JP2015027268A - 微生物を利用した金属触媒材料の製造方法 - Google Patents

微生物を利用した金属触媒材料の製造方法 Download PDF

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恭子 小尾
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佳子 塚田
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Abstract

【課題】本発明は、より簡便に電極触媒で使用する種々の触媒成分を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】微生物に金属成分を取り込ませる工程(1)と、
前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(2)と、を含む金属触媒材料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、微生物を利用した金属触媒材料の製造方法に関する。
正極活物質に酸素(空気)、負極活物質に燃料を用いて、通常の燃料反応の代りに電池内部で燃料を電気化学的に酸化すると、燃料のより生じるエネルギーが熱ではなく電気として取り出す電池を一般的には燃料電池と称されている。このような燃料電池はエネルギー変換効率が高く、環境汚染に対する影響も少ないため、さまざまな種類の燃料電池が近年研究・開発されている。
例えば、燃料電池の一種である空気電池は、正極活物質として活性炭などに吸着した酸素を用いる一次電池であり、当該酸素は空気中から大量に供給されるため、正極活物質自体を特段必要としない。そのため、エネルギー密度や活物質の利用効率などに優れているだけでなく、大気中の酸素を使用するため、環境負荷が小さい電池として注目を浴びている。
一般的な空気電池は、集電体、正極触媒、および電解質を含むセパレータが順次積層された空気通気口孔を有する凹型の正極ケースと、負極活物質が充填され、かつ前記正極ケースより一回り小さい負極ケースと、が重ね合わせに密着した構造である。また、当該空気電池は、前記正極ケースと前記負極ケースとの間をガスケットで封止した構造となっている。また、当該空気電池の一般的な原理は、空気通気口孔から供給される酸素(O)を正極触媒により水酸化イオン(OH)などに還元して、負極活物質の金属(M)が水酸化イオンなどで酸化されることで、電気化学反応が進行する(図1参照)。
空気電池における正極側の正極触媒としては、一般にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、または活性炭などの炭素材料と、白金またはマンガン酸化物などの金属との混合物などが用いられている。正極触媒内における酸素の還元反応は、固相である正極触媒と、液相である電解液と、気相である空気との三相の表面が互いに接触した界面(いわゆる三相界面)によって進行するといわれている。そのため、できる限り外部の酸素を還元し易くする観点から、正極触媒である金属を微粒子状にして炭素材料に担持している。
このように酸素の還元反応に関与する正極触媒に着目した技術として特許文献1が挙げられる。当該特許文献1には、酸素還元能を有する金属フタロシアニン等の金属キレート化合物を含む触媒や貴金属触媒などは大きな触媒効果を期待できるものの、正極の再生使用は困難であるとの課題を解決するために、微粒子状のマンガン酸化物を触媒に用いることが開示されている。
また、空気電池に限らず燃料電池の他の一種である固体高分子型燃料電池においても、炭素材料表面に白金等の貴金属微粒子を担持したものを正極や負極に使用して三相界面の面積を稼ぐことが一般的であり、触媒金属を微粒子状にする技術が必要となる。
特開2002−93425号公報
すなわち、特許文献1では、触媒金属としてのマンガン酸化物のうち比較的触媒能に優れたMnに着目している。具体的には、溶液法で合成した粒子状のγ−Mnとγ−Mnの全率固溶体を熱処理により得た平均粒子径100nm以下のMnOx(x=4/3〜8/5)を触媒として使用している。また、粒子状のγ−Mnとγ−Mnとの合成方法としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、あるいは硝酸マンガンなどのマンガン塩水溶液と過剰のアルカリ水溶液の反応によって水酸化マンガン懸濁液を得る。次に、この水酸化マンガン懸濁液を40〜80℃に加熱し、この懸濁液中に空気を吹き込むことによって、マンガンイオンを酸化し、平均粒子径が100nm以下の粒子状のγ−Mnとγ−Mnとの全率固溶体を得ている。
この方法によれば平均粒子径が100nm以下のMnOx(x=4/3〜8/5)を製造することが可能ではあるが、当該特許文献1の段落「0005」に記載されているように、アルカリ液などに浸潤して放置するとMnにかなり移行する虞がある。そのため、MnOxの製造過程で詳細な反応手順を要するという問題がある。また、特許文献1の方法ではMnOx以外の触媒金属を微粒子状にする場合を想定してない。
そこで、本発明は、より簡便に電極触媒で使用する種々の触媒成分を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、金属成分を取り込む微生物を用いて正極触媒に使用する触媒成分を製造する方法により上記課題を解決する。
本発明はより簡便に正極触媒で使用する固体触媒を製造することができる。本発明では、常温・常圧下プロセスかつ大量生産が容易の観点から簡便に粒径の揃った微粒子状の金属触媒材料を製造することができる。
図1は本発明に係る空気電池の構成を模式的に示した図である。 図2は本発明に係る固体高分子型燃料電池の構成を模式的に示した図である。
本発明の第一は、微生物に金属成分を取り込ませる工程(1)と、前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(2)と、を含む金属触媒材料の製造方法である。
これにより、正極触媒で使用する触媒成分を簡便に製造することができる。一般にナノ粒子などの金属微粒子を合成する場合は、例えば、米国特許出願公開第2006/0226564号の図2Aで示すような装置を使用する。すなわち、チャンバー内で金属原料を蒸発・噴霧された原料ガスと、冷却ガスとを混合して対流させるいわゆるFCM(Flash Creation Method)の方法でナノ粒子を合成している。そのため、合成設備が大掛かりになり簡便に製造することができない。しかし、本発明では、常温・常圧下プロセスかつ大量生産が容易の観点から簡便に粒径の揃った微粒子状の金属触媒材料を製造することができる。
