JP2016506740A - 無細胞翻訳系 - Google Patents

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Abstract

本発明は、新規な無細胞翻訳系に関する。特に、本発明は、RNAをタンパク質へとインビトロで翻訳するための無細胞反応系に関し、該反応系は、リボソームが除去された赤血球溶解液、及び真核細胞から単離されたリボソームを含み、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。本発明はまた、本発明の無細胞反応系を使用して、リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法に関する。本発明はまた、無細胞翻訳系を生成するための、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、及び(ii)真核細胞から単離されたリボソームの使用に関し、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。

Description

本発明は、新規な無細胞翻訳系に関する。
特に、本発明は、RNAをタンパク質へとインビトロで翻訳するための無細胞反応系に関し、該反応系は、リボソームが除去された赤血球溶解液、及び真核細胞から単離されたリボソームを含み、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
本発明はまた、本発明の無細胞反応系を使用して、リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法に関する。
本発明はまた、無細胞翻訳系を生成するための、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、及び(ii)真核細胞から単離されたリボソームの使用に関し、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
発明の背景
無細胞タンパク質合成系(本明細書において以後、「CFPS」と略称する)は、無細胞翻訳系とも呼ばれるが、これは数十年間、mRNA又はcDNAのいずれかであり得る異所的に加えられた核酸からタンパク質を発現させるために使用されてきた(概説についてはCarlson et al, Biotechnol Adv., 30(5): 1185-1194, 2012を参照されたい)。
CFPSは、タンパク質、例えばワクチン成分及びサイトカインなどの製薬上関心のあるタンパク質を迅速かつ効率的に生成するための優れたツールである(Kanter et al. Blood, 109(8): 3393-3399, 2007; Yang et al. Biotechnol Prog., 20(6): 1689-1696, 2004; Yang et al. Biotechnol Bioeng, 89(5): 503-511, 2005; Zawada et al. Biotechnol Bioeng, 108(7): 1570-1578, 2011)。さらに、CFPSは、タンパク質ライブラリーのハイスループット生成を行なうために日常的に活用されている(Goshima et al. Nat Methods, 5(12): 1011-1017, 2008)。インビトロ翻訳アッセイは、細胞壁がないことに因り、分子を直接的に採取及びスクリーニングするための良好な代替選択肢を示す。さらに、インビトロにおけるタンパク質の発現は、生細胞において生成できない毒性タンパク質の合成を可能とする。
CFPSは、エネルギー発生のために必要な全ての成分及びRNAの翻訳に必要とされる完全な装置(例えば、リボソーム、tRNA及びアミノアシル−tRNAシンターゼ、開始因子、伸張因子及び終結因子、シャペロン、アミノ酸など)を含有する、粗細胞抽出物から調製される。しかしながら、効率的な翻訳を確実とするために、通常、細胞抽出物には、アミノ酸、エネルギー源(例えばATP、GTP)、エネルギー発生系(例えば真核系ではクレアチンリン酸及びクレアチンホスホキナーゼ、並びにE.coli(大腸菌)溶解液ではホスホエノールピルビン酸及びピルビン酸キナーゼ)、及び他の捕因子(Mg2+、Kなど)が補充されている。CFPSの利点は、内因性成分の濃度を、化学物質、酵素によって操作することができるか、又は組換えタンパク質の添加によって改変することができることである(Ohlmann et al. EMBO J., 16(4): 844-855, 1997; Ohlmann et al. J Mol Biol., 318(1): 9-20, 2002; Ziegler et al. Virology, 213(2): 549-557, 1995; Ziegler et al. J Virol., 69(6): 3465-3474, 1995)。さらに、市販されているCFPSの短いインキュベーション時間及び良好な標準化水準は、実験手順を非常に使用及び再現し易くしている。これら全ての特色により、インビトロシステムは研究及びタンパク質生成のための非常に強力なツールとなっている。
理論的には、あらゆる種類の細胞からの翻訳適格性の無細胞抽出物の調製は容易に見え得るが、実際にはそうではない。実際に、過去30年間において僅かに数個の無細胞の有効な系しか開発されていない。最も頻繁に使用される無細胞翻訳系は、ウサギ網状赤血球、昆虫細胞、コムギ胚芽、及び大腸菌(Escherichia coli)からの抽出物からなる(Carlson et al, Biotechnol Adv., 30(5): 1185-1194, 2012)。大腸菌、コムギ胚芽、及び昆虫細胞は、大量の所与のタンパク質を生成するための優れたツールであるが、それらは哺乳動物翻訳制御の経路に関する研究のためには適切ではない。
この理由のために、哺乳動物の翻訳研究は、一般的に、Hunt及びJackson (Hamatol Bluttransfus, 14: 300-307)によって開発され、かつカルシウムで活性化されるS7ミクロコッカスヌクレアーゼを用いて内因性mRNAを除去することによってタンパク質生成のために最適化された、ウサギ網状赤血球溶解液を用いて実施されている(Pelham & Jackson. Eur J Biochem., 67(1): 247-256, 1976)。それ以来、処理されていない(本明細書においては以後、「URRL」と略称する)又はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液(本明細書において以後、「RRL」と略称する)の両方が成功裡に市販化され、科学社会によって広く使用されている。
しかしながら、網状赤血球溶解液に関する大きな懸案事項は、それが、細胞環境に見られるいくつかの重要な翻訳特徴を再現しないことである。その中の1つは、翻訳制御において非常に重要な決定因子であるキャップ及びポリ(A)依存の欠失に関する(Beilharz et al. Prog Mol Subcell Biol., 50: 99-112, 2010; Lemay et al. RNA Biol., 7(3): 291-295, 2010; Tomek & Wollenhaupt, Anim Reprod Sci., 134(1-2): 2-8, 2012)。
網状赤血球溶解液中のリボソーム及びリボソーム会合因子の部分的除去は、mRNAへのキャップ及びポリ(A)テイルの付加によって付与される選択的利点を復元し得るが、同時に、このような除去は、生成されるタンパク質の収率に影響を及ぼすことが示されている(Borman et al. Nucleic Acids Res., 28(21): 4068-4075, 2000; Michel et al. J Biol Chem., 275(41): 32268-32276, 2000)。同様に、処理されていないRRLは、キャップ/ポリ(A)相乗作用を復元し得るが、内因性グロビン及びリポキシゲナーゼmRNAの存在は、RNA及びタンパク質の発現に干渉する可能性があることが示されている(Soto Rifo et al. Nucleic Acids Res., 35(18): e121, 2007)。
最後に、ヒト遺伝子又はヒトに感染するウイルスRNAの研究における、RRLの生理学的関連性は、それらの発現に必要とされる全ての因子を含んでいるわけではない可能性があるため、しばしば批判されている。この方向に沿って、多くのIRESにより駆動される細胞起源及びウイルス起源のmRNAは、ウサギ網状赤血球溶解液中では翻訳されないか又はあまり翻訳されないことは注目に値する(Borman et al. Nucleic Acids Res., 25: 925-932, 1995; Borman et al. Nucleic Acids Res., 25(5): 925-932, 1997; Stoneley et al. Nucleic Acids Res., 28(3): 687-694, 2000; Stoneley & Willis, Oncogene, 23(18): 3200-3207, 2004)。
これらの問題に対処するために、哺乳動物細胞からの抽出物に基づいたいくつかのインビトロ翻訳系が、過去数年間かけて開発された(Bergamini et al. Rna., 6(12): 1781-1790, 2000; Svitkin & Sonenberg, Methods Mol Biol., 257: 155-170, 2004; Thoma et al. Methods Mol Biol., 257: 171-180, 2004; Witherell, Curr Protoc Cell Biol., Chapter 11: Unit 11 18, 2001)。近年、Pierce Biotechnology Inc.社は、HeLaに基づいた翻訳系を市販した。これらの全ての系は、細胞に劣らない環境を忠実に復元するが、それらは通常製造するのが面倒であり、生成されるタンパク質の収率の点で極めて非効率的である。それらはその活性が酵素的に決定され得るルシフェラーゼなどの感度の高いレポーター遺伝子と共に使用するのに適しているが、[35S]−メチオニン取り込みの解読によって所与の遺伝子の合成を可視化するのは非常に困難であることが多い。これは大きな欠点である。なぜなら、それが分解若しくは切断短縮されていないことを確実にするために、又は、HIV−1、HIV−2について示されているような選択的翻訳開始若しくは内部開始によって生成され得るあらゆるアイソフォームを可視化するために、所与の遺伝子の翻訳産物を観察することがしばしば必要であるからである(Balvay et al. Nat Rev Microbiol., 5(2): 128-140, 2007; Balvay et al. Biochim Biophys Acta, 2009; de Breyne et al. Virus Res, S0168-1702(12)00376-0, 2012; Herbreteau et al. Nat Struct Mol Biol., 12(11): 1001-1007, 2005)。
今まで、どの既存のインビトロ翻訳系も、高い発現収率と生理学的細胞環境(すなわち、細胞に劣らない環境においてのみ見られる翻訳制御の特色)の再現とを兼ね備えることができていない。
それ故、先行技術のインビトロ翻訳系の欠点に悩まされない新規な無細胞翻訳系、すなわち、高いタンパク質生成量を可能としかつ生理学的細胞環境を最適に模倣した系を開発することは特に興味深い。
発明の説明
効率的なタンパク質生成と、細胞に劣らない環境に通常見られる翻訳制御の特色とを兼ね備え得るインビトロの哺乳動物翻訳系を開発する試みにおいて、本発明者らは初めて、i)そのリボソームが除去された赤血球溶解液(例えば、網状赤血球溶解液、特にウサギ網状赤血球溶解液)から得られた成分と、ii)培養真核細胞、特に、哺乳動物細胞、例えばHeLa、ジャーカット細胞、BHK細胞、マウス幹細胞、未分化筋芽細胞、及び分化筋管から精製されたリボソームとを混合することに依拠した、高度に適応可能なインビトロ系を設計した。
このような再構成されたインビトロ溶解液は親RRLの高い効率を保持し、かつ、リボソームが単離された細胞に観察される翻訳特徴を再現する。
興味深いことに、本発明者らは、所与の細胞型に由来するリボソームの添加は、生細胞に見られる翻訳特徴を付与するのに十分であることを示した。従って、本発明者らは、キャップ/ポリ(A)相乗作用、IRESにより駆動される翻訳の選択的利点、及び特に、いくつかの細胞型及びいくつかの特殊なmRNAに観察される細胞指向性を再現した。例えば、本発明者らは、細胞分化によって活性化されるmRNAの翻訳刺激を再現した。
本発明者らはさらに、本発明の系がまた、リボソーム沈渣に通常会合している内因性タンパク質がRNA干渉によって除去されたインビトロ翻訳アッセイの調製に使用され得ることを示した。
この系の別の興味深い特徴は、対象のタンパク質をコードするDNA構築物(例えばcDNAを含むプラスミド)を用いて以前にトランスフェクトされた真核細胞からリボソームを得ることができ、よって、DNAからmRNAへの転写は、in celluloで、インビトロの転写手順を経る必要なく起こることである。この実施態様において、mRNAは細胞内でリボソームと接触しているので、リボソームは、mRNAと一緒に単離される。本発明のインビトロ翻訳系のこの実施態様の利点は、それがインビトロ転写工程をスキップし、かつ、その天然環境で合成及びプロセシングされた転写物の翻訳の研究を可能とすることである。
この系のさらに別の特徴は、リボソームを、ウイルスに感染した真核細胞から得ることができ、よって、宿主細胞において合成及びプロセシングされたウイルス転写物の翻訳の研究を可能とすることである。リボソームはまた、ウイルス、細菌又は原虫に感染した真核細胞から得ることができ、よって、該真核細胞からの遺伝子の発現に対するこれらの感染の効果の研究を可能とする。
リボソームはまた、健康又は病気の器官又は組織から得られた真核細胞から得ることができ、よって、これらの特殊な器官及び組織において合成及びプロセシングされた転写物の翻訳の研究を可能とする。
本発明者らはまた、本発明のインビトロ翻訳系は少量のRNAを用いてさえ効率的であることを示した。実際に、0.14fmol(すなわち、0.14×10−15mol)という微量でも、効率的な翻訳を可能とする。対照的に、哺乳動物細胞からの抽出物に基づいた他のインビトロ翻訳系、特に、Pierce Biotechnology Inc.によって市販されている系を用いると、0.14fmolのRNAを翻訳アッセイに使用した場合に翻訳は全く検出されない。
