JP2016220717A - 抗血栓性材料 - Google Patents

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功治 門脇
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雅規 藤田
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Yuka Sakaguchi
有佳 阪口
一裕 棚橋
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一裕 棚橋
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Abstract

【課題】ヘパリン又はヘパリン誘導体以外で抗血小板付着性能と抗トロンビン活性化性能の双方を有する抗血栓性化合物及びベタイン化合物を、化合物の溶出を抑えたまま、抗血栓性化合物及びベタイン化合物の両方の抗血栓性を十分に発揮することができる抗血栓性材料を提供すること。
【解決手段】本発明は、ポリマーと、以下の一般式(I)で示される抗血栓性化合物と、ベタイン化合物とを含む被覆材料と、該被覆材料によって表面が被覆された基材と、を備え、上記ポリマーは、上記基材と共有結合され、上記抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物は、上記ポリマーと共有結合されている、抗血栓性材料を提供する。
Figure 2016220717

【選択図】なし

Description

本発明は、抗血栓性材料に関する。
血液と接触する医療器材(医療機器及び医療器具)(より具体的には、人工腎臓、人工肺、人工血管、人工弁、ステント、ステントグラフト、カテーテル、遊離血栓捕獲器具、血管内視鏡、縫合糸、血液回路、チューブ類、カニューレ、血液バッグ及び注射器等)は、血液と接触する表面で血液が凝固しないように高い抗血栓性を有する抗血栓性材料を用いることが要求されている。ここで、血液凝固反応は、複数の凝固段階を経て血液が凝固することから、それぞれの凝固段階を阻害するために様々な抗血栓性材料が開発されている。従来、医療器材に用いられる基材の抗血栓性を向上させるために最も使われてきたのが、血栓形成の段階に関与するトロンビン等の活性化を抑制する性能(以下「抗トロンビン活性化性能」という)を有するヘパリン又はヘパリン誘導体である。
ヘパリン又はヘパリン誘導体を基材の表面に付与する方法としては、(1)基材の表面に導入された官能基にヘパリンを共有結合することにより固定化する方法(特許文献1〜3)及び(2)基材の表面に導入された正電荷を帯びるカチオン性化合物にヘパリンをイオン結合することにより固定化する方法(特許文献4〜10)が報告されている。
また、凝固段階のうち、特に一次止血の段階に関与する血小板の付着を抑制する性能(以下「抗血小板付着性能」という)を持つ化合物として、後述に定義されるベタイン化合物を基材の表面に付与する方法が知られている。例えば、ベタイン化合物である2−メタクリルオキシエチルホスホコリンをポリメチルメタクリレート又はポリスチレンに対してグラフト共重合させることで、基材に抗血栓性を付与する方法が報告されている(特許文献11)。また、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインを含有するモノマー組成物を基材の表面上で重合させてベタイン化合物のポリマーを形成し、基材に抗血栓性を付与する方法が報告されている(特許文献12)。
一方、抗血小板付着性能と抗トロンビン活性化性能の双方を基材の表面に付与する方法が報告されている。具体的には、抗血小板付着性能を有する化合物と抗トロンビン活性化性能を有する化合物の2種類の化合物を高分子化合物からなる基材の表面に放射線で固定する方法(特許文献13)及び抗血小板付着性能と抗トロンビン活性化性能の双方の性能を併せ持つ1つの化合物を高分子化合物からなる基材の表面に放射線で固定する方法(特許文献14)が報告されている。
さらに、抗血小板付着性能を有するベタイン化合物と抗トロンビン活性化性能を有するヘパリン又はヘパリン誘導体の双方を基材の表面に付与する方法として、ベタイン化合物である2−メタクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、親和性を向上させて基材への塗布を容易にするための疎水性単量体である2―エチルヘキシルメタクリレート及びアミノ基含有単量体であるアミノエチルメタクリレート塩酸塩の3種の単量体を共重合させた共重合体を作製し、該共重合体のアミノ基含有単量体の部分にヘパリン又はヘパリン誘導体を共有結合させる方法が報告されている(特許文献15)。
特許第4152075号公報 特許第3497612号公報 特表平10−513074号公報 特公昭60−041947号公報 特公昭60−047287号公報 特許第4273965号公報 特開平10−151192号公報 特許第3341503号公報 特許第3497612号公報 特許第3834602号公報 特開昭54−63025号公報 特許5349873号公報 WO08/032758号公報 WO12/176861号公報 特開2000−279512号公報
しかし、特許文献1〜10のように、ヘパリン又はヘパリン誘導体を基材の表面に付与する手法では、ヘパリン起因性血小板減少症の患者や出血のある患者には使用することができない等の問題を抱えている。
さらに、ヘパリン又はヘパリン誘導体はアンチトロンビンIII(以下、「ATIII」)と結合することで高い抗血栓性を発現するが、ATIIIが欠乏している血液に対しては抗血栓性が不十分であるという問題点もある。
一方、ヘパリン又はヘパリン誘導体以外の抗血栓性を有する化合物を基材の表面に結合させる方法として、特許文献11及び12には、抗血小板付着性能を有するベタイン化合物を基材の表面に付与する方法が開示されているが、特許文献13にも記載されるように、ベタイン化合物は血小板の付着を抑制することのみが知られており、逆に、タンパク質や血球等の生体成分との相互作用がないことから、抗トロンビン活性化性能には影響しないと考えられてきた。
一方、特許文献13及び14に開示された抗血小板付着性能を有する化合物と抗トロンビン活性化性能を有する化合物の2種類の化合物を高分子化合物からなる基材の表面に放射線で固定する方法や、抗血小板付着性能と抗トロンビン活性化性能の双方の性能を併せ持つ1つの化合物を高分子化合物からなる基材の表面に放射線で固定する方法の場合、共有結合させるための官能基を有していない化合物を高分子化合物からなる基材に固定するため、放射線の照射によって基材の表面に共有結合させている。この場合、放射線の照射量を上げれば、ラジカル発生量の増加に伴って化合物の固定化量は増加するが、化合物の不特定部位でのラジカル発生及び基材と反応することで構造が変化し、主に抗トロンビン活性化性能が低下してしまう。
さらに、特許文献15には、ベタイン化合物を含む共重合体を基材に付与するとともに、該ベタイン化合物を含んだ共重合体に対してヘパリン又はヘパリン誘導体を共有結合させる方法が開示されている。しかしながら、この方法の場合、特許文献1〜10と同様、ヘパリン起因性血小板減少症の患者や出血のある患者には使用することができない。また、ヘパリンは分子量が大きいのに対して、ベタイン化合物は低分子であるため、両方を基材に付与した場合はベタイン化合物が表面に露出せずにヘパリンに埋もれてしまい、十分な抗血栓性を発揮できない可能性がある。
そこで本発明は、ヘパリン又はヘパリン誘導体以外で抗血小板付着性能と抗トロンビン活性化性能の双方を有する抗血栓性化合物及びベタイン化合物を、ポリマーを介して基材の表面に共有結合させることで、化合物の溶出を抑えたまま、抗血栓性化合物及びベタイン化合物の両方の抗血栓性を十分に発揮することができる抗血栓性材料を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、(1)〜(5)の発明を見出した。
(1) アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むポリマーと、以下の一般式(I)で示される抗血栓性化合物と、ベタイン化合物を含む被覆材料と、該被覆材料によって表面が被覆された基材と、を備え、上記ポリマーは、上記基材と共有結合され、上記抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物は、上記ポリマーと共有結合されている、抗血栓性材料。
Figure 2016220717
[式中、Rは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びシロキサンからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含む親水性ポリマーを表し、Rは、メトキシベンゼンスルホン酸アミドを表し、Rは、4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミド又はベンゼンアミジンを表し、Aは、任意の共有結合を表す。]
(2) 上記抗血栓性化合物は、以下の一般式(II)〜(V)で示されるいずれかの化合物である、(1)記載の抗血栓性材料。
Figure 2016220717
Figure 2016220717
Figure 2016220717
Figure 2016220717
[式中、m及びoは0〜4の整数を表し、nは3〜1000の整数を表し、n’=3〜1000の整数を表すが、n≧n’であり、Xは、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアネート基及びチオイソシアネート基からなる群から選択される官能基を表す。]