本発明の好ましい実施形態として、空気電池および固体高分子型燃料電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
空気電池の電解質は、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型であっても、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
図1に本発明に係る空気電池1の好ましい構成の一形態を記載する。本発明に係る空気電池1は、正極触媒層4が正極集電体2の表面に形成された空気極と、負極活物質層5が負極集電体3の表面に形成された負極と、前記空気極と前記負極との間に挟持される電解質層6を有する。当該図1は空気電池の構成を模式的に示す図であるため、上述した凹型の正極ケース、小さい負極ケース、ガスケットや空気通気口孔を図示していない。
したがって、本発明に係る金属触媒材料を使用する空気電池1は、正極触媒層が正極集電体の表面に形成された空気極と、負極活物質層3が負極集電体の表面に形成された負極と、前記空気極と前記負極との間に挟持される電解質層を有する構成が好ましい。
本発明に係る空気電池を例にして、以下当該空気電池の空気極、負極、および電解質層、ならびに必要に応じて設けられる他の構成要素について説明する。
<空気電池>
「空気極」
本発明に係る空気極は、正極触媒層が正極集電体の表面に積層された構成であることが好ましく、必要に応じて当該正極集電体にリード接続してもよい。また、本発明に係る正極触媒層は、導電性材料に担持された正極触媒と、必要に応じてバインダーとから構成されていることが好ましい。
当該導電性材料としては、導電性を示す材料であればよく、具体的には、カーボンブラック、微生物自体を焼成した炭化体、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン材料が挙げられる。また、かようなカーボン材料として、より具体的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ブラックパール、黒鉛化アセチレンブラック、黒鉛化バルカン、黒鉛化ケッチェンブラック、黒鉛化カーボン、黒鉛化ブラックパール、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、微生物由来の炭化体、及びカーボンフィブリルから選ばれる少なくとも一種を主成分として含むものなどが挙げられる。
また、上記微生物自体を焼成した炭化体は、後述の製造方法により製造することができる。さらに、本発明に係る導電性材料に担持された正極触媒は、後述の製造方法により金属触媒材料を担持した炭化体であることが好ましい。
本発明に係る導電性材料のBET比表面積は、正極触媒を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは10〜5000m/g、より好ましくは100〜2000m/gとするのがよい。前記比表面積が、10m/g未満であると触媒成分などの分散性が低下して十分な発電性能が得られない恐れがありまた三相界面を稼げない。一方、5000m/gを超えると正極触媒の有効利用率が却って低下する恐れがある。
本発明に係る導電性材料の空孔率は、10〜90体積%が好ましく、30〜80体積%がより好ましい。また、前記導電性材料の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、正極触媒の利用率などを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が50nm〜10μm程度とするのがよい。
本発明に係る導電性材料の平均粒子径の測定方法としては、透過型電子顕微鏡像から代表サンプルについて数〜数10視野中に観察される粒子の粒径を測定する方法が挙げられる。なお、この測定方法では観察するサンプルや視野によって平均粒子径に有意差が生じる。より簡易的にはX線回折プロファイルからある特定の反射ピークの半値幅から求められる結晶子径を導電性材料の平均粒子径として用いることも出来る。
本発明に係る導電性材料の平均粒子径は透過型電子顕微鏡像の任意の8視野中に観察される電子伝導性部材の1次粒子および2次粒子の粒径をすべて測定し(総計N>120)、その粒径の中央値を、電子伝導性部材の平均粒子径とする条件で行なった。
なお、本明細書でいう「1次粒子」は、1次粒子とは1つの粒子を意味し、1次粒子が凝集して「2次粒子」を形成するものであり、本発明に係る導電性材料は1次粒子でも2次粒子であってもよく、本発明に係る導電性材料の大きさが上記の平均粒子径の範囲に含まれていればよい。
本発明に係る正極触媒は、本発明に係る金属触媒材料を使用するものであり、具体的には、白金、インジウム、ウラン、パラジウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、ゲルマニウム、カドミウム、セレン、金、銅、ロジウム等の元素を含み、またはこれらの合金等などから選択されることが好ましく、具体的には、MnOx(x=1〜2)、CoOx(x=1〜2)、CuS、CdS、ZnS、CoS、NiS、FeS、FeSx(x=1〜1.5)、CdSe、ZnSe、Se、Au、Pt、Pd、Al、Rh、In、Be、U、Mn、CdTe、Fe、GeOx(x=1〜2)、Co、SiOx(x=1〜2)、Coフェライト、Niフェライト、および5Fe・9HOなどが挙げられる。当該正極触媒の製造方法は、後述の本発明に係る金属触媒材料の製造方法について説明するように、工程(1)および(2)により製造される。
本発明に係る正極触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状及び大きさが使用できるが、粒状であることが好ましい。この際、正極触媒の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、本発明に係る正極触媒の平均粒子径は、10nm〜20μm、より好ましくは50nm〜5μm、さらにより好ましくは50〜500nm、の粒状である。担持の容易さという観点から10nm以上であることが好ましく、正極触媒利用率の観点から10μm以下であることが好ましい。なお、本発明における「正極触媒の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。また、本発明に係る正極触媒の平均粒子径については、合わせて使用する炭素材料の粒子径とのバランスがある。例えば100nm程度までの大きさであれば、触媒粉末が炭素粒子表面に配置される状態になる。一方、10μmほどの大きさで、炭素材料が小さい場合には、触媒粒子表面が炭素材料(特にアセチレンブラック等の細かい1次粒子を有するもの)で覆われる状態になる。