従って、この系の別の特徴は、対象の真核細胞において産生されかつ対象の真核細胞からリボソームと一緒に単離された、RNAからの対象の真核細胞の能動的に翻訳されたトランスクリプトームを分析することを可能とすることである。
発明の要約
その最も広い態様において、本発明は、リボソームが除去された赤血球溶解液、及び真核細胞から単離されたリボソームを含む、新規な無細胞翻訳系に関し、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
本発明はまた、対象のタンパク質を生成するためにこの新規な無細胞翻訳系を使用した方法、並びに、インビトロ翻訳系を生成するための、リボソームが除去された赤血球溶解液、及び真核細胞から単離されたリボソームの使用に関し、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
本発明はまた、
a)対象の真核細胞において生成されるRNAが、リボソームと一緒に単離されることを可能とする条件下で、対象の真核細胞からリボソームを単離する工程;
b)工程a)でリボソームと共に単離されたRNAから対応するアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液及び(ii)工程a)において対象の真核細胞から単離されたリボソーム及びRNAを含む、翻訳系をインキュベートする工程、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された対象の真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された対象の真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない;及び
c)工程b)で得られたアミノ酸配列を同定及び場合により定量する工程
を含む、対象の真核細胞の能動的に翻訳されたトランスクリプトームをインビトロで分析するための方法に関する。
さらに、本発明は、リボソームが除去された赤血球溶解液及び真核細胞から単離されたリボソームを含む、RNAから対象のタンパク質へとインビトロで翻訳するためのキットに関する。
発明の詳細な説明
本発明のこれら及び他の目的、特色及び利点は、以下の詳細な説明において開示されるだろう。
リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法
第一の態様によると、本発明は、リボ核酸鋳型から対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法に関し、該方法は、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含む、翻訳反応混合物を使用し、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
1つの実施態様において、本発明は、リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法を提供し、該方法は、
プレa)(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含む、翻訳反応混合物を場合により調製する工程、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない;
a)工程(プレa)で定義された翻訳反応混合物を、
(i)リボ核酸鋳型(RNA);又は
(ii)(i)対象のアミノ酸配列をコードするDNA、及び(ii)該DNAをリボ核酸鋳型に転写するために必要な要素を含む、転写反応混合物
と接触させて翻訳系を形成する工程;
b)(a)の翻訳系を、リボ核酸鋳型から対象のアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間かけてインキュベートする工程
を含む。
より特定すると、1つの実施態様において、本発明は、リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法を提供し、該方法は、
a)(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含む、翻訳混合物を、(ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない):
(i)リボ核酸鋳型(RNA);又は
(ii)(i)対象のアミノ酸配列をコードするDNA、及び(ii)該DNAをリボ核酸鋳型に転写するために必要な要素を含む、転写反応混合物
と接触させて翻訳系を形成する工程;及び
b)(a)の翻訳系を、リボ核酸鋳型から対象のアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間かけてインキュベートする工程
を含む。
別の実施態様において、本発明は、リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法を提供し、該方法は、
プレa)(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含む、翻訳反応混合物を調製する工程、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない;
a)工程(プレa)で定義された翻訳反応混合物を、
(i)リボ核酸鋳型(RNA);又は
(ii)(i)対象のアミノ酸配列をコードするDNA、及び(ii)該DNAをリボ核酸鋳型に転写するために必要な要素を含む、転写反応混合物
と接触させて翻訳系を形成する工程;
b)(a)の翻訳系を、リボ核酸鋳型から対象のアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間かけてインキュベートする工程
を含む。
典型的には、工程(b)は少なくとも15分間、好ましくは少なくとも30分間、望ましい順に少なくとも60分間、75分間、90分間、120分間、150分間行なわれる。さらに、工程(b)は好ましくは約30℃〜約37℃で、より好ましくは30℃で行なわれる。
工程(a)(i)で使用されるリボ核酸鋳型は、公知の方法に従って当業者によって容易に生成され得る。例えば、RNA鋳型は、化学合成によって又はインビトロ転写によって生成され得る。それはまた、精製された天然鋳型であってもよい。
RNA鋳型がポリ(A)テイルを有さなければならない場合、RNA鋳型のポリ(A)テイルはDNAコード配列中にコードされ得、これは転写されて規定の長さのポリ(A)テイルを有するRNA鋳型が生成され得る。ポリ(A)テイルを生成するための代替的な方法は、インビトロ反応におけるポリ(A)ポリメラーゼの使用であり、これにより、テイルが鋳型に転写後修飾として加えられる。
5’キャップ部分は、当業者に周知のプロトコールに従ってRNAポリメラーゼによってRNA鋳型に転写と同時に付加され得る。鋳型が精製された天然RNA鋳型である場合には、キャップ構造はすでに所定の場所にある。
別の実施態様において、該方法を実施するために使用されたリボソームは、対象のタンパク質をコードするDNA(DNAは例えばcDNA又は遺伝子であり得る)を用いて以前にトランスフェクトされた真核細胞から得られる。転写はin celluloで起こり、翻訳は細胞内で開始されるので、mRNAはリボソームと接触している。従って、リボソームはmRNAと一緒に単離される。
それ故、1つの実施態様において、本発明は、リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法に関し、該方法は、
プレa)対象のアミノ酸配列をコードするDNAを真核細胞にトランスフェクトする工程、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない;
a)トランスフェクトされた真核細胞がRNA転写を行ない、翻訳を開始することを可能とするのに十分な時間の後、対象のアミノ酸配列をコードするDNAから生成されたRNAが、リボソームと一緒に単離されることを可能とする条件下で、工程(プレa)のトランスフェクトされた細胞からリボソームを単離する工程;及び
b)(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)工程(a)において真核細胞から単離されたリボソーム、を含む翻訳系を、リボ核酸鋳型から対象のアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間、インキュベートする工程
を含む。
トランスフェクトされた真核細胞がRNA転写を行ないかつ翻訳を開始するのを可能とするために、細胞を、一般的に、トランスフェクション後、少なくとも12時間から48時間、好ましくは36時間培養する。
リボソームに連結されたRNAを単離するために、細胞溶解中、その後のリボソーム画分再懸濁中にリボヌクレアーゼ阻害剤を加えることがより良い(しかしながら、緩衝液がリボヌクレアーゼを含まない条件で調製され、全てのリボソーム精製工程が4℃で実施される場合には、リボヌクレアーゼ阻害剤は必然的に必要とされない)。リボソームに連結されたmRNAを単離する方法は当業者には周知である。
典型的には、工程(b)は好ましくは約30℃で、少なくとも15分間、好ましくは少なくとも30分間、望ましい順に少なくとも60分間、75分間、90分間、120分間、150分間実施される。さらに、工程(b)は好ましくは約30℃から約37℃、より好ましくは30℃で実施される。
本発明に従ってリボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法の異なる実施態様は、慣用的にバッチ系を使用することによって実施され得る。あるいは、それらは、様々なすでに公知の又は通常の方法、例えばフロー法を使用することによって実施され得、翻訳反応混合物の成分をはじめとする材料は連続的に供給されるか、又は反応産物が時折取り出される。
リボソームが除去された赤血球溶解液と真核細胞から単離されたリボソームとを含む、混合物の使用
第二の態様によると、本発明は、ペプチドをインビトロで生成するための、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含む、翻訳反応混合物の使用に関し、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
第三の態様によると、本発明は、翻訳反応混合物を生成するための、リボソームが除去された赤血球溶解液及び真核細胞から単離されたリボソームの使用に関し、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
無細胞翻訳反応系
第四の態様によると、本発明は、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含む、RNAをタンパク質へとインビトロで翻訳するための無細胞翻訳反応系に関し、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
能動的に翻訳されたトランスクリプトームを分析するための方法
第五の態様によると、本発明は、
a)対象の真核細胞において生成されるRNAが、リボソームと一緒に単離されることを可能とする条件下で、対象の真核細胞からリボソームを単離する工程;
b)工程a)でリボソームと共に単離されたRNAから対応するアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液及び(ii)工程a)において対象の真核細胞から単離されたリボソーム及びRNAを含む、翻訳系をインキュベートする工程、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された対象の真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された対象の真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない;及び
c)工程b)で得られたアミノ酸配列を同定及び場合により定量する工程
を含む、対象の真核細胞の能動的に翻訳されたトランスクリプトームをインビトロで分析するための方法に関する。
本明細書において使用される「能動的に翻訳されたトランスクリプトーム」という用語は、リボソームと会合し、それ故、翻訳されるプロセスにある、細胞中のmRNAのセットを指す。
工程b)で得られたアミノ酸配列を同定及び場合により定量する工程c)は、当業者に周知の任意の技術、例えば質量分析法、特に液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC/MS/MS);ペプチドマスフィンガープリンティング;又は少なくとも部分的なアミノ酸シークエンス、特にエドマン分解によって実施され得る。好ましくは、アミノ酸配列は、質量分析法によって工程c)において同定及び場合により定量される。
分析法の工程b)においてインキュベートされた翻訳系は、好ましくは、RNAからアミノ酸配列への適切な翻訳を達成するのに必要とされる全ての必要な成分を含む。このような必要な成分は当業者には周知であり、典型的にはtRNA及びアミノアシル−tRNAシンテターゼ、開始因子、伸張因子、及び終結因子、シャペロン、フォルダーゼ、アミノ酸(例えば天然、非天然、標準及び/又は非標準アミノ酸)、エネルギー源(例えばヌクレオチド三リン酸、例えばATP、GTP)、エネルギー発生系(例えばクレアチンリン酸及びクレアチンホスホキナーゼ、ミオキナーゼ)、及び塩(Mg2+、Kなど)が挙げられる。従って、好ましい実施態様において、工程b)でインキュベートされた翻訳系はさらに、少なくとも1つのtRNA、少なくとも1つのアミノアシル−tRNAシンテターゼ、少なくとも1つの開始因子、少なくとも1つの伸張因子、少なくとも1つの終結因子、少なくとも1つのシャペロン、少なくとも1つのフォルダーゼ、少なくとも1つのアミノ酸、少なくとも1つの標識アミノ酸、少なくとも1つのエネルギー源、少なくとも1つのエネルギー発生系、及び塩からなる群より選択された少なくとも1つの要素を含む。
特に好ましい実施態様において、工程b)でインキュベートされた翻訳系はさらに、少なくとも1つの標識アミノ酸、例えば放射標識アミノ酸([35S]−メチオニン、[35S]−システイン、[H]/[14C]/[15N]−アミノ酸など)、光反応性アミノ酸(例えばジアジリンを基材としたアミノ酸類似体)、又はビオチニル化アミノ酸を含む。より好ましくは、工程b)でインキュベートされた翻訳系はさらに、放射標識アミノ酸、特に[14C]−アミノ酸及び/又は[15N]−アミノ酸を含む。
