詳細な説明
CD70結合(CD70-binding)ペプチドを得るための本発明の方法において、バインダペプチドのライブラリが形成される。用語「ライブラリ」は、当該技術分野内に既知である。この用語の既知意味の範囲において、「バインダペプチドのライブラリ」は、異なるバインダペプチドの集合またはアレイとして理解することができる。ペプチドライブラリに関連して、用語「バインダペプチド」または代替的に「結合ペプチド」は、他の化合物および/または構造と結合する潜在能力を有するペプチド、具体的にエピトープ、より具体的にエピトープを指すと理解することができる。特に、本発明において、バインダペプチドは、CD70と結合する潜在能力を有している。
抗体(免疫グロブリン)および抗体の結合断片は、たとえばペプチドエピトープなどのエピトープを含む他の化合物および/または構造と結合する潜在能力を有する既知のペプチドである。したがって、本発明において、特に想定されたのは、抗体または抗体断片のライブラリを形成することである。当業者なら、抗体または抗体断片を取得する方法を知っているため、抗体または抗体断片のライブラリを形成する方法を知っているであろう。
抗体または抗体断片は、たとえば、McCaffertyら(McCafferty et al., 1990, Nature, 348:552-554)により記載された技術を用いて生成された抗体ファージライブラリから単離されることができる。Clacksonら(Clackson et al., 1991, Nature, 352:624-628)およびMarksら(Marks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222:581-597)は、ファージライブラリを用いてマウス抗体およびヒト抗体の単離をそれぞれ説明した。その後の刊行物は、鎖シャッフリングによって、高親和性(nMレベル)のヒト抗体の産生(Marks et al., 1992, Bio/Technology, 10:779-783)、および非常に大きなファージライブラリ構築するための戦略としての組合わせ感染およびインビボ組換え(Waterhouse et al., 1993, Nuc. Acids Res. 21:2265-2266)を記載している。
抗体または抗体断片は、Fukudaらにより記載された技術を用いて生成されたmRNAディスプレイライブラリから単離されることができる。Fukudaらは、mRNAディスプレイライブラリを用いて、抗体断片の単離を説明している(Fukuda et al., 2006, Nuc. Acids Res., 34:e127)。
代替的に、抗体ライブラリは、哺乳動物からCD70特異的免疫応答の誘発に適した試剤を用いて免疫化した哺乳動物、たとえば非ヒト哺乳動物などから採取されたリンパ細胞、好ましくは脾臓細胞の集合を含むことができる。(非ヒト)哺乳動物の免疫化および脾細胞(または他のリンパ細胞)の採集は、当該分野において通常の技術である。免疫化のために使用されたCD70特異的免疫応答の誘発に適した試剤は、CD70タンパク質またはその一部であってもよい。代替的に、免疫化は、CD70またはその一部をコーディングするヌクレオチド配列、好ましくはcDNA配列を用いたDNA免疫化によって行うことができる。DNA免疫化をするための方法および手順は、当業者にとって既知である。DNA免疫化をするための例示的な手順は、実施例に示されている。
抗体(または抗体断片)のライブラリの他に、非免疫グロブリンタンパク質足場から遺伝子操作されたバインダペプチドのライブラリを形成してもよい。このようなタンパク質足場の例として、Adnectin、Affibody、AnticalinおよびDARPin(Gebauer and Skerra, Current opinion Chem. Biol., 2009, 13:245-255; Caravella and Lugovskoy, Current opinion Chem. Biol., 2010, 14:520-528)を含むが、これらに限定されない。選択方法は、たとえば、CD70結合ペプチドを発現するタンパク質足場を識別するためのファージディスプレイを含む。
また、組合わせペプチドライブラリは、バインダペプチドのライブラリとして形成されてもよい。たとえば、1ビーズ−1化合物の組合わせライブラリは、1つのビーズが1つのペプチドと結合している広範囲セットのビーズペプチドを表すライブラリである。選択手順の後、ビーズは、回収され、ペプチドは、たとえば質量分析法を用いて、同定される(Lam et al., Methods, 1996, 9:482-93; Xiao et al., Comb. Chem. High Throughput Screen, 2013, Mar 13(印刷される前の電子版))。
CD70結合ペプチドを得るための方法において、CD70と特異的に結合するペプチドは、親和性選択によって、バインダペプチドのライブラリから選択される。親和性選択手順において、固体支持体上に固定化された標的ペプチドが使用される。「特異的に」結合は、リガンド/受容体対、抗体/抗原対または他の結合対を言及する場合、タンパク質および/または他の生物製剤の異種集団に存在するタンパク質、たとえばCD70を判定する結合反応を意味する。したがって、指定条件の下で、指定されたリガンド/抗原は、試料に存在する特定の受容体/抗体と結合するが、有意な量で他のタンパク質と結合しない。標的ペプチドは、CD70のCD27結合領域および多数のCD70エピトープを含む。選択するバインダペプチドのために固定化したリガンドを用いた親和性選択手順は、当技術分野において既知である。たとえば、パンニング手順またはバイオパニング手順は、既知である。当業者にとって既知および明白であろうのように、典型的な親和性選択手順は、3つのステップ、すなわち、バインダの捕捉ステップ、バインダの洗浄ステップおよび捕捉されたバインダの同定ステップを含む。
本発明の方法に用いられた親和性選択手順において、捕捉ステップは、ライブラリからのバインダペプチドをCD70のCD27結合領域を含む標的ペプチドに結合させることを含む。選択された標的ペプチドと特異的に相互作用するバインダペプチドの同定および/または単離を可能にするために、標的ペプチドは、固体支持体上に固定される。「固定」という用語は、流動性が制限されまたは低下されたという意味で理解すべきである。流動性の制限または低下は、洗浄ステップに使用された洗浄媒体に相対するものである。標的ペプチドの「固定」は、標的ペプチドを固体支持体に直接に結合するまたは固体支持体と直接に相互作用する必要がない。その代わりに、標的ペプチドは、固体支持体に結合された化合物または部分と相互作用することができ、または固体支持体と相互作用することができる。固体支持体に標的ペプチドを固定する例としては、標的ペプチドをプラスチックのような固体支持体との非特異的付着、NH2基を介してビーズとの結合、トシル活性化したビーズとの結合またはプロテインAビーズとの結合を含むが、これらに限定されない。このような方法および他の方法は、当業者にとって明白であろう。
本発明の方法に採用された親和性選択手順に使用された標的ペプチドは、CD70のCD27結合領域および多数のCD70エピトープを含む。CD70のCD27結合領域は、CD70タンパク質の全体から構成されてもよく、CD70タンパク質の一部から構成されてもよい。好ましくは、CD70タンパク質またはその一部の配列は、ヒト起源の配列である。CD70エピトープは、CD70のCD27結合領域に存在してもよく、標的ペプチドの異なる部分に存在してもよい。CD70のCD27結合領域およびCD70のエピトープは、遮蔽ペプチドと標的ペプチドとが結合できるように選択される。本明細書および添付の特許請求の範囲内の数字は、使用される場合、特に異なる記載のない限り、1つ以上、たとえば1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上を意味すると理解すべきである。
CD70結合ペプチドを得るための本発明の方法において、(CD70のCD27結合領域および多数のCD70エピトープを含む)標的ペプチドは、固体支持体上に固定され、遮蔽ペプチドと相互作用する。この遮蔽ペプチドは、CD27のCD70結合領域またはCD70と結合することができるCD27等価物のCD70結合領域を含む。CD27のCD70結合領域は、CD27タンパク質の全体から構成されてもよく、CD27タンパク質の一部から構成されてもよい。好ましくは、CD27タンパク質またはその一部の配列は、ヒト起源の配列である。
CD27のCD70結合領域の代わりに、CD27と同様にCD70の同一領域に結合するCD70結合ペプチドを用いることができる。このようなCD27の結合等価物は、CD70と連結する(結合する)ことができ、CD70−CD27の結合界面でCD70と結合するペプチド、たとえば抗体であってもよい。したがって、このようなペプチドは、CD70と結合(または連結)する点で、CD27と等価である。よって、CD27の結合等価物は、CD70と結合するとともに、CD27とCD70との相互作用を妨害する。したがって、CD27の結合等価物は、CD27とCD70との相互作用を妨害するペプチドから選択されてもよい。いくつかの実施形態によれば、CD70と連結するCD27の結合等価ペプチドは、たとえば、抗体2F2(CLB70/2、Pelicluster社から入手可能)、Ki−24(BD社から入手可能)、DS−MB03194(Ray Biotech社から入手可能)、10B1934(米国Biologicals社から入手可能)、CM204154(Int. Lab社から入手可能)、BU69(Santa Cruz社から入手可能)、7H173(Life Span Biosciences社から入手可能)から選択することができる。特定のCD70結合ペプチド、たとえばCD70結合抗体がCD70とCD27との相互作用を妨害するか否かは、実施例1または3に記載の方法にしたがって決定することができる。
CD70と連結することができ、本発明の使用に適する結合等価ペプチドは、1×10−6M未満、たとえば1×10−7M未満のCD70結合EC50、好ましくは1×10−6〜1×10−11M、たとえば1×10−7M〜1×10−11MのCD70結合EC50を有してもよい。代替的にまたは同時に、本発明の使用に適したCD70と連結するCD27結合等価ペプチドは、たとえば、CD27に結合するCD70を阻害するために、1.5×10−8M〜1×10−11MのIC50、たとえば4×10−9M〜1×10−11M、好ましくは3×10−9M〜1×10−10M、より好ましく2×10−9M〜5×10−10MのIC50を有してもよい。CD70と連結するCD27の結合等価ペプチドのEC50および/またはIC50は、当業者に公知の任意の適切な方法、特に実施例1に記載された方法を用いて決定することができる。
なお、標的ペプチドは、遮蔽ペプチドとの相互作用によって、固体支持体に固定されてもよく、遮蔽ペプチドは、上記に例示した既知の手段によって、固体支持体に固定されてもよい。
捕捉ステップの次に、洗浄ステップを行う。このステップにおいて、未結合成分(たとえば、バインダペプチドおよび/または標的ペプチドおよび/または遮蔽ペプチドおよび/または他の分子)は、洗浄液などの洗浄媒体を用いて、固体支持体から洗浄される。洗浄条件を選択することによって、選択のストリンジェンシーを選択することができる。このような手順は、当業者には明らかである。たとえば、細胞などを洗浄する手順において、リン酸緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝培養液は、洗浄液として使用される。洗浄液は、洗浄手順の(イオン強度)ストリンジェンシーに影響を与えるために、高塩(たとえば、1Mの塩化ナトリウム)または低塩(たとえば、50mMの塩化ナトリウム)を含むことができる。洗浄液は、洗浄手順の(疎水強度)ストリンジェンシーに影響を与えるために、Nonidet P-40などの界面活性剤を含むこともできる。
洗浄ステップに続く同定ステップにおいて、洗浄ステップを経ても標的ペプチドと相互作用し続けるバインダペプチドが同定される。同定ステップは、固体支持体からバインダペプチドを溶出することおよび任意の適切な公知方法で溶出されたバインダペプチドを同定することを含むことができる。当業者は、質量分析法を用いて、ペプチドを同定することができ、またはRNA塩基配列決定法を用いて、バインダペプチドをコーディングするRNA分子を同定することができ、またはDNA塩基配列決定法を用いて、バインダペプチドをコーディングするcDNA分子を同定することができる。代替的には、バインダペプチドの同定は、バイオマイクロアレイ設備において、蛍光標識などを用いてバインダペプチドまたは標的ペプチドのいずれかに結合された部分を標識することによって、行うことができる。
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、固体支持体および/または遮蔽ペプチドに結合するペプチドをネガティブ選択するステップをさらに含むことができる。特定の親和性選択手順において、ネガティブ選択ステップを含むことによって得られたCD70結合ペプチドは、ネガティブ選択ステップを含まない方法で得られたCD70結合ペプチドに対して、改善されたCD70特異性を有する。
ネガティブ選択ステップにおいて、標的ペプチドとの親和性よりも遮光ペプチドまたは固体支持体と高い親和性を有するバインダペプチドは、破棄される。ネガティブ選択ステップは、遮蔽ペプチドと相互作用する標的ペプチドを使用する捕捉ステップ(一次捕獲ステップ)の前にまたは後に行われてもよい。特定の実施形態によれば、ネガティブ選択ステップは、標的ペプチドが存在しない条件の下で、ライブラリからのバインダペプチドを(固体支持体上に固定された)遮蔽ペプチドと結合することを含むネガティブ捕捉ステップを包含することによって、一次捕獲ステップの前に行われる。この事前ネガティブ選択ステップにおいて、未結合のバインダペプチドは、選択され、一次捕獲ステップに使用される。特定の他の実施形態によれば、ネガティブ選択ステップは、標的ペプチドが存在しない条件の下で、一次捕獲ステップに選択されたバインダペプチドを(固体支持体上に固定された)遮蔽ペプチドと結合することを含むネガティブ捕捉ステップを包含することによって、一次捕獲ステップの後(事後)に行われる。この事後ネガティブ選択ステップにおいて、未結合のバインダペプチドは、CD70結合ペプチドとして選択される。ネガティブ選択ステップを実行するために、好ましくは、標的ペプチドの固定は、遮蔽ペプチドとの相互作用に依存する(遮蔽ペプチドは、標的ペプチドよりも、固体支持体とより強い相互作用を有する)。本実施形態において、標的ペプチドは、事前選択試験の後に、固体支持体上に固定された遮蔽ペプチドと相互作用させてもよい。そうしない場合、標的ペプチドと固定された遮蔽ペプチドとの相互作用は、事後選択ステップに乱される可能性がある。
上述した本発明の方法の手順によって、CD70結合ペプチドは、同定されおよび/または単離される。CD7結合ペプチドを容易に産生するために、本発明の方法を用いて選択されたCD70結合ペプチドのペプチド配列および/または本発明の方法を用いて同定されおよび/または取得されたCD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定および/または単離することは、有益であり得る。これによって、CD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチド配列のトランスフェクションすることができ、CD70結合ペプチドを産生する有機体を効率良く取得することができる。使用されたバインダペプチドのライブラリに応じて、CD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチド配列は、当業者に利用可能なさまざまな方法を用いて決定および/または単離されることができる。
