本発明の一実施形態に係る貨幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。以下の説明における「前」は操作者側、「後」は操作者とは反対側、「左右」は操作者から見て左右である。
図1は本実施形態に係る貨幣処理装置10を示すものである。この貨幣処理装置10は、前方に開口する直方体の箱状の筐体11と、筐体11に対し水平前後方向に引き出しおよび押し込み可能な貨幣処理ユニット12とを有している。貨幣処理ユニット12は、その前部が常時露出して貨幣処理装置10の前部を構成する装置前部構成部21となっており、その前後方向の中間部から後部が通常は筐体11内に収納され筐体11に覆われる図2および図3に示す内部ユニット部22となっている。内部ユニット部22は、図2および図3に示すように筐体11から引き出されて外部に露出する。
貨幣処理ユニット12は上部が硬貨の入出金処理を行う硬貨処理部31となっており、上下方向の中間部から下部が紙幣の入出金処理を行う紙幣処理部32となっている。よって、装置前部構成部21も、硬貨処理部31を構成する硬貨処理部前部構成部34と、紙幣処理部32を構成する紙幣処理部前部構成部35とに分けられる。また、内部ユニット部22も、硬貨処理部31を構成する硬貨処理部内部構成部37と、紙幣処理部32を構成する紙幣処理部内部構成部38とからなっている。硬貨処理部内部構成部37の前部には、硬貨を収納する図2に示す硬貨カセット39(貨幣カセット)が着脱可能に設けられており、紙幣処理部内部構成部38の前部には、紙幣を収納する紙幣カセット40(貨幣カセット)が着脱可能に設けられている。
装置前部構成部21の上面つまり硬貨処理部前部構成部34の上面には、外部から入金硬貨が投入される硬貨投入部41が設けられている。硬貨処理部前部構成部34と紙幣処理部前部構成部35との間には、前面から後方に凹む載置凹部42が形成されており、この載置凹部42には、貨幣処理装置10から放出された出金硬貨を受け入れる図示略の受け皿が挿入されて載置される。紙幣処理部前部構成部35の上部の前面には、外部から入金紙幣が投入されるとともに外部に出金紙幣を取り出し可能に出金する紙幣入出金部43が設けられている。貨幣処理ユニット12内には、貨幣処理装置10を制御する制御部44が設けられている。
また、筐体11の上部の前端部には、入出力装置45が取り付けられている。入出力装置45には、操作者に向け画面表示を行うとともに操作者による操作入力を受け付けるタッチパネル式の操作表示部46(操作手段)と、操作者に向け報知等の音声出力を行う音声出力部47(報知手段)とが設けられている。
筐体11と、貨幣処理ユニット12の内部ユニット部22とは、図示略のスライドレールで連結されており、これにより、貨幣処理ユニット12は筐体11に対し水平前後方向にスライド可能となるように連結されている。
貨幣処理ユニット12は、筐体11に最も押し込まれた図1に示す所定の収納位置にあるとき、装置前部構成部21が筐体11の前面に当接し内部ユニット部22の全体が筐体11に覆われている。また、貨幣処理ユニット12は筐体11から最も引き出された図3に示す所定の最大引出位置にあるとき、筐体11との連結状態を維持したまま、内部ユニット部22を最大限露出させる。筐体11には、貨幣処理ユニット12が収納位置にあるか否かを検出する収納位置検出センサ48(位置検出手段)が設けられている。収納位置検出センサ48は、貨幣処理ユニット12が収納位置に位置するとオンされ、貨幣処理ユニット12が収納位置にないとオフされるリミットスイッチである。
筐体11の下部には、前方に延出するようにラックギア51が取り付けられており、貨幣処理ユニット12の下部には、このラックギア51に沿って電動で移動する移動駆動部52が取り付けられている。移動駆動部52がラックギア51に沿って移動することにより、移動駆動部52と一体に設けられた貨幣処理ユニット12が筐体11に対し引き出し方向に移動し、押し込み方向にも移動する。
移動駆動部52とラックギア51とが、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して図1に示す収納位置から図2に示す所定の切替引出位置(所定の引出位置)まで電動で引き出し方向に移動させる移動機構53を構成している。切替引出位置は、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する移動可能全範囲である収納位置と図3に示す最大引出位置との間の位置となっている。
移動機構53は、図2に示す切替引出位置よりも若干後側の切替押込位置(所定の押込位置)から図1に示す収納位置までの範囲にある貨幣処理ユニット12を筐体11に対して図1に示す収納位置まで電動で押し込み方向に移動させる。切替押込位置も、収納位置と最大引出位置との間の位置となっている。
図4に示すように、移動駆動部52は、電動の引出・押込駆動モータ61(引出モータ,押込モータ)と、電動のロック・噛合切替モータ62(ロックモータ)と、ロック・噛合切替モータ62で駆動されて支持軸64を中心に回動する作動部材65とを有している。引出・押込駆動モータ61は、貨幣処理ユニット12の走行駆動用のモータである。作動部材65は、支持軸64と平行をなす作動ピン66を有している。作動部材65は、ロック・噛合切替モータ62で駆動されて作動ピン66を支持軸64を中心に旋回させる。移動駆動部52は、図5に示すように作動ピン66に係合するロック部材71を有している。
ロック部材71は、板材から形成されており、作動部材65の支持軸64を中心に回動する。ロック部材71は、前後方向に延在しており、後端部に鉤状部73が形成されている。鉤状部73には支持軸64とは反対側に面取り74が形成されている。ロック部材71には、支持軸64の鉤状部73とは反対側に、支持軸64を中心とする円弧状の押圧溝75が形成されており、この押圧溝75に作動部材65の作動ピン66が挿入されている。ロック部材71には、押圧溝75の支持軸64とは反対側に支持軸64を中心とする円弧状の規制溝76が形成されており、この規制溝76には、貨幣処理ユニット12に位置固定で設けられたストッパピン77が挿入されている。ロック部材71には、鉤状部73とは反対側の端部に前方に突出する突起部78が形成されている。
