JP2016509578A - 糖尿病性創傷を予防及び/又は治療するためのアセチルサリチル酸の使用 - Google Patents

糖尿病性創傷を予防及び/又は治療するためのアセチルサリチル酸の使用 Download PDF

Info

Publication number
JP2016509578A
JP2016509578A JP2015548720A JP2015548720A JP2016509578A JP 2016509578 A JP2016509578 A JP 2016509578A JP 2015548720 A JP2015548720 A JP 2015548720A JP 2015548720 A JP2015548720 A JP 2015548720A JP 2016509578 A JP2016509578 A JP 2016509578A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acetylsalicylic acid
wound
salt
mice
healing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015548720A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6367826B2 (ja
Inventor
アニエス コスト
アニエス コスト
クリストフ ダルデンヌ
クリストフ ダルデンヌ
ベルナール ピピィ
ベルナール ピピィ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Universite Toulouse III Paul Sabatier
Original Assignee
Universite Toulouse III Paul Sabatier
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Universite Toulouse III Paul Sabatier filed Critical Universite Toulouse III Paul Sabatier
Publication of JP2016509578A publication Critical patent/JP2016509578A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6367826B2 publication Critical patent/JP6367826B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/60Salicylic acid; Derivatives thereof
    • A61K31/612Salicylic acid; Derivatives thereof having the hydroxy group in position 2 esterified, e.g. salicylsulfuric acid
    • A61K31/616Salicylic acid; Derivatives thereof having the hydroxy group in position 2 esterified, e.g. salicylsulfuric acid by carboxylic acids, e.g. acetylsalicylic acid
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/60Salicylic acid; Derivatives thereof
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P17/00Drugs for dermatological disorders
    • A61P17/02Drugs for dermatological disorders for treating wounds, ulcers, burns, scars, keloids, or the like
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P29/00Non-central analgesic, antipyretic or antiinflammatory agents, e.g. antirheumatic agents; Non-steroidal antiinflammatory drugs [NSAID]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • A61P3/08Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis
    • A61P3/10Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis for hyperglycaemia, e.g. antidiabetics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • A61P9/10Drugs for disorders of the cardiovascular system for treating ischaemic or atherosclerotic diseases, e.g. antianginal drugs, coronary vasodilators, drugs for myocardial infarction, retinopathy, cerebrovascula insufficiency, renal arteriosclerosis
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • A61P9/14Vasoprotectives; Antihaemorrhoidals; Drugs for varicose therapy; Capillary stabilisers

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Diabetes (AREA)
  • Cardiology (AREA)
  • Vascular Medicine (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Pain & Pain Management (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Obesity (AREA)
  • Rheumatology (AREA)
  • Dermatology (AREA)
  • Emergency Medicine (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Abstract

