JP2016520610A - 網膜変性疾患の治療のための組成物及び方法 - Google Patents

網膜変性疾患の治療のための組成物及び方法 Download PDF

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Abstract

本開示は、加齢黄斑変性等の網膜変性疾患の治療に使用するための組成物に関する。本明細書に記載の組成物は、網膜変性疾患と診断された対象の網膜色素上皮において、TAK1の活性化を通してp38及び/又はJNKシグナル伝達を活性化するための薬剤を含む。本明細書に記載される組成物を用いた網膜変性疾患の治療の方法も提供される。【選択図】なし

Description

分野
本開示は、加齢黄斑変性等の網膜変性疾患の治療に使用するための組成物に関する。本明細書に記載の組成物は、網膜変性疾患と診断された対象の網膜色素上皮におけるp38及び/又はJNKシグナル伝達を活性化するための薬剤を含む。本明細書に記載の組成物を用いた網膜変性疾患の治療の方法も提供される。
背景
加齢黄斑変性(AMD)は、産業社会における失明の主原因であり続けている(1)。AMDの罹患率は年齢と共に増加し、50歳人口の2%、80歳までに25%となっており、150万人もの米国人が、全世界では数百万人を超える人々が罹患している。AMDには2つの病型、すなわち「ドライ型」及び「ウェット型」がある。ドライ型AMDは、罹患割合はAMDを有する人の85〜90%を占め、初期には多少の視覚障害を引き起こすことがあり、疾患の進行期には法的盲に進行することがある、慢性の無症候性疾患である。ドライ型AMDの初期には、ドルーゼンと呼ばれる不溶性の細胞外凝集体が網膜に蓄積し、視覚減退に関連する(1)。ドライ型AMDの後期は地図状萎縮(GA)としても知られ、網膜色素上皮(RPE)細胞及び栄養補給をRPEに頼っているRPE上層の光感受性の網膜光受容体細胞の変性が、ある領域では散在し、ある領域では密集していることを特徴とする。
ウェット型AMDは、罹患割合はAMD患者のわずか10%〜15%であり、唐突に出現し、急速に進行して失明に至る。進行期のウェット型AMDは脈絡膜血管新生(CNV)を特徴としており、この新生脈絡膜血管は、脈絡膜から発して網膜外層に向かう。ウェット型AMDの主病態は新生血管の形成であることから、失明のリスクを低減するために、抗血管新生薬での罹患患者の治療が提案されてきた。そのため、ウェット型AMDの治療には、ベバシズマブ及びラニビズマブ等の抗血管新生薬が一般に処方されており、それらは視覚の劣化を食い止め、多くのウェット型AMD患者に有益であることが証明されている。
ドライ型AMDの初期形態と進行期形態とにおける成長因子及び微小環境が介在する病理学的変化については、ほとんどわかっていない。2001年、Age−Related Eye Disease Studyにより、高用量の抗酸化物質、すなわちβカロテン、ビタミンC及びE、亜鉛並びに銅を毎日摂取すると、中間形態のドライ型AMDを有する患者において初期AMDから進行期AMDへの進行リスクが低下することが示された(2)。ドライ型AMDについて提案されているその他の治療戦略としては、視覚サイクルの調整が挙げられる。レチノールから光情報伝達の主要代謝産物ロドプシンへの変換を妨害することにより、RPEにおいてリポフスチン及びA2E等の有毒な老廃物が減少する(3)。そのための提案されている治療薬としては、ACU−4429及びフェンレチニドが挙げられる。フェンレチニドは、レチノール結合タンパク質に結合することにより循環中のレチノールと競合する合成レチノイド誘導体である。結果として生じる複合体は腎臓を通して排泄される程度まで小さくなり、それにより、RPEでの取込みに利用可能なレチノール貯蔵量は減少する。加えて、国際公開第2006/127945号には、A2Eの形成を低減することが示された化合物及び組成物が開示されている。同文献に記載の化合物は、A2E生合成経路の第1段階である光受容体外節におけるPEとの反応に利用可能な遊離RALの量を低減させることにより、A2E生合成を阻害するように設計されている。
黄斑変性を治療するためのその他のアプローチとして、神経栄養因子受容体アゴニスト、補体カスケード阻害剤等の抗炎症性化合物、抗アポトーシス化合物、ステロイド及び抗酸化化合物の使用等が提案されている(1)。しかし、記載されている治療法のいずれもが、網膜変性疾患と最も密接に関連するRPE細胞の病理学的な細胞変性及び老化に対処していない。したがって、AMDの治療法で、他の網膜変性疾患にも有効となる潜在的可能性があるものが引き続き必要とされている。
概要
本明細書においては、対象の網膜色素上皮(RPE)細胞におけるトランスフォーミング成長因子−β活性化キナーゼ1(TAK1)及びp38又はJNKシグナル伝達経路のうち少なくとも1つを活性化する薬剤を治療有効量含む医薬組成物であって、上記対象の網膜変性疾患の治療に使用することができる医薬組成物が提供される。例示的な組成物は、アニソマイシン又はその機能性誘導体を治療有効量含む。
また、対象の網膜変性疾患を治療する方法であって、上記対象の網膜色素上皮(RPE)細胞におけるTAK1、p38又はJNKシグナル伝達経路のうち少なくとも1つを活性化する薬剤(例えば、アニソマイシン、TAK1結合タンパク質、又はそれらの機能性誘導体)を治療有効量、該対象に投与する方法も提供される。
前述した以外のものも含めた目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら進められる以下の詳細な説明からいっそう明らかになろう。
RPE細胞におけるアポトーシス及びG0/G1期での細胞周期停止にTAK1が関わっていることを示す図である。図1A(Fig.1A)は、未処理の場合(左)、Hで処理した場合(中央)、又はH及びTAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノールで処理した場合(右)のRPE細胞について、二重染色(アネキシン及びヨウ化プロピジウム(PI))アッセイのFACS解析の結果をプロットしたものである。 RPE細胞におけるアポトーシス及びG0/G1期での細胞周期停止にTAK1が関わっていることを示す図である。図1B(Fig.1B)は、図1Aに記載のFACS解析を、TAK1阻害剤での前処理をHの存在下又は非存在下にて行った場合のRPE細胞について示すものである。細胞周期の各期(G1/G0期、S期、及びG2/M期)にある細胞の割合(%)は、x軸に対応している各期のDNA含有量(FL2A)により決定した。図1C(Fig.1C)は、図1BのFACS解析の結果を表形式で示すものである。図1D(Fig.1D)は、1時間にわたりTAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノール(1μM)で前処理した場合、又は未処理のままとした場合のARPE−19細胞の生存率を比較したXTTアッセイの結果を示すグラフである。 TAK1を阻害すると、酸化ストレスにさらされたRPE細胞におけるSA−β−galの発現(老化マーカー)が増加することを示す図である。図2A(Fig.2A)は、TAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノールで処理した場合又は未処理のままとした場合の、RPE細胞について図示する時点におけるSA−β−gal染色を示す代表的な写真である。図2B(Fig.2B)は、図示する日における、阻害剤で処理した細胞及び未処理の細胞についての、SA−β−galで陽性に染色された細胞の相対量(1視野当たりの細胞率(%))を表すヒストグラムである。 TAK1を阻害すると、酸化ストレスにさらされたRPE細胞におけるSA−β−galの発現(老化マーカー)が増加することを示す図である。図2C(Fig.2C)は、TAK1阻害剤で1時間処理し、次いで200μMのHで1時間処理した場合、又はHのみで処理した場合のRPE細胞におけるSA−β−gal染色を示す代表的な写真である。図2D(Fig.2D)は、H単独の場合又はHをTAK1阻害剤と組み合わせた場合について、SA−β−galで陽性に染色された細胞の相対量(1視野当たりの細胞率(%))を示すヒストグラムである。 酸化ストレス下においてTAK1を阻害するとp53発現に影響が及ぶことを示す図である。図3A(Fig.3A)は、1時間にわたりTAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノール(1μM)で処理した場合、又は未処理のままとした場合のRPE細胞についてのウェスタンブロット分析を示すものである。分離した全タンパク質抽出物を、図示する抗体を用いて分析し、GAPDHに正規化した。