JP2016203072A - 微生物を利用した電気化学デバイス用触媒成分の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属酸化物に含まれる金属元素の価数を容易に調節できる過電圧の小さい電気化学デバイス用触媒成分の製造方法を提供する。
【解決手段】金属元素の酸化能を有する微生物を前記金属元素を含む液に接触させて、マンガン価数が3.0〜3.9のマンガン酸化物からなる、電気化学デバイス用触媒成分を製造する方法。前記微生物は、酸化酵素、特にMn酸化酵素生成能力のある菌であれば良く、特に好ましくはアンモニウム属の真菌が好ましい、電気化学デバイス用触媒成分の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】金属元素の酸化能を有する微生物を前記金属元素を含む液に接触させて、マンガン価数が3.0〜3.9のマンガン酸化物からなる、電気化学デバイス用触媒成分を製造する方法。前記微生物は、酸化酵素、特にMn酸化酵素生成能力のある菌であれば良く、特に好ましくはアンモニウム属の真菌が好ましい、電気化学デバイス用触媒成分の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、燃料電池などの電気化学デバイスに用いる触媒成分を、微生物を利用して製造する方法に関する。本発明はまた、微生物を利用した製造方法により製造された電気化学デバイス用触媒成分を用いた電気化学デバイス触媒、正極、および電気化学デバイスに関する。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、高い出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。
正極活物質に酸素(空気)、負極活物質に燃料を用いて、通常の燃料反応の代わりに電池内部で燃料を電気化学的に酸化し、生じるエネルギーを電気として取り出す電池を一般的には燃料電池と称している。このような燃料電池はエネルギー変換効率が高く、環境汚染に対する影響も少ないため、さまざまな種類の燃料電池が近年研究・開発されている。
例えば、燃料電池の一種である空気電池は、正極活物質として活性炭などに吸着した酸素を用いる一次電池であり、当該酸素は空気中から大量に供給されるため、正極活物質自体を特段必要としない。そのため、エネルギー密度や活物質の利用効率などに優れているだけでなく、大気中の酸素を使用するため、環境負荷が小さい電池として注目を浴びている。
一般的な空気電池は、集電体、正極触媒、および電解質を含むセパレータが順次積層された空気通気口孔を有する凹型の正極ケースと、負極活物質が充填され、かつ前記正極ケースより一回り小さい負極ケースと、が重ね合わせに密着した構造である。また、当該空気電池は、前記正極ケースと前記負極ケースとの間をガスケットで封止した構造となっている。また、当該空気電池の一般的な原理は、空気通気口孔から供給される酸素(O2)を正極触媒により水酸化イオン(OH−)などに還元し、負極活物質(M+)を水酸化イオンなどで酸化することで、電気化学反応が進行する(図1参照)。
空気電池における正極側の正極触媒としては、一般にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、または活性炭などのカーボンと、白金またはマンガン酸化物などの金属との混合物などを用いる。正極触媒内における酸素の還元反応は、固相である正極触媒と、液相である電解液と、気相である空気との三相の表面が互いに接触した界面(いわゆる三相界面)によって進行するといわれている。そのため、できる限り外部の酸素を還元し易くする観点から、正極触媒である金属を微粒子状にしてカーボンなどの導電性担体に担持している。
このように酸素の還元反応に関与する正極触媒に着目した技術として特許文献1を挙げることができる。当該特許文献1は、酸素還元能を有する金属フタロシアニン等の金属キレート化合物を含む触媒や貴金属触媒などは大きな触媒効果を期待できるものの、正極の再生使用は困難であることを課題としている。当該課題を解決するために、特許文献1では微粒子状のマンガン酸化物を触媒に用いることが開示されている。
また、空気電池に限らず燃料電池の他の一種である固体高分子形燃料電池においても、カーボン表面に白金等の貴金属微粒子を担持したものを正極や負極に使用して三相界面の面積を稼ぐことが一般的であり、微粒子状の触媒金属を製造する技術が必要となる。
しかしながら、従来の化学的合成方法により合成されたマンガン酸化物等の金属酸化物からなる触媒成分を電気化学デバイスに用いた場合、電極の過電圧が大きくなる場合があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、過電圧の小さい電気化学デバイス用触媒成分の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、微生物を利用して触媒成分を製造することにより、過電圧の小さい電気化学デバイス用触媒成分が製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば、金属元素の価数が所望の値となった時点で金属酸化物を回収すればよいので、金属酸化物中の金属元素の価数を容易に調節できる。このため、任意の価数の金属酸化物を触媒成分として用いることができ、過電圧の小さい電極を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
<触媒成分の製造方法>
本発明の一側面である電気化学デバイス用触媒成分の製造方法においては、金属元素の酸化能を有する微生物を前記金属元素を含む液に接触させて、前記金属元素の酸化物を形成する工程を含む。すなわち、本発明に係る電気化学デバイス用触媒成分の製造方法は、金属元素の酸化能を有する微生物を前記金属元素を含む液に接触させて、前記金属元素の酸化物を形成することを含む。当該方法によれば、金属酸化物に含まれる金属元素の価数を容易に調節できるため、任意の価数の金属元素からなる金属酸化物を得ることができる。また、電気化学デバイス用触媒成分の製造方法が上記工程を含むことにより、表面積が大きい触媒成分を得ることができる。
本発明の一側面である電気化学デバイス用触媒成分の製造方法においては、金属元素の酸化能を有する微生物を前記金属元素を含む液に接触させて、前記金属元素の酸化物を形成する工程を含む。すなわち、本発明に係る電気化学デバイス用触媒成分の製造方法は、金属元素の酸化能を有する微生物を前記金属元素を含む液に接触させて、前記金属元素の酸化物を形成することを含む。当該方法によれば、金属酸化物に含まれる金属元素の価数を容易に調節できるため、任意の価数の金属元素からなる金属酸化物を得ることができる。また、電気化学デバイス用触媒成分の製造方法が上記工程を含むことにより、表面積が大きい触媒成分を得ることができる。
(触媒成分)
本発明一側面である触媒成分の製造方法により得られる電気化学デバイス用触媒成分は、金属元素の酸化物(以下、単に「酸化物」とも称する。)からなる。金属元素としてはマンガン、コバルト、亜鉛、錫、チタン、リチウム、鉛、ビスマス、バナジウム、インジウム、モリブデン、クロム、ニッケルおよびアルミニウム等を例示することができるが、これらに限定されない。金属酸化物としては、例えば、マンガン酸化物、コバルト酸化物、亜鉛酸化物、錫酸化物、チタン酸化物、リチウム酸化物、鉛酸化物、ビスマス酸化物、バナジウム酸化物、インジウム酸化物、モリブデン酸化物、クロム酸化物、ニッケル酸化物またはアルミニウム酸化物等の他、ランタンコバルト系酸化物、ランタンマンガン系酸化物、ランタン−鉄系酸化物のようなペロブスカイト型酸化物のような合金系酸化物であってもよく、酸化ホウ素のようなものも含まれる。このうち、触媒活性の高さから、金属元素はマンガン、コバルトまたはニッケルが好ましく、マンガンが更に好ましい。すなわち、マンガン酸化物を触媒成分として好適に用いることができる。
本発明一側面である触媒成分の製造方法により得られる電気化学デバイス用触媒成分は、金属元素の酸化物(以下、単に「酸化物」とも称する。)からなる。金属元素としてはマンガン、コバルト、亜鉛、錫、チタン、リチウム、鉛、ビスマス、バナジウム、インジウム、モリブデン、クロム、ニッケルおよびアルミニウム等を例示することができるが、これらに限定されない。金属酸化物としては、例えば、マンガン酸化物、コバルト酸化物、亜鉛酸化物、錫酸化物、チタン酸化物、リチウム酸化物、鉛酸化物、ビスマス酸化物、バナジウム酸化物、インジウム酸化物、モリブデン酸化物、クロム酸化物、ニッケル酸化物またはアルミニウム酸化物等の他、ランタンコバルト系酸化物、ランタンマンガン系酸化物、ランタン−鉄系酸化物のようなペロブスカイト型酸化物のような合金系酸化物であってもよく、酸化ホウ素のようなものも含まれる。このうち、触媒活性の高さから、金属元素はマンガン、コバルトまたはニッケルが好ましく、マンガンが更に好ましい。すなわち、マンガン酸化物を触媒成分として好適に用いることができる。
本発明者らは、金属酸化物中の金属元素の価数によって分極の大きさが影響を受けることを見出した。
本発明によれば、任意の価数の金属元素からなる金属酸化物を得ることができる。これは、例えばマンガンを例にとると、微生物が有する酵素による金属元素の酸化反応が進行すると、マンガン酸化物が生じる。一方、生じたマンガン酸化物中のマンガンの価数は、酵素反応に伴って、Mn(II)からMn(III)、Mn(IV)へと大きくなる。マンガン酸化物に含まれるマンガンの価数は、価数の異なる酸化マンガンの混合物の存在比によって定まり、混合物全体の値として測定する。すなわち、マンガン酸化物に含まれるマンガンの価数が任意の値となった時点でマンガン酸化物を回収すれば、任意の価数の金属元素からなる金属酸化物を得ることができる。反応を長時間行えば、酸化反応が進行して最終的にはMnO2(Mn(IV))からなるマンガン酸化物が得られる。上記記載は推定であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
本発明によれば、表面積の大きな触媒成分を得ることができる。これにより、触媒成分と導電性担体や集電体との接触面積が増大し、デバイスのエネルギー効率が向上する一因となる。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、これは、以下のメカニズムに基づくものではないかと推測している。すなわち、化学的に金属元素の酸化反応を行う場合、得られる金属酸化物の結晶構造は規則性の高いものとなる傾向があり、結果として触媒成分の表面積は50m2/g程度と小さくなる。この場合、触媒成分の表面積を大きくするためには、例えば界面活性剤を添加する等、複雑な工程を必要とする。従って、化学的合成方法によって表面積の大きな触媒成分を製造すると、生産効率が悪くなり、コストアップの一因ともなる。一方、マンガン等の金属元素の酸化能を有する微生物を用いて形成した金属酸化物は、一般に、化学的に合成する場合よりも表面積が大きい(例えば、Nelsonら(Applied and Environmental Microbiology, 1999, p175−180))。従って、化学的に合成する場合に表面積を上げるために必要となる複雑な工程を要しない。これは、金属元素を取り込んだ微生物個体の周辺に難溶性の金属酸化物が集積し、微生物に沿った複雑な形状の金属酸化物が形成されるためではないかと考えられる。