本発明は、糖尿病性創傷の予防及び/又は治療で使用するための、濃度200〜4800μMのアセチルサリチル酸又はその塩に関する。【選択図】図6

Description

本発明の主題は、糖尿病性創傷を予防及び/又は治療するための濃度200〜4800μMでのアセチルサリチル酸の新規な局所使用から成る。
創傷の治癒は自然な生理病理学的プロセスであり、ヒト及び動物の組織は自らの修復及び再生プロセスにより局所的な病変を修復することができる。
自然な創傷の治癒は主に、3つの主要な時系列のシーケンスに沿って起きる。各シーケンスは特定の細胞活動を特徴とし、また修復プロセスの進行を集合的に管理及びサポートする数多くの制御シグナル(正負両方)により制御される。したがって、以下の:
・炎症期、
・増殖期(肉芽形成期及び上皮化期を含む)及び
・リモデリング期
に分けられる。
炎症期である第1期は、血管が破れる(主にフィブリン及びフィブロネクチンから構成され且つ一時的なマトリックスを構築する血餅の形成(血液凝固)の引き金となる事象)と同時に始まる。このマトリックスが部分的に病変部を埋め、ダメージを受けた領域内での、創傷の清浄化を確実にするために動員された炎症細胞の遊走を可能にする。マトリックス中に存在する血小板も、治癒プロセスに関わる細胞の動員を可能にする因子(例えば、サイトカイン及び/又は増殖因子)を放出する。この時期は、病変部位での、生物を外来性の微生物から守り且つ創傷を浄化又は清浄化する多数の炎症細胞(多形核細胞、マクロファージ)の浸潤及び活性化を特徴とする。
第2期は、肉芽組織の発達に対応する。まず、繊維芽細胞の遊走及び増殖による外傷部でのコロニー形成が観察される。次に、健常な血管からの内皮細胞の遊走により、ダメージを受けた組織での血管新生又は血管形成が可能になる。肉芽組織において、繊維芽細胞は活性化され、アクチンマイクロフィラメントにより付与される強い収縮特性を有する筋線維芽細胞に分化するため、創傷の収縮が可能となる。マイクロフィラメントはα−平滑筋アクチンというタンパク質を介して発現する。これらの筋線維芽細胞は、病変の治癒につながる肉芽組織の形成及び収縮において重要な役割を果たす。次に、創傷の縁からケラチノサイトが遊走してきて分化し、表皮の再構築につながる。
肉芽組織が発達するこの時期は、病変の炎症の全体的な状態が和らぎ、多形核好中球が徐々に消滅し、「修復」マクロファージを含めたマクロファージが登場してから始まる。炎症期から増殖/修復期へのこの移行は、炎症の消散期として知られる。
治癒プロセスの第3期は、機能性組織の再構築をゴールとしたリモデリングを中心とした段階であるため、新たに形成された組織は元々の組織の最初の特徴及び特性を持つようになる。細胞外マトリックスの一部はプロテアーゼ(本質的にマトリックスメタロプロテアーゼ及びエラスターゼ)により消化され、細胞外マトリックスの再編成が観察される。肉芽組織内で優勢なタイプIIIコラーゲンは、真皮の主要マトリックス成分であるタイプIコラーゲンに徐々に置き換えられる。成熟期の最後に、繊維芽細胞、筋線維芽細胞及び血管細胞の増殖及び/又は活性は低下する。次に、余分な細胞はアポトーシスを経て死滅し、それに伴って細胞外マトリックスのリモデリングが行われる。
それでもなお、一部のタイプの創傷は正常に治癒せず、治癒プロセスにおける3つの重要な段階が、確立されている望み得る最良の生理化学的及び生物学的条件にも関わらず異常に行われる。実際、創傷が治癒する速度及び質は内因性及び外因性の要素に左右される。そのため、この修復プロセスは
・創傷の原因、
・創傷の状態及び位置、
・特定の感染病原体、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)若しくは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の存在により引き起こされる感染症の有無、
・既存の病的状況(例えば、糖尿病、免疫不全、静脈不全等)の有無、
・外部環境又は
・治癒障害をこうむりやすくする若しくはしない遺伝因子
に応じて異常に長引き得る。
創傷には慢性創傷、例えば静脈性潰瘍、褥瘡又は糖尿病患者に特徴的な創傷、より具体的には糖尿病性足部創傷がある。
治療がなされているか否かに関係なく、創傷が現れてから6週間後に治癒が見られない場合に慢性創傷であると定義される。糖尿病性創傷は、慢性創傷とは別の特別なタイプであると特徴付けられる。
実際、これらの糖尿病性創傷が治癒しない主な原因は、グルコースのバイオアベイラビリティの上昇に関連している。グルコースのバイオアベイラビリティの上昇は数々の生理学的及び代謝の変化、例えば皮膚の肥厚又はニューロパチー及び動脈症につながる著しい酸化ストレスをもたらす。動脈症及びニューロパチーは慢性化の2つの主要な危険因子であるため、糖尿病性創傷、より具体的には糖尿病性足部創傷の治癒を遅らせる。最もよく知られている他のタイプの慢性創傷、例えば褥瘡又は静脈性、動脈性若しくは混合型の潰瘍の病理は異なる。例えば、静脈不全は静脈性潰瘍の形成、慢性化と結果的な治癒の遅延の原因である。次に、褥瘡は、皮膚組織が過剰に且つ長期間にわたって圧迫、擦れることで起きる虚血と再潅流との繰り返し後に生じる創傷である。
創傷に苦しむ全ての糖尿病患者がこのようにして合併症に曝され、合併症は患者の罹患率及び死亡率の原因となることが極めて多い。このタイプの患者において、正しい治癒シーケンスは、幾つかの主な問題点により阻害される。治癒における最初の遅れは炎症期から起き、炎症期から増殖期への移行が阻害される。これは炎症の消散における問題とされる。炎症期は治癒に不可欠な時期であるが、一時的でなくてはならない。炎症の消散は、治癒の残りの時期を開始させる条件となる極めて重要な地点である。この力学的事象は、炎症細胞(多形核好中球)の消滅及びマクロファージの登場を伴う。その後、走化性及び血管形成性の抗炎症性メディエータが産生され、これがとりわけ肉芽形成期における重要な細胞である繊維芽細胞の遊走及び分化を可能にする。
この炎症期が阻害されると、上記の患者の場合のように、炎症期の異常な長期化が引き起こされ、創傷が慢性化し、続く治癒段階の全てが遅れてしまう。
最終的に、とりわけ上皮化中の創傷閉鎖期が遅れる又は、多くの場合、始まりさえしない。
アスピリンすなわちアセチルサリチル酸が多種多様な症状又は病的状態に効果的な治療薬であると考えられていることは長きにわたって知られている。その最も広く知られている作用機序は、疼痛の軽減又は解熱を目的とした昔から知られている活性である。循環器疾患の発症に対するその予防作用(抗血栓作用)から低用量でも使用されている。
