JP2016520324A - 無細胞生合成系における代謝フラックスの制御 - Google Patents

無細胞生合成系における代謝フラックスの制御 Download PDF

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Abstract

対象とする経路の所望の産物を生産するために、一連の複雑な酵素を含む無細胞系において代謝フラックス速度を制御するための方法が提供される。本発明の方法において、代謝性能パラメータの測定値は、連続的モニタリングまたは断続的モニタリングによって取られる。代謝性能パラメータに基づき、系は、(i)無細胞系における酵素レベルを変えること;(ii)レドックスフラックスまたは炭素フラックスを制御する基質の無細胞系への供給速度を変えること;(iii)無細胞系へのO2添加を変えること;(iv)膜を隔てた漏出を変えることにより電子伝達系の効率を制御すること、を含む1または2以上のステップにより変更され、ここで、対象とする経路に存在する酵素が、所望の産物を触媒する。

Description

関連出願
本発明は、参照により本明細書に組み込まれる、2013年6月5日に出願された米国仮出願、U.S.S.N. 61/831,376に対して、35 U.S.C.§119(e)の下、優先権を主張する。
本発明の背景
微生物宿主における合成酵素経路を介する化学物質の生産は、イソプレノイド、ポリケチド、非リボソームペプチド、バイオプラスチックおよび化学的な構成単位(chemical building block)を含む、多くの重要なクラスの分子に対し、有用であることが分かった。合成生物学は、生物学的情報という固有のモジュール性に起因して、微生物によって生産される化合物のこのリストをさらにもっと拡張するための大きな可能性を有している。しかし、宿主細胞の代謝ネットワークに新規な生化学経路を埋め込むことは、細胞が数千年に渡り進化してきた微妙な調節機構を妨害する可能性がある。実際、化合物の最終収率は、細胞内で発生する複雑な相互作用に対する限られた理解に起因して、予測することがしばしば困難である、操作された細胞の代謝に対する有害な効果によって、制限される。細胞資源の非調節的な消費、異種タンパク質生産の代謝負荷、および、宿主にとって阻害性または毒性を示す経路中間体/産物の蓄積は、全体の収率を制限し得る全ての深刻な問題である。
代謝工学の概念は、所望の目標を達成するために様々な実験技術を採用することによって、代謝および細胞のネットワークの意図的な変更として定義することができるこの目的を満たすために、浮上した。何によって遺伝子工学および菌株改良と代謝工学とが区別されるのかは、操作される標的を同定することが代謝および他の細胞のネットワークを全体として考慮することである。この意味において、代謝フラックスは、代謝工学の実行には不可欠な概念である。細胞における遺伝子発現レベルならびにタンパク質および代謝産物の濃度は、代謝ネットワークの状況に対して手がかりを提供することができるが、それらは、これらの細胞構成要素間の相関に関する情報の不足に起因して、細胞表現型を完全に説明するのに固有の制限がある。代謝フラックスは、代謝経路における反応速度を表し、数学的な枠組みを通してこれらの因子を統合するのに役立つ。したがって、代謝フラックスは、様々な細胞構成要素間で互いに作用する結果、細胞の表現型を表す1つの方法とみなすことができ;観察された代謝フラックスプロファイルは、複雑な調節を組み込む、相互接続された転写反応、翻訳反応および酵素反応の結果を反映する。
無細胞合成は、in vivoでの生産方法に対し、利点を与えることがある。無細胞系は、1つの経路からの排他的生産に向けて、細胞の代謝資源の、全てではないが、そのほとんどを管理することができる。さらに、in vitroで細胞壁がないことは、合成環境の制御を可能にするので、有利である。
ほとんどの生物の環境は常に変化しているので、代謝反応は、細胞内の恒常性の状態を維持するために、細かく調節されている。代謝経路は、経路内の酵素の活性を調節することによって;例えばアロステリック阻害等を通じてタンパク質の活性を変えることによって;および、酵素の発現または翻訳ならびにその安定性;すなわちその有効寿命を変えることによって、制御される。経路はまた、細胞中に存在する基質および補因子の濃度を変えることによっても調節される。
ATPを含む補酵素は、経路を通るフラックスに影響を与える分子の一員である。このヌクレオチドは、異なる化学反応の間で化学エネルギーを転移するために使用され、リン酸化反応におけるリン酸基のキャリアとして機能する。ビタミンB3(ナイアシン)の誘導体であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)は、電子キャリアとして作用する重要な補酵素である。それは、関連する2つの形態、NADHおよびNADPH、で細胞に存在する。デヒドロゲナーゼの多くの別々の種類は、それらの基質から電子を除去し、NAD+をNADHへ還元する。次いで、補酵素のこの還元された形態は、それらの基質を還元する必要がある細胞中のレダクターゼのいずれかのための基質となる。
多くの酵素反応は、1つの化合物が酸化され、別の化合物が還元される酸化還元反応である。酸化還元反応を実施する生物の能力は、環境の酸化還元(レドックス)状態またはその還元電位に依存する。これは、時折、単一の測定基準で表現されるが、より有用な分析によって、重要なレドックス試薬、特にNAD+およびNADP+である補酵素、のレドックス状態が調べられるであろう。次いで、特定のレドックス(または電子転移)酵素の存在および活性によって、異なるレドックス試薬の相対的なレドックス状態が決定されるであろう。例えば、酵素グルタチオンレダクターゼは、還元されたグルタチオンおよびNADP+を形成するために、NADPHからの電子を、酸化されたグルタチオンへ転移することを触媒する。その反応および他の因子の速度に依存して、NADPH/NADP+対のレドックス状態は、酸化された/還元されたグルタチオン対のレドックス状態とほぼ同等であってもよいし、ほぼ同等でなくてもよい。生細胞は、経路およびレドックスバッファー(例えばグルタチオンおよび/またはアスコルバート)の調節を通じて、異なるかかるレドックス対の細胞内レドックス状態を密接に調節するために多くの戦略を開発してきたが、無細胞系は、かかる調節を提供するための操作を要求するものであり、かかる操作および制御に特に好適である。
系の性能に影響を及ぼす条件を最適化するために、無細胞の生合成反応の間に、キーとなる代謝産物および経路の代謝フラックス速度に影響を及ぼすパラメータを操作することが所望されている。前記条件のパラメータは、異なる経路間を介するグルコースなどの炭素の供給源の利用のバランスを反映する可能性があり、またNADHおよびNADPHに関連するATP生産をも最適化する可能性がある。本発明は、この問題に対処するものである。
本発明の概要
対象とする経路の所望の産物の生合成の間に、一連の複雑な酵素を含む無細胞系における代謝フラックス速度をモニターし、制御するための組成物および方法が提供される。本発明の方法は、中心的代謝のキーとなる代謝パラメータをモニターするものであり、該パラメータは、制限なく、NADH(H);NAD(H);ATP;リボース−5−ホスファート;グルコースなどの炭素の供給源の消費;およびOの消費、の濃度を含んでもよい。対象とする経路における、1または2以上の代謝パラメータの所望の標的レベルは、例えば経験的なスクリーニング方法または知られている代謝経路式からの演繹を通して、決定される。生合成の間に、これらのキーとなる代謝パラメータについて無細胞系をモニターすること、および、所望のレベルからのずれを決定することにより、系の代謝状態に関する情報が得られる。測定値に基づいて代謝性能を調整することは、(i)無細胞系における酵素レベルを変えること;(ii)レドックスフラックスまたは炭素フラックスを制御する基質の無細胞系への供給速度を変えること;(iii)無細胞系へのOの添加を変えること;(iv)膜を隔てた漏出を変えることにより電子伝達系の効率を制御すること;ここで、対象とする経路に存在する酵素が所望の産物の生産を触媒する、を含む1または2以上のステップによって行われる。
