[0007] 液浸リソグラフィ装置の液体損失は、特定の臨界走査速度を上回る粘性のエントレインメントが引き起こすことが発見された。液体は、液体膜上に牽引力をかけ、その牽引力に液体の表面張力による毛細管力が対抗する。粘性力は、走査速度および液粘度に線形比例する。特定の速度で粘性力は毛細管力を超え、液体はメニスカスから失われる。臨界走査速度は、特にキャピラリー数により決定される。キャピラリー数は、流れる液体の動的性質を表すものである。キャピラリー数は、通常「Ca」で示され、液体の動的粘度「μ」と流れる流体の特徴的な相対速度「V」の生成物と、周囲の気体(例えば、空気)との界面における液体の表面張力「γ」との比として規定される。粘性力は、異なる速度で流れる異なる容積の液体間の内部摩擦力と、流れる液体と別の媒体(固体または別の流体:別の液体、または気体)の界面における流れる液体の境界において生じる摩擦と、の両方の摩擦から生じる。表面張力は、液体分子における凝集力から発生し、液体とガスまたは別の流体との界面にわたって作用する、液体表面の収縮の傾向である。
[0008] 動的粘度「μ」の所定の大きさおよび表面張力「γ」の他の大きさについて、臨界走査速度「V_crit」の大きさは、臨界毛細管力「Ca_crit」により決定される。液浸リソグラフィ装置が作動中の場合には、液体の容積は概ね平らな表面を有する基板と接し、かつその基板に対して移動する。キャピラリー数が臨界キャピラリー数Ca_critにより示された特定の閾値を超える場合には、液体は後退する接触線における基板の表面上、すなわち流体ハンドリングシステムに対する基板と接する液体の容積の退き側(すなわち基板の一部が流体ハンドリングシステムの下側を離れる(または下側から現れる)側)に滴を落とし始める。平らな表面が、例えば測定テーブル上に設置されたセンサの表面である場合に、同様の原理が適用され得る。
[0009] そのため、液浸リソグラフィ装置のスループットを向上させるためにより速い走査速度でオブジェクトの退き側上に液滴が形成される機会を低減する方法を提供することが、本発明の目的である。
[0010] 本発明の一態様によると、液体を介して基板上の感光性層をパターンが付与された放射ビームにさらすように構成された液浸リソグラフィ装置であって、液浸リソグラフィ装置は、
表面を有する可動オブジェクトと、
表面、流体ハンドリングシステム、および液体の自由面により制限された容積における液体の存在を制御するための流体ハンドリングシステムであって、自由面は表面と流体ハンドリングシステムとの間に延在する、流体ハンドリングシステムと、
流体ハンドリングシステムに対するオブジェクトの移動の方向に沿って容積からオブジェクトが後退している場合に、表面と接する容積の周縁の退き側における液体の一部を局所的に加熱するように構成された加熱システムと、を備える、液浸リソグラフィ装置が提供される。
[0011] 流体ハンドリングシステムに対するオブジェクト(基板など)の移動の方向に沿って容積からオブジェクトが後退している場合に、オブジェクトの表面(基板の表面など)と接する容積の周縁の退き側における液体の一部を局所的に加熱することは、液粘度の局所的な低下を引き起こす。液体のその部分における表面張力もまた局所加熱により低下するが、液体の動粘度の大きさの相対変化量は、表面張力のそれよりも典型的には遥かに多い。そのため、オブジェクト上に残留液体を残すことなく投影システムおよび/または流体ハンドリングシステムに対してオブジェクトが移動可能な臨界走査速度は、粘度が低減された際に増加可能である。
[0012] 加熱システムは、1つ以上の電磁放射源を備え得る。1つ以上の電磁放射源のそれぞれは、各電磁放射を生成するように構成され、各電磁放射は大部分が、オブジェクト(基板など)および/または感光性層によってよりも、液体によって吸収されるように構成される。
[0013] レーザは潜在的には流体ハンドリングシステムに追加可能な小さな半導体デバイスであってよく、および/または容積の周縁の正確な位置に電磁放射ビーム(例えば、レーザ放射)を誘導するように簡単に制御可能であることから、電磁放射源(例えば、レーザ)を使用することは利点があり得る。後者のシナリオでは、例えば、少なくとも1つの光ファイバに結合される外部電磁放射源(例えば、レーザ源)は同様に簡単に実行可能であり得る。レーザ源は典型的には、明確に定義された波長、狭ビームおよび潜在的に高い出力密度を有する。狭帯域を使用することは、液体を局所的に加熱する目的で求められている場合には、適切な電磁放射源として、赤外線高出力発光ダイオード(LED)は、等しく適用可能である。さらには、電磁放射源の出力は、総熱注入を減らすように制御可能であり、電磁放射源の波長は電磁放射が主に液体において吸収されオブジェクト(例えば、基板)では吸収されないかほとんど吸収されないように選択可能であり、それにより基板上の熱負荷を低減する。
[0014] 1つ以上の電磁放射源のうちの少なくとも1つの特定の電磁放射源は、流体ハンドリングシステムに機械的に結合されるか、流体ハンドリングシステム内において収容される。この配置は、流体ハンドリングシステムに対して移動可能な基板テーブル/サポートにおいてより少ない部品(例えば、ケーブルスラブ)を必要とすることから、有益であり得る。
[0015] 1つ以上の電磁放射源は、多角形の経路に沿って、流体ハンドリングシステムの中央開口に対して複数の流体アウトレットの半径方向外向きに配置され得る。複数の流体アウトレットは、流体ハンドリングシステムの下面内に配置され、当技術分野で公知のように液体と気体の混合物を抽出するように構成される。そのような特定の形状は、流体アウトレットが円形の経路に沿って配置された場合よりも最大走査速度が速いことを確実にすることに役立つ。
[0016] 付加的な電磁放射源は、多角形の角部に配置され得る。この配置は、臨界走査速度を超えた場合には、液体損失はまず周縁の退き側に対応する多角形の角部(すなわち、後退する角部)において起こることから、有益な配置であり得る。ステップまたはスキャン方向での後退する角部における液体を加熱することにより、退き側における第1の液体損失発生の可能性が効果的に回避され得る。
[0017] 1つ以上の電磁放射源は、流体ハンドリングシステムの下面から突出する拡張部に配置され、かつ流体ハンドリングシステムの中央開口に対する複数の流体アウトレットの半径方向外向きに配置され得る。そのような配置は、流体ハンドリングシステムの下面における空間が限られている場合に有益であり得る。
[0018] 1つ以上の電磁放射源は、自己制御加熱システムを形成するように、周縁の退き側が1つ以上の電磁放射源から放出する電磁放射を越えて移動することを防ぐように構成され得る。加熱システムは、所定の距離で流体ハンドリングシステムに対して固定の位置に位置決めされてよい。この配置は、1つ以上の電磁放射源に対する周縁の退き側における位置を辿り、その位置に向かって1つ以上の電磁放射源を向ける直接の必要性がないことから、利点があり得る。
[0019] 加熱システムは、加熱要素、リフレクタおよびフィルタを備え得る。加熱要素は電磁放射を提供するように構成され得る。リフレクタは加熱要素により生成されたほとんどすべての熱を液体に向けて反射するように形成されかつ構成され得る。フィルタはフィルタを通じて加熱要素から放出する電磁放射がオブジェクト(基板など)および/または感光性層ではなく主に液体を加熱するように構成され得る。加熱要素を使用することは、スポットではなく線に沿って加熱することはレンズを有するレーザを使用することと比較してより緻密に実行され得ることから、有益であり得る。さらには、リフレクタおよびフィルタは、加熱システムの設計の柔軟性をさらに向上させ得る。
[0020] 代替的にまたは付加的に、1つ以上の電磁放射源のうちの少なくとも1つの特定の電磁放射源は、オブジェクトを支持するように構成されたサポートに結合可能であるかサポート内に収容可能である。このことは、流体ハンドリングシステム内の空間が限られている場合に有益である。