実際、アスピリンの凝集阻害特性は、血管での血餅形成と効果的に戦うことを可能にする。しかしながら、この活性は、この物質の本当の有効性がわかりにくい一次予防としてより最初の血管疾患が起きてからの予防措置とのからみでより有益であると考えられる。
上で挙げた各ケースにおいて、アスピリンは経口投与される。アスピリンの外用経路での適用も存在している。実際、アスピリンの外用での適用には、肥厚性瘢痕に対する、とりわけこれらの瘢痕の外見を改善する有益な作用があることも知られている(Wound Repair Regen.,2012 Nov 5(印刷物に先行したEpub)。カナダ、ブリティッシュコロンビア州、バンクーバーにあるUniversity of British ColumbiaのDepartment of Surgery,Division of Plastic Surgeryに所属するRahmani−Neishaboor E、Jallili R、Hartwell R、Leung V、Carr N、Ghahary Aによる非特許文献1を参照のこと)。
さらに、目的とする治癒促進作用とは相いれないようにも見えるその凝集阻害活性にも関わらず、アセチルサリチル酸又はアスピリン又はその誘導体が通常の創傷の治癒及び創傷痛に及ぼす正の作用も知られている。
実際、Kimberly Clark社の特許文献1には、細胞増殖、より具体的には繊維芽細胞及びケラチノサイトの増殖を刺激するための、アスピリンを含む組成物が記載されている。この組成物は、細胞増殖を刺激することで創傷治癒を改善する。この文書は、アスピリンの効果が濃度10−5〜10−6Mで用量依存的であり、最も効果的な用量が最も低い濃度であることを明らかにしている。記載の最終的な組成物は、濃度1μM〜5mMのアスピリンを含む。細胞増殖、すなわち繊維芽細胞及びケラチノサイトの増殖の刺激並びにコラーゲン産生の刺激は治癒における重要なプロセスであり、増殖段階、またリモデリングの極めて遅い時期でも起きる。
一方、日本のTeikoku社の特許文献2には、とりわけ褥瘡を有するラットモデルで模した皮膚外傷を治療することを目的とした、局所適用するためのアスピリン系医薬製剤が記載されている。これらのモデルが健康な動物モデルであることは注目に値する。実際、この研究のどのラットも糖尿病タイプの代謝障害を有していない。この出願において、製剤の目的は、1つ以上の創傷を有する健康な動物において肉芽組織の形成速度、また表皮の回復速度を上昇させることである。そのため、この出願では、治癒の細胞プロセスをその最も遅い段階で回復させようとしている。
どの文献も治癒の第1段階、すなわち炎症期及び炎症の消散には関係していないが、それでも治癒プロセス全体を開始させることから、炎症期は極めて重要で欠くことのできない段階である。実際、糖尿病性創傷では、治癒プロセスの動力学において早期の治療又は介入を必要とする。
出願人が糖尿病性創傷では早い段階で効果的且つターゲットを定めた治療を行う必要が本当にあると気付いたのはこれらの理由からであった。
出願人は、本当に驚くべきことに、アスピリンの使用により、正常(遷延も悪化もしない)とも表現される制御された炎症期を立て直すことができ、また炎症の消散を加速させることができ、それによって糖尿病患者においてより早期での素早い創傷閉鎖を達成できることに気づくことができた。
欧州特許出願公開第1581252号明細書 欧州特許出願公開第0784975号明細書
したがって、本発明の主題は、糖尿病性創傷の予防及び/又は治療で使用するための、アセチルサリチル酸又はその塩の濃度200〜4800μMでの局所使用である。
したがって、本発明の主題は、糖尿病性創傷の予防及び/又は治療で使用するための、濃度200〜4800μMのアセチルサリチル酸又はその塩である。
本発明の別の主題は、糖尿病性創傷の予防及び/又は治療で使用するための、濃度が200〜4800μMであるアセチルサリチル酸又はその塩を含む医薬組成物である。
用語「糖尿病性創傷」は、1型又は2型糖尿病を患った糖尿病患者で生じる、とりわけ下肢の創傷から選択される創傷を意味するものとし、好ましくは糖尿病性足部創傷である。
用語「アセチルサリチル酸の塩」は、医薬的に許容可能なカチオンを有するアセチルサリチル酸の塩を意味するものとし、好ましくはアセチルサリチル酸リジン又はアセチルサリチル酸ナトリウムである。
本発明の文脈内において、用語「有効量」は、創傷1つあたり7.2x10−3〜0.173mg、好ましくは損傷1つあたり7.2x10−3〜0.1044mg、より好ましくは創傷1つあたり1.08x10−2〜7.2x10−2mgのアセチルサリチル酸又はその塩の量を意味するものとする。アセチルサリチル酸又はその塩のこの量は、創傷に直接接触させて適用する量である。創傷は、約1cmの表面積を有するものとして定義し得る。それでもなお、アセチルサリチル酸又はその塩の有効量は多数のパラメータ、例えば創傷のサイズ、治療対象である個体(ヒト又は動物)の体重、年齢、性別、感受性及び糖尿病の型に応じて変化する。それゆえに、最適有効量は、治療対象における専門家により関連すると判断されたパラメータに応じて決定されなくてはならない。
用語「慢性化(chronification)」は、創傷の治癒の遅れを意味するものとする。
糖尿病性創傷を「治療する」という用語は、創傷の治癒及び閉鎖を意味するものとする。
糖尿病性創傷を「予防する」という用語は、創傷の治癒の遅れ又は慢性化を予防することを意味するものとする。
アセチルサリチル酸又はその塩は、本発明において、有効濃度で使用される。実際、200μM未満、例えば100μM未満の濃度で使用した場合、アセチルサリチル酸又はその塩は、糖尿病性創傷の治癒速度の加速に効果を有さない。
同様に、5000μM以上の濃度では、アセチルサリチル酸は糖尿病性創傷の治癒の加速にもはや有益な作用を及ぼさず、創傷中に存在する一部の細胞、例えばマクロファージの生存率に悪影響を与えさえする。
好ましい実施形態において、アセチルサリチル酸又はその塩は、濃度200〜2900μMで使用される。
より一層好ましい実施形態において、アセチルサリチル酸又はその塩は、濃度300〜2000μMで使用される。
好ましくは、アセチルサリチル酸又はその塩の定義された濃度は、創傷と接触させて適用する濃度である。
好ましくは、アセチルサリチル酸又はその塩は、糖尿病性創傷の慢性化を治療するために使用される。特に、アセチルサリチル酸又はその塩は、「制御された」(遷延も悪化もしない)炎症期の回復、炎症期の消散の加速及びその結果としての創傷閉鎖の動態の加速を可能にする。
