JP2016520375A - 脳のコヒーレンスおよびシンクロニーの指標を使用して麻酔および鎮静を監視するためのシステムおよび方法 - Google Patents
脳のコヒーレンスおよびシンクロニーの指標を使用して麻酔および鎮静を監視するためのシステムおよび方法 Download PDFInfo
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Abstract
麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与を監視および制御するためのシステムおよび方法が提供される。特定の実施形態において、本方法は、被験者に配置された複数のセンサから得られる生理学的データを時系列データの組へと集めるステップと、該時系列データの組から複数の低周波数信号を分離するステップと、該複数の低周波数信号からコヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を割り出すステップとを含む。さらに本方法は、コヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を使用して、麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与に合致した患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を表す空間時間的特徴を特定するステップと、前記薬剤によって引き起こされる患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を示すレポートを生成するステップとを含むことができる。【選択図】図1B
Description
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年4月23日付の「SYSTEM AND METHOD FOR MONITORING GENERAL ANESTHESIA AND SEDATION USING ELECTROENCEPHALOGRAM MEASURES OF BRAIN COHERENCE AND SYNCHRONY」という名称の米国特許仮出願第61/815,141号にもとづき、この米国特許仮出願の優先権を主張し、この米国特許仮出願の全体をここでの言及によって援用する。
本出願は、2013年4月23日付の「SYSTEM AND METHOD FOR MONITORING GENERAL ANESTHESIA AND SEDATION USING ELECTROENCEPHALOGRAM MEASURES OF BRAIN COHERENCE AND SYNCHRONY」という名称の米国特許仮出願第61/815,141号にもとづき、この米国特許仮出願の優先権を主張し、この米国特許仮出願の全体をここでの言及によって援用する。
(連邦政府の支援による研究に関する言明)
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって与えられたDP2−OD006454号、TR01−GM104948号、およびT32GM007592号のもとでの政府の支援によってなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって与えられたDP2−OD006454号、TR01−GM104948号、およびT32GM007592号のもとでの政府の支援によってなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
本発明は、広くには、患者の状態を監視および制御するためのシステムおよび方法に関し、さらに詳しくは、麻酔化合物の投与を受け、より口語的には「麻酔」の投与を受ける患者の状態を監視および制御するためのシステムおよび方法に関する。
麻酔学の実務は、無意識、記憶喪失、無痛覚、および不動と、全身麻酔を定める生理学的な安定性の維持との必要な組み合わせを達成するための、中枢神経系の直接的な薬理学的処置を含む。臨床における麻酔薬の使用の増加および麻酔性を有する化合物の数の増加につれて、麻酔のもとにあるときの体の機能の科学的な理解が、ますます重要になってきている。例えば、患者への麻酔の影響および麻酔の一連の「レベル」における患者の脳の働きについて、完全な理解が未だ欠けている。麻酔の投与を受ける患者を監視する際に臨床医が用いるツールとして、手術室および集中治療室において全身麻酔または鎮静を受ける患者の意識レベルの追跡に役立つように開発された脳波図(EEG)にもとづく監視装置が挙げられる。
しかしながら、患者の状態を正確に監視および定量化し、それにもとづいて麻酔化合物の投与の際の患者の状態を制御するためのシステムおよび方法を提供するシステムおよび方法について、明らかなニーズが依然として存在している。
本発明は、脳のコヒーレンス(coherence)およびシンクロニー(synchrony)の指標を使用し、麻酔化合物の投与および制御に関して脳の状態を監視および制御するためのシステムおよび方法を提供することによって、これまでの技術の欠点を克服する。
本発明の一態様においては、麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与を受けている患者を監視するためのシステムが提供される。本システムは、患者から生理学的データを取得するように構成された複数のセンサと、患者および麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の特徴のうちの少なくとも1つの指示を受け取るように構成されたユーザインターフェイスとを備える。さらに本システムは、複数のセンサからの生理学的データおよびユーザインターフェイスからの指示を受け取り、生理学的データを時系列データの組へと集め、時系列データの組から複数の低周波数信号を分離するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備える。少なくとも1つのプロセッサは、複数の低周波数信号からコヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を割り出し、コヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を使用して、麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与に合致した患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を表す空間時間的特徴を特定するようにさらに構成される。少なくとも1つのプロセッサは、薬剤によって引き起こされる患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を示すレポートを生成するようにさらに構成される。
本発明の別の態様においては、麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与を受けている患者を監視するための方法が提供される。本方法は、患者から生理学的データを取得するように構成された複数のセンサを配置するステップと、複数のセンサからの生理学的データおよびユーザインターフェイスからの指示を精査するステップと、生理学的データを時系列データの組へと集めるステップとを含む。
さらに本方法は、時系列データの組から複数の低周波数信号を分離するステップと、複数の低周波数信号からコヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を割り出すステップと、コヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を使用して、麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与に合致した患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を表す空間時間的特徴を特定するステップとを含む。さらに本方法は、薬剤によって引き起こされる患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を示すレポートを生成するステップを含む。
本発明の以上の利点および他の利点が、以下の説明から明らかになるであろう。説明においては、本明細書の一部を構成し、本発明の好ましい実施形態を例示として示している添付の図面が参照される。しかしながら、そのような実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を表しておらず、したがって本発明の技術的範囲の解釈においては、特許請求の範囲および本明細書が参照される。
本発明を、以下で、添付の図面を参照して説明する。添付の図面において、類似の参照番号は、類似の構成要素を指し示している。
麻酔薬の基礎にある一般的な分子および薬理学的原理の特定における大きな進歩にもかかわらず、種々の分子標的おける作用がどのように大規模な神経ダイナミクスに影響を及ぼして無意識を生み出すのかは、未だ明確ではない。したがって、麻酔専門医は、典型的には、麻酔の効果を認識し、投与される麻酔の特定済みの効果にもとづいて、所与の患者における麻酔の影響の「レベル」の推定を外挿するように訓練されている。
スペクトルおよびエントロピの測定を組み合わせる独自のアルゴリズムを使用して、監視システムは、典型的には、取得される信号の部分的または混合表現によってフィードバックを提供する。例えば、多数のシステムは、麻酔の投与を受ける患者の生理学的応答を定量化することによって、患者の麻酔の深さをただ1つの無次元の指数によって伝達する。しかしながら、現時点において利用されている指数は、一般に、意識のレベルに間接的にしか関係しておらず、異なる薬物は異なる神経機構を通じて作用し、異なる変化後の意識状態に関連した異なる脳波図(「EEG」)の特徴を生み出すことに鑑み、そのような手法は、最良でも定性的でしかあり得ない。結果として、いくつかのEEGにもとづく麻酔の深さの指標は、患者の脳の状態を充分に表していないだけでなく、患者内および患者間で同様の数値であっても実際の脳の状態および覚醒のレベルがきわめて様々であることが示されている。したがって、当然ながら、これらの監視装置は、麻酔深度監視装置にもとづかない手法と比べて、手術中の覚醒の発生を減らすうえで有効でない。
実務において、臨床医が使用する1つの一般的なプロセスは、「バーストサプレッション」の表れを識別するためにEEGの表示を監視することである。バーストサプレッションは、脳においてニューロン活動、代謝率、および酸素消費のレベルが大幅に低下したときに観測され得るEEGパターンの例である。例えば、バーストサプレッションは、深い全身麻酔の状態において一般的に見られる。全身麻酔下の患者の深い状態の一例は、医学的な昏睡である。バーストサプレッションパターンは、多くの場合、電気的活動の突発(bursts)の期間と、平坦または抑制されたEEGの期間とが交互に存在することによって現れる。種々の臨床の状況が、重篤な発作、すなわちてんかん重積状態の処置、ならびに外傷または低酸素による脳の損傷、無酸素による脳の障害、低体温、および特定の発達障害の後の脳の保護など、脳の保護の目的で、医学的な昏睡を必要とする。バーストサプレッションは、そのような怪我、疾患、または医学的介入からもたらされる特定の脳状態を表す。
バーストサプレッションの定量化を試みる伝統的なシステムおよび方法は、2つの段階にて進行する。第1に、バーストサプレッションの特徴が、取得されたデータにおいて特定され、バーストおよびサプレッションの事象が、2進法の時系列フォーマットへの変換によってEEGアーチファクトから隔離または分離される。第2に、これらのシステムおよび方法は、バーストサプレッションのレベルの定量化を試みる。例えば、いくつかの市販の脳監視装置は、バーストサプレッションの状態を特定および追跡するためのアルゴリズムの一部として、いわゆる「バーストサプレッション比」(「BSR」)を使用し、ここでBSRは、所与の時間間隔のうちのEEG信号が抑制されていると称される時間の割合に関する量である。
例えばBSRなどの指標を使用してバーストサプレッションを定量的に分析することの重要性は、広く理解されているが、いくつかの場合に、バーストサプレッションだけを分析することは、意識の状態を正確には示さない可能性がある。例えば、たとえ2進値を100ミリ秒または1ミリ秒ごとという短い間隔で計算できたとしても、BSRの計算にこれらの2進値の数秒が使用されることは珍しくない。これは、BSRが計算されている期間のずっと、脳の状態が安定なままであると仮定している。全身麻酔または低体温の誘導時や、病状の急変の場合など、脳活動のレベルが急に変化する場合には、この仮定が当てはまらない可能性がある。代わりに、バーストサプレッションのレベルの計算を、2進値の事象の記録の分解能に一致させなければならない。残念ながら、これは、アルゴリズムの設計者にとって、実施における困惑をもたらす。すなわち、設計は時間間隔が定まらないとBSRを計算することができないが、真の間隔は、計算されるべきBSRを知ることで最も良好に選択されると考えられる。
EEGの2進値時系列への変換に用いられる区分アルゴリズムが製造者ごとに異なることが、そのようなBSRアルゴリズムの臨床における使用の困難をさらに悪化させている。したがって、異なる製造者からの異なる装置は、異なるBSRの推定を生む。装置/製造者にまたがって結果を比較することが、多くの場合に難題である。さらなる臨床における課題として、バーストサプレッションが定量的に追跡されるあらゆる状況において、重要な目的は、種々の時点における公式な統計比較を行うことである。しかしながら、数秒の間隔にわたって2進値の事象を平均することによって推定されるBSRの統計的特性は、未だ説明されていない。結果として、バーストサプレッションの公式な統計的分析において現在のBSRの推定を使用する原理的なやり方は、存在していない。すなわち、現在のBSR手順を使用して2つ以上の脳状態が互いに異なると所定の確からしさで明言できるような公式な統計的分析および公式な統計的分析を実施するための所定の手順が欠けている。
これらの監視システムの欠点は、それらが臨床医による判断の根拠となる情報源として使用されることが多いという事実によって悪化する。例えば、図1Aを参照すると、ある量の麻酔の患者への投与を含む「薬剤注入」を示す概略図が示されている。患者からのフィードバックが、「バーストサプレッションレベル」の表示を提供することによってバーストサプレッションの特定および定量化を試みる上述の監視システムなどの監視システムによって集められる。「バーストサプレッションレベル」は、一般に、監視装置の表示装置を眺める臨床医によって知覚されるバーストサプレッションの量である。次いで、この「バーストサプレッションレベル」は、示された「バーストサプレッションレベル」にもとづいて薬剤注入レベルを調節することによってフィードバックループの制御として機能する臨床医への入力として機能する。この簡単な例は、監視システムによって示される「バーストサプレッションレベル」における誤差または全体的な不正確、ならびに/あるいは臨床医による誤った解釈または仮定が、薬剤注入プロセスの制御のすでに不正確であるプロセスをさらに悪化させる可能性を示している。そのような不正確は、一部の状況においては許容されるかもしれないが、他の状況においてはきわめて好ましくない。
例えば、いくつかの臨床の状況において、患者をいわゆる「医療昏睡」の状態にすることが望まれる可能性がある。そのようにするため、バーストサプレッションが、特定の仕様を満たすように薬剤注入を手動で調節することによって引き起こされる。これらの注入の制御は、看護スタッフが頻繁に目視で注入ポンプおよびEEG波形を監視し、所望のEEGパターンを達成および維持するように麻酔薬の注入速度を滴定することを必要とする。患者の所望の脳状態の緻密な制御を維持するようなやり方で薬剤注入の速度に対するEEG波形の評価を続けることは、看護スタッフにとって非現実的である。
これらの臨床における課題を踏まえて、臨床医を補助するためのフィードバックおよび制御システムの開発が試みられている。例えば、Bickfordが、60年以上前に、EEGにもとづく閉ループ麻酔薬投与(closed loop anesthetic delivery)(「CLAD」)システムを提案している。例えば、初期のCLADシステムの簡単な概念図が、図1Bに示されている。1950年代のBickfordのオリジナルのCLADシステムは、現在の「麻酔深度」102を示す制御信号として特定の周波数帯のEEGコンテンツ100を使用している。麻酔深度102が、「目標麻酔深度」104と比較され、薬剤注入106を増やすべきか、あるいは減らすべきかが判断される。このように、患者108へともたらされる麻酔薬を制御するための閉ループシステムが提案されている。
提案されたCLADシステムのより後の具現化は、より高度なEEG分析を使用している。例えば、制御信号として特定の周波数帯に単純に頼る代わりに、中央周波数およびスペクトルエッジあるいはパワースペクトログラムの50番目および95番目の分位値などの指標を使用するシステムが提案されている。研究において、周波数成分およびその関連の範囲と対応する全身麻酔の深度との間の強い関係が観測されている。提案されている他の可能な制御信号として、誘発電位あるいは心拍および血圧などの生理学的応答が挙げられる。そのようなシステムの商業的開発は、1980年代までは真剣には始まらなかったが、今や麻酔学の実務におけるCLADシステムの使用について、多数の臨床研究が存在しており、EEGを使用しない鎮静のためのシステムが、今や市販されている。
CLADシステムは、長年にわたって存在し、今や米国外の麻酔学の実務において使用されているが、近年の報告は、これらのシステムにおけるいくつかの課題が、未だ完全には対処されていないことを示唆している。第1に、EEGパターンを全身麻酔下の脳状態の指標として使用できることが、1937年から認識されている。これまでに、種々の麻酔薬または薬の組み合わせがどのように患者の状態を変化させるのか、およびそのような変化がEEG波形および他の生理学的特徴にどのように現れるのかについての明確に定義されたマーカの生成に関して、EEG波形の充分に詳細な定量的分析は実行されていない。
そのような課題と戦う試みにおいて、いわゆるバイスペクトルインデックス(Bispectral Index)(「BIS」)が、全身麻酔下の脳状態を追跡し、CLADシステムのための制御信号をもたらすためのEEGにもとづくマーカとして使用されている。BISは、EEG波形のスペクトルおよびバイスペクトル特徴を計算することによって導出される。特徴が、0−100の間のインデックスを導出するための独自のアルゴリズムに入力され、ここで100は薬剤の影響がない完全に目覚めた状態に相当し、0は最も深い昏睡状態に相当する。上述のように、BISは、多くの場合に、監視システムによって取得されたデータの解釈において臨床医が頼りにする一般的なただ1つのインジケータとして役立つ。すなわち、臨床医は、単にBIS表示に頼り、臨床における決定を行う。
制御信号として、BISは、同じBIS値が複数の異なる脳状態によって生み出される可能性があるため、本質的に限られた成功しか有することができない。イソフルレンおよび酸素による全身麻酔下の患者、デクスメデトミジンによる鎮静の患者、ならびにステージIIIまたは徐波の睡眠の患者は、いずれも手術が実行されるBIS区間である40−60の範囲のBIS値を有する可能性がある。これら3つの患者のうち、第1の患者だけが、「全身麻酔」の状態にあり、手術の実行に適すると考えられる。この文脈において、「全身麻酔」は、生理学的な安定性が維持された無意識、記憶喪失、無痛覚、無動を指す。同様に、単独または他の麻酔薬との組み合わせにおけるケタミンで麻酔された患者は、全身麻酔の状態にあるにもかかわらず、覚醒または軽い鎮静状態を示唆する高いBIS値を示す。それでもなお、大部分の報告は脳状態の制御の成功を主張しているが、そのような制御は、個人の被験者およびリアルタイムでの実施を含む研究において、確実に実証されてはいない。
第2に、BISを使用して通常、手術、および集中治療室の状況下での麻酔薬に応答した個人の変動、したがってEEGパターンの個人の変動を考慮することは、難題である。第3に、市販の麻酔状態監視装置によるEEGの処理は、リアルタイムに実行されるのではなく、20−30秒の遅延を伴って実行される。対照的に、本明細書に提示のコヒーレンスおよびシンクロニー法は、後述のように、例えば4秒などの1ウインドウ分のデータを取得するための時間長と、その後の1秒よりもはるかに短い処理時間しか必要としない可能性がある。第4に、CLADシステムは、それらの設計において公式な決定論的または確率論的な制御の理論的枠組みの代わりに、その場しのぎ(ad−hoc)のアルゴリズムを使用する。結果として、CLADシステムが実行されている報告は、信頼できる再現性のある制御結果を示していない。実際、制御成功の外観を与えるために、CLAD性能のプロットにおいて何名かの被験者の結果が平均されていることが多い。最後に、CLADシステムの設計のために、確立された制御原理の理論的な使用が提案されている。しかしながら、そのような提案は、EEGからの麻酔深度のウェーブレットにもとづく指標の導出を提案しており、すなわち基本的にBISに類似した制御信号を提案している。率直に言うと、EEGパターンと全身麻酔下の脳状態との間にどのような関係があるかについて神経生理学の理解がさらに進むまで、広く適用することができるCLADシステムの開発は、難しい課題である。この点において、上述のように、BSRなどの指標は同様の限界を抱えており、したがって少なくとも上述した理由で、広く適用することができるCLADシステムの開発に適していない。
おそらくはEEG波形の複雑性および制御システムとしてのBISの欠点を認識して、VijnおよびSneydは、異なる指標、すなわちBSRを制御信号として使用するラット用のCLADシステムを設計した。BSRは、EEGが所定の電圧しきい値未満に抑制された時期(epoch)ごとの時間の割合として定義される。BSRは、抑制がないことを意味する0から、平坦なEEGを意味する1までの範囲である。そのような研究の目的は、CLADシステムにおける新規な薬剤の性能が薬剤の設計についての有用な情報をもたらすことができるか否かを判断するために、CLADシステムの設計へのモデルなしの手法を開発することであった。彼らは、比例および積分項の所産である非標準的な決定論的制御戦略を使用して彼らの誤差信号を処理した。著者らは、彼らのCLADシステムがプロポフォールおよびエトミデートの両方についてBSRの制御を維持したと主張しているが、彼らは、単一の動物ではなく、ラットの群について平均されたBSRの時間経過を報告している。VijnおよびSneydのCLADシステムは、ラットにおけるBSRの制御における新規なエトミデートにもとづく麻酔薬の効能を試験するために、Cottenらによって近年に実施された。これらの著者も、平均の時間経過しか報告していない。したがって、医療昏睡のレベルを維持するための人体実験またはICUにおけるバーストサプレッションを制御するためのCLADシステムの使用についての研究が欠けているように思われる。
さらに、効果および有効性に影響を及ぼし、それに関連して所与の患者への麻酔の影響の「レベル」に影響を及ぼし得る多数の変数の存在が、問題を複雑にする。したがって、閉ループ制御システムは、薬剤注入が多数の変数のうちのいずれかを考慮しない場合に、失敗する可能性がある。いくつかの変数として、年齢、全体的な健康状態、身長、または体重などの患者の物理的特性の他、例えば麻酔下にあるときの患者の以前の経験にもとづいて外挿されるより自明でない変数が挙げられる。これらの変数が、所与の制御システムまたは方法の変数、ならびに特定の麻酔化合物または麻酔化合物の組み合わせによって与えられる変数と混合されるとき、所与の患者への麻酔の適切かつ効果的な投与は、科学と言うよりはむしろ芸術となり得る。
さらに、CLADシステムなどのシステムによって制御されるか、より伝統的な臨床医ごとの制御によるかにかかわらず、全身麻酔からの脱出は、単純に薬剤の影響が徐々に減少することを許容することによって達成される低速な受動プロセスである。麻酔からの脱出は、麻酔薬を手術の終わりにおいて中止するだけで、それらの脳および中枢神経系への影響を積極的に逆にするいかなる薬剤も投与しない受動的なプロセスである。すなわち、全身麻酔薬が手術の終わりにおいて中止されるだけであり、麻酔専門医および執刀医は、患者の意識の回復を待たなければならない。回復のタイミングは、手術の性質および継続時間、ならびに患者の年齢、物理的状態、および体質などの多数の因子が、全身麻酔薬の薬物動態および薬力学に大きく影響する可能性があるがゆえに、予測不可能となり得る。麻酔学において使用される多数の薬剤の作用は、もはや所望されないときに薬理学的に反対にすることが可能である(例えば、筋弛緩薬、オピオイド、ベンゾジアゼピン、および抗凝血剤)が、全身麻酔によって引き起こされる意識の喪失には当てはまらない。麻酔の作用を積極的に逆にするためのいくつかの基本的考え方が検討されているが、それらの伝統的な監視システムおよび制御方法への移転は、これらの監視および制御方法が通常は一方向性であるため、充分には行われていない。例えば、意識の状態の高まりを判断するためにバーストサプレッションにもとづく指標を使用することは、最良でも直感に反する。したがって、積極的に制御された回復を促進するための制御アルゴリズムが開発されていないことは、驚くべきことではない。
