JP2016513065A5 - - Google Patents

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強化焼結ガラス構造体の形成方法 関連出願の相互参照
本出願は、2013年2月21日に出願された米国仮特許出願第61/767382号明細書に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容に依拠し、その全内容を本明細書に援用する。
本開示は、積層ガラス構造体に関し、より詳細には、強化された/耐傷性および耐衝撃性を有するガラス積層構造体に関する。
積層ガラス構造体は、様々な機器、自動車部品、建築構造または電子デバイスの製作における部品として使用することができる。例えば、積層ガラス構造体は、冷蔵庫、装飾用ガラス(decorative glazing)、テレビ等の様々な最終製品にカバーガラスとして組み込むこともできるし、あるいはスマート・インタラクティブ・ディスプレイ(smart interactive display)に内蔵されるタッチパネル用積層体(touch laminate)として組み込むこともできる。しかしながら、積層ガラス構造体が利用できる用途は、その強度および耐衝撃性によって限定されている。さらに、一部の電子機器においては、特殊な形状を有する積層ガラス構造体、例えば、湾曲しているか、付形されているか、面取りされているか(beveled)、傾斜面を有するか(bezeled)、または他の何らかの外形に合わせた輪郭を有する積層ガラスシートが必要である。
したがって、強化および/または耐衝撃性積層ガラス構造体を形成するための装置および方法が必要とされている。
フレキシブルガラスの機械的信頼性および耐衝撃性を改善するための一技法は、2枚のフレキシブルガラスシートの間に、または1枚のフレキシブルガラスシートと他の基板との間に、焼結材料の層を介在させることである。フレキシブルガラスは、300マイクロメートル以下の厚み(これらに限定されるものではないが、300、275、250、225、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20または10マイクロメートルが挙げられる)を有することができるガラスである。積層ガラス構造体の機械強度および耐衝撃性に関する要件に加えて、意図された用途の範囲内で予想される曲げ応力および積層ガラス構造体から得ようとする効果に応じて、本明細書に開示した概念に従い様々な機械的要件に適合するように積層ガラス構造体を設計することができる。適切に使用された場合、積層ガラス構造体は、非積層化フレキシブルガラスと比較して、改善された機械的信頼性および耐衝撃性を提供することができる。積層ガラス構造体の耐衝撃性は、例えば、鋼球落下試験の結果または圧縮応力解析により定めることができる。
以下の詳細な説明にさらなる特徴および利点を記載するが、その一部は、記載内容から当業者に容易に理解されるか、あるいは発明の詳細な説明および添付の図面に例示する開示内容を実施することによって認識されるであろう。前述の一般的な説明および後述する詳細な説明はいずれも、本開示の単なる例示であって、特許請求される本開示の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することを企図するものであることを理解すべきである。
添付の図面は、本開示の原理をさらに理解するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は1つ以上の実施形態を例示しており、記載内容と一緒になって、本開示の原理および作用の一例を説明する役割を果たす。本明細書および図面に開示されている本開示の様々な特徴は任意のあらゆる組合せで用いることができることを理解すべきである。非限定的な例として、本開示の様々な特徴を以下に示す態様に従い互いに組み合わせることができる。
第1の態様によれば、
厚みが≦300μmであるフレキシブルガラスシートを含む第1基板層と、
第2基板層と、
第1基板層の第1面および第2基板層の第2面に結合した焼結ガラスフリット材層と
を含む強化積層ガラス構造体であって、焼結ガラスフリット材層は、フレキシブルガラスシートの全厚に亘って少なくとも約100MPaの圧縮応力を付与する、第1および第2面に結合した焼結ガラスフリットを含む、強化積層ガラス構造体が提供される。
第2の態様によれば、フレキシブルガラスシートの厚みが≦200μmである、第1の態様の強化積層ガラス構造体が提供される。
第3の態様によれば、フレキシブルガラスシートの厚みが≦100μmである、第1の態様の強化積層ガラス構造体が提供される。
第4の態様によれば、第2基板層が、銅、金属、ガラスまたは金属合金のうちの1種から構成される、第1〜3の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体が提供される。
第5の態様によれば、焼結ガラスフリット材層の厚みが25μm〜125μmである、第1〜4の態様のいずれか1態様による強化積層ガラス構造体が提供される。
第6の態様によれば、フレキシブルガラスシートが化学強化されたガラスシートである、第1〜5の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体が提供される。
第7の態様によれば、強化積層ガラス構造体がイオン交換プロセスに付される、第1〜6の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体が提供される。
第8の態様によれば、厚みが300μm以下である、第1〜7の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体が提供される。
第9の態様によれば、第2および第3焼結ガラスフリット材層をさらに含む、第1〜8の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体が提供される。
第10の態様によれば、圧縮応力が≧180MPaである、第1〜9の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体が提供される。