好ましくは、本発明のアセチルサリチル酸又はその塩を、生理学的に許容可能な媒体中で処方することで医薬組成物を得る。用語「生理学的に許容可能な媒体」は、皮膚、創傷、粘膜及び外皮に適合性がある媒体を意味するものとする。
好ましくは、アセチルサリチル酸又はその塩を、脂質又は超酸素添加油(hyperoxygenated oil)又はこれらの誘導体の1種と組み合わせる。脂質又は超酸素添加油は、アセチルサリチル酸又はその塩を既に含む医薬組成物に配合し得て、あるいはアセチルサリチル酸又はその塩とは独立して投与し得る。好ましくは、脂質はオメガ−3若しくはオメガ−6脂肪酸又はこれら2種の組み合わせである。
用語「オメガ−3」は、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸から成る非限定的なリストから選択される任意の化合物を意味するものとする。
用語「オメガ−6」は、リノール酸、γ−リノール酸、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸又はドコサペンタエン酸から成る非限定的なリストから選択される任意の化合物を意味するものとする。
用語「超酸素添加」油は植物由来の任意の超酸素添加油を意味するものとし、紫外線分光測光法によるこの油の定義はファクターE270に関して10〜20、ファクターE232に関して8〜60である。
好ましくは、植物由来の超酸素添加油は、1キログラムあたりのミリ当量として表される過酸化度30〜300及び酸化グリセリド含有量5〜40を有する。
さらに好ましくは、植物由来の超酸素添加油は、1キログラムあたりのミリ当量として表される過酸化度50〜150を有する。
好ましい一実施形態において、植物由来の超酸素添加油は、トウモロコシ油、甘扁桃油、ベニバナ油、ヘーゼルナッツ油、落花生油、オリーブ油、菜種油、大豆油、マツヨイグサ油、ヒマワリ油、ブドウ種油、ゴマ油及びこれらの混合物から成る群から選択され、好ましくはトウモロコシ油である。
アセチルサリチル酸又はその塩及びこれらを含む医薬組成物を好ましくは局所投与、言い換えると外用経路で投与する。局所又は外用経路での投与は、有効成分、この場合はアセチルサリチル酸又はその塩が皮膚、創傷又は粘膜による吸収後に局所的に作用することを伴う。様々な剤形が存在し、例えば溶液、エマルション、クリーム、軟膏、ローション、パッチ、ゲル、ドレッシング材、マイクロカプセル、マイクロファイバー、スプレー、粉末又はナノファイバーである。
好ましくは、アセチルサリチル酸又はその塩を、ドレッシング材、マイクロカプセル、マイクロファイバー、ナノファイバー、溶液、ローション、ゲル、パッチ、エマルション、クリーム、軟膏、粉末及びスプレーから選択される(医薬)組成物に含める。
本発明の医薬組成物がエマルションの形態にある場合、エマルションは、少なくとも1つの水相及び/又は1つの油相並びに界面活性剤を含む。実際、慣用のエマルションは、2種の不混和性の液体の不安定な準均一系であり、2種の液体の一方がもう一方中に小さな液滴(ミセル)の形態で分散する。この分散物を界面活性剤の作用により安定させ、界面活性剤は、界面力の構造及び比を変化させることで界面張力エネルギーを低下させて分散物の安定性を上昇させる。
本発明の医薬組成物はゲル形態にもなり得て、この場合は1種以上のゲル化化合物を含む。
医薬組成物が溶液の形態にある場合、溶液は、アセチルサリチル酸又はその塩以外の、水性若しくは油性の溶液並びに任意で、アセチルサリチル酸若しくはその塩のための、1種以上の溶媒及び/又は浸透促進剤(propenetrating agent)を含む。
本発明の医薬組成物は不活性な添加剤又はこれらの添加剤の組み合わせも含み得て、例えば
・増粘剤又は乳化剤、
・pH調節剤、
・UV−A及びUV−B遮断剤並びに
・酸化防止剤
である。
増粘剤又は乳化剤は、とりわけキサンタンガム又は界面活性剤類を含む化合物の非限定的なリストから選択し得る。
pH調節剤は、とりわけカーボネートを含む化合物の非限定的なリストから選択し得る。
UV−A及びUV−B遮断剤は、化学物質系及びミネラル系の遮断剤を含む化合物の非限定的なリストから選択し得る。化学物質系遮断剤には、オクトクリレン、ベンゾフェノン、ドロメトリゾールトリシロキサン又はアボベンゾンがある。鉱物系遮断剤には、酸化亜鉛又は二酸化チタンがある。
酸化防止剤は、とりわけトコフェリルアセタート又はアスコルビン酸を含む化合物の非限定的なリストから選択し得る。
当然のことながら、当業者ならば、本発明に本質的に関係した有利な特性が意図した添加によって変化しない又は実質的に変化しないようにこれらの医薬組成物に添加する任意の化合物を注意深く選択する。
これらの添加剤は、組成物において、組成物の総重量に対して0.001〜20重量%で存在し得る。
ここで以下の実施例を、非限定的な実例として挙げる。
本発明の他の特徴及び利点は、例として挙げる、以下の図の凡例が言及するところの本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を読むことでより明確になる。
「コントロール」用マウス及び糖尿病マウス(HFD及びdb/db)における創傷閉鎖の動態。 「コントロール」用マウス、糖尿病マウス(HFD及びdb/db)からの浸出液の評価及び滲出液中にある細胞の数量化。表の凡例は以下の通りである。滲出液の不在:−湿潤:±弱い滲出:+中程度の滲出:++強い滲出:+++ 「コントロール」用マウス及び糖尿病マウス(HFD)からの滲出液中にある多形核好中球及びマクロファージの総数の数量化。 「コントロール」用マウス及びアセチルサリチル酸で治療した糖尿病マウス(db/db)における創傷閉鎖の動態。 「コントロール」用マウス及びアセチルサリチル酸で治療した糖尿病マウス(db/db)における創傷閉鎖の動態 アセチルサリチル酸存在下でのインビトロでのマクロファージの生存率 「コントロール」用マウス及びアセチルサリチル酸で治療した糖尿病マウス(HFD)の創傷への細胞浸潤の動態。
材料及び方法
db/dbマウス:
ホモ接合体db/sbマウスはレプチン受容体遺伝子に点突然変異を有し、レプチンはとりわけ満腹感を制御するホルモンである。db/dbマウスは、生後第3/4週間目から食欲過剰となり、同時に肥満になる。これらのマウスは、高血糖、インスリン抵抗性及び高トリグリセリド血症を特徴とし、これがこれらのマウスを遺伝子を原因とした糖尿病のモデルとしての第1選択としている。db/dbマウス用の「コントロール」群のマウスは、ヘテロ接合体db/+マウスである。
