JP2016219710A - 熱電発電モジュール及び太陽光熱電発電装置 - Google Patents

熱電発電モジュール及び太陽光熱電発電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】太陽光を熱源とする熱電発電モジュール及びこれを用いた太陽光熱電発電装置において、熱電素子にせん断応力が作用することに起因する熱電素子の破損や接合不良を抑制すること。【解決手段】熱電発電モジュール32aは、熱電素子42と、熱電素子42の第1電極46に接合された光吸収体10と、光吸収体10を鉛直方向から押圧するための押さえ機構50aとを備えている。押さえ機構50aは、熱電素子42を載置するための台座52と、光吸収体10の上方に配置された、透光性材料からなる板状部材54と、台座52の周囲に立設された、板状部材54を支持するための支持部材56と、板状部材54の下面により光吸収体10の上面を押圧するための球体(フィラー)58及び押さえ棒60とを備えている。太陽光熱電発電装置30は、このような熱電発電モジュール32aと、採光窓36を備えた容器34とを備えている。【選択図】図3

Description

本発明は、熱電発電モジュール及び太陽光熱電発電装置に関し、さらに詳しくは、太陽光が持つエネルギーを熱エネルギーに変換し、これをさらに電気エネルギーに変換することが可能な熱電発電モジュール、及び、これを用いた太陽光熱電発電装置に関する。
太陽光が持つエネルギーを利用する装置は、太陽光を電気エネルギーに直接変換する装置と、太陽光を熱エネルギーに変換する装置に大別される。太陽電池は、前者の例である。後者の例としては、例えば、
(A)太陽熱を利用して温水や温風を作り、これを給湯や冷暖房に利用する太陽熱利用システム、
(B)太陽熱を利用して熱電素子の両端に温度差を発生させ、温度差を電気エネルギーに変換する熱電発電装置、
などが知られている。
太陽光を熱源として利用する場合、光エネルギーを熱エネルギーとして吸収する高効率な光吸収体(集熱器)が必要となる。また、光吸収体と熱電素子又は熱交換器との間の熱抵抗を小さくし、吸収された熱を熱電素子や熱交換器に効率よく伝達させることが必要となる。さらに、光吸収体からの放熱量を小さくすることも必要となる。
一方、太陽光がセルや光吸収体などに照射されると、周辺部材も高温に加熱される。そのため、熱によって周辺部材が劣化する場合がある。
そこでこれらの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、箱状空間の内底面、内側面及び上面に、それぞれ、蓄熱板、断熱材及び受光窓を設け、蓄熱板の下面に熱電素子の高温側接合部を貼り付けた熱電発電装置が開示されている。
同文献には、箱状空間の底面に蓄熱板が密封固着されているために、一度蓄熱された熱の大部分が有効に熱電素子に印加される点が記載されている。
特許文献2には、
(a)有底の外箱体に、断熱材製の有底の内箱体を嵌入し、
(b)内箱体の底面に設けられた段部及び支持部の上に銅製の集熱熱交換器を載せ、
(c)内箱体に、断熱材製の中枠体を挿入し、内箱体の段部及び支持部と中枠体の下端面との間で集熱熱交換器を挟持した
太陽熱集熱熱交換装置が開示されている。
同文献には、
(a)太陽熱集熱熱交換装置をこのような構造にすることによって、組み立て作業の工程数や部品点数を削減できる点、及び、
(b)集熱熱交換器の表面に酸化銅の被膜を形成することによって、赤外線の吸収能力が高まる点、
が記載されている。
さらに、特許文献3には、金属製のベース基板と発電セルとの間に伝熱絶縁板が挿入されており、伝熱絶縁板がセラミックス薄板とその周囲を取り囲む樹脂板との複合板からなる集光型太陽光発電装置のレシーバが開示されている。
同文献には、伝熱絶縁板として複合板を用いることによって、発電セルからベース基板への伝熱性を十分に確保しつつ、セラミックス薄板の割れを防止することができる点が記載されている。
上述した装置の中でも、太陽光を熱源とする熱電発電装置は、太陽電池に比べて、単位表面積当たりの発電量が多いという利点がある。
一方、光吸収体により吸収される熱量を最大にするには、追尾装置を用いて、光吸収体の受光面を常に太陽の方向に向ける必要がある。
しかしながら、光吸収体が接合された熱電素子を追尾装置上に搭載し、光吸収体の受光面を太陽の日周運動に追従させた場合、追尾装置の傾斜や回転動作に伴い、熱電素子にせん断応力が作用することがある。また、追尾を行わない場合であっても、熱膨張係数差によって接合部にせん断応力が作用することがある。このせん断応力が過度に大きくなると、熱電素子の破損や接合不良などが生じ、電気抵抗が増大するという問題がある。また、光吸収体が脱落することもある。光吸収体が脱落すると、熱電素子の両端に温度差が発生しなくなるため、実質的に回路が断線した状態と同じ状態となる。
この問題を解決するために、追加の部材を用いて光吸収体や熱電素子を拘束することも考えられる。しかしながら、追加の部材を用いて光吸収体を拘束すると、熱膨張によって熱電素子や追加の部材が破損したり、あるいは、追加の部材により入射光が遮られるおそれがある。
特開2012−231099号公報 特開2013−217559号公報 特開2013−191643号公報
本発明が解決しようとする課題は、太陽光を熱源とする熱電発電モジュールにおいて、熱電素子にせん断応力が作用することに起因する熱電素子の破損、接合不良、あるいは光吸収体の脱落を抑制することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、入射光を遮ることなく、熱電素子に発生するせん断応力に起因する接合不良等を軽減することが可能な熱電発電モジュールを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、光吸収体及びその近傍が高温に加熱された場合であっても、熱電素子や周辺部材が破損することのない熱電発電モジュールを提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような熱電発電モジュールを用いた太陽光熱電発電装置を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る熱電発電モジュールは、
熱電材料からなる熱電発電部材と、前記熱電発電部材の温接点側に接合された第1電極と、前記熱電発電部材の冷接点側に接合された第2電極とを備えた熱電素子と、
前記第1電極の表面に配置された、太陽光を吸収するための光吸収体と、
前記光吸収体を鉛直方向から押圧するように構成された押さえ機構と
を備えていることを要旨とする。
前記押さえ機構は、
前記熱電素子を載置するための台座と、
前記光吸収体の上方に配置された、透光性材料からなる板状部材と、
前記台座の周囲に立設された、前記板状部材を支持するための支持部材と、