第11の態様によれば、積層後の強化積層ガラス構造体がイオン交換プロセスに付される、第1〜10のいずれかの強化積層ガラス構造体が提供される。
第12の態様によれば、強化積層ガラス構造体の形成方法において:
厚みが≦300μmであるフレキシブルガラスシートを含む第1基板層を提供するステップと、
このフレキシブルガラスシートの表面にガラスフリット材の層を適用し、積層ガラス構造体を形成するステップと、
冷却によってフレキシブルガラスシートの全厚に亘って少なくとも100MPaの圧縮応力が導入されるようにガラスフリット材を焼結するのに十分な温度に、このガラスフリット材を加熱するステップと
を有してなる方法が提供される。
第13の態様によれば、ガラスフリット材がガラスフリットテープである、第12の態様の強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第14の態様によれば、積層ガラス構造体に第2基板層を提供するステップをさらに含む、第12または13の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第15の態様によれば、第2基板層が、銅、金属、ガラスまたは金属合金のうちの1種から構成される、第14の態様の強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第16の態様によれば、圧縮応力が≧180MPaである、第12〜15の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第17の態様によれば、フレキシブルガラスシートの厚みが≦200μmである、第12〜16の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第18の態様によれば、ガラスフリット材のCTEがフレキシブルガラスシートのCTEの2倍以上である、第12〜17の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第19の態様によれば、ガラスフリット材のCTEの値が3ppm/℃〜10ppm/℃である、第12〜18の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第20の態様によれば、ガラスフリット材のCTEの値がフレキシブルガラスシートのCTEの値を少なくとも3ppm/℃上回る、第12〜19の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第21の態様によれば、前記ガラスフリット材が傾斜組成を有する、第12〜20の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
第22の態様によれば、焼結ガラスフリット材層が、散乱要素を含むかまたは紫外光吸収性を有する、第12〜21の態様のいずれかの強化積層ガラス構造体の形成方法が提供される。
本開示の上述のおよび他の特徴、態様および利点は、添付の図面を参照しながら以下に示す本開示の詳細な説明を読むことによって一層理解される。
本開示の態様に従う対称積層ガラス構造体の一実施形態の横断面図を示すものである。 本開示の態様に従う対称積層ガラス構造体の一実施形態の横断面図を示すものである。 本開示の態様に従う非対称積層ガラス構造体の一実施形態の横断面図を示すものである。 本開示の態様に従う傾斜組成を有する焼結ガラスフリット材層を含む積層ガラス構造体の他の実施形態の横断面図を示すものである。 本開示の態様に従う傾斜組成を有する焼結ガラスフリット材層を含む積層ガラス構造体の他の実施形態の横断面図を示すものである。 本開示の態様に従う傾斜組成を有する焼結ガラスフリット材層を含む積層ガラス構造体の他の実施形態の横断面図を示すものである。 本開示の態様に従う複数の焼結ガラスフリット材層を含む対称積層ガラス構造体の一実施形態の横断面図を示すものである。
以下に示す詳細な説明においては、本開示の様々な原理を十分に理解するために具体的な詳細を開示する例示的な実施形態について説明するが、これらは説明を目的とするものであって限定を目的とするものではない。しかしながら、本開示の利点を有したまま、本明細書に開示した具体的な詳細とは異なる他の実施形態で本開示を実施することができることは当業者に明らかであろう。さらに、本開示の様々な原理の説明が曖昧にならないように、公知の装置、方法および材料の説明を省略することができる。最後に、該当する場合は、類似の参照番号は類似の構成要素を指すものとする。
本明細書においては、範囲を、「約」を付したある具体的な値から、および/または「約」を付した他の具体的な値までとして表すことができる。範囲をこのように表す場合、他の実施形態は、当該ある具体的な値から、および/または当該他の具体的な値までを包含する。同様に、先行詞「約」を用いることによって値を近似値で表す場合、その具体的な値は他の実施形態を成すと理解されるであろう。各範囲の終点は、他の終点との関係という意味でも、他の終点に対し独立しているという意味でも重要であることがさらに理解されるであろう。
本明細書において用いられる、方向を表す語、例えば、上方に(up)、下方に(down)、右方に(right)、左方に(left)、前方に(front)、後方に(back)、最上部に(top)、最下部に(bottom)は、図面に描かれている図を参照するために用いるのみであって、絶対的な配置を示唆することを意図するものではない。
特に明記しない限り、本明細書に記載するどの方法も、そのステップを特定の順序で実施することが必要であると解釈されることを決して意図していない。したがって、方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に列挙していない場合、または、それ以外の形で、特許請求の範囲または明細書において、そのステップが特定の順序に限定されることを具体的に述べていな場合は、いかなる点においても順序を示唆することを決して意図していない。このことは、ステップの順序または操作フローに関する論理の問題;文法構造または句読点から導かれる一般的意味;本明細書に記載される実施形態の数または種類等の、明示的な基準が記載されていない、あらゆる可能な場合における解釈にも当てはまる。
