定義
本発明がより容易に理解されるために、ある特定の用語を最初に定義する。以下の用語及び他の用語のさらなる定義は、本明細書全体に記載される。
親和性:当技術分野において既知である、「親和性」は、特定のリガンドが結合する(例えば、非共有結合的に関連付けられる)気密さ、及び/またはそのパートナーから解離する速度または頻度の尺度である。当技術分野において既知である、様々な技術のいずれも、親和性を決定するために利用することができる。多くの実施形態では、親和性は、特異的結合の尺度を表す。
親和性成熟(または親和性成熟抗体):本明細書で使用されるように、抗体または抗原の親和性の改善をもたらすその1つ以上のCDRに、これらの変化(複数可)を保有しない親抗体と比較して1つ以上の変化を有する抗体を指す。いくつかの実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野において既知の様々な手順のいずれかによって製造することができる。Marks et al.BioTechnology 10:779−783(1992) describes affinity maturation by VH and VL domain shuffling.Random mutagenesis of CDR and/or framework residues is described by:Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809−3813(1994)、Schier et al.Gene 169:147−155(1995)、Yelton et al.J.Immunol.155:1994−2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310−9(1995)、及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889−896(1992)。
抗体:本明細書で使用される、用語「抗体」は、実質的に免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によってコードされる1つ以上のポリペプチドからなるポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、及びミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、典型的には、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、典型的には、同時に、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEの免疫グロブリンクラスを定義する、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類される。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、テトラマーを含むことが知られる。各テトラマーは、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽鎖」(約25kD)及び1つの「重鎖」(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を定義する。用語「可変軽鎖」(VL)及び「可変重鎖」(VH)は、それぞれ、これらの軽鎖及び重鎖を指す。抗体は特定の抗原に特異的であり得る。抗体またはその抗原は、分析物または結合パートナーのいずれかであってよい。抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、または様々なペプチダーゼによる消化によって産生される十分に特徴付けられた多くの断片として存在する。よって、例えば、ペプシンは、それ自体がジスルフィド結合によってVH−CH1に結合される軽鎖であるFabのダイマーであるF(ab)’2を産生するために、ヒンジ領域のジスルフィド連結の下で抗体を消化する。F(ab)’2は、ヒンジ領域のジスルフィド連結を切断し、それにより(Fab’)2ダイマーをFab’モノマーに変換するために、穏やかな条件下で還元され得る。Fab’モノマーは、本質的に、ヒンジ領域の一部分を有するFabである(他の抗体断片のより詳細な説明については、Fundamental Immunology,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993)を参照)。様々な抗体断片は、無傷の抗体の消化に関して定義されるが、当業者は、そのようなFab’断片は、化学的に、または組換えDNA法を利用するかのいずれかにより新しく合成することができることを理解する。よって、本明細書に使用される、用語「抗体」は、全抗体の修飾によって産生されるか、または組換えDNA法を使用して新しく合成されるかのいずれかの抗体断片も含む。いくつかの実施形態では、抗体は、可変重鎖及び可変軽鎖が一緒に結合されて(直接またはペプチドリンカーを通して)連続ポリペプチドを形成する単鎖Fv(scFv)抗体などの単鎖抗体である。単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、直接結合またはペプチドコードリンカーによって結合されたかのいずれかのVH及びVLコード配列を含む核酸から発現され得る共有結合されたVH::VLヘテロダイマーである(例えば、Huston,et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879−5883を参照、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)。自然に凝集したが、抗体V領域から化学的に分離した軽及び重ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造に実質的に類似する3次元構造に折り畳まれるscFv分子に変換するためのいくつかの構造が存在する。例えば、米国特許第5,091,513号及び同第5,132,405号ならびに同第4,956,778号を参照。
およそ:本明細書で使用される、関心の1つ以上の値に適用される、用語「およそ」または「約」は、記述される参照値と類似する値を指す。ある特定の実施形態では、用語「およそ」または「約」は、特に記載されない限り、ないしは別の方法で文脈から明らかである場合(そのような数字が可能な値の100%を超える場合を除く)、記述される参照値のいずれかの方向の(それより大きいか、またはそれ未満)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に入る値の範囲を指す。
結合剤:本明細書で使用される、用語「結合剤」は、抗原または標的タンパク質もしくはペプチドに結合するタンパク質などの任意の天然に存在する、合成、または遺伝子操作された媒介物を含む。「結合剤」は、「結合タンパク質」とも称される。結合剤は、天然に存在する抗体に由来するか、または合成的に操作され得る。結合タンパク質または媒介物は、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体と類似して機能し、生物学的応答を誘発することができる(例えば、特定の生物学的活性を作動または拮抗する)。結合剤またはタンパク質は、単離された断片、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーによって結合される組換え単鎖ポリペプチド分子(「ScFvタンパク質」)、及び超可変領域を摸倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位を含み得る。本明細書で使用される用語結合剤はまた、全抗体の修飾によって産生されるか、または組換えDNA法を使用して新しく合成されるかのいずれかの抗体断片も含む。いくつかの実施形態では、抗体は、可変重鎖及び可変軽鎖が一緒に結合されて(直接またはペプチドリンカーを通して)連続ポリペプチドを形成する単鎖Fv(scFv)抗体などの単鎖抗体である。単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、直接結合またはペプチドコードリンカーによって結合されたかのいずれかのVH及びVLコード配列を含む核酸から発現され得る共有結合されたVH::VLヘテロダイマーである。(例えば、Huston,et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879−5883を参照、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)。自然に凝集したが、抗体V領域から化学的に分離した軽及び重ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造に実質的に類似する3次元構造に折り畳まれるscFv分子に変換するためのいくつかの構造が存在する。例えば、米国特許第5,091,513号及び同第5,132,405号ならびに同第4,956,778号を参照。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される、用語結合剤は、抗体も含み得る。抗体の定義を参照。
二重特異性:本明細書で使用される、用語「二重特異性」は、2つの異なる結合特異性を有する分子を指す。典型的には、二重特異性結合分子は、少なくとも2つの抗原結合部位を含み、その各々は、異なる抗原またはエピトープに特異的に結合する。二重特異性分子は、例えば、二重特異性抗体、フィノマー、アプタマー、融合タンパク質、タンパク質結合ドメインであってよい。本明細書で使用される、二重特異性分子は、より高い価を有する(すなわち、3つ以上の抗原またはエピトープに結合する能力)分子(例えば、抗体、フィノマー、アプタマー、融合タンパク質、タンパク質結合ドメイン、または他の結合剤)を包含し、これは多選択性分子とも称される。
二重特異性抗体:本明細書で使用される、用語「二重特異性抗体」は、結合部分のうちの少なくとも1つ、典型的には両方が、抗体成分または断片であるか、またはそれらを含む二重特異性結合分子を指す。様々な異なる二重特異性抗体構造が当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態では、抗体成分または断片であるか、またはそれらを含む二重特異性抗体の各結合部分は、VH及び/またはVL領域を含み、いくつかのそのような実施形態では、VH及び/またはVL領域は、特定のモノクローナル抗体に見出されるものである。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体が2つの抗体成分結合部分を含む場合、各々は、異なるモノクローナル抗体からのVH及び/またはVL領域を含む。
二重特異性結合分子:本明細書で使用される、用語「二重特異性結合分子」は、2つの異なる結合部分を有するポリペプチドを指し、その各々は、異なる標的と結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性結合分子は、単一のポリペプチドであり、いくつかの実施形態では、二重特異性結合分子は、複数のペプチドであるか、またはそれらを含み、これらは、いくつかのそのような実施形態では、例えば、架橋により互いに共有結合的に関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、二重特異性結合分子の2つの結合部分は、異なる部位(例えば、エピトープ)、同じ標的(例えば、抗原)を認識し、いくつかの実施形態では、これらは異なる標的を認識する。いくつかの実施形態では、二重特異性結合分子は、異なる構造のものである2つの標的に同時に結合することができる。
CDR:本明細書で使用される、用語「CDR」は、抗体の可変領域内の相補性決定領域を指す。可変領域の各々に対してCDR1、CDR2、及びCDR3と命名される、重鎖及び軽鎖の可変領域の各々に3つのCDRが存在する。「CDRのセット(set of CDRs)」または「CDRセット(CDR set)」は、抗原を結合することができる単一の可変領域、または抗原を結合することができる同族の重鎖および軽鎖可変領域のCDRのいずれかに生じる3つまたは6つのCDR群を指す。CDRの境界は、系により異なって定義され、そのいくつかは、当該技術分野において既知である(例えば、Kabat,Chothia等)。
キメラ:本明細書で使用される、「キメラ」抗体は、1つの種、好ましくはゲッ齒類の抗体に由来する抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含む組換えタンパク質であり、一方、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する。獣医学的用途のために、キメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌなどの他の種のものに由来し得る。
組み合せ:本明細書で使用される、用語「組み合わせて」は、2つ以上の予防薬及び/または治療薬(例えば、抗CCL2抗体及び抗LOXL2抗体)の使用を指す。用語「組み合わせて」の使用は、予防薬及び/または治療薬が障害を有する対象に投与される順序を限定しない。第1の予防薬または治療薬(例えば、抗CCL2抗体)は、第2の予防薬または治療薬(例えば、抗LOXL2抗体)の投与前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、同時に、または投与後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に、障害を有する対象に投与され得る。
化合物及び媒介物:用語「化合物」及び「媒介物」は、本明細書において互換的に使用される。これらは、生体高分子(例えば、核酸、ポリペプチド、またはタンパク質)、有機もしくは無機分子、または細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に、ヒトを含む哺乳類)細胞または組織などの生物学的材料から作製された抽出物などの任意の天然に存在する、または非天然に存在する(すなわち、合成または組換え)分子を指す。化合物は、単一の分子または少なくとも2つの分子の混合物または複合体であってよい。
同等:本明細書で使用される、用語「同等」は、得られた結果または観察された現象の比較を可能にするために互いに十分に類似している2つ(またはそれ以上)の状態または状況のセットを記述することを指す。いくつかの実施形態では、同等の状態または状況のセットは、複数の実質的に同一の特徴及び1つまたは少数の様々な特徴により特徴付けられる。当業者であれば、異なる状態または状況のセット下で得られた結果または観察された現象における相違が、変更されるこれらの特徴における変化によって引き起こされるか、またはそれを示すという妥当な結論を保証するために十分な数及び種類の実質的に同一の特徴によって特徴付けられるとき、条件のセットは互いに同等であることを理解するであろう。
対照:本明細書で使用される、用語「対照」は、結果が比較される標準であるというその当該技術分野において理解される意味を有する。典型的には、対照は、そのような変動要因についての結論を出すために変動要因を単離することによって、実験において完全性を増強するために使用される。いくつかの実施形態では、対照は、比較物を提供するために試験反応またはアッセイと同時に行われる反応またはアッセイである。一実験では、「試験」(すなわち、試験される変動要因)が適用される。第2の実験では、「対照」において、試験される変動要因は適用されない。いくつかの実施形態では、対照は、既存対照(すなわち、以前に行われた試験もしくはアッセイ、または既に既知である量もしくは結果)である。いくつかの実施形態では、対照は、印刷された、ないしは別の方法で保存された記録であるか、またはそれを含む。対照は、陽性対照または陰性対照であってよい。
投薬計画:「投薬計画」(又は「治療計画」)は、その用語が本明細書において使用されるように、典型的には時間期間で区切られた、対象に個別に投与される単位用量のセット(典型的には2つ以上)である。いくつかの実施形態では、所与の治療薬は、1つ以上の用量を伴い得る推奨される投薬計画を有する。いくつかの実施形態では、投薬計画は、複数の用量を含み、その各々は、同じ長さの時間期間で互いに区切られ、いくつかの実施形態では、投薬計画は、複数の用量、及び個別の用量を区切る少なくとも2つの異なる時間期間を含む。
診断:本明細書で使用される、用語「診断」は、個人が疾患または病気に罹患しているかを決定することを目的とするプロセスを指す。本発明の文脈において、「強皮症の診断」は、個人が強皮症に罹患しているかを決定する、強皮症のサブタイプを特定する(すなわち、びまん性または限局性皮膚強皮症)、及び疾患の重篤度を決定するのうちの1つ以上を目的とするプロセスを指す。
有効用量:本明細書で使用される、用語「有効用量」は、その意図された目的(複数可)を満たすのに十分である化合物または媒介物の量を指す。本発明の文脈において、目的(複数可)は、例えば、強皮症の原因もしくは症状を調節する、及び/または強皮症の発症を遅延もしくは防止する、及び/または強皮症の症状の進行、悪化、もしくは増悪を遅らせる、もしくは停止させる、及び/または強皮症に関連する1つ以上の症状を緩和する、及び/または強皮症の症状の寛解をもたらす、及び/または強皮症を治癒することであってよい。
フレームワークまたはフレームワーク領域:本明細書で使用される、CDRを差し引いた可変領域の配列を指す。CDR配列は異なる系により決定することができるため、同様にフレームワーク配列は、対応して異なる解釈を受ける。6つのCDRは、重鎖及び軽鎖上のフレームワーク領域を各鎖上で4つのサブ領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)に分割し、CDR1は、FR1とFR2との間、CDR2はFR2とFR3との間、CDR3はFR3とFR4との間に位置する。FR1、FR2、FR3、及びFR4として特定のサブ領域を特定することなく、フレームワーク領域は、他において言及されるように、単一の、天然に存在する免疫グロブリン鎖の可変領域内の組み合わされたFRを表す。本明細書で使用される、FRは、4つのサブ領域のうちの1つを表し、FR1は、例えば、CDR1に対して可変領域のアミノ末端及び5’に最も近い最初のフレームワーク領域を表し、複数のFRは、フレームワーク領域を構成するサブ領域の2つ以上を表す。