HFDマウス
HFDマウスは誘発糖尿病のマウスモデルであり、生後8週間のC57BL/6マウスで準備した。これらのマウスは16週間にわたって高カロリー(高脂肪)食をとる。マウスは脂肪組織の増加に起因する大幅な体重増加を示し、また耐糖能障害及びインスリン抵抗性をもつようになる。db/dbマウスとは異なり、これらのマウスの糖尿病の状態は遺伝子を原因としたものではない。HFDマウス用の「コントロール」群のマウスは標準的な食餌をとるマウスであり、略語「NC」でも知られる。
全てのマウスを暗所での12時間とそれに続く明所での12時間に分けられた1日のサイクル、22℃で飼育し、食物及び水には常時アクセスできる。マウスにおける糖尿病の確立を、糖代謝を評価できる2つの試験:ブドウ糖負荷試験(IPGTT)及びインスリン感受性試験(IPIST)により確認する。
治癒動態のモニタリング
マウスをイソフルラン(ハロゲン化麻酔ガス)により麻酔する。マウスの背側部及び側腹部を剃毛し、消毒し、約1cmを円形に切除する。筋組織の界面にある結合組織を筋膜にダメージを与えることなく除去する。皮膚を筋肉層(panniculus carnosus)まで完全に切除する。
このようにして作り出した創傷を、Laboratoires Urgoが出願の仏国特許出願公開第1162295号明細書及び仏国特許出願公開第1162344号明細書に記載されているようなデバイスで保護し、このデバイスは、創傷の保護並びに治癒動態の観察及び評価の両方を可能にし、また滲出液の採取を可能にする。
創傷の治癒プロセスを、損傷部形成から0〜30日間にわたって観察する。各マウスについて、3〜5枚の超高解像度の標準化デジタル写真を撮影する。創傷閉鎖の割合は表面積の変化をベースとしており、同じマウスの同じ外傷について指定の時点で計算する。そのため、群内の3匹のマウスでの創傷治癒について計算した(百分率としての)平均値が独立して得られ、3つの独立した実験の3つの群から統計データを計算する。
滲出液からの細胞を、創傷が滲出液を分泌しなくなるまで、損傷部形成後1日目から回収する。多形核好中球の浸潤動態を確認するために、損傷部からの滲出液中の細胞をフローサイトメトリにより、膜受容体Ly6G、7/4(多形核細胞用)及びF4/80(マクロファージ用)に関して免疫標識することで特徴付ける。全部で10000の事象を各サンプルについて分析する。全結果を百分率の形態で示す。
得られた結果
結果を平均±SEMとして表す。SEMは平均からの標準偏差を意味する。真の個体群の平均に対するサンプルの平均からの偏差を表す。標準偏差をサンプルサイズの平方根で割ることで計算する。統計解析を多重比較法であるBonferroni−Dunnet試験にしたがって、各群につき少なくとも3匹の被験体(n=3)に関して行う。P<0.05(*)は、統計学的に有意であると見なされる。
A.治癒のモニタリング
創傷閉鎖の動態(図1A、図1B)
「コントロール」用マウスにおいては、損傷部の完全な閉鎖が14日後に観察される。その一方で、HFDマウスにおいては、この完全な閉鎖が18日後にしか達成されず、すなわち事実上4日遅れる(図1A)。
db/dbマウスにおいて、創傷は、26〜28日目にやっと事実上完全に閉じ、すなわちそれぞれのコントロールに対して10〜12日治癒が遅れている(図1B)。
したがって、糖尿病マウス(HFD及びdb/db)では創傷の閉鎖に有意な遅れがある。
顕微鏡による治癒の観察(滲出液+肉芽組織)(図2):
「コントロール」用マウスにおいては、皮膚損傷部の形成に続いて、創傷に徐々に現れる肉芽組織の定着が観察される。その広がりは均一ではないが、創傷の縁の様々な地点から発生し、5日後に創傷を完全に埋める。この組織は治癒が進むにつれて厚くなる。
糖尿病マウスでは、この肉芽組織の定着が、損傷部形成後2日目から正味の遅れを見せる。糖尿病マウスにおいて、損傷部は損傷部形成から7日後にしか完全に埋まらず、すなわち「コントロール」用マウスと比較して2日長い。
糖尿病マウスにおいて、肉芽組織の定着は滲出現象を伴う。細胞及びメディエータを多く含むこの液体は、損傷部を形成するやいなや産生される。「コントロール」用マウスにおいて、その産生は、損傷部形成後3日目にピークに達する。
その一方で、糖尿病マウス(HFD及びdb/db)は、損傷部形成後2日目から、体積の点でずっと多い滲出を示し、特に長く続く(図2)。
したがって、糖尿病マウスでは、肉芽組織の定着が有意に遅れ、より多く且つより長期間にわたる滲出を伴う。
B.滲出液中に存在する細胞集団の分析(図2、3A、3B)
「コントロール」用マウスからの滲出液は概して少量であり、この滲出液における細胞浸潤は限定されている。滲出液における細胞浸潤は損傷部形成後2日目から5日目まで観察される。細胞浸潤のピークは、損傷部形成後3日目に観察される(図2)。
糖尿病マウスの滲出液における細胞浸潤の動態は、「コントロール」用マウスで観察されるものとは異なる。実際、損傷部形成後7日目まで続くより多い細胞浸潤が観察される(図2)。
時間の関数として観察される細胞浸潤における差は、糖尿病マウスでは多形核好中球が損傷形成部位に留まり続けることで説明がつく。実際、「コントロール」用マウスにおいて、多形核好中球は損傷部形成後5日目の終わりまでには消滅するのに、糖尿病マウスにおいて、この細胞集団は、損傷部形成後7日目まで留まり続ける(図3A)。したがって、皮膚損傷部に浸潤する多形核好中球細胞の割合が「コントロール」群の場合より糖尿病群のほうがずっと高いことは明らかである。
糖尿病マウスはより多い細胞浸潤を示し、この細胞浸潤は損傷形成部位に多形核好中球が留まり続けることで引き起こされる。
「コントロール」用マウスにおいて、マクロファージは、損傷部形成後3日目から損傷形成部位に到着する。逆に言うと、糖尿病マウスにおいて、マクロファージの浸潤は、損傷部形成後3日目ではわずかに見られるに過ぎず、肉芽組織が定着を続ける間に増加しない(図3B)。
糖尿病マウスはより多い細胞浸潤を示し、これは
・損傷形成部位で多形核好中球が留まり続けること、
・マクロファージ動員における遅れ及び
・これらの多形核細胞が消滅しない
ことで説明がつく。
アセチルサリチル酸で治療したマウスで得られた結果
A.様々な濃度のアセチルサリチル酸の存在下での糖尿病マウスにおける治癒動態のモニタリング
創傷閉鎖の動態(図4、図5、図6)