前記板状部材の下面により前記光吸収体の上面を押圧するための押圧手段と
を備えているものが好ましい。
また、前記支持部材は、前記板状部材を前記光吸収体に向かって付勢するための弾性部材を含むものが好ましい。
本発明に係る太陽光熱電発電装置は、
本発明に係る熱電発電モジュールと、
採光窓を備えた容器と
を備え、
前記熱電発電モジュールは、前記採光窓から入射する太陽光が前記光吸収体に吸収されるように、前記容器内に設置されている
ことを要旨とする。
熱電素子の第1電極の表面に光吸収体を配置し、押さえ機構によって光吸収体を鉛直方向から押圧すると、追尾装置の駆動時等において熱電素子に発生するせん断応力に起因する熱電素子の破損、接合不良、あるいは光吸収体の脱落を抑制することができる。
また、透光性材料からなる板状部材で光吸収体を押圧する場合において、板状部材を支持するための支持部材が弾性部材を含むときには、熱膨張に起因する熱電素子又はその周辺部材の破損を抑制することができる。
さらに、このような押さえ機構の全部又は一部が透光性材料からなる場合には、入射光が遮られにくくなるので、変換効率の低下も抑制することができる。
図1(a)は、凹凸構造のみを備えた光吸収体の断面模式図である。図1(b)は、凹凸構造と中空体とを備えた光吸収体の断面模式図である。 本発明の一実施の形態に係る太陽光熱電発電装置の模式図である。 図3(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る熱電発電モジュールの平面図である。図3(b)は、そのA−A’線断面図である。 本発明の第2及び第3の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図である。 本発明の第4及び第5の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図である。
本発明の第6及び第7の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図である。 本発明の第8の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図である。 発電効率測定の回路図である。 開回路の状態で測定された太陽光熱電発電装置の起電力、及び電極の温度である。 負荷抵抗を接続した状態で測定された太陽光熱電発電装置の起電力、及び電極の温度である。
以下に本発明の一実施の形態につて詳細に説明する。
[1. 光吸収体]
光吸収体は、太陽光を吸収し、熱として蓄えるためのものである。本発明に係る熱電発電モジュールにおいて、光吸収体は、熱電素子の第1電極の表面に配置(載置又は接合)される。光吸収体と熱電素子との間の熱抵抗を軽減するためには、光吸収体は、熱電素子の第1電極に接合されているのが好ましい。
[1.1. 光吸収体の構造]
本発明において、光吸収体の構造は、特に限定されるものではなく、太陽光を効率よく吸収できるものであればよい。
光吸収体としては、例えば、
(a)平滑なAl基板の表面に、陽極酸化処理及び電解着色処理を施したもの(参考文献1参照)、
(b)W基板表面に、サブミクロンサイズのキャビティを二次元配列させたもの(参考文献2参照)、
(c)ガラス基板表面に、AlNとAlを堆積させたもの(参考文献3参照)、
(d)銅板表面に、ニッケルメッキ層及び銅メッキ層を形成し、銅メッキ層を酸化処理したもの(参考文献4参照)、
(e)基板表面に、光を吸収するための受光面と、受光面から放射される放射光を再吸収するための再受光面とを形成したもの、
などがある。
[参考文献1]特開2004−239478号公報
[参考文献2]特開2003−332607号公報
[参考文献3]特開2002−277627号公報
[参考文献4]特開昭58−158456号公報
これらの中でも、表面に受光面及び再受光面を備えた光吸収体は、機械加工により製造することが可能であり、微細加工技術や薄膜技術を用いる必要がないため、光吸収体の製造コストを低減することができる。また、表面に凹凸があるため、その表面に、後述する球体(フィラー)を載置する際に、球体が安定しやすい。
受光面及び再受光面を備えた光吸収体の詳細については、後述する。
[1.2. 光吸収体の材料]
光吸収体の材料は、使用温度(例えば、集光レンズを用いて太陽光を集光する場合には、約600℃)において安定な材料であれば良い。
光吸収体の材料としては、例えば、
(a)各種金属材料、
(b)酸化物、窒化物などのセラミックス材料
などがある。
[1.3. 受光面及び再受光面を備えた光吸収体]
光吸収体は、以下の構成を備えているものが好ましい。
(1)前記光吸収体は、
太陽光を受光し、かつ、前記太陽光のエネルギーを熱エネルギーとして吸収するための1又は2以上の受光面と、
前記受光面から放射される放射光を再吸収するための1又は2以上の再受光面と、
前記照射光を受光せず、かつ、前記熱エネルギーの放射を抑制するための1又は2以上の非受光面と
を備えている。
(2)前記受光面及び前記再受光面は、それぞれ、可視光領域(360〜830nm)における反射率が30%未満となる処理(黒化処理)が施されている。
(3)前記非受光面は、可視光領域(360〜830nm)における反射率が30%以上となる処理(鏡面処理)が施されている。
[1.3.1. 受光面及び再受光面]
「受光面」とは、太陽光を受光し、かつ、太陽光のエネルギーを熱エネルギーとして吸収するための面をいう。受光面は、平面でも良く、あるいは、曲面でも良い。また、受光面の数は、1つでも良く、あるいは、2以上でも良い。
「再受光面」とは、受光面から放射される放射光を再吸収するための面をいう。再受光面は、平面でも良く、あるいは、曲面でも良い。また、再受光面の数は、1つでも良く、あるいは、2以上でも良い。
光吸収体の表面のある1つの面が受光面となるか再受光面となるかは、相対的なものである。個々の面の位置関係や照射光の入射方向に応じて、ある面が受光面又は再受光面のいずれか一方として機能する場合と、双方として機能する場合とがある。
受光面及び再受光面には、黒化処理が施される。「黒化処理」とは、可視光領域(360〜830nm)における反射率が30%未満となる処理をいう。反射率が低くなるほど、光の吸収率が高くなり、かつ、放射のエネルギー損失が低くなる。反射率は、好ましくは、10%以下、さらに好ましくは、5%以下である。
黒化処理としては、例えば、
(1)表面に市販の黒化塗料を塗布する処理、
(2)電解発色法により黒色発色を行う処理、
(3)蒸着やスパッタ法により各種金属や半導体吸収膜を成膜する処理、
などがある。
[1.3.2. 非受光面]
「非受光面」とは、太陽光を受光せず、かつ、熱エネルギーの放射を抑制するための面をいう。非受光面は、平面でも良く、あるいは、曲面でも良い。また、非受光面の数は、1つでも良く、あるいは、2以上でも良い。
