JP2016205996A - 前処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】バッファ部において流出口が詰まった場合でも、廃液タンクに廃液を良好に導くことができる前処理装置を提供する。
【解決手段】 バッファ部7に、流入口72,73,74、流出口75、バッファ空間71及びオーバーフロー出口76を形成する。流入口72,73には、洗浄ポット45,46からの廃液が流入する。流出口75からは、廃液タンク9へと廃液が流出する。バッファ空間71は、流入口72,73,74から流入した廃液を流出口75へと導く。オーバーフロー出口76は、バッファ空間71における流出口75よりも高い位置に設けられ、バッファ空間71からオーバーフローする廃液を廃液タンク9に導く。
【選択図】 図8

Description

本発明は、試料又は試薬をプローブで分注して前処理を行うための前処理装置に関するものである。
例えば全血、血清、濾紙血、尿などの生体由来の試料に含まれる成分の分析を行う際、試料に対して前処理装置により前処理を行った後、分析を行う場合がある。前処理としては、分析に不要な特定成分を試料から除去して必要成分を抽出する処理や、抽出された試料を濃縮又は乾固させる処理などを例示することができる。このような前処理を自動的に実行する前処理装置として、従来から種々の構成が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
試料には、必要に応じて試薬が混合される。試料や試薬は、少量ずつ複数の容器に収容されており、各容器からプローブによって試料又は試薬が吸引されて分注される。分注後のプローブは、試料又は試薬が付着した状態であるため、洗浄ポット(洗浄部)において洗浄液で洗浄された後、次の分注が行われることとなる。
プローブを洗浄した後の廃液(洗浄液)は、廃液タンクに回収される。試料を洗い流した廃液、及び、試薬を洗い流した廃液は、それぞれ共通のバッファ部を通って廃液タンク内に流入する。上記バッファ部には、洗浄ポットから廃液が流入する流入口と、廃液タンクへと廃液が流出する流出口とが設けられており、これらの流入口及び流出口がバッファ空間を介して接続されている。
これにより、流入口を介してバッファ部に流入した廃液は、バッファ空間を介して流出口へと導かれ、流出口から廃液タンクへと排出される。廃液タンク内に一定量まで廃液が回収された場合には、分析者が廃液タンクを前処理装置から取り出すことにより、廃液タンク内の廃液を捨てることができる。
特開2010−60474号公報
しかしながら、上記のような従来の構成では、バッファ部において流出口が詰まる場合があった。すなわち、プローブを洗浄した後の廃液が流入するバッファ空間内において、長時間を経て徐々に堆積物が増加することにより、流出口に堆積物が詰まりやすいという問題があった。
特に、血清や血漿成分などを含む試料を洗い流した廃液、及び、メタノールやアセトニトリルなどの有機溶媒からなる試薬を洗い流した廃液が、それぞれ共通のバッファ空間内に流入した場合には、廃液中の試料及び試薬が混和して不溶物が発生し、その不溶物が堆積して流出口が詰まる可能性が高い。バッファ部において流出口が詰まった場合には、廃液が配管を通って洗浄ポットへと逆流して漏れ出すことにより、検査室が汚染されるおそれがある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、バッファ部において流出口が詰まった場合でも、廃液タンクに廃液を良好に導くことができる前処理装置を提供することを目的とする。
本発明に係る前処理装置は、プローブ、洗浄部、バッファ部及び廃液タンクを備える。前記プローブは、試料又は試薬を吸引して分注する。前記洗浄部は、前記プローブを洗浄液で洗浄する。前記バッファ部には、前記洗浄部からの廃液が流入する。前記廃液タンクには、前記バッファ部を介して導かれた廃液が貯留される。
前記バッファ部には、流入口、流出口、バッファ空間及びオーバーフロー出口が形成されている。前記流入口には、前記洗浄部からの廃液が流入する。前記流出口からは、前記廃液タンクへと廃液が流出する。前記バッファ空間は、前記流入口から流入した廃液を前記流出口へと導く。前記オーバーフロー出口は、前記バッファ空間における前記流出口よりも高い位置に設けられ、前記バッファ空間からオーバーフローする廃液を前記廃液タンクに導く。
このような構成によれば、バッファ部において流出口が詰まった場合でも、バッファ空間における流出口よりも高い位置に設けられたオーバーフロー出口から廃液をオーバーフローさせることができる。オーバーフロー出口からオーバーフローした廃液は、廃液タンクに良好に導くことができるため、廃液が逆流して漏れ出すのを防止することができる。
前記流入口及び前記流出口は、前記バッファ空間を挟んで互いに反対側に形成されていてもよい。この場合、前記オーバーフロー出口は、前記バッファ空間に対して前記流入口側に設けられていてもよい。
このような構成によれば、流入口からバッファ空間内に流入する廃液が、バッファ空間を挟んで流入口の反対側に形成された流出口へと良好に導かれる。一方で、オーバーフロー出口は、バッファ空間に対して流入口側に設けられているため、流出口が詰まっていないときに、流入口からバッファ空間内に流入する廃液がオーバーフロー出口からオーバーフローするのを防止することができる。
前記バッファ部には、前記バッファ空間に対して前記流入口側に設けられた第1開口と、前記バッファ空間に対して前記流出口側に設けられた第2開口と、前記第1開口及び前記第2開口を連通する貫通孔とが形成されていてもよい。この場合、前記前処理装置は、前記オーバーフロー出口を前記第1開口に接続する第1配管と、前記第2開口を前記廃液タンクに接続する第2配管と、前記流出口を前記廃液タンクに接続する第3配管とをさらに備えていてもよい。
このような構成によれば、オーバーフロー出口からオーバーフローする廃液が、第1配管、第1開口、貫通孔、第2開口及び第2配管を介して廃液タンクに導かれる。第1開口は、オーバーフロー出口と同様に、バッファ空間に対して流入口側に設けられているため、オーバーフロー出口と第1開口とを接続する第1配管が複雑な流路を構成するのを防止し、第1配管を詰まりにくくすることができる。
また、第2開口は、バッファ空間に対して流出口側に設けられているため、第2開口を廃液タンクに接続する第2配管と、流出口を廃液タンクに接続する第3配管とを、互いに近接配置して短い流路で廃液タンクに接続することができる。これにより、第2配管及び第3配管が複雑な流路を構成するのを防止し、これらの配管を詰まりにくくすることができるとともに、これらの配管に対するメンテナンスを容易に行うことができる。
前記前処理装置は、前記第2配管及び第3配管を合流させて前記廃液タンクに接続する合流管をさらに備えていてもよい。
