JP2016222643A - 糖脂肪酸エステル、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】モノエステルの選択率の高い糖脂肪酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】糖脂肪酸エステルの製造方法は、糖と塩基性触媒とを含む水溶液を調製する工程と、その工程で得られた水溶液と、脂肪酸アルカリ金属塩と、融解している脂肪酸エステルとを混合して減圧下で撹拌して加熱することによって糖脂肪酸エステルを生成する工程と、を備え、糖脂肪酸エステルを生成する工程は、混合物から水を除去する前段の工程と、その工程の後にエステル交換を行う後段の工程とを有しており、後段の工程では、マイクロ波を照射することによって、混合物が糖の分解温度未満となるように加熱する。
【選択図】なし
【解決手段】糖脂肪酸エステルの製造方法は、糖と塩基性触媒とを含む水溶液を調製する工程と、その工程で得られた水溶液と、脂肪酸アルカリ金属塩と、融解している脂肪酸エステルとを混合して減圧下で撹拌して加熱することによって糖脂肪酸エステルを生成する工程と、を備え、糖脂肪酸エステルを生成する工程は、混合物から水を除去する前段の工程と、その工程の後にエステル交換を行う後段の工程とを有しており、後段の工程では、マイクロ波を照射することによって、混合物が糖の分解温度未満となるように加熱する。
【選択図】なし
Description
本発明は、モノエステルの選択率の高い糖脂肪酸エステルの製造方法、及びその製造方法によって得られた糖脂肪酸エステルに関する。
従来、糖と脂肪酸エステルとをエステル交換することにより、糖脂肪酸エステルを製造することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
そのような糖脂肪酸エステルの製造においては、モノエステル(モノ体)と共に、ジエステル(ジ体)、トリエステル(トリ体)なども製造されることになるが、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)やグルコース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステルのモノエステルは優れた特性を有しているため、モノエステルの含有量が多くなるように糖脂肪酸エステルを製造したいという要望があった。なお、例えば、ショ糖脂肪酸エステルのモノエステルは、抗菌性や熱安定性を有していることが知られている。
また、そのようなモノエステルは、乳化剤等の食品添加物や、化粧品、または医薬品等に用いられるため、着色や着臭のない糖脂肪酸エステルを製造したいという要望もあった。
また、そのようなモノエステルは、乳化剤等の食品添加物や、化粧品、または医薬品等に用いられるため、着色や着臭のない糖脂肪酸エステルを製造したいという要望もあった。
本発明は、上記状況においてなされたものであり、モノエステルの割合が高く、着色や着臭のない糖脂肪酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の課題に対して鋭意研究の末、マイクロ波を照射し、糖の分解温度未満となるように加熱することによって、モノエステルの割合が高く、着色や着臭のない糖脂肪酸エステルを製造できることを見いだし、発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1] 糖と塩基性触媒とを含む水溶液を調製する工程と、
当該工程で得られた水溶液と、脂肪酸アルカリ金属塩と、脂肪酸エステルとを混合して減圧下で撹拌して加熱することによって糖脂肪酸エステルを生成する工程と、を備え、
前記糖脂肪酸エステルを生成する工程は、混合物から水を除去する前段の工程と、当該工程の後にエステル交換を行う後段の工程とを有しており、
前記後段の工程では、マイクロ波を照射することによって、混合物が前記糖の分解温度未満となるように加熱する、糖脂肪酸エステルの製造方法。
[1] 糖と塩基性触媒とを含む水溶液を調製する工程と、
当該工程で得られた水溶液と、脂肪酸アルカリ金属塩と、脂肪酸エステルとを混合して減圧下で撹拌して加熱することによって糖脂肪酸エステルを生成する工程と、を備え、
前記糖脂肪酸エステルを生成する工程は、混合物から水を除去する前段の工程と、当該工程の後にエステル交換を行う後段の工程とを有しており、
前記後段の工程では、マイクロ波を照射することによって、混合物が前記糖の分解温度未満となるように加熱する、糖脂肪酸エステルの製造方法。
[2] 脂肪酸エステルと、アルカリ金属塩を溶媒に溶解させた溶液とを混合して加熱することによって脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程をさらに備え、
前記糖脂肪酸エステルを生成する工程で使用される脂肪酸アルカリ金属塩は、前記脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程で生成されたものである、[1]記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
前記糖脂肪酸エステルを生成する工程で使用される脂肪酸アルカリ金属塩は、前記脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程で生成されたものである、[1]記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
[3] 前記後段の工程では、混合物の温度が前記分解温度より25℃低い温度以上、前記分解温度未満となるように加熱する、[1]または[2]記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
[4] 前記後段の工程において、混合物が昇温するように加熱する、[1]から[3]のいずれか記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
[5] 前記糖はショ糖である、[1]から[4]のいずれか記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
[6] 前記後段の工程における加熱時間は、4時間以下である、[5]記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