前記導電性材料に本発明に係る金属触媒材料が担持された正極触媒成分において、当該導電性材料の担持量(すなわち、導電性材料に担持する正極触媒の量)は、正極触媒層を形成する成分の全量に対して、好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは3〜30質量%とするのがよい。なお、本発明に係る正極触媒の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
また、導電性材料を集電体表面に固定化するために必要に応じてバインダーを使用してもよく、当該バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂や、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン−ブタジエンゴムなどが挙げられる。
当該バインダーは、正極触媒層を形成する成分の全量に対して、好ましくは10〜50質量%程度含まれていればよい。本発明に係る正極触媒層の平均厚さは、1μm〜1000μmが好ましく、5μm〜300μmがより好ましい。
発明に係る空気電池における正極集電体は、正極触媒層で集電するものである。当該正極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。
また、本発明に係る正極集電体の形状は、例えば膜状、板状などの平板状や、メッシュ状、格子状に孔が形成されたグリッド状などを挙げることができる。本発明の正極集電体の形状は、メッシュ状であることが集電効率の観点から好ましい。この場合、通常、空気極層の内部にメッシュ状の空気極集電体が配置される。
本発明に係る正極集電体の平均厚さは、30μm〜300μmであることが好ましく、50μm〜100μmのであることがより好ましい。
なお、本発明に係る空気電池において、メッシュ状の正極集電体とは別に集電された電荷を集電する他の集電体さらに設けてもよい。
「電解質層」
本発明に係る空気電池に用いられる電解質層としては、特に限定されず、塩あるいは酸、アルカリ系水溶液、イオン性溶液、イオン性溶液を高分子化したイオンポリマー、イオン性溶液を膜にしたイオンゲル、または高分子電解質膜が挙げられる。
上記水溶液としては例えば、硫酸、燐酸、塩酸、硝酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムなどを含むものが挙げられる。
本発明に係るイオン性溶液、イオン性溶液を高分子化したイオンポリマー、またはイオン性溶液を膜にしたイオンゲルは、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,3−ジエチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2−ジエチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、2−エチル−1−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−2−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ビニルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、2−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,4−ルチジニウムトリフルオロメタンスルホネートなどのトリフルオロメタンスルホネート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテートなどのトリフルオロアセテート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジエチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジエチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、2−エチル−1−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−2−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ビニルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、2−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、2,4−ルチジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレートなどのテトラフルオロボレート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートなどのヘキサフルオロホスフェート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,3−ジエチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,2−ジメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,2−ジエチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、2−エチル−1−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−エチル−2−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、2−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドなどのトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド類;1,3−ジメチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−エチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ビニルイミダゾリウムメタンスルホネートなどのメタンスルホネート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチルイミダゾリウムアセテートなどのアセテート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムナイトレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムナイトレート、1−メチルイミダゾリウムナイトレート、1−エチルイミダゾリウムナイトレート、1−ビニルイミダゾリウムナイトレートなどのナイトレート類;1,3−ジメチルイミダゾリウムナイトライト、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムナイトライトなどのナイトライト類;1,3−ジメチルイミダゾリウムサルファイト、1−メチルイミダゾリウムサルファイト、1−エチルイミダゾリウムサルファイト、1−ビニルイミダゾリウムサルファイトなどのサルファイト類;1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチルイミダゾリウムクロライド、1−ビニルイミダゾリウムクロライド、1,2−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウムクロライド、1−ブチルピリジニウムクロライドなどのクロライド類;1,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチルイミダゾリウムブロマイド、1−ビニルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチルピリジニウムブロマイドなどのブロマイド類;1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3−ジエチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,2−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,2−ジエチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどのイミド類などが挙げられる。
上記高分子電解質膜としては、特に限定されず、公知の電解質膜を使用することができる。具体的には、デュポン社製の各種のNafion(デュポン社登録商標)やフレミオンに代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベース高分子とする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜、ポリウレタン、ポリアクリレート、セルロースなど、一般的に市販されている高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記高分子電解質膜に用いられる高分子電解質と、各電極触媒に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよい。
前記高分子電解質膜の厚みとしては、得られる正極−電解質−負極からなる積層体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜150μmである。上記高分子電解質膜の厚みが、10〜300μmの範囲であると、製膜時の強度や積層体作動時の耐久性がよく、かつ積層体作動時の出力特性も優れている。
また、上記高分子電解質膜としては、上記したようなフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂による膜に加えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸や上記のイオン液体等の電解質成分を含浸したものを使用してもよい。
「負極」
本発明に係る負極は、負極活物質層が負極集電体の表面に積層された構成であることが好ましく、必要に応じて当該負極集電体にリード接続してもよい。
本発明に係る負極活物質層は、負極活物質を含んでいればよく、当該負極活物質に使用される材料としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、および鉄からなる群から選択される少なくとも1種の元素、またはそれらの合金が好ましい。
上記負極活物質層は、負極活物質単独を含有しても、粒子状の負極活物質が導電性材料に担持されたものであってもよく、さらに必要によりバインダーを含んでもよい。当該導電性材料およびバインダーは上記の空気極で使用したものと同様のものが使用することができるため、ここでは省略する。
また、前記負極活物質層の厚みとしては、得られる正極−電解質−負極からなる積層体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは10μm〜5mm、より好ましくは100〜500μmである。
本発明に係る空気電池における負極集電体の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されることはなく、例えば銅、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。上記負極集電体の形状としては、例えば膜状、板状およびメッシュ状等を挙げることができる。
「その他の構成要件」
本発明に係る空気電池は、正極触媒層が表面に形成された正極集電体と、負極触媒層が表面に形成された負極集電体と、電解質層とを備え、前記正極触媒層が前記電解質層の一方の面と、前記負極触媒層が前記電解質層の他方の面と当接(または密着)した積層体である。この場合、当該空気極−電解質層−負極の積層体を1ユニットとして、当該ユニットを複数繰り返し積層させる場合、必要によりユニット間にセパレータを設けてもよい。
本発明に係るセパレータは、例えばカーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状材料、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質膜などが好適に使用される。
前記セパレータの厚みとしては、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜100μmである。
本発明に係る空気電池は、空気極、電解質層、および負極が順次積層した積層体およびこれら積層体を複数重ねた構造である。これら積層体を必要により空気電池収納ケース内に収納してもよい。この場合の空気電池収納ケースの形状としては特に制限されることは無く、ボタン型、平板型、円筒型、角型、ラミネート型などを使用目的により選択することができる。さらに、空気電池収納ケースは、外気と接触する開いた系の空気電池収納ケースまたは閉じた系の空気電池収納ケースのいずれでもよい。当該開いた系の空気電池収納ケースは、空気極に外気が流入する構造である。一方、当該閉じた系の空気電池収納ケースは、少なくとも空気極に外気が流入する空気の流入管および流出間を設けることが好ましい。
図2に本発明に係る燃料電池の一種である固体高分子型燃料電池100について以下説明する。一般に、(固体高分子型)燃料電池の構成は、電解質膜−電極接合体(以下、MEAとも称する)をセパレータ140a、140bで挟持した構造となっている。図2に示すように、本発明に係る固体高分子型燃料電池100のMEAは、電解質膜の一方の面にアノード触媒層120aが位置し、他方の面にカソード触媒層120bが位置する。さらに、前記アノード触媒層120aの電解質膜110と対向する面にはアノード側ガス拡散層130aが位置し、前記カソード触媒層120bの電解質膜110と対向する面にはカソード側ガス拡散層130bが位置する構造である。
固体高分子型燃料電池100を例にして、以下本発明に係る燃料電池の構成要素である電極触媒層、電解質膜、セパレータ、ガス拡散層、およびガスケットについて説明する。
<(固体高分子型)燃料電池>
「電解質膜」
本発明に係る燃料電池100に用いることのできる電解質膜110は、高いプロトン伝導性を有する膜が好ましい。高いプロトン伝導性を有する膜としては、−SOH基などのイオン交換基を有するモノマーの重合体または共重合体;またはイオン交換基を有するモノマーと他のモノマーとの重合体などの公知の材料からなる膜を用いることができる。かかる電解質膜110の材質としては、具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、または、ポリマー骨格にフッ素を含まない芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質などが挙げられる。
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、−SOH、−COOH、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO 、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH 等(R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基などが挙げられる。
前記フッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ポリサルホンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸系ポリマー、架橋ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルサルホンスルホン酸系ポリマー等が好適な一例として挙げられる。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましい。なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。特に、本発明において、高分子電解質としてナフィオン(登録商標、デュポン社製)等のスルホン酸基を有するものを使用する場合には、EWが600〜1100程度のものを使用することが好ましい。なお、EW(Equivalent Weight)は、スルホン酸基1モル当たりの乾燥膜重量を表し、小さいほどスルホン酸基の比重が大きいことを意味する。
電解質膜110の膜厚は、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定することができるが、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。電解質膜の膜厚が5μm以上であると製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の点から好ましく、300μm以下であると燃料電池作動時の出力特性の点から好ましい。
「電極触媒層」
本発明の燃料電池に用いることのできるアノード電極触媒層120aとカソード電極触媒層120bは、少なくとも一方に、本発明に係る微生物由来の金属触媒材料が用いられていることを特徴とするものである。好ましくはカソード側電極触媒層120bに、より好ましくはアノード電極触媒層120aとカソード電極触媒層120bの両方に、本発明に係る電極触媒が用いられているのが望ましい。
また、アノード触媒層に用いられる金属触媒材料は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば使用できる。また、カソード触媒層に用いられる触媒もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば使用できる。具体的には、白金、インジウム、ウラン、パラジウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、ゲルマニウム、カドミウム、セレン、金、銅、ロジウム等の元素を含む金属およびこれらの合金などから選択されうる。
本明細書では、特記しない限り、アノード触媒層用およびカソード触媒層用の触媒に
ついての説明は、両者について同様の定義である。しかしながら、アノード触媒層およびカソード触媒層の触媒は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択されうる。
本実施形態による電極触媒層120a、120bの厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。電極触媒層の厚さが0.1μm以上であると所望する発電量が得られる点で好ましく、100μm以下であると高出力を維持できる点で好ましい。
「ガス拡散層(GDL)」
本発明のガス拡散層(GDL)130a、130bは、MEAの構成部材に含めてもよいし、MEA以外の燃料電池セル20の構成部材としてもよい。GDLとしては、特に限定されないが、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とする多孔質基材などが挙げられる。また、GDLでも電極触媒層と同様に撥水性を高めてフラッディング現象を防ぐために、公知の手段を用いて、前記GDLの撥水処理を行っても、または前記GDL上に炭素粒子集合体からなる層を形成してもよい。
本発明のMEAの構成を有する固体高分子型燃料電池において、電極触媒層、GDLおよび電解質膜の厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましいが、薄すぎると十分な電極出力が得られない。従って、所望の特性を有するMEA、更には固体高分子型燃料電池が得られるように適宜決定すればよい。
「セパレータ」