触媒成分のBET比表面積は、80〜200m2/gとすることが好ましい。比表面積が、80m2/g以上であると触媒成分などの分散性が良好で発電性能が高くなり、また、三相界面を稼ぐことができる。一方、200m2/g以下であると正極触媒の有効利用率が高くなる。触媒成分のBET比表面積は、100〜180m2/gとすることがより好ましい。
なお、BET比表面積は、窒素吸着法により測定する。詳細には、検体0.04〜0.07gを精秤し、試料管に封入する。この試料管を真空乾燥器で90℃で数時間予備乾燥し、測定用サンプルとする。次に、下記測定条件にて、BET比表面積を測定する。吸着・脱着等温線の吸着側において、相対圧(P/P0)約0.00〜0.45の範囲から、BETプロットを作成することで、その傾きと切片からBET比表面積を算出する。
触媒成分のBET比表面積は、微生物を金属元素を含む液に接触させる条件によって調節することができる。すなわち、触媒成分の生成に伴って段階的に金属元素を液に添加することで、BET比表面積を大きくすることができる。
(微生物)
本発明の一側面である触媒成分の製造方法に使用される微生物は、金属元素の酸化能を有するものである限り特に制限されず、真菌であっても細菌であってもよいが、好ましくは真菌である。真菌を用いることによって純粋培養が可能という利点がある。金属元素の酸化能を有する微生物としては、Santelliら(Applied and Environmental Microbiology, 2010, p4871−4875)に記載の微生物などが例示でき、例えば、アクレモニウム属(Acremonium)、スタゴノスポラ属(Stagonospora、例えばS.sp.SRC1lsM3a株)、プレオスポラ属(Pleosporales、例えばP.sp.RMF2株、P.sp.IRB20−1株、P.sp.UB32−2株)、フォーマ属(Phoma、例えばP.sp.RMF1株、P.sp.KY−1株、P.sp.DS1wsM30b株)、ピレノケータ属(Pyrenochaeta、例えばP.sp.DS3sAY3a株)、アルテルナリア属(Alternaria、例えばA.alternata SRC1lrK2f株)、パラコニオチリウム属(Paraconiothyrium、例えば、P.sporulosum、P.sp.WL−2株)、ピトマイセス属(Pithomyces、例えばP.chartarum DS1bioJ1b株)、プレクトスファエレラ属(Plectosphaerella、例えばP.cucumerina DS2psM2a2株)、スティルベラ属(Stilbella、例えばS.aciculosa DS2rAY2a株)、ミクロドシウム属(Michrodochium、例えばM.bolleyi SRC1dJ1a株)、キシラリアレ属(Xylariales、例えばX.sp.UB32−1株)またはトラメテス属(Trametes、例えばT.versicolor)の真菌;バチルス属(Bacillus、例えばB.sp.MB−11株、B.sp.PL−12株、B.sp.MB−5株、B.sp.SG−1株、B.sp.DS3sK3a株、B.sp.MB−1株)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium、例えばF.sp.DS2psK4b株)、シュードモナス属(Pseudomonas、例えばP.putida MnB1株、P.sp.DS3sK1h株、P.sp.LOB−2株、P.sp.GP11株)、ロゼオバクター属(Roseobacter、例えばR.sp.AzwK−3b株、R.sp.LOB−8株)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium、例えばA.sp.SRC1K2fb株)、オーランティモナス属(Aurantimonas、例えばA.sp.S185−9A1株)またはレプトスリックス属(Leptothrix、例えばL.discophora SS−1株)の細菌等を挙げることができる。
本発明の一側面である触媒成分の製造方法に使用される微生物は、金属元素の酸化能を有するものである限り特に制限されず、真菌であっても細菌であってもよいが、好ましくは真菌である。真菌を用いることによって純粋培養が可能という利点がある。金属元素の酸化能を有する微生物としては、Santelliら(Applied and Environmental Microbiology, 2010, p4871−4875)に記載の微生物などが例示でき、例えば、アクレモニウム属(Acremonium)、スタゴノスポラ属(Stagonospora、例えばS.sp.SRC1lsM3a株)、プレオスポラ属(Pleosporales、例えばP.sp.RMF2株、P.sp.IRB20−1株、P.sp.UB32−2株)、フォーマ属(Phoma、例えばP.sp.RMF1株、P.sp.KY−1株、P.sp.DS1wsM30b株)、ピレノケータ属(Pyrenochaeta、例えばP.sp.DS3sAY3a株)、アルテルナリア属(Alternaria、例えばA.alternata SRC1lrK2f株)、パラコニオチリウム属(Paraconiothyrium、例えば、P.sporulosum、P.sp.WL−2株)、ピトマイセス属(Pithomyces、例えばP.chartarum DS1bioJ1b株)、プレクトスファエレラ属(Plectosphaerella、例えばP.cucumerina DS2psM2a2株)、スティルベラ属(Stilbella、例えばS.aciculosa DS2rAY2a株)、ミクロドシウム属(Michrodochium、例えばM.bolleyi SRC1dJ1a株)、キシラリアレ属(Xylariales、例えばX.sp.UB32−1株)またはトラメテス属(Trametes、例えばT.versicolor)の真菌;バチルス属(Bacillus、例えばB.sp.MB−11株、B.sp.PL−12株、B.sp.MB−5株、B.sp.SG−1株、B.sp.DS3sK3a株、B.sp.MB−1株)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium、例えばF.sp.DS2psK4b株)、シュードモナス属(Pseudomonas、例えばP.putida MnB1株、P.sp.DS3sK1h株、P.sp.LOB−2株、P.sp.GP11株)、ロゼオバクター属(Roseobacter、例えばR.sp.AzwK−3b株、R.sp.LOB−8株)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium、例えばA.sp.SRC1K2fb株)、オーランティモナス属(Aurantimonas、例えばA.sp.S185−9A1株)またはレプトスリックス属(Leptothrix、例えばL.discophora SS−1株)の細菌等を挙げることができる。
このうち、アクレモニウム属の真菌が、酸化酵素、特にマンガン酸化酵素生成能力の観点からより好ましい。アクレモニウム属の真菌としては、A.strictum KR21−2株(Environmental Technology (2013) 34, 2781−2787参照)、A.strictum DS1bioAY4A株、A.strictum NBRC32034株(IFO 32034)、A.strictum NBRC32244株(IFO 32244)、A.borodinense NBRC33057株(IFO 33057)、A.chrysogenum NBRC30055株(IFO 30055)、およびA.implicatum 30538株(IFO 30538)が例示できる。このうち、マンガン酸化能の観点から、アクレモニウム・ストリクタム(A.strictum)KR21−2株が更に好ましい。なお、アクレモニウム・ストリクタム(A.strictum) KR21−2株は、2015年1月26日付で独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託され、受託番号P−01994が付与されている。
以上の微生物は、ATCCやNITE等から入手してもよい。
本発明で用いる微生物は、当該微生物に適した培地を用いて、増殖・維持を行えばよい。例えば、本発明の微生物の培養に使用する培地は、固体または液体培地のいずれでもよく、また、使用する微生物が資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機塩およびその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培地または天然培地のいずれでもよい。通常、培地は、炭素源、窒素源および無機物を含む。
微生物の培養において使用できる炭素源としては、使用する菌株が資化できる炭素源であれば特に制限するものではない。具体的には、微生物の資化性を考慮して、グルコース、フラクトース、セルビオース、ラフィノース、キシロース、マルトース、ガラクトース、デンプン、デンプン加水分解物、糖蜜、廃糖蜜等の糖類、肉エキス、ペプトン、カゼイン、カゼイン−ペプトン、麦、米等の天然物、グリセロール、メタノール、エタノール等のアルコール類、または酢酸、グルコン酸、ピルビン酸、クエン酸等の脂肪酸類もしくはこれらの塩などを挙げることができる。上記炭素源は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択する。また、上記炭素源を1種または2種以上選択して使用することができる。
また、微生物の培養において使用できる窒素源としては、肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、大豆加水分解物、大豆粉末、カゼイン、ミルクカゼイン、カザミノ酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸等の各種アミノ酸、コーンスティープリカー、その他の動物、植物、微生物の加水分解物等の有機窒素源;アンモニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、尿素等の無機窒素源などを挙げることができる。上記窒素源は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択する。また、上記窒素源を1種または2種以上選択して使用することができる。
本発明において使用できる無機物としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄および亜鉛などの、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、塩化物等のハロゲン化物などを挙げることができる。ポテトエキスなどの植物エキスを用いても良い。上記無機物は、培養する微生物による資化性を考慮して適宜選択する。また、上記無機物を1種または2種以上選択して使用することができる。また、培地中に、必要に応じて、植物油、界面活性剤等を添加してもよい。