図3B(Fig.3B)は、リン酸化−p38レベルをp38に正規化して示すグラフである。図3C(Fig.3C)は、未処理のまま、又はHで処理してから、又はTAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノール(1μM)で処理し、次いでHで処理してから図示する日まで生育したRPE細胞についてのウェスタンブロット分析を示すものである。図3D(Fig.3D)は、図3Cのウェスタンブロットの結果を示すヒストグラムである。p53レベルはGAPDHに正規化した(結果値は2つの独立した実験の平均値である)。 酸化ストレスを受けた場合のTAK1の調節を示す図である。ここに示すのは、RPE細胞をH(200μM、1時間)で処理した場合、又は未処理のままとした場合についての3つの独立した実験の代表的な写真である。次いで、細胞をTAK1抗体(緑色)、アクチン(赤色)及びDAPI(青色)で免疫染色した。 TAK1阻害がRPE細胞のSASPの一因となり、それにより肥大及び機能不全が生じることを示す写真である。RPE細胞は、TAK1阻害剤及び/又はH(200mM)で処理するか、又は未処理で生育した。2週間後、異なる処理を施した細胞の馴化培地を遠心分離し、上清を新しい新鮮細胞(freshly cell)に適用した。図示する馴化培地で72時間処理した新鮮なRPE細胞の代表的な写真を示す。スケールバー=50μm。 酸化ストレス及びTAK1阻害がRPE細胞における細胞サイズ及びSA−β−gal発現を増大させることを示す図である。図6A(Fig.6A)は、以下の条件の代表的な写真を示すものである(左から右へ):未処理のRPE細胞。SA−β−gal染色に対して大半が陰性であり、形態は正常である;酸化ストレス処理をTAK−1阻害(5z−7オキソゼアエノール)あり又はなしで行ったRPE細胞。RPE細胞は、SA−β−galで陽性に染色され、肥大しており、RPE細胞の形状は扁平且つ異常である。図6B(Fig.6B)は、画像ソフトウェアを用いて種々の細胞サイズを定量化した結果を示すものである。各処理につき細胞数N=40である。 アニソマイシンで処理するとRPE細胞における老化マーカーの発現(appearance)が低減することを示す図である。REP細胞は、200mMのHで1時間処理するか、又は未処理のままで10日間置いた。細胞には、続いての処理(酸化ストレス)を、アニソマイシン10ng/mlの存在下、又は非存在下で5分間行った。次いで細胞を洗浄し、5日間超にわたって生育した。代表する写真は対照RPE細胞、又はアニソマイシンの存在下、又は非存在下で酸化ストレス処理したRPE細胞のSA−β−gal染色を示すものである。 アニソマイシンでの処理は、低濃度ではRPE細胞にとって有毒ではないことを例証する図である。図8A(Fig.8A)は図示するとおり、様々なアニソマイシン濃度で処理した場合、又は未処理のままとした場合のRPE細胞についてのSA−β−gal染色を示す代表的な写真を示すものである。図8B(Fig.8B):ARPE−19細胞を96ウェルプレートにて完全培地(full medium)に播種し(5000細胞/ウェル)、1時間にわたりTAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノール(1μM)、H及びアニソマイシンを単独若しくは組合せで用いて前処理するか、又は未処理のままとした。次いで、XTTアッセイにより細胞の生存能をアッセイした。実験は三連で実施した。
記載した配列の簡単な説明
本明細書において提供する核酸及び/又はアミノ酸配列は、37C.F.R. 1.822に規定されているように、ヌクレオチド塩基については標準文字の略号、アミノ酸については3文字のコードを用いて示す。各核酸配列のうち1本の鎖のみを示すが、相補鎖は、示されている鎖を任意に参照することにより含まれるものと理解される。配列表は、2014年5月30日に作成された「MORR5seqlist.txt」という名称の約23KBのASCIIテキストファイルとして提出され、同ファイルは参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表において、
配列番号1は、ヒトTAK1、アイソフォームAのアミノ酸配列である。
配列番号2は、ヒトTAK1、アイソフォームBのアミノ酸配列である。
配列番号3は、ヒトTAK1、アイソフォームCのアミノ酸配列である。
配列番号4は、ヒトTAK1、アイソフォームDのアミノ酸配列である。
配列番号5は、ヒトTAK1結合タンパク質のアミノ酸配列である。
詳細な説明
I.略号
AMD 加齢黄斑変性
RPE 網膜色素上皮
TAK1 トランスフォーミング成長因子−β活性化キナーゼ1
II.用語
特に説明されない限り、本明細書において使用するすべての専門用語及び科学用語は、本開示発明が属する技術分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」及び「the」には、文脈によりそうでないことが明確に指示されない限り、複数の指示物が含まれる。同様に、「若しくは、又は(or)」という単語には、文脈によりそうでないことが明確に示されない限り、「及び、並びに(and)」が含まれるものとする。本開示発明の実行又は検査においては、本明細書に記載するものと類似又は等価の方法及び材料を使用することができるが、適当な方法及び材料を以下に記載する。用語「〜を含む(comprises)」は、「〜を含む、〜を含んでいる、〜が含まれる(includes)」ことを意味する。略号「e.g.」は、ラテン語の「exempli gratia」に由来し、本明細書においては非限定的な例を示すために使用される。したがって略号「e.g.」は、用語「例えば(for example)」と同義である。
矛盾がある場合には、用語の説明を含め、本明細書が優先する。また、すべての材料、方法及び例は例示的なものであり、限定的なものであることを意図していない。
異常:正常な特徴からの逸脱。正常な特徴は、対照、母集団の標準等に見出すことができる。例えば、異常な状態が網膜変性疾患等の病態である場合、正常な特徴のいくつか適切な根拠としては、網膜変性疾患(例えば、ドライ型AMD)を患っていない個体、網膜変性疾患を患っていないと思われる個体の母集団標準(population standard)等を挙げ得る。
同様に、異常とは、疾患に関連する状態を指すことがある。用語「〜に関連する」には、疾患そのものに加え、疾患の発症のリスクが高まっていることが含まれる。例えば、一定の異常(中心視力の低下等)は、初期AMDの生物学的状態、並びに進行期AMD及び完全な視覚喪失への進行傾向に関連しているということができる。
投与:組成物(例えば、TAK1の活性化を介してp38及び/又はJNKシグナル伝達を活性化する薬剤等)を、選ばれた経路により対象に導入すること。活性化合物又は組成物の投与は、当業者に公知の任意の経路により行うことができる。投与は限局投与でも全身投与でもよい。限局投与の例として、これらに限定されるものではないが、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、くも膜下腔内投与、心膜内投与、眼内投与、局所経眼投与、又は、吸入投与による鼻粘膜若しくは肺への投与が挙げられる。さらに、限局投与には、全身投与に通常使用される投与経路、例えば、特定の器官への動脈供給に対し直接的な血管内投与を行う投与も含まれる。したがって、特定の実施形態において、特定の器官への供給を行う血管系に向けたものである場合、限局投与には動脈内投与及び静脈内投与が含まれる。また、限局投与には、治療効果を持続させるために、長期間にわたって活性剤及び活性化合物を放出する生体適合性眼内インプラント等の埋込み可能な器具、又は構造物中に活性化合物及び活性剤を組み込むことも含まれる。
全身投与には、循環系を介して広く全身に活性化合物又は組成物を分配するように設計される一切の投与経路が含まれる。したがって、全身投与には、これらに限定されるものではないが、動脈内投与及び静脈内投与が含まれる。また、全身投与には、循環系による全身への吸収及び分配を目的としたものである場合には、これらに限定されるものではないが、局所投与、皮下投与、筋肉内投与又は吸入による投与も含まれる。
類似体、誘導体又は模倣体:類似体とは、化学構造の点で親化合物と異なる分子、例えば、同族体(アルキル鎖長の差異等、化学構造における増分が異なる)、分子断片、1つ又は複数の官能基が異なる構造体、イオン化における変化体等である。構造類似体は、定量的構造活性相関(QSAR)を使用し、Remington(The Science and Practice of Pharmacology、第19版(1995)、第28章)に開示されているもの等の手法によって見出されることが多い。誘導体とは、基本構造体から誘導された生物活性分子である。模倣体とは、別の分子の活性、例えば生物活性分子の活性等を模倣する分子である。生物活性分子としては、化合物の生物活性を模倣する化学構造体を挙げることができる。類似体、誘導体、模倣体という用語が状況によっては重複する場合があることが認識される。本明細書において使用する場合、アニソマイシン等の薬剤の「機能性誘導体」には、その薬剤の類似体、誘導体及び模倣体が含まれる。