このような構成によれば、第2配管及び第3配管を廃液タンクに対して合流管により一度に接続することができる。したがって、廃液タンク内の廃液を捨てる際には、第2配管及び第3配管を廃液タンクに対して一度に着脱することができるため、メンテナンスがさらに容易になる。
前記第1配管、前記第2配管及び前記第3配管の少なくとも1つが透明又は半透明であってもよい。
このような構成によれば、透明又は半透明な配管の内部を視認して、詰まっていないかどうかを容易に確認することができる。特に、第2配管及び第3配管は互いに近接配置されているため、これらの配管を透明又は半透明とすれば、これらの配管が詰まっていないかどうかを一度に容易に確認することができる。
前記第1配管、前記第2配管及び前記第3配管の少なくとも1つには、その内部の流路が閉塞するのを防止する閉塞防止部材が設けられていてもよい。
このような構成によれば、閉塞防止部材により配管内の流路が閉塞するのを防止することができる。これにより、配管内の流路が閉塞することによって廃液が逆流して漏れ出すのを防止することができる。特に、第2配管及び第3配管は、廃液タンク内の廃液を捨てる際に廃液タンクに対して着脱されるため変形する機会が多いが、これらの配管に閉塞防止部材を設ければ、変形によって流路が閉塞するのを効果的に防止することができる。
前記バッファ部は、その上部が前記流出口側に向かって傾斜するように配置されていてもよい。
このような構成によれば、バッファ部が傾斜するように配置されることにより、仮に流出口及びオーバーフロー出口の両方が詰まった場合でも、バッファ部の上部から流出口側に廃液を溢れ出させることができる。これにより、廃液が逆流するのを防止することができるとともに、バッファ部の上部から溢れ出る廃液を流出口側に設けられた廃液タンクのラック上などに落下させることができるため、廃液が前処理装置の外部に漏れ出すのを効果的に防止することができる。
前記前処理装置は、前記洗浄部を前記流入口に接続する流入管と、前記流入管から分岐して前記第1配管に連通する分岐管とをさらに備えていてもよい。
このような構成によれば、流出口ではなく流入口が詰まった場合でも、流入管から分岐する分岐管を介して廃液が第1配管に導かれる。これにより、オーバーフロー出口からオーバーフローする廃液と共通の流路を介して、廃液を廃液タンクに導くことができるため、流路が複雑になるのを防止しつつ、廃液が逆流して漏れ出すのをさらに効果的に防止することができる。
前記プローブは、試料を吸引して分注する試料分注プローブ、及び、試薬を吸引して分注する試薬分注プローブを含んでいてもよい。この場合、前記流入口は、前記試料分注プローブの洗浄時の廃液が流入する第1流入口、及び、前記試薬分注プローブの洗浄時の廃液が流入する第2流入口を含んでいてもよい。
このような構成によれば、試料分注プローブから試料を洗い流した廃液と、試薬分注プローブから試薬を洗い流した廃液とが、それぞれ異なる流入口を介してバッファ空間内に流入する。これにより、廃液中の試料及び試薬が混和して不溶物が発生するのを防止することができるため、不溶物が堆積することにより流入口が詰まるのを防止することができる。
前記第1流入口は、前記第2流入口よりも高く、かつ、当該第1流入口から前記バッファ空間内に流入する廃液が前記第2流入口に接触しない位置に設けられていてもよい。
このような構成によれば、試料分注プローブから試料を洗い流した廃液が第1流入口からバファ空間内に流入する際、その廃液がバッファ空間内を落下して第2流入口に接触するのを防止することができる。これにより、第2流入口において廃液中の試料及び試薬が混和して不溶物が発生するのを防止することができるため、第2流入口が不溶物で詰まるのを防止することができる。
本発明によれば、バッファ部において流出口が詰まった場合でも、バッファ空間における流出口よりも高い位置に設けられたオーバーフロー出口から廃液をオーバーフローさせ、廃液タンクに廃液を良好に導くことができる。
本発明の一実施形態に係る前処理装置を備えた分析システムの構成例を示す概略正面図である。 前処理装置の構成例を示す平面図である。 分離容器の構成例を示す側面図である。 図3Aの分離容器の平面図である。 図3BのA−A断面を示す断面図である。 回収容器の構成例を示す側面図である。 図4Aの回収容器の平面図である。 図4BのB−B断面を示す断面図である。 分離容器及び回収容器が重ね合せられた状態の前処理キットを示す断面図である。 濾過ポートの構成例を示す平面図である。 図6AのX−X断面を示す断面図である。 図6AのY−Y断面を示す断面図である。 濾過ポートに前処理キットを設置した状態を示す断面図である。 負圧負荷機構の構成例を示す概略図である。 廃液の流路について説明するための概略図である。 バッファ部の近傍の構成例を示した概略平面図である。 バッファ部の近傍の構成例を示した概略正面図である。 バッファ部の概略断面図である。
図1は、本発明の一実施形態に係る前処理装置1を備えた分析システムの構成例を示す概略正面図である。この分析システムは、前処理装置1、LC(液体クロマトグラフ)100及びMS(質量分析装置)200を備えており、前処理装置1により前処理を実行した試料が、LC100及びMS200に順次導入されて分析が行われる。
すなわち、本実施形態に係る分析システムは、前処理装置1に液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)が接続された構成となっている。ただし、このような構成に限らず、LC100又はMS200のいずれか一方が省略されることにより、前処理装置1により前処理を実行した試料が、LC100又はMS200のいずれか一方にのみに導入されるような構成であってもよい。
前処理装置1は、例えば血漿、血清、カフェイン水溶液などの試料や、試料に混合する試薬を分注位置に分注する分注装置として機能するものであり、分注位置に分注された試料及び試薬に対して、濾過、攪拌、温調といった各種の前処理を行う。これらの前処理が行われた後の試料は、LC100に備えられたオートサンプラ101を介してLC100に導入される。
LC100には、カラム(図示せず)が備えられており、当該カラム内を試料が通過する過程で分離された試料成分が、MS200に順次導入される。MS200は、LC100から導入された試料をイオン化するイオン化部201と、イオン化された試料を分析する質量分析部202とを備えている。
前処理装置1には、例えばタッチパネルを含む操作表示部1aが備えられている。分析者は、操作表示部1aの表示画面に対する操作により、前処理装置1の動作に関する入力を行うことができるとともに、操作表示部1aの表示画面に表示された前処理装置1の動作に関する情報を確認することができる。ただし、タッチパネル式の操作表示部1aが設けられた構成に限らず、例えば液晶表示器により構成される表示部と、操作キーなどにより構成される操作部とが、別々に設けられた構成であってもよい。
図2は、前処理装置1の構成例を示す平面図である。この前処理装置1では、分離容器50と回収容器54の組からなる前処理キットを試料ごとに1組用いて、各前処理キットに対して設定された前処理(濾過、攪拌、温調など)が実行される。
