空気吹出装置が自動車に適用される場合、空気吹出装置は、一般に、自動車のダッシュボードの周辺等に設置される。ところが、近年、ダッシュボード及びその周辺の美観の向上等の観点から、空気吹出装置を設置し得る領域の広さが減少する傾向がある。そして、これに伴い、空気吹出装置の機能を損なうこと無く、空気吹出装置を出来る限り小型化することが望まれている。
しかし、前述した「従来装置1」のように空気の流量及び流れ方向を風向調整板によって調整する空気吹出装置においては、一般に、風向調整板の機能(流量及び流れ方向の調整)を維持しながら空気吹出装置の全体を小型化することは困難である。例えば、空気吹出装置の全体を不用意に小型化すると、風向調整板も小さくなるので、風向調整板が流れ方向を変更し得る空気の量が減少する。そして、これに起因し、空気吹出装置から吹き出される空気流の流れ方向が十分に調整されない場合がある。
更に、例えば、風向調整板の大きさを出来る限り維持しながら空気吹出装置を小型化すると、空気流の導出路に対して風向調整板が過度に大きくなるので、空気吹出装置を通過し得る空気の量が減少する。そして、これに起因し、空気吹出装置から吹き出される空気の流量が十分に確保されないことになる場合がある。
一方、前述した「従来装置2」のように、軸方向に対して傾斜した状態で複数のフィンが取り付けられた回転軸の回転角度によって吹出口から吹き出される空気の流れ方向を制御する方式を採用する空気吹出装置は、例えば従来装置1において採用されている風向調整板を必要としないので小型化が可能であるものの、吹出口から特定の方向に空気を吹き出すことが困難な場合がある。具体的には、このような空気吹出装置は、例えば、吹出口を正面から見て、左向き、右向き、左上方、左下方、右上方及び右下方には空気を吹き出すことが可能であるものの、真正面、正面上方及び正面下方の何れかの方向に空気を吹き出すことが困難な場合がある。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、空気吹出装置としての機能を損なうこと無く小型化することが可能であり且つ吹出口を正面から見て真正面、正面上方及び正面下方の何れの方向にも空気を吹き出すことが可能な空気吹出装置を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明に係る空気吹出装置(以下、「本発明装置」とも称呼される。)は、空気流路及び吹出口を画成する筐体と、前記空気流路の前記吹出口側の端部である下流側端部を経て前記吹出口から吹き出される空気の流れ方向を調整可能な風向調整ユニットと、を備える。
前記風向調整ユニットは、
前記吹出口の開口面と平行な回転軸、
前記回転軸の周りに偏心して回転可能な板体、及び、
前記回転軸に沿って並ぶ前記回転軸上の複数の位置において前記回転軸と傾斜して交差する互いに平行な板状の部材である複数のフィンからなるフィン配列、を有する。
上記板体は、上記回転軸に平行な長辺を有し、上記回転軸はその短辺の中心を通らない。典型的には、上記板体は、上記回転軸から一方にのみ突出した板状の突起である。上記フィン配列を構成する複数のフィンの間隔は、必ずしも均等である必要は無い。典型的には、上記フィン配列を構成する複数のフィンは、上記回転軸に沿って等間隔に並んでいる。上記フィン配列を構成する複数のフィンの上記回転軸に対する傾斜角度は特に限定されず、例えば、空気吹出装置に要求される吹き出し空気流の制御性能等を考慮して適宜定めることができる。
更に、上記フィン配列を構成する複数のフィンの大きさ及び形状は、例えば、空気吹出装置に要求される吹き出し空気流の制御性能等を考慮して適宜定められ得る。例えば、1つのフィン配列を構成する複数のフィンの全てが同一の大きさ及び形状を有していてもよい。或いは、1つのフィン配列において、異なる大きさ及び/又は形状を有する複数種の板状部材によって複数のフィンが構成されていてもよい。
前記筐体は、
前記板体が回転したときに前記板体が通過する領域である回転領域の前記回転軸よりも前記吹出口に近い側である下流側の領域に沿って湾曲した内部壁面である下流側内壁面によって前記下流側端部を画成する。
上記「下流側端部」は、上記のように、回転領域の回転軸よりも吹出口に近い側である下流側の領域に沿って湾曲した内部壁面である下流側内壁面によって画成される。この「回転領域に沿って湾曲」とは、回転領域において板体が回転可能な程度に僅かな隙間を空けて下流側内壁面と回転領域とが隣接していることを意味する。即ち、「回転領域に沿って湾曲」とは、下流側内壁面が回転領域に完全に外接することを意味するものではない。換言すると、下流側内壁面は、板体の端部と下流側内壁面とが干渉すること無く、板体が回転軸周りに回転することが可能であるように構成される。
更に、前記筐体は、
前記下流側内壁面を貫通して前記空気流路に開口し、且つ、「前記回転軸に直交する断面における前記開口面の一方の端部と前記回転軸とを結ぶ線分」と「前記開口面の他方の端部と前記回転軸とを結ぶ線分」とがなす角である開口角が180度未満の所定の角度となるように前記開口面を画成する。換言すれば、吹出口の開口面は、その高さ(即ち、上下方向(鉛直方向)における寸法)が上記回転領域の直径よりも小さいように構成される。
上記構成により、本発明に係る空気吹出装置の吹出口の形状として、例えば、高さ方向の長さが幅方向の長さよりも極めて小さい、細長い(アスペクト比が高い)長方形等を採用することができる。即ち、空気吹出装置の外観を、ダッシュボード及びその周辺の美観を考慮した形状とすることができる。更に、下流側内壁面の面積を大きく確保することができるので、吹き出し空気流の流れ方向がより精度良く制御され得る。即ち、吹き出し空気流の制御性能が高まる。
前記フィン配列は、
前記回転軸を通り且つ前記開口角を均等に二分する平面内に前記板体があるときに、前記開口角に該当する前記回転領域の部分領域として規定される2つの直通領域には存在せず、前記回転領域の前記直通領域ではない部分領域として規定される2つの側方領域に存在する。
上記構成によれば、回転軸が回転すると、板体及び複数のフィンも回転する。その結果、板体と複数のフィンと下流側内壁面とが回転領域内に画成する流路の向きが変化したり、当該流路の入口から出口に至る経路が変化したりする。筐体が画成する空気流路を通過して下流側端部に到達した空気は、回転領域内に形成された上記流路に沿って流れる(案内される)。即ち、上記空気は、上記流路によって案内された方向に「吹出口」から吹き出す。上記につき、幾つかの例を挙げて、より具体的に以下に説明する(より詳細には、具体的な実施形態の説明において後述する。)。
(1)先ず、板体が空気流路の軸線と平行であるとき(以下、「平行時」とも称呼される。)、空気流路を通過して下流側端部に到達した空気は、板体によって上下に分けられるものの、板体を挟むように板体に沿って(板体に平行に)流れ、吹出口から吹き出す。このように、板体は空気吹出装置から吹き出される空気流(以下、便宜上、「吹き出し空気流」とも称呼される。)の流れ方向の調整に実質的に寄与しない。