ヒト抗体:本明細書で使用されるように、ヒト免疫グロブリン配列から生成される(または組み立てられる)可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。いくつかの実施形態では、抗体(または抗体成分)は、例えば、1つ以上のCDR及び特定のCDR3において、それらのアミノ酸配列がヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされない残基もしくは要素を含む場合でも(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入された(本来)可能性がある、例えば、配列多様性を含む)、「ヒト」であると考えられる場合がある。
ヒト化:当該技術分野において既知である、用語「ヒト化」は、一般に、そのアミノ酸配列が非ヒト種(例えば、マウス)で産生された参照抗体からのVH及びVL領域配列を含むが、それらにより「ヒト様」、すなわち、ヒト生殖系列可変配列により類似するものにすることが意図される参照抗体に対するこれらの配列における修飾も含む抗体(または抗体成分)を指すように使用される。いくつかの実施形態では、「ヒト化」抗体(または抗体成分)は、関心の抗原に免疫特異的に結合し、ヒト抗体と実質的に同じアミノ酸配列を有するフレームワーク(FR)領域及び非ヒト抗体と実質的に同じアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を有するものである。ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー免疫グロブリン)のものに相当し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)の実質的に全てを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリン定常領域のものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、軽鎖及び重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。抗体は、重鎖定常領域のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及び任意にCH4領域も含み得る。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化VL領域のみを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化VH領域のみを含む。いくつかのある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化VH及びVL領域を含む。
フィノマー:本明細書で使用される、用語「フィノマー」は、63個のアミノ酸残基からなるヒトタンパク質であるヒトFynキナーゼのSrc相同(SH3)ドメインに由来する結合タンパク質のクラスを指す(D.Grabulovski et al.J.Biol.Chem.282,3196−3204(2007))。フィノマーは、抗体と同じ親和性及び特異性で標的分子に結合することができる。これは、高収率で細菌中で産生され得る。さらに、いくつかのフィノマーは、複数の結合特異性を有するタンパク質をもたらすために連結され得る。
改善、増加、または減少:本明細書で使用される、用語「改善」、「増加」、もしくは「減少」、または文法上の等価物は、本明細書に記載される治療の開始前の同じ個人における測定値、または本明細書に記載される治療の不在下での対照個人(または複数の対照個人)における測定値など、ベースライン測定値に対する価値を示す。「対照個人」は、治療される個人と同じ種類及びおよそ同じ重篤度の強皮症に罹患し、治療される個人とほぼ同じ年齢である(治療される個人及び対照個人(複数可)における疾患の段階が同等であることを確実にするため)個人である。
キット:本明細書で使用される、用語「キット」は、材料を供給するための任意の供給システムを指す。そのような供給システムは、ある場所から別の場所への様々な診断薬または治療試薬(例えば、適切な容器中のオリゴヌクレオチド、酵素等)及び/または支持材料(例えば、緩衝液、アッセイを行うための書面による説明書等)の貯蔵、輸送、または供給を可能にするシステムを含み得る。例えば、キットは、関連する反応試薬及び/または支持材料を収容する1つ以上の密封部材(例えば、箱)を含む。本明細書で使用される、用語「断片化キット」は、各々が全キット構成要素の副次的部分を収容する2つ以上の別個の容器を含む供給システムを指す。容器は、一緒にまたは別個に意図されるレシピエントに供給することができる。例えば、第1の容器は、アッセイで使用するための酵素を含み、一方、第2の容器は、オリゴヌクレオチドを含み得る。用語「断片化キット」は、連邦食品医薬品化粧品法のセクション520(e)により規定される、分析物特定試薬(ASR)を含むキットを包含することが意図されるが、これらに限定されない。実際、各々が全キット構成要素の副次的部分を収容する2つ以上の別個の容器を含む任意の供給システムは、用語「断片化キット」に含まれる。対照的に、「複合キット」は、単一の容器(例えば、所望の構成要素の各々を収容する単一の箱)に構成要素の全てを含む供給システムを指す。用語「キット」は、断片化及び複合キットの両方を含む。
正常:本明細書で使用される、用語「正常」は、用語「個人」または「対象」を修飾するように使用される場合、特定の疾患または状態を有しておらず、また、疾患もしくは状態の保有者でもない個人または個人の群を指す。用語「正常」はまた、本明細書において、正常なまたは野生型の個人または対象から単離された生物学的検体または試料、例えば、「正常な生物学的試料」を限定するようにも使用される。
核酸:本明細書で使用される、用語「核酸」は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、及びこれらの断片または部分、ならびに1本鎖または2本鎖であってよく、センスまたはアンチセンス鎖を表すゲノムもしくは合成起源のDNAまたはRNAを指す。
核酸分子:用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は、本明細書において互換的に使用される。これらは、1本鎖または2本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指し、特に記載されない限り、天然に存在するヌクレオチドに類似する様式で機能することができる天然のヌクレオチドの既知の類似体を包含する。本用語は、合成骨格を有する核酸のような構造、ならびに増幅産物を包含する。
タンパク質:一般に、「タンパク質」はポリペプチドである(すなわち、ペプチド結合によって互いに連結された少なくとも2つのアミノ酸の鎖)。タンパク質は、アミノ酸以外の部分(例えば、糖タンパク質であってよい)を含み得、かつ/またはさもなければ処理もしくは修飾され得る。当業者は、「タンパク質」が、細胞によって産生される(シグナル配列を有する、または有さない)完全なポリペプチド鎖であるか、またはその機能タンパク質であってよいことを理解する。当業者は、タンパク質が、例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって連結されるか、または他の手段によって関連付けられる2つ以上のポリペプチド鎖を含み得る場合があることをさらに理解する。
試料:本明細書で使用される、用語「試料」は、生物学的供給源から得られる任意の試料を包含する。本用語「生物学的試料」及び「試料」は、互換的に使用される。生物学的試料は、非限定的な例として、皮膚組織、肝臓組織、腎臓組織、肺組織、脳脊髄液(CSF)、血液、羊水、血清、尿、糞便、表皮試料、皮膚試料、頬スワブ、精子、羊水、培養細胞、骨髄試料、及び/または絨毛膜絨毛を含み得る。任意の生物学的試料の細胞培養物も、生物学的試料として使用することができる。生物学的試料はまた、例えば、任意の臓器または組織から得られた試料(生検または剖検検体を含む)であってもよく、細胞(一次細胞または培養細胞に関わらず)、任意の細胞、組織、もしくは臓器により条件付けられた培地、組織培養物を含み得る。いくつかの実施形態では、本発明に好適な生物学的試料は、本明細書に記載される検出のための核酸を放出するか、ないしは別の方法で提供するように処理された試料である。固定または凍結組織も使用することができる。
対象:本明細書で使用される、用語「対象」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトは、出生前および出生後の形態を含む。多くの実施形態では、対象はヒトである。対象は、疾患の診断または治療のための医療提供者を訪れるヒトを指す患者であってよい。用語「対象」は、本明細書において、「個人」または「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患もしくは障害に罹患しているか、またはそれに感受性であるが、疾患または障害の症状を表しても、表さなくてもよい。
罹患する:疾患、障害、及び/または状態(例えば、強皮症)に「罹患している」個人は、疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状があると診断された、またはそれを示す。
感受性である:疾患、障害、及び/または状態に「感受性である」個人は、疾患、障害、及び/または状態の症状があると診断されない、及び/またはそれを示さない。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態(例えば、強皮症)に感受性である個人は、以下のうちの1つ以上を特徴とし得る:(1)疾患、障害、及び/または状態の発達に関連する遺伝子変異、(2)疾患、障害、及び/または状態の発達に関連する遺伝子多型、(3)疾患、障害、及び/または状態に関連するタンパク質の発現及び/もしくは活性の増加ならびに/または減少、(4)疾患、障害、及び/または状態の発達に関連する習慣及び/または生活様式、(5)疾患、障害、及び/または状態の家族歴、(6)ある特定の細菌またはウイルスに対する反応、(7)ある特定の化学物質への曝露。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態に感受性である個人は、疾患、障害、及び/または状態が発達する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態に感受性である個人は、疾患、障害、及び/または状態が発達しない。
治療:本明細書で使用される、用語「治療」(「治療する(treat)」または「治療する(treating)」も)は、特定の疾患、障害、及び/または状態(例えば、強皮症、線維症、または炎症)のうちの1つ以上の症状または特徴を部分的または完全に軽減する、寛解する、緩和する、阻害する、その発症を遅延する、その重篤度を減少させる、及び/またはその発生を減少させる治療用分子(例えば、二重特異性抗CCL2/LOXL抗体、または抗CCL2モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、及び抗LOXL2モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片の同時投与または順次同時投与)の任意の投与を指す。そのような治療は、関連疾患、障害、及び/もしくは状態の兆候を示さない対象、ならびに/または疾患、障害、及び/または状態の初期徴候のみを示す対象の治療であってよい。代替的にまたは付加的に、そのような治療は、関連疾患、障害、及び/または状態のうちの1つ以上の確立された徴候を示す対象の治療であってよい。
本発明は、とりわけ、CCL2及びLOXL2に対する抗体、フィノマー、アプタマー、融合タンパク質、及びタンパク質結合ドメイン(例えば、受容体に由来するもの)を含む含む(including including)がこれらに限定されない二重特異性分子と、特に強皮症ならびに関連線維性及び/または炎症性疾患、障害、及び状態の治療のためのこれらの使用とを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、単一特異性抗CCL2及び抗LOXL2分子(例えば抗体)の組み合わせに基づく強皮症ならびに関連線維性及び/または炎症性疾患、障害、及び状態を治療するための方法及び組成物をさらに提供する。
本発明は、一部、本発明の発明者によって観察された独特の知見に基づく、つまり、抗体または融合タンパク質を含む二重特異性分子は、血漿中の抗体などの抗CCL2分子を消耗することなくCCL2の組織特異的標的指向を可能にし、高度に効果的な強皮症の治療をもたらす。本発明の実施形態は、CCL2及びLOXL2の両方に結合する二重特異性抗体を含む。CCL2及びLOXL2に結合することができる二重特異性抗体は、それらが独特の組織選択性プロファイルを保有し、強皮症、線維症、及び炎症の発達を停止し、排除する可能性を有するという点で、特に有益である。LOXL2は、結合組織の発達のための重要な酵素であるため、抗LOXL2結合活性は、比較的多量の結合組織を有する組織を優先的に標的指向する、または特定するために使用され得る。同様に、抗LOXL2結合活性は、例えば、強皮症において観察され得る、異常な結合組織形成を有する組織を標的指向する、または特定するために使用され得る。さらに、抗LOXL2抗体は、LOXL2の阻害または中和がアミンオキシダーゼ活性患部組織を減少させ、よって結合組織の形成における開始ステップを遮断するという点で、相乗的な治療上の利益を提供する。LOXL2抗体の治療上の利益及び組織特異性は、相乗的に炎症を標的指向し、線維化形成を減少させるために、中和抗CCL2モノクローナル抗体の治療有効性と組み合わされ得る。LOX結合は、抗CCL2抗体が抑制されることを可能にし、線維症による減少した透過性を補うため、この相乗的標的指向は、強皮症のより進行した症例の治療において特に重要である。
本発明の様々な態様は、以下のセクションにおいて詳細に記載される。セクションの使用は、本発明を限定するものではない。各セクションは、本発明の任意の態様に適用することができる。本願において、「または」の使用は、特に記載しない限り「及び/または」を意味する。
強皮症
強皮症または全身性硬化症は一般に、とりわけ、線維症または硬化、血管変化、及び自己抗体を特徴とする慢性全身性自己免疫疾患と考えられる。理論に拘束されるわけではないが、強皮症は、強化増幅ループに捕捉された過活性自己免疫応答に起因すると考えられる。例えば、強皮症は、組織学的に、単核細胞の炎症性浸潤を特徴とし、これは同時に、周囲線維芽細胞における増加したコラーゲン合成を活性化し、これに関連する。特に、活性化されたマクロファージは、多量のコラーゲンを産生するために、患部領域の線維芽細胞を活性化するTGF−β及びPDGFを産生する。
T細胞はまた、マクロファージの活性化及び炎症性線維形成促進性サイトカインの直接放出を通した疾患プロセスにおいて役割を果たすように思われる。コラーゲンに加えて、活性化された線維芽細胞は、サイトカインを放出するさらなる炎症性細胞を患部領域に動員する因子を分泌するように思われ、これは、さらなるサイトカイン放出炎症性細胞を動員し、それにより未制御の炎症及び組織線維症をもたらす。
典型的には、単球/マクロファージ及びT細胞は、強皮症患者の循環及び組織における数及び活性化の両方において増加する。組織蓄積は、強皮症の病因における初期の事象のうちの1つである微細血管損傷の原因及び結果の両方である。微細血管損傷は、内皮細胞損傷、基底膜層の増殖、血管壁内への末梢血単核細胞の時折起こる捕捉、及び初期の血管周囲単核細胞浸潤を特徴とする。炎症性カスケードが悪化すると、線維症、内臓器官構造障害、血管の稀薄化、及び結果として低酸素症によって支配される。これらの因子の全て及び単球の継続的な動員は、線維症の維持の一因となる。
いくつかの実施形態では、強皮症は、一般的に皮膚及び内部臓器における細胞外マトリックスタンパク質の過剰な蓄積、血管損傷、及び免疫異常により特徴付けられる結合組織疾患とも考えられる。
疾患の臨床症状の多くは、血管リモデリングの誤制御を伴うと考えられる。強皮症の最も初期の症状の1つは、微小血管の損傷である。この微小血管の損傷は、増加した内皮細胞の活性化を引き起こすと考えられる。活性化された内皮細胞は、内皮を通した炎症性細胞の遊走及び血管壁内への捕捉を可能にする改変された毛細血管の透過性をもたらす接着分子を発現すると考えられる。免疫活性化は、内皮細胞の破壊をもたらす持続的な内皮活性化の一因となると考えられる。このプロセスは、強皮症患者において一般的に観察される血管の弾性の損失及び狭窄の一因となると考えられる。さらに、微小血管の損傷は、線維芽細胞の活性化、及び強皮症の関連する特徴症状の多く(may)の一因となると考えられる真皮における単核細胞の血管周囲浸潤の一因となると考えられる。
疾患の臨床症状の多くは一般に、線維芽細胞の誤制御を伴うと考えられる。線維芽細胞の主な機能は、細胞外マトリックスの前駆体を継続的に分泌することにより、結合組織の構造完全性を維持することである。線維芽細胞は、多くの組織の構造フレームワーク(間質)を提供し、創傷治癒において重要な役割を果たし、動物の結合組織の最も一般的な細胞である。線維芽細胞は、形態学的に不均一であり、それらの位置及び活性に応じて多様な外見を有する。
強皮症には、限局性全身性硬化症/強皮症及びびまん性全身性硬化症/強皮症の2つの主な形態がある。限局性皮膚強皮症において、皮膚の線維症は一般に、肘に近位の領域に限定される。限局性皮膚強皮症を有する患者は一般に、血管障害を示す。皮膚及び臓器線維症は一般に、限局性強皮症の患者においてゆっくり進行する。びまん性強皮症の患者は一般に、限局性強皮症よりも迅速に進行する皮膚及び臓器の線維症及び/または広範な炎症及び/または限局性強皮症において見られるよりも重度の内部臓器病変を示す。
肺線維症をもたらす間質性肺疾患は、強皮症関連死の主な原因であると一般的に考えられる(Ludwicka−Bradley,A.,et al.Coagulation and autoimmunity in scleroderma interstitial lung disease.Semin Arthritis Rheum,41(2),212−22,2011)。強皮症関連死をもたらすさらなる合併症としては、癌、心不全、肺高血圧症、腎不全、及び吸収不良、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