前処理装置1には、分注位置としての分注ポート32の他、分注ポート32に分注された試料に対して前処理を実行するための複数の処理ポートが設けられている。これにより、試料が収容された前処理キットをいずれかの処理ポートに設置することで、その前処理キットに収容されている試料に対して、各処理ポートに対応する前処理が実行されるようになっている。
処理ポートとしては、各前処理に対応付けて、濾過ポート30、廃棄ポート34、攪拌ポート36a、温調ポート38,40、転送ポート43及び洗浄ポート45などが設けられている。これらの各処理ポートは、複数種類の前処理をそれぞれ実行する複数の前処理部を構成している。
前処理キットを構成する分離容器50及び回収容器54は、搬送部としての搬送アーム24によって各処理ポート間で搬送される。搬送アーム24の先端側には、分離容器50及び回収容器54を保持するための保持部25が形成されている。搬送アーム24の基端部側は、鉛直軸29を中心に回転可能に保持されている。搬送アーム24は水平方向に延びており、鉛直軸29を中心に回転することにより、保持部25が水平面内で円弧状の軌道を描くように移動する。分離容器50及び回収容器54の搬送先である各処理ポートや、その他のポートは、全て保持部25が描く円弧状の軌道上に設けられている。
前処理キットには、試料容器6から試料が分注される。試料が収容された試料容器6は、試料設置部2に複数設置することができ、試料分注アーム20を用いて各試料容器6から試料が順次採取される。試料設置部2には、複数の試料容器6を保持する試料ラック4が、円環状に並べて複数設置される。試料設置部2は、水平面内で回転することにより、各試料ラック4を周方向に移動させる。これにより、所定の試料採取位置に各試料容器6を順次移動させることができる。
ここで、試料採取位置は、試料分注アーム20の先端部に設けられた試料分注プローブ20aの軌道上に位置しており、当該試料採取位置において試料分注プローブ20aにより試料容器6から試料が吸引される。試料容器6内の試料は、試料分注プローブ20aにより吸引された後、分注ポート32に設置された分離容器50に対して吐出されることにより分注される。
試料分注アーム20は、基端部側に設けられた鉛直軸22を中心に水平面内で回転可能であるとともに、鉛直軸22に沿って鉛直方向に上下動可能である。試料分注プローブ20aは、試料分注アーム20の先端部において鉛直下方に向かって延びるように保持されており、試料分注アーム20の動作に応じて、水平面内で円弧状の軌道を描く移動又は鉛直方向への上下動が行われる。
分注ポート32は、試料分注プローブ20aの軌道上で、かつ搬送アーム24の保持部25の軌道上となる位置に設けられている。分注ポート32は、未使用の分離容器50に対して試料分注プローブ20aから試料を分注するためのポートである。未使用の分離容器50は、搬送アーム24によって分注ポート32に搬送される。
試料ラック4が円環状に並べて配置された試料設置部2の中央部には、試薬容器10を設置するための試薬設置部8が設けられている。試薬設置部8に設置された試薬容器10内の試薬は、試薬分注アーム26を用いて採取される。試薬分注アーム26は、その基端部が搬送アーム24と共通の鉛直軸29によって支持されており、当該鉛直軸29を中心に水平面内で回転可能であるとともに、鉛直軸29に沿って鉛直方向に上下動可能である。
試薬分注アーム26の先端部には、試薬分注プローブ26aが鉛直下方に向かって延びるように保持されている。当該試薬分注プローブ26aは、試薬分注アーム26の動作に応じて、水平面内で搬送アーム24の保持部25と同一の円弧状の軌道を描く移動又は鉛直方向への上下動が行われる。
試薬設置部8は、試料設置部2とは独立して水平面内で回転可能となっている。試薬設置部8には、複数の試薬容器10が円環状に並べて配置され、試薬設置部8が回転することによって各試薬容器10が周方向に移動する。これにより、所定の試薬採取位置に所望の試薬容器10を移動させることができる。
ここで、試薬採取位置は、試薬分注アーム26の先端部に設けられた試薬分注プローブ26aの軌道上に位置しており、当該試薬採取位置において試薬分注プローブ26aにより試薬容器10から試薬が吸引される。試薬容器10内の試薬は、試薬分注プローブ26aにより吸引された後、分注ポート32に設置された分離容器50に対して吐出されることにより分注され、当該分離容器50内の試料に添加される。
分離容器50及び回収容器54は、試料設置部2や試薬設置部8とは異なる位置に設けられた容器保持部12により保持されている。容器保持部12には、未使用の分離容器50及び回収容器54が重ねられた状態の複数組の前処理キットが、円環状に並べて配置される。容器保持部12には、水平面内で回転する回転部14と、当該回転部14に対して着脱可能な複数の容器ラック16とが備えられている。
各容器ラック16には、複数の前処理キットを保持することができる。複数の容器ラック16は、回転部14上に円環状に並べて設置される。円環状に並べて配置された複数の容器ラック16により、複数の前処理キットを保持する円環状の保持領域が形成される。回転部14は、水平面内で回転することにより、各容器ラック16を保持領域の周方向に変位させる。これにより、複数の前処理キットを所定の搬送位置に順次移動させることができる。ここで、搬送位置は、搬送アーム24の先端部に設けられた保持部25の軌道上に位置しており、当該搬送位置において保持部25により分離容器50又は回収容器54が保持され、搬送先のポートへと搬送される。
このように、複数の容器ラック16に分割して前処理キットを保持することにより、各容器ラック16を回転部14に対して個別に着脱することが可能になる。これにより、いずれかの容器ラック16に保持された分離容器50又は回収容器54に対する処理が行われている場合であっても、他の容器ラック16を着脱して別の作業を行うことができるため、前処理効率を向上させることができる。
ただし、分離容器50及び回収容器54は、容器ラック16を介して容器保持部12により保持されるような構成に限らず、例えば容器保持部12に直接保持されるような構成であってもよい。また、分離容器50及び回収容器54は、互いに重ね合せられた状態で容器保持部12により保持されるような構成に限らず、分離容器50及び回収容器54が個別に保持されるような構成であってもよい。さらに、複数の容器ラック16は、円環状に並べて配置されるような構成に限らず、例えば円弧状に並べて配置されるような構成であってもよい。この場合は、円環状ではなく、円弧状の保持領域に複数の分離容器50及び回収容器54が保持される。
容器保持部12には、異なる分離性能を有する分離層が設けられた複数種類(例えば2種類)の分離容器50を分析者が設置しておくことができる。これらの分離容器50は、試料の分析項目に応じて使い分けられ、分析者によって指定された分析項目に応じた分離容器50が容器保持部12から選択されて搬送される。ここで、分析項目とは、前処理装置1で前処理が施された試料を用いて引き続き行われる分析の種類であり、例えばLC100又はMS200により実行される分析の種類である。