加えて、上述したように、フィン配列は2つの直通領域には存在しない。即ち、板体が空気流路の軸線と平行であるとき(平行時)、吹出口の開口面と回転軸との間の領域及び回転軸に対して当該領域と対称な領域にはフィンは存在しない。従って、平行時にはフィンによって偏向されること無く下流側端部を空気が通過することができるので、フィンもまた吹き出し空気流の流れ方向の調整に実質的に寄与しない。即ち、この場合、吹き出し空気流は吹出口の真正面に吹き出す。
(2)ところで、上述したように、下流側内壁面は回転領域の回転軸よりも下流側の部分に沿って湾曲している。従って、板体の回転軸とは反対側の端部(以下、「外側端部」とも称呼される。)が下流側内壁面に対向しているとき(板体が空気流路の軸線と垂直であるとき(以下、「垂直時」とも称呼される。)を含む)、下流側端部の板体が存在する側(板体側)は実質的に塞がれる。従って、空気は下流側端部の板体が存在しない側(反板体側)を通って開口面に到達し、吹出口から外部に吹き出す。このとき、当該空気の流れは下流側内壁面の一方(反板体側)のみに沿って偏向されて開口面へと案内されるので、吹き出し空気流は真正面ではなく吹出口を正面から見て板体側(正面上方又は正面下方)に偏向される。
上記において、吹き出し空気流が開口面を通過する直前の流路(以下、「吹出直前流路」とも称呼される。)にフィン配列が存在する場合は、当該フィン配列を構成する複数のフィンの傾きに応じた方向にも空気の流れが偏向される。従って、吹き出し空気流は、例えば、吹出口を正面から見て左上方、左下方、右上方又は右下方に吹き出す。一方、吹出直前流路にフィン配列が存在しない場合は、フィンによっては空気の流れが偏向されないので、吹き出し空気流は、例えば、吹出口を正面から見て正面上方又は正面下方に吹き出す。
(3)更に、板体が回転軸よりも上流側にあるときは、上記(2)とは異なり、下流側端部の板体側は塞がれず、空気流路を通過して板体に到達した空気は、板体によって上下に分けられ、板体の上下を流れ、吹出口から吹き出す。このとき、板体の上下で流路の断面積が若干異なるものの、板体は吹き出し空気流の流れ方向の調整に実質的には寄与しない。
上記において、吹出直前流路にフィン配列が存在する場合は、当該フィン配列を構成する複数のフィンの傾きに応じた方向にも空気の流れが偏向される。従って、吹き出し空気流は、例えば、吹出口を正面から見て左向き又は右向きに吹き出す。一方、吹出直前流路にフィン配列が存在しない場合は、フィンによっては空気の流れが偏向されないので、吹き出し空気流は吹出口を正面から見て真正面に吹き出す。
以上説明した(1)乃至(3)はあくまでも風向調整ユニットの回転軸の回転角度に応じて板体とフィン配列と下流側内壁面と吹出直前流路とがとり得る様々な位置関係のうちの代表的なものの例示に過ぎない。即ち、本発明装置においては、風向調整ユニットの回転軸の回転角度に応じて、上記(1)乃至(3)以外にも、板体とフィン配列と下流側内壁面と吹出直前流路とが様々な位置関係をとり得る。
具体的には、本発明装置においては、板体(の端部)が下流側内壁面に対向する角度にあるか否かにより、吹き出し空気流が上下方向に偏向されるか否かが定まる。この場合、板体(の端部)が上側の下流側内壁面に対向するか下側の下流側内壁面に対向するかにより、吹き出し空気流がそれぞれ下方に偏向されるか上方に偏向されるかが定まる。
上記に加えて、吹き出し空気流が開口面を通過する直前の流路(吹出直前流路)にフィン配列が存在するか否かにより、吹き出し空気流が左右方向に偏向されるか否かが定まる。この場合、吹出直前流路に存在するフィン配列を構成する複数のフィンの傾斜角により、吹き出し空気流が左向きに偏向されるか右向きに偏向されるかが定まる。
従って、本発明装置においては、風向調整ユニットにおける板体とフィン配列との位置関係を適宜定めることにより、当該風向調整ユニットの回転軸を回転させて吹き出し空気流の方向を自在に制御することができる。即ち、本発明装置は、従来装置において採用されている風向調整板を必要とすること無く、吹き出し空気流を制御することができるので、空気吹出装置としての機能を損なうこと無く小型化することが可能である。
更に、本発明装置は、前述した従来装置1等において採用されている風向調整板を備える必要が無いので、このような従来装置に比べて(例えば、風向調整板の取り付け位置、風向調整板の大きさ及び回転範囲等を考慮する必要が無い分だけ)吹出口の形状をより自由に設計することができる。例えば、吹出口の形状として、空気吹出装置の美感を考慮した形状(例えば、高さ方向の長さが幅方向の長さよりも極めて小さい細長い(アスペクト比が高い)長方形等)が採用され得る。
加えて、本発明装置は、前述した従来装置2等とは異なり、吹出口を正面から見て真正面、正面上方及び正面下方の何れの方向にも空気を吹き出すことが可能である。
尚、以下の説明においては、本発明装置の正面から見て、奥から手前に向かう方向は「正面方向(F)」と称呼され、逆に向かう方向は「裏面方向(B)」と称呼される。更に、本発明装置の正面から見て、右手から左手に向かう方向は「左方向(L)」と称呼され、逆に向かう方向は「右方向(R)」と称呼される。加えて、本発明装置の正面から見て、鉛直方向の下から上に向かう方向は「上方向(U)」と称呼され、逆に向かう方向は「下方向(D)」と称呼される(図1を参照。)。
また、以下の説明においては、風向調整ユニットの(回転軸の)回転角度(d)は、例えば、板体の回転軸からの突出量がより大きい側の部分(以下、板体の「主部」とも称呼される。)が吹出口の反対側(即ち、裏面方向B)に向いており且つ板体が空気流路の軸線と平行であるときの角度を0(ゼロ)度と定める。そして、回転軸の回転方向は、その角度(0度)から板体の主部が空気吹出装置の上側(上方向U)に向かうときの回転軸の回転方向を正方向、逆に向かう方向(下方向D)を負方向と定める。換言すれば、本発明装置の正面から見て左側の側面から回転軸に平行な方向において風向調整ユニットを観察した場合に、回転軸を中心として板体が時計回りに回転する方向を正方向、反時計回りに回転する方向を負方向と定める(図2の(c)を参照。)。これにより、風向調整ユニットの回転軸の回転角度dは、板体の主部が突出している方向に対応して、例えば、0(ゼロ)度〜360度(又は、±0度〜180度)の角度として定義することができる。
更に、風向調整ユニットの(回転軸の)回転角度は、所望の方法によって調整することができる。例えば、回転軸の回転角度は、図示しないリンク部材等を介して操作者が各制御弁を直接操作することによって、所望の角度に調整することができる。或いは、回転軸の回転角度は、例えば、操作者からの指示に応じて、図示しないステッピングモータ等の駆動装置を使用して、所望の角度に調整することもできる。