強皮症は、最も一般的には、皮膚症状の検査によって診断される。診断試験は、皮膚の視覚的及び/または手検査、血圧検査、胸部X線、肺CT、心エコー図、尿検査、皮膚生検、及び血液検査(抗核抗体検査、抗トポイソメラーゼ抗体検査、抗セントロメア抗体検査、抗U3抗体検査、抗RNA抗体検査、他の種類の抗体検査、血沈検査、及びリウマチ因子を含む)を含むが、これらに限定されない。
二重特異性抗CCL2及び抗LOXL2分子
本発明は、CCL2及びLOXL2の両方に結合する分子、特に二重特異性抗CCL2及びLOXL2分子の投与に基づく強皮症ならびに関連線維性及び/または炎症性疾患、障害、及び状態を治療するための方法及び組成物を提供する。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性核酸アプタマーなどの核酸である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性融合タンパク質、タンパク質アプタマー、及びタンパク質結合ドメインなどのタンパク質である。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性フィノマーを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性分子は、二重特異性抗体を含む。いくつかの実施形態では、本発明に好適な二重特異性抗体は、LOXL2に特異的に結合する第1の抗原結合部位、及びCCL2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む(図1を参照)。
CCL2
CCL2は、様々な細胞型によって生成されるケモカインである。これは、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)としても知られる。CCL2は、単球、CD4、及びCD8メモリーTリンパ球ならびにNK細胞を含むが、これらに限定されない免疫系の多くの細胞型の強力な誘引物質であることが知られている(Carulli,M.et al.Can CCL2 serum levels be used in risk stratification or to monitor treatment response in systemic sclerosis?Ann Rheum Dis,67,105−109,2008,Yamamoto,T.Scleroderma−Pathophysiology.Eur J Dermatol,19(1),14−24)。CCL2は、内皮単層を横切る白血球の遊走を促進することが示され、単核細胞の血管周囲浸潤の促進における役割を示唆する(同上)。CCL2は、インビトロでのラット線維芽細胞における線維芽細胞の活性化及びコラーゲンI型mRNA発現の上方制御を促進することも示されている。上昇したCCL2レベルは、強皮症の患者及び強皮症の動物モデルにおいても示されている(同上)。具体的には、増加したCCL2発現レベルは、強皮症の皮膚において示され、増加したCCL2RNA及びタンパク質は、強皮症線維芽細胞において示されている(同上)。
ヒトCCL2は、76個のアミノ酸残基を含む8.6kDaタンパク質であり、そのアミノ酸配列は表1に示される。これは、とりわけ、単球、血管内皮細胞、平滑筋細胞、ある特定の上皮細胞を含むさまざまな細胞型によって発現され、その受容体CCR2に結合する。CCL2は、隣接する2つのシステイン残基(隣接するシステイン残基は表1において下線が引かれている)を含むCCケモカインのファミリーに属する。
CCL2も、非ヒト供給源から精製、特徴付け、クローン化、及び配列決定されており、組換えにより産生されるか、または化学合成され得る。本明細書で使用される、用語CCL2は、いくつか列挙するならば、マウス、ラット、霊長類、ブタ、ニワトリ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラクダ、ラマを含むが、これらに限定されない他の種において天然に存在する任意のCCL2タンパク質、及びヒトCCL2に実質的に相同または同一である任意の組換えまたは合成CCL2を包含する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される、CCL2タンパク質は、配列番号1に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上相同である配列を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される、CCL2タンパク質は、配列番号1に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一である配列を有する。典型的には、ヒトCCL2に対して実質的に相同または同一であるCCL2タンパク質も、ヒトCCL2の実質的な活性を保持する。
上述のCCL2タンパク質のいずれも、CCL2に特異的に結合する単一特異性及び/または二重特異性抗体を生成し、特定するために使用することができる。下の抗CCL2抗体ならびに二重特異性抗CCL2及びLOXL2抗体のセクションを参照。
LOXL2
LOXL2は、銅依存アミノオキシダーゼのリジルオキシダーゼファミリーのメンバーである。理論に拘束されるわけではないが、LOXL2は、コラーゲンの成分側鎖及びエラスチンの成分側鎖の共有結合架橋を触媒し、よって細胞外マトリックス(ECM)のこれらのタンパク質を安定させると考えられる。ヒトLOXL2のポリペプチド配列は、表2に示されるように、十分に特徴付けされている。
LOXL2も、非ヒト供給源から精製、特徴付け、クローン化、及び配列決定されており、組換えにより産生されるか、または化学合成され得る。本明細書で使用される、用語LOXL2は、いくつか列挙するならば、マウス、ラット、霊長類、ブタ、ニワトリ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラクダ、ラマを含むが、これらに限定されない他の種において天然に存在する任意のLOXL2タンパク質、及びヒトLOXL2に実質的に相同または同一である任意の組換えまたは合成LOXL2を包含する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される、LOXL2タンパク質は、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上相同である配列を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される、LOXL2タンパク質は、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一である配列を有する。典型的には、ヒトLOXL2に対して実質的に相同または同一であるLOXL2タンパク質も、ヒトLOXL2の実質的な活性を保持する。
上述のLOXL2タンパク質のいずれも、LOXL2に特異的に結合する所望の単一特異性及び/または二重特異性抗体を生成し、特定するために使用することができる。下の抗LOXL2抗体ならびに二重特異性抗CCL2及びLOXL2抗体のセクションを参照。
本明細書において特定されるCCL2及びLOXL2配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大パーセント配列同一性を達成するために、配列を整合し、必要に応じてギャップを導入した後、及び配列同一性の一部として任意の保存置換を考慮しない、CCL2またはLOXL2配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。好ましくは、アミノ酸配列の同一性を決定するために、WU−BLAST−2ソフトウェアが使用される(Altschul et al.,Methods in Enzymology 266,460−480(1996);http://blast.wustl/edu/blast/README.html)。WU−BLAST−2は、いくつかの検索パラメータを使用し、その大部分は、デフォルト値に設定されている。調節可能なパラメータは、以下の値、すなわち、オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、世界閾値(T)=11に設定される。HSPスコア(S)及びHSP S2パラメータは動的値であり、特定の配列の組成に応じてプログラム自体によって確立されるが、最小値は調節されてよく、上記のように設定される。
抗CCL2及び抗LOXL2単一特異性抗体
本明細書に記載されるCCL2及びLOXL2タンパク質またはこれらの断片は、当業者に周知の方法により抗体を生成するために使用され得る。本明細書で使用される、抗CCL2単一特異性抗体は、CCL2の任意のエピトープに特異的に結合する抗体の任意の抗体または抗体の断片を含み、抗LOXL2単一特異性抗体は、LOXL2の任意のエピトープに特異的に結合する任意の抗体または抗体の断片を含む。本明細書で使用される、用語「抗体」は、指定されたタンパク質もしくはペプチドまたはこれらの断片に特異的に反応性である免疫グロブリン及びその断片を含むことが意図される。例えば、用語「抗体」は、それらが所望の生物学的活性を示す限り、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメの単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片))、及び抗体断片を含む。好適な抗体はまた、ヒト抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、抱合抗体(すなわち、他のタンパク質、放射標識、細胞毒素に抱合または縮合された抗体)、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、及び抗体断片も含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用される、「抗体断片」は、例えば、抗原結合または抗体の可変領域などの無傷の抗体の一部分を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、トリアボディ、テトラボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子が挙げられる。用語「抗体断片」はまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する、任意の合成または遺伝子操作タンパク質も含む。たとえば、抗体断片は、単離された断片、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーによって結合される組換え単鎖ポリペプチド分子(「ScFvタンパク質」)、ならびに超可変領域を摸倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位を含む。
単一特異性抗体は、当該技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。例えば、抗体産生のためのプロトコルは、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,(1988)に記載されている。典型的には、抗体は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ラクダ、ラマ、サメ、または他の適切な宿主において生成することができる。あるいは、抗体は、ニワトリにおいて作製され得、IgY分子を産生する(Schade et al.,(1996)ALTEX13(5):80−85)。いくつかの実施形態では、本発明に好適な抗体は、類人猿抗体である。例えば、ヒヒにおいて治療的に有用な抗体を産生するための一般的な技術は、例えば、Goldenbergらの国際特許公開第WO91/11465号(1991)、及びLosman et al.,Int.J.Cancer 46:310(1990)に見出すことができる。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマ法を使用して、モノクローナル抗体が調製され得る(Milstein and Cuello,(1983)Nature 305(5934):537−40.)。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、組換え法によっても作製することができる(米国特許第4,166,452号,1979)。
B細胞不死化によるモノクローナル抗体の生成に関連する困難の多くは、ファージ提示を使用して、大腸菌において抗体断片を操作し、発現させることによって克服することができる。高親和性モノクローナル抗体の回復を確実にするために、コンビナトリアル免疫グロブリンライブラリは、典型的には、大きなレパートリーサイズを含まなければならない。典型的な戦略は、逆転写酵素を用いてcDNAを合成するために、免疫化したマウスのリンパ球または脾臓細胞から得たmRNAを利用する。重鎖及び軽鎖遺伝子は、PCRにより別個に増幅され、ファージクローニングベクターに連結される。2つの異なるライブラリが産生され、1つは重鎖遺伝子を含み、1つは軽鎖遺伝子を含む。ファージDNAは、各ライブラリから単離され、重鎖及び軽鎖配列は、一緒に連結され、パッケージングされて、コンビナトリアルライブラリを形成する。各ファージは、重鎖及び軽鎖cDNAのランダム対を含み、大腸菌の感染時に、感染細胞において抗体鎖の発現を導く。関心の抗原を認識する抗体を特定するために、ファージライブラリを平板培養し、プラーク中に存在する抗体分子をフィルタに移す。フィルタは、放射性標識された抗原と共にインキュベートされ、次いで、過剰の未結合リガンドを除去するために洗浄される。オートラジオグラム上の放射性スポットは、抗原に結合する抗体を含むプラークを特定する。ヒト免疫グロブリンファージライブラリを産生するために有用なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、STRATAGENE Cloning Systems(La Jolla,Calif.)から得ることができる。
高親和性のscFvを得るために、同様の戦略を採用することができる。例えば、Vaughn et al.,Nat.Biotechnol.,14:309 314(1996)を参照。大きなレパートリーを有するscFvライブラリは、全ての既知のVH、Vk、及びVλ遺伝子ファミリーに対応するPCRプライマーを使用して、非免疫化ヒトドナーからV遺伝子を単離することによって構築することができる。増幅後、Vk及びVλプールは、組み合わされて、1つのプールを形成する。これらの断片は、ファージミドベクターに連結される。scFvリンカー(Gly4,Ser)3は、次いで、VL断片のファージミド上流に連結される。VH及びリンカー−VL断片が増幅され、JH領域上で組み立てられる。得られたVH−リンカー−VL断片は、ファージミドベクターに連結される。ファージミドライブラリは、上述のように、フィルタを使用して、またはイムノチューブ(Nunc;Maxisorp)を使用して抽出(panned)され得る。同様の結果は、免疫化したウサギのリンパ球または脾臓細胞からコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリを構築し、ピキア酵母においてscFv構築物を発現させることによって達成することができる。例えば、Ridder et al.,Biotechnology,13:255 260(1995)を参照。加えて、適切なscFvの単離後、より高い結合親和性及び遅い解離速度を有する抗体断片は、CDR3変異誘発及び鎖シャッフリングなどの親和性成熟プロセスを通して得ることができる。例えば、Jackson et al.,Br.J.Cancer,78:181 188(1998)、Osbourn et al.,Immunotechnology,2:181 196(1996)を参照。
抗体断片の別の形態は、単一CDRをコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、関心対象の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される。例えば、Larrick et al.,Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991)、MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritter et al.(eds.)のCourtenay−Luckの”Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies,”pages 166 179(Cambridge University Press 1995)、及びMONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,Birch et al.,(eds.)のWard et al.,”Genetic Manipulation and Expression of Antibodies,”pages 137 185(Wiley−Liss,Inc.1995)を参照。
