JP2016509253A - 低濃度の包有物を有するサファイアカバープレートを含有してなる携帯用電子機器 - Google Patents

Abstract

カバープレートを含有してなる電子機器が開示される。該カバープレートは１つ又はそれ以上のサファイア層を含有し、これらの層のうち少なくとも１つは低濃度の包有物を有し、電子機器はさらに、ディスプレー表面を有する少なくとも１つのディスプレー要素を含有し、該カバープレートはディスプレー表面の上に着脱可能に配置された保護層であり、そして電子機器は電子メディアプレー、携帯電話、携帯情報端末又は電子手帳である。

Description

（関連出願への相互参照）
本出願は、２０１２年１２月２７日に出願された米国仮特許出願第６１／７４６，３７８号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に取り込まれる。

（技術分野）
本発明は、サファイアカバープレートを含有してなる携帯用電子機器に関する。

少なくとも部分的に透明なディスプレーウィンドウアセンブリーを含む、現在入手可能な多くの種類の携帯用電子機器がある。これらは、例えば、メディアプレーヤー、携帯電話、携帯情報端末（ＰＤＡｓ）、ポケットベル、タブレットのようなコンパクトな電子機器、並びにラップトップコンピュータ及びノートパソコンを包含する。ディスプレースクリーンアセンブリーは、例えば、液晶ディスプレー（ＬＣＤ）のような画像表示層、ユーザー入力用のタッチセンサー層、及び画像表示層を保護するために用いられる少なくとも１つの外部カバー層などの、複数の部品の層を含むことができる。これらの各層は、通常、互いに積層されているか又は結合されている。

現在用いられている携帯用電子機器の多くは、過度の機械的及び／又は化学的損傷、特に、不注意な取扱い及び／又は落下によって、使用者のポケット又はハンドバッグの中にある鍵などと画面との接触によって、或いは頻繁なタッチスクリーンの使用によって、損傷を受けている。例えば、スマートフォンやＰＤＡｓのタッチスクリーンインターフェースは、物質的なユーザーインタフェースを引っかいたりへこませたりという摩耗によって損傷を受けるかもしれず、そして、これらの傷は機械的又はその他の衝撃を受けた場合にスクリーン及び／又は下層の部品をより破壊させやすくする圧力の集中部位として作用するかもしれない。また、使用者の皮膚の脂又はその他の汚れが表面を覆うこともあり、機器の劣化をさらに促進するかもしれない。このような摩耗及び化学的な作用は下層の電子表示部品の画像の鮮明さを減少する原因になるかもしれず、機器の使用や性能の享受を潜在的に妨げ、そして機器の寿命を制限する。

携帯用電子機器のディスプレーウィンドーの耐久性を増大するために、種々の方法及び材料が用いられてきた。例えば、劣化を妨げるために、高分子コーティング又は高分子層をタッチスクリーン表面に適用し得る。しかしながら、このような層は、下層の電子表示の鮮明さを妨げ、さらにタッチスクリーンの感度も低下させる可能性がある。さらに、コーティング物質も多くの場合へこみやすいので、それ自体が容易に損傷を受ける可能性があり、定期的な交換を必要とするか、或いは機器の寿命を制限する。

別の一般的なアプローチは、より高度に化学的にそして引っかきに耐性がある物質をディスプレーウィンドーの外部表面として用いることである。例えば、いくつかの携帯用機器のタッチセンサースクリーンは、Corning 社から入手可能な「ゴリラガラス（Gorilla glass）と呼ばれる物質のような、強度を増大するためにナトリウムイオンをカリウムイオンで置換した化学的に強化されたアルカリアルミノケイ酸ガラスの層を含んでいるかもしれない。しかしながら、この種のガラスであっても、金属の鍵、砂、及び小石を含む、多くのより硬い物質によって引っかき傷を付けられこともあり、そしてさらに、ガラスであるために、脆性破壊及び粉砕する傾向がある。サファイアもディスプレーアセンブリーの外部層として、或はディスプレーウィンドーの表面に適用される別の保護シートとして提案され使用されてきた。しかしながら、サファイアは比較的高価であり、そして、一般に、光散乱、反射、及び光透過率の損失の部位として作用する傷又は不純物を含んでおり、機器の表示特性を妨げて見える画像の質を低下する。