本明細書において用いられる単数形は、文脈上そうでないことが明示されていない限り、複数の指示対象も包含する。したがって、例えば、1つの構成要素に言及する場合、文脈上そうでないことが明示されていない限り、2つ以上のこの種の構成要素を有する態様も包含される。
ガラスは本来強度の高い材料であるが、その強度および機械的信頼性は、その表面欠陥または傷の大きさの分布および密集度(flaw size density distribution)ならびに材料が受ける応力の経時的な蓄積に応じて変化する。製品の寿命までの全期間に亘って、積層ガラス構造体は様々な種類の静的および動的機械応力を受ける可能性がある。本明細書に記載する実施形態は、全体として、フレキシブルガラスシートに焼結されるフリット材を用いてフレキシブルガラスシートを強化した積層ガラス構造体に関する。本明細書に述べる特定の実施例は、フリット材がガラスフリット材である積層ガラス構造体に関する。ガラスフリット材とフレキシブルガラスシートとの間の熱膨張係数(CTE)のミスマッチが比較的大きいことを利用して、ガラスフリット材をフレキシブルガラスシートに高温で焼結させた後、ゆっくりと冷却することによって、積層ガラス構造体の耐衝撃性が改善される。このような高温手法を行うことにより、冷却後の積層ガラス構造体に、フレキシブルガラスシートの全厚に亘ってほぼ均一に分布した残留圧縮応力を生じさせることができる。
強化焼結ガラス構造体
図1、図2および図3を参照すると、例示的な強化焼結ガラス構造体10および40の横断面図(本明細書においては積層ガラス構造体10および40とも称する)が示されている。積層ガラス構造体は、フレキシブルガラス、フリット材(例えば、ガラスフリット材)および/または基板(例えば、ガラス以外の材料)から形成することができる。さらに、積層ガラス構造体は対称であっても非対称であってもよい。図1および図2に示す積層ガラス構造体10等の対称積層ガラス構造体は、積層ガラス構造体の中心面Cよりも下側の層または層の一部と中心面Cよりも上側の層または層の一部とが鏡像を成すように形成されている。図3に示す積層ガラス構造体40等の非対称積層ガラス構造体は、中心面Cに対しこのような鏡像を成していない。そうではなく、非対称積層ガラス構造体は、後述するように、例えば、フレキシブルガラス層と、焼結フリット材層と、非ガラス基板または同一でないガラス等であってもよい基板層とを含むことができる。
本明細書に記載する積層ガラス構造体において、フレキシブルガラスの厚みは、約0.3mm以下とすることができ、これらに限定されるものではないが、例えば、約0.01〜0.05mm、約0.05〜0.1mm、約0.1〜0.15mm、約0.15〜0.3mm、0.3、0.275、0.25、0.225、0.2、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01mmを挙げることができる。フレキシブルガラスは、ガラス、ガラスセラミック、セラミック材またはこれらの複合体から形成することができる。高品質フレキシブルガラスを形成する溶融プロセス(例えば、ダウンドロー法)は、フラットパネルディスプレイ等の様々な機器に用いることができる。溶融プロセスで製造されるガラスの表面は他の方法により製造されるガラスと比較して平坦性および平滑性が非常に優れている。溶融プロセスは米国特許第3,338,696号明細書および米国特許第3,682,609号明細書に記載されている。他の好適なガラス形成方法としては、フロート法、アップドロー法およびスロットドロー法が挙げられる。さらに、フレキシブルガラスは、表面にAgイオンを0超〜0.047μg/cmの範囲の含有量で含む化学組成を有するガラスを用いることによって抗菌性を有することができ、これは米国特許出願公開第2012/0034435A1号明細書にさらに詳細に記載されている。フレキシブルガラスはまた、銀を含むグレーズでコーティングすることも、あるいはそれ以外の形で銀イオンを添加することもでき、それによって所望の抗菌性を付与することができる。このことは米国特許出願公開第2011/0081542A1号明細書にさらに詳細に記載されている。さらに、所望の抗菌効果を付与するために、フレキシブルガラスのモル組成を、50%SiO、25%CaOおよび25%NaOとすることができる。
フレキシブルガラスは、フリット材をフレキシブルガラスに焼結させることによりフレキシブルガラスに圧縮応力を導入することによって強化される。粉末、溶液またはテープ形態とすることができるフリット材を、フレキシブルガラスの具体的な融点よりも低い温度に加熱することによってフリット材を焼結させ、フリット材中の原子がフリット材粒子の境界を超えて拡散し、フリット材が一体化することによって一つの固体となった焼結フリット材層が生成する。この焼結フリット材層は、ほぼ均一な多孔性を有することができ、2種類の異種材料の間に結合を生成することができる。
最初に図1および2を参照すると、積層ガラス構造体10は、全体として、対称積層ガラス構造体と称され、第1フレキシブルガラス層18および第2フレキシブルガラス層22を形成するフレキシブルガラスシート12に加えて、第1および第2フレキシブルガラス層18、22のフレキシブルガラスシート12の間に挟持されている焼結ガラスフリット材層20を形成するガラスフリット材14を含み、焼結ガラスフリット材層20はフレキシブルガラスシート12に結合している。フレキシブルガラスシート12の熱膨張係数(CTE)およびガラスフリット材14のCTEのミスマッチすなわち差に起因して、第1および第2フレキシブルガラス層18、22のフレキシブルガラスシート12の全厚に亘って圧縮応力が発生する。圧縮応力を強化することによってフレキシブルガラスの強度または耐衝撃性を向上することができる。ガラスフリット材14のCTEは、ガラスフリット材14の組成を変化させることにより調整することができる。焼結ガラスフリット材層20は傾斜組成を有することもでき、横方向または縦方向に傾斜させることで、後述するように、フレキシブルガラスシート12の圧縮応力をそれに応じて分布させることが可能になる。これに加えて、フレキシブルガラスシート12内に発生する圧縮応力は、同じく本明細書に述べるが、フリット材層20を焼結させるために積層ガラス構造体10を加熱する温度の影響も受ける可能性がある。