抗体:少なくとも免疫グロブリン軽鎖又は重鎖可変領域を含むポリペプチドリガンドで、TAK1、p38若しくはJNKタンパク質又はそれらの断片等である抗原のエピトープを特異的に認識しそれと結合するもの。抗体は重鎖と軽鎖とから構成され、重鎖及び軽鎖はそれぞれ、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域と称される可変領域を有する。VH領域とVL領域とが協調して、抗体により認識される抗原の結合を担っている。抗体には、完全型免疫グロブリン並びに当技術分野で周知のそのバリアント及び部分、例えば、Fab’断片、F(ab)’断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)及びジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)が含まれる。抗体という用語には、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)等の組換え型も含まれる。Pierce Catalog and Handbook、1994−1995(Pierce Chemical Co.、Rockford、IL);Kuby、Immunology、第3版、W.H.Freeman&Co.、New York、1997も参照のこと。本明細書に記載されている組成物及び方法の特定の実施形態において、活性剤は、p38及び/又はJNKシグナル伝達の活性を増大させる活性化抗体である。抗体は、標的タンパク質活性の模倣薬として、又は標的タンパク質活性の遮断薬として機能することができ、その機能に由来する治療効果を有する。
細胞老化:増殖可能な細胞が分裂を止めるときに生じる本質的に不可逆的な成長停止を指し、単に「老化」ということが多い。細胞老化は、培養下での正常ヒト細胞の増殖(成長)を低減させる過程であると以前は説明されていた。老化を誘導する刺激は多数ある。培養下でのヒト細胞の成長に限界がある原因の一部は、テロメア浸食(telomere erosion)、すなわち染色体末端のDNAが徐々に失われることであることが実証された(4)。さらに、多くの老化細胞の非テロメア部位にはゲノム損傷があり、それによっても老化成長停止(senescence growth arrest)に必要なDNA損傷シグナル伝達が持続する。DNA二本鎖切断は、特に強力な老化誘導因子である。老化成長停止は、単に細胞増殖が停止することではない。老化細胞は、遺伝子発現パターンにおける顕著且つ明白な変化を示す(5)。比較的新しい概念ではあるが、RPE細胞の老化は、AMDの発症及び進行のリスク因子であると考えられる(6)。
診断:疾患、又は疾患(例えば、網膜変性疾患)を発症する素因を、その徴候、症状、並びに、多様な検査及び方法の結果により同定するプロセス。そのようなプロセスを通して到達する結論も「診断」と呼ばれる。一般に実施される光学的検査の形態として、これらに限定されるものではないが、理学的検査、視野検査、光干渉断層撮影法(OCT)等の画像化検査、及び、網膜電図等の生理学的検査が挙げられる。用語「素因」は、対象を網膜変性疾患等の状態、疾患又は障害にかかりやすくする1つ又は複数の因子(例えば、特定の遺伝子突然変異等)の効果を指す。本明細書において開示する方法のいくつかの例では、検査によりAMD等の状態、疾患又は障害発現の素因を有する対象を同定することができる。
有効性:所望の治療効果を発揮する薬剤の能力を指す。有効性は、化合物の強さ又は効力も指す。本明細書において使用する場合、「有効性を強化する」とは、薬剤の治療作用を増大させることを意味する。
化合物の有効量:治療を受けることになる対象において所望の効果を達成するのに十分な化合物の量。化合物の有効量は単回投与の形態で、又は例えば治療過程中毎日等の複数回投与の形態で投与することができる。但し、化合物の有効量は、施用される化合物、治療を受けることになる対象、病気の重症度及び型、並びに化合物の投与様式に依存する。
ポリペプチドの機能性断片及び機能性バリアント:親ポリペプチドの1つ又は複数の機能を維持する親ポリペプチドの断片及びバリアントが含まれ、例としては、選択的スプライシング又は転写事象の結果として得られる自然のアイソフォームが挙げられる。ポリペプチドをコードしている遺伝子又はcDNAは、実質的な変性を伴わずにポリペプチドの機能の1つ又は複数をかなりの程度突然変異させることができることが認識されている。第一に、遺伝コードは縮重していることが周知であり、したがって、異なるコドンが同じアミノ酸をコードする。第二に、アミノ酸置換が導入された場合でも、突然変異を保存的なものとし、タンパク質の必須機能に対して重大な影響を及ぼさないようにすることが可能である。第三に、ポリペプチドの機能のすべてを損なうことも排除することもなく、ポリペプチド鎖の一部を欠失させることができる。第四に、挿入又は付加、例えばエピトープタグの付加は、ポリペプチド鎖において、ポリペプチドの機能を損なうことも排除することもなく行うことができる。ポリペプチドの1つ又は複数の機能を実質的に損なうことなく行うことができるその他の改変としては、例えば、in vivo又はin vitroでの化学的及び生化学的な改変、又は異常アミノ酸(unusual amino acids)の組込みが挙げられる。そのような改変としては、当業者には容易に理解されるように、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、例えば放射性核種での標識化、及び多様な酵素的改変が挙げられる。ポリペプチドの標識化のためのさまざまな方法、及びそのような目的にとって有用な標識は当技術分野において周知であり、例としては、32P等の放射性同位元素、標識化された特異的結合パートナー(例えば抗体)と結合するか又はそれにより結合されるリガンド、発蛍光団、化学発光剤、酵素、及び抗リガンドが挙げられる。機能性断片及び機能性バリアントはさまざまな長さのものとすることができる。例えば、断片によっては、少なくとも10個、25個、50個、75個、100個又は200個のアミノ酸残基を有する。
機能的に類似したアミノ酸を示してある保存的アミノ酸置換表は、当業者には周知である。以下の6群は、互いに保存的置換が行われると考えられているアミノ酸の例である。
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)アルギニン(R)、リジン(K)、
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
アミノ酸の変化を生じさせるcDNA配列の変更は、保存的であるか否かによらず、コードされたタンパク質の機能的及び免疫学的な同一性を保つために最低限にとどめられることがほとんどである。タンパク質の免疫学的同一性は、タンパク質が抗体により認識されるかどうかを決定することにより評価することができ、そのような抗体により認識されるバリアントは免疫学的に保存されている。どのようなcDNA配列バリアントの場合も、コードされたポリペプチド中に20個以下、好ましくは10個未満のアミノ酸置換を導入することが好ましいであろう。バリアントのアミノ酸配列は、例えば、天然アミノ酸配列と80%、90%、又はさらには95%又は98%同一であり得る。
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼシグナル伝達:MAPKキナーゼシグナル伝達は、成長、分化及びストレス応答等の細胞事象に関わっている(7)。4つの並行したMAPK経路、すなわち、ERK1/ERK2、JNK、p38及びERK5が今日までに同定されている(8)。これらのMAPK経路は、MAPKKKがMAPKKをリン酸化して活性化し、MAPKKがMAPKをリン酸化して活性化するという、線形のキナーゼカスケードである。これらのMAPK経路が活性化されることにより、リン酸化を通じていくつかの基質の活性が調節される。MAPKシグナル伝達カスケードは、増殖、分化、アポトーシス及びストレス応答を含め、細胞過程の制御に関わっている。