ライブラリが免疫した哺乳動物から採取されたリンパ細胞の集合である場合、CD70結合ペプチドは、得られたリンパ細胞クローンの細胞表面に形成された免疫グロブリン分子である。CD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチド配列は、リンパ細胞クローンの培養物からRNAを単離し、免疫グロブリン特異的プライマを用いて免疫グロブリン配列を選択的に増幅し、その後、選択的に増幅された配列を決定することによって、取得することができる。
ライブラリがファージの集合である場合、選択された結合ペプチドは、ファージの表面に形成された抗体または抗体断片である。CD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチドは、単離ファージからDNAを単離した後、単離されたDNAの配列を決定することによって、単離することができる。
ライブラリがリボソーム上にディスプレイされたmRNAの集合である場合、選択された結合ペプチドは、リボソーム上にディスプレイされる。CD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチドは、リボソームに結合したmRNAを単離することによって、単離することができる。結合ペプチドは、直接RNA配列決定によって、またはmRNAに相補的なcDNAを生成し、選択的に増幅された配列を決定することによって、同定される。
ライブラリがビーズに結合した結合ペプチドの集合(1ビーズ−1化合物のライブラリ)である場合、1つの結合ペプチドは、1つのビーズに結合される。CD70結合ペプチドは、親和性選択手順に選択されたビーズからペプチドを回収し、その後、質量分析手順を行うことによって、同定される。
明らかには、本発明のCD70結合ペプチドを得るための方法において、反応、結合親和性選択工程などの工程、および捕捉ステップおよび洗浄ステップなどの関連工程は、適切な容器、たとえば反応容器に行われてもよい。
本発明はさらに、CD70結合ペプチドを得るための本発明の方法を用いて得られるCD70結合ペプチドに関する。なお、本発明の方法を用いて、多くの異なるCD70結合ペプチドを得ることができることは、当業者には明らかであろう。本発明の方法を用いて得られた結合ペプチドは、既知のCD70結合ペプチドに比べて、共通の特徴、すなわち、CD27−CD70の相互作用に対して減少した抑制力を有する。本発明のCD70結合ペプチド、たとえば抗体は、標的ペプチドに対して、通常約10−3M未満、より一般的には10−6M未満、典型的には10−7M未満、より典型的には10−8M未満、好ましくは10−9M未満、より好ましくは10−10M未満、最も好ましくは10−11M未満のEC50を有する(たとえば、Presta, et al., 2001, Thromb. Haemost. 85:379-389; Yang, et al., 2001, Crit. Rev. Oncol. Hematol. 38:17-23; Carnahan, et al., 2003, Clin. Cancer Res. (Suppl.) 9:3982s-3990sを参照)。特定の実施形態によれば、標的(CD70)に結合する本発明のCD70結合ペプチド、たとえば抗体のEC50は、1×10−6〜0.5×10−11M、1×10−7〜0.5×10−11M、1×10−8〜0.5×10−11M、1×10−8〜1×10−11M、好ましくは5×10−9〜1×10−11M、より好ましくは5×10−9〜1×10−10Mから選択することができる。標的(CD70)に対するCD70結合ペプチドの結合親和性は、当業者に公知の標準分析方法、特に実施例3に開示された方法を用いて決定することができる。特定の実施形態によれば、得られたCD70結合ペプチドは、CD27−CD70の相互作用に対する抑制力を示すIC50を有する。そのIC50は、少なくとも5×10−9M、たとえば少なくとも1×10−8M、または少なくとも5×10−8M、たとえば1×10−7Mよりも大きく、より好ましくは2×10−7Mよりも大きく、最も好ましく3×10−7Mよりも大きい。適切なIC50は、5×10−9〜1×10−4Mの範囲にあってもよく、好ましくは8×10−9〜1×10−4Mの範囲、たとえば1×10−8〜1×10−6M、1×10−8〜4×10−7M、2×10−8〜2×10−7M、2×10−7〜1×10−4M、または3×10−7〜1×10−4Mの範囲にあってもよい。本発明のCD70結合ペプチドのCD27−CD70の相互作用を抑制するためのIC50は、結合抑制を測定するための一般的な分析方法、特に実施例3に例示された方法にしたがって、決定することができる。
特定の実施形態によれば、得られたCD70結合ペプチドは、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの結合断片である。本明細書および添付の特許請求の範囲において、用語の免疫グロブリンおよび抗体は、同義語として使用され、交換することができる。「抗体」という用語は、所望の活性、特に標的位置に結合する活性を有する任意の抗体を指する。標的位置に結合することによって、特定の所望の効果が促進されることができる。たとえば、化合物または関連部分は、抗体に結合されることによって、標的位置を狙わせることができる。特定の実施形態によれば、抗体を標的位置に結合させることは、結合された細胞のFc媒介エフェクタ機能を誘発することができる。本発明において、標的抗体は、CD70である。CD70エピトープに抗体を結合すると、既知のCD70結合抗体に比べて、CD27−CD70の相互作用に対する干渉が低減される。したがって、「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、および多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)を含むが、これらに限定されない。本発明において、特定の抗体から由来したペプチドは、抗体類似体としてみなすことができる。当業者なら理解できるように、本発明の範囲内の抗体類似体の適切な機能を得るために、親抗体から派生した抗体(または抗体類似体)は、親抗体の抗原結合領域を含むであろう。具体的には、抗体類似体は、以下に定義される抗体断片、改良したフエクタ機能を有する抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体を含む。
「抗体断片」および「抗体結合断片」は、一般的には、親抗体の抗原結合領域または可変領域の少なくとも一部を含む抗体の抗原結合断片およびその等価部分を意味する。抗体断片は、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を保持する。このため、抗体断片は、多くのCDR、具体的にはVH領域に位置する多くのCDR、たとえばVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。抗体断片は、VH領域に位置するCDRの他に、VL領域に位置する多くのCDR、たとえばVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3を含んでもよい。特定の実施形態によれば、抗体断片は、VH領域に位置するCDR1、CDR2およびCDR3と、VL領域のCDR1、CDR2およびCDR3とを含んでもよい。典型的には、親の結合活性がモルベースで発現された場合、抗体断片は、親結合活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、抗体断片は、標的に対する親抗体の結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%、または100%以上を保持する。したがって、当業者にとって明らかなように、「抗体断片」は、多くの用途において、抗体を置換することができ、このような置換が適切である場合、用語「抗体」は、「抗体断片」を含むものとして理解すべきである。抗体断片の例は、Fab、Fab′、F(ab′)2およびFv断片、二重特異性抗体、線形抗体、単鎖抗体分子、sc−Fv、UniBodyまたはDuoBody(登録商標、GenMab社)、ドメイン抗体(DoMantis社)、ナノボディ(Ablynx社)、および抗体断片から形成された多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。遺伝子操作された抗体変異体は、HolligerおよびHudsonにより検討されている(Holliger and Hudson, 2005, Nat. Biotechnol. 23:1126-1136)。
「Fab断片」は、1つの軽鎖および1つの重鎖のCH1領域および可変領域から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とS−S結合を形成することができない。
「Fc」領域は、抗体のCH1ドメインおよびCH2ドメインを有する2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のS−S結合およびCH3ドメイン間の疎水作用によって一体に保持される。
「Fab′断片」は、1つの軽鎖と、VHドメインおよびCH1ドメインを有する1つの重鎖の一部と、CH1メインおよびCH2ドメインの間の領域とを含む。よって、2つのFab断片の2つの重鎖の間に鎖間S−S結合が形成され、F(ab′)2を形成することができる。
「F(ab′)2断片」は、2つの軽鎖と、CH1ドメインおよびCH2ドメインの間の定常領域の一部を含む2つの重鎖とを含む。よって、鎖間S−S結合が2つの重鎖間に形成される。したがって、F(ab′)2は、2つの重鎖間のS−S結合によって一体に保持された2つのFab′断片から構成される。
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖両方の可変領域を含むが、定常領域を含まない。
「単鎖Fv抗体」(または「scFv抗体」)は、抗体のポリペプチド単鎖に存在するVHドメインおよびVLドメインを含む抗体断片を指す。一般に、Fvポリペプチドはさらに、VHドメインとVLドメインの間に存在し、scFv抗体が所望の抗原結合構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカー(linker)を含む。scFvに関する概説は、Pluckthun, 1994, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315, 国際特許出願公開公報WO 88/01649、および米国特許第4,946,778号および第5,260,203号を参照する。
「二重特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片である。この抗体断片は、同一のポリペプチド鎖において連結された重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)、すなわちVH−VLまたはVL−VHを含む。同一鎖上の2つのドメイン間のペア形成を可能にするのには短すぎるリンカーを用いることにより、これらのドメインは、余儀なく別の鎖上の相補的ドメインとペアを形成し、2つの抗原結合部位を作り出す。二重特異性抗体は、たとえば、欧州特許公開EP404097、国際特許公開WO93/11161、およびHolliger et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448においてより詳しく記載されている。
「ドメイン抗体断片」は、重鎖の可変領域のみまたは軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能する免疫グロブリン断片である。いくつかの例において、2つ以上のVH領域は、共有結合を介してペプチドリンカーに結合されることによって、二価ドメイン抗体断片を作成する。二価ドメイン抗体断片の2つのVH領域は、同一の抗原または異なる抗原をターゲティングすることができる。
本発明の抗体断片は、たとえば当業者に利用可能な公知の方法を用いて、通常重鎖間のS−S結合の形成に関与するヒンジシステインのうち少なくとも1つを改変することによって、S−S結合能力を弱くした重鎖の二量体化(または多量体化)を可能にする十分な大きさの定常領域を含むことができる。別の実施形態において、抗体断片、たとえばFc領域を含む抗体断片は、無傷抗体に存在する場合、通常Fc領域に関連する生物学的機能、たとえばFcRn結合、抗体半減期調節、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、および/または補体結合(たとえば、抗体は、ADCC機能または補体結合に必要なグリコシル化プロファイルを有する)のうち、少なくとも1つを保持する。
「キメラ抗体」という用語は、所望の生物学的活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種から由来した抗体もしくは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一または類似であり、重鎖および/または軽鎖の残部が他の種から由来した抗体もしくは他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一または類似である抗体、およびこのような抗体の断片を指す(たとえば、米国特許第4816567号、およびMorrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855を参照)。
「ヒト化抗体」という用語は、本明細書に使用された場合、非ヒト(たとえば、マウス)抗体およびヒト抗体から由来した配列を含有する抗体を指す。このような抗体は、非ヒト免疫グロブリンから由来した最小配列を含む。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのすべてを含む。このような可変ドメインにおいて、すべてまたは実質的にすべての超可変ループは、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応しており、すべてまたは実質的にすべてのFR領域は、ヒト免疫グロブリン配列を有する領域である。場合によって、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含む。ヒト化抗体の親和性および安定性を増加するためまたは他の理由のために、特定のアミノ酸置換を行うが、ヒト化した齧歯動物抗体は、本質的に親の齧歯動物抗体と同様のCDR配列を含む。しかしながら、CDRループ置換が元の抗体と同様の結合特性を有する抗体を均一に産生することができないため、抗原結合親和性を維持するために、CDRループの支持に関与する枠組み残基(FR)に対する改変をヒト化抗体に導入することも考えられる(Kabat et al., 1991, J. Immunol. 147:1709)。
