JP2016219516A - 成形体、及び成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ナノ粉末の含有量が高く、生産性に優れる成形体、及びナノ粉末の含有量が高い成形体を容易に製造可能な成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体。ナノ粉末と、前記ナノ粉末を構成するナノ粒子間に介在して所定の形状を保持する保形材と、前記ナノ粒子間に配される潤滑材とを含む造粒粉を作製する工程と、前記造粒粉を加圧・圧縮して、前記ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体を作製する工程とを備える成形体の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体。ナノ粉末と、前記ナノ粉末を構成するナノ粒子間に介在して所定の形状を保持する保形材と、前記ナノ粒子間に配される潤滑材とを含む造粒粉を作製する工程と、前記造粒粉を加圧・圧縮して、前記ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体を作製する工程とを備える成形体の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、ナノ粉末を主体とする成形体、及びその製造方法に関する。特に、ナノ粉末の含有量が高く、生産性に優れる成形体、及びその製造方法に関するものである。
粒径がナノオーダーであるナノ粉末が種々の分野で利用されている。例えば、ナノ粉末は、フェライト磁石の原料に利用されている。この磁石は、原料粉末を金型成形した予備成形体を焼結することで製造される。この焼結前の予備成形体は、成形用バインダを多く含み(代表的には40体積%以上)、ナノ粉末の含有量が低い低密度体である。上記予備成形体は、焼結することで緻密化されて高密度体となる。
特許文献1は、平均粒径が100nm以下の金属のナノ粉末を顆粒状とすることを開示している。
従来、ナノ粉末の含有量が高く、生産性に優れる成形体、及びナノ粉末の含有量が高い成形体を容易に製造可能な製造方法が開発されていない。
上述のように焼結すれば、緻密化できる。しかし、焼結すると、焼結後の熱収縮量が大きく、最終製品に近い形状、いわゆるネットシェイプのものを製造することが難しい。そのため、焼結体を所望の形状やサイズなどに加工する後工程が必要であり、生産性に劣る。上記後加工を省略して、単純形状の焼結体とした場合には、形状の自由度が小さい。
そこで、本発明者らは、焼結体に代わる高密度体として、金型成形や静水圧プレス(CIP)などの成形法を利用した粉末成形体を検討した。ナノ粉末をそのまま成形するのではなく、特許文献1に記載されるスプレードライ法などを用いて、ナノ粉末を樹脂との顆粒にすれば、成形型に充填し易く、成形体の生産性を高められる。しかし、このような顆粒を用いても、ナノ粉末の含有量を十分に高められず、ナノ粉末の含有量が65体積%以上といった高密度体が得られなかった。CIP成形体でも、ナノ粉末の含有量が50体積%程度であった。
そこで、本発明の目的の一つは、ナノ粉末の含有量が高く、生産性に優れる成形体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ナノ粉末の含有量が高い成形体を容易に製造可能な成形体の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係る成形体は、ナノ粉末の含有量が65体積%以上である。
本発明の一態様に係る成形体の製造方法は、以下の造粒工程と、緻密工程とを備える。
(造粒工程) ナノ粉末と、前記ナノ粉末を構成するナノ粒子間に介在して所定の形状を保持する保形材と、前記ナノ粒子間に配される潤滑材とを含む造粒粉を作製する工程
(緻密工程) 前記造粒粉を加圧・圧縮して、前記ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体を作製する工程
(造粒工程) ナノ粉末と、前記ナノ粉末を構成するナノ粒子間に介在して所定の形状を保持する保形材と、前記ナノ粒子間に配される潤滑材とを含む造粒粉を作製する工程
(緻密工程) 前記造粒粉を加圧・圧縮して、前記ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体を作製する工程
上記の成形体は、ナノ粉末の含有量が高く、生産性に優れる。上記の成形体の製造方法は、ナノ粉末の含有量が高い成形体を容易に製造できる。
[本発明の実施の形態の説明]
最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
(1) 本発明の一態様に係る成形体は、ナノ粉末の含有量が65体積%以上である。
最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
(1) 本発明の一態様に係る成形体は、ナノ粉末の含有量が65体積%以上である。
上記の成形体は、ナノ粉末の含有量が十分に高く、高密度体といえる。従って、この成形体は、ナノ粉末の組成に応じた種々の用途に利用できると期待される。また、上記の成形体は、成形体中の個々のナノ粒子をそれぞれ判別可能であり、原料粉末の粉末粒子が変性した焼結体とは異なり、代表的には原料粉末の粉末粒子が実質的にそのまま存在する。このような成形体は、焼結工程を経ておらず、代表的には金型成形によって製造可能であり、工業的量産が可能といえる。従って、上記の成形体は、生産性にも優れ、新たな高密度体として期待される。
(2) 上記の成形体の一例として、上記ナノ粉末の含有量が68体積%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、ナノ粉末の含有量が体心立方構造(bcc)レベル以上と十分に高く、ナノ粉末の組成に応じた種々の用途に好適に利用できる。また、上記形態は、このような緻密体でありながら、上述のように金型成形によって製造可能であり、生産性に優れる。
