本発明の一態様に係る熱画像センサは、それぞれ赤外線を受光する複数の赤外線受光素子を備える赤外線受光部と、前記赤外線受光部に赤外光を照射させるレンズと、前記赤外線受光部と前記レンズとを、前記レンズの一部を通り、前記赤外線受光部において前記赤外線受光素子が配置された面と略並行に伸びる軸を回転軸として回転駆動させる回転部と、を備える。
また、例えば、前記レンズの一部は、前記レンズの光心であるとしてもよい。
また、例えば、さらに、前記レンズから見て前記赤外線受光部と反対側に配置され、透光性を有するカバー部材を備え、前記レンズは、前記カバー部材を透過した赤外光を前記赤外線受光部に照射させるとしてもよい。
また、例えば、前記カバー部材は、第1赤外線透過率を有する第1領域と、前記第1赤外線透過率より低い第2の赤外線透過率を有する第2領域と、を含むとしてもよい。
また、例えば、前記カバー部材は、平板形状を含む前記レンズの球面の曲率半径より大きい形状を有する透光部材で構成され、前記第2領域と前記レンズとの距離は、前記第1領域と前記レンズとの距離よりも大きく、前記レンズに入射する赤外線の前記第2領域中での光路長は、前記レンズに入射する赤外線の前記第1領域中での光路長よりも大きいとしてもよい。
また、例えば、前記第2領域と前記第1領域とは同一部材で構成されており、前記第2領域の厚みは、前記第1領域の厚みより大きいとしてもよい。
また、例えば、前記第1領域は、前記第1赤外線透過率を有する第1部材からなり、前記第2領域は、前記第1部材と、前記第1部材上に配置され、赤外線を吸収する第2部材とからなるとしてもよい。
また、例えば、前記回転部は、前記カバー部材を回転駆動させないで、前記赤外線受光部と前記レンズとを前記中心に回転駆動させるとしてもよい。
また、例えば、前記回転部は、前記第1領域を透過した赤外光を前記赤外線受光部が受光する間の第1回転速度と、前記第2領域を透過した赤外光を前記赤外線受光部が受光する間の第2回転速度とは異ならせて、前記赤外線受光部と前記レンズとを回転駆動させるとしてもよい。
ここで、例えば、前記第2回転速度は、前記第1回転速度よりも速いとしてもよい。
また、上記の熱画像センサ(受光センサ)を備える空気調和機であってもよく、電子調理器でもよい。
ここで、前記電子調理器は、さらに、天板と、調理対象である対象物を載置する載置板と、を備え、前記受光センサは、前記天板に配置され、前記回転部が前記回転駆動させる際の回転軸は、前記天板と略平行であってもよい。
また、例えば、前記電子調理器は、前記電子調理器の運転を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記受光センサより取得した赤外線画像に基づき特定した前記対象物の温度が、所定の温度に到達した際に、前記運転を終了するとしてもよい。
また、例えば、前記電子調理器は、前記電子調理器の運転を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記受光センサより取得した赤外線画像に基づき前記載置板に2以上の前記対象物が存在することを特定した場合、前記2以上の対象物への加熱を行う運転方法のうち、前記加熱に必要な電力を最も抑えた第1運転方法で前記運転を制御するとしてもよい。
また、例えば、前記電子調理器は、前記電子調理器の運転を制御する制御部と、前記対象物に赤外光源を照射する照射部と、を備え、前記制御部は、さらに、前記受光センサより取得した赤外線画像に基づき特定した前記対象物の位置に前記赤外光源を照射するように前記照射部を制御するとしてもよい。
また、例えば、前記制御部は、前記受光センサより取得した赤外線画像に基づき特定した前記対象物の温度上昇の速度が所定以上遅い場合に、前記対象物の位置に前記赤外光源を照射するように前記照射部を制御するとしてもよい。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
(実施の形態1)
[実施の形態1の基礎となった知見]
まず、実施の形態1に係る空気調和装置の基礎となった知見について説明する。
特許文献1に記載の空気調和装置では、取得した熱画像から大まかな人の顔の位置や足元の位置を推定する人体検出部が開示されている。
しかしながら、特許文献2には、人の顔の位置や足下の位置を推定する具体的な方法が開示されておらず、十分な検討がされていない。また、特許文献2に記載の空気調和装置においては、ユーザの状態や活動状態に関しては何ら考慮されていない。
つまり、特許文献2に記載の空気調和装置は、例えば、ユーザが行動している状態なのか、ユーザが静止している状態なのか、ユーザが寝ている状態なのか等、ユーザの状態に応じた最適な空調を行うことはできない。また、特許文献2では、高分解能の2次元熱画像データを取得する方法については開示されているが、取得したデータをどのような制御に活用するか検討されていない。
実施の形態1では、熱画像センサを有する空気調和装置であって、ユーザの状態によって最適な制御を行う空気調和装置について説明する。
[構成]
以下、実施の形態1に係る空気調和装置について説明する。図1は、熱画像センサを用いた空気調和装置の外観図である。
図1に示される空気調和装置10は、部屋の空気を吸い込む吸込口11と、調和された空気を吹き出す吹出口12と、熱画像データを取得する熱画像センサ13とを有する略箱状の本体14で構成される。
まず、空気調和装置10について説明する。
吸込口11から本体14内に吸い込まれた空気は、本体14内部の加熱部または冷却部(図示せず)で加熱または冷却され、吹出口12から室内に戻される。
室内の空気を吸い込んで吐き出すために、本体14内部には、ファンなどの送風部(図示せず)が設けられていることが一般的である。これにより、より多くの空気を短時間で加熱または冷却することが可能となる。
また、本体14内部には、空気を加熱または冷却するため、フィンなどの放熱板(図示せず)が設けられていることが一般的であり、これにより、より効率よく空気を加熱または冷却することが可能となる。
また、空気調和装置10には、上記放熱板を加熱または冷却するためコンプレッサーやペルチエなどの熱交換器(図示せず)が設けられる。なお、熱交換器は、室外に設置されていてもよい。これにより、空気調和装置10のうちの室内に設けられる機器が小型となり、室内の空気の冷却時には熱交換器自体の熱が室内に放出されないため、室内の空気を効率よく冷却することが可能となる。また、この場合、熱交換器と放熱板とは熱抵抗が小さいヒートパイプや冷媒配管で連結されるとよい。これにより、より効率よく空気の加熱または冷却が行われる。
次に、熱画像センサ13について説明する。空気調和装置10の熱画像センサ13には、以下に説明する熱画像センサ20および熱画像センサ30のいずれが採用されてもよい。
図2は、熱画像センサ13の一例である熱画像センサ20を示す図である。図2に示されるように、熱画像センサ20は、マトリクス状に赤外線受光素子が配列された二次元受光センサ21と、レンズ22とからなる。
二次元受光センサ21には、熱起電力を用いたサーモパイルや抵抗値の温度変化を利用したボロメータ、焦電効果を利用した焦電センサなどの非接触型放射温度計などが用いられる。熱画像センサ20の二次元受光センサ21には、縦16画素×横32画素=計512画素の赤外線受光素子(以下、単に受光素子とも記載する)がマトリクス状に配列されている。
また、レンズ22は、赤外線の透過率が高いシリコンやZnSなどからなるレンズが用いられる。各方向からレンズ22に入射した赤外光は、それぞれ異なる受光素子に入射するように設計されている。
以下、熱画像センサ20を用いた室内の温度分布の測定方法について説明する。図3は、熱画像センサ20のセンシング対象となる室内(観察エリア)の模式図である。図4は、熱画像センサ20の温度分布の測定方法を説明するための図である。
例えば、図3に示されるようなユーザ41やユーザ42がいる部屋に空気調和装置10が設置されている場合、図4に示されるように、各観察画素51から放出された赤外線が、二次元受光センサ21の各受光素子に入射する。なお、観察画素51は、各受光素子に入射する赤外線を放出している室内の領域を意味する。
各観察画素51内に設置された物質の温度が高いほど、放出される赤外線の光量が大きくなり、対応する受光素子に入射する赤外線光量が多くなる。つまり、二次元受光センサ21の各受光素子に入射した赤外線光量から、空気調和装置10の周囲の温度分布が計算される。
二次元受光センサ21は、受光素子がマトリクス状に配列されているため、二次元受光センサ21全体で、全観察エリア50内の各観察画素51の温度(熱画像データ)が常時(サンプリング周期ごとに1フレーム)計測される。ここでは16×32=512画素の受光素子がマトリクス状に配列されているため、全観察エリア50は、16行×32列の合計512個の観察画素51に区画される。なお、熱画像データが取得されるタイミングは、サンプリング周期ごとに1フレームではなくてもよい。熱画像データは、ユーザが指定したタイミングで取得されてもよい。
次に、熱画像センサ13の別の例について説明する。図5は、熱画像センサ13の別の一例である熱画像センサ30を示す図である。図5に示されるように、熱画像センサ30は、回転部31と、受光素子がライン状に配列された一次元受光センサ32と、レンズ33とからなる。
回転部31には、ステッピングモータやサーボモータなどが用いられる。なお、熱画像センサ30には、必ずしも回転部31が用いられる必要はなく、受光素子の向きを変更する走査手段(走査部)であれば、他の駆動機構が用いられてもよい。回転部31は、他の駆動機構よりも小型化に適していると考えられる。
一次元受光センサ32は、二次元受光センサ21と同様に、熱起電力を用いたサーモパイルや、抵抗値の温度変化を利用したボロメータ、焦電効果を利用した焦電センサなどの非接触型放射温度計が用いられる。また、一次元受光センサ32では、1×16=16画素の受光素子が配列されている。
レンズ33には、レンズ22と同様に赤外線の透過率が高いSiやZnSなどからなるレンズが用いられる。
以下、熱画像センサ30を用いた室内の温度分布の測定方法について説明する。図6は、熱画像センサ30の温度分布の測定方法を説明するための図である。
熱画像センサ30では、一次元受光センサ32が用いられるため、図6に示されるライン観察エリア61内の観察画素51が、一度に温度を計測できる観察画素51となる。ただし、回転部31を用いることで、ライン観察エリア61は、ライン軸方向(図6中のY方向)に対して垂直方向(以下、走査方向またはX方向とも記載する)に移動し、熱画像センサ20の場合と同様に、空気調和装置10の周囲の全観察エリア50の熱画像データが得られる。例えば、1×16の一次元受光センサ32が、回転部31を用いて任意の角度ずつ32step回転されることで、16×32=512の画素、すなわち、全観察エリア50の熱画像データが得られる。一次元受光センサ32が1ステップあたり5度ずつ回転されるとすれば、全観察エリア50のX方向の幅は160度に相当する。
熱画像センサ30では、回転部31が一次元受光センサ32を回転させながら、各観察画素51の温度を計測する。そのため、熱画像センサ30において全観察エリア50の熱画像データを取得するために必要な時間(フレーム間隔)は、上述の熱画像センサ20において全観察エリア50の熱画像データを取得する時間よりも長い。
なお、熱画像センサ30では、Y方向にライン状に並んだ受光素子がX方向に移動(回転)するが、X方向にライン状に並んだ受光素子がY方向に移動(回転)してもよい。
また、二次元受光センサ21および一次元受光センサ32には、フォトダイオードが用いられることが望ましい。フォトダイオードが用いられることにより、高速な熱画像データの取得が可能となる。
また、二次元受光センサ21および一次元受光センサ32が、フォトダイオードの場合も、それ以外の場合も、受光センサを加熱する手段(加熱部)が設けられることが望ましい。受光センサを加熱する手段が設けられることで熱画像データのS/Nを高めることが可能となる。加熱部には、ヒーターやペルチエが用いられる。
また、上記加熱部が設けられ、かつ、受光センサとしてフォトダイオードが用いられる場合、インジウムアンチモンからなるフォトダイオードが採用されることが望ましい。これにより、熱画像データの取得に加えて、室内空気の成分(CO2、CO、H2O)濃度を検出することが可能となる。したがって、熱画像センサ13によってCO2、COの濃度が高いことを検出し、ユーザに換気を促すことが可能となる。この場合、空気調和装置10は、ユーザへ換気を促す手段として、音声による通知手段(通知部)を備えていることが望ましい。
また、空気調和装置10は、室内外の空気の入れ替えを行う換気部を備えていることが望ましい。これにより、CO2、CO濃度が高い場合に自動で(ユーザ自身に窓を開ける手間を強いることなく)換気が可能となる。ここで、換気部は、具体的には、空気調和装置10から開閉の制御が可能な換気窓であるが、このような換気窓にはフィルタが設けられることが望ましい。これにより、換気に伴う花粉などの室内への進入を軽減することが可能となる。
また、熱画像センサ13においては、複数の回転部を用いて、2次元走査が行われることが望ましい。回転部は、例えば、パン・チルト(ロール)方向に熱画像センサを回転することができるとよい。これにより、より安価で高性能な熱画像センサの構築が可能となる。
次に、熱画像センサ13を用いた空気調和装置10のシステム構成について説明する。図7は、空気調和装置10のシステム構成を示すブロック図である。
図7に示されるように、空気調和装置10は、熱画像センサ13に加えて、フレームメモリ15、演算処理部16、環境計測装置17、熱交換器18a、送風機18b、および風向調節器18cを備える。演算処理部16は、画像処理部16aおよび機器制御部16bを含む。なお、以上の構成は、空気調和装置10において必須の構成ではなく、一または複数の構成が欠けていてもよい。
以下、空気調和装置10の各構成が行う処理の流れを説明する。
まず、熱画像センサ13は、受光素子から電気信号(サーモパイルの場合は熱起電力)を取得し、取得した電気信号に基づいて二次元の熱画像データを作成する。熱画像センサ13の構成は、上述の通りである。
フレームメモリ15には、作成された二次元の熱画像データが記憶される。フレームメモリ15は、半導体メモリなど、一般的な記憶機能を有するものであれば特に限定されるものではない。また、フレームメモリ15は、空気調和装置10の内部に設けられてもよいし、空気調和装置10の外部に外付けされてもよい。
演算処理部16は、フレームメモリ15に記憶されている二次元の熱画像データを取得し、演算処理を行う。演算処理部16は、マイコン等、演算機能を有するものなら特に限定されるものではない。
演算処理部16内では、まず、画像処理部16aが、フレームメモリ15に記憶された熱画像データに基づいて、熱画像データから人の位置や着衣量、室内の温度分布などを検出する画像処理を行う。画像処理部16aにおける画像処理アルゴリズムの具体例について後述する。そして、画像処理部16aは、ユーザの位置、ユーザの手や顔の温度、壁の温度などの情報を機器制御部16bに出力する。
機器制御部16bは、画像処理部16aから出力された情報に基づいて、コンプレッサーなどの熱交換器18a、ファンなどの送風機18b、およびルーバーなどの風向調節器18cを制御(室温制御、風量制御、および風向制御)するための制御情報を算出する。機器制御部16bが算出する制御情報は、例えば、送風機18bであればその回転数であり、風向調節器18cであればルーバーを傾ける角度である。なお、機器制御部16bの制御対象は熱交換器18a、送風機18b、および風向調節器18cに限定されない。
なお、空気調和装置10は、図7に示されるように、室温や湿度を計測する環境計測装置17を備え、室温や、湿度などに基づいて、室温、風量の制御を行ってもよい。
さらに、環境計測装置17から得られる室温や、湿度などの環境情報は、画像処理部16aに送信されることが望ましい。この理由については、後述する。
また、上記環境情報は、室温および湿度の他に外気温、室内外の照度、屋外の輻射熱なども含むことが望ましい。これについても理由は後述する。
なお、画像処理部16aは、空気調和装置10の外部に設けられてもよい。図8は、画像処理部が装置の外部に設けられた空気調和装置のシステム構成を示すブロック図である。
図8に示されるように、空気調和装置10aは、通信部19を備え、熱画像データは、通信部19を介してサーバ80に送信される。このような構成では、サーバ80内の画像処理部81にてユーザの位置、ユーザの状態(手や顔の温度、着衣量、姿勢など)、および壁の温度などの算出が行われる。
このような構成では、定期的に熱画像データが通信部19を通じてサーバ80に送信されるので、熱画像センサの感度劣化を確認することが可能となり、センサ感度を補正することが可能となる。ここで、通信部19の通信には、Wi−Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などが用いられ、通信部19は、インターネットなどのネットワークを用いて、室外のサーバ80へ熱画像データを伝送してもよい。また、通信部19によって伝送されるデータは熱画像データではなく、熱画像センサ13からのセンサ出力であってもよい。
また、理由については後述するが、環境情報も通信部19によってサーバ80に送信されることが望ましい。
[ユーザの位置検出]
次に、画像処理部16aにて、熱画像データを基に、ユーザの位置を検出し、ユーザの状態を把握するため顔や手など、各部の温度を計測する方法とその効果について説明する。なお、以下の説明では、熱画像センサ13としては、熱画像センサ20および熱画像センサ30のいずれが用いられてもよい。
まず、ユーザの顔の温度を計測する方法について説明する。
ユーザの位置を検出し、ユーザの顔の温度を計測する簡単な方法の一つとしては、各フレームの熱画像データの中で30〜40℃の観察画素51を検出し、検出された観察画素51の位置をユーザの顔の位置とし、検出された観察画素51の温度をユーザの顔の温度とする方法がある。
また、温度が30〜40℃で、かつ、1フレーム前から1℃以上温度変化している観察画素51の位置がユーザの顔位置とされてもよい。人以外の発熱体は、フレーム間の位置移動およびフレーム間の温度変動が小さいため、このような構成によれば、より正確にユーザの位置を検出することができる。
このようなユーザの位置検出によれば、空気調和装置10は、ユーザを避けて送風する(機器制御部16bが風向調節器18cを制御する)ことで、例えば、ユーザの肌の乾燥を防ぐことが可能となる。
また、上記のようにユーザの顔の温度を計測することで、ユーザが熱中症になる危険性を低減することも可能となる。例えば、ユーザの顔の温度が37℃以上の場合、冷房を強化することでユーザが熱中症になる危険性を低減することが可能である。また、ユーザの顔の温度が常時37℃以上であれば、空気調和装置10は、ユーザが風邪やインフルエンザであると認識し、加湿を強化することが可能となる。
また、熱交換器18a、および、機器制御部16bが駆動していない状態であっても、熱画像センサ13によるユーザの顔温度計測が行われてもよい。すなわち、空気調和装置10自体が運転されていない状態(停止状態)でも、熱画像センサ13による計測は継続して行われてもよい。これにより、例えば、機器制御部16b、および熱交換器18aを停止させた状態でユーザが就寝している場合などに、消費電力の軽減と熱中症の予防との両立が可能となる。
なお、各観察画素51のサイズは、20cm×20cm以下が望ましい。これにより、より正確にユーザの顔温度を計測することが可能となり、より正確に熱中症の予防をすることが可能となる。空気調和装置10では、機種ごとに設定部屋面積が異なるが、各観察画素51のサイズは、例えば、6畳(約10m2)用の空気調和装置10であれば3.6m、8畳(約13m2)用の空気調和装置10であれば4.5m、12畳(約19m2)用の空気調和装置10であれば7.2m離れた場所において、20cm×20cm以下となることが望ましい。
なお、観察画素51のサイズを20cm×20cmより小さくすることで、観察画素51の総数が512個よりも増えるが、この場合は、より高分解能な計測が行える利点がある。
また、ユーザの顔の位置に相当する観察画素51が、一定時間以上移動しない場合は、ユーザが寝ていると判断されてもよい。ここで、「一定時間」は、例えば1分〜60分である。空気調和装置10は、ユーザが就寝中であると判断されたときに、送風量を下げて騒音レベルを下げる機能、動作中に点灯するLEDなどの照度を下げる機能、および冷房や暖房を弱化し消費電力を抑える機能などをユーザに提供することが可能となる。
ここで、冷房および暖房の弱化は、コンプレッサーの回転数または回転速度を減らすことで実現可能である。また、冷房および暖房の強化の方法としては、コンプレッサーの回転数または回転速度を増やすことで実現される。
また、就寝中のユーザの顔の位置が大きく(例えば30cm以上)移動した場合は、ユーザの起床と判断されてもよい。そして、別途取得される時刻情報に基づいて日々の起床時間が記憶されることで、起床時刻付近で、冬場であれば暖房、夏場であれば冷房を開始する機能をユーザに提供することが可能となる。
また、図示されないが、起床時刻の情報などの記憶用に、空気調和装置10は、フレームメモリ15とは別の記憶装置(メモリ)を備えていてもよい。また、空気調和装置10が提供する機能をユーザが利用するかどうかは、リモコンなどのユーザインターフェースを通じてユーザによって選択されてもよい。これにより、ユーザは自身の希望に合わせた機能を選択することができる。なお、機能の選択は、スマートフォンやTVなどを用いてネットワーク経由で行われてもよい。
また、空気調和装置10は、室内照明機能を備えていてもよい。これにより、空気調和装置10は、起床時刻付近で照明を点灯させる機能をユーザに提供することができる。また、空気調和装置10が上述の通信部19を備える場合、通信ネットワークを介して、空気調和装置10の外部に設けられた照明装置を点灯させてもよい。
また、就寝中のユーザの顔の温度は、定期的に、フレームメモリ15とは別の記憶部に記憶されていてもよい。これにより、起床直前の顔の温度からユーザの基礎体温を推定し、ユーザに日々の基礎体温情報を提供することが可能となる。
また、女性ユーザの基礎体温を計測する場合は、基礎体温が低下する月経期には、通常より高湿度となるような空調制御が行われてもよい。これにより、乾燥による肌荒れが防止される(特に乾燥しやすい時期に効果的である)とともに、年間を通して、省エネな空気調和が可能となる。
また、上記を実現するため、空気調和装置10は、調湿手段を備えていることが望ましい。調湿手段は、例えば、室外機から水分を取得し、室内に放出するタイプの調湿手段であるが、ユーザによって提供される給水タンク内の水分を室内に放出するタイプの調湿手段であってもよい。
ところで、ユーザが女性の場合、空気調和装置10は、日々の基礎体温から高温期と低温期の境界となる温度を算出し、現在が高温期および低温期のいずれであるかを判断してもよい。図9は、高温期および低温期の判断のフローチャートである。
図9に示されるように、空気調和装置10は、日々の基礎体温履歴情報を蓄積しておき(S11)、高温期と低温期との境界温度を算出する(S12)。そして、空気調和装置10は、その日の基礎体温を計測する(S13)。
さらに、空気調和装置10は、その日の基礎体温が高温期に属する場合(S14でYes)と、低温期に属する場合(S14でNo)のそれぞれにおいて、開始からの日数が6日以内なのか7日目以降なのかを基準として、「排卵期」「黄体期」「月経期」「卵胞期」を判断し(S15〜S20)、それぞれの時期のユーザに適したリコメンドや通知を行ってもよい。
例えば、排卵期には妊娠しやすい時期であることが通知されてもよいし(S21)、黄体期には入浴による血行促進や加湿などがリコメンドされてもよい(S22)。また、黄体期の中の前半と後半とが区別され、後半には紫外線対策がリコメンドされてもよい。