「抗体」という用語は、「完全ヒト」抗体、すなわち、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを有する抗体を含む。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞またはマウス細胞由来の雑種細胞から産生された場合、マウスの炭水化物鎖を含む可能性がある。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」は、マウスまたはラット免疫グロブリン配列を含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、ファージディスプレイ方法または他の分子生物学方法によって、ヒトからまたはヒト免疫グロブリン生殖細胞配列を有する遺伝子導入動物から産生することができる。また、組換え免疫グロブリンは、遺伝子導入マウスから産生することもできる(Mendez et al., 1997, Nature Genetics 15:146-156、Abgenix, Medarex, MeMo and Kymab社の技術を参照)。
また、本発明の抗体は、改変されたエフェクタ機能を提供するように、修飾(またはブロック)されたFc領域を有する抗体を含む(たとえば、米国特許第5624821号、WO2003/086310、WO2005/120571、WO2006/0057702、Presta, 2006, Adv. Drug Delivery Rev. 58:640-656; Vincent and Zurini, Biotechnol. J., 2012, 7:1444-50; Kaneko and Niwa, Biodrugs, 2011, 25: 1-11を参照)。このような修飾を使用して、免疫系の種々の反応を増強または抑制することができ、診断および治療に有益な効果を与えることができる。Fc領域の改変は、アミノ酸の改変(置換、欠失および挿入)、グリコシル化または脱グリコシル化、および複数のFc領域の追加を含む。また、Fc領域の改変は、治療抗体の半減期を改変することができる。半減期が長くなると、投与頻度の低減をもたらすことができ、それによって、利便性を増加し、材料の使用を減少することができる(Presta, 2005, J. Allergy Clin. Immunol, 116:731, p734-35を参照)。
また、本発明の抗体は、たとえば、完全なエフェクタ機能を提供する完全なFc領域を有する抗体、たとえば、標的抗体に関連する細胞から補体依存性細胞毒性(CDC)または抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘発するIgG1アイソタイプ抗体を含む。
CD70結合ペプチド、たとえばCD70結合抗体は、抗体の貯蔵安定性を改善する分子またはペプチドのインビボ半減期を増加する分子と共役(たとえば、共有結合)することができる。半減期を増加する分子の例としては、アルブミン(たとえば、ヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。抗体のアルブミン結合派生物およびPEG化派生物は、当技術分野に周知の技術を用いて作製することができる(たとえば、Chapman, 2002, Adv. Drug Deliv. Rev. 54:531-545; Anderson and Tomasi, 1988, J. Immunol. Methods 109:37-42; Suzuki et al., 1984, Biochim. Biophys. Acta 788:248-255; and Brekke and Sandlie, 2003, Nature Rev. 2:52-62を参照)。
「超可変領域」という用語は、本明細書に使用された場合、抗原と結合する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、たとえば軽鎖可変ドメインに存在する残基24−34(L1)、50−56(L2)および89−97(L3)ならびに重鎖可変ドメインに存在する残基31−35(H1)、50−65(H2)および95−102(H3)の配列アラインメントによって定義された「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(Kabat et al., 1991, Sequences of proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.を参照)、および/または、たとえば軽鎖可変ドメインに存在する残基26−32(L1)、50−52(L2)および91−96(L3)ならびに重鎖可変ドメインに存在する残基26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3)によって構造的に定義された「超可変ループ」(HVL)からのアミノ酸残基(Chothia and Leskl, 1987, J. Mol. Biol. 196:901-917を参照)を含む。「枠組み」残基または「FR」残基は、本明細書に定義された超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。
特定の実施形態によれば、本発明の方法で得られるCD70結合ペプチドは、配列番号5、6および7、または配列番号15、16および17、または配列番号25、26および27、または配列番号35、36および37、または配列番号45、46および47、または配列番号55、56および57、または配列番号65、66および67、または配列番号75、76および77、または配列番号83、84および85から選択されたアミノ酸配列と少なくとも60%、例として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するCDR1、CDR2およびCDR3配列を備える免疫グロブリンVHドメインを含み、例として、配列番号3、13、23、33、43、53、63、73または82から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%、例として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するVHドメインを含んでもよい。このようなCD70結合ペプチドは、免疫グロブリン、免疫グロブリン結合断片またはそれらの異なる類似体であってもよい。
CD70結合ペプチドは、配列番号5、6、7、8、9および10、または配列番号15、16、17、18、19および20、または配列番号25、26、27、28、29、30、または配列番号35、36、37、38、39、40、または配列番号45、46、47、48、49および50、または配列番号55、56、57、58、59、60、または配列番号65、66、67、68、69および70、または配列番号75、76、77、78、79および80から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%、例として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3配列を備える免疫グロブリンVHおよびVLドメインを含み、例として、配列番号3および4、または配列番号13および14、または配列番号23および24、または配列番号33および34、または配列番号43および44、または配列番号53および54、または配列番号63および64、または配列番号73および74から選択されたアミノ酸配列をと少なくとも60%、例として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するVH−VLドメイン対を含んでもよい。当業者は、遺伝コードに関する知識に基づいて、さまざまなアミノ酸配列をコーディングするDNA配列を決定することができる。上記の表1は、VHおよびVLアミノ酸配列をコーディングする多くのDNA配列を記載している。これらの配列は、配列表に提供される。このようなCD70結合ペプチドは、免疫グロブリン、免疫グロブリン結合断片またはそれらの異なる類似体であってもよい。
当業者が理解するように、「配列類似性」は、個々のヌクレオチドまたはペプチド配列が類似している程度を意味する。2つの配列の類似性の程度は、同一性の程度および保存的改変の程度に基づいている。「配列類似性」の百分率は、同一のアミノ酸またはヌクレオチドの百分率および保存的に改変されたアミノ酸またはヌクレオチドの百分率である。すなわち、「配列類似性」=(配列同一性%)+(保存的改変%)。
本発明の「保存的改変」および「同一性」は、より広義の用語「類似性」として考えられる。したがって、配列「類似性」という用語は、使用される場合、配列「同一性」および「保存的改変」の意味を包含する。
「配列同一性」という用語は、当業者に既知である。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列に共有されている配列同一性の程度を決定するために、2つの配列は、最適な比較をする目的で整列される(たとえば、第1のアミノ酸または核酸の配列にギャップ導入することによって、第2のアミノ酸または核酸の配列と最適に整列される)。このような整列は、比較される配列の全長で行うことができる。代替的には、より短い比較長さ、たとえば約20個、約50個、約100個またはそれ以上の核酸/塩基またはアミノ酸で、整列を行うことができる。
その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置に位置するアミノ酸残基またはヌクレオチドは、比較される。第1の配列のある位置が第2の配列の対応位置と同様のアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有された場合、2つの分子は、その位置で同一である。2つの配列の同一性程度は、通常は2つの配列間の同一性百分率で表示され、2つの配列に存在する同様残基によって共有された同様位置の数の関数である(すなわち、同一性%=対応する位置に位置する同様残基の数/位置の総数)×100)。好ましくは、比較される2つの配列は、同様の長さまたは実質的に同様の長さを有する。
「保存的改変」の百分率は、配列同一性の百分率と同様に決定されてもよい。しかしながら、アミノ酸またはヌクレオチド配列の特定位置での改変が元の残基の機能的特性を保持する可能性が高い場合、その改変は、発生していないとみなされる。
アミノ酸配列の場合、関連する機能的特性は、そのアミノ酸の物理化学的性質である。本発明のポリペプチドにおけるアミノ酸の保存的な置換物は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバから選択されてもよい。たとえば、タンパク質生化学の分野で周知のように、特定の長さまたは特性(たとえば、電荷、疎水性および親水性)を有するアミノ酸グループに属する1つのアミノ酸を用いて、タンパク質の活性、特にタンパク質の生物学的活性に直接に関連していない領域におけるタンパク質の活性を実質的に改変することなく、別のアミノ酸を置換することができる(たとえば、Watson, et al., Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p.224 (4th Edition 1987)を参照)。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンを含む。極性の中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む。正帯電(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンを含む。負帯電(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。保存的置換は、たとえば、正電を維持するために、Lysを用いてArgを置換することまたはその逆、負電を維持するために、Gluを用いてAspを置換することまたはその逆、遊離OH基を維持するために、Serを用いてThrを置換することまたはその逆、および遊離NH2基を維持するために、Glnを用いてAsnを置換することまたはその逆を含む。
本発明のCD70結合ペプチドのアミノ酸配列の例示的な保存的置換は、以下のように行うことができる。
ヌクレオチド配列の場合、関連する機能的特性は、主に、特定のヌクレオチドが転写および/または翻訳機構に関連して配列のオープンリーディングフレーム内において担持している生体情報である。遺伝コードが縮重度(または冗長性)を有し、複数のコドンがコーディングするアミノ酸と同様の情報を担持できることは、常識である。たとえば、特定種において、アミノ酸ロイシンは、UUA、UUG、CUU、CUC、CUA、CUGコドンによりコーティングされ(またはそのDNAは、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTGコドンによりコーティングされ)、アミノ酸セリンは、UCA、UCG、UCC、UCU、AGU、AGCにより特定される(またはそのDNAは、TCA、TCG、TCC、TCT、AGT、AGCにより特定される)。翻訳される情報を影響しないヌクレオチド改変は、保存的改変であると考えられる。
当業者なら分かるように、異なる数学的アルゴリズムを使用するいくつかの異なるコンピュータプログラムは、2つの配列の同一性を決定するために利用可能である。たとえば、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(Needleman et al. (1970))を応用するコンピュータープログラムを使用することができる。一実施形態によれば、コンピュータプログラムは、Accelrys社のGCGソフトウェアパッケージ(Accelrys Inc., San Diego, USA)に含まれたGAPプログラムである。使用され得る置換マトリックスは、たとえば、16、14、12、10、8、6または4のギャップ重み(gap weight)および1、2、3、4、5または6の長さ重み(length weight)を有するBLOSUM62マトリックスまたはPAM250マトリックスである。当業者なら理解できるように、これらの異なるパラメータのすべては、わずかに異なる結果をもたらすが、異なるアルゴリズムを使用しても、2つのヌクレオチド配列の全体的な同一性百分率は、大きく変更されない。
一実施形態によれば、2つのヌクレオチド配列間の同一性百分率は、Accelrys社のGCGソフトウェアパッケージ(Accelrys Inc., San Diego, USA)に含まれたGAPプログラムを用いて、決定される。使用されたNWSgapdna CMPマトリックスは、40、50、60、70または80のギャップ重みおよび1、2、3、4、5または6の長さ重みを有する。
別の実施形態において、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の同一性百分率は、(配列データを使用するALIGNクエリ(http://vegajgh.mrs.fr/bin align-guess.cgi)を用いて、Genestream server(IGH, Montpellier, France)から利用可能な)ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズム(Meyers et al. (1989))を用いて、決定される。このALIGNプログラムは、PAM120重み残基テーブル、12のギャップ長さペナルティおよび4のギャップペナルティを使用する。