「太陽光を受光しない」とは、意図的に太陽光が照射されないこと、あるいは、光エネルギーを吸収させる目的で太陽光が照射されないことをいう。従って、不可抗力により、非受光面に太陽光が照射される場合がある。
例えば、太陽光を自動追尾する装置に光吸収体を設置した場合、常に、受光面にのみ太陽光が照射される。一方、太陽光を自動追尾しない装置に光吸収体を設置した場合、光吸収体の形状や太陽光の入射角度によっては、受光面だけでなく非受光面にも太陽光が照射される場合がある。
非受光面には、鏡面処理が施される。「鏡面処理」とは、可視光領域(360〜830nm)における反射率が30%以上となる処理をいう。反射率が高くなるほど、放射のエネルギー損失が低くなる。反射率は、好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、90%以上である。
鏡面処理としては、例えば、
(1)メッキ処理、
(2)スパッタリング法又はEB蒸着法によるAg、Al、Au等の金属膜の形成、
(3)バフ研磨による金属光沢仕上げ、
などがある。
[1.3.3. 形状]
光吸収体の太陽光の入射側には、凸部及び/又は凹部を設けるのが好ましい。凹部及び/又は凸部を設けると、反射光や放射光の再吸収が促進される。凸部及び凹部の形状は、特に限定されるものではなく、その表面が受光面又は再受光面として機能する形状であれば良い。
例えば、凸部は、太陽光の入射方向に対して平行方向の断面形状が三角形、半円形、扇形、半楕円形などのいずれの形状であっても良い。
同様に、凹部は、太陽光の入射方向に対して平行方向の断面形状が三角形、半円形、扇形、半楕円形などのいずれの形状であっても良い。
断面が三角形となる凸部の立体形状としては、例えば、円錐、多角錐(三角錐、四角錐、五角錘…)、三角柱などがある。
断面が円形となる凸部の立体形状としては、例えば、半球、半円柱などがある。
断面が半楕円形となる凸部の立体形状としては、例えば、半楕円球、半楕円柱などがある。
断面が扇形となる凸部の立体形状としては、例えば、1/4球、1/4円柱、1/4楕円球、1/4楕円柱などがある。
受光面及び再受光面を構成する凸部及び凹部は、機械加工によって形成される。凸部及び凹部の加工コストを低減するためには、凸部又は凹部の高さは、それぞれ、0.1mm以上が好ましい。
光吸収体は、太陽光が入射する側に開口部を有する中空体と、中空体の内底面に設けられた凸部及び/又は前記凹部とを備えているものでも良い。この場合、中空体の内壁面、凸部の表面又は凹部の表面が、受光面又は再受光面として機能する。また、中空体の外壁面は、非受光面として機能する。
さらに、中空体は、開口部から離れた位置における内壁面間の距離が開口部より大きい形状(壺型)を呈しているものが好ましい。
光吸収体が凸部及び/又は凹部のみを備えている場合、受光面からの放射光を完全に吸収できない場合がある。これに対し、光吸収体を中空体とし、中空体の底面に凸部及び/又は凹部を形成すると、凸部又は凹部で再吸収しきれなかった放射光を中空体の内壁面で再吸収することができる。特に、中空体を壺型にすると、放射光がさらに再吸収されやすくなる。
また、壺型の場合、凸部及び凹部がなくても、放射光をある程度吸収することができる。しかしながら、壺型の中空体の内底面に凸部及び/又は凹部を設けると、反射光や照射光の再吸収率を増大させることができる。
凸部又は凹部は、太陽光の入射面上に規則的に配列していても良く、あるいは、不規則に配列していても良い。
中空体を備えた光吸収体の場合、光吸収体は、1個の中空体を備えたものでも良く、あるいは、2個以上の中空体を備えたもの(換言すれば、中空体の内部空間が隔壁によって複数個の小空間に仕切られているもの)でも良い。
さらに、2個以上の中空体を備えた光吸収体の場合、各中空体の形状は、同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。また、各中空体は、周期的に配列していても良く、あるいは、不規則に配列していても良い。
[1.3.4. 受光面及び再受光面の配置]
受光面が無限平板でない場合、放射光は、受光面の法線方向以外の方向に放射される場合がある。しかしながら、大半の放射光は、受光面の法線方向に放射されるので、再受光面は、受光面の法線方向に配置されているのが好ましい。この場合、受光面の法線方向に1つの再受光面が配置されていても良く、あるいは、2以上の再受光面が配置されていても良い。受光面と再受光面は、互いに平行に配置されている必要はない。
放射のエネルギー損失を低減するためには、少なくとも1つの受光面から放射される放射光の50%以上が再受光面に再照射(再吸収)されるように、受光面及び再受光面が配置されているのが好ましい。1つの受光面から放射される放射光の再照射率は、高いほど良い。再照射率は、好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、90%以上である。
また、光吸収体に備えられる受光面の総面積の50%以上において、上述した再照射率が満たされているのが好ましい。上述した再照射率を満たす受光面の面積の割合は、高いほど良い。上述した再照射率を満たす受光面の面積の割合は、好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、90%以上である。
[1.3.5. 光吸収体の具体例]
図1(a)に、凹凸構造のみを備えた光吸収体の断面模式図を示す。図1(a)において、光吸収体10aは、平板上の基材12aの表面(太陽光の入射側)に周期的に形成された凹部14a、14b、14cを備えている。
基材12aの底面16a、及び、外側の側面16b、16cは、非受光面であり、鏡面処理が施されている。
一方、基材12aの表面側の端面18a、18b、並びに、各凹部14a〜14cの斜面20a〜20fは、受光面又は再受光面であり、黒化処理が施されている。
光吸収体10aの底面16aに対して垂直方向から太陽光が入射されると、端面18a、18b、並びに、斜面20a〜20fにおいて太陽光が吸収され、熱エネルギーとして光吸収体10aの内部に蓄えられる。底面16a、及び、外側の側面16b、16cは、鏡面処理が施されているので、これらの面からの放射のエネルギー損失は少ない。
一方、端面18a、18bは、黒化処理されており、かつ、その法線方向に再受光面がない。そのため、吸収された熱エネルギーの一部が放射光として放射され、再吸収されることはない。
これに対し、斜面20b、20d、20fの法線方向には、斜面20a、20c、20eがある。そのため、例えば、凹部14a〜14cの頂角θを60°とすると、理論的には、一方の斜面20b、20d、20f(又は、斜面20a、20c、20e)から放射される放射光の50%が、対向する斜面20a、20c、20e(又は、斜面20b、20d、20f)に再照射(再吸収)される。