また、月経期には入浴による血行促進や加湿がリコメンド(S23)、卵胞期にはダイエットで痩せ易い時期であることが通知されるとともに、運動によるダイエットがリコメンドされてもよい(S24)。
このような構成により、女性ユーザは、生理周期に合わせた体調管理がしやすくなる。
なお、女性ユーザに対しての通知やリコメンドの時期は、数日早めに予告通知されてもよい。これにより、女性ユーザは、予め紫外線対策用商品の準備やトレーニングジムの予約などのスケジュール管理を行うことが可能となる。なお、図9のフローチャートに示されるステップの順序や、判断基準(日数)、通知の内容、およびリコメンドの内容は一例である。
また、図5に示される熱画像センサ30のような回転型(走査型)の熱画像センサ30を使用してユーザに基礎体温情報を提供する場合は、ユーザが就寝中であると認識された場合に、ユーザ付近の温度計測頻度を高めることが望ましい。これにより、より高精度に基礎体温を推定することが可能となる。
回転型の熱画像センサ30を用いて任意の部分の温度計測頻度を高める方法としては、上記任意の部分の観察画素51の温度を測定している間のみ回転速度を低下させる方法や、計測頻度を高めたい観察画素51のみ往復して測定する方法が用いられる。
また、空気調和装置10は、ユーザの日々の起床時間を記憶し、起床時間付近の時間帯においてユーザの顔の温度の計測頻度を高めてもよい。これにより、消費電力の軽減と基礎体温の計測精度向上との両立が可能となる。
また、ユーザの状態に応じて全観察エリア50の位置が変更されてもよい。図10Aおよび図10Bは、ユーザの位置に応じて全観察エリア50の位置が変更される例を説明するための図である。
図10Aに示されるユーザ非就寝中の全観察エリア91と、図10Bに示されるユーザ就寝中の全観察エリア92とのように、空気調和装置10は、ユーザの状態に応じて全観察エリアの位置を変化させるための、熱画像センサ13の設置角度変更部を備えていてもよい。
これにより、空気調和装置10は、ユーザが空気調和装置10の真下(全観察エリア91の外)で就寝している場合も、全観察エリアの位置を変更してユーザの顔を検出することができる。このような構成では、熱画像センサ13の受光素子の数を減らすことができるため、安価に熱画像センサ13を実現できる。なお、設置角度変更部は、具体的には、ステッピングモータやサーボモータなどの回転機構である。
また、所定時間内に温度が変化していて、かつ、30℃以上の観察画素51の位置がユーザの体の位置と認識されてもよい。ここでの「所定時間」は、例えば、1分〜60分である。このような条件を満たす複数の観察画素51が一続きになっている場合、空気調和装置10は、これらの複数の観察画素51の位置に一人のユーザの体があると判断することができる。
また、別の例として、25℃以上の観察画素51の位置がユーザの体の位置であると認識されてもよい。また、室温より所定温度以上高温の観察画素51であって、かつ、所定時間内に温度が変化している観察画素51がユーザの体の位置であると認識されてもよい。
また、一続きになった複数の観察画素51の並び方からユーザの姿勢を把握することも可能である。
また、空気調和装置10は、ユーザの体が位置すると判断される一続きになった複数の観察画素51の縦幅(Y方向の長さ)からユーザの身長を推定することも可能である。このような方法では、ユーザの姿勢(立位、座位など)に依存してユーザの体に相当する観察画素51の縦幅が変動するため、ユーザの身長を正確に推定することは難しい。しかしながら、ユーザごとの観察画素51の縦幅の計測結果が定期的に記憶されることにより、観察画素51の縦幅の最大値から立位時の身長を推定することが可能となる。
このようにユーザの身長が推定できれば、身長に基づいてユーザを識別し、ユーザごとに異なる設定で空調を行うことが可能となる。例えば、ユーザごとに好みの室温が異なる場合、空気調和装置10は、ユーザの識別によって、室内にいるユーザに応じて室温設定を自動で変更することが可能となる。
なお、ユーザと熱画像センサ13(空気調和装置10)との距離によって、観察画素51の縦幅と身長との関係は変化する。このため、空気調和装置10は、ユーザと熱画像センサ13との距離を推定する手段を備えていてもよい。これにより、より正確にユーザの身長を推定することが可能となる。
ユーザと空気調和装置10との距離を推定する手段としては、空気調和装置10と床との距離を計測する手段が用いられる。例えば、レーザフォーカス式や超音波式などの非接触距離計測手段が空気調和装置10の底面に設置されていれば、床との距離を計測してもよい。
空気調和装置10においては、熱画像センサ13に対する各観察画素51の方向(角度)は分かっている(予め定められている)。このため、空気調和装置10は、床面と熱画像センサ13との距離をもとに、各観察画素51が空気調和装置10直下の床面からどれだけ離れているかを算出できる。つまり、床に立つユーザと空気調和装置10との距離を算出することも可能である。
このように、ユーザと空気調和装置10との距離を算出することで、より正確にユーザの身長を推定し、より正確に個人を識別することが可能となる。
また、空気調和装置10と床との距離を設定する手段(リモコン設定など)を備えていてもよい。ユーザ自身、または、空気調和装置10の設置業者によって空気調和装置10の設置位置の高さ(床から設置位置までの距離)が入力されることで、ユーザの身長をより正確に計測することが可能となる。
また、空気調和装置10は、空気調和装置10の設置角度が床面に垂直な方向(鉛直方向)からどれだけ傾いているかを計測する手段を備えていてもよい。これにより、空気調和装置10の設置面が床面に垂直な面(壁)ではない場合など、空気調和装置10が傾いて設置されている場合であっても、ユーザの身長やユーザと空気調和装置10との距離をより正確に推定することが可能となる。
また、空気調和装置10は、熱画像センサ13は観察エリアを照らす照明手段を備えてもよいし、照明装置と隣接していてもよい。熱画像センサ13の全観察エリア50が照らされることで、温度が計測される部位(=照明されている部位)を、ユーザ自身が容易に確認することができる。
このため、上記照明手段は、熱画像センサ13による全観察エリア50のみに光を照射する専用の照明手段であることが望ましい。このような照明手段により、ユーザが正確に全観察エリア50の位置を把握することが可能となる。
また、熱画像センサ13は遠赤外光照射手段を備えてもよいし、遠赤外線照射手段と隣接していてもよい。そして、このような場合、上記遠赤外線照射手段から遠くに位置する対象物に遠赤外光を照射するほど、照射の結果受光される遠赤外線光の密度が低くなるよう熱画像センサ13の光学系が設計されることが望ましい。
このような構成の空気調和装置10は、遠赤外光を観察エリアに向けて照射した場合の熱画像センサ13の熱画像データと、照射しない場合の熱画像センサ13の熱画像データとを比較することによって、観察エリア内の各部位と熱画像センサ13との距離を把握することができる。なぜなら、照射中の熱画像データと非照射中の熱画像データとの変化量が大きい観察画素51ほど、熱画像センサ13に近いものが位置する観察画素51となるからである。これによって、空気調和装置10は、室内の気流障害物(空気調和装置10の側に設置されたタンスなど)を把握することができ、障害物を避けて気流をユーザに届ける制御を行うことができる。障害物が無い方向に風向きを変えること等により、効率的な空調がなされ、消費電力の削減が実現される。
また、上述のようにユーザの姿勢を把握することにより、空気調和装置10は、ユーザの手や足に相当する観察画素51を検出することができる。つまり、空気調和装置10は、ユーザの手や足に相当する観察画素51の温度を計測することができる。
ここで、発明者らの独自の検討によれば、ユーザが快適であると感じるときのユーザの手の温度には個人差があるが、多くの人の場合は手の温度が30℃付近の場合に最も快適であると感じることが明らかになっている。したがって、空気調和装置10がユーザの手の温度を測定し、ユーザの手の温度が30℃付近となるように自動制御を行うことで、ユーザが室温を調節する手間を省くことができる。
また、このような自動制御は、就寝中や子供など、自身で空気調和装置の操作が難しいユーザにとっては、過剰な暖房・冷房を防ぐ効果を奏し、省電力効果も奏する。
上記自動制御としては、例えば、夏場、空気調和装置10による冷房中に、ユーザの手の温度が30℃未満の場合は冷房を弱化し、ユーザの手の温度が30℃以上の場合は冷房を強化する制御などが考えられる。なお、熱交換器18aによる室内外の熱の移動を増やすことで冷房は強化され、減らすことで冷房は弱化される。熱交換器18aがコンプレッサーの場合は、回転数を増やされることで冷房が強化され、回転数が減らされることで冷房が弱化される。また、冬場の暖房においても同様のことが言える。
このようなユーザの手の温度を基準にユーザの温冷感を推定し、熱交換器18aの制御(駆動・停止)を行われれば、ユーザの手の温度が30℃以上であるにもかかわらず暖房がされている状態や、または、ユーザの手の温度が30℃以下であるにもかかわらず冷房がされている状態を減らすことができる。つまり、省電力化を図ることができる。
なお、ユーザは高温多湿の環境にいるほど手の温度が上昇し、暑いと感じる。このため、上記のような自動制御においては、冷房強化に代えて除湿が行われてもよい。
また、空気調和装置10は、熱交換器18aを備えるが、ヒーターや灯油の燃焼などの発熱手段(発熱部)を備える空気調和装置や、加熱・冷却機能の代わりに加湿・除湿機能を備える空気調和装置においても同様の制御が可能である。
例えば、ユーザの手の温度が高い場合は、暖房時であれば、熱交換器18aの駆動電力を減らして加熱が弱化され、冷房時であれば、熱交換器18aの駆動電力を増やして冷却を強化されるとよい。また、ユーザの手の温度が高い場合は、上記発熱手段による加熱が弱化される、上記加湿が弱化される、または、除湿が強化されてもよい。なぜなら、ユーザは高温または高湿であるほど手の温度が上昇し、低温または低湿であるほど手の温度が低下するからである。
また、ユーザの足の温度の計測に基づき、上記手の温度と同様の自動制御が行われてもよい。
また、手や足以外の部分の温度を計測し同様の自動制御が行われてもよいが、手足、特に手先および足先は、ユーザの快適性を計測する指標に適している。温冷感および快適性の指標としては、手足の温度が他の部位の温度に比べて感度が高い、ということが発明者らの検討により分かっている。したがって、手足の温度が指標とされることにより高精度な温度制御が実現される。
[ユーザインターフェース]
以上説明したような空気調和装置10のユーザインターフェースについて説明する。図11A、図11B、および図11Cは、空気調和装置10のユーザインターフェースの一例を示す図である。
図11A、図11B、および図11Cには、タッチパネル等の入力機能を備えた表示部74が設けられたリモコン70がユーザインターフェースの一例として図示されている。なお、ユーザインターフェースの形式はこのような態様に限定されず、入力部(設定受付部)と表示部74とが分かれている態様であってもよい。また、空気調和装置10のユーザインターフェースは、このような専用のリモコンでなくてもよい。アプリケーションがインストールされたスマートフォンやタブレット端末が空気調和装置10のリモコン70として用いられてもよい。
空気調和装置10のユーザインターフェースには、以下の特徴がある。
従来の空気調和装置においては、ユーザはリモコンを用いて室温、風量、風向を設定するのが一般的であった。これに対し、空気調和装置10では、図11Aに示されるように、目標手温度、または、目標足温度をユーザ自身が設定することができる。これによって、例えば、ユーザは、所望の手温度(足温度)を目標温度として設定することが可能となる。
また、図11Aに示されるユーザインターフェースでは、具体的な手温度、足温度の目標温度が設定されるが、ユーザインターフェースには、例えば、「暖」「中」「冷」のような選択肢(アイコン)が表示されてもよい。このようにアイコンが表示される場合は、ユーザインターフェース上に表示される文字数が少ないため、アイコンをより大きく表示することが可能となり、視認性を高めることができる。また、自身の最適な手温度を把握していないユーザが、より簡単に自身の手温度を基順として空調制御を選択することができる。なお、「暖」、「中」、「冷」は、例えば、ユーザの手温度31℃、30℃、29℃にそれぞれ相当する。
また、空気調和装置10は、手温度を基準に空気調和装置10を制御するモード(手温度制御モード)と、足温度を基準に空気調和装置10を制御するモード(足温度制御モード)とが選択可能な構成であってもよい。この場合、ユーザは、例えば、ユーザインターフェースを通じてモードの選択を行う。
例えば、図11Aでは、目標手温度が太枠で囲まれているが、これは、ユーザが手温度制御モードを選択していることを示す。
ユーザは、例えば、裸足のときは足温度制御モードを選択し、スリッパを履いているときは手温度制御モードを選択するなど、ユーザが自身の状態(例えば、着衣の状態)に合わせてモードを変更することができる。これにより、空気調和装置10は、より正確にユーザの温熱快適性を推定し、空調に反映することができる。
また、ユーザインターフェースにおいては、図11Bに示されるように、現在のユーザの体温を視覚的に表す熱画像(図11Bでは人型のアイコン)が表示されてもよい。図11Bでは、ユーザの体温に応じて着色(図11Bでは色の濃淡であり、色が濃い部分ほど高い温度であることを示す)されたアイコンが表示されている。例えば、体温の高い箇所は赤く、体温の低い箇所を青く表示される。
これにより、ユーザは現在の自分の体温を一目で把握することができる。これにより、ユーザは目標手温度・目標足温度の設定の目安をたてやすい。
なお、ユーザインターフェースは、図11Bに示される画面から直接、目標室温・目標手温度・目標足温度を変化させることができる態様であってもよい。例えば、ユーザが温度を上昇させたい箇所に対応するユーザインターフェース上の領域をタッチする、または擦る等の入力動作をすることによって、目標室温・目標手温度・目標足温度を変更することができるような態様が考えられる。
以下、リモコン70(ユーザインターフェース)のシステム構成について説明する。図11Dは、リモコン70のシステム構成を示すブロック図である。
図11Dに示されるように、リモコン70は、第一設定受付部71と、第二設定受付部72と、第三設定受付部73と、表示部74と、リモコン制御部75(制御部)と、リモコン通信部76(通信部)とを備える。
リモコン70は、対象領域(例えば、室内)の温度の分布を表す熱画像を生成するための熱画像センサ13を備える空気調和装置10のユーザインターフェースである。
第一設定受付部71は、室温の目標温度の設定を受け付ける。第一設定受付部71は、具体的には、表示部74に重ねられたタッチパネル(図11Aに示される目標室温を設定するための領域)であるが、ハードウェアキーであってもよい。
第二設定受付部72は、対象領域のうちの特定部分の目標温度の設定を受け付ける。第二設定受付部72は、特定部分の目標温度として、人の顔の位置、人の手の位置、および人の足の位置のうちの少なくとも1つに対する目標温度の設定を受け付ける。第二設定受付部72は、具体的には、タッチパネル(図11Aに示される目標足温度および目標手温度を設定するための領域)であるが、ハードウェアキーであってもよい。
第三設定受付部73は、空気調和装置10の風向および風量の設定を受け付ける。第三設定受付部73は、具体的には、タッチパネル(図11Aに示される風量レベルおよび風向を設定するための領域)であるが、ハードウェアキーであってもよい。
後述するように、第一設定受付部71および第二設定受付部72のそれぞれに目標温度が設定されている場合、第三設定受付部は、風向および風量の設定を受け付けない。ここで、「設定を受け付けない」は、より詳細には、第三設定受付部73が受け付けた入力を、リモコン制御部75が有効な入力として認識しないことや、第三設定受付部73が受け付けた入力をリモコン制御部75が空気調和装置10にコマンドとして送信しないこと等を意味する。
表示部74は、図11A〜図11Cに示されるような画像を表示する。表示部74は、目標室温、目標足温度、目標手温度、風向、および風量を表示する。表示部74は、具体的には、液晶パネルや、有機ELパネルである。
また、表示部74は、熱画像データに基づいて検出された人の位置の温度を表示する。ここでの人の位置には、人の顔の位置、人の手の位置、および人の足の位置のうち少なくとも1つが含まれる。具体的には、表示部74は、図11Bに示されるような人型のアイコンの色により人の体の温度を表示するが、温度が数字で表示されてもよい。
なお、後述するように、第一設定受付部71および第二設定受付部72のそれぞれに目標温度が設定されている場合、表示部74は、第三設定受付部73への設定が無効である旨を表示する。具体的には、図11Cに示されるように、表示部74は、風向および風量の欄をウォッシュアウト表示(グレー表示)にする。
リモコン制御部75は、第一設定受付部71、第二設定受付部72、および第三設定受付部73が受け付けた設定に応じたコマンドをリモコン通信部76を通じて空気調和装置10に送信する。また、リモコン通信部76が受信する熱画像データ(熱画像に関する情報)に基づいて、図11Bに示されるような体温を示す人型のアイコンを表示部74に表示させる。
リモコン通信部76は、リモコン制御部75が空気調和装置10にコマンドを送信するための通信モジュールである。また、リモコン通信部76は、空気調和装置10(熱画像センサ13)から熱画像データを受信する。リモコン通信部76は、例えば、赤外線などを用いた無線通信モジュールである。なお、空気調和装置10には、リモコン通信部76との通信を行う通信部が設けられる。
[ユーザの快適性]
ユーザの快適性は、ユーザの体表温度だけでなくユーザの深部温度の影響も受ける。このため、「顔温度と手温度」「首温度と足温度」のように、深部温度に近い部位(顔、首など)の温度と末端体表温度(手、足など)の少なくとも2箇所の温度が計測されてもよい。これにより、より正確にユーザの快適性を推定し、空気調和に反映することができる。
また、空気調和装置10(画像処理部16a)は、熱画像データに基づいてユーザがメガネ、マスク、手袋、靴下、スリッパなどを装着しているかどうかを識別してもよい。また、空気調和装置10は、上記検出結果に基づいて、ユーザがメガネ、マスク、手袋、靴下、スリッパなどを装着していることによって温度の計測精度が低下していることをユーザに対して通知する手段を備えてもよい。例えば、図11Aおよび図11Bのユーザインターフェース上に警告が表示されることで、上記ユーザへの通知が実現される。
これにより、温度の計測精度が低下している状態であることをユーザに認識させることが可能となり、ユーザは計測精度低下要因を取り除く対応や、計測精度が高い他の指標を使ったモードに切り替えるといった対応をとることが可能となる。
例えば、手袋装着時に、ユーザインターフェース上に「手袋装着により手温度計測精度が低下しています。」と表示されれば、ユーザは足温度制御モードにモードを切り替えたり、手袋を外したりすることができる。これにより、空気調和装置10の温度計測精度が高められる。
また、このとき、文字表示による通知の他に、音声による通知手段が用いられてもよい。これにより、ユーザへの通知がリアルタイムに行われる。また、音声および文字表示の両方の通知手段が用いられれば、音が聞き取りにくい環境や、オーディオ機器使用中のユーザなどへの通知精度を高めることができる。
なお、ユーザがマスク等の装着物を装着しているかどうかは、次のような方法により識別することができる。ユーザがマスクを装着しているかどうかは、眼に相当する観察画素51の温度と口元に相当する観察画素51の温度差から識別することができる。マスク装着時は、口元に相当する観察画素51の温度がマスク非装着時に比べて高くなる。ユーザがメガネを装着しているかどうかは、眼に相当する観察画素51の温度が低下するため同様の方法で識別できる。また、ユーザが手袋を装着しているかどうかは手のひらに相当する観察画素51の温度と上腕に相当する観察画素51の温度との比較で識別することができ、靴下、スリッパについては、足先に相当する観察画素51の温度と、ふくらはぎに相当する観察画素51の温度との比較で識別することができる。
また、メガネ、マスク、手袋、靴下、スリッパなどを装着しているかどうかを熱画像センサ13によって識別する場合、各観察画素51のサイズは、10cm×10cm以下が望ましい。観察画素51のサイズが、10cm×10cm以下に設定されることで、より正確にユーザの装着物の有無の識別が可能となる。空気調和装置10では、機種ごとに設定部屋面積が異なるが、各観察画素51のサイズは、例えば、6畳(約10m2)用の空気調和装置10であれば3.6m、8畳(約13m2)用の空気調和装置10であれば4.5m、12畳(約19m2)用の空気調和装置10であれば7.2m離れた場所において、10cm×10cm以下となることが望ましい。また、観察画素51のサイズを小さくすることに伴って、観察画素51の総数は512個よりも増えることが望ましい。
また、空気調和装置10は、熱画像データに基づいて、ユーザの着衣の最表面の温度を計測してもよい。これにより、ユーザ状態の一つとして、ユーザが装着している着衣の断熱性(着衣量)が推定される。着衣の最表面の温度が低いほど着衣の断熱性が高いと判断され、断熱性が高いと判断された場合には、冷房強化(暖房弱化)することができる。ユーザの着衣量によって、温冷感と、手や足の温度との関係性は変化するため、ユーザの着衣量を推定し、着衣量を基に空調設定温度を補正することで、ユーザの温冷感に合わせた空調が実現される。
また、ユーザの温冷感と手足の温度との関係は、部屋からの輻射熱の影響も受ける。このため、空気調和装置10は、部屋内の温度分布を計測する手段を備えていることが望ましい。これにより、部屋からの輻射が考慮されたユーザの温冷感に合わせた空調が実現される。なお、部屋内の温度分布の計測は、例えば、熱画像センサ13により行われる。
また、ユーザの温冷感と手足の温度との関係は、湿度の影響も受ける。このため、空気調和装置10は、部屋内の湿度を計測する手段を備えていることが望ましい。これにより、部屋の湿度が考慮されたユーザの温冷感に合わせた空調が実現される。なお、湿度の計測は、例えば、一般的な湿度計で行われる。
また、ユーザの温冷感と手足の温度との関係は、ユーザの運動量、活動量、および姿勢の影響も受ける。このため、空気調和装置10は、ユーザの運動量、活動量、および姿勢を計測する手段を備えていることが望ましい。これにより、ユーザの運動量、活動量、および姿勢が考慮されたユーザの温冷感に合わせた空調が実現される。なお、ユーザの運動量、活動量、および姿勢は、例えば、熱画像センサ13が取得する画像から算出される。
また、ユーザの温冷感と手足の温度との関係は、サーカディアンリズムの影響を受けて変動する。このため、空気調和装置10は、現在の時刻を計測する手段(計時部)を備えていることが望ましい。サーカディアンリズムの影響が考慮されたユーザの温冷感に合わせた空調が実現される。
また、ユーザの温冷感と手足の温度との関係は、食事や入浴などのユーザの行動の影響を受ける。このため、空気調和装置10は、ユーザの食事や入浴などの行動を把握する手段を備えていることが望ましい。これによって、ユーザの行動が考慮された温冷感に合わせた空調が実現される。例えば、ユーザが食事中であることは、食卓の上の熱源を検出することで把握可能である。また、空気調和装置10は、食卓周りのユーザの滞在時間、食卓周りのユーザの人数から食事中であることを把握してもよい。また、ユーザが入浴中であることは、ユーザの体温の情報を基に把握することが可能である。このため、ユーザが食事中であること、および、ユーザが入浴中であることは、いずれも熱画像センサ13を用いて把握される。
また、ユーザの温冷感と手足の温度との関係は、季節の影響も受ける。このため、空気調和装置10は、日時や外気温を計測する手段を備えていることが望ましい。これにより、季節が考慮されたユーザの温冷感に合わせた空調が行える。