[7] [1]から[6]のいずれか記載の糖脂肪酸エステルの製造方法によって得られた、前記糖脂肪酸エステルにおけるモノエステルの割合が、糖脂肪酸エステルの全量を基準として70重量%以上である糖脂肪酸エステル。
本発明による糖脂肪酸エステル、及びその製造方法によれば、マイクロ波を照射し、糖の分解温度未満となるように加熱することによって、モノエステルの割合が高く、着色や着臭のない糖脂肪酸エステルを製造することができる。
脂肪酸エステルと、アルカリ金属塩を溶媒に溶解させた溶液とを混合して加熱することによって脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程と、糖と塩基性触媒とを含む水溶液を調製する工程と、その工程で得られた水溶液と、脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程で生成された脂肪酸アルカリ金属塩と、脂肪酸エステルとを混合して減圧下で撹拌して加熱することによって糖脂肪酸エステルを生成する工程と、を備える糖脂肪酸エステルの製造方法について説明する。その糖脂肪酸エステルを生成する工程は、混合物から水を除去する前段の工程と、当該工程の後にエステル交換を行う後段の工程とを有している。また、その後段の工程では、マイクロ波を照射することによって、混合物が糖の分解温度未満となるように加熱する。
脂肪酸エステルは、例えば、脂肪酸アルキルエステルであってもよく、または、脂肪酸多価アルコールエステルであってもよい。その脂肪酸は特に限定されないが、例えば、炭素数が7以下の短鎖脂肪酸、炭素数が8〜10の中鎖脂肪酸、炭素数が12以上の長鎖脂肪酸であってもよい。また、脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸(モノエン脂肪酸)であってもよく、多価不飽和脂肪酸(ポリエン脂肪酸)であってもよい。脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、またはエルカ酸などを挙げることができる。
脂肪酸アルキルエステルにおけるアルキル基は、例えば、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基であってもよい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、またはシクロペンチル基を挙げることができる。アルキル基としては、例えば、メチル基、またはエチル基が好適である。
脂肪酸多価アルコールエステルにおける多価アルコールは、例えば、2価〜6価のものであってもよい。2価〜6価の多価アルコールとしては、例えば、グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等)、グリセロール(グリセリン)、ペンタエリトリトール、またはソルビトールを挙げることができる。
したがって、脂肪酸エステルは特に限定されないが、例えば、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、パルミトレイン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、パルミトレイン酸エチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチル、もしくはリノール酸エチル等の脂肪酸アルキルエステルであってもよく、または、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ブチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、もしくはソルビトール脂肪酸エステル等の脂肪酸多価アルコールエステルであってもよい。これらの脂肪酸エステルは、単独で用いてもよく、または複数を混合して用いてもよいが、1種類の糖脂肪酸エステルを製造する観点からは、単独で用いることが好適である。
なお、脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程における脂肪酸エステルの使用量は特に限定されないが、脂肪酸アルカリ金属塩の生成に用いられる脂肪酸エステルが、糖脂肪酸エステルの生成に用いられる脂肪酸エステルと同じであり、脂肪酸アルカリ金属塩の生成において未反応であった脂肪酸エステルを用いて糖脂肪酸エステルの生成を行う場合には、脂肪酸アルカリ金属塩の生成反応における転換率は略100%であるため、所望の脂肪酸アルカリ金属塩の生成に必要な脂肪酸エステルの量と、糖脂肪酸エステルの生成に必要な脂肪酸エステルの量とを足した量、またはそれ以上にしてもよい。一方、後から脂肪酸エステルを追加する場合には、脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程における脂肪酸エステルの使用量は、所望の脂肪酸アルカリ金属塩と同当量またはそれ以上であってもよい。
アルカリ金属塩は、リチウム、ナトリウム、またはカリウムなどのアルカリ金属の塩である。塩は、例えば、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、水素化物、またはアルコキシドであってもよい。アルカリ金属塩は特に限定されないが、例えば、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、メトキシカリウム(カリウムメトキシド)、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、またはナトリウムメトキシドであってもよい。これらのアルカリ金属塩は、単独で用いてもよく、または複数を混合して用いてもよい。このアルカリ金属塩の使用量は、脂肪酸エステルを生成する工程における脂肪酸アルカリ金属塩の必要量を生成できる量とすることが好適であり、例えば、所望の脂肪酸アルカリ金属塩と同当量であってもよい。アルカリ金属塩としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを使用することが好適である。