本発明の方法における対象とするキーとなる代謝パラメータのいくつかは、解糖およびペントース経路;酸化的リン酸化;ならびに、例えば図1に図解されるような、例えばNADとNADHとNADPとNADPHとの間のレドックスフラックス、のための経路を含む、中心的代謝に関する。
様々な方法が、代謝フラックス速度を変えるために採用されてもよい。いくつかの態様において、レドックスフラックス経路に関与する外因性酵素は、タンパク質の形態またはタンパク質のコード配列の形態のいずれかで、所望のレドックスバランスを達成するために要求される反応混合物へ提供される。他の態様において、初期反応混合物において利用される微生物細胞は、反応のために最適化された初期条件を提供するため、レドックスフラックス経路に関与する酵素の発現および/または組成を変えるように、遺伝的に変更される。他の態様において、酵素活性が必要に応じて容易に低減され得るように、標的とされる酵素は、タンパク質分解的切断のための特有の認識配列を含むように操作される。これらの酵素は中心的代謝に関与するので、成長している細胞に影響を与えない手法によって、例えば酵素の移転または分泌によって、発現をモジュレートする必要性が生じることもある。
本発明の方法において、遺伝的に変更されてもよいし、野生型細胞であってもよい微生物細胞は、所望の濃度まで成長させられ、次いで溶解され、粗溶解物であってもよい溶解物は、基質(単数または複数)と、生産段階の間に必要とされる場合にエネルギー供給源とを組み合わせられ、対象とする経路の所望の産物を生成するのに充分な期間インキュベートされる。追加の基質、栄養素、補因子、バッファー、還元剤および/またはATP生成系は、無細胞系へ添加されてもよい。微生物細胞への対象とする遺伝的変更は、非天然の酵素活性を提供するための異種酵素の導入を含み、望ましくない酵素活性の欠失または下方調節;ならびに天然の酵素の増強または上方制御を、さらに含んでもよい。生産段階の間に、少なくとも1つ、好ましくは2つまたは3つ以上のキーとなる代謝パラメータがモニターされ、ここで、モニタリングは連続的であっても断続的であってもよい。標的レベルを事前に決定されてもよいキーとなる代謝パラメータの標的とされるレベルに基づいて、代謝性能は、上で記載されるように調整される。
いくつかの態様において、高フラックス速度で対象とする産物を生産するための方法が提供され、該方法は、細胞を成長させること;細胞を溶解すること;および溶解物を含む無細胞系における経路の産物を生産すること、を含み、ここで、キーとなるパラメータの代謝フラックス速度がモニターされ、制御される。
いくつかの態様において、モニターおよび調整するための代謝パラメータは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、例えば1または2以上のNAD、NADH、NADPおよびNADPHの濃度である。いくつかの態様において、モニターおよび調整するための代謝パラメータは、ATPまたはADPの濃度である。いくつかの態様において、モニターおよび調整するための代謝パラメータは、溶存O濃度である。
いくつかの態様において、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼおよびトランスヒドロゲナーゼから選択される1または2以上の酵素の活性は、代謝パラメータのモニタリングに応じて調整される。
いくつかの態様において、無細胞系に添加された際、電子の漏出を増加させる化合物、例えば、2,4−ジニトロフェノール(DNP);カルボニルシアニド−p−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP);および/またはカルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)などのプロトノホア(protonophore)が添加されてもよい。
図面の簡単な説明
図1は、中心的代謝の、ある側面の概略図である。
図2は、例えば代謝制御試験装置を使用して、アスパルタートからホモセリンを生産するための代謝的に操作されたネットワークサンプルの図解である。生産経路は、産物分子あたり2つのNADPH分子と1つのATP分子とを要求する3つの酵素ステップからなる。図解はまた、モニタリングおよび制御のための有力なパラメータをも示す。
図3は、代謝制御試験装置の概略図である。
本発明の、ある態様の詳細な説明
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該技術分野における当業者によって、一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で参照される全ての特許、特許出願(公開または未公開)および他の刊行物は、その全体が参考として組み込まれる。この節に記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公開された出願および他の刊行物に記載された定義に反するか、またはそうでなければ矛盾する場合、このセクションに記載の定義は、参照により本明細書に組み込まれた定義より優先される。
刊行物または文書の引用は、かかる刊行物または文書のいずれをも関連先行技術であるとの承認を意図するものではなく、またそれが、これらの刊行物または文書の内容または日付について、いかなる承認をも構成するものではない。
本明細書で使用される「a」または「an」は、他に示されない限り「少なくとも1つ」または「1または2以上」を意味する。
核酸。本発明を実行するために使用される核酸は、RNA、アンチセンス核酸、cDNA、ゲノムDNA、ベクター、ウイルスまたはそれらのハイブリッドであろうとなかろうと、様々な供給源から単離され、遺伝子的に操作され、増幅され、および/または、発現され/組換え的に生成されてもよい。これらの核酸から生成された組換えポリペプチドは、個々に単離するか、または、クローン化し、所望の活性について試験することができる。いずれの組換え発現系も、細菌、哺乳動物、酵母、昆虫または植物の細胞発現系を含め、使用することができる。
代わりに、これらの核酸は、例えば、Adams (1983) J. Am. Chem. Soc. 105:661、Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444、Frenkel (1995) Free Radic. Biol. Med. 19:373-380、Blommers (1994) Biochemistry 33:7886-7896、Narang (1979) Meth. Enzymol. 68:90、Brown (1979) Meth. Enzymol. 68:109、Beaucage (1981) Tetra. Lett. 22:1859および米国特許番号4,458,066(それぞれが、参照によって本明細書に組み込まれる)で説明されるような周知の化学合成技術によってin vitroで合成することができる。
経路操作のための対象とする宿主細胞は、細菌、真菌および原生動物を含む、多種多様の従属栄養および独立栄養の微生物を含む。対象とする種は、制限なく、S. cerevisiae、E. coli、B. subtilisおよびPicchia pastorisを含む。
