JP2016221525A - 自動予熱装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 鋼板と鋼板の角継手部分を被溶接部として有する箱形断面柱fの当該被溶接部を予備加熱する自動予熱装置1であって、鋼板に沿って移動可能な予熱用台車2と、予熱用台車2に備えられ鋼板を表面側から加熱する加熱部5と、ワイヤw5を含む溶接手段を備え鋼板に沿って移動可能な溶接用台車w1に対し、溶接用台車w1よりも先に移動する態様で予熱用台車2を連結する連結部6と、を備え、加熱部5は、溶接用台車w1の移動に伴い予熱用台車2が溶接用台車w1よりも先に移動することで、溶接手段が鋼板の被溶接部を溶接する前に鋼板を表面側から加熱し、連結部6は、加熱によって、鋼板の表面及び裏面の温度が所定の予熱温度となるタイミングで溶接手段が被溶接部を通過するように予熱用台車2と溶接用台車w1を連結する。
【選択図】図3
Description
例えば、超高層ビルの柱材として、肉厚の鋼板を組み合わせた箱型断面柱が用いられている。
この種の構造物は、一般に、長尺の鋼板を所定形状に組み合わせ、継手部分を、アーク溶接等により溶接することで製作される。
ところが、鋼板の溶接においては、溶接箇所が局所的にかつ急速に高温加熱されることから、当該溶接箇所が溶接後に急冷し、これにより金属組織が硬化して低温割れと呼ばれる溶接不良を生じることがある。
そこで、このような低温割れに対し、溶接を行う前に、予め溶接箇所の周辺をガスバーナーや電気ヒータ等によって規定の温度まで加熱する予熱処理が知られている。
予熱処理によれば、溶接箇所の周辺を広く加熱することで、溶接箇所の冷却を遅らせることができるため、低温割れを効果的に防ぐことができる。
このような予熱処理に関し、特許文献1〜2には、所定の走行手段により走行しながら溶接を行う自動溶接機と連動する予熱装置であって、自動溶接機よりも先行走行しながら予熱処理を行う自動予熱装置が記載されている。
まず、特許文献1の自動予熱装置(自動溶接用予熱装置)は、自動溶接機と同速度でかつ同自動溶接機に先行しながら被溶接部材を予熱する構成としている(段落[0009]等参照)。
ところが、「自動溶接機と同速度でかつ同自動溶接機に先行する」構成によれば、長尺の被溶接部材に対し連続的に予熱を行うことはできても、この構成だけでは、時間の経過とともに移動する被溶接部材の溶接箇所に対し、常に適切な予熱温度で溶接することはできない。
しかしながら、この自動予熱装置は、被溶接部材の表面温度について予熱の温度調整を行うものであり、被溶接部材の裏面温度については、考慮されていない。
このため、肉厚の鋼板の溶接を行う際に、溶接箇所が十分に規定温度に到達していないまま、不適切に溶接が行われることが考えられる。特に、板厚が60mmを超える鋼板については、一般に、開先に対して複数回溶接を重ねて行うこと(多パス溶接)が求められるが、初回パス時の溶接においては、予熱が不十分である裏面に近い領域が溶接対象となるため、低温割れを生じ易い。
ところが、箱形断面柱については、鋼板をボックス状に仮組立した状態で、しかも、内部空間を節状に鋼板(ダイヤフラム)により仕切った状態で行われることから、加熱手段だけでなく、温度センサ等を箱形断面柱の内部空間において移動させながら、鋼板の裏面の温度を連続的に検出することは物理的に困難である。
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る自動予熱装置(実線部)1は、自動溶接装置(破線部)WとともにレールR上に配置され、当該自動溶接装置Wとは、連結部6によって連結されている。
自動溶接装置Wは、レールR上を走行しながら、レールRに沿って配置された構造物の被溶接部に対する溶接を自動的に行い、自動予熱装置1は、このレールR上を、自動溶接装置Wよりも先に走行しながら、被溶接部の周辺を加熱することで、溶接の前処理である予備加熱を自動的に行う。
以下、自動溶接装置Wを説明したうえで、本発明の自動予熱装置1について詳細に説明する。
本実施形態では、超高層ビル等に用いられる箱形断面柱(構造物)fの製作を例に挙げ、箱形断面柱fをなす肉厚の鋼板の角継手部分(角部)を被溶接部として説明する。
自動溶接装置Wは、図1に示すように、レールR上を自走可能な溶接用台車w1と、この溶接用台車w1上に支持されたフラックスホッパw2,トーチw3,ワイヤ供給装置w4などの溶接手段とを備え、溶接用台車w1を定速走行させながら、これらの溶接手段が、レールRに沿って配置された箱形断面柱fの鋼板の継手部分に対し、全長に亘って連続的に溶接を行う。