ところで、上述したように、本発明装置においては、風向調整ユニットにおける板体とフィン配列との位置関係を適宜定めることにより、当該風向調整ユニットの回転軸を回転させて吹き出し空気流の方向を自在に制御することができる。尚、本発明装置において、風向調整ユニットが備えるフィン配列の具体的な配置及び構成は、例えば、空気吹出装置に要求される吹き出し空気流の制御性能等を考慮して適宜定められ得る。
例えば、本発明装置の別の実施態様において、前記風向調整ユニットは、前記2つの側方領域の一方に存在する前記フィン配列と前記2つの側方領域の他方に存在する前記フィン配列とが、前記板体を通る平面に対して互いに対称な位置に存在し、且つ前記互いに対称な位置に存在する2つの前記フィン配列を構成する複数のフィンの前記回転軸に対する傾斜方向が互いに逆である、ように構成され得る。
上記構成によれば、風向調整ユニットにおいて、2つのフィン配列が回転軸及び板体を通る平面に対して対称な位置に存在する。従って、上述した「平行時」から回転軸を所定の角度だけ上述した正方向又は負方向に回転させることにより、2つのフィン配列の何れかを吹出直前流路に存在させて、当該フィン配列を構成する複数のフィンの傾斜方向に応じた方向に吹き出し空気流を偏向させることができる。
加えて、これら2つのフィン配列を構成する複数のフィンの回転軸に対する傾斜方向は互いに逆である。従って、上記構成によれば、吹き出し空気流が吹出口の真正面に吹き出す平行時から回転軸を所定の角度だけ正方向又は負方向に回転させることにより、吹き出し空気流をフィンの傾斜方向に応じた反対の方向へと同程度に偏向させることができる。このように操作者による操作の方向及び量に対応して吹き出し空気流の偏向の方向及び程度が定まることは、操作者による直感的な操作を容易にするので望ましい。
尚、上記のようにして2つのフィン配列の何れかを吹出直前流路に存在させたとき、板体の外側端部が下流側内壁面に対向している場合は、上述したように吹き出し空気流は真正面ではなく吹出口を正面から見て正面上方又は正面下方に偏向される。従って、この場合は、吹出直前流路に存在するフィンの傾斜方向に加えて、正面上方又は正面下方にも吹き出し空気流が偏向される。一方、板体が回転軸よりも上流側にある場合は、上述したように板体は吹き出し空気流の流れ方向の調整に実質的には寄与しない。従って、この場合は、吹出直前流路に存在するフィンの傾斜方向にのみ吹き出し空気流が偏向される。
ところで、本発明装置の上記実施態様において、2つのフィン配列の何れかを吹出直前流路に存在させたときに板体の外側端部が下流側内壁面に対向している場合は、上記のように吹出直前流路に存在するフィンの傾斜方向のみならず正面上方又は正面下方にも吹き出し空気流が偏向される。その結果、この場合における吹き出し空気流は、吹出口から左上方及び右下方には吹き出すものの右上方及び左下方には吹き出さない場合がある。或いは、この場合における吹き出し空気流は、吹出口から左上方及び右下方には吹き出すものの右上方及び左下方には吹き出さない場合がある。
しかしながら、本発明装置による吹き出し空気流の制御の自由度を高める観点からは、上記のようにフィン配列の何れかを吹出直前流路に存在させたときに板体の外側端部が下流側内壁面に対向している場合において吹き出し空気流を吹出口から左上方、左下方、右上方及び右下方の全てに吹き出すことが可能であることが望ましい。
そこで、本発明装置の更に別の実施態様において、前記風向調整ユニットは、前記2つの側方領域のそれぞれに2つ以上の前記フィン配列が存在し、且つ前記2つの側方領域のそれぞれにおいて隣接する前記フィン配列を構成する複数のフィンの前記回転軸に対する傾斜方向が互いに逆である、ように構成され得る。
上記構成によれば、例えば、板体の外側端部が上側(上方向U側)の下流側内壁面に対向しており、吹き出し空気流が吹出口を正面から正面上方(上方向U)に偏向される場合においても、回転軸の角度に応じて上記隣接するフィン配列の何れか一方を吹出直前流路に存在させることができる。その結果、回転軸の角度に応じて、吹き出し空気流を吹出口から左上方又は右上方に吹き出すことができる。同様に、板体の外側端部が下側(下方向D側)の下流側内壁面に対向しており、吹き出し空気流が吹出口を正面から見て正面下方(下方向D)に偏向される場合においても、回転軸の角度に応じて上記隣接するフィン配列の何れか一方を吹出直前流路に存在させることができる。その結果、回転軸の角度に応じて、吹き出し空気流を吹出口から左下方又は右下方に吹き出すことができる。
即ち、上記構成によれば、上記のようにフィン配列の何れかを吹出直前流路に存在させたときに板体の外側端部が下流側内壁面に対向している場合において吹き出し空気流を吹出口から左上方、左下方、右上方及び右下方の全てに吹き出すことができる。その結果、上記構成によれば、本発明装置による吹き出し空気流の制御の自由度を高めることができる。
ところで、以上説明してきた本発明装置の種々の実施態様においても、正面上方及び正面下方の何れかの方向に吹き出し空気流を吹き出すことが困難な場合がある。これらの方向に吹き出し空気流を確実に吹き出すための方法としては、例えば、前述した直通領域に加えて、フィンが存在しない領域を風向調整ユニットに更に設けることが挙げられる。板体の外側端部が下流側内壁面に対向している状態において、回転軸の回転角度を調整して、当該領域を吹出直前流路に配置すれば、正面上方及び正面下方の何れかの方向に吹き出し空気流を吹き出すことができる。
しかしながら、風向調整ユニットにおいて、上記のようにフィンが存在しない領域を増やすことは、フィンが存在する(フィンを設けることができる)領域を減らすことを意味する。その結果、本発明装置による吹き出し空気流の制御性能の低下に繋がる虞がある。
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、板体の外側端部が下流側内壁面に対向している状態においてフィンの傾斜方向が互いに逆になっている2つのフィン配列を吹出直前流路内で隣接させることにより、正面上方及び正面下方の何れかの方向に吹き出し空気流を吹き出すことができることを見出した。
そこで、本発明装置の上記実施態様において、前記風向調整ユニットは、前記2つの側方領域のそれぞれにおいて隣接する前記フィン配列の境界領域及び前記回転軸を含む平面と前記板体及び前記回転軸を含む平面とがなす角が鋭角である、ように構成され得る。
上記構成によれば、板体の外側端部が下流側内壁面に対向している状態において、隣接する2つのフィン配列の境界領域を吹出直前流路に配置することができる。即ち、板体の外側端部が下流側内壁面に対向している状態においてフィンの傾斜方向が互いに逆の2つのフィン配列を吹出直前流路内で隣接させることができる。その結果、吹き出し空気流を吹出口を正面から見て左右には偏向させずに、正面上方及び正面下方の何れかの方向に吹き出し空気流を吹き出すことができる。