微生物の金属元素酸化能を維持するため、培地に金属元素を添加してもよい。金属元素としては、微生物の酸化能に応じて、例えば、マンガン、コバルト、亜鉛、錫、チタン、リチウム、鉛、ビスマス、バナジウム、インジウム、モリブデン、クロム、ニッケル、アルミニウム等上述の金属元素のうち1種または2種以上を選択すればよい。金属元素の添加量は特に制限するものではないが、例えば、0.01〜10mMであり、好ましくは0.1〜5mMである。
微生物の培養は、通常の方法によって行うことができる。例えば、微生物の種類によって、好気的条件下または嫌気的条件下で、微生物を培養する。前者の場合には、微生物の培養は、振とうあるいは通気攪拌などによって行われる。培養に用いる培養槽は、従来公知のものを適宜採用することができるが、撹拌装置を備えた培養槽を用いることが好ましい。当該培養装置としては、通気撹拌型培養槽、気泡塔型培養槽、充填床培養槽、または流動床培養槽などを挙げることができる。
また、培養条件は、培地の組成や培養法によって適宜選択され、本発明の微生物が増殖できる条件であれば特に制限されず、培養する微生物の種類に応じて適宜選択されうる。培養温度は、好ましくは15〜35℃、より好ましくは20〜30℃である。また、培養に適当な培地のpHは、好ましくは3.0〜9.0、より好ましくは5.0〜8.0である。培地の調製は、上記の培地成分を水に溶解して行うこともできるが、バッファーを用いても良い。培地の調製に用いることができるバッファーとしては、HEPES、BES、TES、ビシン、トリシン等のGOOD緩衝液、グリシン−NaOH等のアミノ酸系緩衝液、リン酸緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、トリス−塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などが例示できる。
(金属元素を含む液)
本発明の一側面である触媒成分の製造方法においては、上記の微生物を、金属元素を含む液に接触させて金属元素の酸化物を形成する工程を含む。金属元素を含む液の調製に用いる金属元素も、目的とする触媒成分の構成や微生物の酸化能に合わせて適宜選択すればよい。例えば、上記のマンガン、コバルト、亜鉛、錫、チタン、リチウム、鉛、ビスマス、バナジウム、インジウム、モリブデン、クロム、ニッケル、アルミニウム等上述の金属元素のうち1種または2種以上を選択すればよい。金属元素は、Mn2+などの金属成分の金属イオン状態であってもよい。金属元素として使用する金属元素源としては、マンガン化合物、コバルト化合物、亜鉛化合物、錫化合物、チタン化合物、リチウム化合物、鉛化合物、ビスマス化合物、バナジウム化合物、インジウム化合物、モリブデン化合物、クロム化合物、ニッケル化合物、アルミニウム化合物等などを挙げることができる。通常は、これらの金属元素源として、金属元素を含む液の調製には、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩;酢酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、シュウ酸、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩等の有機酸塩;塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物等のこれらの金属元素の塩を用いる。金属元素の塩を用いることで、微生物による酸化効率が向上し得る。電気化学デバイス用触媒成分としての活性の高さから、金属元素としてはマンガンが好ましく、例えば、硫酸マンガン、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、炭酸マンガン、硝酸マンガン、水酸化マンガン、塩化マンガン等を好ましく用いることができる。
本発明の一側面である触媒成分の製造方法においては、上記の微生物を、金属元素を含む液に接触させて金属元素の酸化物を形成する工程を含む。金属元素を含む液の調製に用いる金属元素も、目的とする触媒成分の構成や微生物の酸化能に合わせて適宜選択すればよい。例えば、上記のマンガン、コバルト、亜鉛、錫、チタン、リチウム、鉛、ビスマス、バナジウム、インジウム、モリブデン、クロム、ニッケル、アルミニウム等上述の金属元素のうち1種または2種以上を選択すればよい。金属元素は、Mn2+などの金属成分の金属イオン状態であってもよい。金属元素として使用する金属元素源としては、マンガン化合物、コバルト化合物、亜鉛化合物、錫化合物、チタン化合物、リチウム化合物、鉛化合物、ビスマス化合物、バナジウム化合物、インジウム化合物、モリブデン化合物、クロム化合物、ニッケル化合物、アルミニウム化合物等などを挙げることができる。通常は、これらの金属元素源として、金属元素を含む液の調製には、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩;酢酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、シュウ酸、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩等の有機酸塩;塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物等のこれらの金属元素の塩を用いる。金属元素の塩を用いることで、微生物による酸化効率が向上し得る。電気化学デバイス用触媒成分としての活性の高さから、金属元素としてはマンガンが好ましく、例えば、硫酸マンガン、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、炭酸マンガン、硝酸マンガン、水酸化マンガン、塩化マンガン等を好ましく用いることができる。
金属元素を含む液の調製に用いる溶媒は、微生物の酸化酵素活性が発揮される限り、アルコール等の有機溶媒が用いられても良い。しかしながら、金属元素の塩の溶解性を考慮し、金属元素を含む液の調製に用いる溶媒は水系の溶媒が好ましく、水またはバッファーが好ましく用いられる。バッファーとしては、培地の調製において上述したHEPES等のバッファーが用いられうる。金属元素を含む液は、これらの溶媒に、例えば、0.01〜50mM、好ましくは0.1〜10mMとなるように金属元素を溶解して調製する。溶解方法は特に制限されず、当業者に公知の手段によって行えばよく、調製中の液を適宜攪拌、振盪、加温等してもよい。
金属元素を含む液のpHは、好ましくは3.0〜9.0、より好ましくは5.0〜8.0である。pHの調整は、塩酸や硫酸などの酸、または水酸化ナトリウムやアンモニア等の塩基を用いて行えばよい。
金属元素を含む液は、上述の培地成分を含んでも良い。金属元素を含む液が培地成分を含むことにより、金属元素を含む液で上述の微生物を長期間培養することができる。すなわち、本発明にかかる製造方法の一実施形態では、金属元素の酸化能を有する微生物を、当該金属元素を含む培地で培養し、当該金属元素の酸化物を形成する。より好ましくは、マンガン酸化能を有する微生物を、マンガンを含む培地で培養し、マンガン酸化物のマンガン価数が3.0〜3.9となるまで培養を行う。
(金属酸化物の形成)
本発明の一側面である製造方法においては、上記の微生物を、金属元素を含む液に接触させて金属元素の酸化物を形成する工程を含む。酸化物における金属元素の価数が任意の値になった時点で金属酸化物を回収することにより、酸化物における金属元素の価数を容易に調節できる。また、形成された金属酸化物は、化学合成したものよりも表面積が大きいため、電気化学デバイス用触媒成分として用いた場合に電気抵抗が小さいという利点がある。
本発明の一側面である製造方法においては、上記の微生物を、金属元素を含む液に接触させて金属元素の酸化物を形成する工程を含む。酸化物における金属元素の価数が任意の値になった時点で金属酸化物を回収することにより、酸化物における金属元素の価数を容易に調節できる。また、形成された金属酸化物は、化学合成したものよりも表面積が大きいため、電気化学デバイス用触媒成分として用いた場合に電気抵抗が小さいという利点がある。
金属元素を含む液に微生物を接触させる手段は、特に制限するものではない。例えば、金属元素を含む液に微生物を加えて攪拌または振とうする、金属元素を含む液中で微生物を培養する、または固定化した菌体に金属元素を含む液を接触させる、などの方法が採用できる。これらの手段を複数組み合わせて用いても良い。
本発明の一実施形態では、微生物を金属元素を含む液に接触させる手段は、微生物を金属元素を含む液中で培養することによって行われる。金属元素を含む液への微生物の接触手段として、微生物を金属元素を含む液中で培養することにより、金属酸化物が微生物の表面に形成されるため、菌体に沿った凸形状を一部に含んだより表面積の大きな触媒成分を得やすい。金属元素を含む液中で微生物を培養することにより金属酸化物が微生物の菌体に沿った形状で形成されたことは、触媒成分の形状を電子顕微鏡で観察することにより確認できる。金属元素を含む液中で微生物を培養する場合は、金属元素を含む液が上記の培地成分を含むことが好ましい。
金属元素を含む液に加える微生物の形態は特に制限されず、乾燥菌体や胞子等を用いても良い。
微生物を金属元素を含む液中で培養する場合、上述の培養条件が採用され得る。従って、この場合、金属元素を含む液の温度は好ましくは15〜35℃、より好ましくは20〜30℃である。また、pHは、好ましくは3.0〜9.0、より好ましくは5.0〜8.0である。培養時間は任意に設定することができる。培養時間によって得られる金属酸化物全体としての価数が変動するが、培養中に経時で金属酸化物をサンプリングし、後述する方法により当該金属酸化物中の金属元素の価数を測定しつつ、任意の時間で反応を終了(金属酸化物または菌体を回収)すればよい。従って、培養時間は特に制限するものではないが、例えば、10〜500時間であり、好ましくは20〜200時間である。
金属酸化物中の金属元素の価数が任意の値になった時点で、金属酸化物を遠心分離、篩分けなど当業者に公知の手段によって回収すればよい。篩分けにより回収する場合は、目開き75μm未満(JIS Z8801−1(2006))の篩を用い、非通過物である金属酸化物を回収する。このとき、75μm以上(JIS Z8801−1(2006))の篩を用い、非通過物である微生物の凝塊物等を除去してもよい。金属酸化物は微生物の酵素の作用によって形成されるため、加熱、加圧、またはpH調整(酸やアルカリの添加)等の処理によって酵素を失活させ、酸化反応を停止させてもよい。
微生物を金属元素を含む液中で培養する前に、微生物を前培養しても良い。前培養する工程を含むことで、金属元素を含む液に接触させる菌数を増やすことができ、短時間で金属元素の酸化反応を進行させることができる。前培養の条件についても、上述の培養条件が参酌される。