具体的には、鋼板の角継手部分に施した図示しない開先に沿ってフラックスホッパw2によりフラックスを上方から散布しつつ、ワイヤ供給装置w4によりフラックスで覆われた開先にワイヤw5を送り込みながら、トーチw3により電極化されたワイヤw5と鋼板の間に発生させたアークによりこれらを溶融接合するサブマージアーク溶接を行う。
このようにすると、被溶接部の上部をなす上部鋼板(上部被溶接部)f1の両側の角継手部分を同時に溶接することができる。
このため、上部鋼板f1の角継手部分を片側ずつ溶接したときに、溶接側の鋼板のみが熱膨張して変形する不具合を防ぐことができ、また、溶接を効率よく行うことができる。
図1〜図3に示すように、本実施形態の自動予熱装置1は、角部に被溶接部を有する箱形断面柱fに対し、この箱形断面柱fの長手方向に沿って敷設されたレールR上を走行可能な予熱用台車2と、予熱用台車2に備えられ、鋼板の被溶接部を表面側から加熱する加熱部5と、溶接用台車w1と予熱用台車2とを連結する連結部6と、を設けている。
以下、自動予熱装置1の各構成、動作、及び連結部6における長さ調節について、順に説明する。
予熱用台車2は、レールR上において、溶接用台車w1の進行方向に配置され、当該溶接用台車w1と連結部6を介して連結されている。
予熱用台車2は、非自走式の走行手段であり、連結された溶接用台車w1の自走走行に伴って、溶接用台車w1より先行して走行する。
また、予熱用台車2は、加熱部5を支持している。
以下、予熱用台車2における加熱部5の支持構成について説明する。
架台21の後側には、電動シリンダ23が配置され、ロッド231の端部が架台21と接続されている。
これにより、電動シリンダ23を駆動させロッド231を伸縮させることによって、架台21上に立設された支柱22を、箱形断面柱fに向かって進退させることができる。
また、支柱22の頂部(台座32の上部)には、電動シリンダ30が配置され、ロッド301の端部がフレーム支持部材31と接続されている。
これにより、電動シリンダ30を駆動させ、ロッド301を伸縮させることによって、フレーム33を上下方向に移動させることができる。
各加熱コイル支持部材41の前側の端部には、中空の筒状部材42が設けられ、これに筒状部材42より長いポール部材43が挿通されている。
ポール部材43は、上部に鍔状のストッパー44が設けられ、これを筒状部材42に挿通した状態で、下部に上面加熱コイル51(上面加熱部)が取り付けられている。
このため、上面加熱コイル51の真下に箱形断面柱fを配置し、加熱コイル支持部材41を所定の高さにセットすることによって、上部鋼板f1の表面を、上面加熱コイル51が、その重さにより押圧しつつ、上下動可能な状態にすることができる。
対向する二つのブラケット45間には、三本のシャフト部材(前側から順に、最前側シャフト459、前側シャフト451、後側シャフト452)が設けられている。
前側シャフト451の両端には、前側バー453が取り付けられ、後側シャフト452の両端には、後側バー454が取り付けられ、その前側バー453及び後側バー454の下端には受け台53が取り付けられている。
受け台53は、加熱面521が前方向を向く態様で側面加熱コイル52(側面加熱部)を支持している。
これにより、側面加熱コイル52は、前側シャフト451及び後側シャフト452の軸を基点とした振り子状の回動動作が可能となる。
具体的には、図4(i),(ii)に示すクランク板455が、一の頂点部(図4において右上側の頂点部)が前側シャフト451に軸支されることで、この前側シャフト451の軸を基点として回動できるようにしている。
また、クランク板455の上辺の中間部分(図4において右上側の頂点部から左上側の頂点部に至る縁辺の略中間の地点)には、フレーム33の頂部(台座40の上部)に設けた電動シリンダ34のロッド341(伸縮部材)の端部342が接続されている。
また、クランク板455の右下側の頂点部は、他のシャフト部材(以下、ストッパーシャフト456という。)により貫通され、このストッパーシャフト456の両端は、前側シャフト451の両端に取り付けられた短めのバー部材(以下、ストッパーバー457という。)によって支持されている。
つまり、ストッパーシャフト456は、前側バー453の前側に位置する状態で、ストッパーバー457により支持されている。
ロッド341の伸長により台座40がレール部材36の下端に到達すると、台座40は前記停止部材によって下方向への移動が停止される。