また、ユーザの温冷感と手足の温度との関係は、ユーザの発汗の影響も受ける。このため、空気調和装置10は、ユーザの発汗量を計測する手段を備えていることが望ましい。これにより、発汗量が考慮された温冷感に合わせた空調が実現される。ユーザの発汗量を計測する手段は、例えば、皮膚の電気伝導度を計測するウェアラブルセンサや遠赤外領域の分光センサである。
なお、ユーザの発汗量は、次のように推定されてもよい。一般に、水分は6−7μmの波長の光を吸収しやすい。このため、例えば、空気調和装置10が7μm以下の赤外光を計測する手段と7μm以上の赤外光を計測する手段とを備えていれば、2つの計測手段で受光した赤外光の光量比から湿度分布を計測することができる。そして、ユーザの周囲の湿度が、周囲の湿度に比べて高ければ、汗の蒸散による湿度の上昇であると推定される。このように、空気調和装置10は、ユーザの周囲の湿度分布から発汗量を推定してもよい。
また、空気調和装置10は、1.5μmや1.9μmなどの近赤外の水分の吸収波長を用いて同様の計測を行ってもよい。これら、赤外線を用いた分光方式が用いられれば、空気調和装置10は、非接触でユーザの発汗量を計測することができる。つまり、空気調和装置10は、ウェアラブルセンサを装着していないユーザの発汗量を計測することができる。
また、空気調和装置10は、顔、首、手、および足など、衣服から露出している部位の皮膚表面の水分を上記遠赤外領域の分光技術を用いて計測し、発汗量を推定してもよい。
また、空気調和装置10は、熱画像データに基づいて、ユーザの鼻の温度を計測してもよい。これにより、ユーザのストレス状態の推定が可能となる。
また、上記実施の形態1では、空気調和装置10が、手の温度や足の温度を用いてユーザの温冷感を推定し、空気調和制御を行う例について説明した。ここで、空気調和装置10は、熱画像データに基づいて、ユーザの頬、鼻、耳、および顎のいずれかの温度を計測してもよい。これにより、ユーザの温冷感の推定がより正確となる。また、ユーザが手袋とスリッパとを装着している状態でも正確に温冷感を推定することが可能となる。
また、ユーザの頬、鼻、耳、および顎のいずれかの温度を熱画像センサ13によって計測する場合、各観察画素51のサイズは、5cm×5cm以下が望ましい。観察画素51のサイズを、5cm×5cm以下に設定することで、より正確にユーザの鼻温度の計測が可能となる。空気調和装置10では、機種ごとに設定部屋面積が異なるが、例えば、6畳(約10m2)用の空気調和装置10であれば3.6m、8畳(約13m2)用エアコンなら4.5m、12畳(約19m2)用の空気調和装置10であれば7.2m離れた場所における観察画素51のサイズが5cm×5cm以下となることが望ましい。また、観察画素51のサイズを小さくすることに伴って、観察画素51の総数は512個よりも増えることが望ましい。
また、空気調和装置10は、熱画像データに基づいて、ユーザの上半身の温度と下半身の温度との温度差を計測してもよい。これにより、ユーザが冷え性であるかどうかが判別できるため、空気調和装置10は、暖房時にユーザの足元への暖房を強化することができる。また、このような機能を利用するかどうかは、上述のユーザインターフェースを通じてユーザが選択することができるとよい。これにより、ユーザは所望の機能を選択することができる。
また、空気調和装置10が設置されている部屋に複数のユーザがいる場合、ユーザごとに手温度(足温度)が異なる場合がある。このため、空気調和装置10は、優先ユーザを誰にするのかを設定できる手段を備えていることが望ましい。これにより、手温度(足温度)が異なる複数のユーザがいる部屋においても手温度(足温度)を目標値とした空気調和制御が可能となる。
優先ユーザの設定は、例えば、上述のユーザインターフェースを通じて行われる。図11Aでは、優先ユーザとして、「A」「B」「Max」「Min」の四つの選択肢(アイコン)の中から「B」が選択されている例が示されている。
例えば、家族の身長のデータを予め登録しておけば、空気調和装置10は、上述のように熱画像データから室内のユーザの身長を計測し、室内にいるユーザを識別することができる。このため、A、Bの代わりに予め登録したユーザ名(「お父さん」、「お姉ちゃん」や個人名など)が選択肢(アイコン)として表示されてもいい。
また、図11Aの例で示される「Max」が選択された場合は、空気調和装置10は、室内にいるユーザの中で最も手温度が高いユーザの手が目標手温度になるように制御するモードに移行する。また、図11Aの例で示される「Min」が選択された場合は、空気調和装置10は、室内にいるユーザの中で最も手温度が低いユーザの手が目標手温度になるように制御するモードに移行する。このようなモードが選択肢として用意されていてもよい。
また、上記の他に空気調和装置10に最も近い位置にいるユーザの体温を指標として制御が行われるモードや、逆に、空気調和装置10から最も遠い位置にいるユーザの体温を指標として制御が行われるモードが用意されてもよい。また、任意の位置を設定し、設定された位置に近いユーザの体温を指標とするモードが用意されていてもよい。
このように、位置に応じてユーザを選択し、選択されたユーザの体温を指標として制御を行うモードが用意されることで、ユーザにとって自由度の高い制御が実現される。
また、室内にいる複数のユーザの体温(手温度、足温度)が異なる場合、冷房時であれば体温が高いユーザの方向に送風し、暖房時であれば体温が低いユーザの方向に送風するなど、風向や風量の調節により、ユーザごとに異なる周囲温度環境が提供されてもよい。これにより、複数のユーザが共に快適な室内環境を提供することができる。
また、ユーザが一人である場合も、一人のユーザの2つ以上の部位(例えば、手と足)のそれぞれが目標温度になるように、風向や風量が調節されてもよい。このような場合、例えば、図11Cに示されるように、ユーザインターフェース上では、目標手温度および目標足温度が太枠で囲まれる(ユーザによって選択される)。一方で、このように2つ以上の部位を目標温度にするためには風向や風量を制御することが必須である。
つまり、このような場合、風向や風量をユーザ設定することはできないため、風向きや風量は、ユーザインターフェースからは設定できない。つまり、図11Cに示されるように、ユーザインターフェース上では、風向および風量は、ウォッシュアウト表示(グレー表示)される。なお、ウォッシュアウト表示に代えて、風向および風量の設定変更ができない旨が通知されてもよい。
また、空気調和装置10は、室内の熱画像データから、部屋の間取りを把握してもよい。これにより、ユーザの行動に合わせた空調が可能となる。
例えば、空気調和装置10は、就寝中のユーザの顔の位置を検出することができるため、ユーザの枕の位置も検出できる。そして、空気調和装置10は、ユーザの就寝中に、ユーザの顔を避けて送風することにより、顔の皮膚乾燥や喉の乾燥を抑制することができる。
また、空気調和装置10は、食卓の位置を検出し、空気調和装置10内の記憶部に記憶してもよい。これにより、食卓付近にユーザが滞在している間を食事中として認識し、冬場であれば暖房を弱化させるなどの制御が可能となる。例えば、空気調和装置10は、所定の時刻(例えばAM7:00)からユーザが10〜60分滞在する場所を食卓として認識することができる。
また、食卓に相当する観察画素51の温度が100℃〜80℃であれば、空気調和装置10は、ユーザが鍋料理を食していると判断することができる。冬場においてこのように判断された場合には、空気調和装置10は、さらに暖房を弱化させるなどの制御ができる。このとき、除湿機能を備えた空気調和装置10であれば暖房弱化とともに除湿強化が行われてもよい。また、このような機能を利用するかどうかは、リモコンなどのユーザインターフェースを通じてユーザによって選択されてもよい。これにより、ユーザは自身の希望に合わせた機能を選択することができる。
[実施の形態1の変形例]
以上、実施の形態1に係る空気調和装置10について説明した。なお、上記実施の形態1では、空気調和装置10は、室内に設置されるものとして説明したが、車載用として実現されてもよい。なお、車載用の空気調和装置の具体例については後述する。
なお、実施の形態1では、空気調和装置10は、熱画像センサ13を用いて、ユーザの手、足の温度を計測したが、通信部を有するウェアラブルな温度計測装置(腕時計型のウェアラブル端末や、靴(または靴下)に内蔵される端末など)を用いてユーザの手および足の温度を計測してもよい。このような場合、温度計測装置が定期的に通信部を介して空気調和装置10にユーザの手および足の温度を通知することで、同様の効果が得られる。なお、熱画像センサ13を用いる方式は、温度計測装置を身に付けていないユーザの手および足の温度を測定できる利点を有する。
また、実施の形態1では、熱画像センサ13を内蔵する空気調和装置10について説明されたが、例えば、熱画像センサ13と空気調和装置10とは別々に設けられ、通信部によってネットワーク接続されてもよい。ただし、このような場合は、熱画像センサ13および空気調和装置10のそれぞれの設置位置の設定が行われることが望ましく、上記実施の形態1で説明した一体型構成は、設置位置の設定が不要であるという利点を有する。
また、実施の形態1では、熱画像センサ13、フレームメモリ15、演算処理部16などの構成が一体のモジュールとして構成され、空気調和装置10に搭載されていてもよい。また、実施の形態1では、熱画像センサ13と、その他の構成(フレームメモリ15、演算処理部16など)とが別体のモジュールとして構成され、空気調和装置10に搭載されていてもよい。
また、実施の形態1では、演算処理部16にて説明した演算処理は、外部からインストールするプログラムであってもよい。外部とはプログラムが記載された記録媒体(CDや外付けメモリなど)であってもよいし、インターネットを介してサーバ(クラウドサーバ)などからインストールされるものであってもよい。
以下に説明する実施の形態2〜5においても同様である。
(実施の形態2)
[実施の形態2の基礎となった知見]
実施の形態2では、熱画像センサについて説明する。まず、実施の形態2に係る熱画像センサの基礎となった知見について説明する。
実施の形態1で説明した、受光素子がマトリクス状に配置された熱画像センサ20は、受光素子数が多いため、サイズが大きくなってしまい高コストである。ここで、マトリクス状に配置された各受光素子を小さくすることで熱画像センサ20の低コスト化が可能となるが、このような場合、感度が低下するため温度の計測精度が低下する。
一方、受光素子がライン状に配置された熱画像センサ30は、熱画像センサ20に比べて受光素子の数が少ないため低コストである。しかしながら、熱画像センサ30は、1フレームの熱画像データを計測するために要する時間が数秒以上と長い。このため、熱画像センサ30では、人やペットなど、動く物体の動き(活動量)を計測することが難しい。
活動量の計測により各ユーザの活動量を考慮した空気調和装置の制御が可能となる。例えば、活動量が多いユーザは体温が上昇するため、活動量を計測し冷房の強化や暖房の弱化をすることで、より適切な制御ができる。
従来、活動量の計測を想定した熱画像センサに関しては詳細な検討がされていなかった。特許文献2では、1次元(1列)に受光素子が配置された熱画像センサを、走査方向の変更点にて所定量ずらしてから次の走査を行うことで、高分解能の2次元熱画像データを生成する方法に関しては開示されている。しかしながら、特許文献2においては、活動量の計測に関しては検討されていない。実施の形態2では、安価で、活動量の計測に適した熱画像センサの構築を目的とする。
[構成]
以下、実施の形態2に係る熱画像センサの具体的な構成について説明する。実施の形態2では、熱画像センサの複数の態様について説明するが、各態様は、一例である。態様が異なる熱画像センサの各々を組み合わせて新たな熱画像センサを構成することも可能である。
まず、実施の形態2に係る熱画像センサの構成について説明する。図12は、実施の形態2に係る熱画像センサの外観図である。図13は、実施の形態2に係る熱画像センサの温度分布の測定方法を説明するための図である。
図12に示される熱画像センサ1000は、熱画像センサ30と同様に、回転部31と、レンズ33とを備える。熱画像センサ1000は、熱画像センサ30とは異なり、ライン状に配列された一次元受光センサ32を2列(一次元受光センサ32aおよび32b)備える。
このため、熱画像センサ1000が同時に温度を計測できる観察画素51は、図12に示されるようにそれぞれ1×16のライン観察エリア61aおよびライン観察エリア61bの二つに含まれる観察画素51となる。回転部31の回転に伴って、ライン観察エリア61aおよび61bのそれぞれは、図13の右方向(X軸+方向)に走査される。つまり、ライン観察エリア61bに含まることによって温度が計測された観察画素51は、その後、ライン観察エリア61aに含まれ、再度温度が計測される。
したがって、熱画像センサ1000では、ライン観察エリア61aの対象となった各観察画素51の熱画像データと、ライン観察エリア61bの対象となった各観察画素51の熱画像データとを比較し、二つのラインの計測時刻差における熱画像データの変化(以降、熱画像時間変化とも記載する)を計測することができる。これにより、熱画像センサ1000は、人や動物などの動く物体が存在するかどうかを検出することができる。
つまり、熱画像センサ1000によれば、熱画像時間変化に基づく下記のような判断が可能となる。
(1)熱画像時間変化が無ければ動く物体は無い
(2)熱画像時間変化が小さければ動く物体はあるが動く速度が遅い(活動量が小さい)
(3)熱画像時間変化が大きければ動く物体があり、動く速度が早い(活動量が大きい)
上記(2)、(3)の熱画像時間変化と活動量の関係式については、ライン観察エリア61aおよび61bで計測する時刻の差や、対象物の動きの速度(想定範囲)に合わせて設定される。例えば、各観察画素51の温度の時間変化を計算し、その積算値(例えば縦一列の積算値)を各縦ラインの熱画像時間変化と定義し、活動量はこれに比例する、といった関係式が考えられる。
また、回転部31がステッピングモータの場合は、1ステップの幅はライン観察エリア61aと61bとの走査方向の間隔の整数分の一(一次元受光センサ32aと一次元受光センサ32bとの間隔の整数分の一)であることが望ましい。これによって、ライン観察エリア61bの対象となった観察画素51が、数ステップ後にライン観察エリア61aの対象となる。すなわち、同じ観察画素51における赤外線量を異なる時間に計測されることにより、よりシンプルな処理で、より正確に動く物体を検出することができる。
なお、全観察エリア50の一部に相当する数の受光素子を用い、同じ観察画素51の温度を、時間をずらして複数回計測する場合、受光素子は、走査方向(回転方向)が長辺となるように配置された長方形であることが望ましい。このような構成では、受光素子の回転方向の幅以下の幅ずつ、受光センサを回転させることで、高S/Nで両方向(X,Y方向)に解像度を高めた熱画像データが得られる。
このように、熱画像センサ1000は、全観察エリア50の一部に相当する数の受光センサを使い、同じ観察画素51の温度を、時間をずらして複数回計測する。なお、このような思想に基づき物体の活動量計測を行う熱画像センサは、熱画像センサ1000のような構成に限定されるものではない。
以下、実施の形態2に係る熱画像センサのその他の構成(変形例)について説明する。ただし、下記で説明される例の中には、全く同じ場所(同じ観察画素51)の赤外線量を異なる時間に計測するのではなく、位置や面積が異なる場所から放射された赤外線量を異なる時間に計測する例が含まれる。位置や面積が異なる場所から放射された赤外線量であっても、近いエリア、または、一部が重なるエリアから放射された赤外線量を用いれば、動体を検出することができる。
また、以下では、簡略化のため、受光素子の配置および回転方向と、同時に温度計測が行われる観察エリア(観察画素51)の形状および走査方向とが図示される。以下の変形例に係る熱画像センサの構造は、特に断りのない限り、熱画像センサ30、1000と同様の構成であり、回転部31と、受光センサと、レンズ33とを備えるものとする。
なお、以下に示される各変形例は、いずれも一例であり、各々を組み合わせることで、異なる態様の熱画像センサを構成することも可能である。
[実施の形態2の変形例1]
図14の(a)は、実施の形態2の変形例1に係る熱画像センサを示す図である。図14の(b)は、図14の(a)に示される熱画像センサの観察エリアを示す図である。
変形例1に係る熱画像センサ1300は、ライン状に配列された一次元受光センサ32を3列(一次元受光センサ32a、32b、および32c)備えている。すなわち、熱画像センサ1300が用いられた場合、図14の(b)に示されるように、3列のライン観察エリア61a、61b、および61cが構築される。したがって、熱画像センサ1300は、動く物体の動きの量(早さ)をより正確に計測することができる。
なお、図14の(a)に示されるように、一次元受光センサ32aおよび一次元受光センサ32bの間隔(ここでの間隔は、回転方向における間隔を意味する。以下同様。)と、一次元受光センサ32bおよび一次元受光センサ32cの間隔とは、異なっていることが望ましい。なぜなら、異なる複数の時間差で取得された熱画像データを用いて動く物体を計測することができるので、動く物体の移動速度の差のより高精度な計測が実現されるからである。
[実施の形態2の変形例2]
図15の(a)および(b)は、実施の形態2の変形例2に係る熱画像センサを示す図である。図15の(c)は、図15の(a)に示される熱画像センサの観察エリアを示す図であり、図15の(d)は、図15の(b)に示される熱画像センサの観察エリアを示す図である。
変形例2に係る熱画像センサは、1列の一次元受光センサ32である第一の受光素子列(第一の受光素子列1401aおよび1402b)と、第一の受光素子列1401aと回転方向における間隔が一定でない第二の受光素子群(第二の受光素子列1402aおよび第二の受光素子群1402b)とを備えている。これにより、変形例2に係る熱画像センサは、動体の移動速度の高精度に計測できる。
例えば、図15の(a)に示される熱画像センサ1400aにおいては、垂直方向の下側(Y軸−側)ほど、第一の受光素子列1401aに属する受光素子と、第二の受光素子列1402aに属する受光素子との間隔が広くなるように、受光素子が配置される。したがって、熱画像センサ1400aが用いられた場合、図15の(c)に示されるようにライン観察エリア61と斜ライン観察エリア1401とが構築される。熱画像センサ1400aでは、より安価にライン観察エリアを構成することができる。
また、図15の(b)に示される熱画像センサ1400bでは、第二の受光素子群1402bに属する受光素子は、それぞれ水平位置がランダムになるように配置されている。すなわち、熱画像センサ1400bを用いることで、図15の(d)に示されるようにライン観察エリア61と非ライン観察エリア1402とが構築される。熱画像センサ1400bは、より小さな物体の移動速度の計測も高精度に行える構成である。
なお、図15の(a)において、第一の受光素子列1401aと、第二の受光素子列1402aとのX方向における位置関係は、逆であってもよい。つまり、第一の受光素子列1401aが第二の受光素子列1402aよりもX軸+側に配置されてもよい。
また、第一の受光素子列1401aに属する受光素子と、第二の受光素子列1402aに属する受光素子との間隔は、Y軸+側ほど広がってもよいし、Y軸−側ほど広がってもよい。また、変形例3以降で説明される熱画像センサにおける受光素子の配置についても同様である。
[実施の形態2の変形例3]
図16の(a)〜(d)は、実施の形態2の変形例3に係る熱画像センサを示す図である。図16の(e)〜(h)は、図16の(a)〜(d)に示される熱画像センサの観察エリアを示す図である。
変形例3に係る熱画像センサは、サイズが異なる複数の受光素子を備えている。これにより、サイズが大きい観察画素(受光素子)による高い温度精度の確保と、サイズが小さい観察画素(受光素子)による高解像度化との両立が可能となる。
例えば、図16の(a)に示される熱画像センサ1500aにおいては、第一の大きさの受光素子からなる第一の受光素子列1501aと、第一の大きさとX方向の大きさが異なる(X方向の大きさが小さい)第二の大きさの受光素子からなる第二の受光素子列1502aとが、平行に配置される。熱画像センサ1500aによれば、図16の(e)に示される観察エリアが構築される。このように、X方向の幅が異なる受光素子が設けられる構成においては、熱画像データのX方向の解像度が向上する。
また、図16の(b)に示される熱画像センサ1500bのように、それぞれが第一の大きさの受光素子と第二の大きさの受光素子とを含む、第一の受光素子列1501bおよび第二の受光素子列1502bが互いに平行に配置されてもよい。
具体的には、第一の受光素子列1501bでは、第一の大きさの受光素子と、第二の大きさの受光素子とがY方向において交互に配置されている。また、第二の受光素子列1502bでは、第一の大きさの受光素子と、第二の大きさの受光素子とがY方向において交互に配置されている。そして、X方向において隣合う受光素子の組は、第一の大きさの受光素子と、第二の大きさの受光素子とからなる。熱画像センサ1500bによれば、図16の(f)に示される観察エリアが構築される。このようにX方向の幅が異なる受光素子が設けられる構成においては、熱画像データのX方向の解像度が向上する。
また、図16の(c)に示される熱画像センサ1500cのように、第一の大きさの受光素子からなる第一の受光素子列1501cと、第一の大きさと、X方向の大きさおよびY方向の大きさがいずれも異なる(いずれも小さい)第三の大きさの受光素子からなる第二の受光素子列1502cとが、平行に配置される。熱画像センサ1500cによれば、図16の(g)に示される観察エリアが構築される。このように、X方向の幅とY方向(走査方向に垂直な方向)の幅とがいずれも短い第三の大きさの複数の受光素子を備えることで、X方向の解像度とY方向の解像度とが向上される。
また、図16の(d)に示される熱画像センサ1500dのように、第一の大きさの受光素子からなる第一の受光素子列1501dと、第一の大きさとY方向の大きさが異なる(Y方向の大きさが小さい)第四の大きさの受光素子からなる第二の受光素子列1502dとが平行に配置されてもよい。熱画像センサ1500dによれば、図16の(h)に示される観察エリアが構築される。また、第四の大きさの受光素子を特定の箇所に密集させることで、受光素子が密集された特定の領域の解像度を特に向上させることができる。
[実施の形態2の変形例4]
図17の(a)および(b)は、実施の形態2の変形例4に係る熱画像センサを示す図である。
変形例4に係る熱画像センサは、熱容量の異なる複数の受光素子を有する。具体的には変形例4に係る熱画像センサは、受光素子1601と、受光素子1601よりも熱容量が小さい受光素子1602との2種類の受光素子を備えている。
図17の(a)に示される熱画像センサ1600aでは、受光素子1601のみからなる第一の受光素子列1601aと、受光素子1602のみからなる第二の受光素子列1602aとが、平行に配置されている。また、図17の(b)に示される熱画像センサ1600bでは、第一の受光素子列1601bおよび第二の受光素子列1602bのいずれにおいても受光素子1601と受光素子1602とがY方向において交互に配置される。そして、熱画像センサ1600bでは、X方向において隣り合う受光素子の組は、受光素子1601と、受光素子1602とからなる。
熱画像センサにおいて、熱容量の異なる2種類の受光素子が設けられることにより、温度の測定精度の向上とより動きの早い動体の計測との両立が可能となる。熱容量の異なる受光素子としては、例えば、異なる厚みのサーモパイルが用いられる。
[実施の形態2の変形例5]
図18の(a)および(b)は、実施の形態2の変形例5に係る熱画像センサを示す図である。変形例5に係る熱画像センサは、互いに異なる材料からなる受光素子1701と受光素子1702との2種類の受光素子を備えている。具体的には、例えば、受光素子1701がサーモパイルであり、受光素子1702がフォトダイオードである組合せが考えられる。