核酸の操作のための技術、例えば、サブクローニング、プローブの標識(例えばKlenowポリメラーゼ、ニックトランスレーション、増幅を使用するランダムプライマー標識)、配列決定、ハイブリダイゼーションなどは、科学文献および特許文献に十分に記載されており、例えば、Sambrook, ed., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL (2ND ED.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989)、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997)、LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY: HYBRIDIZATION WITH NUCLEIC ACID PROBES, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)(それぞれが参照により本明細書に組み込まれる)を参照。
フラックス。本明細書で使用される用語「フラックス」は、分子が、対象とする経路または反応を通過する速度を指す。フラックスを制御する因子のうち、経路における酵素の触媒速度、基質の利用度(availability)、細胞の酵素濃度、および/または、経路における酵素の近接度(proximity)が含まれる。
対象とする経路を通るフラックスは高速であることが望ましいが、同時にそれは、細胞において通常高いレベルで蓄積されていない産物が高速で生産される場合、毒性問題を引き起こす可能性がある。ストレスを受けた細胞は、ヌクレアーゼ、熱ショックタンパク質、プロテアーゼなどの活性生体触媒を維持するのに望ましくない多数のタンパク質を生産する。
本発明の方法は、所望の産物(単数または複数)が優先的に生産されるように、無細胞抽出物における経路(単数または複数)を通してフラックスを制御する手段を提供する。
フラックス速度を決定する方法は、当該技術分野において知られ、使用されており、例えばWiechert et al. (2001) Metab. Eng. 3, 265-283 および Metab Eng. 2001 Jul;3(3):195-206またはLee and Papoutsakis, 1999、Stephanopoulos, Aristidou, Nielsen, 1998、Nielsen and Eggeling, 2001などの代謝工学の教科書(それぞれが参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。フラックスは、例えば同位体標識基質の変換の直接測定によるか、または、グルコース消費、酸素消費およびCO生産の速度の同時測定による、代謝フラックス分析(MFA)などの技術を使用して、測定値から算出してよい。本発明の方法を使用して、フラックス速度はまた、例えば産物濃度の増加速度を測定することによるか、または、ATP依存性ルシフェラーゼからの光生成の強度を測定することによっても、直接測定してもよい。
代謝パラメータ。パラメータは、無細胞系の定量可能な構成要素および特性、特に、望ましくはハイスループット系において正確に測定することができるもの、である。本発明の目的において、対象とするパラメータは通常、制限なく、ヌクレオチド、例えばATP、GTP;グルコース、ピルバートなどの炭素およびエネルギーの供給源;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、例えばNAD、NADH、NADP、NADPH;O消費速度および溶存酸素濃度;pH;などを含む、中心的代謝に関連するパラメータである。対象とするパラメータは、例えばpHメーター;出口ガス流のガス濃度を測定し、材料のバランスを取ることによる、リアルタイムHPLC分析、リアルタイム酵素アッセイ;高速ターンアラウンド(rapid turnaround)のHPLC/MS機器を用いて、連続的または断続的にモニターすることができる。ATP生産の速度は、ルシフェラーゼおよびルシフェリンが添加されているフローセル中へ、反応内容物の支流を入れ、結果として得られる発光強度を測定することによって、決定してもよい。
ほとんどのパラメータは定量的な読み出しを提供するであろうが、いくつかの例においては、半定量的または定性的な結果も許容可能であろう。読み出しは、単一の決定値を含んでもよいし、平均、中央値または分散を含んでもよい。マーカーは、以下の基準に基づいてパラメータとして機能するように選択され、ここで、いずれのパラメータも基準の全てを有する必要はない:パラメータは、生合成反応においてモジュレートされる;パラメータは、利用可能である因子、例えば酵素、基質によって、モジュレートされる;パラメータは、容易に検出され得、区別され得る、強固な応答を有する。パラメータのセットは、対象とする中心的代謝プロセスのモニタリングを可能とするように選択される。
標的パラメータレベルの事前決定。対象とする経路において、1または2以上の代謝パラメータの所望の標的レベルは、例えば経験的なスクリーニング方法または知られている代謝経路式からの演繹を通して、決定される。生合成の間に、これらのキーとなる代謝パラメータについて無細胞系をモニターすること、および、所望のレベルからのずれを決定することにより、系の代謝状態に関する情報が得られる。
経験的分析は、標的パラメータをモニターしながら、対象とする産物の生合成を実行させることおよび収率を測定することにより行ってもよい。収率は、全体的な生合成に対する効果を決定するために、1または2以上の薬剤の存在下においてまたは系への調整において、さらに測定されてもよい。例えば、プロトノホア、酵素および/またはOなどの薬剤は、しばしば薬剤を欠く対照反応と比較しながら、少なくとも1つの反応条件へ、通常複数の条件へ、追加される。薬剤に応答するパラメータの読み出しの変化が測定され、望ましくは他の反応条件との比較により標準化され、評価される。
薬剤は、都合の良いことに、無細胞系へ、溶液形態でまたは容易に可溶な形態で、添加される。薬剤は、断続的または連続的に、ストリームとしてフロースルー系に添加されてよいし、代わりに、そうでなければ静的な溶液へ、単回でまたは徐々に、ボーラスの化合物を添加してもよい。好ましい薬剤製剤は、製剤全体に対する深刻な効果を有することがある防腐剤などの追加の構成要素を含まない。
データは、データ処理系へ入力されてもよく、パラメータの分析のために自動化されてもよい。データ処理ユニットは、さらに、パラメータモジュレーティング薬剤、例えば酵素、Oおよび/またはプロトノホアの導入のための自動化系に接続されてもよい。
収率。本明細書で使用される用語「収率」は、バッチまたはフェドバッチ反応の間に蓄積され得る産物分子の最終体積濃度(final volumetric concentration)を指すか、または、連続動作の間に維持され得る産物濃度を指す。
トランスヒドロゲナーゼ。エネルギーを伝達するニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼは、膜間プロトン移動と共役された反応において、NAD(H)とNADP(H)との間の水素化物イオンの直接転移を触媒する酵素である。プロトン駆動力は、NADHからNADP+への水素化物イオンの転移速度を加速し、NADPHの形成に向けてこの反応の平衡をシフトさせる。NADPHからNADへの逆方向におけるトランスヒドロゲネーション(transhydrogenation)は、外側へのプロトン移動とプロトン駆動力の形成を伴う。逆トランスヒドロゲネーションにおいて、酵素は、プロトンポンピングのために基質結合エネルギーを利用する。加えて、可溶性ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼは、膜結合性でもないし、NAD+をNADHへ還元する一方でNADPHをNADP+へ再酸化する主な働きもしない。
グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDまたはG6PDH)は、グルコース−6−リン酸を6−ホスホグルコノ−δ−ラクトンへ変換し、ペントースリン酸経路の律速酵素である。EC番号5.3.1.9;CAS番号9001-41-6。