上面加熱コイル51は、この状態において、上部鋼板f1を自重により押圧しつつ、上下方向に遊動可能な状態になるように、レール部材36の下端と加熱コイル支持部材41との上下方向の位置関係を調整している(図6(iv)参照)。
そして、この状態からロッド341をさらに伸長させてロッド341の端部342を下方向に移動させると、図4(i)に示すように、クランク板455が矢印aの方向に回動し、ストッパーシャフト456が前側に移動する。
これにより、前側バー453及び後側バー454によって振り子状に支持されている側面加熱コイル52が前側に移動する(図4(i)→(ii))。
このため、前側シャフト451のほぼ真下に配置された箱形断面柱fの側部鋼板f2(被溶接部の側部をなす側部被溶接部)に対し、側面加熱コイル52の重さの水平成分によって押圧することができ、簡易な機構によって、側部鋼板f2の表面を移動しながら連続的に加熱するようにすることができる。
また、ロッド341を低速に降下させることによって、側面加熱コイル52を側部鋼板f2に対し緩やかに当接させることができる(図6(iv)→(v)参照)。
このため、側面加熱コイル52の位置決めに際し、衝撃を受けにくくすることができ、衝撃による故障をなくすことができる。
これにより、前側バー453及び後側バー454が、前側シャフト451及び後側シャフト452の軸を基点として回動する。
この結果、前側バー453及び後側バー454に支持されている側面加熱コイル52が後側に移動する。
クランク板455は、当該クランク板455の後部458が後側シャフト452に当接するまで回動し、ロッド341の端部342がそれ以上上昇すると、後側シャフト452及び前側シャフト451が引き上げられる。
これにより、加熱コイル支持部材41及びブラケット45が上方向に引き上げられ、上面加熱コイル51及び側面加熱コイル52が上方向に移動する。
この弾性部材460は、側面加熱コイル52の長手方向に沿って2本設けられた前側バー453に対応して、二つ設けられる。
このようにすると、弾性部材460を設けない場合には、ロッド341が制限長まで伸長された場合に、前側バー453及び後側バー454は、鉛直に吊り下がった状態となるが(図4(ii)参照)、弾性部材460を設けることによって、その付勢力によって、前側バー453及び後側バー454を、より回動させることができる。
具体的には、前側バー453及び後側バー454の端部を、鉛直方向よりさらに前側に移動させることができる。
このため、箱形断面柱fの配置が斜めに傾いた状態であっても、側面加熱コイル52を配置し直すことなく側部鋼板f2の傾きに沿って密着させながら適切に予熱処理を行うことができる。
また、テーパ状など特殊な形状の箱形断面柱fを予熱する場合であっても、側面加熱コイル52の加熱面521を側部鋼板f2に密着させながら適切に予熱することができる。
このため、側面加熱コイル52の位置がずれたとしても、側面加熱コイル52を配置し直すことなく予熱処理を行うことができ、また、正確な操作でなくとも側面加熱コイル52の位置決めをすることができる。
上面加熱コイル51及び側面加熱コイル52は、上述したように、加熱コイル支持部材41等の部材によって予熱用台車2上に支持される。
本実施形態の加熱部5は、コイル部材やコイル部材に対する電力供給や冷却に必要な部品を内蔵するために直方体状となっており、コイル部材が配置される面を加熱面として備える。
加熱部5によれば、加熱面を鋼板に当接した状態で、高周波電源によりコイル部材に電力を供給することで、鋼板の表面に渦電流を発生させ、これにより生ずるジュール熱を利用して鋼板を表面側から急速に高温加熱することができる。
連結部6は、予熱用台車2を溶接用台車w1の進行方向に配置した状態で連結することで、予熱用台車2を溶接用台車w1より先に走行させるようにしている。
これにより、後行する自動溶接装置Wが溶接を行う前に、先行する予熱用台車2が溶接箇所を通過し、この通過の際、当該予熱用台車2上に支持された加熱部5が溶接箇所を自動的に予熱するようにしている。
また、連結部6は、長さの変更が可能な棒状の部材であり、溶接されるタイミング、すなわち、溶接用台車w1が溶接箇所を通過するときの当該溶接箇所の温度が所定の予熱温度の範囲に含まれるように、連結部6の長さによって溶接用台車w1と予熱用台車2との間隔を調節できるようにしている。
この「連結部6における長さ調節」については後述する。
センサ7は、加熱部5よりも進行方向に設け、例えば、図1に示すように、フレーム支持部材31の上部に照射面を下側に向けて設置する。
このようにすると、上部鋼板f1の表面からの反射光の測定値から上部鋼板f1の表面とセンサ7との間の距離を上部鋼板f1の高さとして求めることができ、この情報を、加熱部5の移動に応じ、その移動の前に検出することができる。
