JP2016504014A - アストロサイトの誘導方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、(1)神経前駆細胞を神経栄養因子を含有する培養液中で培養する工程、(2)(1)で得られた細胞を解離させる工程、および(3)(2)で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いて神経栄養因子を含有する培養液中で接着培養する工程を含む、神経前駆細胞からアストロサイトを製造する方法を提供する。

Description

本発明は、多能性幹細胞由来の神経前駆細胞からアストロサイトを製造する方法に関する。本発明はまた、ニューロンとアストロサイトが混在する細胞群よりアストロサイトを選択的に培養する方法に関する。
アストロサイトは脳内で最も多い細胞種であり、ニューロンと並んで重要な役割を果たしていると言われている。発生学的に、未熟なアストロサイトは、機能的なシナプス形成において必須であり(非特許文献1)、成熟したアストロサイトは、シナプスの遮断と過剰な情報伝達物質の除去能を有している(非特許文献2)。また、神経線維の保持には、このような支持細胞としての役割を果たしている。さらに、アストロサイトは、血管基底膜に突起を接して、血液脳関門の閉鎖機能の維持に寄与している可能性が示唆されている。
一方、アストロサイトの異常は、星状細胞腫、てんかん、アレキサンダー病および神経変性疾患に関与していると考えられている。従って、アストロサイトを解析することによってこれらの病態の解明が期待されている。
これまでES細胞またはiPS細胞などの多能性幹細胞から神経幹細胞を経てアストロサイトを誘導する方法が報告されている(非特許文献3)。
Johnson, M.A et al., J. Neurosci. 2007, 27, 3069-3077 Rothstein, J.D et al., Neuron, 1996, 16, 675-686 Krencik R, et al., Nat Biotechnol. 2011, 29, 528-534
本発明は、神経前駆細胞からアストロサイトを製造する新規な方法を提供することを目的とする。本発明はまた、コーティング処理されていない培養容器へアストロサイトが接着する性質を利用することで、ニューロンとアストロサイトが混在する細胞群よりアストロサイトを選択的に培養する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、コーティング処理されていない培養容器に対してアストロサイトが接着する性質を利用することにより、選択工程を含まずに作製された神経前駆細胞から高効率でアストロサイトを分化誘導できることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の一態様は、次の工程を含む、神経前駆細胞からアストロサイトを製造する方法を提供することである。
(1)神経前駆細胞を神経栄養因子を含有する培養液中で培養する工程、
(2)(1)の工程で得られた細胞を解離させる工程、および
(3)(2)の工程で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いて神経栄養因子を含有する培養液中で接着培養する工程。
本発明の他の態様は、前記神経栄養因子がGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、次の工程をさらに含む、前記方法を提供することである。
(4)(3)の工程で得られた細胞を解離させる工程、ならびに
(5)(4)の工程で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程。
本発明の他の態様は、さらに、前記工程(5)で得られた細胞を解離させ、コーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程を、少なくとも2回繰り返す、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、次の工程をさらに含む、前記方法を提供することである;
(6)(5)の工程で得られた細胞を解離させる工程、ならびに
(7)(6)の工程で得られた細胞をゼラチンコートした培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程。
本発明の他の態様は、前記工程(1)が66日以上の期間培養する工程である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記工程(3)が30日以上の期間培養する工程である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記工程(5)が20日以上の期間培養する工程である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記神経前駆細胞が、多能性幹細胞をBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含有する培養液中で培養する工程を含む方法により製造される細胞である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記BMP阻害剤がDorsomorphinであり、前記TGFβ阻害剤がSB431542である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記多能性幹細胞から神経前駆細胞を製造する工程が、胚様体を形成後、接着培養させる工程を含む、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記神経前駆細胞がヒト神経前駆細胞である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記方法で製造されたアストロサイトを提供することである。
本発明の他の態様は、ニューロンとアストロサイトが混在する細胞群よりアストロサイトを選択的に培養する方法であって、次の工程を含む方法を提供することである;
(I)細胞群を解離させる工程、および
(II)(I)の工程で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いて培養する工程。
本発明の他の態様は、前記工程(II)の培養する工程が、神経栄養因子を含有する培養液中で接着培養する工程である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、次の工程をさらに含む、前記方法を提供することである;
(III)前記工程(II)で得られた細胞を解離させる工程、ならびに
(IV)前記工程(III)で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程。