薬学的に許容される担体:本開示において有用な薬学的に許容される担体は、従来的なものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences、E.W.Martin著、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第15版(1975)には、本明細書において開示されている化合物の医薬としての送達に適した組成物及び製剤が記載されている。
一般的に、担体の性質は、用いられることになる特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、薬学的及び生理学的に許容される流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロール等をビヒクルとして含んでいる注射液を含むことがほとんどである。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤又はカプセル剤の形態)の場合、従来の非毒性固体担体としては、例えば、医薬品用のマンニトール、ラクトース、デンプン又はステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。生物学的に中性の担体に加え、投与される医薬組成物は、少量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、保存剤及びpH緩衝剤等、例としては酢酸ナトリウム又はモノラウリン酸ソルビタン等を含有することができる。
医薬製剤:対象又は細胞に正しく投与されるときの、所望の治療効果又は予防効果を誘導する能力がある化合物又は組成物。「インキュベートすること」には、薬剤が細胞と相互作用するのに十分な期間にわたり、標的を薬剤に曝露させることが含まれる。「接触させること」には、固体又は液体形態の薬剤を細胞とインキュベートすることが含まれる。
疾患を予防又は治療すること:「疾患を予防すること」とは、疾患の発症又は末期症状発現(full development)を阻害すること、例えば、初期のドライ型AMDを有する人における完全な視覚喪失の発現を阻害することを指す。治療とは、すでに発症し始めている疾患又は病的状態の徴候又は症状を改善する治療的介入を指す。
網膜変性疾患:網膜の劣化が原因で生じる疾患であって、一般に進行性の視覚喪失、特に光受容体劣化に関連する疾患。網膜変性は、複数の原因によって生じる場合がある。特定の実施形態においては、老化により網膜色素上皮(RPE)細胞の萎縮が生じ、それにより光受容体喪失に至る場合がある。RPEは、光受容体を保護しこれに栄養を供給するように働く細胞層である。特定の網膜変性疾患、これらに限定されるものではないがドライ型AMD、ウェット型AMD及び色素性網膜炎等においては、進行性の光受容体喪失の原因となるのはRPE機能不全である。
小分子:通常、分子量が1000未満、又はいくつかの実施形態においては約500ダルトン未満の分子。
対象:生きている多細胞生物であり、ヒトと非ヒト哺乳動物の両方を含むカテゴリーである脊椎生物が含まれる。
疾患又は状態にかかりやすい対象:疾患又は状態を発症する可能性がある、又はその傾向がある、又はその素因がある対象。疾患又は状態の症状をすでに有しているか又は示している対象は、疾患又は状態の症状をすでに発症していることから「かかりやすい」と考えられることは理解される。
治療有効量:治療を受けることになる対象において所望の効果を達成するのに十分な化合物の量。化合物の有効量は単回投与の形態で、又は例えば治療過程中毎日の複数回投与の形態で、投与し得る。但し、有効量は、施用される化合物、治療を受けることになる対象、病気の重症度及び型、並びに化合物の投与様式に依存する。例えば、活性成分の治療有効量は、効果を生じる活性成分(小分子、ペプチド、タンパク質又は抗体等)の、血液(in vivo)中又は緩衝液(in vitro)中の濃度(モル毎リットル、又はモーラー−M)として測定することができる。
トランスフォーミング成長因子−β活性化キナーゼ1(TAK1):TAK1はMAPKKKファミリーのメンバーであり、TGF−β又は酸化ストレスにより誘導されるMAPキナーゼシグナル伝達の調節因子として当初報告された(9)。TAK1は、ストレスシグナルだけでなく炎症促進性サイトカインによっても活性化されることが公知であり、p38及びJNKシグナル伝達の活性化に関わっている。TAK1は、元々MAP3K7として知られていた。
ベクター:宿主細胞中に導入され、それによりトランスフェクト宿主細胞を生じさせる核酸分子。組換えDNAベクターは組換えDNAを有するベクターである。ベクターには、宿主細胞中で複製起点等を複製させる核酸配列を含ませることができる。ベクターには、当技術分野において公知の1つ又は複数の選択可能なマーカー遺伝子及び他の遺伝要素を含ませることもできる。ウイルスベクターは、1つ又は複数のウイルスから誘導された少なくともいくつかの核酸配列を有する組換えDNAベクターである。
III.いくつかの実施形態の概説
本明細書において、対象の網膜色素上皮(RPE)細胞における、TAK1活性化(TAK1−activated)、p38又はJNKシグナル伝達経路のうち少なくとも1つを活性化する薬剤を治療有効量含む医薬組成物が提供される。本明細書に記載の組成物は、対象の網膜変性疾患の治療に使用することができる。
特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物の薬剤は、ペプチド、抗体及び小分子からなる群から選択される。特定の例において、ペプチドは、トランスフォーミング成長因子−β活性化キナーゼ1(TAK1)又はTAK1結合タンパク質(TAB1)であり、特定の例において、これらのペプチドは、TAK1又はTAB1ペプチドを発現する核酸ベクターにより対象に提供することができる。
特定の例において、TAK1、p38及び/又はJNKシグナル伝達を活性化する小分子は、アニソマイシン又はその機能性バリアントである。
特定の実施形態において、医薬組成物は、ドライ型加齢黄斑変性(AMD)、ウェット型AMD又は色素性網膜炎の治療に使用することができる。
特定の実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、対象の眼腔(ocular space)中への注射用に製剤化するか、又は眼軟膏剤として、又は局所適用のための点眼剤として製剤化することができる。他の実施形態において、医薬組成物は、対象の少なくとも1つの眼内に埋め込むことができる眼インプラント中に組み込まれる。
特定の実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、網膜変性疾患の治療のための追加的な薬剤、これらに限定されるものではないが抗炎症剤及び酸化防止剤を含む。
さらに、本明細書には、対象の網膜変性疾患を治療するための方法であって、上記対象の網膜色素上皮(RPE)細胞におけるTAK1、p38又はJNKシグナル伝達経路のうち少なくとも1つを活性化する薬剤を治療有効量、上記対象に投与する方法が記載されている。
特定の実施形態において、薬剤は、ペプチド、例えばTAK1又はTAB1;抗体、例えばTAK1、p38及び/又はJNKシグナル伝達を活性化する抗体;及び小分子、例えばアニソマイシン又はその機能性誘導体からなる群から選択される。
特定の実施形態において、本明細書に記載の方法による治療対象となる網膜変性疾患は、ドライ型加齢黄斑変性(AMD)、ウェット型AMD及び色素性網膜炎からなる群から選択される。
本明細書に記載の方法の特定の実施形態において、薬剤は、対象の眼腔中に注射することにより対象に投与される医薬組成物の形態で製剤化されるか、局所投与のための眼軟膏剤として製剤化されるか、又は対象に局所投与するための点眼剤として製剤化される。
特定の実施形態において、薬剤は、対象の少なくとも1つの眼内に埋め込まれるインプラントにより提供される。
またさらなる実施形態において、本方法は、網膜変性疾患の治療のための追加的な薬剤を対象に投与することを含む。そのような追加的な薬剤は、TAK1、p38及び/又はJNKシグナル伝達活性化剤を含む医薬組成物中に含ませることができ、また本明細書に記載のその他の活性剤と同時又はは異なる時点のいずれかで、対象に別々に投与することもできる。
IV.網膜変性の治療又は予防のためのMAPキナーゼ経路、すなわちTAK1、p38及び/又はJNKシグナル伝達経路の刺激
本明細書には、p38及びJNKシグナル伝達経路の活性化に関わっているTAK1 MAPキナーゼを阻害すると、網膜色素上皮(RPE)細胞の老化及び萎縮が促進するという知見が記載されている。逆に、例えば小分子アニソマイシンによってTAK1を刺激すると、RPEの老化が阻害されることも発見されている。RPE機能不全は、加齢黄斑変性(AMD)及び色素性網膜炎(RP)を含む複数の網膜変性疾患の鍵となる要因である。またRPE機能不全は、硝子体内注射及び硝子体内インプラント設置(implantaition)に関連する病的状態がもたらす結果でもある。
したがって、本明細書においては、網膜変性疾患の治療及び予防に使用するための組成物及びその治療及び予防の方法が提供される。本明細書に記載の組成物及び方法は、RPE細胞におけるTAK1の上流活性化を介してp38及び/又はJNKシグナル伝達を促進する、小分子、ペプチド又は抗体等の活性剤の使用を含む。
特定の実施形態において、小分子はアニソマイシン、又はその機能性誘導体である。
アニソマイシン[フラゲシジンとしても知られる、(2R,3S,4S)−4−ヒドロキシ−2−(4−メトキシベンジル)−ピロリジン−3−イルアセテート]は、ストレプトミセス種(Streptomyces spp.)により分泌される翻訳阻害剤であり、哺乳動物細胞においてストレスにより活性化されるマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ及びp38/JNKを強く活性化する結果、当該経路における前初期遺伝子が速やかに誘導される。アニソマイシンの構造は、式I:

として示される。
特定の実施形態において、RPE細胞におけるTAK1、p38及び/又はJNKシグナル伝達を刺激するための薬剤は、シグナル伝達経路の活性化ペプチドである。多数のペプチドがp38及びJNKシグナル伝達経路を活性化することが公知であり、これらに限定されるものではないが、例えばTAK1アイソフォームのうちの1つ(例示的な配列を配列番号1〜4に記載する)、TAB1(例示的な配列を配列番号5として記載する)、MKK3/4/6、MLK1、ASK1及びMEKK1等があり、これらは市販されている。特定の実施形態において、ペプチドは、対象の眼内空間への直接投与用に製剤化される。他の実施形態においては、活性ペプチドは核酸ベクターから発現され、この核酸ベクターはそれ自体が対象の眼内空間に供給される。組換えタンパク質発現の方法(ペプチド配列に基づくタンパク質発現コンストラクトの構築を含む)は、当技術分野において周知であり、本開示に包含される。また、p38及び/又はJNK刺激タンパク質の機能性バリアントは、野生型タンパク質の活性を維持する突然変異導入の標準的な方法により作製することができ、本明細書に記載の組成物及び方法において使用することができることも理解される。そのような機能性バリアントは配列を、少なくとも98%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、又はさらには80%未満の配列同一性で野生型ペプチドと同一にすることができる。TAK1が以前はMAP3K7と呼ばれていたこと、またいくつかのTAK1アイソフォームが存在し、本開示は、p38/JNKを活性化する触媒活性が共通しているTAK1/MAP3K7のすべてのアイソフォーム及びバリアントを包含することが理解される。
他の実施形態において、p38及び/又はJNK刺激剤は、p38及び/又はJNKシグナル伝達経路の上流にある活性化細胞受容体(activating cellular receptor)と結合する活性化抗体である。特定の例において、活性化抗体はTGFβ受容体1を特異的に認識し、これと結合して活性化させる。他の例において、TAK1活性化抗体は、TAK1活性化の上流の多数のストレス応答性受容体(例えば、Toll様受容体(TLR)ファミリーのメンバー)のうち1つと結合する。
本明細書に記載のTAK1、p38及び/又はJNK経路刺激剤は、網膜変性疾患の治療及び/又は予防のための、本明細書に記載の医薬組成物において使用することができる。本明細書に記載の薬剤を使用する方法において、薬剤は、網膜変性疾患の治療を必要とする対象に治療有効量投与される。そのような対象としては、網膜疾患と診断されたか、又はその素因がある患者が挙げられる。
特定の例において、対象は網膜疾患と診断されている(例えば網膜ドルーゼンの検出;軽度の視覚喪失;視野喪失;OCT画像法により決定された網膜厚の異常;及びERG結果の異常により決定された光受容体活性の低下による)。そのような例においては、本明細書に記載の薬剤を含む組成物を投与すると、網膜疾患の進行を減速させるか、又は食い止めることができる。例えば、初期のドライ型AMDと診断された対象が治療を受ければ、視覚能力がさらに低下する可能性がなくなり、疾患の後期に進行しなくなる。
他の例においては、本明細書に記載の方法は、網膜変性疾患の素因がある対象における当該疾患の発症を予防するために使用することができる。網膜変性疾患の素因は、例えば、網膜機能不全に関連する遺伝子突然変異の検出により決定することができる。したがって、本明細書に記載されている網膜の劣化を予防する活性剤を投与すれば、網膜変性疾患の発症が予防されることが理解できる。
併用療法
本明細書に記載の組成物及び方法の特定の実施形態において、TAK1、p38及び/又はJNKシグナル伝達を刺激する薬剤は、網膜変性を治療又は予防する少なくとも1つの追加的な活性剤と併用される。網膜変性の治療又は予防のための活性化合物の非限定的な例として、これに限定されるものではなくAMDが挙げられるが、RP及び他の網膜障害を挙げることができる。
いくつかの実施形態において、p38及び/又はJNKシグナル伝達を刺激する薬剤の組合せが合わされ、網膜変性を治療又は予防する少なくとも1つの追加的な活性剤が、単一の組成物の形態で対象に投与される。特定の例において、併用組成物(combination compositions)は、構成要素である複数の活性成分が活性型の状態で対象において同時に利用可能となるように製剤化される。他の例においては、構成要素である複数の活性成分は、複数の構成要素が活性型の状態で対象に対して逐次的に利用可能となるように製剤化される。
他の実施形態において、TAK1の活性化を介してp38及び/又はJNKシグナル伝達を刺激する薬剤と、網膜変性症を治療又は予防する少なくとも1つの追加的な活性剤との併用は、複数の組成物、すなわち1つの組成物が例えばアニソマイシンを含有し、少なくとも1つの追加的な組成物が少なくとも1つの追加的な活性剤を含有する複数の組成物の形態で対象に投与することができる。そのような複数の組成物の投与のタイミング及び順序は変化させることができる。特定の例において、複数の組成物は同時に提供されるが、他の例においては、複数の組成物は、1つの組成物が他の組成物の前又は後に提供される。別々の時点で投与されると、少なくとも2つの組成物の投与間にかなりの時間、例えば数時間、数日又はさらにはそれより長い時間が経過する場合があることが企図される。
医薬組成物及び投与様式
本明細書に記載の治療において使用するための医薬製剤は、任意の薬学的に許容される組成物の形態で供給することができることが企図される。
医薬組成物のうち、本開示においては、小分子、これに限定されるものではないが、例えばアニソマイシン等、の薬学的に許容される酸又は塩基付加塩が特に企図される。語句「薬学的に許容される酸又は塩基付加塩」には、アニソマイシンの形成が可能な治療活性のある非毒性の酸付加塩及び非毒性の塩基付加塩の形態が含まれる。塩基性の特性を有するそのような化合物は、上記塩基形態を適切な酸で処理することにより、その薬学的に許容される酸付加塩に変換することができる。適切な酸は、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸若しくは臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸等の酸である無機酸、又は例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモン酸等の酸である有機酸を含む。
酸性の特性を有する小分子、これに限定されるものではないが例えばアニソマイシンは、上記酸形態を適当な有機塩基又は無機塩基で処理することにより、その薬学的に許容される塩基付加塩に変換させ得る。適切な塩基性塩形態は、例えばアンモニウム塩;リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ塩及びアルカリ土類金属塩;ベンザチン、N−メチル−D−グルカミン等の有機塩基との塩;ヒドラバミン塩;例えば、アルギニン、リジン等のアミノ酸との塩を含む。
用語「酸又は塩基付加塩」は、これに限定されるものではないがアニソマイシン等の小分子が形成することが可能な水和物及び溶媒付加形態も含む。そのような形態の例として、水和物、アルコラート等が挙げられる。