センサ7によって検出された上部鋼板f1の高さは、後記「側面加熱コイルの高さ調整」において利用される。
次に、自動予熱装置1の動作について説明する。
図5は、自動予熱装置1の構成を示すブロック図である。
自動予熱装置1は、図5に示すように、操作部12と、入力部13と、出力部14とを備え、これらが図示しない信号ケーブル等を介して制御部15と通信可能に接続されている。
操作部12は、例えば、「前」、「後」、「上」、「下」、「着」、「脱」、「倣」などの押下式ボタンを備えた操作手段であり、それぞれのボタン操作に対応する識別信号を制御部15に送る。
入力部13は、各種情報や信号の入力インタフェースであり、例えば、センサ7によって検出された上部鋼板f1の高さ情報を入力する。
出力部14は、各種情報や信号の出力インタフェースであり、例えば、電動シリンダにロッドの伸縮に関する命令信号を出力したり、設定温度に関する情報を加熱部5に出力する。
例えば、移動手段として動作することで、自動予熱装置1を使用するに際し、所定の操作により加熱部5を支持する支持部材を移動する制御を行う。
これにより、箱形断面柱fの配置、大きさ及び形状に合うように加熱部5の位置決めを行う。
以下、加熱部5の位置決めに関する制御について図6を参照しながら説明する。
まず、加熱部5の横方向の位置決めを行う。
制御部15は、「前」ボタンの操作に応じ、操作部12から「前」ボタンの識別信号を受信すると、電動シリンダ23に対する命令信号であってロッド231の伸長を求める信号を出力部14に出力させる。
電動シリンダ23は、出力部14から命令信号を受信すると、ロッド231を伸長する動作を行う。
ロッド231の伸長に伴いロッド231の端部に接続された架台21上に立設された支柱22が前方向に移動し、支柱22の移動に基づくフレーム支持部材31の前方向への移動に伴って、フレーム支持部材31に支持された上面加熱コイル51及び側面加熱コイル52が前方向に移動する。
例えば、上面加熱コイル51及び側面加熱コイル52は、当初、図6(i)に示す位置に配置されているものとする。
この場合に、上述した操作を行うことで、上面加熱コイル51の加熱面511が上部鋼板f1の角部に対応する位置になるように移動させる(図6(ii)参照)。これにより、加熱部5の横方向の位置が決定する。
次に、加熱部5を下方向へ移動する。
制御部15は、「下」ボタンの操作に応じ、操作部12から「下」ボタンの識別信号を受信すると、電動シリンダ30に対する命令信号であって、ロッド301の伸長を求める信号を出力部14に出力させる。
電動シリンダ30は、出力部14から命令信号を受信すると、ロッド301を伸長する動作を行う。
ロッド301の伸長に伴い当該ロッド301の端部に接続されたフレーム支持部材31が下方向に移動し、この移動に伴って、上面加熱コイル51及び側面加熱コイル52が下方向に移動する。
上面加熱コイル51及び側面加熱コイル52が下方向に移動中に、センサ7が検出した高さが基準の高さに到達すると、移動を停止する制御を行う(図6(iii)参照)。
このように、まず、ロッド301により加熱部5を基準の高さに合わせ、次の段階でロッド341により加熱部5の最終的な高さを決定することによって、ロッド301の高速な伸長動作により加熱部5を高速に移動させ、次の段階で、ロッド341の低速移動により加熱部5を緩やかに鋼板に当接させることができる(後記「着地動作」参照)。
上面加熱コイル51と側面加熱コイル52の着地動作を行う。
まず、上面加熱コイル51の上部鋼板f1に対する着地動作を行う。
制御部15は、「着」ボタンの操作に応じ、操作部12から「着」ボタンの識別信号を受信すると、出力部14に、電動シリンダ34に対する命令信号であって、ロッド341の伸長を求める信号を出力させる。
電動シリンダ34は、出力部14から命令信号を受信すると、ロッド341を伸長する動作を行う。
この移動により、まず、上面加熱コイル51の加熱面511が上部鋼板f1の表面を当接し、その後、台座40がレール部材36の下端に到達すると、台座40及び加熱コイル支持部材41の下方向への移動が停止され、この状態において、上面加熱コイル51が、自重により上部鋼板f1を押圧しつつ上下動可能な高さに支持される。
これにより、上面加熱コイル51の着地動作は完了するとともに、側面加熱コイル52が、加熱面521の上縁と上部鋼板f1の表面とが一致する高さで支持される(図6(iv)参照)。