本発明の他の態様は、さらに、前記工程(IV)で得られた細胞を解離させ、コーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程を、少なくとも2回繰り返す、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記工程(II)が30日以上の期間培養する工程である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記工程(IV)が20日以上の期間培養する工程である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記ニューロンとアストロサイトが混在する細胞群が、次の工程
により多能性幹細胞から製造された細胞群である、前記方法を提供することである;
(i)多能性幹細胞をBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含有する培養液中で培養する工程、および
(ii)(i)の工程で得られた細胞を神経栄養因子を含有する培養液中で培養する工程。
本発明の他の態様は、前記工程(i)が、多能性幹細胞をBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含有する培養液中で胚様体を形成後、接着培養させる工程である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記BMP阻害剤がDorsomorphinであり、前記TGFβ阻害剤がSB431542である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記神経栄養因子がGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記工程(ii)が66日以上の期間培養する工程である、前記方法を提供することである。
本発明の他の態様は、前記ニューロンとアストロサイトが混在する細胞群がヒト細胞群である、前記方法を提供することである。
本発明に示す方法により、神経駆細胞からアストロサイトを製造することが可能となる。また、得られたアストロサイトを用いて星状細胞腫、てんかん、アレキサンダー病および神経変性疾患などの疾患の治療薬の開発が可能となる。
図1は、多能性幹細胞からアストロサイトを製造するスキームを示す。 図2は、各細胞でのマイクロアレイによる遺伝子発現パターンを階層的クラスター解析した結果を示す(写真)。 図3は、各ヒトiPS細胞から分化誘導されたアストロサイトの免疫染色像を示す(写真)。図中青色はDAPIによる核の染色像を示し、赤色はGFAP抗体による染色像を示す。 図4は、各ヒトiPS細胞から分化誘導されたアストロサイトにおけるGFAP陽性細胞の含有率を示す。 図5は、線維芽細胞(左図)およびヒトiPS細胞から分化誘導されたアストロサイト(右図)による培地中のグルタミン酸の取り込み能力を示す。初期値である250μMからの経時的な減少量が細胞へ取り込まれたグルタミン酸量を表す。
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明は、(1)神経前駆細胞を神経栄養因子を含有する培養液中で培養する工程、(2)(1)で得られた細胞を解離させる工程、および(3)(2)で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いて神経栄養因子を含有する培養液中で接着培養する工程を含むアストロサイトを製造する方法を提供する。
本発明において、神経前駆細胞とは、ニューロンおよびグリア細胞へ分化する細胞を意味し、Nestin またはNCAMが発現している細胞である。本明細書において神経前駆細胞は、神経幹細胞と同等の細胞を意味し、特別の断りがなければ、この2つの細胞を区別しない。さらに、グリア細胞とは、アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト等を意味する。
また本発明において、アストロサイトとは、GFAPまたはS100βを発現する細胞であり、好ましくはGFAPを発現する細胞である。GFAPは、NCBI のAccession番号NM_001131019、NM_001242376またはNM_002055において示される配列を有する遺伝子である。
<神経前駆細胞を神経栄養因子を含有する培養液中で培養する工程>
本発明の神経前駆細胞を培養する工程において用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えばIMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)およびこれらの混合培地などが包含される。好ましくは、Neurobasal Mediumである。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。好ましい培地は、B27サプリメントおよびGlutamaxを含有するNeurobasal Mediumである。
本発明において、神経前駆細胞を培養する工程において用いる培養液は、神経栄養因子を含有していることが望ましい。ここで、神経栄養因子とは、運動ニューロンの生存と機能維持に重要な役割を果たしている膜受容体へのリガンドであり、例えば、Nerve Growth
Factor (NGF)、Brain-derived Neurotrophic Factor (BDNF)、Neurotrophin 3 (NT-3)、Neurotrophin 4/5 (NT-4/5)、Neurotrophin 6 (NT-6)、basic FGF、acidic FGF、FGF-5、Epidermal Growth Factor (EGF)、Hepatocyte Growth Factor (HGF)、Insulin、Insulin Like Growth Factor 1 (IGF 1)、Insulin Like Growth Factor 2 (IGF 2)、Glia cell line-derived Neurotrophic Factor (GDNF)、TGF-b2、TGF-b3、Interleukin 6 (IL-6)、Ciliary Neurotrophic Factor (CNTF)およびLIFなどが挙げられる。本発明において好ましい神経栄養因子は、GDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子である。
また、神経前駆細胞を培養する工程において、コーティング処理された培養容器を用いて培養してもよい。コーティング剤としては、例えば、マトリゲル(BD)、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、またはエンタクチン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、マトリゲルである。
培養条件について、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2〜5%である。
培養期間は、長期の培養により特段の問題が起きないため、特に限定されないが、20日以上、30日以上、40日以上、50日以上、60日以上、70日以上、80日以上、90日以上、またはそれ以上の日数が挙げられる。好ましくは、66日以上である。
上記に示した添加する神経栄養因子の濃度については、当業者がその効力により適宜選択して用いてよく、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、30ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/mlおよび100ng/mlが例示される。好ましくは、10ng/mlである。