溶媒は、アルカリ金属塩を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、アルコール、ケトン、水から選ばれる少なくとも1種の溶媒であってもよい。アルコールは特に限定されないが、例えば、炭素数1〜5のアルコールであってもよい。炭素数1〜5のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(1−プロパノール)、イソプロパノール(2−プロパノール)、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、またはネオペンチルアルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、単独で用いてもよく、または複数を混合して用いてもよい。炭素数3〜5のケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、またはジエチルケトンを挙げることができる。これらのケトンは、単独で用いてもよく、または複数を混合して用いてもよい。その溶媒は、メタノールまたはエタノールが好適である。後から除去することが容易だからである。また、脂肪酸エステルと、アルカリ金属塩との反応によって生成されるものと同じ溶媒を用いることが好適である。例えば、メチル基またはエチル基を有する脂肪酸アルキルエステルと、アルカリ金属の水酸化物とを反応させる場合には、メタノールまたはエタノールを溶媒として用いることが好適である。また、この溶媒は反応に寄与しないため、その使用量はアルカリ金属塩が溶解する範囲において任意である。
アルカリ金属塩を溶媒に溶解させる際に、撹拌を行ってもよく、または撹拌を行わなくてもよい。また、その溶解の際に、加熱してもよく、または加熱しなくてもよい。
アルカリ金属塩を溶媒に溶解させる際に、撹拌を行ってもよく、または撹拌を行わなくてもよい。また、その溶解の際に、加熱してもよく、または加熱しなくてもよい。
脂肪酸エステルと、アルカリ金属塩の溶液とを混合した混合液において、脂肪酸エステルは、溶けていることが好適である。その混合液において、脂肪酸エステルは、例えば、融解していてもよく、または溶解していてもよい。なお、脂肪酸エステルが常温で固体である場合には、あらかじめ融解もしくは溶媒に溶解された脂肪酸エステルが、アルカリ金属塩の溶液と混合されてもよく、または、固体の脂肪酸エステルがアルカリ金属塩の溶液と混合された後に溶けてもよい。前者の場合には、例えば、固体の脂肪酸エステルが融点以上に加熱されることによって融解されていてもよく、または、固体の脂肪酸エステルが、アルコール、ケトン、ヘキサンやヘプタン等の無極性溶媒などの有機溶媒に溶解されていてもよい。固体の脂肪酸エステルを有機溶媒に溶解させる際に、加熱してもよく、または加熱しなくてもよい。また、固体の脂肪酸エステルを融解させたり、溶媒に溶解させたりする際に行われる加熱は、マイクロ波の照射によって行ってもよく、または、そうでなくてもよい。
脂肪酸エステルと、アルカリ金属塩を溶媒に溶解させた溶液とを混合して加熱すると、脂肪酸アルカリ金属塩を生成できる。なお、加熱は、マイクロ波を用いることが好適であるが、そうでなくてもよい。その加熱時には還流を行うことが好適である。加熱の温度は特に限定されないが、30℃〜200℃の範囲が好適であり、60℃以上がさらに好適である。また、加熱の時間は特に限定されないが、5分から24時間の範囲が好適であり、20分から2時間の範囲がより好適であり、30分から1時間の範囲がさらに好適である。また、減圧下で反応させることが好適である。加熱の開始時には減圧していてもよく、または常圧であってもよい。加熱の開始時には常圧である場合には、加熱と共に減圧を開始してもよい。減圧によって、1〜90kPaに減圧することが好適であり、1〜10kPaに減圧することがより好適であり、1〜4kPaに減圧することがさらに好適である。その反応によって生成される脂肪酸アルカリ金属塩のアルカリ金属の例示は上述の通りであり、脂肪酸の例示も上述の通りである。したがって、生成される脂肪酸アルカリ金属塩としては、例えば、カプリル酸カリウム、カプリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パルミトレイン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、リノール酸カリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミトレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、またはリノール酸ナトリウムを挙げることができる。この工程で生成された脂肪酸アルカリ金属塩は溶媒に溶けないため、溶媒を除去することによって、脂肪酸アルカリ金属塩を得ることができる。溶媒は、例えば、加熱や減圧を継続することによって除去できる。その脂肪酸アルカリ金属塩に、未反応の脂肪酸エステルが含まれていてもよく、または、そうでなくてもよい。なお、反応終了後、温度を下げることが好適である。その低下後の温度は特に限定されないが、例えば、100℃未満、未反応の脂肪酸エステルの融点以上であることが好適である。
糖は特に限定されないが、例えば、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖、多糖類、または糖アルコールであってもよい。単糖類としては、例えば、トリオース、テトロース、ペントース、フルクトースやグルコースなどのヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、またはデコースなどを挙げることができる。二糖類は、単糖類のホモ二糖類であってもよく、ヘテロ二糖類であってもよい。二糖類としては、例えば、ショ糖(スクロース)、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、またはセロビオースなどを挙げることができる。三糖類としては、例えば、ラフィノース、メレジトース、またはマルトトリオースなどを挙げることができる。オリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、またはマンナンオリゴ糖などを挙げることができる。多糖類としては、例えば、グリコーゲン、デンプン、セルロース、またはフルクタンなどを挙げることができる。糖アルコールとしては、例えば、テトリトール(例えば、エリトリトールなど)、ペンチトール(例えば、ペンタエリトリトール、アラビトール、リビトール、キシリトールなど)、ヘキシトール(例えば、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトールなど)、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、ソルビタン、またはドデキトールなどを挙げることができる。これらの糖は、単独で用いてもよく、または複数を混合して用いてもよい。糖としては、ショ糖を用いることが好適であるが、ショ糖と、マルトースなどの他の糖とを混合して用いてもよい。ショ糖と他の糖とを混合して用いる場合であっても、ショ糖の重量割合が、50重量%以上であることが好適であり、70重量%以上であることがより好適である。