具体的には、前述したように、ロッド341に接続されたクランク板455が、ロッド341の伸長によって回動し、この回動に応じて、クランク板455に支持されるストッパーシャフト456が前方に移動することから、前側バー453及び後側バー454が前方に回動することで、これらのバー部材453,454に支持される側面加熱コイル52が振り子の動作を行って前方向に移動する(図4参照)。
これにより、側面加熱コイル52の側部鋼板f2に対する着地動作は完了する。
上述の制御に加え、予熱用台車2が進行している間、上部鋼板f1の高さに合わせて、側面加熱コイル52の高さを自動的に調整する制御が可能である。
具体的には、制御部15は、加熱部5の位置決めが行われた後、「倣」ボタンを示す識別信号を入力すると、高さ調整モードに移行する。
高さ調整モードでは、制御部15は、一定の間隔(例えば、1秒間隔)でセンサ7から入力される上部鋼板f1の高さ情報を参照する。つまり、予熱処理を進行しながら上部鋼板f1の高さを全長に亘り取得するようにしている。
そして、側面加熱コイル52の高さを、上部鋼板f1の高さに合わせて上方向又は下方向に移動させる制御を行う(移動制御手段)。具体的には、側面加熱コイル52の上縁が上部鋼板f1の表面と一致するように、電動シリンダ34に対しロッド341を伸縮させる命令を行う。
これにより、箱形断面柱fの上部鋼板f1における上下方向の変形に対し、側面加熱コイル52の高さを合わせることができ、側部鋼板f2の予熱処理を適切に行うことが可能となる。
次に、連結部6における長さ調節について説明する
連結部6は、溶接用台車w1と予熱用台車2とを連結することで、自動予熱装置1を自動溶接装置Wより先行させる機構を有するとともに、自動予熱装置1と自動溶接装置Wの走行間隔を調節する機構を有する。
具体的には、図7に示すように、連結部材61の両側を、溶接用台車w1の連結具62と、予熱用台車2のフレーム63に接続することで自動溶接装置Wと自動予熱装置1とを連結するようにしている。
これにより、連結部6は、長さの異なる複数の連結部材61を取り替えることができ、これにより、連結部6の長さを調節できるようにしている。
以下、自動溶接装置Wと自動予熱装置1の間隔、すなわち、加熱コイル51,52の後端とワイヤw5の間隔を調節する連結部6について、具体例を挙げて説明する。
具体的には、鋼板の溶接箇所のうち任意の測定点を定め、実際に加熱コイルを溶接箇所に沿って移動させながら、この測定点における表面と裏面の温度変化を測定した。
予熱の対象として、板厚が100mmの鋼板を用いた。
「所定の条件」は、本発明の自動予熱装置1及びこれに連結される自動溶接装置Wの構成と同様の構成を条件とするものである。
連結部6の長さを0(ゼロ)と仮定した場合において、自動予熱装置1の加熱コイル51,52の後端から自動溶接装置Wのワイヤw5までの距離差は500mmである。このように、加熱コイル51,52とワイヤw5の間隔を少なくとも500mm確保することで、加熱コイル51,52が、溶接時に生ずるアークや高熱の影響を受けにくいようにしている。
加熱コイルの設置温度を450°Cとしたのは、高周波誘導加熱により高速に表面を高温化することが可能であり、そうすることで、表面側からの熱伝導によって裏面の予熱を早めることができる一方、高温に過ぎると鋼板の特性が変化し強度等に悪影響を及ぼすからである。なお、設定温度は、鋼板の厚み、鋼種等に応じ、適切な温度に設定することが望ましい。
T=0秒〜90秒の間は、表面温度TC1は急速に上昇するのに対し、裏面温度TC2は緩やかに上昇する。
測定点の表面温度TC1は、加熱コイルの後端が測定点を通過するT=240秒経過時まで設定温度(450°C)に保持される(図8(iii)参照)。
図8(iii),図9(iii)に示すように、T=240秒後に加熱コイルの後端が測定点を通過すると、測定点の表面温度TC1は急速に低下するが、裏面温度TC2は表面からの熱伝導により緩やかな上昇を続ける。
そして、このように表面温度の低下と裏面温度の上昇がともに進行する過程において、表面温度と裏面温度は、ある一定の温度に近づき、最終的には、それぞれがその温度に統一される。
これは、鋼板の表面を所定の加熱手段によって急速に高温加熱した後に生ずる温度特性であり、箱形断面柱fに用いられる肉厚の鋼板に固有の温度特性である。
すなわち、本実施形態の自動予熱装置1は、肉厚の鋼板を表面側からのみ加熱したときに、表面温度の低下と裏面温度の上昇がともに進行する過程に着目し、この過程において表面温度と裏面温度が所定の温度になるタイミングで溶接が実施されるようにしたものである。