有利には、特定の実施態様において、本発明による分析法は、無細胞条件下でビオチニル化ピューロマイシンの、新たに合成されたタンパク質への取り込み、その後のストレプトアビジン親和性の取り込み、及び液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析に基づいた、Aviner et al. (2013) Genes & Dev. 27:1834-1844に記載のようなピューロマイシン結合新生鎖プロテオミクス(PUNCH−P)を使用することができる。
従って、好ましい実施態様において、工程b)でインキュベートされた翻訳系はさらに、ビオチニル化ピューロマイシン、例えばStarck et al. (2004) Chem. & Biol. 11:999-1008に記載のような5’ビオチン−dC−ピューロマイシン3’などを含む。この特定の実施態様において、本発明の方法は好ましくはさらに、工程b)で得られたピューロマイシン標識アミノ酸配列を、固定されたストレプトアビジン上に捕捉する工程b’)を含む。この特定の実施態様において、工程b’)で捕捉されたアミノ酸配列は、好ましくは、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法によって工程c)で同定及び場合により定量される。
能動的に翻訳されたトランスクリプトームの上記の分析法は特に有益である。なぜなら、それらは、ハイスループット法の形態で実施され得るからである。
本発明によるキット
第六の態様によると、本発明は、上記の方法及び使用において有用であるキットに関する。このようなキットは、別々の容器に又は同じ容器に、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、及び場合により(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含み、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない。
場合により、該キットは、別々の容器に又は同じ容器に、
− 少なくとも1つのtRNA;
− 少なくとも1つのアミノアシル−tRNAシンテターゼ;
− 少なくとも1つの開始因子;
− 少なくとも1つの伸張因子;
− 少なくとも1つの終結因子;
− 少なくとも1つのシャペロン;
− 少なくとも1つのフォルダーゼ;
− 少なくとも1つのアミノ酸(例えば天然、非天然、標準及び/又は非標準アミノ酸);
− 少なくとも1つの標識アミノ酸、例えば放射標識アミノ酸;
− 少なくとも1つのエネルギー源(例えばヌクレオチド三リン酸、例えばATP、GTP);
− 少なくとも1つのエネルギー発生系(例えばクレアチンリン酸及びクレアチンホスホキナーゼ、ミオキナーゼ);
− 塩(Mg2+、Kなど);
− 緩衝溶液(細胞溶解緩衝液、リボソーム再懸濁緩衝液、翻訳緩衝液として使用される網状赤血球上清)
− リボソーム沈渣再懸濁のための乳棒
からなる群より選択された少なくとも1つの要素を含む。
本発明によるキットはさらに、別々の容器に又は同じ容器に、少なくとも1つのビオチニル化ピューロマイシン及び場合により少なくとも1つの固定されたストレプトアビジンを含み得る。
本発明はまた、別々の容器に又は同じ容器に、
・リボソームが除去された赤血球溶解液、並びに
・以下からなる群より選択された少なくとも1つの要素
− 少なくとも1つの標識アミノ酸、
− 少なくとも1つのビオチニル化ピューロマイシン、及び
− 少なくとも1つの固定されたストレプトアビジン
を含む、対象の真核細胞の能動的に翻訳されたトランスクリプトームを分析するためのキットに関する。
本発明によるキットはまた、所与のRNA鋳型を含む対照試料を含み得る。本発明によるキットはさらに、(i)RNAをアミノ酸配列へと翻訳する際の、及び/又は(ii)翻訳反応混合物を生成する際の該キットの使用説明書を含み得る。
該キットはまた、対象のDNAを対応するRNAへと転写するための手段を含み得る。これらの手段は、特に、ベクター又はプラスミド(対象のDNAはプロモーターの制御下になるようにクローニングされ得る)、適切なRNAポリメラーゼ、rCTP、rATP、rUTP、rGTP、及び適切な緩衝液系を含む。この実施態様において、該キットは、共役した転写/翻訳反応を実施するのに適している。好ましくは、対象のDNAを転写するための手段は、リボソームが除去された網状赤血球溶解液及び真核細胞から単離されたリボソームを含む容器に含まれない。
開示された実施態様のいずれか1つに従って、本発明の第1から第6の態様の1回目の実施において、リボソームが単離された真核細胞(ii)は、網状赤血球ではない。
開示された実施態様のいずれか1つ又は1回目の実施に従って、本発明の第1から第6の態様の2回目の実施において、リボソームが除去された赤血球溶解液(i)は、ウサギ赤血球、好ましくはウサギ網状赤血球から得られる。
開示された実施態様のいずれか1つ又は1回目若しくは2回目の実施に従って、本発明の第1から第6の態様の3回目の実施において、リボソームが単離された真核細胞(ii)はヒト細胞であり、好ましくは該ヒト細胞は赤血球ではない。
開示された実施態様のいずれか1つ又は1回目から3回目のいずれか1つの実施に従って、本発明の第1から第6の態様の4回目の実施において、リボソームが除去された赤血球溶解液(i)は、網状赤血球に含まれる内因性mRNAを除去するためにヌクレアーゼ(例えばカルシウムで活性化されるS7ミクロコッカスヌクレアーゼ)を用いて処理された赤血球溶解液から得られる。
定義:
「アミノ酸配列」は、任意の種類の天然及び非天然ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を意味する。
本明細書において使用される「天然」という用語は、「標準」アミノ酸(すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)、並びに/又は「非標準」アミノ酸、例えばピロリシン、セレメチオニン、及びセレノシステイン(特定の条件において、セレノシステインはUGAコドンによってコードされている)を含む、アミノ酸配列を意味する。天然アミノ酸は、左旋性又は右旋性光学異性体の形態であり得る。
本明細書において使用される「非天然」という用語は、少なくとも1つの修飾された天然アミノ酸、例えば修飾された非荷電アミノ酸、修飾された酸性アミノ酸、修飾された塩基性アミノ酸、非α−アミノ酸、ニトロ、アミジン、ヒドロキシアミン、キノン、脂肪族化合物からなる群より選択された官能基を有するアミノ酸、アミノ酸残基、例えばp−フルオロフェニルアラニン、p−ニトロフェニルアラニン、又はホモフェニルアラニンを有する、アミノ酸配列を意味する。非天然アミノ酸は、左旋性又は右旋性光学異性体の形態であり得る。
「翻訳反応混合物」という表現は、RNAからアミノ酸配列への適切な翻訳を達成するのに必要とされる全ての必要な成分を含む。
インビトロでの翻訳に必要とされる全ての成分は当業者には周知であり、Soto et al. (Nucleic Acids Res., 35(18): e121, 2007)、Pelham HR及びJackson RJ (Eur. J. Biochem., 67(1): 247-256, 1976)、並びにRau M et al.(Methods Mol. Biol., 77: 211-226, 1998)によって記載されている。それらは、tRNA及びアミノアシル−tRNAシンターゼ、開始因子、伸張因子、及び終結因子、シャペロン、フォルダーゼ、アミノ酸(例えば天然、非天然、標準、及び/又は非標準アミノ酸)、エネルギー源(例えばヌクレオチド三リン酸、例えばATP、GTP)、エネルギー発生系(例えばクレアチンリン酸及びクレアチンホスホキナーゼ、ミオキナーゼ)、及び塩(Mg2+、Kなど)を含む。翻訳反応混合物は、好ましくは、緩衝液系(約pH7.3)を含む。
場合により、翻訳反応混合物は、翻訳されたアミノ酸配列の検出を助けるための、標識アミノ酸、例えば放射標識アミノ酸([35S]−メチオニン、[35S]−システイン、[H]/[14C]/[15N]−アミノ酸など)、光反応性アミノ酸(例えばジアジリンを基材としたアミノ酸類似体)、ビオチニル化アミノ酸を含み得る。
本発明の翻訳系のリボソームの唯一の入手源は、真核細胞から単離されたリボソーム沈渣である。
好ましくは、リボソームを得るために使用される真核細胞(ii)は、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞、ウサギ細胞、げっ歯類(例えばマウス、ハムスター、モルモット及びラット)細胞、ウマ細胞、ウシ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞などである。好ましい実施態様において、リボソームはげっ歯類細胞又はヒト細胞から単離される。
哺乳動物細胞は、分化(成熟)細胞又は未分化細胞、例えば成体細胞又は胚幹細胞、及び前駆細胞であり得る。
リボソームを得るために使用される真核細胞(ii)は、真核細胞系から又は器官若しくは組織から得ることができる。特に、リボソームを得るために使用される真核細胞(ii)は、脊椎動物、特に哺乳動物の器官又は組織、例えば脳、心臓、肝臓、又は肺から得ることができる。
リボソームを得るために使用される真核細胞(ii)は、健康な又は病気の真核細胞系、器官、又は組織から得ることができる。特に、リボソームを得るために使用される真核細胞(ii)は、腫瘍、転移、又は生検試料から得ることができる。該真核細胞はまた、ウイルス、細菌又は原虫に感染した真核細胞であり得る。
リボソームはまた、無脊椎動物、例えばショウジョウバエ及びゼブラフィッシュ細胞及び酵母から得ることができる。
真核細胞は、望ましい細胞指向性及び/又は翻訳特徴に関して選択される。
本発明の文脈において、「単離された」又は「精製された」という用語は、その天然の環境から取り出され、単離又は分離され、それらが天然に会合している他の成分を全く含まない、生物学的分子を指す。
好ましくは、本発明による真核細胞から単離されたリボソームは、これらの真核細胞の細胞質抽出物から、より好ましくはこれらの真核細胞のS10上清抽出物から単離される。
特に、リボソームを得るために使用される真核細胞(ii)が脊椎動物の器官又は組織から得られる場合、該真核細胞から単離されたリボソームは好ましくは、該脊椎動物の器官又は組織の全抽出物から単離される。
好ましくは、本発明による真核細胞から単離されたリボソームは、少なくとも70〜95重量%純粋なリボソーム(場合によりRNA及び/又はリボソーム会合タンパク質と会合している)、好ましくは少なくとも75重量%純粋なリボソーム(場合によりRNA及び/又はリボソーム会合タンパク質と会合している)、さらに好ましくは少なくとも80重量%、85重量%、又は90重量%純粋なリボソーム(場合によりRNA及び/又はリボソーム会合タンパク質と会合している)、最も好ましくは98重量%、99重量%又は100重量%純粋なリボソーム(場合によりRNA及び/又はリボソーム会合タンパク質と会合している)である。従って、リボソームを含む真核細胞からの細胞質抽出物、特に、リボソームを含む真核細胞のS10上清抽出物は、本発明による真核細胞から単離されたリボソームに対応しない。なぜなら、該抽出物は、他の真核生物タンパク質、特に、リボソーム会合タンパク質ではない他の真核生物タンパク質を含み、これらの抽出物に含まれるリボソームは、少なくとも70〜95重量%純粋なリボソーム(場合によりRNA及び/又はリボソーム会合タンパク質と会合している)、好ましくは少なくとも75重量%純粋なリボソーム(場合によりRNA及び/又はリボソーム会合タンパク質と会合している)、さらに好ましくは少なくとも80重量%、85重量%、又は90重量%純粋なリボソーム(場合によりRNA及び/又はリボソーム会合タンパク質と会合している)、最も好ましくは98重量%、99重量%、又は100重量%純粋なリボソーム(場合によりRNA及び/又はリボソーム会合タンパク質と会合している)を構成していないからである。
リボソームを精製/単離するための方法は当業者には公知である。リボソームを単離するための一般的な方法は、主に、サイズ及び密度に基づいて異なる細胞成分を分離するための細胞溶解液の分画遠心分離に基づく。しかしながら、分画遠心分離を実施するために使用される溶解緩衝液並びにスクロースクッションは、25mMから50nMのKClを含むことが非常に好ましいことを注記する。実際に、75mMを超えるKCl濃度では、翻訳効率は劇的に低下する。それ故、好ましくは、リボソームを単離するために一般的に使用される方法は、分画遠心分離を実施するために使用される溶解緩衝液及びスクロースクッションが、25mMから50nMを超えないKClを含むように改変されている。リボソームを単離するための方法の一例が、リボソームを精製するための典型的な方法を記載した記述の実施例1に開示されている。簡潔に言えば、真核細胞の沈渣が遠心分離によって生成され、その後、それを低張緩衝液(Hepes 10mM、CHCOK 10mM、(CHCOMg 1mM、DTT 1mMを含む緩衝液)に希釈し、ホモジナイズし、遠心分離にかけると(例えば16000gで10分間)、リボソームを含むS10上清抽出物が得られる。S10上清を、スクロースクッション(例えば溶解緩衝液中1Mのスクロース)を通して240000gで例えば2時間15分間遠心分離にかける。その後、スクロース溶液を除去し、得られた沈渣を、懸濁緩衝液(Hepes 20mM、NaCl 10mM、KCl 25mM、MgCl 1.1mM、β−メルカプトエタノール 7mMを含む緩衝液)に再懸濁する。
本発明の種々の態様の好ましい実施態様において、真核細胞から単離されたリボソームは、対象のタンパク質をコードするDNA(DNAは例えばcDNA又は遺伝子であり得る)を用いて先にトランスフェクトされた真核細胞から得られる。転写はin celluloで起こり、翻訳は細胞内で開始されるので、mRNAはリボソームと接触している。従って、リボソームはmRNAと一緒に単離される。
さらに、本発明の種々の態様の種々の実施態様において、リボソームが単離された真核細胞は、i)対象のRNA(例えばmRNA又はプレmRNA)を標的化するmiRNA若しくはsiRNA、又はii)該ノンコーディングRNAを発現しているDNAを用いて先にトランスフェクトされた真核細胞であり得、よって、対象のRNAは発現されない(例えば、対象のRNAがmRNAである場合、タンパク質の翻訳は起こらない)。従って、本発明の無細胞翻訳系は、少なくとも1つの内因性タンパク質、特に、翻訳制御に関与するリボソーム画分に会合したタンパク質がRNA干渉によって除去された真核細胞から単離されたリボソームを使用するインビトロでの翻訳アッセイのために使用され得る。
本発明の文脈において、「赤血球」という用語(本明細書において以後、「RBC」と略称する)は、全ての種類の赤血球細胞、特に成熟赤血球又は網状赤血球(未熟赤血球)を指す。好ましくは、赤血球は網状赤血球である。