図1に示すように貨幣処理ユニット12が収納位置にあるとき、図5に示すようにロック部材71は、全体として前後方向に沿う姿勢であり、鉤状部73の先端側にあって側方に突出するロック片部79が、筐体11側に位置固定で設けられたロックピン81(係合部)の後側に位置している。これにより、ロック部材71は、鉤状部73でロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12の前方への移動を規制するロック状態となる。言い換えれば、貨幣処理ユニット12に回動可能に設けられたロック部材71は、ロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12を筐体11にロックする。ロック部材71には、鉤状部73をロックピン81に係合させる方向に付勢力を付与するロック部材付勢バネ82の一端が係止されている。ロック部材71は、ロック部材付勢バネ82で付勢されて規制溝76のラックギア51とは反対側の端部をストッパピン77に当接させている。ロック部材71は、この位置が、前後方向に沿いロック片部79および面取り74の左右方向の位置をロックピン81に合わせるロック位置となる。このときのロック部材71の状態がロック状態である。
作動部材65には、支持軸64の作動ピン66とは反対側に長穴85が形成されており、図6および図7に示すように、この長穴85に連結ピン86が挿入されている。この連結ピン86は、移動駆動部52に設けられており、同じく移動駆動部52に設けられたL字状のカム部材91の一端に固定されている。カム部材91には、連結ピン86とは反対の他端にカム92が固定されている。カム部材91は、連結ピン86とカム92との間が、図6に示すロック・噛合切替モータ62の駆動軸93に固定されており、この駆動軸93を中心にこれと一体に回動する。その結果、上記した作動部材65は、ロック・噛合切替モータ62によってカム部材91を介して駆動される。カム部材91には図7に示すように検出片部94が設けられている。
移動駆動部52には、図6に示す引出・押込駆動モータ61の駆動により支持軸101を中心に回転する駆動ギア102が設けられている。移動駆動部52には、カム部材91および駆動ギア102の隣に回動部材105が設けられている。回動部材105は、駆動ギア102を支持する支持軸101を中心に回動するように支持されている。回動部材105は、支持軸106を中心に回転可能に設けられたピニオンギア107と、カム部材91側に配置されてカム92に当接するカムフォロア108とを有している。
図示は略すが、駆動ギア102には、外周部に円形に配列された歯が形成されており、ピニオンギア107にも、外周部に円形に配列された歯が形成されている。ピニオンギア107は、駆動ギア102に常時動力伝達可能に噛み合っており、よって、引出・押込駆動モータ61で駆動されて支持軸106を中心に回転する。言い換えれば、引出・押込駆動モータ61がピニオンギア107を回転させる。
図示は略すが、ラックギア51にも、前後方向に直線状に配列された歯がピニオンギア107側の側部に形成されている。ピニオンギア107は、回動部材105の回動によりラックギア51に対し近接および離間可能となっており、図6および図7に示す離間時にはラックギア51に噛み合うことはない。他方、ピニオンギア107は、図8に示す近接時には動力伝達可能にラックギア51に噛み合う。回動部材105は、カムフォロア108を常時カム92に当接させるように図示略の回動部材付勢バネによってカム部材91の方向に付勢されている。
カム部材91は、図6,図7に示す位置が待機位置となっており、カム部材91がこの待機位置にあるとき、これに連動するように連結された作動部材65も待機位置にある。このとき、図7に示すようにカム部材91の検出片部94が待機位置センサ111で検出されている。カム部材91が待機位置にあるとき、回動部材105は、図示略の回動部材付勢バネの付勢力でピニオンギア107をラックギア51から離間させている。この位置が回動部材105の待機位置となっている。図5〜図7に示すように作動部材65が待機位置にある状態で、ロック部材71が図5に示すようにロック位置にあるとき、作動部材65の作動ピン66は、ロック部材71の押圧溝75の中間位置に位置する。このため、ロック部材71は、ロック片部79をロックピン81の真後からラックギア51側に退避させるように回動可能となっている。
カム部材91は、図6に示すロック・噛合切替モータ62の駆動で待機位置から回動させられると、そのカム92でカムフォロア108を押圧する。これにより、カムフォロア108を有する回動部材105が支持軸101を中心にラックギア51の方向に回動し、図8に示すようにそのピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせる。これと並行して、カム部材91に連結ピン86を介して連結された作動部材65が、待機位置に位置する状態から支持軸64を中心に回動して、図9に示すように、その作動ピン66をロック部材71の押圧溝75のラックギア51とは反対側の端部に近接させる。つまり、図8に示すようにカム部材91が回動部材105のピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせると、その時点で、図9に示すように作動ピン66が押圧溝75のラックギア51とは反対側の端部に所定の距離まで近づく。このときの、カム部材91、作動部材65および回動部材105の位置がピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせるギア噛合位置となる。図8に示すように、カム部材91、作動部材65および回動部材105がギア噛合位置にあるとき、カム部材91の検出片部94がギア噛合位置センサ112で検出されることになる。
カム部材91は、ロック・噛合切替モータ62の駆動でギア噛合位置からさらに回動しても、カム92の形状により、回動部材105をギア噛合位置に維持する。カム部材91が、ギア噛合位置からさらに回動すると、これに連動する作動部材65は、図10に示すように、作動ピン66を押圧溝75のラックギア51とは反対側の端部に当接させて、押圧溝75つまりロック部材71を押圧して、これをロック部材付勢バネ82の付勢力に抗して回動させる。回動させられたロック部材71は、ロック片部79をロックピン81の真後から退避させて鉤状部73のロックピン81への係合を解除することになり、貨幣処理ユニット12の筐体11へのロックを解除するロック解除状態となる。