このため、以下に示すように、加熱コイルと溶接手段であるワイヤがともに定速走行することを前提としつつ、加熱コイルの通過後、表面と裏面の温度が所定の温度範囲に含まれる最短のタイミングでワイヤを通過させるように構成している。
また、鋼板の板厚が異なる場合に、板厚に応じた長さの連結部材61を変更可能に用いることで、同様に、適切な予熱温度で溶接することができる。
例えば、規定の予熱温度の範囲を100°C〜150°Cとすると、図8(iv)に示すように、表面温度TC1が150°Cで、裏面温度TC2が110°CとなるT=390秒が規定の予熱温度の範囲に含まれる最短の経過時間と特定することができる。
つまり、T=390秒後にワイヤw5(溶接手段)が測定点に到達すれば、その測定点における溶接は、表面と裏面の温度が規定の予熱温度の範囲に含まれたタイミングで適切に行われることになる(図9(iv)参照)。
加熱コイル51,52の長さが1280mmであるため、T=390秒後に、加熱コイルの後端と測定点の距離差は2080−1280=800mmとなる。
そして、連結部6の長さを0(ゼロ)と仮定したときの加熱コイル51,52の後端とワイヤw5との距離差は500mmであるため、必要な連結部6の長さは、800mm−500mm=300mmとなる。
このため、長さが300mmの連結部6を用いることで、板厚が100mmの鋼板の全長に亘って常に規定の予熱温度(100°C〜150°C)で溶接を行うことが可能となる。
このため、T=360秒後にワイヤw5が測定点に到達すれば、裏面の温度が規定の予熱温度の範囲に含まれたタイミングで、適切に溶接が行われることになる。
加熱コイル51,52の移動速度は、320mm/分であることから、T=360秒後に加熱コイルは、(360/60)分×320mm/分=1920mm移動したことになる。加熱コイルの長さが1280mmであるため、T=360秒後に、加熱コイルの後端と測定点の距離差は1920−1280=640mmとなる。
そして、連結部6の長さを0(ゼロ)と仮定したときの加熱コイル51,52の後端とワイヤw5との距離差は500mmであるため、必要な連結部6の長さは、640mm−500mm=140mmとなる。
このため、この場合、長さが140mmの連結部6を用いることで、板厚が100mmの鋼板の全長に亘って常に裏面の温度が規定の予熱温度(110°C)で溶接を行うことが可能となる。
前述の例では、板厚が100mmの鋼板に対し、加熱コイルの設定温度が450°Cとした場合について説明したが、例えば、対象の板厚がこれより薄い場合(例えば、60mm)には、裏面への熱伝導が速くなることから、設定温度を下げる(例えば、250°C)ことで、同様に、適切な予熱温度での溶接を可能とすることができる。
例えば、板厚100mmの鋼板の表面を250°C程度で加熱する場合、裏面温度の上昇傾向はさらに緩やかになり、規定の予熱温度に到達するのに長時間を要するだけでなく、加熱コイルが通過することで加熱手段を失った後は、表面からの熱伝導だけでは、規定の予熱温度に到達しないことが考えられる。
また、高周波誘導加熱など、急速な加熱が可能な加熱手段を用いない場合も、同様に、裏面温度の上昇傾向が緩やかになり、規定の予熱温度に到達するのに長時間を要する。
このため、本発明のように、鋼板の表面を所定の温度に急速に加熱する予熱方法によれば、上述した温度特性を利用して、短時間での予熱が可能となる。
すなわち、鋼板の厚みによって、温度特性も異なるため、その温度特性に応じた長さの連結部6を用いる。
例えば、板厚が60mm、70mm、80mm、90mmの鋼板について、対応する連結部6の長さを求め(図12参照)、その長さの連結部材61を用意しておく。
そして、板厚に応じた長さの連結部材61を選択して予熱用台車2と溶接用台車w1の連結を行う。
そうすることで、鋼板の厚みが異なる場合でも、常に表面と裏面の温度が所定の予熱温度となるタイミングで適切に溶接を行うことができる。
具体的には、鋼板の板厚に応じた長さの連結部材61を選択して溶接用台車w1と予熱用台車2を連結させることで、溶接用台車w1と予熱用台車2との走行間隔を適切に保ち、後行する溶接用台車w1が溶接箇所を通過するタイミング(すなわち、自動溶接装置Wが溶接を行うタイミング)で、常に、その溶接箇所の表面と裏面の温度が適切な予熱温度になるようにすることができる。
このため、長尺箱形の構造物をなす所定の板厚の鋼板の角継手部分の自動溶接に際し、全長に亘り、鋼板の表面及び裏面の温度が所定温度の状態で適切に溶接を行うことができ、低温割れなどの溶接不良が発生しないようにすることができる。