グルコース−6−リン酸イソメラーゼ(代わりにホスホグルコースイソメラーゼまたはホスホヘキソースメラーゼとして知られる)は、解糖の第2段階で、グルコース−6−リン酸の、フルクトース6−リン酸への変換を触媒する酵素である。
酵素経路。本明細書で使用される用語「酵素経路」または「対象とする経路」は、基質を、対象とする産物へ変換する細胞系を指し、ここで該系は、複数の酵素を含み、加えて、酵素、酵素触媒反応の産物、酵素によって利用される補因子などの1または2以上によって作用される基質を含んでもよい。本発明の目的において、経路は、細胞の溶解物中に存在する。多くの代謝経路は、微生物系において知られ、記載されており、公共のデータベースでアクセス可能である。例えば、多数の参考図書が利用可能であり、とりわけ、The Metabolic Pathway Engineering Handbook (2009), ed. C. Smolke, CRC, ISBN-10: 1420077651 and 1439802963;Metabolic Engineering: Principles and Methodologies (1998) Stephanopoulos, Academic Press ISBN-10: 0126662606;Greenberg DM. Metabolic Pathways: Energetics, tricarboxylic acid cycle, and carbohydrates. Academic Press; 1967;Greenberg M. Metabolic pathways. Academic Press; 1968;Greenberg DM. Metabolic pathways. Academic; 1970;およびGreenberg DM, Vogel HJ. Metabolic pathways. Academic; 1971(それぞれが参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
対象とする経路は、制限なく、炭水化物、アミノ酸、核酸、ステロイドおよび脂肪酸代謝に関与する経路を含み、抗生物質、例えばアクチノマイシン、ブレオマイシン、リファマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、リンコマイシン、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、シクロヘキ、ピューロマイシン、サイクロセリン、バシトラシン、ペニシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、ポリミキシンおよびグラミシジン;バイオサーファクタント、例えばラムノリピド、ソフォロリピド、糖脂質およびリポペプチド;生物学的燃料、例えばバイオエタノール、バイオディーゼルおよびバイオブタノール;アミノ酸、例えばLグルタミン酸、L−リシン、L−フェニルアラニン、L−アスパラギン酸、L−イソロイシン、L−バリン、L−トリプトファン、L−プロリン(ヒドロキシプロリン)、L−スレオニン、L−メチオニンおよびD−p−ヒドロキシフェニルグリシン;有機酸、例えばクエン酸、乳酸、グルコン酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸およびイタコン酸;脂肪酸、例えばアラキドン酸、多価不飽和脂肪酸(PUBA)およびγリノレン酸;ポリオール、例えばグリセロール、マンニトール、エリスリトールおよびキシリトール;香味料および香料、例えばバニリン、ベンズアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、4−(R)−デカノリド(decanolide)および2−アセチル−1−ピロリン;ヌクレオチド、例えば5’−グアニル酸および5’−イノシン酸;ビタミン、例えばビタミンC、ビタミンF、ビタミンB2、プロビタミンD2、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、ビオチン、2−ケト−L−グロン酸およびプロビタミンQ10;顔料、例えばアスタキサンチン、β−カロチン、リコペン、モナスコルブリンおよびルブロパンクタチン;糖類および多糖類、例えばリボース、ソルボース、キサンタン、ジェランおよびデキストラン;バイオポリマーおよびプラスチック、例えばポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリ−γ−グルタミン酸および1,3−プロパンジオール;および当該技術分野において知られているものの合成を含んでもよい。
多数の反応は、対象とする経路における酵素によって触媒されてもよい。括弧内に提供される、酵素の分類番号によって同定され得る広いクラスは、(EC1)酸化還元酵素、例えばデヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、レダクターゼ、酸化還元酵素、シンターゼ、オキシゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、トランスヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、エポキシダーゼ、ヒドロキシラーゼ、脱メチル化酵素、デサチュラーゼ、ジスムターゼ、ヒドロキシトランスフェラーゼ、デハロゲナーゼ、脱ヨウ素酵素;(EC2)トランスフェラーゼ、例えばトランスアミナーゼ、キナーゼ、ジキナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、ホルミルトランスフェラーゼ、ホルムイミノトランスフェラーゼ、カルボキシルトランスフェラーゼ、カルバモイルトランスフェラーゼ、アミジノトランスフェラーゼ、トランスアルドラーゼ、トランスケトラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、パルミトイルトランスフェラーゼ、サクシニルトランスフェラーゼ、マロニルトランスフェラーゼ、ガロイルトランスフェラーゼ(galloyltransferase)、シナポイルトランスフェラーゼ、チグロイルトランスフェラーゼ(tigloyltransferase)、テトラデカノイルトランスフェラーゼ(tetradecanoyltransferase)、ヒドロキシシンナモイルトランスフェラーゼ(hydroxycinnamoyltransferase)、フェルロイルトランスフェラーゼ(feruloyltransferase)、ミコリルトランスフェラーゼ(mycolyltransferase)、ベンゾイルトランスフェラーゼ(benzoyltransferase)、ピペロニイトランスフェラーゼ(piperoyltransferase)、トリメチルトリデカノイルトランスフェラーゼ(trimethyltridecanoyltransferase)、ミリストイルトランスフェラーゼ、クマロイルトランスフェラーゼ(coumaroyltransferase)、チオラーゼ、アミノアシルトランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ヘキソシルトランスフェラーゼ、ペントシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、ピリジニラーゼ、ジホスホリラーゼ(diphosphorylase)、シクロトランスフェラーゼ、スルフリラーゼ、アデノシルトランスフェラーゼ、カルボキシビニルトランスフェラーゼ、イソペンテニルトランスフェラーゼ(isopentenyltransferase)、アミノカルボキシプロピルトランスフェラーゼ、ジメチルアリルトランスフェラーゼ、ファルネシルトランスフェラーゼ、ヘキサプレニルトランスフェラーゼ(hexaprenyltranstransferase)、デカプレニルシストランスフェラーゼ(decaprenylcistransferase)、ペンタプレニルトランスフェラーゼ(pentaprenyltranstransferase)、ノナプレニルトランスフェラーゼ(nonaprenyltransferase)、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ、アミノカルボキシプロピルトランスフェラーゼ、オキシミノトランスフェラーゼ(oximinotransferase)、プリントランスフェラーゼ(purinetransferase)、ホスホジスムターゼ、ホスホトランスフェラーゼ、ヌクレオチジルトランスフェラーゼ、ポリメラーゼ、コリンホスホトランスフェラーゼ、ホスホリルムターゼ(phosphorylmutase)、スルフルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、CoA−トランスフェラーゼ;(EC3)加水分解酵素、例えばリパーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ、ペプチダーゼ、加水分解酵素、ラクトナーゼ、脱アシル化酵素、脱アセチル化酵素、フェオホルビダーゼ、デポリメラーゼ、チオエステラーゼ、ホスファターゼ、ジホスファターゼ、トリホスファターゼ、ヌクレオチダーゼ、フィターゼ、ホスホジエステラーゼ、ホスホリパーゼ、スルファターゼ、シクラーゼ、オリゴヌクレオチダーゼ、リボヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、グリコシダーゼ、ヌクレオシダーゼ、グリコシラーゼ、アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、メタロカルボキシペプチダーゼ、オメガ−ペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼ、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、スレオニンエンドペプチダーゼ、アミナーゼ、アミダーゼ、デサクシニラーゼ、デホルミラーゼ、アシラーゼ、デイミナーゼ、デアミナーゼ、ジヒドロラーゼ、シクロヒドロラーゼ、ニトリラーゼ、ATPアーゼ、GTPアーゼ、ハライダーゼ(halidase)、デハロゲナーゼ、スルホヒドラーゼ;(EC4)リアーゼ、例えばデカルボキシラーゼ、カルボキシラーゼ、カルボキシキナーゼ、アルドラーゼ、エポキシリアーゼ(epoxylyase)、オキソ酸−リアーゼ、炭素−炭素リアーゼ、デヒドラターゼ、ヒドラターゼ、シンターゼ、エンドリアーゼ(endolyase)、エキソリアーゼ(exolyase)、アンモニア−リアーゼ、アミジン−リアーゼ、アミン−リアーゼ、炭素−硫黄リアーゼ、炭素−ハライドリアーゼ、リン−酸素リアーゼ、デヒドロクロリナーゼ;(EC5)イソメラーゼ、例えばイソメラーゼ、ラセマーゼ、ムターゼ、トートメラーゼ、ホスホムターゼ、ホスホグルコムターゼ、アミノムターゼ、シクロイソメラーゼ、シクラーゼ、トポイソメラーゼ;および(EC6)リガーゼ、例えば合成酵素、tNRA−リガーゼ、酸−チオールリガーゼ、アミドシンターゼ、ペプチドシンターゼ、シクロリガーゼ、カルボキシラーゼ、DNA−リガーゼ、RNA−リガーゼ、シクラーゼを含む。
より具体的なクラスは、制限されずに、(EC1.1)供与体のCH−OH基、および受容体に作用する;(EC1.2)供与体のアルデヒド基またはオキソ基、および受容体に作用する;(EC1.3)供与体のCH−CH基、および受容体に作用する;(EC1.4)供与体のCH−NH基、および受容体に作用する;(EC1.5)供与体のCH−NH基、および受容体に作用する;(EC1.6)NADHまたはNADPH、および受容体に作用する;(EC1.7)供与体としての他の窒素含有(nitrogenous)化合物、および受容体に作用する;(EC1.8)供与体の硫黄基、および受容体に作用する;(EC1.9)供与体のヘム基、および受容体に作用する;(EC1.10)供与体としてジフェノールおよび関連物質、および受容体に作用する;(EC1.11)受容体としての過酸化物に作用する;(EC1.12)供与体としての水素、および受容体に作用する;(EC1.13)分子酸素を組み込みつつ単一の供与体に作用し、1または2以上の酸素原子を組み込む;(EC1.14)分子酸素を組み込むかまたは還元しつつ、対の供与体に作用する、ここで供与体が、2−オキソグルタラート、NADH、NADPH、還元フラビン、フラビンタンパク質、プテリジン、鉄−硫黄タンパク質、アスコルバートである;(EC1.15)受容体としてのスーパーオキシドラジカルに作用する;(EC1.16)金属イオン、および受容体を酸化する;(EC1.17)CH基またはCH基、および受容体に作用する;(EC1.18)供与体としての鉄−硫黄タンパク質、および受容体に作用する;(EC1.19)供与体としての還元フラボドキシン、および受容体に作用する;(EC1.20)供与体におけるリンまたはヒ素および、受容体に作用する;(EC1.21)X−Y結合を形成するためのX−HとY−H、および受容体に作用するものを含む酸化還元酵素を含み、ここで、それぞれの供与体のカテゴリーのための受容体は、制限されずに、NAD、NADP、ヘムタンパク質、酸素、ジスルフィド、キノン、鉄−硫黄タンパク質、フラビン、窒素含有基、チトクローム、二窒素およびHを含んでもよい。
トランスフェラーゼは、(EC2.1)一炭素基(one-carbon groups)を転移する;(EC2.2)アルデヒド基またはケトン基を転移する;(EC2.3)アシルトランスフェラーゼ;(EC2.4)グリコシルトランスフェラーゼ;(EC2.5)メチル基以外のアルキル基またはアリール基を転移する;(EC2.6)窒素含有基を転移する;(EC2.7)リン含有基を転移;(EC2.8)硫黄含有基を転移する;(EC2.9)セレン含有基を転移するものを含む。
加水分解酵素は、(EC3.1)エステル結合に作用する;(EC3.2)グリコシラーゼ;(EC3.3)エーテル結合に作用する;(EC3.4)ペプチド結合(ペプチダーゼ)に作用する;(EC3.5)ペプチド結合以外の炭素−窒素結合に作用する;(EC3.6)酸無水物に作用する;(EC3.7)炭素−炭素結合に作用する;(EC3.8)ハライド結合に作用する;(EC3.9)リン−窒素結合に作用する;(EC3.10)硫黄−窒素結合に作用する;(EC3.11)炭素−リン結合に作用する;(EC3.12)硫黄−硫黄結合に作用する;(EC3.13)炭素−硫黄結合に作用するものを含む。
リアーゼは、(EC4.1)炭素−炭素リアーゼ;(EC4.2)炭素−酸素リアーゼ;(EC4.3)炭素−窒素リアーゼ;(EC4.4)炭素−硫黄リアーゼ;(EC4.5)炭素−ハライドリアーゼ;(EC4.6)リン−酸素リアーゼを含む。
イソメラーゼは、(EC5.1)ラセマーゼおよびエピメラーゼ;(EC5.2)シス−トランス−イソメラーゼ;(EC5.3)分子内イソメラーゼ;(EC5.4)分子内トランスフェラーゼ(ムターゼ);(EC5.5)分子内リアーゼを含む。
リガーゼは、(EC6.1)炭素−酸素結合を形成する;(EC6.2)炭素−硫黄結合を形成する;(EC6.3)炭素−窒素結合を形成する;(EC6.4)炭素−炭素結合を形成する;(EC6.5)リン酸エステル結合を形成する;(EC6.6)窒素−金属結合を形成するものを含む。