後述されるように、本発明は、これまでの技術の欠点を克服し、1つ以上の麻酔化合物の投与中および投与後の患者の状態を監視および制御するためのシステムおよび方法を提供する。
図面を具体的に参照すると、図2Aおよび2Bが、意識の喪失または回復の検出を備えつつ意識の状態の監視などの患者の状態の生理学的な監視および制御を提供するために使用することができる典型的な患者監視システムおよびセンサのブロック図を示している。
例えば、図2Aは、生理学的監視システム10の実施形態を示している。生理学的監視システム10において、医療の患者12が、各々がケーブル15あるいは他の通信リンクまたは媒体を介して生理学的モニタ17へと信号を送信する1つ以上のセンサ13を使用して監視される。生理学的モニタ17は、プロセッサ19を備えており、さらに随意により表示装置11を備える。1つ以上のセンサ13は、例えば電気EEGセンサなどの検出素子を含む。センサ13は、患者12の生理学的パラメータを測定することによってそれぞれの信号を生成することができる。次に、信号は、1つ以上のプロセッサ19によって処理される。次いで、1つ以上のプロセッサ19は、処理後の信号を、表示装置11が設けられる場合には表示装置11へと通信する。一実施形態において、表示装置11は、生理学的モニタ17に組み込まれる。別の実施形態において、表示装置11は、生理学的モニタ17から切り離されている。監視システム10は、一構成においては、可搬の監視システムである。別の事例において、監視システム10は、表示装置を持たないポッド(pod)であり、生理学的パラメータデータを表示装置へと提供するように構成される。
分かりやすくするために、図2Aに示される1つ以上のセンサ13を示すために、ブロックが1つだけ使用されている。図示のセンサ13が、1つ以上のセンサを代表するように意図されていることを、理解すべきである。一実施形態において、1つ以上のセンサ13は、後述される種類のうちの一種類のただ1つのセンサを含む。別の実施形態において、1つ以上のセンサ13は、少なくとも2つのEEGセンサを含む。さらに別の実施形態において、1つ以上のセンサ13は、少なくとも2つのEEGセンサおよび1つ以上の脳酸素センサなどを含む。以上の実施形態の各々において、別の種類の追加のセンサが、随意によりさらに含まれる。センサの数および種類の他の組み合わせも、生理学的監視システム10における使用に適する。
図2Aに示したシステムのいくつかの実施形態において、センサからの信号の受信および処理に使用されるすべてのハードウェアは、同じハウジング内に収容される。他の実施形態においては、信号の受信および処理に使用されるハードウェアの一部が、別のハウジング内に収容される。さらに、特定の実施形態の生理学的モニタ17は、センサ13によって送信される信号の受信および処理に使用されるハードウェア、ソフトウェア、あるいはハードウェアおよびソフトウェアの両方を、1つのハウジングまたは複数のハウジングに備える。
図2Bに示されるように、EEGセンサ13は、ケーブル25を含むことができる。ケーブル25は、電気シールド内に3つの導体を備えることができる。1つの導体26が、生理学的モニタ17へと電力を供給でき、1つの導体28が、生理学的モニタ17へとグランド信号を供給でき、1つの導体28が、センサ13からの信号を生理学的モニタ17へと伝送することができる。複数のセンサにおいては、1つ以上のさらなるケーブル15を設けることができる。
いくつかの実施形態において、グランド信号は接地であるが、他の実施形態においては、グランド信号が、患者基準、患者基準信号、帰還、または患者帰還と称されることもある患者グランドである。いくつかの実施形態においては、ケーブル25が、電気シールド層内に2つの導体を有し、シールド層がグランド導体として機能する。ケーブル25の電気インターフェイス23が、ケーブルを生理学的モニタ17のコネクタ20内の電気インターフェイス21へと電気的に接続することを可能にできる。別の実施形態においては、センサ13と生理学的モニタ17とが、無線で通信する。
次に図3Aを参照すると、麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与時および投与後の患者を監視および制御するための典型的なシステム310が示されている。システム310は、脳波記録(EEG)電極アレイとして図3Aに示されている生理学的監視装置などの患者監視装置312を含む。しかしながら、患者監視装置312は、例えば外的刺激への覚醒を測定するために電気皮膚反応(GSR)を監視するための機構、あるいは心電計および血圧モニタを含む心臓血管モニタならびに眼球微動モニタなどの他の監視システムを、さらに含んでもよいと考えられる。この設計の1つの具体的な実現は、前頭部ラプラシアンEEG電極レイアウトを、GSRおよび/または眼球微動を測定するためのさらなる電極とともに利用する。この設計の別の実現は、すでに述べたEEGの特徴を最適に検出することが明らかな電極の任意の組み合わせを得るために事後処理において組み合わせることができる電極の前頭部アレイを備え、さらに別のGSR電極を備える。この設計の別の実現は、発生源の位置特定の目的で64−256個のセンサを使用する全頭皮表面をサンプリングする高密度レイアウトを、別のGSR電極とともに利用する。
患者監視装置312は、可搬のシステムまたは装置(図3Bに示されるとおり)であってよい監視システム316と通信するようにケーブル314を介して接続されてよく、患者から取得される生理学的データの入力を監視システム316へと提供する。また、ケーブル314および同様の接続を、構成要素間の無線接続によって置き換えることができる。図3Aに示されるとおり、監視システム316を、専用の分析システム318へとさらに接続することができる。また、監視システム316および分析システム318を、統合することも可能である。
監視システム316を、EEG電極アレイによって取得される生の信号を受信し、それら生の信号をEEG波形として集め、場合によっては表示するように構成することができる。したがって、分析システム318は、監視システム316からEEG波形を受信し、後述されるように選択された麻酔化合物にもとづいてEEG波形およびEEG波形内の特徴を分析し、分析されたEEG波形および特徴にもとづいて患者の状態を判断し、レポートを例えば印刷によるレポートとして生成でき、あるいは好ましくは特徴情報および判断された状態のリアルタイムの表示として生成することができる。しかしながら、監視システム316および分析システム318の機能を、共通のシステムへと組み合わせることも可能であると考えられる。一態様において、監視システム316および分析システム318を、脳のコヒーレンスおよびシンクロニーの指標にもとづいて、全身麻酔または鎮静の最中などの麻酔化合物の投与下の現在および将来の脳の状態を判断するように構成することができる。
いくつかの構成において、システム310は、薬剤投与システム320をさらに含むことができる。薬剤投与システム320を、システム310が閉ループの監視および制御システムを形成するように、分析システム318および監視システム316に組み合わせることができる。本発明によるそのような監視および制御システムは、幅広い範囲の動作が可能であるが、監視および制御システムを設定し、監視および制御システムからのフィードバックを受信し、必要であれば監視および制御システムを設定変更および/または上書きするための入力または指示をユーザがもたらすことを可能にするユーザインターフェイス322を備える。
とくに図3Cを参照すると、マルチパラメータ生理学的モニタ表示装置328を含むことができる監視システム316のためのユーザインターフェイス322の例(ただし、これに限られるわけではない)が示されている。例えば、表示装置328は、意識消失(「LOC」)インジケータ330を出力することができる。意識消失インジケータ330を、説明される技術のいずれかを使用して生成することができる。さらに表示装置328は、酸素飽和(「SpO2」)インジケータ332、脈拍インジケータ334、呼吸数インジケータ336、および任意の所望の情報を表す任意の他のインジケータを使用して、パラメータデータを提供することができる。図3Cに示した図示の実施形態において、LOCインジケータ330は、患者が意識を失った旨を示す文字列を含んでいる。いくつかの実施形態において、LOCインジケータ330は、患者の意識の状態を示す指標を含むことができる。LOCインジケータ330に表示される文字列は、上述の意識状態検出プロセスのうちの1つからの信頼度の計算に依存することができる。上述の意識状態検出プロセスの各々は、個々のプロセスまたはプロセスの組み合わせが意識の状態をどの程度正確に予測できるかに応じて、異なる信頼度を有することができる。信頼度を、患者モニタに保存することができる。いくつかの実施形態においては、プロセス(上述)のうちの2つ以上を、LOCインジケータ330を決定するために使用することができる。さらに、表示装置328は、時系列EEG信号など、生または処理後の波形信号338の任意の部分を、間欠的またはリアルタイムに出力としてもたらすこともできる。
再び図3Aを参照すると、いくつかの構成において、薬剤投与システム320は、患者を全身麻酔または鎮静などの麻酔化合物によって影響された意識低下の状態とする目的で麻酔化合物の投与を制御できるだけでなく、患者の意識の状態を高め、あるいは下げるためのシステムおよび方法を実現および反映することもできる。
例えば、本発明の一態様によれば、メチルフェニデート(MPH)が、ドーパミンおよびノルエピネフリン再取り込みトランスポータの阻害剤およびとして使用されてよく、イソフルレン全身麻酔からの回復を積極的に生じさせる。MPHを、意識を回復させ、覚醒に調和した脳波図の変化を生じさせ、呼吸の駆動を高めるために使用することができる。メチルフェニデートによって引き起こされる行動および呼吸の効果を、メチルフェニデートがドーパミン作動性の覚醒経路を活性化することによって覚醒を生じさせるという証拠を裏付けるドロペリドールによって抑制することができる。プレチスモグラフィおよび血液ガスの実験が、メチルフェニデートが分時換気量を増やし、したがって脳からの麻酔の除去の速度を高めることを証明する。また、エチルフェニデートまたは他の物質を、上述のような制御システムを使用して覚醒を高めることによってイソフルレン、プロポフォール、または他の全身麻酔からの回復を積極的に生じさせるために使用することができる。
したがって、図3Aに関して上述したようなシステムを、2つの個別のサブシステムを有する薬剤投与システム320を備えることによって、麻酔からの積極的な回復を実行するために用意することができる。したがって、薬剤投与システム320は、1つ以上の麻酔化合物を被験者へともたらすように設計された麻酔化合物投与システム324を含むことができ、全身麻酔を逆にし、あるいは被験者の麻酔からの自然の回復を促進する1つ以上の化合物をもたらすように設計された回復化合物投与システム326をさらに含むことができる。
例えば、MPHならびにその類似体または誘導体が、覚醒および呼吸の駆動を高めることによって、麻酔によって引き起こされた無意識からの被験者の回復を引き起こす。したがって、回復化合物投与システム326を、手術の終わりにおいて全身麻酔によって引き起こされた無意識および呼吸の低下を逆にするために、MPH、アンフェタミン、モダフィニル、アマンタジン、またはカフェインをもたらすために使用することができる。MPHは、デキストロメチルフェニデート(D−MPH)、ラセミメチルフェニデート、またはレバメチルフェニデート(L−MPH)であってよく、あるいは約50%:50%、または約60%:40%、または約70%:30%、あるいは80%:20%、90%:10%、95%:5%、など、等しい比または異なる比の組成物であってよい。他の物質を、注意欠陥障害(ADD)または注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療に用いられる用量よりも多いメチルフェニデートの用量として投与することができ、例えばメチルフェニデートの用量は、約10mg/kg−約5mg/kgの間、および約5mg/kg−10mg/kgの間の任意の整数であってよい。いくつかの状況において、用量は、約7mg/kg−約0.1mg/kgの間、または約5mg/kg−約0.5mg/kgの間である。他の物質として、吸入される物質を挙げることができる。
次に図4に目を向けると、患者の状態を監視および制御するための本発明によるプロセス400は、プロセスブロック402において、上述のようにEEG監視システムから取得される波形を分析する前処理アルゴリズムを実行することによって始まる。いくつかの態様においては、プロセスブロック402において、スパイクレート、バーストサプレッションレート、振動(例えば、0.1−1Hzの間の範囲の低速または低周波数振動)、パワースペクトル特性、位相変調、など、EEG波形に関するインジケータを特定することができる。この工程において、生のEEG波形を、任意の所望または必要な形態をとり、あるいは任意の所望または必要な特徴または特性を有するように、変更し、変換し、強調し、フィルタ処理し、あるいは操作することができる。次いで、前処理後のデータが、プロセスブロック404において、脳状態推定アルゴリズムに入力としてもたらされる。一態様において、脳状態推定アルゴリズムは、全身麻酔または鎮静の際などの麻酔化合物の任意の組み合わせの投与下で、脳のシンクロニーおよび/またはコヒーレンスの指標に関する現在および/または将来の脳状態の判断を実行することができる。
脳状態推定アルゴリズムの出力を、プロセスブロック406において、「信頼区間」に相関させることができる。信頼区間は、任意の2つの時点において推定された脳状態の間の公式の統計比較にもとづいて予測される。また、プロセスブロック408において、脳状態推定アルゴリズムの出力を、医療処置または疾病状態の最中にスパイクレート、低周波数の振動、パワースペクトル特性、位相変調、などの脳状態インジケータを特定および追跡するために使用することができる。典型的な医学的に重要な状態として、いくつか挙げるならば、低体温、全身麻酔、医療昏睡、および鎮静が挙げられる。また、脳状態推定アルゴリズムの出力を、プロセスブロック410において、閉ループ麻酔制御プロセスの一部として使用することもできる。
また、本発明は、上述のとおりのシステムを使用して患者の脳状態を判断するための方法を提供する。ここで図5を参照すると、プロセス500は、プロセスブロック502において、1つ以上の麻酔化合物などの所望の薬剤の選択ならびに/あるいは患者の年齢、身長、体重、性別、などの個々の患者のプロフィルに関する指示によって始まる。さらに、タイミング、用量、速度、などの薬剤投与情報を、上述のEEGデータと併せて取得および使用し、本発明に従って将来の患者の状態を推定および予測することができる。後述されるように、本発明は、麻酔への生理学的応答が、投与される特定の1つ以上の化合物ならびに患者のプロフィルに依存して変化することを認識している。例えば、高齢の患者は、麻酔下でより小さな振幅のアルファパワーを示す傾向を有し、一部は意識のない状態において視認可能なアルファパワーを示さない。本発明は、高齢の患者と若い患者との間のこの変化を補償する。さらに、本発明は、とくには投与される特定の1つ以上の麻酔化合物および/または患者のプロフィルに対する特徴について生理学的データを分析することで、特定の状態にあるときの患者の脳の特定のインジケータを識別する能力ならびにそれらのインジケータにもとづく状態インジケータおよび予測の精度が大幅に向上することを認識している。
例えば、以下の薬剤、すなわちプロポフォール、エトミデート、バルビツール酸塩、チオペンタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、メトヘキシタール、ベンゾジアゼピン、ミダゾラム、ジアゼパム、ロラゼパム、デクスメデトミジン、ケタミン、セボフルラン、イソフルレン、デスフルラン、レミフェンタニル、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、などが、本発明において使用することができる薬剤または麻酔化合物の例である。しかしながら、本発明は、これらの薬剤の各々が、例えばEEGデータまたは波形においてきわめて異なる特性または特徴を生じさせることを認識している。
選択された適切な1つ以上の薬剤および/または患者のプロフィルにより、生理学的データの取得がプロセスブロック504において始まり、ここで取得されるデータは、EEGデータである。本発明は、患者から取得された生理学的情報を分析し、そこに含まれる情報および重要なインジケータを分析し、患者の現在および/または予測される将来の状態に関する情報を外挿するためのシステムおよび方法を提供する。そのようにするために、生理学的データを抽象的に評価するよりもむしろ、生理学的データが処理される。処理は、電極またはセンサ空間において行われてよく、あるいは脳内の位置へと外挿されてもよい。後述されるように、本発明は、例えばスペクトログラム、位相振幅変調、コヒーレンス解析、などの追加の分析ツールを組み合わせることによって、脳の時間的および空間的動態の追跡を可能にする。「スペクトログラム」への言及が、周波数ドメインの情報の視覚的表現を指すことができることは、明らかであろう。
プロセスブロック506において、ラプラシアン参照(Laplacian referencing)を、例えば図3Aの監視装置の各々の電極部位における頭皮に垂直なラジアル電流密度を推定するために実行することができる。これは、電極部位において記録された電圧と、局所近傍の電極部位において記録された電圧の平均との間の差をとることによって達成できる。複数の電極にまたがる情報の他の組み合わせも、関連の脳状態の推定を向上させるために使用することができる。このやり方で、生成される信号は、前頭部、側頭部、頭頂位置、などの特定の部位において被験者に配置された電極に直接関係でき、あるいは複数の部位から得られた信号の組み合わせの結果であってよい。
次に、プロセスブロック508、510、512において、種々の分析を個別または任意の組み合わせにて実行し、麻酔を受ける患者の種々の状態における種々の空間的および時間的活動に関するスペクトル、時間、コヒーレンス、シンクロニー、振幅、または位相情報のいずれかをもたらすことができる。いくつかの態様において、脳のコヒーレンスおよびシンクロニーに関する情報を、低速または低周波数の振動に関して決定することができる。
プロセスブロック508において、スペクトル分析を実行し、プロセスブロック504において取得された生理学的データから組み立てられた信号についてスペクトルパワーの時間変化に関する情報をもたらすことができる。そのようなスペクトル分析は、目標周波数範囲のEEG信号プロフィルの識別および定量化を促進することができる。いくつかの態様においては、関連の脳状態の推定に使用することができる特性である正確かつ特有の時間−周波数分解能および効率を達成するために、プロセスブロック508において、スペクトログラムを、例えばマルチテーパおよびスライディングウインドウ法を使用して生成および処理することができる。他の態様においては、動的スペクトルの状態−空間モデルを、データが最適な量の平滑化を駆動するスペクトログラムを決定するために適用することができる。スペクトログラムの生成および処理を、プロセスブロック508において実行することができるが、スペクトログラムの視覚表現を表示する必要はない。
プロセスブロック510において、上述のように生または処理後の生理学的データから生成された信号を使用して局所および全体的な脳領域における空間コヒーレンスに関する表示を与えるために、コヒーレンス解析を実行することができる。とくには、コヒーレンスは、所与の周波数の任意のペア信号の間の相関の程度を定量化し、周波数によって指示された相関係数と同等である。例えば、1というコヒーレンスが、2つの信号が当該周波数において完璧に相関していることを示している一方で、0というコヒーレンスは、2つの信号が当該周波数において相関していないことを示している。いくつかの態様においては、コヒーレンスを、プロセスブロック508において実行されるようなスペクトル分析によって特定される低または遅い振動周波数(例えば、0.1−1Hz)、あるいはδ(1−4Hz)、α(8−14Hz)、γ(20−40Hz)周波数帯、など、特定の周波数帯によって表現される信号について割り出すことができる。例えば、α範囲における強いコヒーレンスは、前頭部の電極部位におけるきわめて協調した活動を示している。
位相−振幅変調および位相−位相変調など、上述のような生成される信号の他の特徴も、同様に追跡することができる。したがって、プロセスブロック512において、所与の信号の振幅または位相を他の信号の振幅または位相に対して考慮する位相解析を実行することができる。とくには、上述のように、EEG信号のスペクトル分析が、低速または低い周波数(0.1−1Hz)、δ(1−4Hz)、θ(5−8Hz)、α(8−14Hz)、β(12−30Hz)、ならびにγ(30−80Hz)における変化を含む麻酔の投与に関連した特定の周波数帯におけるパワーの系統的変化の本発明による追跡を可能にする。しかしながら、スペクトル分析は、各々の周波数帯における振動を別々に取り扱い、異なる周波数の律動の間の位相または振幅の相関を無視する。いくつかの態様においては、低速または低周波数の振動の位相が他の周波数帯における振動の振幅を変調する程度、またはスパイク活動(spiking activity)に関する計算を、実行することができる。他の態様においては、異なる皮質領域からの低速振動信号などの信号の間の位相関係を、麻酔を受けている患者の種々の状態に関してシンクロニー情報をもたらすために割り出すことができる。
選択された1つ以上の薬剤にもとづく適切な解析の文脈の上述の選択(プロセスブロック502)、データの取得(プロセスブロック504)、および取得されたデータの解析(プロセスブロック508−512)は、麻酔薬または麻酔薬の組み合わせの投与時ならびに投与された麻酔薬または麻酔薬の組み合わせからの回復の発生時の患者の脳の状態についての新規かつ大幅に改善されたリアルタイムでの解析および報告のための舞台を定める。すなわち、上述のように、投与された1つ以上の麻酔化合物の有効性の状態に関する特定の表示または特徴を、上述の解析の各々から(とくには、特定の選択された1つ以上の薬剤について調節された場合に)割り出すことができるが、本発明は、麻酔下の患者の状態、ならびに/あるいは麻酔下の患者の状態を示し、麻酔下の患者の状態の制御に使用することができるインジケータまたは特徴を正確に指摘および/または報告するために、これらの別々のデータなどの各々を考慮するための機構を提供する。
具体的には、プロセスブロック514を参照すると、上述の解析および/または結果のいずれかおよびすべてを、リアルタイムでのレポートの提供など、任意の所望または必要な形状または形態で組み合わせて報告することができ、さらには臨床医による使用または上述のような閉ループシステムとの組み合わせにおける使用のために、挙動力学の正確な統計的特性評価と組み合わせることができる。いくつかの態様においては、脳のコヒーレンスおよびシンクロニーに関する情報を採用することができる。とくには、意識消失および意識回復の時点などの挙動力学を、本発明に従って正確かつ統計的に計算して示すことができる。そのようにするために、本発明は、挙動マーカに対するスペクトル、コヒーレンス、および位相解析の正確な整列を可能にするダイナミックベイジアン(dynamic Bayesian)法を使用することができる。
図5Bを参照すると、上述のとおりの患者の脳状態を判断するための工程を実行するためのシステム516が示されている。システム516は、患者監視装置518と、EEGデータなどの生理学的データを取得するように設計された任意の数のセンサ522によって構成されたセンサアレイ520とを含む。センサアレイ520は、有線または無線接続によって患者監視装置518と通信する。