固定化した菌体に金属元素を含む液を接触させる場合は、微生物を担体に固定化し、金属元素を含む液を通液するタンク内にこの担体を設置することによって構築することができる。また、制御装置、ポンプ、各種センサー等を設置してもよい。ここで、また、微生物を固定化する担体としては、微生物を固定化することができるものであれば特に制限されず、一般的に微生物を固定化するのに使用する担体が同様にしてあるいは適宜修飾して使用する。例えば、アルギン酸、ポリビニールアルコール、ゲランガム、アガロース、セルロース、デキストラン等のゲル状物質に包括固定する方法や、ガラス、活性炭、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、木材、シリカゲル等の表面に吸着固定する方法などが使用できる。
また、微生物を担体に固定化する方法もまた特に制限されず、一般的な微生物の固定化方法が同様にしてあるいは適宜修飾して使用する。例えば、微生物の培養液を担体に流し込むことによる固定化法、アスピレーターを用いて担体を減圧下におき、微生物の培養液を担体に流し込むことによる固定化法、および菌株の培養液を滅菌した培地と担体との混合物に流し込み、振とう培養し、上記混合物から取り出した担体を自然乾燥する方法などを挙げることができる。
金属酸化物中の金属元素の価数(金属元素全体としての価数)は、以下のヨウ素滴定法により測定する。1mM(50mL)の金属酸化物に純水45mLを加え、ここに0.6gのKI(ヨウ化カリウム)を加える。さらに、水で5倍希釈した濃硫酸を1mL加え、金属酸化物を溶解させる。その後、0.01Mチオ硫酸ナトリウム用いて溶液中に残存するヨウ素を滴定し、金属元素の還元に用いられたヨウ化ナトリウムを求め、全金属元素量から金属元素の価数を算出する。硫酸溶液中の各金属元素量は、ICP−AESによって求める。例えば、Mnイオンであれば、波長257.610nmにおける発光強度をICP−AESにて測定し、検量線法によって求める。
金属酸化物の形成過程において経時で金属元素の価数を測定することにより、任意の価数において反応を終了できるため、酸化物中の金属元素の価数を容易に調節できる。
例えば、金属元素として硫酸マンガン(Mn(II))を用いて金属元素を含む液を調製した場合、微生物の酸化反応によってMn2O3(Mn(III))、MnO2(Mn(IV))などが生じる。金属酸化物(マンガン酸化物)としてはこれら価数の異なる酸化マンガンの混合物として得られる。かような価数の異なる酸化マンガンの混合物としての価数を上記方法にて測定すればよい。
本発明の製造法においては、マンガン酸化能を有する微生物をマンガンを含む液に接触させて、マンガン価数が3.0〜3.9のマンガン酸化物を形成する工程を含むことが好ましい。
マンガン価数が3.0〜3.9のマンガン酸化物(MnOx(x=1.5〜1.95))を触媒成分として用いることにより、過電圧をより一層小さくできる。マンガン酸化物のマンガン価数は3.1〜3.6(MnOx(x=1.55〜1.8))であることがより好ましい。さらに好ましくは、マンガン酸化物のマンガン価数は3.2〜3.5(MnOx(x=1.65〜1.75))である。マンガン価数は上記のヨウ素滴定法により求めた値を採用する。
金属酸化物の形成前、形成中、および形成後における金属元素を含む液に含まれる金属元素量は、グリオキシム法にて測定することができる。金属元素を含む液中の金属元素量を経時で測定することにより、反応の進行程度(酸化率)を求めることができる。グリオキシム法は、具体的には、1mLの試料溶液に純水1mLを加え、ここに塩酸ヒドロキシルアミン(40g/L)と0.74%(v/v)ホルムアルデヒドとの混合水溶液を0.1mL加え、撹拌する。さらに塩化アンモニウム(68g/L)と14%(w/w)アンモニアとの混合水溶液を0.1mL加え、撹拌後、5分放置する。ここに0.36M塩酸ヒドロキシルアミン水溶液を0.04mL加えて、10分間放置する。以上の手順で調製した試料の440nmにおける吸光度を測定し、検量線法によりMn等の金属元素濃度を求める。
金属元素の酸化率は、下記の数式(1)で求めることができる。
ただし、数式(1)中、M1は微生物による金属元素の酸化物形成直前の、金属元素を含む液に含まれる金属元素量を示す。また、数式(1)中、M2は微生物による金属元素の酸化物形成過程の任意の時点における、金属元素を含む液に含まれる金属元素量を示す。金属元素の酸化率は、好ましくは20〜98%であり、より好ましくは30〜80%であり、更に好ましくは35〜75%である。
本発明の一側面である触媒成分の製造方法は、回収後の金属酸化物を、例えば水や酸によって洗浄する工程、乾燥する工程、分級する工程等を含んでも良い。
<電気化学デバイス用触媒>
本発明の別の側面では、上記製造方法により製造された触媒成分と、導電性担体とを含む、電気化学デバイス用触媒を提供する。また、本発明の一実施形態では、金属元素の酸化能を有する微生物を該金属元素を含む液に接触させて形成されてなる金属酸化物、導電性担体およびバインダーを含む、電気化学デバイス用触媒を提供する。
本発明の別の側面では、上記製造方法により製造された触媒成分と、導電性担体とを含む、電気化学デバイス用触媒を提供する。また、本発明の一実施形態では、金属元素の酸化能を有する微生物を該金属元素を含む液に接触させて形成されてなる金属酸化物、導電性担体およびバインダーを含む、電気化学デバイス用触媒を提供する。
金属酸化物を触媒成分として導電性担体上に形成した触媒を電気化学デバイスに用いる場合、必ずしも価数の高い金属元素からなる触媒成分を含む触媒を用いた電極のほうが、価数の低い金属元素の場合よりも性能が優れる(電気抵抗が小さい)とは限らない。本発明の一側面に係る触媒成分の製造方法によれば、得られる金属酸化物中の金属元素の価数を触媒成分の形成中に経時で測定することにより、任意の価数になった時点で金属酸化物を回収することができる。また、上記製造方法により得られた触媒成分は表面積が大きいものとなるため、当該触媒を電気化学デバイスの電極(例えば、正極)に用いることにより、電気抵抗を小さく抑えることができる。
上記製造方法により製造された触媒成分としては、例えば、マンガン酸化物、コバルト酸化物、亜鉛酸化物、錫酸化物、チタン酸化物、リチウム酸化物、鉛酸化物、ビスマス酸化物、バナジウム酸化物、インジウム酸化物、モリブデン酸化物、クロム酸化物、ニッケル酸化物およびアルミニウム酸化物等が例示できる。
触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒成分の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、触媒成分の平均粒子径は、10nm〜50μm、より好ましくは50nm〜10μm、さらにより好ましくは50〜500nmの粒状である。触媒利用率の観点から50μm以下であることが好ましい。なお、「触媒成分の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。また、触媒成分の平均粒子径については、合わせて使用する導電性担体の粒子径とのバランスがある。例えば100nm程度までの大きさであれば、触媒成分粉末が導電性担体表面に配置される状態になる。一方、10μmほどの大きさで、導電性担体が小さい場合には、触媒成分粒子表面が導電性担体(特にアセチレンブラック等の細かい1次粒子を有するもの)で覆われる状態になる。
触媒層で触媒成分粒子と混合して用いる導電性担体としては、導電性を示す材料であればよく、具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン材料を挙げることができる。また、かようなカーボン材料として、より具体的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ケッチェンブラック(登録商標)、ブラックパール、黒鉛化アセチレンブラック、黒鉛化バルカン(登録商標)、黒鉛化ケッチェンブラック(登録商標)、黒鉛化カーボン、黒鉛化ブラックパール、微生物由来の炭化体、及びカーボンフィブリルから選ばれる少なくとも一種を主成分として含むものなどを挙げることができる。
導電性担体のBET比表面積は、触媒成分と接触させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは10〜5000m2/g、より好ましくは100〜1500m2/gとするのがよい。前記比表面積が、10m2/g以上であると触媒成分などの分散性が向上して高い発電性能が得られ、また三相界面を稼ぐことができる。一方、5000m2/g以下であると、触媒の有効利用率が低下しにくい。
導電性担体の空孔率は、10〜90体積%が好ましく、30〜80体積%がより好ましい。また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、触媒の利用率などを適切な範囲で制御するなどの観点からは、1次粒子径が5nm〜5μm程度とするのが好ましく、10〜500nmとするのがより好ましい。
導電性担体の平均粒子径の測定方法としては、レーザー回折・散乱式粒子分布測定装置、例えば日機装社製マイクロトラックMT3000を用いることができる。
なお、本明細書でいう「1次粒子」は、1次粒子とは1つの粒子を意味し、1次粒子が凝集して「2次粒子」を形成するものであり、導電性担体は1次粒子でも2次粒子であってもよく、導電性担体の大きさが上記の平均粒子径の範囲に含まれていればよい。
導電性担体に触媒成分が形成された電気化学デバイス用触媒において、触媒成分の量(固形分換算)は、触媒層全量に対して、好ましくは1〜60質量%、特に好ましくは3〜50質量%とするのがよい。また、触媒成分と導電性担体との比は、例えば1:10〜10:1(質量比)であり、好ましくは1:3〜3:1である。
本発明の一実施形態では、マンガン価数が3.0〜3.9のマンガン酸化物からなる触媒成分が提供される。本発明の別の実施形態では、マンガン価数が3.0〜3.9のマンガン酸化物からなる触媒成分と、導電性担体とを含む、電気化学デバイス用触媒が提供される。マンガン酸化物のマンガン価数は3.1〜3.6(MnOx(x=1.55〜1.8))であることがより好ましい。
また、触媒成分を導電性担体に固定化するため、必要に応じてバインダーを使用してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂や、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン−ブタジエンゴムなどを挙げることができる。
バインダーは、触媒を構成する成分の全量(固形分換算)に対して、10〜50質量%程度含まれていればよい。
<電気化学デバイス用正極、電気化学デバイス>
本発明の別の側面では、上記触媒を含む触媒層と、集電体とを含む、電気化学デバイス用正極を提供する。また、本発明のさらに別の側面では、当該正極を含む、電気化学デバイスを提供する。電気化学デバイスとしては、空気電池に代表される燃料電池、キャパシタ、センサー等が例示できる。
本発明の別の側面では、上記触媒を含む触媒層と、集電体とを含む、電気化学デバイス用正極を提供する。また、本発明のさらに別の側面では、当該正極を含む、電気化学デバイスを提供する。電気化学デバイスとしては、空気電池に代表される燃料電池、キャパシタ、センサー等が例示できる。
本発明の好ましい電気化学デバイスの実施形態として、空気電池および固体高分子形燃料電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限するものではない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[空気電池]
空気電池は、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型であっても、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれでもよい。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。上記の触媒成分を空気電池に使用した場合、三相界面での接触面積が大きくなることから、特に適している。
空気電池は、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型であっても、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれでもよい。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。上記の触媒成分を空気電池に使用した場合、三相界面での接触面積が大きくなることから、特に適している。
図1に空気電池1の好ましい構成の一形態を記載する。空気電池1は、正極触媒層4が正極集電体2の表面に形成された空気極と、負極活物質層5が負極集電体3の表面に形成された負極と、前記空気極と前記負極との間に挟持される電解質層6を有する。図1は空気電池の構成を模式的に示す図であるため、上述した凹型の正極ケース、小さい負極ケース、ガスケットや空気通気口孔を図示していない。
したがって、空気電池は、(正極)触媒層が(正極)集電体の表面に形成された空気極(正極)と、負極活物質層が(負極)集電体の表面に形成された負極と、空気極と負極との間に挟持される電解質層を有する構成が好ましい。
空気電池を例にして、以下当該空気電池の空気極、負極、および電解質層、ならびに必要に応じて設けられる他の構成要素について説明する。
(空気極(電気化学デバイス用正極の一例))
本発明の一側面では、上記触媒を含む触媒層と、集電体とを含む、電気化学デバイス用正極を提供する。本発明の一実施形態では、当該電気化学デバイス用正極は、空気極である。
本発明の一側面では、上記触媒を含む触媒層と、集電体とを含む、電気化学デバイス用正極を提供する。本発明の一実施形態では、当該電気化学デバイス用正極は、空気極である。
本発明の一側面に係る電気化学デバイス用正極(空気極)は、触媒層が集電体の表面に積層された構成であることが好ましく、必要に応じて当該集電体にリード接続してもよい。空気極は、触媒層と集電体との間に、後述のガス拡散層を含んでも良い。
電気化学デバイス用触媒は、例えば、上記の100質量部の触媒成分と、20〜500質量部の導電性担体とを、任意に加えられるバインダーと共に適量の溶媒に懸濁してスラリーを調製し、当該スラリーを乾燥し、必要に応じて粉砕して得る。用いる溶媒としては、特に制限されるものではないが、例えば水、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)が採用できる。乾燥は、例えばオーブン等を用いて行えばよい。乾燥条件は固形分量等に応じて適宜調整すればよいが、例えば80〜150℃で5〜48時間である。乾燥物を粉砕する場合は、ブレンダー、ハンマー、ミル、乳鉢と乳棒、またはミキサーなど、公知の手段によって行えばよい。得られた乾燥物をプレス成型等により成形し、触媒層として用いる。
触媒層の平均厚さは、1μm〜1000μmが好ましく、5μm〜300μmがより好ましい。
発明に係る空気電池における集電体は、触媒層で集電するものである。当該集電体の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。
また、集電体の形状は、例えば膜状、板状などの平板状や、メッシュ状、格子状に孔が形成されたグリッド状などを挙げることができる。集電体の形状は、メッシュ状であることが集電効率の観点から好ましい。この場合、通常、空気極層の内部にメッシュ状の空気極集電体を配置する。
なお、空気電池において、メッシュ状の正極集電体とは別に集電された電荷を集電する他の集電体をさらに設けてもよい。
(電解質層)
空気電池に用いる電解質層としては、特に限定されず、塩あるいは酸、アルカリ系水溶液、イオン性溶液、イオン性溶液を高分子化したイオンポリマー、イオン性溶液を膜にしたイオンゲル、または高分子電解質膜を挙げることができる。
空気電池に用いる電解質層としては、特に限定されず、塩あるいは酸、アルカリ系水溶液、イオン性溶液、イオン性溶液を高分子化したイオンポリマー、イオン性溶液を膜にしたイオンゲル、または高分子電解質膜を挙げることができる。
上記水溶液としては例えば、硫酸、燐酸、塩酸、硝酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムなどを含むものを挙げることができる。
イオン性溶液、イオン性溶液を高分子化したイオンポリマー、またはイオン性溶液を膜にしたイオンゲルは、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,3−ジエチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2−ジエチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、2−エチル−1−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−2−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ビニルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、2−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,4−ルチジニウムトリフルオロメタンスルホネートなどのトリフルオロメタンスルホネート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテートなどのトリフルオロアセテート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジエチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジエチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、2−エチル−1−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−2−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ビニルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、2−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、2,4−ルチジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレートなどのテトラフルオロボレート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートなどのヘキサフルオロホスフェート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,3−ジエチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,2−ジメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,2−ジエチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、2−エチル−1−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−エチル−2−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、2−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドなどのトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド類;1,3−ジメチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−エチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ビニルイミダゾリウムメタンスルホネートなどのメタンスルホネート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチルイミダゾリウムアセテートなどのアセテート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムナイトレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムナイトレート、1−メチルイミダゾリウムナイトレート、1−エチルイミダゾリウムナイトレート、1−ビニルイミダゾリウムナイトレートなどのナイトレート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムナイトライト、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムナイトライトなどのナイトライト類;1,3−ジメチルイミダゾリウムサルファイト、1−メチルイミダゾリウムサルファイト、1−エチルイミダゾリウムサルファイト、1−ビニルイミダゾリウムサルファイトなどのサルファイト類;1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチルイミダゾリウムクロライド、1−ビニルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウムクロライド、1−ブチルピリジニウムクロライドなどのクロライド類;1,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチルイミダゾリウムブロマイド、1−ビニルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチルピリジニウムブロマイドなどのブロマイド類;1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3−ジエチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,2−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,2−ジエチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどのイミド類などを挙げることができる。