本発明の場合、最も好ましくは、BLAST(Basic Local Alignment Tool)を使用して、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性百分率および/または類似性を決定することである。
Altschulら(1990)によるBLASTn、BLASTp、BLASTx、tBLASTnおよびtBLASTxプログラムを使用するクエリは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからアクセス可能なBLASTオンライン版を経由して、提出することができる。代替的には、NCBIインターネットサイトからダウンロードできるBLAST独立版(V2.2.24(2010年8月23日リリース))を使用することもできる。好ましくは、アミノ酸配列間の同一性百分率および/または類似性を決定するために、BLASTクエリは、次のパラメータ、すなわち、アルゴリズム:BLASTp、ワードサイズ:3、スコアマトリックス:BLOSUM62、ギャップコスト:有(11)、エクステンション:1、組成の調整:条件付き組成スコアマトリックス調整、フィルタ:オフ、マスク:オフを用いて実行される。同様に、ヌクレオチド配列間の同一性百分率および/または類似性を決定するために、BLASTクエリは、次のパラメータ、すなわち、アルゴリズム:BLASTn、ワードサイズ:11、クエリの最大一致:0、一致/不一致スコア:2/−3、ギャップコスト:有(5)、エクステンション:2、フィルタ:低複雑領域、マスク:ルックアップテーブルのみのマスクを用いて実行される。
「保存的改変」の百分率は、記載されたアルゴリズムおよびコンピュータプログラムを用いて、配列同一性の百分率と同様に、決定されることができる。一部のコンピュータプログラム、たとえばBLASTpは、陽性(=類似性)の数/百分率および同一性の数/百分率を提示する。保存的改変の百分率は、陽性/類似性の百分率から同一性の百分率を減算することによって、算出されてもよい(「保存的改変」%=類似性%−同一性%)。
利用可能なCD70結合ペプチドの配列情報に基づき、さらなる操作が可能である。CD70結合ペプチドが抗体である場合、たとえばヒトの重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインをコーディングする配列を用いて、同族マウス配列を置換することによって、抗体DNAを修飾することができ(米国特許第4816567号, Morrison, et al., 1984, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 81:6851)、または免疫グロブリンコーディング配列を非免疫グロブリン材料(たとえば、タンパク質ドメイン)コーディング配列のすべてまたは一部に共有結合することによって、抗体DNAを修飾することができる。典型的には、このような非免疫グロブリン材料は、抗体の定常ドメインを置換するまたは抗体の1つの抗原結合領域の可変ドメインを置換することによって、一抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合領域と、異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合領域とを含むキメラ二価抗体を生成する。
カラメル化抗体は、マウス抗体から由来した重鎖のみを有する抗体である。カラメル化は、Tanhaらの方法(Tanha et al., Protein Eng Des Sel., 2006, 19:503-9)にしたがって行うことができる。
ヒト化抗体は、非ヒトソースからの1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と呼ばれ、典型的には「移入」可変ドメインから取得される。ヒト化は、一般的に、Winterおよび共同研究者の方法(Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323-327; Verhoeyen et al., 1988, Science 239:1534-1536)に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列を用いてヒト抗体の対応する配列を置換することによって、行われる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインよりも実質的に少ない部分が非ヒト種由来の対応配列によって置換された抗体である。実際に、ヒト化抗体は、典型的には、その抗体のいくつかのCDR残基および場合によっていくつかのFR残基が齧歯類抗体などの非ヒト抗体の類似部位からの残基により置換されたヒト抗体である。
ヒト化抗体を作製する際に使用されるヒト軽鎖可変ドメインおよびヒト重鎖可変ドメイン両方の選択は、抗原性を低減するために非常に重要である。所謂「最良適合」法に従って、既知のヒト可変ドメイン配列の全体ライブラリに対照して、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列をスクリーニングする。齧歯類の配列と最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のヒト枠組み(FR)として受入れる(Sims et al., 1987, J. Immunol. 151:2296; Chothia et al., 1987, J. Mol. Biol. 196:901)。別の方法は、特定の軽鎖または重鎖のサブグループを有するすべてのヒト抗体のコンセンサス配列から由来した特定の枠組みを使用する。同様の枠組みは、いくつかの異なるヒト化抗体に使用されることができる(Carter et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285; Presta et al., 1993, J. Immnol. 151:2623)。
さらに重要なのは、抗体をヒト化する際に、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持することである。この目的を達成するために、好ましい方法によれば、ヒト化抗体は、親抗体配列およびヒト化抗体配列の三次元モデルを用いて、親抗体配列およびさまざまな概念的ヒト化産物の分析プロセスによって、作製される。三次元免疫グロブリンモデルは、通常入手可能であり、当業者に熟知である。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図示および表示するコンピュータプログラムは、入手可能である。表示された構造を閲覧することによって、候補免疫グロブリン配列の機能に関与する残基の可能な役割、すなわち、候補免疫グロブリンが抗原に結合する能力に影響を与える残基を解析することができる。このようにして、受取配列および移入配列からFR残基を選択および組合わせることができ、所望の抗体特性、たとえば、標的抗原に対する親和性の増加を達成する。一般に、CDR残基は、抗原結合に直接かつ最も実質的な影響を与える。
抗体のヒト化は、簡単なタンパク質工学作業である。ほぼすべてのマウス抗体は、CDR移植によって、抗原結合を維持しながら、ヒト化することができる(Lo, Benny, K.C., editor, in Antibody Engineering: Methods and Protocols, volume 248, Humana Press, New Jersey, 2004を参照)。
ヒト化抗CD70抗体のアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド改変をヒト化抗CD70抗体のDNAに導入することによって、またはペプチド合成によって、作製される。このような変異体は、たとえば、示されたヒト化抗CD70抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入、および/または置換を含む。最終の構造物が所望の特性を有することを保証できれば、欠失、挿入および置換の任意の組合わせを利用して、最終の構造物を取得してもよい。また、アミノ酸改変は、ヒト化抗CD70抗体の翻訳後過程を変更する可能性、たとえばグリコシル化領域の数または位置を変更する可能性がある。
CunninghamおよびWellsによって記載されたように(Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085)、突然変異誘発の好ましい位置であるヒト化抗CD70抗体ポリペプチドの特定残基または領域を同定するのに有用な方法は、「アラニン系統的変異導入法」と呼ばれている。この方法において、標的アミノ酸残基または標的アミノ酸残基群(たとえば、Arg、Asp、His、LysおよびGluなどの荷電アミノ酸残基)は、同定され、アミノ酸とCD70抗原との相互作用に影響を与えるために、同定された標的アミノ酸残基は、中性アミノ酸または負帯電アミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)によって置換される。次いで、置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸残基は、置換部位にさらなる変異体または他の変異体を導入することによって、精製される。したがって、アミノ酸配列変異体を導入する部位が予め決定されたため、突然変異それ自体の性質を予め決定する必要はない。たとえば、所定部位での突然変異能力を分析するために、標的コドンまたは標的領域にAlaスキャンニングまたはランダム突然変異誘発を行い、発現されたヒト化抗CD70抗体の変異体の所望の活性をスクリーニングする。
通常、ヒト化抗CD70抗体のアミノ酸配列変異体は、元のマウス抗体の重鎖または軽鎖のアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含有する。本願において、このアミノ酸配列との同一性または相同性は、最大の配列同一性%を達成するために必要に応じて配列の整列およびギャップの導入を行い、且つ、保存的置換を配列の同一性の一部として考慮しない場合に、候補配列に存在しており、ヒト化残基と同様であるアミノ酸残基の割合として定義される。抗体配列のN末端延長、C末端延長または内部延長、欠失、または挿入のいずれも、配列同一性または相同性に影響を与えるものとして解釈してはならない。2つの配列の同一性百分率は、SeqMan II(DNASTAR社、バージョン5.05)などのコンピュータアプリケーションを用いて決定することができる。このプログラムを使用する場合、SmithおよびWatermanの最適整列アルゴリズム(Journal of Molecular Biology, 1981, 147: 195-197)を用いて、2つの配列を整列することができる。2つの配列を整列した後、同一性百分率は、2つの配列間の同一アミノ酸の数を整列された配列の長さとすべてのギャップの長さとの差で割ることによって、計算することができる。
本明細書において、インビトロ生物学的阻害活性または適切な結合親和性を得るために、同定された特性を有する好ましい抗体をヒト化抗CD70抗体からスクリーニングすることができる。ヒトCD70のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、たとえば、Cold Spring Harbor研究所の研究室マニュアルの抗体章節(Ed Harlow and David Lane, 1988)に記載されているようなルーチン交差阻害アッセイを行うことができる。このようなアッセイにおいて、同一のエピトープに結合する抗体は、交差阻害する可能性があるが、重畳のエピトープに結合している抗体または非重畳のエピトープの近傍に結合している抗体の立体障害に起因する交差阻害があるため、すべての交差阻害抗体は、必ずしも正確に同一のエピトープに結合する必要がない。
代替的には、たとえば、Champeらによって記載されたエピトープマッピング(Champe et al., 1995, J. Biol. Chem. 270:1388-1394)を行うことによって、抗体が目的のエピトープに結合しているか否かを決定することができる。CunninghamおよびWellsによって記載された「アラニン系統的変異導入法」(Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085)または他の形式のヒトCD70アミノ酸残基の点変異誘発を使用して、本発明の抗CD70抗体の機能性エピトープを決定することもできる。抗体のエピトープをマッピングするための別の方法は、Slootstraら(Slootstra et al., 1996, Mol. Diversity 1: 87-96)およびTimmermanら(Timmerman et al., 2007, J. Mol. Recognit. 20: 283-299)によって記載されたクレジットカード式ミニPEPSCANカード(credit-card format mini PEPSCAN card)を用いて、スクリーニングすることができる合成の線形ペプチドおよびCLIPSペプチドに対する抗体の結合を検討することである。抗体と各ペプチドとの結合は、PEPSCANに基づく酵素結合免疫測定法(ELISA)によって決定される。
本発明の抗体として、同一のエピトープに結合するさらなる抗体は、たとえば、CD70のエピトープに結合するために産生された抗体をスクリーニングするによって、またはエピトープ配列を含有するヒトCD70の断片を含むペプチドを用いて、動物を免疫化することによって、取得することができる。同一の機能性エピトープに結合する抗体は、同様の生物学的活性、たとえば受容体の結合を阻害する活性を有すると期待することができる。抗体の機能性アッセイによって、これらの活性を確認することができる。
本発明の抗体として、同一のエピトープに結合する他のCD70結合ペプチドは、たとえば、本発明の選択技術および結合ペプチドを表示するライブラリを用いて、結合ペプチドを事前選択することによって、取得することができる。同一の機能性エピトープと結合する結合ペプチドは、同様の生物学的活性、たとえば受容体の結合を阻害する活性を有すると期待することができる。抗体の機能性アッセイによって、これらの活性を確認することができる。
「約」という用語は、本明細書に使用された場合、ある値が当業者により決められた特定値の許容誤差範囲内に存在することを指す。特定値の許容誤差範囲は、値を測定または決定する方法、たとえば測定システムの限界に部分的に依存する。たとえば、当該分野において、「約」は、操作毎に1以内または1を超える標準偏差にあることを意味することができる。代替的に、「約」または「本質的に含む」は、20%までの範囲を意味することができる。また、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、これらの用語は、ある値の一桁までの大きさまたは5倍までの大きさを意味することができる。特定値が本願および特許請求の範囲に言及された場合、特に明記しない限り、「約」または「本質的に含む」は、その特定値の許容誤差範囲内であると考えるべきである。