経路における酵素は、天然に存在するものであっても、対象とする特徴、例えば基質特異性、反応動態、溶解度、および/または、フィードバック阻害に対する非感受性を最適化するために変更されていてもよい。加えて、いくつかのケースにおいて、酵素を発現する遺伝子は、コドン使用頻度のために最適化されるであろう。いくつかの態様において、経路一式は、単一生物からの酵素を含むが、しかしながら、かかることは要求されるものではなく、複数の生物からの酵素を合わせることが企図される。いくつかの目的において、経路は、宿主細胞に対して内因性のものであってもよいが、かかることもまた要求されるものではなく、経路一式または経路の構成要素が宿主細胞中に導入されてもよい。
無細胞系。本明細書で使用される「無細胞系」は、細胞溶解物、または、酵素または酵素のカスケードを合成するためにわざと操作された抽出物を含有する、単離された無細胞系である。該酵素または該カスケードは、(例えば酵素経路における)所定の順序および決定された基質を超える割合で作用するとき、対象とする化合物の優先的な生成をもたらす。対象とする化合物は、典型的には、活性医薬成分(API)、化学的前駆体または中間体として使用される得る化学物質(chemical entity)(例えば小分子)である。
本明細書で使用される「基質」は、対象とする化合物を合成するために必要とされる必須要素を提供することが可能な化合物または化合物の混合物である。
本明細書で使用される「アデノシン三リン酸生成系」または「ATP再生成系」は、アデノシン、AMPおよびADPをATPへ再生成する化学的または生化学的な系である。ATP再生成系の例は、グルコース代謝、グルタマート代謝および光合成に関与するものを含む。
本明細書で使用される「還元当量」は、レドックス反応における1つの電子と同等の物を転移させる化学種である。還元当量の例は、孤立電子(例えば金属イオンが関与する反応における)、水素イオン(プロトンおよび電子からなる)および2つの電子を運ぶ水素化物イオン(:H−)(例えばNADが関与する反応における)である。「還元当量の受容体」は、レドックス反応において、1つの電子と同等の物を受容する化学種である。
代謝産物。代謝産物は、代謝の間に使用または生産されるいずれの基質でもある。本発明の目的において、代謝産物は、常にではないが、しばしば、対象とする経路における酵素の産物である。
誘導性発現。本発明の方法は、様々なコード配列の調節された発現を活用してもよい。発現は、様々な手がかり、例えば化学薬品による誘導、成長期の変化、栄養素の枯渇、温度シフトおよび/または光によって調節されてもよい。いくつかの態様において、誘導性プロモーターは、誘導剤、例えば当該技術分野において知られているラクトース、アラビノースまたはテトラサイクリンなどの化学薬品の存在により、調節される。
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、および、対象とするコード配列に作動可能に連結されるプロモーターを含有する。プロモーターは、それらが作動可能に連結される特定の核酸配列の転写および翻訳を制御する、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)に位置する翻訳されない配列である。かかるプロモーターは典型的には、誘導性および構成的の2つのクラスに該当する。誘導性プロモーターは、それらの制御下で、増加したレベルの転写をDNAから、培養条件におけるいくつかの変化、例えば栄養素の有無または温度の変化に応答して、開始するプロモーターである。現時点では、種々の有力な宿主細胞によって認識される大多数のプロモーターが周知である。天然のプロモーターが使用されてもよいが、ほとんどの目的において、異種プロモーターが一般に、より優れた転写およびより高い収率を可能にするため、異種プロモーターが好ましい。
原核生物宿主による使用に好適なプロモーターは、 −ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、および、tacプロモーターなどの数多くのハイブリッドプロモーターを含む。しかしながら、知られている他の細菌プロモーター、例えばlacIプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、アラビノースプロモーター、gptプロモーター、ラムダPRプロモーター、ラムダPLプロモーター、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)などの解糖系酵素をコードするオペロン、および、酸ホスファターゼプロモーターもまた好適である。それらのヌクレオチド配列は公開されており、それによって、対象とする配列へそれらを、リンカーまたはアダプターを使用して、作動可能に連結することを当業者に可能にさせる。細菌系において使用されるプロモーターはまた、コード配列へ作動可能に連結されたシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列をも含有するであろう。あるケースにおいて、宿主細胞もまた、培養における全ての細胞が同等に誘導されるように、代謝産物または誘導トランスポータータンパク質の濃度を調整するために遺伝的に変更されてもよい。
生産方法
対象とする産物の高収率生産は、対象とする経路を含む細胞質の酵素が、例えば生理学的に正常なレベルでまたは生理学的に正常なレベルより優れて、発現される細胞を提供することによって達成される。生産目的において、細胞の溶解物が利用される。細胞は、実質的に酵素活性を維持するいずれか都合の良い方法、例えば超音波処理、フレンチプレスおよび当該分野において知られているものなどによって溶解される。溶解物は、分画されても、および/または、粒子状物質がスピンアウト(spun out)されてもよいし、追加のプロセスステップを除いて使用されてもよい。細胞溶解物はさらに、基質、補因子、および、酵素活性に要求される塩および/またはバッファーと組み合わせてもよい。
遺伝的背景が異なる、例えば以前に変えられたかまたは遺伝子的に操作された細胞または種が異なる細胞の溶解物、または、異なる戦略により調製された溶解物は、混合され得、本発明の細胞溶解物によるバイオプロセスにおいて同時にまたは連続して使用され得る。溶解物は、遊離であっても固定化されていてもよく、産物を除去しつつ限外濾過または他の手段によって反応器中で隔離されてもよく、プロセスの各ステージで再使用または配置されてもよい。
本発明の方法は、高収率の所望の産物を提供するものであり、その収率は、天然の微生物宿主により達成され得る収率より優れている。生産性(すなわち体積またはバイオマスの単位当たりの生産速度)もまた、増加することもある。本発明の一態様において、産物の収率は、基底速度(basal rate)の少なくとも約5倍、基底速度の少なくとも10倍、基底速度の少なくとも25倍またはそれ以上である。方法はまた、基質を産物へ変換する効率をも増加させ得、ここで変換効率は、天然の微生物宿主の基底変換効率と比較して、5%、10%、20%またはそれ以上に増加し得る。
種々の接種材料(inocula)は、種々の条件(例えば2種の異なる炭素の供給源で成長させた2つのバッチ)に適応させることができるか、または、種々の遺伝子型を有することができ、その上、プロセスを実施するために(例えば、いくつかの炭素の供給源の同時消費、または、2つの別々の細胞バッチに分けられた経路を通して代謝産物の連続プロセシングを得るために)混合することができる。プロセスはまた、一組の反応を1つの容器で進めることを可能にし、次いで、上清または濾液を、第2の容器に通すことによっても、連続して起こり得る。
反応は、大規模の反応器、小規模のものを利用してもよいし、複数の同時合成を行うために多重化されてもよい。連続反応は、試薬のフローを導入するために供給機構を使用するであろうし、プロセスの一部として最終産物を単離してもよい。バッチ系もまた対象とし、ここで追加の試薬は、活性合成のための期間を引き延ばすために、時間をかけて導入されてもよい。反応器は、バッチ、拡張バッチ、半バッチ、半連続、フェドバッチおよび連続ならびに適用目的に従い選択されるであろうものなどのいずれのモードで走らせてもよい。