いくつかの実施形態では、本発明に好適な抗体は、ヒト化またはヒト抗体を含み得る。非ヒト抗体のヒト化形態は、キメラIg、Ig鎖、または非ヒトIgに由来する最小配列を含む断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2またはAbの他の抗原結合配列)である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は、ゲッ齒類相補性決定領域(CDR)またはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより達成される(Riechmann et al.,Nature 332(6162):323−7,1988、Verhoeyen et al.,Science.239(4847):1534−6,1988.)。そのような「ヒト化」抗体は、キメラAb(米国特許第4,816,567号、1989)であり、実質的に無傷のヒト可変ドメイン未満が非ヒト種からの対応配列によって置換されている。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基及び場合によりいくつかのFR残基がゲッ齒類Abの類似部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。ヒト化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されるヒトIg(レシピエント抗体)を含む。いくつかの例では、対応する非ヒト残基は、ヒトIgのFvフレームワーク残基を置換する。ヒト化抗体は、レシピエント抗体、または移入されたCDRもしくはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全て含み、全てではない場合、CDR領域の大部分は、非ヒトIgのものに対応し、全てではない場合、FR領域の大部分は、ヒトIgコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、Ig定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒトIgのものも含む(Riechmann et al.,Nature 332(6162):323−7,1988、Verhoeyen et al.,Science.239(4847):1534−6,1988.)。
ヒト抗体はまた、ファージ提示ライブラリ(Hoogenboom et al.,Mol Immunol.(1991)28(9):1027−37、Marks et al.,J Mol Biol.(1991)222(3):581−97)、及びヒトモノクローナル抗体の調製(Reisfeld and Sell,1985,Cancer Surv.4(1):271−90)を含む様々な技術を使用して産生することもできる。同様に、内因性Ig遺伝子が部分的または完全に不活性化されたトランスジェニック動物へのヒトIg遺伝子の導入は、ヒト抗体を合成するために利用され得る。抗原投与時にヒト抗体産生が観察され、これは、遺伝子再構成、アセンブリ、及び抗体レパートリーを含むあらゆる点でヒトに見られるものに非常に似ている(Fishwild et al.,High−avidity human IgG kappa monoclonal antibodies from a novel strain of minilocus transgenic mice,Nat Biotechnol.1996 July;14(7):845−51、Lonberg et al.,Antigen−specific human antibodies from mice comprising four distinct genetic modifications,Nature 1994 April 28;368(6474):856−9、Lonberg and Huszar,Human antibodies from transgenic mice,Int.Rev.Immunol.1995;13(1):65−93、Marks et al.,By−passing immunization:building high affinity human antibodies by chain shuffling.Biotechnology(N Y).1992 July;10(7):779−83)。
いくつかの実施形態では、本発明に好適な単一特異性抗CCL2抗体またはその断片は、およそ500nM、100nM、10nM、1nM、500pM、100pM、50pM、10pM、1pM、500fM、400fM、300fM、200fM、100fM、50fM、10fM、1fM以上の結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、本発明に好適な単一特異性抗CCL2抗体またはその断片は、およそ500nM〜1fM、500nM〜10fM、500nM〜100fM、500nM〜1pM、10nM〜1fM、10nM〜100fM、10nM〜1pM、1nM〜1fM、1nM〜100fM、1nM〜500fM、1nM〜1pM、1nM〜10pM、1nM〜50pM、1nM〜100pM、1nM〜500pMの範囲の結合親和性を有する。
いくつかの実施形態では、本発明に好適な単一特異性抗LOXL2抗体またはその断片は、およそ10nM、1nM、500pM、100pM、50pM、10pM、1pM、500fM、400fM、300fM、200fM、100fM、50fM、10fM、1fM以上の結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、本発明に好適な単一特異性抗LOXL2抗体またはその断片は、およそ10nM〜1fM、10nM〜100fM、10nM〜1pM、1nM〜1fM、1nM〜100fM、1nM〜500fM、1nM〜1pM、1nM〜10pM、1nM〜50pM、1nM〜100pM、1nM〜500pMの範囲の結合親和性を有する。
二重特異性抗CCL2及び抗LOXL2抗体ならびに融合タンパク質
いくつかの実施形態では、本発明は、二重特異性抗CCL2及び抗LOXL2抗体ならびに/または融合タンパク質を提供する。本明細書で使用される、用語「二重特異性抗体または融合タンパク質」は、異なる特異性を有する少なくとも2つの抗原結合部位または抗原結合アームを含む任意の抗体、融合タンパク質、またはこれらの断片を包含する。例えば、本発明に好適な二重特異性抗CCL2及び抗LOXL2抗体または融合タンパク質は、LOXL2に特異的に結合する少なくとも第1の抗原結合部位またはアーム、及びCCL2に特異的に結合する少なくとも第2の抗原結合部位またはアームを含む。
二重特異性抗体の各個々の抗原結合部位またはアームは、その特定の結合標的(例えば、CCL2またはLOXL2)に対して所望の結合親和性を有し得る。いくつかの実施形態では、抗原結合部位またはアームは、およそ500nM、100nM、10nM、1nM、500pM、100pM、50pM、10pM、1pM、500fM、400fM、300fM、200fM、100fM、50fM、10fM、1fM以上の結合親和性でCCL2に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合部位またはアームは、およそ500nM〜1fM、500nM〜10fM、500nM〜100fM、500nM〜1pM、10nM〜1fM、10nM〜100fM、10nM〜1pM、1nM〜1fM、1nM〜100fM、1nM〜500fM、1nM〜1pM、1nM〜10pM、1nM〜50pM、1nM〜100pM、1nM〜500pMの範囲の結合親和性でCCL2に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合部位またはアームは、およそ10nM、1nM、500pM、100pM、50pM、10pM、1pM、500fM、400fM、300fM、200fM、100fM、50fM、10fM、1fM以上の結合親和性でLOXL2に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合部位またはアームは、およそ10nM〜1fM、10nM〜100fM、10nM〜1pM、1nM〜1fM、1nM〜100fM、1nM〜500fM、1nM〜1pM、1nM〜10pM、1nM〜50pM、1nM〜100pM、1nM〜500pMの範囲の結合親和性でLOXL2に特異的に結合する。本発明は、上述の結合親和性のいずれかで抗CCL2及び抗LOXL抗原結合部位またはアームの組み合わせを有する二重特異性抗体を包含する。特に、二重特異性抗体は、1pM以上の結合親和性でLOXL2に特異的に結合する第1の抗原結合部位またはアーム、及び500nM〜1fMの範囲の結合親和性でCCL2に結合する第2の抗原結合部位またはアームを含み得る。特に、二重特異性抗体は、1pM以上の結合親和性でLOXL2に特異的に結合する第1の抗原結合部位またはアーム、及び1pMより大きい結合親和性でCCL2に結合する第2の抗原結合部位またはアームを含み得る。
二重特異性抗体の各抗原結合部位は、独立して、完全長重鎖及び完全長軽鎖、Fab断片、単鎖可変断片(scFv)、または他の形態の抗体断片を含む、完全な抗原結合アームであってよい。いくつかの実施形態では、所望の抗原結合部位またはアームは、上述の技術を使用して産生されたCCL2及びLOXL2に対して単一特異性抗体から調製され得、その後、そのような所望の抗CCL2及び抗LOXL2抗原結合部位またはアームを関連付け、所望の二重特異性抗体を産生する。例えば、所望の抗CCL2または抗LOXL2抗原結合部位またはアームは、上述の単一特異性モノクローナル抗体から単離される、分離される、または酵素的に消化され得る。二重特異性抗体の抗原結合部位またはアームは、それらの抗原結合能力を維持しながら、2つの部位またはアームが関連付けることを可能にする様々な構成に配置され得る。
好適な二重特異性抗体または融合タンパク質は、クアドローマ、化学ヘテロ抱合体、選択されたヘテロ2量体化ドメインを使用する組換え構築物、及び2つの最小抗原結合部位からなる最小サイズの組換え構築物を含むが、これらに限定されない様々な二重特異性抗体形式であってよい。一般に、クアドローマは、モノクローナル抗体のように見えるが、2つの異なる抗原結合アームを有する。それらの古典的な産生方法は、2つの異なるハイブリドーマ(腫瘍細胞と抗体作製正常細胞との間で融合される)細胞の体細胞融合に基づき、各々、固有のモノクローナル抗体(例えば、抗CCL2または抗LOXL2モノクローナル抗体)を産生する。所望の抗原結合アームを有する二重特異性抗体(例えば、抗CCL2及び抗LOXL2)は、2つの異なる抗体の重鎖及び軽鎖のランダム対合によって産生され得る。不対合副産物を減らし、二重特異性抗体の収率を増加させるための様々な選択対合方法が利用可能である。例えば、互いに優先的に対合する特定のIgGサブクラスのモノクローナル抗体を発現するマウス及びラットハイブリドーマ細胞系が融合され得る。加えて、2つの異なる抗体の重鎖の優先的な対合は、ヒトIgG1のCH3ドメインにおけるある特定の突然変異、いわゆる「ノブ−穴(knobs−into−holes)」戦略によって達成することができる。
クアドローマ形式は、典型的には、Fc受容体と相互作用することができるFc領域を含む。したがって、Fc部分を有する二重特異性抗体は、三重特異性抗体とも称される。いくつかの実施形態では、クアドローマのFc部分は、酵素除去され得、二重特異性F(ab’)2(抗体の2つの抗原結合アームが(a)ジスルフィド結合(複数可)を通して化学的に連結される)をもたらす。加えて、2つの抗原結合部位またはアームは、チオエーテル結合により、またはアミン、カルボキシル、フェニル、チオール、またはヒドロキシル基を含む、抗体または断片上の1つ以上の官能基を通して連結され得る。
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、例えば、ヘテロ2官能架橋剤を用いて、2つの異なるモノクローナル抗体または抗体断片の化学カップリングにより産生され得る。例えば、2つの異なるFab’(抗体の一価の抗原結合アーム(複数可))は、部位特異的な方法でそれらのヒンジシステイン残基で化学的に架橋され得る。化学的架橋またはカップリングに適切な化学物質の例としては、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)(SPDP)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド、カルボジイミド、ジイソシアネート、ジアゾベンゼン、ヘキサメチレンジアミン、ジマレイミド、グルタルアルデヒド、4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−.α.−メチル.α.(2−ピリジルチオ)トルエン(SMPT)、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、ヘテロ2量体を自然に形成するある特定のタンパク質ドメインは、大規模な発現に適したヘテロ2量体二重特異性抗体を構築するために使用される。例の1つは、2つの異なるFab’または単鎖(sc)Fv(可変領域の断片)抗体断片のカルボキシ末端に融合され得る転写因子Fos及びJunのロイシンジッパードメインである。いくつかの実施形態では、抗体の定常領域ドメインCκ及びCH1が、大腸菌などの細菌における二重特異性抗体の発現のために、Fos及びJun量体化ドメインの代わりに使用され得る。ある特定の実施形態では、2つの抗原結合部位またはアームは、特に、GST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)融合タンパク質もしくはその2量体化モチーフ、PDZ量体化ドメイン、FK−506BP(結合タンパク質)もしくはこれらの2量体化モチーフ、天然もしくは人工ヘリックスターンヘリックス2量体化ドメイン(例えば、p53)、プロテインAもしくはその2量体化ドメインBを介して関連付けられ得る。ある特定の実施形態では、2つの抗原結合部位またはアームは、外因性成分との相互作用を介して関連付けられ得る。例えば、2つの抗原結合部位またはアームは、アビジンモチーフを含み得、両方とも付加されたビオチンと相互作用する。
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、いわゆる、ダイアボディ及びタンデム単鎖Fv構築物を含む。典型的には、二重特異性抗体のこれらの形態は、リンカー配列として作用する最小付加タンパク質配列を有する2つの異なる抗原結合部位から構成される。各抗原結合部位は、それぞれ、2つの抗体の重鎖及び軽鎖からの最小限のVH及びVLドメインを使用する。ダイアボディにおいて、1つの抗原結合部位のVLドメインは、他の抗原結合部位のVHドメインを有する短いペプチドリンカーによって結合され、逆もまた同様である。タンデムscFv形式の二重特異性抗体は、典型的には、単一タンパク質鎖上の柔軟なペプチドリンカーによって結合される2つの異なるVL/VH対を含む。いくつかの実施形態では、タンデムscFv構築物は、4つの連続して整合された抗体V領域を適切に折り畳むことができる哺乳類宿主細胞において発現され得る。完全に機能的な二重特異性タンデム単鎖抗体は、細胞培養上清中に分泌され、ポリ−ヒスチジンタグを介して親和性クロマトグラフィー、続いてサイズ排除クロマトグラフィーにより効率的に精製され得る。好適なペプチドリンカーは、抗原結合部位またはアームの高次構造に干渉しない任意の配列を含み得る。ある特定の実施形態では、好適なペプチドリンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のアミノ酸長である。
本明細書に記載される様々な方法により産生された抗体は、典型的には、ホモ特異性(homospecific)及び二重特異性分子の両方を含む。二重特異性モノクローナルの存在をアッセイするための方法は、当該技術分野において既知であり、ブリッジELISAアッセイを含む(例えば、Suresh et al.(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83,7989−93、Koolwijk et al.(1988)Hybridoma 7,217−225、及びDe Lau et al.(1989)J.Immunol.149,1840−46を参照)。十分な量のそれぞれの抗原が利用可能な場合、二重抗原ELISAが採用され得る。
上述の二重特異性抗体を調製する特定の方法は、時折、単一特異性ならびに二重特異性抗体(例えば、化学カップリングの手順に従う)の形成をもたらす。これが生じる場合、所望の二重特異性抗体は、2つの形態間の相違を可能にする様々な手順のいずれかによって単一特異性抗体から単離することができる。そのような手順としては、分取からの受動的溶出、非変性アクリルアミドゲルまたは様々な従来のクロマトグラフィー技術、例えば、陰イオン交換、HPLC、またはチオフィリック吸着クロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Kreutz et al.(1998).J.Chromatography 14,161−170を参照)。加えて、抗原結合部位またはアームの各々は、異なるタグでタグ付けされ得、二重タグ付けされた二重特異性抗体は、2重親和性クロマトグラフィーにより単独でタグ付けされた単一特異性抗体から分離される。
二重特異性抗体を生成、精製、及び特徴付けするさらなる方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,601,819号、同第6,004,555号、同第5,762,930号、同第6,060,285号、同第6,010,902号、同第5,959,083号、同第5,807,706号、及び米国特許公開第2002/0025317号に開示されている。これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられたものとする。
所望の二重特異性抗CCL2及び抗LOXL2抗体は、本明細書に記載される様々な方法を含む、当該技術分野において既知の標準的な方法を使用して、キメラ、ヒト化、または完全ヒト二重特異性抗体を産生するためにさらに修飾され得る。
強皮症及び関連疾患、障害、または状態の治療
本明細書に記載される二重特異性及び/または単一特異性抗CCL2ならびに抗LOXL2分子(例えば、抗体、フィノマー、アプタマー、融合タンパク質、またはタンパク質結合ドメイン)は、強皮症または関連線維性、炎症性疾患、障害、もしくは状態に罹患している、またはそれに感受性である個人を効果的に治療するために使用され得る。本明細書で使用される、用語「治療する」または「治療」は、1つ以上の症状の寛解、1つ以上の症状の発症の防止もしくは遅延、及び/または関連する疾患、障害、または状態の1つ以上の症状の重篤度もしくは頻度の減少を指す。