凹部14a〜14cの頂角θを60°未満とすると、斜面20a〜20fから放射される放射光の50%以上が、対向する斜面(再受光面)に再照射される。
図1(b)に、凹凸構造と中空体とを備えた光吸収体の断面模式図を示す。図1(b)において、光吸収体10bは、太陽光が入射する側に開口部を有する中空体12bと、中空体12bの内底面に周期的に設けられた凹部14a〜14cとを備えている。
中空体12bの底面16a、及び、外壁面16b、16cは、非受光面であり、鏡面処理が施されている。
一方、中空体12bの表面側の端面18a、18b、中空体12bの内壁面18c、18d、並びに、各凹部14a〜14cの斜面20a〜20fは、受光面又は再受光面であり、黒化処理が施されている。
光吸収体10bの底面16aに対して垂直方向から太陽光が入射されると、端面18a、18b、並びに、斜面20a〜20fにおいて太陽光が吸収され、熱エネルギーとして光吸収体10bの内部に蓄えられる。底面16a、及び、外壁面16b、16cは、鏡面処理が施されているので、これらの面からの放射のエネルギー損失は少ない。
一方、端面18a、18bは、黒化処理されており、かつ、その法線方向に再受光面がない。そのため、吸収された熱エネルギーの一部が放射光として放射され、再吸収されることはない。
これに対し、斜面20b(又は、斜面20e)の法線方向には、斜面20a及び内壁面18c(又は、斜面20f及び内壁面18d)がある。さらに、斜面20d(又は、斜面20c)の法線方向には、斜面20c(又は、斜面20d)がある。
そのため、例えば、凹部14a〜14cの頂角θを60°とし、H=2h/3(Hは外壁面の先端から凹部の先端までの距離、hは凹部の深さ)とすると、理論的には、斜面20b(又は、斜面20e)から放射される放射光の100%が、斜面20a及び内壁面18c(又は、斜面20f及び内壁面18d)に再照射(再吸収)される。また、斜面20d(又は、斜面20c)から放射される放射光の50%が、対向する斜面20c(又は、20d)に再照射される。
凹部14a〜14cの頂角θを60°未満としたり、あるいは、外壁の高さ(すなわち、H)をさらに高くすると、斜面20c、20dから放射される放射光の50%以上が、対向する再受光面に再照射される。
[2. 太陽光熱電発電装置]
図2に、本発明の一実施の形態に係る太陽光熱電発電装置の模式図を示す。図2において、太陽光熱電発電装置30は、熱電発電モジュール32と、容器34とを備えている。太陽光熱電発電装置30は、さらに追尾装置(図示せず)を備えていても良い。
[2.1. 熱電発電モジュール]
熱電発電モジュール32は、太陽光を吸収するための光吸収体10と、熱電素子42と、光吸収体10を鉛直方向から押圧するように構成された押さえ機構50とを備えている。光吸収体10は、熱電素子42の温接点側の電極に熱的に接続されている。光吸収体10に太陽光が照射されると、太陽光のエネルギーが熱エネルギーとして光吸収体10に吸収される。吸収された熱エネルギーは、熱電素子42に伝達され、電気エネルギーに変換される。熱電発電モジュール32の詳細については、後述する。
[2.2. 容器]
容器34は、熱電発電モジュール32を収容するためのものである。後述する追尾装置(図示せず)を備えた太陽光熱電発電装置30の場合、容器34は、追尾装置の上に搭載されている。熱電発電モジュール32を設置することができ、かつ、太陽光を光吸収体10に照射することができる限りにおいて、容器34の構造は、特に限定されない。
図2に示す例において、容器34は、有底の箱状になっており、容器34の上部には、太陽光を取り込むための採光窓36が設けられている。熱電発電モジュール32は、採光窓36から入射する太陽光が光吸収体10に吸収されるように、容器34内に設置されている。
採光窓36は、単なる開口部であっても良く、あるいは、採光窓36に透明なガラス又は集光レンズが取り付けられていても良い。
特に、容器34は、採光窓36に集光レンズが取り付けられているものが好ましい。採光窓36に集光レンズを取り付けると、より多くの太陽光を光吸収体に照射することができる。その結果、熱電素子42の電極間に発生する温度差が大きくなり、熱電素子42の出力が増大する。
また、容器34は、採光窓36を介して外気に開放されていても良く、あるいは、採光窓36に取り付けられたガラス又は集光レンズにより密封可能なものでも良い。
特に、容器34は、その内部を真空に保持することが可能なものが好ましい。容器34内を真空に保つと、容器34内の断熱性が高くなり、光吸収体10から外気に放散される熱量が少なくなる。その結果、熱電素子42の変換効率が増大する。
[2.3. 追尾装置]
追尾装置は、熱電発電モジュール32に備えられる光吸収体10の受光面を太陽の方向に向けるためのものである。太陽光を確実に追尾可能なものである限りにおいて、追尾装置の構造は、特に限定されない。
[3. 熱電発電モジュール]
本発明に係る熱電発電モジュールは、
熱電材料からなる熱電発電部材と、前記熱電発電部材の温接点側に接合された第1電極と、前記熱電発電部材の冷接点側に接合された第2電極とを備えた熱電素子と、
前記第1電極の表面に配置された、太陽光を吸収するための光吸収体と、
前記光吸収体を鉛直方向から押圧するように構成された押さえ機構と
を備えている。
[3.1. 熱電素子]
熱電素子は、
熱電材料からなる熱電発電部材と、
前記熱電発電部材の温接点側に接合された第1電極と、
前記熱電発電部材の冷接点側に接合された第2電極と
を備えている。
本発明において、熱電素子の構造は、特に限定されない。
すなわち、熱電材料、並びに、第1電極及び第2電極の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
同様に、熱電発電部材、第1電極、及び第2電極の形状は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な形状を選択することができる。
熱電素子としては、具体的には、以下のようなものがある。
(1)熱電発電部材がp型熱電材料又はn型熱電材料からなる棒状又は板状の部材からなり、熱電発電部材の一方の端面に第1電極が接合され、他方の端面に第2電極が接合されているもの。
(2)熱電発電部材が、p型熱電材料からなる棒状部材の一端とn型熱電材料からなる棒状部材の一端とが接合された部材又はそれを多数直列接合したもの(π型接合体)からなり、π型接合体の一方の端面に第1電極が接合され、他方の端面に第2電極が接合されているもの。
熱電素子は、温接点側(第1電極側)が採光窓36の方向に向くように、容器34内に設置される。熱電素子の第1電極の表面には、光吸収体が配置(載置又は接合)されている。第1電極と光吸収体とを接触させるだけでも、熱の授受は可能である。しかし、両者が単に接触しているだけでは、両者の界面の熱抵抗が大きくなる。従って、光吸収体は、第1電極に接合されているのが好ましい。