(3) 上記ベタイン化合物は、カルボキシベタイン化合物又はスルホベタイン化合物である、(1)又は(2)記載の抗血栓性材料。
(4) 上記ポリマーは、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むカチオン性ポリマーとアクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むアニオン性ポリマーが共有結合したコポリマー、又は、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むカチオン性ポリマーとシュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択されるアニオン性化合物が共有結合したコポリマーである、(1)〜(3)のいずれか記載の抗血栓性材料。
(5) 上記抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物は、上記被覆材料をTOF−SIMSで測定した際の測定表面からの深さ1〜3nmに存在している、(1)〜(4)のいずれか記載の抗血栓性材料。
本発明によれば、ヘパリン又はヘパリン誘導体以外で抗血小板付着性能と抗トロンビン活性化性能の双方を有する抗血栓性化合物及びベタイン化合物を、ポリマーを介して基材の表面に共有結合させることで、抗血栓性化合物及びベタイン化合物を強固に固定して溶出を抑えたまま、抗血栓性化合物及びベタイン化合物の両方を被覆材料の表面に十分に露出させることができるため、抗血栓性化合物及びベタイン化合物の両方の抗血栓性を十分に発揮することができる。そのため、ヘパリン起因性血小板減少症の患者や出血のある患者、ATIIIが欠乏している患者の治療であっても、長期間持続的に高い抗血栓性を発揮できるため、抗血栓性を必要とする医療器材(例えば、人工腎臓、人工肺、人工血管、人工弁、ステント、ステントグラフト、カテーテル、遊離血栓捕獲器具、血管内視鏡、縫合糸、血液回路、チューブ類、カニューレ、血液バッグ及び注射器等)に好適に利用できる。
本発明の抗血栓性材料は、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むポリマーと、以下の一般式(I)で示される抗血栓性化合物と、ベタイン化合物を含む被覆材料と、該被覆材料によって表面が被覆された基材と、を備え、上記ポリマーは、上記基材と共有結合され、上記抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物は、上記ポリマーと共有結合されていることを特徴としている。
Figure 2016220717
[式中、Rは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びシロキサンからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含む親水性ポリマーを表し、Rは、メトキシベンゼンスルホン酸アミドを表し、Rは、4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミド又はベンゼンアミジンを表し、Aは、任意の共有結合を表す。]
本発明においては、抗血小板付着性能と抗トロンビン活性化性能の双方を有する一般式(I)で示される抗血栓性化合物及びベタイン化合物を、ポリマーを介して基材の表面に共有結合させることで、上記被覆材料中に含まれる上記抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物は、上記被覆材料をTOF−SIMSで測定した際の測定表面からの深さ1〜3nmに存在するように被覆材料の表面に露出されるように基材の表面に固定される。そのため、上記抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物が被覆材料内に埋もれることなく、抗血栓性を十分に発揮することができる。
また、従来、ベタイン化合物は抗血小板付着性能を有することは知られているが、抗トロンビン活性化性能に大きく影響を与えないと考えられてきた。しかしながら、本発明においては、一般式(I)で示される抗血栓性化合物及びベタイン化合物の両方を含む場合、一般式(I)で示される抗血栓性化合物又はベタイン化合物のうち一方を基材に固定した時と比較して、抗血小板付着性能と抗トロンビン活性化性能の両方の性能が大きく向上することを見出した。
本明細書において使用する用語は、特に断りがない限り、下記に示す定義を用いる。
ここで、抗血栓性とは、血液と接触する表面で血液が凝固しない性質であり、例えば、血小板の凝集や、トロンビンに代表される血液凝固因子の活性化等で進行する血液凝固を阻害する性質を指す。
ここで、抗血栓性材料とは、抗血栓性を有する材料のことであり、特に限定されるものではないが、医療器材(例えば、人工腎臓、人工肺、人工血管、人工弁、ステント、カテーテル、遊離血栓捕獲器具、血管内視鏡、縫合糸、血液回路、チューブ類、カニューレ、血液バッグ、注射器等)を構成する材料として用いることができる。これらの医療器材は血液と接触することが多く、医療器材の表面で血液凝固が進行しやすいため、材料に抗血栓性材料を用いることが必要とされている。
基材とは、抗血栓性材料を構成する材料のうち、次に定義する被覆材料により、被覆される面を構成する物質のことである。本発明における基材の材質は、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル系ポリマー、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(以下、「ePTFE」)、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリアミド、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメチルメタクリレート等が基材の材質として好ましい。この中でも、抗血栓性材料の基材としては、汎用性の高いポリエステル系ポリマーが好ましく、少なくともエステル基を含んだモノマーを構成モノマーとして有するポリマーがより好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレート等が挙げられ、この中でもPETが抗血栓性材料の基材として汎用性が高くより好ましい。ポリエステル系ポリマーとは、ポリマー中にエステル結合を有するポリマーのことである。
被覆材料とは、基材の表面の少なくとも一部を被覆する材料のことであり、本発明において被覆材料は、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むポリマー(以下「上記ポリマー」という)と、以下の一般式(I)で示される抗血栓性化合物(以下「上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物」という)と、ベタイン化合物とを含んでいる。
Figure 2016220717
[式中、Rは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びシロキサンからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含む親水性ポリマーを表し、Rは、メトキシベンゼンスルホン酸アミドを表し、Rは、4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミド又はベンゼンアミジンを表し、Aは、任意の共有結合を表す。]
に有している。
また、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物において、Aで示される、任意の共有結合の様式は、特に限定されるものではないが、ジスルフィド結合、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合及び縮合反応による共有結合が好ましい。ここで、共有結合とは、原子同士で互いの電子を共有することによって生じる化学結合を指し、単結合であっても多重結合であっても構わない。
さらに、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物として、特に下記の一般式(II)〜(V)で示されるいずれかの化合物であることが好ましい。このうち、式中のXはアミノ基又はカルボキシル基であることが好ましく、Xはアミノ基であることがさらにより好ましい。
Figure 2016220717
Figure 2016220717
Figure 2016220717
Figure 2016220717
[式中、m及びoは0〜4の整数を表し、nは3〜1000の整数を表し、n’=3〜1000の整数を表すが、n≧n’であり、Xは、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアネート基及びチオイソシアネート基からなる群から選択される官能基を表す。]