既に上で述べたように、マウスをイソフルランで麻酔する。マウスの背側部及び側腹部を剃毛し、消毒し、約1cmを円形に切除する。筋組織の界面にある結合組織を筋膜にダメージを与えることなく除去する。皮膚を筋肉層まで完全に切除する。
その間に、アセチルサリチル酸の基準溶液を5mMで用意する。この溶液は、100μM、200μM、300μM、1mM、2mM、2.9mM、4.8mM及び5mMの濃度の溶液を調製するのに使用する。
アセチルサリチル酸濃度が100μM、200μM、300μM、1mM、2mM、2.9mM、4.8mM及び5mMの溶液を試験する。
精確さを期するために、アセチルサリチル酸濃度及び創傷での投与量についての参照表を作成する。以下を参照のこと。これら創傷での投与量は、本発明の特定の実施形態に対応する。
各溶液から50〜500μl取り出し、Laboratoires Urgoが出願の仏国特許出願公開第1162295号明細書及び仏国特許出願公開第1162344号明細書に記載されているようなデバイスを使用して創傷と接触させて適用する。
既定の濃度のアセチルサリチル酸を治癒部位へ接触させて適用することを損傷部形成後3日目から行うことは注目に値する。実際、「コントロール」用マウスと比較して糖尿病マウスにおいて治癒の遅れがでるのはこの期間である(図1A、図1B)。加えて、糖尿病患者の治療において、治療対象である創傷は既に形成されてしまっているであろうし、治癒プロセスは炎症期で止まってしまうであろう。慢性創傷、より具体的には糖尿病性創傷を、出現した途端に治療することはない。また、炎症期は治癒に不可欠な時期であり、これは炎症期が、ダメージを受けた領域の、多形核好中球等の炎症細胞の浸潤による浄化及び清浄化を可能にするからである。したがって、効果的な治癒を開始させるために炎症をそのままにして、この時期を完全には妨害しないことが必要である。これが、アセチルサリチル酸での治療の開始を損傷部形成後3日目からしか提案しない理由である。
図4A、図4Bは、NaCl溶液(「コントロール」に対応)又は300μM、1000μM若しくは2000μMのアセチルサリチル酸溶液のいずれかを適用した後の糖尿病マウスの創傷治癒動態を示す。
300μM、1000μM及び2000μMのアセチルサリチル酸で治療した糖尿病マウスの治癒動態は「コントロール」用マウスのものとは完全に異なる。「コントロール」用糖尿病マウスにおいて創傷閉鎖は26日後に完了するのに対して、300μM及び1000μMのアセチルサリチル酸で治療した糖尿病マウスは、損傷部形成後約20日目で創傷が閉じる。同様に、図4Bは、用量2000μMの場合の同じ結果を示す。
さらに、300μM、1000μM及び2000μMのアセチルサリチル酸溶液で治療した創傷の閉鎖速度の上昇が、治癒の早い時期(炎症期)、すなわち損傷部形成後3〜7日目での加速により達成されることを観察することができ、このことは図4で見てとれる。損傷部形成後3〜7日目での治癒のこの加速は、炎症の消散速度の加速と相関関係にある。そのため、上記のアセチルサリチル酸溶液を投与したマウスの治癒速度ひいては創傷閉鎖速度は、「コントロール」用マウスと比較して大幅に加速される。
要約すると、アセチルサリチル酸の300μM、1000μM及び2000μM溶液の局所投与は制御された炎症期を回復させ且つ炎症の消散の極めてはっきりとした加速を誘起することで、「コントロール」用糖尿病マウスと比較して、(損傷部形成後約20日目での)創傷閉鎖速度の上昇を可能にする。
図5は、NaCl溶液(「コントロール」に対応)又は100μM若しくは5000μMのアセチルサリチル酸溶液のいずれかを適用した後の糖尿病マウスの創傷治癒動態を示す。
「コントロール」用糖尿病マウス並びに100μM及び5000μMのアセチルサリチル酸で治療した糖尿病マウスの治癒動態は同様であり、有意な差はない。そのような濃度のアセチルサリチル酸を創傷と接触させて導入しても、「コントロール」用糖尿病マウスと比較して、特には炎症期中及び肉芽組織の定着中に、治癒動態への効果は全く見られない。
要約すると、100μM及び5000μMのアセチルサリチル酸溶液の糖尿病マウスの創傷への局所投与は、制御された炎症期の回復又は炎症の消散の加速に効果を示さず、したがって創傷閉鎖速度を上昇させることができない。
さらに、細胞生存率試験を、様々な濃度のアセチルサリチル酸についてマクロファージで行う(図6)。
この分析方法は、マクロファージに分化させるためにRPMI培地(M−CSFを10ng/mlで添加)で24時間にわたって培養するヒト末梢血由来単核球の使用を含む。アセチルサリチル酸をこの培地に最終濃度1000μM又は5000μMで添加する。
細胞死亡率を、インキュベーションから72時間後に、フローサイトメトリにより、ヨウ化プロピジウムの細胞質内への取り込みを測定することで分析する。
インビトロで行うそのような細胞生存率試験の目的は、創傷で見られる細胞、好ましくは本ケースにおいてのマクロファージ(研究対象である損傷部の治癒におけるエフェクター細胞の1タイプであると見なされる)に対する投与量の有害度を確認することである。実際、そのような研究は、インビトロでの死亡率の基底レベルが高すぎることから、多形核好中球では行うことができない。
図6は、インビトロで細胞に投与される用量5000μMのアセチルサリチル酸では72時間の時点で細胞生存率が極めてはっきり低下することを示し、生存率は20%低下し、したがって有害であると特徴付けることができる。
逆に言うと、用量1000μMの適用に細胞毒性は見られない。
したがって、創傷に投与する濃度5mMの溶液は治癒動態(図5)に効果がなく、また治癒部位に存在する細胞に有害であると証明された(図6)。
B.滲出液中に存在する細胞集団の分析(図7)
図7は、「コントロール」用糖尿病マウス又は1000μMのアセチルサリチル酸溶液を適用した糖尿病マウスで起きた細胞浸潤の動態を示す。
損傷部形成後7日目に、アセチルサリチル酸での治療により、治療が施された糖尿病マウスの損傷部位に浸潤する細胞の数が有意に低下することは注目に値する。
したがって、上記の全ての結果から、濃度100〜4800μMのアスピリンをベースとした治療(損傷部形成後3日目から投与)は、糖尿病マウスにおいて、細胞浸潤を減少させ、制御された炎症期を回復させ、また炎症の消散を加速させることで最終的に創傷閉鎖速度を上昇させることができると結論付けることができる。
したがって、アセチルサリチル酸は、炎症の消散過程において、そしてその結果として糖尿病を患っている個体の創傷閉鎖速度に関して非常に重要な役割を果たす。