熱電素子の冷接点側(第2電極側)は、単に容器34の底面に固定されているだけでも良く、あるいは、放熱フィンが接合されていても良い。熱電材料は、一般に熱伝導度が低いので、放熱フィンがなくても熱電素子の両端に、ある程度の温度差を形成することができる。一方、冷接点側に放熱フィンを接合すると、構造は複雑になるが、熱電素子の両端に発生する温度差をさらに大きくすることができる。
[3.2. 光吸収体]
光吸収体は、太陽光を吸収するためのものである。光吸収体は、熱電素子の温接点側の電極の表面に配置(載置又は接合)されている。光吸収体と熱電素子との間の熱抵抗を軽減するためには、光吸収体は、熱電素子の第1電極に接合されているのが好ましい。
光吸収体の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.3. 押さえ機構]
押さえ機構は、前記光吸収体を鉛直方向から押圧するための機構である。熱電素子を追尾装置に搭載し、追尾装置を駆動させると、追尾装置の傾斜や回転動作に伴い、熱電素子にせん断応力が作用する。また、追尾を行わない場合であっても、熱膨張係数差によって接合部にせん断応力が作用することがある。このせん断応力が過度に大きくなると、熱電素子が熱電発電部材/電極界面において破損したり、あるいは、接合不良が生じることがある。また、熱電素子と光吸収体が接合されている場合において、せん断応力によって光吸収体が脱落することがある。これに対し、熱電素子の第1電極に配置された光吸収体を鉛直方向から押圧すると、追尾装置の駆動時等において熱電素子に作用するせん断応力に起因する接合不良等を軽減することができる。
[3.4. 押さえ機構の具体例]
押さえ機構は、特に、
前記熱電素子を載置するための台座と、
前記光吸収体の上方に配置された、透光性材料からなる板状部材と、
前記台座の周囲に立設された、前記板状部材を支持するための支持部材と、
前記板状部材の下面により前記光吸収体の上面を押圧するための押圧手段と
を備えているものが好ましい。
[3.4.1. 台座]
台座は、熱電素子を載置するためのものである。台座の形状及び材料については、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の形状及び材料を選択することができる。
[3.4.2. 板状部材]
板状部材は、直接、又は、他の部材を介して間接的に光吸収体を押圧するためのものであり、光吸収体の上方に配置される。光吸収体に太陽光を照射する必要があるため、板状部材には、透光性材料が用いられる。
板状部材の材料としては、例えば、石英ガラス等の透明ガラス、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の透明な有機物、フッ化カルシウム等の透明結晶、などがある。
板状部材の形状は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の形状を用いることができる。
[3.4.3. 支持部材]
支持部材は、板状部材を支持するためのものであり、台座の周囲に立設される。支持部材は、柱状であっても良く、あるいは、板状(壁状)であっても良い。
支持部材は、剛性の高い材料のみからなる部材でも良く、あるいは、板状部材を光吸収体に向かって付勢するための弾性部材を含んでいても良い。熱電素子や周辺部材の破損を抑制するためには、支持部材は、弾性部材を含むものが好ましい。
光吸収体に太陽光が照射されると、光吸収体及び熱電素子の温度が上昇し、熱電素子やその周辺部材が熱膨張する。そのため、剛性の高い材料のみからなる支持部材により板状部材が支持されている場合において、熱膨張が過度に大きくなった時には、熱電素子に作用する熱応力が過度に大きくなる。その結果、熱電素子やその周辺部材が破損することがある。これに対し、支持部材が弾性部材を含む場合には、熱電素子に作用する熱応力が適度に軽減されるので、熱電素子やその周辺部材の破損を抑制することができる。
[3.4.5. 押圧手段]
押圧手段は、板状部材の下面により、直接又は間接的に光吸収体の上面を押圧するための手段である。押圧手段としては、具体的には、
(a)前記板状部材と前記光吸収体との間に介在させた押圧部材、
(b)前記板状部材の下面の全部又は一部が前記光吸収体の上面に密着するように、鉛直方向の長さが調節された支持部材、
などがある。
[A. 押圧部材による押圧]
押圧部材としては、例えば、
(a)前記板状部材と前記光吸収体との間に介在させたフィラー、
(b)前記光吸収体の上面に載置されたフィラー、及び、前記フィラーと前記板状部材との間に介在させた押さえ棒、
などがある。
「フィラー」とは、光吸収体とその周辺部材との間に介在させるための粒状あるいはサイコロ状の部材であって、相対的に小さな接触面積で両者を接触させるためのものをいう。フィラーとしては、例えば、球体、正多面体(正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体)などがある。特に、球体は、光吸収体や押さえ棒との接触面積が小さくなるので、熱電素子以外の部材への熱伝導を最小限にすることができる。また、球体は、他の形状に比べて強度も高いので、耐久性も高い。
フィラーは、太陽光を遮る面積が相対的に小さいので、必ずしも透光性材料である必要はない。一方、押さえ棒は、太陽光を遮る面積が相対的に大きくなるので、透光性材料を用いるのが好ましい。
フィラーの材料としては、例えば、ジルコニア、アルミナ、エアロゲル、グラスウール、石英などがある。フィラーの材料は、石英、ジルコニア、又は、アルミナが好ましく、特に、ジルコニア又はアルミナが好ましい。
押さえ棒の材料としては、例えば、石英ガラス等の透明ガラス、PMMA等の透明な有機物、フッ化カルシウム等の透明結晶、などがある。
押圧部材を介して光吸収体を押圧する場合、押圧部材は、熱電素子に不均一な応力が作用しないように配置するのが好ましい。具体的には、次の(1)を満たすように、n個の押圧部材を配置するのが好ましい。(1)式は、熱電素子が傾いた時に、光吸収体と押圧部材又は板状部材との間の滑りを防止するための押圧部材による押圧力(ΣFn)の下限値を規定する。図5(a)参照。
ΣFn>(m+m0)g/μ ・・・(1)
但し、
nは、1以上の整数、
nは、n番目の前記押圧部材の荷重点での押圧力、
mは、前記光吸収体の質量、
0は、前記熱電素子の質量、
gは、重力加速度、
μは、光吸収体と押さえ機構との間にある摺動面の静摩擦係数の最小値。
例えば、板状部材と光吸収体との間にフィラーを挿入し、かつ、板状部材及び光吸収体のいずれにもフィラーを受ける凹部が形成されていない場合、μは、板状部材−フィラー間の静摩擦係数と、光吸収体−フィラー間の静摩擦係数の内、いずれか小さい方を表す。