赤血球は、任意の哺乳動物、例えばウサギ、ヒト、げっ歯類、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジなどから得ることができる。好ましくは、赤血球は、ヒト起源又はウサギ起源である。より好ましくは、赤血球はウサギの網状赤血球である。
「リボソームが除去された赤血球溶解液」という表現は、例えば超遠心分離によって処理され、よって、リボソームは沈渣状となり、溶解液の上清はリボソームを含まないような、赤血球溶解液を指す。
遠心分離の条件、例えばリボソームを沈渣状とするために必要とされる遠心力は、当業者には周知である。
非制限的な例を用いると、リボソームが除去された赤血球溶解液は、以下のように得ることができる:赤血球の溶解後、溶解液を240000gで2時間遠心分離にかけ、溶解液上清を回収する。
赤血球溶解液を得るための方法は、例えば、Hunt及びJackson (Hamatol Bluttransfus, 14: 300-307, 1974)並びにPelham及びJackson (Eur J Biochem., 67(1): 247-256, 1976)によって記載されている。
あるいは、リボソームが除去された赤血球溶解液がリボソームが除去されたウサギ網状赤血球溶解液である場合、リボソームが除去されたウサギ網状赤血球溶解液を得るために使用された網状赤血球の溶解液は、Life Technologies (Ambion(登録商標))又はPROMEGA(登録商標)によって市販されているウサギ網状赤血球溶解液であり得る。
赤血球溶解液を、網状赤血球に含まれる内因性mRNAを除去するためのヌクレアーゼ(例えばカルシウムで活性化されるS7ミクロコッカルヌクレアーゼ)で処理し得る。
本発明の種々の態様、実施態様及び実施の好ましい実施態様において、リボソームが除去された赤血球溶解液を得るために使用された赤血球溶解液は、ヌクレアーゼ(例えばカルシウムで活性化されるS7ミクロコッカルヌクレアーゼ)で処理されていないウサギ網状赤血球溶解液(本明細書においては以後、「URRL」と略称し、「処理されていないウサギ網状赤血球溶解液」を意味する)である。
本発明の文脈において、「DNAを真核細胞に導入する」という表現は、適切な条件下でDNAが発現されるように、DNA(遺伝子又は対応するcDNAの配列)を細胞に導入することを意味する。
DNAを細胞に導入するために、該細胞を、プラスミド、ベクター、特に発現ベクターを用いて形質転換、トランスフェクト、形質導入、若しくは感染させ得るか、又は、対象のDNA、AAV(「アデノ随伴ウイルス」)又は発現誘導システム(系誘導性TET OF/ON)を含む、ウイルスベクター、好ましくはレトロウイルスベクター、有利にはレンチウイルスベクターを用いて形質導入し得る。
DNA配列を生成するための、DNA配列をベクター若しくはプラスミドにクローニングするための、及びDNA配列を細胞に導入するための慣用的な分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術は、当技術分野における通常の技能を有する者には周知である。このような技術は文献に完全に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (本明細書においては「Sambrook et al., 1989」) ; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I及びII (D.N. Glover ed. 1985) ; Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984) ; Nucleic Acid Hybridization [B.D. Hames & S.J. Higgins eds. (1985)] ; Transcription and Translation [B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984)] ; Animal Cell Culture [R.I. Freshney, ed. (1986)] ; Immobilized Cells and Enzymes [IRL Press, (1986)] ; B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984) ; F.M. Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)を参照されたい。
「転写反応混合物」という表現は、DNAから対応するRNAへのインビトロでの転写を達成するのに必要とされる全ての必要な成分を含む組成物を指す。
インビトロでの転写は、プロモーター(例えば原核生物ファージプロモーター、例えばT7、T3若しくはSP6プロモーター、又は真核生物ウイルスプロモーター、例えばCMV、SV40プロモーター)を含有するDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸rCTP、rATP、rUTP、rGTP、緩衝液系、及び適切なRNAポリメラーゼを必要とする。インビトロでの転写を実施するのに必要とされる成分は当業者には周知であり、Ricci et al. (Nucleic Acids Res., 39(12): 5215-5231, 2011)に記載されている。
ジャーナル記事又は抄録、公開された特許出願、発行された特許又は任意の他の参考文献をはじめとする本明細書において引用された全ての参考文献は、引用された参考文献に提示された全てのデータ、表、図面、及び文章を含めて、本明細書への参照により全体が援用される。
本発明はさらに、以下の図面及び実施例によって説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いずれにしても本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
図1は、種々のインビトロ系の翻訳効率を示す。ウミシイタケルシフェラーゼの上流にβ−グロビン(A)及び(C)又はGAPDH(B)の5’UTRを有するキャップ化及びポリアデニル化されたインビトロで転写されたRNAを、以下のインビトロ系:処理されていないウサギ網状赤血球溶解液(URRL)、ヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液(RRL)、コムギ胚芽溶解液(WG)及びヒト無細胞系(HL)に、各パネル上に示された濃度で加えた。翻訳を30℃で30分間行ない、その後、実施例1に記載のようにウミシイタケ活性を決定した。結果は、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図2は、網状赤血球溶解液を分画するために使用された実験手順の図解表示である。簡潔に言えば、それは、示されたようにRRL又はURRLの超遠心分離によってリボソーム後の上清からリボソーム画分を単離することからなる。リボソーム画分Rurrl(URRLから得られる場合)又はRrrl(RRLから得られる場合)を、材料及び方法に記載のように緩衝液中に再懸濁し、Su(URRLから得られる場合)又はSr(RRLから得られる場合)を、再懸濁されたリボソーム画分と混合することによって、再構成された溶解液を構築する。 図3は、本発明のインビトロ翻訳系の翻訳効率を示す。上記の実験手順に従って、同質(Su+Rurrl;及びSr+Rrrl)又は異質(Su+Rrrl;Sr+Rurrl)の組合せを構築し、親溶解液(RRL及びURRL)と一緒にβ−グロビン−ウミシイタケmRNAの翻訳のために使用した。Su及びSrは、全くリボソームが添加されていない遠心分離後の網状赤血球の上清を示す。ルシフェラーゼ活性の数値は任意単位で示され、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図4は、リボソーム濃度の関数としての、本発明のインビトロ翻訳系の翻訳効率を示す。この図は、様々な濃度の懸濁されたリボソーム(0.01倍から0.5倍)を用いて構築された再構成されたURRL(Su+Rrrl)において翻訳されたβ−グロビン−ウミシイタケ構築物から得られた翻訳効率を示す。 図5は、混成の再構成された溶解液の生成の図解表示である。上記と同じ実験手順が、リボソーム画分を単離するために細胞抽出物に適用される。混成の再構成された系は、その後、再懸濁された細胞由来のリボソームと混合されたURRLに由来する上清(Su)を用いて構築される。 図6は、種々の細胞から単離されたリボソームを使用した、本発明のインビトロ翻訳系の翻訳効率を示す。(A)処理されていないRRLからのリボソーム後の上清(Su)を、図に示されているように、HeLa細胞(Rh)、ジャーカット(Rj)、RRL(Rrrl)、処理されていないRRL(Rurrl)又はコムギ胚芽(Rwg)から単離されたリボソームと組み合わせて使用した。その後、β−グロビン−ウミシイタケmRNAを、上記の全ての組合せ及び対照としての処理されていないRRLにおいて30分間かけて翻訳させた。ルシフェラーゼ活性の数値は任意単位で示され、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。(B)上記のように、マウス幹細胞から単離されたリボソーム(Rsc)もまた、処理されていないRRLからの上清と共に使用した。β−グロビン−ウミシイタケmRNAの翻訳を、30℃で30分間かけて行ない、その後、材料及び方法に記載のようにウミシイタケ活性を決定した。結果は、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図7は、本発明のインビトロ翻訳系を用いた、種々のレポーターmRNAの翻訳効率を示す。ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ及びGFPコード領域を含む、種々のレポーターmRNA構築物を、標識[35S]−メチオニンの存在下において混成系において翻訳させた。タンパク質産物を12%SDS−PAGE上で分離し、オートラジオグラフィーにかけた。新生合成されたポリペプチド及び分子量マーカーの位置が示されている。 図8は、Pierce(登録商標)のインビトロでの翻訳効率と、本発明による翻訳系のインビトロでの翻訳効率との比較を示す。グロビンウミシイタケレポーター構築物を種々の濃度で使用し、Pierce社(登録商標)によって市販されているHeLa細胞溶解液をベースとしたタンパク質発現系(Human In Vitro Protein Expression Kit - RNA (Pierce(登録商標)参照番号88857))、又は図面上に示されているような混成系を計画した。30分間のインキュベーションの終了時に、ルシフェラーゼの発現が決定され、二重に行なわれた2回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。下のパネルは結果を要約し、log尺度でプロットされている。 図9は、実施例4に使用されたRNAの図解表示を示し、キャップ及びポリ(A)の存在は+/+として示されている。 図10は、翻訳効率に対する、レポーターmRNAのキャッピング及びポリアデニル化の効果を示す。上記に示されたインビトロで転写されたRNAを使用して、図面上に示されているようにRRL、及び、URRL上清とHeLaから単離されたリボソームから構成される混成系(Su+Rh)を計画した。グロビン−ウミシイタケmRNAの翻訳は、30℃で30分間かけて行なわれ、その後、材料及び方法に記載のようにウミシイタケの活性が決定された。結果は、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして表現される。明瞭化のために、glo−/−を用いて得られた数値の拡大写真がグラフの下に挿入されている。 図11は、種々の無細胞合成系(「CFPS」)を用いての、IRESを含有するRNAの翻訳レベルの比較を示す。EMCV IRESがシストロン間スペーサーに挿入された二重ウミシイタケルシフェラーゼバイシストロニック構築物を、Su+Rh混成系、RRL、及びWG(コムギ胚芽)溶解液中で翻訳させた。ホタルルシフェラーゼ及びルシフェラーゼ活性の両方を、インキュベーションから30分後に決定し、別々のグラフに提示する。データは、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図12は、上記に示された構築物の翻訳からのホタルルシフェラーゼ及びウミシイタケルシフェラーゼの両方の生成を示したオートラジオグラムである。得られたmRNAを、図面上に示されているようにL−プロテアーゼの存在下、RRL(1及び2)又は混成系(3及び4)において発現させた。[35S]−メチオニンで標識されたレポーター遺伝子の位置を、図面の左手側に示す。 図13は、種々のKCl濃度で単離されたHelaリボソームと共に、i)IRESを含有するRNA(CrPV−ウミシイタケ)と、ii)β−グロビン5’UTRを含有するRNAの翻訳レベルの比較を示す。CrPV(左パネル)又はグロビン(右パネル)5’UTRを含有するRNA構築物からのルシフェラーゼ生成を、図面上に示されているような25mMから500mMの範囲の種々のKCl濃度の下で単離されたリボソーム沈渣を用いて構築された混成系において測定した。データは、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図14は、PV(ポリオウイルス)IRESの細胞指向性の再現の試験を示す。(A)ウミシイタケルシフェラーゼの上流にβ−グロビン又はポリオウイルスの5’UTRを含むインビトロで転写されたRNAを、RRL、又はHeLaリボソームを用いて構築された混成系(Su+Rh)において翻訳させた。結果は対照に対する%として表現され、この対照は、RRL及びSu+Rhの両方におけるグロビン−ウミシイタケ構築物について得られ、100%と設定された数値によって示される。(B)上記のインビトロで転写されたRNAを1時間かけてBHK細胞に電気穿孔し、その後、ルシフェラーゼ活性を決定した。結果は、100%と設定された対照(グロビン)に対する%として表現される。(C)上記のインビトロで転写されたRNAを、BHKリボソームを用いて構築された混成系(Su+Rbhk)において翻訳させた。結果を100%と設定された対照(グロビン)に対する%として表現する。結果は、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図15は、細胞分化の効果を混成系において模倣することができることを示す。(A)ウミシイタケルシフェラーゼの上流にβ−グロビン、GAPDH、又はユートロフィンの5’UTRを含むインビトロで転写されたキャップ化及びポリアデニル化RNAを、電気穿孔によって、示されているような未分化及び分化C2C12細胞にトランスフェクトした。RNAトランスフェクションから1時間後、細胞を溶解し、グロビン−ウミシイタケ(Glo)、GAPDH−ウミシイタケ(GAPDH)、又はユートロフィン−ウミシイタケ(Utro)mRNAの翻訳を、材料及び方法に記載のようなウミシイタケの活性の測定によって決定した。結果は、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。明瞭化のために、Utro構築物を用いて得られた数値の拡大写真をグラフの下に挿入した。(B)混成系を、未分化又は分化C2C12細胞から得られたリボソーム画分と、URRLからの上清(Su)とを用いて構築し、示されているようなGlo、GAPDH又はUtro mRNAの翻訳のために使用した。データは、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図16は、内因性タンパク質の効率的な除去を示す。(A)GFP(対照)又はDDX3タンパク質に対して指向されたShRNAで処理されたHeLa細胞のS10、S100及びリボソーム(C100)画分のウェスタンブロット分析。DDX3を認識する抗体を使用して膜をプローブした。(B)ウミシイタケルシフェラーゼの上流にβ−グロビン又はHIV−1 5’UTRを含むインビトロで転写されたキャップ化及びポリアデニル化RNAを、示されているように対照又はShDDX3で処理されたHeLa細胞に電気穿孔によってトランスフェクトした。RNAトランスフェクションから1時間後、細胞を溶解し、グロビン−ウミシイタケ(Glo)又はHIV−1−ウミシイタケ(HIV)mRNAの翻訳を、材料及び方法に記載されているようなウミシイタケ活性の測定によって決定した。結果は、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。(C)混成系を、対照又はShDDX3細胞から得られたリボソームと、URRLからの上清(Su)とを用いて構築し、示されているようにGlo及びHIV−1ウミシイタケ−ルシフェラーゼmRNAの翻訳のために使用した。データは、3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図17は、対応するcDNAを用いてトランスフェクトされた細胞によってin celluloで生成されたRNAからの翻訳を示す。(A)RNA合成のために使用された経路の図解表示。(B)500ng、6μg又は12μgのβ−グロビン−ウミシイタケcDNAのトランスフェクションから得られた細胞質RNAの定量RT−PCRによる定量。(C)混成系は、500ng、6μg又は12μgのグロビンウミシイタケcDNA(示されているような)を用いて前以てトランスフェクトされたHeLa細胞から単離されたリボソームとSuとを混合することによって得られた。一旦氷上で構築されると、該混合物を30分間インキュベートし、その後、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果は3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図18は、使用された種々の系によって達成された翻訳レベルを示す(インビボでウサギ網状赤血球溶解液を用いて、エクスビボで、本発明の「混成系」を用いて)。(A)ウミシイタケルシフェラーゼの上流にβ−グロビン又はc−myc 5’UTRを含むキャップ化及びポリアデニル化されたインビトロで転写されたRNAをRRLに加えた。翻訳は30℃で30分間行われ、その後、材料及び方法に記載のようにウミシイタケの活性を決定した。(B)ウミシイタケルシフェラーゼの上流にβ−グロビン又はc−myc 5’UTRをコードするcDNAを、HeLa細胞にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクトから36時間後に溶解し、ウミシイタケの活性を決定した。(C)グロビン又はc−myc 5’UTR(示されているような)によって駆動されるウミシイタケルシフェラーゼをコードするcDNAを用いて前以てトランスフェクトされたHeLa細胞から単離されたリボソームと混合されたSuから構成された混成系。一旦氷上で構築されると、該混合物を30分間インキュベートし、その後、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果は3回の独立した実験の平均値+/−SDとして提示される。 図19は、HeLa細胞、ジャーカット細胞、又は幹細胞から得られたリボソームを使用して達成された翻訳レベルと比較した、種々のマウスの器官及び組織(脳、肺、肝臓、及び心臓)から得られたリボソームを使用して達成された翻訳レベルを示す。 図20は、本発明の翻訳系を使用して、mRNAと、インフルエンザウイルスに感染したA549細胞から得られたリボソーム(RA549−PR8)又は感染していないA549細胞から得られたリボソーム(RA549)から翻訳されたウイルスタンパク質の電気泳動による検出を示す。
実施例1:材料及び方法
DNA構築物
グロビン、GAPDH、PV、HIV1、c−myc 5’UTR、EMCV、CrPV、及びユートロフィン5’UTRが、p0−glo−ウミシイタケ、p0−GAPDH−ウミシイタケ、p0−EMCV−ウミシイタケ、p0−PV−ウミシイタケ、p0−HIV1−ウミシイタケ、p0−CrPV−ウミシイタケ(Soto Rifo et al., Nucleic Acids Res., 35(18): e121, 2007; Soto-Rifo et al., Nucleic Acids Res., 2011; Soto-Rifo et al., Embo. J., 31(18): 3745-3756, 2012)、c−myc pRMF(Evans et al., Oncogene, 22(39): 8012-8020, 2003)、pGL4.14CMV 5’UTR mユートロフィン(Miura et al., J. Biol. Chem., 280(38): 32997-33005, 2005)を使用して、それぞれPvuII制限酵素部位及びT7プロモーター及びHpaI制限酵素部位(センスプライマーのための)及びBamHI制限酵素部位(アンチセンスプライマーのための)を含有する特異的プライマーを使用してPCRによって得られた。PCR産物を消化し、以前にそれぞれPvuII及びBamHI又はHpaI及びBamHI制限酵素によって消化しておいたp1−ウミシイタケ及びpCDNA3.1−ウミシイタ骨格ベクターにクローニングした。pCDNA3.1ベクターをCMVプロモーターの後で改変して、5’UTRの上流に付加されるヌクレオチドの数を最小限とした。+1の転写部位の位置を、cDNA末端の迅速な増幅によって制御した(RACE)(Ambiconキット)。P1−バイシストロニック構築物を、単純な消化物のp0−β−グロビン−ホタルベクター(AflII制限酵素部位)、及びp1−EMCV−ウミシイタケを使用してPCRによって得られたEMCV−ウミシイタケ挿入断片の組合せを用いてクローニングした。
pRS−sh対照及びpRS−shDDX3ベクターを、業者の説明書に従って、それぞれ、pRetroSuperベクター(OligoEngine)のBglII/HindIII部位の間への

の挿入によって生成した。
インビトロにおける転写
RNAを、ポリアデニル化RNAについてはAflII部位又は非ポリアデニル化RNAについてはEcoRV部位のいずれかにおいて鎖状化された鋳型から、T7 RNAポリメラーゼを使用して転写した。キャップされていないRNAは、転写緩衝液(40mM トリスHCl(pH7.9)、6mM MgCl、2mM スペルミジン及び10mM NaCl)中、鎖状DNA鋳型 1μg、20UのT7 RNAポリメラーゼ(Promega)、40UのRNAsin(promega)、1.6mMの各リボヌクレオチド三リン酸、3mMのDTTを使用することによって得られた。キャップされたmRNAについては、rGTP濃度を0.32mMに低下させ、1.28mMのmGpppGキャップ類似体(New England Biolabs)を加えた。転写反応を37℃で2時間実施し、mRNAを、2.5Mの最終濃度の酢酸アンモニウムを用いて沈降させた。その後、RNA沈渣を、リボヌクレアーゼを含まない水 30μLに再懸濁し、RNA濃度を、ナノドロップ技術を使用して吸光度によって決定した。RNAの完全性は、非変性アガロースゲル上での電気泳動によって確認された。
細胞培養及び核酸のトランスフェクション
Hela細胞、C2C12細胞、BHK細胞及びジャーカット細胞は当初、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から入手した。マウス幹細胞は、Aubert博士(IGF-Lyon, France)によって親切にも寄贈された。
Hela細胞、BHK細胞及びC2C12細胞は、典型的には、5%COを含有する加湿雰囲気下、37℃で、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン(PS)の補充された10%ウシ胎児血清(FSC)を含有するDMEM中で増殖させた。C2C12分化は、2%ウマ血清を含有するDMEMによって誘導される。ジャーカット細胞は、5%COを含有する加湿雰囲気下、37℃で、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、10mMのHepes(pH7.2〜7.5)、2mMのL−グルタミン、及び1mMのピルビン酸の補充された10%FCSを含有する(RPMI)中で増殖させた。マウス幹細胞は、7.5%COを含有する加湿雰囲気下、37℃で、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、1%MEM非必須アミノ酸(Gibco)、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのL−グルタミン、40μMのβ−メルカプトエタノール、及び白血病抑制因子(LIF)(Chemicon)400μLの補充された10%FCSを含有するGMEM中で増殖させた。DDX3ノックダウンのための、Hela細胞の安定なクローンは、1μg/mLのピューロマイシン、10%FCS及び1%PSの補充されたDMEM増殖培地中で維持及び選択されたpRS−sh対照又はpRS−shDDX3ベクターをトランスフェクトすることによって得られた。
DNAのトランスフェクション
Hela細胞を、製造業者によって明記されているような陽イオン性ポリマー(Polyplus製のJetPEI)を使用して、1.5×10個の細胞を含有する175cmあたり500ng、6μg、又は12μgの対象プラスミドDNAを含有する全DNA 12μgを用いてトランスフェクトした。細胞を、トランスフェクションから24時間後から48時間後までに溶解し、ルシフェラーゼ活性を決定するか、又は原稿(以下参照)に示されているようにリボソームを沈渣化及び単離した。
RNAのトランスフェクション
Hela細胞、C2C12細胞及びBHK細胞を、業者の指示に従って、Neon(商標)システム(life technology)を用いて10個の細胞に対してインビトロで合成されたmRNA(以下参照)100ngを用いて電気穿孔した。細胞をトランスフェクションから1時間後に溶解し、ルシフェラーゼ活性を決定した。
リボソーム精製
全ての以下の工程は4℃で実施された。
S10の調製:10個の細胞の沈渣を、等容量の溶解緩衝液(緩衝液R:Hepes 10mM、CHCOK 10mM、(CHCOMg 1mM、DTT 1mM)に希釈した。細胞懸濁液をポッターによってホモジナイズし、16000gで10分間遠心分離にかけると、S10上清抽出物が得られた。
リボソーム画分:S10調製物 300μlをスクロースクッション(緩衝液R中1Mのスクロース)を通して240000gで2時間15分間遠心分離にかけた。スクロース溶液の除去後、得られた沈渣を緩衝液R2中で穏やかに濯ぎ、緩衝液R2(緩衝液R2:Hepes 20mM、NaCl 10mM、KCl 25mM、MgCl 1.1mM、β−メルカプトエタノール 7mM)中に再懸濁し、−80℃で保存した。
網状赤血球溶解液の分画:URRL/RRL 1mlの遠心分離後、リボソーム後の上清950μlを回収し、凍結させ、−80℃で保存した。リボソーム沈渣を緩衝液R2中で濯ぎ、上記のように緩衝液R2に再懸濁した。
URRLの調製及びインビトロにおける翻訳アッセイ
使用された方法は、記載(Soto Rifo et al., Nucleic Acids Res., 35(18): e121, 2007)のものと同一であり、以下のように簡潔に要約され得る:処理されていないRRL(URRL)1mlに、25μMのヘミン(Fluka)、クレアチンホスホキナーゼ(Sigma Aldrich)25μg、クレアチンリン酸(Fluka)5mg、ウシ肝臓tRNA(Sigma Aldrich)50μg、及び3mMのD−グルコース(Sigma Aldrich)を補充した。
混成系の再構成のために、図面上に示されているようなRRL又はURRLから単離されたS100上清5μlを、培養細胞(HeLa細胞、ジャーカット細胞、BHK細胞、C2C12細胞、マウス幹細胞)又は網状赤血球溶解液(RRL又はURRL)から得られたC100 1μgと混合した。
インビトロで転写されたRNAを、75mMのKCl、0.75mMのMgCl、20μMのアミノ酸混合物の補充された溶解液 10μlの最終容量(粗製又は図に示されているように再構成)中で、図の説明文に特記されていなければ2.7nMで翻訳させた。翻訳反応液は30℃で30分間インキュベートしたままとし、その後、反応をウミシイタケ溶解緩衝液(Promega)の添加によって停止する。適切であれば、[35S]−メチオニンで標識された放射性タンパク質を、メチオニンを差し引いた20μMのアミノ酸混合物及び5μCiの[35S]−メチオニン(Perkin Elmer)の存在下で30分間翻訳させ、その後、反応をSDSローディング緩衝液の添加によって停止した。
L−プロテアーゼの調製
口蹄疫ウイルス(FMDV)からのL−プロテアーゼ又は対照のためのGFPを、以前に記載されているように(Ohlmann et al., RNA, 5(6): 764-778, 1999)RRLを使用してインビトロでの翻訳によって生成し、0.1μl(溶解液の最終容量10μlあたり)を加え、30℃で10分間インキュベートし、その後、翻訳反応を開始した。
ウェスタンブロット
試料を、10%又は12%SDS−PAGE上で分離し、PVDF膜に転写し、抗DDX抗体(Abcam)、抗elF4G抗体(Simon Morley博士, University of Sussex, United Kingdomにより親切にも提供された)を使用してブロットした。
ウミシイタケの活性
ウミシイタケの活性を、Mithras(Berthold technologies)において基質 50μlの注射及び10秒間のシグナル積分プログラムを用いてウミシイタケルシフェラーゼアッセイシステム(Promega Co, Madison, WI, USA)を使用して測定した。
RNA抽出及びRT−qPCR
細胞質RNA抽出及びRT−qPCRを、先に記載されているように(Ricci et al., Nucleic Acids Res., 39(12): 5215-5231, 2011)実施した。
実施例2:いくつかのCFPSにおける翻訳効率の比較
インビトロ翻訳系の多様性から、本発明者らは、最も一般的に使用されているもの、例えばウサギ網状赤血球(S7ヌクレアーゼで処理されている又は処理されていない)、コムギ胚芽、及びHeLa細胞抽出物から調製されたPierce製の新規な入手可能なヒト溶解液を比較したかった。これらの各溶解液について、インビトロで転写されたmRNAを翻訳するその能力をモニタリングした。その発現がβ−グロビン(50nts)又はGAPDH(102nts)5’非翻訳領域(5’UTR)のいずれかによって駆動されるウミシイタケルシフェラーゼを使用した。これらのRNA構築物は、50個のアデニル酸残基ポリ(A)と共にmGTPキャップ部分を有し、粗ウサギ網状赤血球溶解液(URRL)、ミクロコッカスで処理されたウサギ網状赤血球溶解液(RRL)、コムギ胚芽溶解液(WG)、及びインビトロのヒトタンパク質発現系(HL pierce)のいずれかにおいて翻訳させた。得られた結果は、β−グロビン5’UTRによって駆動されるmRNAについては図1Aに、GAPDHリーダーによって駆動されるmRNAについては図1Bに要約されている。両方のmRNAについて、最善の翻訳効率が、ウサギ網状赤血球に由来する系、すなわちURRL及びRRLにおいて得られた。これは、試験された全てのRNA濃度(0.27;2.7及び27nM)において観察され、飽和量の外来性mRNAが添加されても観察された(図1C)。高濃度のmRNA(27nMから270nM)の添加は、全体的な翻訳効率の点からHL系にとって大部分は有益であったが(図1C参照)、それはRRLで観察された活性レベルよりも依然として低かった。
実施例3:新規な混成インビトロ翻訳系の設計
本発明の目的は、翻訳効率と生細胞の特徴的な特色を兼ね備え得る新規なインビトロ無細胞系を設計することであった。それをするために、ウサギ網状赤血球溶解液の成分と培養細胞から得られた成分との間の混成翻訳系の作成が考えられた。
これをするために、本発明者らはまず、24000gで135分間遠心分離にかけることによって、ウサギ網状赤血球溶解液をS100上清とリボソーム沈渣へと分画(Rau et al., Methods Mol Biol 77: 211-226, 1998)することからなるRau et al, 1998によって開発された方法を適用した。それにより、リボソームに会合した成分からタンパク質合成装置の細胞質成分が分離され:両方の画分を急速凍結し得、数か月間−80℃で保存することができた(図2並びに材料及び方法を参照されたい)。
第一の試みにおいて、本発明者らは、4つの可能な組合せでURRLからの成分とRRLの成分とを混合し(Su+Rurrl、Sr+Rrrl、Sr+Rurrl、及びSu+Rrrl)、これらは全てβ−グロビン5’UTRによって駆動されるウミシイタケ構築物を翻訳するのに使用された(図3)。上清画分(リボソームを含まない)は全くルシフェラーゼ活性を生じないことが初めて観察され(Su及びSrを参照)、このことから、大部分のリボソームが遠心分離工程中に除去されたことが確認される。
ウミシイタケ構築物を両方の親溶解液(URRL及びRRL)において翻訳させ、効率を同質の再構成された系(Su+Rurrl及びSr+Rrrl)と比較した。翻訳活性はURRL及びRRLの両方について同じくらいの大きさであったが、一旦、系をSu+Rurrlを用いて再構成するとそうではなく、再構成されたSr+Rrrlの約2倍の効率であった。興味深いことに、本発明者らはまた、Su+Rrrlが、親溶解液で得られたものと同等な翻訳収率を有し、異質系についての最善の組合せであることを観察した(図3)。これらのデータは、処理されていない溶解液からのS100上清(Su)が、最も効果的な画分であり、混成溶解液(以後参照)の基礎の役割を果たすように選択されるだろうことを示唆する。
系を最適化するために、処理されていない溶解液上清(Su)に混合することのできる最適な量のリボソーム(RRLからの)を決定し、沈渣状リボソーム 1μgが最善の翻訳効率を生じることが認められ(図4)、これは、親リボソーム濃度の僅か0.05倍(1/20)に相当する。
これらのデータは、リボソームが培養細胞から単離され、そこにS100上清がURRLによって提供された、混成の再構成された無細胞系を精巧に作り上げるために使用された(図5の図解を参照されたい)。2つのヒト細胞系(HeLa及びジャーカット)、RRL、URRL及びコムギ胚芽溶解液を使用して、5つのリボソーム沈渣が得られた(URRLのリボソームについてはRurrl;RRLのリボソームについてはRrrl;Hela溶解液S10から得られたリボソームについてはRh;ジャーカット細胞から得られたリボソームについてはRj、及びWG溶解液から得られたリボソームについてはRwg)。URRLのリボソーム後の上清を使用して、細胞質画分を生成した(URRLの上清についてはSu)。リボソーム画分(R)を、URRLからのS100上清(Su)と全ての可能な組合せで混合することによって、混成の再構成された系を構築した。これらの系において、2.7nMのグロビン−ウミシイタケレポーター遺伝子を30分間かけて翻訳させ、その後、ウミシイタケの活性を分析した。データは、哺乳動物のリボソームを有する全ての組合せが、再構成されたRRL又は親溶解液で観察されたのと同等なレベルまで効率的なタンパク質の合成を生じたことを示した(図6A、Rrrl及びURRLを、Rurrl/Rh/Rjと比較)。しかしながら、コムギ胚芽リボソームではウミシイタケ活性は実質的に全く検出できなかった(図6A、Rwg参照)。これらの実験を、同じ実験手順に従って得られたマウス幹細胞などの「特殊化されていない細胞」から単離されたリボソームに拡張した(図6B)。幹細胞リボソームを含有する混成系を再構成すると、グロビン−ウミシイタケ構築物の翻訳は、RRL系とちょうど同じくらい効率的であった(図6B、RRLとRscを比較)。
さらに、これらの実験は、同じ実験手順に従って得られたマウスの器官及び組織(すなわち脳、心臓、肝臓及び肺)から単離されたリボソームに拡張された。図19において、器官からのリボソームを用いて再構成された混成系におけるタンパク質の合成は、細胞系と同程度の効率であったことが観察され得る。それ故、このことは、リボソームが、腫瘍、転移、又は生検試料から得られた病気の組織を含む、任意の脊椎動物の器官又は組織から得ることができることを示す。
ほんの僅かな量のウミシイタケしか効率的な検出及び定量に必要とされないので、混成系におけるタンパク質の生成は、結局そんなに効率的ではないと議論される可能性があった。さらに、序論において考察されているように、タンパク質の生成が、[35S]−メチオニン取り込みによって、新規合成されたタンパク質を検出することができるくらいに十分な収率で起こるCFPSを使用することに関心があり得た。従って、放射性[35S]−メチオニンの存在下で、研究室において日常的に使用されるレポーターmRNA(β−グロビン5’UTRによって駆動されるGFP、ウミシイタケルシフェラーゼ及びホタルルシフェラーゼ遺伝子)を有する混成系(Su+Rh)を計画した。30分間のインキュベート終了時に、タンパク質をSDS−PAGE上で分離し、乾燥させたゲルをオートラジオグラフィーにかけた(図7)。これは、全てのレポーター遺伝子からのタンパク質産物が一本の鋭いバンドとして検出されたことを示し、このことはタンパク質の合成が効率的かつ忠実に起こり、早期のタンパク質分解又はリボソームの消失を示し得る切断短縮され中断されたポリペプチドも、より短い散在性のアイソフォームも存在しないことを示す。
最後に、Pierce社から市販されているHeLa溶解液をベースとして製造された発現系の効率を、HeLaリボソームを含有する混成溶解液と比較した。このために、グロビンウミシイタケレポーター遺伝子を、幅広い範囲のRNA濃度で翻訳させ、ウミシイタケ活性を30分後に測定した。結果を図8に提示し、試験された全てのRNA濃度で、本発明者らの系は、pieceの溶解液よりも数倍より効率的であったことを示す。下のパネルは、log尺度でプロットされたこれらのデータを要約する。
要するに、これらのデータは、ウサギ網状赤血球溶解液の文脈で哺乳動物細胞系から単離されたリボソームの使用を検証する。
実施例4:混成系は、キャップ/ポリ(A)相乗作用を再現し、IRESにより駆動される翻訳を支援する
ヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液の主な欠点の1つは、それが転写物上へのポリ(A)テイルの付加によって付与される選択的な利点を復元できず、翻訳に対するキャップ/ポリ(A)の相乗効果を再現しないことである(Borman et al., Nucleic Acids Res., 25: 925-932, 2000)。このような特性は、粗RRLに見られ得るが、後者の使用は、RNA及びタンパク質の生成のレベルの両方で異所的遺伝子の翻訳を干渉し得る内因性グロビン及びリポキシゲナーゼの合成によって制限される(Soto Rifo et al., Nucleic Acids Res., 35(18): e121, 2007)。
それ故、次の工程は、混成系がどのようにキャッピング及びポリアデニル化の作用を再現することができるかを調べることであった。このために、本発明者らは、インビトロで転写されたグロビンウミシイタケ遺伝子を使用し、これは、示されているような4つの可能な組合せ(キャップ化/ポリアデニル化(+/+)、キャップ化/非ポリアデニル化(+/−)、非キャップ化/ポリアデニル化(−/+)、及び非キャップ化/非ポリアデニル化(−/−))で生成された(図9の図解を参照)。得られたRNAを、混成SuRh(HeLaのリボソームを含むURRLの上清)又は対照としてのヌクレアーゼで処理された溶解液(RRL)に加えた。図10に見られ得るように、両方の系における翻訳レベルは、mRNAがその5’末端にキャップを有する場合には非常に類似していた。しかしながら、このキャップの脱落により、混成系には実質的に活性が存在しなくなり(−/+参照)、これは、ポリ(A)テイルが欠失している場合には(−/−参照)さらにより実証されたが、どちらの組合せもより低い効率であるが依然としてRRLにおいては翻訳されていた。このことは、混成系が、キャップ/ポリ(A)により駆動されるより生理学的な翻訳環境を再構成することを示す。
多くの研究が、5’キャップ構造を全く必要としない、内部の位置にリボソームを補充するためにいくつかのmRNAによって使用される機序である内部開始に焦点を当てている(Balvay et al., Biochim. Biophys. Acta, 2009)。いくつかのインビトロ系は内部開始を支援するには非常に非効率であり、これはWG溶解液について顕著に示され、ここではピコルナウイルスRNAはあまり発現されていない(Woolaway et al., J. Virol., 75(21): 10244-10249, 2001)。
IRESを含有するRNAの翻訳を評価するために、本発明者らは、脳心筋炎ウイルスIRES(EMCV)がシストロン間スペーサーに挿入された、ホタル(第一遺伝子)及びウミシイタケ(第二遺伝子)をコードするバイシストロニック構築物を使用した。図11に見られるように、第一遺伝子ホタルの生成は、試験された3つ全てのCFPSにおいて効率的であり(WG、RRL及びRh)、一方、IRES発現から生じるウミシイタケ合成は、RRL及びRh溶解液にのみ観察されたが(右パネル)、以前に示されているようにWGには観察されなかった(Woolaway et al, 2001)。
その後、混成系が、ピコルナウイルス複製の経緯において遭遇するいくつかの選択的な選択を再現できるかかどうかを確認した。これらの1つは、ピコルナウイルスFMDV由来のウイルスによりコードされるLプロテアーゼによる開始因子elF4Gの切断によって作られる(Ohlmann et al., Nucleic Acids Res., 23(3): 334-340, 1995; Ziegler et al., J Virol 69(6): 3465-347, 1995b)。感染細胞においては、このようなタンパク質分解事象により、細胞内のキャップ依存性タンパク質合成は崩壊するが、一方、ウイルスIRESからの翻訳は刺激される(Devaney et al., J. Virol., 62(11): 4407-4409, 1988; Hambidge et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89(21): 10272-10276, 1992; Krausslich et al., J. Virol., 61(9): 2711-2718, 1987; Ziegler et al., J. Virol., 69(6): 3465-3474, 1995b)。興味深いことに、RRLへのLプロテアーゼの添加により、生細胞において起こることと比較して極めて減弱したウイルス酵素の作用がもたらされ;従って、RRLではキャップ依存性翻訳が減少し、ピコルナウイルスIRESの軽度の刺激が一般的に観察される(Ohlmann et al., Nucleic Acids Res., 23(3): 334-340, 1995; Soto Rifo et al., Nucleic Acids Res., 35(18): e121, 2007)。それ故、上記で使用されたホタル−EMCV−ウミシイタケバイシストロニック構築物の翻訳の前に、RRL及び混成系の両方にインビトロで翻訳されたLプロテアーゼを加えた。ウェスタンブロット分析は、elF4Gが、両方のアッセイにおいて同じようにタンパク質溶解されたことを示し(データは示されていない)、タンパク質の生成を[35S]−メチオニンの取り込みによって決定することによって、2つの遺伝子の発現の差をより良好に比較した(図12)。このことは、Lプロテアーゼの添加はウミシイタケ生成を刺激するが、一方、ホタル合成はRRLにおいて減少し、混成系では実質的に消失したことを示す(図12、レーン2及びレーン4)。