<細胞を解離させる工程>
細胞を解離させる工程においては、互いに接着して集団を形成している細胞を個々の細胞に解離(分離)させる。
細胞を解離させる方法としては、例えば、力学的に解離する方法、プロテアーゼ活性と
コラゲナーゼ活性を有する解離溶液(例えば、Accutase(商標)およびAccumax(商標)など)またはコラゲナーゼ活性のみを有する解離溶液を用いた解離方法が挙げられる。好ましくは、プロテアーゼ活性とコラゲナーゼ活性を有する解離溶液(特に好ましくは、Accutase(商標))を用いてヒト多能性幹細胞を解離する方法が用いられる。
<解離させた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いて神経栄養因子を含有する培養液中で接着培養する工程>
コーティング処理されていない培養容器とは、当業者が汎用的に用いている細胞培養用ディッシュ、プレートまたはフラスコを意味し、その形状は特に限定されない容器であり、培養に際して、別途コーティング剤による処理工程を経ていない容器である。好ましくは、ポリスチレン製の培養容器である。コーティング剤としては、例えば、マトリゲル(BD)、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、またはエンタクチンが挙げられ、本工程では、少なくともこれらのコーティング剤にて処理を行わない培養容器を用いることが好ましい。
細胞を解離後の培養においては、上記と同様の神経栄養因子を含有する培養液を用いることができる。培養期間は、長期の培養により特段の問題が起きないため、特に限定されないが、5日以上、10日以上、15日以上、20日以上、25日以上、30日以上、35日以上、40日以上、45日以上、50日以上、またはそれ以上の日数が挙げられる。好ましくは、30日以上である。
<追加工程>
本発明では、アストロサイトを製造するにあたり、さらに得られた細胞を解離させ、コーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養しても良い。細胞の解離は、上記と同様の方法を用いて行うことができ、プロテアーゼ活性とコラゲナーゼ活性を有する解離溶液を用いて行うことが望ましい。
本発明において、GDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えばIMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's
F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)およびこれらの混合培地などが包含される。好ましくは、Neurobasal Mediumである。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。好ましいGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液は、N2サプリメントおよびGlutamaxを含有するDMEM/F12または血清およびGlutamaxを含有するDMEM/F12である。
本工程は、長期の培養により特段の問題が起きないため、特に限定されないが、5日以上、10日以上、15日以上、20日以上、25日以上、30日以上、35日以上、40日以上、45日以上、50日以上、またはそれ以上の日数が挙げられる。好ましくは、20日以上または30日以上である。
本工程の培養条件について、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2〜5%である。
本細胞の解離と培養を行う工程は、アストロサイトの取得効率をより高めるため、少なくとも1回以上行われることが好ましい。例えば、2回以上、3回以上、4回以上または5回以上が挙げられる。より好ましくは3回である。
<アストロサイトの選択方法>
上述した神経前駆細胞を神経栄養因子を含有する培養液中で培養する工程後には、アストロサイトに加えニューロンも同時に製造され得る。しかしながら、アストロサイトはニューロンなどと比較して、コーティング処理されていない培養容器に接着しやすいので、本発明の方法を用いると、アストロサイトとニューロンが混在する細胞群から高効率でアストロサイトを選択的に得ることができる。従って、本発明は、アストロサイトとニューロンが混在する細胞群よりアストロサイトを選択的に培養する方法を提供する。詳細には、上述した細胞を分離する工程およびコーティング処理されていない培養容器を用いて培養する工程を含む方法である。
<アストロサイトの培養と保存>
本発明の方法で製造されたアストロサイトは、ゼラチンコートをした培養容器を用いて、上述したGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で培養することができる。
培養の条件は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2〜5%である。
さらに本発明の方法で製造されたアストロサイトは、凍結保存液中で低温、例えば-80℃以下または-196℃以下で保存してもよい。この時用いる凍結保存液は、特に限定されないが、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水へグルコース、血清、アルブミンなどの生物由来物質および DMSO、グリセロール、多糖類、ポリフェノールなどが含有されていてもよい。
<神経前駆細胞の製造>
本発明において、神経前駆細胞は、生体内から単離された神経前駆細胞でもよく、in vitroで他の細胞種より誘導された細胞でもよいが、好ましくは多能性幹細胞から分化誘導される神経前駆細胞である。
本発明において、多能性幹細胞から神経前駆細胞への分化誘導は、当業者に周知の方法を用いてもよく、特に限定されないが、例えば、(1)無血清培地中で胚様体を形成させて分化させる方法(SFEB法)(Watanabe K, et al. Nat Neurosci. 8:288-96, 2005)、(2)ストローマ細胞上でES細胞を培養して分化させる方法(SDIA法)(Kawasaki H, et
al. Neuron. 28:31-40, 2000)、(3)マトリゲル上に薬剤を添加して培養する方法(Chambers SM, et al. Nat Biotechnol. 27:275-80, 2009)などが挙げられる。多能性幹細胞から神経前駆細胞への好ましい分化誘導方法は、多能性幹細胞をBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含有する培養液中で培養する工程を含む方法を用いることができる。
本発明の好ましい多能性幹細胞から神経前駆細胞への分化誘導法として、多能性幹細胞を、任意の方法で分離し、浮遊培養により培養してもよく、あるいはコーティング処理された培養容器を用いて接着培養してもよい。好ましくは、浮遊培養の後に接着培養させることが好ましい。ここで、ヒト多能性幹細胞の分離方法としては、例えば、力学的に分離