反応は、いかなる体積であってもよく、小規模(一般的に少なくとも約1mlおよび約15ml以下)またはスケールアップされた反応(反応体積が、少なくとも約15ml、一般的に少なくとも約50ml、より一般的に少なくとも約100mlであり、500ml、1000mlまたは最大数千リットルの体積まで多くてもよい)のいずれかであってもよい。反応は、いかなる規模で実施されてもよい。
様々な塩およびバッファーが含まれてもよく、ここでイオン種は、産物の生産に関して典型的には最適化される。反応培地の特定の構成要素の濃度を変化させるとき、別の構成要素の濃度は、それに応じて変化させてもよい。また、反応器中の構成要素の濃度レベルも、時間をかけて多様化させてもよい。
半連続操作モードにおいて、反応器は、透析、透析ろ過バッチまたはフェドバッチモードで運転されてもよい。供給溶液は、同じ膜または別々の注入ユニットを通して反応器へ供給されてもよい。合成された産物は、反応器中で蓄積され、次いで、系操作の完了後の精製のための一般的方法に従い、単離および精製される。代わりに、産物は、残留する化合物の一部または全部を反応器へ戻す選択肢を有する連続または不連続モードのいずれかにおいて、プロセスの間、除去することができる。
試薬のフローがある場合、液体フローは、膜に対し、垂直方向および/または接線方向であり得る。接線流は、膜の目詰まりを防止するのに有効であり、垂直流上に重ね合わせてもよい。膜に対して垂直なフローは、正の圧力ポンプまたは真空吸引ポンプによって、または、当該技術分野において知られている他の方法を使用し膜間圧力を適用することによって、引き起こされても、もたらされてもよい。膜の外表面に接触する溶液は、周期的に変化させてもよく、膜に対する安定した接線流であってもよい。反応器は、適切な撹拌手段によって、内部からまたは外部から撹拌されてもよい。
反応において生産された産物の量は、様々な様式で;例えば、着色産物または蛍光分析産物を生産する酵素アッセイによって、または、HPLC方法によって、測定することができる。1つの方法は、生産されている特定の産物の活性を測定するアッセイの利用可能性に依存する。
生合成プロセスの間、無細胞系は、本明細書で記載されるように、代謝パラメータの濃度についてモニターされる。代謝パラメータの濃度が、標的範囲、すなわち所望の経路産物の最適化された生合成を提供するために決定された標的濃度から、既定のレベルの差で多様化するとき;系は、代謝パラメータの濃度を所望の標的範囲に戻すために調整される。
還元当量が、生合成経路の機能のために要求されるとき、様々な方法が、NADHの利用可能性を増加させるために利用されてもよい。いくつかの態様において、還元当量の供給源は、NADPをNADPHへ還元する酵素経路へ向けられる(channeled)。例えば、グルコースは、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼおよび/または6−ホスホグルコノラクトナーゼとの反応ミックスを増加することにより、ペントースリン酸経路へ優先的に向けられ得る。増加と組み合わせて、またはその代わりとして、ペントースリン酸経路へのグルコースの優先的なフラックスを可能にする標準的な解糖経路において、反応ミックスは、酵素を不活性化するためにプロテアーゼとともに処置することができる。代わりに、かかる還元当量は脂肪基質から得られ;それは、これらの基質からNADPへ還元当量を転移させる酵素との反応混合物を増加させることなどによる。
対象とする生合成反応が過剰な還元当量を生産するとき、様々な方法が、過剰な電子を除去し、NADP+またはNAD+を再利用するために、利用されてもよい。いくつかの態様において、活性のある電子伝達鎖は、例えばOが電子のレセプターとして存在する酸化的リン酸化において活性のある小胞を含むことにより、提供される。かかる反応において、所望のバランスのNADP+および/またはNAD+を生産するのに十分な速度で生合成反応中へ入るOが計測される。所望のレドックスフラックスにおいて、Oへの電子送達の速度からATP形成を脱共役する必要がある場合がある。脱共役の方法は、脱共役剤、例えばジニトロフェニルの添加;NADPHからNAD+への還元当量を転移させるためのピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ酵素の添加、を含む。トランスヒドロゲナーゼまたは他の手段を使用して、NADPHとNADHとの間の電子を転移させることもまた必要となることがある。
本明細書に記載のとおり、中心的代謝に対する様々な調整を追求することで、パラメータ濃度の所望の調整を達成することができる。一般に、NAD(H)とNADP(H)との間のレドックスフローは、NADPHからNADHへの還元当量を転移させるためのトランスヒドロゲナーゼの活性のモジュレーションにより調整することができる。生合成のための還元当量の必要性は、例えばグルコース−6−デヒドロゲナーゼ活性を増加させることによって、解糖からペントース経路へのエネルギーのモジュレーションにより調整することができる。より多くのエネルギーは、Oおよびグルコースリン酸イソメラーゼの増加によって解糖へ迂回され得る。
都合の良いことに、モニタリングおよび調整が自動的に行われる、自動化された系が提供される。
例示
以下の例は、本発明の行い方および使用法についての徹底した開示および説明を当業者に提供するために提示されるものであって、本発明の範囲を限定することも、以下の実験が、行われた全てまたは最良の実験であることを表すことも意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度)に関して正確さを保証するために努力したが、いくつかの実験誤差や偏差は存在する可能性がある。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧である。
無細胞代謝制御試験装置の開発
無細胞代謝系の開発によって、代謝反応ネットワークの直接的なオンライン制御の可能性が提供される。細胞壁の欠如および反応容積全体にわたる高分子触媒の分散によって、オンラインモニタリングのための正確なサンプリングならびに添加された基質および反応制御試薬の即時分散が可能になる。複雑な生物学的変換には、従来の不均一および均一触媒プロセスに採用される技術を使用して、アプローチすることができる。かかる生物学的変換プロセスは、汎用化学製品の大量生産に有効である数十年来の開発に生かすことができる。
しかしながら、超低コストの目標を達成するためには、合成を、粗細胞溶解物の使用とともに行い、目標とする生合成経路の酵素が過剰発現しているときでさえも、かかる溶解物は、数百の異なる触媒を含有する。さらに、中心代謝ネットワークの多くは、経路前駆体(基質)を提供するために、還元当量の提供または除去のいずれかを行うために、および、効率的な製品形成のために要求される化学エネルギー(ATPおよびGTP)を管理するために、維持しなければならない。化学触媒作用を使用するプロセスと同じように、モニタリング方法および系の摂動実験は、最も有効なプロセス性能を得る制御動作の性質を決定するために、応答時間定数およびサブシステムの接続度を決定するのに、使用することができる。
図1は、代謝における基本的な概念を示す単純化した図表を提供する。グルコースが、炭素およびエネルギーの主たる供給源であること、グルコースが、制御された速度で絶えず添加されること、および、それが、ホスファートの供給源としてのATPを使用して、グルコキナーゼにより即座にリン酸化されること、を前提とする。青色の楕円で囲まれて示される化合物は、代謝を制御するために必要とされるものとして、反応器中へ供給される。青色の長方形のボックスおよび青色の矢印は、その速度を調整しているところの生化学的プロセスを表す。G6P DHはグルコース6−Pデヒドロゲナーゼを表し、該酵素はグルコース6−Pをペントースリン酸経路(PPP)中へ搬送し、PGIはホスホグルコースイソメラーゼであり、該酵素は解糖およびTCA回路に向かうグルコースのフラックスを制御する。これらの酵素の相対活性によって、還元当量のキャリアとしてのNADH対NADPH形成の相対速度が決定される。トランスヒドロゲナーゼ(トランスH’アーゼ;または同様の活性)もまた、要求に応じて、NADPHからNADHへ還元当量を転移させるために使用される。