Claims (11)

  1. 糖尿病性創傷の予防及び/又は治療で使用するための、濃度200〜4800μMのアセチルサリチル酸又はその塩。
  2. 濃度が200〜2900μMであることを特徴とする、請求項1に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  3. 濃度が300〜2000μMであることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  4. 前記濃度を局所形態で投与することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  5. アセチルサリチル酸リジン及びアセチルサリチル酸ナトリウムから選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  6. ドレッシング材、マイクロカプセル、マイクロファイバー、ナノファイバー、溶液及びスプレーから選択される組成物に含ませることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  7. 糖尿病性創傷の慢性化を治療するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  8. 炎症の消散を加速させるための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  9. 脂質、超酸素添加油又はこれらの誘導体の1種と組み合わせることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  10. 前記脂質又はその誘導体がオメガ−3若しくはオメガ−6脂肪酸又はこれら2種の組み合わせであることを特徴とする、請求項9に記載の、その使用のための、アセチルサリチル酸又はその塩。
  11. 糖尿病性創傷のための、濃度が200〜4800μMであるアセチルサリチル酸又はその塩を含む医薬組成物。

JP2015548720A 2012-12-21 2013-12-18 糖尿病性創傷を予防及び/又は治療するためのアセチルサリチル酸の使用 Expired - Fee Related JP6367826B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
FR1262644 2012-12-21
FR1262644A FR2999936B1 (fr) 2012-12-21 2012-12-21 Utilisation d'acide acetylsalicylique pour la prevention et/ou le traitement des plaies du diabetique
PCT/FR2013/053155 WO2014096697A1 (fr) 2012-12-21 2013-12-18 Utilisation d'acide acétylsalicylique pour la prévention et/ou le traitement des plaies du diabétique