[0021] オブジェクトの外側縁とサポートを支持する基板テーブルとの間に形成された隙間における液体損失を回避するために液体に付加的な熱を供給するように、オブジェクトの周囲の周りに付加的な1つ以上の電磁放射源が配置可能であり得る。この配置は、そのような横断またはつなぎ目においては、周縁の退き側は鋭角に固定され得かつこれらの表面は多くの場合フォトレジストコートされた基板よりも親水性であることから、有益な配置であり得る。
[0022] 1つ以上の電磁放射源の少なくとも1つの特定の電磁放射源は、
特定の電磁放射源により生成された電磁放射の強度と、
基板に実質的に垂直な基準方向に対する、特定の電磁放射源により生成された電磁放射の方向と、
特定の電磁放射源のパルスモード動作のデューティサイクルと、
特定の電磁放射源により生成された電磁放射により照明された周縁の領域の大きさと、
のうちの少なくとも1つに関して制御可能である。
[0023] 制御可能な強度を有する電磁放射源は、オブジェクトにかけられるあり得る負荷が制御可能であることから有益であり得る。例えば、所望の粘度の低減のために電磁放射強度を低減させることにより、オブジェクト上のあり得る熱負荷が低減され得る。特定の電磁放射源により生成された電磁放射の向きが制御可能であることは、容積の周縁の正確な位置に1つ、または複数の電磁放射ビームを円滑に案内および誘導することを容易にし得る。電磁放射源が、特定の放射源により生成された電磁放射により照明された周縁の領域のサイズに対して制御可能である場合にも同様のことが言える。特定の電磁放射源のパルスモード動作のデューティサイクルに関して制御可能である電磁放射源は、そのような特定の電磁放射源が所望の長さが露光時間の持続期間を調整できることを可能にし、それにより容積の周縁およびオブジェクト上の熱負荷が最適化および/または低減される。デューティサイクル制御を使用することは、レーザ出力制御を使用することよりも、典型的にはレーザ強度を制御するためのより直線的な方法であり得る。
[0024] さらに具体的にいえば、電磁放射源はパルスモード照明を放出するように構成され得る。この事は、熱が短時間のみ存在することから、オブジェクトの熱負荷に影響することなく容積の周縁上の、オブジェクトのその他の部分および/または液体への伝導による熱輸送の効果などの効果を最適化し得る。
[0025] 代替的にまたは付加的に、加熱システムは、周縁の退き側の領域における流体ハンドリングシステムの下面から加熱ガスジェットを提供するように構成され得、下面はオブジェクトに面する。従来の流体ハンドリングシステムにおいて既に公知のように、流体ハンドリングシステムの下面上に位置するガスナイフは、液体の容積を閉じ込めるように使用可能である。そのため、例えばガスナイフから加熱ガスジェットを提供することは実行可能であり得る。ガスナイフを採用する流体ハンドリングシステムについては、オブジェクトの縁で起こる気泡欠陥を軽減させるためにCO2を使用することが好ましい。「気泡欠陥」という用語は、液浸流体における気泡の存在から生じるリソグラフィ投影の欠陥を意味する。気泡は、流体とは異なる屈折率を有し、設計パターンに対してリソグラフィ投影されたパターンの変形を引き起こすレンズ効果を有する。ガスナイフを有する加熱システムの組み合わせの利点は、ガスナイフは液体膜の厚さを減少させることにより、退き側における液体膜の所望の加熱出力を低減させる点である可能性がある。
[0026] 液浸リソグラフィ装置は、周縁の退き側の位置を検出するように構成されたディテクタをさらに備え得る。検出は、例えば、熱を誘導する周縁の正確な位置あるいはその他の領域に最小量の熱を生成するために使用される所望のまたは最適な電磁照射強度またはデューティサイクルに関する有用な情報を提供し得る。
[0027] さらには、液浸リソグラフィ装置はディテクタからの検出信号に反応して加熱システムを稼働させるように構成されたコントローラであって、信号は周縁の退き側の位置を検出したディテクタを表すコントローラをさらに備え得る。これにより、他の領域に不要な熱負荷をおよぼすことなく電磁放射ビームが最適または正確な位置に確実にフォーカスされ得る。
[0028] 代替的には、流体ハンドリングシステムは、加熱された液体が周縁の近くに局所的に供給されるように構成され得る。局所的に加熱された液体を使用することのあり得る利点は、一切の電磁放射源が必要とされず、その結果ビームデリバリシステムの一切およびいかなる種類の関連する制御システムの一切が不必要となることである。
[0029] 発明の一態様によると、液体を介して基板上の感光性層をパターンが付与された放射ビームにさらすステップと、オブジェクトの表面、流体ハンドリングシステムおよび液体の自由面により制限された容積における液体の存在を制御するステップであって、自由面は表面と流体ハンドリングシステムとの間に延在するステップと、流体ハンドリングシステムに対するオブジェクトの移動の方向に沿ってオブジェクトが容積から後退している場合に、表面と接する容積の周縁の退き側における液体の一部を局所的に加熱するステップと、を含む、液浸リソグラフィ装置においてオブジェクトを処理するための方法が提供される。
[0030] 周縁の退き側における液体の一部を局所的に加熱することの利点は、上述されている。
[0040] 図1は、本発明の一実施形態による液浸リソグラフィ装置の一部の断面を概略的に示し、示される部分は流体ハンドリングシステム200の一部である。その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、例えば米国特許出願第2013/045447号には、液体を介してパターンが付与された放射ビームに、例えば基板Wなどの表面を有する可動オブジェクト上の感光性層(フォトレジストなど)をさらすように構成された、従来の液浸リソグラフィ装置が開示されている。従来の流体ハンドリングシステムは、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許出願第2004/207824号、米国特許出願第2006/038968号、米国特許出願第2006/158627号、米国特許出願第2008/212046号、米国特許出願第2009/279060号、米国特許出願第2009/279062号、米国特許出願第2009/279063号、米国特許出願第2010/045950号、米国特許出願第2010/313974号、米国特許出願第2011/013158号、米国特許出願第2011/090472号、米国特許出願第2011/255062号、米国特許出願第2012/120376号、米国特許出願第2013/016332号、および米国特許出願第2013/016332号に開示される。
[0041] 流体ハンドリングシステム200は、表面を有する可動オブジェクト、流体ハンドリングシステム200および液体の自由表面201、202により制限される容積11における液体の存在を制御するように構成される。本例では、可動オブジェクトは基板Wである。オブジェクトは、後により詳細に記述されるように、例えば(これらに限らないが)測定テーブルMST(図6または7を参照)などの可動テーブル上に設置されたセンサまたは可動テーブルの上面等であってよい。自由表面201、202は、基板Wの表面と流体ハンドリングシステム200との間に延在する。液体は、主に開口203、204により容積11に提供される。開口203、204からの液体の流れの方向は、基板Wの走査方向(矢印299により示される)に依存するか、または走査方向とは無関係であってよい。図1の例では、液体は開口203を通じて提供され、開口204から抽出される、すなわち液体の流れの方向は走査方向とは逆である。基板Wの走査方向が反対になると、開口203、204からの液体流の方向も反対になり得る。