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラスから選択することができる。好ましくは、抗体は、IgG抗体である。IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意のIgGアイソタイプを使用することができる。IgGアイソタイプの変異体を使用することもできる。ヒト化抗体は、2つ以上のクラスまたはアイソタイプからの配列を含んでもよい。所望の生物学的活性を産生するために必要な定常ドメイン配列の最適化は、実施例に記載の生物学アッセイにしたがって、抗体をスクリーニングすることによって容易に達成される。
同様に、任意クラスの軽鎖は、本明細書の組成物および方法に使用されることができる。具体的には、κ型軽鎖、λ型軽鎖またはその変異体は、本発明の組成物および方法において、有用である。
本発明のCD70結合ペプチド、たとえば抗体、抗体類似体または抗体断片は、細胞毒性試剤などを含む細胞毒性ペイロード、または99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、3H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、40K、157Gd、55Mn、52Trおよび56Feなどを含む放射性ヌクレオチドと共役されてもよい。これらの抗体共役体は、免疫療法に使用され、抗体表面上の標的(抗原)を発現する細胞を選択的にターゲティングし、殺すことができる。例示的な細胞毒性試剤は、リシン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、緑膿菌外毒素、サポリン、ジフテリア毒素、シスプラチン、ドキソルビシン、アブリン毒素、ゲロニン、ヤマゴボウ抗ウイルスたんぱく質、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、メルタンシンおよびピロロベンゾジアゼピンを含む。
また、本発明の抗体および抗体断片は、蛍光体または化学発光標識体と共役することができる。このような蛍光体または化学発光標識体は、希土類キレートのようなフルオロフォア、フルオレセインおよびその誘発体、ローダミンおよびその誘発体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、フルオレサミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナール標識体、芳香族アクリジニウムエステル標識体、イミダゾール標識体、アクリジニウム塩標識体、シュウ酸エステル標識体、エクオリン標識体、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識体および安定の遊離ラジカルを含む。
Hunterら(Hunter et al., 1962, Nature 144:945)、Davidら(David et al., 1974, Biochemistry 13:1014)、Painら(Pain et al., 1981, J. Immunol. Meth. 40:219)、およびNygren, J.(Nygren, J., 1982, Histochem. and Cytochem. 30:407)により記載の方法を含め、当該分野で公知の任意の方法は、本発明の抗体分子またはタンパク質分子をさまざまな部分に共役させるために使用することができる。抗体およびタンパク質を共役させるための方法は、通常であり、当該技術分野において周知である。
特定の実施形態によれば、本発明の方法を用いて得られたCD70結合ペプチドは、組合わせペプチドライブラリから得られる結合ペプチドである。このようなCD70結合ペプチドは、抗体の構造に基づく必要ないため、非抗体結合ペプチドであってもよい。例としては、1ビーズ−1ペプチドライブラリから由来したCD70結合ペプチドを含む。他の例としては、Adnectin、Affibody、AnticalinおよびDARPinなどの遺伝子操作されたタンパク質足場に基づいたCD70結合ペプチドを含む。
本発明のさらなる局面は、本発明のCD70結合ペプチドを得るための方法を用いて得られたCD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチド配列を含む細胞に関する。上述したように、使用されたバインダペプチドライブラリに応じて、異なる手順で、CD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチド配列を決定および/または単離することができる。したがって、本発明のCD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチド配列を取得することができる。このようなヌクレオチド配列は、宿主細胞のトランスフェクションに使用することができる。したがって、細胞は、遺伝的に修飾された細胞であってもよい。具体的には、異種ヌクレオチド配列などのCD70結合ペプチドをコーディングするヌクレオチドを含有させることによって、細胞を遺伝的に修飾することができる。
宿主細胞は、クローン宿主であってもよく、発現宿主であってもよい。発現宿主として選択された場合、宿主細胞の発現システムは、好ましくは、抗体または抗体断片のような異種ペプチドを産生することができ、より好ましくは、抗体または抗体断片のような異種ペプチドを産生するように最適化される。宿主細胞は、単細胞生物または多細胞生物から選択されてもよいが、そうでなければ、CD70結合ペプチド、たとえばCD70結合免疫グロブリンタンパク質または関連するタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞から選択されてもよい。トランスフェクションのために、単離されたDNAを発現ベクターに挿入してから、宿主細胞にトランスフェクトすることができる。
代替的には、遺伝子導入動物(たとえば、マウス)を産生することも可能である。これらの遺伝子導入動物は、免疫化するときに、内因性免疫グロブリンを産生せず、ヒト抗体の完全なレパートリを産生することができる。たとえば、既に発表されたように、キメラおよび生殖系突然変異マウスに存在する抗体の重鎖連結領域(JH)遺伝子をホモ欠損させると、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらす。このような生殖系突然変異マウスにヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイを移入すると、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす(たとえば、Jakobovits et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551; Jakobovits et al., 1993, Nature 362:255-258; Bruggermann et al., 1993, Year in Immunology 7:33; Duchosal et al., 1992, Nature 355:258を参照)。
本発明に係る細胞を用いて、CD70結合ペプチドを産生することができる。したがって、本発明のさらなる局面は、CD70結合ペプチドを産生するためのプロセスに関する。本発明のプロセスは、本発明の細胞を提供するステップと、CD70結合ペプチドを発現する、好ましくは分泌するように、細胞を培養するステップとを含む。
CD70結合ペプチドは、宿主細胞発現系から単離することができる。単離するためのさまざまな手順は、当業者にとって容易に入手することができる。最適な特定手順は、使用される宿主細胞発現系に依存し、当業者は、利用可能な一般的知識に基づき、適切な選択を行うことができる。
組換え技術を使用する場合、CD70結合ペプチド、たとえば抗体(または抗体断片)は、細胞膜周辺腔において細胞内産生することができ、または培地に直接分泌することができる。CD70結合ペプチドが細胞内産生された場合、第1のステップとして、粒状破片、たとえば宿主細胞または溶解断片は、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carterら(Carter et al., 1992, Bio/Technology 10:163-167)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌された抗体を単離するための手順を記載した。簡潔に述べると、酢酸ナトリウム(pH 3.5)、EDTAおよびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、細胞ペーストを約30分間で解凍する。遠心分離によって細胞破片を除去することができる。CD70結合ペプチドが培地に分泌された場合、たとえばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットなどの市販タンパク質濃縮フィルタを用いて、発現システムから上清液を一次濃縮する。タンパク質の分解を抑制するために、上記の任意のステップに、たとえばPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を加えることができ、外来性汚染物の成長を防止するために、抗生物質を加えることができる。
細胞から調整されたCD70結合ペプチド組成物は、たとえば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフ法、ゲル電気泳動、透析、および親和性クロマトグラフ法を用いて精製することができる。そのうち、親和性クロマトグラフ法は、特に有利な精製技術である。免疫グロブリンの親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、そのタンパク質配列中に存在する任意の免疫グロブリンFc領域の種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトIg.γ1、ヒトIg.γ2、またはヒトIg.γ4重鎖に基づいた抗体を精製するために使用されることができる(Lindmark et al., 1983, J. Immunol. Meth. 62:1-13)。プロテインGは、すべてのマウスのアイソタイプおよびヒト.γ3に推奨される(Guss et al., 1986, EMBO J 5:1567-1575)。最も一般的には、親和性リガンドが結合するマトリックスは、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。細孔性ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースマトリックスに比べて、流速をより速くすることができ、処理時間をよりも短くすることができる。CD70結合ペプチドがCH3ドメインを含む抗体である場合、精製のために、Bakerbond ABX(商品名)樹脂(J. T. Baker, Phillipsburg, NJ)が有用である。回収する抗体に応じて、イオン交換カラムによる分留、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカクロマトグラフ法、ヘパリンSEPHAROSE(商品名)クロマトグラフ法、(ポリアスパラギン酸カラムなどの)アニオンまたはカチオン交換樹脂クロマトグラフ法、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿法などの他のタンパク質精製技術も、利用可能である。
本発明のさらなる局面は、CD70結合ペプチドを産生するためのプロセスを用いて得られたCD70結合ペプチド、たとえば結合断片を含む免疫グロブリンに関する。一般的に、このCD70結合ペプチドは、CD70結合ペプチドを得るための方法を用いて得られるCD70結合ペプチドに定義されたペプチド配列を有するだろう。しかしながら、グリコシル化プロファイルなどの翻訳後修飾において、違いが存在する可能性がある。たとえば、コアフコース残基を欠如する抗体は、増強されたADCC活性を示すことが証明されている。抗体のグリコシル化パターンの調節は、当業者に既知である。たとえば、GlycoFi社の技術を用いて、抗体が所望のレベルでFcエフェクタ機能を発揮するように、抗体のグリコシル化を特定的に調節することができる(Beck et al., Expert Opin Drug Discov., 2010, 5:95-111)。
CD70結合ペプチドの産生方法を用いて得られたCD70結合ペプチドは、単離抗体であってもよい。「単離」ペプチドとは、ペプチドを得る環境の成分から同定され、分離されおよび/または回収されたペプチドである。元の環境の汚染成分は、単離ペプチドの診断用途または治療用途を干渉する可能性があり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る物質である。いくつかの実施形態において、ペプチドは、(1)少なくとも50%、たとえば少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、たとえば少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、たとえば少なくとも99%の純度(Lowry法によって測定されたペプチドを含有する組成物に対するタンパク質の重量比)になるまで、(2)スピニングカップ配列決定機器を用いて、少なくとも15個の残基をN末端アミノ酸残基または内部アミノ酸残基を得るために十分な程度になるまで、(3)還元条件または非還元条件の下で、クーマシーブルー(Coomassie Blue)染色、好ましくは銀染色を用いてSDS-PAGEを行うために必要な均一性になるまで、精製される。単離抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分を含有しないため、組換え細胞内に原位置に位置する抗体を含む。しかしながら、通常は、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書に使用された場合、実質的に均質の抗体集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在する可能性のある自然突然変異を除いて同様である。モノクローナル抗体は、単一の抗原領域をターゲティングする高度特異的抗体である。また、一般的に異なる決定基(エピトープ)をターゲティングする異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基をターゲティングする。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質の抗体集団から得られた抗体の特徴を示し、特定の方法を用いて抗体を産生する必要があると解釈すべきではない。たとえば、本発明に使用されたモノクローナル抗体は、Kohlerら(Kohler et al., 1975, Nature 256:495)により最初に記載された雑種細胞法によって作製することができ、または組換えDNA法によって作製することができる(たとえば、米国特許第4816567号を参照)。また、「モノクローナル抗体」は、たとえばClacksonら(Clackson et al., 1991, Nature 352:624-628)およびMarksら(Marks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222:581-597)に記載された技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離することができる。本明細書において、モノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含む。