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016509578A true JP2016509578A (ja) 2016-03-31
JP6367826B2 JP6367826B2 (ja) 2018-08-01

Family

ID=47882339

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015548720A Expired - Fee Related JP6367826B2 (ja) 2012-12-21 2013-12-18 糖尿病性創傷を予防及び/又は治療するためのアセチルサリチル酸の使用

Country Status (9)

Country Link
US (1) US20150320772A1 (ja)
EP (1) EP2934547B1 (ja)
JP (1) JP6367826B2 (ja)
CN (1) CN104968352B (ja)
BR (1) BR112015014673B1 (ja)
CA (1) CA2894604A1 (ja)
ES (1) ES2742650T3 (ja)
FR (1) FR2999936B1 (ja)
WO (1) WO2014096697A1 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004123551A (ja) * 2002-09-30 2004-04-22 Teikoku Seiyaku Co Ltd ケロイド等の形成抑制外用剤
JP2004137215A (ja) * 2002-10-18 2004-05-13 Teikoku Seiyaku Co Ltd 有痛性皮膚創傷の治療用外用剤
JP2004262776A (ja) * 2003-02-21 2004-09-24 Teikoku Seiyaku Co Ltd 血管新生促進剤
JP2004292341A (ja) * 2003-03-26 2004-10-21 Teikoku Seiyaku Co Ltd ケロイド等の形成抑制外用剤

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2250983T3 (es) * 1995-12-26 2006-04-16 Teikoku Seiyaku Kabushiki Kaisha Utilizacion del acido acetilsalicilico en la fabricacion de un medicamento para el tratamiento de las lesiones de la piel.
US20030212138A1 (en) * 2002-01-14 2003-11-13 Pharmacia Corporation Combinations of peroxisome proliferator-activated receptor-alpha agonists and cyclooxygenase-2 selective inhibitors and therapeutic uses therefor
US7098189B2 (en) * 2002-12-16 2006-08-29 Kimberly-Clark Worldwide, Inc. Wound and skin care compositions
US20120183600A1 (en) * 2007-01-16 2012-07-19 Chien-Hung Chen Novel composition for treating metabolic syndrome and other conditions
CN102480945A (zh) * 2009-06-03 2012-05-30 艾克斯特克有限责任公司 皮肤处理组合物

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004123551A (ja) * 2002-09-30 2004-04-22 Teikoku Seiyaku Co Ltd ケロイド等の形成抑制外用剤
JP2004137215A (ja) * 2002-10-18 2004-05-13 Teikoku Seiyaku Co Ltd 有痛性皮膚創傷の治療用外用剤
JP2004262776A (ja) * 2003-02-21 2004-09-24 Teikoku Seiyaku Co Ltd 血管新生促進剤
JP2004292341A (ja) * 2003-03-26 2004-10-21 Teikoku Seiyaku Co Ltd ケロイド等の形成抑制外用剤

Also Published As

Publication number Publication date
CN104968352B (zh) 2018-03-27
EP2934547A1 (fr) 2015-10-28
CN104968352A (zh) 2015-10-07
EP2934547B1 (fr) 2019-07-17
BR112015014673B1 (pt) 2020-03-31
FR2999936A1 (fr) 2014-06-27
ES2742650T3 (es) 2020-02-17
JP6367826B2 (ja) 2018-08-01
CA2894604A1 (fr) 2014-06-26
FR2999936B1 (fr) 2015-01-16
WO2014096697A1 (fr) 2014-06-26
BR112015014673A2 (pt) 2017-07-11
US20150320772A1 (en) 2015-11-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Akbik et al. Curcumin as a wound healing agent
Gad et al. Chamomile oil loaded solid lipid nanoparticles: A naturally formulated remedy to enhance the wound healing
US20140348775A1 (en) Wound treatment drug for external use
JP2015508094A (ja) Dgla、15−ohepa、及び/又は15−hetreを含む医薬組成物並びにこれを使用する皮脂生成の低減法
US20230165825A1 (en) Novel anhydrous compositions comprised of marine oils
US9931366B2 (en) Topical pharmaceutical bases for wound and scar treatment
US20230338435A1 (en) Topical composition comprised of cod li ver oil for treating wounds and skin disorders
US10463699B2 (en) Fish oil topical composition
US10426803B2 (en) Topical medicament for skin and mucosal injuries
US20100324138A1 (en) Lipoxin A4 Protection for Retinal Cells
KR101799300B1 (ko) Clasp2를 이용한 상처 치유 또는 피부 재생용 조성물
JP6367826B2 (ja) 糖尿病性創傷を予防及び/又は治療するためのアセチルサリチル酸の使用
KR102113754B1 (ko) 화상 및 욕창의 완화 및 치료용 조성물
DE10138303A1 (de) Verwendung von Enzymisolaten aus Fliegenlarven zur Wundbehandlung
Shamash et al. Effect of topical curcumin on the healing of major oral mucosal ulceration.
US20240139138A1 (en) Composition of and method for treating injury and/or skin conditions
WO2023182468A1 (ja) 創傷治療用組成物
DE10149153A1 (de) Verwendung von Enzymisolaten aus Fliegenlarven zur Wundbehandlung
WO2006032464A2 (en) Method of treatment of acute exudative skin lesions and composition useful therefor

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160929

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170621

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170704

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20171004

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171026

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171219

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180316

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180605

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180705

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6367826

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees