekaらの「Glasses Having Improved Toughness and Scratch Resistance」というタイトルの米国特許出願第12/277,573号明細書、2008年2月26日出願の米国仮特許出願第61/067,130の優先権を主張する、2009年2月25日出願のDejnekaらの「Fining Agents for Silicate Glasses」というタイトルの米国特許出願第12/392,577号明細書、2008年2月29日出願の米国仮特許出願第61/067,732号の優先権を主張する、2009年2月26日出願のDejnekaらの「Ion−Exchanged, Fast Cooled Glasses」というタイトルの米国特許出願第12/393,241号明細書、2008年8月8日出願の「Chemically Tempered Cover Glass」というタイトルの米国特許仮出願第61/087,324号の優先権を主張する、2009年8月7日出願のBarefootらの「Strengthened Glass Articles and Methods of Making」というタイトルの米国特許出願第12/537,393号明細書、2009年8月21日出願のBarefootらの「Crack and Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom」というタイトルの米国仮特許出願第61/235,767号明細書、および、2009年8月21日出願のDejnekaらの「Zircon Compatible Glasses for Down Draw」というタイトルの米国仮特許出願第61/235,762号明細書に記載されている。
以下の具体例に記載されるガラス表面およびシートは、任意の適切な粒子で被膜可能なガラス基板、または、イオン交換された基板等の類似した基板であってもよく、例えば、表2に列挙したガラス組成1から11、または、それらの組合せを含んでいてもよい。
Shinotsukaの米国特許第8,202,582号明細書は、反射防止表面を作製するのに単粒子フィルムエッチングマスクとして使用される二次元稠密微細構造に言及している。エッチングマスクは、滴下工程、蒸発工程、および、単粒子フィルムが基板に転写される転写工程によって作製される。単粒子フィルムエッチングマスクは、
D(%)=|B−A|×100/A
によって定義される、粒子アレイの位置ずれD(%)を有し、D(%)は10%以下であり、Aは粒子の平均直径であり、Bはフィルム内の粒子間平均ピッチである。
以下の実施例は、上記開示を使用する方法を、より完全に記載すると共に、さらに、開示の様々なアスペクトを実施するために考えられたベストモードを示す役割を果たすものである。これらの実施例は、開示の範囲を限定するものではなく、むしろ例示のために提示されるものである。実施例は、開示されたものを調製する方法をさらに記載する。
粒子を付与された表面の調製
実施例1(仮想的)
隣接する粒子間に実質的に均一な間隔または離間距離を有する、つまり、非稠密六方配置を有する粒子が付与された表面、および、一体化したバインダー層の調製。様々な基板上に、粒子間の間隔を制御しながら、非稠密ナノ粒子単層を作製するための多数の方法が明らかにされており、反射防止効果を示すものも含まれていた。これらの方法は、リソグラフパターン上の伝達性集積物(例えば、Hoogenboom,et.al.,「Template−Induced Growth of Close−Packed and Non−Close−Packed Colloidal Crystals during Solvent Evaporation」,Nano Letters,4,2,p.205,2004を参照)、堆積後の乾燥または加熱中に被収縮可能なヒドロゲル球体のディップコーティング(Zhang,et.al.「Two−Dimensional Non−Close−Packing Arrays Derived from Self−Assembly of Biomineralized Hydrogel Spheres and Their Patterning Applications」,Chem.Mater.17,p.5268,2005、図3および関連したテキストを参照)、SiO2のナノ球体のスピンコーティング、および、ずり配列であって、随意的に、このテンプレートにさらに材料を追加(Venkatesh, et. al.,「Generalized Fabrication of Two−Dimensional Non−Close−Packed Colloidal Crystals,」Langmuir,23,p.8231,2007、図5および関連したテキストを参照)、並びに、空気‐水、または、アルカン‐水界面における、基板に転写される、静電的に制御された自己集積物であって、随意的に非常に薄い(約17nm)の接着層を使用(Ray,et.al.,「Submicrometer Surface Patterning Using Interfacial Colloidal Particle Self−Assembly」,Langmuir,25,p.7265,2009、図8および関連したテキスト、および、Bhawalkar, et. al.「Development of a Colloidal Lithography Method for Patterning Nonplanar Surfaces」,Langmuir,26,p.16662,2010を参照)を含む。しかしながら、従来のこれらの研究は、粒子サイズと、粒子間隔と、基板の一体化したバインダー領域中への粒子の沈み込みとの間の望ましい関係を特定していなかった。それを、本開示では、粒子の沈込せ、または、焼結を随意的に行うことによる耐久性の強化と共に、可視光について優れた低反射性能を実現するために特定している。
D 粒子直径
p ピッチ
g 一体化したバインダー領域の厚さ
ρ 粒子密度