JP2016223206A - Pc鋼材のセット量補正治具およびその補正治具を使用した補正方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セット量補正方法は、1次緊張状態の固定リング400および可動リング500とが収納された本体部300に油圧ジャッキ700を取り付け、支圧板800と定着具とを当接させて油圧ジャッキ700によりPC鋼材を1次緊張して、その後に可動リング500に取り付けた回転棒560を軸芯周りに回転させて固定リング400および可動リング500を2次緊張状態へ遷移させ、支圧板800と本体部300とを当接させてセット量分についてPC鋼材を2次緊張し、セット量により発生した支圧板800と定着具との隙間をリングナット220を回転させることにより補正する。
【選択図】図10
Description
シムプレート方式は、たとえば特開2011−043025号公報(特許文献2)に開示されるように、通常の定着具を使用して緊張・定着作業を行った後、反力架台を設置して再緊張を行い、セット量により発生した支圧板と定着具との隙間に、シムプレートを差し込むことにより補正する。
方式では、狭小位置における作業工数が増加してしまい、作業効率が非常に悪いという問題点がある。
すなわち、本発明に係るPC鋼材のセット量補正治具は、PC鋼材を1次緊張してPC構造物に圧縮力を付与するために使用されるとともに前記PC鋼材のセット量をリングナットにより補正する2次緊張のために使用される油圧ジャッキの先端に取り付けられる。このセット量補正治具は、本体部と固定リングと可動リングとを含む。このセット量補正治具において、前記本体部は、前記PC鋼材を通す中心穴を備えた略中空円筒形状であって、支圧板側にリングナットを備えた定着具と前記PC鋼材の軸芯を対称中心とした形状の固定リングおよび可動リングとを収納して、反支圧板側に前記油圧ジャッキが取り付けられ、前記固定リングは、前記本体部の中空円筒内面に前記軸芯周りに回転不可能に設けられ、前記軸芯を中心とした所定の中心角の部分に軸心方向に同じ厚みの複数の固定支圧部を備え、前記可動リングは、前記本体部の中空円筒内面に前記軸芯周りに回転可能に設けられ、前記軸芯を中心とした所定の中心角の部分に軸心方向に同じ厚みの複数の可動支圧部を備え、前記可動リングは、前記固定支圧部と前記可動支圧部とが重なり合う1次緊張状態から前記可動リングを前記軸芯周りに回転させることにより前記固定支圧部と前記可動支圧部とが重なり合わない2次緊張状態へ遷移させるための回転棒を装着する穴部をリング外周面に備え、前記本体部は、前記穴部に装着した回転棒を前記軸芯周りに回転させる部分の外周面が切り欠かれている。
さらに好ましくは、前記Nは3であって、所定の中心角は略60°であって、前記固定支圧部および前記可動支圧部は略120°間隔で3個ずつ備え、前記可動リングを前記軸芯周りに略60°回転させて、前記1次緊張状態から前記2次緊張状態へ遷移させるように構成することができる。
また、本発明に係るPC鋼材のセット量補正方法は、上述したPC鋼材のセット量補正治具を用いた補正方法であって、リングナットを含む定着具と1次緊張状態の固定リングおよび可動リングとが支圧板側に収納された本体部の反支圧板側に油圧ジャッキを取り付けることにより前記補正治具を油圧ジャッキに取り付ける準備ステップと、前記支圧板と前記リングナットを含む定着具とを当接させて、前記油圧ジャッキを用いて前記PC鋼材を緊張して前記PC構造物に圧縮力を付与する1次緊張ステップと、前記可動リングの穴部に装着した回転棒を前記軸芯周りに回転させることにより前記可動リングを前記軸芯周
りに回転させて、前記固定リングおよび前記可動リングを2次緊張状態へ遷移させる調整ステップと、前記支圧板と前記本体部とを当接させて、少なくともセット量分について前記PC鋼材を2次緊張する2次緊張ステップと、前記セット量により発生した前記支圧板と前記定着具との隙間を前記リングナットを回転させることにより補正する補正ステップと、前記2次緊張ステップにおける緊張荷重を解放して、前記補正治具が取り付けられた油圧ジャッキを取り外す後処理ステップとを含む。