モノクローナル抗体は、当該技術分野の知識および技術にしたがって、被験対象にヒトCD70抗原を注入した後、所望の配列または機能的特徴を有する雑種細胞発現抗体を産生することによって、作製することができる。従来の手順を用いて(たとえば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコーディングする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、モノクローナル抗体をコーディングするDNAを容易に単離し、その配列を決定することができる。雑種細胞細胞は、このようなDNAの好ましい供給源である。
CD70結合ペプチドを産生するための本発明の方法により得られたCD70結合ペプチドは、配列番号5、6および7、または配列番号15、16および17、または配列番号25、26および27、または配列番号35、36および37、または配列番号45、46および47、または配列番号55、56および57、または配列番号65、66および67、または配列番号75、76および77、または配列番号83、84および85から選択されたアミノ酸配列と少なくとも60%、例として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するCDR1、CDR2およびCDR3配列を備える免疫グロブリンVHドメインを含み、例として、配列番号3、13、23、33、43、53、63、73または82から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%、例として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するVHドメインを含んでもよい。このようなCD70結合ペプチドは、免疫グロブリン、免疫グロブリン結合断片または異なる類似体であってもよい。
CD70結合ペプチドは、配列番号5、6、7、8、9および10、または配列番号15、16、17、18、19および20、または配列番号25、26、27、28、29、30、または配列番号35、36、37、38、39、40、または配列番号45、46、47、48、49および50、または配列番号55、56、57、58、59、60、または配列番号65、66、67、68、69および70、または配列番号75、76、77、78、79および80から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%、例として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3配列を備える免疫グロブリンVHおよびVLドメインを含み、例として、配列番号3および4、または配列番号13および14、または配列番号23および24、または配列番号33および34、または配列番号43および44、または配列番号53および54、または配列番号63および64、または配列番号73および74から選択されたアミノ酸配列をと少なくとも60%、例として少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有するVH−VLドメイン対を含んでもよい。当業者なら、遺伝コードの知識に基づき、これらのさまざまな配列をコーディングするDNA配列を決定することができる。上記の表1は、VHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列をコーディングする多くのDNA配列を記載している。DNA配列は、配列表で提供される。
本発明のさらなる局面は、多くのCD70結合ペプチドを得るための方法またはCD70結合ペプチドを産生するためのプロセスを用いて得られ、医薬品として使用されるCD70結合ペプチドに関する。この医薬品は、好ましくは癌を治療するための医薬品であり、より好ましくはCD70陽性癌を治療するための医薬品であり、最も好ましくはCD70過剰発現癌を治療するための医薬品である。腫瘍抗原としてCD70をターゲティングする異なる(マウス)モデルシステムにおける報告された効力を鑑みて、本発明のCD70結合ペプチドは、医学使用、特に癌治療に有効である。癌治療において、本発明のCD70結合ペプチドは、CD27−CD70の相互作用に対する抑制を減少するという利点を有するため、経路自身の抗腫瘍免疫能力を維持する。
本発明のCD70結合ペプチドを用いて治療可能な癌は、たとえば、白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒性)白血病、慢性リンパ細胞性白血病、マントル細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、多血症ベラリンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫、細胞癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸肉腫、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管細胞癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、上咽頭癌、食道癌、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳および中枢神経系(CNS)癌、子宮頚癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼の癌、頭頸部癌、胃癌、上皮内新生物、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌(小細胞、大細胞)、黒色腫、神経芽細胞腫。口腔癌(たとえば、唇、舌、口および咽頭)、卵巣癌、膵臓癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌および泌尿器系癌から選択することができる。
治療用途のため、CD70結合ペプチドをそのまままたは治療コンジュゲートとして使用することができる。治療「コンジュゲート」は、本明細書に使用された場合、たとえば細菌毒素、細胞毒性薬剤または放射性毒素などの治療部分に複合されたCD70結合ペプチド抗体またはその断片を意味する。毒性部分は、当技術分野で利用可能な方法を用いて、本発明の、CD70結合ペプチド抗体などに複合されることができる。
本発明のさらなる局面は、CD70結合ペプチドを含む組成物に関する。組成物は、CD70結合ペプチドと担体とを含む。特定の実施形態に係る組成物は、好ましくは医薬組成物である。
医薬組成物または滅菌組成物を調製するために、CD70結合ペプチド、特に抗体またはその断片は、たとえば、レミントン薬学およびアメリカ薬局方(Mack出版社、Easton, PA (1984))を参照して、薬学的に許容される担体および/または賦形剤と混合される。治療薬および診断薬の製剤は、たとえば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁液の形にした賦形剤または安定剤を生理学的に許容される担体に混合することによって、調製することができる(たとえば、Hardman, et al., 2001, Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, NY; Gennaro, 2000, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, NY; Avis, et al. (eds.), 1993, Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.), 1990, Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.), 1990, Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY; Weiner and Kotkoskie, 2000, Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, NYを参照)。
単独で投与されたまたは通常の抗癌剤などの別の試剤と組み合わせて投与された結合化合物、特に抗体および組成物抗体の毒性および治療効力は、たとえば、細胞培養物または実験動物のLD50(集団の50%を致死する用量)およびED50(集団の50%を有効治療する用量)を決定する標準的な薬学的手順によって決定されることができる。毒性効力と治療効力との間の用量比は、治療指数であり、LD50とED50との比として表すことができる。これらの細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用される場合の用量範囲を決定するときに使用されることができる。これらの化合物の用量は、好ましくは、毒性をほとんど有しないまたは全く有しないED50を含む循環濃度の範囲内にある。使用される剤形および利用される投与経路に応じて、用量を上記範囲内において変動してもよい。
適切な投与経路は、筋肉、静脈または皮下投与などの非経口投与と、経口投与とを含む。医薬組成物または本発明の方法を実施するために使用されたCD70結合ペプチド抗体の投与は、さまざまな伝統方法、たとえば、経口摂取、吸入、局所適用、皮膚注射、皮下注射、腹腔注射、非経口注射、動脈注射、または静脈注射によって行うことができる。一実施形態において、本発明の結合化合物は、静脈投与される。別の実施形態において、本発明の結合化合物は、皮下投与される。
代替的には、たとえばCD70結合ペプチドをしばしばデポー製剤または徐放性製剤として作用部位に直接注射することによって、全身投与ではなく局所投与でCD70結合ペプチドを投与することができる。また、標的薬物送達システムを用いて、抗体を投与することができる。
抗体、サイトカインおよび小分子の適切な用量を選択する指針は、利用可能である(たとえば、Wawrzynczak, 1996, Antibody Therapy, Bios Scientific Pub. Ltd, Oxfordshire, UK; Kresina (ed.), 1991, Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis, Marcel Dekker, New York, NY; Bach (ed.), 1993, Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases, Marcel Dekker, New York, NY; Baert, et al., 2003, New Engl. J. Med. 348:601-608; Milgrom, et al., 1999, New Engl. J. Med. 341:1966-1973; Slamon, et al., 2001, New Engl. J. Med. 344:783-792; Beniaminovitz, et al., 2000, New Engl. J. Med. 342:613-619; Ghosh, et al., 2003, New Engl. J. Med. 348:24-32; Lipsky, et al., 2000, New Engl. J. Med. 343:1594-1602を参照)。
適切な用量は、たとえば、当技術分野において治療を影響するまたは治療を影響すると予測された公知または疑いのあるパラメータまたは因子に基づき、臨床医によって決定される。一般には、用量は、最適用量より若干少ない量で始まり、任意の副作用に対して所望効果または最適効果が達成されるまで少しずつ増加される。重要な診断尺度は、たとえば、炎症性サイトカインにより生成れた症炎症状またはレベルを含む。
好ましい用量のプロトコルは、大きな望ましくない副作用を回避する最大用量または最大投与頻度を含む。週間総用量は、一般的には少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には少なくとも0.2μg/kg体重、最も一般的には少なくとも0.5μg/kg体重であり、典型的には少なくとも1μg/kg体重、より典型的には少なくとも10μg/kg体重、最も典型的には少なくとも100μg/kg体重であり、好ましくは少なくとも0.2mg/kg体重、より好ましくは少なくとも1.0mg/kg体重、最も好ましくは少なくとも2.0mg/kg体重であり、最適には少なくとも10mg/kg体重、より最適には少なくとも25mg/kg体重、最も最適には少なくとも50mg/kg体重である(たとえば、Yang, et al., 2003, New Engl. J. Med. 349:427-434; Herold, et al., 2002, New Engl. J. Med. 346:1692-1698; Liu, et al., 1999, J. Neurol. Neurosurg. Psych. 67:451-456; Portielji, et al., 2003, Cancer Immunol. Immunother. 52:133-144を参照)。小分子治療薬、たとえばペプチド模倣物、天然産物または有機化学物質の所望用量は、mol/kg基準で、抗体またはポリペプチドの用量とほぼ同様である。
「投与」、「療法」および「治療」は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官または生物学的流体に適用された場合、外因性製薬、治療薬、診断薬または組成物を動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官または生物学的流体と接触させることを意味する。「投与」、「療法」および「治療」は、たとえば、治療方法、薬物動態方法、診断方法、研究方法および実験方法を指すことができる。細胞の治療は、細胞に対する試薬の接触、および細胞に接触している流体に対する試薬の接触を包含する。また、「投与」、「療法」および「治療」は、たとえば、試薬、診断薬、結合組成物または別の細胞によって、細胞のインビトロ治療およびエクスビボ治療を意味する。
「阻害する」または「治療する」または「治療」は、本明細書に使用された場合、疾患に関連する症状の進展の遅延および/または疾患とともに発症する症状または発症すると予想される症状の発症度の低下を含む。これらの用語はさらに、既存症状の改善、追加症状の予防、これらの症状の潜在起因の改善または予防を含む。したがって、これらの用語は、疾患を患う脊椎動物対象物に有益な結果を与えることを意味する。
「有効治療量」または「有効量」という用語は、本明細書に使用された場合、CD70結合ペプチド、たとえば抗CD70抗体またはその断片を単独でまたは追加の治療薬と組み合わせて、細胞、組織または被験体に投与すると、治療する予定の疾患または状態の予防または改善に有効である量を意味する。また、治療有効用量は、症状の改善、たとえば、関連する病気の治療、治癒、予防または改善、もしくは関連する病気の治療、治癒、予防または改善の速度の増加をもたらすことに十分である化合物の量を意味する。治療有効用量は、単独で投与された個々の活性成分に適用された場合、その活性成分の量のみを意味する。治療有効用量は、組合わせに適用された場合、組み合わせで連続的にまたは同時に投与されたにも拘らず、治療効果をもたらした活性成分の総量を意味する。治療薬の有効量は、一般的には少なくとも10%、通常は少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の症状を低減するだろう。