無機材料間の静摩擦係数μは、一般的に1以下である。鉄/炭素でも0.15であり、特殊加工していない通常の無機材料間で静摩擦係数μが0.1を切るものはほとんどない。従って、押圧力(ΣFn)は、μ=1の場合以上の値、すなわち、次の(2)式の関係を満たしているのが好ましい。より好ましくは、μ=0.1の場合以上である。
ΣFn>(m+m0)g ・・・(2)
押圧力(ΣFn)が(1)式又は(2)式を満たす限りにおいて、押圧部材の配置は、特に限定されない。
例えば、正三角形の頂点に、それぞれ、押圧部材を配置し、正三角形の重心に1つの熱電発電部材を配置しても良い。
あるいは、正三角形の頂点に、それぞれ、熱電発電部材を配置し、正三角形の重心に1つの押圧部材を配置しても良い。
あるいは、同一の正三角形の頂点に、それぞれ、3個の押圧部材及び熱電発電部材を配置しても良い。
特に、押圧部材は、少なくとも熱電発電部材の直上に設置されているのが好ましい。熱電発電部材の真上に押圧部材を配置すると、熱電素子が真上から押圧されるので、熱電素子に発生するせん断応力に起因する接合不良等を確実に軽減することができる。
フィラー及び押さえ棒を介して光吸収体を押圧する場合、押さえ棒の先端に、フィラーを受ける凹部を形成しても良い。あるいは、光吸収体の表面に、押圧部材の先端部分(特に、フィラーの先端部分)を挿入するための凹部を形成しても良い。
押圧部材としてフィラーのみを用いる場合、フィラーは、必ずしも、光吸収体又は板状部材に接合されている必要はない。特に、光吸収体として、上述した受光面及び再受光面を備えたものを用いる場合、光吸収体の表面上にある凹凸によって、フィラーを安定に載置することができるので、接合は不要である。
一方、押圧部材としてフィラーと押さえ棒の組み合わせを用いる場合、押さえ棒は、板状部材に接合されているのが好ましい。
[B. 支持部材による押圧]
板状部材と光吸収体の間に押圧部材を介在させない場合であっても、支持部材の長さを最適化すれば、板状部材により光吸収体を押圧することができる。
具体的には、板状部材の下面の全部又は一部が光吸収体の上面に密着するように、支持部材の鉛直方向の長さを調節するのが好ましい。この場合、支持部材は、剛性の高い部材のみからなるものでも良く、あるいは、弾性部材を含むものでも良い。熱電素子の破損を抑制するためには、支持部材は、弾性部材を含むものが好ましい。
板状部材の下面は、平面であっても良い。あるいは、板状部材の下面に、突起又は膨出部が設けられていても良い。光吸収体から板状部材への熱伝達ロスを小さくするためには、板状部材の下面に、突起又は膨出部を設けるのが好ましい。
[3.5. 熱電発電モジュールの具体例]
[3.5.1. 具体例1]
図3(a)に、本発明の第1の実施の形態に係る熱電発電モジュールの平面図を示す。図3(b)に、そのA−A’線断面図を示す。
図3において、熱電発電モジュール32aは、熱電素子42と、光吸収体10と、押さえ機構50aとを備えている。
熱電素子42は、熱電発電部材44と、熱電発電部材44の温接点側に接合された第1電極46と、熱電発電部材44の冷接点側に接合された第2電極48とを備えている。図3に示す例において、熱電発電部材44は、棒状の部材からなる。光吸収体10は、第1電極46の表面に配置(載置又は接合)されている。
押さえ機構50aは、熱電素子42を載置するための台座52と、台座52の角部に立設された4本の支持部材56、56…と、熱電素子42の上方に配置された板状部材54と、板状部材54と光吸収体10との間に介在させた球体(フィラー)58及び押さえ棒60(押圧部材)と、を備えている。
板状部材54の上下には、中央部に四角形の開口部を有する枠62、62が配置されている。板状部材54は、上下の枠62、62により挟持された状態で、支持部材56、56…の先端部分に固定されている。太陽光は、枠62、62の開口部にある板状部材54を透過して光吸収体10に照射される。そのため、枠62、62は、必ずしも透光性材料である必要はない。
支持部材56、56…は、柱状の部材からなる。支持部材56、56…は、長手方向に沿って伸縮可能になっており、そのほぼ中間部分には、板状部材54を下方向に付勢するための弾性部材(バネ)56aが仕込まれている。
さらに、光吸収体10の上面であって、熱電発電部材44のほぼ真上には、球体58が載置されている。また、球体58と板状部材54の下面との間には、押さえ棒60が挿入されている。押さえ棒60の上端面は、板状部材54に接合されている。
図3に示す熱電発電モジュール32aにおいて、板状部材54と光吸収体10との間には、球体58及び押さえ棒60からなる押圧部材が挿入されており、板状部材54は、弾性部材56a、56a…により下方向に付勢されている。そのため、弾性部材56a、56aの付勢力及び/又は押さえ棒60の長さを調節することにより、板状部材54の下面により、光吸収体10の上面が適度な圧力で押圧される。
[3.5.2. 具体例2]
図4(a)に、本発明の第2の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図を示す。図4(a)において、熱電発電モジュール32bは、熱電素子42と、光吸収体10と、押さえ機構50bとを備えている。
本実施の形態において、光吸収体10の上面には、押圧部材(すなわち、球体58及び押さえ棒60)の先端部分を挿入するための凹部62が形成されている。この点が、第1の実施の形態とは異なる。光吸収体10の上面に凹部62を形成すると、凹部62により球体58を安定して支持することができる。凹部62は、光吸収体10の表面に別個に設けられたものでも良い。一方、光吸収体10が図1に示すような凹凸構造あるいは中空体を備えている場合、凹凸構造あるいは中空体の大きさを最適化し、凹凸構造あるいは中空体を、押圧部材の先端部分を受けるための凹部62として用いても良い。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3.5.3. 具体例3]
図4(b)に、本発明の第3の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図を示す。図4(b)において、熱電発電モジュール32cは、熱電素子42と、光吸収体10と、押さえ機構50cとを備えている。
本実施の形態において、押さえ棒60の下端面(光吸収体10側の端面)には、球体58を受けるための凹部64が形成されている。この点が、第1の実施の形態とは異なる。押さえ棒60の下端面に凹部64を形成すると、凹部64により球体58を安定して支持することができる。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3.5.4. 具体例4]
図5(a)に、本発明の第4の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図を示す。図5(a)において、熱電発電モジュール32dは、熱電素子42と、光吸収体10と、押さえ機構50dとを備えている。