[0042] 図2は、図1の流体ハンドリングシステム200の底面図を示す。流体ハンドリングシステム200の下面209上に形成された中央開口210は、流体ハンドリングシステム200の運転使用中は基板Wを向く。中央開口210は、例えば投影システムPSの最終要素などの投影システムPSの一部の円形断面を収容するように円形である。一連の液体開口205は、円形経路に沿って形状をなし、中央開口210の半径方向外向きに配置される。経路の形状は円形形状に限定されるものではなく、例えば、四角形、多角形または楕円形などのその他の形状であってよい。液体アウトレット205は、流体ハンドリングシステム200から液体を出して提供するものであり、容積11内に液体を提供するための液体供給インレットであると考えてよい。液体アウトレット205から流れ出る液体は、基板Wに向けて誘導される。このタイプのアウトレット205は、基板Wの縁と基板テーブルWTとの間の隙間内に捕らわれた気体によって液体内に気泡が生じる機会を減らすために、従来より提供されてきた。
[0043] 複数の流体アウトレット206は、多角形(例えば、四角形)の経路に沿って、流体ハンドリングシステム200の下面209における中央開口210に対して液体アウトレット205の半径方向外向きに配置される。流体アウトレット206の経路は、ひし形形状または例えば円形形状などのその他のいかなる形状に沿って配置可能であるが、四角形形状またはひし形形状は、流体アウトレット206が円形形状の経路に沿って配置された場合よりも臨界走査速度が速いことを確実にすることに役立つ。流体アウトレット206は、流体抽出アウトレットとして認識されてよい。各流体アウトレット206は平面で、円形流体アウトレット206の場合は、例えば好ましくは約0.35mm(例えば、0.25mm四方)または、0.5mmより大きい、1mmより大きい最大寸法を有する直径などの、最大横断面寸法を有する。各流体アウトレット206の最大寸法は、各流体アウトレット206の流体不安定性の結果として気泡が生じないように選択されるべきである点に留意されたい。一部の従来型の流体ハンドリングシステムにおいて存在する多孔性部材の孔と比較して、流体アウトレットは比較的大きい直径を有することから、流体アウトレット206が汚染の影響を受ける可能性は低い。
[0044] 複数の流体アウトレット206のそれぞれは、個別の低圧力源に接続され得る。代替的にまたは付加的に、複数の流体アウトレット206のそれぞれは、それ自体が低圧力で保持される共通のチャンバ(環状チャンバであり得る)に接続され得る。これにより、複数の流体アウトレット206の各流体アウトレットにおいて均一な低圧力が達成され得る。流体アウトレット206は、真空源に接続され得る。代替的にまたは付加的に、流体ハンドリングシステム200の周囲のガス体(例えば、空気)は、必要とされる低圧力を生成するために圧力を増加し得る。
[0045] 各流体アウトレット206は、液体と気体の混合物を、例えば二相流において抽出するように構成される。液体は容積11から抽出される一方で、気体はガス体と容積11との間の境界の他方の側においてガス体から抽出される。これにより、流体アウトレット206に向かうガス流が作られる。このガス流は、流体アウトレット206内へのガス流および/またはガス流に誘発された圧力勾配に誘発された牽引(せん断)力によって、メニスカスを流体アウトレット206との間、例えば隣り合う流体アウトレット206の1つと流体アウトレット206の1つとの間に固定するのに効果的である。基板Wと流体ハンドリングシステム200との間の相対運動により(走査またはステップ)、容積11とガス体との境界において、流体ハンドリングシステム200から後退する側面、すなわち基板Wのスキャン方向(矢印299)またはステップ方向などの、流体ハンドリングシステム200に対する基板Wの移動方向に沿って基板Wが容積11から後退する、基板Wの退き側(すなわち、基板Wの一部が流体ハンドリングシステムの底面から離れる(または浮かび上がる)側面)において、基板Wと流体ハンドリングシステム200との間に自由面201が形成される。さらには、流体ハンドリングシステム200に向かって前進する側面、すなわち基板Wのスキャン方向(矢印299)またはステップ方向などの、流体ハンドリングシステム200に対する基板Wの移動方向に沿って基板Wが容積11に向かって前進する、基板Wの進み側(すなわち、基板Wの他の部分が流体ハンドリングシステム200の底面に近づく側面)において、基板Wと流体ハンドリングシステム200との間に自由面202が形成される。つまり、基板Wのスキャン方向の方向(矢印299)は、進み側から退き側に向かう。
[0046] 速い走査速度で基板Wの退き側上に液滴が形成する機会を減少させるために、図1に示されるように、液浸リソグラフィ装置は加熱システム207を備える。加熱システム207は、基板Wと接する容積11の周縁の退き側における液体の一部を局所的に加熱するように構成され、基板Wと接する容積11の周縁の退き側においては、基板Wは基板Wのスキャン方向(矢印299)またはステップ方向などの流体ハンドリングシステム200に対する基板Wの移動方向(すなわち流体ハンドリングシステム200に対する基板Wと一体の容積11の後退する接触線212)に沿って容積11から後退する。上述されるように、基板Wと一体の容積11の後退する接触線212における液体の一部を局所的に加熱することは、液粘度の局所的な低下に繋がる。粘度の低い液体は、残留液滴を残すことなく粘度の高い液体よりも高速に流れることができる。
[0047] 上述のように、キャピラリー数「Ca」は流れる液体の動的性質を表すものであり、一方が液体の動的粘度「μ」と流れる流体の特徴的な相対速度「V」の生成物であり、他方が界面における液体の表面張力「γ」である比として規定される。液体の一部における表面張力「γ」も、局所的な加熱により減少するが、液体の動的粘度「μ」の大きさの相対的変動は典型的には表面張力「γ」のそれよりも遥かに大きい。所定のキャピラリー数「Ca」については、これにより液浸リソグラフィ装置が、液体の液滴が退き側に落ち始める前に投影システムPSおよび/または流体ハンドリングシステム200に対して基板Wが移動可能な最大走査速度「V_max」を増加させることを可能にする。分子動力学理論によると、「E, Bertrand, T. D. Blake and J. De Coninck, J. Phys.:Condens.Matter 21(2009)464124」に記載のように、粘度の低下および温度の上昇により、接触線付近の分子の動きが増幅し、それにより後退する接触線212付近の接触線摩擦が低下しかつ接触線可動性が増加する。このことは同じ文献内に記述されている。さらに、局所加熱の結果として表面張力「γ」が局所的に低下した場合には、基板Wの退き側における基板Wに接する容積11の周縁に沿った表面張力に勾配が生じる。そのような勾配は液体を容積11に引き戻すことを促進し得、そのため基板Wの退き側における液体が後ろに下がることを支援し得る。これは、容積11における液体の安定性をさらに増幅させ、基板Wの退き側において液滴が形成する機会を減らし得、それにより液浸リソグラフィ装置が投影システムPSおよび/または流体ハンドリングシステム200に対して基板Wが移動可能な最大走査速度「V_max」が増加することを可能にする。
[0048] 一実施形態では、加熱システム207は1つ以上の電磁放射源(例えば、レーザまたはレーザ源)またはその他の適切な放射源を有する。1つ以上の電磁放射源のそれぞれは、それぞれの電磁放射を生成するように構成される。これは、レーザを使用する場合には、例えばダイオードレーザを使用して達成可能である。加熱システム207のためのその他の適切なレーザは、例えば(これに限らないが)ガスまたは液体封入キャビティレーザ等であってよい。これらのレーザは、業界内で周知である。上述のようにレーザ源は典型的には、明確に定義された波長、狭ビームおよび全体的に高い出力密度を有する。かさねて、レーザは潜在的には流体ハンドリングシステム200にフィット可能な小さな半導体デバイスであってよく、かつ/または基板Wのその他の部分および/または液体を加熱することなく後退する接触線212の正確な位置にレーザ放射ビーム(またはレーザビーム)を誘導するように簡単に制御可能であることから、レーザを使用することは利点があり得る。代替的には、電磁放射(例えば、レーザ放射)は、電磁放射の外部放射線源(例えば、外部レーザ源)に結合される少なくとも1つの光ファイバまたはその他の導波管を使用することにより提供され得る。一実施形態では、電磁放射の大部分は、基板Wおよび/またはその感光性層というよりも、液体により吸収されるように構成される。例えば、電磁放射の波長「λ」は、放射が主として液体内に吸収され、基板W(通常はシリコン製)および/またはフォトレジスト内では吸収されないかほとんど吸収されないように、選択され得る。このことは、基板W上の熱負荷を減少させる利点を有する。例えば、電磁放射は赤外光であってよい。