積層ガラス構造体10の総厚30は、約50μm〜約300μmとすることができる。図1および図2においては、積層ガラス構造体10の総厚30を約300μmとすることができる。一例として、積層ガラス構造体10は、厚み24を約100μmとすることができる第1フレキシブルガラス層18、厚み26を約100μmとすることができる焼結ガラスフリット材層20および厚み28を約100μmとすることができる第2フレキシブルガラス層22を含む。フレキシブルガラスシート12は、個々に分離したシート形態で提供することができ、それ以外では、スプールに巻かれた連続形態で提供することもできる。2枚の50μm厚のフレキシブルガラスシート12およびこれらのガラスシートの間に挟持された100μm厚のフリットテープ(frit tape)(後述する)の層を有する積層ガラス構造体10の特定の実施形態においては、両方のガラスシートの全厚に亘り、圧縮応力の計算値は100MPaを超える。この場合、フレキシブルガラスシートのCTEは3ppm/℃であり、フリット材のCTEは10.4ppm/℃であり、集合体(assembly)温度は約450℃を超える。
図3において、非対称積層ガラス構造体40は、フレキシブルガラスシート12から構成される第1フレキシブルガラス層42、非ガラス基板材料66から構成される基板層46ならびに第1フレキシブルガラス層42および基板層46の間に挟持されたガラスフリット材14から構成される焼結ガラスフリット材層44を含む。一例として、この積層ガラス構造体40の総厚62は約300μmとすることができる。基板層46の厚み60は約100μmとすることができる。他の実施形態においては、基板層46の厚み60は300μm以下(約200μm、約75μm、約50μm、約25μm、約10μm等)とすることができる。基板材料66は、金属、金属合金(ステンレス鋼、銅、ニッケル、黄銅、青銅、チタン、タングステン、鋳鉄、アルミニウム等)、セラミック、複合体もしくは他の剛性材料またはこれらの材料の組合せ等の非ガラス基板とすることができ、あるいは、第1フレキシブルガラス層42とは化学組成が異なるかもしくは厚みが異なるガラス等の別のガラスとすることもできる。第1フレキシブルガラス層42を金属基板材料66に焼結する場合は、金属のCTEが高いため、積層ガラス構造体40の形成時に発生する圧縮応力を増大させることができる。例えば、銅のCTEは16ppm/℃であり、ヤング率は115GPaであり、ステンレス鋼のCTEは15ppm/℃であり、ヤング率は200GPaである。この積層ガラス構造体40の特定の実施形態においては、非対称積層ガラス構造体40は、厚みが200μmであるステンレス鋼基板材料66に焼結された厚みが50μmであるフレキシブルガラス層から形成することができ、これらは厚みが25μmのフリットテープであるガラスフリット材14から構成される焼結ガラスフリット材層44で分離されている。フレキシブルガラス層内の圧縮応力の計算値は180MPaを超える。この場合、フレキシブルガラスシートのCTEは3ppm/℃であり、フリット材のCTEは10.4ppm/℃であり、集合体温度は約450℃を超える。
積層ガラス構造体10および40ならびに本明細書に記載する他の積層ガラス構造体は、様々な方法に従い形成することができる。例えば、積層ガラス構造体10を形成する一方法は、フレキシブルガラスシート12を含む第1および第2フレキシブルガラス層18、22を集合し、フレキシブルガラスシート12の間にガラスフリット材14を挟持することを含む。次いで、積層ガラス構造体10全体を単回の熱サイクルで加熱し、ガラスフリット材14をフレキシブルガラスシート12に焼結させ、それによって強化された積層ガラス構造体10を形成し、フレキシブルガラスシート12全体に亘る圧縮応力を発生させる。熱サイクルは、ガラスフリット材14が一体化してフレキシブルガラスシート12に付着するような焼結温度で行うことができる。積層ガラス構造体40等の非対称積層ガラス構造体の場合、ガラスフリット材14を、単回の熱サイクルで加熱する前に基板材料66またはフレキシブルガラスシート12のいずれかの表面に配置することができる。
積層ガラス構造体10および40を形成する他の方法は、2回の熱サイクルを含むものである。積層ガラス構造体10の場合、図1の下側フレキシブルガラス層34を形成するフレキシブルガラスシート12の表面にガラスフリット材14を配置する。次いでこの構造体を、1回の熱サイクルで、ガラスフリット材14の具体的な焼結温度よりも低い温度で加熱する。こうすることにより、ガラスフリット材の一部として含有されている可能性があるバインダーまたは他の任意の物質を放散または焼失させることができる。1回の熱サイクルを経た構造体の最上部に、上側フレキシブルガラス層32を形成する第2フレキシブルガラスシート12を配置し、集合体全体を、ガラスフリット材14を一体化させる400℃等の焼結温度で第2熱サイクルに付すことにより、ガラスフリット材14およびフレキシブルガラスシート12の間に結合が生成し、フレキシブルガラスシート12全体に亘る圧縮応力が発生する。非対称積層ガラス構造体40の場合は、ガラスフリット材14を基板材料66またはフレキシブルガラスシート12のいずれかの表面上に配置した後に1回目の熱サイクルに付し、残りの層を焼結前の構造体の最上部に配置して、積層ガラス構造体40に使用される材料に応じた焼結温度で第2の熱サイクルに付すことができる。