このように、携帯用電子機器のディスプレーに損傷に対する相対的な耐性を与えることができるいくつかの物質が入手可能であるが、透過性を低下させることなく改良された機械的靱性及び引っかきに対する耐性をもたらす物質及び方法への要求が当業界には依然として残っている。

本発明は、少なくとも１つの透過性ディスプレー領域を有するカバープレートを含有してなる電子機器に関する。このカバープレートは、０．０５ｍｍを超える大きさの包有物を有していない少なくとも１つのサファイア層を含有してなる。好ましくは、このサファイア層は０．０５ｍｍを超える長さ或は直径の包有物を有していない。また、好ましくは、当該サファイア層は２．０ｍｍ未満の包有物間距離を有しておらず、そして面積２．５ｃｍ^２の面積内に２．０ｍｍ^２未満である包有物の総面積を有している。この電子機器はさらに、ディスプレー表面を有する少なくとも１つのディスプレー要素を含んでいてもよく、そしてカバープレートはディスプレー表面に貼り付けるか、或はディスプレー表面の上に保護層として着脱可能に配置することができる。

上記の概要の説明及び以下の詳細な説明はいずれも、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲に記載される本発明のさらなる説明の提供を意図していると、理解すべきである。

本発明はカバープレートを含有してなる電子機器に関し、このカバープレートは低濃度の包有物を有する少なくとも１つのサファイア層を含有してなる。

本発明の電子機器は、その上にカバープレートが置かれたディスプレー要素からのように、それを通して画像を表示できる少なくとも１つの透明なディスプレー領域を有するカバープレートを含有してなる。不透明な領域が存在していてもよく、特に、境界線のような装飾要素として、或はディスプレーの各種機能部分を表現する要素として、存在してもよい。電子機器は、ディスプレー又はディスプレー要素を含んでいる当該技術分野で公知の如何なるものでもよく、例えば、これらに限定されないが、ｍｐ３プレーヤーのような音楽及び／又はビデオのための電子メディアプレーヤー、携帯電話、携帯情報端末（ＰＤＡｓ）、ポケットベル、ラップトップコンピュータ、電子手帳、又はタブレットを含む、動かせる又は持ち運べる電子機器などが挙げられる。これらの機器のディスプレー要素は、例えば、ＬＣＤのような画像表示層及びタッチスクリーンアプリケーションの一部としてのタッチセンサー層を含む、複数の部品の層を含むことができる。カバープレートは機器のディスプレー要素のディスプレー表面に貼り付けることができるか、或はディスプレー要素を覆うように又はその上に取り付けるか又は配置し、所望により後に取り外すことができる別個の保護層であってもよい。

本発明の電子機器のカバープレートは、以下に詳細に記載される、低濃度の包有物を有するサファイア層を含有してなる。このカバープレートは、単一の、独立したサファイア層であってよく、或は、さらなるサファイア層、又は硬度又は亀裂に対する抵抗を含む改善された機械的な又は表面としての特性などのさらなる有利な特性を提供できるその他の物質の層などの追加の層を含んでいてもよい。例えば、このカバープレートは、典型的に約０．００１ミクロン〜約１．５ミクロンの厚さを有する反射防止及び／又は撥油コーティングを含むことができる。従って、カバープレートは、例えば２〜５層又は２〜３層などの２〜１０層を含む多層複合材であってよく、ここで、少なくとも１つの層は低濃度の包有物を有するサファイア層である。特に費用面で、カバープレートは低濃度の包有物を含有するサファイアの単一層を含むのが好ましい。

サファイア層の厚さは、例えば、電子機器の種類及び大きさ、費用、及びカバープレートの望ましい特性に基づいて変えることができる。例えば、費用面では、より薄い層が好ましく、サファイア層の厚さは、約１ｍｍ未満、約０．５ｍｍ未満、又は約０．１ｍｍ未満などの約２ｍｍ未満を含む約０．０１ｍｍ〜約３ｍｍのように、約３ｍｍ未満であってよい。また、サファイア層は、イオン注入法を用いてサファイア供与体から製造でき、例えば、３０ミクロン未満、２５ミクロン未満、２０ミクロン未満、又はさらに１５ミクロ未満を含む５０ミクロン未満の厚さを有する極薄サファイア層であってよい。好ましくは、サファイア層は独立していて、そのために担持層から独立して取り扱うことができる。