以上により、ロック・噛合切替モータ62は、カム部材91および回動部材105を介してピニオンギア107を移動させてピニオンギア107とラックギア51とを噛み合わせたり、噛み合いを解除したりする。また、ロック・噛合切替モータ62は、カム部材91および作動部材65を介してロック部材71を回動させて、ロック部材71とロックピン81とを係合させたり、係合を解除したりする。
図10に示すようにロック解除状態にあるときの作動部材65およびロック部材71の位置と、作動部材65およびロック部材71をロック解除状態とする図11および図12に示すカム部材91の位置とが、貨幣処理ユニット12の筐体11へのロックを解除するロック解除位置となる。図11および図12に示すようにカム部材91がロック解除位置に位置すると、カム部材91の検出片部94が、図12に示すようにロック解除位置センサ113で検出されることになる。なお、カム部材91がギア噛合位置からロック解除位置まで回動しても、上述したように、カム92の形状により、回動部材105はギア噛合位置に維持される。
ここで、図9に示すように作動部材65がギア噛合位置にあり、ロック部材71がロック位置にあるとき、作動部材65の作動ピン66は、ロック部材71の押圧溝75のラックギア51とは反対側に位置する。この状態で、一旦引き出された貨幣処理ユニット12が筐体11に対し押し込み方向に移動すると、収納位置に位置する手前で、ロック部材71が面取り74を筐体11側のロックピン81に当接させる。すると、ロック部材71が、貨幣処理ユニット12の移動にともなって、面取り74の傾斜によりロック部材付勢バネ82の付勢力に抗して回動し、鉤状部73のロック片部79をロックピン81から側方に逃がす。そして、ロック片部79がロックピン81よりも後側に位置すると、ロック部材71がロック部材付勢バネ82の付勢力によってストッパピン77を規制溝76のラックギア51とは反対側の端部に当接させるロック位置に戻り、ロック状態となる。
図6に示すロック・噛合切替モータ62、カム部材91、作動部材65、図5に示すロック部材71、ストッパピン77およびロック部材付勢バネ82が、筐体11に押し込まれた収納位置で貨幣処理ユニット12を筐体11に対してロック状態とし、このロック状態を電動により解除するロック機構115(ロック手段)を構成している。
図13に示すように、貨幣処理ユニット12には、ロック機構115によるロック状態を手動により解除する手動ロック解除機構121(手動ロック解除手段)が設けられている。手動ロック解除機構121は、回動片部122を有するキーシリンダ123と、キーシリンダ123とは別体であり、対応するキーシリンダ123に差し込まれると回転可能となり、回転時に回動片部122を一体に回転させるキー124とを有している。
また、手動ロック解除機構121は、支持軸127で貨幣処理ユニット12の側面に回動可能に中間部が支持され、前端部が回動片部122に下側から当接可能な前後方向に沿う基端アーム128を有している。また、手動ロック解除機構121は、この基端アーム128の後端部に上端部が連結軸129で回転可能に連結されて貨幣処理ユニット12の側面に沿って下方に延出する中間アーム130を有している。また、手動ロック解除機構121は、支持軸131で貨幣処理ユニット12の側面に回動可能に支持されるとともに中間アーム130の下端部に後部が連結軸132で連結される回動体133と、中間アーム130を回動体133の方向に付勢するアーム付勢バネ134とを有している。回動体133には、下方に延出する押圧片部135が形成されている。
また、手動ロック解除機構121は、支持軸140で貨幣処理ユニット12の下面に回動可能に支持される水平回動体142を有している。水平回動体142は、そのラックギア51とは反対側の端部にある当接部141が回動体133の押圧片部135に後側から当接可能に対向している。水平回動体142には、そのラックギア51側の端部に長穴143が形成されており、その後部に係合ピン144が設けられている。
また、手動ロック解除機構121は、水平回動体142のラックギア51側にあって支持軸147で貨幣処理ユニット12の下面に回動可能に支持される水平回動体149を有している。水平回動体149は、そのラックギア51とは反対側の端部の連結ピン148が長穴143に挿入されている。水平回動体149には、ラックギア51側の端部に当接ピン150が設けられており、この当接ピン150がロック部材71の突起部78のラックギア51側に配置されている。
また、手動ロック解除機構121は、水平回動体149をその当接ピン150がロック部材71の突起部78から離れる方向に付勢する回動体付勢バネ153を有しており、水平回動体142の後側にあって係合ピン144に係合する係合凹部154が形成された規制部材155を有している。規制部材155には、左右方向に延在する二箇所の長穴158が形成されており、これら長穴158には貨幣処理ユニット12の下面のガイドピン159が挿入されている。規制部材155は、左右方向に移動することになり、長穴158によってガイドピン159つまり貨幣処理ユニット12に対する移動許容範囲が決められている。
手動ロック解除機構121は、キーシリンダ123からキー124が抜かれた待機状態にあるとき、図13に示すように、中間アーム130がアーム付勢バネ134の付勢力によって押し下げられており、その結果、この中間アーム130に連結軸129を介して連結された基端アーム128が前端部をキーシリンダ123の回動片部122に下側から当接させて停止している。加えて、中間アーム130に連結軸132を介して連結された回動体133は、押圧片部135を前側に位置させている。この状態での位置が、基端アーム128、中間アーム130および回動体133の待機位置となっている。