図3Aは、分離容器50の構成例を示す側面図である。図3Bは、図3Aの分離容器50の平面図である。図3Cは、図3BのA−A断面を示す断面図である。図4Aは、回収容器54の構成例を示す側面図である。図4Bは、図4Aの回収容器54の平面図である。図4Cは、図4BのB−B断面を示す断面図である。図5は、分離容器50及び回収容器54が重ね合せられた状態の前処理キットを示す断面図である。
分離容器50は、図3A〜図3Cに示すように、試料や試薬を収容する内部空間50aを有する円筒状の容器である。内部空間50aの底部には、分離層52が設けられている。分離層52とは、例えば試料を通過させて特定成分と物理的又は化学的に反応することで、試料中の特定成分を選択的に分離させる機能を有する分離剤又は分離膜である。
分離層52を構成する分離剤としては、例えばイオン交換樹脂、シリカゲル、セルロース、活性炭などを用いることができる。また、分離膜としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜、ナイロン膜、ポリプロピレン膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜、アクリル共重合体膜、混合セルロース膜、ニトロセルロース膜、ポリエーテルスルホン膜、イオン交換膜、グラスファイバー膜などを用いることができる。
試料中の蛋白質を濾過によって取り除くための除蛋白フィルタ(分離膜)としては、PTFE、アクリル共重合体膜などを用いることができる。この場合、除蛋白フィルタの目詰まりを防止するために、分離層52の上側にプレフィルタ(図示せず)を設けてもよい。このようなプレフィルタとしては、例えばナイロン膜、ポリプロピレン膜、グラスファイバー膜などを用いることができる。プレフィルタは、試料中から粒径の比較的大きい不溶物質や異物を取り除くためのものである。このプレフィルタにより、除蛋白フィルタが粒径の比較的大きい不溶物質や異物によって目詰まりするのを防止することができる。
分離容器50の上面には、試料や試薬を注入するための開口50bが形成されている。また、分離容器50の下面には、分離層52を通過した試料を抽出するための抽出口50dが形成されている。分離容器50の外周面の上部には、搬送アーム24の保持部25を係合させるための鍔部50cが周方向に突出するように形成されている。
分離容器50の外周面の中央部には、当該分離容器50が回収容器54とともに濾過ポート30に収容されたときに濾過ポート30の縁に接触するスカート部51が設けられている。スカート部51は、分離容器50の外周面から周方向に突出し、そこから下方に延びるように断面L字状に形成されることにより、分離容器50の外周面との間に一定の空間を形成している。
回収容器54は、図4A〜図4C及び図5に示すように、分離容器50の下部を収容し、分離容器50の抽出口50dから抽出された試料を回収する有底円筒状の容器である。回収容器54の上面には、分離容器50の下部を挿入させる開口54bが形成されている。回収容器54の内部には、分離容器50におけるスカート部51よりも下側の部分を収容する内部空間54aが形成されている。回収容器54の外周面の上部には、分離容器50と同様に、搬送アーム24の保持部25を係合させるための鍔部54cが周方向に突出するように形成されている。
図5のように分離容器50及び回収容器54が重ね合せられた状態では、回収容器54の上部がスカート部51の内側に入り込む。分離容器50の外径は、回収容器54の内径よりも小さく形成されている。これにより、回収容器54の内部空間54aに収容された分離容器50の外周面と、回収容器54の内周面との間に、僅かな隙間が形成される。容器保持部12には、分離容器50の下部が回収容器54内に収容された状態(図5の状態)で、分離容器50及び回収容器54が設置される。
回収容器54の上面の縁には、3つの切欠き54dが形成されている。したがって、図5のように分離容器50及び回収容器54が重ね合せられることにより、回収容器54の上面がスカート部51の内面に当接した状態であっても、切欠き54を介して、回収容器54の内側と外側とを連通させることができる。ただし、切欠き54dの数は、3つに限らず、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。また、切欠き54dに限らず、例えば小穴が形成された構成などであってもよい。
再び図2を参照すると、濾過ポート30は、容器保持部12の内側に設けられている。すなわち、濾過ポート30の外周に並べて配置された複数の容器ラック16により、円環状又は円弧状の保持領域が形成されており、当該保持領域に複数の分離容器50及び回収容器54が保持されている。このように、分離容器50及び回収容器54の保持領域が円環状又は円弧状に形成され、その中央部の空きスペースに濾過ポート30の設置スペースを確保することによって、よりコンパクトな構成とすることができる。
特に、本実施形態では、分離容器50及び回収容器54が重ねられた状態で保持領域に保持されるため、分離容器50及び回収容器54の保持領域を別々に設ける必要がない。したがって、より多くの分離容器50及び回収容器54を小さい保持領域で保持することができる。これにより、分離容器50及び回収容器54の保持領域を小さくすることができ、さらにコンパクトな構成とすることができる。
また、円環状又は円弧状に形成された保持領域の中央部に濾過ポート30を設けることにより、保持領域に保持されている複数の分離容器50及び回収容器54と濾過ポート30の距離を比較的短くすることができる。これにより、分離容器50及び回収容器54を濾過ポート30に搬送する時間を短縮することができるため、前処理効率を向上させることができる。
濾過ポート30は、分離容器50内の試料に圧力を付与することにより分離層52で試料を分離させる濾過部を構成している。本実施形態では、例えば2つの濾過ポート30が搬送アーム24の保持部25の軌道上に並べて設けられている。分離容器50及び回収容器54は、図5のように重ね合せられた状態で各濾過ポート30に設置され、負圧によって分離容器50内の分離層52で分離された試料が、回収容器54内に回収されるようになっている。ただし、分離容器50及び回収容器54は、互いに重ね合せられた状態で各濾過ポート30に設置されるような構成に限らず、分離容器50及び回収容器54が個別に設置されるような構成であってもよい。また、濾過ポート30の数は、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