再び図2を参照すると、積層ガラス構造体10の第1および第2フレキシブルガラス層18、22のフレキシブルガラスシート12内の残留圧縮応力は、フレキシブルガラス層18、22の全厚に亘って実質的に均一とすることができる。残留圧縮応力は、ガラスフリット材14をフレキシブルガラス層18、22に高い焼結温度で焼結させた後、約20℃毎分以下等(約10℃毎分以下、約5℃毎分以下等)の冷却速度で室温まで冷却する際に発生する。この高い焼結温度は室温よりも高く、フレキシブルガラスシート12に固有の変形温度よりも低く、これらに限定されるものではないが、約400℃以上(約500℃以上、約600℃以上等)が挙げられる。図3の非対称積層ガラス構造体40においては、基板材料66の熱量または変形温度も考慮することができる。さらに、3層を積層したガラス構造体を図1、図2および図3に例示するが、層の数は3層より多くても少なくてもよく、例えば、最終用途および処理要件に応じて選択される。さらに、本明細書に記載する積層ガラス構造体は、湾曲させることもできるし、あるいは平坦でない外形を有するように他の形状を付与することもできる。他の様々な積層体の例を本明細書において記載する。
図1、図2および図3を参照すると、焼結ガラスフリット材層20および44がガラスフリット材14により形成されている。ガラスフリット材14は、熱サイクルまたは焼結時に加熱することにより一体化する材料である。ガラスフリット材14の材料組成はガラスフリット材14のCTEに影響を与える可能性があり、それによってフレキシブルガラスシート12内に発生する圧縮応力に影響を与える。ガラスフリット材14の材料組成は、意図された用途の強度要件に応じて変化させることもできる。例えば、ガラスフリット材14は、ガラスフリット材14のCTE値がフレキシブルガラスシート12のCTE値よりも高くなるように選択することができる。例えば、ガラスフリット材14のCTE値は、フレキシブルガラスシート12のCTE値の約2倍超または約5倍超とすることができる。幾つかの実施形態においては、CTEのミスマッチは少なくとも約3ppm/℃以上、例えば、約6ppm/℃とすることができる。
積層ガラス構造体10の焼結ガラスフリット材層20は、第1および第2フレキシブルガラス層18、22のそれぞれの広い表面36、38の間の界面を結合させるために使用することができる。積層ガラス構造体40の焼結ガラスフリット材層44は、第1フレキシブルガラス層42および基板層46のそれぞれの広い表面52、54の間の界面を結合させるために使用することができる。積層ガラス構造体10、40のどちらにおいても、焼結ガラスフリット材層20、44は薄肉であってもよく、厚みが約200μm以下、例えば、約100μm以下(約50μm以下、約25μm以下等)とすることができる。1つまたは複数のフレキシブルガラスシート12およびガラスフリット材14の間のCTEのミスマッチが大きいため、ガラスフリット材14を、1つまたは複数のフレキシブルガラスシート12に対し少なくともある程度熱膨張させることができる。
積層ガラス構造体10、40のどちらにおいても、ガラスフリット材14は、1つまたは複数のフレキシブルガラスシート12の表面全体を覆うように適用することもできるし、あるいは1つまたは複数のフレキシブルガラスシート12の表面全体の面積よりも小さい面積を覆うように適用することもでき、例えば、縞状パターン、ジグザグパターン、ランダムなパターン等で配置することができる。こうすることにより、大面積の積層ガラス構造体を2つ以上の別々の積層ガラス構造体に分離することを可能にし得る切断経路またはその他の切断領域を積層ガラス構造体10、40上に付与しやすくなるであろう。ガラスフリット材14はまた、スロットダイコーティングやスクリーン印刷等のコーティングプロセスを用いて基板を被覆することもできる。
上述したように、ガラスフリット材14は、フレキシブルガラスおよび基板材料等の異種材料を結合するために使用することができる。ガラスフリットは、フリットテープであってもよいし、あるいはガラスフリット材および有機バインダーを含むフリット溶液から構成されるフリットぺーストであってもよい。加熱中に有機バインダーの一部または全部を放散することができ、フリットをフレキシブルガラスシート12および/または基板材料66に結合させることができる。ガラスフリット材14としてフリットを使用した場合、フリットは、フレキシブルガラスシート12の表面に単に局所的に適用するのではなく、表面全体に展延することができる。こうすることにより、積層ガラス構造体の剥離または亀裂の原因となり得る局在化した過度の応力がフリット材に生じる可能性を低減することができる。
ガラスフリット材14がフリットテープである場合、フリットテープはフレキシブルガラスまたは基板の表面に適用される未焼結または一部焼結されたテープとすることができる。フレキシブルガラスシート12がスプールに巻かれた連続形態で提供される例においては、フリットテープを用いることにより、積層ガラス構造体を連続的に形成することが可能になるであろう。さらに、フレキシブルガラスシート12がスプールに巻かれた連続形態で提供され、焼結材料としてフリットが使用される場合、フリットを、例えばスロットダイに、またはテープ成形法(tape casting process)を用いて計量供給することができる。フリットを計量供給することにより、コーティングを開始および停止して、焼結ガラスフリット材層を有しない切断経路または切断領域を形成することが可能になる。
積層ガラス構造体10、40のガラスフリット材14として使用することができるフリットテープは、例えば、Vitta Corporation(本部:コネチカット州ベゼル(Bethel))から市販されている。フリットテープは、CTE値が3ppm/℃以上〜10ppm/℃以下の範囲にあり、厚みが25μm以上〜125μm以下の範囲にある材料が入手可能である。フリットテープの具体例は、作業温度が410℃、CTE値が7.5ppm/℃;作業温度が460℃、CTE値が10.4ppm/℃;作業温度が450℃、CTE値が8.9ppm/℃を有することができる。
ガラスフリット材14は、焼結プロセスに異なるエネルギー源を使用することを可能にする異なる吸収能を有することができる。ガラスフリット材14に加えて、焼結ガラスフリット材層は、有機発光ダイオード(OLED)照明および太陽光発電(PV)等の用途を拡張する散乱要素またはOLEDおよびPV装置の寿命を延ばすことができる紫外光吸収性等のさらなる要素を含むことができる。焼結材料中に含まれる散乱要素は、OLEDおよびPV用途に用いるための取出効率(out−coupling)または入射効率(in−coupling)を向上することができる。焼結ガラスフリット材層はまた、焼結時に異なるエネルギー源を使用することを可能にする異なる波長の光を吸収する要素から形成することも、あるいはこれらの要素を含むこともできる。