する方法、プロテアーゼ活性とコラゲナーゼ活性を有する分離溶液(例えば、Accutase(商標)およびAccumax(商標)など)またはコラゲナーゼ活性のみを有する分離溶液を用いた分離方法が挙げられる。好ましくは、プロテアーゼ活性とコラゲナーゼ活性を有する分離溶液(特に好ましくは、Accutase(商標))を用いてヒト多能性幹細胞を解離し、力学的に細かく単一細胞へ分散する方法が用いられる。ここで、使用されるヒト多能性幹細胞は、使用したディッシュに対して80%コンフルエントになるまで培養されたコロニーであることが好ましい。
浮遊培養とは、細胞を培養容器へ非接着の状態で培養することであり、特に限定はされないが、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリックス等によるコーティング処理)されていない培養容器、若しくは、人工的に接着を抑制する処理(例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸(poly-HEMA)または非イオン性の界面活性ポリオール(Pluronic F-127等)によるコーティング処理)した培養容器を使用して行うことができる。
また、接着培養においては、コーティング処理された培養容器にて、任意の培地中で培養する。コーティング剤としては、例えば、マトリゲル(BD)、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、またはエンタクチン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、マトリゲルである。
本工程における培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えばIMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)およびこれらの混合培地などが包含される。好ましくは、DMEM培地とHam's F12培地とを等量ずつ混合させたDMEM/F12培地である。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。好ましくは、KSR、アミノ酸およびL-グルタミンを含有するDMEM/F12培地またはN2サプリメント、KSR、アミノ酸およびL-グルタミンを含有するDMEM/F12培地である。
本発明では、培地にBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤をさらに添加することが好ましい。ここで、BMP阻害剤とは、BMP(bone morphogenetic protein)とBMP受容体(I型又はII型)との結合を介するBMPシグナル伝達(BMP signaling)の阻害に関与する低分子阻害剤であり、天然の阻害剤であるNoggin、chordin、follistatinなどのタンパク質性阻害剤とは異なる。この阻害剤は、多能性幹細胞を神経前駆細胞へ分化誘導する作用を有しているべきである。このような性質をもつ低分子BMP阻害剤には、転写因子SMAD1、SMAD5又はSMAD8を活性化する能力をもつBMP2、BMP4、BMP6又はBMP7を阻害する化合物である、例えばDorsomorphin (すなわち、6-[4-(2-piperidin-1-yl-ethoxy)phenyl]-3-pyridin-4-yl-pyrazolo[1,5-a]pyrimidine)及びその誘導体が包含される(P. B. Yu et al. (2007), Circulation, 116:II_60; P.B. Yu et al. (2008), Nat. Chem. Biol., 4:33-41; J. Hao et al. (2008), PLoS ONE (www.plozone.org), 3(8):e2904)。Dorsomorphinは市販されており、例えばSigma-Aldrichなどから入手可能である。Dorsomorphinは、BMP受容体へのBMPの結合を阻害することによって上記のBMPシグナル伝達を阻害する生物活性を有する。この他にも、BMP I型受容体キナーゼ阻害剤としてLDN-193189(すなわち、4-(6-(4-(piperazin-1-yl)phenyl
)pyrazolo[1,5-a]pyrimidin-3-yl)quinoline)及びその誘導体が例示される (Yu PB et al. Nat Med, 14: 1363-9, 2008)。LDN-193189は市販されており、例えばStemgent社などから入手可能である。
例えば、BMP阻害剤がDorsomorphinである場合、培地中の濃度は、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、100mMが例示される。好ましくは、2mMである。
TGFβ阻害剤とは、TGFβファミリーのシグナル伝達に干渉する低分子阻害剤であり、例えばSB431542、SB202190(以上、R.K.Lindemann et al., Mol. Cancer 2:20(2003))、SB505124 (GlaxoSmithKline)、 NPC30345 、SD093、 SD908、SD208 (Scios)、LY2109761、LY364947、 LY580276 (Lilly Research Laboratories)などが包含され、SB431542が好ましい。
例えば、TGFβ阻害剤がSB431542である場合、培地中の濃度は、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mMが例示される。好ましくは、10mMである。
培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは5%である。培養時間は、少なくとも20日以上であり、例えば21日、24日、27日、30日、33日、36日、39日または42日が挙げられる。好ましくは24日である。
<多能性細胞>
本発明で使用可能な多能性幹細胞は、生体に存在する全ての細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、それには、例えば胚性幹(ES)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、人工多能性幹(iPS)細胞、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。本発明では、胚の破壊を行わずに得られるという意味では、iPS細胞またはMuse細胞を用いることが好ましい。
(A) 胚性幹細胞
ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物の初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