攪拌ポート36aは、容器保持部12の近傍に設けられた攪拌部36に、例えば搬送アーム24の保持部25の軌道上に並べて3つ設けられている。攪拌部36は、各攪拌ポート36aを個別に水平面内で周期的に動作させる機構を有している。このような機構により、各攪拌ポート36aに配置された分離容器50内の試料を攪拌することができる。ただし、攪拌ポート36aの数は、3つに限らず、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
温調ポート38,40は、例えばヒータとペルチェ素子により温度制御された熱伝導性のブロックに設けられており、温調ポート38,40に収容された分離容器50又は回収容器54の温度が一定温度に調節される。温調ポート38は、分離容器50用であり、例えば搬送アーム24の保持部25の軌道上に並べて4つ配置されている。温調ポート40は、回収容器54用であり、分離容器50用の温調ポート38と同様、例えば搬送アーム24の保持部25の軌道上に並べて4つ配置されている。ただし、温調ポート38,40の数は、それぞれ4つに限らず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
図6Aは、濾過ポート30の構成例を示す平面図である。図6Bは、図6AのX−X断面を示す断面図である。図6Cは、図6AのY−Y断面を示す断面図である。図6Dは、濾過ポート30に前処理キットを設置した状態を示す断面図である。
濾過ポート30は、例えば凹部からなり、当該凹部が前処理キットを設置するための設置空間30aを構成している。すなわち、搬送アーム24により容器保持部12から搬送された分離容器50及び回収容器54が、図6Dに示すように、互いに重ねられた状態で設置空間30a内に設置される。このとき、設置空間30aには、まず回収容器54が収容され、その後に回収容器54の内部空間54aに分離容器50の下部が収容される。
濾過ポート30内には、回収容器54を挟み込むように保持する保持部材31が設けられている。保持部材31は、例えば上方が開放されたU字状の金属部材であり、上方に延びた2本の腕部が濾過ポート30の内径方向へ弾性的に変位可能な2本の板ばねを構成している。保持部材31の2本の板ばね部分は、例えば上端部と下端部の間の部分において、互いの間隔が最も狭くなるように内側に窪んだ湾曲形状又は屈曲形状となっている。2本の板ばね部分の間隔は、上端部及び下端部では回収容器54の外径よりも大きく、最も間隔が狭い部分では回収容器54の外径よりも小さくなっている。
上記のような保持部材31の形状により、濾過ポート30の設置空間30a内に回収容器54が差し込まれた場合には、回収容器54が下降するのに応じて保持部材31の2本の板ばね部分が開き、その弾性力によって回収容器54が設置空間30aに保持される。回収容器54は、保持部材31の2本の板ばね部分により、互いに対向する2方向から均等に押圧され、設置空間30aの中央部に保持される。保持部材31は、設置空間30a内に固定されており、回収容器54が取り出される際に回収容器54とともに浮き上がらないようになっている。
濾過ポート30の上面開口部の縁には、弾性力を有するリング状の封止部材60が設けられている。封止部材60は、例えば濾過ポート30の上面開口部の縁に設けられた窪みに嵌め込まれている。封止部材60の材質は、例えばシリコーンゴムやEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)などの弾性材料である。濾過ポート30の設置空間30a内に回収容器54及び分離容器50が設置された場合には、分離容器50のスカート部51の下端が封止部材60に当接し、スカート部51によって設置空間30aが密閉された状態となる。ただし、分離容器50における封止部材60との接触部分は、スカート部51のような形状の部材により構成されるものに限らず、例えばフランジ部などの他の各種形状の接触部により構成することができる。
設置空間30aには、濾過ポート30の底面から減圧用の流路56が連通している。流路56には、負圧負荷機構55の流路57が接続されている。負圧負荷機構55は、例えば真空ポンプを含み、設置空間30a内に負圧を負荷する負圧負荷部を構成している。濾過ポート30に分離容器50及び回収容器54が収容された状態で、負圧負荷機構55により設置空間30a内を減圧すれば、設置空間30a内が負圧になる。
負圧になった設置空間30aには、回収容器54の切欠き54d、及び、回収容器54の内周面と分離容器50の外周面との隙間を介して、回収容器54の内部空間54aが連通している。分離容器50の上面は大気開放されているため、分離容器50の内部空間50aと回収容器54の内部空間54aとの間に分離層52を介して圧力差が生じる。したがって、分離容器50の内部空間50aに収容されている試料のうち分離層52を通過することができる成分のみが、その圧力差によって分離層52で分離され、回収容器54の内部空間54a側に抽出される。
図7は、負圧負荷機構55の構成例を示す概略図である。2つの濾過ポート30は、共通の真空タンク66に接続されている。各濾過ポート30と真空タンク66との間は、それぞれ流路57により接続されており、各流路57には圧力センサ62及び3方バルブ64が設けられている。各濾過ポート30の設置空間30a内の圧力は、各圧力センサ62により検知される。各3方バルブ64は、濾過ポート30と真空タンク66との間を接続した状態、流路57のうち濾過ポート30側を大気開放した状態(図7の状態)、又は、流路57のうち濾過ポート30側の端部を密閉した状態のいずれかに切り替えることができる。
真空タンク66には、圧力センサ68が接続されるとともに、3方バルブ69を介して真空ポンプ58が接続されている。したがって、3方バルブ69を切り替えることにより、必要に応じて真空タンク66に真空ポンプ58を接続し、真空タンク66内の圧力を調節することができる。
いずれかの濾過ポート30において試料の抽出処理を実行する際には、その濾過ポート30と真空タンク66との間を接続し、当該濾過ポート30の設置空間30a内の圧力を検知する圧力センサ62の値が所定値となるように調節する。その後、流路57のうち当該濾過ポート30側の端部を密閉した状態にする。これにより、濾過ポート30の設置空間30aが密閉系となり、設置空間30a内の減圧状態が維持されることによって、試料の抽出が行われる。
再び図2を参照すると、この前処理装置1には、回収容器54に抽出された試料をオートサンプラ101側に転送するための試料転送部42が備えられている。試料転送部42は、水平面内で一方向(図2の矢印方向)に移動する移動部44を備えており、当該移動部44の上面に、回収容器54を設置するための転送ポート43が設けられている。移動部44は、例えばラックピニオン機構を有する駆動機構の動作により移動する。
オートサンプラ101側への試料の転送を行っていないときには、搬送アーム24の保持部25の軌道上(図2に実線で示されている位置)に転送ポート43が配置される。この状態で、搬送アーム24による転送ポート43への回収容器54の設置や、転送ポート43からの回収容器54の回収が行われる。