図18の(a)に示される熱画像センサ1700aでは、受光素子1701のみからなる第一の受光素子列1701aと、受光素子1702のみからなる第二の受光素子列1702aとが、平行に配置されている。また、図18の(b)に示される熱画像センサ1700bでは、第一の受光素子列1701bおよび第二の受光素子列1702bのいずれにおいても受光素子1701と受光素子1702とがY方向において交互に配置される。そして、熱画像センサ1700bでは、X方向において隣合う受光素子の組は、受光素子1701と、受光素子1702とからなる。
このような構成は、サーモパイルの厚みを変える構成(変形例4)よりも、高コストとなるが、温度精度向上と早い物体の計測の両立においては、より優れた構成である。
[実施の形態2の変形例6]
図19の(a)および(b)は、実施の形態2の変形例6に係る熱画像センサを示す図である。図19の(c)および(d)は、図19の(a)および(b)に示される熱画像センサの観察エリアを示す図である。
変形例6に係る熱画像センサは、数が異なる複数の受光素子列を備える。具体的には、図19の(a)に示される熱画像センサ1800aは、第一の受光素子列1801aと、第一の受光素子列1801aよりも受光素子の数が少ない(受光素子の数が第一の受光素子列1801aの半分である)第二の受光素子列1802aとを備える。図19の(b)に示される熱画像センサ1800bは、第一の受光素子列1801bと、第一の受光素子列1801bよりも受光素子の数が少ない第二の受光素子列1802bとを備える。熱画像センサ1800aと熱画像センサ1800bは、第二の受光素子列において、複数の受光素子が、離散的に(1つおきに)配置されているか、連続的に配置されているかが異なる。
また、熱画像センサ1800aによれば図19の(c)に示される観察エリアが構築され、熱画像センサ1800bによれば図19の(d)に示される観察エリアが構築される。これにより、熱画像センサ1000よりも受光素子の数を減らすことができるため、熱画像センサ1800aおよび1800bは、熱画像センサ1000よりも安価に動体の検出ができる。
なお、熱画像センサ1800aは、動体の位置によらず動体を検出できる点がメリットであり、熱画像センサ1800bは、受光素子が密集した特定のエリアに検出される動体の検出精度が高い点がメリットである。
[実施の形態2の変形例7]
図20の(a)〜(c)は、実施の形態2の変形例7に係る熱画像センサを示す図である。図20の(d)〜(f)は、図20の(a)〜(c)に示される熱画像センサの観察エリアを示す図である。変形例7に係る熱画像センサは、複数の受光素子列を有し、各受光素子列における各受光素子の配列が、回転方向と垂直な方向(Y方向)にずれている。図20の(a)に示される熱画像センサ2000aは2つの受光素子列を備え、図20の(b)に示される熱画像センサ2000b、および、図20の(c)に示される熱画像センサ2000cは、3つの受光素子列を備える。
熱画像センサ2000aによれば、図20の(d)に示されるライン観察エリア1910および1911のように、各観察画素51の位置がY方向にずれた複数のライン観察エリアが構築される。同様に、熱画像センサ2000bによれば、図20の(e)に示されるような複数のライン観察エリアが構築される。これにより、高感度で、かつ、Y方向に高解像度化された熱画像データが得られる。
Y方向の観察画素51のズレ量は、2列の受光素子列が設けられる熱画像センサ2000aの場合は、各観察画素51(受光素子の)Y方向の幅の1/2となることが望ましく、3列の受光素子列が設けられる熱画像センサ2000bの場合は1/3、n列の受光素子が設けられた熱画像センサの場合は1/n(nは自然数)となることが望ましい。これにより、より少ない画素数でより高解像度な熱画像が得られる。
なお、n列の受光素子が設けられた熱画像センサにおいて、ズレ量が1/nでなくても高解像度化の効果は得られるが、1/nに近いほどその効果は大きくなる。
また、図20の(d)および(e)に示されるように、ライン観察エリアの端には、半端観察画素1901〜1906が構築されることが望ましい。言い換えれば、熱画像センサ2000aおよび2000bでは、受光素子列の端部にY方向の長さが通常と異なる受光素子(半端受光素子)が設けられることが望ましい。
例えば、熱画像センサ2000aによって構築される半端観察画素1901および1904は、Y方向の長さが観察画素1907および1908の半分である。また、熱画像センサ2000bによって構築される半端観察画素1903および1905は、Y方向の長さが通常の観察画素51の3分の2であり、半端観察画素1902および1906は、Y方向の長さが通常の観察画素51の3分の1である。これによって、より温度精度の高い(S/Nが高い)熱画像データが得られる。なお、半端観察画素1901〜1906のY方向の幅は、観察画素51のズレ量(ズレ幅)と一致していることが最も望ましく、より高いS/Nが可能となるが、観察画素51のズレ量と異なる場合であっても一定の効果は得られる。
上記のような半端観察画素は、熱画像センサに画素サイズが小さい受光素子が設けられることで構築される。しかしながら、半端観察画素は、図21に示されるように、受光素子列の端に位置する受光素子(この受光素子は、画素サイズが他の画素と同じである)の一部を、温度が分かっている目隠し部材3801で隠す(エッジカットする)ことによっても構築することができる。
ここで、熱画像センサ2000aおよび2000bで用いられるような、画素ズレによる高画質化について、図22を用いて説明する。図22は、画素ズレによる高画質化を説明するための図である。
まず、図22の(a)に示される時点(step1の時点)では、半端観察画素1901には室内固定区画2001のみが含まれ、観察画素1909には、室内固定区画2002と室内固定区画2003との両方が含まれる。
次に、図22の(b)は、図22の(a)から2step後、すなわち、観察エリアが図22の(a)の状態から画素2つ分走査方向にシフトした時点(step3の時点)を示す。この時点では、観察画素1907には室内固定区画2001および2002が含まれ、観察画素1908には室内固定区画2003と2004とが含まれる。
まず、室内固定区画2001から放出される赤外線の光量は、step1(図22の(a))の時点の半端観察画素1901の赤外線の光量のデータから計算される。
次に、室内固定区画2002から放出される赤外線の光量は、step3(図22の(b))の時点の観察画素1907の赤外線の光量のデータと、step1(図22の(a))の時点の半端観察画素1901の赤外線の光量のデータとの差から計算される。
さらに、室内固定区画2003から放出される赤外線の光量は、step1(図22の(a))の時点の観察画素1909の赤外線の光量のデータと、上述のように計算された室内固定区画2002の赤外線の光量との差から計算される。
さらに、室内固定区画2004から放出される赤外線の光量は、step3(図22の(b))の時点の観察画素1908の赤外線の光量のデータと、上述のように計算された室内固定区画2003から放出される赤外腺の光量の差から計算される。以下同様となる。
このような方法では、各室内固定区画から放出される赤外線の光量の時間変化(step1とstep3との間の変化)が大きくなると、高画質化が難しくなる。このため、熱画像センサ2000aにおける2列の受光素子列は、極力近づけて配置されるほうがよい。2列の受光素子列により構築されるライン観察エリアの計測時間間隔が短いことで、さらなる高画質化(高精度化)が実現される。
また、図20の(c)に示される熱画像センサ2000cのように、熱画像センサ2000aに対して受光素子列が1列追加されることで、図20の(f)に示されるように、ライン観察エリア2101がさらに構築される。ここで、ライン観察エリア2101はライン観察エリア1910および1911のいずれか(ここでは1910)と画素ズレしていないライン観察エリアである。
このような構成によれば、ライン観察エリア1910の赤外線の光量のデータと、ライン観察エリア2101の赤外線の光量のデータとを比較することで、各室内固定区画から放出される赤外線の光量の時間変化(step間の赤外線の光量の変化)を推定することが可能となる。このため、さらなる高画質化(高精度化)が実現される。
なお、上記のような画素ズレを用いた高画質化において、熱画像センサ2000aに半端受光素子が設けられないことによって半端観察画素1901が構築されない場合が考えられる。このような場合は、例えば、観察画素1907と同様の赤外線の光量であると仮定して、室内固定区画2001の赤外線の光量が算出される。
なお、受光素子列の配置は、X方向においてずれていてもよい。図23は、X方向において受光素子列の配置がずれている場合の観察エリアの一例を示す図である。
図23の(a)および(b)に示されるように、複数のライン観察エリアの間隔(複数の受光素子列の間隔)が、各ライン観察エリアの幅の整数倍からずれていてもよい。この場合、図23の(a)に示されるように、ライン観察エリアが2列の場合は1/2画素分、ライン観察エリアがn列の場合は1/n画素分、間隔がずれていることが望ましい。これにより、熱画像データのX方向における高解像度化が実現される。
また、複数のライン観察エリアの間隔が各ライン観察エリアの幅の整数倍である場合は、回転部31の1stepの幅(回転量)を受光素子の幅より小さくする(例えば、半分や1/3にする)ことが望ましい。このような構成においても、上記ライン観察エリアの間隔をずらした場合と同様の熱画像データの高解像度化が実現される。しかしながら、測定の高速化の観点からは、上記ライン観察エリアの間隔をずらした構成が望ましい。
また、上記ライン観察エリアの間隔をずらす構成と同様の高解像度化は、遮光板によっても実現可能である。図24は、遮光板による高解像度化を説明するための図である。
図24に示されるように熱画像センサの近傍に少なくとも一つ遮光板2301が設けられ(図24では、2つの遮光板が設けられている。)全観察エリア50の左右の端に位置するライン観察エリアの一部において赤外線が遮断されていてもよい。このとき、遮光板2301が配置される場所は、全観察エリア50の端の赤外線を遮断できるのであれば、特に限定されない。これによって、上記ライン観察エリアの間隔をずらす構成と同様の高解像度化が実現される。
[実施の形態2の変形例8]
図25の(a)は、実施の形態2の変形例8に係る熱画像センサを示す図である。図25の(b)は、図25の(a)に示される熱画像センサの観察エリアを示す図である。図25の(a)に示されるように、変形例8に係る熱画像センサは、隣合う受光素子の境界方向aおよびbが、X方向およびY方向のいずれに対しても傾きを持っている。より具体的には、境界方向aは、X方向およびY方向と45度の角度で交差し、境界方向bは、X方向およびY方向と45度の角度で交差する。熱画像センサ2500によれば、図25の(b)に示される観察エリア(観察画素)が構築される。
このような構成により、観察画素の中心が、X方向に1/2画素(ここでの1画素は、正方形の観察画素の対角線の長さに相当する)ずれた2列のライン観察エリアを構築し、かつ、各観察画素(各受光素子)の面積をより大きくすることができる。
例えば、図23で説明したような構成では、2列のライン観察エリアの間隔(X方向の距離)は、少なくとも1画素以上となる。これに対し、熱画像センサ2500の構成では、ライン観察エリアの間隔(X方向の距離)を1画素以下とすることも可能であり、熱画像センサ2500は、より高速な動体の動きを検出することができる。また、熱画像センサ2500では、各受光素子面積をより大きくすることができ、受光素子面積が大きくなることで温度の測定精度が向上される。
また、熱画像センサ2500において、走査方向(回転方向)の1stepの幅(回転量)が1画素以下であれば、X方向およびY方向の両方において熱画像データの高分解能化が可能となる。高分解能化の原理については、変形例7と同様である。
また、熱画像センサ2500によれば、中心位置がX方向にずれた2列のライン観察エリアが構築される。このため、熱画像センサ2500は、動体の速度(活動量)計測精度が高い。
なお、この場合、走査方向(回転方向)の1stepの幅は、1/n画素(例えば、1/2画素)であることが望ましい。
受光素子の境界方向が、X方向およびY方向のいずれに対しても傾いた構成は、図25に示されるような構成に限定されない。図26は、実施の形態2の変形例8に係る観察エリアの別の例を示す図である。
図26に示される観察エリアは、1列の受光素子列から構築され、当該受光素子列においては、X方向およびY方向のいずれに対しても交差する方向に受光素子列が並べられている。図26に示される観察エリアを構築する熱画像センサでは、上述の図5で説明した熱画像センサ30の一次元受光センサ32を傾けて配置することでシンプルに実現されるため、低コストで作製可能である。また、図26に示される観察エリアを構築する熱画像センサは、より高速に全観察エリアの熱画像データを取得することが可能となる。
また、図26に示される観察エリアを構築する熱画像センサは、X方向だけでなく、Y方向の走査にも対応できる。図27は、Y方向の走査を説明するための図である。図27に示されるように、X方向の走査によって、全観察エリア内に熱源(人の顔)が検出された場合、上記熱画像センサは、熱源周辺のみをさらにY方向に走査する。これにより、X方向の走査によって検出された熱源が人体であった場合、検出された人体の身長計測精度が高まる。
なお、変形例8に係る熱画像センサにおいて、大きさが異なる2種類以上の受光素子が配置されてもよい。図28は、変形例8に係る熱画像センサにおいて大きさが異なる2種類以上の受光素子が配置される場合の観察エリアの一例を示す図である。
図28に示される観察エリアには、通常サイズの観察画素2602と、観察画素2602よりも小さい半端観察画素2601とが含まれる。このような構成により、より高いS/Nの熱画像データが得られる。
なお、半端観察画素2601の一辺の長さは、観察画素2602の一辺の長さの半分であることが望ましく、これにより、より高いS/Nの熱画像データが得られる。また、観察エリアには、半端観察画素2601に加えて、一辺の長さが半端観察画素2601の半分のサイズの(面積は1/4の)半端観察画素が含まれてもよい。これにより、更に高いS/Nの熱画像データが得られる。
[実施の形態2の変形例9]
図29は、実施の形態2の変形例9に係る熱画像センサの回転軸について説明するための図である。図12と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。図30および図31は、実施の形態2の変形例9に係る熱画像センサの外観図である。
図12に示す熱画像センサ1000の回転中心は、回転部31の中心を通る軸(回転軸r1)であるとして説明したがそれに限らない。変形例9に係る熱画像センサ1000aのように、レンズ33の一部を通る軸(回転軸r2)を回転中心としてよい。以下、図30および図31を用いて具体的に説明する。
変形例9に係る熱画像センサ1000aは、図30および図31に示すように、回転部31aと、レンズ33と、赤外線受光部34と、を備える。
赤外線受光部34は、それぞれ赤外線を受光する複数の赤外線受光素子を備える。赤外線受光部34は、一次元受光センサ32a、32bと、基板34aとを備える。一次元受光センサ32a、32bは、複数の赤外線受光素子の一例であり、基板34aに設置され、回転駆動される。なお、複数の赤外線受光素子は、実施の形態2で説明した一次元受光センサ32a、32bである場合に限らず、実施の形態2およびその変形例1〜8で説明したいずれの一次受光センサであってもよい。
レンズ33は、赤外線受光部34に赤外光を照射させる。より具体的には、レンズ33は、上述したように、赤外線の透過率が高いシリコンやZnSなどで構成され、各方向から入射した赤外光を、一次元受光センサ32a、32bのそれぞれ異なる赤外線受光素子に照射させるように設計されている。また、レンズ33は、回転部31aにより、レンズ33の一部を中心に回転駆動される。ここで、レンズ33の一部は、例えばレンズ33の光学中心である光心である。図29および図30では、レンズ33の光心33aが示されている。
基板34aは、一次元受光センサ32a、32bとレンズ33とが形成されている。
回転部31aは、赤外線受光部とレンズ33とを、レンズ33の一部を中心に回転駆動させる。ここで、回転部31aは、例えばレンズ33の光心33aを通る軸(直線)を回転軸r2として回転駆動させる。本変形例では、回転部31aは、図31に示すように、例えばレンズ33の光心33aを通る回転軸r2を有し、基板34aを回転軸r2で回転駆動させる。つまり、本変形例では、回転部31aは、一次元受光センサ32a、32bとレンズ33とをレンズ33の光心33aを中心に回転駆動させて、一次元受光センサ32a、32bに対象空間(観察エリア)を走査させることができる。
以上のように構成することにより、熱画像センサ1000aの回転中心とレンズの光心とを略一致させることができるので、熱画像センサ1000aにより取得した赤外線画像における高温領域と低温領域の境界を明瞭にすることができる。理由等は後述するが、熱画像センサの回転中心とレンズの光心とのズレが大きいほど得られる赤外線画像における高温領域と低温領域の境界が不明瞭になる。そのため、高温領域と低温領域の境界が不明瞭な赤外線画像では人物等のオブジェクトをより精度よく認識できないからである。
このように、本変形例によれば、熱画像センサ1000aにより取得した赤外線画像における人物等のオブジェクトをより精度よく認識できるようになる。
[実施の形態2の変形例10]
上述した実施の形態2等に係る熱画像センサは、基本的には、回転部と、それぞれの態様の受光センサ(赤外線受光部)と、レンズとを備える。しかしながら、受光センサおよびレンズは、使用していると汚れてしまうおそれがある。そのため、受光センサおよびレンズの汚れ防止のために、実施の形態2等に係る熱画像センサは、さらに、カバーを備えるとしてもよい。ここで、カバーは、ポリエチレン、ゲルマニウムおよびシリコンなど、赤外線透過率の高い素材で構成されるとすればよい。
しかしながら、実施の形態2等に係る熱画像センサがさらにカバーを備える場合、受光センサは、検出対象物の温度だけでなくカバー自体も検出してしまうという問題がある。そのため、受光センサは、カバー自体の温度を検出してしまい、検出対象物の温度を正確に検出できない。
一方、受光センサがカバー自体を検出したとしても、時々刻々におけるカバーの温度および透過率が分かれば、補正処理することができるので、検出対象物の温度を正確に検出することができる。つまり、実施の形態2等に係る熱画像センサがさらにカバーを備えていても、補正処理することができれば検出対象物の温度を正確に検出できる。
そこで、以下では、変形例10として、補正処理を行うためにカバー内に透過率が異なる部位(低い部分)を備えることで、熱画像センサが時々刻々におけるカバーの温度を取得できる熱画像センサの例について説明する。
図32A〜図32Gは、実施の形態2の変形例10に係る熱画像センサのカバーについて説明するための図である。図30、図31と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図32Aには、カバー部材の一部の厚みを変える場合の一例が示されている。
図32Aに示す熱画像センサ1000bは、さらに、カバー部材35を備える。
レンズ33は、カバー部材35を透過した赤外光を赤外線受光部34に照射させる。
カバー部材35は、レンズ33から見て赤外線受光部34と反対側に配置され、透光性を有する。カバー部材35は、上述したように、ポリエチレン、ゲルマニウムおよびシリコンなど、赤外線透過率の高い素材で構成される。また、本変形例ではカバー部材35は、回転部31aにより回転駆動されない。換言すると、回転部31aは、カバー部材35を回転駆動させないで、赤外線受光部34とレンズ33とをレンズ33の一部を中心に回転駆動させる。
また、カバー部材35は、第1赤外線透過率を有する第1領域と、第1赤外線透過率より低い第2の赤外線透過率を有する第2領域とを有する。カバー部材35の第2領域と第1領域とは同一部材で構成されており、第2領域の厚みは、第1領域の厚みより大きい。
より具体的には、図32Aに示すように、カバー部材35は、第1領域においては第1赤外線透過率を有する部材35aからなり、第2領域においては部材35aに第1赤外線透過率を有する部材35bが積層されている。部材35aおよび部材35bとは同一部材で構成されている。
このように、図32Aに示す熱画像センサ1000bでは、第2領域の部材の厚みを変えることにより、第1領域よりも第2領域の方の赤外線透過率を低くすることができる。ここで、第1赤外線透過率は例えば40%以上であり、第2赤外線透過率は例えば20%以下である。また、赤外線透過率が低い第2領域を透過した赤外線に対してはカバー部材の温度の影響が支配的となり、赤外線透過率が高い第1領域を透過した赤外線に対してはカバー部材の温度の影響が少なく検出対象物の温度の影響が支配的となる。
したがって、図32Aに示す熱画像センサ1000bでは、第2領域を透過した赤外線を受光することで得たカバー部材35の温度を用いて、第1領域を通過した赤外線を受光することで得たカバー部材35と検出対象物との温度を補正し、検出対象物の温度を得ることができる。
なお、カバー部材内に赤外線透過率が異なる部位を備える場合の例は、図32Aに示す場合に限らない。図32Bに示す熱画像センサ1000cであってもよいし、図32Cに示す熱画像センサ1000dであってもよい。以下、図32Aと異なるところを中心に説明する。
図32Bには、異なる赤外線透過率を示す第1領域と第2領域とを有するカバー部材の図32Aとは別の一例が示されている。
図32Bに示す熱画像センサ1000cは、さらに、カバー部材36を備える。
レンズ33は、カバー部材36を透過した赤外光を赤外線受光部34に照射させる。
カバー部材36は、レンズ33から見て赤外線受光部34と反対側に配置され、透光性を有する。カバー部材36は、上述したように、ポリエチレン、ゲルマニウムおよびシリコンなど、赤外線透過率の高い素材で構成される。
また、カバー部材36は、カバー部材35と同様に、回転部31aにより回転駆動されない。換言すると、回転部31aは、カバー部材36を回転駆動させないで、赤外線受光部34とレンズ33とをレンズ33の一部を中心に回転駆動させる。
カバー部材36は図32Bに示すように第1領域と第2領域とを有する。カバー部材36は、平板形状を含むレンズ33の球面の曲率半径より大きい形状を有する透光部材で構成される。第2領域とレンズ33との距離は、第1領域とレンズ33との距離よりも大きく、レンズ33に入射する赤外線の第2領域中での光路長は、レンズ33に入射する赤外線の第1領域中での光路長よりも大きい。このように、カバー部材36を回転駆動させないで、赤外線受光部34とレンズ33とをレンズ33の一部を中心に回転駆動させることにより、光路長さを変えることができる。これにより、カバー部材36の第1領域では、第1赤外線透過率を示し、第2領域では第1赤外線透過率より低い第2の赤外線透過率を示すことができる。
なお、カバー部材36は、カバー部材35と比較して、カバー部材に対する加工が少なくなるため安価に実現できるというメリットがある。一方、カバー部材35は、カバー部材36と比較して、小型に形成できかつ高い強度で実現できるというメリットがある。
図32Cには、異なる赤外線透過率を示す第1領域と第2領域とを有するカバー部材の図32Aとは別の一例が示されている。
図32Cに示す熱画像センサ1000dは、さらに、カバー部材37を備える。
レンズ33は、カバー部材37を透過した赤外光を赤外線受光部34に照射させる。
カバー部材37は、レンズ33から見て赤外線受光部34と反対側に配置され、透光性を有する。カバー部材37は、上述したように、ポリエチレン、ゲルマニウムおよびシリコンなど、赤外線透過率の高い素材で構成される。
また、カバー部材37は、カバー部材35、36と同様に、回転部31aにより回転駆動されない。換言すると、回転部31aは、カバー部材37を回転駆動させないで、赤外線受光部34とレンズ33とをレンズ33の一部を中心に回転駆動させる。
また、カバー部材37は、第1赤外線透過率を有する第1領域と、第1赤外線透過率より低い第2の赤外線透過率を有する第2領域とを有する。カバー部材37の第1領域は、第1赤外線透過率を有する部材35aからなり、カバー部材37の第2領域は、部材35aと、部材35a上に配置され、赤外線を吸収する部材37aとからなる。ここで、部材37aは、例えば、赤外吸収材料であり、部材35aに塗布されるとしてもよいし、赤外線を吸収する黒帯テープからなるとしてもよい。
カバー部材37は、カバー部材36と比較して、小型に形成できかつ高い強度で実現できるというメリットがある。
なお、図32Bに示す熱画像センサ1000cは、上述したカバー部材36を備える場合に限られない。図32Fに示すように、熱画像センサ1000cは、カバー部材36の第2領域に、部材38または部材39をさらに備えるとしてもよい。
ここで、部材38は、図32Fに示すようにカバー部材36のレンズ33とは反対側の第2領域内に配置される。部材38は、図32Dに示すように一定の間隔で配置された透光性を有する複数の板状部材からなる。
一方、部材39は、図32Fに示すようにカバー部材36のレンズ33とは反対側の第2領域内に配置される。部材39は、図32Eに示すように周期的に並んだ透光性を有する仕切り部材からなる。
このように、図32Fに示す熱画像センサ1000cは、部材38または部材39をさらに備えることで、カバー部材36の第2領域の赤外線透過率(第2赤外線透過率)と第1領域の赤外線透過率(第1赤外線透過率)とをよりはっきりと異ならせることができる。
さらに、図32Fに示す熱画像センサ1000cは、部材38または部材39をさらに備えることで、カバー部材36の第2領域の構造を強化することができるので、カバー部材36全体の構造を強化できるという効果も奏する。
また、同様に、図32Aに示す熱画像センサ1000bが部材38または部材39を備えるとしてもよい。この場合、図32Gに示すように、熱画像センサ1000bは、部材35bに代えて部材38または部材39を備えればよい。
これにより、図32Gに示す熱画像センサ1000aは、部材35bに代えて部材38または部材39を備えることで、部材35aの第2領域の構造を強化することができるので、カバー部材35全体の構造を強化できるという効果も奏する。
以上、本変形例の熱画像センサによれば、第2領域を透過した赤外線を受光することで得たカバー部材の温度を用いて、第1領域を通過した赤外線を受光することで得たカバー部材と検出対象物との温度を補正することができる。これにより、検出対象物の温度を正確に検出することができる。つまり、本変形例の熱画像センサによれば、カバー部材自体の温度を検出したとしても、時々刻々におけるカバー部材の温度および透過率を得ることができるので、補正処理することにより、検出対象物の温度を正確に検出することができる。
なお、本変形例では、回転部31aは、対象空間(観察エリア)を等速で走査させる(すなわち等速度で回線させる)として説明したがこれに限らない。カバー部材の赤外線透過率が異なる領域で走査速度(回転速度)を変えるとしてもよい。
すなわち、回転部31aは、第1領域を透過した赤外光を赤外線受光部34が受光する間の第1回転速度と、第2領域を透過した赤外光を赤外線受光部34が受光する間の第2回転速度とは異ならせて、赤外線受光部34とレンズ33とを回転駆動させるとしてもよい。
ここで、第2回転速度は、第1回転速度よりも速いとしてもよい。赤外線透過率が高い第1領域を通過した赤外線の受光感度を高めるために、第1領域を通過した赤外線を受光する間の走査速度(回転速度)を遅くすることが好ましいからである。赤外線透過率が高い第1領域を通過した赤外線の受光感度を高めると、観察優先度の高い対象空間(観察エリア)からの赤外線の受光感度を高めることができるからである。一方、第2領域を通過した赤外線を受光する間の走査速度(回転速度)を早くしてもよいのは、カバー部材の温度だけ計測できればいいからである。
なお、本変形例の熱画像センサは、カバー部材の温度だけ計測できればよいので、第2領域を通過した赤外線を受光する期間は限定的であってよい。例えば、本変形例の熱画像センサの走査開始時に第2領域を通過した赤外線を受光した後は、所定期間毎に第2領域を通過した赤外線を受光するとしてもよい。
また、カバー部材の第2領域が第1領域に比べて極めて小さい領域である場合には、第2回転速度は、第1回転速度よりも遅いとしてもよい。カバー部材の温度を計測するために極めて狭い第2領域を通過した赤外線を確実に受光するためである。
[実施の形態2の変形例11]
実施の形態2および変形例1〜10に係る熱画像センサは、例えば電子レンジなどの電子調理器に搭載されてもよい。以下、この場合の例について説明する。
図33Aは、実施の形態2の変形例11に係る電子調理器の一例を示す図である。図33Bは、実施の形態2の変形例11に係る電子調理器の機能構成の一例を示す図である。図34は、実施の形態2の変形例11に係る熱画像センサの配置方法を示す図である。図35は、比較例における熱画像センサの配置方法を示す図である。
図33Aに示す電子調理器2900は、載置板2901と、天板2902と、受光センサ2903とを備える。電子調理器2900は、機能構成として、受光センサ2903と、制御部2904と、照射部2905とを備える。
載置板2901は、調理対象である対象物(例えば対象物2906)を載置する。
受光センサ2903は、例えば熱画像センサ1000aであり、天板2902に配置される。これにより、熱画像センサ1000aは天板2902に配置されているので、電子調理器2900の庫内の広い範囲を走査することができる。なお、受光センサ2903は、熱画像センサ1000aである場合に限らない。実施の形態2の変形例10で説明した熱画像センサ1000b〜1000dであってもよいし、実施の形態2および変形例1〜8で説明した熱画像センサであってもよい。
また、熱画像センサ1000aの回転部31aが回転駆動させる際の回転軸r2は、天板2902と略平行である。ここで、例えば、図35に示す比較例のように、熱画像センサ1000aの回転軸r2を、天板2902と略垂直になるよう配置された場合には、熱画像センサ1000aの真下にある対象物2906は死角になり走査できない。それに対して、例えば図34に示すように、熱画像センサ1000aの回転軸r2を、天板2902と略平行となるように配置することで、熱画像センサ1000aの真下にある対象物2906も走査することができる。
照射部2905は、調理対象物に赤外光源を照射する。照射部2905は、例えばハロゲンランプ、電熱線などの赤外光源(不図示)を備える。照射部2905は、電子調理器2900の庫内において赤外光源の照射エリアを制御することができる。
赤外光源は、電子調理器2900の庫内の一部領域のみを照らす光源を複数有していてもよい。この場合、照射部2905が照射させる光源を選択することで照射エリアを制御することができる。また、赤外光源は、1つの光源を有しているとしてもよい。この場合、照射部2905は、さらに、当該光源と調理対象物との間に光遮蔽手段を備え、光遮蔽手段で光源の照射エリアを遮ることで所望のエリアにするとしてもよい。なお、赤外光源は、複数の光源を有する方が1つの光源を有する場合よりも高効率となり望ましい。
また、制御部2904は、電子調理器2900の運転を制御する。制御部2904は、例えば、電子調理器2900の本来機能である電磁界による電子調理機能を発揮するための運転を制御する。また、制御部2904は、受光センサ2903より取得した赤外線画像に基づき特定した対象物2906の位置に赤外光源を照射するように照射部2905を制御する。
例えば、制御部2904は、受光センサ2903より取得した赤外線画像に基づき特定した対象物2906の温度が、所定の温度に到達した際に、運転を終了する。このように、電子調理器2900は受光センサ2903を備えることにより、対象物2906をより所望の温度に近い温度にすることができる。
ここで、制御部2904は、受光センサ2903より取得した赤外線画像に基づき特定した対象物2906の温度上昇の速度が所定以上遅い場合に、対象物2906の位置に赤外光源を照射するように照射部2903を制御するとしてもよい。このように、電子調理器2900は受光センサ2903および照射部2905を備えることにより、熱画像センサで計測した結果に基いて温度上昇が遅い加熱エリア(対象物2906)のみを集中的に加熱することができる。それにより、電子調理器2900は、対象物2906の温度バラつきを抑えながら対象物2906をより所望の温度に近い温度にする運転を行うことができる。
また、対象物2906が複数あり温度上昇速度が異なる場合、お弁当の区分けされた領域などにある食材など対象物2906内に温度上昇速度が異なる複数の領域がある場合も考えられる。これら場合、制御部2904は、受光センサ2903より取得した赤外線画像に基づき特定した対象物2906の温度上昇の速度の異なりに基づき、加熱のための電力を低く抑え、加熱速度を遅くする運転を行うとしてもよい。これにより、加熱速度のバラつきを抑えることができるので、対象物2906全体をより所望の温度に近い温度にすることができる。
なお、電子調理器2900は、照射部2905を備えるとして説明したが、必須の構成でない。照射部2905は、電子調理器2900に構成されなくてもよい。
また、電子調理器2900は、さらに、非接触の水分計測手段を備え、水分計測手段は1.2μm〜1.6μmの赤外光源と受光部とを備えるとしてもよい。電子調理器2900は水分計測手段を備えることにより、調理対象物に対して、上記波長を含む赤外光を照射し、対象物2906表面で反射した赤外光を受光することで、対象物2906表面での赤外光吸収率を算出することができる。1.2μm〜1.6μmの波長の赤外光は水に吸収されやすいため、表面の赤外吸収率が高いほど対象物2906表面の水分含有率が高いと推定できる。
したがって、電子調理器2900は、さらに水分計測手段を備えることで、対象物2906の水分量を計測しながら加熱するという運転ができるので、対象物2906の水分量を所望の値となるように加熱出力を制御する運転をすることができる。
また、電子調理器2900が照射部2905を備えている場合には、電子調理器2900は、対象物2906内の水分量の分布(バラつき)を求めて、照射部2905の照射エリアを制御することにより、加熱調理中に水分量の減りが激しい照射エリアの加熱を弱めるなど、エリア毎の水分量のバラつきを軽減させることができる。これにより、対象物2906の温度が極端に上がりすぎたり、対象物2906の水分量が極端に減りすぎたりすることを抑制することができる。それにより、対象物2906である食材の味が低下することを抑制することができる効果を奏する。
[実施の形態2の変形例12]
実施の形態2の変形例9では、熱画像センサの回転中心とレンズの光心とを略一致させる場合の例について説明した。
実施の形態2の変形例9に係る熱画像センサを用いることで、当該熱画像センサが設置された機器において当該熱画像センサの回転軸や視野中心がずれていないか確認することができる。以下、この場合の例について図を用いて説明する。
図36は、実施の形態2の変形例12に係る熱画像センサの一例を示す図である。なお、図31と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図36には、実施の形態2の変形例9に係る熱画像センサ1000aにカバー部材35が取り付けられており、当該熱画像センサ1000aから所定距離に温度の異なる部材として熱い部材38と冷たい部材39aおよび39bとが配置されている様子が示されている。
熱い部材38は、冷たい部材39aおよび39bと比較して高い温度を有している部材である。冷たい部材39aおよび39bは、熱い部材38と比較して低い温度を有している部材である。これらの温度差は大きい程よいが、熱画像センサ1000aが取得する熱画像から冷たい部材39aおよび39bの間(隙間)に存在する熱い部材38が精度よく識別できればよい。
また、熱い部材38は、熱画像センサ1000aから見て、冷たい部材39aおよび39bの間に設置され、冷たい部材39aおよび39bの間(隙間)は、熱画像センサ1000aの視野中心を含む位置となるよう設置される。
これにより、実施の形態2の変形例12に係る熱画像センサ1000aは、温度の異なる部材である熱い部材38と冷たい部材39aおよび39bの熱画像を取得することで、熱画像センサ1000aの回転軸r2や視野中心がずれていないか確認することができる。
図37は、図36に示す熱画像センサ1000aが設置される機器の一例を示す図である。
図37には、機器の一例として空気調和機10Aが示されている。この空気調和機10Aは、熱画像センサ13Aがセンサ設置空間131に設置されている。
空気調和機10Aは、図37に示される構成を除き、図1に示される空気調和装置10と同様であるので、詳細な説明は省略する。
熱画像センサ13Aは、図36に示す熱画像センサ1000aである。熱画像センサ13Aは、回転中心とレンズの光心とが略一致であればよいので、実施の形態2の変形例9に係る熱画像センサ1000aであるとしてもよい。
センサ設置空間131は、熱画像センサ13Aが設置される空間である。本変形例では、センサ設置空間131の端部に、中心に穴が空いた低温部材132と、高温部材133とが設置されている。
低温部材132と高温部材133とは、画像センサ13Aから見て計測対象エリアの反対側や横など、計測対象エリアに影響を与えない位置に設置される。図36に示す例では、熱画像センサ13Aからみた横の位置としてセンサ設置空間131の右側の端部に設置される。
低温部材132は、図36における冷たい部材39aおよび39bである。低温部材132は、非発熱部材であり、例えばセンサ設置空間131の内側面に穴を空けたものであってもよい。この穴は、上述したように熱画像センサ13Aからみて視野中心の位置になるように予め形成されている。
高温部材133は、図36における熱い部材38である。高温部材133は、発熱部材であり、例えばセンサ設置空間131に隣接する空気調和機10Aの回路であってもよい。空気調和機10Aの回路であれば、空気調和機10Aの使用中は発熱するからである。もちろん、当該回路とは別体の専用部材でもよいのはいうまでもない。
このように、空気調和機10Aでは、温度が異なる部材を設置することで、熱画像センサ13Aの回転軸が傾いていたり、熱画像センサ13Aの視野中心がずれていたりしないか確認できる。それにより、熱画像センサ13が設計中心からずれて設置されてしまっている場合などに補正することで、検出対象空間(観察エリア)を適切に設定することができる。
[その他の変形例]
実施の形態2に係る熱画像センサは、基本的には、熱画像センサ30および1000と同様に、回転部31と、それぞれの態様の受光センサと、レンズ33とを備える。
しかしながら、熱画像センサの構成は、このような構成に限定されるものではない。例えば、回転部31が設けられない構成も考えられる。図38は、受光センサ(受光素子)をシフトさせる構成の熱画像センサの一例を示す図である。
図38に示される熱画像センサ2700は、図2で説明したものと同様のレンズ22と、図15の(a)に示される熱画像センサ1400aと同様に受光素子が配置された受光センサ2701とを備える。受光センサ2701は、レンズ22の背面(観察対象と反対側)においてシフト(走査)される。なお、熱画像センサ2700は、一例として熱画像センサ1400aと同様の観察エリアを構成するものであるが、熱画像センサ2700における受光素子の配置は、光学系の構成によっては、左右、上下が反対になる場合もありうる。
また、受光センサ以外の構成要素が動かされることによって走査が行われてもよい。図39は、受光センサ以外の構成要素が動かされることで走査を行う熱画像センサの一例を示す図である。
図39に示されるように、熱画像センサ2800は、ミラー2801と、レンズ2802と、受光センサ2803とを備える。ミラー2801は、観察対象から放射された赤外線を反射し、レンズ2802に入射させる。受光センサ2803は、ミラー2801で反射された赤外線をレンズ2802を通じて受光する。
この例では、受光センサ2803自体は、移動したり回転したりしないが、ミラー2801が回転することで走査が行われる。なお、ミラーの回転は、駆動部(図示せず)などによって行われる。
また、熱画像センサ2800では、ミラー2801と受光センサ2803との間にレンズ2802が配置されるが、レンズ2802は、ミラー2801の反射面に接着されていてもよいし、ミラー2801と観察対象との間に配置されてもよい。また、レンズ2802が省略され、ミラー2801が凹面ミラーであるような構成であってもよい。
なお、熱画像センサ2700および2800では、受光素子の配置は、図15の(a)に示される配置であるが、以外の配置であってもよい。
また、上記実施の形態2に示される動体計測や高解像度化を可能とする熱画像センサの観察画素の配置や、画像処理方法は、ラインセンサを用いた走査によって画像を生成する画像センサ全般に適用可能である。このような観察画素の配置や、画像処理方法は、例えば、工場の製造ラインにおいて使用されるラインセンサを用いた検査装置に用いられてもよい。
また、実施の形態1に係る空気調和装置10が実施の形態2に係る熱画像センサを備えることで、空気調和装置10は、より正確にユーザを検出し、ユーザの体表温度を計測して空調を行うことができる。
[まとめ]
実施の形態2に係る熱画像センサは、観察エリア(以下、検出領域とも記載する)の赤外線を検出する複数の赤外線受光素子(以下、赤外線検出素子とも記載する)と、1つの熱画像の対象となる領域の赤外線を複数の赤外線検出素子に検出させるために、検出領域を走査方向に走査する走査部とを備える。そして、複数の赤外線検出素子は、所定方向(例えば、回転部31の回転方向)における配置位置が異なる赤外線検出素子を含む。ここで、所定方向は、複数の赤外線検出素子の配置において走査方向に相当する。
例えば、複数の赤外線検出素子は、図15に示される第二の受光素子列1402aのように、所定方向、および、所定方向に垂直な方向のいずれの方向とも交差する方向に並んで配置される。
また、例えば、複数の赤外線検出素子は、各々が複数の赤外線検出素子の一部により構成され、所定方向における位置が互いに異なる複数の素子列からなる。このような素子列の一例は、図12や図14等に示される一次元受光センサ32a、32b、および32cである。
また、複数の素子列には、所定方向に垂直な方向に並んだ赤外線検出素子から構成される素子列と、所定方向、および、所定方向に垂直な方向のいずれの方向とも交差する方向に並んだ赤外線検出素子から構成される素子列とが含まれてもよい。このような素子列の一例は、図15の第一の受光素子列1401aおよび第二の受光素子列1402aである。
また、図19に示されるように、複数の素子列のうち、一の素子列を構成する赤外線検出素子の数は、他の素子列を構成する赤外線検出素子の数と異なってもよい。
また、図17および図18に示されるように、複数の赤外線検出素子には、形状、熱容量、大きさ、および材料のいずれかが異なる少なくとも2種類の赤外線検出素子が含まれてもよい。
また、実施の形態2に係る熱画像センサの走査部は、複数の赤外線検出素子を所定方向に動かすことにより検出領域を走査方向に走査してもよい。このような走査部は、例えば、回転部31である。
また、上記走査部は、対象物からの赤外線を複数の赤外線検出素子に入射させる光学系と、光学系を動かすことにより検出領域を走査方向に走査してもよい。このような走査部は、例えば、図38に示されるレンズ22を駆動する機構や、図39に示されるミラー2801を回転させる機構である。
実施の形態2に係る熱画像センサは、マトリクス状に赤外線検出素子が配置された熱画像センサ20に比べて安価であり、かつ、ライン状に赤外線検出素子が配置された熱画像センサ30よりも人の活動量の測定に適している。
(実施の形態3)
実施の形態3では、車内の温度分布を基に、車内の空気調和を行う車載空気調和装置、および、輸送機器について説明する。なお、実施の形態3に係る車載空気調和装置は、実施の形態1に係る空気調和装置10が輸送機器に適用されたものであるため、一部、重複する説明が省略される。
また、実施の形態3に係る輸送機器は、実施の形態1または以下に示す空気調和装置、各種計測手段(湿度計、散乱光量計測手段など)を備えた輸送機器である。
実施の形態3に係る車載空気調和装置は、熱交換手段と送風手段を備え、車内から空気調和装置内に取り込んだ空気を加熱、または、冷却し車内に放出することで車内の空気調和を行う。また、実施の形態1と同様に、ユーザの温度を計測する手段を備え、ユーザの体表温度を基に熱交換手段および送風手段を制御することで、ユーザの状態に合わせた空気調和が可能できる。
[構成]
以下、実施の形態3に係る車載空気調和装置の構成の2つの例について説明する。図40は、実施の形態3に係る車載空気調和装置の第1の例を示す図である。図41は、実施の形態3に係る車載空気調和装置の第2の例を示す図である。図40に示される車載空気調和装置3100および図41に示される車載空気調和装置3200は、熱交換手段としてコンプレッサー3000を備え、さらに、エバポレーター3001、コンデンサー3002、レシーバー3003を備える。
まず、冷房時の動作について説明する。コンプレッサー3000によって圧縮された冷媒はコンデンサー3002に投入され、外気によって冷却される。これによって液化が進んだ冷媒は、レシーバー3003に送られる。レシーバー3003に送られた冷媒は、液化された冷媒と、液化されなかった冷媒とに分離され、乾燥剤などにより水分が取り除かれる。
液化された冷媒は、エキスパンジョンバルブの微小なノズル穴からエバポレーター3001内へ噴射されて気化し、エバポレーター3001周りの熱を奪うことでエバポレーター3001が冷却される。冷却されたエバポレーター3001に、吸気手段3005にて車内から取り込んだ空気を当て、送風手段3004で車内に戻す。送風手段から車内に送り込まれる空気は、エバポレーター3001に当てられて冷却されているため、車内の空気の温度を下げることができる。
また、暖房時は、一般的な車載空気調和装置と同様にエンジンの排熱を利用する方法が用いられる。ただし、電気輸送機器など発熱量が小さな車の場合は、家庭用などの空気調和装置と同様にコンプレッサーを用いて暖房が行われることが望ましく、これによってより効率のいい車載空気調和装置となる。
車載空気調和装置3100および3200は、上記のように車内の空気を加熱、または冷却する手段を備えるとともに、ユーザの温度を計測する手段を備える。以下、ユーザの温度を計測する手段について説明する。
車載空気調和装置3100では、ユーザの温度を計測するために、ハンドルやイスなどのユーザと接触する部位に温度センサ3006が設けられる。
これに対し、車載空気調和装置3200では、ユーザの温度を計測するために、車内に熱画像センサ3101が設けられる。ここで、熱画像センサ3101は、どのような熱画像センサであってもよい。熱画像センサ3101としては、例えば、実施の形態1、2、および4で説明された熱画像センサが採用される。
車載空気調和装置3100のように複数の温度センサが用いられる方法は、より安価にユーザの体の各部の温度を計測することが可能となる点で望ましい。これに対し、車載空気調和装置3200のように熱画像センサ3101が用いられる方法は、ハンドルやイスが接触していない部位の計測や、車内の環境温度の計測も1センサで実現できる点で望ましい。
また、接触型の温度センサと熱画像センサとの両方が併用されてもよい。これにより、ユーザの体のより多くの部位の温度を計測することが可能となり、より正確にユーザの体表温度に合わせた空調ができる。