最後に、混成系が、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)由来の遺伝子間IRESなどのいくつかのジシストロウイルスIRESを用いて遭遇され得る非常に特有な翻訳条件を再現する能力を評価した。このRNA上での開始は、あらゆる開始因子の非存在下で40Sリボソームサブユニットの直接結合によって起こる(Wilson et al., Cell, 102(4): 511-520, 2000)。これは、ウイルスに、感染の最中の細胞内翻訳に対して選択的利点を付与する。なぜなら、強烈な生理学的条件、例えばelF2リン酸化、ストレス、又は開始因子の枯渇がCrPVの翻訳を増強することが示されたからである(Garrey et al., J. Virol., 84(2): 1124-1138, 2010)。
それ故、25mMから500mMまでの範囲の種々のKCl濃度でHeLaリボソームが単離された。最も高い塩濃度では、elFをはじめとするリボソーム会合因子の大半は洗い流され、リボソーム沈渣にはもはや存在しない(データは示されていない)。混成系を、漸増するカオトロピック条件下で精製されたこれらのリボソームを用いて構築し、これを使用してCrPV IRESによって駆動される翻訳を測定した(図13、左パネル)。これは、後者の発現が、リボソーム会合因子の減少によって刺激されたことを明瞭に示す(図13、左パネル、300及び500mMのKCl濃度を参照)。これは、同じ条件下で重度に阻害されたβ−グロビン−ウミシイタケmRNAと鋭い対比を成す(図13、右パネル)。これらのデータは、CrPVの翻訳が、開始因子が不活性化されているか又は以前に記載されているような酷く低い濃度で存在する条件から恩恵を受け得ることを確認し(Garrey et al., J. Virol., 84(2): 1124-1138, 2010; Pestova et al., Genes Dev., 17(2): 181-186, 2003);これはさらに、混成系を、特定の生理学的条件下で非常に特殊化されたmRNAの翻訳のために使用することができることを示す。
実施例5:混成系は細胞指向性を再現する
本発明のデータは、HeLa細胞から単離されたリボソームの添加はキャップ/ポリ(A)相乗作用を溶解液に付与し、内部開始する能力を元の状態に戻し、網状赤血球溶解液の良好な翻訳効率を保存することを示す。それ故、混成系が、細胞指向性を元の状態に戻すことができるかどうかを調べた。いくつかのIRESを含有するmRNA、特にポリオウイルスIRESによって駆動されるmRNAは、網状赤血球溶解液にはあまり発現されておらず、これは、網状赤血球溶解液へのHeLa S10細胞抽出物の外的添加によって部分的に救済され得ることが示された(Borman et al., Nucleic Acids Res., 25: 925-932, 1995)。従って、網状赤血球溶解液、及びHeLa細胞由来のリボソームを用いて構築された混成系(Su+Rh)におけるPV IRESの発現を比較した。対照として、β−グロビン−ウミシイタケ構築物もまた、2つのアッセイで翻訳させた(RRL及び混成系)。結果を図14Aに提示し、100%に設定されたグロビン対照(glo)について測定された翻訳効率に対する%として表現される。試験された3つのRNA濃度について(2.7;13.5及び27nM)、グロビンの発現は、予想されたようにPVにより駆動される構築物をはるかに上回った(Borman et al., Nucleic Acids Res. 25: 925-932, 1995)。興味深いことに、PV構築物の翻訳速度は、RRLにおいては全てのRNA濃度で依然として低くかつ一定であったが、これは、同じ構築物を混成系でアッセイした場合には明らかに当てはまらなかった。事実、最も高いRNA濃度では、PV−IRESにより駆動される翻訳は、混成系におけるグロビンウミシイタケ構築物のほぼ半分であった(図14A)(最も高いRNA濃度でPV RRLの組合せによって到達した約10%と比較して)。このことは、HeLaリボソームがPV IRESにより駆動される翻訳を支援し得ることを示す。
次の工程は、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)などのPV IRES翻訳を支援しない細胞から単離されたリボソームを添加することからなる逆の実験を実施することであった(Borman et al., Nucleic Acids Res., 25(5): 925-932, 1997)。実際に、これらの細胞は、PV IRES翻訳に必要とされる1つ又はいくつかの因子を欠失していると考えられている(Borman et al., Nucleic Acids Res., 25: 925-932, 1995; Borman et al., Nucleic Acids Res., 25(5): 925-932, 1997)。従って、この特性を使用して、本発明のインビトロ翻訳系の限界を試験した。
最初の対照実験において、BHK細胞(図14B)にPV IRES(又はグロビン5’UTR)を有するmRNAを電気穿孔法によってトランスフェクトした。ウミシイタケ活性の分析は、PV−IRES翻訳がこの細胞型において非常に非効率的であることを示すBorman及び同僚のデータを確認した(Borman et al., Nucleic Acids Res., 25(5): 925-932, 1997)。
従って、混成の再構成された翻訳系を、S100 URRL上清と混合されたBHK細胞から単離されたリボソームを用いて調製した。インビトロ混成系におけるレポーターmRNAの翻訳は、PVを含有する構築物からの発現が極めて低いままであることを示し、このことは、BHKリボソームがPVにより駆動される翻訳を支援することができないことを示す(図14C)。これは、混成系において正しく発現されたグロビン−ウミシイタケ構築物と対照的であり、このことはBHKリボソームが、全体的なタンパク質合成を支援するのに不十分ではないことを示す。
共に、これらのデータは、所与の細胞型に由来するリボソームの添加が、IRESにより駆動される遺伝子の翻訳のための細胞指向性を復元するのに十分であることを示す。
実施例6:混成系は、翻訳に対する細胞分化の効果を元の状態に戻す
次の工程は、本発明の系が、種々の刺激時に細胞に見られ得る生理学的条件の変化を再現できるかどうかを調べることであった。本発明者らは、細胞分化が、優れた試験モデルを示すと論理的に考えた。なぜなら、このプロセス中に、細胞は、タンパク質の合成にも影響を及ぼす主要な生理学的変化を経るからである(Ma et al., Nat. Rev. Mol. Cell. Biol., 10(5): 307-318, 2009; Thoreen et al., Nature, 485(7396): 109-113, 2012)。第一のアプローチとして、本発明者らは、その翻訳がグロビン、GAPDH及びユートロフィン5’UTRによって駆動される3つのウミシイタケレポーター遺伝子(これは、筋芽細胞分化中の翻訳レベルが特に増強されることが示された(Miura et al., J. Biol. Chem. 280(38): 32997-33005, 2005))の発現に着目した。細胞分化のモデルとして、ウマ血清が添加されることにより以前に記載されているように(Kubo, J. Physiol., 442: 743-759, 1991)筋管への分化が誘導されるC2C12マウス筋芽細胞を使用した。図15Aは、C2C12マウス筋芽細胞に電気穿孔された、キャップ化及びポリアデニル化されインビトロで転写されたmRNAの翻訳を示す。ルシフェラーゼ活性を、示されているようにウマ血清の添加前(未分化)及び添加から15時間後(分化)に測定した(図15A)。3つ全てのmRNAからの翻訳が、分化プロセスに従事するC2C12細胞において強く刺激されたことが認められ得る。ユートロフィンにより駆動される構築物からの発現は極めて低かったので、拡大写真が以下に提示されている。
C2C12に観察された効果が、インビトロで再現され得るかどうかを調べるために、未分化及び分化C2C12細胞から得られたリボソーム沈渣を、URRLからのリボソーム後の上清を用いて構築した。上記のインビトロで転写されたグロビン、GAPDH及びユートロフィンmRNAを30分間かけて翻訳させ、その後、ウミシイタケ活性を分析した(図15B)。興味深いことに、3つの全ての構築物からの翻訳活性も、分化C2C12細胞から得られたリボソームの添加によって刺激された。ここでも、これは、再構成された混成系が、生細胞の特異的な生理学的条件を再現できることを見事に示す。
実施例7:RNAサイレンシングの使用によって因子の除去された混成系の設計
生細胞とは対照的に、CFPSは、比較的単純で高度に標準化された生化学的プロトコールによって、内因性成分のレベルを操作する可能性を与える。従って、除去は、アフィニティーカラムクロマトグラフィー又は免疫除去によって実施され得、一方、不活性化は、酵素的切断、化学物質、又は拮抗ペプチドによって達成され得る。しかしながら、特異的な抗体又はアンタゴニストの必要性、及びこれらの分子を翻訳アッセイに添加することから生じ得る望ましくない副作用などのいくつかの制約が依然として存在する。それ故、別のアプローチが提案された。翻訳制御に関与する殆どのタンパク質が、リボソーム画分と会合していることが判明しているので、本発明者らは、所与の因子の効率的な除去を、リボソーム精製前に培養細胞におけるRNA干渉の使用によって実施し得ると理論的に考えた。この実験プロトコールの概念証明を実証するために、本発明者らは、DEAD−box RNAヘリカーゼDDX3がHIV−1ゲノムRNAの翻訳に必要とされることを示した近年のデータを活用した(Soto-Rifo et al., Embo. J., 31(18): 3745-3756, 2012)。このために、培養液中のHeLa細胞から、材料及び方法に記載されているようなshRNAの使用によって内因性DDX3を除去し;DDX3ノックダウンの程度を、ウェスタンブロットによって確認し、大半の内因性DDX3がリボソームから除去されたことを示した(図16A)。DDX3がリボソーム画分上に排他的に見られ、検出可能なタンパク質がリボソーム後の上清に全く残っていないことは注目に値する(図16Aは、S100とC100を比較する)。その後、グロビン又はHIV−1 5’UTRを有するRNA構築物のトランスフェクションを、DDX3に対するshRNAを用いて処理された又は処理されていないHeLa細胞において行なった(図16B)。以前に示されているように(Soto-Rifo et al., Embo. J., 31(18): 3745-3756, 2012)、グロビン−ウミシイタケRNA構築物からの翻訳は、DDX3の欠失によって影響を受けず、一方、HIV−1 5’UTRによって駆動される構築物は、DDX3ノックダウン時に翻訳効率の有意な低下を示した(図16B)。
これらのDDX3ノックダウンHeLa細胞及び対照HeLa細胞から、リボソーム画分を単離し、上記されているように処理されていないRRLのS100上清(Su)に加えた。インビトロで生成されたRNA構築物、すなわちグロビン及びHIV−1ウミシイタケを、混成の再構成された系で翻訳させ、結果を図16Cに提示する。興味深いことに、グロビン−ウミシイタケRNAの翻訳は僅かに影響を受けたが、一方、HIV−1 5’UTRを含有するmRNAからの翻訳は、DDX3を欠失したリボソームを用いて構築された混成系において重度に減少したことが観察された(図16C)。ここでも、これらの結果は、インビトロ系が細胞の生理学的条件を忠実に再現することを示した、生細胞で得られたのと一致するデータである(図16B)。DDX3除去時の阻害レベルが、細胞中よりもインビトロ系の方が高かったことは注目に値する。
実施例8:cDNAトランスフェクションからの混成系の使用
混成系は、細胞からの粗リボソームの単離に依拠するので、異所的に発現されたcDNAプラスミドからリボソーム会合RNAを単離するためにこの状況を活用することが提案された。従って、異所的遺伝子は細胞機構によって合成され、プロセシングされ、運び出され;それは、転写、スプライシング、キャッピング/ポリアデニル化、核外輸送、及び翻訳を受けるだろう(図17Aの図解を参照)。一旦細胞質内で翻訳されると、異所的RNAはポリソームと会合しなければならず、リボソーム画分と一緒に精製される。
これを確認するために、β−グロビン−ウミシイタケをコードする種々の濃度のcDNAプラスミドを培養液中のHeLa細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞質内RNA濃度を定量RT−PCRによって測定し、データは図17Bに要約されている。これは、トランスフェクトされたプラスミドの量(1.5×10個の細胞あたり、0.5、6及び12μgのインプットcDNA)と、細胞質内に見られる新規合成されたウミシイタケ−グロビンRNAの濃度(図17B;0.010pgから0.190pgのRNA)の間の相関を示す。
その後、RNAを含有するこれらのリボソームを、URRLの分画から得られた上清に混合することによって混成系を構築した。再構成時に、混成系を、30℃で30分間インキュベートし、その後、ルシフェラーゼ活性を定量した(図17C)。ルシフェラーゼの生成は、定量RT−PCRによって定量されたRNAの量と相関したことが観察され得る。HeLaリボソームと共精製された可能性があるいくつかのルシフェラーゼタンパク質によるあらゆる可能性のある干渉を除外するために、シクロヘキシミドを、再構成された系に加え、これは、これらの実験条件下で実質的に全く酵素活性を与えなかった(データは示されていない)。これは、細胞内ポリソームに捕捉されたRNAが、混成の再構成された系への導入時に、翻訳について完全に機能的であることを示す。
これは、インビトロでの転写の特に魅力的な代替選択肢である。なぜなら、対象のRNAが、その天然環境において生成され(従って、スプライシングされ得る)、細胞質内で第1回の翻訳を受けることを確実にするからである:これらの2つの工程は、mRNAが翻訳される全体的な効率に関与している(Bedard et al., Embo. J., 26(2): 459-467, 2007; Maquat et al., Cell 142(3): 368-374, 2010; Sanford et al., Genes Dev., 18(7): 755-768, 2004)。
翻訳に対する異所的mRNAの核における発生の影響を調べるために、モデル試験としてのc−myc IRESを使用した。このIRESからの発現は、インビトロ系において非常に非効率的であることが報告されており(Stoneley et al., Nucleic Acids Res., 28(3): 687-694, 2000b)、これは、その活性化に必要とされる特定のIRESトランス作用因子(ITAF)を獲得するためにこのIRESが核内において転写及び折り畳まれることが必要とされることによって説明された(Stoneley et al., Oncogene, 23(18): 3200-3207, 2004)。