[0049] 図1および2に示されるように、一実施形態では、加熱システム207の1つ以上の電磁放射源のうちの少なくとも1つの特定の電磁放射源は、流体ハンドリングシステム200に機械的に結合されるか、流体ハンドリングシステム200内または流体ハンドリングシステム200において収容(フィット)される。電磁放射源としてレーザを使用する場合には、レーザは基板Wを向く流体ハンドリングシステム200の下面209内または下面209に位置決めされ得る。一実施形態では、複数のレーザは流体アウトレット206の半径方向外向きに配置されることができ、中央開口210に対して流体アウトレット206が形成した形状に全体として従う(すなわち複数のレーザは複数の流体アウトレット206を囲む)ものである。これは、基板Wがどのスキャン方向およびステップ方向に移動していても、基板Wと一体の容積11の接触線が1つ以上のレーザから放出する電磁放射により局所的に加熱されることを確実にし、これにより液浸リソグラフィ装置がステップ方向に作動する場合には、基板Wと一体の容積11の後退する接触線212は電磁放射により局所的に加熱され得る。このことは、ステップ方向に沿った最大ステップ速度を増加させ、結果としてスループットが向上する。
[0050] 一実施形態では、加熱システム207は、1つ以上の電磁放射源から放出する電磁放射を越えて、後退する接触線212が移動することを防ぐために構成され得る1つ以上の電磁放射源を含み得る。図3Aおよび3Bに示されるように、加熱システム207(または加熱システム207から放出された電磁放射)は所定の距離dで流体ハンドリングシステム200に対して固定の位置に位置決めされる。特定の未臨界基板速度V1においては、後退する接触線212は加熱システム207(または電磁放射)に対して、距離dよりも短い、特定の位置を有する(図3Aを参照)。基板Wの速度が増加した場合、後退する接触線212の位置が1つ以上の電磁放射源によって形成された加熱線の位置付近に移動する。特定の速度V2では、後退する接触線212は加熱線に届き、その電磁放射(の一部)を吸収し(図3Bを参照)、それにより上述のように接触線の移動性を上昇させる。そのような加熱は、とりわけレーザ出力に依存する値V_crit_newに向かって臨界走査速度を増加させる。このように、後退する接触線212の移動性は、V2<V<V_crit_newである速度Vで加熱線において局所的に増加し、それにより加熱された後退する接触線212は、同じく距離dよりも短い、加熱システム207に対するその他の特定の位置を維持する。つまり、複数のレーザによって形成された加熱線は「柵」のような働きをし、後退する接触線212が加熱線を越えて移動することを防ぐ。この効果は自己制御する加熱システムを形成し得、その自己制御する加熱システムは、1つ以上の電磁放射源に対する後退する接触線212の位置を辿り、その位置に向かって1つ以上の電磁放射源を向ける直接の必要性がないことから、利点があり得る。
[0051] 好ましくは、一実施形態では、加熱システム207は、図2に示されるように多角形の各角部に位置決めされた電磁放射源を備えてよい。これらの放射源は、「角部放射源」207Cとして以下に称される。この配置は、臨界走査速度を超えると後退する接触線212に対応する多角形の退き側の角部(すなわち後退する角部)において、まず初めに液体損失が起こることから、利点があり得る。ステップまたは走査方向の後退する角部における液体を加熱することにより、後退する接触線212における第1の液体損失発生の可能性が効果的に回避され得る。このことのみで、十分に最大走査速度を増加させることができ、それにより後退する接触線212の別の部分を加熱する必要性を低下させることができ得る。
[0052] 一実施形態では、加熱システム207は、電磁放射源の複数の列が流体アウトレット206の半径方向外向きに配置され、中央開口210に対して流体アウトレット206が形成した形状に全体として従う(すなわち電磁放射源の複数の列は複数の流体アウトレット206を囲む)ように、配置され得る。各電磁放射源は、下記に説明されるように、コントローラ300によって個別に制御可能であり得る。スキャン動作中は、流体ハンドリングシステム200に対して基板Wの退き側における電磁放射源は、残りの電磁放射源が作動停止されている間、稼働させられ得る。電磁放射の出力および/または波長は基板W上にわずかな熱負荷を及ぼすように選択され得ることから、この配置は、流体ハンドリングシステム200に対する後退する接触線212の正確な位置を検出する付加的機構を一切有さずに、流体ハンドリングシステム200に対する基板Wの移動中に、電磁放射源の複数の列のうちの少なくとも1つが次第に基板Wと一体の容積11の後退する接触線212の正確な位置を局所的に加熱するため、有益な配置であり得る。走査方向が反対になる、または液浸リソグラフィ装置がステップ方向に作動した場合には、同様の作動が繰り返され得る。
[0053] 代替的にまたは付加的に、電磁放射源は流体ハンドリングシステム200の外部に位置付けられ得る。例えば、少なくとも1つの光ファイバ(図示されず)は、一端において外部レーザ源に結合され(図示されず)、もう一方の端で流体ハンドリングシステム200内に位置決めされ得る(図5を参照)。少なくとも1つの光ファイバは、少なくとも1つの光ファイバを通って電磁放射の外部放射源から放出する電磁放射ビームが、容積11の後退する接触線212付近に誘導され得るように配置可能である。流体ハンドリングシステム200の下面209と基板Wとの間に十分な空間がある場合には、少なくとも1つの光ファイバは電磁放射ビームが基板Wの異なる位置に誘導されるようにコントローラ300により駆動され得る。これにより、後退する接触線212の正確な位置への電磁放射の容易な案内および誘導が促進され得る。
[0054] 一実施形態では、上述のように複数の電磁放射源を採用する加熱システム207と同様に、光ファイバの少なくとも1つの列は、同じような方法で後退する接触線212を加熱するように光ファイバの終端の少なくとも1つの列が複数の流体アウトレット206を囲むように配置され得る。電磁放射源および光ファイバの少なくとも1つの列は、自己制御加熱システムとして作動するように構成されてよい。光ファイバの少なくとも1つの列は、複数の電磁放射源に結合可能である。同様に、図2に示されるように各光ファイバは、多角形の各角部に位置決め可能であり、それにより電磁放射ビームは加熱が行われない場合に第1のあり得る液体損失が起こり得る退き側における液体を加熱する。再び、局所加熱を有さない構成と比較してこのことのみでも最大走査速度を向上させるのに十分であり、それにより後退する接触線212のその他の部分を加熱する必要性が低減される。
[0055] 代替的にまたは付加的に、一実施形態では、加熱システム207の1つ以上の電磁放射源のうちの少なくとも1つの特定の電磁放射源は、基板Wを支持するように構成されたサポート100に機械的に結合されるか、サポート100内またはサポート100において収容(フィット)される。レーザを使用する場合には、レーザは、例えばサポート100内に位置決めされ得る。サポート100内の1つ以上のレーザは、基板Wが透過させかつ基板Wが吸収しない波長を使用して、基板Wを通してレーザ放射のビーム(またはレーザビーム)を照らすことにより、基板Wと一体の容積11の後退する接触線212を加熱し得る。例えば、レーザ放射の適切な波長(例えば、λ=1470mm)を選択することにより、基板Wはこの特定の波長に対して十分に透過的であるため、レーザ放射は基板Wを透過し得る。電磁放射(レーザ放射など)の波長もまた、電磁放射がフォトレジストにほとんど吸収されず、および/またはフォトレジストを露光しないように選択されるべきであることに留意されたい。サポート100内に加熱システム207を有する配置は、例えば、図5の実施形態と同様に、基板Wに面する流体ハンドリングシステム200の下面209における空間が限られている場合は、有益な配置であり得る。一実施形態では、複数のミラーが流体ハンドリングシステム200の下面209上に流体アウトレット206の半径方向外向きに配置され得る(図示されず)。各ミラーは、コントローラ300によって個別に制御可能であり、基板Wを通ってサポート100から来る電磁放射ビームを反射するように構成される。これは、基板Wと一体の容積11の後退する接触線212の正確な位置に電磁放射ビームを円滑に案内し誘導することを更に促進し得る。