また、手動ロック解除機構121が待機状態にあるとき、水平回動体149が回動体付勢バネ153の付勢力で、待機位置にあるロック部材71の突起部78に当接ピン150を当接または近接させる待機位置にある。また、水平回動体149の連結ピン148に連結された水平回動体142は、当接部141を待機位置にある回動体133の押圧片部135に近接させる待機位置にある。さらに、水平回動体142は、規制部材155をロック部材71から離間させる待機位置に位置させている。
このような待機状態から、キーシリンダ123に差し込まれたキー124で回動片部122が回動させられて下がると、支持軸127に支持された基端アーム128の前部を下方に押し下げ、後部を上方に押し上げる。すると、基端アーム128がこれに連結軸129で連結された中間アーム130をアーム付勢バネ134の付勢力に抗して引き上げる。すると、中間アーム130に連結軸132を介して連結された回動体133が支持軸131を中心として押圧片部135を後方に移動させるように回動する。
すると、押圧片部135が、図14に示すように水平回動体142の当接部141を後側に押圧し、その結果、水平回動体142は、ラックギア51側の長穴143を前側に移動させるように支持軸140を中心に回動する。これにより、水平回動体142の長穴158に連結ピン148で係合する水平回動体149が、連結ピン148を前側に移動させることになり、支持軸147を中心として当接ピン150をラックギア51とは反対側に移動させるように回動体付勢バネ153の付勢力に抗して回動する。この回動で、当接ピン150は、ロック部材71の突起部78をラックギア51とは反対側に押圧することになり、ロック部材71を支持軸64を中心に回動させる。すると、ロック部材71がロック解除位置となり、貨幣処理ユニット12の筐体11へのロックを解除する。このとき、規制部材155は、長穴158がガイドピン159に対し移動可能な範囲でラックギア51側に移動することになり、ガイドピン159に当接してそれ以上の移動が規制される。これにより、水平回動体142,149つまりロック部材71の必要以上の回動を規制する。
以上の手動ロック解除状態から、図13に示すキーシリンダ123に差し込まれたキー124で回動片部122が逆方向に回動させられて上がると、これに追従して基端アーム128が回動可能になる。その結果、アーム付勢バネ134の付勢力によって、中間アーム130が引き下げられて待機位置に戻り、中間アーム130に連結軸129で連結された基端アーム128が、後端部を下げ、前端部を上げる待機位置に戻る。また、この中間アーム130の下降により、これに連結軸132を介して連結された回動体133が支持軸131を中心として押圧片部135を前方に移動させるように回動して待機位置に戻る。
すると、押圧片部135による押圧が解除された水平回動体142およびこれに連結された水平回動体149が、回動体付勢バネ153の付勢力で戻される。これにより、水平回動体149が、ロック部材71の突起部78への当接ピン150の押圧を解除し、ロック部材71をロック部材付勢バネ82の付勢力で待機位置に戻しつつ、待機位置に戻る。また、水平回動体142が待機位置に戻り、規制部材155を待機位置に戻す。
図2に示すように、筐体11に設けられたラックギア51の長さは、貨幣処理ユニット12を切替引出位置まで引き出し方向に移動させることができる長さであって、図3に示す最大引出位置までは移動させることができない長さに設定されている。つまり、貨幣処理ユニット12が図2に示す切替引出位置まで移動した時点で、図15(a)に示すようにピニオンギア107はラックギア51の前端位置に噛み合っている。貨幣処理ユニット12には、ラックギア51の背面に接触するリミットスイッチ161(位置検出手段)が設けられている。リミットスイッチ161は、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する位置を検出するものである。
ラックギア51の前端位置の背面にはピニオンギア107側に凹む切欠部162が形成されており、その結果、切欠部162以外の背面を構成する主体部163は、切欠部162よりもピニオンギア107とは反対側に位置している。貨幣処理ユニット12が収納位置から切替引出位置までの範囲にあるとき、リミットスイッチ161は主体部163に接触してオンされており、貨幣処理ユニット12が引き出し方向に移動して切替引出位置に位置すると、リミットスイッチ161は切欠部162に接触してオフされることになる。つまり、貨幣処理ユニット12の引き出し方向への移動中に、リミットスイッチ161がオンからオフされる位置が切替引出位置となる。図1に示す収納位置から図3に示す最大引出位置までが、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する移動可能な全範囲である移動可能全範囲となっており、切替引出位置は、この移動可能全範囲の中間位置となっている。
貨幣処理ユニット12が図3に示す最大引出位置あるいはその近傍から押し込み方向に移動するとき、図15に示すリミットスイッチ161はラックギア51に接触せずにオフされており、所定の切替押込位置に位置すると、リミットスイッチ161は主体部163に乗り上げてオンされることになる。つまり、貨幣処理ユニット12の押し込み方向への移動中にリミットスイッチ161がオフからオンされる位置が切替押込位置となる。
図16に示すように、貨幣処理ユニット12には、筐体11に対する貨幣処理ユニット12の押し込み方向への移動時に、収納位置の手前で貨幣処理ユニット12の移動に抵抗を発生させるダンパ171が設けられている。ダンパ171は、シリンダ172とシリンダ172内で摺動するピストン173と、ピストン173に連結されてシリンダ172から突出するロッド174を有しており、ロッド174が後方に延出する姿勢で貨幣処理ユニット12にシリンダ172において取り付けられている。シリンダ172内には高圧ガスが充填されており、このガスの圧力でロッド174がシリンダ172から突出する方向に付勢されている。ダンパ171は、筐体11に対する貨幣処理ユニット12の押し込み方向への移動時に、収納位置の手前で、図16に示すようにロッド174が筐体11の内壁に当接してピストン173とともに停止することになり、貨幣処理ユニット12とともに移動するシリンダ172に対して相対移動する。この相対移動により、ピストン173がガスを圧縮することになり、ガスからの反力で貨幣処理ユニット12の移動に抵抗を発生させて速度を低下させる。