これにより、予熱の過程において、上部鋼板f1の上面の高さが変動する場合でも、上面加熱コイル51の加熱面511を上部鋼板f1に常に密着させることができる。
例えば、箱形断面柱fの角継手部分の溶接においては、上部鋼板f1側のみ溶接を行うため、上部鋼板f1だけが熱膨張して弓状にせり出す変形を生ずることがあるが、この場合でも、上部鋼板f1の変形に対応しつつ予熱を行うことができる。
側面加熱コイル52についても、センサ7によって上部鋼板f1の高さを検出しつつ、検出した高さに合うように継続的に側面加熱コイル52の高さを調整することができる。
このため、位置決めの際の側面加熱コイル52が受ける衝撃を和らげ、故障を防ぐことができる。
特に、既設の自動溶接機器と本発明の自動予熱装置1を組み合わせることによって、予熱から溶接に至る処理を容易に自動化することができ、汎用性にも優れた溶接システムを容易に実現することができる。
次に、本発明の第二実施形態に係る自動予熱装置1について説明する。
本実施形態に係る自動予熱装置1は、自動溶接装置Wと自動予熱装置1とを連結部6により連結することで、溶接用台車w1より先行して予熱用台車2を走行させ、これにより、溶接が行われる前に予熱を行う点で第一実施形態の連結部6と共通する。
また、両実施形態は、連結部6によって、溶接を行うタイミングで適切な予熱温度になるように、予熱用台車2と溶接用台車w1の間隔を設ける点についても共通する。
しかしながら、本実施形態の連結部6は、鋼板の板厚をセンサ等により検出し、検出した板厚に応じて連結部6の長さを自動的に調節可能な点で第一実施形態と異なる。
以下、本実施形態に係る連結部6の長さ自動調節について詳細に説明する。
なお、第一実施形態と共通する構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態の連結部6は、両端部が予熱用台車2のフレーム63と溶接用台車w1の連結具62にそれぞれ接続された連結部材61を備える。
連結部材61は、モーターなどの駆動部による回転駆動を直進運動に変換するボールねじからなり、駆動部の駆動によって長さを変更できるようになっている。
連結部6は、図示しない信号線により制御部15と通信可能に接続されており、制御部15の制御によって駆動部が駆動して、連結部材61の伸縮動作を行うようにしている。
図11に示すように、本実施形態において、記憶部11には、予め、鋼板の板厚と連結部6の長さ等とを対応付けた板厚対応テーブル111を記憶するようにしている。
具体的には、第一実施形態において説明したように、板厚ごとに、鋼板の温度特性を求め(図8参照)、この温度特性から特定される「経過時間(A)」(図8(iv)参照)から「加熱コイルの移動距離(B)」(図9(iv)参照)を求め、これから「加熱コイルの長さ(C)」と「連結部の長さを0(ゼロ)と仮定したときの加熱コイルの後端とワイヤとの間隔(D)」を差し引くことで、対応する連結部6の長さを求め、これらを対応付けて記憶するようにしている(図12(i)参照)。
また、図12(ii)に示す板厚対応テーブル111は、加熱部5の設定温度を板厚ごとに変えて温度特性を求めた上で、同様の方法により、板厚ごとに、連結部6の長さを対応付けたテーブルデータである。
制御部15は、板厚情報入力手段131から鋼板の板厚情報を入力すると、板厚対応テーブル111から対応する「連結部の長さ」情報を抽出し、出力部14を介して連結部6に送信する。
連結部6は、出力部14から「連結部の長さ」情報を受信すると、この情報に基づいて連結部材61の長さを自動的に変更する。
測定された鋼板の板厚が80mmとすると、板厚情報入力手段131は、「板厚情報=80mm」を制御部15に送信する。
制御部15は、「板厚情報=80mm」を受信すると、図12(i)に示す板厚対応テーブル111を参照することで、「板厚情報=80mm」に対応する「連結部の長さ=447mm」を抽出することができる。
制御部15は、出力部14に対し、抽出した「連結部の長さ=447mm」を含む命令信号を連結部6に送信する旨の命令を行う。
連結部6は、出力部14から「連結部の長さ=447mm」を含む命令信号を受信すると、駆動部を駆動させて連結部材61の長さを、「447mm」に調節する。
このため、第一実施形態に比べ、予熱処理を利便良く実施することができる。
例えば、本発明の自動予熱装置1を溶接後の後熱処理に用いることができる。
すなわち、この自動予熱装置1の予熱用台車2を、溶接用台車w1の進行方向とは逆の位置に配置して連結することによって、自動予熱装置を自動後熱装置として用いることができる。