塩基性触媒は、塩基性を有する触媒であれば特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または、金属塩であってもよい。アルカリ金属塩は、例えば、リチウム、ナトリウム、またはカリウムなどのアルカリ金属の塩である。アルカリ土類金属塩は、例えば、ベリリウム、マグネシウム、またはカルシウムなどのアルカリ土類金属の塩である。金属塩は、例えば、マンガン、亜鉛、銅、またはニッケルなどの金属の塩である。塩は、上述のように、例えば、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、水素化物、またはアルコキシドであってもよい。アルカリ金属塩は特に限定されないが、例えば、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、メトキシカリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、またはナトリウムメトキシドであってもよい。アルカリ土類金属塩は特に限定されないが、例えば、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、マグネシウムメトキシド、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、またはカルシウムメトキシドであってもよい。また、金属塩は特に限定されないが、例えば、水酸化マンガン、または水酸化亜鉛であってもよい。これらの塩基性触媒は、単独で用いてもよく、または複数を混合して用いてもよい。この塩基性触媒は、少なくとも一部が水に溶解するものである。したがって、この塩基性触媒を、水溶性触媒と呼ぶこともできる。なお、塩基性触媒としては、水に完全に溶解するものを用いることが好適である。また、この塩基性触媒は、糖のヒドロキシル基のエステル化において用いられるため、エステル化触媒と呼ぶこともできる。塩基性触媒は、脂肪酸アルカリ金属塩のアルカリ金属と同じアルカリ金属の塩であることが好適である。例えば、脂肪酸アルカリ金属塩のアルカリ金属がカリウム、またはナトリウムである場合には、塩基性触媒は、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムであることが好適である。
なお、糖と塩基性触媒とを含む水溶液を調製する工程における水の量は問わないが、後から水を除去する必要があるため、糖が溶ける範囲の最低限の水の量であることが好適である。また、塩基性触媒の量は、糖に対して、0.01〜20重量%の範囲であることが好適であり、0.1〜5重量%の範囲であることがより好適である。また、その工程において、糖や塩基性触媒を水に溶解させるため、例えば、回転撹拌や揺動撹拌等の撹拌を行ってもよい。また、その工程において、加熱してもよく、または加熱しなくてもよい。また、糖及び塩基性触媒を水に溶解させる順序は問わない。
糖脂肪酸エステルを生成する工程で使用される脂肪酸エステルの例示は、上述の通りである。なお、その脂肪酸エステルは、脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程で用いられる脂肪酸エステルと同じであってもよく、または異なっていてもよい。前者の場合には、前述のように、脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程の反応で用いられなかった未反応の脂肪酸エステルが、糖脂肪酸エステルを生成する工程で使用されてもよく、または、同じ脂肪酸エステルが新たに投入されてもよい。脂肪酸エステルが新たに投入される場合であって、投入対象の脂肪酸エステルが常温では固体である場合には、その脂肪酸エステルは融解されてから投入されてもよい。糖脂肪酸エステルの生成に用いられる脂肪酸エステルが、脂肪酸アルカリ金属塩の生成に用いられる脂肪酸エステルと同じである場合には、糖に対して、過剰量の脂肪酸エステルを用いたとしても、その脂肪酸エステルを回収して用いる際に、他の種類の脂肪酸エステルが混入しないため、再利用性がよいというメリットがある。この脂肪酸アルカリ金属塩は、糖の水溶液と脂肪酸エステルとの混合物において、乳化剤として用いられる。
また、糖脂肪酸エステルを生成する工程で使用される脂肪酸アルカリ金属塩の例示は、上述の通りであり、それらの脂肪酸アルカリ金属塩は、単独で用いられてもよく、または複数の混合で用いられてもよい。脂肪酸アルカリ金属塩の使用量は特に限定されないが、例えば、全混合物に対して、1〜50重量%であることが好適であり、糖脂肪酸エステルの生成で用いられる脂肪酸エステルが脂肪酸アルキルエステルである場合には、10〜30重量%であることがより好適である。
糖脂肪酸エステルを生成する工程では、糖を塩基性触媒の存在下で水に溶解させた水溶液と、前段の工程で生成された脂肪酸アルカリ金属塩と、脂肪酸エステルとを混合して減圧下で撹拌して加熱することによって糖脂肪酸エステルを生成する。この混合は、結果として、その水溶液と、脂肪酸アルカリ金属塩と、脂肪酸エステルとが混合されるのであれば、混合の順序は問わない。なお、脂肪酸エステルは、結果として、混合後に融解していればよい。したがって、脂肪酸エステルは、混合時に融解していてもよく、または、混合時には融解しておらず、混合後に融解してもよい。前者の場合であって、脂肪酸エステルが常温で固体である場合には、例えば、加熱することによって脂肪酸エステルを融解させてもよい。なお、この混合液には、有機溶媒が入っていないことが好適である。また、この工程で糖と混合される脂肪酸エステルは、糖1当量に対して、1〜20当量の範囲であることが好適である。このように、脂肪酸エステルの使用量は、糖と同当量または過剰量であることが好適である。この工程で行われる撹拌は、例えば、回転撹拌、揺動撹拌、超音波撹拌であってもよく、または、それらの任意の2以上の組み合わせであってもよい。その撹拌は、連続して行われてもよく、または間欠で行われてもよい。なお、糖の水溶液と脂肪酸アルカリ金属塩と脂肪酸エステルとを混合した混合物は、粘度の高い流動体である。したがって、この混合物は、粘度の高い混合液であると考えることもできる。