本実施の形態に係るPC鋼材のセット量補正治具およびセット量補正方法は、躯体部分に圧縮力を付与するPC構造物におけるPC鋼材の定着時における1次緊張およびPC鋼材のセット量を補正する2次緊張に反力架台を用いることなく適用される。本実施の形態に係るPC鋼材のセット量補正治具およびセット量補正方法は、特に限定されるものではないが、作業スペースに大きな制約がある、PC橋梁におけるプレキャストPC床版の取替え工法に適している。
本実施の形態に係るセット量補正方法を説明する前に、このセット量補正方法に使用されるセット量補正治具100であって、このセット量補正方法に合致させた特殊な構造を備えたセット量補正治具100について説明する。
図1にこのセット量補正治具100の1次緊張状態の二面図を、図2にこのセット量補正治具100の2次緊張状態の二面図をそれぞれ示す。このセット量補正治具100は、PC鋼材を緊張して定着させる定着具200とともに使用される。
図1および図2に加えて、図3に示すこのセット量補正治具100を構成する本体部300の二面図を参照して、本体部300について説明する。
この本体部300は、大略的には、PC鋼材600を通す中心穴360を備えた略中空円筒形状であって、支圧板側にリングナット220を備えたスリーブ210およびスリーブ210に嵌め込まれるくさびであるウェッジ(ウェッジは図示していない)から構成される定着具200とPC鋼材600の軸芯を対称中心とした形状の固定リング400および可動リング500とを収納して、反支圧板側に油圧ジャッキ700が取り付けられる。固定リング400および可動リング500は、本体部300における外周面310と後述する切欠部350とで構成される空間に、外周面310の内周面である中空円筒内面320に摺動するように収納される。以下においては、単に軸芯と記載した場合であっても、この軸芯はPC鋼材600の軸芯であるとする。
なお、限定されるものではないが、作業効率性を向上させるために、可動リング500の外径の大きさは、本体部300の中空円筒内面320に対して軸芯周りに回転摺動できる大きさであって(可動リング500の外径は中空円筒内面320の内径よりも若干小さい)、1次緊張状態から2次緊張状態へ容易に遷移できるようになっている。また、外周面310の端面は、固定リング400または/および可動リング500を挿入しやすいように角が面取りされている。
グ500を軸芯周りに回転させる回転角に基づいて設定される。本実施の形態に係るセット量補正治具100においては、可動リング500を軸芯周りに略60°回転させて1次緊張状態から2次緊張状態へ遷移させるために(回転角が略60°)切欠部350は略90°ずつが切り欠かれた形状としている。
図1および図2に加えて、図4に示すこのセット量補正治具100を構成する固定リング400の二面図、図5に示すこの固定リング400の斜視図、ならびに、図8および図9に示す固定リング400および可動リング500の斜視図を参照して、固定リング400について説明する。
なお、限定されるものではないが、作業効率性を向上させるために、固定リング400の切欠部420の大きさは、可動リング500の可動支圧部510の大きさよりも大きく(または逆)、1次緊張状態から2次緊張状態へ容易に遷移できるようになっている。
・可動リング500
図1および図2に加えて、図6に示すこのセット量補正治具100を構成する可動リング500の二面図、図7に示すこの可動リング500の斜視図、ならびに、図8および図9に示す固定リング400および可動リング500の斜視図を参照して、可動リング500について説明する。
なお、限定されるものではないが、作業効率性を向上させるために、可動リング500の可動支圧部510の大きさは、固定リング400の切欠部420の大きさよりも小さく(または逆)、1次緊張状態から2次緊張状態へ容易に遷移できるようになっている。