次に、貨幣処理装置10の作動について説明する。
貨幣処理装置10は貨幣処理を行う通常使用状態では、貨幣処理ユニット12が図1に示すように収納位置にある。また、図5に示すように、ロック部材71がロック部材付勢バネ82の付勢力で、規制溝76のラックギア51とは反対側の端部をストッパピン77に当接させるロック位置にある。ロック位置にあるロック部材71は、鉤状部73のロック片部79が筐体11に位置固定で設けられたロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12の前方への移動を規制するロック状態となっている。
また、この通常使用状態では、図6,図7に示すように、カム部材91、作動部材65および回動部材105が待機位置にある。これにより、カム部材91および回動部材105が、ラックギア51とピニオンギア107との噛み合いを解除している。待機位置にある作動部材65は、図5に示すように、作動ピン66をロック位置にあるロック部材71の押圧溝75の中間位置に位置させている。また、図7に示すように、待機位置にあるカム部材91は、その検出片部94が待機位置センサ111で検出されている。図5〜図7に示す状態が、移動機構53の待機状態となっている。加えて、通常使用状態では、手動ロック解除機構121が図13に示す待機状態にあり、水平回動体149の当接ピン150がロック部材71を押圧しない状態となっている。
この状態から、貨幣処理ユニット12の引き出しを行う場合、操作者は、図1に示す操作表示部46に、貨幣処理ユニット12の引き出しを行うために必要な所定の引き出し指示操作入力を行う。操作表示部46は、貨幣処理装置10が貨幣処理を行っていないことを条件に、この引き出し指示操作入力を受け付ける。制御部44は、操作表示部46がこの引き出し指示操作入力を受け付けると、ロック・噛合切替モータ62を正回転させて、それまで図7に示すように待機位置にあって検出片部94が待機位置センサ111で検出されていた状態のカム部材91を、図12に示すように検出片部94がロック解除位置センサ113で検出されるまで回転させる。すると、カム部材91は、図8に示すようにそのカム92でカムフォロア108を押圧して、カムフォロア108を有する回動部材105を回動させて、回動部材105のピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせるギア噛合位置となる。
カム部材91および作動部材65は、上記のギア噛合位置を越えてさらに回動する。このとき、カム部材91は、そのカム92の形状によって回動部材105を回動させず、ピニオンギア107をラックギア51に適正に噛み合う状態に維持する。一方で、カム部材91とともに図9に示すギア噛合位置を越えてさらに回動する作動部材65は、図10に示すように作動ピン66を押圧溝75のラックギア51とは反対側の端部に当接させて、ロック部材71を押圧してロック部材付勢バネ82の付勢力に抗して回動させる。
このように回動させられたロック部材71は、ロック片部79をロックピン81の真後から退避させて鉤状部73のロックピン81への係合を解除することになり、貨幣処理ユニット12の筐体11へのロックを解除するロック解除状態となる。つまり、図12に示すように検出片部94がロック解除位置センサ113で検出されるまでカム部材91を回動させると、作動部材65がロック部材71をロック解除状態とする。図10〜図12に示す状態が、移動機構53のロック解除状態となっている。
次に、制御部44は、移動機構53の図11に示す引出・押込駆動モータ61を駆動してピニオンギア107を正回転させる。すると、ピニオンギア107が、筐体11に取り付けられているラックギア51に噛み合っていることから、ラックギア51に沿って前方に移動することになり、ピニオンギア107を含む移動駆動部52が取り付けられた貨幣処理ユニット12が筐体11に対して引き出し方向に移動する。図2に示すように貨幣処理ユニット12が筐体11に対して切替引出位置まで移動すると、図15に示すリミットスイッチ161が主体部163に接触するオン状態から、図15(a)に示すように切欠部162に接触するオフ状態となる。
このリミットスイッチ161のオン状態からオフ状態への切り替わりで、制御部44は、貨幣処理ユニット12が切替引出位置に位置したことを検出し、引出・押込駆動モータ61を停止させる。すると、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する引き出し方向への移動が停止させられる。ここで、制御部44は、移動機構53により貨幣処理ユニット12の引き出し方向への移動を行っている最中には、音声出力部47を駆動して、貨幣処理ユニット12が自動引き出し中である旨の報知音声を発生させている。
図2に示すように、貨幣処理ユニット12が筐体11に対して切替引出位置まで移動すると、硬貨を収納する硬貨カセット39が、硬貨処理部内部構成部37から外部に取り外し可能となり、外部から硬貨処理部内部構成部37に装填可能となる。また、紙幣を収納する紙幣カセット40が、紙幣処理部内部構成部38から外部に取り外し可能となり、外部から紙幣処理部内部構成部38に装填可能となる。つまり、切替引出位置は、少なくとも貨幣処理ユニット12内の硬貨カセット39および紙幣カセット40が取り出し可能となる位置となっている。
上記のように切替引出位置で引出・押込駆動モータ61を停止させると、制御部44は、ロック・噛合切替モータ62を逆回転させて、それまで図12に示すように検出片部94がロック解除位置センサ113で検出されていた状態のカム部材91を、図7に示すように検出片部94が待機位置センサ111で検出されるまで回動させて待機位置に戻す。すると、カム部材91と連動して回動する作動部材65が、図5に示すようにロック部材71の押圧を解除してロック部材71をロック部材付勢バネ82の付勢力でロック位置に戻し、その後、カム部材91が図6に示すようにそのカム92によるカムフォロア108の押圧を解除して、回動部材105を図示略の回動部材付勢バネの付勢力で回動させる。すると、図15(b)に示すように、回動部材105のピニオンギア107がラックギア51から離れる。つまり、ピニオンギア107とラックギア51との噛み合いが解除される。