上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物としては、上記ポリマーと近接する側に抗血小板付着性能を有する親水性ポリマー(Rで表される構造)が存在し、血液と接触する側に抗トロンビン活性化性能を有するメトキシベンゼンスルホン酸アミド(Rで表される構造)並びに4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミド又はベンゼンアミジン(Rで表される構造)が存在する方が、トロンビンを捕捉する性能が高くなり、長期間持続的に高い抗血栓性を発現できることを見出した。すなわち、金属材料と共有結合させる反応性官能基(上記式中のX)は、親水性ポリマーの構造に含まれていることが好ましい。反応性官能基である式中のXを用いて、上記ポリマーと上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物抗血栓化合物は、ジスルフィド結合、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合及び縮合反応による結合等をすることができる。
ここで、共有結合とは、原子同士で互いの電子を共有することによって生じる化学結合を指す。本発明においては、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物、上記ベタイン化合物、上記ポリマー及び基材等の表面が有する炭素、窒素、酸素、硫黄等の原子同士の共有結合であり、単結合であっても多重結合であっても構わない。共有結合の種類は、限定されるものではないが、例えば、アミン結合、アジド結合、アミド結合又はイミン結合等が挙げられる。その中でも特に共有結合の形成しやすさや結合後の安定性等の観点からアミド結合がより好ましい。
ヘパリン又はヘパリン誘導体以外の抗血栓性を有する化合物を用いて、化合物の溶出を抑えたまま、長期間持続的に高い抗血栓性を発現するなかで、特に抗血小板付着性能をより高めるために、本願発明者らが鋭意検討した結果、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物を構成する親水性ポリマーは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びシロキサンからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むことが重要であることを見出した。
上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物を構成する親水性ポリマーは、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーとの共重合体であってもよく変性体であってもよい。ここでいう変性体とは、親水性ポリマーを構成するモノマーの繰り返し単位は同じであるが、例えば、放射線の照射により、その一部がラジカル分解や再結合等を起こしているものを指す。
上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物を構成する親水性ポリマーは、上記の構成モノマーを用いていれば、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。親水性ポリマーが共重合体である場合には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体又は交互共重合体のいずれであってもよい。また、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物を構成するポリマーは直鎖状でもよいし、分岐状でもよい。
ここで、単独重合体とは、1種類の構成モノマーを重合して得られる高分子化合物をいい、共重合体とは、2種類以上のモノマーを共重合して得られる高分子化合物をいう。中でもブロック共重合体とは、繰り返し単位の異なる少なくとも2種類以上のポリマーが共有結合でつながり、長い連鎖になったような分子構造の共重合体をいい、ブロックとは、ブロック共重合体を構成する「繰り返し単位の異なる少なくとも2種類以上のポリマー」のそれぞれを指す。
上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物中の親水性ポリマーの数平均分子量は、1500〜20000が好ましく、2000〜10000がより好ましい。数平均分子量が500以上であれば、抗血小板付着性能の低下を防ぎ、より高い抗血栓性が得やすくなる。また、数平均分子量が20000以下であれば、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物中の抗トロンビン活性化性能を発現する部位が内包されづらくなり、高い抗血栓性が得やすくなる。上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物中の親水性ポリマーの数平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法や、光散乱法等により測定することができる。
また、ヘパリン又はヘパリン誘導体以外の抗血栓性を有する化合物を用いて、化合物の溶出を抑えたまま、長期間持続的に高い抗血栓性を発現するなかで、特に抗トロンビン活性化性能をより高めるために、本願発明者らが鋭意検討した結果、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物を構成するメトキシベンゼンスルホン酸アミド(Rで表される構造)並びに4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミド又はベンゼンアミジン(Rで表される構造)が重要であることを見出した。
上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物中の4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミドとは、より具体的には、以下の一般式(VI)で示される骨格構造のいずれかであり、ベンゼンアミジンとは、より具体的には、以下の一般式(VII)で示される骨格構造のいずれかであり、メトキシベンゼンスルホン酸アミドとは、より具体的には以下の一般式(VIII)で示される骨格構造のいずれかである。
Figure 2016220717
[式中、R1は他の骨格構造と連結する部分である。]
Figure 2016220717
[式中、R2は他の骨格構造と連結する部分である。]
Figure 2016220717
[式中、R3、R4は他の骨格構造と連結する部分である。]
また、ベタイン化合物とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物およびその塩のことを差し、本発明においては、特に、以下の一般式(IX)又は(X)に示されるカルボキシベタイン化合物又はスルホベタイン化合物であることが好ましい。また、一般式(IX)又は(X)の式中のXはアミノ基又はカルボキシル基であることが好ましく、Xはアミノ基であることがさらにより好ましい。
Figure 2016220717
Figure 2016220717
[式中、nは1、3、4のいずれかを表し、mは2〜4の整数を表し、n’は2〜4の整数を表し、m’は2〜4の整数を表し、Xは、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアネート基及びチオイソシアネート基からなる群から選択される官能基を表す。]
また、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物と上記ベタイン化合物を基材に固定するため、被覆材料は、上記ポリマーとして、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むポリマーを含んでいる。ここで、上記ポリマーは基材と共有結合しており、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物と上記ベタイン化合物は上記ポリマーと共有結合することで、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物と上記ベタイン化合物の両方が、被覆材料の最表面に露出するように強固に基材に固定されるため、十分な抗血栓性を得ることが出来る。
基材と上記ポリマー間の共有結合の種類は、限定されるものではないが、例えば、アミン結合、アジド結合、アミド結合又はイミン結合等が挙げられる。その中でも特に共有結合の形成しやすさや結合後の安定性等の観点からアミド結合がより好ましい。基材と上記ポリマー間の共有結合の確認は、上記ポリマーを溶解する溶剤で洗浄した際に、被覆材料の溶出の有無を確認することで判定することができる。
また、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むポリマーは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーが共有結合したコポリマー又はカチオン性ポリマーとアニオン性化合物が共有結合したコポリマーであることが好ましく、具体的には、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むカチオン性ポリマーとアクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むアニオン性ポリマーが共有結合したコポリマー、又は、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むカチオン性ポリマーとシュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択されるアニオン性化合物が共有結合したコポリマーであることが好ましい。