患者監視装置518は、センサアレイ522によってもたらされるデータを受信および処理するように構成され、入力524と、プリプロセッサプロセッサ526と、出力528とを備えている。とくには、プリプロセッサ526は、受信された生理学的データを時系列信号へと集め、取得された生理学的データに関して存在し得る干渉信号をフィルタ処理すべくノイズ除去工程を実行するなど、任意のいくつかの前処理工程を実行するように構成される。さらに、プリプロセッサは、1つ以上の麻酔化合物の投与に関する情報、および/または患者の年齢、身長、体重、性別、などの個々の患者のプロフィルに関する指示、ならびにタイミング、量、速度、などの薬剤投与情報など、入力524を介して指示を受信するように構成される。さらに、患者監視装置518は、相関エンジン530、位相解析器532、およびスペクトル分析器534など、プリプロセッサ526に連絡したいくつかの処理モジュールをさらに備える。処理モジュールは、プリプロセッサ526からの前処理済みのデータを受信し、並列、順番、または組み合わせにて実行されてよい上述のとおりの患者の脳状態の判断に必要な工程を実行するように構成される。さらに、患者監視装置518は、処理モジュールからコヒーレンスおよびシンクロニー情報などの処理済みの情報を受信し、麻酔下の患者の現在または将来の状態に関する判断ならびに判断された状態に関する信頼度を提供するように構成された意識状態分析器536を備える。次いで、判断された状態に関する情報を、任意の他の所望の情報とともに、任意の形状または形態で出力528へと渡すことができる。例えば、出力528は、意識インジケータおよび信頼度インジケータを間欠的またはリアルタイムのいずれかで提示するように構成された表示装置を含むことができる。
次に図6に目を向けると、本発明に従って患者を監視するための方法の各工程を説明するフロー図が示されている。プロセス600は、プロセスブロック602において始まり、任意の数のセンサを被験者に配置することができ、臨床医または操作者が、薬剤の投与または患者の特性に関する少なくとも1つの指示をもたらすことができる。次いで、プロセスブロック604において、任意の量の生理学的データを取得することができ、次いでデータを、プロセスブロック606において、時系列データへと配置することができる。その後に、プロセスブロック608において、帯域通過または低域通過フィルタ処理などの任意の周波数依存の手法を使用して、低周波数の信号を時系列データから分離することができる。そのような信号は、いくつかの態様においては、0.1Hz−1Hzの間の周波数範囲を表すことができる。少なくともそのような低周波数の信号からのインジケータを使用して、コヒーレンスまたはシンクロニー情報の少なくとも一方を集めることができる。そのような情報は、上述のように、モデルと組み合わせて使用されたときに麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与に一致した現在および将来の状態の少なくとも一方を含むプロセスブロック612における脳状態の特定を可能にする空間時間的特徴をもたらすことができる。最後に、プロセスブロック614において、所望または必要に応じて任意の形状または形態をとるレポートを生成することができる。そのようなレポートは、現在および将来の少なくとも一方の脳状態に関する目安を臨床医に提供することができる。
上述のシステムおよび方法を、実施例によってさらに理解することができる。これらの実施例は、あくまでも例示の目的で提示され、決して本発明の技術的範囲を限定しようとするものではない。実際、本明細書において図示および説明される変更に加えて、本発明の種々の変更が、以上の説明および以下の実施例から当業者にとって明らかになると考えられ、それらは添付の特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。例えば、脳状態、病状、麻酔または鎮静のレベル、などの具体例が、特定の薬剤および医療処置との関連において提示されるが、他の薬剤、用量、状態、条件、および処置も、本発明の技術的範囲に包含されると考えられることを、理解できるであろう。さらに、実施例が、脳状態に関する特定のインジケータに関して提示されるが、他のインジケータおよびインジケータの組み合わせも、本発明の技術的範囲に包含されると考えられることを、理解できるであろう。同様に、具体的なプロセスパラメータが言及されるが、それらは信号の振幅、位相、周波数、継続時間、などの変数に応じて変更または変化可能である。
(実施例I)
全身麻酔、すなわち薬剤によって引き起こされる可逆な昏睡は、一般に、数秒のうちに意識消失を生じさせるようにプロポフォールなどの速効性の薬剤を大量に投与することによって開始される。この状態を、手術および多数の非外科的な処置の実行に必要な長さにわたって維持することができる。麻酔薬の分子作用についてはかなりのことが知られているが、分子標的におけるこれらの作用が単独のニューロンおよびより大規模な神経回路にどのように作用して意識消失を生じさせるのかは、明確になっていない。
全身麻酔、すなわち薬剤によって引き起こされる可逆な昏睡は、一般に、数秒のうちに意識消失を生じさせるようにプロポフォールなどの速効性の薬剤を大量に投与することによって開始される。この状態を、手術および多数の非外科的な処置の実行に必要な長さにわたって維持することができる。麻酔薬の分子作用についてはかなりのことが知られているが、分子標的におけるこれらの作用が単独のニューロンおよびより大規模な神経回路にどのように作用して意識消失を生じさせるのかは、明確になっていない。
麻酔薬の巨視的な動態は、いくつかの定型的な特徴を含むEEGにおいて見て取ることができる。例えば、患者が目覚めているとき、対応するスペクトログラムは、強い後頭部のいわゆるα活動を示すのに対し、プロポフォールを使用した意識の消失の後には、スペクトログラムは、後頭部の部位におけるα活動の消失およびδ活動の増加、ならびに前頭部の部位における強いαおよびδ活動を示す。意識の消失後に生じるα(8−14Hz)、β(12−30Hz)、およびδ(1−4Hz)の範囲にわたる前頭部の部位におけるパワーの増加は、これまでに観測された前方化のパターンに矛盾せず、患者が応答を失うにつれて、α範囲の後頭部の部位における協調活動が減少する。患者の意識がないとき、α範囲の強い協調活動が、スペクトログラムが前方化のパターンを示す前頭部の電極部位の広い範囲で観測される。スペクトログラムにおける全体としての高いδ活動にもかかわらず、協調活動は、α範囲においてのみ観測される。後頭部のαおよびδ範囲の相対パワーは、患者の挙動反応に追従し、患者が目覚めているときは後頭部のαパワーはδパワーよりも大きく、患者の意識がないときには逆になる。また、プロポフォールを用いた全身麻酔の維持の場合に、増加したδおよびγパワーを示すスペクトログラムは、バーストサプレッションおよび低速振動(<1Hz)とともに前頭皮質におけるコヒーレントなα(〜10Hz)律動も示す。
多数のそのようなパターンが一貫して観測されているが、それらがどのように機能的に関係しているのかは、不明確である。例えば、意識消失状態への移行は、全身麻酔の場合において数十秒で生じ得るが、多くの神経生理学的特徴は、誘発後も数分間にわたって変動を続け、全身麻酔の種々のレベルの間で大きく変動する。さらに、EEG振動の根底にある皮質領域の間の動的な相互作用は、単独のニューロンのアンサンブルと脳の全体に分布した部位からの振動動力学とを同時に記録した研究が少ないため、充分には理解されていない。
そこで、ニューロンおよび回路の両方のレベルにおける動態を、プロポフォールによる意識消失の誘発の際の人間の脳において調査した。同時の記録を、シングルユニット局所フィールド電位(LFP)および皮質の最大8cmに及ぶ頭蓋内皮質電図(ECoG)から得て、ミリ秒スケールの時間分解能での多数の空間スケールにおける神経動力学の調査を可能にした。意識消失の進行時の神経動力学の空間的および時間的構造を、皮質統合(cortical integration)に関する機構を特定するために調査した。
[方法]
・データ収集
投薬では治療が難しい3名のてんかん患者に、標準的な臨床モニタリングのための頭蓋内硬膜下皮質脳波記録電極(AdTech)を埋め込んだ。いくつかの場合において、ECoG電極の配置を、臨床的基準によって決定し、電極を側頭部、前頭部、および頭頂部の皮質に配置した。グリッド内の個々のECoGを、1cmの間隔で配置した。さらに、長さ1.0mmの電極を有する96チャネルのNeuroPortマイクロ電極アレイ(BlackRock Microsystems)を、研究目的でLFPおよびシングルユニットのアンサンブルを記録するために、上側頭回(患者B)または中側頭回(患者AおよびC)に埋め込んだ。各々の患者において、NeuroPortアレイを、発作中心(seizure focus)から少なくとも2cmに配置した。すべての記録を、電極を取り出すための手術の開始において収集した。麻酔を、標準的な臨床手順に従ってプロポフォールのボーラス投与として投与した。すべてのプロポフォールの用量は、調査研究の考慮事項よりもむしろ、麻酔専門医の臨床判断にもとづいて決定した。患者Aには3回のボーラス(130mg、50mg、および20mg)を与え、患者Bには1回のボーラス(200mg)を与え、患者Cには1回のボーラス(150mg)を与えた。誘発後に、患者を、麻酔レベルの維持のためのプロポフォールの連続的な静脈内注入へと移行させた。
・データ収集
投薬では治療が難しい3名のてんかん患者に、標準的な臨床モニタリングのための頭蓋内硬膜下皮質脳波記録電極(AdTech)を埋め込んだ。いくつかの場合において、ECoG電極の配置を、臨床的基準によって決定し、電極を側頭部、前頭部、および頭頂部の皮質に配置した。グリッド内の個々のECoGを、1cmの間隔で配置した。さらに、長さ1.0mmの電極を有する96チャネルのNeuroPortマイクロ電極アレイ(BlackRock Microsystems)を、研究目的でLFPおよびシングルユニットのアンサンブルを記録するために、上側頭回(患者B)または中側頭回(患者AおよびC)に埋め込んだ。各々の患者において、NeuroPortアレイを、発作中心(seizure focus)から少なくとも2cmに配置した。すべての記録を、電極を取り出すための手術の開始において収集した。麻酔を、標準的な臨床手順に従ってプロポフォールのボーラス投与として投与した。すべてのプロポフォールの用量は、調査研究の考慮事項よりもむしろ、麻酔専門医の臨床判断にもとづいて決定した。患者Aには3回のボーラス(130mg、50mg、および20mg)を与え、患者Bには1回のボーラス(200mg)を与え、患者Cには1回のボーラス(150mg)を与えた。誘発後に、患者を、麻酔レベルの維持のためのプロポフォールの連続的な静脈内注入へと移行させた。
誘発の期間の全体を通して、患者は、ボタンを押すことによって聴覚刺激(予め録音された言葉および患者の名前)に応答し、LOC(意識喪失時間)について数秒程度の精度を得るために、刺激を4秒ごとに提示した。LOC時間を、患者が応答を完全に止めた後の最初の刺激の周囲の-1−4秒の期間と定義した。オフラインソータ(Plexon)でスパイクソーティング(spike sorting)を実行し、さらなる分析のために198個のシングルユニットを生成した。LFPを、マイクロ電極アレイから離れたワイヤへと参照し、0.3−7,500Hzの間を帯域通過させるハードウェアフィルタによって30kHzのサンプリングレートで収集した。次いで、LFPを、100Hzで低域通過フィルタ処理し、250Hzへと再サンプリングした。表示のために、生の時系列を、0−40Hzの間の単位利得および42Hzよりも上における−300dBを超える減衰を達成する4,464個の係数を有する有限インパルス応答フィルタで低域通過フィルタ処理した。
ECoGの記録を、250Hz(患者BおよびC)または2,000Hz(患者A)のいずれかのサンプリングレートで集め、その場合には、100Hzでの低域通過フィルタ処理および250Hzへの再サンプリングを行った。ECoGの記録を、利用可能な場合(患者A)においては頭蓋内基準ストリップチャネルへと参照し、そうでない場合には平均基準へと参照した。患者AおよびBにおいては、ECoG記録を全体を通して集めた。患者Cにおいては、マイクロ電極記録を全体を通して集めたが、ECoG記録をLOC後約100秒で終わらせ、したがって低速振動位相結合の有意性は、スパイクレートがこの時間においてほぼゼロであるため、ECoGチャネルにおいては評価できなかった。2つのECoGグリッドチャネルを、大きなアーチファクトゆえに患者Aにおいて除外した。すべてのデータを、特注のソフトウェアによる解析のためにMatlab(Mathworks)へとエクスポートした。
・スパイクレート解析
スパイクレートおよび信頼区間を、ベイジアン状態空間推定によって計算した。不安定な記録によって引き起こされ得る誤差を最小にするために、スパイクレート解析は、全ベースライン期間にわたって自身をもって検出されなかったユニットを除外した(8.1%)。計算されたスパイクレート効果は、これらのユニットが含まれる場合と同様であった。無音の期間を各々の10秒期間について同じレートの模擬のポアソン分布と比較し、有意さを、その分布に対するχ2検定によって各々の患者について評価した。
スパイクレートおよび信頼区間を、ベイジアン状態空間推定によって計算した。不安定な記録によって引き起こされ得る誤差を最小にするために、スパイクレート解析は、全ベースライン期間にわたって自身をもって検出されなかったユニットを除外した(8.1%)。計算されたスパイクレート効果は、これらのユニットが含まれる場合と同様であった。無音の期間を各々の10秒期間について同じレートの模擬のポアソン分布と比較し、有意さを、その分布に対するχ2検定によって各々の患者について評価した。
・スペクトル解析
スペクトログラムを、Chronuxツールボックス(http://chronux.org/)を使用してマルチテーパ法によって計算した。LOC後のパワー変化を、LOC前30−60秒の期間に対するLOC後30−60秒の期間におけるパーセント変化として計算した。低速振動を、0.1−1Hzの単位利得ならびに0−0.85および1.15−125Hzにおける−50dBを超える減衰を達成する4,464個の係数を有する対称有限インパルス応答フィルタ帯域通過フィルタを適用することによって抽出した。0.3Hzにおける高い通過を有するハードウェアフィルタの設定ゆえに、0.3Hz未満のパワー寄与は最小化された。位相をヒルベルト変換によって抽出した。トリガされたスペクトログラムの統計的検定を、各々のχ2分布の比をとることによって行い、有意差を、周波数を横切る多数の比較についてのボンフェローニ補正によるF検定として計算した。ON期間の最中および前のスペクトルを比較するために、ON期間の開始後250msからのパワースペクトルを、ON期間の開始前250msからのスペクトルと比較した。平均LFP波形を、時間期間を予め選択し、その区間内の平均振幅値についてt検定を実行することによって比較した。スパイキングの前後の波形高さを比較するとき、ON期間の開始または低速振動の極小へとロックされた-750−500msの時間ウインドウおよび500−750msの時間ウインドウにおける平均振幅を比較するt検定を実行した。
スペクトログラムを、Chronuxツールボックス(http://chronux.org/)を使用してマルチテーパ法によって計算した。LOC後のパワー変化を、LOC前30−60秒の期間に対するLOC後30−60秒の期間におけるパーセント変化として計算した。低速振動を、0.1−1Hzの単位利得ならびに0−0.85および1.15−125Hzにおける−50dBを超える減衰を達成する4,464個の係数を有する対称有限インパルス応答フィルタ帯域通過フィルタを適用することによって抽出した。0.3Hzにおける高い通過を有するハードウェアフィルタの設定ゆえに、0.3Hz未満のパワー寄与は最小化された。位相をヒルベルト変換によって抽出した。トリガされたスペクトログラムの統計的検定を、各々のχ2分布の比をとることによって行い、有意差を、周波数を横切る多数の比較についてのボンフェローニ補正によるF検定として計算した。ON期間の最中および前のスペクトルを比較するために、ON期間の開始後250msからのパワースペクトルを、ON期間の開始前250msからのスペクトルと比較した。平均LFP波形を、時間期間を予め選択し、その区間内の平均振幅値についてt検定を実行することによって比較した。スパイキングの前後の波形高さを比較するとき、ON期間の開始または低速振動の極小へとロックされた-750−500msの時間ウインドウおよび500−750msの時間ウインドウにおける平均振幅を比較するt検定を実行した。
・位相変調
シングルユニット位相結合の有意性を、ビン内の位相分布についてのχ2検定によって計算した。解析を、0.1Hzを上回るスパイクレートのセルについてのみ2度目に実行し、位相ビンにつき少なくとも5つのスパイクが予想されるように保証した。位相変調の強度を、ビットにて測定される一様な分布からの位相ヒストグラムのカルバック−ライブラーダイバージェンスを定量化するように構成された変調インデックス(MI)を使用して計算した。スパイク位相を10個のビンからなる位相ヒストグラム(p)へと分割し、MIをとして計算した。χ2統計量も、代替の手段として計算され、同様の結果をもたらした。各々のECoGチャネルについてのMIの有意性を、2−10秒の間でランダムに全スパイク列をシャッフルし、2,000回のランダムシフトにわたってシャッフル後のMIを計算することによって計算した。次いで、実験によるMIを、チャネルを横断する複数の比較について0.05%の有意性レベルおよびボンフェローニ補正によってシャッフル後のMIと比較した。LFP位相解析に関して、各々のシングルユニットを、その局所LFPチャネルと比較した。時間変化する位相変調を、5秒ごとにスライドする20秒のウインドウによって計算した。ECoG低速振動に対する最大スパイキングの位相を評価するために、スパイキングの位相を20個のビンへと分割し、次いで位相ヒストグラムのモードを報告した。
シングルユニット位相結合の有意性を、ビン内の位相分布についてのχ2検定によって計算した。解析を、0.1Hzを上回るスパイクレートのセルについてのみ2度目に実行し、位相ビンにつき少なくとも5つのスパイクが予想されるように保証した。位相変調の強度を、ビットにて測定される一様な分布からの位相ヒストグラムのカルバック−ライブラーダイバージェンスを定量化するように構成された変調インデックス(MI)を使用して計算した。スパイク位相を10個のビンからなる位相ヒストグラム(p)へと分割し、MIをとして計算した。χ2統計量も、代替の手段として計算され、同様の結果をもたらした。各々のECoGチャネルについてのMIの有意性を、2−10秒の間でランダムに全スパイク列をシャッフルし、2,000回のランダムシフトにわたってシャッフル後のMIを計算することによって計算した。次いで、実験によるMIを、チャネルを横断する複数の比較について0.05%の有意性レベルおよびボンフェローニ補正によってシャッフル後のMIと比較した。LFP位相解析に関して、各々のシングルユニットを、その局所LFPチャネルと比較した。時間変化する位相変調を、5秒ごとにスライドする20秒のウインドウによって計算した。ECoG低速振動に対する最大スパイキングの位相を評価するために、スパイキングの位相を20個のビンへと分割し、次いで位相ヒストグラムのモードを報告した。
・LOCに対するスパイクレートおよびスペクトルパワー変化のタイミング
スパイクレートおよびスペクトルパワーを、これらの特徴がプロポフォール投与の前のベースライン期間から有意に相違した最初の時間ビンを割り出すために試験した。LOCの30秒前から始まって、すべての時点を、その直前の3分のベースライン期間からのスパイクレートまたはスペクトル特性のベースラインと比較した。スパイクレートの有意性を評価するために、各々のポストベースライン時点をベースライン期間のガウス分布から引き出したサンプルと比較し、有意差について検定するベイジアン階層解析を使用した。このベースラインサンプリング分布を、スパイクレートの計算に用いた同じ状態空間アルゴリズムによって計算した。所与の周波数のパワーが有意に相違する時点を割り出すために、ガウスサンプリング分布をパワーの指標に適した分布であるχ2分布で置き換えた類似の方法を使用した。ベースラインの再サンプリングは行わず、代わりにMIがベースライン期間の平均にSD2個分を加えたものよりも大きくなる時点を報告した。これらの測定のすべてにおいて、重なり合いのない5秒のビンを使用し、-2.5−2.5秒の期間であるLOCに対して生じた変化の時点を特定した。
スパイクレートおよびスペクトルパワーを、これらの特徴がプロポフォール投与の前のベースライン期間から有意に相違した最初の時間ビンを割り出すために試験した。LOCの30秒前から始まって、すべての時点を、その直前の3分のベースライン期間からのスパイクレートまたはスペクトル特性のベースラインと比較した。スパイクレートの有意性を評価するために、各々のポストベースライン時点をベースライン期間のガウス分布から引き出したサンプルと比較し、有意差について検定するベイジアン階層解析を使用した。このベースラインサンプリング分布を、スパイクレートの計算に用いた同じ状態空間アルゴリズムによって計算した。所与の周波数のパワーが有意に相違する時点を割り出すために、ガウスサンプリング分布をパワーの指標に適した分布であるχ2分布で置き換えた類似の方法を使用した。ベースラインの再サンプリングは行わず、代わりにMIがベースライン期間の平均にSD2個分を加えたものよりも大きくなる時点を報告した。これらの測定のすべてにおいて、重なり合いのない5秒のビンを使用し、-2.5−2.5秒の期間であるLOCに対して生じた変化の時点を特定した。
・位相ロック因子
PLFを、低速振動の間の位相オフセットの時間変化する尺度を得るために計算した。低速振動の位相を、スペクトル解析において説明したように抽出した。各々の時点について、量z(t)=exp{−i×[φA(t)−φB(t)]}を計算し、ここでφA(t)は、各々の時点における1つのECoG低速振動の位相であり、φB(t)は、別のECoG低速振動の位相である。次いで、PLFを、LOC前期間およびLOC後期間を横断するz(t)の平均として計算した。位相オフセットの変動性を評価するために、PLFの大きさを計算した。PLFの大きさの分布を、所与の距離によって隔てられたECoGチャネルの各ペアを横断してPLFの大きさの平均およびSDをプロットすることによって評価した(チャネル間の距離はグリッドを横断して幾何学的に計算される)。時間を横断して位相オフセットの平均値を割り出すために、PLFの角度を計算した。次いで、所与の距離によって隔てられたチャネルのすべてのペアについての平均位相オフセットの分布を、すべての電極ペアについてのPLF角度値の2Dヒストグラムをとることによってプロットした。付随の再構成された脳は、個別に局所化された電極位置を示した。PLFは、同じ根底にある量を異なる推定法で推定し、コヒーレンス(後述)と同じ情報をもたらす。
PLFを、低速振動の間の位相オフセットの時間変化する尺度を得るために計算した。低速振動の位相を、スペクトル解析において説明したように抽出した。各々の時点について、量z(t)=exp{−i×[φA(t)−φB(t)]}を計算し、ここでφA(t)は、各々の時点における1つのECoG低速振動の位相であり、φB(t)は、別のECoG低速振動の位相である。次いで、PLFを、LOC前期間およびLOC後期間を横断するz(t)の平均として計算した。位相オフセットの変動性を評価するために、PLFの大きさを計算した。PLFの大きさの分布を、所与の距離によって隔てられたECoGチャネルの各ペアを横断してPLFの大きさの平均およびSDをプロットすることによって評価した(チャネル間の距離はグリッドを横断して幾何学的に計算される)。時間を横断して位相オフセットの平均値を割り出すために、PLFの角度を計算した。次いで、所与の距離によって隔てられたチャネルのすべてのペアについての平均位相オフセットの分布を、すべての電極ペアについてのPLF角度値の2Dヒストグラムをとることによってプロットした。付随の再構成された脳は、個別に局所化された電極位置を示した。PLFは、同じ根底にある量を異なる推定法で推定し、コヒーレンス(後述)と同じ情報をもたらす。
・GLMフィット処理
GLMを、打ち切り正則化反復再重み付け最小二乗(TR−IRLS)(26,50)によって回帰を実行するあつらえのソフトウェアを使用し、最良モデルを選択するためにベイジアン情報量基準を使用して、アンサンブルスパイキングにフィットさせた。さらに、赤池の情報量基準の使用が、スパイク履歴の有意な寄与をもたらした。いずれかのユニットからのいずれかのスパイクが当該期間において生じた場合に1を含み、そうでない場合に0を含む一連の12msのビンとして定義されるアンサンブルスパイキングを予測するためのGLMを構成した。10個の共変量を、考えられるLFP位相値の範囲を表すために使用した。振幅を、0−1の間の範囲へと正規化した。個々のユニットのスパイクレートが低いため、このモデルにおける履歴依存の項は、ユニット間の相互作用をもっぱら反映する。提示のバージョンは、スパイク履歴の12msのビンによっているが、4または8msのビンの使用時に同様の結果が得られている。LOC前およびLOC後の解析の間の相関がLOC移行時の隣接する記録からのバイアスからもたらされることがないように、LOCの周囲のわずかな時間を除外した。