上記高分子電解質膜としては、特に限定されず、公知の電解質膜を使用することができる。具体的には、デュポン社製の各種のNafion(デュポン社登録商標)やフレミオンに代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベース高分子とする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜、ポリウレタン、ポリアクリレート、セルロースなど、一般的に市販されている高分子形電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記高分子電解質膜に用いる高分子電解質と、各電極触媒に用いる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよい。
前記高分子電解質膜の厚みとしては、得られる正極−電解質−負極からなる積層体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜150μmである。上記高分子電解質膜の厚みが、10〜300μmの範囲であると、製膜時の強度や積層体作動時の耐久性がよく、かつ積層体作動時の出力特性も優れている。
また、上記高分子電解質膜としては、上記したようなフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂による膜に加えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸や上記のイオン液体等の電解質成分を含浸したものを使用してもよい。
(負極)
空気電池に用いる負極は、負極活物質層が負極集電体の表面に積層された構成であることが好ましく、必要に応じて当該負極集電体にリード接続してもよい。
空気電池に用いる負極は、負極活物質層が負極集電体の表面に積層された構成であることが好ましく、必要に応じて当該負極集電体にリード接続してもよい。
負極活物質層は、負極活物質を含んでいればよい。負極活物質に使用する材料としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、および鉄からなる群から選択される少なくとも1種の元素、またはそれらの合金が好ましい。
上記負極活物質層は、負極活物質単独を含有しても、粒子状の負極活物質を導電性担体に担持したものであってもよく、さらに必要によりバインダーを含んでもよい。当該導電性担体およびバインダーは上記の空気極で使用したものと同様のものを使用することができる。
また、前記負極活物質層の厚みとしては、得られる正極−電解質−負極からなる積層体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは10μm〜5mm、より好ましくは100〜500μmである。
空気電池における負極集電体の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されることはなく、例えば銅、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。上記負極集電体の形状としては、例えば膜状、板状およびメッシュ状等を挙げることができる。
(その他の構成要件)
空気電池は、正極触媒層が表面に形成された正極集電体と、負極活物質層が表面に形成された負極集電体と、電解質層とを備え、前記正極触媒層が前記電解質層の一方の面と、前記負極活物質層が前記電解質層の他方の面と当接(または密着)した積層体である。この場合、当該空気極−電解質層−負極の積層体を1ユニットとして、当該ユニットを複数繰り返し積層させる場合、必要によりユニット間にセパレータを設けてもよい。
空気電池は、正極触媒層が表面に形成された正極集電体と、負極活物質層が表面に形成された負極集電体と、電解質層とを備え、前記正極触媒層が前記電解質層の一方の面と、前記負極活物質層が前記電解質層の他方の面と当接(または密着)した積層体である。この場合、当該空気極−電解質層−負極の積層体を1ユニットとして、当該ユニットを複数繰り返し積層させる場合、必要によりユニット間にセパレータを設けてもよい。
セパレータは、例えばカーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状材料、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質膜などが好適に使用できる。
前記セパレータの厚みとしては、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜100μmである。
空気電池は、空気極、電解質層、および負極が順次積層した積層体およびこれら積層体を複数重ねた構造である。これら積層体を必要により空気電池収納ケース内に収納してもよい。この場合の空気電池収納ケースの形状としては特に制限されることは無く、ボタン型、平板型、円筒型、角型、ラミネート型などを使用目的により選択することができる。さらに、空気電池収納ケースは、外気と接触する開いた系の空気電池収納ケースまたは閉じた系の空気電池収納ケースのいずれでもよい。当該開いた系の空気電池収納ケースは、空気極に外気が流入する構造である。一方、当該閉じた系の空気電池収納ケースは、少なくとも空気極に外気が流入する空気の流入管および流出間を設けることが好ましい。
[(固体高分子形)燃料電池]
図2に燃料電池の一種である固体高分子形燃料電池100について以下説明する。一般に、(固体高分子形)燃料電池の構成は、電解質膜−電極接合体(以下、MEAとも称する)をセパレータ140a、140bで挟持した構造となっている。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池100のMEAは、電解質膜110の一方の面にアノード触媒層120aが位置し、他方の面にカソード触媒層120bが位置する。さらに、前記アノード触媒層120aの電解質膜110と対向する面にはアノード側ガス拡散層130aが位置し、前記カソード触媒層120bの電解質膜110と対向する面にはカソード側ガス拡散層130bが位置する構造である。
図2に燃料電池の一種である固体高分子形燃料電池100について以下説明する。一般に、(固体高分子形)燃料電池の構成は、電解質膜−電極接合体(以下、MEAとも称する)をセパレータ140a、140bで挟持した構造となっている。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池100のMEAは、電解質膜110の一方の面にアノード触媒層120aが位置し、他方の面にカソード触媒層120bが位置する。さらに、前記アノード触媒層120aの電解質膜110と対向する面にはアノード側ガス拡散層130aが位置し、前記カソード触媒層120bの電解質膜110と対向する面にはカソード側ガス拡散層130bが位置する構造である。
固体高分子形燃料電池100を例にして、燃料電池の構成要素について説明する。
(電解質膜)
本発明の一実施形態に係る燃料電池100に用いることのできる電解質膜110は、高いプロトン伝導性を有する膜が好ましい。高いプロトン伝導性を有する膜としては、−SO3H基などのイオン交換基を有するモノマーの重合体または共重合体;またはイオン交換基を有するモノマーと他のモノマーとの重合体などの公知の材料からなる膜を用いることができる。電解質膜110の材質としては、具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、またはポリマー骨格にフッ素を含まない芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質などを挙げることができる。
本発明の一実施形態に係る燃料電池100に用いることのできる電解質膜110は、高いプロトン伝導性を有する膜が好ましい。高いプロトン伝導性を有する膜としては、−SO3H基などのイオン交換基を有するモノマーの重合体または共重合体;またはイオン交換基を有するモノマーと他のモノマーとの重合体などの公知の材料からなる膜を用いることができる。電解質膜110の材質としては、具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、またはポリマー骨格にフッ素を含まない芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質などを挙げることができる。
前記イオン交換基としては、特に制限するものではないが、−SO3H、−COOH、−PO(OH)2、−POH(OH)、−SO2NHSO2 −、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH2、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’+、−NH3 +等(R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基などを挙げることができる。
前記フッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマーなどを好適な一例として挙げることができる。
前記芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ポリサルホンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸系ポリマー、架橋ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルサルホンスルホン酸系ポリマー等を好適な一例として挙げることができる。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましい。なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質を好ましく挙げることができる。特に、本発明において、高分子電解質としてナフィオン(登録商標、デュポン社製)等のスルホン酸基を有するものを使用する場合には、EWが600〜1100程度のものを使用することが好ましい。なお、EW(Equivalent Weight)は、スルホン酸基1モル当たりの乾燥膜質量を表し、小さいほどスルホン酸基の比重が大きいことを意味する。
電解質膜110の膜厚は、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定することができるが、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。電解質膜の膜厚が5μm以上であると製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の点から好ましく、300μm以下であると燃料電池作動時の出力特性の点から好ましい。