なお、車載空気調和装置3200のシステム構成は、実施の形態1で説明した空気調和装置10(または空気調和装置10a)と同様であるため、詳細な説明は省略される。車載空気調和装置3200は、実施の形態1と同様に熱画像センサ3101の出力に基づいて、ユーザが着席する座席の位置、ユーザの体表温度、ユーザの周囲のサイドガラスなどの温度を算出する。また、車載空気調和装置3200の機器制御部がコンプレッサーの回転速度や風量を調節することで、ユーザの状態・環境に合わせた空調がなされる。
また、熱画像センサ3101の観察エリア(図示せず)には、少なくとも運転席の一部が含まれることが望ましく、これにより、運転手の体表温度に合わせた空調ができる。
また、熱画像センサ3101の観察エリアには、運転席のハンドル周辺のみが含まれてもよい。これにより、最小限の観察エリアを用いて運転手の体表温度(手の温度)に合わせた空調ができる。熱画像センサ3101は、ハンドルに設置した接触式の温度センサと異なり、ユーザが握るハンドルの位置に関わらず即座にユーザの手の温度を計測することができる。また、観察エリアが小さいため安価で解像度の高い熱画像データが得られ、手温度計測精度も高くなる。
また、熱画像センサ3101の観察エリアには、運転席に加えて助手席が含まれてもよい。これにより、運転手および助手席の同乗者のそれぞれに合わせた空調が可能となる。
また、熱画像センサ3101の観察エリアには、図40に示される観察エリア3102のように後部座席が含まれてもよい、これにより、後部座席の同乗者を含む各同乗車の体表温度に合わせた空調が可能となる。
また、複数のユーザに合わせた車内の空調を実施する場合、車載空気調和装置3100および3200は、複数の送風手段を備えていることが望ましい。これにより、車載空気調和装置3100および3200は、正確に各ユーザの周りの空気温度を調節することができる。
また、車載空気調和装置3100および3200は、複数の吸気手段を備えていることがより望ましい。これにより、車載空気調和装置3100および3200は、正確に各ユーザの周りの空気温度を調節することが可能となる。
[ユーザインターフェース]
また、車載空気調和装置3100および3200は、ユーザインターフェースを備えていることが望ましい。車載空気調和装置3100および3200は、特に、実施の形態1にて図11A〜図11Cを用いて説明したようなユーザインターフェースを備えることが望ましい。
また、上記送風手段、吸気手段、およびユーザインターフェースは、座席ごとに個別に設置されていることが最も望ましい。これにより、各座席に座るユーザが個々に温度設定することが可能となる。
また、上記送風手段、吸気手段、およびユーザインターフェースは、一体型であることが望ましい。より安価な車載空気調和装置が実現される。
また、座席ごとに送風手段が設けられていない輸送機器においては、上記ユーザインターフェース上から乗車中のどの席に座るユーザを優先するかが選択できるとよい。この場合、車載空気調和装置3100および3200は、選択されたユーザの体表温度が目標温度となるよう空気調和を行う。席ごとの個別に送風手段が設けられる場合に比べて安価な車載空気調和装置が実現される。
また、座席ごとにユーザインターフェースが設けられていない輸送機器においては、全座席の状態が把握できるユーザインターフェースが設けられてもよい。図42は、実施の形態3に係るユーザインターフェースの一例を示す図である。図42に示されるようなユーザインターフェースが運転席周辺に設けられることで、運転手は全座席の空調を制御することができる。
また、図42のユーザインターフェースは、各座席に座席の位置を示すA〜Eなどの記号を付与され、各座席には人型のアイコンが表示される。人型のアイコンにおいては、各ユーザの体表温度が色で表される(図中では色の濃淡で表される)。人型のアイコンは、座席にユーザがいる場合は、実線で表示され、座席にユーザがいない場合は、破点線で表示される。これにより、より直感的に車内のユーザの状態が把握される。また、ユーザの有無は、熱画像データから判断される。例えば、30℃以上の物体の有無が判断条件となる。
また、ユーザインターフェースには、各ユーザに対する目標温度が表示され、目標温度をユーザ毎に変更できるとよい。図42のユーザインターフェースにおいては、A席のアイコンの足を指し示す枠と、B席のアイコンの手を指し示す枠とが表示され、それぞれの枠の内部には、目標温度が表示されている。これは、A席のユーザに対しては足の温度28℃が目標として設定され、B席のユーザに対しては手の温度30℃が目標として設定されていることを意味する。
また、C席のアイコンに対しては、アイコンの部位を指し示さない枠が表示されているが、これは、C席のユーザに対しては環境(周囲の空気の)温度25℃が目標として設定されていることを意味する。
このような表示により、一目で車内の目標温度が把握される。
また、図42に示されるように、ユーザインターフェースには、ハンドルのマークが表示されるとよい。これにより、運転席の位置がより直感的に把握される。
また、図42に示されるように、車載空気調和装置3100および3200が電気自動車や燃料自動車などに搭載される場合、残燃料と現在の空調の設定状態とから走行可能な残りの距離を推定し、推定された距離が表示されるとよい。これによって、ユーザは、リアルタイムで残りの走行可能距離を把握することができる。
また、図42に示されるように、ユーザインターフェースには、目的地までの距離と目的地到達確率が表示されるとよい。これによって、ユーザは、目的地到達確率を考慮し、空調を調節することが可能となる。
また、図42に示されるように、ユーザインターフェースには、走行可能距離、および、目的地到達確率を増減させる手段(例えば、三角のアイコン)が含まれてもよい。これによって、空調と目的地到達確率のうちユーザが優先したい方を選択することが可能となる。
例えば、ユーザが走行可能距離を110kmに設定すると、設定された走行可能距離を実現するために、自動的に各ユーザに対する目標温度(設定温度)が変更される。走行可能距離を伸ばすために、暖房の場合は各ユーザの設定温度が下がり、冷房の場合は各ユーザの設定温度が上がる。
目的地到達確率の場合も同様に、例えば、ユーザが目的地到達確率を90%に設定した場合、目的地到達確率90%となるように目標温度が変更される。
また、熱画像センサ3101の観察エリア3102には、サイドガラスが含まれてもよい。車載空気調和装置3200がサイドガラスの温度を計測することによって、サイドガラスからユーザへの輻射熱を考慮することができる。これにより、車載空気調和装置3200は、より正確にユーザの温冷感を測定することができ、温冷感に応じた空調が実現される。
また、より望ましくは、熱画像センサ3101の観察エリア3102には、運転席側および助手席側の両サイドのサイドガラスが含まれることが望ましい。これにより、車載空気調和装置3200は、運転席側および助手席側それぞれのサイドガラスからの輻射量に合わせて、各座席の空調を行うことができる。例えば、高温の(輻射量が多い)サイドガラスに近い座席ほど目標温度が低めに設定される。
[結露の予測]
また、熱画像センサ3101の観察エリア3102には、フロントガラスが含まれることが望ましい。これにより、後述する結露の予測が可能となる。図43は、観察エリアにフロントガラスが含まれる車載空気調和装置を示す図である。
図43に示される車載空気調和装置3300の観察エリア3201には、フロントガラス3203が含まれる。そして、図43に示される車載空気調和装置3300は、さらに、湿度計3202を備え、車内の湿度と熱画像センサ3101で得られたフロントガラス3203の温度(飽和蒸気圧)との両方からフロントガラス3203表面の湿度を計算することができる。これにより、車載空気調和装置3300は、フロントガラス3203の結露を予測することができ、フロントガラス3203が結露する前に車外の空気を取り込むことで結露を防止することができる。
また、車載空気調和装置3300は、車外の空気取り込みによる換気の他に、車内の空気を除湿する手段を備えてもよい。これによって、車載空気調和装置3300は、車外の空気が汚れている場合など、換気せずに結露を防止することができる。
また、上記に示すように、運転席、助手席、両サイドのサイドガラス、およびフロントガラス3203など広域の温度を計測する熱画像センサ3101は、実施の形態1および2に示されるような回転部31を備えた構成であるとよい。安価に高範囲かつ高解像度の熱画像センサ3101が実現されるからである。
また、湿度計3202は、熱画像センサ3101と一体型であってもよいが、別体であってもよい。湿度計3202が熱画像センサ3101と別体である場合は、湿度計3202および熱画像センサ3101のそれぞれが通信部を備え、車載空気調和装置3300は、上記通信部から送信される両者の情報を合わせて結露を予測する信号処理部を備えてもよい。
次に、結露予測に基づく換気動作について説明する。図44は、結露予測に基づく換気動作のフローチャートである。
車載空気調和装置3300の信号処理部は、熱画像センサ3101を用いてフロントガラスの温度を計測し(S21)、湿度計3202を用いて湿度を計測(湿度計3202のセンサ出力を取得)する(S22)。そして、信号処理部は、これらの計測結果に基づいて結露予測、つまり、フロントガラス表面の湿度を算出する(S23)。
フロントガラス表面の湿度が任意の閾値(例えば95%)未満の場合は、信号処理部は、「結露しない」と判断し(S24でNo)、フロントガラス表面温度と湿度の計測とを定期的に継続する(S21およびS22)。
フロントガラス表面の湿度が閾値以上の場合は、信号処理部は、「結露しそう」と判断し(S24でYes)、ユーザに換気するかどうかを確認する(S25)。このとき、ユーザへの確認は、音声で行われてもよいし、カーナビなどのディスプレイを介して文字表示により行われてもよい。ユーザはこれに対して、音声やパネル操作などで回答し、ユーザが換気を承認しない場合は(S26でNo)、信号処理部は、処理を停止する。なお、この場合、信号処理部は、任意の時間待機した後、再度ユーザに確認を行い、承認が得られないことが複数回続いた場合に処理を停止してもよい。
一方、ユーザが換気を承認する場合は(S26でYes)、信号処理部は、換気を開始する(S27)。
なお、車載空気調和装置3300が除湿手段を備えている場合は、図45に示されるように、ユーザが換気を承認しない場合に(S26でNo)、除湿機を作動(ON)させてもよい(S28)。これにより、車載空気調和装置3300は、換気せずに結露を防止することができる。この場合、信号処理部は、除湿機ONの前に、ユーザに対して除湿機ONするかどうかを確認してもよい。
また、車載空気調和装置3300は、車外の空気の状態を計測する手段を備えていることが望ましい。例えば、車載空気調和装置3300は、車外の一酸化炭素濃度や炭化水素濃度を計測する分光センサを備えることで、車外の空気の状態を考慮した空調を行うことができる。例えば、車外の空気が奇麗な(一酸化炭素濃度や炭化水素濃度が低い)場合は換気を実施し、車外の空気が汚い(一酸化炭素濃度や炭化水素濃度が高い)場合は除湿機を使用するなどの選択が可能となる。また、この選択の際も、車外の空気の状態をユーザに通知し、ユーザの判断を確認するための音声やタッチパネルなどのユーザインターフェースが設けられるとよい。これにより、ユーザの意思に沿った空気調和が可能となる。
また、車載空気調和装置3300が設けられる輸送機器(移動体)は、フロントガラス表面および裏面における光の散乱量を計測する散乱光量計測手段を備えているとよい。図46は、散乱光量計測手段を備える輸送機器を示す図である。
図46に示される輸送機器3400は、散乱光量計測手段3501を備える。これにより、例えば、車内側のフロントガラスの表面湿度が80%以下と低いにもかかわらずフロントガラス表面および裏面で光の散乱量が増加した場合、フロントガラスの外(車外)側で結露が発生していると判断できる。
また、フロントガラスの外側が結露した場合には、輸送機器3400は、自動的にワイパーを作動させて結露による散乱を取り除くことが望ましい。これによって、ユーザが車内外のいずれの結露であるかを確認する必要のない、自動的に結露が取り除かれるシステムが実現される。
散乱光量計測手段3501としては、例えば、レーザ光源とフォトダイオードとを有し、フロントガラスに対して斜めにレーザ光を照射し、後方散乱によって返って来たレーザ光の光量をフォトダイオードで計測する構成が用いられる。
また、散乱光量計測手段3501の別の例としては、フロントガラスを通して前方を撮影するカメラを用いる構成が挙げられる。カメラで取得された画像において、結露した部分は隣合う画素間の色の変化が小さく、結露していない部分の画像は走行中大きく変化し続ける。したがって、光の散乱を計測することができる。
また、車載空気調和装置3300が設けられる輸送機器(移動体)は、散乱光量計測手段3501を備えているとしたが、それに限らない。散乱光量計測手段3501に代えて、分光による水分検知手段を備えるとしてもよい。水分は1.2−1.6μmの光を吸収するため、水分検知手段は、1.2−1.6μmの波長帯の光強度を計測できる赤外受光デバイスを有するとよい。1.2−1.6μmの波長帯の光強度を計測できる赤外受光デバイスとしては、InGaAsセンサやサーモパイル、ボロメータなどがある。水分検知手段は、このような赤外受光デバイスを備えることで、フロントガラスの表裏面の水分量を計測することができる。
また、水分検知手段は、0.3−1.2μmのどこかに感度を持つ可視光検知センサと1.2−1.6μmのどこかに感度をもつ赤外光検知センサを有するとしてもよい。水は1.2μm以下の光を吸収しないため、水分検知手段は、より正確に水分量を計測することが可能となる。
また、車載空気調和装置3300が設けられる輸送機器(移動体)は、水分検知手段に加えて、光源も備えるとしてもよい。これによれば、太陽光が無い夜でも水分量をより正確に計測することができる。
このように、車載空気調和装置3300が設けられる輸送機器(移動体)が水分検知手段を備えることにより、フロントガラスに水分が付着していると判断できる。
例えば、フロントガラスの表裏面に水分があるが、車内(室内)側であるフロントガラスの裏面は結露しそうに無いと判断できる場合は、雨やトンネル内結露などで車外側に水分が付着していると判断してワイパーを動作させてもよい。
なお、水分検知手段は、図47に示すように、車両3500の車内の天井面に設置された熱画像センサ3503と共に配置されるとしてもよい。熱画像センサ3503は、実施の形態1〜3で説明した熱画像センサであればいずれでもよい。この構成により、水分検知手段は車両3500のフロントガラス3504を通して前方を検知することができるだけでなく当該前方の水平方向から下30度方向を視野に含めることができる。もちろん、当該視野を含めることができれば、車両3500の車内の天井面に配置されなくてもよい。これにより、フロントガラスの表裏面の水分検知だけでなく、前方道路の路面凍結検知にも用いることができる。
ここで、例えば、図48に示すように、フロントガラス3504の表面(外側)に、水分3505がある場合、水分検知手段は、フロントガラス3504を介して前方から来る光を受光する。水分検知手段が受光する光のうち1.2−1.6μmの光は水分により吸収されているので、水分を検知することはできる。しかし、受光した光だけでは、フロントガラス3504に付着している水分3505なのか、前方路面の水分なのかの識別できない。そのため、水分検知手段は、水分増加速度情報を用いることでフロントガラス3504に付着している水分3505なのか、前方路面の水分なのかの識別をすることができる。フロントガラス3504に付着する水分3505の増加は、車両3500の走行中の路面の水分の増加に比べると遅いからである。
また、輸送機器3400(または車載空気調和装置3300)は通信部を備えているとよい。これによって、クラウド上で、フロントガラス外側が結露したときに輸送機器3400が走行していた場所(地域)を共有することができる。したがって輸送機器3400は、上記散乱光量計測手段3501を備えない他の輸送機器に対して、フロントガラスが結露しそうな地域を提示することができる。
また、輸送機器3400(または車載空気調和装置3300)が通信部を備えている場合、輸送機器3400は、通信部を介して、乗車前にユーザが入浴した、食事をしたといった履歴情報を、ユーザの自宅のシステムバスや、電子レンジなどの調理家電から取得することができる。このようにして取得した情報を用いることにより、ユーザの温冷感により適合させた空調が実現される。
[実施の形態3の変形例]
実施の形態3に係る車載空気調和装置は、実施の形態1と同様に、ユーザの額と手、足、鼻、耳、頬など複数の部位の温度を計測してもよく、ユーザの任意の体の部位の温度を目標温度とした空調が実現される。
実施の形態1でも記述したが、熱交換器がコンプレッサーの場合は、回転数を増やすことで冷房が強化され、減らすことで冷房が弱化される。ユーザ体表面温度が目標温度より高い場合は冷房強化、低い場合は冷房弱化させることにより、ユーザ体表面温度を任意の設定温度に近づける空調が可能となる。
また、実施の形態3に係る車載空気調和装置は、実施の形態1と同様に、熱画像データを基にユーザがメガネ、マスク、手袋、靴下、スリッパなどを装着しているかどうかを識別してもよい。また、実施の形態3に係る車載空気調和装置は、上記検出結果を基に、ユーザに対して、メガネ、マスク、手袋、靴下、スリッパなどを装着していることで計測精度が低下していることを通知する手段を備えていてもよい。これらの実現方法については、実施の形態1に記載されているため説明が省略される。
また、実施の形態3に係る車載空気調和装置は、熱画像データを基に、着衣量、輻射熱、湿度、姿勢、活動量、運動量、時刻、汗、季節を計測する手段を備えてもよい。これにより、ユーザの温冷感により適合させた空調が可能となる。このような計測方法については、実施の形態1に記載されているため説明が省略される。
また、実施の形態3に係る車載空気調和装置は、熱画像センサ3101の観察エリアを照らす照明手段を備えてもよい。例えば、図46に示されるように、車載空気調和装置の熱画像センサ3101が照明手段3502を有していてもよいし、熱画像センサ3101に隣接して照明手段が設けられてもよい。これにより、ユーザは、熱画像センサ3101で温度が計測できている部位(=照明で照らされている部位)を容易に確認することができる。
なお、上記照明手段は、熱画像センサ3101の観察エリアのみに光を照射する照明手段であることが望ましい。これにより、ユーザは、正確に観察エリアの位置を把握することができる。
また、実施の形態3に係る車載空気調和装置の熱画像センサ3101は、遠赤外光照射手段を備えてもよいし、遠赤外光照射手段と隣接していてもよい。そして、このような場合、上記遠赤外線照射手段から遠くに位置する対象物に遠赤外光を照射するほど、照射の結果受光される遠赤外線光密度が低くなるように光学系が設計されることが望ましい。
このような構成の車載空気調和装置は、遠赤外光を観察エリアに向けて照射した場合の熱画像データと、照射しない場合の熱画像データとを比較することによって、観察エリア内の各部位と熱画像センサ3101との距離を把握することができる。なぜなら、照射中の熱画像データと非照射中の熱画像データとの変化量が大きいほど、熱画像センサ13に近いものが位置するエリアとなるからである。これによって、車載空気調和装置は、車内の気流障害物(助手席に置かれた大きな荷物など)を把握することができ、障害物を避けて気流をユーザに届けることができる。よって、ユーザとの間に障害物が無い送風手段からのみ選択的に送風を行うことなどにより、消費電力の削減が実現される。
また、上述のように実施の形態3の輸送機器(または、車載空気調和装置)が熱画像センサを備える場合、輸送機器は、各座席に人が居るかどうかを把握することができる。熱画像センサを用いてユーザの位置を把握することは、座面上の重さを計測するセンサと違って、荷物を人と誤認識することがない点で優れている。したがって、実施の形態3の輸送機器は、例えば、ユーザが助手席に着座している場合のみ、シートベルト着用の指示を出すような制御ができる。
[実施の形態3の別の変形例]
[カビ危険検知]
実施の形態3に係る車載空気調和装置は、湿度計を備えることで、フロントガラスの結露を予測する結露センサとして用いることができることを説明したが、それに限らない。実施の形態3に係る車載空気調和装置は、湿度計を備えることで、カビの発生する危険を検知するカビセンサとしても用いることができる。また、実施の形態3に係る車載空気調和装置は、カーエアコンなど車両に搭載されるとして説明したが、それに限らない。ルームエアコンなど部屋に搭載されてもよい。さらに、カビセンサの機能は、除湿機に搭載されてもよいし、扇風機などの送風機やロボット掃除機などにも搭載されてもよい。以下、カビサンサが家やビル等の部屋などの室内空間に搭載される場合の例について図を用いて説明する。
図49Aは、カビセンサを構成する構成とその観察エリアの一例を示す図である。図49Bは、図49Aに示すカビセンサの観察エリアの一例を示す図である。
図49Aに示すカビセンサ3600は、熱画像センサ3601と、湿度計3602と、温度計3603とを備える。
温度計3603は、図49Aに示す場所Aに設置され、場所A、場所Bおよび場所Cを含む図49Bに示す室内空間(同一空間)の温度を計測する。
湿度計3602は、図49Aに示す場所Aに設置され、場所A、場所Bおよび場所Cを含む同一空間の湿度を計測する。ここで、湿度には絶対湿度と相対湿度とがあるが、湿度計3602は、通常相対湿度を計測する。なお、絶対湿度は、乾いた空気1kg中に含まれている水蒸気の量を質量(g単位)で表すものである。相対湿度は、ある温度の空気が含むことができる飽和水蒸気量と実際に含んでいる水蒸気量とを比較して百分率(%)で表すものである。
熱画像センサ3601は、実施の形態1〜3で記述した熱画像センサのいずれでもよいが、場所Bおよび場所Cを含む観察エリアの熱画像を取得する。熱画像センサ3601は、観察エリアの熱画像を取得できれば、場所Aに設置されてもされなくてもどちらでもよい。
カビセンサ3600は、湿度計3602と温度計3603との計測値を用いて絶対湿度を算出する。温度と相対湿度とから絶対湿度を算出する方法は既知のためここでの詳細な説明は省略する。
また、カビセンサ3600は、熱画像センサ3601から得た熱画像に基づいて、例えば場所Bや場所Cなど観察エリア内の温度を取得し、場所Bや場所Cなど観察エリア内の湿度(相対湿度)を算出する。
そして、カビセンサ3600は、算出した観察エリア内の湿度(相対湿度)に基づき、カビ発生の危険があるかどうかを判断し、カビ発生の危険がある場合には、その旨警告する。例えば、カビセンサ3600は、算出した場所Bまたは場所Cの相対湿度が予め定めた値を超えていれば、場所Bまたは場所Cでカビ発生の危険が有ると判断し、予め定めた値を超えた相対の場所Bまたは場所Cを通知(警報)する。
ここで、カビは、空気中の水分が多いほど発生しやすく、空気中の相対湿度が80%以上で発生しやすくなることが知られている。予め定めた値には、例えば80%や92%などカビが発生する危険のある湿度が設定される。
次に、上述したカビセンサ3600の機能を有する車載空気調和装置のカビ危険検知に基づく乾燥動作について説明する。図50は、カビ危険検知に基づく乾燥動作のフローチャートである。
本変形例の車載空気調和装置が有するカビセンサ3600は、湿度計3602で、例えば図49Bに示す室内空間(同一空間)の湿度を計測し(S31)、温度計3603で当該部屋(同一空間)の温度を計測する(S32)。
次に、カビセンサ3600は、計測した温度と湿度とを用いて観察エリアである当該部屋の絶対湿度を算出する(S33)。
次に、カビセンサ3600は、熱画像センサ3601から得た熱画像に基づいて、場所Bや場所Cなど観察エリア内の温度を取得し、観察エリア内の湿度(相対湿度)を算出する(S34)。
次に、カビセンサ3600は、算出した観察エリア内の湿度(相対湿度)に基づき、カビ発生の危険があるかどうかを判断し(S35)、カビ発生の危険がある場合には(S35でYes)、カビ発生の危険がある場所を警告する(S36)。