この状態で、貨幣処理ユニット12は、筐体11に対して手動で図3に示す最大引出位置までの移動が可能となる。上記のように貨幣処理ユニット12が切替引出位置に位置した時点でピニオンギア107をラックギア51から離間させていることから、貨幣処理ユニット12が図2に示す切替引出位置から図3に示す最大引出位置に向けて引き出されても、引出・押込駆動モータ61の負荷を一切受けることはない。つまり、切替引出位置からの貨幣処理ユニット12の引き出しの操作力を軽減できる。
一方、上記した待機状態にある移動機構53のロック部材71に対して手動でロックを解除する場合、操作者は、図13に示すキーシリンダ123にキー124を差し込んで、図13に矢印で示すように回転させる。すると、回動片部122が基端アーム128の前端部を下方に押し下げ後端部を上方に押し上げて、中間アーム130をアーム付勢バネ134の付勢力に抗して引き上げる。これにより、回動体133が押圧片部135を後方に移動させるように回動する。すると、図14に示すように、押圧片部135で当接部141が押圧されて、水平回動体142がラックギア51側の端部を前側に移動させるように回動し、水平回動体149が当接ピン150をラックギア51から離すように回動する。当接ピン150は、ラックギア51から離れるように移動すると、ロック部材71の突起部78をラックギア51から離す方向に押圧することになる。その結果、ロック部材71をその鉤状部73がラックギア51に近づくように回動させることになって、鉤状部73によるロックピン81への係合を解除する。図14に示す状態が、移動機構53の手動ロック解除状態となっている。
これにより、筐体11から貨幣処理ユニット12が手動で引き出し可能となる。この手動によるロック解除時に、ロック・噛合切替モータ62を回転させることはなく、カム部材91、作動部材65および回動部材105は待機位置に位置する。このため、図14に示すように、ピニオンギア107とラックギア51とが噛み合うことはなく、引出・押込駆動モータ61が手動による引き出しおよび押し込みの負荷とはならない。この手動によるロック解除時についても、制御部44は、筐体11からの貨幣処理ユニット12の引き出し位置を、収納位置検出センサ48およびリミットスイッチ161により検出する。
貨幣処理ユニット12が、筐体11に対して、上記のように切替引出位置まで電動で移動させられた後、切替引出位置からそのまま手動で押し込まれたり、必要により切替引出位置から最大引出位置までの範囲で手動で引き出されてから手動で押し込まれたり、あるいは、手動によるロック解除後に、手動で切替引出位置から最大引出位置までの範囲に引き出されてから手動で押し込まれたりすると、貨幣処理ユニット12が、切替引出位置よりも押し込み方向奥側の切替押込位置を通過することになる。
このような通過時に、貨幣処理ユニット12が切替押込位置に位置すると、図15に示すリミットスイッチ161が、切欠部162に接触するオフ状態から主体部163に接触するオン状態となる。このリミットスイッチ161のオフ状態からオン状態への切り替わりで、制御部44は、貨幣処理ユニット12が切替押込位置に位置したことを検出し、その後、リミットスイッチ161のオン状態が維持されている場合に限り、貨幣処理ユニット12の押し込みを行うために必要な所定の押し込み指示操作入力を操作表示部46にて受け付ける状態となる。そして、電動による押し込み方向移動が可能である旨を、操作表示部46に表示させる。
ここで、手動によるロック解除時に、制御部44は、筐体11から貨幣処理ユニット12が引き出されたことが収納位置検出センサ48で検出されると、その後、リミットスイッチ161がオン状態からオフ状態に切り替わらなくても、つまり貨幣処理ユニット12が切替引出位置まで引き出されなくても、操作表示部46への所定の押し込み指示操作入力を受け付ける状態となり、電動による押し込み方向移動が可能である旨を、操作表示部46に表示させる。
操作表示部46が押し込み指示操作入力を受け付ける状態で、貨幣処理ユニット12の押し込み方向への移動を電動により行わせる場合、操作者は、操作表示部46に、押し込み指示操作入力を行う。制御部44は、操作表示部46がこの押し込み指示操作入力を受け付けると、それまで図7に示すように待機位置にあって検出片部94が待機位置センサ111で検出されていた状態のカム部材91を、図8に示すように検出片部94がギア噛合位置センサ112で検出されるまで、ロック・噛合切替モータ62を正回転させる。すると、カム部材91が、そのカム92でカムフォロア108を押圧して、カムフォロア108を有する回動部材105を回動させて、ギア噛合位置となり、図8および図9に示すように回動部材105のピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせる。つまり、制御部44は、操作表示部46が押し込み指示操作入力を受け付ける前には、ラックギア51とピニオンギア107との噛み合いを解除しており、操作表示部46が押し込み指示操作入力を受け付けるとラックギア51とピニオンギア107とを噛み合わせる。
次に、制御部44は、移動機構53の引出・押込駆動モータ61を駆動してピニオンギア107を逆回転させる。すると、ピニオンギア107が、筐体11に取り付けられているラックギア51に噛み合っていることから、ラックギア51に沿って後方に移動することになり、ピニオンギア107を含む移動駆動部52が取り付けられた貨幣処理ユニット12が、筐体11に対して押し込み方向に電動により移動する。図8および図9に示す状態が、移動機構53の押し込み中状態となっている。
電動で押し込み方向に移動する貨幣処理ユニット12が筐体11に対して収納位置まで移動すると、貨幣処理ユニット12を収納位置検出センサ48が検出する。すると、制御部44は、引出・押込駆動モータ61を停止させる。これにより、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する押し込み方向への移動が停止させられる。ここで、移動機構53により貨幣処理ユニット12の押し込み方向への移動を行っている最中は、制御部44が音声出力部47を駆動して、貨幣処理ユニット12が自動押し込み中である旨の報知音声を音声出力部47により発生させる。