(3) 上記の成形体の一例として、上記ナノ粉末を構成するナノ粒子同士を結合する樹脂を含み、上記樹脂の含有量が上記ナノ粉末を100体積%として0超20体積%以下である形態が挙げられる。
上記形態は、ナノ粒子同士が樹脂によって結合されて高い結合強度を有することができる。また、上記形態は、樹脂の含有量が例えば焼結体に用いられる上述の焼結前の予備成形体などに比較して十分に低いため、樹脂の存在によって用途に応じた要求特性の劣化を招き難く、所望の特性を十分に有することができる。
(4) 上記の成形体の一例として、上記ナノ粉末がFeを含む化合物及びFeを含む金属の少なくとも一方の材料から構成されるナノ粒子を含む形態が挙げられる。
Feや、Feを主体とするFe基合金などのFeを含む金属、フェライトといった鉄酸化物などのFeを含む化合物の多くは、磁性を有し、硬磁性の場合、軟磁性の場合のいずれも有り得る。そのため、上記形態は、磁性が求められる用途、例えば、電磁波吸収体や磁石、軟磁性磁心などに利用できると期待される。
(5) 本発明の一態様に係る成形体の製造方法は、以下の造粒工程と、緻密工程とを備える。
(造粒工程) ナノ粉末と、上記ナノ粉末を構成するナノ粒子間に介在して所定の形状を保持する保形材と、上記ナノ粒子間に配される潤滑材とを含む造粒粉を作製する工程
(緻密工程) 上記造粒粉を加圧・圧縮して、上記ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体を作製する工程
(造粒工程) ナノ粉末と、上記ナノ粉末を構成するナノ粒子間に介在して所定の形状を保持する保形材と、上記ナノ粒子間に配される潤滑材とを含む造粒粉を作製する工程
(緻密工程) 上記造粒粉を加圧・圧縮して、上記ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体を作製する工程
上記の成形体の製造方法は、以下の知見に基づくものである。
本発明者らは、ナノ粉末を主体とする成形体を、CIPよりも形状の自由度が高く、ネットシェイプを成形し易い金型成形で製造することを検討した。具体的には、ナノ粉末と種々の樹脂などとを混合した混合物を原料に用いて、成形を試みた。混合物を顆粒状とすると、金型に充填し易く、取り扱い易い上に、金型成形も可能である。しかし、加圧に従い、ナノ粒子同士が樹脂によって強固に結着されるなどして、十分に動けないため、圧力を高めても再配列せず、充填率を十分に高められないとの知見を得た。
本発明者らは、ナノ粉末を主体とする成形体を、CIPよりも形状の自由度が高く、ネットシェイプを成形し易い金型成形で製造することを検討した。具体的には、ナノ粉末と種々の樹脂などとを混合した混合物を原料に用いて、成形を試みた。混合物を顆粒状とすると、金型に充填し易く、取り扱い易い上に、金型成形も可能である。しかし、加圧に従い、ナノ粒子同士が樹脂によって強固に結着されるなどして、十分に動けないため、圧力を高めても再配列せず、充填率を十分に高められないとの知見を得た。
そこで、更に検討した結果、顆粒の形状維持などや成形体の形状維持などを目的とするバインダの量を多くするという対策ではなく、造粒粉に、上記バインダに加えて、高圧が加えられた状態でもナノ粒子間を滑らかに滑らせてナノ粒子の再配列を促進するような潤滑材を添加することが好ましい、との知見を得た。
上記の成形体の製造方法は、加圧・圧縮に供する造粒粉として、造粒粉の形状維持を行う保形材に加えて、ナノ粒子間に配されてナノ粒子間の潤滑性を高める潤滑材を含有させたものを作製する。この潤滑材は、緻密工程で、いわばナノ粒子同士の界面抵抗を低減する界面活性剤やナノ粒子間の摩擦抵抗を低減する極圧添加材として作用する。そのため、ナノ粒子が例えばセラミックスなどの剛体であって塑性変形し難い材料で構成されている場合でも、高圧が加えられた状態(以下、この状態を高圧印加状態と呼ぶことがある)において上記潤滑材がナノ粒子間の滑りを良くして、ナノ粒子を良好に再配列させられて、充填率を十分に高められる。具体的にはナノ粉末の含有量が65体積%以上、更にbccレベル(68体積%以上)、更には最密充填(74体積%程度)に近い成形体が得られる。また、ナノ粉末の充填率を高められることで気孔率を低減でき、成形時の保形性も高められる。このように特定の造粒粉を用いる上述の成形体の製造方法は、焼結することなく緻密な高密度体(代表的には実施形態の成形体)を金型成形によって量産できる点で、工業的意義が高い。
(6) 上記の成形体の製造方法の一例として、上記成形体を作製する緻密工程では、所定の圧力で押圧し続けて緻密化する形態が挙げられる。
上記形態は、所定の高い圧力で押し続けることで、即ち、加圧・圧縮の保持時間を長くすることで、ナノ粒子が再配列し続けるため、ナノ粉末の含有量がより高い成形体を製造できる。上記形態は、加圧・圧縮の保持時間の延長という簡単な操作で高密度な成形体を容易に製造できる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係る成形体、及び成形体の製造方法をより詳細に説明する。
以下、本発明の実施形態に係る成形体、及び成形体の製造方法をより詳細に説明する。
・成形体
実施形態に係る成形体は、ナノ粒子を主体(65体積%以上)とし、代表的にはナノ粉末を含む原料を金型成形して製造されたナノ粉末の粉末成形体である。この成形体は、ナノ粒子同士を結合する樹脂を含む形態(図1参照)、樹脂などを実質的に含まず、ナノ粒子同士が直接噛み合って自立可能である形態などが挙げられる。
実施形態に係る成形体は、ナノ粒子を主体(65体積%以上)とし、代表的にはナノ粉末を含む原料を金型成形して製造されたナノ粉末の粉末成形体である。この成形体は、ナノ粒子同士を結合する樹脂を含む形態(図1参照)、樹脂などを実質的に含まず、ナノ粒子同士が直接噛み合って自立可能である形態などが挙げられる。
・・ナノ粉末(ナノ粒子)
・・・組成