本発明に係るアノードセパレータ140a及びカソードセパレータ140bとしては、カーボンペーパー、カーボンクロス、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。また、前記セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するために所望の形状に加工されたガス流路(溝)141が形成されているのが望ましく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータの厚さや大きさ、ガス流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
「ガスケット」
本発明の燃料電池において、必要によりガスケットを電解質膜とセパレータとの間に設けてもよい(図示せず)。当該ガスケットは、気体、特に酸素や水素ガスに対して不透過であればよいが、一般的には、ガス不透過材料からなるOリングなどの単一の不透過部により構成されていればよい。さらに、必要に応じて、電解質膜や酸素極及び触媒層のエッジとの接着を目的とする接着部を設けてなる、接着剤付きのガスシールテープ等のような複合的な構成としてもよい。Oリングやガスシールテープの不透過部を構成する材料は、設置後に所定の圧力がかかった状態で、酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限されない。
こうした不透過部を構成する材料のうち、Oリングを構成する材料としては、例えば、
フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
一方、ガスシールテープ等の不透過部を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが挙げられる。また、ガスシールテープ等の接着部を構成する材料としては、電解質膜や酸素極及び燃料極触媒層と、ガスケットを密接に接着できるものであれば特に制限されない。例えば、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤などが使用できる。
上記により本発明に係る空気電池および固体高分子型燃料電池の構成を説明した。以下、当該空気電池の正極触媒や燃料電池などの触媒成分として使用できる本発明に係る金属材料の製造方法について説明する。また、前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。
本発明に係る金属触媒材料は、微生物に金属成分を取り込ませる工程(1)と、前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(2)と、により製造される。以下、各工程について詳説する。
(工程(1))
本発明に係る金属触媒材料の製造方法における工程(1)は、微生物に金属成分を取り込ませる工程である。
本発明に係る微生物は、マンガン酸化酵素を産生する(マンガン酸化能を有する)を備えた微生物が好ましく、マンガン酸化能を有する微生物であれば、真菌でも細菌(真正細菌および古細菌)でもよい。当該微生物の具体例としては、レプトスリックス ディスコフォラ(Leptothrix discophora)、トラメテス ベルシカラー(Trametes versicolor)、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、オルニチニ バチルス カリフォルニエンシス(Ornithine bacillus californiensis)、バチルス属(Bacillus sp.)、メタロゲニウム属(Metallogenium sp.)、プレクトスファエレラ属(Plectosphaerella sp.)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明で用いる微生物は、当該微生物に適した培地を用いて、増殖・維持を行えばよい。当該培地は、一般的には、炭素源、窒素源、および無機塩を含む。前記培地に添加する炭素源としては、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、およびキシロースなどの単糖、マルトース、ラクトース、およびスクロースなどの二糖、グリセリンおよびキシリトールなどの糖アルコールといった糖類が挙げられ、これらを単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、尿素、L−グルタミン酸などのアミノ酸類、あるいは尿酸などの無機あるいは有機の窒素化合物が使用できる。さらに、窒素源としては、ペプトン、ポリペプトン、肉エキス、酵母エキス、大豆加水分解物、大豆粉末、ミルクカゼイン、カザミノ酸、コーンスティープリカーなどの窒素含有天然物を使用してもよい。これらのうち、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素、L−グルタミン酸などのアミノ酸類、尿酸などの無機あるいは有機窒素化合物、ペプトン、肉エキス、酵母エキスなの窒素含有天然物が好ましい。これらの窒素源は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。無機物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウムなどの、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄および亜鉛などのリン酸塩、塩酸塩、硫酸塩および酢酸塩などが用いられる。そのほか、チアミン、ビオチンなどのビタミン類、さらに必要に応じて、アデニン、ウラシルなどの核酸関連物質が使用されてもよい。これらの無機物は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
例えば微生物としてLeptothrix discophoraを選択した場合は、Leptothrix培地(Boogerd and de Vrind, 1987)を用いて増殖・維持させればよい。また、微生物としてPseudomonas putidaを選択した場合は、pHが7で、Polypepton 10g/L、Yeast extract 2g/L、MgSO・7HO 1g/Lを含んでいる、ダイゴ培地(Wako)を用いる。そして、回分培養して増殖させ、維持する。使用する培地、使用する微生物の種類により、適宜選択すればよい。