また、上記ポリマーがカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーが共有結合したコポリマー又はカチオン性ポリマーとアニオン性化合物が共有結合したコポリマーである場合、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物は、コポリマー中のどの部分と結合していてもよいが、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物は、コポリマー中のアニオン性ポリマー又はアニオン性化合物の部分と共有結合していることが好ましい。
カチオン性ポリマーは、特に限定されるものではないが、分岐状である方が基材と共有結合するための反応点が増えることにより、基材の表面を被覆する量が多くなるため、ポリアルキレンイミンを用いることが好ましい。ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン(以下、「PEI」)、ポリプロピレンイミン及びポリブチレンイミン、さらにはアルコキシル化されたポリアルキレンイミン等が挙げられ、なかでもPEIがより好ましい。
PEIの具体例としては、“LUPASOL”(登録商標)(BASF社製)や“EPOMIN”(登録商標)(日本触媒社製)等が挙げられるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーとの共重合体であってもよく変性体であってもよい。
カチオン性ポリマーは、特に限定されるものではないが、上記以外の構成モノマーと共重合体を形成していてもよく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びシロキサン等が例示できる。カチオン性ポリマーと共重合体を形成する構成モノマーは、多すぎると基材の表面を被覆する量が少なくなるため、10重量%以下であることが好ましい。
アニオン性ポリマーは、特に限定されるものではないが、アニオン性官能基の重量比率が高い方が基材の表面を被覆する量が多くなるため、ポリアクリル酸(以下、「PAA」)や、ポリメタクリル酸、ポリα−グルタミン酸、ポリγ−グルタミン酸、ポリアスパラギン酸を用いることが好ましく、PAAがより好ましい。
PAAの具体例としては、“ポリアクリル酸”(和光純薬工業株式会社製)等が挙げられるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーとの共重合体であってもよく変性体であってもよい。
アニオン性ポリマーは、特に限定されるものではないが、上記以外の構成モノマーと共重合体を形成していてもよく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びシロキサン等が例示できる。アニオン性ポリマーと共重合体を形成する構成モノマーは、多すぎると基材の表面を被覆する量が少なくなるため、10重量%以下であることが好ましい。
アニオン性化合物は、特に限定されるものではないが、アニオン性官能基の重量比率が高い方が基材の表面を被覆する量が多くなるため、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸を用いることが好ましく、コハク酸がより好ましい。
カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーが共有結合したコポリマー又はカチオン性ポリマーとアニオン性化合物が共有結合したコポリマーの重量平均分子量は、600〜2000000が好ましく、10000〜1800000がより好ましい。重量平均分子量が600以上であれば、基材の表面を被覆する量がより好ましい量となるため、高い抗血栓性が得られ、重量平均分子量が2000000以下であれば、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物が内包されづらくなり、高い抗血栓性が得やすくなる。カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーが共有結合したコポリマー又はカチオン性ポリマーとアニオン性化合物が共有結合したコポリマーの重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法や、光散乱法等により測定することができる。
また、本願発明では、上記ポリマーを基材と共有結合させ、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物と上記ベタイン化合物を上記ポリマーと共有結合させることで、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物と上記ベタイン化合物の両方が、被覆材料の最表面に露出するように基材に固定しているが、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物と上記ベタイン化合物の両方が被覆材料の最表面に存在しているかの確認については、飛行時間型2次イオン質量分析法(以下、「TOF−SIMS」)によって求めることができる。
具体的には、上記被覆材料をTOF−SIMSで測定した際の測定表面からの深さ1〜3nmに、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物と上記ベタイン化合物の両方が存在していることを確認することで、被覆材料の最表面を構成する組成物の存在を確認している。
[測定条件]
装置 :TOF.SIMS5(ION−TOF社製)
1次イオン種 :Bi ++
2次イオン極性 :正および負
質量範囲(m/z) :0〜1500
ラスターサイズ :300μm四方
ピクセル数(1辺) :256ピクセル
後段加速 :10kV
測定真空度(試料導入前) :4×10−7Mpa以下
1次イオン加速電圧 :25kV
パルス幅 :4.3ns
バンチング :あり(高質量分解能測定)
帯電中和 :あり
ここでいう抗血栓性材料の最表面とは、TOF−SIMSの測定条件における測定表面からの深さ1〜3nmまでのことを指す。
超高真空中においた抗血栓性材料の最表面にパルス化された1次イオンが照射され、抗血栓性材料の最表面から放出された2次イオンが一定の運動エネルギーを得て飛行時間型の質量分析計へ導かれる。2次イオンの質量に応じて質量スペクトルが得られるため、抗血栓性材料の最表面に存在する有機物や無機物の同定、そのピーク強度から存在量に関する情報が得られる。
具体的に、抗血栓性材料の最表面におけるエチレングリコール又はプロピレングリコールの骨格構造は、TOF−SIMSにより観測される正2次イオンの45ピーク、59ピーク、73 ピーク、87 ピークからなる群から選択される少なくとも一種のピークで確認される。
また、抗血栓性材料の最表面における4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミドの骨格構造は、TOF−SIMSにより観測される正2次イオンの106ピーク、117 ピーク、13410 ピーク、14810 ピーク、負2次イオンの119 ピークからなる群から選択される少なくとも一種のピークで確認され、ベンゼンアミジンの骨格構造は、TOF−SIMSにより観測される負2次イオンの119 ピークで確認され、メトキシベンゼンスルホン酸アミドの骨格構造は、TOF−SIMSにより観測される正2次イオンの117SO ピーク、負2次イオンの64SO ピーク、171SO ピーク、186SNO ピーク、21210SNO ピークからなる群から選択される少なくとも一種のピークで確認される。
また、抗血栓性材料の最表面におけるベタイン化合物の存在は、TOF−SIMSにより観測される負2次イオンの94CHSO ピーク、150NSO ピーク、16612NSO ピークからなる群から選択される少なくとも一種類のピークで確認される。
例えば、カチオン性ポリマーがPEIの場合には、抗血栓性材料の最表面におけるPEIの存在は、TOF−SIMSにより観測される正2次イオンの18NH ピーク、28CHピーク、43CH ピーク、70ピーク、負2次イオンの26CNピーク、42CNOピークからなる群から選択される少なくとも一種のピークで確認される。
例えば、アニオン性ポリマーがPAAの場合には、抗血栓性材料の最表面におけるPAAの存在は、GCIB−TOF−SIMSにより観測される負2次イオンの71 ピークで確認される。
本発明の抗血栓性材料は、医療器材(例えば、人工腎臓、人工肺、人工血管、人工弁、ステント、カテーテル、遊離血栓捕獲器具、血管内視鏡、縫合糸、血液回路、チューブ類、カニューレ、血液バッグ、注射器等)に好適に用いることができるが、特に遊離血栓捕獲器具及び人工血管の材料として用いることが好ましい。
本発明の抗血栓性材料を遊離血栓捕獲器具に用いる場合、遊離血栓捕獲器具の全ての構成要素に本発明の抗血栓性材料を用いることが好ましいが、遊離した血栓を捕獲するための構成要素である多孔質材料が最も抗血栓性を必要とするため、少なくとも多孔質材料を基材として、上記ポリマー等を共有結合させればよい。基材である多孔質材料は、特に限定されるものではないが、例えば、多孔膜やメッシュ等が挙げられ、孔や目開きサイズの均一性がより高いことから、メッシュが好ましい。多孔質材料の材質は、特に限定されるものではないが、ニッケル−チタン合金等の金属、ポリウレタン及びポリエステル系ポリマー等が好適に用いられ、ポリエステル系ポリマーであるPETがより好適に用いられる。
遊離する血栓の捕捉精度を高めるために、材質であるメッシュがPETの場合には、メッシュを構成する繊維の単糸径が10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。また、メッシュの目開きは10〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。