GLMを、打ち切り正則化反復再重み付け最小二乗(TR−IRLS)(26,50)によって回帰を実行するあつらえのソフトウェアを使用し、最良モデルを選択するためにベイジアン情報量基準を使用して、アンサンブルスパイキングにフィットさせた。さらに、赤池の情報量基準の使用が、スパイク履歴の有意な寄与をもたらした。いずれかのユニットからのいずれかのスパイクが当該期間において生じた場合に1を含み、そうでない場合に0を含む一連の12msのビンとして定義されるアンサンブルスパイキングを予測するためのGLMを構成した。10個の共変量を、考えられるLFP位相値の範囲を表すために使用した。振幅を、0−1の間の範囲へと正規化した。個々のユニットのスパイクレートが低いため、このモデルにおける履歴依存の項は、ユニット間の相互作用をもっぱら反映する。提示のバージョンは、スパイク履歴の12msのビンによっているが、4または8msのビンの使用時に同様の結果が得られている。LOC前およびLOC後の解析の間の相関がLOC移行時の隣接する記録からのバイアスからもたらされることがないように、LOCの周囲のわずかな時間を除外した。
・シングルユニット相関
相関の有意性の評価にとって充分なスパイクを保証するために、高いLOC後スパイクレートのシングルユニットを、相関分析のために選択した。LOCの周囲の短い時間を、隣り合う記録を比較することからもたらされ得るバイアスを減らすために除外した。シングルユニット間の相関を、低速振動によって引き起こされる集合スパイクレートの変化を超える細かい時間尺度の同期を調べるために、シャッフルされたベースラインに対して計算した。スパイク時間を、ミリ秒レベルのタイミング情報を有さない相関したスパイクレートのベースラインを得るために、50−500msの間で200回ランダムにシャッフルした。次いで、ペアにされた相関を、遅延を横断する複数の比較についてボンフェローニ補正を使用してp<0.05で-100−100msの間で有意性について検定した。相関を、シャッフルされたベースラインによって予測されるスパイク発生のポアソン分布からp<0.05のずれを有する場合に有意と判断した。シングルユニットのペアの間の関係を、クロス強度関数の推定の平方根で視覚化した。フィッシャーの正確検定を、R統計ソフトウェア(http://www.r−project.org/)において実行した。
相関の有意性の評価にとって充分なスパイクを保証するために、高いLOC後スパイクレートのシングルユニットを、相関分析のために選択した。LOCの周囲の短い時間を、隣り合う記録を比較することからもたらされ得るバイアスを減らすために除外した。シングルユニット間の相関を、低速振動によって引き起こされる集合スパイクレートの変化を超える細かい時間尺度の同期を調べるために、シャッフルされたベースラインに対して計算した。スパイク時間を、ミリ秒レベルのタイミング情報を有さない相関したスパイクレートのベースラインを得るために、50−500msの間で200回ランダムにシャッフルした。次いで、ペアにされた相関を、遅延を横断する複数の比較についてボンフェローニ補正を使用してp<0.05で-100−100msの間で有意性について検定した。相関を、シャッフルされたベースラインによって予測されるスパイク発生のポアソン分布からp<0.05のずれを有する場合に有意と判断した。シングルユニットのペアの間の関係を、クロス強度関数の推定の平方根で視覚化した。フィッシャーの正確検定を、R統計ソフトウェア(http://www.r−project.org/)において実行した。
・ON期間の開始の検出
オン期間を、すべてのユニットからのスパイクを50msの時間ビンにビン化した後に、スパイクレートの局所スパイクを検出するためのしきい値を設定することによって検出した。ユニットの数、したがって予想される集合スパイクレートが、各々の患者において異なるがゆえに、しきい値を、適切な検出を保証するために、視覚的なチェックの後に、各々の患者について手作業で決定した。検出後に、ON期間の検出から300ms以内の最初のスパイクを開始時間として選び、スパイクヒストグラムで、これらの時間がスパイキングの開始を表すことを確認した。次いで、これらのオン期間開始時間を、低速振動スペクトルおよび波形の形態の後の解析に使用した。
オン期間を、すべてのユニットからのスパイクを50msの時間ビンにビン化した後に、スパイクレートの局所スパイクを検出するためのしきい値を設定することによって検出した。ユニットの数、したがって予想される集合スパイクレートが、各々の患者において異なるがゆえに、しきい値を、適切な検出を保証するために、視覚的なチェックの後に、各々の患者について手作業で決定した。検出後に、ON期間の検出から300ms以内の最初のスパイクを開始時間として選び、スパイクヒストグラムで、これらの時間がスパイキングの開始を表すことを確認した。次いで、これらのオン期間開始時間を、低速振動スペクトルおよび波形の形態の後の解析に使用した。
[結果]
てんかんの外科治療のための頭蓋内監視を受ける3名の患者において、シングルユニット(n=198)、LFP、およびECoGを記録した。シングルユニットおよびLFPを、研究目的で側頭皮質に埋め込んだ96チャネルのマイクロ電極アレイから記録した。記録を、電極を取り除くための計画された神経外科手術の前のプロポフォールのボーラス投与による全身麻酔の誘導の間中ずっと行った。患者に、刺激に応答してボタンを押すことを必要とする聴覚によるタスクを実行させた。すべての患者において、プロポフォールの投与から40秒以内でタスクへの応答が完全に止み、LOC後5−10分続く残りの記録期間において応答はないままだった。LOCを、聴覚刺激への応答がないこの期間の開始と定義した。LOCが最後の応答と次の応答の不履行との間の任意の時点において生じている可能性を認めるために、LOCを、最初に見逃された刺激の1秒前から始まる2度目に見逃された刺激までの区間(合計5秒)と定義した。次いで、LOCの前および後の期間についてすべてのECoGチャネルを横切ってスペクトルを比較し、LOC後の期間における平均スペクトルが、LOC前の期間における平均スペクトルから有意に異なり、低速(0.1−1Hz)およびガンマ(25−40Hz)パワーが意識消失状態において大きくなっていることを発見した。これらの結果は、プロポフォールがGABA網のいかなる大きな途絶も示さなかったことを示唆している。
てんかんの外科治療のための頭蓋内監視を受ける3名の患者において、シングルユニット(n=198)、LFP、およびECoGを記録した。シングルユニットおよびLFPを、研究目的で側頭皮質に埋め込んだ96チャネルのマイクロ電極アレイから記録した。記録を、電極を取り除くための計画された神経外科手術の前のプロポフォールのボーラス投与による全身麻酔の誘導の間中ずっと行った。患者に、刺激に応答してボタンを押すことを必要とする聴覚によるタスクを実行させた。すべての患者において、プロポフォールの投与から40秒以内でタスクへの応答が完全に止み、LOC後5−10分続く残りの記録期間において応答はないままだった。LOCを、聴覚刺激への応答がないこの期間の開始と定義した。LOCが最後の応答と次の応答の不履行との間の任意の時点において生じている可能性を認めるために、LOCを、最初に見逃された刺激の1秒前から始まる2度目に見逃された刺激までの区間(合計5秒)と定義した。次いで、LOCの前および後の期間についてすべてのECoGチャネルを横切ってスペクトルを比較し、LOC後の期間における平均スペクトルが、LOC前の期間における平均スペクトルから有意に異なり、低速(0.1−1Hz)およびガンマ(25−40Hz)パワーが意識消失状態において大きくなっていることを発見した。これらの結果は、プロポフォールがGABA網のいかなる大きな途絶も示さなかったことを示唆している。
・スパイクレートはLOC後に大きく変化し得る
スパイクレートおよびLOCの変化の間の関係を明らかにするために、皮質ニューロンの局所網における全体としてのスパイクレートを調べた。GABA性シグナリングのプロポフォールによる促進に一致して、スパイキングの広範囲に及ぶ抑制がLOC後に観察された。各々の患者において、スパイクレートは、ユニットの集合の全域において、図7に示されるようにLOC後0−30秒で有意に低下した。すべてのユニットの平均スパイクレートは、LOC後35−85秒で極小に達し、ベースラインの目覚めた状態から81−92%低下した。しかしながら、スパイクレートは、数分を過ぎて大幅に回復した。LOC後4分において、ユニットの全集合にまたがるレートは、患者Aにおけるベースラインの33%から患者Bにおけるベースラインの117%までの範囲で大きく異なった。このLOC後4分の期間において、個々のユニットも、広い範囲のスパイクレートを示し、一部はベースライン以上となり、ユニットのうちの35.2%だけがベースラインよりも有意に低いスパイクレートを依然として有し、ユニットのうちの55.1%が有意には異ならず、ユニットのうちの9.7%は有意に増加したスパイクレートを有した。プロポフォールがほぼ完全だが一時的な皮質スパイキングの抑制を迅速に引き起こし、数分後に多数の個別のニューロンがベースラインのスパイクレートを回復すると結論付けられる。プロポフォール血中レベルの変化に起因して生じ得るスパイクレートの時間変動が、脳状態がLOC後に動的であることを示している。しかしながら、被験者は、大いに変化するスパイクレートにもかかわらず、この期間の間中ずっと意識がないままであり、意識の消失がスパイクレートの大きな変化に厳密には関係していないことを示唆している。
スパイクレートおよびLOCの変化の間の関係を明らかにするために、皮質ニューロンの局所網における全体としてのスパイクレートを調べた。GABA性シグナリングのプロポフォールによる促進に一致して、スパイキングの広範囲に及ぶ抑制がLOC後に観察された。各々の患者において、スパイクレートは、ユニットの集合の全域において、図7に示されるようにLOC後0−30秒で有意に低下した。すべてのユニットの平均スパイクレートは、LOC後35−85秒で極小に達し、ベースラインの目覚めた状態から81−92%低下した。しかしながら、スパイクレートは、数分を過ぎて大幅に回復した。LOC後4分において、ユニットの全集合にまたがるレートは、患者Aにおけるベースラインの33%から患者Bにおけるベースラインの117%までの範囲で大きく異なった。このLOC後4分の期間において、個々のユニットも、広い範囲のスパイクレートを示し、一部はベースライン以上となり、ユニットのうちの35.2%だけがベースラインよりも有意に低いスパイクレートを依然として有し、ユニットのうちの55.1%が有意には異ならず、ユニットのうちの9.7%は有意に増加したスパイクレートを有した。プロポフォールがほぼ完全だが一時的な皮質スパイキングの抑制を迅速に引き起こし、数分後に多数の個別のニューロンがベースラインのスパイクレートを回復すると結論付けられる。プロポフォール血中レベルの変化に起因して生じ得るスパイクレートの時間変動が、脳状態がLOC後に動的であることを示している。しかしながら、被験者は、大いに変化するスパイクレートにもかかわらず、この期間の間中ずっと意識がないままであり、意識の消失がスパイクレートの大きな変化に厳密には関係していないことを示唆している。
・スパイキング活動は、LOC後の活動および無活動の期間へと整理される
平均スパイクレートが、意識の状態との不変の関係を呈さなかったことに鑑み、代わりに、意識の消失がスパイキングの時間的構造の変化に関係していないかどうかを調べた。ユニットの集合におけるスパイキング活動が、静かな期間によって中断される短い活動の期間にて生じることを観測した。スパイク活動のない時間を控えめに見積もるために、すべてのユニットからのスパイクを400msのビンへとビン化した。ビンの63%がスパイクを含まず、不変のレートの模擬によるニューロンよりも有意に多いことが、明らかになった(33%、各々の患者についてP<0.001、ピアソンのχ2検定)。したがって、皮質神経回路が、意識消失の間も非常に活発である可能性があるが、この活動は短い期間に集中し、これらの短い期間の後に深い抑制が存在すると、結論付けられる。
平均スパイクレートが、意識の状態との不変の関係を呈さなかったことに鑑み、代わりに、意識の消失がスパイキングの時間的構造の変化に関係していないかどうかを調べた。ユニットの集合におけるスパイキング活動が、静かな期間によって中断される短い活動の期間にて生じることを観測した。スパイク活動のない時間を控えめに見積もるために、すべてのユニットからのスパイクを400msのビンへとビン化した。ビンの63%がスパイクを含まず、不変のレートの模擬によるニューロンよりも有意に多いことが、明らかになった(33%、各々の患者についてP<0.001、ピアソンのχ2検定)。したがって、皮質神経回路が、意識消失の間も非常に活発である可能性があるが、この活動は短い期間に集中し、これらの短い期間の後に深い抑制が存在すると、結論付けられる。
・意識消失状態は、低速振動帯域のパワーの急激な増加および安定な維持によって示される
低速振動は、ニューロンのスパイキングを変調することが知られており、したがってLOCに対するその発生の経時変化を調べた。LOC前において、低速振動帯域(0.1−1Hz)のパワーは、安定であった(LOC前の各々の患者においてSD<7%)。LOCにおいて、低速振動帯域のパワーは、35−70%急増し(図8)、このパワーの増加は、すべての患者においてLOCの1つの5秒ウインドウにおいて生じた(テーブルS1)。その後に、低速振動のパワーは、記録の残りの期間についてこの高いレベルにとどまり、LOC後の時間ビンの99.0%が、ベースラインの最中のあらゆる時間ビンにおいて生じた低速振動パワーよりも大きい低速振動パワーを有していた(図8A)。したがって、低速振動帯域におけるパワーは、LOCと同時に変調され、スパイクレートの大きな変動にもかかわらずその後も保たれると結論付けられる。
低速振動は、ニューロンのスパイキングを変調することが知られており、したがってLOCに対するその発生の経時変化を調べた。LOC前において、低速振動帯域(0.1−1Hz)のパワーは、安定であった(LOC前の各々の患者においてSD<7%)。LOCにおいて、低速振動帯域のパワーは、35−70%急増し(図8)、このパワーの増加は、すべての患者においてLOCの1つの5秒ウインドウにおいて生じた(テーブルS1)。その後に、低速振動のパワーは、記録の残りの期間についてこの高いレベルにとどまり、LOC後の時間ビンの99.0%が、ベースラインの最中のあらゆる時間ビンにおいて生じた低速振動パワーよりも大きい低速振動パワーを有していた(図8A)。したがって、低速振動帯域におけるパワーは、LOCと同時に変調され、スパイクレートの大きな変動にもかかわらずその後も保たれると結論付けられる。
次に、LOCにおけるパワーの変化が低速振動帯域に特有なのか、あるいは他の周波数帯域も同様の関係を示すのかを調査するために、他の周波数帯域を調べた。10Hzより大きい(>10Hz)範囲のパワーがLOC後にゆっくりと増加したのに対し、θ(3−8Hz)のパワーは反対の傾向を示し、LOC後に20−30%低下した(図8B)。さらに、これらすべての帯域のパワーは、おそらくは維持段階におけるプロポフォール投薬量の違いの結果として、LOC後に一貫した変化を保つよりもむしろ、数分にわたって変調を被り続けた。したがって、LOCにおけるパワーの安定な増加は、低速振動帯域に特有であった。これらの結果は、スパイクレートおよび多数の振動の特徴(ガンマ、アルファ、シータ)の両方が、LOC後に非常に変動し得ることを実証している。対照的に、低速振動パワーは、LOCにおいて急激に増加し、記録の残りの期間の間中ずっと高いままであった(図8A)。したがって、低速振動帯域のパワーの開始が、意識のない状態への移行と関係がある一方で、他の振動の特徴は、数分後まで定常状態に到達せず、プロポフォールの濃度の変化における動的な神経系のシフトを反映している可能性があると結論付けられる。
・ニューロンスパイキングは、LOCにおいて低速振動に対して位相結合となる
深い麻酔下の動物についての研究で、ニューロンスパイク活動が低速振動の位相に結合していることが示されている。このスパイク−位相関係がLOCにおいてすぐに現れるのか否か、およびその後も一貫して維持されるのか否かを調べた。各々の患者において、LOC後の集合スパイク活動は、LFP低速振動(0.1−1Hz)に有意に位相結合し、すべてのユニットからのスパイクの46.6%が0−π/2の位相において低速振動の谷の近くで生じていた(最大スパイクはπ/20−4π/20の位相)。位相結合は、LOC(-2.5−7.5秒の間)の数秒以内に現れ、続くスパイクレートの変化の間中ずっと続いた(図9)。また、スパイクは、最も近いECoGチャネルの低速振動に、しかしながら有意に異なる位相(極大の位相=0−π/10;P<0.001、コルモゴロフ−スミノフ検定)で位相結合し、これはLFP低速振動が隣接のより大規模なECoG記録と比べて異なるスパイキングへの関係を有することを示唆している。これらの結果は、スパイクがLOCにおいて低速振動に位相結合するという仮説を裏付けている。
深い麻酔下の動物についての研究で、ニューロンスパイク活動が低速振動の位相に結合していることが示されている。このスパイク−位相関係がLOCにおいてすぐに現れるのか否か、およびその後も一貫して維持されるのか否かを調べた。各々の患者において、LOC後の集合スパイク活動は、LFP低速振動(0.1−1Hz)に有意に位相結合し、すべてのユニットからのスパイクの46.6%が0−π/2の位相において低速振動の谷の近くで生じていた(最大スパイクはπ/20−4π/20の位相)。位相結合は、LOC(-2.5−7.5秒の間)の数秒以内に現れ、続くスパイクレートの変化の間中ずっと続いた(図9)。また、スパイクは、最も近いECoGチャネルの低速振動に、しかしながら有意に異なる位相(極大の位相=0−π/10;P<0.001、コルモゴロフ−スミノフ検定)で位相結合し、これはLFP低速振動が隣接のより大規模なECoG記録と比べて異なるスパイキングへの関係を有することを示唆している。これらの結果は、スパイクがLOCにおいて低速振動に位相結合するという仮説を裏付けている。
個々のユニットを調べると、大部分(LOC後スパイキングを有する183個のユニットのうちの67.2%)は、LFP低速振動に有意に位相結合した(P<0.05、ピアソンのχ2検定)。この分析を0.1Hzを超えるLOC後スパイクレートのユニットに限定すると、ユニットのうちの4.0%が有意な位相結合を有した(P<0.05、n=50、ピアソンのχ2検定)。有意な位相結合を有さないユニットのうち、65.0%は、0−π/2の位相の範囲内のピークスパイキング活動も示し、大部分のユニットが同じ位相結合の傾向を有することを実証している。これらの結果は、LOC後にほぼすべてのスパイキング活動が低速振動の位相に緊密に結合し、低速振動サイクルの大部分について抑制されることを示している。細胞外の記録だけを使用するこれまでの研究との一貫性を保つために、これらの高スパイキングの期間を「オン」状態と称し、休止状態の期間を「オフ」状態と称する。オンおよびオフ状態が交互であるがゆえに、スパイク活動は、数百ミリ秒の期間に限定され、やはり数百ミリ秒にわたって続くことができる休止状態の期間によって中断される。したがって、低速振動は、LOCにおいて生じる皮質スパイキングの時間的な分断を表すと結論付けられる。
・低速振動は離れた皮質領域間の情報転送を弱める
LOC後スパイキングが皮質領域において周期的に中断されることに鑑み、離れた領域にまたがる情報伝達も影響されているか否かを調査した。少なくとも3分のLOC後ECoGデータのある2名の患者(AおよびB)において、ECoG電極のグリッドの全域の低速動態を調べた。図10Aが、患者BにおけるECoGおよびマイクロ電気記録の位置を示している。スパイキングが低速振動の位相に強く結合しているため、種々の皮質領域におけるニューロン活動の相対タイミングを推察するために、この位相が脳を横断してどのように変化するのかを調べた。異なる皮質領域間の位相関係を、ある期間における2つの振動の間の位相ずれを表現する位相ロック因子(PLF)を使用して定量化した。PLFの大きさは、0−1の範囲であり、位相のずれの安定性を定量化している(1は位相のずれが一定であることを反映し、0は位相のずれが変化することを表す)。PLF角度は、平均の位相ずれを表す。グリッド(8×4または8×8cm、総電極数n=96)上のECoGチャネルのすべてのペアの間のPLFを計算し、局所および離れた低速振動の間の関係を割り出した。PLFの大きさは、LOC前の状態とLOC後の状態との間で保存され(相関係数R=0.66、患者A;R=0.88、患者B;各々についてP<10−50、t検定)、LOC後にPLFの大きさに小さいが有意な増加が存在することが明らかになった(平均増加=0.02−0.07、P<0.01、ウィルコクソンの符号順位検定)(図10A)。この結果は、神経活動における低周波数の相関がLOC後も維持されるというこれまでの発見に一致しており、LOCが異なる領域の低速振動の間の位相関係の強さのわずかなずれにのみ関係を有することを示唆している。
LOC後スパイキングが皮質領域において周期的に中断されることに鑑み、離れた領域にまたがる情報伝達も影響されているか否かを調査した。少なくとも3分のLOC後ECoGデータのある2名の患者(AおよびB)において、ECoG電極のグリッドの全域の低速動態を調べた。図10Aが、患者BにおけるECoGおよびマイクロ電気記録の位置を示している。スパイキングが低速振動の位相に強く結合しているため、種々の皮質領域におけるニューロン活動の相対タイミングを推察するために、この位相が脳を横断してどのように変化するのかを調べた。異なる皮質領域間の位相関係を、ある期間における2つの振動の間の位相ずれを表現する位相ロック因子(PLF)を使用して定量化した。PLFの大きさは、0−1の範囲であり、位相のずれの安定性を定量化している(1は位相のずれが一定であることを反映し、0は位相のずれが変化することを表す)。PLF角度は、平均の位相ずれを表す。グリッド(8×4または8×8cm、総電極数n=96)上のECoGチャネルのすべてのペアの間のPLFを計算し、局所および離れた低速振動の間の関係を割り出した。PLFの大きさは、LOC前の状態とLOC後の状態との間で保存され(相関係数R=0.66、患者A;R=0.88、患者B;各々についてP<10−50、t検定)、LOC後にPLFの大きさに小さいが有意な増加が存在することが明らかになった(平均増加=0.02−0.07、P<0.01、ウィルコクソンの符号順位検定)(図10A)。この結果は、神経活動における低周波数の相関がLOC後も維持されるというこれまでの発見に一致しており、LOCが異なる領域の低速振動の間の位相関係の強さのわずかなずれにのみ関係を有することを示唆している。
次に、異なる皮質領域における低速振動が異なる位相にあるのかどうかを判断するために、PLFが距離につれてどのように変化するのかを調べた。PLFの大きさは、距離につれて有意に低下し(R=−0.61、患者A;R=−0.82、患者B;各々についてP<10−6)(図10Bおよび図11C)、離れた低速振動間の位相のずれが変化することを示している。さらに、平均の位相ずれ(PLF角度)も調べた。離れたチャネル間の平均の位相ずれは、0−πに及ぶ広い範囲にわたって変化した(図10C)。わずかπ/4の位相ずれが約250msの遅延に相当するため、離れたECoGチャネルにおける低速振動は、大きなタイミングの違いを有した。これらの結果は、離れた低速振動が、多くの場合に局所振動とは異なる位相にあり、これらの位相の違いが時間において安定でないことを示している。
これらの位相のずれがニューロン活動にどのように影響を与えているのかを調べるため、ECoGグリッドの全域において測定される局所スパイキングと低速振動との間の位相関係を調べた。スパイク位相結合を、観測された位相分布と一様分布との間のカルバック−ライブラーダイバージェンスをビットにて定量化する変調インデックス(MI)として測定した。大きなMIが、局所スパイキングとECoG位相との間の強い関係を示す一方で、ゼロのMIは、関係がないことを示している。LOC前期間において、MIの値は、すべてのECoGチャネルにおいて一貫して小さく(MI範囲:0.001−0.04ビット)(図11D)、低速振動の位相がLOC前の期間におけるスパイキングの強い抑制に関係がないことを示している。LOC後には、チャネル間のMIのばらつきが有意に大きくなった(範囲:0.006−0.62ビット、各々の患者においてP<0.01、ルビーン検定)。スパイクは、最も近いECoGチャネルの低速振動に強く位相結合し、この関係は、距離につれて有意に弱まった(R=−0.40、患者A;R=−0.68、患者B;各々の患者においてP<0.001)(図11Bおよび11D)。
総合すると、位相−位相およびスパイク−位相の結合についての解析は、LOC後の状態が、局所の低速振動の位相に結合したスパイキングの周期的かつ深い抑制を特徴とし、この位相が皮質の全域にわたって一貫的ではないことを示している。位相とオン/オフ期間との間の強い関係に鑑み、この結果は、LOC後に、離れた(>2cm)皮質領域におけるオン期間が異なる時間に生じることを示唆している(図11E、右)。対照的に、LOC前状態における低周波数振動は、スパイキングの強い抑制と関係がなく、したがってニューロンが、位相のずれの存在にもかかわらず局所または遠方の低速振動の任意の位相において発射することができる(図11E、左)。したがって、LOCにおいて生じる位相のずれおよびスパイクの強力な位相結合の組み合わせが、ある皮質領域が別の領域が活発であるときに深く抑制されることが頻繁であるため、離れた皮質領域の間の情報伝達を妨げると予想される。
LOC後の期間においてスパイクは離れた低速振動に強くは位相結合していないが、スパイクの記録場所から3cm超に位置するいくつかの電極が、統計的に有意な関係を示した。これらの場合、位相結合が弱く、極大スパイキングの位相がずれており、離れた皮質領域は同時のオン期間を有する可能性が低いという結論に矛盾していない。しかしながら、この発見は、脳の各所における低速振動の非同時性にもかかわらず、離れた皮質領域における低速振動の間にリンクが依然として存在し得る可能性を提起している。観測された位相ずれ(最大でπまでの範囲)に鑑み、そのような結合は、数百ミリ秒にわたって頻繁に生じると考えられ、正確に時間を合わせた入力および相互作用を反映しないと考えられる。全体として、これらの解析は、離れた皮質領域が、局所網が活発であるときに、低速振動の抑制された段階にあることが多いという結論を裏付けている。したがって、皮質領域における活動が絶縁され、離れた領域の間の情報伝達が損なわれている。
・局所網の構造はLOC後も保たれる
局所活動の中断および長距離情報伝達の途絶が観察されたため、局所皮質神経網内の接続も弱まっているか否かを調べた。スパイキングを低速振動の位相のみによって予測できるか否か、あるいは局所網の活動の履歴も寄与しているのか否かを試験するために、一般化線型モデル(GLM)を、ユニットのアンサンブルからのスパイク活動にフィットさせた。モデルに含まれる共変量の数を選択するために、ベイズ情報量基準を使用した。各々の患者において、このモデルが>30msの集合スパイク履歴を含むことが明らかになった(図12A)。したがって、アンサンブルのスパイク履歴が将来のスパイキングを予測し、皮質活動が短いオン期間に限られるが、これらの期間においてユニット間構造が存在することを示している。このパターンは、最近のスパイク履歴(0−48ms)が将来のスパイクを予測し、より遠いスパイク履歴ほど寄与が少ないというLOC前状態に似ている。この結果は、LOC後に皮質活動がオン期間における秩序のないスパイキングへと低下してはいないことを示唆している。むしろ、かなりの構造が、近隣のニューロンの間に、それらの短い活動時間において維持されている。
局所活動の中断および長距離情報伝達の途絶が観察されたため、局所皮質神経網内の接続も弱まっているか否かを調べた。スパイキングを低速振動の位相のみによって予測できるか否か、あるいは局所網の活動の履歴も寄与しているのか否かを試験するために、一般化線型モデル(GLM)を、ユニットのアンサンブルからのスパイク活動にフィットさせた。モデルに含まれる共変量の数を選択するために、ベイズ情報量基準を使用した。各々の患者において、このモデルが>30msの集合スパイク履歴を含むことが明らかになった(図12A)。したがって、アンサンブルのスパイク履歴が将来のスパイキングを予測し、皮質活動が短いオン期間に限られるが、これらの期間においてユニット間構造が存在することを示している。このパターンは、最近のスパイク履歴(0−48ms)が将来のスパイクを予測し、より遠いスパイク履歴ほど寄与が少ないというLOC前状態に似ている。この結果は、LOC後に皮質活動がオン期間における秩序のないスパイキングへと低下してはいないことを示唆している。むしろ、かなりの構造が、近隣のニューロンの間に、それらの短い活動時間において維持されている。
シングルユニット間の構造は、ユニットのいくつかのペアの間のクロス強度関数のピークにさらに反映されており、スパイク活動のミリ秒スケールの同期を示している(図12Bおよび12C)。ペアごとの同期がLOC後も続くか否かを調べるために、患者Aにおいて最高のスパイクレートを有する15個のユニットの間の相互相関を分析した。103個のペア(同じ電極上で記録されたペアを除く)のうち、21個が、LOC前において有意に相関していた(P<0.05、シャッフルされたスパイクからのベースラインに対する正確ポアソン検定、複数の比較についてのボンフェローニ補正)。LOC後に、これらのペアの71.4%が、有意な相関を維持していた。対照的に、LOC前に相関していなかったペアにおいて、LOC後に相関したペアの数は有意に少なかった(わずか18.3%)(P<10−5、フィッシャーの正確検定)。この結果は、ユニットのペアが、相関の有無にかかわらず、LOC前に有していた相関構造と同じ相関構造をLOC後も保つ傾向にあることを示している。総合すると、GLMおよびペアの相関の両方の結果が、有意なユニット間の接続がLOC後のオン期間において維持されることを示している。この結果は、LOC後の有力な変化が皮質網の絶縁である一方で、局所網構造の態様が不変のままである可能性を示唆している。
・スパイキング活動は低速振動の形状およびより高い周波数のパワーの変調に関係している
低速振動の基礎にある機構は、議論されている。したがって、スパイク活動と低速振動の形状との間をさらに詳しく調べた。図13Aが、平均的な患者についての正規化されたスペクトログラムを示している。オン期間の開始においてトリガされた平均LFPを計算した。トリガされた平均は、オン期間がLFP低速振動の極小において始まることを示している(図13Bおよび13C)。さらに、LFP低速振動は非対称であり(図13C)、スパイキング前よりもスパイキング後の方がピークが高かった(平均差=40.7μV、P<10−5、各々の患者についてp<0.005、t検定)。この非対称形状が低速振動のすべてのサイクルにおいて生じたか、あるいは高いスパイク活動を有するサイクルに特有なのかを、試験した。スパイクを含むLFP低速振動のサイクルを、スパイクを含まないサイクルと比較し、低速振動の極小の振幅をマッチさせた。スパイクに関係しないサイクルが対称(平均差=0.3μV、P>0.9、t検定)である一方で、多数のスパイクに関係したサイクルは、スパイキング後により高いピークを生じた(平均差=32.2μV、P<0.001、各々の患者についてP<0.05、t検定)(図13D)。この非対称は、隣接のECoG記録までは広がっておらず、スパイク活動と低速振動の形状との間の関係が、1cm(すなわち、ECoGグリッドにおける間隔)未満に限られた非常に局所的な影響であることを示唆している。これらの結果は、高いスパイクレートがLFPにおける増大した低速振動ピークに関係しており、スパイク活動後の強められた抑制を反映している可能性を示している。
低速振動の基礎にある機構は、議論されている。したがって、スパイク活動と低速振動の形状との間をさらに詳しく調べた。図13Aが、平均的な患者についての正規化されたスペクトログラムを示している。オン期間の開始においてトリガされた平均LFPを計算した。トリガされた平均は、オン期間がLFP低速振動の極小において始まることを示している(図13Bおよび13C)。さらに、LFP低速振動は非対称であり(図13C)、スパイキング前よりもスパイキング後の方がピークが高かった(平均差=40.7μV、P<10−5、各々の患者についてp<0.005、t検定)。この非対称形状が低速振動のすべてのサイクルにおいて生じたか、あるいは高いスパイク活動を有するサイクルに特有なのかを、試験した。スパイクを含むLFP低速振動のサイクルを、スパイクを含まないサイクルと比較し、低速振動の極小の振幅をマッチさせた。スパイクに関係しないサイクルが対称(平均差=0.3μV、P>0.9、t検定)である一方で、多数のスパイクに関係したサイクルは、スパイキング後により高いピークを生じた(平均差=32.2μV、P<0.001、各々の患者についてP<0.05、t検定)(図13D)。この非対称は、隣接のECoG記録までは広がっておらず、スパイク活動と低速振動の形状との間の関係が、1cm(すなわち、ECoGグリッドにおける間隔)未満に限られた非常に局所的な影響であることを示唆している。これらの結果は、高いスパイクレートがLFPにおける増大した低速振動ピークに関係しており、スパイク活動後の強められた抑制を反映している可能性を示している。
低いガンマ(25−50Hz)パワーもLOC後に増加しているため、そのスパイク活動への関係も調べた。オン期間は、LFPおよびECoGにおける有意に増加した広帯域(<50Hz)パワーに関係していた(P<0.05、F検定、周波数を横断する多数の比較についてのボンフェローニ補正)(図13A)。アルファ、ベータ、およびガンマ帯域におけるLFPパワーは、高いスパイク活動を有する低速振動サイクルにおいて、低いスパイク活動を有するサイクルと比べて有意に高かった(P<0.05、F検定、周波数を横断する多数の比較についてのボンフェローニ補正)(図13E)。これらの結果は、数分にわたって生じるガンマパワーの低速な変化に加えて、ガンマパワーは、低速振動(0.1−1Hz)の時間スケールにおいて変動も生じ、オン期間においてより高かった。したがって、LOC後に低ガンマ範囲のパワーは高い局所スパイクレートに関係していると結論付けられる。この結果は、LOC後のガンマパワーの緩やかな増加が、とくにLOCにおいて生じる動態を反映しているというよりもむしろ、スパイクレートのLOC後の変動に関係している可能性を示唆している。
プロポフォールによって引き起こされた意識消失の最中の低速振動は、睡眠の最中の徐波といくつかの特徴を共有しており、すなわち両方の状態において、スパイク活動が、脳の全域において同期はしていない局所低速振動に結合している。ここで観測される非共時性は、麻酔された動物におけるこれまでの観測と対照的であり、頭蓋内の電極の8cmのグリッドによってもたらされた増加した空間サンプリングによって引き起こされた可能性がきわめて高い。さらに、LOC前の神経網の特性がLOC後も保存されるということは、睡眠時の皮質のUP状態が目覚めている状態と同様の動態を有するという仮説に一致する。しかしながら、プロポフォール下で観測されたパターンは、睡眠時のパターンからの著しい違いも示す。
プロポフォールによる全身麻酔の誘発時の低速振動の急な開始は、ボーラス投与によって引き起こされる急なLOCを誘発させる。全身麻酔は典型的にはボーラスによって誘発させられるため、低速振動への急な移行が、全身麻酔の際に意識を失うときの臨床患者の大多数において生じると考えられる。対照的に、睡眠の際には、低速振動が、睡眠への移行の緩やかな性質に一致して、数分を経て現れる。どちらの場合も、低速振動の動態は、LOCに時間的に従い、低速振動が皮質の情報伝達の途絶を表すという提案をさらに支持している。さらに、スパイク活動の期間が、今回の結果においては短い一方で、睡眠は、スパイキングが徐波の事象の際の短い抑制の期間を伴いつつ持続することを特徴とする。UPおよびDOWN状態の比の差が、プロポフォールが睡眠と比べてより激しい意識の途絶を生み出し、すなわちおそらくは異なる皮質領域間のニューロンのスパイキングの時間的な重なり合いを減らして、大規模集団活動の組織化をより確実に防止する理由について、1つの説明をもたらしている可能性がある。さらに、睡眠不足の齧歯類における絶縁されたオフ状態が行動障害に関係しているという近年の発見は、オフ状態の空間的および時間的特性が皮質機能に影響を及ぼすという仮説に一致する。
スパイク活動と低速振動の形状との間のここで特定された関係は、皮質のスパイキングが低速振動において因果的役割を有する可能性を示唆している。スパイクは、LFP低速振動における高い振幅ピークを予測するが、この作用は、ニューロンのより大きな集団からの活動を積分するECoG記録までは広がらない。この作用の非常の局所的な性質は、皮質のスパイキングが局所の低速振動に直接的に影響を及ぼす可能性を示唆している。考えられる1つの機構は、オン期間における錐体神経細胞のスパイキングが、プロポフォールによって強められる抑制作用を持ち、局所網をより過分極した状態へと駆動するGABA性の介在ニューロンを刺激するというものである。別の可能性は、スパイク活動が、徐波睡眠において実証済みの機構である皮質ニューロンの脱促通を駆動できるというものである。これらの作用は、皮質または皮質視床のいずれかの仮説に一致することができる。
さらに、低速振動の動態は、スパイキング活動がガンマパワーに強く関係することが示されており、かつスパイキングが脳の全体における低速振動の非共時性ゆえに離れた皮質領域において同時に生じる可能性が低いため、とくには離れた皮質領域にまたがるプロポフォールによって誘発されるLOCの後に観察されるガンマコヒーレンスの低下にも関係し得る。したがって、低速振動は、皮質領域間のガンマ振動の結合を弱める可能性があり、この作用が、長距離をまたいでコヒーレントでないガンマ振動を生み出す可能性がある。機能的結合の評価に使用されることもあるfMRIおよびECoGにおける低周波数の空間相関が、プロポフォール下のLOC後に不変のままであることが明らかになっている。本発明によるPLFの大きさの分析は、LOCの前後で同様の空間分布を有し、これまでの観測を裏付けている。ここに示した研究は、低周波数の空間的関係がLOCの前後で同様のままであるが、低周波数の振動の機能特性はLOCにおいて変化し、空間をまたいで離れた短いオン状態へとスパイキングをグループ化することを示している。
また、この研究に参加した患者がてんかんを有しており、彼らの皮質網が発作中心および投薬履歴ゆえに異なる可能性があることに、注目すべきである。しかしながら、いくつかの因子が、これらの結果が健康な脳にも広く当てはまるという仮説を裏付けている。第1に、微小電極が各々の患者の発作中心から少なくとも2cmに位置し、組織構造において局所網のいかなる途絶も見られておらず、LFPおよびシングルユニットが健康な皮質から記録されたことを示唆している。第2に、プロポフォールの全体としての効果が、健康な被験者において見られるものにきわめて一致しており、すなわち意識の消失が、これまでの研究に強く一致して、低速振動パワーの増加およびガンマパワーの増加に関係している。これらの結果は、プロポフォールがこれらの患者の脳において通常どおりに作用したことを示唆している。最後に、各々の別個の患者についての統計が報告され、低速振動の開始のタイミングおよびそのスパイキングとの関係が、患者の個人の臨床プロフィルにかかわらず、患者をまたいで再現されることが示されている。てんかんは異なる皮質の起源による不均質な疾患であるため、これらの結果の高い一貫性は、ここで報告された作用がてんかんの存在によって引き起こされるのではないことを示唆している。これら3つの観察は、今回の結果がてんかんの脳の産物ではなく、むしろ健康な脳へと一般化できるであろうLOCの真の神経相関を反映していることを示唆している。
(実施例II)
いくつかのEEGパターンは、特定の処置の最中に一貫して観察されるが、それらが意識消失にどのように機能的に関係しているのかが、不明確である。具体的には、ケタミンおよびデクスメデトミジンなどの他の麻酔薬は、プロポフォールのものとは異なる可能性がある分子および神経回路の機構を通じて機能する。例えば、γ−アミノ酪酸受容体特異的作用薬(GABAA)であるプロポフォールおよびα2−アドレナリン受容体作用薬であるデクスメデトミジンなど、異なる薬剤において類似のEEGパターンが生じることが知られている。プロポフォールは、充分に調整された前頭部の視床皮質のアルファ振動および非同期の低速振動に関係する。同様に、デクスメデトミジンは、前頭部の領域にわたって8−12Hzの範囲において検出されるスピンドル状の活動および低速振動を生じさせる。したがって、投与の際に観察されるEEGパターンは表面上は類似しているように見受けられるが、異なる挙動および臨床特性が現れる可能性がある。例えば、プロポフォールが与えられる患者と異なり、デクスメデトミジンの注入が与えられる患者は、意識消失(LOC)の維持に必要な血中濃度のレベルにおいて穏やかな言葉または触覚による刺激によって容易に目覚める可能性がある。これは、異なる薬剤によって引き起こされる脳の動態に、観察された臨床応答および挙動における違いを説明できる相違が存在するのか否か、およびそのような脳の動態をEEGにおいて検出できるのか否か、という自然な疑問につながる。
いくつかのEEGパターンは、特定の処置の最中に一貫して観察されるが、それらが意識消失にどのように機能的に関係しているのかが、不明確である。具体的には、ケタミンおよびデクスメデトミジンなどの他の麻酔薬は、プロポフォールのものとは異なる可能性がある分子および神経回路の機構を通じて機能する。例えば、γ−アミノ酪酸受容体特異的作用薬(GABAA)であるプロポフォールおよびα2−アドレナリン受容体作用薬であるデクスメデトミジンなど、異なる薬剤において類似のEEGパターンが生じることが知られている。プロポフォールは、充分に調整された前頭部の視床皮質のアルファ振動および非同期の低速振動に関係する。同様に、デクスメデトミジンは、前頭部の領域にわたって8−12Hzの範囲において検出されるスピンドル状の活動および低速振動を生じさせる。したがって、投与の際に観察されるEEGパターンは表面上は類似しているように見受けられるが、異なる挙動および臨床特性が現れる可能性がある。例えば、プロポフォールが与えられる患者と異なり、デクスメデトミジンの注入が与えられる患者は、意識消失(LOC)の維持に必要な血中濃度のレベルにおいて穏やかな言葉または触覚による刺激によって容易に目覚める可能性がある。これは、異なる薬剤によって引き起こされる脳の動態に、観察された臨床応答および挙動における違いを説明できる相違が存在するのか否か、およびそのような脳の動態をEEGにおいて検出できるのか否か、という自然な疑問につながる。
デクスメデトミジンおよびプロポフォールのEEG活動の間で共有される関係ならびに異なる目覚めの状態を調べるために、手術中の前頭部EEGを、デクスメデトミジンによる軽い鎮静、プロポフォールによる鎮静、およびプロポフォールによる全身麻酔(GA)の患者から記録した。後述されるように、時間変化するスペクトルを使用するEEGの動態およびコヒーレンス法から、平均グループレベルスペクトログラムが定性的に同様であるように見受けられる一方で、0.1−1Hzおよび8−12HzのEEG周波数帯域におけるコヒーレンスのパターンが異なることが、明らかになった。デクスメデトミジンは、プロポフォールの低速振動と比べてより大きいコヒーレンスを定する0.1−1Hzの低速振動を生じさせる。この発見は、睡眠関連の低速振動がきわめて同期的である一方で、プロポフォールによって引き起こされる低速振動は非同期的であり、分断された皮質の情報伝達の状態を反映しているという観察と一致する。反対に、デクスメデトミジン誘起の8−12Hzの振動は、プロポフォール誘起の振動と比べて低いコヒーレンスを示した。これは、8−12Hzの振動のコヒーレンスが、情報伝達をブロックする前頭部の視床皮質の回路の同調(entrainment)を表すという考えと一致する。とりわけ、コヒーレンスにおけるこれらの違いは、研究された3つのグループによって表される意識のレベルにつれて適切に変化する。
さらに、麻酔の蒸気の潜在的な神経回路機構の文脈においてEEGの動態の間の関係を研究するために、手術中のEEGを、GAの維持に一般的に用いられるエーテル誘導体である主維持剤としてのセボフルランによる全身麻酔の患者から記録した。静脈注射の麻酔薬としてのプロポフォールと異なり、セボフルランのEEGの特徴は、充分には研究されていない。したがって、接続性の解析を、麻酔によって引き起こされる意識の低下に関係すると仮定されるEEGの動態について、実行した。後述されるように、GAによって引き起こされる意識消失において、セボフルランの巨視的なEEGの動態は、プロポフォールのものによく似ていることが明らかになった。これらの観測された類似性は、EEGの特徴が麻酔によって引き起こされる意識の低下にどのように関係しているのかについての現時点における理解に一致し、全身麻酔の神経回路機構についてのさらなる実験研究のための枠組みを提供する。
[方法]
・スペクトル解析
パワースペクトルまたはスペクトルとも称されるパワースペクトル密度が、信号内のエネルギまたはパワーの周波数分布を定量化する。スペクトログラムは、スペクトルの時間変化版である。例えば、図14Aおよび図22Aは、デクスメデトミジンによる鎮静、プロポフォールによる鎮静、およびプロポフォールによって引き起こされた意識消失、ならびにセボフルランによって引き起こされた全身麻酔のもとにある代表的な志願者のEEGスペクトログラムを示している。これらのスペクトログラムにおいては、周波数がy軸に沿って配置され、時間がx軸に沿って配置され、パワーがデシベル(dB)尺度で色によって示されている。図14Bおよび図22Bには、時間ドメインにおける0.1−1Hz、1−4Hz、4−8Hz、および8−16Hzの帯域通過フィルタ処理されたEEG信号のエポックを選択した。スペクトルおよびスペクトログラムは、Chronuxツールボックス(http://chronux.org)において実行されるマルチテーパ法を使用して計算した。マルチテーパ法を、多数の麻酔関連の現象の観察において望ましいスペクトル分解能の精密な設定が可能であるがゆえに、とくに選択した。さらに、スペクトル分解能の特定の選択において、マルチテーパ法は、伝統的なノンパラメトリックなスペクトル推定法と比べて少ないバイアスおよび少ない分散を提供する。そのような少ないバイアスおよび分散は、振動またはピークがよりはっきりと見える視覚的により明瞭な表示をもたらし、後の処理および推論の工程におけるより高い感度および特異性を促進する。
・スペクトル解析
パワースペクトルまたはスペクトルとも称されるパワースペクトル密度が、信号内のエネルギまたはパワーの周波数分布を定量化する。スペクトログラムは、スペクトルの時間変化版である。例えば、図14Aおよび図22Aは、デクスメデトミジンによる鎮静、プロポフォールによる鎮静、およびプロポフォールによって引き起こされた意識消失、ならびにセボフルランによって引き起こされた全身麻酔のもとにある代表的な志願者のEEGスペクトログラムを示している。これらのスペクトログラムにおいては、周波数がy軸に沿って配置され、時間がx軸に沿って配置され、パワーがデシベル(dB)尺度で色によって示されている。図14Bおよび図22Bには、時間ドメインにおける0.1−1Hz、1−4Hz、4−8Hz、および8−16Hzの帯域通過フィルタ処理されたEEG信号のエポックを選択した。スペクトルおよびスペクトログラムは、Chronuxツールボックス(http://chronux.org)において実行されるマルチテーパ法を使用して計算した。マルチテーパ法を、多数の麻酔関連の現象の観察において望ましいスペクトル分解能の精密な設定が可能であるがゆえに、とくに選択した。さらに、スペクトル分解能の特定の選択において、マルチテーパ法は、伝統的なノンパラメトリックなスペクトル推定法と比べて少ないバイアスおよび少ない分散を提供する。そのような少ないバイアスおよび分散は、振動またはピークがよりはっきりと見える視覚的により明瞭な表示をもたらし、後の処理および推論の工程におけるより高い感度および特異性を促進する。
一般に、麻酔関連の振動は、低速およびアルファならびにスピンドルの振動について約0.5−1Hzの帯域幅を有する。麻酔によって引き起こされるベータおよびガンマの振動は、より広くなる傾向にあり、約5Hzまたはそれ以上の帯域幅である。スペクトル解析のパラメータを、これらの振動を明瞭に視認可能かつ互いに区別可能にする一方で、時間につれての変化を追跡するための充分な時間分解能も保証するように、選択することができる。例えば、より狭いスペクトル分解能が必要とされるならば、より長いウインドウ長Tを選択することができるが、急な時間変化の識別が困難になりかねないという代償が伴う。同様に、スペクトル分解能を改善するために時間−帯域幅の積TWを小さくできるが、使用できるテーパが少なくなりかねず(K≦2TW−1)、分散の増加につながるという代償を伴う。同様に、時間の追跡を改善するためにより短い時間長Tを選択することができ、分散を改善するためにより広い時間−帯域幅の積TWを選択することができるが、どちらもスペクトル分解能の低下という代償を伴う。一般に、これらのスペクトル解析パラメータを、対象とする麻酔または鎮静の特性の検出、視覚化、および時間追跡を改善または最適化するために、本明細書に提示の実施例から変更することができる。さらに、異なる薬剤または臨床の背景において、異なるパラメータの組を使用することができ、あるいは利用可能にすることができる。
グループレベルのスペクトログラムを、志願者における中間値をとることによって計算した。スペクトルも、選択されたEEGのエポックについて計算した。次いで、得られたスペクトルをすべてのエポックについて平均し、95%信頼区間をテーパにもとづくジャックナイフ技術によって計算した。スペクトル解析パラメータとして、ウインドウ長T=4s(重なり合いは0s)、時間−帯域幅の積TW=3、テーパの数K=5、および1.5Hzのスペクトル分解能2Wが挙げられる。ピークパワーおよびその周波数を、各々の個別の被験者に関してdex−スピンドル、移動ピーク、および前頭部アルファ振動について推定した。被験者にまたがる平均を実行し、これらの振動についてグループレベルのピークパワーおよび周波数を得た。
・コヒーレンス解析
コヒーレンスは、所与の周波数における2つの信号の間の相関の程度を定量化する。コヒーレンスは、周波数によって指示された相関係数と同等であり、1というコヒーレンスが、2つの信号が当該周波数において完璧に相関していることを示している一方で、0というコヒーレンスは、2つの信号が当該周波数において相関していないことを示している。2つの信号xおよびyの間のコヒーレンス関数Cxy(f)は、以下の式で定義される。
コヒーレンスは、所与の周波数における2つの信号の間の相関の程度を定量化する。コヒーレンスは、周波数によって指示された相関係数と同等であり、1というコヒーレンスが、2つの信号が当該周波数において完璧に相関していることを示している一方で、0というコヒーレンスは、2つの信号が当該周波数において相関していないことを示している。2つの信号xおよびyの間のコヒーレンス関数Cxy(f)は、以下の式で定義される。
ここでSxy(f)は、信号x(t)およびy(t)の間のクロススペクトルであり、Sxx(f)は、信号x(t)のパワースペクトルであり、Syy(f)は、信号y(t)のパワースペクトルである。スペクトルおよびスペクトログラムと同様に、コヒーレンスを、コヒログラム(coherogram)と呼ばれる時間変化する量として評価することができる。コヒログラムを、Chronuxツールボックス(http://chronux.org)において実行されるマルチテーパ法を使用し、2つの前頭部EEG電極、すなわちF7およびF8(図18A)の間で計算した。マルチテーパ法を、多数の麻酔関連の現象の観察において必要とされるスペクトル分解能の精密な設定が可能であるがゆえに、とくに選択した。さらに、スペクトル分解能の特定の選択において、マルチテーパ法は、伝統的なノンパラメトリックなスペクトル推定法と比べて少ないバイアスおよび少ない分散を提供する。そのような少ないバイアスおよび分散は、振動またはピークがよりはっきりと見える視覚的により明瞭な表示をもたらし、後の処理および推論の工程におけるより高い感度および特異性を促進する。グループレベルのコヒログラムを、志願者における中間値をとることによって計算した。コヒーレンスも、選択されたEEGのエポックについて計算した。次いで、得られたコヒーレンス評価を、すべてのエポックについて平均し、95%信頼区間をテーパにもとづくジャックナイフ技術によって計算した。コヒーレンス解析パラメータを、ウインドウ長T=4s(重なり合いは0s)、時間−帯域幅の積TW=3、テーパの数K=5、および1.5Hzのスペクトル分解能2Wとした。ピークコヒーレンスおよびその周波数を、各々の個別の被験者に関してdex−スピンドル、移動ピーク、および前頭部アルファ振動について評価した。被験者にまたがる平均を実行し、これらの振動についてグループレベルのピークコヒーレンスおよび周波数を得た。コヒーレンスは、上述のとおりのPLFの大きさと同等の情報を提供する。したがって、後述の低周波数のコヒーレンスの変化は、PLFに関して上述したのと同じ皮質の導体の変化を反映する。
・統計的分析
グループ間のスペクトルおよびコヒーレンスの評価を比較するために、ジャックナイフにもとづく方法を使用し、すなわちChronuxツールボックス(http://chronux.org)において実行されるスペクトルについての2群検定(TGTS)およびコヒーレンスについての2群検定(TGTC)を使用した。この方法は、スペクトルおよびコヒーレンスの評価の基礎をなすスペクトル分解能を考慮し、差を、スペクトル分解能2Wよりも広い範囲にわたる連続的な周波数について存在する場合に、有意であると考える。具体的には、周波数f>2Wについて、帰無仮説が、検定統計量が2W以上の連続する周波数範囲にわたって有意性しきい値を超える場合に限って否定される。周波数0≦f≦2Wにおいては、ゼロに近い周波数におけるマルチテーパスペクトル評価の特性を補償するために、帰無仮説が、検定統計量が0からmax(f、W)≦2Wまでの連続する周波数範囲にわたって有意性しきい値を超える場合に限って否定される。p<0.05という有意性しきい値をグループ内の比較について選択し、p<0.001をグループ間の比較について選択し、必要に応じて複数の比較についてボンフェローニ補正を適用した。
グループ間のスペクトルおよびコヒーレンスの評価を比較するために、ジャックナイフにもとづく方法を使用し、すなわちChronuxツールボックス(http://chronux.org)において実行されるスペクトルについての2群検定(TGTS)およびコヒーレンスについての2群検定(TGTC)を使用した。この方法は、スペクトルおよびコヒーレンスの評価の基礎をなすスペクトル分解能を考慮し、差を、スペクトル分解能2Wよりも広い範囲にわたる連続的な周波数について存在する場合に、有意であると考える。具体的には、周波数f>2Wについて、帰無仮説が、検定統計量が2W以上の連続する周波数範囲にわたって有意性しきい値を超える場合に限って否定される。周波数0≦f≦2Wにおいては、ゼロに近い周波数におけるマルチテーパスペクトル評価の特性を補償するために、帰無仮説が、検定統計量が0からmax(f、W)≦2Wまでの連続する周波数範囲にわたって有意性しきい値を超える場合に限って否定される。p<0.05という有意性しきい値をグループ内の比較について選択し、p<0.001をグループ間の比較について選択し、必要に応じて複数の比較についてボンフェローニ補正を適用した。
[結果]
・プロポフォールおよびデクスメデトミンによって引き起こされるEEGパターン
デクスメデトミジンによる鎮静の誘発およびデクスメデトミジンによる鎮静からの回復の際に、64チャネルのBrainVision MRI Plusシステム(Brain Products)を使用し、1,000Hzのサンプリングレート、分解能0.5μVの最下位ビット(LSB)、帯域幅0.016−1000HzでEEGを記録した。志願者に対し、EEGの瞬目アーチファクトを避けるために、研究の間中ずっと目を閉じているように指示した。意識的行動のレベルを評価するために、志願者に対し、研究の最中に聴覚刺激を提示し、ボタンを押すことによって応答するように求めた。志願者の名前で構成される刺激を、2分ごとに提示した。ボタン押し刺激を、人差し指および中指をマウスボタン上に動かぬように保持するようにストラップが取り付けられた特注のコンピュータマウスを使用して記録した。さらに、マウスを、応答を正確に記録できるように保証するために、テープおよび動脈経路ボード(arterial line board)を使用して被験者の手に軽く固定した。
・プロポフォールおよびデクスメデトミンによって引き起こされるEEGパターン
デクスメデトミジンによる鎮静の誘発およびデクスメデトミジンによる鎮静からの回復の際に、64チャネルのBrainVision MRI Plusシステム(Brain Products)を使用し、1,000Hzのサンプリングレート、分解能0.5μVの最下位ビット(LSB)、帯域幅0.016−1000HzでEEGを記録した。志願者に対し、EEGの瞬目アーチファクトを避けるために、研究の間中ずっと目を閉じているように指示した。意識的行動のレベルを評価するために、志願者に対し、研究の最中に聴覚刺激を提示し、ボタンを押すことによって応答するように求めた。志願者の名前で構成される刺激を、2分ごとに提示した。ボタン押し刺激を、人差し指および中指をマウスボタン上に動かぬように保持するようにストラップが取り付けられた特注のコンピュータマウスを使用して記録した。さらに、マウスを、応答を正確に記録できるように保証するために、テープおよび動脈経路ボード(arterial line board)を使用して被験者の手に軽く固定した。
分析の前に、アンチエイリアスフィルタを適用し、EEGデータを250Hzへとダウンサンプリングした。EEG信号を、近隣の電極の寄与を重み付けするために頭皮表面に沿った距離を使用して、最近傍のラプラス基準へと再モンタージュした。最初の2分間のEEGセグメントを、目覚めているが目を閉じているベースラインにおいて、すべての被験者から選択した。目を閉じていることで、通常の目覚めているが目を閉じているときの後頭部のアルファ振動と、麻酔によって引き起こされた変化した覚醒に関係する前頭部のアルファ振動との間の区別が、容易になる。EEGデータセグメントを、行動応答にもとづいて選択した。
デクスメデトミジンにおいて、鎮静の開始を、行動反応が欠け、引き続いて少なくとも3回続けて行動反応が欠けたときの最初の行動反応の欠如と定義した。デクスメデトミジンによる鎮静のEEG特徴を表現するために、各々の志願者について持続的な鎮静の開始から6分後に得られた最初の2分間のEEGエポックを使用した。
プロポフォールについては、行動的および電気生理学的な評価項目(endpoints)の組み合わせを使用してデータセグメントを特定した。これまでの作業において、トラフマックス(trough−max)およびピークマックス(peak−max)と称されるプロポフォールによって引き起こされる位相−振幅変調の2つの形態が発見されている。トラフマックスパターンにおいては、プロポフォールによって引き起こされたアルファ波が、低速振動の谷において最強である。このパターンは、意識消失への移行および意識消失からの移行において生じ、聴覚刺激への反応の喪失によって定義される意識消失を二等分する。したがって、臨床的に、トラフマックスパターンの開始は、識別可能なプロポフォールによる鎮静の連続体の最先部分を表す。各々の志願者被験者について、このパターンの開始の最初の2分以内に生じたトラフマックスEEGエポックを選択した。ピークマックスパターンにおいては、プロポフォールによって引き起こされたアルファ波が、低速振動のピークにおいて最強である。このパターンは、意識の喪失後に、聴覚刺激への反応の可能性がゼロであるときに生じる。これは、意識消失の深い状態を知らせている。したがって、ピークマックスは、全身麻酔の際の意識消失と臨床的に同様である。ここから、トラフマックス状態を「鎮静」と称し、ピークマックス状態を「意識消失」と称する。
・デクスメデトミジン 対 ベースラインパワースペクトル
デクスメデトミジン鎮静およびデクスメデトミジンベースラインのスペクトログラムの違いを観察した。とくには、デクスメデトミジン鎮静スペクトログラムは、2−15Hzの周波数範囲におけるパワーのロバストな視覚的に明らかな増加を示した(図15A、15B)。次に、デクスメデトミジン鎮静およびベースラインにおけるEEGスペクトルを比較し、0−40Hzの間の大多数の周波数におけるパワーの有意な違いを発見した。EEGパワーは、dexスピンドル振動ピークを示し(平均±std;ピーク周波数、13.1Hz±.86;ピークパワー、−10.2dB±.3.2)、デクスメデトミジン鎮静時に16.4Hz未満の周波数の範囲においてより高かった(図15C;0.1−1.2Hz、1.7−6.6Hz、7−16.4Hz;P<0.05、TGTS)。EEGパワーも、ベータ/ガンマ周波数範囲においてデクスメデトミジン鎮静の際により低かった(図15C;17.4−40Hz;P<0.05,TGTS)。これらの結果は、目覚めている状態と比べて、デクスメデトミジン鎮静においてはスピンドル状の振動(dexスピンドル)が示されることを示している。
デクスメデトミジン鎮静およびデクスメデトミジンベースラインのスペクトログラムの違いを観察した。とくには、デクスメデトミジン鎮静スペクトログラムは、2−15Hzの周波数範囲におけるパワーのロバストな視覚的に明らかな増加を示した(図15A、15B)。次に、デクスメデトミジン鎮静およびベースラインにおけるEEGスペクトルを比較し、0−40Hzの間の大多数の周波数におけるパワーの有意な違いを発見した。EEGパワーは、dexスピンドル振動ピークを示し(平均±std;ピーク周波数、13.1Hz±.86;ピークパワー、−10.2dB±.3.2)、デクスメデトミジン鎮静時に16.4Hz未満の周波数の範囲においてより高かった(図15C;0.1−1.2Hz、1.7−6.6Hz、7−16.4Hz;P<0.05、TGTS)。EEGパワーも、ベータ/ガンマ周波数範囲においてデクスメデトミジン鎮静の際により低かった(図15C;17.4−40Hz;P<0.05,TGTS)。これらの結果は、目覚めている状態と比べて、デクスメデトミジン鎮静においてはスピンドル状の振動(dexスピンドル)が示されることを示している。
・プロポフォール 対 ベースラインパワースペクトル
ベースラインと比べて、プロポフォール鎮静およびプロポフォールによって誘発された意識消失の際のスペクトログラムの違いも観察した。プロポフォール鎮静が、広帯域(約1−25Hz)のパワー増加を特徴とする一方で、プロポフォールによって誘発された意識消失においては、パワーの増加が、低速、デルタ、およびアルファの周波数帯域に限って現れた(図16A、16B、16C)。定性的に、プロポフォールによって誘発された意識消失においては、EEGスペクトログラムが、プロポフォール鎮静と比べて、視認可能により狭い8−12Hzの振動の帯域を示した(図16B、16C)。これらの結果は、前頭部のアルファ振動がプロポフォールによって誘発された意識消失において示され、より高い周波数のベータ−ガンマ振動がプロポフォール鎮静において観測されるというこれまでの報告に一致する。
ベースラインと比べて、プロポフォール鎮静およびプロポフォールによって誘発された意識消失の際のスペクトログラムの違いも観察した。プロポフォール鎮静が、広帯域(約1−25Hz)のパワー増加を特徴とする一方で、プロポフォールによって誘発された意識消失においては、パワーの増加が、低速、デルタ、およびアルファの周波数帯域に限って現れた(図16A、16B、16C)。定性的に、プロポフォールによって誘発された意識消失においては、EEGスペクトログラムが、プロポフォール鎮静と比べて、視認可能により狭い8−12Hzの振動の帯域を示した(図16B、16C)。これらの結果は、前頭部のアルファ振動がプロポフォールによって誘発された意識消失において示され、より高い周波数のベータ−ガンマ振動がプロポフォール鎮静において観測されるというこれまでの報告に一致する。
・デクスメデトミジン 対 プロポフォールパワースペクトル
次に、デクスメデトミジン鎮静、プロポフォール鎮静、およびプロポフォールによって誘発された意識消失におけるスペクトルを比較した。EEGパワーが、プロポフォール鎮静において、低速、ベータ、およびガンマ周波数にまたがる広い周波数範囲にわたって、デクスメデトミジン鎮静よりも大きいことが分かった(図17;0.1−1.2Hz、12.9−40Hz;P<.0005、TGTS)。定性的には、デクスメデトミジン鎮静の際のスペクトルが、約13Hzに明瞭なdexスピンドルピークを示した一方で、プロポフォール鎮静は、明瞭に識別できるピークを示さなかった。プロポフォールによって誘発された意識消失における低速振動(パワー、19.2dB±2.4)は、デクスメデトミジン鎮静の場合(パワー、1.8dB±1.6)よりもほぼ1桁大きかった。同様に、プロポフォールによって誘発された前頭部のアルファ振動(パワー、2.5dB±3.8)も、dexスピンドル(パワー、−10.2dB±3.2)よりも大きかった。これらの結果は、デクスメデトミジンによって誘発されたスピンドル状のEEGパターンが、プロポフォールによって誘発された移動するピークおよび前頭部のアルファ振動と異なる動的なパターンであることを示している。加えて、プロポフォールによって誘発された低速振動は、デクスメデトミジンによって生じる低速振動よりもはるかに強い。
次に、デクスメデトミジン鎮静、プロポフォール鎮静、およびプロポフォールによって誘発された意識消失におけるスペクトルを比較した。EEGパワーが、プロポフォール鎮静において、低速、ベータ、およびガンマ周波数にまたがる広い周波数範囲にわたって、デクスメデトミジン鎮静よりも大きいことが分かった(図17;0.1−1.2Hz、12.9−40Hz;P<.0005、TGTS)。定性的には、デクスメデトミジン鎮静の際のスペクトルが、約13Hzに明瞭なdexスピンドルピークを示した一方で、プロポフォール鎮静は、明瞭に識別できるピークを示さなかった。プロポフォールによって誘発された意識消失における低速振動(パワー、19.2dB±2.4)は、デクスメデトミジン鎮静の場合(パワー、1.8dB±1.6)よりもほぼ1桁大きかった。同様に、プロポフォールによって誘発された前頭部のアルファ振動(パワー、2.5dB±3.8)も、dexスピンドル(パワー、−10.2dB±3.2)よりも大きかった。これらの結果は、デクスメデトミジンによって誘発されたスピンドル状のEEGパターンが、プロポフォールによって誘発された移動するピークおよび前頭部のアルファ振動と異なる動的なパターンであることを示している。加えて、プロポフォールによって誘発された低速振動は、デクスメデトミジンによって生じる低速振動よりもはるかに強い。
コヒログラムが信号間の関係をどのように定量化するのか、およびこれがスペクトログラムとどう違うのかを示すために、模擬によるデータ例を考案した。図18Aが、3つの模擬による振動信号からの時間ドメインのトレースを示しており、信号のうちの2つ(信号Aおよび信号B)は強く相関しており、1つ(信号C)は他の2つに相関していない。図18Cが、これらの信号についてのスペクトログラム(左側)およびコヒログラム(右側)を示している。3つのすべての信号は、構成によって同一のスペクトログラムを有するが、信号間のコヒーレンスは、時間ドメインのトレースにおいて明らかな可視の相関の有無を反映し、きわめて異なっている。また、コヒログラムは、2つの信号が相関している周波数を示している。図18Bの例では、信号AおよびBが、約20Hzよりも下の周波数において相関している。この例は、周波数の関数としての2つの信号の間の相関をコヒログラムがどのように表すかを示している。コヒーレンスを、同様に解釈することができる。
・デクスメデトミジン 対 ベースラインコヒーレンス
ベースラインと比べて、デクスメデトミジン鎮静の際のコヒログラムにおける低速振動コヒーレンスの相違を観察した。とくには、デクスメデトミジン鎮静は、1−15Hzの周波数範囲におけるコヒーレンスの増大(図19Aおよび19B)、ならびに0.1−1Hzのコヒーレンスの低下(実線の矢印、図19B)を特徴とした。デクスメデトミジン鎮静およびベースラインにおけるEEGコヒーレンスを比較し、0.1−19.3Hzの間の周波数におけるコヒーレンスの有意な差を、dexスピンドル(図19C;0.1−1.2Hz;1.7−19.3Hz;P<0.05、TGTC)に一致したコヒーレンスピーク(ピーク周波数、13.3Hz±0.9;ピークコヒーレンス、0.78±.0.08)とともに発見した。これらの結果は、目覚めている状態と比べて、デクスメデトミジン鎮静が、コヒーレントなdexスピンドルおよびコヒーレントでない低速振動を特徴とすることを示している。
ベースラインと比べて、デクスメデトミジン鎮静の際のコヒログラムにおける低速振動コヒーレンスの相違を観察した。とくには、デクスメデトミジン鎮静は、1−15Hzの周波数範囲におけるコヒーレンスの増大(図19Aおよび19B)、ならびに0.1−1Hzのコヒーレンスの低下(実線の矢印、図19B)を特徴とした。デクスメデトミジン鎮静およびベースラインにおけるEEGコヒーレンスを比較し、0.1−19.3Hzの間の周波数におけるコヒーレンスの有意な差を、dexスピンドル(図19C;0.1−1.2Hz;1.7−19.3Hz;P<0.05、TGTC)に一致したコヒーレンスピーク(ピーク周波数、13.3Hz±0.9;ピークコヒーレンス、0.78±.0.08)とともに発見した。これらの結果は、目覚めている状態と比べて、デクスメデトミジン鎮静が、コヒーレントなdexスピンドルおよびコヒーレントでない低速振動を特徴とすることを示している。
・プロポフォール 対 ベースラインコヒーレンス
ベースラインと比べて、プロポフォール鎮静およびプロポフォールによって誘発された意識消失の際のコヒログラムの違いも観察した。プロポフォール鎮静は、コヒログラム上のコヒーレンスの広い(約1−25Hz)増加を特徴としている。プロポフォールによって誘発された意識消失は、約10Hzに中心を有するアルファ振動コヒーレンスの狭い帯域(図20A、20B、20C)および0.1−1Hzのコヒーレンスの低下(実線の矢印、図20B)を特徴としている。次に、鎮静および意識消失の際のコヒーレンスをベースライン状態に対して比較した。移動するピーク(図20D;10−16Hz、16.8−19.3Hz、19.8−21.7Hz、22.9−25.9Hz;P<0.025、TGTC)に対応するコヒーレントなEEG活動(ピーク周波数、16.1Hz±4.9;ピークコヒーレンス、0.69±.0.05)の不連続な帯域が存在することが明らかになった。とりわけ、プロポフォールによって誘発された意識消失の際に、明瞭なアルファ振動コヒーレンスピーク(ピーク周波数、10.8.1Hz±0.68;ピークコヒーレンス、0.85±.0.05)と、シータおよびアルファ周波数帯域におけるコヒーレンスの有意な増加(図20E;4−15.9Hz;P<0.025、TGTC)が存在した。また、プロポフォールピークマックスは、低速振動のコヒーレンスの低下を特徴としている(図20E;0.1−1.7Hz;P<0.025、TGTC)。これらの結果は、コヒーレントな前頭部のベータ−ガンマ振動およびアルファ振動が、それぞれプロポフォール鎮静およびプロポフォールによって誘発された意識消失において示されるというこれまでの報告に一致している。また、これらの結果は、非コヒーレントな低速振動がプロポフォールによって誘発された意識消失に関係していることを示すこれまでの報告に一致している。
ベースラインと比べて、プロポフォール鎮静およびプロポフォールによって誘発された意識消失の際のコヒログラムの違いも観察した。プロポフォール鎮静は、コヒログラム上のコヒーレンスの広い(約1−25Hz)増加を特徴としている。プロポフォールによって誘発された意識消失は、約10Hzに中心を有するアルファ振動コヒーレンスの狭い帯域(図20A、20B、20C)および0.1−1Hzのコヒーレンスの低下(実線の矢印、図20B)を特徴としている。次に、鎮静および意識消失の際のコヒーレンスをベースライン状態に対して比較した。移動するピーク(図20D;10−16Hz、16.8−19.3Hz、19.8−21.7Hz、22.9−25.9Hz;P<0.025、TGTC)に対応するコヒーレントなEEG活動(ピーク周波数、16.1Hz±4.9;ピークコヒーレンス、0.69±.0.05)の不連続な帯域が存在することが明らかになった。とりわけ、プロポフォールによって誘発された意識消失の際に、明瞭なアルファ振動コヒーレンスピーク(ピーク周波数、10.8.1Hz±0.68;ピークコヒーレンス、0.85±.0.05)と、シータおよびアルファ周波数帯域におけるコヒーレンスの有意な増加(図20E;4−15.9Hz;P<0.025、TGTC)が存在した。また、プロポフォールピークマックスは、低速振動のコヒーレンスの低下を特徴としている(図20E;0.1−1.7Hz;P<0.025、TGTC)。これらの結果は、コヒーレントな前頭部のベータ−ガンマ振動およびアルファ振動が、それぞれプロポフォール鎮静およびプロポフォールによって誘発された意識消失において示されるというこれまでの報告に一致している。また、これらの結果は、非コヒーレントな低速振動がプロポフォールによって誘発された意識消失に関係していることを示すこれまでの報告に一致している。
・デクスメデトミジン 対 プロポフォールコヒーレンス
次に、デクスメデトミジン鎮静の際のコヒーレンスパターンを、プロポフォール鎮静および意識消失の際のものと比較した。プロポフォール鎮静と比べて、デクスメデトミジン鎮静の際には、コヒーレンスがデルタ、シータ、およびアルファ周波数帯域においてより高く、コヒーレントなdexスピンドルピークを有した(図21A;2−10.5Hz、12.2−15.9Hz;P<0.0005、TGTC)。また、移動するピークに一致し、コヒーレンスは、ベータ周波数帯域において、デクスメデトミジン鎮静と比べて、プロポフォールによって誘発された鎮静においてより大きかった(図21A;19.8−26.4Hz、26.9−29.3Hz;P<0.0005、TGTC)。次に、デクスメデトミジン鎮静の際のコヒーレンスパターンをプロポフォールによって誘発された意識消失に対して比較した。dexスピンドルおよびプロポフォールによって誘発された前頭部アルファ振動が、ピークコヒーレンスおよび周波数に関して明瞭に異なることが明らかになった(図21B)。プロポフォールによって誘発された意識消失の際のコヒーレンスは、アルファ振動ピークの周囲の周波数において有意に高かった(図21B;9.5−11.7Hz;P<.0005、TGTC)。デクスメデトミジンによって誘発された鎮静の際のコヒーレンスは、デルタおよびシータ帯域ならびにdexスピンドルの周囲の周波数帯域において有意に高かった(図21B;1.95−5.37Hz、12.7−16.6Hz;P<.0005、TGTC)。これらの結果もやはり、デクスメデトミジンによって誘発されたスピンドル状のEEGパターンが、プロポフォールによって誘発された移動するピークおよび前頭部のアルファ振動と異なる動的なパターンであることを示している。