第2の治療剤とともに、同時投与または同時治療を行うための方法は、当該技術分野に周知である(たとえば、Hardman, et al. (eds.), 2001, Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th ed., McGraw-Hill, New York, NY; Poole and Peterson (eds.), 2001, Pharmacotherapeutics for Advanced Practice: A Practical Approach, Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., PA; Chabner and Longo (eds.), 2001, Cancer Chemotherapy and Biotherapy, Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., PAを参照)。
また、本発明の医薬組成物は、細胞毒性制剤、化学療法制剤、細胞増殖抑制剤、血管新生抑制剤、代謝拮抗薬、腫瘍標的化剤、免疫刺激剤、免疫調節剤、細胞毒性制剤、細胞増殖抑制剤または毒性制剤に結合した抗体を含むが、これらに限定されない。また、医薬組成物は、外科手術、化学療法および放射線療法などの他の治療法と共に使用することもできる。
治療薬剤としての用途の他に、本発明のCD70結合ペプチドは、診断ツールおよび/または分析ツールとして使用することもできる。したがって、本発明のさらなる局面は、CD70結合ペプチドの上記用途に関する。たとえば、CD70結合ペプチドは、特定の細胞、組織または血清におけるCD70の発現を検出するために使用することができる。診断用途のために、本発明のCD70結合ペプチドは、典型的には、検出可能な標識基、すなわちシグナル伝達部分に(直接的または間接的に)結合される。ビオチン、蛍光色素、放射性核種、酵素、ヨウ素および生合成標識に一般的に分類されることができる多くの標識部分は、利用可能である。診断および分析用途に使用される本発明のCD70結合ペプチドの可能性は、実験部分に示された結果によってさらに支持される。
本発明のCD70結合ペプチドは、任意の公知アッセイ方法、たとえば競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、および免疫沈降アッセイに適用することができる(Zola, Monoclonal Antibodies. A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc. 1987))。
また、本発明のCD70結合ペプチドは、インビボ診断アッセイに使用することができる。一般的には、CD70結合ペプチドは、放射性核種によって標識され、よって、CD70結合ペプチドを発現するCD70抗原または細胞を免疫シンチグラフィーまたは陽電子放射断層撮影法を用いて位置付けすることができる。
また、本発明のCD70結合ペプチドは、他の非治療用途を有することができる。CD70結合ペプチドの非治療用途は、流動細胞分析法、ウェスタンブロット法、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、および免疫組織化学を含む。
本発明のCD70結合ペプチドは、たとえば、タンパク質Aセファロースカラムに固定されることによって、親和性精製の試薬として使用することができる。
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
実施例
市販の抗hCD70抗体がCD27の相互作用を阻害する
報告された抗hCD70抗体がCD27−CD70の相互作用を阻害することを確認するために、細胞ベースのELISA実験を用いて、阻害活性を確定した。まず、細胞発現されたhCD70に対する抗hCD70抗体の結合活性を決定するために、市販の抗hCD70抗体(表2を参照)を用いて、細胞ベースのELISA実験を行った。細胞ベースのELISA実験において、すべての温置ステップを行った後、PBST(0.01%のTween 20を含有するPBS)を用いて、洗浄ステップを行った。CHO−K1.hCD70細胞を(4万細胞/ウェルで)組織培養プレートに接種し、37℃で一晩温置した。翌日、培地を除去し、細胞を精製された抗体(の希釈液)とともに37℃で1時間温置した。次に、細胞をPBSTで3回洗浄し、1:1000ヤギ抗マウスIgG−HRP(Southern Biotechnology, #1030-05)とともに37℃で1時間温置した。その後、細胞をPBSTで6回洗浄し、100μlのTMB安定Chromagen(Invitrogen社、カタログ番号:SB02)を用いて、抗hCD70免疫反応物を可視化した。100μlの0.5MH2SO4を用いて、反応を停止し、450nmおよび620nmで吸光度を読み取った。図1Aに示すように、異なる抗hCD70抗体は、類似の結合強度でhCD70と結合した。結合信号全体の50%が観察される濃度を表すEC50計算値は、表2に示される。
細胞ベースの競合アッセイを用いて、精製された抗体の阻害活性を検討した。以下の原則に従って、競合アッセイを行った。具体的には、CHO−K1.CD27細胞を(4万細胞/ウェルで)96ウェルプレートに接種し、37℃で一晩温置した。培地を除去した後、50μlのhCD70組換え体(CD70(h)−muCD8融合タンパク質(Ancell社、カタログ番号:ANC-537-030)(0.5μg/ml)および50μlの精製抗hCD70抗体の異なる希釈液を添加した。室温で1時間温置した後、ウェルをPBSTで3回洗浄した。次いで、各ウェルに100μlのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(BD PharMingen社、カタログ番号:554066)(1:1000)を添加し、細胞を37℃で1時間温置した。最後に、PBSTで6回洗浄した後、各ウェルに100μlのTMB安定Chromagen(Invitrogen社、カタログ番号:SB02)を添加した。100μlの0.5MH2SO4を用いて、反応を停止し、450nmおよび620nmで吸光度を読み取った。図1Bに示すように、すべての市販抗hCD70抗体は、ヒトCD70組換え細胞とCHO−K1.CD27細胞との相互作用を阻害した。結合信号全体の50%が観察される濃度を表すEC50計算値は、表2に示される。
抗hCD70抗体の免疫化および選択
hCD70cDNAによるマウスの免疫化
CD27結合に対して減少した阻害活性を有するヒトCD70タンパク質の抗体を単離するために、hCD70 cDNAを用いて、マウスを免疫した。次に、減少した阻害活性を有する抗hCD70を発現するB細胞を特異的に単離するために、選択手順を設計および開発した。
抗hCD70抗体は、マウスのcDNA免疫化によって得られた。まず、hCD70の全長オープンリーディングフレームをコーディングするcDNAをpCI−neoベクタ(ProMega社、Madison, WI)にサブクローンした。得られたベクタの発現は、CHO−K1細胞(アメリカ培養細胞系統保存機関、Manassas, VA)にpCI−neo-hCD70を一過性トランスフェクションし、および10μg/Mlのマウス抗hCD70のIgG1(BD PharMingen社、#555833)を用いて流動細胞計測した後、ヤギ抗マウスIgG−FITC(1:100)(Southern Biotechnology, Birmingham, AL)を用いて、確認された。Helios遺伝子銃(BioRad, Hercules, CA)およびDNA被覆金弾丸(BioRad)を用いて、製造業者の使用説明書にしたがって、遺伝子銃免疫法によってマウスを免疫化した。簡単に言えば、2:1:1のpCI−neo−hCD70 cDNA、市販のマウスFlt3L発現ベクタおよび市販のマウスGM−CSF発現ベクタ(両方がAldevron, Fargo, NDから提供される)を用いて、1μmの金粒子をコーティングした。合計1μgのプラスミドDNAを用いて、500μgの金粒子をコーティングした。
具体的には、遺伝子銃を用いて7〜8週齢のBALB/C雌マウスの両耳に3回ずつの注射をすることによって、マウスの耳を免疫化した。2回のDNA免疫化の後、細胞ELISA実験によって、マウス血清から約1:8000の抗hCD70力価を検出した。細胞ELISA実験において、すべての温置ステップを行った後、PBST(0.01%のTween 20を含有するPBS)を用いて、洗浄ステップを行った。CHO−K1.hCD70細胞を(4万細胞/ウェルで)組織培養プレートに接種し、37℃で一晩温置した。翌日、培地を除去し、細胞をマウス血清(の希釈液)とともに37℃で1時間温置した。次に、細胞をPBSTで3回洗浄し、1:1000ヤギ抗マウスIgG−HRP(Southern Biotechnology, #1030-05)とともに37℃で1時間温置した。
続いて、細胞をPBSTで6回洗浄し、100μlのOptiEIA TMB基質(BD Biosciences社、Franklin Lake, NJ)を用いて、抗hCD70免疫反応物を可視化した。100μlの0.5MH2SO4を用いて、反応を停止し、450nmおよび620nmで吸光度を読み取った。hCD70に対する反応性を示したマウスは、最終回の4回目の免疫化を行い、4日後に屠殺した。
赤血球枯渇脾臓細胞集団は、既に公開されたように(Steenbakkers et al., 1992, J. Immunol. Meth. 152: 69-77; Steenbakkers et al., 1994, Mol. Biol. Rep. 19: 125-134)調製され、−140℃で凍結された。
阻害活性減少した抗hCD70抗体を産生するB細胞の選択
具体的には、阻止特性減少した抗hCD70抗体を産生するB細胞を選択するために、阻害活性減少した抗hCD70抗体を発現するB細胞に優先的に結合する選択戦略を設計および開発した。10μgのhCD70組換え体(CD70(h)−muCD8融合タンパク質(Ancell社、カタログ番号:ANC-537-030)と共に、5×107個のM−280ストレプトアビジン磁気ダイナビーズ(カタログ番号:112.06D)を500μlのPBS/1%BSAに4時間温置した。次に、上清液を吸取り、PBS/1%BSAで2回洗浄した後、10μgのhCD27−Fcの組換えタンパク質(R&D systems, 382-CD)を500μlのPBS/1%BSAに入れて、結合させた(図2)。一晩温置の後、毎回5mlのDMEM F12/P/S/10%BCS媒体を用いて、CD70−CD27複合したビーズを10回洗浄した。陰性選択物として、5×107個のM−280ストレプトアビジン磁気ダイナビーズ(カタログ番号:112.06D)を500μlのPBS/1%BSAに温置した。次に、上清液を吸取り、PBS/1%BSAで2回洗浄した後、10μgのhCD27−Fcの組換えタンパク質(R&D systems, 382-CD)を500μlのPBS/1%BSAに入れて、結合させた。一晩温置の後、毎回5mlのDMEM F12/P/S/10%BCS媒体を用いて、CD70−CD27複合したビーズを10回洗浄した。
阻害活性減少した抗hCD70抗体を産生するB細胞クローンを選択するために、3.5×107個の赤血球枯渇脾細胞を解凍した。陰性選択物(BSAブロックされたストレプトアビジン磁気ダイナビーズ)に脾細胞を結合させた(細胞比1.5:1)後、CD70−CD27複合したストレプトアビジン磁気ダイナビーズから陽性選択物を選択することによって、hCD70特異的B細胞を選択した(細胞比1.5:1)。非特異結合の脾細胞は、毎回5mlのDMEM F12/P/S/10%BCS媒体を用いて10回洗い流した。並行して、脾細胞のみをCD70−CD27複合したストレプトアビジン磁気ダイナビーズからの陽性選択物に結合させる(細胞比1.5:1)ことによって、hCD70特異的B細胞を選択した。非特異結合の脾細胞は、毎回5mlのDMEM F12/P/S/10%BCS媒体を用いて10回洗い流した。次に、Steenbakkersら(Steenbakkers et al., 1994, Mol. Biol. Rep. 19: 125-134)に記載したように、(両方の戦略を使用して)選択されたB細胞を培養した。簡単に説明すると、96ウェル平底組織培養プレートにおいて、選択されたB細胞を、最終容量200μlのDMEM F12/P/S/10%BCSに含有された7.5%(v/v)のT細胞上清液および放射線(2500ラド)で照射した5万個のEL−4 B5栄養細胞と混合した。
8日目に、上述したように、細胞ELISA実験によって、上清液のhCD70反応性をスクリーニングした。hCD70反応性抗体を発現する20個のB細胞クローンは、細胞ELISA実験によって同定された。すべての温置ステップを行った後、PBST(0.01%のTween 20を含有するPBS)を用いて、洗浄ステップを行った。CHO−K1.hCD70細胞を(4万細胞/ウェルで)組織培養プレートに接種し、37℃で一晩温置した。翌日、培地を除去し、細胞をB細胞上清液(の希釈液)とともに37℃で1時間温置した。次に、細胞をPBSTで3回洗浄し、1:1000ヤギ抗マウスIgG−HRP(Southern Biotechnology社, #1030-05)とともに37℃で1時間温置した。その後、細胞をPBSTで6回洗浄し、100μlのTMB安定Chromagen(Invitrogen社、カタログ番号:SB02)を用いて、抗hCD70免疫反応物を可視化した。100μlの0.5MH2SO4を用いて、反応を停止し、450nmおよび620nmで吸光度を読み取った。
続いて、hCD70反応上清液からのB細胞クローンは、以下の公開手順(Steenbakkers et al., 1992, J. Immunol. Meth. 152: 69-77; Steenbakkers et al., 1994, Mol. Biol. Rep. 19:125-34)に従って、ミニ電気融合によって不死化された。具体的には、B細胞を106個のSP2/0−Ag14骨髄腫細胞と混合し、DMEM F12媒体で洗浄することによって、血清を除去した。細胞をプロナーゼ溶液(CalbiocheM社、カタログ番号:4308070.536)で3分間処理し、電気融合用の等モル緩衝液(Eppendorf社、カタログ番号:53702)で洗浄した。電気融合は、50μlの融合チャンバにおいて、30秒、2MHzおよび400V/30の交流電界を受けてから、10マイクロ秒および3kV/cmの正方形高磁場パルスを受け、再び、30秒、2MHzおよび400V/30の交流電界を受けることによって、行われる。
融合チャンバの内容物を雑種細胞選択培地に移し、限界希釈条件の下で96ウェルプレートに接種した。上述したように、融合後の12日目に、雑種細胞上清液のhCD70−結合活性をスクリーニングした。上清液にhCD70を認識した抗体を分泌する9つの雑種細胞は、完全性を保護するために、限界希釈条件の下でサブクローンされた。以下の抗hCD70抗体、すなわち、hCD70.17、hCD70.21、hCD70.23、hCD70.27、hCD70.29、hCD70.32、hCD70.34、hCD70.36およびhCD70.39は、さらなる分析のために選択された。