尚、上記「境界領域」においては、フィンの傾斜方向が互いに逆になっている2つのフィン配列が隣接している。但し、これら2つのフィン配列のそれぞれを構成する複数のフィンの端部は、必ずしも1つの界面上にある必要は無い。例えば、これら2つのフィン配列のそれぞれを構成する複数のフィンの端部が互いのフィン配列の領域内に入り込んでいてもよく、これら2つのフィン配列のそれぞれを構成する複数のフィンが部分的に交差していてもよい。逆に、例えば、本発明装置による吹き出し空気流の制御性能の低下等の問題を招かない限りにおいて、これら2つのフィン配列の間にフィンの無い相対的に狭い領域が介在していてもよい。
上記構成により吹き出し空気流を吹出口を正面から見て左右には偏向させずに正面上方及び正面下方の何れかの方向に吹き出すことができる詳細な理由及びメカニズムは明確に解明されている訳ではない。しかしながら、上記のようにフィンの傾斜方向が互いに逆になっている2つのフィン配列が吹出直前流路内で隣接することにより、それぞれのフィン配列による左右方向への偏向効果が相殺され、結果的に吹き出し空気流の流れ方向に実質的な影響を及ぼさないため、板体による上下方向への偏向効果のみが発揮されるものと推定される。
ところで、本発明装置においては、風向調整ユニットの回転軸の回転角度の如何を問わず、吹出直前流路は回転軸の下流側(正面方向F側)に位置する。即ち、吹出直前流路に到達する空気は回転軸の方から流れてくる。従って、吹き出し空気流を所望の方向に偏向させるためには、個々のフィンが回転軸の方から流れてくる空気を効果的に捉え、フィンの傾斜方向に効果的に案内することが望ましい。
そこで、以上説明してきた本発明装置の種々の実施態様において、前記風向調整ユニットは、前記複数のフィンの前記回転軸に近い側が凹面となっている、ように構成され得る。
上記構成によれば、個々のフィンが回転軸の方から流れてくる空気を効果的に捉え、フィンの傾斜方向に空気を効果的に案内することができるので、本発明装置による吹き出し空気流の制御性能が高まる。
更に、以上説明してきた本発明装置の種々の実施態様において、前記複数のフィンの前記回転軸とは反対側の端部が前記下流側内壁面に対向しているときの前記複数のフィンの前記端部と前記下流側内壁面との間の空隙の最大値が所定の閾値未満である、ように構成され得る。
上記構成によれば、下流側端部に到達した空気が、フィンの端部と下流側内壁面との間の空隙を通り抜けることが低減される。その結果、下流側端部に到達した空気がフィンと板体と下流側内壁面とによって画成される流路によって定まる方向に確実に案内される。従って、上記空隙の最大値が上記閾値以上である場合に比べ、吹き出し空気流の流れ方向がより精度良く制御され得る。即ち、吹き出し空気流の制御性能が高まる。
更に、本発明に係る空気吹出装置は、2つ以上を組み合わせた集合体として使用され得る。例えば、それぞれの空気吹出装置により異なる方向に吹き出し空気流を吹き出して、より広い範囲に空気を吹き出したり、複数の空気吹出装置から吹き出される吹き出し空気流を収束させて風量(流量)を高めたりすることができる。このように、複数の本発明に係る空気吹出装置を組み合わせて使用することにより、吹き出し空気流の流れ方向及び流量が、より多様に制御され得る。
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
以下、図面を参照しながら本発明の1つの実施形態に係る空気吹出装置の一例(以下、「実施装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら説明する。
<装置の概要>
図1は、実施装置を示す模式図である。図1の(a)に示したように、実施装置10は、空気導出路を画成する筐体20と、風向調整ユニット30と、から構成されている。以下、これら部材の構成につき、より詳細に説明される。尚、以下の説明においては、必要に応じて、上述した正面方向F、裏面方向B、左方向L、右方向R、上方向U及び下方向D、並びに風向調整ユニット30(の回転軸)の回転角度dが用いられる。
図1の(a)は実施装置10を正面方向から見た場合における実施装置10の模式的な斜視図であり、(b)は実施装置10が備える風向調整ユニット30の模式的な斜視図である。図2の(a)は実施装置10の模式的な正面図である。図2の(b)は、実施装置10を(a)におけるA−A平面(正面方向F、裏面方向B、左方向L及び右方向Rが属する平面)にて切断した場合の実施装置10(筐体20及び風向調整ユニット30)の断面を示す模式図である。図2の(c)は、実施装置10を(a)におけるB−B平面(正面方向F、裏面方向B、上方向U及び下方向Dが属する平面)にて切断した場合の実施装置10(筐体20及び風向調整ユニット30)の断面を示す模式図である。図2の(c)において、黒塗りの四角形は板体3の断面を、白抜きの略扇形はフィンの側面を、それぞれ表している。
図2の(a)及び(b)に示したように、風向調整ユニット30の回転軸に対して、板体(の長手方向)は平行であり、各々のフィンは傾斜している。更に、図2の(a)乃至(c)に示した例において、風向調整ユニット30の回転角度dは0(ゼロ)度である(d=0度)。即ち、板体は裏面方向Bを向いている。
図1及び図2に示したように、実施装置10を構成する筐体20は、全体として縦方向の長さ(高さ)に対して横方向の長さ(幅)が大きい略直方体状(薄板状)の形状を有する。筐体20は、後端側の開口部(以下、「導入口」とも称呼される。)21から流入した空気を、前端側の開口部(以下、「吹出口」とも称呼される。)22から吹き出すようになっている。即ち、筐体20は、導入口21に流入する空気流が通過可能な空気流路をその内部に画成しており、空気流路を通過する空気流が空気流路の下流側端部23において流れ方向を調整された空気流である吹き出し空気流を吹出口22から所定の方向に向けて吹き出すようになっている。
風向調整ユニット30は、筐体20の内部に(即ち、空気流路内に)設けられ、空気流路の吹出口22側の端部である下流側端部23を経て吹出口22から吹き出される空気の流れ方向を調整する。
図2の(c)に示したように、筐体20は、板体32が回転したときに板体32が通過する領域である回転領域の回転軸よりも吹出口に近い側である下流側(正面方向F側)の領域に沿って湾曲した内部壁面である下流側内壁面24によって下流側端部23を画成する。更に、筐体20は、下流側内壁面24を貫通して空気流路に開口するように吹出口22を画成する。吹出口22の開口面の高さは、上記回転領域の直径よりも小さい。即ち、回転軸31に直交する断面における開口面の一方の端部と回転軸31とを結ぶ線分と開口面の他方の端部と回転軸31とを結ぶ線分とがなす角である開口角は180度未満の角度である。
実施装置10においては、回転軸31の回転角度は、操作者からの指示に応じて、図示しないステッピングモータを使用して、所望の角度に調整可能に構成されている。このように回転軸31の回転角度を調整することにより、空気流路の吹出口22側の端部である下流側端部23に設けられた風向調整ユニット30の回転角度を調整して、吹出口22から吹き出される空気の流れ方向を調整することができる。