糖脂肪酸エステルを生成する工程は、混合物から水を除去する前段の工程と、この前段の工程の後に、水の除去された状態においてエステル交換を行う後段の工程とを有している。前段の工程では、糖の水溶液である分散質が均一に分散している状態で水を除去するために、十分な撹拌が行われることが好適である。後段の工程でも、糖と脂肪酸エステルとのエステル交換を促進する観点から、十分な撹拌が行われることが好適である。
糖脂肪酸エステルを生成する工程における前段の工程の加熱は、マイクロ波を照射することによって行われてもよく、またはそうでなくてもよい。糖脂肪酸エステルを生成する工程における後段の工程の加熱は、マイクロ波を照射することによって行われる。マイクロ波の周波数は特に限定されないが、例えば、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、24GHzであってもよく、915MHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。また、単一の周波数のマイクロ波が照射されてもよく、複数の周波数のマイクロ波が照射されてもよい。後者の場合には、例えば、複数の周波数のマイクロ波が同時に照射されてもよく、または異なる時期に照射されてもよい。異なる時期に複数の周波数のマイクロ波がそれぞれ照射される場合には、例えば、反応の開始時点において、原料に吸収されやすい周波数のマイクロ波が照射され、反応の進んだ時点において、生成物に吸収されやすい周波数のマイクロ波が照射されてもよい。また、例えば、複数の周波数のマイクロ波は、同じ位置で照射されてもよく、または異なる位置で照射されてもよい。異なる位置で複数の周波数のマイクロ波がそれぞれ照射される場合には、例えば、フロー式のリアクターの上流側の位置、すなわち生成物よりも原料の割合の多い位置において、原料に吸収されやすい周波数のマイクロ波が照射され、そのリアクターの下流側の位置、すなわち原料よりも生成物の割合の多い位置において、生成物に吸収されやすい周波数のマイクロ波が照射されてもよい。また、マイクロ波の照射は、連続で行ってもよく、または照射と休止を繰り返す間欠で行ってもよい。マイクロ波を照射すると、照射対象の温度が上昇するが、その温度が一定になるようにマイクロ波照射の強度を調整してもよく、マイクロ波照射の強度を一定にして温度は変動させてもよく、または、小刻みにマイクロ波照射の強度を変更してもよい。マイクロ波の照射対象である混合物の温度は、例えば、熱電対方式の温度計や、赤外線光ファイバー方式の温度計などの既知の温度計を用いて測定されてもよい。その測定された温度は、マイクロ波の出力(強度)の制御に用いられてもよい。マイクロ波の照射は、シングルモードで行われてもよく、またはマルチモードで行われてもよい。なお、マイクロ波の照射対象である混合物にマイクロ波吸収性を有する触媒を投入してもよく、そうでなくてもよい。製造される糖脂肪酸エステルが食品や医薬品の用途であり、その触媒を反応後に完全に除去する必要がある場合には、触媒を用いないことが好適である。
前段の工程すなわち混合物から水を除去する工程の温度は、後段の工程すなわちエステル交換を行う工程の反応温度よりも低いことが好適である。前段の工程における温度が後段のエステル交換を行う工程の反応温度と同じかまたは高い場合には、この前段の工程においてエステル交換が始まってしまい、後段の工程における糖脂肪酸エステルの収率が低くなるからである。一方、その前段の工程の温度が低すぎると水が除去しきらず、後段の工程における反応が阻害されることになる。したがって、前段の工程の混合物の温度は、常温より高く、後段の工程の反応温度よりも低いことが好ましい。糖がショ糖である場合には、例えば、前段の工程において、40℃〜80℃の範囲に加熱されることが好ましく、50℃〜80℃の範囲に加熱されることがより好ましい。また、前段の工程の時間は、5分〜24時間の範囲であることが好適であり、20分〜2時間の範囲であることがより好適であり、30分〜1時間の範囲であることがさらに好適である。水の除去は、残存している水の量が、混合物全体に対して、0.1〜2重量%となるまで行うことが好適である。
後段の工程において、混合物が糖の分解温度未満となるように加熱されるものとする。糖の分解温度以上に加熱すると、着色や着臭が生じることになり、糖脂肪酸エステルの品質が悪化するからである。なお、糖の分解温度とは、糖の分解が始まる温度である。ショ糖の短時間の加熱での分解温度は、125℃付近から始まる。後段の工程においては、例えば、糖の分解温度よりも25℃低い温度から、糖の分解温度未満の範囲に加熱されることが好適であり、糖の分解温度よりも10℃低い温度から、糖の分解温度未満の範囲に加熱されることがより好適である。後段の工程における反応温度が糖の分解温度に近い方が、より高いモノエステルの収率をより短時間で実現できるからである。糖がショ糖である場合には、後段の工程において、混合物が100℃〜120℃の範囲に加熱されることが好適であり、110℃〜120℃の範囲に加熱されることがより好適である。後段の工程において、混合物の測定温度が、「糖の分解温度−α(℃)」となるようにマイクロ波による加熱を行ってもよい。αは、正の実数である。なお、αは、小さい値であることが好適であるが、マイクロ波による温度制御のフィードバックの応答性に応じて、そのαの値を選択してもよい。具体的には、応答性が高い場合にはαの値を小さくし、応答性が低い場合にはαの値を大きくしてもよい。後段の工程の反応時間は、5分〜4時間であることが好適であり、30分〜3時間であることがより好適であり、30分〜2時間であることがさらに好適である。後段の工程の時間が長くなれば、モノエステルの選択率が低下するからである。温度は、一定であってもよく、または変化してもよい。後者の場合には、エステル交換を行う後段の工程において、例えば、混合物が昇温するように加熱されてもよい。その昇温は、例えば、線形的な温度変化によって行われてもよく、階段状の温度変化によって行われてもよく、または、その他の昇温であってもよい。なお、その後段の工程において混合物の温度が昇温するように加熱される場合には、その後段の期間において、温度が単調増加となることが好適であるが、その後段の工程の期間全体として温度が上昇していればよく、微視的には降温する期間が存在してもよい。例えば、マイクロ波を間欠で照射している場合には、そのようなことも起こりうるからである。また、後段の工程において温度が変化する場合であっても、その温度が糖の分解温度以上にならないことが重要である。