積層ガラス構造体10、40の外面上のフレキシブルガラスの層を焼結温度で加熱し、放冷した後に、フレキシブルガラスシート12の全厚に亘って圧縮応力が発生する。対称積層ガラス構造体10においては、フレキシブルガラス層全体にほぼ均一な圧縮応力を生じさせることができ、非対称積層ガラス構造体40においては、圧縮応力は、フレキシブルガラス層全体に亘って均一とならない場合もある。
傾斜組成を有する焼結材料を含む積層ガラス構造
図4〜7を参照すると、上述の積層ガラス構造体の焼結ガラスフリット材層は、フリットテープから、または印刷プロセスを用いて形成することができる。これらの例においては、焼結ガラスフリット材層は、焼結ガラスフリット材層が縦方向または横方向に傾斜組成を有するように構成することができる。焼結材料は、焼結ガラスフリット材層の厚み方向すなわち縦方向に、および/またはフレキシブルガラスもしくは基板の表面方向すなわち横方向のいずれかに傾斜させることができる。傾斜組成を有することにより、結果として生じる圧縮応力および引張応力を積層ガラス構造体内の特定の位置に容易に配することができる可能性がある。積層ガラス構造体の応力プロファイルは、焼結ガラスフリット材層の組成を傾斜させることにより調整することができる。例えば、焼結ガラスフリット材層の厚み方向に組成を傾斜させることにより、確立される圧縮応力プロファイルをより制御しやすくなり、一方、基板またはフレキシブルガラスの表面方向に組成を傾斜させることにより、積層ガラス構造体の切断プロセスまたはそれ以外の形の分離を容易に行うことができる。
図4において、積層ガラス構造体70は、フレキシブルガラスシート12から構成される第1フレキシブルガラス層72および第2フレキシブルガラス層76の間に挟持された焼結ガラスフリット材層74を含む。焼結ガラスフリット材層74は縦方向に傾斜した多成分組成を有するフリットテープ82から構成されている。フリットテープ82は、フリットテープ82を形成するフリット材の1種の成分の濃度が積層ガラス構造体70の中心付近でより高くなり、フリット材の他の成分の濃度が表面付近でより高くなるように傾斜している。この傾斜組成は、積層ガラス構造体70の第1および第2フレキシブルガラス層72、76内に発生する圧縮応力の応力プロファイルに影響を与えることができる。例えば、圧縮応力を、フリットテープ82と、第1および第2フレキシブルガラス層72、76の間との各界面78および80で高くなるようにすることができ、積層ガラス構造体70の外面94、96で低くなるようにすることができる。フリットテープ82の厚み88を調整することによって縦方向に傾斜した様々な組成を有するフリットテープ82を形成することもでき、一方、積層ガラス構造体70の総厚92は依然として約300μm以下とすることができる。
図5を参照すると、他の実施形態として、異なる形で縦方向に傾斜した組成を有するフリット層104を有する積層ガラス構造体100が図示されている。傾斜組成を有するフリット層104は、厚み124を有する傾斜組成を有するフリットテープ112から形成されており、フリット材の1種の成分の濃度は、積層ガラス構造体100の下面120に近い側で高くなっており、フリット材の他の成分の濃度は上面に近い側で高くなっている。例えば、積層ガラス構造体100の下面120側に位置するフレキシブルガラス層106は、1種の成分の濃度がより高いフリットに近いので、積層ガラス構造体100の上面118側に位置するフレキシブルガラス層102よりも、全厚に亘ってより高い圧縮応力を有することができる。さらに、積層ガラス構造体100において、フリット材の1種の成分の濃度を一方のフレキシブルガラスシートに近い側で高くなるようにして、フリットテープ112および下側フレキシブルガラスシート116の間に形成される結合を強化することができる。例えば、積層ガラス構造体100において、フリットテープ112のフリット材および下側フレキシブルガラスシート116の間の界面110に形成される結合を、フリットテープ112のフリット材および上側フレキシブルガラスシート12の間の界面108に形成される結合よりも強くすることができる。フレキシブルガラス層102、106はどちらもフレキシブルガラスシートから構成することができるが、フレキシブルガラス層102、106は同一でなくてもよい。例えば、フレキシブルガラスシート12の厚み24を約100μmとすることができ、下側フレキシブルガラスシート116の厚み126を、約100μmを超えるかまたは約100μm未満とすることができ、あるいは下側フレキシブルガラスシート116はフレキシブルガラスシート12と同一でなくてもよい。しかしながら、積層ガラス構造体100の総厚128は、依然として約300μm以下とすることができる。
ここで図6を参照すると、他の実施形態として、横方向に傾斜した組成を有するフリット層134を有する、総厚158を有する積層ガラス構造体130が示されている。積層ガラス構造体130は非対称であっても対称であってもよい。この実施形態において、積層ガラス構造体130は、フレキシブルガラスシート12から構成されるフレキシブルガラス層132、フリットテープ144から構成されるフリット層134および基板材料148から構成される基板層136から形成されている。基板材料148は、上述した任意の基板のいずれかであってもよく、フリットテープ144およびフレキシブルガラスシート12の両方のCTEよりも高いCTEを有することができ、それによって、対称積層ガラス構造体で可能な圧縮応力よりも高い圧縮応力が生じる。基板材料148の厚み156は約100μm以上かつ約5mm以下とすることができる。フリットテープ144の組成は積層ガラス構造体130の幅150およびフリットテープ144の厚み154に沿って傾斜しており、フリット材の1種の材料の濃度は、積層ガラス構造体130の第1端145側の方が、積層ガラス構造体130の反対側の第2端147側よりも高くなるように配されている。フリット材のこの1種の成分はまた、基板材料148およびフリットテープ144の界面140側でより高濃度になるように配されている。フリット材は、フレキシブルガラスシート12およびフリットテープ144の間の界面138付近でより低濃度になるように配されている。この様式のフリット材の傾斜組成により、積層ガラス構造体130の第1端145に近い側のフレキシブルガラスシート12の界面138に沿った圧縮応力を、積層ガラス構造体130の第2端147に近い側のフレキシブルガラスシート12に亘って形成される圧縮応力よりも高くすることができる。