そして、車載空気調和装置は、ファンなどの送風部から、カビ発生の危険がある場所に対して送風し(S37)、当該場所を乾燥させる動作を行う。
なお、本変形例の車載空気調和装置は、観察エリア内の温度に基づき観察エリア内の湿度を算出するとしたがそれに限らない。本変形例の車載空気調和装置は、熱画像センサ3601から得た熱画像内で予め定められた温度以下になる画素が1つでもあったらユーザにカビ発生の危険がある旨を通知するとしてもよい。また、本変形例の車載空気調和装置は、熱画像センサ3601から得た熱画像内で予め定められた温度以下になる画素が1つでもあったら、熱画像内で最も温度が低いエリアに向かって送風するとしてもよい。これにより、最もカビ発生の危険性のある場所から対処することができるのでカビ発生防止効率がよい。
また、本変形例の車載空気調和装置は、熱画像センサ3601から得た熱画像内で最も温度が低い画素の温度が、上述したような方法により結露しそうな温度かどうかを、場所Aの温度および湿度の値から計算するとしてもよい。結露しそうな温度が予め設定した値より高い場合、ユーザにカビ注意の通知または上記最も温度が低い画素の方向に向かって送風するとしてもよい。これにより、熱画像内の各画素の湿度を計算せずカビ発生の危険を検知できるので信号処理手段のメモリ削減効果が高いという効果を奏する。
また、本変形例の車載空気調和装置は、熱画像センサ3601から得た熱画像内をいくつかのエリアに分けて、各エリアの最低温度を算出してもよい。そして、本変形例の車載空気調和装置は、算出して得た一番温度が低いエリアの最低温度が、予め設定した値(カビが発生する危険があるとして設定された値)以上であったら、そのエリアに向かって送風するとしてもよい。
[乗員アルコール検知]
実施の形態3に係る車載空気調和装置は、熱画像センサに加えて、9μm〜10μmの赤外線を計測する手段と10μm以上、または、9μm以下の赤外線を計測する手段とを備えるとしてもよい。ここで、上記の赤外線を計測する手段は、例えば光学フィルタで実現できる。
これにより、車室内空間の乗員ごとの周囲を計測することができるので、各乗員から放出された呼気に含まれるアルコールの分布(アルコール濃度)を計測することが可能となる。このように、乗員ごとに周囲のアルコール濃度を算出することで、どの乗員が飲酒状態にあるのか判断することが可能となる。9μm〜10μmの波長の赤外線はアルコール(エタノールガス)に吸収されやすいからである。
なお、上記の赤外線を計測する手段は、例えば、9μm以下の光のみを透過する光学フィルタであってもよいし、10μm以下の光のみを透過する光学フィルタであってもよい。また、上記の赤外線を計測する手段は、10μm以上の光のみを透過する光学フィルタであっても良い。また9μm以上のみを透過する光学フィルタであってもよい。
また、本変形例の車載空気調和装置は、さらに、乗員に警告を通知する警告手段を備えてもよい。例えば、本変形例の車載空気調和装置は、乗員のうちのドライバーが飲酒状態にあると判断した場合は、当該ドライバーや同乗者などの乗員に警告を通知してもよい。警告手段は、振動や音、光などを用いて警告を通知できればよい。
また、本変形例の車載空気調和装置は、乗員のうちのドライバーが飲酒状態にあると判断した場合は、エンジンがかからないようにしてもよし、外部に通報するとしてもよい。
本変形例では、9μm〜10μmの赤外線を呼気中に含まれるエタノールガスが吸収することを利用しているが、他のエタノールガスの吸収波長を用いて同様の効果を発現させてもよい。例えば、7μm〜7.5μm、8μm〜8.5μm、11μm〜12μmなどにもエタノールガスの吸収波長が存在する。すなわち、本変形例の車載空気調和装置は、これらの吸収波長を利用することで、車室内空間の乗員から放出された呼気に含まれるアルコールの分布(アルコール濃度)を計測してもよい。
(実施の形態4)
[実施の形態4の基礎となった知見]
従来、同一温湿度環境下であったとしても、どれだけ体を動かしているかによって人の体感温度は変化することが知られている。例えば、通常人が静止していれば快適とされる環境である、温度25℃、湿度50%の環境下であったとしても、その人が激しく運動していれば暑く感じることになる。
よって、人がその位置でどれだけの活動をしているかが分かると、その人の活動量に応じて空気調和装置の温度や風量等のパラメータを調整することができる。このような調整により、活動量の多い人に対しても快適な環境を提供できる。
そこで、特許文献1のように、赤外線検出器から得られたデータから活動量を算出し、その活動量を空気調和装置にフィードバックすることで、快適さを向上させる構成が提案されている。
また、室内の温度分布を測定するために、検出器として例えば赤外線検出器を用い、その赤外線検出器の検出範囲を広げるために、例えば特許文献2のように、アレイ状の赤外線検出器を所定方向に走査することが提案されている。
しかし、特許文献1および2に記載の赤外線検出器において、走査範囲内に人が存在する場合、一度の走査においてその人は一回しか走査されない。通常、一回の走査に要する時間は数十秒〜数分に及ぶため、特許文献1や2に記載の赤外線検出器で人の活動量を測定することは困難である。特に、特許文献1および2に記載の赤外線検出器を用いて人の活動量を検出する場合、広い範囲にて検出することは困難であった。
実施の形態4では、広い範囲で人の活動量を検出することができる赤外線検出器について説明する。なお、実施の形態4における赤外線検出器は、上記実施の形態1〜3における熱画像センサに相当する装置であり、実施の形態4における赤外線検出素子は、上記実施の形態1〜3における受光素子に相当する素子である。
[構成]
まず、実施の形態4に係る赤外線検出器の構成について、赤外線検出器を備える空気調和装置の構成とともに説明する。図51は、実施の形態4に係る赤外線検出器を備える空気調和装置100が設置された室内の概略図である。図52Aは、実施の形態4に係る赤外線検出器の斜視図であり、図52Bは、実施の形態4に係る赤外線検出器の側面図である。
図51に示されるように、実施の形態4に係る赤外線検出器101は、空気調和装置100に搭載される。空気調和装置100は、一例として、机103が置かれ、人102が居住する室内に設けられているとする。
図52Aおよび図52Bに示されるように、赤外線検出器101(熱画像センサ)は、赤外線検出素子105a〜105f(受光素子)からなり、それぞれの赤外線検出素子105a〜105fは、ローター104a〜104f(回転部)に搭載されている。各ローター104a〜104fは、赤外線検出器101を上から見た場合に、それぞれ時計周りに回転する。
さらに、図52Bに示されるように、ローター104aの側面107aは、ローター104aの上面106aに対して垂直であるが、ローター104bの側面107bは、ローター104bの上面106bに対してθb°傾いており、ローター104bの径は、下側にゆくにつれて細くなる。さらに、ローター104cの側面107cは、ローター104cの上面106cに対して、θb°より大きいθc°内向きに傾いており、ローター104cの径は、下側にゆくにつれて細くなる。
同様に、ローター104dの側面17dは、ローター104dの上面106dに対して、θc°より大きいθd°内向きに傾いており、ローター104dの径は、下側にゆくにつれて細くなる。ローター104eおよび104fに関しても同様であり、各ローターの側面θb、θc、θd、θe、θfは下側のローターほど、搭載される赤外線検出素子が下向きになるように、θb<θc<θd<θe<θfの関係を満たしている。
このように、各赤外線検出素子105a〜105fの向きが上下方向で異なる構成により、各赤外線検出素子105a〜105fのそれぞれは、室内の高さが異なる位置の温度を測定できる。
なお、赤外線検出素子105a〜105fは、上方に位置する赤外線検出素子ほど、室内の上方を検出(測定)するが、赤外線検出素子の位置と、測定位置とは必ずしもこのような対応関係でなくてもよい。また、ローター104aの側面107aも、他のローターの側面と同様に、上面106aに対して垂直ではない角度に傾いていてもよい。また、各赤外線検出素子105a〜105fにレンズ等を取り付けることで、測定(検出)する範囲および位置が調整されてもよい。
さらに、赤外線検出器101においては、赤外線検出素子105a〜105fは、ローター104a〜104fの回転方向に所定間隔ずつずれた状態で配置されている。図52Aおよび図52Bにおいては、下段のローターになるに従い、回転方向に対して少しずつ前方に赤外線検出素子105a〜105fが取り付けられている。
次に、空気調和装置100に搭載された赤外線検出器101によって測定される赤外線画像(熱画像データ)について図53A〜図53Eを用いて説明する。図53A〜図53Eは、赤外線検出器101の検出領域を示す概念図である。
上述の図52Aおよび図52Bに示されるように、赤外線検出器101に搭載されている赤外線検出素子105a〜105fは、回転方向に所定間隔ずつずれた状態で配置されている。よって、各赤外線検出素子が赤外線を検出する場所(温度を測定する場所)は、赤外線画像の水平方向、つまり、走査方向に所定間隔ずつずれる。
図53Aには、検出開始時の各赤外線検出素子105a〜105fのそれぞれの検出領域108a〜108fが概念的に示されている。図53Aに示される状態では、赤外線検出素子105fが回転方向(以下、赤外線検出素子の配置において走査方向に相当する方向(ここでは、回転方向)についても走査方向と記載する場合がある)において最も先行している。このため、検出領域108fは、走査方向において最も先行した場所に位置する。また、各赤外線検出素子が検出している走査方向の位置は、所定間隔ずつずれている。図53Aの時点では、赤外線検出器101の検出領域内に机103は入っているが、人102はまだ入っていない。
図53Bは、検出開始(図53Aの状態)から1フレーム後の検出領域108a〜108fを示す図である。図52AおよびBで説明したように、赤外線検出器101の上方から見た場合、赤外線検出器101の回転方向は時計周りである。よって検出開始から1フレーム後の検出領域は、図53Aに示される検出開始時の検出領域に対して、右側に1画素分ずつシフトしている。図53Bの時点でも、机103は検出領域内に入っているが、人102は検出領域内に入っていない。
図53Cは、検出開始から2フレーム後の検出領域108a〜108fを示す図である。検出領域108a〜108fは、検出開始時よりも右側に2画素分ずつシフトしている。したがって、図53Cの時点において、人102の左足102aが、検出領域108fに入り、左足102aの温度測定が開始される。以後、検出開始から3フレーム後(図示せず)においては、人102の左足102aは、検出領域108eに入り、以後、人102は、各検出範囲に順次捕らえられる。
ここで、赤外線検出器101の各ローター104a〜104fが同一方向(時計回り)に回転し続ける場合、検出領域108a〜108fのいずれかが人102を捕らえている期間は、検出開始から2フレーム後(図53C)から9フレーム後(図53D)までである。図53Dの時点においては、走査方向において最も遅れている検出領域108aが、人102の頭102bを捕らえている。
なお、各検出領域が検出開始時の位置に戻るまでには、11フレーム必要である。したがって、赤外線検出器101によれば、11フレーム中の8フレーム(2フレーム後から9フレーム後まで)で、人102は赤外線検出素子105a〜105fのいずれかの検出対象となる。
なお、仮に、走査範囲の右端まで各検出領域が到達した場合に、赤外線検出器101の各ローター104a〜104fが逆方向に回転する(方向を反転させる)場合、図53Eに示されるように、2フレーム後から12フレーム後まで人102は、検出対象となり続ける。
この場合、各検出領域が検出開始時の位置に戻るのは、各検出素子が一往復する20フレーム後である。このため、20フレーム中の11フレーム(2フレーム後から12フレーム後まで)で、人102は赤外線検出素子105a〜105fのいずれかの検出対象となる。
以上のような赤外線検出器101に対し、赤外線検出素子105a〜105fが上下方向に直線的に配置される赤外線検出器と、その検出領域について説明する。図54は、赤外線検出素子105a〜105fが上下方向に直線的に配置される赤外線検出器の斜視図である。図55A〜図55Cは、図54の赤外線検出器の検出領域を示す概念図である。
図54に示される赤外線検出器110、回転方向に対して赤外線検出素子の配置がずらされていない。図55Aに示されるように、赤外線検出器110による検出開始時には、赤外線検出器110の検出領域109a〜109fは、走査範囲の一番左端に上下方向に一列に並ぶ。
そして、赤外線検出器110によって人102が検出され始めるのは、図55Bに示される7フレーム後であり、その後、人102は図55Cに示される9フレーム後まで検出対象となる。
赤外線検出器110の各ローター104a〜104fが同一方向に回転し続ける場合、各検出領域が検出開始時の位置まで戻ってくるまでには、11フレーム必要である。赤外線検出器110では、11フレームの内の3フレーム(7フレーム後から9フレーム後まで)でしか、人102が赤外線検出素子105a〜105fの検出対象とならない。
なお、仮に、走査範囲の右端まで各検出領域が到達した場合に、赤外線検出器110の各ローター104a〜104fが逆方向に回転する(方向を反転させる)場合、図55Aに示される検出開始時の位置まで各検出領域が戻ってくるまでには、20フレーム必要である。
この場合、検出開始から7フレーム後から9フレーム後までと、11フレーム後から13フレーム後の6フレーム(つまり、20フレーム中6フレーム)でしか、人102は赤外線検出素子105a〜105fの検出対象とならない。
以上説明したように、赤外線検出器101では、走査方向において少なくとも一つの赤外線検出素子がシフトして配置されている。赤外線検出器101によれば、次の様な効果が奏される。
一般に、赤外線検出器の走査により活動量を測定する場合、一度目の走査で得られた室内の温度分布(1つ目の熱画像データ)と、二度目の走査で得られた室内の温度分布(2つ目の熱画像データ)との差分から、活動量が推定される。
例えば、赤外線検出素子として、シリコン等を用いたサーモパイル素子を用いた場合、1フレームの検出に数秒程度必要となる場合がある。1フレームの検出に3秒必要であるとすると、図53A〜図53Dで説明した例では、1つの熱画像データを得るために合計11フレームで33秒が必要となる。
上述のように赤外線検出器110を用いた場合は、11フレーム中3フレームしか人102が検出対象とならない。つまり、33秒中の9秒しか人102の温度分布が測定されず、人102の活動量が取得されない時間が長い。
これに対し、赤外線検出器101では、赤外線検出素子105a〜105fがずらされて配置されているため、上述のように11フレーム中の8フレーム、つまり、33秒中の24秒で人102の温度分布が測定される。したがって、赤外線検出器101は、走査型の赤外線検出器であるにもかかわらず、ほぼ全ての時間帯で人102の活動量を取得できる。
よって、赤外線検出器101によれば、精密に人102の活動量を把握することができる。そして、赤外線検出器101を備える空気調和装置100は、精密に測定された人の活動量に応じた、快適な空気調和ができる。
なお、走査範囲の右端まで各検出領域が到達した場合に、赤外線検出器の各ローター104a〜104fが逆方向に回転する場合も同様である。
赤外線検出器110は、上述のように20フレーム中6フレーム、つまり、60秒中の18秒しか人102の温度分布を測定できない。これに対し、赤外線検出器101は、上述のように20フレーム中11フレーム、つまり、60秒中の33秒で人102の温度分布を測定できる。つまり、赤外線検出器101は、走査型の赤外線検出器であるにもかかわらず、多くの時間で人102の活動量を取得できる。
なお、赤外線検出器101では、赤外線検出素子の数は6個であるが、赤外線検出素子の数は、特に限定されるものではない。
また、赤外線検出器101においては、各ローターにおける全ての赤外線検出素子の取り付け位置を所定量ずつ走査方向にずらした。言い換えれば、赤外線検出器101においては、走査方向の位置が同一である赤外線検出素子は存在しない。しかしながら、少なくとも一部の赤外線検出素子が走査方向においてずらされていれば、多くの時間で人を検出対象とすることができる効果は得られる。つまり、赤外線検出素子のずらし方は、赤外線検出器101のような態様に限定されるものではない。
また、赤外線検出器101における、ローターの回転方向、1フレームの走査幅、その他走査パラメータは、一例であり、特に限定されるものではない。赤外線検出器101の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな変更が加えられてもよい。
[実施の形態4の変形例1]
以下、実施の形態4の変形例1に係る赤外線検出器について説明する。図56Aは、実施の形態4の変形例1に係る赤外線検出器の斜視図である。図56Bは、実施の形態4の変形例1に係る赤外線検出器の上面図である。
図56Aおよび図56Bに示される赤外線検出器200は、基板201上に形成された赤外線検出素子アレイ202を備え、さらに、図示されないマウントによって、基板201上に固定された結像レンズ205を備える。基板201は、軸204に固定されており、軸204の回転により、基板201上に設けられた赤外線検出素子アレイ202と結像レンズ205は一体的に回転する。これにより、赤外線検出器200は、左右方向の走査ができる。なお、結像レンズ205は、赤外線の吸収の少ないゲルマニウムやZnSe(セレン化亜鉛)、シリコン等の材料により形成されるとよい。
赤外線検出器200において、赤外線検出素子アレイ202は、図56Aに示されるように、矩形の赤外線検出素子203a〜203fが斜め方向に配列される。つまり、赤外線検出器200では、同一面上において、赤外線検出素子アレイ202(赤外線検出素子203a〜203f)が走査方向に対して所定の角度傾いて配置される。
このような赤外線検出器200であっても、軸204を中心に基板201が回転することで、赤外線検出器101と同様に、走査型の赤外線検出器であるにもかかわらず、ほぼ全ての時間で人102の活動量が取得できる。つまり、赤外線検出器200によれば、精密に人102の活動量を把握することができる。そして、赤外線検出器200を備える空気調和装置100は、精密に測定された人の活動量に応じた、快適な空気調和ができる。
なお、図56Bにおいては、赤外線検出器200は、時計周りに回転するが、走査範囲の右端まで各検出領域が到達した場合に、走査方向を反転させる場合は、反時計周りに回転してもよい。
[実施の形態4の変形例1の変形例]
図57は、実施の形態4の変形例1の変形例に係る赤外線検出器の上面図である。図56Bと同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図56Bに示す赤外線検出器200では、軸204の回転により、基板201上に設けられた赤外線検出素子アレイ202と結像レンズ205は一体的に回転するとしたが、それに限らない。実施の形態2の変形例9等で説明したのと同様の回転中心であってもよい。すなわち、図57に示すように、赤外線検出素子アレイ202の回転中心は、結像レンズ305の一部を通る軸(回転軸204a)であってもよい。
結像レンズ205は、結像レンズ205一部を通る軸(回転軸204a)を中心に回転駆動される。ここで、結像レンズ205の一部を通る軸(回転軸204a)は、例えば結像レンズ205の光学中心である光心を通る軸である。
このようにして、赤外線検出器200aの回転中心と結像レンズ205の光心とを略一致させることができるので、赤外線検出器200aにより取得した赤外線画像における高温領域と低温領域の境界を明瞭にすることができる。
ここで、赤外線検出器200a(熱画像センサ)の回転中心と結像レンズ205(レンズ)の光心とのズレが大きいほど得られる赤外線画像における高温領域と低温領域の境界が不明瞭になることについて図を用いて説明する。
図58は、レンズの光心と赤外線センサの回転中心を示す模式図である。図59は、図58に示す赤外線センサの計測対象(観察エリア)の一例を示す図である。図60A〜図60Cは、図58に示す赤外線センサにより得られた熱画像(計測結果)を示す図である。
図58に示す赤外線センサは、回転中心204bが可動する。すなわち、図58に示す赤外線センサは、レンズ光心と回転中心204bの距離を0mm(略一致すなわちズレなし)にしたり、5mm(ズレ小)にしたり、10mm(ズレ大)にしたりすることができるとする。また、図58に示す赤外線センサは、例えば図59に示すように、左半分領域が高温領域Aとなり、右半分領域が低温領域Bとなる熱源が配置された計測対象を測定する(観察エリアの熱画像を取得する)とする。
この場合、図58に示す赤外線センサは、レンズ光心と回転中心とが略一致する場合(ズレなしの場合)、図60Aに示すような熱画像を取得する。また、図58に示す赤外線センサは、レンズ光心と回転中心とのズレが小さい場合、図60Bに示すような熱画像を取得し、レンズ光心と回転中心とのズレが大きい場合、図60Cに示すような熱画像を取得する。
図60A〜図60Cに示すように、熱画像センサの回転中心204bとレンズ光心とのズレが大きいほど高温領域と低温領域の境界がギザギザになっているのがわかる。つまり、熱画像センサの回転中心204bとレンズ光心とのズレが大きいほど得られる熱画像(赤外線画像)における高温領域と低温領域の境界が不明瞭になることがわかる。
そして、高温領域と低温領域の境界が不明瞭な熱画像(赤外線画像)では、人物等のオブジェクトの境界が不明瞭になるので、人物等のオブジェクトを精度よく認識できないという課題が発生する。
したがって、本変形例のように、赤外線検出器200aの回転中心と結像レンズ205の光心とを略一致させることにより、赤外線検出器200aにより取得した赤外線画像における高温領域と低温領域の境界を明瞭にすることができる。それにより、赤外線検出器200aにより取得した赤外線画像における人物等のオブジェクトをより精度よく認識できる。
なお、本変形例に係る赤外線検出器200aの赤外線検出素子アレイ202と結像レンズ205は、使用していると汚れてしまうおそれがある。そのため、赤外線検出素子アレイ202と結像レンズ205の汚れ防止のために、実施の形態2の変形例10で説明したようなカバー部材を、さらに、備えるとしてもよい。
図61A〜図61Gは、実施の形態4の変形例1の変形例に係る赤外線検出器のカバー部材の態様を示す図である。図32A〜図32Gおよび図57と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図61Aには、カバー部材の一部の厚みを変える場合の一例が示されている。図61Bには、異なる赤外線透過率を示す第1領域と第2領域とを有するカバー部材の図61Aとは別の一例が示されている。図61Cには、異なる赤外線透過率を示す第1領域と第2領域とを有するカバー部材の図60Aとは別の一例が示されている。図61A〜図61Cに示すカバー部材35〜37は、図32A〜図32Cで説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、図61D〜図61Gには、実施の形態4の変形例1の変形例に係る赤外線検出器のカバー部材の別の態様が示されている。すなわち、図61Fには、本変形例に係る赤外線検出器のカバー部材36の第2領域に、部材38または部材39をさらに備える場合が示されており、図61Gには、本変形例に係る赤外線検出器のカバー部材35の部材35bに代えて部材38または部材39を備える場合が示されている。そして、図61Fまたは図61Gに示す赤外線検出器は、部材38または部材39を備えることで、第2領域の構造を強化することができるので、カバー部材全体の構造を強化できる。
なお、詳細は、図32D〜図32Gで説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