従って、c−myc 5’UTRは、本発明のインビトロ翻訳系を試験するのに良好なツールであった。キャップ化及びポリアデニル化されたc−mycにより駆動されるウミシイタケレポーターRNAをグロビン−ウミシイタケ対照と一緒にまず生成した。どちらもRRLにおいて翻訳させ(図18A)、c−myc 5’UTRの制御下のルシフェラーゼの生成は、グロビンよりも約10倍低いことが観察され得、このことは、Willis及び同僚(Stoneley et al., Mol. Cell. Biol. 20(4): 1162-1169, 2000a)の研究と一致する。これは、以前に記載されているような(Stoneley et al., Nucleic Acids Res., 28(3): 687-694, 2000b)c−mycにより駆動される構築物からの非常に良好な翻訳レベルを示したHeLa細胞における対応するプラスミドcDNAからの発現と鋭く対照的である。その後、リボソームをcDNAのトランスフェクトされたHeLa細胞から単離し、ちょうど以前に記載されているように(上記参照)URRLから得られた上清を補充した。再構成された系を30℃で30分間インキュベートし、その後、ルシフェラーゼの生成を分析した(図18C)。興味深いことに、これは、HeLaリボソーム沈渣と共に沈殿したc−mycにより駆動された構築物が、混成の再構成系において効率的であったことを示した。事実、グロビン/c−mycの翻訳効率間の比は、cDNAトランスフェクション時のHeLa細胞に観察された比と同じであった(図18B)。これは、混成翻訳系の、培養細胞において遭遇する翻訳特性を再現する適応性を確認する。
混成系が、リボソームに会合した内因性mRNAからタンパク質を生成できる能力により、該混成系は大規模の分析のための価値あるツールとなる。
実際に、その後、翻訳リボソームに会合した細胞内の内因性mRNAを、リボソーム沈渣から抽出し、例えばRoberts et al. (2011) Genome Med. 3:74 or Wilhelm et al. (2008) Nature 453:1239-1243に記載のようなハイスループットRNAシークエンスにかけることができる。これらのmRNAは、実際に、使用される実験条件下で翻訳される全トランスクリプトームを示す。
これらの細胞内の内因性mRNAをまた、本発明の混成系に導入して、これにより、検出可能な量のタンパク質が生成され、これは、その後、特に質量分析法によって検出、同定及び定量され得る。質量分析法によるこの検出、同定及び定量を容易にするために、インビトロの混成系に加えられたアミノ酸混合物を「重い」アミノ酸と交換することにより、例えばBantscheff et al. (2007) Anal. Bioanal. Chem. 389:1017-1031に記載のような特に新しく合成されたタンパク質が検出される。あるいは、インビトロ混成系に、新規に合成されたペプチドに取り込まれるビオチニル化ピューロマイシン分子を供給することにより、例えばAviner et al. (2013) Genes Dev. 27:1834-1844に記載のようにストレプトアビジンを用いてのこれらのペプチドの精製を可能とする。
実施例9:ウイルス感染の場合に新たに合成された全てのタンパク質(細胞性及びウイルス性)を標識するための混成系の使用
実施例8の拡大として、先にウイルスに感染させておいた細胞からのリボソームの単離はまた、ウイルスのmRNAも含んでいた。一旦実施例8に記載の混成系に導入されると、これらのウイルスmRNAは翻訳されて、ウイルスタンパク質が生成され、これは、放射標識されたメチオニンの取り込みによって検出され得、さらに定量及び精製され得る。
図20は、インフルエンザウイルスに感染させたA549細胞から単離されたこのようなリボソームを示す。新規に合成されたウイルスタンパク質が明瞭に観察され得、写真の右側上に標識されている。

Claims (27)

  1. リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するための方法であって、該方法は、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含み、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液が、ヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない、翻訳反応混合物を使用する、方法。
  2. プレa)(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含む、翻訳反応混合物を場合により調製する工程、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない;
    a)工程(プレa)で定義された翻訳反応混合物を、
    (i)リボ核酸鋳型(RNA);又は
    (ii)(i)対象のアミノ酸配列をコードするDNA、及び(ii)該DNAをリボ核酸鋳型に転写するために必要な要素を含む、転写反応混合物
    と接触させて翻訳系を形成する工程;
    b)(a)の翻訳系を、リボ核酸鋳型から対象のアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間かけてインキュベートする工程
    を含む、請求項1記載の方法。
  3. プレa)対象のアミノ酸配列をコードするDNAを真核細胞にトランスフェクトする工程、ただし、真核細胞は網状赤血球ではない;
    a)トランスフェクトされた真核細胞がRNAの転写を行ない、翻訳を開始することを可能とするのに十分な時間の後、対象のアミノ酸配列をコードするDNAから生成されたRNAが、リボソームと一緒に単離されることを可能とする条件下で、工程(プレa)のトランスフェクトされた細胞からリボソームを単離する工程;及び
    b)(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)工程(a)において真核細胞から単離されたリボソーム、を含む翻訳系を、リボ核酸鋳型から対象のアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間、インキュベートする工程
    を含む、請求項1記載の方法。
  4. 工程(b)を少なくとも15分間行なう、請求項2又は3記載の方法。
  5. ペプチドをインビトロで生成するための、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソーム、を含み、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない、翻訳反応混合物の使用。
  6. 翻訳反応混合物を生成するための、リボソームが除去された網状赤血球溶解液及び真核細胞から単離されたリボソームの使用であって、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない、使用。
  7. (i)リボソームが除去された赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含み、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない、RNAをタンパク質へとインビトロで翻訳するための無細胞翻訳反応系。
  8. a)対象の真核細胞において生成されるRNAが、リボソームと一緒に単離されることを可能とする条件下で、対象の真核細胞からリボソームを単離する工程;
    b)工程a)でリボソームと共に単離されたRNAから対応するアミノ酸配列への翻訳を達成するのに十分な時間、(i)リボソームが除去された赤血球溶解液及び(ii)工程a)において対象の真核細胞から単離されたリボソーム及びRNAを含む、翻訳系をインキュベートする工程、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された対象の真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された対象の真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない;及び
    c)工程b)で得られたアミノ酸配列を同定及び場合により定量する工程
    を含む、対象の真核細胞の能動的に翻訳されたトランスクリプトームをインビトロで分析するための方法。
  9. 別々の容器に又は同じ容器に、(i)リボソームが除去された網状赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含み、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない、リボ核酸鋳型を対象のアミノ酸配列へとインビトロで翻訳するためのキット。
  10. 別々の容器に又は同じ容器に、(i)リボソームが除去された網状赤血球溶解液、(ii)真核細胞から単離されたリボソームを含み、ただし、(1)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されていないウサギ網状赤血球ではなく、(2)リボソームが除去された赤血球溶解液がヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球溶解液から得られる場合、リボソームが単離された真核細胞はヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球ではない、翻訳反応混合物を生成するためのキット。
  11. さらに、別々の容器に又は同じ容器に、
    − 少なくとも1つのtRNA;
    − 少なくとも1つのアミノアシル−tRNAシンテターゼ;
    − 少なくとも1つの開始因子;
    − 少なくとも1つの伸張因子;
    − 少なくとも1つの終結因子;
    − 少なくとも1つのシャペロン;
    − 少なくとも1つのフォルダーゼ;
    − 少なくとも1つのアミノ酸;
    − 少なくとも1つの標識アミノ酸、例えば放射標識アミノ酸;
    − 少なくとも1つのエネルギー源;
    − 少なくとも1つのエネルギー発生系;
    − 塩;
    − 緩衝溶液
    からなる群より選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項9又は10記載のキット。
  12. 別々の容器に又は同じ容器に、
    ・リボソームが除去された網状赤血球溶解液、並びに
    ・以下からなる群より選択される少なくとも1つの要素
    − 少なくとも1つの標識アミノ酸、
    − 少なくとも1つのビオチニル化ピューロマイシン、及び
    − 少なくとも1つの固定されたストレプトアビジン
    を含む、対象の真核細胞の活発に翻訳されたトランスクリプトームを分析するためのキット。
  13. リボソームが単離された真核細胞(ii)が網状赤血球ではない、請求項1〜4及び8のいずれか一項記載の方法。
  14. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)がウサギ赤血球から得られる、請求項1〜4、8及び13のいずれか一項記載の方法。
  15. リボソームが単離された真核細胞(ii)がヒト細胞である、請求項1〜4、8、13及び14のいずれか一項記載の方法。
  16. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)が、ヌクレアーゼで処理された赤血球溶解液から得られる、請求項1〜4、8、及び13〜15のいずれか一項記載の方法。
  17. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)が、ヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球から得られ、リボソームが単離された真核細胞(ii)がヒト細胞である、請求項1〜4、8、及び13〜16のいずれか一項記載の方法。
  18. リボソームが単離された真核細胞(ii)が網状赤血球ではない、請求項5又は6記載の使用。
  19. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)がウサギ赤血球から得られる、請求項5、6及び18のいずれか一項記載の使用。
  20. リボソームが単離された真核細胞(ii)がヒト細胞である、請求項5、6、18及び19のいずれか一項記載の使用。
  21. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)が、ヌクレアーゼで処理された赤血球溶解液から得られる、請求項5、6、及び18〜20のいずれか一項記載の使用。
  22. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)が、ヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球から得られ、リボソームが単離された真核細胞(ii)がヒト細胞である、請求項5、6、及び18〜21のいずれか一項記載の使用。
  23. リボソームが単離された真核細胞(ii)が網状赤血球ではない、請求項10〜11のいずれか一項記載のキット。
  24. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)がウサギ赤血球から得られる、請求項10〜12及び23のいずれか一項記載のキット。
  25. リボソームが単離された真核細胞(ii)がヒト細胞である、請求項10〜11、23及び24のいずれか一項記載のキット。
  26. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)が、ヌクレアーゼで処理された赤血球溶解液から得られる、請求項10〜12、及び23〜25のいずれか一項記載のキット。
  27. リボソームが除去された赤血球溶解液(i)が、ヌクレアーゼで処理されたウサギ網状赤血球から得られ、リボソームが単離された真核細胞(ii)がヒト細胞である、請求項10〜11、及び23〜26のいずれか一項記載のキット。
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