また、本明細書に記載の方法及び組成物中で使用するものとして、小分子、これに限定されるものではないが例えばアニソマイシン等の立体化学的異性体形態も企図される。用語「立体化学的異性体形態」には、同じ結合配列により結合されている同じ原子から構成されているが、互換性のない異なる三次元構造を有するすべての可能な化合物が含まれる。特に言及又は指示されない限り、化合物の化学名称は、その化合物が有し得るすべての可能な立体化学的異性体形態の集合を包含する。そのような集合は、当該化合物の基本分子構造のすべてのジアステレオマー及び/又はエナンチオマーを含有し得る。また、純粋な形態又は互いに混ざり合った形態でのすべての立体化学的異性体形態も企図される。
多様な送達系が公知であり、本明細書に記載のペプチド、抗体及び小分子を投与するために使用することができる。そのような系としては、例えば、治療用分子(複数可)の発現が可能なリポソーム、微小粒子、マイクロカプセル、組換え細胞の形態でカプセル化したもの(例えばWuら、J.Biol.Chem.、262、4429ページ、1987を参照のこと)や、治療用核酸(本明細書に記載のペプチド又は抗体を発現する)をレトロウイルスベクター又は他のベクターの一部として構成したもの等が挙げられる。導入の方法として、これらに限定されるものではないが、眼内、くも膜下腔内、皮内、筋肉内、腹腔内(ip)、静脈内(iv)、皮下、鼻腔内、硬膜外及び経口の各経路が挙げられる。治療薬は、任意の好都合な経路により、例えば点滴、又はボーラス注射、局所、上皮又は皮膚粘膜の内壁(例えば口腔粘膜、直腸及び腸の粘膜等)を通した吸収、経眼、経鼻及び経皮の各経路により投与してもよく、他の生物活性剤と一緒に投与してもよい。
特定の一実施形態においては、本明細書に記載の薬学的治療を、注射、カテーテル、坐剤、又はインプラント(例えば多孔質、非多孔質若しくはゼラチン質の材料、シアラスティック(sialastic)膜等の膜若しくは繊維等から形成されるインプラント)等により行うことが望ましい場合がある。別の実施形態において、治療剤は、ベシクル、特にリポソームの形態で送達される(例えばLanger、Science、249、1527ページ、1990;Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancerに掲載、Lopez−Berestein及びFidler(編)、Liss、N.Y.、353〜365ページ、1989を参照のこと)。
また別の実施形態においては、併用治療において使用される薬剤のうち任意の1つを制御放出系の形態で送達することができる。一実施形態においては、ポンプを使用し得る(例えばLanger Science、249、1527ページ、1990;Sefton Crit.Rev.Biomed.Eng.、14、201ページ、1987;Buchwaldら、Surgery、88、507ページ、1980;Saudekら、N.Engl.J.Med.、321、574ページ、1989を参照のこと)。別の実施形態においては、ポリマー材料を使用することができる(例えばRangerら、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.、23、61ページ、1983;Levyら、Science、228、190ページ、1985;Duringら、Ann.Neurol.、25、351ページ、1989;Howardら、J.Neurosurg.、71、105ページ、1989を参照のこと)。他の制御放出系、例えばLanger(Science、249、1527ページ、1990)による総説において考察されているもの等を使用することもできる。
特定の例において、p38及び/又はJNKシグナル伝達を刺激する薬剤と、網膜変性の治療のための少なくとも1つの追加的な薬剤とは、同時に同じ投与様式により投与される。他の例においては、医薬化合物は異なる時点で、同じ投与様式又は異なる投与様式のいずれかにより投与される。
薬剤を送達するビヒクルには、当業者に周知の方法を用いて、医薬化合物の薬学的に許容される組成物を含ませることができる。例えばいくつかの実施形態において、本明細書に記載の薬剤は、薬学的に許容される担体中に含有されることが一般的である。用語「薬学的に許容される」は、連邦若しくは州政府の規制当局により認可されているか、又は動物における、より特定すればヒトにおける使用についての、米国薬局方若しくは他の一般に認知されている薬局方に掲載されていることを意味する。用語「担体」は、それと共に治療薬が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指す。そのような医薬用担体は滅菌済の液体、例えば水、及び油であってもよく、油の例としては、石油、動物、植物又は合成に由来するもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等が挙げられる。医薬組成物が静脈内投与される際には、水が好ましい担体である。生理食塩溶液、血漿媒体(blood plasma medium)、水性デキストロース及びグリセロール溶液も、特に注射液剤の場合に液体担体として用いることができる。媒体は、従来の医薬用補助材料(pharmaceutical adjunct material)、例えば、浸透圧を調整するための薬学的に許容される塩、シクロデキストリン等の脂質担体、血清アルブミン等のタンパク質、メチルセルロース等の親水化剤(hydrophilic agent)、界面活性剤、緩衝剤、保存剤等を含有することもできる。
医薬賦形剤の例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。治療薬は、所望により少量の湿潤剤、若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。治療薬は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤等の形態をとることができる。治療薬は従来の結合剤及び担体、例えばトリグリセリド等を用いた坐剤として製剤化することができる。経口製剤としては標準的な担体、例えば、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。非経口用の医薬担体についてのより完全な説明はRemington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版、1995)、第95章に見出すことができる。
他の医薬組成物の実施形態は当業者には公知であろうが、従来の薬学的に許容される対イオンを用いて調製される。
治療用調製物は、患者に対して正しい投与が行われるように、少なくとも1つの活性成分を治療有効量、好ましくは精製された形態で、適当量の担体と一緒に含有することになろう。製剤化は、投与様式に合ったものであるべきである。
本開示の併用治療薬は、慣例的な手順に従って、ヒトへの静脈内投与用に構成された医薬組成物として製剤化することができる。静脈内投与用の組成物は、滅菌済の等張性の水性緩衝液中の液剤であることが一般的である。必要であれば、組成物は、可溶化剤及び、注射部位での疼痛を和らげるために局所麻酔薬、例えばリドカイン、を含むこともできる。
成分は、多様な実施形態において、別々に供給されることもあれば、単位剤形の形態で混ぜ合わされた状態で、例えば、固体、半固体及び液体の剤形(例えば、錠剤;丸剤;散剤;点眼剤、軟膏剤若しくは懸濁剤を含めた溶液剤)で、又は、活性剤の量を表示してあるアンプル若しくは小袋(sachette)等の密封容器入りの凍結乾燥された乾燥粉末剤、若しくは水の入っていない濃縮剤として、供給されることもある。
有効となる各治療剤の量は、治療される障害又は状態の性質、並びに障害又は状態の病期に依存する。有効量は標準的な臨床手法により決定することができる。製剤中に用いられる正確な用量は、投与経路にも依存するが、医療専門家の判断及び各患者の状況によって決定すべきである。個々の化合物の例示的な投与量は本明細書に記載されているが、無数の他の投与レジメンが本開示により包含される。追加的な投与量範囲の例は、単回投与又は分割投与において、体重1kg当たり0.1〜200mgである。投与量範囲の別の例は、単回投与又は分割投与において、体重1kg当たり1.0〜100mgである。
任意の特定の対象に対する具体的な用量レベル及び投与頻度は変化させることができ、具体的な化合物の活性、当該化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食生活、投与様式及び時間、排泄速度、薬物の組合せ、並びに治療を受けている宿主の状態の重症度等、さまざまな要素に依存する。特定の一例において、アニソマイシンは10ng/ml未満の濃度で対象に投与される。