<風向調整ユニットの詳細>
図3の(a)及び(b)に示したように、風向調整ユニット30は、吹出口22の開口面と平行な回転軸31、回転軸31の周りに偏心して回転可能な板体32、及び、回転軸31に沿って並ぶ回転軸31上の複数の位置において回転軸31と傾斜して交差する板状の部材である複数のフィン33からなる合計4つのフィン配列を有する。風向調整ユニット30が有する板体32は回転軸31に平行な2つの長辺を有し、回転軸31はその一方の長辺を通る。即ち、板体32は回転軸31から一方にのみ突出した板状の突起である。
上記4つのフィン配列は、図3の(c)に示したように、回転軸31を通り且つ開口角を均等に二分する平面内に板体32があるときに開口角に該当する回転領域の部分領域として規定される2つの直通領域(網掛け部分)には存在しない。即ち、これらのフィン配列は、上述した回転領域の直通領域ではない2つの部分領域(側方領域)にのみ存在する。尚、図3の(c)においても、黒塗りの四角形は板体32の断面を表す。
上記構成により、実施装置10は、板体が空気流路の軸線と平行である「平行時」(即ち、回転軸31の回転角度dが0(ゼロ)度又は180度であるとき)において、吹き出し空気流を正面方向Fに吹き出すことができる。
更に、風向調整ユニット30においては、図1乃至図3に示したように、2つの側方領域のそれぞれにフィン配列が2つずつ配置されており、これら2つの側方領域の一方に存在する2つのフィン配列とこれら2つの側方領域の他方に存在する2つのフィン配列とは、板体32を通る平面に対して互いに対称な位置に存在する。加えて、板体32を通る平面に対して互いに対称な位置に存在する2つのフィン配列のそれぞれを構成する複数のフィン33の回転軸31に対する傾斜方向は互いに逆である。更に加えて、上記2つの側方領域のそれぞれにおいて隣接する2つのフィン配列を構成する複数のフィン33の回転軸31に対する傾斜方向は互いに逆である。
上記により、実施装置10は、上述したように、板体32の外側端部が下流側内壁面24に対向しているときに吹出直前流路に存在するフィン配列を構成するフィン33の傾斜方向に応じて、吹き出し空気流を吹出口22から左上方、左下方、右上方又は右下方に吹き出すことができる。
更に、風向調整ユニット30においては、図3の(c)に示したように、「2つの側方領域のそれぞれにおいて隣接するフィン配列の境界領域及び回転軸31を含む平面」と「板体32及び回転軸31を含む平面」とがなす角(θ)が鋭角である。その結果、実施装置10は、上述したように、板体32の外側端部が下流側内壁面24に対向している状態において、隣接する2つのフィン配列の境界領域を吹出直前流路に配置することにより、吹出口22を正面から見て正面上方及び正面下方に吹き出し空気流を吹き出すことができる。
上記のように、実施装置10は、吹き出し空気流の吹き出し方向の制御において、極めて高い自由度を有する。尚、風向調整ユニット30の回転角度dと吹き出し空気流の流れ方向との関係については、後に詳しく説明する。
上記に加えて、特に図1の(b)を参照すれば判り易いように、風向調整ユニット30は、複数のフィン33の回転軸31に近い側が凹面となるように構成されている。これにより、個々のフィン33が回転軸31の方から流れてくる空気を効果的に捉え、フィン33の傾斜方向に空気を効果的に案内することができるので、実施装置10による吹き出し空気流の制御性能が高まる。
<風向調整ユニットの回転角度dと吹き出し空気流の流れ方向との関係>
実施装置10における風向調整ユニット30の(回転軸31の)回転角度dと吹き出し空気流の流れ方向との関係につき、添付図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図4乃至図9は、風向調整ユニット30の(回転軸31の)回転角度dが、(a)0(ゼロ)度、(b)45度、(c)90度、(d)135度、(h)225(−135)度及び(j)315(−45)度であるときの風向調整ユニット30の(1)斜視図、(2)上面図及び(3)正面図、並びに、筐体20及び風向調整ユニット30の断面図(4)及び(5)をそれぞれ示している。
図10乃至図19は、風向調整ユニット30の(回転軸31の)回転角度dが、(a)0(ゼロ)度、(b)45度、(c)90度、(d)135度、(e)160度、(f)180度、(g)200(−160)度、(h)225(−135)度、(i)270(−90)度及び(j)315(−45)度であるときの吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視をそれぞれ示している。
個々の回転角度dにおける風向調整ユニット30の向きと、その結果としての吹き出し空気流の流れ方向につき以下に個別に説明する。尚、吹き出し空気流の流れ方向は、導入口21における流量を120m3/hとし且つ吹出口22における表面圧力を0(ゼロ)Paとする境界条件を用いる標準κ−ε乱流モデルによる定常解析によって求めた。
(a)d=0(ゼロ)度の場合(図4及び図10参照)
この場合の風向調整ユニット30の斜視図、上面図及び正面図をそれぞれ図4の(1)乃至(3)に示す。更に、(4)及び(5)は、それぞれ(3)におけるA−A平面(正面方向F、裏面方向B、左方向L及び右方向Rが属する平面であって、回転軸31の上方向U側に接する平面)及びD−D平面(回転軸31に垂直な平面)によって筐体20及び風向調整ユニット30を切断したときの断面図である。
図4に示したように、板体32は吹出口22の反対側(裏面方向B側)に向いて突出しており且つ板体32が空気流路の軸線(正面方向F)と平行である。つまり、この状態は、前述した「平行時」に該当する。従って、吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整には板体32は実質的に寄与しない。
一方、この場合も側方領域にはフィン33が存在するので、(4)の断面図に示したように、側方領域においては空気がフィン33と接触する。しかしながら、(5)に示したように、フィン配列が存在しない直通領域(図3の(c)に示した網掛け部分)が吹出直前流路に配置されるので、フィン33もまた吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整には実質的に寄与しない。
上記の結果、図10に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口22を正面から見て正面方向Fに吹き出す。
(b)d=45度の場合(図5及び図11参照)
この場合の風向調整ユニット30の斜視図、上面図及び正面図をそれぞれ図5の(1)乃至(3)に示す。更に、(4)及び(5)は、それぞれ(3)におけるC−C平面(正面方向F、裏面方向B、左方向L及び右方向Rが属する平面であって、回転軸31の中心を含む平面)及びF−F平面(回転軸31に垂直な平面)によって筐体20及び風向調整ユニット30を切断したときの断面図である。