本発明の抗血栓性材料を人工血管に用いる場合、人工血管の全ての構成要素に本発明の抗血栓性材料を用いることが好ましいが、人工血管の内表面が血液と接触し最も抗血栓性を必要とするため、少なくとも人工血管の内表面を基材として、上記ポリマー、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物を結合させればよい。基材である人工血管の内表面を構成する構造は、特に限定されるものではないが、例えば、モノフィラメントやマルチフィラメント等で構成された経糸と緯糸からなる織物構造体が好ましい。基材の材質は、特に限定されるものではないが、ナイロンやポリエステル系ポリマー、ePTFE等が好適に用いられ、ポリエステル系ポリマーであるPETがより好適に用いられる。
人工血管の柔軟性が良好となるためには、材質であるメッシュがPETの場合には、単糸直径が10μm以下であるモノフィラメントやマルチフィラメントが好ましく、単糸直径が5μm以下であるモノフィラメントやマルチフィラメントがより好ましい。
従来の抗血栓材料の場合、基材であるメッシュを抗血栓性の化合物で被覆することによって、メッシュの微細構造である目開きが破壊されることで、血栓の捕捉精度が低下してしまうおそれがある。また、人工血管の内表面の微細構造である経糸と緯糸からなる織物構造体が破壊されることで、血流等に影響を与えて血栓形成を促進してしまうおそれがある。
被覆材料の厚さは、厚すぎると基材の表面の微細構造を破壊してしまうため、1〜600nmの厚さの範囲であることが好ましく、5〜500nmであることがより好ましく、10〜400nmであることがさらにより好ましい。ここでいう被覆材料の厚さとは、例えば後述する走査型透過電子顕微鏡(以下、「STEM」)を用いて、基材の表面から垂直方向における、上記ポリマー、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物に由来する原子が観測された地点の始点から終点までの距離のことであり、少なくとも3点の厚さの値から得られる平均値から測定している。また、表面に存在するとは、基材の表面を始点として、基材の表面から向かって外側方向及び基材の深さ方向の両方を含めた範囲における、上記ポリマー、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物の存在を指す。
具体的に、被覆材料の厚さは、STEMによって求めることができる。被覆材料を被覆した抗血栓性材料を用いて、被覆材料の平均の厚みを分析した。下記条件でSTEM−EDX法を用いて被覆材料由来の硫黄原子が観測される厚み、STEM−EELS法を用いて被覆材料由来の窒素原子が観測される厚みを分析した。ここでいう平均の厚みは、少なくとも3点の平均の値を指す。
[測定条件]
装置 :電界放出型透過電子顕微鏡JEM−2100F(JEOL社製)
EELS検出器 :GIF Tridiem(GATAN社製)
EDX検出器 :JED−2300T(JEOL社製)
画像取得 :Digital Micrograph(GATAN社製)
試料調整 :超薄切片法(銅製マイクログリッドに懸架し、包埋樹脂はアクリル系樹脂を使用。)
加速電圧 :200kV
ビーム径 :直径0.7nm
エネルギー分解能 :約1.0eVFWHM
本発明の抗血栓性材料の製造方法を以下に示す。例えば、基材である遊離血栓捕獲器具のメッシュを構成する繊維や人工血管の織物構造体を構成する繊維を製糸する際に、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むポリマーと、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物を含んだ溶液の中に目的の基材を添加して被覆を行ってもよいが、上記ポリマー、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物及び上記ベタイン化合物の間で、その全て若しくはいずれか一部を予め反応させた後の被覆材料を、基材の表面に結合させてもよい。
その中でも、基材の表面で長期間持続的に高い抗血栓性を発現させるためには、第1の被覆工程として、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むポリマーを基材の表面と共有結合させる工程を行い、第2の被覆工程として、ベタイン化合物を上記ポリマーに共有結合させる工程を行い、第3の被覆工程として、一般式(I)に示される抗血栓性化合物を上記ポリマーに共有結合させる工程を行う方法がより好ましい。また、第1〜3の被覆工程は、順番が前後していてもよく、また、第2の被覆工程の途中で第1の被覆工程を行なってもよい。結合方法としては、例えば、第2の被覆工程として、ベタイン化合物を上記ポリマーと共有結合させる工程を行い、第1の被覆工程として、ベタイン化合物が共有結合した上記ポリマーを基材の表面に結合させる工程を行い、第3の被覆工程として、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物を上記ポリマーに共有結合させる工程を行う方法でもよい。
上記ポリマーを基材の表面に共有結合させる方法は、特に限定されるものではないが、基材が官能基(水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアネート基及びチオイソシアネート等)を有する場合、ポリマーと化学反応により共有結合させる方法がある。例えば、基材の表面がカルボキシル基等を有する場合、水酸基、チオール基及びアミノ基等を有するポリマーを基材の表面に共有結合させればよいし、水酸基、チオール基及びアミノ基等を有する化合物をポリマーと共有結合させた後、カルボキシル基等を有する基材の表面に共有結合させる方法等が挙げられる。
また、基材が官能基を有しない場合、プラズマやコロナ等で基材の表面を処理した後に、ポリマーを共有結合させる方法や、放射線を照射することにより、基材の表面及びポリマーにラジカルを発生させ、その再結合反応により基材の表面とポリマーを共有結合させる方法がある。放射線としてはγ線や電子線が主に用いられる。γ線を用いる場合、γ線源量は250万〜1000万Ciが好ましく、300万〜750万Ciがより好ましい。また、電子線を用いる場合、電子線の加速電圧は5MeV以上が好ましく、10MeV以上がより好ましい。放射線量としては、1〜50kGyが好ましく、5〜35kGyがより好ましい。照射温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
放射線を照射することにより共有結合させる方法の場合、ラジカル発生量を制御するため、抗酸化剤を用いてもよい。ここで、抗酸化剤とは、他の分子に電子を与えやすい性質を持つ分子のことを指す。用いられる抗酸化剤は特に限定されるものではないが、例えば、ビタミンC等の水溶性ビタミン類、ポリフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等のアルコール類、グルコース、ガラクトース、マンノース及びトレハロース等の糖類、ソジウムハイドロサルファイト、ピロ亜硫酸ナトリウム、二チオン酸ナトリウム等の無機塩類、尿酸、システイン、グルタチオン、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(以下、「Bis−Tris」)等の緩衝剤等が挙げられる。しかしながら、取り扱い性や残存性等の観点から、特にメタノール、エタノール、プロピレングリコール、Bis−Trisが好ましく、プロピレングリコール、Bis−Trisがより好ましい。これらの抗酸化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。また、抗酸化剤は、水溶液に添加することが好ましい。
基材の材質としてポリエステル系ポリマーを用いる場合、特に限定されるものではないが、加熱条件下でポリマーを接触させることでアミノリシス反応により共有結合させる方法を用いることもできる。また、酸又はアルカリ処理により基材の表面のエステル結合を加水分解させ、基材の表面に生じたカルボキシル基とポリマーのアミノ基を縮合反応させ、共有結合させることもできる。これらの方法において、ポリマーを基材の表面に接触させて反応させてもよいが、溶媒に溶解した状態で接触させて反応させてもよい。溶媒としては、水やアルコール等が好ましいが、取り扱い性や残存性等の観点から、特に水が好ましい。また、ポリマーを構成するモノマーを基材の表面と接触させた状態で重合した後に、反応させて共有結合させてもよい。
加熱の手段は、特に限定されるものではないが、電気加熱、マイクロ波加熱、遠赤外線加熱等が挙げられる。アミノリシス反応によりポリエステル系ポリマーの基材とポリマーを共有結合させる場合、加熱温度が低すぎるとポリマーによるポリエステル系ポリマーの基材に対してのアミノリシス反応が進行しにくいため、加熱温度はガラス転移点付近以上であることが好ましい。一方で、高すぎるとアミノリシス反応は十分に進行するものの、ポリエステル系ポリマーの基材の骨格構造が壊れやすくなるため、加熱温度は融点以下であることが好ましい。