オートサンプラ101側への試料の転送を行う際には、抽出された試料を収容している回収容器54が転送ポート43に設置された後、移動部44が前処理装置1の外側方向へ移動し、転送ポート43がオートサンプラ101に隣接する位置(図2に破線で示されている位置)に配置される。この状態で、オートサンプラ101に設けられたサンプリング用のプローブにより、回収容器54内の試料が吸引される。
オートサンプラ101による試料吸引が終了すると、移動部44は元の位置(図2に実線で示されている位置)に戻され、搬送アーム24によって回収容器54が回収される。使用済みの回収容器54は、搬送アーム24によって廃棄ポート34に搬送され、廃棄される。廃棄ポート34は、搬送アーム24の保持部25の軌道上における分注ポート32の近傍に配置されており、使用済みの分離容器50及び回収容器54が廃棄される。
試料分注プローブ20aの軌道上には、当該試料分注プローブ20aの洗浄を行うための洗浄ポート45が設けられている。また、試薬分注プローブ26aの軌道上には、当該試薬分注プローブ26aの洗浄を行うための洗浄ポート46(図8参照)が設けられている。洗浄ポート45,46などからの廃液は、複数の配管により構成される流路を通って廃液タンク9(図8参照)に回収される。
図8は、廃液の流路について説明するための概略図である。本実施形態では、試料分注プローブ20aの洗浄を行うための洗浄ポート45の他、試薬分注プローブ26aの洗浄を行うための洗浄ポート46、試薬設置部8を冷却するための保冷部81、分注ポート32などからの廃液が、共通のバッファ部7を介して廃液タンク9に回収されるようになっている。
洗浄ポート45,46は、純水などの洗浄液でプローブ20a,26aを洗浄する洗浄部を構成している。試料分注プローブ20aの洗浄時には、当該試料分注プローブ20aを洗浄ポート45に挿入した状態で、図示していない洗浄液供給ポンプから、洗浄液を試料分注プローブ20a内部へ供給して、洗浄ポート45内へ吐出することにより、吐出された洗浄液で洗浄ポート45内の試料分注プローブ20aを洗浄することができる。同様に、試薬分注プローブ26aの洗浄時には、当該試薬分注プローブ26aを洗浄ポート46に挿入した状態で、図示していない洗浄液供給ポンプから、洗浄液を試薬分注プローブ26a内部へ供給して、洗浄ポート46内へ吐出することにより、吐出された洗浄液で洗浄ポート46内の試薬分注プローブ26aを洗浄することができる。洗浄ポート45,46からの廃液は、それぞれ流入管451,461を介してバッファ部7に流入する。
保冷部81からは、結露により生じた水が廃液として流出し、その廃液が流入管811を介してバッファ部7に流入する。流入管811には、その途中に設けられた合流管810を介して配管321が合流している。この配管321は、分注ポート32に接続されており、分注ポート32に分離容器50がない状態で誤って試料又は試薬が吐出された場合に、その試料又は試薬が廃液として配管321へと流出し、合流管810から流入管811に合流してバッファ部7に流入するようになっている。
バッファ部7内には、バッファ空間71が形成されている。バッファ空間71には、各流入管451,461,811が、それぞれ異なる流入口72,73,74を介して連通している。これにより、洗浄ポート45,46、保冷部81及び分注ポート32からの廃液は、各流入管451,461,811を介して流入口72,73,74へと導かれ、各流入口72,73,74からバッファ空間71内に流入するようになっている。バッファ空間71内に流入した廃液は、流出口75から流出し、配管91を介して廃液タンク9へと導かれることにより、当該廃液タンク9内に貯留される。
このように、試料分注プローブ20aから試料を洗い流した廃液は、流入口(第1流入口)72を介してバッファ空間71内に流入し、試薬分注プローブ26aから試薬を洗い流した廃液は、流入口72とは異なる流入口(第2流入口)73を介してバッファ空間71内に流入する。これにより、廃液中の試料及び試薬が混和して不溶物が発生するのを防止することができるため、不溶物が堆積することにより流入口72,73が詰まるのを防止することができる。
本実施形態では、流入口72が、流入口73よりも高い位置に設けられている。また、流入口72は、流入口73よりもバッファ空間71内に突出した位置に設けられることにより、流入口72からバッファ空間71内に流入する廃液が、バッファ空間71内を落下して流入口73に接触しないようになっている。
これにより、流入口73において廃液中の試料及び試薬が混和して不溶物が発生するのを防止することができるため、流入口73が不溶物で詰まるのを防止することができる。なお、本実施形態では、流入口74が、流入口72よりもさらにバッファ空間71内に突出した位置に設けられることにより、流入口74からバッファ空間71内に流入する廃液が流入口72,73に接触しないようになっている。
バッファ空間71は、流入口72,73,74及び流出口75よりも大きい断面積を有している。これにより、流入口72,73,74から流入する廃液が多い場合でも、流入した廃液がバッファ空間71内に一旦貯留され、流出口75へと導かれるようになっている。流入口72,73,74は、バッファ空間71における流出口75よりも高い位置に形成されている。また、バッファ空間71において流出口75よりも高く、かつ、流入口72,73,74よりも低い位置には、オーバーフロー出口76が形成されている。
本実施形態では、流出口75が詰まった場合に、バッファ空間71内の廃液をオーバーフロー出口76からオーバーフローさせ、当該オーバーフロー出口76に接続された配管92へと導くことができるようになっている。この配管92は、バッファ部7に形成された貫通孔77に接続されており、当該貫通孔77は配管93を介して廃液タンク9に接続されている。これにより、オーバーフロー出口76からオーバーフローした廃液は、配管92、貫通孔77及び配管93を介して廃液タンク9に良好に導くことができるため、廃液が逆流して洗浄ポート45,46や分注ポート32などから漏れ出すのを防止することができる。
バッファ部7から廃液タンク9に向かう配管91,93は、合流管94により合流されて廃液タンク9に一度に接続される。具体的には、廃液タンク9を開閉するためのキャップ95に対して、合流管94が回転可能に取り付けられている。これにより、分析者は合流管94を回転しないように把持しながらキャップ95を回転させることにより、配管91,93が互いに絡まるのを防止しつつキャップ95を廃液タンク9に対して着脱することができる。
このようにしてキャップ95を着脱することにより、廃液タンク9内の廃液を捨てる作業を容易に行うことができる。すなわち、廃液タンク9内の廃液を捨てる際には、キャップ95を着脱することにより、配管91,93を廃液タンク9に対して一度に着脱することができるため、メンテナンスが容易になる。廃液タンク9は、例えば水平方向にスライド可能なラック90により保持されており、当該ラック90を前処理装置1から引き出すことにより、廃液タンク9に対するメンテナンスを行うことができる。