上記成形体に含まれるナノ粉末の構成材料は、用途に応じて種々のものがあり、金属、及びセラミックスに代表される非金属のいずれでもよい。金属は、例えば、磁性材料であれば、Feを含む金属、より具体的にはFe(純鉄)、Fe−CoやFe−Pt、Fe−Ni、Fe−Al−SiなどのFeを主体とする鉄合金、触媒材料であれば、Pt(白金)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)−Ru(ルテニウム)合金などが挙げられる。非金属は、ストロンチウム(Sr)フェライト、バリウム(Ba)フェライト、ランタン(La)−コバルト(Co)フェライトなどの一軸磁気異方性を有するマグネトプラムバイト、その他の一軸磁気異方性の材料である磁場中冷却したコバルト(Co)フェライトやε−Fe2O3などのハードフェライト、マグネタイト(Fe3O4)、γ−Fe2O3、マンガン(Mn)フェライト、ニッケル(Ni)フェライト、亜鉛(Zn)フェライト、マグネシウム(Mg)フェライトなどの面内異方性を有するマグネトプラムバイトなどのソフトフェライト、その他ナノカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、及びこれらに類する構造を持つ有機化合物などが挙げられる。
・・・組成
上記成形体に含まれるナノ粉末の構成材料は、用途に応じて種々のものがあり、金属、及びセラミックスに代表される非金属のいずれでもよい。金属は、例えば、磁性材料であれば、Feを含む金属、より具体的にはFe(純鉄)、Fe−CoやFe−Pt、Fe−Ni、Fe−Al−SiなどのFeを主体とする鉄合金、触媒材料であれば、Pt(白金)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)−Ru(ルテニウム)合金などが挙げられる。非金属は、ストロンチウム(Sr)フェライト、バリウム(Ba)フェライト、ランタン(La)−コバルト(Co)フェライトなどの一軸磁気異方性を有するマグネトプラムバイト、その他の一軸磁気異方性の材料である磁場中冷却したコバルト(Co)フェライトやε−Fe2O3などのハードフェライト、マグネタイト(Fe3O4)、γ−Fe2O3、マンガン(Mn)フェライト、ニッケル(Ni)フェライト、亜鉛(Zn)フェライト、マグネシウム(Mg)フェライトなどの面内異方性を有するマグネトプラムバイトなどのソフトフェライト、その他ナノカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、及びこれらに類する構造を持つ有機化合物などが挙げられる。
上記成形体に含まれるナノ粉末は、単一種のみの形態の他、複数種の異なる組成のものを含む形態とすることができる。上記成形体は、ナノ粒子の集合体であり、含有するナノ粉末は、製造に用いた原料粉末の組成を実質的に維持する。従って、原料に用いるナノ粉末の組成を適宜選択することで、所望の組成のナノ粉末を含む成形体を容易に製造できる。ナノ粉末の組成は、X線回折などで確認できる。
・・・大きさ
上記成形体に含まれるナノ粉末の平均粒径は、10nm以上500nm以下が挙げられる。ナノ粉末を構成する各ナノ粒子は、代表的には、単結晶体である。そのため、ナノ粉末の平均粒径は、平均結晶粒径ともいえる。上記平均粒径が500nm以下であれば、粒子の物性がバルク的なものから徐々にナノ領域へと移行し、ナノ粒子の物性を有する成形体となる。また、上記平均粒径が500nm以下であれば、成形時に粒子自らが最適位置に移動して、高密度充填を容易に行えて、より緻密な成形体となる。用途によっては、ナノ粉末はより小さいことが好ましい。例えば、保磁力が高いことが望まれる用途であれば、上記平均粒径は、保磁力が最大となり得る100nm程度が好ましい。その他、交流損などの損失が低いことが望まれる用途であれば、上記平均粒径は20nm程度が好ましい。上記平均粒径が10nm以上であれば、原料のナノ粉末の製造性に優れる、成形体の製造時に取り扱い易い、といった利点を有する。これらの点から上記平均粒径は、10nm以上200nm以下、更に20nm以上100nm以下が好ましい。成形体中のナノ粉末の平均粒径は、例えば、成形体の断面のSEM観察像を取得し、この観察像を画像処理してナノ粒子を抽出し、抽出した各ナノ粒子の等価面積円の直径を粒径とし、20個以上の粒径の平均をとることで測定できる。上記成形体に含まれるナノ粉末の大きさは、製造に用いた原料粉末の大きさに依存する。そのため、原料粉末の大きさを調整したり、成形時の圧力を調整したりすることで、成形体中のナノ粉末の平均粒径を所望の大きさに調整できる。ナノ粉末がフェライトなどのような硬質材料である場合、製造過程でナノ粒子の大きさが変化し難いため、成形体に含まれるナノ粉末の大きさは、原料粉末の大きさを実質的に維持する。ナノ粉末の形状は、球状が代表的であり、その他、多角形体状、針状などの異形状(塑性変形したものを含む)が挙げられる。
上記成形体に含まれるナノ粉末の平均粒径は、10nm以上500nm以下が挙げられる。ナノ粉末を構成する各ナノ粒子は、代表的には、単結晶体である。そのため、ナノ粉末の平均粒径は、平均結晶粒径ともいえる。上記平均粒径が500nm以下であれば、粒子の物性がバルク的なものから徐々にナノ領域へと移行し、ナノ粒子の物性を有する成形体となる。また、上記平均粒径が500nm以下であれば、成形時に粒子自らが最適位置に移動して、高密度充填を容易に行えて、より緻密な成形体となる。用途によっては、ナノ粉末はより小さいことが好ましい。例えば、保磁力が高いことが望まれる用途であれば、上記平均粒径は、保磁力が最大となり得る100nm程度が好ましい。その他、交流損などの損失が低いことが望まれる用途であれば、上記平均粒径は20nm程度が好ましい。上記平均粒径が10nm以上であれば、原料のナノ粉末の製造性に優れる、成形体の製造時に取り扱い易い、といった利点を有する。これらの点から上記平均粒径は、10nm以上200nm以下、更に20nm以上100nm以下が好ましい。成形体中のナノ粉末の平均粒径は、例えば、成形体の断面のSEM観察像を取得し、この観察像を画像処理してナノ粒子を抽出し、抽出した各ナノ粒子の等価面積円の直径を粒径とし、20個以上の粒径の平均をとることで測定できる。上記成形体に含まれるナノ粉末の大きさは、製造に用いた原料粉末の大きさに依存する。そのため、原料粉末の大きさを調整したり、成形時の圧力を調整したりすることで、成形体中のナノ粉末の平均粒径を所望の大きさに調整できる。ナノ粉末がフェライトなどのような硬質材料である場合、製造過程でナノ粒子の大きさが変化し難いため、成形体に含まれるナノ粉末の大きさは、原料粉末の大きさを実質的に維持する。ナノ粉末の形状は、球状が代表的であり、その他、多角形体状、針状などの異形状(塑性変形したものを含む)が挙げられる。
・・・含有量
上記成形体中のナノ粉末の含有量は、65体積%以上とする。上記含有量が多いほど、ナノ粉末の構成成分の割合が多く高密度体になり、上記構成成分に基づく特性に優れる成形体となる。例えば、磁性材料からなるナノ粉末の割合が多い場合には、電磁波吸収特性に優れる。従って、上記ナノ粉末の含有量は、68体積%以上、更に70体積%以上が好ましい。更には、ナノ粉末の構成材料がフェライトなどのセラミックスといった塑性変形に乏しい硬質材料である場合には、上記ナノ粉末の含有量は最密充填である74体積%程度が好ましい。ナノ粉末の構成材料が金属などの塑性変形性に優れる軟質材料である場合には、上記ナノ粉末の含有量は75体積%以上が好ましく、特に上限を設けない。
上記成形体中のナノ粉末の含有量は、65体積%以上とする。上記含有量が多いほど、ナノ粉末の構成成分の割合が多く高密度体になり、上記構成成分に基づく特性に優れる成形体となる。例えば、磁性材料からなるナノ粉末の割合が多い場合には、電磁波吸収特性に優れる。従って、上記ナノ粉末の含有量は、68体積%以上、更に70体積%以上が好ましい。更には、ナノ粉末の構成材料がフェライトなどのセラミックスといった塑性変形に乏しい硬質材料である場合には、上記ナノ粉末の含有量は最密充填である74体積%程度が好ましい。ナノ粉末の構成材料が金属などの塑性変形性に優れる軟質材料である場合には、上記ナノ粉末の含有量は75体積%以上が好ましく、特に上限を設けない。
ナノ粉末の含有量は、例えば、以下のように測定する。成形体から特定の体積Vの試料を切り出し、試料の質量Mを測定する。試料を構成する各要素(ナノ粒子、その他後述の樹脂など)の成分をX線回折などで分析して調べ、各要素の真密度を調べる。各要素が公知の材料であれば、真密度は公知の値を利用すればよい。フェライトなどの化合物や合金などであれば、組成に基づいて真密度を算出してもよい。そして、例えば、試料が公知の材料からなるナノ粉末と残部気孔(空気)とで実質的に構成される場合、ナノ粉末の含有量(体積%)は、{(試料の質量M/ナノ粉末の真密度)/試料の体積V}×100で求められる。例えば、試料が公知の材料からなるナノ粉末と、後述する樹脂(公知のもの)と、残部気孔(空気)とで実質的に構成される場合、試料を加熱して樹脂を溶解したり、有機溶媒に樹脂を溶解したりして、溶解物や有機溶媒中から樹脂を抽出して、示差熱分析装置などによって、又は樹脂を除去して残ったナノ粉末の質量MNを測定し、試料の質量Mとナノ粉末の質量MNとの差を算出することで、樹脂の質量MRを求める。ナノ粉末の含有量(体積%)は、[{(試料の質量M−樹脂の質量MR)/ナノ粉末の真密度}/試料の体積V]×100で求められる。上記樹脂の含有量は、(試料の質量M−樹脂の質量MR)/(ナノ粉末の真密度)でナノ粉末の体積VNを求め、(樹脂の質量MR/樹脂の真密度)で樹脂の体積VRを求め、(樹脂の体積VR/ナノ粉末の体積VN)×100で求められる。
・・・ナノ粉末以外の含有物
図1に示すように成形体1がナノ粒子10,10同士を結合する樹脂などからなる結合材12を含む場合、結合材12の含有量は、ナノ粉末を100体積%として0超20体積%以下が挙げられる。結合材12がこのように比較的少なくても、ナノ粒子10,10同士が強固に結合されて、結合強度に優れる成形体1となる。結合材12の含有量は、15体積%以下、10体積%以下、8体積%以下、6体積%以下、更に3体積%以上5体積%以下とすることができる。結合材12の含有量は、例えば、製造過程で用いる樹脂などの量によって調整できる。ナノ粉末を主体とし、残部が実質的に樹脂などの結合材である成形体とすることもできる。粉末成形体では、通常気孔を有することから、気孔を埋めるように樹脂を別途充填することで、上記残部が実質的に樹脂などである成形体にできる。
図1に示すように成形体1がナノ粒子10,10同士を結合する樹脂などからなる結合材12を含む場合、結合材12の含有量は、ナノ粉末を100体積%として0超20体積%以下が挙げられる。結合材12がこのように比較的少なくても、ナノ粒子10,10同士が強固に結合されて、結合強度に優れる成形体1となる。結合材12の含有量は、15体積%以下、10体積%以下、8体積%以下、6体積%以下、更に3体積%以上5体積%以下とすることができる。結合材12の含有量は、例えば、製造過程で用いる樹脂などの量によって調整できる。ナノ粉末を主体とし、残部が実質的に樹脂などの結合材である成形体とすることもできる。粉末成形体では、通常気孔を有することから、気孔を埋めるように樹脂を別途充填することで、上記残部が実質的に樹脂などである成形体にできる。
結合材12は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などの熱可塑性樹脂、アクリル、エポキシ、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミドなどの熱硬化性樹脂などが挙げられる。その他、上記成形体は製造過程で用いた潤滑材(後述)などを含むことを許容する。結合材12と潤滑材などとの合計含有量は、ナノ粉末を100体積%として10体積%以下、更に8体積%以下、6体積%以下が挙げられる。