本発明の電子機器のカバープレートの全体的な厚さは、例えば、層の数及び電子機器の望ましい大きさ及び重量を含む、各種の因子によって変えることができる。一般に、カバープレートは約５ｍｍ未満の厚さを有し、好ましくは約０．３ｍｍ〜約３．０ｍｍの厚さを有する。しかしながら、本発明のカバープレートは、光を損失し及び表示画像を損なう部位として作用する包有物を低濃度で有する少なくとも１つのサファイアの層を含むので、本発明のカバープレートは、ガラスを含むカバープレートのみならず現在入手可能なサファイアを含むカバープレートより薄くできると同時に、タッチスクリーン感度、剛性、及び強度のような望ましい特性の同じレベルを達成する。従って、例えば、カバープレートは、より好ましくは約０．４ｍｍ〜約２．５ｍｍの、さらにより好ましくは約０．５ｍｍ〜約２．０ｍｍの、そして最も好ましくは約０．５ｍｍ〜約１．０ｍｍの厚さを有する。

本発明では、少なくとも１つのサファイア層が低濃度の包有物を有する。本明細書で用いられる用語「包有物」は、光の散乱及び反射を引き起こす、サファイア層内に含まれる物体又は目に見える不純物をいう。包有物の例は、泡、ガス、粒子又はその他の目に見える物体を包含し、これらは様々な大きさ及び形であってよい。包有物は様々な供給源からサファイア材料に取り込まれるが、一般にサファイアを製造する工程で生じたものである。通常、各種の結晶成長及び固化工程の何れかを用いて製造される、現在入手可能なサファイアは、一般に高濃度の比較的大きい包有物を有する。例えば、サファイアは通常、平均して大きさが約０．１ｍｍの包有物を有し、平均して約０．１ｍｍ〜１．０ｍｍのようなさらに大きい包有物を有することさえある。これらは均一に又はある場合は非均一に、材料内に分散し得る。従って、包有物の間の距離（本明細書では包有物間距離という）は多様である。包有物の凝集は短い包有物間距離をもたらし、これらはサファイアの光学特性にかなり大きい影響を与える。

比較すると、本発明の電子機器で用いられるカバープレートのサファイア層は、かなり低い濃度の包有物を有する。具体的には、本発明のカバープレートのサファイア材料は、包有物の全体の形にもよるが、長さ又は直径の何れかを測定して、０．０５ｍｍ以上の大きさの包有物を有しない。サファイア層に存在する何れの包有物も、大きさが０．０３ｍｍ未満、又は０．０２５ｍｍ未満のように、０．０４ｍｍより小さいことが好ましい。また、サファイア層は２．０ｍｍより近接している包有物を有さないことが好ましく、従ってサファイア層は２．０ｍｍ未満の包有物間距離を有しない。全ての包有物の間の距離が、３．０ｍｍ以上及び４．０ｍｍ以上のように、２．０ｍｍ以上であることがより好ましい。さらに、サファイア層が非常に少ない数の総包有物を有することも好ましい。具体的には、包有物の総面積は非常に狭く、サファイア層の２．５ｃｍ^２の面積の何れにおいても、１．５ｍｍ^２未満及び１．０ｍｍ^２未満を含む、２．０ｍｍ^２未満が好ましい。従って、サファイア層は殆ど包有物を有しておらず、存在しているものは大きさが比較的小さくて層のあらゆる場所に比較的均一に分散している。このようなサファイア層は現在入手可能な材料と比べて著しく改善された光学特性を有することが期待でき、そのために様々な適用、特に高い光学性能が重要である電子機器のカバープレートに有用であろう。

サファイア層はさらに、望ましい機械的、物理的及び／又は光学的特性を有することが好ましい。例えば、室温で、サファイアの層は、約８００〜１０００ＭＰａを含む少なくとも７００ＭＰＡの曲げ強度、約２〜５ＭＰａを含む１ＭＰａより大きい破壊靱性（すなわち、亀裂やひっかきを含む物質の破砕に抵抗する能力）、約１７〜約２０ＧＰａを含む約１５ＧＰａより大きいヌープ硬度、及び／又は約２０００〜３０００ｋｇ／ｍを含む約１０００ｋｇ／ｍより大きいビッカース硬度を有することが好ましい。ヤング率のような係数も、約３００〜４００ＧＰａが好ましいが、カバープレートの所望の特性（例えば、タッチ感度）に応じて変えることができる。