次に、デクスメデトミジン鎮静の際のコヒーレンスパターンを、プロポフォール鎮静および意識消失の際のものと比較した。プロポフォール鎮静と比べて、デクスメデトミジン鎮静の際には、コヒーレンスがデルタ、シータ、およびアルファ周波数帯域においてより高く、コヒーレントなdexスピンドルピークを有した(図21A;2−10.5Hz、12.2−15.9Hz;P<0.0005、TGTC)。また、移動するピークに一致し、コヒーレンスは、ベータ周波数帯域において、デクスメデトミジン鎮静と比べて、プロポフォールによって誘発された鎮静においてより大きかった(図21A;19.8−26.4Hz、26.9−29.3Hz;P<0.0005、TGTC)。次に、デクスメデトミジン鎮静の際のコヒーレンスパターンをプロポフォールによって誘発された意識消失に対して比較した。dexスピンドルおよびプロポフォールによって誘発された前頭部アルファ振動が、ピークコヒーレンスおよび周波数に関して明瞭に異なることが明らかになった(図21B)。プロポフォールによって誘発された意識消失の際のコヒーレンスは、アルファ振動ピークの周囲の周波数において有意に高かった(図21B;9.5−11.7Hz;P<.0005、TGTC)。デクスメデトミジンによって誘発された鎮静の際のコヒーレンスは、デルタおよびシータ帯域ならびにdexスピンドルの周囲の周波数帯域において有意に高かった(図21B;1.95−5.37Hz、12.7−16.6Hz;P<.0005、TGTC)。これらの結果もやはり、デクスメデトミジンによって誘発されたスピンドル状のEEGパターンが、プロポフォールによって誘発された移動するピークおよび前頭部のアルファ振動と異なる動的なパターンであることを示している。
・検討
プロポフォールおよびデクスメデトミジンによって誘発されたEEGの特徴は、きわめて類似しているように見受けられるが、我々の分析は、これらの薬剤の特有の基礎的機構および臨床特性に関係すると思われるパワースペクトルおよびコヒーレンスにおける明白な差異を特定する。我々の発見を、以下のとおり要約する。
プロポフォールおよびデクスメデトミジンによって誘発されたEEGの特徴は、きわめて類似しているように見受けられるが、我々の分析は、これらの薬剤の特有の基礎的機構および臨床特性に関係すると思われるパワースペクトルおよびコヒーレンスにおける明白な差異を特定する。我々の発見を、以下のとおり要約する。
(i)睡眠のスピンドルと同様に、デクスメデトミジン鎮静は、最大パワーおよびコヒーレンスが約13−14Hzにおいて生じるスピンドルを特徴とする。これらのdexスピンドルは、プロポフォール鎮静および意識消失においてそれぞれ生じるプロポフォールの移動するピークおよびアルファ振動からパワースペクトルおよびコヒーレンスの両方において異なる。
デクスメデトミジン鎮静およびプロポフォールによって誘発された意識消失のどちらも、1Hz未満の周波数における増加したパワーおよび低下したコヒーレンスを特徴とする低速振動に関係する。しかしながら、プロポフォールによって誘発された意識消失における低速振動は、デクスメデトミジン鎮静の場合よりもほぼ1桁大きい。
低速振動は、睡眠および麻酔の際の意識消失の共通の機構として提案されている。デクスメデトミジンはNREM睡眠の生成に関与する神経回路を通じて作用するため、デクスメデトミジンによって誘発される徐波は、睡眠の徐波に類似した性質となる可能性が高い。睡眠の徐波およびプロポフォールによって誘発される低速振動の両者は、それらを異なる皮質領域間で非コヒーレントにする局所的23または空間的に非同期の性質を有するように見受けられる。これは、低速振動のコヒーレンスがデクスメデトミジン鎮静およびプロポフォールによって誘発された意識消失の両方において小さくなるという我々の発見に一致する。
ニューロンレベルにおいて、低速振動は、ニューロンが発火することができる「オン」状態とニューロンが活動していない「オフ」状態との間の交互に関係している。睡眠中およびアルファ2作動薬であるキシラジンのもとで、これらの「オフ」期間は、比較的短く、低速振動の周期のほんの一部を占めるように見受けられる。対照的に、プロポフォールのもとでは、これらのオフ期間が長くなり、低速振動の周期の大部分を占める。このニューロンが活動していない長い状態が、患者を意識のある状態へと目覚めさせることができる睡眠またはデクスメデトミジンによって誘発された鎮静と比べて、プロポフォールが患者を目覚めさせることができない深い意識消失の状態を生み出す理由を説明することができる。ここで、プロポフォールによって誘発された低速振動は、デクスメデトミジン鎮静の場合よりもほぼ1桁大きいことが観察されている。これらのはるかに大きい低速振動は、プロポフォールにおけるオフ状態が睡眠またはキシラジン麻酔と比べて長いように見受けられる理由を説明することができる。プロポフォールによって誘発される低速振動のサイズおよび関連のオフ状態の継続時間は、より大きな徐波およびオフ状態の維持に必要な過分極のより深いレベルの支持を助けることができるGABA性の介在ニューロンにおけるプロポフォールの作用に由来する可能性があると推測される。また、我々の結果は、低速振動のパワーまたは振幅を、プロポフォールによって誘発された意識消失と、睡眠またはデクスメデトミジンによって誘発された鎮静などの睡眠状の状態との間の区別に使用できることを示唆している。
本明細書において説明したdexスピンドルパターンは、睡眠のスピンドルに類似しているように見受けられる周波数範囲および過渡の時間ドメインの形態を有する。これは、睡眠のスピンドルの基礎にある同じ視床皮質の回路が、dexスピンドルを生成できることを示唆している。生物物理学モデルも、プロポフォールによって誘発される前頭部アルファ振動について、視床皮質の根拠を証明している。この前頭部アルファEEG活動は、広い周波数帯域から狭い周波数帯域へと前頭部視床皮質回路における情報伝達を劇的に制限することによって意識状態の変化に寄与すると考えられる。それらは、前後方向の皮質結合の変化も示すことができる。我々の結果は、プロポフォールによって誘発された前頭部アルファ波がdexスピンドルと比べてより大きく、よりコヒーレントであることを示しており、これもプロポフォールがデクスメデトミジンと比べてより深いレベルの鎮静および意識消失を生み出すことができる理由を説明することができる。我々の分析は、これらの薬剤が同じ根底の視床皮質系において異なるやり方で作用することを示唆している。これらの違いは、薬剤の根底にある分子およびニューロンの機構に関係があるかもしれない。とくには、プロポフォールの移動するピークの動態ならびにそのきわめてコヒーレントな前頭部の約10Hzのアルファ振動が、皮質および視床介在ニューロンにおけるGABA抑制の強化によって引き起こされるように見受けられる。一方で、デクスメデトミジンは、内生のNREM睡眠回路を通じて作用するように見受けられ、これはdexスピンドルの形態が睡眠のスピンドルに類似して見える理由を説明することができる。dexスピンドルとプロポフォールによって誘発された前頭部アルファとの間のこれらの違いゆえに、我々は、用語「スピンドル」を、睡眠およびデクスメデトミジンによって誘発されたスピンドルをとくに指して使用することができると提案する。
我々は、デクスメデトミジンおよびプロポフォールによって誘発される低速振動および視床皮質の振動の特性における明瞭な違いを明らかにした。分子薬理学、神経回路、およびこれらの薬剤に関する臨床的特性についての我々の知識に鑑み、これらの薬剤が異なるEEGの特徴を有することは、驚くべきことではない。さらに、我々の分析および検討にもとづくと、EEGの動態におけるこれらの違いは、根底にある分子および神経回路の機構における違いに直接関係している可能性が高い。EEGが歴史的に麻酔学の範囲において「ブラックボックス」として考えられてきた一方で、我々の分析は、EEGを薬理学および臨床業務の既存の機構的な枠組みにおいて眺めることができ、他の臨床における生理学的信号と同じように監視することができるという強力な代案を提案する。本明細書において説明されるEEGの特徴は、リアルタイムでの計算および表示が比較的容易であり、これらの動態を他の生理学的信号において我々が行っているように単刀直入なやり方で表示できることを示唆している。
・セボフルランによって誘発されるEEGパターン
前頭部脳波図データを、Sedline脳機能モニタ(Masimo Corporation、カリフォルニア州Irvine)を使用して記録した。EEGデータを、0.5−92Hzの前置増幅器帯域幅、250Hzのサンプリングレートで、16ビット、29nVの分解能にて記録した。標準のSedline Sedtrace電極アレイは、Fpzに位置するグランド電極およびFpzの上方約1cmに位置する基準電極を備え、ほぼ位置Fp1、Fp2、F7、およびF8に配置された電極から記録を行う。電極インピーダンスは、各々のチャネルにおいて5kΩ未満であった。EEG(O.A.)の読み取りに熟練した研究者が、各々の患者からのデータを視覚検査し、分析用にノイズおよびアーチファクトのないEEGデータを選択した。EEGデータセグメントを、電子麻酔記録からの情報を使用して選択した。各々の患者について、全身麻酔の維持段階を表す5分間のEEGセグメントを、注意深く選択した。データを、静脈注射の催眠薬の初期誘発ボーラスの後かつ維持剤が安定であるときの時間期間から選択した。
前頭部脳波図データを、Sedline脳機能モニタ(Masimo Corporation、カリフォルニア州Irvine)を使用して記録した。EEGデータを、0.5−92Hzの前置増幅器帯域幅、250Hzのサンプリングレートで、16ビット、29nVの分解能にて記録した。標準のSedline Sedtrace電極アレイは、Fpzに位置するグランド電極およびFpzの上方約1cmに位置する基準電極を備え、ほぼ位置Fp1、Fp2、F7、およびF8に配置された電極から記録を行う。電極インピーダンスは、各々のチャネルにおいて5kΩ未満であった。EEG(O.A.)の読み取りに熟練した研究者が、各々の患者からのデータを視覚検査し、分析用にノイズおよびアーチファクトのないEEGデータを選択した。EEGデータセグメントを、電子麻酔記録からの情報を使用して選択した。各々の患者について、全身麻酔の維持段階を表す5分間のEEGセグメントを、注意深く選択した。データを、静脈注射の催眠薬の初期誘発ボーラスの後かつ維持剤が安定であるときの時間期間から選択した。
・セボフルラン 対 プロポフォールパワースペクトル
セボフルランおよびプロポフォール全身麻酔群のスペクトログラムの類似性および相違を観察した(図23A、23B)。両方のスペクトログラムは、大きなアルファ帯域のパワーという類似の特徴を有した。しかしながら、セボフルランは、シータ(4−8Hz)およびベータ(12−25Hz)の周波数範囲により大きなパワーを生じさせた(図23A、23B)。セボフルラン全身麻酔EEGパワーは、プロポフォール全身麻酔アルファ振動ピーク(平均±std;ピーク周波数、10.3Hz±1.1;ピークパワー、2.1dB±4.3)とわずかしか違わないアルファ振動ピーク(ピーク周波数、9.2Hz±0.84;ピークパワー、4.3dB±3.5)を示した。次に、これら2群の間でEEGスペクトルを比較し、0.4−40Hzの間の大多数の周波数におけるパワーの有意な違いを発見した。セボフルランは、低速振動(<0.4Hz)およびプロポフォールアルファ振動ピーク(図23C;0.4−11.2Hz、14.7−40Hz;P<0.001、TGTS)を除く周波数の範囲においてEEGパワーの増加を示した。これらの結果は、プロポフォールによって誘発された意識消失と比べて、セボフルランによって誘発された意識消失は、より大きいシータおよびベータ振動ならびに類似の低速およびアルファ振動を特徴とすることを示している。
セボフルランおよびプロポフォール全身麻酔群のスペクトログラムの類似性および相違を観察した(図23A、23B)。両方のスペクトログラムは、大きなアルファ帯域のパワーという類似の特徴を有した。しかしながら、セボフルランは、シータ(4−8Hz)およびベータ(12−25Hz)の周波数範囲により大きなパワーを生じさせた(図23A、23B)。セボフルラン全身麻酔EEGパワーは、プロポフォール全身麻酔アルファ振動ピーク(平均±std;ピーク周波数、10.3Hz±1.1;ピークパワー、2.1dB±4.3)とわずかしか違わないアルファ振動ピーク(ピーク周波数、9.2Hz±0.84;ピークパワー、4.3dB±3.5)を示した。次に、これら2群の間でEEGスペクトルを比較し、0.4−40Hzの間の大多数の周波数におけるパワーの有意な違いを発見した。セボフルランは、低速振動(<0.4Hz)およびプロポフォールアルファ振動ピーク(図23C;0.4−11.2Hz、14.7−40Hz;P<0.001、TGTS)を除く周波数の範囲においてEEGパワーの増加を示した。これらの結果は、プロポフォールによって誘発された意識消失と比べて、セボフルランによって誘発された意識消失は、より大きいシータおよびベータ振動ならびに類似の低速およびアルファ振動を特徴とすることを示している。
・セボフルラン 対 プロポフォールコヒーレンス
さらに、セボフルランおよびプロポフォール全身麻酔群のコヒログラムの類似性および相違を観察した(図24A、24B)。両方のコヒログラムは、アルファ帯域のコヒーレンスと、低速振動コヒーレンスの欠如という類似の特徴を有した。しかしながら、セボフルラン群のコヒログラムは、プロポフォール全身麻酔群においては明白でないシータ周波数範囲内のコヒーレンスピークも示した(図24A、24B;ピーク周波数、4.9Hz±0.6;ピークコヒーレンス、0.58±0.1)。セボフルランGAにおけるEEGコヒーレンスは、プロポフォールGAにおけるアルファ振動ピーク(ピーク周波数、10.2Hz±1.3;ピークコヒーレンス、0.71dB±0.1)にきわめてよく似たアルファ振動ピーク(ピーク周波数、9.8Hz±0.91;ピークコヒーレンス、0.73±0.1)を示した。次に、これら2群の間でEEGコヒーレンスを比較した。セボフルランおよびプロポフォールのコヒーレンスは、定量的に類似しており、強いアルファピークおよびより低い低速振動ピークを示すことが明らかになった。セボフルランが、シータおよびアルファの周波数の範囲において高いEEGコヒーレンスを示した一方で(図24C;3.41−10.7Hz;TGTC、P<0.001)、プロポフォールは、アルファおよびベータの周波数のわずかに異なる範囲において高いEEGコヒーレンスを示した(図24C;11.7−19.5Hz;TGTC、P<0.001)。これらの結果は、セボフルランおよびプロポフォールGAの両方が、きわめて類似したピーク周波数およびコヒーレンスを有するコヒーレントな前頭部アルファ振動を特徴とすることを示している。しかしながら、セボフルランは、コヒーレントなシータ振動も示した。
さらに、セボフルランおよびプロポフォール全身麻酔群のコヒログラムの類似性および相違を観察した(図24A、24B)。両方のコヒログラムは、アルファ帯域のコヒーレンスと、低速振動コヒーレンスの欠如という類似の特徴を有した。しかしながら、セボフルラン群のコヒログラムは、プロポフォール全身麻酔群においては明白でないシータ周波数範囲内のコヒーレンスピークも示した(図24A、24B;ピーク周波数、4.9Hz±0.6;ピークコヒーレンス、0.58±0.1)。セボフルランGAにおけるEEGコヒーレンスは、プロポフォールGAにおけるアルファ振動ピーク(ピーク周波数、10.2Hz±1.3;ピークコヒーレンス、0.71dB±0.1)にきわめてよく似たアルファ振動ピーク(ピーク周波数、9.8Hz±0.91;ピークコヒーレンス、0.73±0.1)を示した。次に、これら2群の間でEEGコヒーレンスを比較した。セボフルランおよびプロポフォールのコヒーレンスは、定量的に類似しており、強いアルファピークおよびより低い低速振動ピークを示すことが明らかになった。セボフルランが、シータおよびアルファの周波数の範囲において高いEEGコヒーレンスを示した一方で(図24C;3.41−10.7Hz;TGTC、P<0.001)、プロポフォールは、アルファおよびベータの周波数のわずかに異なる範囲において高いEEGコヒーレンスを示した(図24C;11.7−19.5Hz;TGTC、P<0.001)。これらの結果は、セボフルランおよびプロポフォールGAの両方が、きわめて類似したピーク周波数およびコヒーレンスを有するコヒーレントな前頭部アルファ振動を特徴とすることを示している。しかしながら、セボフルランは、コヒーレントなシータ振動も示した。
・検討
セボフルランおよびプロポフォールによって誘発されたEEGの特徴は、きわめて似ているように見受けられるが、我々の分析は、セボフルランの神経回路機構への洞察をもたらすシータコヒーレンスにおける明瞭な差を特定する。我々の発見を、以下のとおり要約する。
セボフルランおよびプロポフォールによって誘発されたEEGの特徴は、きわめて似ているように見受けられるが、我々の分析は、セボフルランの神経回路機構への洞察をもたらすシータコヒーレンスにおける明瞭な差を特定する。我々の発見を、以下のとおり要約する。
(i)プロポフォールによって誘発された前頭部アルファ振動と同様に、セボフルランは、約10−12Hzにおいて生じる類似の最大パワーおよびコヒーレンスを有するコヒーレントなアルファ振動を特徴とする。
(ii)やはりプロポフォールと同様に、セボフルランは、1Hz未満(<1Hz)周波数における低速振動に関係する。(iii)プロポフォールと対照的に、セボフルランは、シータ帯域における高いパワーおよびコヒーレンスに関係する。
セボフルランおよびプロポフォールによって誘発されたEEGの動態の類似性は、類似のGABA性の神経回路機構が関与しているという見解に一致する。これは、セボフルランも、プロポフォールと同様に、皮質の情報処理を妨げるきわめて構造化された視床皮質の振動、ならびに皮質活動を寸断する低速振動を生じさせることを示唆している。事前の研究が、これらのEEGの特徴がエーテル誘導体、イソフルレン、およびデスフルランにおいても現れることを示唆しており、これらの振動パターンを、全身麻酔によって引き起こされた意識消失のEEGの特徴として使用できることを示唆している。
セボフルラン麻酔の特徴的なコヒーレントなシータ振動(約5Hz)は、我々の知る限りでは、これまでに報告されていない。これらのシータ振動が大きくなる可能性についての推察として、病理学的なシータ振動が、視床皮質の律動不整につながる視床ニューロンの低しきい値のT型カルシウムチャネルの機能不全に結び付いていることに注目する。揮発性麻酔薬が、後根神経節、海馬、および視床中継ニューロンにおいて臨床的に意味のある濃度でT型カルシウムチャネルを変調することが報告されている。これらの類似点が、セボフルランによって誘発されたシータ振動が、深い視床の求心路遮断を表していることではないかという仮説へと我々を導く。仮説が正しいならば、このEEGの特徴が、低速およびアルファ振動のEEGの特徴とともに、リアルタイムでの麻酔の深さの監視に有用となり得る。将来において、麻酔の深さに関してこの振動の力学の空間的−時間的な動態を研究することが、重要であると考えられる。
これらの発見は、プロポフォールおよびセボフルランの両者が、EEGパワースペクトルにおける定量的な違いにもかかわらず、視床皮質の情報伝達の同調に関係したきわめてコヒーレントな前頭部アルファ振動を示すことを示唆している。しかしながら、セボフルランは、プロポフォールのもとでは存在しなかったシータ帯域のコヒーレンスも示す。コヒーレントなシータ振動は、目覚めているが目を閉じている状態においては通常は存在せず、このコヒーレンスの特徴がセボフルランによって引き起こされたものであることを示唆している。また、EEGスペクトルおよびコヒーレンスにおけるこれらの類似性および相違点を、様々な外科手術を受けている患者の日常の治療において、別の薬剤が同時に投与される状況下で記録されたデータにおいて観察することができており、これらの作用がロバストであることを示唆している。
今回の分析は、臨床的に意味のある用量においてプロポフォールおよびセボフルランについて共通のGABA性の機構の可能性を示唆している。さらに、今回の分析は、麻酔薬の共通および区別的な作用の識別および監視に使用することができるEEGの特徴を詳しく述べ、将来の分析のための基礎を提供している。本明細書において分析されたEEG記録は、前頭部チャネルから得られており、結果として、我々の分析は、麻酔によって引き起こされる意識消失の根底にある皮質の動態に寄与することが報告されている前後方向の接続を考慮していない。この研究は、臨床の背景において実行されているため、我々の推論は、臨床における意識消失の状態に限定される。
要約すると、麻酔学の実務は、無意識、記憶喪失、無痛覚、および不動と、全身麻酔を定める生理学的な安定性の維持との必要な組み合わせを達成するために、中枢神経系の直接的な薬理学的処置を含む。神経化学の研究方法における最近の進歩は、麻酔によって引き起こされる意識消失の神経回路機構の理解の洗練の助けになる。それでもなお、麻酔薬の基礎にある一般的な分子および薬理学的原理の特定における大きな進歩にもかかわらず、種々の分子標的おける作用がどのように大規模な神経ダイナミクスに影響を及ぼして無意識を生み出すのかは、未だ明らかではない。分子レベルにおいて、全身麻酔薬は、脳および脊髄の重要領域においてイオンチャネルを変調し、シナプス伝達を途絶させ、区別的な脳波図(EEG)の特徴を生じさせる。これらのイオンチャネルには、γ−アミノ酪酸(GABAA)、グルタミン酸塩、ニコチン性アセチルコリン(icotinic acetylcholine)、グリシン、カリウム、およびセロトニンが含まれ得る。受容体ターゲットの多様性に鑑み、麻酔によって引き起こされる意識の低下の根底にある神経回路機構の統一的な仮説は、可能性が低いように思われる。
大部分の研究は、全身麻酔の深い定常状態に注目しており、体系的な挙動の指標を用いた意識消失への移行の追跡を行っていない。この定常状態の手法は、深く麻酔された脳に特徴的なEEGパターンと、意識消失の開始時に現れるEEGパターンとを、見分けることができない。例えば、意識消失は数十秒で生じ得るが、多くの神経生理学的特徴は、誘発後も数分間にわたって変動を続け、全身麻酔の種々のレベルの間で大きく変動する。したがって、全身麻酔薬によって現れる型どおりのEEGパターンと変化した覚醒との間の関係は、依然として充分には理解されていない。したがって、意識消失(LOC)に関係する特定の動態の特定は、神経生理学を挙動の指標に結び付ける意識消失への移行の調査を必要とする。
上述の一手法において、急激なプロポフォールによって誘発された意識消失は、人間の脳において、シングルユニット、局所発火電位、および頭蓋内プローブを使用して測定されるネットワークの動態の急激な変化を生じさせることが示されている。スパイクレートおよび多くの振動パターンがLOC後も数分にわたって変動するため、神経の動力学が、意識消失の期間においてきわめて変動性であることが示されている。スパイキング活動は、低速振動の位相に結び付いた短い時間期間に限定されており、皮質領域における情報処理を妨げている。これらの短い活動期間は、皮質の各所において位相がずれており、異なる皮質領域が異なる時点において活発になる可能性が高いため、活動を空間的に限定している。対照的に、観察される低速または低周波数の振動は、LOCと同時に現れ、その後も持続する顕著に異なるパターンを示している。
また、低速振動が、空間および時間を横断して皮質活動を分断することによって皮質の処理を断片化させ、意識過程にとって重要であると考えられる協調した皮質内情報伝達を乱すことが示されている。この非同時性は、大脳皮質およびおそらくは他の脳構造の異なる領域に位置するニューロンを非同期の様相で発火するように制約することで、協調した脳活動を妨げ、あるいは断片化させ、本明細書に示される実施例は、低速振動が、持続的な局所化した情報処理および離れた皮質領域の間の情報伝達を妨げ、したがって局所の皮質神経回路を絶縁することによって情報伝達の断絶を促進できることを示している。したがって、低速または低周波数の同時性を、患者を意識のある状態へと目覚めさせることができる鎮静状態と、患者を目覚めさせることができない全身麻酔状態との間の区別に使用できることも示されている。とくには、低速および低周波数の同時性は、鎮静状態において高く、意識のない全身麻酔の状態において低くなり、患者が全身麻酔から抜け出るときに元に戻った。