具体的には、上面加熱コイル51が上部鋼板f1を自重により押圧しながら長手方向に移動するところ、上部鋼板f1の終端を通過する際に上面加熱コイル51を自動的に上昇させることができる。
より具体的には、上部鋼板f1の表面の高さを検出するセンサ7が、所定の閾値を超える高さを検出した場合には、上部鋼板f1の終端に達したものとみなし、この場合、電動シリンダ30,34のロッド301,341を収縮することで、上面加熱コイル51が終端を通過する前に上昇させることができる。
このようにすると、予熱が終了する局面において、上面加熱コイル51が終端を通過することで床方向に落下し、この落下による衝撃等によってコイル部材や付属部品等が破損することを防ぐことができる。
15 制御部
2 予熱用台車
455 クランク板
5 加熱部
51 上面加熱コイル
52 側面加熱コイル
6 連結部
7 センサ
R レール
W 自動溶接装置
w1 溶接用台車
f 箱形断面柱
f1 上部鋼板
f2 側部鋼板
Claims (8)
- 角部に被溶接部を有する構造物の前記被溶接部を予備加熱する自動予熱装置であって、
前記被溶接部の長手方向に沿って移動可能な予熱用台車と、
前記予熱用台車に備えられ、前記被溶接部を表面側から加熱する加熱部と、
所定の溶接手段を備え前記被溶接部の長手方向に沿って移動可能な溶接用台車に対し、当該溶接用台車よりも先に移動する態様で前記予熱用台車を連結する連結部と、を備え、
前記加熱部は、前記連結部により連結された前記溶接用台車の移動に伴い前記予熱用台車が前記溶接用台車よりも先に移動することで、前記溶接手段が前記被溶接部を溶接する前に当該被溶接部を表面側から加熱し、
前記連結部は、前記加熱部による加熱によって、前記被溶接部の表面及び裏面の温度が所定の予熱温度になるタイミングで前記溶接手段が前記被溶接部を通過するように前記予熱用台車と前記溶接用台車を連結する
ことを特徴とする自動予熱装置。 - 前記加熱部は、前記所定の予熱温度より高く設定した温度で前記被溶接部を表面側から加熱し、
前記連結部は、前記加熱部の通過により、前記設定した温度に加熱された前記被溶接部の表面の温度が低下する一方、当該被溶接部の裏面の温度が上昇する過程において、前記被溶接部の表面及び裏面の温度が所定の温度となるタイミングで前記溶接手段が前記被溶接部を通過するように前記溶接用台車と前記予熱用台車とを連結する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動予熱装置。 - 前記連結部は、
前記予熱用台車と前記溶接用台車を連結する連結部材として、前記構造物の板厚に応じた長さの連結部材を選択して用いる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の自動予熱装置。 - 前記連結部は、
前記予熱用台車と前記溶接用台車を連結する連結部材が、前記構造物の板厚に応じた長さに変更可能である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の自動予熱装置。 - 前記加熱部は、前記被溶接部の上部をなす上部被溶接部を表面側から加熱する上面加熱部と、前記被溶接部の側部をなす側部被溶接部を表面側から加熱する側面加熱部とを備え、
前記予熱用台車は、前記加熱部を支持する所定の支持部材を備え、
前記支持部材は、
前記上面加熱部を、当該上面加熱部の重さによって前記上部被溶接部の表面を押圧しつつ上下動可能に支持する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の自動予熱装置。 - 前記支持部材は、
前記側面加熱部を、少なくとも当該側面加熱部の重さによって前記側部被溶接部の表面を押圧するように振り子状に支持する
ことを特徴とする請求項5記載の自動予熱装置。 - 前記上部被溶接部の表面の高さを検出するセンサと、
所定の伸縮部材の伸縮動作によって前記支持部材を上方向又は下方向に移動させる移動手段と、
前記センサにより検出された前記上部被溶接部の表面の高さが前記側面加熱部の高さと一致するように、前記支持部材を上方向又は下方向に移動させる移動制御手段と、を備える
ことを特徴とする請求項5又は6記載の自動予熱装置。 - 前記伸縮部材の伸縮動作を回動動作に変換するクランク部材を備え、
前記支持部材は、
前記クランク部材による回動動作に基づく前記側面加熱部の振り子の動作によって、当該側面加熱部を、前記側部被溶接部を表面側から加熱可能な位置に移動させる
ことを特徴とする請求項7記載の自動予熱装置。
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