図7においては、積層ガラス構造体160は、4層以上の層を含むことができ、対称であっても非対称であってもよい。積層ガラス構造体160は、第1フレキシブルガラスシート12から形成された第1フレキシブルガラス層162および第2フレキシブルガラスシート12から形成された第2フレキシブルガラス層170を含む。第1および第2フレキシブルガラス層162、170の間に3層の焼結ガラスフリット材層が挟持されている。第1焼結ガラスフリット材層164は、第2焼結ガラスフリット材層168と同一であってもよい。第1および第2焼結ガラスフリット材層164、168は、フリットテープ等のガラスフリット材172から形成することができる。積層ガラス構造体160はまた、同じくガラスフリット材またはフリットテープ174から構成される中央焼結ガラスフリット材層166も含むことができる。焼結ガラスフリット材層164、166、168のいずれも傾斜組成を有することができ、他の焼結ガラスフリット材層164、166、168のいずれかと同一であっても異なっていてもよい。この実施形態において、中央焼結ガラスフリット材層166を形成するフリットテープ174は傾斜組成を有することができ、あるいは第1および第2焼結ガラスフリット材層164、168よりもフリット材の含有量を高くすることもできる。こうすることにより、第1および第2フレキシブルガラス層162、170内に発生する圧縮応力が、積層ガラス構造体160内の特定の面に沿って集中するか、または特定の領域に局在化するように、積層ガラス構造体160の応力プロファイルに影響を与えることができる。積層ガラス構造体160の他の実施形態は、より多数のまたはより少数の焼結ガラスフリット材層164、166、168、例えば、2層の焼結ガラスフリット材層、4層の焼結ガラスフリット材層、5層の焼結ガラスフリット材層またはそれを超える焼結ガラスフリット材層を有することができる。さらに、焼結ガラスフリット材層の一部または全部が傾斜組成を有することができ、あるいは積層ガラス構造体160内に任意の可能な順序で配置することができる。
本明細書に記載したどの積層ガラス構造の実施形態においても、積層ガラス構造体をイオン交換プロセスに付すことによりフレキシブルガラスシート内にさらなる圧縮応力を発生させることができる。イオン交換プロセスは、フレキシブルガラスシート内の圧縮応力をフレキシブルガラスシートの外面に集中させる化学強化プロセスである。例えば、図7の積層ガラス構造体160をイオン交換プロセスに付すことにより、第1フレキシブルガラス層162の第1フレキシブルガラスシート12内の圧縮応力を上面176に集中させることができる。同様に、イオン交換プロセスはまた、第2フレキシブルガラス層170の第2フレキシブルガラスシート12内の圧縮応力を下面178に集中させることもできる。イオン交換は、積層ガラス構造体を形成する場合は、積層ガラス構造を形成する前に、または既に形成された積層ガラス構造体に対し実施することができる。例えば、フレキシブルガラスシートは、積層ガラス構造体を形成する前にイオン交換に付すことにより、フレキシブルガラス内に圧縮応力を誘発することができ、あるいは、形成が完了した積層ガラス構造体をイオン交換プロセスに付すことにより、積層ガラス構造体の外層内に圧縮応力を発生させることができる。
さらに、本明細書に記載する積層ガラス構造体は、基板の切断経路付近の局所的な領域に熱を適用することにより切断または分離することができる。熱をかけることにより局所的に圧縮応力を低減することができるので、COレーザー等の様々な切断方法を用いることが可能になる。切断後、積層ガラス構造体を室温に戻して圧縮応力を復活させることができ、それによって積層ガラス構造体が強化される。焼結材料は変形温度および/または熱容量が高分子材料よりも高いので、本明細書に記載する強化積層ガラス構造体は、高分子接着剤を有するガラス構造体よりも高い温度に曝すことができる。
総合的考察
各非ガラス基板は、それ自体が、異なるヤング率、異なるポアソン比および/または層厚さを有する異なる種類の金属から作製される積層構造体または複合構造体であってもよい。この場合、当業者は、本発明において記載するガラス−金属積層体を有利に構成するために用いることができる、層全体の実効値(実効厚み、実効ヤング率、実効ポアソン比等)を見出すために、この複合層を平均化(homogenize)することができるであろう。例えば複合体は、上述の材料および/または金属(ステンレス鋼、ニッケル、銅、貴金属、金属酸化物等)の任意の組合せから形成することができる。
本明細書に記載する積層ガラス構造体は、電子デバイスの保護要素として使用するための、場合により透明な、付形可能な、および/または可撓性構造を有することができ、この積層ガラス構造体は、厚みが5〜300マイクロメートルであるフレキシブルガラスシートの層と、0.1mm〜5mmの範囲の厚みを有する非ガラス(金属等)基板層とを含む複合構造体である。これに関連して、積層ガラス構造体が成形性を有することにより、屈曲させ、および/または捻ることによって完全に平坦な形状から変形させることが可能になり、それによって他の何らかの物体の形状または形態に適合させることができる。
フレキシブルガラスシートおよび非ガラス基板を、回分式プロセスに従い、シート形態で提供することができる。別法として、フレキシブルガラスシートをシート形態で提供し、非ガラス基板を連続ロールから提供することができる。さらなる可能性として、フレキシブルガラスシートおよび非ガラス基板はいずれも連続ロールから得られる。