図5に示したように、この場合の板体32は空気流路の軸線(正面方向F)と平行ではないものの、板体32の外側端部は下流側内壁面24に対向していない。従って、この場合も、空気流路を流れる空気は板体32によって上下に分けられるものの、吹出直前流路において合流して吹出口から吹き出す。従って、この場合も、吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整には板体32は実質的に寄与しない。
一方、この場合は、図5の(5)に示したように、フィン配列が存在する側方領域が吹出直前流路に配置されるので、当該フィン配列を構成する複数のフィン33の傾斜方向に応じた方向に空気の流れが偏向される。即ち、この場合は、フィン33は吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整に寄与する。本例においては、(4)に示したように、吹出直前流路に存在するフィン配列を構成する複数のフィン33は吹出口を正面から見て左奥から右手前へと空気の流れを導くように傾斜している。この傾斜により、吹出直前流路を通過する空気の流れが右方向Rに偏向される。
上記の結果、図11に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口22を正面から見て右方向Rに吹き出す。
(c)d=90度の場合(図6及び図12参照)
この場合の風向調整ユニット30の斜視図、上面図及び正面図をそれぞれ図6の(1)乃至(3)に示す。更に、(4)及び(5)は、それぞれ(3)におけるI−I平面(正面方向F、裏面方向B、左方向L及び右方向Rが属する平面であって、回転軸31の中心を含む平面)及びJ−J平面(回転軸31に垂直な平面)によって筐体20及び風向調整ユニット30を切断したときの断面図である。
図6に示したように、この場合の板体32は空気流路の軸線(正面方向F)に対して垂直であり、板体32の外側端部は上側(上方向U側)の下流側内壁面24の上流側(裏面方向B側)の端部に対向している。つまり、この状態は、前述した「垂直時」に該当する。従って、下流側端部23の板体32が存在する側(回転軸31よりも上方向U側)は実質的に塞がれる。その結果、空気は下流側端部23の板体32が存在しない側(回転軸31よりも下方向D側)を通って開口面に到達し、吹出口22から外部に吹き出す。このとき、当該空気の流れは下流側内壁面24の一方(下方向D側)のみに沿って偏向されて開口面へと案内されるので、吹き出し空気流は真正面ではなく吹出口22を正面から見て上方向Uに偏向される。
一方、この場合は、図6の(5)に示したように、フィン配列が存在する側方領域が吹出直前流路に配置されるので、当該フィン配列を構成する複数のフィン33の傾斜方向に応じた方向に空気の流れが偏向される。即ち、この場合は、フィン33は吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整に寄与する。本例においては、(4)に示したように、吹出直前流路に存在する主たるフィン配列を構成する複数のフィン33は吹出口を正面から見て左奥から右手前へと空気の流れを導くように傾斜している。この傾斜により、吹出直前流路を通過する空気の流れが右方向Rに偏向される。
上記の結果、図12に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口を正面から見て右上方向(UR)に吹き出す。
(d)d=135度の場合(図7及び図13参照)
この場合の風向調整ユニット30の斜視図、上面図及び正面図をそれぞれ図7の(1)乃至(3)に示す。更に、(4)及び(5)は、それぞれ(3)におけるG−G平面(正面方向F、裏面方向B、左方向L及び右方向Rが属する平面であって、回転軸31の中心を含む平面)及びH−H平面(回転軸31に垂直な平面)によって筐体20及び風向調整ユニット30を切断したときの断面図である。
図7に示したように、この場合の板体32は空気流路の軸線方向(正面方向F)において回転軸31よりも下流側に傾いているものの、板体32の外側端部は上側(上方向U側)の下流側内壁面24に対向している。従って、この場合もまた、下流側端部23の板体32が存在する側(回転軸31よりも上方向U側)は実質的に塞がれる。その結果、空気は下流側端部23の板体32が存在しない側(回転軸31よりも下方向D側)を通って開口面に到達し、吹出口22から外部に吹き出す。このとき、当該空気の流れは下流側内壁面24の一方(下方向D側)のみに沿って偏向されて開口面へと案内されるので、吹き出し空気流は真正面ではなく吹出口22を正面から見て上方向Uに偏向される。
一方、この場合もまた、図7の(5)に示したように、フィン配列が存在する側方領域が吹出直前流路に配置される。しかしながら、下流側端部23の回転軸31よりも下方向D側の領域を通って開口面に到達する空気流路には、個々のフィン33の傾斜角度が互いに逆である隣接する2つのフィン配列が存在する。そして、これら隣接するフィン配列の境界領域が吹出直前流路内に存在する(これら隣接するフィン配列の両方が吹出直前流路内に存在する)。その結果、前述したように、吹き出し空気流を吹出口を正面から見て左右方向には偏向されない(吹き出し空気流の左右方向への偏向効果が相殺される)。
上記の結果、図13に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口を正面から見て上方向Uに吹き出す。
(e)d=160度の場合(図14参照)
この場合、図示しないが、上記(d)の状態から少し(25度)だけ回転角度dが大きくなり、風向調整ユニット30の板体32が吹出口22の開口面の上端(上方向U側の端部)近傍の下流側内壁面24に対向している。従って、この場合もまた、下流側端部23の板体32が存在する側(回転軸31よりも上方向U側)は実質的に塞がれる。その結果、空気は下流側端部23の板体32が存在しない側(回転軸31よりも下方向D側)を通って開口面に到達し、吹出口22から外部に吹き出す。このとき、当該空気の流れは下流側内壁面24の一方(下方向D側)のみに沿って偏向されて開口面へと案内されるので、吹き出し空気流は真正面ではなく吹出口22を正面から見て上方向Uに偏向される。
一方、この場合は、上記のように上記(d)の状態から少し(25度)だけ回転角度dが大きくなっている。その結果、上記(d)の状態において吹出直前流路に存在した2つの隣接するフィン配列のうち、板体32から遠い方のフィン配列が吹出直前流路外に位置しており、板体32に近い方のフィン配列のみが吹出直前流路内に位置している。従って、当該フィン配列を構成する複数のフィン33の傾斜方向に応じた方向に空気の流れが偏向される。本例においては、吹出直前流路に存在する当該フィン配列を構成する複数のフィン33は吹出口を正面から見て右奥から左手前へと空気の流れを導くように傾斜している。この傾斜により、吹出直前流路を通過する空気の流れが左方向Lに偏向される。