各流入管451,461,811の途中には、それぞれ分岐管452,462,812を介して配管453,463,813が接続されている。これらの配管453,463,813は、複数の合流管96,97,98を介して、バッファ空間71からオーバーフローする廃液が流れる配管92に接続されている。すなわち、各流入管451,461,811は、それぞれ分岐管452,462,812から分岐して共通の配管92に連通している。また、分岐管452,462,812及び配管453,463,813は、流入管451,461,811を通って来た液が配管453,463,813に流れ込まないように、各分岐の配管453,463,813側が他方の分岐側より高い位置になるよう保持されている。
したがって、流出口75ではなく流入口72,73,74が詰まった場合でも、流入管451,461,811から分岐する分岐管452,462,812を介して廃液が配管92に導かれる。これにより、オーバーフロー出口76からオーバーフローする廃液と共通の配管92を介して、廃液を廃液タンク9に導くことができるため、流路が複雑になるのを防止しつつ、廃液が逆流して洗浄ポート45,46や分注ポート32などから漏れ出すのをさらに効果的に防止することができる。
図9は、バッファ部7の近傍の構成例を示した概略平面図である。図10は、バッファ部7の近傍の構成例を示した概略正面図である。図11は、バッファ部7の概略断面図である。バッファ部7は、例えば内部にバッファ空間71が形成された本体70と、本体70の上面開口を塞ぐことによりバッファ空間71を密閉する蓋78とを備えている。これにより、本体70に対して蓋78を着脱することによって、バッファ空間71内の堆積物などを除去することができる。本体70は、円筒状に形成されており、その中心軸線Lが上下方向に対して若干傾斜するように配置されている。
各流入口72,73,74は、バッファ空間71を挟んで流出口75とは反対側に形成されている。これにより、各流入口72,73,74からバッファ空間71内に流入する廃液が、バッファ空間71を挟んで各流入口72,73,74の反対側に形成された流出口75へと良好に導かれる。
オーバーフロー出口76は、各流入口72,73,74と同様に、バッファ空間71を挟んで流出口75とは反対側に形成されている。すなわち、オーバーフロー出口76は、バッファ空間71に対して各流入口72,73,74側に設けられているため、流出口75が詰まっていないときに、各流入口72,73,74からバッファ空間71内に流入する廃液がオーバーフロー出口76からオーバーフローするのを防止することができる。
貫通孔77は、バッファ空間71に対して各流入口72,73,74側に形成された第1開口771と、バッファ空間71に対して流出口75側に形成された第2開口772とを連通するように、バッファ部7の本体70内におけるバッファ空間71よりも下方に形成されている。当該貫通孔77は、例えば本体70の中心軸線Lに対して直交する方向に向かって一直線状に延びている。
第1開口771には、オーバーフロー出口76に連通する配管(第1配管)92が接続されている。第2開口772には、廃液タンク9に連通する配管(第2配管)93が接続されている。また、上述の通り、流出口75には、廃液タンク9に連通する配管(第3配管)91が接続されている。
これにより、オーバーフロー出口76からオーバーフローする廃液は、配管92、第1開口771、貫通孔77、第2開口772及び配管93を介して廃液タンク9に導かれる。第1開口771は、オーバーフロー出口76と同様に、バッファ空間71に対して各流入口72,73,74側に設けられているため、オーバーフロー出口76と第1開口771とを接続する配管92が複雑な流路を構成するのを防止し、配管92を詰まりにくくすることができる。
また、第2開口772は、バッファ空間71に対して流出口75側に設けられているため、第2開口772を廃液タンク9に接続する配管93と、流出口75を廃液タンク9に接続する配管91とを、互いに近接配置して短い流路で廃液タンク9に接続することができる。この例では、各配管91,93が上下に並べて近接配置されている。
これにより、配管91,93が複雑な流路を構成するのを防止し、これらの配管91,93を詰まりにくくすることができるとともに、これらの配管91,93に対するメンテナンスを容易に行うことができる。各配管91,93には、一方の配管91が流出口75に連通し、他方の配管93がオーバーフロー出口76に連通することが分析者に分かりやすいように、ラベルなどが取り付けられていることが好ましい。
本実施形態では、廃液タンク9に連通する配管91,93が、透明な材料により形成されている。これにより、透明な配管91,93の内部を視認して、詰まっていないかどうかを容易に確認することができる。特に、配管91,93は互いに近接配置されているため、これらの配管91,93を透明とすれば、これらの配管91,93が詰まっていないかどうかを一度に容易に確認することができる。ただし、配管91,93は透明な構成に限らず、例えば半透明であってもよい。また、配管91,93に限らず、配管91,92,93の少なくとも1つが透明又は半透明であればよい。
また、図11に示すように、廃液タンク9に連通する配管91,93の内部には、例えばステンレスなどの金属により形成されたワイヤ911,931が設けられている。これらのワイヤ911,931は、各配管91,93内の一端部から他端部まで螺旋状に延びており、各配管91,93に外部から作用する力に対して反発力を生じる。これにより、各ワイヤ911,931は、各配管91,93の内部の流路が閉塞するのを防止する閉塞防止部材として機能する。
したがって、各配管91,93内の流路が閉塞することによって廃液が逆流して漏れ出すのを防止することができる。特に、配管91,93は、廃液タンク9内の廃液を捨てる際に廃液タンク9に対して着脱されるため変形する機会が多いが、これらの配管91,93にワイヤ911,931を設ければ、変形によって流路が閉塞するのを効果的に防止することができる。ただし、配管91,93に限らず、配管91,92,93の少なくとも1つにワイヤが設けられていればよい。また、閉塞防止部材としては、流路が閉塞するのを防止することができるような部材であれば、ワイヤに限らず、他の任意の部材を用いることができる。
本実施形態において、バッファ部7は、その上部が流出口75側に向かって傾斜するように配置されている。すなわち、バッファ部7の本体70の中心軸線Lが、上方に向かうにつれて徐々に手前側(廃液タンク9を前処理装置1から引き出す方向)に近付くように傾斜している。また、図11に示すように、バッファ部7の本体70の上部には、バッファ空間71に対して流出口75側(手前側)に開口部79が形成されている。図9に示すように、バッファ部7は、廃液タンク9の上方、すなわちラック90の上方に位置している。