[0056] 代替的に、図1Aに示されるように、サポート100を支持する基板テーブルWTへのつなぎ目(すなわち、基板Wの外側縁(平面図において)と基板テーブルWTとの間に形成された隙間)または基板テーブルWTと測定テーブルMSTとの間の横断(図6)における液体損失を回避するために、サポート100内における1つ以上の電磁放射源は、液体に付加的な熱を付与するために基板Wの周囲の周りに配置され得る。この配置は、そのような横断またはつなぎ目においては、後退する接触線212(またはメニスカス)は鋭角に固定され得かつこれらの表面は多くの場合フォトレジストコートされた基板よりも親水性であることから、有益な配置であり得る。ステップまたは鋭角、隙間、溝等のトポグラフィカルフィーチャに固定される接触線は、毛細管の破壊により残留液滴を引き起こす可能性、すなわち、表面張力による液体容積の不安定性をもたらし得る。このような場合、局所的な加熱はマランゴニ応力(すなわち、温度勾配によって引き起こされる表面張力勾配によるせん断応力)を引き起こす可能性があり、そのため液体分配の操作に使用可能である。マランゴニ応力による液体分配の操作の全体的な背景は「Darhuber et al., Lab Chip, 2010, 10, 1061」に発表されている。
[0057] 一実施形態では、サポート100における加熱システム207は電磁放射源(例えば上述のような外部レーザ源)に結合された光ファイバを少なくとも1つ備え得る。電磁放射が出射される、少なくとも1つの光ファイバの端部は、図1Aの実施形態と同様に基板Wの周囲に隣接して配置される。一実施形態では、異なる位置にわたり単一の放射源から電磁放射を分配するように、複数の光ファイバは単一の電磁放射源に結合され得る。代替的には、複数の光ファイバは、複数の電磁放射源(複数の外部レーザ源など)に結合され得る。加熱システム207は、上述のように同じ方法で作動し得る。
[0058] 一実施形態では、1つ以上の電磁放射源の少なくとも1つの特定の放射源(レーザまたはレーザ源など)は、特定の電磁放射源により生成された電磁放射の強度に関して制御可能である。代替的または付加的に、1つ以上の電磁放射源の少なくとも1つの特定の放射源は、基板Wに実質的に垂直な基準方向に対する、特定の電磁放射源により生成された電磁放射の方向に関して制御可能である。代替的または付加的に、1つ以上の電磁放射源の少なくとも1つの特定の放射源は、特定の電磁放射源のパルスモード動作のデューティサイクルに関して制御可能である。代替的または付加的に、1つ以上の電磁放射源の少なくとも1つの特定の放射源は、特定の電磁放射源により生成された電磁放射により照明された後退する接触線212の領域のサイズに関して制御可能である。
[0059] 一実施形態では電磁放射ビームは、ガウスフォーカススポット、いくつかの離散スポットまたは光の帯などの、任意のパターンに形成されてよい。光の帯は、後退する接触線212を均等に加熱し得る。一実施形態では、後退する接触線212において一定の温度上昇を達成するように所望の放射源出力を少なくし、かつそれにより基板Wのその他の部分および/または液体への伝導による熱の輸送を少なくするために、パルスモード照明が採用されてよい。電磁放射源がオフである時間と比較して、電磁放射源がオンである時間を短くすることにより、液体の液体−空気界面(電磁放射がガス層から入射する場合)または固体−液体界面(電磁放射が透過的な基板Wを通って通過し入射する場合)における温度は、液体が電磁放射を多く吸収した場合には、液体のより深い部分の温度よりも実質的に高くすることができる。後退する接触線212の表面はその後、基板W内への熱浸透または液体の容量を少なくする間に加熱され得る。基板加熱を少なくするように極短かつ極めて強い放射パルスを使用する技術は、感熱基板上の金属ナノ粒子コートを焼結するための市販のシステムにおいて広く使用されてきた(例えば、Novacentrix社の「Pulseforge」、http://www.novacentrix.com/products/pulseforgeを参照されたい)。パルスモード照明を使用する例では、1つ、または複数の電磁放射源の所望の出力の実用範囲は、典型的な流体ハンドリングシステムにおいては約10〜20Wとなる。
[0060] 一実施形態では、例えば、1つ以上の電磁放射源は、液浸リソグラフィ装置のコントローラ300に結合され得る。コントローラ300は、(これらに限らないが)フォトレジストの種類、トップコートまたは基板Wのその他の特性などの異なる要因、あるいは流体ハンドリングシステム200に対する容積11の後退する接触線212の正確な位置に基づいて、上述のパラメータ(例えば、電磁放射の強度、電磁放射の方向、1つ、または複数の電磁放射源のパルスモード動作のデューティサイクル、および電磁放射により照明された後退する接触線212の領域サイズ)の任意のまたは全てのパラメータを決定することができる。ルックアップテーブルは、例えば、フォトレジストの種類、トップコートまたは基板Wのその他の特性などの異なる要因、あるいは流体ハンドリングシステム200に対する容積11の後退する接触線212の正確な位置の情報、ならびに対応するパラメータを記憶し得る。電磁放射の方向または電磁放射により照明された後退する接触線212の領域のサイズの場合は、フィードバックループなどの制御ループは、コントローラ300が流体ハンドリングシステム200に対して容積11の後退する接触線212の位置を示す信号に反応して電磁放射の方向を制御するように使用可能である。このことについては、以下に詳細に説明される。代替的または付加的に、フィードフォーワード制御ループは、流体ハンドリングシステム200に対する容積11の後退する接触線212の正確な位置が、単位時間ごとの流体ハンドリングシステム200に対する基板Wの移動などの情報(例えば、時間表)により推測可能である場合に、使用可能である。そのような時間表は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2007/070315号に開示されている。
[0061] 上述のように、加熱システム207の1つ、または複数の電磁放射源は、1つ以上のレーザを採用し得る。しかしながら、本発明の加熱システム207は、これらに限らないが例えば、液体により吸収された波長で電磁放射を提供するように構成され得る1つ以上のLEDまたは加熱要素などのその他の適切な放射源を含み得る。加熱要素の例は、以下により詳細に説明される。これらの適切な電磁放射源は、レーザまたはレーザ源と同様に構成されかつ作動され得る。電磁放射は、電磁放射が主に液体において吸収され、基板Wおよび/またはフォトレジスト内においてはほとんど吸収されない限りは、赤外光ならびにマイクロ波放射またはUV光であってもよい。赤外線高出力LEDなどのLEDは、液体を加熱する目的の狭帯域を有する適切な電磁放射源であってよい。このことは、例えば、パルスモード照明において有用である可能性がある。
[0062] 代替的には、図1の実施形態における加熱システム207は図4に示される加熱システムに置き換えられ得る。加熱システム207は、例えば米国特許出願第2006/038968号、米国特許出願第2006/158627号、米国特許出願第2008/212046号、米国特許出願第2010/313974号、米国特許出願第2011/090472号、米国特許出願第2012/120376号、米国特許出願第2013/016332号および米国特許出願第2013/016333号に開示されるいくつかの従来型流体ハンドリングシステムにおいて採用される、流体ハンドリングシステムに位置決めされたガスナイフの代わりにまたはガスナイフに加えて、位置決めされてよい。加熱システム207は、加熱要素2071、リフレクタ2072およびフィルタ2073を備え得る。一実施形態では、加熱要素2071は電熱線(例えば、抵抗線)またはIRヒータであってよく、適切な電磁放射を提供するように構成され得る。リフレクタ2072は、加熱要素2071の上そして加熱要素2071の周りに位置決め可能であり、加熱要素2071により生成されたほとんど全ての熱を液体に向けて反射するように構成され得る。リフレクタ2072は、湾曲したまたは円弧状の形状(例えば、放物線形または楕円形)およびコート(例えば、金メッキ)を有し得る。リフレクタ2072およびフィルタ2073が小さなチャンバを形成し加熱要素2071を包み込むように、フィルタ2073はリフレクタ2072に接続され得る。フィルタ2073は、フィルタ2073を介して加熱要素2071から放出する電磁放射が、基板Wおよび/または感光性層ではなく主に液体を加熱するように、必要とされる波長のみがフィルタ2073を通過できるように構成され得る。一実施形態では、加熱システム207はいくつかの付加的な断熱材および冷却材と組み合わせ可能であり、それにより加熱システム207により生成された熱は流体ハンドリングシステム200の他の部分に伝わることはない。再び、加熱要素2071を使用することは、スポットではなく線に沿って加熱することはレンズを有するレーザを使用することと比較してより緻密に実行され得ることから、有益である。さらには、リフレクタ2072およびフィルタ2073を含むことは、加熱システム207の設計の柔軟性をさらに向上させ得る。
[0063] 代替的にまたは付加的に、一実施形態では、流体ハンドリングシステム200は、加熱された液体が後退する接触線212の近くに局所的に供給されるように構成可能である。例えば、加熱された液体は図1および図2における流体アウトレット205を通じて供給される一方で、液浸リソグラフィ装置の正常作動温度を有する液体は開口203、204を通じて供給される。加熱された液体は、露光に使用される液体と同じものであってよい。代替的には、加熱された液体を局所的に供給するように構成された付加的液体アウトレット(図示されず)は、後退する接触線212に極めて接近して下面209上に提供され得る。このように、後退する接触線212の近くに加熱された液体を局所的に提供するこの配置は、上述の加熱システム207と同様に機能し得る。液体アウトレット205および/または付加的液体アウトレットは、加熱された液体が露光領域に至らないように適切に設計されるべきである点に留意されたい。流体アウトレット206は、加熱された液体を優先的に抽出し得、それにより後退する接触線212の領域は投影システムPS下の容積11よりも高温となる。局所的に加熱された液体を使用することのあり得る利点は、一切の電磁放射源が必要とされないことであり、その結果ビームデリバリシステムの一切およびいかなる種類の関連する制御システムの一切が不必要となる。
[0064] 代替的におよび付加的に、液浸リソグラフィ装置全体は、液浸リソグラフィ装置の正常作動温度よりも高い温度まで加熱され得る。例えば、リソグラフィ装置全体は、300K、310K、320K、340Kなどの温度に維持可能である。代替的には、開口203、304からの液体は、容積11における液体の温度の方が高くなるように加熱可能であり、それにより結果として粘度が低減する。両方の配置のあり得る利点は、一切の制御が必要とされない点である。これは、特定の位置(すなわち、後退する接触線212)を厳密に制御した方式で加熱することと反対に、液浸リソグラフィ装置全体のサーモスタットが「単純に」より高い温度に設定されることを意味する。
[0065] 代替的におよび付加的に、一実施形態では、加熱システム207は、基板Wと接する容積11の周縁の領域における流体ハンドリングシステム200の下面209から加熱ガスジェットを提供するように構成され、基板Wと接する容積11の周縁の領域においては、基板Wは基板Wのスキャン方向(矢印299)またはステップ方向などの流体ハンドリングシステム200に対する基板Wの移動方向(すなわち流体ハンドリングシステム200に対する基板Wと一体の容積11の後退する接触線212)に沿って容積11から後退する。加熱ガスジェットは、(これらに限らないが)ガスナイフ、スロットジェット、個別の空気ジェット等の異なる形態で提供可能である。例えば、加熱ガスジェットは、流体アウトレット206の半径方向外向きに配置された一連の孔(またはスリット)(図示されず)を通して提供可能である。孔(またはスリット)は、液体ハンドリングシステム200の外側の加熱ガス源に接続され得る(図示されず)。代替的には、複数のヒータは孔(またはスリット)をガス源に接続する1つ、または複数の溝において、1つ、または複数の溝の周りに位置決めされ得る(図示されず)。
[0066] 特定の作動条件下では、加熱ガスジェットを使用することは、加熱ガスは典型的にはレーザよりも弱く基板Wを加熱し、それにより後退する接触線212に対してレーザよりも少量の熱を伝達することから、利点があり得る。しかしながら、加熱ガスジェットは、(1)加熱ガスジェットが高温ガスにより基板Wを加熱しすぎないように、また(2)加熱ガスジェットが位置決め測定システムのセンサ読み取りを妨害するおそれのある環境への高熱ガスの漏れを減らすように、慎重に構成および配置されるべきである。従来の位置決め測定システムは、例えば、その内容に全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2010/134769号に開示されている。
[0067] 加熱システム207とガスナイフとの組み合わせの利点は、ガスナイフが液体膜の厚さを減らすことにより液体膜上に必要とされる加熱出力が低減される点である。そのような流体ハンドリングシステムに関しては、加熱システム207はガスナイフの付近に位置決め可能なヒータ(例えばIRヒータ)であってよい。IRヒータを用いることは、加熱ガスジェットを使用することよりも液体の加熱がより効率的になることから、利点を有し得る。しかしながら、IRヒータを使用することは、基板要素のいずれか(例えば金属構造)が放射を強力に吸収した場合においては望ましくない可能性がある。この場合、上述の加熱ガスジェットまたは加熱された液体などの非放射性熱源が使用可能である。
[0068] 一実施形態では、液浸リソグラフィ装置は流体ハンドリングシステム200に対する基板Wと接する容積11の周縁の退き側の位置(すなわち、流体ハンドリングシステム200に対して基板Wと一体の容積11の後退する接触線212)を検出するように構成されたディテクタ208をさらに備える。一実施形態では液浸リソグラフィ装置は、複数のディテクタ208をさらに備え得る。1つ以上のディテクタ208は、例えば、流体アウトレット206の半径方向外向きの流体ハンドリングシステム200の下面209に配置されてよい。複数のディテクタ208の配置の形状は全体として、複数の流体アウトレット206によって形成された形状に対応してよい。好ましくは、各ディテクタ208は例えば、電磁放射などの対応する加熱システム207の可能な限り近く、例えばその対応するレーザに隣接して配置されるべきであり、これによりレーザが後退する接触線212の正確な位置を加熱することを可能にし得る。一実施形態では、図2の電磁放射の角部放射源207C(例えば、角部レーザ)の配置と同様に、流体ハンドリングシステム200は多角形の各角部において各角部ディテクタ208Cを備え得る。
[0069] 一実施形態では、ディテクタ208は流体ハンドリングシステム200の下面209からイメージを撮影するカメラであってよい。代替的には、ディテクタ208は発光部および受光部(図示されず)を備える光学デバイスであってよい。ディテクタ208は、受光部が後退する接触線212において発光部から放出された信号を受信するように構成されてよい。その他の適切なディテクタは、反射率センサ、分光センサ、容量センサまたはたわみ/変位センサを含んでよい。