カバープレートのサファイア層は、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて製造することができる。例えば、サファイア層は、アルミナのような固体原料を約２０００℃以上を含む通常約１０００℃以上の温度の坩堝内で加熱溶融し、次いで得られた原料物質を再凝固してサファイアブールのような結晶性物質を形成することができる、高温の炉である結晶成長装置内で製造された、より大きい塊状のサファイア結晶から切り出すか又は切断できる。サファイアの塊は熱交換法式の結晶成長炉内で製造することが好ましく、炉内ではアルミナ原料及び少なくとも１つの単一結晶サファイア種を含有する坩堝をアルミナの融点以上に加熱してサファイア種を実質的に溶解することなく原料を溶解して、次いで、坩堝の底で熱的に連通してサファイア種の下に置かれた、ヘリウム冷却熱交換機のような熱交換機を用いて坩堝から熱を取り除く。この方法は、ブールと呼ばれることがある、大きくて高品質なサファイアの塊を製造することが示されていて、それからサファイア層を取り出すことができる。包有物の制御は、原料の純度及び／又は工程を制御する条件を含む、様々な技術によってもたらすことができる。

本発明の好ましい実施態様に関する上記の記載は、例示と説明の目的で記載されている。上記の記載は、包括的であること、又は本発明を開示されたとおりの形に限定することを意図していない。修正及び変更は、上記の教示を考慮すると可能であり、又は発明の実施によりなされるかもしれない。実施態様は、当業者が種々の実施態様で、さらに予定される特定の使用法に適合させるための種々の修正を伴って発明を利用できるようにするために、本発明の本質及び実際の適用を説明する目的で選択され記載された。本発明の範囲は、本明細書に添付されている特許請求の範囲及びその均等物によって定義されることが、意図されている。

Claims (14)

1. 少なくとも１つの透明なディスプレー領域を有するカバープレートを含有してなり、該カバープレートが０．０５ｍｍを超える大きさの包有物を有していない少なくとも１つのサファイア層からなる、電子機器。
2. 該サファイア層が、０．０５ｍｍを超える長さの包有物を有していない、請求項１に記載の電子機器。
3. 該サファイア層が、０．０５ｍｍを超える直径の包有物を有していない、請求項１に記載の電子機器。
4. 該サファイア層が、２．０ｍｍ未満の包有物間距離を有していない、請求項１に記載の電子機器。
5. 該サファイア層が、２．５ｃｍ^２の面積中に総面積が２．０ｍｍ^２未満の包有物を有している、請求項１に記載の電子機器。
6. 電子機器がさらに、ディスプレー表面を有する少なくとも１つのディスプレー要素を含有してなり、カバープレートが該ディスプレー表面に貼り付けられている、請求項１に記載の電子機器。
7. 電子機器がさらに、ディスプレー表面を有する少なくとも１つのディスプレー要素を含有してなり、カバープレートが該ディスプレー表面の上部に着脱可能に配置された保護層である、請求項１に記載の電子機器。
8. 該サファイア層が、結晶成長炉内で固化されたサファイアを含有してなる、請求項１に記載の電子機器。
9. 結晶成長炉が、熱交換法式の炉である、請求項８に記載の電子機器。
10. 該カバープレートが、約０．３〜３．０の厚さを有する、請求項１に記載の電子機器。
11. 該カバープレートが、約０．４〜２．５の厚さを有する、請求項１に記載の電子機器。
12. 該カバープレートが、約０．５〜１．０の厚さを有する、請求項１に記載の電子機器。
13. 該カバープレートがさらに、外側の反射防止層を含有してなる、請求項１に記載の電子機器。
14. 電子機器が、電子メディアプレーヤー、携帯電話、携帯情報端末、ポケットベル、タブレット、ラップトップコンピュータ、又は電子手帳である、請求項１に記載の電子機器。