このように、バッファ部7が傾斜するように配置されることにより、仮に流出口75及びオーバーフロー出口76の両方が詰まった場合でも、バッファ部7の上部の開口部79から流出口75側(手前側)に廃液を溢れ出させることができる。これにより、廃液が逆流するのを防止することができるとともに、開口部79から溢れ出る廃液を流出口75側に設けられた廃液タンク9のラック90上に落下させることができるため、廃液が前処理装置1の外部に漏れ出すのを効果的に防止することができる。
以上の実施形態では、3つの流入口72,73,74がバッファ部7に形成された構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、例えば分注ポート32や保冷部81に連通する流入口74が省略されたり、他の部分に連通する流入口が形成された構成であってもよい。また、試料分注プローブ20aを洗浄する洗浄ポート45、及び、試薬分注プローブ26aを洗浄する洗浄ポート46が、いずれも流入口72,73を介してバッファ部7内のバッファ空間71に連通するような構成に限らず、いずれか一方の流入口72,73が省略されてもよい。
以上の実施形態では、試料分注プローブ20a又は試薬分注プローブ26aから吐出される試料又は試薬の分注位置が、分注ポート32上の分離容器50内である場合について説明した。しかし、上記実施形態のような分離容器50に限らず、他の構成を有する分離容器に試料又は試薬が分注される際や、分離容器以外の分注位置に試料又は試薬が分注されるような構成であってもよい。
また、以上の実施形態では、濾過ポート30の設置空間30a内を負圧とすることにより、分離容器50内の試料が分離されるような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、分離容器50内を加圧することにより、分離容器50内の試料が分離されるような構成であってもよい。
1 前処理装置
1a 操作表示部
2 試料設置部
4 試料ラック
6 試料容器
7 バッファ部
8 試薬設置部
9 廃液タンク
10 試薬容器
12 容器保持部
14 回転部
16 容器ラック
20 試料分注アーム
20a 試料分注プローブ
22 鉛直軸
24 搬送アーム
25 保持部
26 試薬分注アーム
26a 試薬分注プローブ
29 鉛直軸
30 濾過ポート
30a 設置空間
31 保持部材
32 分注ポート
34 廃棄ポート
36 攪拌部
36a 攪拌ポート
38,40 温調ポート
42 試料転送部
43 転送ポート
44 移動部
45,46 洗浄ポート
50 分離容器
51 スカート部
52 分離層
54 回収容器
55 負圧負荷機構
70 本体
71 バッファ空間
72,73,74 流入口
75 流出口
76 オーバーフロー出口
77 貫通孔
78 蓋
79 開口部
81 保冷部
90 ラック
91,92,93 配管
94 合流管
95 キャップ
96,97,98 合流管
100 LC
101 オートサンプラ
200 MS
201 イオン化部
202 質量分析部
321 配管
451,461,811 流入管
452,462,812 分岐管
453,463,813 配管
771,772 開口
810 合流管
811 流入管
911,931 ワイヤ

Claims (10)

  1. 試料又は試薬を吸引して分注するプローブと、
    前記プローブを洗浄液で洗浄する洗浄部と、
    前記洗浄部からの廃液が流入するバッファ部と、
    前記バッファ部を介して導かれた廃液が貯留される廃液タンクとを備え、
    前記バッファ部には、
    前記洗浄部からの廃液が流入する流入口と、
    前記廃液タンクへと廃液が流出する流出口と、
    前記流入口から流入した廃液を前記流出口へと導くバッファ空間と、
    前記バッファ空間における前記流出口よりも高い位置に設けられ、前記バッファ空間からオーバーフローする廃液を前記廃液タンクに導くオーバーフロー出口とが形成されていることを特徴とする前処理装置。
  2. 前記流入口及び前記流出口は、前記バッファ空間を挟んで互いに反対側に形成されており、
    前記オーバーフロー出口は、前記バッファ空間に対して前記流入口側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の前処理装置。
  3. 前記バッファ部には、前記バッファ空間に対して前記流入口側に設けられた第1開口と、前記バッファ空間に対して前記流出口側に設けられた第2開口と、前記第1開口及び前記第2開口を連通する貫通孔とが形成されており、
    前記オーバーフロー出口を前記第1開口に接続する第1配管と、
    前記第2開口を前記廃液タンクに接続する第2配管と、
    前記流出口を前記廃液タンクに接続する第3配管とをさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の前処理装置。
  4. 前記第2配管及び第3配管を合流させて前記廃液タンクに接続する合流管をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の前処理装置。
  5. 前記第1配管、前記第2配管及び前記第3配管の少なくとも1つが透明又は半透明であることを特徴とする請求項3又は4に記載の前処理装置。
  6. 前記第1配管、前記第2配管及び前記第3配管の少なくとも1つには、その内部の流路が閉塞するのを防止する閉塞防止部材が設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の前処理装置。
  7. 前記バッファ部は、その上部が前記流出口側に向かって傾斜するように配置されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の前処理装置。
  8. 前記洗浄部を前記流入口に接続する流入管と、
    前記流入管から分岐して前記第1配管に連通する分岐管とをさらに備えたことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の前処理装置。
  9. 前記プローブは、試料を吸引して分注する試料分注プローブ、及び、試薬を吸引して分注する試薬分注プローブを含み、
    前記流入口は、前記試料分注プローブの洗浄時の廃液が流入する第1流入口、及び、前記試薬分注プローブの洗浄時の廃液が流入する第2流入口を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の前処理装置。
  10. 前記第1流入口は、前記第2流入口よりも高く、かつ、当該第1流入口から前記バッファ空間内に流入する廃液が前記第2流入口に接触しない位置に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の前処理装置。
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