CD70結合ペプチドを同定するために使用された選択戦略は、図2に模式的に示されている。この模式図において、標的ペプチド(CD70)は、固体支持体(ビーズ)に結合され(または他の方法で固定され)、遮蔽ペプチド(CD27)は、標的ペプチドとの相互作用によって、固体支持体に固定される。しかしながら、上記の説明から明らかなように、代替的な実施形態において、遮蔽ペプチドは、固体支持体に結合され(または他の方法で固定され)てもよく、標的ペプチドは、遮蔽ペプチドとの相互作用によって、固体支持体上に固定されてもよい。
抗hCD70抗体の精製と特徴付け、抗hCD70を産生する雑種細胞の安定化、および抗hCD70抗体の精製
hCD70雑種細胞のクローン細胞集団は、2回限界希釈することによって得られた。安定の雑種細胞を無血清培地で7〜10日間培養した。上清液を回収し、0.22μMのニトロセルロース膜で濾過した。製造業者の使用説明書にしたがって、Prosep-Aスピンカラム(Millipore社、カタログ番号:LSK2ABA60)を用いて、抗体を精製した。PD−10ゲル濾過カラム(GE Healthcare社)を用いて、緩衝液をPBSに交換した。抗体は、Amicon Ultra-15遠心式濾過ユニット(Millipore社, Billerica, MA)を用いて濃縮され、分光光度計を用いて定量化した。マウスモノクローナル抗体アイソタイピング試験キット(Roche社, #11493027001)を用いて、すべてのhCD70抗体の(サブ)アイソタイプは、IgG1−Κであると決定された。
結合解析
細胞発現されたhCD70に対する抗hCD70抗体の結合活性を決定するために、精製されたhCD70抗体を用いて、細胞ベースのELISA実験を行った。この細胞ELISA実験において、すべての温置ステップを行った後、PBST(0.01%のTween 20を含有するPBS)を用いて、洗浄ステップを行った。CHO−K1.hCD70細胞を(4万細胞/ウェルで)組織培養プレートに接種し、37℃で一晩温置した。翌日、培地を除去し、細胞を精製された抗体(の希釈液)とともに37℃で1時間温置した。次に、細胞をPBSTで洗浄し、1:1000ヤギ抗マウスIgG−HRP(Southern Biotechnology社, #1030-05)とともに37℃で1時間温置した。その後、細胞をPBSTで6回洗浄し、100μlのTMB安定Chromagen(Invitrogen社、カタログ番号:SB02)を用いて、抗hCD70免疫反応物を可視化した。100μlの0.5MのH2SO4を用いて、反応を停止し、450nmおよび620nmで吸光度を読み取った。図3Aおよび図4Aに示すように、異なるhCD70抗体は、類似の結合強度でhCD70に結合した。結合信号全体の50%が観察される濃度を表すEC50計算値は、表3に示される(2F2抗hCD70抗体(Pelicluster社)を基準物として使用する)。
細胞ベースの競合アッセイを用いて、精製された抗体の阻害活性を検討した。以下の原則に従って、CHO−K1.CD27の競合アッセイを行った。具体的には、CHO−K1.hCD70細胞を(4万細胞/ウェルで)96ウェルプレートに接種し、37℃で一晩温置した。培地を除去した後、50μlのhCD70組換え体(CD70(h)−muCD8融合タンパク質(Ancell社、カタログ番号:ANC-537-030)(0.5μg/ml)および50μlの精製抗hCD70抗体のさまざまな希釈液を添加した。
室温で1時間温置した後、ウェルをPBSTで3回洗浄した。次いで、各ウェルに100μlのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(BD PharMingen社、カタログ番号:554066)(1:5000)を添加し、細胞を37℃で1時間温置した。最後に、PBSTで6回洗浄した後、各ウェルに100μlのTMB安定Chromagen(Invitrogen社、カタログ番号:SB02)を添加した。100μlの0.5MH2SO4を用いて、反応を停止し、450nmおよび620nmで吸光度を読み取った。基準抗体として、抗hCD70、クローン2F2(Pelicluser)を使用した。図3Bおよび4Bに示すように、精製されたhCD70抗体は、CD27−CD70相互作用の阻害活性を減少した。阻害活性の半分が観察される濃度を表すhCD70抗体および2F2抗hCD70基準抗体のIC50計算値は、表3に示される。
阻害活性減少した抗hCD70抗体が示したCD70+腫瘍細胞の腫瘍殺傷、および阻害活性減少した抗hCD70抗体とCD70+腫瘍細胞との結合
阻害活性減少した単離抗hCD70抗体とCD70+腫瘍細胞との結合を研究するために、WIL2−S細胞株、Daudi細胞株およびRaji細胞株は、アメリカ培養細胞系統保存機関(Manassas, VA)から入手し、RPMI 1640(Gibco社, カタログ番号:52400)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco社, カタログ番号:15140-122)、10%ウシ胎児血清(Hyclone社、ロット番号:DRE0250)、および1%ピルビン酸ナトリウム(Gibco社, カタログ番号:11360, WIL2-S専用)からなる培地に培養した。結合を分析するために、hCD70抗体をPBS/1%BSAで希釈した。100〜20万の細胞を各ウェルプレートの丸底に接種し、遠心分離によりペレット化した。指でプレートを軽打することによって、上清液を除去し、100μlの希釈抗体を加えて4℃で1時間温置した。次に、細胞をPBS/1%BSAで2回洗浄し、100μlのPBS/1%BSAに溶解した1μgのヤギ抗マウスIg FITC(BD PharMingen社, カタログ番号:349031)を添加して、暗所で4℃、30分間温置した。最後に、流動細胞計測装置(FACScanto II)を用いて結合した抗hCD70抗体を分析する前に、細胞をPBS/1%BSAで2回洗浄した。マウスIgG Kアイソタイプ対照物(eBioscience社, カタログ番号:16-4714-85)をアイソタイプ対照物として使用した。取得したデータは、Flowjo v10.0.5を用いて分析した。すべての阻害活性減少した抗hCD70抗体は、腫瘍細胞株から由来したB細胞に結合した(表3)。
阻害活性減少した抗hCD70抗体が示したCD70+腫瘍細胞の腫瘍殺傷
補体媒介したCD70+腫瘍細胞の細胞死を誘発する抗hCD70抗体の能力を研究するために、まず、最終濃度約1μg/mlのCalcein AM(Invitrogen社、カタログ番号:C3099)とともに、CD70+腫瘍細胞(たとえば、WIL2S, Raji, Daudi)をPBS溶液に37℃で30分間温置することによって染色した。染色された細胞を遠心分離によってペレット化し、RPMI 1640(Gibco社, カタログ番号:52400)に再懸濁させた。次に、3万個の細胞を各96ウェルプレートの丸底に接種した。RPMI 1640培地中の抗hCD70抗体の一連の希釈液を添加した。最後に、濃度範囲(たとえば、補体濃度16%〜50%)の補体(たとえば、ヒト補体(SigMa社、S17664-1ML)またはLow Tox-Mウサギ補体(Cedarlane社, CL3051)を添加し、37℃で2時間温置した。ヨウ化プロピジウム(BD PharMingen社、51-66211E)を用いて標識した後、流動細胞計測装置を用いて、補体誘発の細胞毒性を評価した。Calcein陽性かつヨウ化プロピジウム陰性の細胞は、生存している細胞を表し、Calcein陰性細胞は、死亡した細胞を表す。
CD70+腫瘍細胞の抗体依存性細胞毒性を誘発する抗hCD70抗体の能力を研究するために、まず、最終濃度約1μg/mlのPBS溶液において、37℃で30分間温置することによって、Calcein AM(Invitrogen社、カタログ番号:C3099)を用いてCD70+腫瘍細胞(たとえば、WIL2S, Raji, Daudi)を染色した。染色された細胞を遠心分離によってペレット化し、RPMI 1640(Gibco社, カタログ番号:52400)に再懸濁させた。20万のPBMCを各96ウェルプレートの丸底に接種した。10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640培地中の抗hCD70抗体の一連の希釈液を添加した。最後に、目標定量(たとえば、100:1または50:1または25:1)で、Calcein染色したCD70+腫瘍細胞(たとえば、WIL2S, Raji, Daudi)を異なるエフェクタに添加した。細胞を37℃で4.5時間温置した。ヨウ化プロピジウム(BD PharMingen社、51-66211E)を用いて標識した後、流動細胞計測装置を用いて、細胞生存率を分析した。Calcein陽性かつヨウ化プロピジウム陰性の細胞は、生存している細胞を表し、Calcein陰性細胞は、死亡した細胞を表す。
抗hCD70抗体がT細胞の活性化を阻害しない
阻害活性減少したCD70抗体がT細胞の活性化に対する影響を研究するために、CHO−K1.CD70細胞およびヒトCD4+T細胞の共培養アッセイを開発した。放射線(3000ラド)で照射した4万個のCHO−K1またはCHO−K1.CD70細胞を各96ウェルプレートに接種した。翌日、単離されたCD4+CD25−細胞を0.5μMのCFSE(Invitrogen社、C34554)とともにPBSに入れて、氷上で10分間放冷することによって染色した。細胞を10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地(Gibco社、11320)で洗浄し、既にCHO−K1またはCHO−K1.CD70細胞を接種したウェルに接種した。次に、希釈範囲の抗CD70抗体を培地に添加した。最後に、各々の最終濃度0.125μg/mlおよび1μg/mlになるように、抗CD3抗体および抗CD28抗体を添加し、共培養物を37℃、5%CO2および95%湿度で4日間温置した。4日後、細胞を再懸濁し、ヨウ化プロピジウム(BD PharMingen社、556463)で標識した。流動細胞計測装置を用いて増殖を評価した。具体的に、CFSE希釈を用いて、増殖した細胞を検出し、ヨウ化プロピジウムを除外することによって、生存している細胞を検出した。図5に示すように、精製した抗hCD70抗体は、CD70媒介性CD4+T細胞の増殖に対する阻害が減少した。
阻害活性減少した抗hCD70抗体の特徴付けおよびエピトープマッピング
ペプチドの合成およびPEPSCANスクリーニング
合成した線形ペプチドおよびCLIPSペプチドを合成し、Slootstraら(Slootstra et al., 1996, Mol. Diversity 1: 87-96)およびTimmermanら(Timmerman et al., 2007, J. Mol. Recognit. 20: 283-299)によって記載されたクレジットカード式ミニPEPSCANカード(455個の3μlウェルを有するウェルプレート)を用いて、スクリーニングした。各ペプチドに対する抗体の結合は、PEPSCANに基づく酵素結合免疫測定法(ELISA)によって検測された。共有結合したペプチドを含有する455個のクレジットカード式ポリプロピレンカードを試料(たとえば、5%ウマ血清(体積/体積)および5%オボアルブミン(重量/体積)を含有するPBS溶液に希釈された1μg/mlの抗体)と、1%のTween 80と4℃で一晩温置した。ペプチドを洗浄した後、抗-抗体ペルオキシダーゼ(1/1000希釈液、たとえばウサギ抗マウスペルオキシダーゼ、Southern Biotech社)とともに、(25℃、1時間)温置した。その後、ペルオキシダーゼ基質を洗浄した後、2,2′−アジノ−ジ−3−エチル−2,3−ジヒドロベンゾチアゾール−6−スルホン酸アンモニウム(ABTS)および2μl/mlの3%H2O2を添加した。1時間後、発色を測定した。ELISAの発色は、CCDカメラおよび画像処理システムを用いて定量化した。その構成は、CCDカメラ(ソニーCCDビデオカマラ XC−77RR)、55mmレンズ(ニコン マイクロニッコール 55mm f/2.8レンズ)、カメラアダプタ(ソニーカマラアダプタ DC−77RR)および画像処理ソフトウェアからなる。
ペプチドの合成
TNF相同性ドメインを用いて、CD70の分子モデルを形成した。このモデルに基づいて、合計約1500個の線形ペプチドおよびCLIPSペプチドを合成した。
以下のCLIPSトポロジを使用した。具体的には、T2 CLIPSは、2つのシステインの側鎖と結合することによって、単一のループトポロジーを形成し、T3 CLIPSは、3つのシステインの側鎖と結合することによって、二重ループトポロジーを形成し、T2T2 CLIPSのうち、第1のT2 CLIPSは、2つのシステイン(Cで標識した)と結合し、第2のT2 CLIPSは、2つのシステインと結合し、最後に、T2T3 CLIPSのうち、T2 CLIPSは、2つのシステイン(Cで標識した)と結合し、T3 CLIPSは、3つのシステインの側鎖と結合する。
データの解析およびエピトープの決定
すべてのペプチドに対して、各抗体を試験し、それらの結合値をランク付けした。明らかに、トップバインダ(〜上位1%)に最も再発する配列は、エピトープの候補として考えられべきである。
免疫グロブリンcDNAのクローン
縮重プライマPCRに基づく方法を用いて、hCD70.17、hCD70.21、hCD70.23、hCD70.27、hCD70.29、hCD70.32、hCD70.34、hCD70.36およびhCD70.39などのhCD70雑種細胞により発見されたマウス抗体の可変領域をコーディングするDNA配列を決定した。
全てのRNAは、RNeasyミニキット(Qiagen社、74106)を用いて、製造業者の使用説明書にしたがって、約5×106個の雑種細胞細胞から単離され、デオキシリボヌクレアーゼI(Invitrogen社)を用いて、製造業者の使用説明書にしたがって処理された。重鎖および軽鎖の遺伝子特異的cDNAは、M−MLV逆転写酵素(M-MLV RT)、RNase H(-)、点突然変異キット(Promega社、カタログ番号:M3683)を用いて、製造業者の使用説明書にしたがって合成された。VH遺伝子およびVL遺伝子は、Igプライマセット(Novagen社, San Diego, CA)およびAccuPriMe Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)を用いてPCR増幅された。予期された500bpのアンプリコンサイズに一致したすべてのPCR産物は、pCR4 TOPOベクタ(Invitrogen社)にクローンされた。得られたクローン物は、製造業者の使用説明書にしたがって、サブクローン効率的なDH5αコンピテント細胞(Invitrogen社)に形質転換した。
これらのクローンは、共通のM13順方向および逆方向プライマを用いて、菌落PCRによってスクリーニングされ、各反応から少なくとも2つのクローンは、DNA配列決定分析に選択された。CDRは、Kabat規則(Kabat et al., 1991. Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication No. 91-3242)に従って同定された。
配列は、本明細書とともに提出された配列表に開示され、上記の表1に記載されている。