本開示の治療用化合物及び組成物は、治療期間を通じてほぼ同じ用量で、又は用量漸増レジメンで、又は負荷用量レジメン(例えばこの場合、負荷用量は維持量の約2〜5倍である)で投与することができる。いくつかの実施形態において、用量は、治療を受けている対象の状態、疾患若しくは状態の重症度、治療への明らかな反応、及び/又は当業者に判断されるその他の要素に基づき、治療の過程において変更される。いくつかの実施形態においては、薬物を用いた長期的な治療が企図される。
いくつかの実施形態においては、治療用化合物又は組成物を治療有効量含む医薬調製物の持続的な局所放出が有益な場合がある。徐放製剤は、当業者に公知である。例として、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン−セバシン酸又はレシチン懸濁剤等のポリマーを使用して、持続的な局所放出を行うことができる。
いくつかの実施形態においては、送達は、例えばデポフォーム(DepoFoam)(SkyePharma、Inc、San Diego、CA)を用いたもの等の多胞性リポソーム(multi−vesicular liposome)を含む薬物デポの注射及び/又は埋込みを介して行われることが特に企図される(例えば、Chamberlainら、Arch.Neuro.、50、261〜264ページ、1993;Katriら、J.Pharm.Sci.、87、1341〜1346ページ、1998;Yeら、J.Control Release、64、155〜166ページ、2000;及びHowell、Cancer J.、7、219〜227ページ、2001を参照のこと)。
以下の実施例は、ある特定の特徴及び/又は実施形態を例証するために提供するものである。本実施例は、ここに記載されている特定の特徴又は実施形態に本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例1:TAK1を阻害すると、網膜色素上皮細胞の老化が増大する
本実施例は、TAK1 MAPキナーゼを阻害すると、網膜色素上皮(RPE)細胞の老化が促進することを示すものである。
方法
RPE細胞の二重染色[アネキシン及びヨウ化プロピジウム(PI)]アッセイ。RPE細胞(ARPE−19、ATCCから入手可能)は、TAK1阻害剤{5Z−7−オキソゼアエノール(1μM)}で1時間処理して、続いて200μMのHで1時間処理するか、又は未処理のままとした。次いで、細胞を新鮮な培地で洗浄し、24時間後にトリプシン処理し、染色し、FACSにより解析した。細胞周期の各期(G1/G0期、S期、及びG2/M期)にある細胞の割合(%)を、それぞれのDNA含有量(FL2A)により決定した。
細胞生存能アッセイ。ARPE−19細胞を96ウェルプレートにて完全培地に播種し(5000細胞/ウェル)、1時間にわたりTAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノール(1μM)で前処理するか、又は未処理のままとした。次いで、XTTアッセイにより細胞の生存能をアッセイした(細胞増殖キット、カタログ番号20−300−1000、Beit Haemek、イスラエル)。
SA−β−gal染色を、記載されているとおりに実施した(10)。
ウェスタンブロット分析を標準的なプロトコール(11)、p53、p38、リン酸化−p38、GADPH及びTAK1により実施した。抗体はEnco、イスラエルから入手した。
結果
炎症応答におけるTAK1の役割は特徴付けられている(12、13)が、ストレスに対するRPE細胞の応答への関与についてはほとんどわかっていない。RPE細胞を、TAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノール(1μM)で1時間処理してからH(200μM)でさらに処理した。アネキシン及びヨウ化プロピジウムでの染色及びFACS解析から、合計数の割合(%)として表されるアポトーシス細胞数は未処理のRPE細胞では1.25%であったのに対し、H単独で処理した場合のアポトーシス細胞数は、同じ期間で31%に増加していることが示された。一方、Hでの処理に先立ちTAK1阻害剤で処理した細胞においては、アポトーシス細胞数は24%であった(図1A)。各FACS図の後期アポトーシス区域(アネキシン及びPi、パネル右上)にある細胞数は、TAK1阻害剤があってもなくても同程度であった。これらの結果は、TAK1がアポトーシスに関わっていること、またTAK1を阻害するとアポトーシス過程が低減することを暗示している。
TAK1阻害がRPE細胞サイクルに及ぼす効果を調べるために、RPE細胞をHの存在下又は非存在下にてTAK1阻害剤で処理した。RPE細胞は休眠しており、大半はG0/G1期に位置している(図1B及び図1C)が、TAK1阻害後、G0/G1期の細胞の割合(%)は合計数の89%に増加した。細胞を酸化ストレス(H処理)にさらすと、細胞は高レベルのG2/M停止を呈する。この現象は、酸化ストレスに先立ちTAK1阻害を行った場合には減少した(図1B及び図1C)。TAK1阻害を行った場合のG0/G1での細胞周期停止は、TAK1阻害剤の存在下で認められたRPE細胞の増殖低減によりさらに支持された(図1D)。未処理の細胞は、光学密度(O.D.)が増大して第4日にはピークに達していることからわかるように、高速での増殖を示したが、対照的にTAK1は細胞を阻害し、細胞は増殖速度の低下を示した。増殖速度は3日後に低下し始めた(図1D)。これらの知見から、TAK1を阻害すると、細胞周期停止及びRPE細胞老化は促進することが示唆された。
TAK1阻害がRPE細胞の老化に及ぼす効果をさらに特徴付けるために、RPE細胞においてTAK1阻害がSA(老化関連)−β−gal発現に及ぼす効果を調べた(10)。SA−β−galを発現する細胞の数は、TAK1阻害剤で処理した場合には、未処理の細胞における発現細胞数に比して劇的に増加した(図2A及び図2B)。この増加は、TAK1を阻害した上でRPE細胞をさらに酸化ストレスに曝露させると、さらに促進された(図2C及び図2D)。TAK1阻害という前処理を行わずに酸化ストレスに曝露させた細胞においては、大規模な細胞死が認められ、第16日までには生存細胞はごくわずかとなり、SA−β−galの発現量はきわめて少なくなっていた。一方、第13日及び第16日時点では、SA−β−galは、TAK1阻害剤での前処理を行った後に酸化ストレスに曝露させていた細胞においては、大きく増加していた(図2C及び図2D)。これらの知見は、RPE細胞における老化の調節へのTAK1の関与をさらに支持するものである。
p53タンパク質は、細胞周期調節、DNA修復及びプログラム細胞死において決定的に重要な役割を果たすことが公知である(14、15)。この知識を考慮し、またTAK1を阻害するとアポトーシスが低減するという上記の観察結果を前提として、RPE細胞におけるp53の発現を調べた。図3Aに示すように、酸化ストレス下のRPE細胞におけるp53発現はTAK1阻害剤での細胞の前処理に強く影響され、p38リン酸化の阻害が見られた(図3A及び図3B)。対照細胞(TAK1阻害という前処理を行っていない)においては、p53の発現量は徐々に増加して60分後にピークに達したが、前処理を行った細胞のp53発現は10分後がピークであり、その後は減衰した(図3A)。長い時間にわたって、TAK1阻害を行った場合のp53発現レベルは低減し、未処理の細胞をわずかに超える程度となった(図3C及び3D)。一方、酸化ストレスに曝露させたRPE細胞は、4日後のp53では高レベルを示し、その発現量は徐々に増加した(図3C及び図3D)。
RPE細胞におけるTAK1の程度及び発現パターンを免疫蛍光法により評価した。図4に示すように、未処理の細胞におけるTAK1レベルは安定で主に核に局在しており、実験中に顕著な変化は認められなかった。興味深いことに、細胞を酸化ストレスにさらすと、核におけるTAK1の発現量が減少し、わずか48時間後に正常なレベルに戻った。この知見は、酸化ストレス下にある間はTAK1の発現が調節されていることを暗示しており、したがってこの過程におけるTAK1の重要性を実証するものである。
老化の最も重大な効果は、老化関連分泌表現型(SASP)の獲得である。SASPは老化細胞を、ヒト網膜内を含めた微小環境に影響を及ぼし得るケモカイン及びサイトカインの分泌を促進する炎症促進性の細胞に変換させる可能性がある(16、17)。SASP獲得過程におけるTAK1の役割を調べるために、RPE細胞を、TAK1阻害剤単独、又はH単独、又はTAK1阻害剤とHとの組合せで処理した。2週間後、3つの別々の処理物から培地を回収し、遠心分離にかけて上清(馴化培地)を新鮮なRPE細胞に72時間施用した。図5に示すように、未処理の細胞から回収した馴化培地の施用を受けた細胞は正常な表現型を示したが、TAK1阻害剤又はHのいずれかで処理したRPE細胞から回収した馴化培地の施用を受けた細胞は、老化細胞のものと似た肥大した表現型を示した。興味深いことに、TAK1阻害剤とHの両方で処理した細胞から回収した馴化培地の施用を受けた細胞は、萎縮性RPE細胞のものと似た異常形態を示した。