なお、生成された糖脂肪酸エステルにおいて、モノエステルの含有率が多いことが好適である。例えば、糖がショ糖である場合には、生成されたショ糖脂肪酸エステルにおいて、モノエステルの重量割合が、70重量%以上であることが好適であり、80重量%以上であることがより好適である。ショ糖脂肪酸エステルのモノエステルには抗菌性のあることが知られており、また、モノエステルの含有量の多い方が水に溶けやすいため、ショ糖脂肪酸エステルを、例えば食品や飲料等に用いる場合には、モノエステルの含有量の多いことが求められるからである。また、医薬品等の用途には高純度のモノエステルが求められることがあるが、そのような場合に、モノエステルの含有量の多いものから高純度のモノエステルを精製する方がよりよいため、生成された糖脂肪酸エステルにおいてモノエステルの割合の高いことが好適である。後述する実施例で説明するように、例えば、糖がショ糖であり、後段の工程における反応温度が120℃である場合には、加熱時間が3時間以下であることが好適であり、2時間以下であることがより好適である。また、生成された糖脂肪酸エステルのモノエステルの収率の高いことが好適である。本発明では、そのようなモノエステルの高い選択率と、高い収率とをマイクロ波による加熱によって実現することができた。
前段及び後段の圧力は、1〜90kPaであることが好適であり、1〜10kPaであることがより好適である。その圧力は、前段の工程と、後段の工程とで同じであってもよく、または変化してもよい。後者の場合には、例えば、後段の工程における圧力が、前段の工程における圧力よりも高くてもよい。
糖脂肪酸エステルを生成する工程においてエステル交換が行われることにより、糖脂肪酸エステルが生成される。糖脂肪酸エステルは特に限定されないが、例えば、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖パルミトレイン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖リノール酸エステル、マルトースラウリン酸エステル、マルトースオレイン酸エステル、フルクトースラウリン酸エステル、フルクトースパルミチン酸エステル、フルクトースオレイン酸エステル、グルコースカプリル酸エステル、グルコースカプリン酸エステル、またはグルコースパルミチン酸エステルなどであってもよい。糖脂肪酸エステルを生成する後段の工程において、エステル交換を行った後に混合物を冷却してもよい。モノエステルがジエステルとなることを防止するためである。
なお、生成された糖脂肪酸エステルを抽出する方法としては、通常の方法を用いることができる。例えば、糖脂肪酸エステルを生成する工程における生成物に水と有機溶媒(例えば、メチルエチルケトンや非水溶性のアルコール等)を加えて撹拌すると、水の層と有機溶媒の層との2層に分かれる。有機溶媒には、未反応の脂肪酸エステルや糖脂肪酸エステルが含まれる。また、水には、未反応の糖や脂肪酸アルカリ金属塩が含まれる。その有機溶媒から糖脂肪酸エステルを結晶化させて抽出することなどによって、糖脂肪酸エステルを抽出することができる。
以上のように、本発明による糖脂肪酸エステルの製造方法、及びその製造方法によって得られた糖脂肪酸エステルによれば、糖脂肪酸エステルを生成する工程における後段の工程において、混合物を糖の分解温度未満となるように加熱することによって、着色や着臭のない糖脂肪酸エステルを製造することができる。また、マイクロ波によって加熱することにより、モノエステルの選択率と収率の高い糖脂肪酸エステルを短時間で得ることができるようになる。また、糖脂肪酸エステルを生成する工程において、有害な有機溶媒を使用しないため、食品や医薬品、化粧品の用途に好適な糖脂肪酸エステルを製造することができる。
なお、上記説明では、糖脂肪酸エステルの製造方法が、脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程を備えている場合について説明したが、そうでなくてもよい。あらかじめ脂肪酸アルカリ金属塩が用意されている場合には、その脂肪酸アルカリ金属塩を、糖脂肪酸エステルを生成する工程において用いてもよい。また、その脂肪酸アルカリ金属塩は、上記説明とは異なる方法によって生成されたものであってもよい。
[実施例、比較例]
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明するが、これらの実施例は例示的なものであり、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明するが、これらの実施例は例示的なものであり、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
三口フラスコに60℃まで加熱し融解させたパルミチン酸メチル98gと、水酸化カリウム3.8gをメタノール30mlに溶解させた溶液とを投入した。三口フラスコを撹拌機及び温度計を備え付けたマイクロ波リアクター内に設置した後、マイクロ波を照射し、撹拌しながら100℃まで加熱し、10分間還流を行った。その後4kPaまで減圧しながら100℃を維持し、パルミチン酸カリウムを生成させた。また、この状態を維持して十分にメタノールを除去した後に、内容物を60℃まで冷却した。内容物は、パルミチン酸メチル80g、パルミチン酸カリウム20gの混合物である。ショ糖12g及び水酸化カリウム0.5gを、水12gに溶解させた水溶液をこの三口フラスコに投入した。三口フラスコ内の混合物を60℃に保った状態で撹拌しながら圧力を下げていき、4kPaまで減圧した。この状態を30分間維持して水を蒸発させた。その後、撹拌及び減圧度を維持したまま120℃まで昇温させ、1時間エステル交換反応を行い、ショ糖パルミチン酸エステルを生成させた。なお、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。したがって、ショ糖の分解開始温度未満で反応を行うことができたことになる。反応終了後、アセトンを用いて反応物からショ糖パルミチン酸エステルを得た。高速液体クロマトグラフ及びガスクロマトグラフにてショ糖パルミチン酸エステルの収率、及びモノエステルの割合を分析した。その結果は、図1に示す通りである。
三口フラスコに60℃まで加熱し融解させたパルミチン酸メチル98gと、水酸化カリウム3.8gをメタノール30mlに溶解させた溶液とを投入した。三口フラスコを撹拌機及び温度計を備え付けたマイクロ波リアクター内に設置した後、マイクロ波を照射し、撹拌しながら100℃まで加熱し、10分間還流を行った。その後4kPaまで減圧しながら100℃を維持し、パルミチン酸カリウムを生成させた。また、この状態を維持して十分にメタノールを除去した後に、内容物を60℃まで冷却した。内容物は、パルミチン酸メチル80g、パルミチン酸カリウム20gの混合物である。ショ糖12g及び水酸化カリウム0.5gを、水12gに溶解させた水溶液をこの三口フラスコに投入した。三口フラスコ内の混合物を60℃に保った状態で撹拌しながら圧力を下げていき、4kPaまで減圧した。この状態を30分間維持して水を蒸発させた。その後、撹拌及び減圧度を維持したまま120℃まで昇温させ、1時間エステル交換反応を行い、ショ糖パルミチン酸エステルを生成させた。なお、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。したがって、ショ糖の分解開始温度未満で反応を行うことができたことになる。反応終了後、アセトンを用いて反応物からショ糖パルミチン酸エステルを得た。高速液体クロマトグラフ及びガスクロマトグラフにてショ糖パルミチン酸エステルの収率、及びモノエステルの割合を分析した。その結果は、図1に示す通りである。
[実施例2]
エステル交換反応の時間を1時間から2時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応の時間を1時間から2時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
[実施例3]
エステル交換反応の時間を1時間から3時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応の時間を1時間から3時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
[実施例4]
エステル交換反応時の温度を120℃から110℃に変更した以外は、実施例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応時の温度を120℃から110℃に変更した以外は、実施例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
[実施例5]
エステル交換反応の時間を2時間から4時間に変更した以外は、実施例4と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応の時間を2時間から4時間に変更した以外は、実施例4と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
[実施例6]
エステル交換反応時の温度を120℃から100℃に変更した以外は、実施例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応時の温度を120℃から100℃に変更した以外は、実施例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
[実施例7]
エステル交換反応の温度を前半の1時間は110℃にし、後半の1時間は120℃にして合計2時間のエステル交換反応を行った以外は、実施例1と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。なお、110℃から120℃までの昇温は即座に行い、その際にも減圧度を維持した。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応の温度を前半の1時間は110℃にし、後半の1時間は120℃にして合計2時間のエステル交換反応を行った以外は、実施例1と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。なお、110℃から120℃までの昇温は即座に行い、その際にも減圧度を維持した。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
[比較例1]
マイクロ波の照射による加熱を、オイルバスによる加熱(従来加熱)に変更した以外は、実施例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合には、エステル交換反応時に反応液が茶褐色に着色し、ショ糖の焦げた臭いがした。結果は、図1に示す通りである。
なお、エステル交換反応時の温度を120℃から110℃に変更した場合にも、比較例1と同様に、反応液が茶褐色に着色した。
マイクロ波の照射による加熱を、オイルバスによる加熱(従来加熱)に変更した以外は、実施例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合には、エステル交換反応時に反応液が茶褐色に着色し、ショ糖の焦げた臭いがした。結果は、図1に示す通りである。
なお、エステル交換反応時の温度を120℃から110℃に変更した場合にも、比較例1と同様に、反応液が茶褐色に着色した。
[比較例2]
エステル交換反応時の温度を120℃から100℃に変更し、そのエステル交換反応の時間を2時間から1時間に変更した以外は、比較例1と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合には、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応時の温度を120℃から100℃に変更し、そのエステル交換反応の時間を2時間から1時間に変更した以外は、比較例1と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合には、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
[比較例3]
エステル交換反応の時間を1時間から2時間に変更した以外は、比較例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応の時間を1時間から2時間に変更した以外は、比較例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
[比較例4]
エステル交換反応の時間を1時間から4時間に変更した以外は、比較例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