本発明の様々な分子は、単独で、または組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明による治療方法は、本明細書に記載される二重特異性分子を、治療が必要な対象に投与することを伴う。いくつかの実施形態では、本発明による治療方法は、本明細書に記載される抗CCL2及び抗LOXL2単一特異性抗体またはこれらの断片を、治療が必要な対象に投与することを伴う。抗CCL2及び抗LOXL2単一特異性抗体またはこれらの断片は、同じまたは異なる投与経路を介して、同時に、または順次投与することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される分子は、単独で、または線維性もしくは炎症性疾患、障害、または状態を治療するのに有用であるものなど、他の治療薬と併用して投与され得る。そのような治療剤は、コルチコステロイド、NSAID、免疫抑制薬(例えば、メトトレキサート及びシトキサン)、小分子免疫調節物質、インターフェロン受容体抗体、抗線維化薬物(D−ペニシラミン、コルヒチン、PUVA、リラキシン、及びシクロスポリンを含む)、及び抗TGFβ治療、ならびにエンドセリン受容体遮断薬を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される分子は、他の同等の治療薬に関して記載されるものなど、従来の用量及び送達方法を使用して投与され得る。投与される用量は、当業者に既知の従来の手順によって決定され得る。例えば、The Pharmacological Basis of Therapeutics,Goodman and Gilman,eds.,Macmillan Publishing Co.,New Yorkを参照。一般に、有効投与量は、所望の効果、例えば、CCL2及び/もしくはLOXL2の中和、ならびに/またはそれらの同族受容体へのCCL2及び/もしくはLOXL2の結合の遮断をもたらすのに十分に大きいものである。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほど大きいものであってはならない。考慮すべき要因は、関与する特定の抗体/媒介物の活性、その代謝安定性及び作用の長さ、投与形式及び時間、薬物の組み合わせ、排泄速度、ならびに治療を受ける宿主の年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、及び特定の疾患状態の重篤度を含む。
本明細書に記載される分子は、治療的に有効な任意の投与計画で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗CCL2/LOXL2二重特異性または単一特異性抗体は、隔月、毎月、3週間に1回、隔週、毎週、毎日、または様々な間隔で投与される。
本明細書に記載される分子は、投与の非経口及び非経口でない経路(non−parenteral)を含む任意の投与方法を使用して投与され得る。非経口経路は、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄内、髄腔内、脳室内、頭蓋内、胸腔内、または他の注射経路を含む。非経口でない経路は、例えば、経口、経鼻、経皮、肺、直腸、頬、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)の持続放出、及び/または静脈内注射によるものであってもよい。抗CCL2及び抗LOXL2抗体の組み合わせが使用される場合、抗CCL2及び抗LOXL2抗体は、同じ投与経路を介して、または異なる投与経路を介して投与され得る。
強皮症
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び組成物は、限局性全身性硬化症/強皮症、びまん性全身性硬化症/強皮症、及び他の形態の強皮症を含む、全ての形態の強皮症に罹患している、またはそれに感受性である対象を治療するために使用され得る。限局性全身性硬化症/強皮症は、典型的には、主に手、腕、及び顔に影響を与える皮膚症状を伴う。これは、以下の合併症に関して、CREST症候群としても知られる:石灰沈着、レイノー現象、食道機能不全、強指症、および毛細血管拡張症。加えて、肺動脈性肺高血圧症は、最大3分の1の患者において生じ、この形態の強皮症に関して最も重度の合併症である。びまん性全身性硬化症/強皮症は、急速に進行し、広範囲の皮膚及び1つ以上の内部内臓、しばしば腎臓、食道、心臓、及び肺に影響を及ぼす。他の形態の強皮症は、皮膚の変化を欠くが、全身性症状を有する全身性無強皮症(sine scleroderma)、及び皮膚に影響を及ぼすが、内部臓器に影響を及ぼさない2つの局所性形態、すなわち、モルフェア及び線状強皮症を含む。
いくつかの実施形態では、治療は、未処理対照または治療前の状態と比較して、内皮細胞損傷、基底膜層の増殖、血管周囲単核細胞浸潤、線維症、内臓器官構造障害、血管の稀薄化、低酸素症、指、背部、及び前腕の膨張、四肢における冷感の感覚、指潰瘍、爪郭伸長(elongation of nail folds)、爪の陥凹出血、爪上の陥凹瘢痕、肺高血圧症、皮膚線維症、脱毛、皮膚拘縮、皮膚硬化、色素沈着過剰、色素沈着低下、皮膚の掻痒、手根管症候群、筋力低下、関節痛、間接硬直、腎線維症、食道線維症、口腔線維症、心線維症、及び肺線維症、肝線維症、筋線維症、空咳、息切れ、呼吸困難、肺胞炎、肺炎、喘鳴、食後の腹部膨満、便秘、下痢、嚥下困難、胃前庭部毛細血管拡張症、食道逆流、胸やけ、便失禁、口内の平坦な白斑、付着した歯肉粘膜の喪失、歯肉退縮、歯根膜のびまん性拡幅、嚥下障害、口の非弾性、下顎骨の後枝吸収、筋突起、及び顆状突起、癌、心不全、肺高血圧症、腎不全、吸収障害、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない強皮症に関連する1つ以上症状を部分的または完全に軽減する、寛解する、緩和する、阻害する、その発症を遅延する、その重篤度及び/またはその発生を減少させることを指す。
いくつかの実施形態では、治療は、線維症を部分的または完全に軽減する、寛解する、緩和する、阻害する、その発症を遅延する、その重篤度及び/またはその発生を減少させることを指す。本明細書で使用される、用語「線維症」は、臓器または組織における過剰な線維性結合組織の形成を指す。特定の理論に拘束されるわけではないが、線維症は、ある特定の線維芽細胞の活性化によって引き起こされる可能性があると考えられる。線維芽細胞の異なるサブタイプは、単一組織内であっても多様な機能を行うことが知られている。例えば、皮膚の上層の乳頭状線維芽細胞は、薄いコラーゲン束を産生し、高増殖率を有する一方で、皮膚のより深い皮層からの網状線維芽細胞は、厚いコラーゲン束及び大量のバーシカンを産生し、急速な格子収縮を促進する。線維芽細胞は、静止状態にあるか、または様々な活性化段階であり得る。正常に細胞が機能している間、線維芽細胞は、例えば、創傷治癒を促進するために、損傷に応答して活性化される。活性化された線維芽細胞は、コラーゲン及びコラーゲン修飾酵素を含む、細胞外マトリックスの増加した成分を産生する。強皮症の個人において、線維芽細胞の活性化の増加が一般に観察され、ECMの過剰産生を伴う。このECMの過剰産生は一般に、強皮症の特性である臓器もしくは組織において過剰な線維性結合組織を形成する線維症を引き起こすと考えられる。
いくつかの実施形態では、治療は、皮膚、腎臓、肝臓、肺、及び/または食道における線維症を部分的または完全に軽減する、寛解する、緩和する、阻害する、その発症を遅延する、その重篤度及び/またはその発生を減少させることを指す。
いくつかの実施形態では、治療は、皮膚線維症を部分的または完全に軽減する、寛解する、緩和する、阻害する、その発症を遅延する、その重篤度及び/またはその発生を減少させることを指す。典型的には、皮膚線維症は、皮膚の肥厚、硬化、または瘢痕の形成(例えば、ケロイドまたは火傷瘢痕等)に関連する。いくつかの実施形態では、皮膚線維症は、改変Rodnanスキンスコアによって評価される。例えば、図2に図示されるように、非病変皮膚はスコア0が与えられ、軽度の肥厚はスコア1が与えられ、中等度の肥厚はスコア2が与えられ、重度の肥厚はスコア3が与えられる。いくつかの実施形態では、治療は、治療前の状態と比較して、改変Rodnanスキンスコアを10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、またはそれ以上減少させる。いくつかの実施形態では、治療は、皮膚線維症の実質的な排除をもたらす。
理論に拘束されるわけではないが、強皮症患者における線維芽細胞の活性化は、サイトカインの産生による免疫応答の活性化に起因し得るとも考えられている。サイトカインの例としては、TGF−β、CCL2、CTGF、ET−1、線維芽細胞成長因子IL−1、IL−4、IL−6、IL−12、IL−13、IL−17、MCP−1、MCP−3、及びPDGFが挙げられるが、これらに限定されない。サイトカインは、免疫系の炎症促進性細胞、例えば、活性化T細胞、単球、もしくはマクロファージによって産生されるか、または代替的に、サイトカインは、上皮細胞によって産生され得る。線維芽細胞の活性化の一因となる要因の1つは、増加した毛細血管の透過性に関連する真皮における単核細胞の血管周囲浸潤であり得る。線維芽細胞活性化の代替えまたは追加手段は、細胞外マトリックス及び/または機械的張力との相互作用を含む。よって、いくつかの実施形態では、本発明による強皮症患者の治療は、本明細書に記載されるものなど、1つ以上の炎症促進性サイトカインの産生の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、治療前の状態と比較して、炎症促進性サイトカイン(例えば、TGF−β、CCL2、CTGF、ET−1、線維芽細胞成長因子IL−1、IL−4、IL−6、IL−12、IL−13、IL−17、MCP−1、MCP−3、及び/またはPDGF)を、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、またはそれ以上減少させる。サイトカインのレベルを決定するための様々な方法が当技術分野において既知であり、本発明を実施するために使用され得る。
いくつかの実施形態では、治療は、減少したCCL2血清レベルをもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、治療前の状態と比較して、CCL2血清レベルを、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、またはそれ以上減少させる。いくつかの実施形態では、治療は、約800pg/ml、700pg/ml、600pg/ml、500pg/ml、400pg/ml、350pg/ml、300pg/ml、250pg/ml、200pg/ml、150pg/ml、または100pg/ml未満のCCL2血清レベルをもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、実質的に同じ年齢または発達段階の健康な対象と同等であるCCL2血清レベルをもたらす。
線維性疾患、障害、または状態
強皮症に加えて、本発明による方法及び組成物は、一般に、結合線維組織増殖症候群、強皮症性移植片対宿主病、腎性全身性線維症、臓器特異的線維症などを含むが、これらに限定されない線維性疾患、障害、または状態を治療するために使用され得る。例示的な臓器特異的線維性障害は、肺線維症、肺高血圧症、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肝線維症、腎線維症、NASHなどを含むが、これらに限定されない。多くの線維性疾患、障害、または状態は、患部組織における細胞外マトリックスの無秩序及び/または過度の蓄積を有する。線維症は、炎症に関連し、基礎疾患の症状として生じる、及び/または外科手技もしくは創傷治癒プロセスに起因し得る。無検査の線維症は、根底にある臓器または組織の構造の破壊をもたらす場合があり、一般的に瘢痕化と称される。
NASHは、通常、ほとんど、または全く症状がない無症状疾患である。患者は、一般的に初期の段階では体調がよく、疾患がより進行するか、または硬変が発達すると、疲労、体重減少、及び脱力感などの症状が出始めるのみである。NASHの進行は、数年、さらには数十年かかる場合がある。プロセスは、停止する可能性があり、いくつかの場合では、特定の治療をすることなく独自に反転さえし始める場合がある。あるいは、NASHは、ゆっくりと悪化し、瘢痕化または線維症を引き起こし、肝臓に蓄積する場合がある。線維症が悪化すると、肝臓がひどく瘢痕化し、硬化し、正常に機能できなくなる硬変が発達する。NASHの全ての人が硬変を発達させるわけではないが、深刻な瘢痕化または硬変が存在すると、ほとんどの治療は進行を停止することができない。硬変の人は、体液貯留、筋消耗、腸からの出血、及び肝不全を起こす。肝臓移植は、肝不全を伴う進行した硬変のための唯一の治療であり、移植は、NASHの人々の間でますます行われている。NASHは、C型肝炎及びアルコール性肝疾患に続いて、アメリカでは硬変の主な原因の一つとしてランク付けされる。
腎臓(腎)線維症は、腎臓における線維性結合組織の過剰な形成に起因する。腎線維症は、かなりの罹患率及び死亡率の原因となり、透析または腎臓移植の必要性につながる。線維症は、腎臓の機能単位のネフロンの選別または再吸収性成分のいずれかにおいて生じ得る。いくつかの要因は、腎臓瘢痕化、特に糸球体ろ過の自己調節に関与する生理機能の障害に起因し得る。これは同時に、蓄積された細胞外マトリックスとの正常な構造の置換につながる。個々の細胞の生理機能の変化の範囲は、瘢痕化を好むように、細胞外マトリックス合成と分解との間の平衡の変化を刺激する多数のペプチドおよび非ペプチドの線維化の産生につながる。
炎症性疾患、障害、または状態
いくつかの実施形態では、本発明による方法及び組成物は、全身性炎症応答(SIRS);アルツハイマー病(ならびに慢性神経炎症、膠細胞活性化、増加した小膠細胞、老人斑形成、及び治療応答を含む関連状態及び症状)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、関節炎(ならびに急性関節炎症、抗原誘発関節炎、慢性リンパ性甲状腺炎、コラーゲン誘発関節炎、若年性関節炎、関節リウマチ、変形性関節炎、予後及び連鎖球菌誘発関節炎、脊椎関節症(spondyloarthopathies)、痛風関節炎を含むが、これらに限定されない関連状態及び症状)、喘息(ならびに気管支喘息、慢性閉塞性気道疾患、慢性閉塞性肺疾患、若年性喘息、及び職業性喘息を含む関連状態及び症状)、循環器疾患(ならびにアテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、慢性心臓性低酸素症、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋症及び心細胞機能不全(大動脈平滑筋細胞活性化、心細胞アポトーシス、及び心細胞機能の免疫調節を含む)を含む関連状態及び症状)、糖尿病ならびに関連状態及び症状(自己免疫糖尿病、インスリン依存(1型)糖尿病、糖尿病性歯周炎、糖尿病性網膜症、及び糖尿病性腎症を含む)、胃腸管炎症(ならびにセリアック病、関連骨減少症、慢性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、及び潰瘍性大腸炎を含む関連状態ならびに症状)、胃潰瘍、肝臓炎症(ウイルス性及び他の種類の肝炎、コレステロール胆石、ならびに肝性線維症など)、HIV感染(ならびに変性応答、神経変性応答、及びHIV関連ホジキン病を含む関連状態ならびに症状)、カワサキ症候群(ならびに皮膚粘膜リンパ節症候群、リンパ節腫脹頸部、冠動脈病変、浮腫、発熱、増加した白血球、軽度の貧血、皮膚剥離、発疹、結膜発赤、血小板増加症を含む関連疾患及び状態)、多発性硬化症、腎症(ならびに糖尿病性腎症、末期腎疾患、急性及び慢性糸球体腎炎、急性及び慢性間質性腎炎、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、血液透析生存及び腎虚血再灌流損傷を含む関連疾患及び状態)、神経変性疾患(ならびに急性神経変性、老化及び神経変性疾患におけるIL−1の誘発、視床下部神経のIL−1誘発された柔軟性、及び慢性ストレス応答性亢進を含む関連疾患及び状態)、眼疾患(ならびに糖尿病性網膜症、グレーブス眼症、及びブドウ膜炎を含む関連疾患及び状態)、骨粗鬆症(ならびに肺胞、大腿、橈骨、椎骨、もしくは手首骨喪失、または骨折発生、閉経後の骨喪失、腫瘤、骨折発生、もしくは骨喪失の速度を含む関連疾患及び状態)、中耳炎(成人または小児)、膵炎または膵臓小胞炎(pancreatic acinitis)、歯周疾患(ならびに成人、早発性、及び糖尿病性を含む関連疾患及び状態)、肺疾患(慢性肺疾患、慢性副鼻腔炎、肺硝子膜症、低酸素症、及びSIDSにおける肺疾を含む)、冠血管またはたの血管グラフトの再狭窄、リウマチ(関節リウマチ、リウマチ性アショフ体、リウマチ性疾患、及びリウマチ性心筋炎を含む)、甲状腺炎(慢性リンパ性甲状腺炎を含む)、尿路感染症(慢性前立腺炎、慢性骨盤痛症候群、及び尿路結石症を含む)を含むが、これらに限定されない炎症性疾患、障害、または状態を治療するために使用される。免疫学的障害は、円形脱毛症、自己免疫心筋炎、ブレーブス病、グレーブス眼症、硬化性苔癬、多発性硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、甲状腺疾患(例えば、甲状腺腫及びリンパ性甲状腺腫(ハシモト甲状腺炎、リンパ節様甲状腺腫)、睡眠障害、及び慢性疲労症候群、ならびに肥満症(非糖尿病性または糖尿病関連)などの自己免疫疾患を含む。細菌、ウイルス(例えば、サイトメガロウイルス、脳炎、エプスタイン・バーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス)、または原虫(例えば、熱帯熱マラリア原虫、トリパノソーマ)によって引き起こされるリーシュマニア症、ハンセン病、ライム病、ライム心炎、マラリア、大脳マラリア、髄膜炎、マラリアに関連した尿細管間質性腎炎)などの感染疾患に対する耐性。脳外傷(脳卒中及び虚血、脳炎、脳症、てんかん、出生時脳損傷、長期熱性けいれん、SIDS、ならびにくも膜下出血を含む)を含む外傷、低出生体重(例えば、脳性麻痺)、肺障害(急性出血性肺損傷、グッドパスチャー症候群、急性虚血性再灌流)、職業上及び環境汚染物質によって引き起こされる心筋機能不全(例えば、毒性油症候群珪肺)、放射線外傷、創傷治癒応答の効率(例えば、火傷または熱創傷、慢性創傷、外科創傷、及び脊髄損傷)に対する応答。受胎能/出産能力を含むホルモン調節、妊娠の可能性、早産、出生前及び新生児合併症(早産児低出生体重を含む)の発生率、脳性麻痺、敗血症、甲状腺機能低下症、酸素依存性、頭蓋異常、早期発症閉経。移植に対する対象の応答(拒絶または許容)、急性期応答(例えば、発熱応答)、一般的な炎症応答、急性呼吸窮迫応答、急性全身性炎症応答、創傷治癒、癒着、免疫炎症応答、神経内分泌応答、発熱の発達及び抵抗、急性期応答、ストレス応答、疾患感受性、反復運動ストレス、テニス肘、ならびに疼痛管理及び応答。
患者の層別化、治療モニタリング及び/または最適化のためのバイオマーカーまたは指標