上記の結果、図14に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口を正面から見て左上方向(UL)に吹き出す。
(f)d=180度の場合(図15参照)
この場合、図示しないが、板体32は吹出口22(正面方向F)に向いて突出しており且つ板体32が空気流路の軸線(正面方向F)と平行である。つまり、この状態もまた、d=0(ゼロ)度である上記(a)の場合と同様に、前述した「平行時」に該当する。従って、吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整には板体32は実質的に寄与しない。
更に、この場合もフィン配列が存在しない直通領域(図3の(c)に示した網掛け部分)が吹出直前流路に配置されるので、フィン33もまた吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整には実質的に寄与しない。
上記の結果、図15に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口22を正面から見て正面方向Fに吹き出す。
(g)d=200度(−160度)の場合(図16参照)
この場合、図示しないが、上記(f)の状態から少し(20度)だけ回転角度dが大きくなり、風向調整ユニット30の板体32が吹出口22の開口面の下端(下方向D側の端部)近傍の下流側内壁面24に対向している。従って、この場合は、下流側端部23の板体32が存在する側(回転軸31よりも下方向D側)は実質的に塞がれる。その結果、空気は下流側端部23の板体32が存在しない側(回転軸31よりも上方向U側)を通って開口面に到達し、吹出口22から外部に吹き出す。このとき、当該空気の流れは下流側内壁面24の一方(上方向U側)のみに沿って偏向されて開口面へと案内されるので、吹き出し空気流は真正面ではなく吹出口22を正面から見て下方向Dに偏向される。
一方、この場合は、上記のように上記(f)の状態から少し(20度)だけ回転角度dが大きくなっている。その結果、上記(f)の状態において吹出直前流路外に存在した側方領域が吹出直前流路内に位置している。即ち、この状態において板体32よりも上方向U側に位置するフィン配列のうち板体32に近い方のフィン配列が吹出直前流路内に位置している。当該フィン配列は、上記(e)の場合に吹出直前流路内に位置していたフィン配列とは「板体32を含む平面」に対して対称な位置に存在し、回転軸31に対するフィン33の傾斜方向が逆である。本例においては、吹出直前流路に存在する当該フィン配列を構成する複数のフィン33は吹出口を正面から見て左奥から右手前へと空気の流れを導くように傾斜している。この傾斜により、吹出直前流路を通過する空気の流れが右方向Rに偏向される。
上記の結果、図16に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口を正面から見て右下方向(DR)に吹き出す。即ち、この場合の吹き出し空気流は、上記(e)の場合とは上下方向及び左右方向の両方において逆方向に偏向される。
(h)d=225度(−135度)の場合(図8及び図17参照)
この場合の風向調整ユニット30の斜視図、上面図及び正面図をそれぞれ図8の(1)乃至(3)に示す。更に、(4)及び(5)は、それぞれ(3)におけるK−K平面(正面方向F、裏面方向B、左方向L及び右方向Rが属する平面であって、回転軸31の中心を含む平面)及びL−L平面(回転軸31に垂直な平面)によって筐体20及び風向調整ユニット30を切断したときの断面図である。
図8に示したように、この場合の板体32は空気流路の軸線方向(正面方向F)において回転軸31よりも下流側に傾いているものの、板体32の外側端部は下側(下方向D側)の下流側内壁面24に対向している。従って、この場合もまた、下流側端部23の板体32が存在する側(回転軸31よりも下方向D側)は実質的に塞がれる。その結果、空気は下流側端部23の板体32が存在しない側(回転軸31よりも上方向U側)を通って開口面に到達し、吹出口22から外部に吹き出す。このとき、当該空気の流れは下流側内壁面24の一方(上方向U側)のみに沿って偏向されて開口面へと案内されるので、吹き出し空気流は真正面ではなく吹出口22を正面から見て下方向Dに偏向される。
一方、この場合もまた、図8の(5)に示したように、フィン配列が存在する側方領域が吹出直前流路に配置される。しかしながら、下流側端部23の回転軸31よりも上方向U側の領域を通って開口面に到達する空気流路には、個々のフィン33の傾斜角度が互いに逆である隣接する2つのフィン配列が存在する。そして、これら隣接するフィン配列の境界領域が吹出直前流路内に存在する(これら隣接するフィン配列の両方が吹出直前流路内に存在する)。その結果、前述したように、吹き出し空気流を吹出口を正面から見て左右方向には偏向されない(吹き出し空気流の左右方向への偏向効果が相殺される)。
上記の結果、図17に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口を正面から見て下方向Dに吹き出す。即ち、この場合の吹き出し空気流は、上記(d)の場合とは逆方向に偏向される。
(i)d=270度(−90度)の場合(図18参照)
この場合、図示しないが、板体32は空気流路の軸線(正面方向F)に対して垂直であり、板体32の外側端部は下側(下方向D側)の下流側内壁面24の上流側(裏面方向B側)の端部に対向している。つまり、この状態もまた、前述した「垂直時」に該当する。従って、下流側端部23の板体32が存在する側(回転軸31よりも下方向D側)は実質的に塞がれる。その結果、空気は下流側端部23の板体32が存在しない側(回転軸31よりも上方向DU側)を通って開口面に到達し、吹出口22から外部に吹き出す。このとき、当該空気の流れは下流側内壁面24の一方(上方向U側)のみに沿って偏向されて開口面へと案内されるので、吹き出し空気流は真正面ではなく吹出口22を正面から見て下方向Dに偏向される。
一方、この場合は、フィン配列が存在する側方領域が吹出直前流路に配置されるので、当該フィン配列を構成する複数のフィン33の傾斜方向に応じた方向に空気の流れが偏向される。即ち、この場合もまた、フィン33は吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整に寄与する。本例においては、吹出直前流路に存在する主たるフィン配列を構成する複数のフィン33は吹出口を正面から見て右奥から左手前へと空気の流れを導くように傾斜している。この傾斜により、吹出直前流路を通過する空気の流れが左方向Lに偏向される。
上記の結果、図18に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口を正面から見て左下方向(DL)に吹き出す。即ち、この場合の吹き出し空気流は、上記(c)の場合とは上下方向及び左右方向の両方において逆方向に偏向される。