(触媒層)
燃料電池に用いることのできるカソード触媒層120bは、微生物により形成した触媒成分を用いることを特徴とするものである。
燃料電池に用いることのできるカソード触媒層120bは、微生物により形成した触媒成分を用いることを特徴とするものである。
また、アノード触媒層に用いる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば使用できる。
本実施形態による触媒層120a、120bの厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。触媒層の厚さが0.1μm以上であると所望する発電量が得られる点で好ましく、100μm以下であると高出力を維持できる点で好ましい。
(ガス拡散層(GDL))
ガス拡散層(GDL)130a、130bは、MEAの構成部材に含めてもよいし、MEA以外の燃料電池セルの構成部材としてもよい。GDLとしては、特に限定されないが、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とする多孔質基材などを挙げることができる。また、GDLでも触媒層と同様に撥水性を高めてフラッディング現象を防ぐために、公知の手段を用いて、前記GDLの撥水処理を行っても、または前記GDL上に炭素粒子集合体からなる層を形成してもよい。
ガス拡散層(GDL)130a、130bは、MEAの構成部材に含めてもよいし、MEA以外の燃料電池セルの構成部材としてもよい。GDLとしては、特に限定されないが、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とする多孔質基材などを挙げることができる。また、GDLでも触媒層と同様に撥水性を高めてフラッディング現象を防ぐために、公知の手段を用いて、前記GDLの撥水処理を行っても、または前記GDL上に炭素粒子集合体からなる層を形成してもよい。
MEAの構成を有する固体高分子形燃料電池において、触媒層、GDLおよび電解質膜の厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましいが、薄すぎると十分な電極出力が得られない。従って、所望の特性を有するMEA、更には固体高分子形燃料電池が得られるように適宜決定すればよい。
(セパレータ)
アノードセパレータ140a及びカソードセパレータ140bとしては、カーボンペーパー、カーボンクロス、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、特に制限するものではなく、従来公知のものを用いることができる。また、前記セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するために所望の形状に加工されたガス流路(溝)141が形成されているのが望ましく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータの厚さや大きさ、ガス流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
アノードセパレータ140a及びカソードセパレータ140bとしては、カーボンペーパー、カーボンクロス、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、特に制限するものではなく、従来公知のものを用いることができる。また、前記セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するために所望の形状に加工されたガス流路(溝)141が形成されているのが望ましく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータの厚さや大きさ、ガス流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
(ガスケット)
本発明の燃料電池において、必要によりガスケットを電解質膜とセパレータとの間に設けてもよい(図示せず)。当該ガスケットは、気体、特に酸素や水素ガスに対して不透過であればよいが、一般的には、ガス不透過材料からなるOリングなどの単一の不透過部により構成されていればよい。さらに、必要に応じて、電解質膜や酸素極及び触媒層のエッジとの接着を目的とする接着部を設けてなる、接着剤付きのガスシールテープ等のような複合的な構成としてもよい。Oリングやガスシールテープの不透過部を構成する材料は、設置後に所定の圧力がかかった状態で、酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限するものではない。
本発明の燃料電池において、必要によりガスケットを電解質膜とセパレータとの間に設けてもよい(図示せず)。当該ガスケットは、気体、特に酸素や水素ガスに対して不透過であればよいが、一般的には、ガス不透過材料からなるOリングなどの単一の不透過部により構成されていればよい。さらに、必要に応じて、電解質膜や酸素極及び触媒層のエッジとの接着を目的とする接着部を設けてなる、接着剤付きのガスシールテープ等のような複合的な構成としてもよい。Oリングやガスシールテープの不透過部を構成する材料は、設置後に所定の圧力がかかった状態で、酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限するものではない。
こうした不透過部を構成する材料のうち、Oリングを構成する材料としては、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などを挙げることができる。
一方、ガスシールテープ等の不透過部を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などを挙げることができる。また、ガスシールテープ等の接着部を構成する材料としては、電解質膜や酸素極及び燃料極触媒層と、ガスケットを密接に接着できるものであれば特に制限するものではない。例えば、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤などが使用できる。
上記により本発明の一実施形態に係る空気電池および固体高分子形燃料電池の構成を説明した。以下、当該空気電池の正極触媒や燃料電池などの触媒成分として使用できる本発明の一側面に係る触媒成分の製造方法について説明する。また、前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などを挙げることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲を以下の実施例のみに制限するわけではない。
<製造例>
アクレモニウム属の微生物(Acremonium stricum KR21−2株)を3mM MnSO4を含むHAY培地(pH7.0)(金属元素を含む液)中で培養した。培養は、500mL容三角フラスコに200mLの培地を用いて、Firstek Scientific社Orbital Shaking Incubatorを用いて25℃、回転数50rpmにて行った。全培養期間を通じて、金属元素を含む液のpHは一定(7.0)であった。培地を適時、クリーンベンチ内でサンプリングし、培地中の溶存Mn(II)をグリオキシム法で測定した(図3)。
アクレモニウム属の微生物(Acremonium stricum KR21−2株)を3mM MnSO4を含むHAY培地(pH7.0)(金属元素を含む液)中で培養した。培養は、500mL容三角フラスコに200mLの培地を用いて、Firstek Scientific社Orbital Shaking Incubatorを用いて25℃、回転数50rpmにて行った。全培養期間を通じて、金属元素を含む液のpHは一定(7.0)であった。培地を適時、クリーンベンチ内でサンプリングし、培地中の溶存Mn(II)をグリオキシム法で測定した(図3)。
HAY培地は0.41g/L酢酸ナトリウム三水和物、0.15g/L酵母エキス、50mg/L MgSO4・7H2O、5mg/L K2HPO4、および2ml/Lミネラル溶液、3mM MnSO4となるよう、各試薬を20mM HEPESバッファー(pH7.0)に加えて溶解させ、オートクレーブ滅菌して用いた。なお、K2HPO4およびMnSO4は他の試薬をオートクレーブした後、上記終濃度になるように加えた。ミネラル溶液は3.7g/L CaCl2・2H2O、2.5g/L H3BO3、0.87g/L MnCl2・4H2O、1.0g/L FeCl3・6H2O、0.44g/L ZnSO4・7H2O、0.29g/L Na2MoO4・2H2O、および5mg/L CuSO4・5H2Oを含む。
培養中に析出したマンガン酸化物のマンガン価数を上述のヨウ素滴定法にて経時で測定し、上記数式(1)によりマンガン酸化率を求めた。
(実施例1)
上記条件にて、アクレモニウム属の微生物を3mM MnSO4を含むHAY培地で培養した。マンガン酸化率が24〜30%になった時点(培養50時間)で固体相をセルストレーナーで回収し、凍結乾燥した。すべてのフラスコについてマンガン酸化率を平均すると、26.4±1.6%(n=56)であり、マンガン価数は3.05±0.05(n=1)であった。乾燥した固体を合一して目開き75μmのステンレスメッシュ上でふるい分けをおこない、微生物を取り除いた。回収したマンガン酸化物を試料1とした。
上記条件にて、アクレモニウム属の微生物を3mM MnSO4を含むHAY培地で培養した。マンガン酸化率が24〜30%になった時点(培養50時間)で固体相をセルストレーナーで回収し、凍結乾燥した。すべてのフラスコについてマンガン酸化率を平均すると、26.4±1.6%(n=56)であり、マンガン価数は3.05±0.05(n=1)であった。乾燥した固体を合一して目開き75μmのステンレスメッシュ上でふるい分けをおこない、微生物を取り除いた。回収したマンガン酸化物を試料1とした。
(実施例2)
上記条件にて、アクレモニウム属の微生物を3mM MnSO4を含むHAY培地で培養した。マンガン酸化率が30〜50%になった時点(培養60時間)で固体相をセルストレーナーで回収し、凍結乾燥した。すべてのフラスコについてマンガン酸化率を平均すると、43.9±4.3%(n=44)であり、マンガン価数は3.39±0.08(n=3)であった。乾燥した固体を合一して目開き75μmのステンレスメッシュ上でふるい分けをおこない、微生物を取り除いた。回収したマンガン酸化物を試料2とした。
上記条件にて、アクレモニウム属の微生物を3mM MnSO4を含むHAY培地で培養した。マンガン酸化率が30〜50%になった時点(培養60時間)で固体相をセルストレーナーで回収し、凍結乾燥した。すべてのフラスコについてマンガン酸化率を平均すると、43.9±4.3%(n=44)であり、マンガン価数は3.39±0.08(n=3)であった。乾燥した固体を合一して目開き75μmのステンレスメッシュ上でふるい分けをおこない、微生物を取り除いた。回収したマンガン酸化物を試料2とした。
(実施例3)