ここで、斜視図においては(二面図除く)可動リング500の円環面530の外周面は面取りされており固定リング400の円環面430の外周面は面取りされていない図にな
っているが、両方ともが面取りされていても構わないし、両方ともが面取りされていなくても構わないし、一方だけが面取りされていても構わない。
以上のような、本実施の形態に係るセット量補正治具100を用いたPC鋼材のセット量補正方法について、上述した図1〜図9に図10を加えた図面を参照して説明する。
・(1)準備ステップ
図1、図10(A)および図10(B)に示すように、リングナット220を含む定着具200と1次緊張状態の固定リング400および可動リング500とが支圧板側に収納された本体部300の反支圧板側に油圧ジャッキ700を取り付ける。これにより、セット量補正治具100が油圧ジャッキ700に取り付けられる。
・(2)1次緊張ステップ
次に、図1、図10(A)および図10(B)に示すように、1次緊張ステップとして、支圧板800とリングナット220を含む定着具200とを当接させて、油圧ジャッキ700を用いてPC鋼材600を緊張してPC構造物に所定の圧縮力を付与する。
次に、図1および図8に示す1次緊張状態から図2および図9に示す2次緊張状態へセット量補正治具100を遷移させる。より具体的には、可動リング500の穴部540に装着した回転棒560を軸芯周りに略60°回転させることにより可動リング500を軸芯周りに略60°回転させて、固定リング400および可動リング500を2次緊張状態へ遷移させる。このとき、図10(B)に示すように、回転棒560は本体部300の切欠部350からセット量補正治具100の外部へ突出しており、作業者は容易に回転棒560を軸芯周りに略60°回転させることができる。
・(4)2次緊張ステップ
次に、図2、図10(C)に示すように、2次緊張ステップとして、支圧板800と本体部300とを当接させて、油圧ジャッキ700を用いてPC鋼材600を2次緊張して少なくともセット量分についてPC鋼材を緊張してPC構造物に所定の圧縮力を付与して、構造計算上の圧縮力になるようにセット量を補正する。このとき、油圧ジャッキ700は、本体部300、支圧板800の順に反力を取る(受ける)ことになる。
次に、従来のリングナット方式のセット量補正と同じように、2次緊張ステップのセット量により発生した支圧板800と定着具200との隙間をリングナット220を回転さ
せることにより補正する。
・(6)後処理ステップ
次に、2次緊張ステップにおける緊張荷重を解放して、セット量補正治具100(本体部300、固定リング400および可動リング500)が取り付けられた油圧ジャッキ700を取り外す。PC構造物に複数のPC鋼材600が設けられている場合には、全てのPC鋼材について上述したステップを繰り返す。
このようにして、本実施の形態に係るセット量補正治具および/またはセット量補正方法によると、緊張・定着作業においてセット量が発生したPC構造物において、反力架台を用いて2次緊張する必要がないために、1次緊張後に油圧ジャッキを一旦取り外すステップ、次に反力架台をセットするステップ、その後に油圧ジャッキをセットするステップ、2次緊張後に反力架台を取り外すステップという4つのステップが不要となり、狭小位置において容易な作業で作業工数を削減してセット量を補正することができる。
200 定着具(定着グリップ)
210 スリーブ
220 リングナット
300 本体部
400 固定リング
500 可動リング
600 PC鋼材
700 油圧ジャッキ
Claims (7)
- PC鋼材を1次緊張してPC構造物に圧縮力を付与するために使用されるとともに前記PC鋼材のセット量をリングナットにより補正する2次緊張のために使用される油圧ジャッキの先端に取り付けられる、本体部と固定リングと可動リングとを含むPC鋼材のセット量補正治具であって、
前記本体部は、前記PC鋼材を通す中心穴を備えた略中空円筒形状であって、支圧板側にリングナットを備えた定着具と前記PC鋼材の軸芯を対称中心とした形状の固定リングおよび可動リングとを収納して、反支圧板側に前記油圧ジャッキが取り付けられ、