[実施の形態4の変形例2]
以下、実施の形態4の変形例2に係る赤外線検出器について説明する。図62Aは、実施の形態4の変形例2に係る赤外線検出器の斜視図である。図62Bは、実施の形態4の変形例2に係る赤外線検出器の上面図である。
図62Aおよび図62Bに示される赤外線検出器210は、赤外線検出器200と類似しているが、軸204がない点と、結像レンズ205が基板201に固定されておらず、図示されない機構により図62Bに示されるように左右(走査方向)にシフト可能な点とが異なる。
このような赤外線検出器210は、赤外線検出器101において走査方向を反転させた場合と同様に、走査型であるにもかかわらず、ほぼ全ての時間で人102の活動量が取得できる。つまり、赤外線検出器210によれば、精密に人102の活動量を把握することができる。そして、赤外線検出器210を備える空気調和装置100は、精密に測定された人の活動量に応じた、快適な空気調和ができる。
[実施の形態4の変形例3]
以下、実施の形態4の変形例3に係る赤外線検出器について説明する。図63は、実施の形態4の変形例3に係る赤外線検出器の斜視図である。
図63に示される赤外線検出器220は、基板201上に設けられた赤外線検出素子アレイ202と結像レンズ205とを備える。赤外線検出素子アレイ202および結像レンズ205は、赤外線検出器200が備えるものと同様である。
しかしながら、赤外線検出器220では、基板201、赤外線検出素子アレイ202、および結像レンズ205は一切動かされず、結像レンズ205の上方に設けられたミラー221が、軸222を中心軸として回転する。この点が赤外線検出器200と異なる。具体的には、ミラー221は、図63において左側から入射する赤外線を、下向きに反射する。反射された赤外線は、結像レンズ205を透過し、赤外線検出素子アレイ202上に赤外線分布が結像される。
このように、ミラー221が軸222を中心にして回転されることにより、可動部分を可能な限り小さくしながら、赤外線検出器220は、走査型であるにもかかわらず、ほぼ全ての時間で人102の活動量が取得できる。つまり、赤外線検出器220によれば、精密に人102の活動量を把握することができる。そして、赤外線検出器220を備える空気調和装置100は、精密に測定された人の活動量に応じた、快適な空気調和ができる。
また、赤外線検出器220では、可動部が軸222を中心としたミラー221のみであり、ミラー221は、配線等を有していない。このため、赤外線検出器220は、構成が簡略化され、長寿命かつ低コストに構成できるという利点も有する。
なお、この場合、ミラー221に結像レンズ205が取り付けられても構わない。図64は、ミラー221に結像レンズ205が取り付けられた赤外線検出器の斜視図である。
図64に示される赤外線検出器230は、赤外線検出器220と類似しているが、結像レンズ205がミラー221に取り付けられている点のみが異なる。なお、図64では、結像レンズ205が取り付けられたミラー221がレンズ付きミラー231として図示されている。
結像レンズ205に入射した赤外線は、結像レンズを透過してミラー221に到達し、ミラー221で反射された後、さらにもう一度結像レンズ205を透過する。結像レンズ205から出射した赤外線は、赤外線検出素子アレイ202に入射し、これにより赤外線検出素子アレイ202上に赤外線分布が結像される。
赤外線検出器230は、上記の赤外線検出器220と同様の効果を奏する。また、赤外線検出器230では、赤外線が同一の結像レンズ205を二度透過するため、一枚のレンズでありながら、より焦点距離を短くすることができるため、温度分布の測定範囲をさらに広くすることが出来るという効果も有する。
[実施の形態4の変形例4]
以下、実施の形態4の変形例4に係る赤外線検出器について説明する。図65は、実施の形態4の変形例4に係る赤外線検出器の斜視図である。
図65に示される赤外線検出器240は、赤外線検出器200と類似する。しかしながら、赤外線検出器240では、基板201の内側がくりぬかれており、そのくりぬかれた部分に軸241に支持された赤外線検出素子アレイ202が設けられる。軸241は、水平方向に延びる軸であって、基板201に支持されており、これにより、赤外線検出素子アレイ202は、図65の上下方向に回転可能である。
赤外線検出器240では、結像レンズ205は、図示されないマウントによって赤外線検出素子アレイ202に固定されている。こうすることで、軸204の回転による左右方向の走査だけでなく、軸241の回転による上下方向の走査が可能であるため、赤外線検出器240は、広範囲で赤外線を受光することができ、より広範囲の温度分布を取得することができる。
例えば、左右方向の走査(図53A〜図53C)において、活動量に基づいて人102の存在が検出された場合(図53C)、赤外線検出器240は、軸204の回転を止めて左右方向の位置は固定したまま軸241を回転させる。これにより、図66Aに示されるように上下方向の温度分布を測定することができる。図66A〜図66Cは、上下方向の走査における検出領域を示す概念図である。なお、図66Aは、上下方向の走査開始時の検出領域を示す図である。図66Bは、図66A状態から上方向に走査をした場合の検出領域を示す図であり、図66Cは、図66A状態から下方向に走査をした場合の検出領域を示す図である。
図66A〜図66Cに示されるように、通常は関心部位が発生しやすい領域を左右方向に走査し、関心部位が発生した場合のみ上下方向にも走査することで、常に広範囲を走査する必要がなくなる。このため、赤外線検出器240によれば、通常の一回の走査時間が短縮され、よりきめ細かい空気調和装置100の制御が実現される。
また、赤外線検出器240は、人102の周辺の温度分布を詳細に調べることができるため、さらに人102の活動量を精密に取得することができる。したがって、赤外線検出器240を備える空気調和装置100は、人の活動量に応じた快適な空気調和ができる。
なお、温度分布により人102を検出する方法としては、検出された温度分布のうち、例えば、30〜36℃程度の所定温度範囲内の物体が検出された部分を人102であると検出(判断)する方法が考えられる。また、所定の温度範囲の領域が所定サイズである場合に人と判断する方法等、種々の方法が考えられるが、人102を検出する方法は、特に限定されるものではない。
また、上記では、人102を検出した部位を関心対象としてその周辺の温度分布を詳細に検出する方法を説明したが、人102以外のものが関心対象とされてもよい。図67は、人102以外のものが関心対象(検出対象)とされる例を説明するための図である。図68は、照明が設けられた室内を上下方向に走査する場合の検出領域を示す概念図である。
図67に示されるように、室内に照明242が存在する場合、図68に示されるように上下方向に広く走査することで、照明242の存在が検出される。照明は点灯していない状態では発熱しないため、赤外線検出器240は、点灯していない照明242を検出することはできない。しかし、点灯している照明は、発熱するため検出可能である。
よって、赤外線検出器240は、例えば、上下左右の広範囲の走査により、温度変動部位が発生した場合にその周辺の温度分布を集中的に検出し、さらにその温度変動部位の位置が所定の期間以上変動しない場合には、その部位を人ではなく家電機器(の稼動)であると認識できる。家電機器は、例えば、図67および図68に示される照明や、その他の発熱を伴う機器である。
赤外線検出器240は、さらに、室内もしくは家庭内の電力消費量を検出しておき、その消費電力量の推移を分析することから、どのような家電機器の稼動が開始したかを判定することもできる。例えば、天井照明であれば50W程度であり、液晶テレビであれば100W程度であるといった家電機器の消費電力の情報を予め取得(記憶)しておくことにより、赤外線検出器240は、稼動前後の消費電力差から家電機器を識別することができる。
また、赤外線検出器240は、特に高温の部位や低温の部位が発生した場合に、その部位の周辺を集中的に走査し、その部位が所定温度以上の高温になった場合や、所定温度以下の低温になった場合には、ユーザ(人102)に対して警告を発してもよい。この場合、高温になった部位としては、例えば、異常発熱した家電機器が想定され、低温になった部位としては、例えば、冷凍庫のドアが開け放たれた状態が想定される。こうすることで、赤外線検出器240は、空気調和以外に、家庭内の安心および安全を図ることができる。
なお、赤外線検出器240の機構は、一例であり、上下、左右方向に走査可能な機構であれば、特に、限定されるものではない。赤外線検出器240には、発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな変更を加えられてもよい。
[実施の形態4の変形例5]
次に、実施の形態4の変形例5として、赤外線検出素子アレイの赤外線画像の高解像度化について説明する。図69Aは、実施の形態4の変形例5に係る赤外線検出器の斜視図である。図69Bは、実施の形態4の変形例5に係る赤外線検出器の上面図である。
図69Aに示される赤外線検出器250は、赤外線検出器200と類似する。ここで、上述した赤外線検出器200の赤外線検出素子アレイ202においては、各赤外線検出素子203a〜203fは、それぞれの辺が走査方向と垂直もしくは平行になるように配置(配列)されている。例えば、図56Aに示されるように、赤外線検出素子203bは、赤外線検出素子203aと、左上の頂点でのみ接している。
これに対し、赤外線検出器250の赤外線検出素子アレイ252においては、各赤外線検出素子253a〜253fは、辺が図69Aに示されるようにφ°傾いた状態で配列される。さらに、各赤外線検出素子253a〜253fは、頂点ではなく辺で隣接する赤外線検出素子と接している。他の部分に関しては赤外線検出器200と赤外線検出素子アレイ252とは同じであり、赤外線検出器250は、基板201にマウントされた結像レンズ205が軸204を中心に回転されることで、広い範囲の温度分布を検出することができる。
赤外線検出素子アレイ252を用いた赤外線検出器250の特徴について、図70を用いて説明する。図70は、赤外線検出器250の検出領域を示す概念図である。
なお、以下では、図69Aにおいて、角度φが45°であるものとして説明がなされる。また、赤外線検出素子253a〜253fが検出する領域は、それぞれ、検出領域258a〜258fである。
図70に示されるように図中の左から右に走査する場合において、赤外線検出素子253aの検出領域258aの検出対象は領域A(縦幅がAの走査方向に延びる領域)である。同様に、赤外線検出素子253bの検出領域258bの検出対象は領域Bであり、赤外線検出素子253c〜253fの検出領域258c〜258fの検出領域もそれぞれ同様に領域C〜領域Fである。
領域Aの下半分と領域Bの上半分は重なっている。同様に、領域Bの下半分と領域Cの上半分も重なっており、同様に、各領域の上半分(下半分)は隣接する赤外線検出素子の検出対象の領域の下半分(上半分)とが重なっている。ここで、領域Aの上半分を領域(1)、領域Aと領域Bの重なっている部分を領域(2)、領域Bと領域Cの重なっている部分を領域(3)、以下、図70に示されるように領域(4)〜(7)とする。
例えば、領域(3)にのみ発熱体がある場合、この発熱体は、赤外線検出素子253bと253cとの両方から検出されるが、赤外線検出素子253aと赤外線検出素子253dとからは検出されない。したがって、発熱体が領域(3)の中に存在することが特定される。
よって、隣接する赤外線検出素子の検出範囲(検出対象の領域)が、走査方向に直交する方向において重なることにより、走査方向に直交する方向において、赤外線画像の解像度が向上する。図71は、赤外線画像の解像度の向上を説明するための図である。
図71では、同じ大きさ(面積)の赤外線検出素子108と赤外線検出素子258とが図示されている。赤外線検出素子108は、その四辺が走査方向に対して水平もしくは垂直となるように配置され、赤外線検出素子258は、図70と同様にその四辺が走査方向に対してφ=45°の角度を成すように配置されている。この時、赤外線検出素子108の縦方向の検出幅は、Xであるが、赤外線検出素子258の縦方向の検出幅Yは、上述の重なりの効果により、Xよりもルート2分の1倍に小さくなる。すなわち、赤外線検出素子258のような配置により測定される赤外線画像の解像度は、赤外線検出素子108のような配置により測定される赤外線画像よりもルート2倍向上している。
以上のように、走査方向に垂直な方向において、検出範囲同士が重なるように赤外線検出素子が配列されることで、赤外線画像の解像度を向上することができる。
なお、上記の説明においては、角度φは45°であるものとして説明されたが、これは一例である。走査方向に垂直な方向において、隣接する赤外線検出素子の検出範囲に重なりが生じていれば他の角度でもよいし、他の配置であってもよい。
[実施の形態4の変形例6]
次に、実施の形態4の変形例6に係る赤外線検出器について説明する。図72は、実施の形態4の変形例6に係る赤外線検出器の斜視図である。
図72に示される赤外線検出器260は、赤外線検出器250と同様に赤外線検出素子アレイ262を構成する赤外線検出素子263a〜263fが、水辺方向に対して角度φ傾けられている。ここで、赤外線検出器260においては、角度φは回転機構264を中心として変更可能であり、さらに、軸261が赤外線検出素子アレイ262を保持することで上下方向にも走査可能である。
また、結像レンズ205は、図示されないマウントによって赤外線検出素子アレイ262に取り付けられている。このような構成の赤外線検出器260は、赤外線画像の解像度を任意に変えることができる。図73は、赤外線画像の解像度の変更を説明するための図である。
図73において、各検出領域268a〜268fは、それぞれ赤外線検出素子263a〜263fの検出領域である。
例えば、角度φが45°よりも大きい場合、検出領域268cの検出範囲は、領域Cである。このときに、この領域Cには、領域B(検出領域268bの検出範囲)、および、領域D(検出領域268dの検出範囲)に加えて、領域A(検出領域268aの検出範囲)と領域E(検出領域268eの検出範囲)が重なる。よって、赤外線検出器260は、さらに高解像度な赤外線画像を取得することができる。
赤外線検出器260は、例えば、以下のような赤外線画像(温度分布)の取得が可能である。まず、赤外線検出器260は、一旦φ=90°の状態(すなわち各赤外線検出素子263a〜263fが上下方向にずれなく直線状に配置された状態)で走査を行う。そして、赤外線検出器260は、関心対象の大きさが上下方向の全走査範囲よりも小さい場合、関心対象がちょうどカバーされるように回転機構264を回転させて、検出領域268a〜268fの上下方向の長さを縮めたうえで再度走査を行う。これにより、解像度の高い関心対象の赤外線画像(温度分布)が得られる。
また、赤外線検出器260は、軸261を回転させることにより、上下方向の走査も可能である。よって、関心対象が上方または下方にある場合であっても、赤外線検出器260は、赤外線検出素子アレイ262を関心対象の上下方向の位置に合わせたうえで左右方向の走査を行うことで、関心対象の位置のみを走査することができる。
なお、赤外線検出器260は、関心対象の左右方向の位置が分かった段階で、軸204による左右方向の走査をやめ、軸261による上下方向の走査を行ってもよい。その場合も、赤外線検出器260は、関心対象の左右方向の幅に合わせて、回転機構264を中心として赤外線検出素子263a〜263fを回転させることで、二次元的に高い解像度の画像を得ることができる。
[実施の形態4の変形例の補足]
実施の形態4の変形例において説明した赤外線検出素子アレイ252および262は、極めて安価に製作可能であるという利点も有する。図74は、赤外線検出素子アレイのウエハーからの切り出しを説明するための図である。
一般に、赤外線検出素子は、半導体プロセスにより製作される。このとき、赤外線検出素子アレイ252および262等の赤外線検出素子アレイ271がウエハー270から切り出される場合は、各赤外線検出素子アレイ271において、隣接する赤外線検出素子同士が辺で接していることから、一枚のウエハー270から多数の赤外線検出素子アレイを切り出すことができる。図74においては、一枚のウエハー270から6枚の赤外線検出素子アレイ271が得られる。よって、赤外線検出素子アレイ252および262は、安価に製作できるという利点も有する。
なお、上記実施の形態4で述べた構成は、あくまで一例であって、赤外線検出素子アレイを構成する赤外線検出素子の数や、軸204および軸261等の駆動機構や、回転機構264等の回転機構等は、特に限定されるものではない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変形や変更が加えられてもよい。また、上述の各形態やそれらをさらに変形した形態が組み合わされてもよい。
[まとめ]
実施の形態4に係る熱画像センサ(赤外線検出器)は、検出領域の赤外線を検出する複数の赤外線受光素子と、1つの熱画像の対象となる領域の赤外線を複数の赤外線検出素子に検出させるために、検出領域を走査方向に走査する走査部とを備える。そして、複数の赤外線検出素子は、所定方向(例えば、ローター104a〜104fの回転方向)における配置位置が異なる赤外線検出素子を含む。ここで、所定方向は、複数の赤外線検出素子の配置において走査方向に相当する。
例えば、複数の赤外線検出素子は、赤外線検出素子アレイ202のように、所定方向、および、所定方向に垂直な方向のいずれの方向とも交差する方向に並んで配置される。
また、例えば、図70および図73に示されるように、複数の赤外線検出素子は、赤外線検出素子アレイ252のように、複数の赤外線検出素子に含まれる一の赤外線検出素子の検出範囲が、一の赤外線検出素子に隣接する赤外線検出素子の検出範囲と重なるように配置されてもよい。ここで、検出範囲とは、走査時に検出領域が移動する範囲を意味する。
また、実施の形態4に係る熱画像センサの走査部は、複数の赤外線検出素子を所定方向に動かすことにより検出領域を走査方向に走査してもよい。この場合の操作部は、例えば、ローター104a〜104fや、軸204などの駆動機構である。
また、実施の形態4に係る熱画像センサは、対象物からの赤外線を複数の赤外線検出素子に入射させる光学系と、光学系を動かすことにより検出領域を走査方向に走査してもよい。この場合の走査部は、例えば、軸222などの駆動機構である。
また、実施の形態4に係る熱画像センサは、さらに、走査方向と垂直な方向に検出範囲を走査する垂直走査部を備えてもよい。垂直走査部は、例えば、軸261などの駆動機構である。
また、実施の形態4に係る熱画像センサは、複数の赤外線検出素子を回転させることにより、上記交差する方向の所定方向に対する角度を変更する機構を備えてもよい。このような機構は、例えば、回転機構264である。
実施の形態4に係る熱画像センサは、マトリクス状に赤外線検出素子が配置された熱画像センサ20に比べて安価であり、かつ、ライン状に赤外線検出素子が配置された熱画像センサ30よりも人の活動量の測定に適している。
(実施の形態5)
上記実施の形態4で説明した赤外線検出器は、空気調和装置100以外の装置に用いられてもよい。実施の形態5では、一例として赤外線検出器を備える照明装置について説明する。図75は、赤外線検出器301を備える照明装置300が天井面に設置された室内の概略図である。図75に示される室内には、一例として人102と机103とが存在する。
照明装置300が備える赤外線検出器301には、実施の形態4で説明した赤外線検出器101、200、210、220、230、240、250、および260のいずれが用いられてもよい。赤外線検出器301を備える照明装置300は、例えば、検出された人102の身長から個人を推定し、推定結果に基づいて照明制御を行うことができる。
例えば、人の好みの発光色が予め登録されていれば、照明装置300は、赤外線検出器301によって推定された人の存在に応じて、照明の色(発光色)を変えてもよい。また、シンプルな例では、照明装置300は、人の有無に応じて、照明をON・OFFしてもよい。また、赤外線検出器301によって人が室内でテレビを見ていることが検出された場合には、照明装置300は、照明が少し暗くなるように制御することで、テレビの視認性を向上させることができる。
また、赤外線検出器301を用いて人102が入眠したと判断できる場合は、照明装置300は、照明を暗くしたり、OFFしてもよい。逆に、人102が起床したと判断できる場合には、照明装置300は、照明を点灯させてもよい。このような制御により、利便性を向上させながら、消費電力を削減することができる。
なお、実施の形態5で説明した態様は一例であって、赤外線検出器301の検出結果は、照明装置300の他の制御に用いられてもよい。なお、図75では、照明装置300は天井面に設置されたが壁面に設置されてもよい。
また、実施の形態5では、赤外線検出器301が照明装置300に搭載される例について説明したが、赤外線検出器301が、他の装置に搭載されてもよい。赤外線検出器301は、例えば、テレビに搭載されてもよい。このようなテレビは、赤外線検出器301を用いてテレビの視認者を検出し、検出した視認者のプロファイルに応じて、テレビ番組を提案することや、視認者が検出されない場合にテレビの電源を自動的に切ることができる。
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態1〜5について説明したが、本発明は、このような実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態2では、主として複数の一次元受光センサ(素子列)が設けられ例について説明したが、複数の一次元受光センサは、離間して設けられる必要はない。図76は、複数の一次元受光センサが隣接して設けられる熱画像センサの例を示す図である。
例えば、図76の(a)に示される熱画像センサ2900aは、受光素子のY方向の位置がそろえられた2つの一次元受光センサを備える。そして、熱画像センサ2900aの2つの一次元受光センサは、X方向において隣接(近接)している。
また、図76の(b)に示される熱画像センサ2900bは、受光素子のY方向の位置が受光素子の縦幅(図中の「h」の長さ)の2分の1だけずらされた2つの一次元受光センサを備える。そして、熱画像センサ2900bの2つの一次元受光センサは、X方向において隣接している。
また、図76の(c)に示される熱画像センサ2900cは、受光素子のY方向の位置が受光素子の縦幅(図中の「h」の長さ)の4分の1ずつずらされた4つの一次元受光センサを備える。そして、熱画像センサ2900cの4つの一次元受光センサは、X方向において隣接している。
熱画像センサ2900bおよび熱画像センサ2900cのように受光素子の位置がずらされることにより、上述した高解像度化が可能となる。
また、本発明は、例えば、上述のような、空気調和装置、車載空気調和装置、照明装置、およびテレビなどの電気機器(家電機器)として実現されてもよい。また、本発明は、スマートフォンなどの情報処理端末をユーザインターフェース(ユーザインターフェース装置)として動作させるためのプログラムや、このようなプログラムが記憶された非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、上記各実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。例えば、空気調和装置が備える演算処理部の処理が、ユーザインターフェース(スマートフォン)によって行われてもよい。
また、上記各実施の形態において、熱画像センサ、演算処理部などの構成が一体のモジュールとして構成されていてもよいし、熱画像センサと、その他の構成が別体の装置として構成されていてもよい。
以上、一つまたは複数の態様に係る熱画像センサ(およびユーザインターフェース)について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。