ES細胞は、受精卵の8細胞期、桑実胚後の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚由来の幹細胞であり、成体を構成するあらゆる細胞に分化する能力、いわゆる分化多能性と、自己複製による増殖能とを有している。ES細胞は、マウスで1981年に発見され(M.J. Evans and M.H. Kaufman (1981), Nature 292:154-156)、その後、ヒト、サルなどの霊長類でもES細胞株が樹立された (J.A. Thomson et al. (1998), Science 282:1145-1147; J.A. Thomson et al. (1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848;J.A. Thomson et al. (1996), Biol. Reprod., 55:254-259; J.A. Thomson and V.S. Marshall (1998), Curr. Top. Dev. Biol., 38:133-165)。
ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞のフィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor (LIF))、塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor (bFGF))などの物質を添加した培養液を用いて行うことができる。ヒトおよびサルのES細胞の樹立と維持の方法については、例えばUSP5,843,780; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848
; Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147; H. Suemori et al. (2006),
Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485などに記載されている。
ES細胞作製のための培養液として、例えば0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン酸、20% KSRおよび4ng/ml bFGFを補充したDMEM/F-12培養液を使用し、37℃、5% CO2、湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができる(H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl2および20% KSRを含有するPBS中の0.25% トリプシンおよび0.1mg/mlコラゲナーゼIVを用いて行うことができる。
ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct-3/4、Nanogなどの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal-Time PCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択では、OCT-3/4、NANOG、ECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E. Kroon et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:443-452)。
ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)およびWA09(H9)は、WiCell Reserch Instituteから、KhES-1、KhES-2およびKhES-3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能である。
(B) 精子幹細胞
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞であり、精子形成のための起源となる細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、例えばマウス胚盤胞に移植するとキメラマウスを作出できるなどの性質をもつ(M. Kanatsu-Shinohara et al. (2003) Biol. Reprod., 69:612-616; K. Shinohara et al. (2004), Cell, 119:1001-1012)。神経膠細胞系由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF))を含む培養液で自己複製可能であるし、またES細胞と同様の培養条件下で継代を繰り返すことによって、精子幹細胞を得ることができる(竹林正則ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊),41〜46頁,羊土社(東京、日本))。
(C) 胚性生殖細胞
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞であり、LIF、bFGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖細胞を培養することによって樹立しうる(Y. Matsui et al. (1992), Cell, 70:841-847; J.L. Resnick et al. (1992), Nature, 359:550-551)。
(D) 人工多能性幹細胞
人工多能性幹(iPS)細胞は、特定の初期化因子を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNAまたはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28
、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D,
et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、Kim JB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali
P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720、Maekawa M, et al. (2011), Nature. 474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