本実施の形態において、光吸収体10の上面には、複数個の球体58、58…及び押さえ棒60、60…が配置されている。この点が、第1の実施の形態とは異なる。複数個の球体58、58…及び押さえ棒60、60…を用いると、光吸収体10を均等に押圧することができる。この場合、球体58、58…及び押さえ棒60、60…の設置位置は、上述した(1)式又は(2)式の条件を満たしているのが好ましい。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3.5.5. 具体例5]
図5(b)に、本発明の第5の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図を示す。図5(b)において、熱電発電モジュール32eは、熱電素子42と、光吸収体10と、押さえ機構50eとを備えている。
本実施の形態において、光吸収体10の上面は、板状部材54の下面と直接、接触しており、両者の間には、押圧部材が挿入されていない。この点が、第1の実施の形態とは異なる。光吸収体10と板状部材54の間に押圧部材を介在させない場合であっても、支持部材56、56…の長さ及び弾性部材56a、56a…の付勢力を調節することにより、光吸収体10を適度な圧力で押圧することができる。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3.5.6. 具体例6]
図6(a)に、本発明の第6の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図を示す。図6(a)において、熱電発電モジュール32fは、熱電素子42と、光吸収体10と、押さえ機構50fとを備えている。
本実施の形態において、光吸収体10の上面は、板状部材54の下面と直接、接触しており、両者の間には、押圧部材が挿入されていない。また、板状部材54の下面には、突起54aが形成されている。この点が、第1の実施の形態とは異なる。押圧部材に代えて、板状部材54の下面に突起54aを形成することにより、熱伝達ロスを大きくすることなく、光吸収体10を適度な圧力で押圧することができる。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3.5.7. 具体例7]
図6(b)に、本発明の第7の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図を示す。図6(b)において、熱電発電モジュール32gは、熱電素子42と、光吸収体10と、押さえ機構50gとを備えている。
本実施の形態において、光吸収体10の上面は、板状部材54の下面と直接、接触しており、両者の間には、押圧部材が挿入されていない。また、板状部材54の断面は、楕円状になっている。すなわち、板状部材54の下面には、膨出部54bが形成されている。この点が、第1の実施の形態とは異なる。押圧部材に代えて、板状部材54の下面に膨出部54bを形成することにより、熱伝達ロスを大きくすることなく、光吸収体10を適度な圧力で押圧することができる。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[3.5.8. 具体例8]
図7に、本発明の第8の実施の形態に係る熱電発電モジュールの模式図を示す。図7において、熱電発電モジュール32hは、熱電素子42と、光吸収体10と、押さえ機構50hとを備えている。
本実施の形態において、支持部材56h、56h…は、剛性の高い部材のみからなり、弾性部材を含まない。この点が、第1の実施の形態とは異なる。例えば、太陽光を集光しない場合のように、光吸収体10の温度があまり高くならない場合には、太陽光を受光する際に生じる各部の熱膨張は、押さえ機構50hを構成する各部材の弾性変形により吸収することができる。このような場合には、支持部材56h、56h…を剛性の高い部材のみで構成することができる。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[4. 作用]
太陽熱を用いて熱電発電を行うためには、熱電素子と光吸収体とを一体化させる必要がある。また、高い変換効率を得るためには、これらを追尾装置に設置し、光吸収体の受光面を常に太陽の方向に向ける必要がある。しかしながら、追尾装置の傾斜や回転動作に伴い、熱電素子にせん断応力が作用する。また、追尾を行わない場合であっても、熱膨張係数差によって接合部にせん断応力が作用することがある。このせん断応力が過度に大きくなると、熱電素子の破損や接合不良、あるいは光吸収体の脱落が生じる。その結果、電気抵抗が増大する。
これに対し、熱電素子の第1電極の表面に光吸収体を載置又は接合し、押さえ機構によって光吸収体を鉛直方向から押圧すると、追尾装置の駆動時等において熱電素子に発生するせん断応力に起因する熱電素子の破損や接合不良、あるいは、光吸収体の脱落を抑制することができる。
また、透光性材料からなる板状部材で光吸収体を押圧する場合において、板状部材を支持するための支持部材が弾性部材を含むときには、熱膨張に起因する熱電素子又はその周辺部材の破損を抑制することができる。
さらに、このような押さえ機構の全部又は一部が透光性材料からなる場合には、入射光が遮られにくくなるので、変換効率の低下も抑制することができる。
(実施例1)
[1. 装置の作製]
[1.1. 熱電発電モジュールの作製]
図3に示す構造を備えた熱電発電モジュール32aを作製した。熱電素子42の第1電極46に光吸収体10の下面を接合し、熱電素子42と光吸収体10とを一体化させた。板状部材54には、厚み2mmの合成石英を用いた。押さえ棒60には、φ1.8mmの合成石英の丸棒を用い、その一端を板状部材54の下面に接合した。球体(フィラー)58には、ジルコニアボールを用いた。熱電発電部材44には、n型熱電材料である充填スクッテルダイトを用いた。第1電極46及び第2電極48には、45パーマロイを用いた。
[1.2. 太陽光熱電発電装置の作製]
上記の熱電発電モジュール32aを用いて、図2に示す構造を備えた太陽光熱電発電装置30を作製した。採光窓36には、150mm×150mmの正方形のフレネルレンズ(焦点距離:300mm)を取り付けた。焦点距離より20mmレンズに近い位置に光吸収体10の受光面が来るように、熱電発電モジュール32aをセットした。
[2. 試験方法]
フレネルレンズが常に太陽に正対するように、追尾装置を用いて装置30を移動させた。太陽光を光吸収体10に約15分間照射した後、フレネルレンズを覆い隠し、太陽光を遮断した。その間に生ずる、第1電極46及び第2電極48の温度、並びに、熱電素子42の起電力の変化を測定した。
図8に、発電効率測定の回路図を示す。開回路の状態と、負荷抵抗(20.78mΩ)を接続した状態とで、それぞれ測定を行った。
[3. 結果]