上記成形体は、気孔が存在する形態を許容する。気孔が少ないほど、緻密でナノ粉末の含有量が多く(充填率が高く)、特性に優れることから、成形体における気孔(空気)の含有量は30体積%以下、更に25体積%以下、更には20体積%以下が好ましい。気孔が存在しない方が好ましいため下限は設けないが、10体積%以上の気孔の含有を許容すると、脱気時間を短縮でき、量産し易いと考えられる。
・・・用途
上記成形体の用途は、含有するナノ粉末の組成によって種々のものがある。例えば、Feを含む金属のうち軟磁性体(例えば、Fe、Fe−Al−Si、Fe−Niなど)やFeを含む化合物のうち軟磁性体(例えば、Fe3O4などのソフトフェライト)や、保磁力が高いε‐Fe2O3、絶縁性であり酸化度の高いγ‐Fe2O3などは、電磁波吸収体、磁心などに利用できる。例えば、Feを含む化合物のうち硬磁性体(例えば、ハードフェライト)などは、等方性磁石や電磁波吸収体に利用できる。その他、例えば、Ptなどは触媒、ナノカーボンなどは電極などに利用できる。
上記成形体の用途は、含有するナノ粉末の組成によって種々のものがある。例えば、Feを含む金属のうち軟磁性体(例えば、Fe、Fe−Al−Si、Fe−Niなど)やFeを含む化合物のうち軟磁性体(例えば、Fe3O4などのソフトフェライト)や、保磁力が高いε‐Fe2O3、絶縁性であり酸化度の高いγ‐Fe2O3などは、電磁波吸収体、磁心などに利用できる。例えば、Feを含む化合物のうち硬磁性体(例えば、ハードフェライト)などは、等方性磁石や電磁波吸収体に利用できる。その他、例えば、Ptなどは触媒、ナノカーボンなどは電極などに利用できる。
・成形体の製造方法
上述の実施形態に係る成形体といったナノ粉末の含有量が高い成形体は、例えば、上述の造粒工程、緻密工程を備える実施形態に係る成形体の製造方法によって製造できる。以下、工程ごとに詳細に説明する。
上述の実施形態に係る成形体といったナノ粉末の含有量が高い成形体は、例えば、上述の造粒工程、緻密工程を備える実施形態に係る成形体の製造方法によって製造できる。以下、工程ごとに詳細に説明する。
(造粒工程)
造粒工程では、成形金型に供する造粒粉を作製する。この造粒粉は、原料にナノ粉末と、造粒粉の形状維持材として機能する樹脂などの材料とを用いて作製した粉末であって、複数のナノ粒子を保形材によって一体にまとめた粉末である。特に、この造粒粉は、上記保形材に加えて、ナノ粒子間の潤滑性を高める潤滑材を含むことを特徴の一つとする。
造粒工程では、成形金型に供する造粒粉を作製する。この造粒粉は、原料にナノ粉末と、造粒粉の形状維持材として機能する樹脂などの材料とを用いて作製した粉末であって、複数のナノ粒子を保形材によって一体にまとめた粉末である。特に、この造粒粉は、上記保形材に加えて、ナノ粒子間の潤滑性を高める潤滑材を含むことを特徴の一つとする。
造粒粉は、例えば、所望の組成及び大きさのナノ粉末を容器に充填し、保形材となる樹脂及び潤滑材などの溶質を含有する溶液(溶質を希釈した希薄溶液)を浸透させた後、溶媒を乾燥除去して溶質を析出し、得られた乾燥物を粉砕することで製造できる。析出させた溶質が保形材及び潤滑材になる。特に、次工程以降で緻密化し易かったり、加圧・圧縮時間をある程度短縮したりできるように、造粒粉は、ナノ粉末の含有量が40体積%以下程度、保形材及び潤滑材の合計含有量が、ナノ粉末を100体積%として、25体積%以下程度の低密度な粉末とすることが好ましい。このような造粒粉は、次工程の加圧・圧縮時にナノ粒子の移動(再配列)を可能とする空間となる気孔を十分に含んでおり、いわばナノ粒子と、保形材及び潤滑材とで構成される多孔体である。ナノ粉末を固めた造粒粉とすることで、次工程以降にナノ粉末といった超微粒子の飛散を防止でき、製造性に優れる。
原料のナノ粉末は、上述の「ナノ粉末」の項で述べた組成や大きさ、形状のものを利用できる。ナノ粉末は、公知のものや市販品、公知の製造方法(各種の粉砕法、共沈法、逆ミセル法、ゾルゲル法、熱分解合成法、燃焼合成法など)によって製造したものなどが利用できる。造粒粉におけるナノ粉末の含有量が所望の値となるように、具体的には20体積%以上40体積%以下程度、好ましくは25体積%以上35体積%以下程度となるように、容器に充填する原料のナノ粉末の量を調整する。ナノ粉末は、比表面積が大きく表面摩擦力が大きい上に、ナノ粒子の体積及び質量が小さくて各ナノ粒子に作用する慣性が小さいため、30体積%以下程度といった低密度の充填を実現できる。
保形材は、製造過程におけるナノ粒子の保持及び造粒粉の形状保持を機能の一つとする。このような保形材の構成材料は、例えば、PVA,PVBなどの熱可塑性樹脂、アクリルなどの熱硬化性樹脂などが挙げられる。特に、保形材の構成材料は、エタノールなどのアルコールといった液体に溶解可能な樹脂が好ましい。樹脂などの溶液を用いると、ナノ粒子間に溶質(樹脂など)を容易にかつ均一的に行き渡らせられ、ナノ粒子間に保形材を生成できる。特に、アルコール溶液では、溶媒の揮発温度が比較的低く、乾燥時の加熱温度を低くできる(例えば、高級アルコールでは200℃以下、更に150℃以下、エタノールでは100℃以下)。その結果、乾燥時間の短縮、加熱エネルギーの低減などができ、生産性を高められる。溶液の溶質濃度は、上述のように溶媒の揮発を促進でき、乾燥後に適度な気孔を形成できる範囲で適宜選択できる。ナノ粉末の含有量を上述のように低くすることで、溶媒を揮発させ易い。アクリルなどの熱硬化性樹脂は、硬化前であれば柔らかいため、高圧印加状態でも容易に流動できて、緻密化できる。熱硬化性樹脂を保形材に含む場合には、未硬化の状態で成形に供し、必要に応じて硬化すればよい。
潤滑材は、次工程で加圧・圧縮したときに、特に高圧印加状態であってもナノ粒子の移動を滑らかに行わせて再配列を促進し、好ましくは最密充填に近付く位置にナノ粒子を移動させること、即ちナノ粒子間の潤滑性を高めて緻密化することを機能の一つとする。潤滑材は、このように製造過程におけるナノ粒子間の潤滑を主目的とする点で、一般的な金型成形に用いられる潤滑剤、即ち原料粉末や成形体と金型との滑りを確保することを主目的とするものとは異なる。但し、この潤滑材も一般的な潤滑剤と同様に、原料粉末と金型との滑り、脱型時の成形体と金型との滑りにも寄与すると期待される。