上記初期化因子には、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸 (VPA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool(登録商標) (Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸性発現阻害剤など]、MEK阻害剤(例えば、PD184352、PD98059、U0126、SL327およびPD0325901)、Glycogen synthase kinase-3阻害剤(例えば、BioおよびCHIR99021)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-azacytidine)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX-01294 等の低分子阻害剤、Suv39hl、Suv39h2、SetDBlおよびG9aに対するsiRNAおよびshRNA等の核酸性発現阻害剤など)、L-channel calcium agonist (例えばBayk8644)、酪酸、TGFβ阻害剤またはALK5阻害剤(例えば、LY364947、SB431542、616453およびA-83-01)、p53阻害剤(例えばp53に対するsiRNAおよびshRNA)、ARID3A阻害剤(例えば、ARID3Aに対するsiRNAおよびshRNA)、miR-291-3p、miR-294、miR-295およびmir-302などのmiRNA、Wnt Signaling(例えばsoluble Wnt3a)、神経ペプチドY、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2およびプロスタグランジンJ2)、hTERT、SV40LT、UTF1、IRX6、GLISl、PITX2、DMRTBl等の樹立効率を高めることを目的として用いられる因子も含まれており、本明細書においては、これらの樹立効率の改善目的にて用いられた因子についても初期化因子と別段の区別をしないものとする。
初期化因子は、タンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション、細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよい。
一方、DNAの形態の場合、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)
、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、初期化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する初期化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。
また、RNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell. 7:618-630)。
iPS細胞誘導のための培養液としては、例えば、10〜15%FBSを含有するDMEM、DMEM/F12又はDME培養液(これらの培養液にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、puromycin、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)または市販の培養液[例えば、マウスES細胞培養用培養液(TX-WES培養液、トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培養液(霊長類ES/iPS細胞用培養液、リプロセル社)、無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社)]などが含まれる。
培養法の例としては、たとえば、37℃、5%CO2存在下にて、10%FBS含有DMEM又はDMEM/F12培養液上で体細胞と初期化因子とを接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上にまきなおし、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培養液で培養し、該接触から約30〜約45日又はそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。
あるいは、37℃、5% CO2存在下にて、フィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10%FBS含有DMEM培養液(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜約30日又はそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009), PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。
この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。
上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100cm2あたり約5×103〜約5×106細胞の範囲である。
iPS細胞は、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。一方、体細胞が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、Oct3/4、Nanog)と連動して発現する薬
剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として導入した場合は、対応する薬剤を含む培養液(選択培養液)で培養を行うことにより樹立したiPS細胞を選択することができる。また、マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場合は発色基質を加えることによって、iPS細胞を選択することができる。
本明細書中で使用する「体細胞」なる用語は、卵子、卵母細胞、ES細胞などの生殖系列細胞または分化全能性細胞を除くあらゆる動物細胞(好ましくは、ヒトを含む哺乳動物細胞)をいう。体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞、腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。
また、iPS細胞を移植用細胞の材料として用いる場合、拒絶反応が起こらないという観点から、移植先の個体のHLA遺伝子型が同一もしくは実質的に同一である体細胞を用いることが望ましい。ここで、「実質的に同一」とは、移植した細胞に対して免疫抑制剤により免疫反応が抑制できる程度にHLA遺伝子型が一致していることであり、例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DRの3遺伝子座あるいはHLA-Cを加えた4遺伝子座が一致するHLA型を有する体細胞である。
(E) 核移植により得られたクローン胚由来のES細胞
nt ES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T. Wakayama et al. (2001), Science, 292:740-743; S. Wakayama et al. (2005), Biol. Reprod., 72:932-936; J. Byrne et al. (2007), Nature, 450:497-502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたES細胞がnt ES(nuclear transfer ES)細胞である。nt ES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B. Cibelli et al. (1998), Nature Biotechnol., 16:642-646)とES細胞作製技術との組み合わせが利用される(若山清香ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊), 47〜52頁)。核移植においては、哺乳動物の除核した未受精卵に、体細胞の核を注入し、数時間培養することで初期化することができる。