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗CCL2/LOXL2二重特異性または単一特異性分子(例えば、抗体、フィノマー、アプタマー、融合タンパク質、またはタンパク質結合ドメイン)に基づく方法及び組成物は、患者の層別化、治療モニタリング、及び/または最適化のためのバイオマーカーと共に使用され得る。いくつかの実施形態では、好適なバイオマーカーは、差次的に発現されたバイオマーカーである。本明細書で使用される、「差次的に発現されたバイオマーカー」は、発現レベルが、健康なまたは正常な対象(または健康なもしくは正常な対象の集団)におけるその発現レベルに対して、強皮症に罹患する対象(または対象の集団)において異なるバイオマーカーを指す。本用語はまた、発現レベルが異なる疾患のサブタイプ(すなわち、限局性皮膚またはびまん性皮膚)に関して異なるバイオマーカーを包含する。本用語は、発現レベルが疾患の異なる段階(例えば、軽度または初期の強皮症、重度または後期の強皮症)で異なるバイオマーカーをさらに包含する。差次的な発現は、バイオマーカーの時間または細胞発現パターンの定量的ならびに質的な差を含む。以下により詳細に記載されるように、差次的に発現されるバイオマーカーは、単独で、または他の差次的に発現されるバイオマーカーと組み合わせて、診断、段階分け、治療、薬物開発、及び関連分野における様々な異なる用途において有用である。本明細書に開示される差次的に発現されるバイオマーカーの発現パターンは、強皮症、強皮症サブタイプ、強皮症の段階、及び強皮症の疾患重篤度、ならびに/または進行のフィンガープリントまたは符号として説明され得る。それらは、未知の試料及びさらに情報が求められる試料を比較し、特徴付けるための基準点として使用され得る。本明細書で使用される、用語「減少した発現レベル」は、本明細書に記載される1つ以上の方法により測定されるように、少なくとも10%以上の、例えば、20%、30%、40%、または50%、60%、70%、80%、90%以上の発現の減少、または1倍より大きい、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍以上の発現の減少を指す。本明細書で使用される、用語「増加した発現レベル」は、本明細書に記載される方法などの1つ以上の方法により測定されるように、少なくとも10%以上、例えば、20%、30%、40%、もしくは50%、60%、70%、80%、90%以上の発現の増加、または1倍より大きい、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍以上の発現の増加を指す。
皮膚遺伝子発現分析
強皮症患者における差次的に発現されたバイオマーカーを特定するための様々な方法が当該技術分野において既知であり、本発明を実践するために使用され得る。例えば、皮膚遺伝子発現分析は、患者を小グループに分類し、タンパク質バイオマーカー及び応答した患者のサブセットの指標を特定するための強力なツールであり得る。いくつかの実施形態では、強皮症の患者において差次的に調節される遺伝子は、健康な個人の皮膚試料の転写プロファイルを強皮症を有するものと比較することにより特定され得る。さらに、疾患の重篤度に関連する遺伝子転写物は、様々な段階の進行度合いの強皮症患者を含むことにより特定され得る。転写プロファイルは、“Molecular Subsets in the Gene Expression Signatures of Scleroderma Skin”(PLOS One,3:7,1−18,2008)(その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)においてMilanoらにより記載されるマイクロアレイ分析によって分析され得る。例えば、マイクロアレイ分析は、びまん性強皮症、限局性強皮症、モルフェア(内部臓器病変がない強皮症に類似した疾患)の患者及び健康な対照からの皮膚試料(例えば、前腕及び背中の試料)に対して行われ得る。強皮症に最も高度に関連する遺伝子を特定するために、複写物と試料部位との間で最も内部的に一致する一方、個人間で最も可変である遺伝子がさらなる分析のために選択される。強皮症の重篤度と相関する差次的遺伝子発現に基づくクラスター分析は、強皮症によって影響を受けた遺伝子を選択するために使用され得る。
強皮症において差次的に発現された例示的な遺伝子は、6つのグループにクラスター化され得ることが報告されている。第1のグループは、びまん性強皮症の患者のサブセット及びモルフェアの患者において高度に発現される免疫グロブリン遺伝子を含む(CCR2、CCL4、及びIGLL1を含むが、これらに限定されない)。第2のグループは、細胞が分割されるときにのみ発現される遺伝子を含む、増殖符号を含む。このクラスターにおいて増加した発現を示す遺伝子は、CKS1B、CDKS2、CDC2、MCM8、及びE2F7などの細胞周期調節遺伝子を含む。増殖符号の存在は、びまん性強皮症組織の細胞が増加した増殖を受けることを示す皮膚生検からの報告と一致する。第3のグループは、COL5A2、COL8A1、COL10A1、COL12A1を含むが、これらに限定されないコラーゲン及び細胞外マトリックス成分を含む。第4のグループは、典型的には、第3のグループに類似して発現され、T細胞活性化に必要とされるPTPRCを含むTリンパ球及びマクロファージ、ならびにTリンパ球の表面上に発現されるCD2及びCDW52の存在に関連する遺伝子を含む。第5のグループは、びまん性強皮症において低発現を示す遺伝子を含む。これらの遺伝子は、他の生検においてより高い発現レベルを示し、とりわけ、WIF1、テトラネクチン、IGFBP6、及びIGFBP5を含む。第5のグループは、限局性強皮症及びびまん性強皮症のサブセットにおいて高い異種遺伝子発現クラスターであり、UTS2R、GALR3、PARD6G、PSEN1、PHOX2A、CENTG3、HCN4、KLF16、及びGPR15Gを含むが、これらに限定されない。さらなる差次的に発現された例示的な遺伝子は、Milanoらの“Molecular Subsets in the Gene Expression Signatures of Scleroderma Skin”(PLOS One,3:7,1−18,2008)に記載される(その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。
代理マーカーとしての多重遺伝子符号
遺伝子の組み合わせは、バイオマーカーとして使用され得る。バイオマーカー特定のための例示的な方法は、例えば、Farinaらの“A Four−Gene Biomarker Predicts Skin Disease in Patients with Diffuse Cutaneous Systemic Sclerosis”(Arthritis Rheum.62(2),580−588,2010)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に提供される。強皮症において調節されることが知られているTGFβ及びインターフェロンなどの標的をはじめとして、Farinaは、遺伝子CTGF、THS1、COL4、及びPAI1を含む4つの遺伝子バイオマーカーを特定した。組み合わせでのこれら4つの遺伝子の転写は、改変Rodnanスキンスコア(mRSS)及びびまん性強皮症の高度な予測と高度に相関することが分かった。
mRSSは強皮症の臨床マーカーの1つとして使用される。典型的には、mRRSは、図2に示されるように割り当てられる、すなわち、非病変皮膚はスコア0が与えられ、軽度の肥厚はスコア1が与えられ、中等度の肥厚はスコア2が与えられ、重度の肥厚はスコア3が与えられる。典型的には、0〜51の範囲の総mRSSスコアは、患者の17の皮膚領域の0〜3の等級に基づき決定され得る。mRSSは、診断及び治療モニタリングの指標として、単独で、または他のバイオマーカーと組み合わせて使用され得る。
類似する戦略は、強皮症の潜在的な符号バイオマーカーを特定し、確認するために使用され得る。具体的には、遺伝子転写物(複数可)または強皮症の臨床マーカーと最も高度に相関する遺伝子転写物の組み合わせからなるバイオマーカーを特定するために、強皮症において正または負の調節として特定された遺伝子転写物が、単独で、または組み合わせで試験される。mRSSに加えて、HAQ−DI、DLCO、またはFVCなどの他の臨床マーカーが使用され得る。
CCL2レベル
CCL2レベル、例えば、CCL2血清レベルは、疾患の重篤度、臓器病変を決定する、適切な治療を選択する、疾患の進行及び患者の応答を監視するためのバイオマーカーまたは指標として使用され得る。バイオマーカーまたは指標としてのCCL2レベルを決定するために、様々な段階の強皮症の患者及び罹患していない個人の血清中のCCL2レベルが決定される。これは、例えば、ELISAによって血清中のCCL2タンパク質レベルをアッセイすることにより行われ、皮膚及び他の臓器(例えば、肺、肝臓、腎臓、食道)病変と相関し得る。例示的な方法は、Carulli et al.Ann Rheum Dis.67:105−109,2008に記載される。
生検からなどの皮膚及び/または血清に存在するCCL2レベルは、mRSSまたは健康評価アンケート(HAQ−DI)、一酸化炭素に対する肺の拡散能力(DLCO)、もしくは努力肺活量(FVC)などの他の臨床マーカーとも相関し得る。
強皮症の重篤度に基づき患者を層別化する、適切な治療もしくは投薬計画を選択する、治療の有効性を評価する、対象の治療に対する応答、疾患経過の予後、及び疾患の進行の測定を監視するために、様々なバイオマーカーが、単独で、または組み合わせて、ないしは別の方法でmRSSなどの臨床診断マーカーと一緒に使用され得る。典型的には、そのような方法において、1つ以上の時点からの対象から得た生物学的試料について決定された好適なバイオマーカー(例えば、本明細書に記載される様々な差次的に発現された遺伝子から選択されたもの、及びCCL2レベルなどの他の既知のマーカー)のレベルは、1つ以上の他の時点からの対象からのレベルと比較される。例えば、バイオマーカーレベルは、治療過程の前または開始時に測定され得る。バイオマーカーレベルは、治療過程全体を通して1つ以上の時点で測定され、治療前または治療過程の初期の時点からのレベルと比較され得る。適切な治療の特定または選択、患者が治療に肯定的な応答を有するかの決定、及び/または治療の最適化は、バイオマーカーの評価に基づき決定することができる。
薬学的組成物
本発明はまた、1つ以上の提供された分子(例えば、抗体、フィノマー、アプタマー、融合タンパク質、タンパク質結合ドメイン)を含む組成物も提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの分子と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを提供する。そのような薬学的組成物は、任意に、1つ以上の追加の治療的に活性な物質を含む、及び/またはそれと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態では、提供される薬学的組成物は、医薬において有用である。いくつかの実施形態では、提供される薬学的組成物は、強皮症または強皮症に関連もしくは相関する負の派生効果の治療または予防において、予防薬(すなわち、ワクチン)として有用である。いくつかの実施形態では、提供される薬学的組成物は、例えば、強皮症に罹患している、またはそれに感受性である個人における治療用途に有用である。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ヒトに投与するために製剤化される。
例えば、本明細書に提供される薬学的組成物は、減菌注射可能な形態(例えば、皮下注射または静脈内点滴に適した形態)で提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、注射に適した液体投薬形態で提供される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、任意に、真空下で、注射前に水性希釈剤(例えば、水、緩衝液、塩溶液等)で再構築される粉末(例えば、凍結乾燥及び/または減菌される)として提供される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、水、塩化ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、ベンジルアルコール溶液、リン酸緩衝生理食塩水等で希釈及び/または再構築される。いくつかの実施形態では、粉末は、水性希釈剤と穏やかに混合されなければならない(例えば、振盪しない)。
いくつかの実施形態では、提供される薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、防腐剤、不活性希釈剤、分散剤、界面活性剤、及び/または乳化剤、緩衝剤等)を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、1つ以上の防腐剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、防腐剤を含まない。
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、冷蔵及び/または冷凍することができる形態で提供される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、冷蔵及び/または冷凍することができない形態で提供される。いくつかの実施形態では、再構築溶液及び/または液体投与形態は、再構築後、ある特定の時間期間の間(例えば、2時間、12時間、24時間、2日間、5日間、7日間、10日間、2週間、1ヶ月、2ヶ月以上)保管することができる。いくつかの実施形態では、特定の時間よりも長い抗体組成物の貯蔵は、分子の分解をもたらす。
液体投与形態及び/または再構成された溶液は、投与前に微粒子物質を含む、及び/または変色し得る。いくつかの実施形態では、溶液は、変色及び/もしくは混濁している場合、ならびに/または微粒子物質が濾過後に残留する場合、使用されるべきではない。
本明細書に記載される薬学的組成物の組成物は、薬理学の分野において既知の、または今後開発される任意の方法によって調製され得る。いくつかの実施形態では、そのような調製方法は、活性成分を1つ以上の賦形剤及び/または1つ以上の他の補助成分と関連付け、その後、必要であれば、かつ/または望ましい場合、製品を所望の単回もしくは多回投与単位に成形及び/または梱包するステップを含む。
本発明による薬学的組成物は、バルクで、単一単位用量として、及び/または複数の単一単位用量として調製、梱包、及び/または販売され得る。本明細書で使用される、「単位用量」は、既定量の活性成分を含む薬学的組成物の個別量である。活性成分の量は、対象に投与されるであろう用量及び/または例えば、そのような用量の半分もしくは3分の1などのそのような用量の便利な画分にほぼ等しい。
本発明による薬学的組成物における活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/または追加成分の相対量は、治療される対象の同一性、大きさ、及び/もしくは状態により、ならびに/または組成物が投与される経路により変動し得る。例として、組成物は、0.1%〜100%(w/w)の活性成分を含み得る。
本発明の薬学的組成物は、本明細書で使用されるように、所望の特定の投薬形態に適するように、溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散剤もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤などであってよい、またはそれらを含む薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro,(Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2006)は、薬学的組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤及びそれを調製するための既知の技術を開示している。任意の従来の賦形剤媒体が、任意の望ましくない生物学的作用をもたらす、ないしは別の方法で薬学的組成物の任意の他の成分(複数可)と有害な様式で相互作用することなどにより、物質またはその誘導体と不適合である場合を除き、その使用は、本発明の範囲内であると想定される。
本発明はさらに、以下の非限定的な実施例によって説明される。これらの実施例は、本発明の理解を補助するために記載されるが、決してその範囲を限定することを意図せず、またそうであると解釈されるべきではない。実施例は、当業者に周知であろう従来の方法の詳細な説明を含まない。特に記載されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏で示され、圧力は大気圧または大気圧付近である。
実施例1.二重特異性抗CCL2/LOXL2抗体の調製
この実施例は、二重特異性抗CCL2/LOXL2抗体の調製を説明する。上述のように、所望の特異性及び結合親和性を有する二重特異性抗体を生成し、選択するための様々な方法が利用可能である。
この特定の実地例では、二重特異性抗体は、CCL2に対する完全な抗原結合アーム、及びLOXL2に対する完全な抗原結合アームから構成される。具体的には、ヒト化CCL2特異的モノクローナル抗体を産生するマウス細胞系が、クアドローマを産生するために、ヒト化LOXL2特異的モノクローナル抗体を産生するラット細胞系に融合される。クアドローマ細胞の上清は、FACS分析により標的細胞への結合について試験される。抗体は、タンパク質A親和性、続いてイオン交換クロマトグラフィーによりクアドローマ細胞培養物から精製される。
実施例2.用量範囲試験
この実施例は、強皮症の治療のための二重特異性抗CCL2及び抗LOXL2抗体の有効用量範囲を評価するために設計された用量応答試験を説明する。
この実施例では、ブレオマイシン誘発強皮症マウスモデルが使用される。典型的には、線維症は、背側皮膚内へのブレオマイシン、ポリイノシン酸−ポリシチジル酸、及び/またはLPSの反復皮下注射によりマウスにおいて誘発される。具体的には、10〜110μg及び最大200μgの濃度のブレオマイシン、300μgの濃度のLPS、100μgの濃度のポリシチジル酸、またはPBS単独のいずれかを含む浸透圧ポンプ(7日間)が、10匹のB6マウス群の皮下に移植される。このマウスモデルにおいて、皮膚における病理組織学的変化は、強皮症に見られるものと非常に似ている。初期の単核細胞蓄積ならびに上方制御されたTGF−β及びケモカイン発現の後に、厚いコラーゲン束及び活性化線維芽細胞の蓄積を特徴とする皮膚線維症が続く。マウスは、肺及び腎線維症のエビデンスも示す。