本発明では、第1の被覆工程の前に、ポリエステル系ポリマーの基材の表面を加水分解及び酸化することがより好ましい。ポリエステル系ポリマーの基材の表面を加水分解及び酸化すると、エステル結合が加水分解及び酸化するため、より被覆材料が結合しやすくなる。加水分解及び酸化する方法としては、具体的には、酸若しくはアルカリ及び酸化剤により処理する方法が好適に用いられる。加水分解及び酸化する方法は、酸又はアルカリのみで処理してもよいが、エステル結合の加水分解により生じる水酸基とカルボキシル基の混在を防ぎ、ポリマーのアミノ基との縮合反応を効率良く進行させることができ、さらに水酸基の存在を減らして、血液と接触した際に、補体を活性させることを防ぐことができることから、ポリマーの被覆量を上げて抗血栓性を高めるためには、酸若しくはアルカリ及び酸化剤により処理する方法が特に好適に用いられる。
本発明における酸若しくはアルカリ及び酸化剤により、ポリエステル系ポリマーの基材の表面のエステル結合を加水分解及び酸化する工程の組み合わせとしては、酸と酸化剤により処理する方法が好ましい。また、アルカリにより基材の表面を処理した後、酸と酸化剤により処理してもよい。
用いられる酸の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、硫酸、フルオロスルホン酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、テトラフルオロホウ酸、クロム酸及びホウ酸等の無機酸や、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸及び酒石酸等のカルボン酸、アスコルビン酸及びメルドラム酸等のビニル性カルボン酸、デオキシリボ核酸及びリボ核酸等の核酸等が挙げられる。その中でも取り扱い性等の観点から、塩酸や硫酸等がより好ましい。
本発明では、第1の被覆工程の前に、ポリエステル系ポリマーの基材の表面のエステル結合を加水分解及び酸化する工程において、酸で処理する際の濃度が重要であることがわかった。例えば、硫酸を用いた場合は、硫酸濃度が0.1〜2.0Mであることが好ましく、0.1〜1.0Mであることがより好ましい。硫酸濃度が低すぎると、ポリエステル系ポリマーの基材の表面にポリマーのアミノ基と縮合反応する十分量のカルボキシル基を導入することができず、硫酸濃度が高すぎると、基材が脆弱化してしまい医療機器の性能に影響を与える可能性がある。
用いられる塩基の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムの水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ユウロピウム及び水酸化タリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、グアニジン化合物、ジアンミン銀(I)水酸化物及びテトラアンミン銅(II)水酸化物等のアンミン錯体の水酸化物、水酸化トリメチルスルホニウム及び水酸化ジフェニルヨードニウム等が挙げられる。その中でも取り扱い性等の観点から、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等がより好ましい。
本発明では、第1の被覆工程の前に、ポリエステル系ポリマーの基材の表面のエステル結合を加水分解及び酸化する工程において、塩基で処理する際の濃度が重要であることがわかった。例えば、水酸化ナトリウムを用いた場合は、水酸化ナトリウム濃度が0.5〜2.0%が好ましく、0.5〜1.0%がより好ましい。水酸化ナトリウム濃度が低すぎると、ポリエステル系ポリマーの基材の表面にポリマーのアミノ基と縮合反応する十分量のカルボキシル基を導入することができず、水酸化ナトリウム濃度が高すぎると、基材が脆弱化してしまい医療機器の性能に影響を与える可能性がある。
用いられる酸化剤の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、硝酸カリウム、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム三水和物、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸銀、過マンガン酸亜鉛六水和物、過マンガン酸マグネシウム、過マンガン酸カルシウム及び過マンガン酸バリウム等の過マンガン酸塩、硝酸セリウムアンモニウム、クロム酸、二クロム酸、過酸化水素水等の過酸化物、トレンス試薬及び二酸化硫黄等が挙げられるが、その中でも酸化剤の強さや抗血栓性材料の劣化を適度に防ぐことができる等の観点から、過マンガン酸塩がより好ましい。
本発明では、第1の被覆工程の前に、ポリエステル系ポリマーの基材の表面のエステル結合を加水分解及び酸化する工程において、酸化剤で処理する際の濃度が重要であることがわかった。例えば、過マンガン酸カリウムを用いた場合は、過マンガン酸カリウム濃度が0.5〜4.0%が好ましく、1.0〜3.0%がより好ましい。過マンガン酸カリウム濃度が低すぎると、ポリエステル系ポリマーの基材の表面にポリマーのアミノ基と縮合反応する十分量のカルボキシル基を導入することができず、過マンガン酸カリウム濃度が高すぎると、基材が脆弱化してしまい医療機器の性能に影響を与える可能性がある。
第1の被覆工程において、上記ポリマーとポリエステル系ポリマーの基材の表面を共有結合させる方法としては、特に限定されないが、例えば脱水縮合剤等を用いて縮合反応させる方法がある。
用いられる脱水縮合剤の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エーテル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エーテル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「EDC」)、1,3−ビス(2,2−ジメチルー1,3−ジオキソランー4−イルメチル)カルボジイミド、N−{3−(ジメチルアミノ)プロピル−}−N’−エチルカルボジイミド、N−{3−(ジメチルアミノ)プロピル−}−N’−エチルカルボジイミドメチオダイド、N−tert−ブチル−N’−エチルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルフォィノエチル)カルボジイミド メソ−p−トルエンスルフォネート、N,N’−ジ−tert−ブチルカルボジイミド又はN,N’−ジ−p−トリカルボジイミド等のカルボジイミド系化合物や、4(−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォリニウムクロリドn水和物(以下、「DMT−MM」)等のトリアジン系化合物が挙げられる。
脱水縮合剤は、脱水縮合促進剤と共に用いてもよい。用いられる脱水縮合促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」)、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール又はN−ヒドロキシコハク酸イミドが挙げられる。
ポリマー、ポリエステル系ポリマー、脱水縮合剤及び脱水縮合促進剤は、混合水溶液にして反応させてよいし、順番に添加して反応を行なってもよい。
基材の材質としてePTFEを用いる場合、特に限定されるものではないが、プラズマやコロナ等により基材の表面を官能基化する方法を用いることができる。また、フッ素樹脂表面処理剤等を用いて基材の表面に存在するフッ素原子を引き抜き、空気中の酸素や水素、水蒸気等と反応して、例えば、水酸基、カルボキシル基及びカルボニル基等を形成する方法を用いることもできる。
上記ポリエステル系ポリマーの基材と同様にして、ポリマーをePTFEの基材の表面に共有結合させる第1の被覆工程を実施することができる。
第2の被覆工程として、上記ポリマーとベタイン化合物を共有結合させる方法は、特に限定されるものではないが、ベタイン化合物が官能基(水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ビニル基、ハロゲン化アルキル基、イソシアネート基及びチオイソシアネート基等)を有する場合、上記ポリマーとベタイン化合物を化学反応により共有結合させる方法がある。例えば、ベタイン化合物が、アミノ基又はカルボキシル基を有する場合、アミノ基又はカルボキシル基を有するベタイン化合物と上記ポリマーを共有結合させる方法等が挙げられる。
第2の被覆工程において上記ポリマーとベタイン化合物を共有結合させる方法としては、特に限定されないが、例えば上記のような脱水縮合剤等を用いて縮合反応させる方法がある。
上記ポリマーとベタイン化合物、脱水縮合剤及び脱水縮合促進剤は、混合水溶液にして反応させてよいし、順番に添加して反応を行なってもよい。
第3の被覆工程として、上記ポリマーと上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物を共有結合させる方法は、特に限定されるものではないが、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物が官能基(水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ビニル基、イソシアネート基及びチオイソシアネート基等)を有する場合、上記ポリマーと化学反応により共有結合させる方法がある。例えば、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物がアミノ基又はカルボキシル基を有する場合、アミノ基又はカルボキシル基を有する上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物と上記ポリマーを共有結合させる方法等が挙げられる。