ここで、貨幣処理ユニット12が、リミットスイッチ161のオフからオンへの切り替わりで検出される切替押込位置から、収納位置検出センサ48で検出される収納位置を含まない押し込み方向奥側の範囲にあることを、リミットスイッチ161のオン、かつ、収納位置検出センサ48のオフで検出している場合に限り、操作表示部46が、押し込み指示操作入力を受け付ける状態となる。このため、貨幣処理ユニット12は、切替押込位置から収納位置の所定距離手前までのいずれの位置にあっても引出・押込駆動モータ61の電動による押し込み方向への移動が可能となっている。
他方、貨幣処理ユニット12は、一旦、電動で切替引出位置まで引き出されると、それ以後、押し込み指示操作入力が入力されなければ、収納位置まで手動での押し込みも可能となっている。また、貨幣処理ユニット12は、手動で引き出された場合には、引き出しの位置に拘わらず手動での押し込みが可能となっている。このように手動での押し込みが可能な状態では、押し込み指示操作入力が入力されなければ、図15(b)に示すように、ピニオンギア107をラックギア51から離間させていることから、引出・押込駆動モータ61の負荷を受けずに貨幣処理ユニット12の移動が可能となる。つまり、引き出しおよび押し込みの操作力を軽減できる。
電動および手動のいずれであっても、図9に電動の場合を示すように、収納位置に向けて貨幣処理ユニット12が筐体11に押し込まれると、収納位置に位置する手前で、貨幣処理ユニット12と一体に移動するロック部材71が面取り74を筐体11側のロックピン81に当接させる。すると、ロック部材71が、貨幣処理ユニット12の移動にともなって、面取り74の傾斜によりロック部材付勢バネ82の付勢力に抗して回動し、ロック片部79をロックピン81から逃がす。そして、ロック片部79がロックピン81よりも後側に位置すると、ロック部材71がロック部材付勢バネ82の付勢力によってロック位置に戻り、貨幣処理ユニット12が収納位置に位置すると同時に、ロック片部79がロックピン81の真後に位置するロック状態となる。
電動で押し込まれて貨幣処理ユニット12が収納位置に位置した場合、制御部44は、ロック・噛合切替モータ62を逆回転させて、それまで図8に示すように検出片部94がギア噛合位置センサ112で検出されていた状態のカム部材91を、図7に示すように検出片部94が待機位置センサ111で検出されるまで回動させて待機位置に戻す。すると、カム部材91が、図6および図7に示すようにそのカム92によるカムフォロア108の押圧を解除して、回動部材105を図示略の回動部材付勢バネの付勢力で回動させて待機位置に戻す。すると、回動部材105のピニオンギア107がラックギア51から離れ、これらの噛み合いが解除される。
なお、貨幣処理ユニット12を筐体11に押し込むと、貨幣処理ユニット12は、収納位置に位置する所定距離手前で、ダンパ171を筐体11に当接させて、押し込みに対する抵抗を発生させる。これにより、電動および手動のいずれにおいても、貨幣処理ユニット12を筐体11に押し込む場合に、収納位置の手前で、貨幣処理ユニット12の速度を低下させることができ、貨幣処理ユニット12が収納位置に位置する際に筐体11に衝突することにより生じる衝突音を抑制することができる。
以上に述べた本実施形態によれば、操作表示部46が所定の引き出し指示操作入力を受け付けると、移動機構53が貨幣処理ユニット12を筐体11に対して電動で所定の切替引出位置まで引き出し方向に移動させることになる。よって、貨幣処理ユニット12を筐体11から所定の切替引出位置まで引き出す必要がある保守作業の作業負荷軽減を図ることができる。
また、移動機構53が、ラックギア51と、このラックギア51に噛み合うピニオンギア107と、このピニオンギア107を回転させる電動の引出・押込駆動モータ61と、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する位置を検出する収納位置検出センサ48およびリミットスイッチ161とで構成されている。したがって、簡素かつ低コストな構成で、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して電動で所定の引出位置まで引き出し方向に移動させることができる。
また、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する移動可能全範囲の中間位置である所定の切替引出位置まで、移動機構53が貨幣処理ユニット12を電動で移動させる。よって、移動機構53は、所定の収納位置から中間の所定の切替引出位置までの範囲で貨幣処理ユニット12を引き出すことができれば良いため、より簡素化、低コスト化が図れる。
また、ロック機構115が収納位置で貨幣処理ユニット12を筐体11に対してロックしていると、ラックギア51とピニオンギア107との噛み合いは解除されている。よって、この状態から、手動により手動ロック解除機構121でロック機構115のロック状態を解除して、手動により貨幣処理ユニット12を引き出すようにしても、引出・押込駆動モータ61が負荷とならず、作業負荷軽減を図ることができる。
また、ロック機構115が、ロックピン81と、このロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12を筐体11に対しロックするロック部材71と、ロック部材71を回動させるロック・噛合切替モータ62とを備えるため、簡素かつ低コストな構成で、貨幣処理ユニット12を筐体11に対しロックおよびロック解除することができる。また、手動ロック解除機構121もロック部材71を回動させるため、簡素かつ低コストな構成で、手動によるロックおよびロック解除が可能となる。
また、貨幣処理ユニット12を筐体11に対してロックおよびロック解除するロック機構115のロック・噛合切替モータ62を用いてピニオンギア107を移動させてラックギア51とピニオンギア107とを噛み合わせたり、噛み合いを解除したりする。よって、ロック・噛合切替モータ62を、ロック機構115と、ラックギア51およびピニオンギア107の噛み合い状態を切り替える機構とで共用できる。したがって、より簡素かつ低コストな構成にできる。