前記固定リングは、前記本体部の中空円筒内面に前記軸芯周りに回転不可能に設けられ、前記軸芯を中心とした所定の中心角の部分に軸心方向に同じ厚みの複数の固定支圧部を備え、
前記可動リングは、前記本体部の中空円筒内面に前記軸芯周りに回転可能に設けられ、前記軸芯を中心とした所定の中心角の部分に軸心方向に同じ厚みの複数の可動支圧部を備え、
前記可動リングは、前記固定支圧部と前記可動支圧部とが重なり合う1次緊張状態から前記可動リングを前記軸芯周りに回転させることにより前記固定支圧部と前記可動支圧部とが重なり合わない2次緊張状態へ遷移させるための回転棒を装着する穴部をリング外周面に備え、
前記本体部は、前記穴部に装着した回転棒を前記軸芯周りに回転させる部分の外周面が切り欠かれている、PC鋼材のセット量補正治具。 - 前記固定リングおよび前記可動リングは、前記PC鋼材を通す中心穴を備えた略中空円筒形状であって、所定の中心角の部分を残存させて外周面の一部が切り欠かれ、残存させた外周面により前記固定支圧部および前記可動支圧部が形成され、
前記固定支圧部および前記可動支圧部の残存させた外周面における軸芯方向の端面どうしが当接することにより1次緊張状態となり、前記固定支圧部および前記可動支圧部の切り欠いた外周面における軸芯方向の端面どうしが当接することにより2次緊張状態となる、請求項1に記載のPC鋼材のセット量補正治具。 - Nを2以上の自然数として、前記所定の中心角は略(360°/2N)であって、前記固定支圧部および前記可動支圧部は略(360°/N)間隔でN個ずつ備え、
前記可動リングを前記軸芯周りに略(360°/2N)回転させて、前記1次緊張状態から前記2次緊張状態へ遷移させる、請求項2に記載のPC鋼材のセット量補正治具。 - 前記Nは3であって、
所定の中心角は略60°であって、前記固定支圧部および前記可動支圧部は略120°間隔で3個ずつ備え、
前記可動リングを前記軸芯周りに略60°回転させて、前記1次緊張状態から前記2次緊張状態へ遷移させる、請求項3に記載のPC鋼材のセット量補正治具。 - 前記固定リングが前記本体部に一体的に形成された、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のPC鋼材のセット量補正治具。
- 請求項1〜請求項5のいずれかに記載のPC鋼材のセット量補正治具を用いた補正方法であって、
リングナットを含む定着具と1次緊張状態の固定リングおよび可動リングとが支圧板側に収納された本体部の反支圧板側に油圧ジャッキを取り付けることにより前記補正治具を油圧ジャッキに取り付ける準備ステップと、
前記支圧板と前記リングナットを含む定着具とを当接させて、前記油圧ジャッキを用い
て前記PC鋼材を緊張して前記PC構造物に圧縮力を付与する1次緊張ステップと、
前記可動リングの穴部に装着した回転棒を前記軸芯周りに回転させることにより前記可動リングを前記軸芯周りに回転させて、前記固定リングおよび前記可動リングを2次緊張状態へ遷移させる調整ステップと、
前記支圧板と前記本体部とを当接させて、少なくともセット量分について前記PC鋼材を2次緊張する2次緊張ステップと、
前記セット量により発生した前記支圧板と前記定着具との隙間を前記リングナットを回転させることにより補正する補正ステップと、
前記2次緊張ステップにおける緊張荷重を解放して、前記補正治具が取り付けられた油圧ジャッキを取り外す後処理ステップとを含む、セット量補正方法。 - 前記1次緊張ステップにおいて、前記本体部、前記固定リング、前記可動リング、前記リングナットを含む定着具、前記支圧板の順に前記油圧ジャッキの反力を受けて、
前記2次緊張ステップにおいて、前記本体部、前記支圧板の順に前記油圧ジャッキの反力を受ける、請求項6に記載のセット量補正方法。
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