(j)d=315度(−45度)の場合(図9及び図19参照)
この場合の風向調整ユニット30の斜視図、上面図及び正面図をそれぞれ図9の(1)乃至(3)に示す。更に、(4)及び(5)は、それぞれ(3)におけるB−B平面(正面方向F、裏面方向B、左方向L及び右方向Rが属する平面であって、回転軸31の中心を含む平面)及びE−E平面(回転軸31に垂直な平面)によって筐体20及び風向調整ユニット30を切断したときの断面図である。
図9に示したように、この場合の板体32は空気流路の軸線(正面方向F)と平行ではないものの、板体32の外側端部は下流側内壁面24に対向していない。従って、この場合も、空気流路を流れる空気は板体32によって上下に分けられるものの、吹出直前流路において合流して吹出口から吹き出す。従って、この場合も、吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整には板体32は実質的に寄与しない。
一方、この場合は、図9の(5)に示したように、フィン配列が存在する側方領域が吹出直前流路に配置されるので、当該フィン配列を構成する複数のフィン33の傾斜方向に応じた方向に空気の流れが偏向される。即ち、この場合は、フィン33は吹出口22から吹き出される空気流の流れ方向の調整に寄与する。本例においては、(4)に示したように、吹出直前流路に存在するフィン配列を構成する複数のフィン33は吹出口を正面から見て右奥から左手前へと空気の流れを導くように傾斜している。この傾斜により、吹出直前流路を通過する空気の流れが左方向Lに偏向される。
上記の結果、図19に示した吹き出し空気流の流れの上面視及び側面視からも明らかであるように、吹き出し空気流は吹出口22を正面から見て左方向Lに吹き出す。即ち、この場合の吹き出し空気流は、上記(b)の場合とは逆方向に偏向される。
以上説明してきた風向調整ユニット30の回転角度dと吹き出し空気流の流れ方向との対応関係を以下の表1に纏める。
以上のように、実施装置10は、風向調整ユニット30の回転軸31の回転角度dを適宜調整することにより、吹出口22から吹き出される空気の流れ方向を制御することができる。より具体的には、実施装置10は、正面方向F、左方向L、右方向R,上方向U、下方向D、左上方向UL、左下方向DL、右上方向UR及び右下方向DRの全ての方向に吹出口22から空気を吹き出すことができる。即ち、実施装置10は、従来装置において採用されている風向調整板を必要とすること無く、吹き出し空気流を自在に制御することができる。従って、実施装置10は、空気吹出装置としての機能を損なうこと無く小型化することが可能である。
更に、実施装置10は、従来装置において採用されている風向調整板を備える必要が無いので、従来装置に比べて、吹出口22の形状をより自由に設計することができる。例えば、吹出口22の形状として、空気吹出装置の美感を考慮した形状(例えば、高さ方向の長さが幅方向の長さよりも極めて小さい細長い(アスペクト比が高い)長方形等)が採用され得る。
<変形例>
上記のように、実施装置10においては、風向調整ユニット30が有するそれぞれのフィン配列において、複数のフィン33の全てが、回転軸31を中心とする同一の大きさを有し且つ回転軸に近い側が凹面となっている略扇形の板状の形状を有する。しかしながら、それぞれのフィン配列を構成する複数のフィンの全てが上記のような大きさ及び形状を有することは必須の要件ではなく、本発明に係る空気吹出装置が備えるフィン配列を構成する複数のフィンの大きさ及び形状は、上述したような本発明の目的を達成することが可能である限り、特に限定されない。例えば、それぞれのフィン配列を構成する複数のフィンが、異なる大きさ及び/又は形状を有する複数種の板状部材によって構成されていてもよい。
但し、前述したように、フィンと板体と下流側内壁面とによって画成される流路によって定まる方向に下流側端部に到達した空気を確実に案内するためには、下流側端部に到達した空気がフィンの端部と下流側内壁面との間の空隙を通り抜けることが低減されることが望ましい。従って、複数のフィンの各々の大きさ及び形状の如何を問わず、上記空隙の最大値が所定の閾値未満であることが望ましい。
更に、実施装置10においては、上記のように、風向調整ユニット30が、2つの側方領域のそれぞれに2つのフィン配列を有し、且つ、これらのフィン配列は板体32を通る平面に対して互いに対称な位置に存在し、且つ、これらの互いに対称な位置に存在する2つのフィン配列を構成する複数のフィン33の回転軸31に対する傾斜方向が互いに逆であり、且つ、それぞれの側方領域において隣接する2つのフィン配列を構成する複数のフィンの回転軸31に対する傾斜方向が互いに逆である、ように構成されている。しかしながら、本発明に係る空気吹出装置が備える風向調整ユニットにおけるフィン配列の数及び配置、並びにフィン配列を構成する複数のフィンの回転軸に対する傾斜方向等は上記に限定されず、当該空気吹出装置によって制御しようとする吹き出し空気流の流れ方向に応じて適宜定めることができる。
加えて、実施装置10においては、上記のように、2つの側方領域のそれぞれにおいて隣接する2つのフィン配列の境界領域及び回転軸31を含む平面と板体32及び回転軸31を含む平面とがなす角が鋭角であるように風向調整ユニット30が構成されている。しかしながら、本発明に係る空気吹出装置が備える風向調整ユニットにおけるフィン配列の境界領域の数及び配置等は上記に限定されず、当該空気吹出装置によって制御しようとする吹き出し空気流の流れ方向に応じて適宜定めることができる。
また、前述したように、例えば、空気吹出装置に要求される吹き出し空気流の制御性能等に応じて、実施装置10を始めとする本発明に係る空気吹出装置を複数組み合わせた集合体として使用してもよい。例えば、それぞれの空気吹出装置により異なる方向に吹き出し空気流を吹き出して、より広い範囲に空気を吹き出したり、複数の空気吹出装置から吹き出される吹き出し空気流を収束させて風量(流量)を高めたりすることができる。或いは、それぞれの空気吹出装置から吹き出される吹き出し空気流の方向を適宜組み合わせて、例えば旋回流等、空気の高度な流れを実現することも可能である。このように、吹き出し空気流の流れ方向及び/又は流量の制御における自由度を更に高めることができる。
<風向調整ユニットの製造方法>
尚、上記のような風向調整ユニット30は、例えば金型成形等の当該技術分野において広く使用されている手法によって、例えば熱可塑性樹脂等の材料によって製造することができる。この場合、風向調整ユニット30を1つの成形物として一体成形してもよい。或いは、例えば、図20に示したように、それぞれのフィン配列を構成する個々のフィン33及び対応する板体32の一部を含む部品(a)を、別途用意された回転軸31を含む部品(b)に必要な数だけ通すことによって形成される集成体として、風向調整ユニット30を製造することもできる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。