エステル交換反応の時間を1時間から4時間に変更した以外は、比較例2と同様にしてショ糖パルミチン酸エステルの生成を行った。この場合にも、反応開始から反応終了まで着色や着臭はなかった。結果は、図1に示す通りである。
従来加熱において、着色や着臭が発生しないようにするためには、温度を下げなくてはならないことになる。また、従来加熱において温度を下げてショ糖脂肪酸エステルの生成を行った場合には、比較例2〜4の結果から分かるように、モノエステルの収率が高くなると、モノエステルの重量割合が低くなり、モノエステルの重量割合が高くなると、モノエステルの収率が下がることになる。一方、マイクロ波加熱を行った実施例1〜7の場合には、比較例2〜4と比較して、モノエステルの高い収率と、高い重量割合とを両立することができている。特に、70重量%以上のモノエステルの重量割合でありながらも、収率が、比較例2〜4の1.5倍以上となっている。また、実施例2では、そのようなモノエステルの高収率、高重量割合を、短時間で実現することができている。
図2は、実施例1〜3と、比較例2〜4とのモノエステルの収率と、モノエステルの重量割合との時間変化を示すグラフである。ショ糖脂肪酸エステルの生成においては、まず、モノエステルが生成され、そのモノエステルからジエステルが生成され、そのジエステルからトリエステルが生成されるというように反応が進んでいくため、実施例1〜3の収率の変化で示されるように、モノエステルの収率は、時間の経過に応じて徐々に高くなり、途中から低下に転じることになる。また、モノエステルの割合は、時間の経過に応じてジエステル等が生成されるため、100%から徐々に低下していくことになる。
図2において、マイクロ波加熱におけるモノエステルの収率の時間変化は、従来加熱におけるモノエステルの収率の時間変化に対して、時間が1/2より小さく短縮されていることが分かる。なぜなら、従来加熱の4時間までの収率の変化が単調増加であると仮定すると、例えば、従来加熱の2時間の収率に対応するマイクロ波加熱の時間は1時間より短く、従来加熱の4時間の収率に対応するマイクロ波加熱の時間も2時間より短いからである。一方、マイクロ波加熱におけるモノエステルの割合の時間変化は、従来加熱におけるモノエステルの割合の時間変化に対して、時間が1/2まで短縮されていないことが分かる。なぜなら、比較例3のモノエステルの重量割合(83%)は、実施例1のモノエステルの重量割合(85%)よりも小さいからである。このように、従来加熱をマイクロ波加熱に変更した場合に、モノエステルの収率の方が、モノエステルの割合よりも時間方向がより短く短縮されていることが分かる。そのような差が存在することによって、マイクロ波加熱では、反応時間の短い範囲(例えば、反応時間が4時間以内の範囲など)において、モノエステルの高収率と高選択率とを同時に実現できることになる。このことは、ショ糖と同じように複数のヒドロキシル基を有し、その複数のヒドロキシル基が順番にエステル化されていく糖脂肪酸エステルの製造においても同じであると考えられる。したがって、複数のアルコール性ヒドロキシル基を有している、マルトースやラクトース等の二糖、フルクトースやグルコース等の単糖から糖脂肪酸エステルを製造する際にも、マイクロ波加熱を行うことによって、従来加熱よりも短時間で、モノエステルの高収率、高選択率を実現できることになると考えられる。
また、実施例7で示されるように、エステル交換反応時において反応温度を段階的に高くすることによって、モノエステルのより高い収率と、モノエステルのより高い選択率とを両立できることが分かる。したがって、エステル交換反応時に、混合物が昇温するように加熱することにより、モノエステルのより高い収率と、モノエステルのより高い選択率とを両立できると考えられる。
また、実施例2、4、6の結果を比較することにより、糖の分解温度未満の範囲においては、反応温度のより高いほうが、モノエステルのより高い収率を実現できることがわかる。したがって、糖の分解温度により近い反応温度で反応させることが好適であることが分かる。
なお、本発明は、以上の実施例に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
本発明による糖脂肪酸エステルの製造方法によって得られた糖脂肪酸エステルは、例えば、食品、化粧品、医薬品等の分野において利用することができる。
Claims (7)
- 糖と塩基性触媒とを含む水溶液を調製する工程と、
当該工程で得られた水溶液と、脂肪酸アルカリ金属塩と、脂肪酸エステルとを混合して減圧下で撹拌して加熱することによって糖脂肪酸エステルを生成する工程と、を備え、
前記糖脂肪酸エステルを生成する工程は、混合物から水を除去する前段の工程と、当該工程の後にエステル交換を行う後段の工程とを有しており、
前記後段の工程では、マイクロ波を照射することによって、混合物が前記糖の分解温度未満となるように加熱する、糖脂肪酸エステルの製造方法。 - 脂肪酸エステルと、アルカリ金属塩を溶媒に溶解させた溶液とを混合して加熱することによって脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程をさらに備え、
前記糖脂肪酸エステルを生成する工程で使用される脂肪酸アルカリ金属塩は、前記脂肪酸アルカリ金属塩を生成する工程で生成されたものである、請求項1記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。 - 前記後段の工程では、混合物の温度が前記分解温度より25℃低い温度以上、前記分解温度未満となるように加熱する、請求項1または請求項2記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
- 前記後段の工程において、混合物が昇温するように加熱する、請求項1から請求項3のいずれか記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
- 前記糖はショ糖である、請求項1から請求項4のいずれか記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
- 前記後段の工程における加熱時間は、4時間以下である、請求項5記載の糖脂肪酸エステルの製造方法。
- 請求項1から請求項6のいずれか記載の糖脂肪酸エステルの製造方法によって得られた、前記糖脂肪酸エステルにおけるモノエステルの割合が、糖脂肪酸エステルの全量を基準として70重量%以上である糖脂肪酸エステル。
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