[0070] 上述のように、加熱システム207が自己制御加熱システムとして働く場合にはディテクタ208の使用は任意選択であるが、ディテクタ208を使用することはなおも、例えば、走査速度を効果的に上昇させるために必要な最小量の熱を生成するために使用される熱、必要とされる/最適なレーザ強度またはデューティサイクルが誘導される、流体ハンドリングシステム200に対する基板Wと一体の容積11の後退する接触線212の正確な位置に関する有用な情報を提供し得る。
[0071] 一実施形態では、ディテクタ208は、対応する加熱システム207(例えば、レーザ)がサポート100内またはサポート100において位置決めされた場合に、サポート100内またはサポート100において位置決めされ得る。一実施形態では、液浸リソグラフィ装置はサポート100内において複数のディテクタ208をさらに備え得る。上述に記載されるように、各ディテクタ208は好ましくは電磁放射などの対応する加熱システム207に可能な限り近く、例えばその対応するレーザに隣接して配置されるべきである。この実施形態では、カメラが基板Wを通じて撮像することができない可能性があることから、ディテクタ208は光学デバイスを採用し上述のように機能することが好ましい。後者の場合は、光学デバイスの波長も、光学デバイスの発光部から放出された信号が基板Wおよび/またはフォトレジスト内にほとんど吸収されず、および/またはフォトレジストを露光しないように選択されるべきである点に留意されたい。
[0072] 一実施形態では、図1Aに示される基板Wの周囲の周りの1つ以上のレーザを有する配置と同様に、1つ以上のディテクタ208はその対応する加熱システム207に可能な限り近く(例えば、隣接して)基板Wの周囲の周りに配置され得る。しかしながら、基板Wの周囲の周りの1つ以上のディテクタ208の配置は任意選択である。
[0073] 一実施形態では、コントローラ300は、ディテクタ208からの検出信号に反応して、例えば1つ、または複数のレーザおよび1つ、または複数のレーザ源などの1つ、または複数の電磁放射源または加熱ガスジェットなどの加熱システム207を稼働させるように構成され、信号は流体ハンドリングシステム200に対する容積11の後退する接触線212の位置を検出したディテクタ208を表す信号である。一実施形態では、コントローラ300は、特定の電磁放射源により生成された電磁放射の強度などの1つ、または複数の電磁放射源のパラメータを、流体ハンドリングシステム200に対する後退する接触線212の位置を示す検出された信号に基づいて制御するために、検出された信号を使用し得る。一実施形態では、ディテクタ208からの検出された信号に反応して、基準方向(例えば、基板Wに実質的に垂直)に対して特定の電磁放射源により生成された電磁放射の方向を制御し得る。つまり、コントローラ300は流体ハンドリングシステム200に対する容積11の後退する接触線212の正確な位置に、電磁放射源がフォーカスするように適切に案内されるように、電磁放射源を稼働してよい。一実施形態では、コントローラ300は特定の電磁放射源のパルスモード動作のデューティサイクルを制御可能であり、それは流体ハンドリングシステム200に対する後退する接触線212の位置を示す検出された信号への反応であり得る。一実施形態では、コントローラ300は特定の電磁放射源により生成された電磁放射により照明された後退する接触線212の領域のサイズを示す検出された信号に反応して電磁放射源を制御することができる、すなわちコントローラ300は、レーザは放射源が容積11の後退する接触線の正確な位置にフォーカスするように適切に案内されるように稼働可能である。
[0074] 再び、上述のように加熱システム207が自己制御加熱システムとして働く場合には、コントローラ300の使用は任意選択であるが、コントローラ300の使用はディテクタ208を使用した場合においてこれらのような利点を依然として提供し得る。
[0075] 図5は、本発明の一実施形態による代替的な流体ハンドリングシステム200を有する液浸リソグラフィ装置の一部を示す概略図である。図5は、以下に記述される点以外は図1と同じである。図5の流体ハンドリングシステム200は、従来型であり、例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2010/045949号に開示される。液体の容積11は、液体供給システム(図示されず)に接続された液体供給パイプ211を介して開口203を通して提供され、基板Wと、流体ハンドリングシステム200と、液体の自由面201、202と、によって制限される。自由面201、202は、基板Wと流体ハンドリングシステム200との間に延在する。液体は、流体ハンドリングシステム200の下面209上の流体アウトレット206を通じて陰圧により液体回収パイプ212から抽出される。流体アウトレット206は、複数の孔を有する多孔質部材を備える。
[0076] 流体ハンドリングシステム200の下面209上のスペースは限られているため、加熱システム207およびディテクタ208(任意選択)はサポート100内に配置可能であり、図1、図1A、図2および図3の実施形態に関して記述された方法と同じ方法で作動することができる。代替的または付加的に、流体ハンドリングシステム200には、例えば基板Wと実質的に平行である、下面209から突出する拡張部213が提供され、中央開口210に対して流体アウトレット206の半径方向外向きに配置される。加熱システム207およびディテクタ208(任意選択)は、拡張部213上にまたは拡張部213において配置可能である。好ましくは、加熱システム207から放出する電磁放射は、拡張部213および/または基板Wに対する角度(すなわち、拡張部213および/または基板Wに垂直ではない角度)で配向可能である。同様にディテクタ208は、拡張部213および/または基板Wに対する角度で配向可能である。例えば、加熱システム207から放出する電磁放射が基板Wと一体の容積11の後退する接触線212に届くように、角度はコントローラ300により制御されるアクチュエータにより制御可能である。同様に、ディテクタ208が基板Wと一体の容積11の後退する接触線212まで削られることができるように、ディテクタ208の角度はコントローラ300によって制御される同じまたは異なるアクチュエータによって制御され得る。
[0077] 図1および2の実施形態に関して上述されたように、加熱システム207は、一端(図示されず)は外部電磁放射源に接続されもう一方の端は拡張部213において位置決めされる光ファイバ214により置き換え可能である。光ファイバ214は、電磁放射(例えば、レーザ放射)のビームが基板W上の異なる位置に誘導され得るように稼働可能であり、光ファイバの稼働はコントローラ300によって制御可能である。追加のまたは同じ光ファイバ214を使用することにより、ディテクタ208に対して同様の配置が可能である。図4に記載の加熱システム207に関して、加熱システム207は拡張部213に位置決め可能であり、上述の方法と同じ方法で作動する。
[0078] 上述のように、加熱システム207は、流体ハンドリングシステム200と基板Wとの間に形成される後退する接触線212を局所的に加熱するために使用可能である。しかしながら、本発明の加熱システム207は、可動オブジェクト(基板W以外)の表面と流体ハンドリングシステム200との間に形成された後退する接触線212を局所的に加熱するために、同じく使用可能である。再び、上述のように、オブジェクトは、例えば(これらに限らないが)可動テーブル上に設置されたまたは可動テーブルの上面上に設置されたセンサ等であってよい。図6は、以下に記述される点以外は図1と同じである。一実施形態では、図6および7に示されるように、可動テーブルは、投影システムPSにより提供された放射ビームの光学的特性(例えば、均一性、照射量、収差および空間像)を調整するように構成された測定テーブルMSTであってよい。従来型の測定テーブルMSTは、例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2008/088843号に開示される。測定テーブルMSTは、例えばその上の照度むらセンサ602、空間像測定器604および波面収差測定器606のうちのいずれか1つまたは複数を含み得る。投影システムPSの透過率を測定する透過率測定器および/または液体または投影システムを観察する測定器などのその他の測定部材もまた使用可能である。