濃度を増加した二重特異性CCL2/LOXL2抗体または対照抗体の用量(複数可)が、腹腔内注射を介してマウス内に投与される。
実施例3.二重特異性抗CCL2/LOXL2抗体のインビボ有効性
この実施例は、強皮症のブレオマイシンマウスモデルにおける、炎症及び線維症に対する抗CCL2/LOXL2抗体による治療の効果を評価するために設計された試験を説明する。
PBS単独、またはPBS中10〜110μg及び最大200μgのブレオマイシンのいずれかを含む7または28日間の浸透圧ポンプが、B6マウスの皮下に移植される。2日おきに、マウスは、実施例2で決定された適切な濃度の抗CCL2/LOXL2二重特異性抗体、または対照抗体による腹腔内注射を介して治療される。
7日間の浸透圧ポンプの場合には7日後、または28日間の浸透圧ポンプの場合には28日後に、皮膚及び肺組織が、転写及び組織学的分析のために回収される。組織試料におけるCCL2タンパク質のレベルは、ELISAにより測定される。転写分析のために、RNAは、皮膚組織から抽出され、単離されたRNAは、当技術分野において一般的に知られる技術を用いて、半定量的または定量的逆転写酵素PCRを受ける。PAI1、COMP、COL1a1、F4/80、IL−6、及びTNFαを含むがこれらに限定されないTGFβ遺伝子発現のレベル、及び炎症促進性遺伝子の遺伝子発現レベルは、市販のプライマー(TaqMan(登録商標))を使用して測定される。組織学的分析に関して、皮膚線維症は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色された組織切片の顕微鏡検査により分析される。組織形態を可視化するためのH&E染色の使用は、当該技術分野において周知である。免疫組織化学は、当該技術分野において周知の技術を用いて、単球特異的抗F4/80抗体でプローブされた組織切片の顕微鏡検査により単球の浸潤を定量化するために使用される。
抗CCL2/LOXL2抗体による治療は、単球及びマクロファージの浸潤を減少させる、炎症性遺伝子発現(例えば、IL−6、TNFα)を減少させる、及びTGFβ誘発マーカー遺伝子発現を低減することが予想される。これは、線維症の一般的な減少をもたらすことが期待される。
実施例4.治療モデル化
この実施例は、組織標的レベルを予測するために、様々な組織及び血漿におけるCCL2産生及び代謝回転のモデルを説明する。図示されるモデルは、高CCL2レベルの極端な表示を表す。
典型的には、CCL2は、疾患組織で産生され、血漿中に分泌される。健康な個人において、皮膚におけるCCL2の合成は、低いか、または検出不可能である。CCL2の合成は、罹患していない、及び罹患している皮膚の両方における総皮膚病変と共に増加し、増加した血清CCL2レベルにつながる。血清CCL2レベルは、臓器病変と共にさらに増加する。典型的には、健康な個人は、約100pg/ml未満の平均血清CCL2レベルを有する。いわゆるレイノー現象を有する個人は、わずかに増加した平均血清CCL2レベルを有する。硬化症に罹患する患者は、典型的には、約250pg/mlの平均血清CCL2レベルを有する。限局性皮膚全身性硬化症に罹患する患者は、典型的には、約250pg/mlの平均血清CCL2レベルを有する。びまん性皮膚前進硬化症に罹患する患者は、典型的には、約380pg/mlの平均血清CCL2レベルを有する。限局性皮膚全身性硬化症に罹患する患者は、典型的には、約250pg/mlの平均血清CCL2レベルを有する。
CCL2の分子量は、約50kDaの糸球体ろ過閾値よりも非常に小さい、約8.6kDaであり、迅速な腎臓クリアランスをもたらす。CCL2は、活性受容体媒介内在化によって内在化される。CCL2がその受容体CCR2に結合する典型的なkdは、約60pM〜2nMである。CCR2は、リンパ系起源細胞及びリンパ内皮に主に存在する。強皮症は、間質と血清との間のCCL2及び任意の治療用抗体の実質的な平衡を可能にする、疾患進行初期において増加した血管透過性をもたらすことが想定される。したがって、CCL2の血清半減期は、マウス及びウサギからのデータに基づき、約10分である。ヒトにおけるCCL2血清半減期は、類似すると予想される。比較的透過性の組織は、CCL2が組織から血清(半分−最大)に迅速に、例えば、約2時間で平衡に達するのを可能にする。場合によっては、血清CCL2レベルは、1000pg/ml(約75pM)に達し得、全体的な皮膚病変を有するが、臓器病変はない。血清及び組織CCL2の平衡を示す標的プロファイルは、図3に示され、これは、3nMの組織CCL2を中和し、それと競合してその受容体に付着させないためにこの所望の量の抗体が必要であることを予測する。
静脈内注射されたモノクローナル抗体は、典型的には、血漿中のCCL2に結合し、それらが疾患組織に達する前に複合体を形成し、モノクローナル抗体の消耗をもたらす。二重特異性mAbは、組織CCL2に結合する「遊離」抗CCL2アームにより疾患組織においてmAbを抑制し、CCL2の組織特異的標的指向を提供することを可能にする(図4を参照)。我々は、血清CCL2に結合しないが、組織CCL2に結合するように、CCL2の親和性を設計することができる。さらに、我々は、用量を増加させることにより、CCR2の60pMの親和性と競合することができる。よって、このアプローチは、血漿CCL2とは対照的に、優先的に組織CCL2を阻害することを可能にし、高度に効果的な強皮症の治療をもたらす。
二重特異性結合タンパク質のモデル化からの予備的なセットの結果は、以下の仮定に基づき、図5に示される。抗LOXL2アームは、1pM以上のkdを有し、抗CCL2アームは、500pM〜1nMの範囲のkdを有し、LOXL2結合mAbは内在化も分解もされない。
実施例5:臨床設計
動物治療の成功に基づき、表3〜7に詳述される抗CCL2/LOXL2二重特異性抗体の第I〜III相用量範囲及び単一用量試験が、抗CCL2/LOXL2の安全性、忍容性、有効性、及び薬物動態を評価するために、健康な個人、及び異なる段階の強皮症の個人において設計される。
ヒト臨床試験1の主な目的は、健康な個人に投与された4つの用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の安全性を決定することを含む。第2の目的は、健康な個人において投与された4つの異なる用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の薬物動態を評価することを含む。この臨床試験の詳細なプロトコルの概要は表3に示される。
ヒト臨床試験2の主な目的は、強皮症の初期症状を有する個人に投与される4つの用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の安全性を決定することを含む。第2の目的は、(1)強皮症の初期症状を有する個人に投与された4つの異なる用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の薬物動態を決定すること、(2)遂次皮膚生検において遺伝子発現をアッセイすることにより、4つの異なる用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体に対する強皮症の初期症状を有する個人の薬物動力(PD)応答を決定すること、及び(3)改変Rodnanスキンスコア(mRSS)によって測定される4つの異なる用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体に対する強皮症の初期症状を有する個人の臨床応答を決定することを含む。この臨床試験の詳細なプロトコル概要は表4に示される。
ヒト臨床試験3の主な目的は、改変Rodnanスキンスコア(mRSS)によって測定される、強皮症の初期症状を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の有効性を決定することを含む。第2の目的は、(1)健康評価アンケート−障害指数(HAQ−DI)によって測定される、強皮症の初期症状を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の有効性を決定すること、及び(2)臓器特異的評価により測定される、強皮症の初期症状を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の有効性を決定することを含む。この臨床試験の詳細なプロトコル概要は表5に示される。
ヒト臨床試験4の主な目的は、努力肺活量(FVC)によって測定される、肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の経口シクロホスファミドに対する有効性を決定することを含む。第2の目的は、(1)HAQ−DIによって測定される、肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の経口シクロホスファミドに対する有効性を決定すること、(2)mRSSによって測定される、肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の経口シクロホスファミドに対する有効性を決定すること、及び(3)一酸化炭素に対する肺の拡散能力(DLCO)によって測定される、肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の経口シクロホスファミドに対する有効性を決定することを含む。この臨床試験の詳細なプロトコル概要は表6に示される。
ヒト臨床試験5の目的は、(1)努力肺活量(FVC)によって測定される、強皮症の初期症状を有する、及び/または肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の経口シクロホスファミドに対する有効性を決定すること、(2)HAQ−DIによって測定される、強皮症の初期症状を有する、及び/または肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の経口シクロホスファミドに対する有効性を決定すること、(3)mRSSによって測定される、強皮症の初期症状を有する、及び/または肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の経口シクロホスファミドに対する有効性を決定すること、ならびに(4)DLCOによって測定される、強皮症の初期症状を有する、及び/または肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する個人に投与された単一用量レベルの抗CCL2/LOXL2抗体の経口シクロホスファミドに対する有効性を決定することを含む。この臨床試験の詳細なプロトコルの概要は、表7に示される。
抗CCL2/LOXL2抗体で治療された強皮症の初期症状を示す患者は、mRSS及びHAQ−DIによって測定されるとき、症状の大幅な改善を示すことが予想される。抗CCL2/LOXL2抗体で治療された肺疾患を伴う限局性またはびまん性強皮症を有する患者は、mRSS、HAQ−DI、及びFVCによって測定されるとき、症状の大幅な改善を示すことが予想される。抗CCL2/LOXL2抗体は、mRSS、HAQ−DI、及び/またはFVCによって測定されるとき、強皮症の初期症状、または肺疾患を伴う限局性もしくはびまん性強皮症のいずれかを有する患者の治療において、シクロホスファミドよりも有効であることが予想される。
実施例6:ブレオマイシン誘発線維症における抗CCL2及び抗LOXL2併用療法のインビボ有効性
この実施例は、2週間の時間経過にわたって強皮症の動物モデルにおける単一特異性抗CCL2及び抗LOXL2抗体の併用による炎症及び線維症の治療効果を説明する。線維症のマウスモデルにおける抗CCL2または抗LOXL2抗体及び併用療法(抗CCL2及び抗LOXL2抗体の両方)のいずれかを使用する単一療法の評価が行われた。長期ブレオマイシン14日ミニ浸透圧皮下ポンプが、薬物の有効性の転帰として、皮膚及び肺線維症に使用された。下に示されるように、両方の抗体を用いた併用療法は、皮膚及び肺線維症の両方において顕著な効果を示した。
簡潔に、ブレオマイシン14日ポンプマウスSSc皮膚及び肺線維症モデルは、薬物の有効性を試験するために使用された。雌のC57BL/6マウス群(n=5;8〜10週)は、7日間浸透圧ポンプを介してブレオマイシン(90U/Kg)またはPBS(n=3匹のマウス)に皮下曝露され、皮膚及び肺を14日目に採取した。ブレオマイシンに曝露されたマウスは、ポンプの挿入日に開始して14日目まで2週間、抗CCL2(用量2mg/Kg/2×/週)、抗LOXL2(用量15mg/Kg/2×/週)、またはIgG対照(用量17mg/Kg/2×/週)で腹腔内処置された。処置群は表8に記載される。
皮膚線維症の転帰測定
皮膚線維症における薬物の有効性を決定するために、マッソン3色染色によるヘマトキシリン−エオシン(H&E)及びコラーゲン沈着により、皮膚を分析した。加えて、潰瘍の存在は臨床的に評価され、皮膚の厚さは、Olympus DP70カメラ及びOLYMPUS(登録商標)Micro Suite Basicソフトウェアを使用して、各マウスからの4つの異なる皮膚切片における表皮−真皮境接合部及び真皮−皮下脂肪接合部との間の最大距離で測定された。組織切片は、盲検研究者によって分析された。
肺線維症の転帰測定
肺線維症の薬物の有効性を決定するために、組織学及び遺伝子発現が分析された。ガス注入肺は、ホルマリンに固定され、パラフィン中に包埋され、H&E、マッソン3色染色、及びアルギナーゼ−1で染色された。アシュクロフトスコア(Ashcroft et al.,1988,J.Clin.Pathol.41:467−470)は、盲目的にマッソン染色後に全ての群において分析された。アルギナーゼ−1染色も、盲目的にスライドごとに少なくとも4つの切片においてゼロから4まで記録された。各マウスにおけるAschroft及びアルギナーゼ−1の平均は、最終スコアとして使用された。
統計分析
遺伝子発現、特異的染色の組織学的分析、及び肺スコアの比較は、一元配置ANOVA及びボンフェローニの多重比較事後検定によって分析された。2群の比較は、スチューデントのT検定によって分析された。マイクロアレイ分析は、10%未満の標準偽発見率(FDR)に従い、処置試料を対照と比較した。0.05以下のP値は、統計学的に有意であると思われた。
結果
皮膚線維症
ミニ浸透圧ポンプを移植するための外科的処置は、マウスにおいて全体的に良好に忍容された。PBS処置群のマウス1匹は、18時間後に死亡し、これは、麻酔に起因した可能性がある。図6は、各処置群において観察された皮膚潰瘍のパーセンテージを示す。図7は、各処置群について測定された皮膚組織試料の厚さを示す。
図6に示されるように、PBSで処置されたマウスのいずれも、皮膚潰瘍を発達させなかった。対照的に、ブレオマイシンに曝露され、IgG(対照)または抗CCL2で処置された全てのマウスが皮膚潰瘍を発達させたが、ブレオマイシンに曝露され、抗LOXL2で処置された2匹のマウスのみが皮膚潰瘍を発達させた。併用療法群では、マウスのいずれも、皮膚潰瘍を発達させなかった。
図7に示されるように、皮膚の厚さは、対照(IgG)と比較して、単一及び併用療法(抗CCL2、抗LOX2、両方)において強力に抑制された。各群の平均倍数変化は、表9に記載される。
肺線維症
肺組織試料は、アシュクロフト法を用いて採点された(上述、図8)。アシュクロフトスコアは、盲目的に5つ全ての処置群の肺において分析された(表8)。各処置群のアシュクロフトスコアの平均値は、表10に記載される。全ての処置群にANOVA分析を使用して、併用療法群(両方)のみが、対照と比較して統計的に減少した(IgG;p<0.01)。対照群(IgG)及び抗CCL2群を比較したスチューデントのT検定は、有意ではなかったが、抗LOXL2処置群と比較して、対照群は、傾向を示した(p=0.07)。対照群対併用療法群は、減少した(p<0.01)。
アルギナーゼ−1肺染色
マクロファージ活性化の特異的マーカーであるアルギナーゼ1(Arg1)の染色が、各治療群の肺組織試料に対して行われた(図9)。発明者は、ブレオマイシン長期モデルがCD163染色に基づく肺におけるマクロファージの強い活性を示し、これは、CCL2欠損マウスにおいてほとんど消失されることを以前に観察した。したがって、肺への細胞流入のピークはブレオマイシンモデルの14日目に起こることが知られているため、処置後の全てのブレオマイシン曝露された群からの肺細胞におけるCD163+発現の分析が行われた。CD163+の強い発現は、ブレオマイシンへの曝露後の肺において確認された。
アルギナーゼ−1の発現は、各マウスの肺の少なくとも4つの切片において盲目的に定量化された。各処置群の平均アルギナーゼ−1スコアは、表11に記載される。アルギナーゼ−1染色は、アシュクロフトスコアと強く相関した(図10)。図11は、トリクロームで染色された肺組織試料の組織学的切片を示す。図12及び13は、アルギナーゼ1(Arg1)で染色された肺組織試料の組織学的切片を示す。
この実施例において示される、IgG及び抗CCL2処置群の全てのマウスは、皮膚潰瘍を含んだ。しかしながら、抗LOXL2処置群の5匹のうち2匹のマウスのみが、皮膚潰瘍を含んだ。興味深いことに、抗CCL2及び抗LOXL2抗体の両方を受けた処置群は、採取された皮膚組織において少しも潰瘍を示さなかった(図6を参照)。分散分析(ANOVA)は、単一治療(抗CCL2または抗LOXL2のいずれか単独)及び併用治療(抗CCL2及び抗LOXL2一緒)の両方の皮膚の厚さの減少がIgG治療群と比較して有意であったことを確認した(図7を参照)。したがって、抗CCL2及び抗LOXL2抗体を用いた併用療法による線維性疾患の治療は、ブレオマイシンで処置されたマウスにおいて、皮膚潰瘍の形成を停止するのに有効であり、皮膚組織の厚さを減少させるのに有効であった。
さらに、ANOVAは、抗CCL2及び抗LOXL2抗体を用いた併用療法が、IgG治療群と比較して(アシュクロフトスコアは約6)肺組織試料における線維症の程度(アシュクロフトスコアは約2)を大幅に減少させたことも確認する(図8を参照)。抗CCL2及び抗LOXL2抗体を用いた併用療法は、4つ全ての処置群の肺において最低レベルのマクロファージ活性化を示した(Arg1−染色、図9を参照)。