また、移動機構53が貨幣処理ユニット12を筐体11に対して電動で引き出す所定の切替引出位置が、少なくとも貨幣処理ユニット12内の硬貨カセット39および紙幣カセット40が取り出し可能となる位置であるため、頻度の高い硬貨カセット39および紙幣カセット40の少なくとも一方の取り出しに必要な位置まで貨幣処理ユニット12を電動で引き出すことができる。よって、頻度の高い硬貨カセット39および紙幣カセット40の少なくとも一方の取り出しを含む保守作業の作業負荷軽減を図ることができる。
また、移動機構53により電動で貨幣処理ユニット12の引き出し方向への移動を行っている最中に、音声出力部47が報知を行うため、移動機構53により電動で貨幣処理ユニット12の移動を行っていることを周囲に報知することができる。
以上に述べた本実施形態によれば、操作表示部46が所定の押し込み指示操作入力を受け付けると、移動機構53が貨幣処理ユニット12を筐体11に対して電動で所定の収納位置まで押し込み方向に移動させることになる。よって、貨幣処理ユニット12を筐体11に押し込む必要がある保守作業の作業負荷軽減を図ることができる。
また、移動機構53が、ラックギア51と、このラックギア51に噛み合うピニオンギア107と、このピニオンギア107を回転させる電動の引出・押込駆動モータ61と、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する位置を検出する収納位置検出センサ48およびリミットスイッチ161とで構成されている。したがって、簡素かつ低コストな構成で、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して電動で所定の収納位置まで押し込み方向に移動させることができる。
また、操作表示部46が所定の押し込み指示操作入力を受け付ける前には、ラックギア51とピニオンギア107との噛み合いを解除しているため、移動機構53を使用せずに手動で貨幣処理ユニット12を筐体11に対して押し込む際に、引出・押込駆動モータ61が負荷とならず、作業負荷軽減を図ることができる。
また、中間の所定の切替押込位置から所定の収納位置までの範囲に貨幣処理ユニット12があることを収納位置検出センサ48およびリミットスイッチ161が検出している場合に限り、操作表示部46が所定の押し込み指示操作入力を受け付けることになる。よって、移動機構53は、中間の所定の切替押込位置から所定の収納位置までの範囲にある貨幣処理ユニットを所定の収納位置に押し込むことができれば良いため、より簡素化、低コスト化が図れる。
また、ダンパ171が、所定の収納位置の手前で貨幣処理ユニット12の移動に抵抗を発生させるため、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して所定の収納位置まで押し込む際に、収納位置の手前で貨幣処理ユニット12の速度を低下させることができる。
また、移動機構53により電動で貨幣処理ユニット12の押し込み方向への移動を行っている最中に、音声出力部47が報知を行うため、移動機構53により電動で貨幣処理ユニット12の移動を行っていることを周囲に報知することができる。
以上の実施形態では、移動機構53が、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11にラックギア51を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12に、ラックギア51に噛み合うピニオンギア107を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12に、ピニオンギア107を回転させる引出・押込駆動モータ61を設ける場合を例にとり説明した。しかしながら、筐体11に対し貨幣処理ユニット12を移動できれば良いことから、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12にラックギア51を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11に、ラックギア51に噛み合うピニオンギア107を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11に、ピニオンギア107を回転させる引出・押込駆動モータ61を設ける構成とすることも可能である。
また、以上の実施形態では、ロック機構115が、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11にロックピン81を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12に、ロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12を筐体11に対しロックするロック部材71を回動可能に設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12に、ロック部材71を回動させるロック・噛合切替モータ62を設ける場合を例にとり説明した。しかしながら、筐体11に対し貨幣処理ユニット12を移動不可にロックできれば良いことから、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12にロックピン81を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11に、ロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12を筐体11に対しロックするロック部材71を回動可能に設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11に、ロック部材71を回動させるロック・噛合切替モータ62を設ける構成とすることも可能である。
また、以上の実施形態においては、硬貨および紙葉を入出金させる貨幣処理装置10を例にとり説明したが、筐体11に対し貨幣処理ユニット12が引き出し可能となっている貨幣処理装置であれば、入金のみを行うもの、出金のみを行うもの、硬貨のみを取り扱うもの、紙幣のみを取り扱うもの等、他の種々の貨幣処理装置に適用可能である。