[0079] 照度むらセンサ602は、投影システムPSの像面上の放射ビームを受光するピンホール状の受光部分を有する。照度むらセンサ602は、基板Wの露光面上の放射ビームの実際の強度および分布の測定を、極めて単純な方法かついずれの所望の時点においても可能にする。空間像測定器604は、投影システムPSにより投影されたパターン付与された放射ビームの空間像(投影イメージ)を測定するように構成される。波面収差測定器606は、波面収差を測定するように構成される。照度むらセンサ602、空間像測定器604および波面収差測定器606の測定は、基板Wの露光に使用される液体と同じ液体を介して実施される。
[0080] 上述のように、疎水性表面(例えば、液体を通じて照明され得る測定テーブルMST上に設置されたセンサの表面)は液体に対してより高い接触角を有するため、より親水性である表面よりもより速い臨界走査速度を可能とする。例えば、空間像測定器604はその表面を疎水性コートでコーティングされてよい。しかしながら、疎水性コートは短い期間にわたり投影システムPSからの放射ビームに露光された結果として劣化し得ることが知られている。測定テーブルMSTが流体ハンドリングシステム200下を、後退する接触線212が空間像測定器604の表面と接するほど基板Wの露光と同じ走査速度で移動した場合には、そのような走査速度は空間像測定器604の表面の臨界走査速度を既に超えている可能性があるため、結果として表面における液体損失をもたらす。図1から5の実施形態と同様の加熱システムは、オブジェクト(例えば、空間像測定器604)が流体ハンドリングシステム200に対するオブジェクトの移動の方向に沿って容積11から後退している場合に、オブジェクトの表面と一体の容積11の後退する接触線212において、液体の位置を局所的に加熱するように採用可能である。加熱システム207は上述の方法と同じ方法で作動し得る。この事により、後退する接触線212が加熱された結果としてその特定の表面に対する臨界走査速度が上がったことにより疎水性コーティングが実際の劣化した場合において、空間像測定器604の表面上におけるあり得る液体損失を防ぐことができる。この事により、空間像測定器604の使用もまた延長され、結果として機械休止時間を減らし得る。同様に任意選択であるが、ディテクタ208は、上述の方法と同じ方法で作動し得る。さらには、図6の流体ハンドリングシステム200は、図1の流体ハンドリングシステム200と交換可能である。
[0081] 本明細書において使用される「投影システム」という用語は、使われている露光波長にとって、あるいは液浸液の使用といった他の要因にとって適切な、あらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。
[0082] 本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、436nm、405nm、365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長、またはおよそこれらの値の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。
[0083] リソグラフィ装置は、例えば2つ以上の基板テーブル、または1つ以上の基板テーブルと1つ以上のセンサまたは測定テーブルとの組合せのような2つ以上のテーブル(あるいは1つ、または複数のステージあるいは1つ、または複数のサポート)を有するタイプでもよい。このような「マルチステージ」機械では、複数のテーブルを並行して使用してもよく、または準備ステップを1つ以上のテーブル上で実行する一方で、1つ以上の別のテーブルを露光用に使用してもよい。リソグラフィ装置は、同様に基板、センサ、および測定テーブルと並行して使用してもよい2つ以上のパターニングデバイステーブル(または1つ以上のステージ、または1つ以上のサポート)を有してもよい。
[0084] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者にとっては当然のことであるが、そのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にフォトレジスト層を塗布し、かつ露光されたフォトレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに一重または多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
[0085] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。例えば、本発明の実施形態は、上記に開示した方法を表す1つ以上の機械読取可能命令のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形態、またはこのようなコンピュータプログラムが記憶されたデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気ディスクまたは光ディスク)の形態であってもよい。さらには、機械読取可能命令は2つ以上のコンピュータプログラムにおいて実施され得る。2つ以上のコンピュータプログラムは、1つ以上の異なるメモリおよび/またはデータ記憶媒体上に記憶され得る。
[0086] リソグラフィ装置の少なくとも1つのコンポーネント内に位置する1つ以上のコンピュータプロセッサによって1つ以上のコンピュータプログラムが読み取られる場合、本明細書記載のすべてのコントローラは、各々または組み合わせて作動可能である。コントローラは、各々または組み合わせて信号を受信、処理および送信するためのあらゆる適切な構成を、有し得る。1つ以上のプロセッサは、コントローラのうちの少なくとも1つと通信するように構成される。例えば、各コントローラは、上述の方法を目的とする機械読取可能命令を含むコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプロセッサを含んでよい。コントローラは、そのようなコンピュータプログラムを記憶するデータ記憶媒体または複数のデータ記憶媒体、および/またはそのような媒体を受信するハードウェアを含んでよい。従って、コントローラは、1つ以上のコンピュータプログラムの機械読取可能命令に従って作動することができる。
[0087] 本明細書で想定するような液体供給システムは、広義に解釈されたい。特定の実施形態では、これは、液体を投影システムと基板および/または基板テーブルとの間の空間に提供する機構又は構造の組合せでよい。これは、1つ以上の構造、1つ以上の液体開口を含む1つ以上の流体開口、1つ以上の気体開口あるいは1つ以上の2相流用の開口の組合せを含んでもよい。これらの開口は、各々、空間への入口(または流体ハンドリング構造からの出口)あるいは空間からの出口(または流体ハンドリング構造への入口)であってもよい。一実施形態では、空間の表面が基板および/または基板テーブルの一部でよいか、空間の表面が基板および/または基板テーブルの表面を完全に覆ってよいか、または空間が基板および/または基板テーブルを囲んでもよい。液体供給システムは任意選択で、液体の位置、量、品質、形状、流量または任意の他の特徴を制御する1つ以上の要素をさらに含むことができる。
[0088] 上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。従って、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。