系を、無細胞代謝反応の所望の調節を達成するために、酵素活性、Oおよびプロトン漏出を変えることを通して制御する。例えば、同化経路が多くの還元当量を必要とする場合、より多くのグルコースを、例えばグルコース−6−Pデヒドロゲナーゼの活性を増加させることにより、PPP経路を通して短絡させる。
代わりに、経路が、高レベルのATPを必要とし、かつ還元当量をほとんど必要としない場合、より多くのグルコースを、O濃度およびPGI活性を増加させることにより、解糖およびTCA回路へ短絡させることができる。PPP対解糖のバランスもまた、どの同化前駆体が必要となるのかを反映させなければならない。これらが全てピルバートまたはピルバート誘導体である場合、そのときには、十分なグルコースを、このニーズを満たすために、解糖に通さなければならない。一方、リボースホスファートが重要な前駆体である場合、PPPは、これを供給しなければならない。
また、過剰な還元当量を生産するが、少量のATPしか必要としない代謝経路についても考慮する。この場合、還元当量は、ATPを生産することなしに酸素に受け入れられなければならない。しかしながら、還元当量の酸素への移動によって、小胞の膜を隔てたプロトン勾配が引き起こされるであろう。このプロトン勾配がATP生成によって緩和されない場合、プロトン駆動力は蓄積することで、電子の受け入れを鈍化または停止さえする。この場合、プロトンの膜を隔てた漏出を可能にする、例えばジニトロフェノールなどの薬剤を加えることによって、この勾配は緩和され、酸素への電子フラックスがより多くなり得る。
酸素添加の速度を制御し、代謝系のバランスを取ることで、十分な還元当量およびATPが生合成経路に利用可能であるということが確保される。例を表1に示す。
単純な生合成経路に対する制御応答能力および動力学を評価するために、試験装置を構築してもよい。例えば、還元当量(NADPH)および化学エネルギー(ATP)の両方を要求する経路を選択することができる。アスパラギン酸のホモセリンへの変換には、図2に示される、連続した3種の酵素が使用され、2つのNADPH還元当量および1つのATPが要求される。操作する因子を青色で示し、応答パラメータをマゼンダで示す。実際の試験装置を図3に図解する。空気および酸素にとっての添加速度のように、グルコースおよびアスパラギン酸の供給速度を別々に調整する。G6PDH、PGIの濃度およびジニトロフェノール量を、基礎代謝の決定と、これらのパラメータの各々におけるステップ変化に対する応答の決定との両方のために、独立して操作する。触媒(酵素)が限外濾過膜によって保持され、濾液が、基質が供給されるのと同じ速度で除去される、効率的な大規模運転をシミュレーションするために、無細胞代謝反応器を連続モードで運転する。溶存酸素濃度およびpHは、連続的にモニターし、制御する。酸素消費およびCO発生は、出口ガス流のガス濃度を測定し、材料のバランスを取ることによって、決定する。代謝産物濃度ならびにNADPおよびNADPH濃度は、高速ターンアラウンドのHPLC/MS機器を使用して、頻繁に決定する。最後に、ATP生産の速度は、ルシフェラーゼおよびルシフェリンが添加されているフローセル中へ、反応内容物の支流を入れ、結果として得られる発光強度を測定することによって、決定する。

Claims (19)

  1. 対象とする経路の所望の産物を生産するための、一連の複雑な酵素を含む無細胞系における、代謝フラックス速度を制御する方法であって、該方法が、以下:
    代謝性能の測定値を取ること;
    (i)無細胞系における酵素レベルを変えること;(ii)レドックスフラックスまたは炭素フラックスを制御する基質の無細胞系への供給速度を変えること;(iii)無細胞系へのO添加を変えること;(iv)膜を隔てた漏出を変えることにより電子伝達系の効率を制御すること、を含む1または2以上のステップを行うことによって、測定値に基き代謝性能を調整すること、を含み、
    ここで、対象とする経路に存在する酵素が、所望の産物の生産を触媒する、前記方法。
  2. 代謝性能の測定値が、アデニン代謝産物の測定値を含む、請求項1に記載の方法。
  3. アデニン代謝産物が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドである、請求項2に記載の方法。
  4. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが、NAD、NADH、NADPおよびNADPHの1種または2種以上である、請求項3に記載の方法。
  5. 代謝性能の測定値が、ATPまたはADPの測定値を含む、請求項1に記載の方法。
  6. 溶存酸素濃度およびpHが、連続してモニターされ、および、制御される、請求項1に記載の方法。
  7. 無細胞系における酵素を変えるステップが、グルコース−6リン酸デヒドロゲナーゼの活性を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 無細胞系における酵素を変えるステップが、ホスホグルコースイソメラーゼの活性を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
  9. 無細胞系における酵素を変えるステップが、トランスヒドロゲナーゼ活性を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
  10. 活性を増加させるステップが、無細胞系への酵素の添加を含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 活性を増加させるステップが、前記酵素のコード配列を、コード配列が翻訳される無細胞系へ添加することを含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
  12. が、前記測定値を取ることに応答して、増加される、請求項1に記載の方法。
  13. 膜を隔てた漏出を変えるステップが、前記無細胞系へのジニトロフェノールの添加を含む、請求項1に記載の方法。
  14. 測定値が、代謝性能がNADPHおよびリブロース−5−リン酸の増加した濃度から恩恵を受けるであろうことを示すとき、グルコース−6リン酸デヒドロゲナーゼの酵素活性が増加される、請求項1に記載の方法。
  15. 測定値が、代謝性能が、増加されたNADPHのない、リブロース−5−リン酸の増加した濃度から恩恵を受けるであろうことを示すとき、グルコース−6リン酸デヒドロゲナーゼおよびトランスヒドロゲナーゼの酵素活性が増加され;Oが増加され;および、プロトン漏出が増加される、請求項1に記載の方法。
  16. 測定値が、代謝性能がピルビン酸誘導体の増加した濃度から恩恵を受けるであろうことを示すとき、グルコースリン酸イソメラーゼの酵素活性が増加され;Oが増加され;および、プロトン漏出が増加される、請求項1に記載の方法。
  17. 測定値が、代謝性能がATPおよびピルビン酸誘導体の増加した濃度から恩恵を受けるであろうことを示すとき、グルコースリン酸イソメラーゼの酵素活性が増加され;および、Oが増加される、請求項1に記載の方法。
  18. 無細胞系が、微生物の細胞溶解物を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 微生物の細胞溶解物が、分画せずに利用される、請求項18に記載の方法。
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