第3の被覆工程において上記ポリマーと上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物を共有結合させる方法としては、特に限定されないが、例えば上記のような脱水縮合剤等を用いて縮合反応させる方法がある。
上記ポリマーと上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物、脱水縮合剤及び脱水縮合促進剤は、混合水溶液にして反応させてよいし、順番に添加して反応を行なってもよい。
本発明において、ヘパリン又はヘパリン誘導体以外の抗血栓性を有する化合物である一般式(I)に示される抗血栓性化合物に上記官能基を持たせることにより、抗トロンビン活性化性能を低下させることなく、基材の表面に共有結合させることが可能となった。
また、基材に共有結合したポリマーが官能基を有しない場合、プラズマやコロナ等で基材に共有結合したポリマーを処理した後に、一般式(I)に示される抗血栓性化合物を共有結合させる方法や、放射線を照射することにより、ラジカルを発生させ、その再結合反応により、基材に共有結合したポリマーと一般式(I)に示される抗血栓性化合物を共有結合させる方法がある。しかし、放射線を照射することにより発生するラジカルが特に一般式(I)に示される抗血栓性化合物中の4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミドの骨格構造もしくはベンゼンアミジンの骨格構造及びメトキシベンゼンスルホン酸アミドの骨格構造を変化させ、抗トロンビン活性化性能を低下させてしまうため、プラズマやコロナ等で基材の表面を処理した後に、一般式(I)に示される抗血栓性化合物を基材と共有結合させる方法がより好ましい。
上記ポリマーが、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むカチオン性ポリマーとアクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むアニオン性ポリマーが共有結合したコポリマー、又は、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むカチオン性ポリマーとシュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択されるアニオン性化合物が共有結合したコポリマーである場合、それぞれの結合方法は特に限定されるものではない。しかしながら、結合方法としては、例えば、第1の被覆工程として、基材とカチオン性ポリマーを共有結合させる工程及びアニオン性ポリマー又はアニオン性化合物をカチオン性ポリマーに共有結合さる工程を行い、第2の被覆工程として、ベタイン化合物をアニオン性ポリマー又はアニオン性化合物に共有させる工程を行い、第3の被覆工程として、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物をアニオン性ポリマー又はアニオン性化合物に共有結合させる工程を行う方法等が挙げられる。
第1〜3の被覆工程は、順番が前後していてもよく、また、第1の被覆工程の途中で第2の被覆工程と追加工程を行なってもよい。その中でも、基材の表面で長期間持続的に高い抗血栓性を発現させるためには、第1の被覆工程として、基材とカチオン性ポリマーを共有結合させる工程を行い、第1の被覆工程の途中で、第2の被覆工程と追加工程を実施してベタイン化合物とアニオン性ポリマーが共有結合した化合物をカチオン性ポリマーに共有結合させる工程を行い、第1の被覆工程として、アニオン性ポリマーをカチオン性ポリマーに共有結合させる工程を行い、第3の被覆工程として、上記一般式(I)で示される抗血栓性化合物をアニオン性ポリマーに共有結合させる工程を行う方法がより好ましい。
ベタイン化合物とアニオン性ポリマーが共有結合した化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、化合物A(以下の一般式(XI)で示される化合物)、化合物B(以下の一般式(XII)で示される化合物)、化合物C(以下の一般式(XIII)で示される化合物)があげられる。
Figure 2016220717
[式中、n=0.4を表す。]
Figure 2016220717
[式中、n=0.62を表す。]
Figure 2016220717
[式中、n=0.87を表す。]
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
基材であるPETメッシュ(径:27μm、繊維間距離:100μm)を3.0重量%過マンガン酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)、0.6mol/L硫酸(和光純薬工業株式会社製)の水溶液に浸漬し、60℃で3時間反応させてPETメッシュを加水分解及び酸化した(加水分解及び酸化する工程)。反応後の水溶液を除去し、6規定塩酸(和光純薬工業株式会社製)及び蒸留水で洗浄した。
次いでPETメッシュを、0.5重量%DMT−MM(和光純薬工業株式会社製)、5.0重量%PEI(LUPASOL(登録商標) P;BASF社製)の水溶液に浸漬し、30℃で2時間反応させてPETメッシュにPEIを縮合反応により共有結合させた(第1の被覆工程)。反応後の水溶液を除去し、蒸留水で洗浄した。
次いで、0.5重量%化合物A(以下の一般式(XI)で示される化合物)の水溶液に浸漬し、30℃で2時間反応させた(第2の被覆工程と追加工程)。反応後の水溶液を除去し、炭酸ナトリウム水溶液や蒸留水で洗浄した。
Figure 2016220717
[式中、n=0.4を表す。]
次いで、0.5重量%DMT−MM、0.5重量%PAA(和光純薬工業株式会社製)の水溶液に浸漬し、30℃で2時間反応させた(第1の被覆工程)。反応後の水溶液を除去し、炭酸ナトリウム水溶液や蒸留水で洗浄した。
最後に、被覆材料の一部である1.0重量%化合物D(以下の一般式(XIV)で示される化合物)、化合物Dに対して2モル等量の水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)と3モル等量のDMT−MM(和光純薬工業株式会社製)の水溶液に浸漬し、30℃で2時間反応させて、PETメッシュの表面に化合物Dを固定化した(第3の被覆工程)。反応後の水溶液を除去し、蒸留水で洗浄した。さらに、37℃で10分間蒸留水に浸漬して、蒸留水中に抗血栓性化合物が溶出物しないことを確認した。
Figure 2016220717
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(+++)であり、抗血小板性能は、(++)であった。
(実施例2)
化合物Aを化合物B(以下の一般式(XII)で示される化合物)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、PETメッシュの表面に化合物Dを固定化した。さらに、37℃で10分間蒸留水に浸漬して、蒸留水中に抗血栓性化合物が溶出物しないことを確認した。
Figure 2016220717
[式中、n=0.62を表す。]
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(+++)であり、抗血小板性能は、(+++)であった。
(実施例3)
化合物Aを化合物C(以下の一般式(XIII)で示される化合物)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、PETメッシュの表面に化合物Dを固定化した。さらに、37℃で10分間蒸留水に浸漬して、蒸留水中に抗血栓性化合物が溶出物しないことを確認した。
Figure 2016220717
[式中、n=0.87を表す。]
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(+++)であり、抗血小板性能は、(+++)であった。
(実施例4)
実施例1と同様の操作を行いPETメッシュにPEIを縮合反応により共有結合させた。次いで、40重量%無水コハク酸(和光純薬工業株式会社製)ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製)溶液中において50℃で17時間反応してから、反応後の水溶液を除去し、メタノールや蒸留水で洗浄した。(第1の被覆工程)
次いでPETメッシュを、0.5重量%DMT−MM(和光純薬工業株式会社製)、5.0重量%PEI(LUPASOL(登録商標) P;BASF社製)の水溶液に浸漬し、30℃で2時間反応させた。反応後の水溶液を除去し、蒸留水で洗浄した。(第1の被覆工程)
次いで、0.5重量%化合物Cの水溶液に浸漬し、30℃で2時間反応させた(第2の被覆工程と追加工程)。反応後の水溶液を除去し、炭酸ナトリウム水溶液や蒸留水で洗浄した。
次いで、0.5重量%DMT−MM、0.5重量%PAA(和光純薬工業株式会社製)の水溶液に浸漬し、30℃で2時間反応させた(第1の被覆工程)。反応後の水溶液を除去し、炭酸ナトリウム水溶液や蒸留水で洗浄した。
最後に、実施例1と同様の操作を行いPETメッシュの表面に化合物Dを固定化した。さらに、37℃で10分間蒸留水に浸漬して、蒸留水中に抗血栓性化合物が溶出物しないことを確認した。
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(+++)であり、抗血小板性能は、(+++)であった。
(比較例1)