本発明に係る微生物の培養条件は、微生物の増殖が実質的に阻害されず、金属成分を取り込める範囲であれば、特に制限なく適宜調整されうる。当該培養温度は、通常は20〜30℃、好ましくは22〜28℃である。また、培地のpHは、通常は4.0〜7.0であるが、滅菌後の培地における雑菌の増殖を抑えるためには、4.5〜6.0であることが好ましい。培養前または培養中にpHが4未満となる場合は、アンモニアなどを用いてpH制御を行うことが好ましく、逆にpHが7を超える場合は、硫酸や塩酸などを用いてpH制御をすることが好ましい。また、通常は、培養時間は、好ましくは150〜500時間、より好ましくは300〜400時間である。
本発明に係る微生物の培養方法は、微生物の種類によって異なるが、嫌気的条件および好気的条件のいずれかの培養方法を適宜採用することができる。培養に用いる培養槽は、従来公知のものを適宜採用することができるが、撹拌装置を備えた培養槽を用いることが好ましい。当該培養装置としては、通気撹拌型培養槽、気泡塔型培養槽、充填床培養槽、または流動床培養槽などが挙げられる。
本発明に係る工程(1)において、微生物に対する金属成分を取り込ませる手段としては、金属成分を添加した培養液中で微生物を3〜7日培養してもよく、または対数増殖期末期の微生物と、金属成分を含む別の培養液と接触して24〜72時間作用して金属成分を微生物内に取り込ませて固体金属成分を形成させる方法が挙げられる。
本発明に係る金属成分は、Mn、Pt、Au、Cd、Pd、Ni、Co、Ge、Cu、Zn、In、Rh、Fe、およびSiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。当該金属成分は、Mn2+、Pt4+、Mn4+などの当該金属成分の金属イオン状態であってもよい。そのため、金属成分は、微生物内にイオンの状態で取り込んでも金属塩の状態で取り込んでもよい。当該金属成分として使用する金属成分源としては、マンガン化合物、プラチナ化合物、金化合物、カドミウム化合物、パラジウム化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物、鉄化合物、ゲルマニウム化合物、銅化合物、亜鉛化合物、インジウム化合物、ロジウム化合物、シリコン化合物などが挙げられる。
また、本発明に係る金属成分源を培養液中または別の培養液に添加する量は、使用する微生物により適宜選択されるものであるが、初期溶液(培養液および別の培養液を含む)に対して10〜500μmol/lが好ましく、100〜300μmol/lがより好ましい。
当該マンガン化合物としては、例えば、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、炭酸マンガン、酸化マンガン、硫酸マンガン(実験では主に硫酸マンガンを使用)、硝酸マンガン、水酸化マンガン、オキシ水酸化マンガンなどの主に2価あるいは4価のマンガン化合物を用いることができる。
当該プラチナ化合物としては、二臭化白金、四塩化白金、トリス(エチレン)白金、カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)白金、白金硝酸塩、白金炭酸塩、白金酢酸塩、白金クエン酸塩、白金アセチルアセトナート、白金水酸化物などが挙げられる。
当該金化合物としては、三塩化金、四塩化金酸、四塩化金酸塩(NaAuClなど)、シアン化金、シアン化金カリウム、三塩化ジエチルアミン金酸、エチレンジアミン金錯体((Au[C(NHCl)など)などが挙げられる。
当該カドミウム化合物としては、カドニウムアセチルアセトナート、カドニウム水酸化物、カドニウム酢酸塩、カドニウムクエン酸塩、セレン化カドミウム、硫化カドミウムなどを用いることができる。
当該パラジウム化合物としては、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価のパラジウム化合物類;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジブロモテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物類等を挙げることができる。
当該ニッケル化合物としては、ニッケル酢酸塩、ニッケルクエン酸塩、ニッケルアセチルアセトナート、ニッケル水酸化物などが挙げられる。
当該コバルト化合物としては、コバルト酢酸塩、コバルトクエン酸塩、硝酸コバルト、硫酸コバルトなどが挙げられる。
当該鉄化合物としては、鉄酢酸塩、鉄クエン酸塩、鉄アセチルアセトナート、鉄水酸化物、硝酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄などが挙げられる。
当該ゲルマニウム化合物としては、四塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、四ヨウ化ゲルマニウムなどが挙げられる。
当該亜鉛化合物としては、亜鉛酢酸塩、亜鉛クエン酸塩、亜鉛アセチルアセトナート、亜鉛水酸化物、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛などが挙げられる。
当該インジウム化合物としては、塩化インジウム、ドデカカルボニル四イリジウム、ヘキサカルボニル六イリジウム、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)2イリジウム、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)2イリジウム、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)2イリジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、クロロエチレンビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、クロロ(2窒素)ビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムなどが挙げられる。
当該ロジウム化合物としては、オクタカルボニル2ロジウム、ドデカカルボニル四ロジウム、ロジウム(ジカルボニル)(アセチルアセトナート)、ジ−μ−クロロテトラカルボニル2ロジウム、ヒドリドテトラカルボニルロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、テトラキス(トリメチルホスフィン)ロジウム塩化物、酢酸ロジウム、ロジウム(アセチルアセトナート)、塩化ロジウム、臭化ロジウムなどが挙げられる。
当該シリコン化合物としては、四塩化シリコン、四臭化シリコン、四ヨウ化シリコンなどが挙げられる。
本発明に係る製造方法において、1種の金属成分を微生物に取り込ませるだけではなく、2種以上の金属成分を微生物に取り込ませてもよい。