潤滑材の構成材料は、上述のナノ粒子間の潤滑が可能なもの、例えば、オレイルアミン、ミリスチン酸、ステアリン酸アミドなどの有機化合物、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、オクチル酸亜鉛などの金属石鹸などが挙げられる。特に、潤滑材は、平均粒径が10nm以下程度、好ましくは0.1nm以上10nm以下程度のサブナノオーダーの極微粒なものが好ましい。潤滑材が、ナノ粒子に対してサブナノオーダー程度の極微粒であれば、ナノ粒子間の界面活性剤や極圧添加材として機能できる。潤滑材も、エタノールなどのアルコールといった液体に溶解可能又は分散可能であることが好ましい。この場合、上述のように溶液を利用することでナノ粒子間に溶質(ここでは潤滑材)を容易にかつ均一的に介在できる、短時間で溶媒を除去できる、といった種々の効果を奏する。
保形材及び潤滑材は、造粒粉中の含有量が所望の量となるように、添加量を調整する。例えば、造粒粉中における保形材の含有量は、ナノ粉末を100体積%として、3体積%以上15体積%以下程度、潤滑材の含有量は、1体積%以上10体積%以下程度が挙げられる。上記含有量は、保形材、潤滑材の材質などに応じて適宜調整することができる。また、アルコール溶液などの溶液を用いる場合、溶質の濃度(溶質が複数種の場合には合計濃度)は、1質量%以上5質量%以下程度が挙げられる。
造粒粉の平均粒径は、1μm以上100μm以下程度であると、流動性に優れて成形金型に充填し易い、保形材などが多過ぎず成形し易い(緻密化し易い)、造粒粉自体を製造し易い、といった利点を有する。造粒粉の平均粒径は、例えば、粉末粒子のSEM観察像を取得し、この観察像における粉末粒子の包絡円の直径を粒径とし、20個以上の粉末粒子の平均を求める直接観察法を利用したり、篩を用いて分級して質量比を求めたりすることで測定できる。
(緻密工程)
緻密工程では、造粒粉を加圧・圧縮して緻密化し、ナノ粉末を主体とする(粉末)成形体を作製する。特に、この成形体におけるナノ粉末の含有量が65体積%以上を満たすように圧縮成形する。造粒粉は上述の特定の潤滑材を含むため、ナノ粒子間の界面抵抗や摩擦抵抗が低減されてナノ粒子同士が寄せ集まり易く良好に再配列できる。特に、造粒粉中のナノ粉末の粒径と潤滑材の分子の鎖長との双方がナノオーダーであれば、最密充填といった高充填をも可能になると考えられる。かつ、ナノ粉末の充填率が低く、上述のように十分な気孔を有する造粒粉を用いているため、造粒粉を加圧・圧縮すると、上記気孔を潰すようにナノ粉末や保形材などが十分に移動できる。上記の点から、気孔が少なく緻密な成形体が得られる。
緻密工程では、造粒粉を加圧・圧縮して緻密化し、ナノ粉末を主体とする(粉末)成形体を作製する。特に、この成形体におけるナノ粉末の含有量が65体積%以上を満たすように圧縮成形する。造粒粉は上述の特定の潤滑材を含むため、ナノ粒子間の界面抵抗や摩擦抵抗が低減されてナノ粒子同士が寄せ集まり易く良好に再配列できる。特に、造粒粉中のナノ粉末の粒径と潤滑材の分子の鎖長との双方がナノオーダーであれば、最密充填といった高充填をも可能になると考えられる。かつ、ナノ粉末の充填率が低く、上述のように十分な気孔を有する造粒粉を用いているため、造粒粉を加圧・圧縮すると、上記気孔を潰すようにナノ粉末や保形材などが十分に移動できる。上記の点から、気孔が少なく緻密な成形体が得られる。
この工程では、代表的には、貫通孔を有するダイと、貫通孔に挿入されて、原料粉末(ここでは造粒粉)を押圧する上パンチ及び下パンチとを備える成形金型を利用する。ダイの貫通孔に下パンチを挿入して、ダイの内周面と下パンチの上面(押圧面)とでつくられる空間に造粒粉を充填し、上パンチと下パンチとで加圧・圧縮することで、成形金型を用いて(粉末)成形体を製造できる。
緻密工程の圧力は、成形体中のナノ粉末の含有量が65体積%以上となるように適宜調整する。この圧力は、例えば、490MPa(5ton/cm2)以上、更に980MPa(10ton/cm2)以上、1176MPa(12ton/cm2)以上、1470MPa(15ton/cm2)以上が挙げられる。
緻密工程では、以下のような現象が生じていると考えられる。造粒粉を押す圧力を高めていくと、まず、上述の造粒粉を充填した空間内の空隙を潰すように造粒粉が移動して、造粒粉が再配列する。更に圧力を高めると、ある圧力で造粒粉の保形材が耐え切れず、造粒粉が潰れ、造粒粉中の気孔(空間)を潰すようにナノ粒子や保形材が移動でき、ナノ粉末の充填率が上昇する。更に圧力を高めると、ナノ粒子間に介在する潤滑材がナノ粒子間の界面抵抗や摩擦抵抗を低減して、ナノ粒子同士が近付くように移動でき、ナノ粉末の充填率が更に上昇する。
なお、脱型時には、潤滑材が成形金型と成形体との間に介在して両者の摩擦を低減することで、脱型し易い。即ち、造粒粉が潤滑材を含むことで、成形金型との擦れによる成形体の損傷や欠けなどを低減でき、高圧での加圧・圧縮を行いながらも、形状精度、表面性状に優れる成形体が得られる。
緻密工程は、代表的には、所定の圧力による押圧を、一つの成形金型を用いて行うことが挙げられる。その他、例えば、低圧による押圧(例えばナノ粉末の含有量が40体積%程度までの成形)と高圧による押圧とを、それぞれ別の成形金型を用いて行ってもよい。
緻密工程では、造粒粉を所定の圧力で押し続けて緻密化すること、特に高い圧力による押圧状態を保持する保持時間をある程度長くすると、成形体中のナノ粉末の充填率をより高められる上に緻密な成形体を得易い。ナノ粉末の材質、大きさ、添加量、圧力などにもよるが、例えば、1000MPa以上の高圧範囲から選択される圧力で押圧する時間(保持時間)を3秒以上、更に5秒以上、8秒以上、更には10秒以上とすることが挙げられる。なお、上述の焼結体の製造に用いる予備成形体の成形では、所定の圧力で押圧する時間は、例えば2秒以下、概ね1秒以下程度である。上記保持時間を長くする形態は、通常の金型成形による粉末成形体の製造時間よりも長い傾向にあるものの、加熱時間が数時間に及ぶ焼結工程が不要であり、高密度体を容易にかつ生産性よく製造できるといえる。