プロポフォールによって引き起こされる麻酔の実施例において、プロポフォール鎮静と比べて目に見えて明らかな低速または低周波数の振動のコヒーレンスの低下が示されており、低速振動のコヒーレンスがより深い意識消失のレベルにおいて低くなることを示唆している。デクスメデトミジンは、プロポフォールのパターンに定性的に類似したEEGを示すが、プロポフォールと比べたとき、低速振動の範囲におけるより高いコヒーレンス、およびアルファ/スピンドルの周波数範囲におけるより低いコヒーレンスを示した。さらに、セボフルランからのデータは、空間時間的な分断を伴うきわめて構造化された視床皮質の振動も示し、類似のEEGの特徴の動態が、イソフルレンおよびデスフルランなどの他のエーテル誘導体においても可能であることを示している。
したがって、本発明によれば、麻酔によって引き起こされた鎮静および意識消失からもたらされるコヒーレントおよび非コヒーレントな低速または低周波数振動が、鎮静または意識消失の追跡または監視に使用するためのシステムおよび方法に、麻酔によって引き起こされる意識消失の基本的な神経生理学に正確に結び付いたインジケータをもたらすことができる。脳のコヒーレンスおよびシンクロニーの指標を使用し、おそらくは他の特徴またはインジケータも使用して、システムおよび方法を、患者を外的刺激によって目覚めさせることができる意識の鎮静の状態と、患者を外的刺激によって目覚めさせることができない意識の全身麻酔の状態との間の区別に使用することができる。加えて、脳のコヒーレンスおよびシンクロニーの指標、ならびに他の特徴またはインジケータを、例えば患者がいつ全身麻酔から回復し得るかを予測し、あるいは全身麻酔の誘発時に患者がいつ意識消失の状態に進み得るのかを予測するように構成されたシステムおよび方法において使用することができる。同様に、本発明によるシステムおよび方法を、集中治療室における長期の鎮静の最中に患者の脳状態および鎮静剤への脳応答に変化が生じていることを明らかにし、あるいは集中治療の最中に代謝または感染の病状に起因して患者の脳状態に変化が生じていることを明らかにするために、使用することも可能である。
上述のように、麻酔によって引き起こされる意識消失は、脳の動態の2つの特定の状態に関係している可能性がある。第1は、視床および前頭部の皮質に関するアルファまたはスピンドル帯域のきわめて同期した振動である。第2は、非同期な<1Hzの低速振動からなる。これらの振動は、脳波図の形態で頭皮において記録することができる大きな電磁界を生成する。本明細書に記載のコヒーレンスおよびコヒログラム法は、これらの視床皮質の非同期な低速振動を識別する手段を提供する。とくには、コヒーレンスまたはコヒログラムを、これらの麻酔によって引き起こされる脳の動態の監視および定量化を改善するために使用することができる。
特に、意識消失状態に関する麻酔によって引き起こされた視床皮質の振動である前頭部アルファまたはスピンドル振動を明瞭に識別することが、スペクトログラムを眺めるだけでは難しい場合があるかもしれない。これらの振動の視認性は、スペクトログラムの評価のやり方に依存する可能性があり、ベータ、アルファ、シータ、デルタ、および低速帯域の振動の構造を見分けることが困難になり得る(図22A)。例えば、セボフルラン(図22A、23A)、イソフルレン、またはデスフルランなどの麻酔薬の吸入において、例えばベータ、アルファ、シータ、デルタ、および低速帯域にまたがるスペクトルが埋まり、連続的な帯域に見える可能性がある。対照的に、コヒーレンス情報またはコヒログラムは、セボフルランのもとでの10Hzのアルファ振動の存在を明瞭に示す(図24A、24B、および24C)。同様に、デクスメデトミジンにおいて、スペクトルまたはスペクトログラムだけでは、スピンドル振動を見つけることが困難な可能性がある(図15B)。しかしながら、スピンドル振動は、コヒーレンス情報またはコヒログラムを用いて調べると、はるかに明瞭になる(図19Bおよび19C)。このように、コヒーレンスおよびコヒログラム情報が、本発明により、意識消失状態に関係した視床皮質の振動を反映する前頭部アルファおよびスピンドル振動のより明瞭な観察を提供する。
さらに、麻酔薬によって引き起こされる低速振動を明瞭に識別することも、スペクトルまたはスペクトログラムを眺めるだけでは困難な場合があり得る。これは、約1Hzよりも下の低周波数のパワーは、ベースラインの意識状態において一般的に存在し得るからである(図15Aおよび16A)。意識消失に関係する麻酔によって引き起こされた低速振動は、上述のように、大脳皮質の種々の領域において非同期である。さらに、コヒーレンスは、振動の同期の程度を定量化するための手段を提供する(図18Bおよび18C)。また、非同期の低速振動は、コヒーレンス情報およびコヒログラムから明瞭に識別することが可能である。デクスメデトミジンに関しては、図15A、15B、および15Cにおいて、ベースラインおよび鎮静状態の両方において低速振動の帯域に視認可能なパワーが存在する。低速振動のパワーは、これら2つの状態間で統計的に有意に異なっているが(図15C)、この違いは見分けることが困難である。しかしながら、コヒーレンスまたはコヒログラム情報を使用して調べると、デクスメデトミジンによって引き起こされる非同期性の低速振動を、コヒーレンスの低下という形で明瞭に見て取ることができる。これを、1Hz未満の帯域におけるコヒーレンスが鎮静状態のもとでどのように低下するのかを示している図19Aおよび19Bの比較において明瞭に見て取ることができる。また、図19Cにおいても、ベースラインおよび鎮静状態における1Hz未満のコヒーレンスの比較において明瞭に見て取ることができる。この状況は、プロポフォールの場合においても明白である。図16A、16B、および16Cにおいて、1Hz未満の低速振動のパワーを、ベースライン、鎮静、および意識消失の状態にまたがって見て取ることができる。図20Cおよび20Eのように、コヒーレンス情報またはコヒログラムに関して眺めたとき、1Hz未満におけるコヒーレンスの喪失を、意識消失状態において明瞭に見て取ることができる。したがって、コヒーレンスおよびコヒログラムは、意識消失状態に関する麻酔によって引き起こされた非同期の低速振動をより明瞭に識別するための手段を提供する。
このように、臨床医は、スペクトログラムおよびコヒログラムを同時に眺め、あるいはコヒログラムだけを眺めて、アルファまたはスピンドル帯域の強いコヒーレンスを維持するように努めることができる。アルファまたはスピンドル帯域のコヒーレンスの変化は、薬剤レベルの変化、または患者の覚醒または意識の状態の変化を示している可能性がある。そのような場合、臨床医は、アルファまたはスピンドル帯域のコヒーレンスを維持するように薬剤の用量を調節することができる。同様に、臨床医は、低速振動帯域の低いコヒーレンスを維持するように努めることができる。低速振動のコヒーレンスの変化は、薬剤レベルの変化、または患者の覚醒または意識の状態の変化を示している可能性がある。そのような場合、臨床医は、低い低速振動のコヒーレンスを維持するように薬剤の用量を調節することができる。臨床医は、患者の意識を回復させ、あるいは患者をより容易に目覚めさせることができる状態またはより容易に意識を回復できる状態にし、もしくは意識があるが鎮静の状態にしたい場合に、コヒーレンスを、これらの状態の達成を補助するために使用することもできる。例えば、アルファまたはスピンドル帯域のコヒーレンスの欠如、あるいは低速振動のコヒーレンスの存在を、患者が鎮静状態にあるか否かの判断に使用することができる。
この新規な手法は、麻酔学の関心の的を、麻酔薬によって生み出される脳状態の神経生理学および神経解剖学的基盤の理解へと移行させる可能性があり、睡眠、覚醒、および病理学的状態の神経基盤の理解を直接的に促進することによって、臨床実務および神経科学の研究への新規かつ重要な貢献をするように、麻酔専門医を位置付ける可能性がある。低速振動の根底にある機構は、現時点において明確ではないが、低速振動は、より高い周波数の振動の変調において重要な役割を果たす可能性があり、したがってこれらすべての状態における低速振動の空間および時間的な分断は、皮質の統合の低下を説明する役に立つ可能性がある。
上述の種々の構成は、あくまでも例にすぎず、決して本発明の技術的範囲を限定しようとするものではない。本明細書に示した構成の変種が、当業者にとって明らかであると考えられ、そのような変種は、本出願の意図する技術的範囲に包含される。とくには、上述の構成のうちの1つ以上の構成からの特徴を選択し、明示的には上述されていないかもしれない特徴の部分的組み合わせからなる別の構成を生み出すことが可能である。さらに、上述の構成のうちの1つ以上の構成からの特徴を選択して組み合わせ、明示的には上述されていないかもしれない特徴の組み合わせからなる別の構成を生み出すことが可能である。そのような組み合わせおよび部分的組み合わせに適した特徴は、本出願を全体として検討することで、当業者にとって容易に明らかであると考えられる。本明細書および添付の特許請求の範囲に記載の主題は、技術におけるすべての適切な変更を包含するように意図される。
実施形態を、添付の図面に関連して説明した。しかしながら、図面が必ずしも比例尺では描かれていないことを、理解すべきである。距離および角度などは、あくまでも説明のためのものにすぎず、必ずしも例示の装置の実際の寸法および配置に対して正確な関係を有しているわけではない。さらに、以上の実施形態は、本明細書に記載の装置、システム、などの製作および使用を当業者にとって可能にするレベルの詳しさで説明されている。幅広く様々な変種が可能である。構成部品、構成要素、および/または工程は、変更、追加、除去、または配置変更が可能である。特定の実施形態を明示的に説明したが、他の実施形態も、この開示にもとづいて当業者にとって明らかになるであろう。
とりわけ「・・・できる」、「・・・が可能」、「・・・でよい」、「・・・してもよい」、「例えば・・・」、など、本明細書において使用される条件付きの表現は、とくにそのようでないと具体的に述べられず、あるいは使用の文脈においてそのようでないと理解されない限り、通常は、特定の特徴、構成要素、および/または状態が特定の実施形態に含まれるが、他の実施形態には含まれない旨を伝えようとするものである。したがって、そのような条件付きの表現は、一般に、特徴、構成要素、および/または状態が1つ以上の実施形態に何らかの形で必要とされることを意味するものではなく、もしくはこれらの特徴、構成要素、および/または状態が任意の特定の実施形態に含まれるか否か、あるいは任意の特定の実施形態において実行されるか否かを著者の入力または促しの有無にかかわらず決定する論理を1つ以上の実施形態が必ずや含むことを意味するものではない。
実施形態に応じて、本明細書に記載の任意の方法の特定の行為、事象、または機能を、異なる順序で実行でき、追加でき、統合でき、あるいは完全に省略することが可能である(例えば、方法の実施において、必ずしも記載されたすべての行為または事象が必要というわけではない)。さらに、特定の実施形態において、行為または事象は、順に実行されるのではなく、例えばマルチスレッド処理、割り込み処理、あるいはマルチプロセッサまたはマルチプロセッサコアによって、同時に実行されてもよい。
本明細書に開示の実施形態に関連して説明した種々の例示の論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムの各工程を、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または両者の組み合わせとして実現することが可能である。ハードウェアおよびソフトウェアのこの置換可能性を明瞭に示すために、種々の例示の構成要素、ブロック、モジュール、回路、および工程は、上記において、おおむねそれらの機能に関して説明されている。そのような機能がハードウェアまたはソフトウェアのどちらで実現されるかは、個々の用途および全体としてのシステムに課される設計上の制約に依存する。上述の機能を、各々の特定の用途において様々なやり方で実現することができるが、そのような実現の決定を本発明の技術的範囲からの逸脱を生じるものと解釈してはならない。
本明細書に開示の実施形態に関連して説明した種々の例示の論理ブロック、モジュール、および回路を、本明細書に記載の機能を実行するように設計された汎用のプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブルな論理デバイス、ディスクリートなゲートまたはトランジスタ論理回路、ディスクリートなハードウェア部品、またはこれらの任意の組み合わせにて実現または実行することができる。汎用のプロセッサは、マイクロプロセッサであってよいが、代案において、プロセッサは、任意の従来からのプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または状態機械であってよい。また、プロセッサを、例えばDSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサ、あるいは任意の他のそのような構成など、演算装置の組み合わせとして実現することも可能である。
本明細書に開示の実施形態に関連して説明した方法およびアルゴリズムの各ブロックを、ハードウェアにて直接具現化でき、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールにて具現化でき、あるいは両者の組み合わせにて具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM、または技術的に公知の任意の他の形態のコンピュータ読取可能記憶媒体に位置することができる。典型的な記憶媒体は、記憶媒体からの情報の読み出しおよび記憶媒体への情報の書き込みがプロセッサにとって可能であるように、プロセッサに組み合わせられる。代案においては、記憶媒体をプロセッサに統合することができる。プロセッサおよび記憶媒体は、ASIC内に存在することができる。ASICは、ユーザ端末内に存在することができる。代案において、プロセッサおよび記憶媒体は、ユーザ端末において別々の構成要素として存在することができる。
以上の詳細な説明は、種々の実施形態へと適用されたときの新規な特徴を図示、説明、および指摘しているが、例示の装置またはアルゴリズムの形態および詳細における種々の省略、置換、および変更が、本発明の技術的思想から離れることなく可能であることを、理解できるであろう。理解されるとおり、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態は、一部の特徴を他の特徴とは別に使用または実施することができるため、必ずしも本明細書に記載のすべての特徴および利益を提供しない形態で具現化することも可能である。本明細書に開示の特定の発明の技術的範囲は、以上の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および均等の範囲に包含されるすべての変更は、特許請求の範囲の技術的範囲に含まれる。
Claims (21)
- 麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与を受けている患者を監視するためのシステムであって、
前記患者から生理学的データを取得するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記患者の特徴および前記麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の特徴のうちの少なくとも1つの指示を受け取るように構成されたユーザインターフェイスと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備えており、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記複数のセンサからの生理学的データおよび前記ユーザインターフェイスからの指示を受け取り、
前記生理学的データから複数の低周波数信号を分離し、
前記複数の低周波数信号から、コヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を割り出し、
前記コヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を使用して、麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与に合致した前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を表す空間時間的特徴を特定し、
前記薬剤によって引き起こされる前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を示すレポートを生成する、ように構成されている
ことを特徴とするシステム。 - 前記複数の低周波数信号は、0.1Hz−1Hzの周波数範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
- 前記少なくとも1つのプロセッサは、前記現在の状態、割り出された空間時間的特徴、および指示をモデルにおいて使用して、前記患者の予測される将来の状態を割り出すようにさらに構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
- 前記プロセッサは、前記生理学的データを時系列データの組へと集め、時系列データの各組をスペクトログラムへと変換して、前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を明らかにするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
- 前記プロセッサは、前記生理学的データを時系列データの組へと集めるように構成され、時系列データの各組が、前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を明らかにするためにコヒログラムへと変換されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
- 前記プロセッサは、前記複数の低周波数信号について位相解析を実行して時間分解された位相結合を測定し、前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方に対応するシンクロニー情報を特定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
- 前記プロセッサは、前記複数の低周波数信号についてコヒーレンス解析を実行して周波数依存の共分散を測定し、前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方に対応するコヒーレンス情報を特定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
- 前記患者の特徴のうちの少なくとも1つの指示は、患者の年齢、薬剤のタイミング、薬剤の用量、および薬剤の投与速度のうちの少なくとも1つを含む薬剤投与情報の少なくとも一方を含み、
前記麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤は、プロポフォール、エトミデート、バルビツール酸塩、チオペンタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、メトヘキシタール、ベンゾジアゼピン、ミダゾラム、ジアゼパム、ロラゼパム、デクスメデトミジン、ケタミン、セボフルラン、イソフルレン、デスフルラン、レミフェンタニル(Remifenanil)、フェンタニル、スフェンタニル、およびアルフェンタニルで基本的に構成されるリストから選択されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。 - 前記プロセッサは、前記患者を所定の挙動の動態を示すと特徴付けるために動態処理法を実行するように構成され、
前記挙動の動態は、意識消失および意識回復の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。 - 前記レポートは、前記薬剤が与えられる前記患者の異なる状態における空間時間的活動を示していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
- 麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与を受けている患者を監視するための方法であって、
患者から生理学的データを取得するように構成された少なくとも1つのセンサを配置するステップと、
前記少なくとも1つのセンサからの前記生理学的データを精査するステップと、
前記生理学的データから複数の低周波数信号を特定するステップと、
前記複数の低周波数信号から、コヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を割り出すステップと、
前記コヒーレンス情報およびシンクロニー情報の少なくとも一方を使用して、麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤の投与に合致した前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を表す空間時間的特徴を特定するステップと、
前記薬剤によって引き起こされる前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を示すレポートを生成するステップと、を含む
ことを特徴とする方法。 - 前記低周波数信号は、0.1Hz−1Hzの周波数範囲内にあることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記現在の状態、割り出された空間時間的特徴、および前記指示をモデルにおいて使用して、前記患者の予測される将来の状態を割り出すステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記生理学的データをスペクトログラムへと変換し、該スペクトログラムを分析して前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を明らかにするステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記生理学的データをコヒログラムへと変換し、該コヒログラムを分析して前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方を明らかにするステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記複数の低周波数信号について位相解析を実行して位相結合を測定し、前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方に対応するシンクロニー情報を特定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記複数の低周波数信号についてコヒーレンス解析を実行して周波数依存の共分散を測定し、前記患者の現在の状態および予測される将来の状態の少なくとも一方に対応するコヒーレンス情報を特定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記麻酔性を有する少なくとも1つの薬剤は、プロポフォール、エトミデート、バルビツール酸塩、チオペンタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、メトヘキシタール、ベンゾジアゼピン、ミダゾラム、ジアゼパム、ロラゼパム、デクスメデトミジン、ケタミン、セボフルラン、イソフルレン、デスフルラン、レミフェンタニル(Remifenanil)、フェンタニル、スフェンタニル、およびアルフェンタニルで基本的に構成されるリストから選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 前記患者を所定の挙動の動態を示すと特徴付けるために動態処理法を実行するステップ
をさらに含んでおり、
前記挙動の動態は、意識消失および意識回復の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。 - 前記レポートは、前記薬剤が与えられる前記患者の異なる状態における空間時間的活動を示していることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 空間時間的特徴を特定するステップは、マルチテーパ法を使用してスペクトログラムおよびコヒログラムの少なくとも一方を生成するステップを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
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