まとめると、これらのデータは、ブレオマイシン14日マウスモデルにおける抗CCL2、抗LOXL2単独、または併用での処置が、抗LOXL2抗体または抗CCL2及び抗LOXL2抗体の併用で処置されたときに観察された皮膚及び肺において最も強力な効果で皮膚及び/または肺線維症の減少を示したことを示す。よって、抗CCL2及び抗LOXL2抗体は、線維性または関連炎症性疾患(例えば、強皮症)、障害、もしくは状態の1つ以上の症状を効果的に処置及び/または寛解するために、併用して投与され得る。
等価物及び範囲
当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識する、または確認することができるだろう。本発明の範囲は上記の説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載される。
特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the」などの冠詞は、特に逆が示されない限り、またはさもなければ文脈から明らかである場合を除き、1つ以上を意味し得る。よって、例えば、「抗体(an antibody)」への言及は、複数のそのような抗体を含み、「細胞(the cell)」への言及は、当業者に知られる1つ以上の細胞の参照などを含む。群の1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、特に逆が示されない限り、またはさもなければ文脈から明らかである場合を除き、群のメンバーのうちの1つ、2つ以上、または全てが所与の製品またはプロセスに存在する、それに採用される、ないしは別の方法でそれに関連する場合に満たされると考えられる。本発明は、群のうちの正確に1つのメンバーが、所与の製品またはプロセスに存在する、それに採用される、ないしは別の方法でそれに関連する実施形態を含む。本発明は、群のメンバーのうちの2つ以上、または全てが所与の製品またはプロセスに存在する、それに採用される、ないしは別の方法でそれに関連する実施形態を含む。さらに、本発明は、列記される請求項のうちの1つ以上から1つ以上の制限、要素、節、記述用語等が別の請求項に導入される全ての変形、組み合わせ、及び置換を包含することを理解する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見られる1つ以上の制限を含むように修飾され得る。さらに、請求項が組成物を記載する場合、特に記載のない限り、または矛盾もしくは不一致が生じるであろうことが当業者に明らかである場合を除き、本明細書に開示される目的のいずれかのための組成物を使用する方法が含まれ、本明細書に開示されるものを作製する方法、または当該技術分野に既知の他の方法のいずれかに記載される組成物を製造する方法が含まれることを理解する。
要素が、リストとして、例えば、マーカッシュグループ形式で提示される場合、要素の各サブグループも開示され、任意の要素(複数化)がグループから削除され得ることを理解する。一般に、本発明または本発明の態様が、特定の要素、特徴等を含むように言及される場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、そのような要素、特徴等からなる、またはそれらから本質的になることを理解するべきである。簡略化の目的のため、これらの実施形態は、本明細書において、この通りの言葉で(in haec verba)具体的に記載されていない。用語「含む(comprising)」は、制約がないことが意図され、追加の要素またはステップの包含を可能にすることに留意する。
範囲が与えられている場合、エンドポイントは含まれる。さらに、特に記載されない限り、またはさもなければ文脈及び当業者の理解から明らかである場合を除き、範囲として表される値は、文脈が明確に示さない限り、その範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明の異なる実施形態の指定された範囲内の任意の特定の値または下位範囲をとることができることを理解する。
加えて、先行技術内に入る本発明の任意の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外され得ることを理解する。そのような実施形態は、当業者に既知であるとみなされるため、それらは、除外が本明細書に明示的に記載されていない場合でも除外され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意のHCV遺伝子型/亜型、任意のHCV抗体、任意のエピトープ、任意の薬学的組成物、任意の投与方法、任意の治療用途等)は、先行技術の存在に関連するか否かに関わらず、いかなる理由でも、任意の1つ以上の請求項から除外され得る。
上記および本文全体を通して論じられる刊行物は、単に本願の出願日前のそれらの開示のために提供される。本明細書のいずれも、発明者が先行開示によってそのような開示に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。
他の実施形態
当業者は、前述が単に本発明のある特定の好ましい実施形態を表すことを容易に理解するであろう。上述の手順及び組成物に対する様々な変更及び修正は、以下の特許請求項の範囲に記載されるように、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく行うことができる。
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲において明らかである。しかしながら、詳細な説明、図面、および特許請求の範囲は、本発明の実施形態を示すが、単に例示のためであり、限定されないことを理解するべきである。本発明の範囲内での様々な変更および修正が、当業者に明らかになるであろう。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
LOXL2に特異的に結合する第1の抗原結合部位、及びCCL2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、二重特異性抗体。
(項目2)
前記第1の抗原結合部位が、1pM以上の結合親和性でLOXL2に特異的に結合する、項目1に記載の前記二重特異性抗体。
(項目3)
前記第2の抗原結合部位が、500nM〜1fMの範囲の結合親和性でCCL2に特異的に結合する、項目1または2に記載の前記二重特異性抗体。
(項目4)
前記第2の抗原結合部位が、500pMより大きい結合親和性でCCL2に特異的に結合する、項目1または2に記載の前記二重特異性抗体。
(項目5)
前記第2の抗原結合部位が、1pMより大きい結合親和性でCCL2に特異的に結合する、項目4に記載の前記二重特異性抗体。
(項目6)
前記第1の抗原結合部位が、第1の完全長重鎖及び第1の完全長軽鎖を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目7)
前記第1の抗原結合部位が、第1のFab断片を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目8)
前記第1の抗原結合部位が、第1の単鎖可変断片(scFv)を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目9)
前記第2の抗原結合部位が、第2の完全長重鎖及び第2の完全長軽鎖を含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目10)
前記第2の抗原結合部位が、第2のFab断片を含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目11)
前記第2の抗原結合部位が、第2の単鎖可変断片(scFv)を含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目12)
前記第1及び第2の抗原結合部位が、ペプチドリンカーにより連結される、項目1〜11のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目13)
前記ペプチドリンカーが、5アミノ酸長以上である、項目12に記載の前記二重特異性抗体。
(項目14)
前記第1及び第2の抗原結合部位が、それらが単一ポリペプチド鎖を形成するように構成される、項目1〜13のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目15)
前記第1及び第2の抗原結合部位が、化学架橋を介して関連付けられる、項目1〜14のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目16)
前記二重特異性抗体が、Fc領域を含む、項目1〜15のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目17)
前記二重特異性抗体が、ヒト化される、項目1〜16のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体。
(項目18)
項目1〜17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体及び薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
(項目19)
強皮症に罹患する、またはそれに感受性である個人に、項目1〜17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を投与することを含む、強皮症を治療する方法。
(項目20)
前記二重特異性抗体が、標的組織の強皮症の少なくとも1つの症状または特徴が強度、重篤度、もしくは頻度において低減されるか、またはその開始が遅延されるような治療有効用量及び投与間隔で投与される、項目19に記載の前記方法。
(項目21)
内皮細胞損傷、基底膜層の増殖、血管周囲単核細胞浸潤、線維症、内臓器官構造障害、血管の稀薄化、低酸素症、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない前記強皮症の少なくとも1つの病理学的特徴が、寛解される、項目20に記載の前記方法。
(項目22)
前記標的組織が、皮膚、血管、肺、心臓、腎臓、胃腸管(肝臓を含む)、筋骨格系、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目20または21に記載の前記方法。
(項目23)
前記標的組織が、肺である、項目20〜22のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目24)
前記標的組織が心臓である、項目20〜22のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目25)
前記個人が、限局性皮膚強皮症に罹患している、またはそれに感受性である、項目19〜24のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目26)
前記個人が、びまん性皮膚強皮症に罹患している、またはそれに感受性である、項目19〜24のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目27)
前記二重特異性抗体が、非経口投与される、項目19〜26のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目28)
前記非経口投与が、静脈内、皮内、吸入、経皮(局所)、皮下、及び/または経粘膜投与から選択される、項目27に記載の前記方法。
(項目29)
前記非経口投与が、静脈内投与である、項目28に記載の前記方法。
(項目30)
前記二重特異性抗体が、経口投与される、項目19〜26のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目31)
前記二重特異性抗体が、隔月、毎月、3週間に1回、隔週、毎週、毎日、または様々な間隔で投与される、項目19〜30のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目32)
前記二重特異性抗体が、1つ以上の抗線維化剤と共投与される、項目19〜31のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目33)
前記二重特異性抗体が、1つ以上の抗炎症剤と共投与される、項目19〜32のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目34)
線維性疾患、障害、または状態を治療する方法であって、
線維性疾患、障害、または状態に罹患している、またはそれに感受性である個人に、項目1〜17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を投与することを含む、前記方法。
(項目35)
前記線維性疾患、障害、または状態が、皮膚線維症、腎線維症、肝線維症、肺線維症、心線維症、筋線維症、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目34に記載の前記方法。
(項目36)
炎症性疾患、障害、または状態を治療する方法であって、
炎症性疾患、障害、または状態に罹患している、またはそれに感受性である個人に、項目1〜17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を投与することを含む、前記方法。
(項目37)
前記炎症性疾患、障害、または状態が、乾癬、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、てんかん、アルツハイマー病、肥満症、ループス腎炎、一般的な腎炎、多発性硬化症、クローン病、喘息、円板状エリテマトーデス、炎症性腸疾患、または全身性エリテマトーデスからなる群から選択される、項目36に記載の前記方法。
(項目38)
強皮症を治療する方法であって、強皮症に罹患する、またはそれに感受性である個人に、
抗CCL2抗体またはその断片、及び
抗LOXL2抗体またはその断片を投与することを含む、前記方法。
(項目39)
前記抗CCL2抗体またはその断片、及び前記抗LOXL2抗体またはその断片が、同時投与される、項目38に記載の前記方法。
(項目40)
前記抗CCL2抗体またはその断片、及び前記抗LOXL2抗体またはその断片が、順次投与される、項目38に記載の前記方法。
(項目41)
前記抗CCL2抗体またはその断片が、1nM以上の結合親和性を有する、項目38〜40のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目42)
前記抗CCL2抗体またはその断片が、1pM以上の結合親和性を有する、項目38〜40のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目43)
前記抗LOXL2抗体またはその断片が、1pM以上の結合親和性を有する、項目38〜42のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目44)
前記抗CCL2抗体またはその断片が、無傷のIgG、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、ScFv、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、及びテトラボディ(tetrabodies)からなる群から選択される、項目38〜43のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目45)
前記抗LOXL2抗体またはその断片が、無傷のIgG、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、ScFv、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディからなる群から選択される、項目38〜44のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目46)
前記抗CCL2抗体またはその断片及び前記抗LOXL2抗体またはその断片のうちの1つ、または両方が、ヒト化される、項目38〜45のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目47)
前記抗CCL2抗体またはその断片及び前記抗LOXL2抗体またはその断片が、同じ投与経路を介して投与される、項目38〜46のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目48)
前記抗CCL2抗体またはその断片及び前記抗LOXL2抗体またはその断片が、異なる投与経路を介して投与される、項目38〜46のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目49)
前記抗CCL2抗体または断片が、静脈内、皮内、吸入により、経皮(局所)、皮下、経粘膜、及び/または経口投与される、項目38〜48のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目50)
前記抗CCL2抗体またはその断片が、隔月、毎月、3週間に1回、隔週、毎週、毎日、または様々な間隔で投与される、項目38〜49のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目51)
前記抗LOXL2抗体または断片が、静脈内、皮内、吸入により、経皮(局所)、皮下、経粘膜、及び/または経口投与される、項目38〜50のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目52)
前記抗LOXL2抗体またはその断片が、隔月、毎月、3週間に1回、隔週、毎週、毎日、または様々な間隔で投与される、項目38〜51のいずれか一項に記載の前記方法。
(項目53)
線維性疾患、障害、または状態を治療する方法であって、線維性疾患、障害、または状態に罹患している、またはそれに感受性である個人に、
抗CCL2抗体またはその断片、及び
抗LOXL2抗体またはその断片を投与することを含む、前記方法。
(項目54)
炎症性疾患、障害、または状態を治療する方法であって、炎症性疾患、障害、または状態に罹患している、またはそれに感受性である個人に、
抗CCL2抗体またはその断片、及び
抗LOXL2抗体またはその断片を投与することを含む、前記方法。
(項目55)
抗CCL2抗体またはその断片、及び
抗LOXL2抗体またはその断片を含む、キット。