(F) Multilineage-differentiating Stress Enduring cells(Muse細胞)
Muse細胞は、WO2011/007900に記載された方法にて製造された多能性幹細胞であり、詳細には、線維芽細胞または骨髄間質細胞を長時間トリプシン処理、好ましくは8時間または16時間トリプシン処理した後、浮遊培養することで得られる多能性を有した細胞であり、SSEA-3およびCD105が陽性である。
<アストロサイト>
本発明において、上述した分化誘導法によって作製されたアストロサイトは、例えば、GFAPなど任意のマーカーによって染色することで同定し、当業者に周知の方法で純化され得る。
このように得られたアストロサイトは、例えば、星状細胞腫、てんかん、アレキサンダー病および神経変性疾患の治療薬のスクリーニングに用いることができる。本発明において、神経変性疾患とは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー型痴呆、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)および脊髄小脳変性
症(SCD)が例示される。
<神経前駆細胞からのアストロサイトへの分化誘導用キット>
本発明は、神経前駆細胞からアストロサイトを分化誘導するためのキットを提供する。本キットには、上述した分化誘導に用いる増殖因子、化合物、培養液、解離溶液および培養容器のコーティング剤を含んでもよい。本キットには、さらに分化誘導の手順を記載した書面や説明書を含んでもよい。
iPS細胞
2名の健常者より同意を得て3 mmの皮膚生検で得られた外植片からヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を樹立した。樹立したHDFへOkitaらの方法に従ってエピソーマルベクターを用いて、ヒトcDNA(SOX2、KLF4、OCT4、L-MYC、LIN28)およびp53のshRNAを導入した(Okita et al.,
Nat Methods. 2011, 8, 409-412)。導入の数日後、HDFを回収し、SNLフィーダー細胞層上に再播種した。翌日、培地を4 ng/ml bFGF (Wako Chemicals, Osaka, Japan)を補充した霊長類胚性幹細胞用培地(Reprocell, Kanagawa, Japan)で置換した。一日おきに培地を交換した。cDNAの導入から30日後、各iPS細胞コロニーを1つ選択した(N116213およびN117322)。さらに、Okitaらが樹立した細胞を受領し(409B2)、計3種のiPS細胞を本実施例に用いた。
アストロサイトへの分化誘導
1.神経前駆細胞の誘導
上記の方法で得られたiPS細胞と共培養しているフィーダー細胞をCTK溶液(ReproCell)を用いて選択的に剥離、さらに残ったiPS細胞をAccutase(Innovative Cell Technologies)により解離した。解離したiPS細胞を、2μM Dorsomorphin(Sigma-Aldrich)および10μM SB431542(Cayman Chemical)を添加したDFK5%培地(5%KSR(Invitrogen)、L-glutamine(Sigma-Aldrich)および0.1M 2-mercaptoethanol(Invitrogen)を添加したDMEM/Ham’s F12(Gibco))に懸濁、さらに2% Pluronic F-127(Sigma-Aldrich)ethanol溶液でコートしたU-bottom 96-wellプレートに播種し胚様体(EB)を形成させ、浮遊培養により8日間培養した。続いて、得られたEBを マトリゲル(BD)でコートした6-well プレートへ移し、1x N2 supplement(Invitrogen)、2μM Dorsomorphinおよび10μM SB431542を添加したDFK5%培地にて接着培養により16日間培養し(通算24日間)、神経前駆細胞を得た。
2.アストロサイトの誘導
上記の方法で得られた神経前駆細胞をAccutase(Innovative Cell Technologies)により解離させ、マトリゲルコートした12-wellプレートを用いて、1x B27 without Vitamin A(Invitrogen)、1x Glutamax(Invitrogen)、10ng/ml BDNF、10ng/ml GDNFおよび10ng/ml NT-3を添加したNeurobasal medium(Invitrogen)にて接着培養により66日間培養した(通算90日間)。続いて、得られた細胞をAccutaseを用いて解離させ、何もコートしていない6-cmディッシュへ移し、1x B27 without Vitamin A、1x Glutamax、10ng/ml BDNF、10ng/ml GDNFおよび10ng/ml NT-3を添加したNeurobasal mediumにて接着培養により30日間培養した(通算120日間)。この時、接着しなかった細胞はアノイキスにより死滅した。この接着した細胞をAccutaseにより解離させ、何もコートしていない6-cmディッシュへ移し、1x N2 supplementを添加したDMEM/F12, Glutamax(Invitrogen)にて、接着培養により30日間培養した(通算150日間)。さらに、2度得られた細胞を解離させ同様の条件にて30日間培養し、アストロサイトを得た(通算200日間)。続いて、グルタミン取り込み試験に用いる場合は、得られた細胞を解離させ、0.1%ゼラチンコートした6-cmディッシュへ移し、1x N2 supplementを添加したDMEM/F12, Glutamaxにて培養した。以上の工程を図1に示す。
アストロサイトの評価
1.Microarray分析
上述の方法で得られたアストロサイト(通算90日目および200日目)およびプライマリーアストロサイト(Lonza)からRNeasy mini kit(Qiagen)を用いて全RNAを取り出し、Ovation Pico WTA System/ Encore Biotin Module kit(NuGENE)を用いて断片化およびビオチン付加cDNAへ変換した。このcDNAサンプルをGeneChip Human Gene 1.0 ST Array(Affymetrix)を用いてハイブリダイズさせ、G2565BA Microarray Scanner System(Agilent)によりスキャンした。スキャンしたデータはGeneSpring GX7.3.1 software(Agilent)により分析した。このように分析されたクラスター解析の結果を図2に示す。この結果より、上述のアストロサイトの誘導方法において通算90日目よりも200日目の方がよりプライマリーアストロサイトに近いことが確認された。
2.免疫染色