上記条件にて、アクレモニウム属の微生物を3mM MnSO4を含むHAY培地で培養した。マンガン酸化率が72〜77%になった時点(培養70時間)で固体相をセルストレーナーで回収し、凍結乾燥した。すべてのフラスコについてマンガン酸化率を平均すると、73.8±2.1%(n=53)であり、マンガン価数は3.61±0.08(n=3)であった。乾燥した固体を合一して目開き75μmのステンレスメッシュ上でふるい分けをおこない、微生物を取り除いた。回収したマンガン酸化物を試料3とした。
上記条件にて、アクレモニウム属の微生物を3mM MnSO4を含むHAY培地で培養した。マンガン酸化率が72〜77%になった時点(培養70時間)で固体相をセルストレーナーで回収し、凍結乾燥した。すべてのフラスコについてマンガン酸化率を平均すると、73.8±2.1%(n=53)であり、マンガン価数は3.61±0.08(n=3)であった。乾燥した固体を合一して目開き75μmのステンレスメッシュ上でふるい分けをおこない、微生物を取り除いた。回収したマンガン酸化物を試料3とした。
(実施例4)
上記条件にて、アクレモニウム属の微生物を3mM MnSO4を含むHAY培地で培養した。マンガン酸化率が95〜100%になった時点(培養96時間)で固体相をセルストレーナーで回収し、凍結乾燥した。すべてのフラスコについてマンガン酸化率を平均すると、97.2±2.5%(n=32)であり、マンガン価数は3.68±0.07(n=4)であった。乾燥した固体を合一して目開き75μmのステンレスメッシュ上でふるい分けをおこない、微生物を取り除いた。回収したマンガン酸化物を試料4とした。
上記条件にて、アクレモニウム属の微生物を3mM MnSO4を含むHAY培地で培養した。マンガン酸化率が95〜100%になった時点(培養96時間)で固体相をセルストレーナーで回収し、凍結乾燥した。すべてのフラスコについてマンガン酸化率を平均すると、97.2±2.5%(n=32)であり、マンガン価数は3.68±0.07(n=4)であった。乾燥した固体を合一して目開き75μmのステンレスメッシュ上でふるい分けをおこない、微生物を取り除いた。回収したマンガン酸化物を試料4とした。
<電池性能評価>
上記の試料1〜4を触媒成分として評価セルを作製し、電池性能を評価した。すなわち、32質量部のマンガン酸化物(試料1〜4)、36質量部のカーボン(ケッチェンブラック(登録商標) EC600JD、ライオン社製、1次粒子径34nm、BET比表面積1270m2/g)、および32質量部のバインダー(ポリフロン(登録商標)D−1E、PTFE60wt%含有、ダイキン社製)を、適量の水および1−ブタノールとともに混合して、正極触媒層スラリーを調製した。
上記の試料1〜4を触媒成分として評価セルを作製し、電池性能を評価した。すなわち、32質量部のマンガン酸化物(試料1〜4)、36質量部のカーボン(ケッチェンブラック(登録商標) EC600JD、ライオン社製、1次粒子径34nm、BET比表面積1270m2/g)、および32質量部のバインダー(ポリフロン(登録商標)D−1E、PTFE60wt%含有、ダイキン社製)を、適量の水および1−ブタノールとともに混合して、正極触媒層スラリーを調製した。
同様に、50質量部のカーボン(HS−100、電気化学工業社製、1次粒子径48nm、BET比表面積39m2/g)、および50質量部のバインダー(ポリフロン(登録商標)D−1E、PTFE60wt%含有、ダイキン社製)を、適量の水及び1−ブタノールとともに混合して、ガス拡散層スラリーを調製した。
これらスラリーを120℃で12時間乾燥させ、それぞれの粉末を得た。なお、触媒層全量に対して、触媒成分の量は、32質量%であった。集電体としてのニッケルメッシュ(ニラコ社製)、ガス拡散層粉末、正極触媒層粉末を重ね、冷間プレス(温度80℃、圧力0.8MPa)および加熱プレス(温度300℃、圧力2.0MPa)により円形(正極触媒層の厚さ20μm)に成形した。その後、成形物を室温で冷却し、正極を得た。
上記で作製した正極1枚と、負極として厚さ500μmのPt金属板(ニラコ株式会社製)とを、電解質層である8N KOH溶液の両側に配置した。以上により、空気電池評価セルを得た。
上記の方法により作製した評価セルカソード側には酸化剤(正極活物質)として空気を供給した。セル温度は25℃に設定した。この条件下で、電流密度200mA/cm2にて参照電極(Hg/HgO)に対する正極電位(E/V)を測定し、開放電位との差分(ドロップ電位(V))を測定した。ドロップ電位が小さいほど、電気抵抗が小さく、電池性能が優れることを示す。
ドロップ電位の測定結果を図4に示す。図4に示す通り、本発明に係る製造方法により製造した触媒成分を用いた場合、電気抵抗が小さい(分極が小さい)ことが分かる。マンガン酸化物のマンガン価数が3.1〜3.6である試料1〜3は、特に優れた電池性能を示した。
<触媒成分の構造>
図5に、化学的に合成したマンガン酸化物および本発明に係る製造方法により製造したマンガン酸化物(微生物合成マンガン酸化物、上記の試料1)の電子顕微鏡像を示す。化学的に合成したマンガン酸化物は、以下の方法により得た。すなわち、2mol/LのHCl 100mlを1mol/Lの過マンガン酸カリウム溶液300mlに加えて10時間保持した。その後、生じたマンガン酸化物を1mol/Lの硝酸で2回洗浄し、最後に精製水で洗浄した。化学的に合成したマンガン酸化物のマンガン価数は4であった。
図5に、化学的に合成したマンガン酸化物および本発明に係る製造方法により製造したマンガン酸化物(微生物合成マンガン酸化物、上記の試料1)の電子顕微鏡像を示す。化学的に合成したマンガン酸化物は、以下の方法により得た。すなわち、2mol/LのHCl 100mlを1mol/Lの過マンガン酸カリウム溶液300mlに加えて10時間保持した。その後、生じたマンガン酸化物を1mol/Lの硝酸で2回洗浄し、最後に精製水で洗浄した。化学的に合成したマンガン酸化物のマンガン価数は4であった。
微生物合成マンガン酸化物(試料1、図5(b)、3000倍)は、化学的に合成したマンガン酸化物(図5(a)、3000倍)よりも表面積の大きな構造であることが分かる。
微生物合成マンガン酸化物(試料1)のBET比表面積を窒素吸着法により測定したところ、130m2/gであった。一方、化学的に合成したマンガン酸化物のBET比表面積は53m2/gであった。
図6に、本発明に係る製造方法により製造した触媒成分を用いた電気化学用触媒の模式図を示す。化学的に合成したマンガン酸化物を触媒成分として用いた場合(図6(a))に比べ、本発明に係る製造方法により製造した触媒成分は表面積が大きく、導電性担体との接触面積が大きいため、過電圧を小さくできる(図6(b))。
1 空気電池、
2 正極集電体、
3 負極集電体
4 正極触媒層、
5 負極活物質層、
6 電解質層、
100 固体高分子形燃料電池、
110 電解質膜、
120a アノード触媒層、
120b カソード触媒層、
130a アノードガス拡散層、
130b カソードガス拡散層、
140a アノードセパレータ、
140b カソードセパレータ、
201a 化学合成金属酸化物、
201b 微生物合成金属酸化物、
202 導電性担体。
2 正極集電体、
3 負極集電体
4 正極触媒層、
5 負極活物質層、
6 電解質層、
100 固体高分子形燃料電池、
110 電解質膜、
120a アノード触媒層、
120b カソード触媒層、
130a アノードガス拡散層、
130b カソードガス拡散層、
140a アノードセパレータ、
140b カソードセパレータ、
201a 化学合成金属酸化物、
201b 微生物合成金属酸化物、
202 導電性担体。
Claims (10)
- 金属元素の酸化能を有する微生物を前記金属元素を含む液に接触させて、前記金属元素の酸化物を形成する工程を含む、電気化学デバイス用触媒成分の製造方法。
- 前記金属元素がマンガンである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記酸化物のマンガン価数が3.0〜3.9である、請求項2に記載の製造方法。
- 前記接触が、前記微生物を前記金属元素を含む液中で培養することによって行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記微生物が真菌である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により製造された触媒成分と導電性担体とを含む、電気化学デバイス用触媒。
- 請求項6に記載の触媒を含む触媒層と、集電体とを含む、電気化学デバイス用正極。
- 請求項7に記載の正極を含む、電気化学デバイス。
- マンガン価数が3.0〜3.9のマンガン酸化物からなる、電気化学デバイス用触媒成分。
- 請求項9に記載の触媒成分と、導電性担体とを含む、電気化学デバイス用触媒。
Priority Applications (1)
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JP2015086003A JP2016203072A (ja) | 2015-04-20 | 2015-04-20 | 微生物を利用した電気化学デバイス用触媒成分の製造方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101776646B1 (ko) | 2017-01-24 | 2017-09-11 | 천성우 | 망간산화 미생물을 이용한 미생물 연료전지 |
WO2019117199A1 (ja) * | 2017-12-14 | 2019-06-20 | 国立研究開発法人理化学研究所 | 水分解触媒用のマンガン酸化物、マンガン酸化物-カーボン混合物、マンガン酸化物複合電極材料及びそれらの製造方法 |
CN114976070A (zh) * | 2022-06-29 | 2022-08-30 | 华南理工大学 | 一种制备非贵金属-氮共掺杂多孔碳材料的方法及其应用 |
-
2015
- 2015-04-20 JP JP2015086003A patent/JP2016203072A/ja active Pending
Cited By (4)
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KR101776646B1 (ko) | 2017-01-24 | 2017-09-11 | 천성우 | 망간산화 미생물을 이용한 미생물 연료전지 |
WO2019117199A1 (ja) * | 2017-12-14 | 2019-06-20 | 国立研究開発法人理化学研究所 | 水分解触媒用のマンガン酸化物、マンガン酸化物-カーボン混合物、マンガン酸化物複合電極材料及びそれらの製造方法 |
CN114976070A (zh) * | 2022-06-29 | 2022-08-30 | 华南理工大学 | 一种制备非贵金属-氮共掺杂多孔碳材料的方法及其应用 |
CN114976070B (zh) * | 2022-06-29 | 2024-01-30 | 华南理工大学 | 一种制备非贵金属-氮共掺杂多孔碳材料的方法及其应用 |
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