RPE老化の顕著な特徴の1つは、細胞の肥大である。RPE細胞のサイズはおよそ9〜12μmであるが、酸化ストレスを受けたり遺伝子突然変異が生じたりすると、RPE細胞は腫大することがある。図6に示すように、ストレスを受けると細胞のサイズは正常細胞の4倍に増加する。しかし、TAK1阻害と酸化ストレスとが組み合わさると、細胞サイズはストレスを受けた細胞(TAK1阻害なし)及び正常細胞に比してさらに増加する。
総合すると、これらの結果から、TAK1を阻害すると、RPE細胞老化が促進することが実証され、TAK1介在性のMAPキナーゼシグナル伝達経路を促進する薬剤を使用することでRPE細胞老化を阻害し、ひいてはRPE老化関連疾患を治療することができることが示唆される。
実施例2:アニソマイシンで処理すると、RPE細胞における老化の発現が低減する
実施例1に示す結果は、TAK1シグナル伝達を阻害すると、RPE細胞の老化が促進することを実証している。本実施例は、アニソマイシン、TAK1シグナル伝達(signialling)促進剤は逆の効果を生み、RPE細胞の老化を低減することを示すものである。
方法
すべての方法は先に記載したとおりである。アニソマイシンはSigma Aldrich、イスラエルから入手した。
結果
アニソマイシンは、TAK1等のMAPキナーゼに関連するキナーゼを活性化することが示されている。アニソマイシン処理がRPE細胞に及ぼす効果を決定するために、RPE細胞をHで1時間処理した。Hでの処理に続いて、細胞を新鮮培地にてさらに10日間、老化マーカーが発現するまで生育した。第10日の後、細胞をアニソマイシンで処理し、新鮮培地にてさらに5日間生育し、SA−β−Galの存在が示されるように染色し、写真撮影した。例証的な写真を図7に示す。図からわかるように、アニソマイシンで処理すると、酸化ストレスに曝露させた未処理の細胞に比して、SA−β−Gal陽性細胞の数は減少する。
RPE細胞に対するアニソマイシンの毒性の可能性を決定するために、RPE細胞を様々な濃度のアニソマイシンで5分間処理した。処理に続き、培地を取り換えて新鮮培地を追加した。処理の72時間後、細胞の写真を撮影した。図8Aからわかるように、細胞の形態は対照細胞と似ており、このことから、低レベルではアニソマイシンは有毒ではないことが実証された。さらに、酸化ストレスにさらしアニソマイシンで処理した場合の細胞増殖速度は、細胞増殖速度の低下を示さなかった。図8Bは、1時間にわたりTAK1阻害剤5Z−7−オキソゼアエノール(1μM)、H及びアニソマイシンの単独又はこれらの組合せで前処理するか、又は処理しないままとしたARPE−19細胞を示すものである。次いで、細胞の生存能をXTTアッセイにより評価した。
以上の結果を総合すると、アニソマイシンは、酸化ストレスにさらされたRPE細胞の細胞老化を阻害できることが示される。
実施例3:アニソマイシンでのAMDの治療
本実施例は、アニソマイシンを含む医薬組成物での初期のドライ型AMDの治療について記載するものである。
対象がドライ型AMDと診断されていることを確認する。診断基準には、網膜ドルーゼンの検出;軽度の視覚喪失;視野喪失;OCT画像法により決定された網膜厚の異常;及びERG結果の異常により決定された光受容体活性の低下のうち1つ又は複数が含まれる。
対象には、点眼剤として製剤化されたアニソマイシンを提供し、各眼に1滴ずつ1日1回施用するように指導した。追加の治験では、対象にアニソマイシンを眼内注射により週1回投与する。治療の最初の6カ月間は、2カ月ごとに対象の疾患進行を調べる。その後、対象を6カ月ごとに調べる。疾患状態の変化が検出されなければ、対象には治療を維持するように指導する。ドルーゼンの増加又はそれ以外に疾患進行の徴候が検出された場合には、対象にはアニソマイシン投与量を各眼につき毎日2滴又は3滴に増量するよう指導するか、又は追加の注射剤或いはより多量のアニソマイシン投与量の注射剤を投与する。
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本開示の原理を適用し得る多くの可能な実施形態を考慮すれば、例証した実施形態は本発明の好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものであるととらえるべきでないことが認識されるべきである。むしろ本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により定義される。したがって、出願人らは、この特許請求の範囲の範囲及び精神の内に入るすべてを出願人らの発明として特許請求するものである。
関連出願の相互参照
本願は、2013年5月30日に出願された米国特許仮出願第61/828,701号の利益を主張するものであり、同出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

Claims (20)

  1. 対象の網膜変性疾患の治療に使用するための、前記対象の網膜色素上皮(RPE)細胞におけるTAK1、p38又はJNKシグナル伝達経路のうち少なくとも1つを活性化する薬剤を治療有効量含む医薬組成物。
  2. 前記薬剤が、ペプチド、抗体及び小分子からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記ペプチドが、トランスフォーミング成長因子−β活性化キナーゼ1(TAK1)又はTAK1結合タンパク質(TBP1)である、請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 前記TAK1ペプチド又はTBP1を発現する核酸ベクターを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
  5. 前記小分子がアニソマイシンである、請求項2に記載の医薬組成物。
  6. 前記薬剤が、p38シグナル伝達経路を活性化する、請求項1に記載の医薬組成物。
  7. 前記網膜変性疾患が、ドライ型加齢黄斑変性(AMD)、ウェット型AMD及び色素性網膜炎からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 前記対象の眼腔中への注射用に製剤化されるか、眼軟膏剤として、又は点眼剤として製剤化される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  9. 前記薬剤が、眼インプラント中に組み込まれる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  10. 網膜変性疾患の治療のための追加的な薬剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  11. 対象の網膜変性疾患を治療するための方法であって、
    前記対象の網膜色素上皮(RPE)細胞におけるTAK1、p38又はJNKシグナル伝達経路のうち少なくとも1つを活性化する薬剤を治療有効量、前記対象に投与するステップを含む、方法。
  12. 前記薬剤が、ペプチド、抗体及び小分子からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記ペプチドがTAK1又はTBP1である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記TAK1又はTBP1が、前記対象に投与される核酸ベクターから発現される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記小分子が、アニソマイシン又はその機能性誘導体である、請求項12に記載の方法。
  16. 前記薬剤が、p38シグナル伝達経路を活性化する、請求項11に記載の方法。
  17. 前記網膜変性疾患が、ドライ型加齢黄斑変性(AMD)、ウェット型AMD及び色素性網膜炎からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  18. 前記薬剤が、前記対象の眼腔中に注射される医薬組成物の形態で製剤化されるか、眼軟膏剤として製剤化されるか、又は前記対象に点眼剤により投与される、請求項11に記載の方法。
  19. 前記薬剤が、前記対象の少なくとも1つの眼内に埋め込まれるインプラントにより提供される、請求項11に記載の方法。
  20. 網膜変性疾患の治療のための少なくとも1つの追加的な薬剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
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