上述の方法で得られたアストロサイトは、4%パラホルムアルデヒド(pH 7.4)で30分間室温静置し固定した。0.2% Triton X-100を含むPBSにて洗浄し、10% donkey serumを含むPBSでブロッキングした。GFAP抗体(Dako)(1:2000希釈)を用いて4℃で一晩反応させた後、蛍光タグ2次抗体およびDAPIで染色した。染色像を図3に示す。またこの時のDAPI染色に対するGFAP陽性細胞数の割合を図4に示す。以上の結果より、得られたアストロサイトはおよそ9割GFAP陽性の細胞であることが確認された。
3.グルタミン取り込み試験
上述の方法で得られたアストロサイトを0.1%ゼラチンコートした48-wellプレートの1ウェルあたり4×104個の移し、3日間培養した。培養後、最終濃度が250 μM になるようにL-glutamate(Nacalai)を添加し、細胞外のグルタミン酸濃度をGlutamate Assay Kit colorimetric assay II(Yamasa Corporation)を用いて測定し、細胞内へのグルタミン酸の取り込み量を経時的に測定・算出した。この結果を図5に示す。得られたアストロサイトはグルタミン取り込み能を有していることが確認された。
以上より、上記の方法によりiPS細胞から機能的なアストロサイトが得られることが確認された。

Claims (25)

  1. 神経前駆細胞からアストロサイトを製造する方法であって、次の(1)から(3)の工程を含む方法;
    (1)神経前駆細胞を神経栄養因子を含有する培養液中で培養する工程、
    (2)(1)の工程で得られた細胞を解離させる工程、および
    (3)(2)の工程で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いて神経栄養因子を含有する培養液中で接着培養する工程。
  2. 前記神経栄養因子がGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子である、請求項1に記載された方法。
  3. 次の(4)および(5)の工程をさらに含む、請求項1または2に記載された方法;
    (4)(3)の工程で得られた細胞を解離させる工程、ならびに
    (5)(4)の工程で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程。
  4. さらに、前記工程(5)で得られた細胞を解離させ、コーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程を、少なくとも2回繰り返す、請求項3に記載された方法。
  5. 次の(6)および(7)の工程をさらに含む、請求項3または4のいずれか1項に記載された方法;
    (6)(5)の工程で得られた細胞を解離させる工程、ならびに
    (7)(6)の工程で得られた細胞をゼラチンコートした培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程。
  6. 前記工程(1)が66日以上の期間培養する工程である、請求項1から5のいずれか1項に記載された方法。
  7. 前記工程(3)が30日以上の期間培養する工程である、請求項1から6のいずれか1項に記載された方法。
  8. 前記工程(5)が20日以上の期間培養する工程である、請求項3から7のいずれか1項に記載された方法。
  9. 前記神経前駆細胞が、多能性幹細胞をBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含有する培養液中で培養する工程を含む方法により製造される細胞である、請求項1から8のいずれか1項に記載された方法。
  10. 前記BMP阻害剤がDorsomorphinであり、前記TGFβ阻害剤がSB431542である、請求項9に記載された方法。
  11. 前記多能性幹細胞から神経前駆細胞を製造する工程が、胚様体を形成後、接着培養させる工程を含む、請求項9または10に記載された方法。
  12. 前記神経前駆細胞がヒト神経前駆細胞である、請求項1から11のいずれか1項に記載された方法。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載の方法で製造されたアストロサイト。
  14. ニューロンとアストロサイトが混在する細胞群よりアストロサイトを選択的に培養する方法であって、次の(I)および(II)の工程を含む方法;
    (I)細胞群を解離させる工程、および
    (II)(I)の工程で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いて培養する工程。
  15. 前記工程(II)の培養する工程が、神経栄養因子を含有する培養液中で接着培養する工程である、請求項14に記載の方法。
  16. 次の(III)および(IV)の工程をさらに含む、請求項14または15に
    記載の方法;
    (III)前記工程(II)で得られた細胞を解離させる工程、ならびに
    (IV)前記工程(III)で得られた細胞をコーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程。
  17. さらに、前記工程(IV)で得られた細胞を解離させ、コーティング処理されていない培養容器を用いてGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子を含有しない培養液中で接着培養する工程を、少なくとも2回繰り返す、請求項16に記載された方法。
  18. 前記工程(II)が30日以上の期間培養する工程である、請求項14から17のいずれか1項に記載された方法。
  19. 前記工程(IV)が20日以上の期間培養する工程である、請求項16から18のいずれか1項に記載された方法。
  20. 前記ニューロンとアストロサイトが混在する細胞群が、次の(i)および(ii)の工程により多能性幹細胞から製造された細胞群である、請求項14から19のいずれか1項に記載された方法;
    (i)多能性幹細胞をBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含有する培養液中で培養する工程、および
    (ii)(i)の工程で得られた細胞を神経栄養因子を含有する培養液中で培養する工程。
  21. 前記工程(i)が、多能性幹細胞をBMP阻害剤およびTGFβ阻害剤を含有する培養液中で胚様体を形成後、接着培養させる工程である、請求項20に記載された方法。
  22. 前記BMP阻害剤がDorsomorphinであり、前記TGFβ阻害剤がSB431542である、請求項20または21に記載された方法。
  23. 前記神経栄養因子がGDNF、BDNFおよびNT-3から成るグループより選択される因子である、請求項14から22のいずれか1項に記載された方法。
  24. 前記工程(ii)が66日以上の期間培養する工程である、請求項20から23のいずれか1項に記載された方法。
  25. 前記ニューロンとアストロサイトが混在する細胞群がヒト細胞群である、請求項14から24のいずれか1項に記載された方法。
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