[3.1. 開回路での測定結果]
図9に、開回路の状態で測定された太陽光熱電発電装置の起電力、及び電極の温度を示す。日射量がほぼ一定の条件下では、太陽光の照射を開始してから約15分後に、熱電素子42の第1電極46の温度は、490℃以上に上昇し、熱電素子42の両端の温度差は、400℃となった。これは、透光性材料からなる板状部材54を光吸収体10の上方に配置した場合であっても、十分な透過光が得られること、及び、光吸収体10において十分なエネルギー吸収が行われていることを示している。この時に測定した熱電素子42の起電力は、63.3mVであった。
[3.2. 負荷抵抗を接続した時の測定結果]
図10に、負荷抵抗を接続した状態で測定された太陽光熱電発電装置の起電力、及び電極の温度を示す。負荷抵抗を接続した場合でも、開回路での実験と同様の温度上昇及び温度差を確認できた。
また、20.78mΩの負荷抵抗を用いた実験において、観測した電圧は、26.7mVであった。この時、回路を流れる電流は、1.28Aと想定される。開回路での起電力と比較すると、負荷抵抗以外の回路中の抵抗は、28.8mΩとなる。
回路中の抵抗は、負荷抵抗以外に、熱電変換材料の抵抗(材料抵抗)、導線と電極の抵抗(導線抵抗)、及び電極と熱電変換材料の接触抵抗が挙げられる。算出された回路中の抵抗(28.8mΩ)は、主として材料抵抗と導線抵抗の寄与によるものであり、良好な接合を保ったまま発電ができていることを示している。
[3.3. 押圧力の評価]
本実施例での押圧部材による押圧力は、以下の通りであった。
ΣFn=F1・g=1.96N
今回用いた光吸収体の質量mは8.4g、熱電素子の質量m0は0.9gであった。そのため、(2)式の右辺の値(下限値:(m+m0)g)は以下の通りとなった。
(m+m0)g=0.091N
従って、押圧部材による押圧力:ΣFnは、下限値:(m+m0)gを上回っていることを確認した。
(比較例1)
透光性材料からなる板状部材54に代えて、遮光材料からなる板状部材を用いた以外は、実施例1と同様にして、発電実験を行った。
光吸収体10の温度上昇は確認されず、発電できなかった。
(比較例2)
押さえ機構(すなわち、板状部材54、球体58、及び押さえ棒60)のない熱電発電モジュールを用いた以外は、実施例1と同様にして、発電実験を行った。
太陽の日周運動に合わせて熱電発電モジュール32を傾けた時に、熱電素子42と光吸収体10との間に亀裂が生じて、光吸収体10が落下した。この状態は回路の断線を意味し、発電が不可能となる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係る熱電発電モジュール及び太陽光熱電発電装置は、庭園灯や街路灯の電源、非常用電源、アウトドア用電源、家庭用電源、工場用電源、宇宙用電源、軍事用電源、輸送機器用電源などに使用することができる。
10(10a〜10b) 光吸収体
30 太陽光熱電発電装置
32(32a〜32h) 熱電発電モジュール
34 容器
36 採光窓
42 熱電素子
44 熱電発電部材
46 第1電極
48 第2電極
50(50a〜50h) 押さえ機構
52 台座
54 板状部材
56(56h) 支持部材
58 球体(フィラー)
60 押さえ棒

Claims (16)

  1. 熱電材料からなる熱電発電部材と、前記熱電発電部材の温接点側に接合された第1電極と、前記熱電発電部材の冷接点側に接合された第2電極とを備えた熱電素子と、
    前記第1電極の表面に配置された、太陽光を吸収するための光吸収体と、
    前記光吸収体を鉛直方向から押圧するように構成された押さえ機構と
    を備えた熱電発電モジュール。
  2. 前記押さえ機構は、
    前記熱電素子を載置するための台座と、
    前記光吸収体の上方に配置された、透光性材料からなる板状部材と、
    前記台座の周囲に立設された、前記板状部材を支持するための支持部材と、
    前記板状部材の下面により前記光吸収体の上面を押圧するための押圧手段と
    を備えている請求項1に記載の熱電発電モジュール。
  3. 前記支持部材は、前記板状部材を前記光吸収体に向かって付勢するための弾性部材を含む請求項2に記載の熱電発電モジュール。
  4. 前記押圧手段は、前記板状部材と前記光吸収体との間に介在させた押圧部材からなる請求項2又は3に記載の熱電発電モジュール。
  5. 前記押圧部材は、次の(2)式を満たすように配置されている請求項4に記載の熱電発電モジュール。
    ΣFn>(m+m0)g ・・・(2)
    但し、
    nは、1以上の整数、
    nは、n番目の前記押圧部材の荷重点での押圧力、
    mは、前記光吸収体の質量、
    0は、前記熱電素子の質量、
    gは、重力加速度。
  6. 前記押圧部材は、少なくとも前記熱電発電部材の直上に設置されている請求項4又は5に記載の熱電発電モジュール。
  7. 前記押圧部材は、
    (a)前記板状部材と前記光吸収体との間に介在させたフィラー、又は、
    (b)前記光吸収体の上面に載置されたフィラー、及び、前記フィラーと前記板状部材との間に介在させた押さえ棒
    からなる請求項4から6までのいずれか1項に記載の熱電発電モジュール。
  8. 前記押さえ棒は、透光性材料からなる請求項7に記載の熱電発電モジュール。
  9. 前記押さえ棒の先端には、前記フィラーを受ける凹部が形成されている請求項7又は8に記載の熱電発電モジュール。
  10. 前記光吸収体の表面には、前記押圧部材の先端部分を挿入するための凹部が形成されている請求項4から9までのいずれか1項に記載の熱電発電モジュール。
  11. 前記押圧手段は、前記板状部材の下面の全部又は一部が前記光吸収体の上面に密着するように、鉛直方向の長さが調節された前記支持部材からなる請求項2又は3に記載の熱電発電モジュール。
  12. 前記板状部材の下面に、突起又は膨出部が設けられている請求項11に記載の熱電発電モジュール。
  13. 請求項1から12までのいずれか1項に記載の熱電発電モジュールと、
    採光窓を備えた容器と
    を備え、
    前記熱電発電モジュールは、前記採光窓から入射する太陽光が前記光吸収体に吸収されるように、前記容器内に設置されている
    太陽光熱電発電装置。
  14. 太陽光を追尾するための追尾装置をさらに備え、
    前記容器は、前記追尾装置に搭載されている
    請求項13に記載の太陽光熱電発電装置。
  15. 前記採光窓に取り付けられた集光レンズを備えている請求項13又は14に記載の太陽光熱電発電装置。
  16. 前記容器は、その内部を真空に保持することが可能なものからなる請求項13から15までのいずれか1項に記載の太陽光熱電発電装置。
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