以下、試験例を挙げて、より具体的な実施形態を説明する。
[試験例1]
ナノ粉末と種々の添加材とを用いて成形用粉末を作製し、成形用粉末を加圧・圧縮して成形体を作製し、成形状態を調べた。
[試験例1]
ナノ粉末と種々の添加材とを用いて成形用粉末を作製し、成形用粉末を加圧・圧縮して成形体を作製し、成形状態を調べた。
試料No.1−1の成形用粉末(造粒粉)は、以下のように作製した。平均粒径100nmの球状のSrフェライトからなるナノ粉末と、PVA・アクリル・オレイルアミンを含むエタノール溶液とを用意し、ナノ粉末を容器に充填した後、エタノール溶液を流し入れて、ナノ粉末を浸漬した。造粒粉中のナノ粉末の含有量が20体積%程度となるように、ナノ粉末の量を調整した(この点は、後述する試料も同様である)。上記エタノール溶液は、ナノ粉末100体積%に対してPVAの含有量が10体積%、アクリルの含有量が5体積%、オレイルアミンの含有量が5体積%となるように、PVA・アクリル・オレイルアミンの添加量を調整した。上記エタノール溶液は、これらPVA・アクリル・オレイルアミンをエタノールで希釈して作製した。ナノ粉末、PVA、アクリル、オレイルアミンはいずれも、市販品を用いた。アクリル及びPVAは、保形材として、オレイルアミンは、潤滑材として用意した。
ナノ粉末を浸漬したエタノール溶液を乾燥させて溶媒(エタノール)を除去した後、乾燥物を粉砕することで、ナノ粉末とPVA・アクリル・オレイルアミンとを含む造粒粉を作製した。作製した造粒粉をSEMで観察すると、粉末粒子の大きさが3μm〜5μm程度であり、気孔を有する多孔体であって、ナノ粒子間に樹脂が介在していることが確認できた。
試料No.1−100,No.1−110,No.1−120,No.1−130の造粒粉は、以下のように作製した。試料No.1−1と同様のSrフェライト(平均粒径が100nmの球状)と、表1に示すバインダを含むエタノール溶液とを用意し、試験例No.1−1と同様に、容器に充填⇒浸漬⇒溶媒除去⇒粉砕という工程を経て、ナノ粉末とバインダとを含む成形用粉末を作製した。上記エタノール溶液は、ナノ粉末100体積%に対してバインダの含有量が表1に示す値となるように、バインダの添加量を調整した。バインダはいずれも市販品を用いた。
作製した各試料の成形用粉末を成形金型に充填して圧縮・加圧して、成形体(10mm角の立方体)を作製した。この試験では、成形用粉末を25MPaの低圧で加圧・圧縮して低密度体を成形し(ナノ粉末の含有量が40体積%程度)、この低密度体を300MPa以上の高圧で加圧・圧縮して、緻密化を行った。この緻密化で印加した圧力は、392MPa(4ton/cm2)、588MPa(6ton/cm2)、784MPa(8ton/cm2)、980MPa(10ton/cm2)であり、印加時間はいずれも2秒である。得られた複合成形体について、表面状態の目視観察及びナノ粉末の含有量を調べた。各試料の成形体(複合成形体)におけるナノ粉末の含有量(充填率、体積%)は、成形体の質量及び体積(寸法)、ナノ粒子の密度、各種の有機物の密度及び質量又は各種の有機物の密度及び体積などを用いて演算によって算出した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、PVA・アクリル・オレイルアミンを含む造粒粉を用いた試料No.1−1は、印加する圧力が低い低圧領域(ここでは4ton/cm2)から圧力が高い高圧領域(ここでは10ton/cm2)に至る全域において、割れ(クラック)などの表面欠陥が実質的に無く、良好な表面状態(表1ではGoodと示す)の成形体が得られている。かつ、試料No.1−1は、特定の造粒粉を用いることで圧力が高くなるほど、ナノ粉末の含有量が高められ、65体積%以上というナノ粉末の充填率が高い成形体が得られている。このような表面性状に優れる緻密な成形体が得られた理由の一つとして、製造過程で保形材となるPVAなどを含むことに加えて、鎖長が数nm程度のオレイルアミンを含むことで、オレイルアミンがナノ粒子間の潤滑材として機能し、緻密な配列を可能にすると共に、金型潤滑材としても機能したため、と考えられる。得られた試料No.1−1の複合成形体をSEMで観察したところ、ナノ粒子同士がPVAなどの保形樹脂によって結合されていることが確認できた。ナノ粉末を100体積%として、上記樹脂の含有量は15体積%であり、上記樹脂と潤滑材との合計含有量は20体積%である。試料No.1−1の複合成形体は、ナノ粉末がSrフェライトといった硬質材料(剛性材)で構成されているものの、ナノ粒子間がPVAなどで結着されて結合強度が高く、高強度な成形体になっていると考えられる。
一方、試料No.1−1の造粒粉に用いたPVAと同じであって、PVAのみを用い、かつ添加量を多くした試料No.1−100は、造粒粉が柔らか過ぎて、成形金型から漏出して成形体を得ることが困難であった。このことから、保形材となるもののみを多く添加しても、ナノ粒子間の潤滑機能が期待できないばかりか、良好に成形できない場合があることが分かる。
PVAに代えてPVBのみを用いた試料No.1−110は、ある程度の低圧領域(ここでは6ton/cm2以下)では、成形体が得られたものの、圧力が高くなると(ここでは8ton/cm2以上)、割れ(クラック)が発生したり、層状に破断したりするなどして、所定の大きさ及び形状の成形体を得ることが困難であった。かつ、上記低圧領域で得られた成形体は、ナノ粉末の含有量がせいぜい60体積%程度であり、低密度であった。このことから、保形材となるもののみを多く添加しても、ナノ粉末の充填率を十分に高められなかったり、所定の大きさ及び形状に成形できなかったりする場合があることが分かる。