実施例1と同様の操作を行ってPETメッシュを加水分解及び酸化した後に、1.0重量%化合物E(アミノエチルポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製SUNBRIGHT ME−020EA))、化合物Eに対して2モル等量の水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)と3モル等量のDMT−MM(和光純薬工業株式会社製)の水溶液に浸漬し、30℃で2時間反応させて、PETメッシュの表面に化合物Eを固定化した。反応後の水溶液を除去し、蒸留水で洗浄した。
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(−)であり、抗血小板性能は、(−)であった。
(比較例2)
化合物Eを化合物E及び化合物F(以下の一般式(XV)で示される化合物)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、PETメッシュの表面に化合物E及び化合物Fを固定化した。
Figure 2016220717
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(−)であり、抗血小板性能は、(−)であった。
(比較例3)
化合物Eを化合物Dに変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、PETメッシュの表面に化合物Dを固定化した。
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(−)であり、抗血小板性能は、(−)であった。
(比較例4)
化合物Eを化合物D及び化合物Fに変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、PETメッシュの表面に化合物D及び化合物Fを固定化した。
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(−)であり、抗血小板性能は、(−)であった。
(比較例5)
実施例4と同様の操作を行い、PETメッシュにPEIを縮合反応により共有結合させてから、無水コハク酸を反応させた。(第1の被覆工程)
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(−)であり、抗血小板性能は、(−)であった。
(比較例6)
比較例5と同様の操作を行い、第1の被覆工程を行ってから、実施例1と同様の操作を行い、PETメッシュの表面に化合物Dを固定化した(第3の被覆工程)。
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(−)であり、抗血小板性能は、(−)であった。
(比較例7)
40重量%無水コハク酸ジメチルアセトアミド溶液を0.5重量%PAA水溶液に、50℃で17時間反応を30℃で2時間反応に、メタノールや蒸留水での洗浄を炭酸ナトリウム水溶液や蒸留水での洗浄に変更した以外は、比較例5と同様の操作を実施した。(第1の被覆工程)
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(+)であり、抗血小板性能は、(+)であった。
(比較例8)
比較例7と同様の操作を行い、第1の被覆工程を行ってから、実施例1と同様の操作を行い、PETメッシュの表面に化合物Dを固定化した(第3の被覆工程)。
ヒト全血液試験による評価を実施した。結果を表1に示す。表1に示すとおり、ヒト全血液試験による評価での抗トロンビン活性化性能は、(++)であり、抗血小板性能は、(+)であった。
(評価1:ヒト全血液試験)
被覆材料で被覆された抗血栓性材料(例えばPETメッシュ)を1.0×1.0cmのサイズにカットし、被覆材料で被覆されていないPETメッシュ(陽性対象)を1.0×1.0cmのサイズにカットし、生理食塩水で37℃、30分間洗浄してから2mLのマイクロチューブに入れた。ヒト新鮮血に0.4U/mLとなるようにヘパリンナトリウム注(味の素製薬株式会社製)を添加した後、このヒト血液を2mL添加し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベート後にPETメッシュを取り出し、血液中のトロンビン−アンチトロンビン複合体(以下TAT)の濃度とベータ−トロンボグロブリン(以下β−TG)の濃度を測定した。以下の式1と式2に示すように、抗トロンビン活性化性能と抗血小板性能をそれぞれ算出した。
抗トロンビン活性化性能 = (Cp(TAT)−Ct(TAT))X100/Cp(TAT)(%) ・・・式1
Ct(TAT) : サンプルをインキュベートした後のTAT測定濃度(ng/mL)
Cp(TAT) : 被覆材料で被覆されていないPETメッシュをインキュベートした後のTAT測定濃度(ng/mL)
抗血小板性能 = (Cp(β−TG)−Ct(β−TG))X100/Cp(β−TG)(%) ・・・式2
Ct(β−TG) : サンプルをインキュベートした後のβ−TG測定濃度(IU/mL)
Cp(β−TG) : 被覆材料で被覆されていないPETメッシュをインキュベートした後のβ−TG測定濃度(IU/mL)
式1で算出した抗トロンビン活性化性能が、25%未満であれば抗トロンビン活性化性能は弱いとして(−)、25%以上50%未満であれば抗トロンビン活性化性能は強いとして(+)、50%以上75%未満であれば抗トロンビン活性化性能はより強いとして(++)、75%以上であれば抗トロンビン活性化性能はさらにより強いとして(+++)と判定した。
式2で算出した抗血小板性能が、25%未満であれば抗血小板性能は弱いとして(−)、25%以上50%未満であれば抗血小板性能は強いとして(+)、50%以上75%未満であれば抗血小板性能はより強いとして(++)、75%以上であれば抗血小板性能はさらにより強いとして(+++)と判定した。
Figure 2016220717
表1のデータから、一般式(I)に示される抗血栓性化合物に対して、従来、抗トロンビン活性化性能には影響しないと考えられてきたベタイン化合物を組み合わせて使用した場合、抗血小板性能だけではなく、抗トロンビン活性化性能まで向上させることは明らかである。
本発明の抗血栓性材料は、医療分野において、例えば、人工腎臓、人工肺、人工血管、人工弁、ステント、カテーテル、遊離血栓捕獲器具、血管内視鏡、縫合糸、血液回路、チューブ類、カニューレ、血液バッグ、注射器等の長期間持続的に高い抗血栓性を必要とする医療器材に用いることができる。

Claims (5)

  1. アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むポリマーと、以下の一般式(I)で示される抗血栓性化合物と、ベタイン化合物とを含む被覆材料と、該被覆材料によって表面が被覆された基材と、を備え、
    前記ポリマーは、前記基材と共有結合され、
    前記抗血栓性化合物及び前記ベタイン化合物は、前記ポリマーと共有結合されている、抗血栓性材料。
    Figure 2016220717
    [式中、Rは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びシロキサンからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含む親水性ポリマーを表し、Rは、メトキシベンゼンスルホン酸アミドを表し、Rは、4−(アミノメチル)ベンゼンカルボキシイミダミド又はベンゼンアミジンを表し、Aは、任意の共有結合を表す。]
  2. 前記抗血栓性化合物は、以下の一般式(II)〜(V)で示されるいずれかの化合物である、請求項1記載の抗血栓性材料。
    Figure 2016220717
    Figure 2016220717
    Figure 2016220717
    Figure 2016220717
    [式中、m及びoは0〜4の整数を表し、nは3〜1000の整数を表し、n’=3〜1000の整数を表すが、n≧n’であり、Xは、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアネート基及びチオイソシアネート基からなる群から選択される官能基を表す。]
  3. 前記ベタイン化合物は、カルボキシベタイン化合物又はスルホベタイン化合物である、請求項1又は2記載の抗血栓性材料。
  4. 前記ポリマーは、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むカチオン性ポリマーとアクリル酸、メタクリル酸、α−グルタミン酸、γ−グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むアニオン性ポリマーが共有結合したコポリマー、又は、アルキレンイミン、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、プロタミン及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される化合物を構成モノマーとして含むカチオン性ポリマーとシュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸からなる群から選択されるアニオン性化合物が共有結合したコポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗血栓性材料。
  5. 前記抗血栓性化合物及び前記ベタイン化合物は、前記被覆材料をTOF−SIMSで測定した際の測定表面からの深さ1〜3nmに存在している、請求項1〜4のいずれか記載の抗血栓性材料。
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