焼結ガラスフリット材層を有する上述の積層ガラス構造体はフレキシブルガラスの強度を向上させ、性能、耐衝撃性、寿命、機械的耐久性等の性能を改善することもできる。幾つかの実施形態においては、フレキシブルガラスは、水分バリアとして作用することもでき、望ましくないUV光を遮蔽することもできる。本明細書に記載する積層ガラス構造体は強化されているため、積層ガラス構造体の後加工を、非強化ガラス構造体に用いることができる温度よりも高い温度で行うことができる。積層ガラス構造体に熱を局所的に適用し、それによって積層ガラス構造体のフレキシブルガラスの圧縮応力を緩和することにより、正確かつ高精度な切断プロセスを行うこともできる。積層ガラス構造体を室温に冷却すると圧縮応力が復活するであろう。
対称積層ガラス構造体の場合、ほぼ一定の均一な圧縮応力を上述の積層ガラス構造体のガラスの全厚に亘って付与することができる。非対称積層ガラス構造体の場合は、積層ガラス構造体のフレキシブルガラスの層によって、基板材料を、引掻き、破損または他の損傷から保護することができる。積層ガラス構造体の外面のフレキシブルガラスは、基板材料の表面よりも容易に汚れを落とすことができる。例えば、フレキシブルガラスにステンレス鋼を積層した積層ガラス構造体から作製された冷蔵庫の扉に耐指紋付着性を付与することができ、あるいは、フレキシブルガラスにアルミニウムを積層した積層ガラス構造体から作製された携帯型電子機器の電池カバーに耐引掻性および防汚性を付与することができる。さらに、基板材料を破損から保護し、万が一破損した場合はフレキシブルガラスが飛散しないように保持することができる。非対称積層ガラス構造は、タッチパネル用カバー(touch and cover)ガラスを提供することができ、これは化学強化ガラスの代替品として使用することができる。上述したような湾曲ディスプレーガラスに関連して非対称積層ガラス構造を提供することができる。
非対称積層ガラス構造体の非ガラス基板にさらなる機能を組み込むことができる。例えば、基板材料は、金属偏光シートまたはコントラスト強調フィルタ貼り合わせ体を含むことができ、あるいは反射防止性、カラーフィルタ性能または色変換性を有することができる。別法として、またはこれに加えて、望ましくない周囲光を遮蔽し、および/または散乱粒子を有するように非ガラス基板を設計することができ、それによって導波性が低減され、機器の輝度が向上する。さらに、別法として、またはこれに加えて、ガラスは抗菌性を有することができる。このような追加機能をフレキシブルガラスに組み込むことができる。
高分子材料は引掻き傷が付きやすく、日光曝露等の環境因子により劣化し、かつ水分/酸素バリア性に劣る。一方、ガラスは耐引掻性が高く、耐久性が高く、かつ水分/酸素バリア性が高いことが知られている。しかしながら、ガラスは、例えば、金属と比較して、密度が高く、かつ脆い材料であり、ガラスの強度は欠陥および傷に左右される。上述の積層ガラス構造体およびその作製方法は、これらの2種類の材料の利点を生かしてこれらを組み合わせ、バリア性が改善された、軽量で、未保護のフレキシブルガラス積層体よりも機械的信頼性が高い積層構造体として一体化させるものである。
結論
任意の実施形態を含む本開示の上述の実施形態は単なる実施可能な例であり、単に本開示の様々な原理を明確に理解するための説明であることを強調すべきである。上述の本開示の実施形態は、本開示の趣旨および様々な原理から実質的に逸脱することなく多くの変形および修正を行うことが可能である。このような修正形態および変形形態は全て本開示の趣旨および本発明の開示に包含され、次に記載する特許請求の範囲によって保護されることを意図している。

Claims (10)

  1. 厚みが300μm以下であるフレキシブルガラスシートを含む第1基板層と、
    第2基板層と、
    前記第1基板層の第1面および前記第2基板層の第2面に結合した焼結ガラスフリット材層と
    を含む強化積層ガラス構造体において、前記焼結ガラスフリット材層は、前記フレキシブルガラスシートの全厚に亘って少なくとも約100MPaの圧縮応力を付与する、前記第1および前記第2面に結合した焼結ガラスフリットを含むことを特徴とする、強化積層ガラス構造体。
  2. 前記焼結ガラスフリット材層の厚みが25μm〜125μmであることを特徴とする、請求項1に記載の強化積層ガラス構造体。
  3. 前記フレキシブルガラスシートが化学強化されたガラスシートであることを特徴とする、請求項1または2に記載の強化積層ガラス構造体。
  4. 強化積層ガラス構造体の総厚が300μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の強化積層ガラス構造体。
  5. 強化積層ガラス構造体の形成方法において、
    厚みが300μm以下であるフレキシブルガラスシートを含む第1基板層を提供するステップと、
    前記フレキシブルガラスシートの表面にガラスフリット材の層を適用し、積層ガラス構造体を形成するステップと、
    冷却によって前記フレキシブルガラスシートの全厚に亘って少なくとも100MPaの圧縮応力が導入されるように前記ガラスフリット材を焼結するのに十分な温度に、前記ガラスフリット材を加熱するステップと
    を有してなることを特徴とする、方法。
  6. 前記積層ガラス構造体に第2基板層を提供するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ガラスフリット材のCTEが前記フレキシブルガラスシートのCTEの2倍以上であることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
  8. 前記ガラスフリット材のCTE値が前記フレキシブルガラスシートのCTE値を少なくとも3ppm/℃上回ることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記ガラスフリット材の材料が傾斜組成を有することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 焼結されたガラスフリット材層が、散乱要素を含むかまたは紫外光吸収性を有することを特徴とする、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
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