金型成形において金型潤滑剤に利用されているミリスチン酸を用いた試料No.1−120は、脆弱で強度に劣ると考えられる成形体が得られた。このような低強度な成形体が得られた理由の一つとして、ミリスチン酸のエタノール溶液にPVBが十分に溶けず、PVBがナノ粒子間に均一的に配置されなかったことが挙げられる。試料No.1−120のうち、最も高圧で成形した成形体についてナノ粉末の含有量を求めたところ、62体積%程度であり、65体積%に達しなかった。このことから、ミリスチン酸といった金型潤滑剤では、ナノ粉末の金型成形において充填率の向上に十分に寄与しないといえる。
アクリルのみを用いた試料No.1−130は、成形体が得られたものの、圧力が低くても(ここでは4ton/cm2)、割れ(クラック)が発生したり、層状に破断したりするなどして、所定の大きさ及び形状の成形体を得ることが困難であった。また、圧力が高くなるほど、このような損傷などが酷くなり、良好な成形体が得られなかった。このことから、保形材となり得るもののみを多く添加しても、所定の大きさ及び形状に成形できない場合があることが分かる。
[試験例2]
ナノ粉末と種々の添加材とを用いて造粒粉を作製し、造粒粉を押す圧力を変化させたときのナノ粉末の充填率の推移を調べた。
ナノ粉末と種々の添加材とを用いて造粒粉を作製し、造粒粉を押す圧力を変化させたときのナノ粉末の充填率の推移を調べた。
この試験では、試験例No.1−1の造粒粉と同様の原料を用いて、同様にして作製した造粒粉、即ちSrフェライトからなるナノ粉末を主体とし、PVA・アクリル・オレイルアミンを含む造粒粉を用いた。造粒粉におけるナノ粉末の含有量は20体積%程度であり、ナノ粉末100体積%に対してPVAの含有量は10体積%、アクリルの含有量は5体積%、オレイルアミンの含有量は5体積%である。
上記造粒粉を成形金型に充填して圧縮・加圧して、成形体(10mm角の立方体)を作製した。この試験でも、低密度体を作製し(ナノ粉末の含有量が40体積%程度)、この低密度体をより高圧で加圧・圧縮して複合成形体を得た。ここでは二つの複合成形体(試料No.A,No.B)を作製した(n=2)。
上記低密度体に印加した圧力は、392MPa(4ton/cm2)、588MPa(6ton/cm2)、784MPa(8ton/cm2)、980MPa(10ton/cm2)、1176MPa(12ton/cm2)、1470MPa(15ton/cm2)とし、圧力ごとにナノ粉末の充填率を調べた。各試料No.A,No.Bのナノ粉末の含有量(充填率、体積%)を表2及び図2に示す。ナノ粉末の含有量は、試験例1と同様にして求めた。
図2は、横軸が印加した圧力(ton/cm2)を示し、縦軸が成形体中のナノ粉末の充填率(体積%)を示すグラフである。圧力(圧縮力)は、成形機に付属される圧力計の値を示す。
表2及び図2のグラフ(圧力と充填率との圧密曲線)に示すように、圧力の増加に伴って、ナノ粉末の充填率が右上がりに上昇している。この試験では、1470MPa(15ton/cm2)でナノ粉末の充填率が68体積%程度まで上昇しており、bccレベルの高密度な成形体が得られていることが分かる。また、この試験及び上述の試験例1から、特定の造粒粉を用いて高圧(ここで、980MPa(10ton/cm2)以上)で加圧・圧縮すれば、ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体が得られるといえる。
1470MPa(15ton/cm2)で押圧する時間を2秒から10秒に延長したところ、ナノ粉末の含有量が更に上昇し、いずれの試料も68.7体積%となった。保持時間や圧力を変更したり、樹脂を低減したりすることで、更に上昇し得ると予想される。このことから、所定の圧力(例えば、980MPa以上の高圧)で押圧し続けることで、より緻密なナノ粉末の成形体が得られるといえる。このような緻密なナノ粉末の成形体が得られた理由の一つとして、上述のように保形材に加えて、ナノ粒子間の界面抵抗や摩擦抵抗を低減可能で、界面活性剤や極圧添加材として機能し得る潤滑材を含む造粒粉を用いていること、更には押圧する保持時間を長くしていることが挙げられる。
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、上記試験例では、造粒粉としてPVAとアクリルとの双方を含む形態を示したが、PVAのみとオレイルアミンとを含む形態などとすることができる。
本発明の成形体は、電磁波吸収体、磁石などに好適に利用できる。本発明の成形体の製造方法は、ナノ粉末を用いて、ナノ粉末の含有量が高い緻密な成形体を製造する場合に好適に利用できる。
1 成形体 10 ナノ粒子 12 結合材
Claims (6)
- ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体。
- 前記ナノ粉末の含有量が68体積%以上である請求項1に記載の成形体。
- 前記ナノ粉末を構成するナノ粒子同士を結合する樹脂を含み、
前記樹脂の含有量が、前記ナノ粉末を100体積%として、0超20体積%以下である請求項1又は請求項2に記載の成形体。 - 前記ナノ粉末は、Feを含む化合物及びFeを含む金属の少なくとも一方の材料から構成されるナノ粒子を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の成形体。
- ナノ粉末と、前記ナノ粉末を構成するナノ粒子間に介在して所定の形状を保持する保形材と、前記ナノ粒子間に配される潤滑材とを含む造粒粉を作製する工程と、
前記造粒粉を加圧・圧縮して、前記ナノ粉末の含有量が65体積%以上である成形体を作製する工程とを備える成形体の製造方法。 - 前記成形体を作製する工程では、所定の圧力で押し続けて緻密化する請求項5に記載の成形体の製造方法。
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