2種以上の金属成分を微生物に取り込ませることにより、2種以上の金属原子を含む合金を形成することができる。さらに、必要により、Se、S、Teなどの元素を含む化合物を微生物に取り込ませてもよい。
本発明に係る金属触媒材料の製造方法により、MnOx(x=1〜2)、CoOx(x=1〜2)、CuS、CdS、ZnS、CoS、NiS、FeS、FeSx(x=1〜1.5)、CdSe、ZnSe、Se、Au、Pt、Pd、Al、Rh、In、Be、U、Mn、CdTe、、Fe、GeOx(x=1〜2)、Co、SiOx(x=1〜2)、Coフェライト、Niフェライト、および5Fe・9HOなどの金属触媒粒子を得ることができる。
(工程(2))
本発明に係る金属触媒材料の製造方法における工程(2)は、金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(2)である。
これにより微生物内部に形成した固体金属成分を回収することで、当該固体金属成分を金属触媒材料として使用することができる。
本発明において、金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程は、熱処理によりまたは微生物破壊処理により固体金属成分を回収することが好ましい。
本発明の工程(2)において、熱処理により金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する方法は、400〜900℃で6〜10時間当該微生物を焼成することが好ましく、600〜800℃で6〜8時間当該微生物を焼成することがより好ましい。また、上記熱処理工程の前に必要により公知の方法で金属成分を取り取り込み、かつ内部に固体金属成分を形成した微生物を分離する工程(例えば、遠心分離、濾過)を行ってもよい。
固体金属成分だけを金属触媒材料として利用する場合において、上記の温度範囲および上記焼成時間で微生物を焼成すれば有機物を完全に除去できるため好ましい。
また、後述でも説明するが、焼成された微生物自体を炭化体として使用する場合は、上記の温度範囲および上記焼成時間では、微生物の形状を維持できない為、炭化体に担持した固体金属成分を回収できない。
本発明の工程(2)において、微生物破壊処理により固体金属成分を回収する方法は、固体金属成分が内部に形成された微生物を物理的に破壊する方法、また微生物を化学的に破壊(いわゆる溶解)する方法により固体金属成分を回収する方法が挙げられる。
微生物を物理的に破壊する方法としては、ビーズによる破砕、凍結組織による破砕、または凍結融解による微生物破砕などが挙げられる。
当該ビーズによる破砕は、ガラスビーズなどの無機材料ビーズと微生物とを混合した後、冷やした乳鉢ですり潰すことで、細胞膜や細胞壁が破砕され内部の固体金属成分を回収する方法である。
また当該凍結組織による破砕は、液体窒素などで凍結した微生物をハンマーや乳鉢で粉砕する方法であり、必要に応じて、破砕した微生物断片組織をさらに酵素を含む溶液と接触させて、固体金属成分を回収する方法である。
さらに、凍結融解による微生物破砕は、微生物の凍結・融解を繰り返すことにより凍結により水の体積が増え、融解により体積が減少するため、細胞壁などを壊し、微生物の形態を維持できなくなる方法である。
微生物を化学的に破壊する方法としては、微生物溶解処理が挙げられる。すなわち、本発明に係る微生物破壊処理により固体金属成分を回収する方法としては、微生物溶解処理が好ましい。
微生物溶解処理により固体金属成分を回収すると焼成による固体金属の物理・化学的反応(酸化還元、凝集など)防止の観点で好ましい。
本発明に係る微生物溶解処理は、前記微生物の細胞壁を溶解する細胞壁溶解剤により内部の固体金属成分を回収することが好ましい。
微生物の細胞壁を細胞壁溶解剤により溶解して固体金属成分を回収すると高濃度の細胞壁溶解剤存在下で起きうる固体金属の物理・化学的反応(酸化還元、凝集など)防止の観点で好ましい。
本発明に係る細胞壁溶解剤により微生物の細胞壁を溶解する方法としては、細胞壁溶解剤を含む水または緩衝溶液に対して、菌体を含む溶液中で、OD600=0.1〜1となるように当該溶液を調整するのが好ましい。また細胞壁溶解剤を含む水または緩衝溶液に対して、菌体を含む溶液中で、OD600=0.3〜0.6となるように当該溶液を調整するのがより好ましい。
また、細胞壁溶解剤と微生物とを接触させることで微生物を溶解する場合において、接触時間は、0.5〜24時間が好ましい。
当該細胞壁溶解剤としては、酸、アルカリ、または酵素が挙げられる。当該酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、四塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、ギ酸、酢酸、n−プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、無水酢酸、無水マレイン酸、クエン酸などが挙げられる。
当該細胞壁溶解剤として酸を使用する場合は、pHが1〜3であることが好ましい。
前記アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム,炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、アンモニア、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アニリン、ピリジンなどが好ましい。当該細胞壁溶解剤としてアルカリを使用する場合は、pHが9〜12であることが好ましい。
上記酸またはアルカリは単一物質の水溶液で酸性やアルカリ性を示すものであっても、また中性水溶液であってかつ酸やアルカリを添加した水溶液が安定な酸性またはアルカリ性水溶液となるものも含む。
前記酵素としては、セルラーゼ、ザイモリアーゼ、リゾチウム、p−ニトロフェニル−β−N−アセチル−D−グルコサミン、ムラミダーゼ、エンドペプチダーゼなどが挙げられる。当該酵素濃度としては、0.5〜10U/gを含むことが好ましい。
本発明に係る製造方法において、金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(2)は、熱処理により前記金属成分を取り込んだ前記微生物を炭化し、当該微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分を回収することで、金属触媒材料を担持した炭化体を製造してもよい。
すなわち、本発明に係る金属触媒材料を製造する場合、微生物内部の固体金属成分である金属触媒材料だけを取り出す場合は、上記の工程(1)および上記の工程(2)を行う。一方、微生物内部に形成された固体金属成分を金属触媒材料として製造し、かつ微生物自体を炭素材料として、前記金属触媒材料を担持する担持体に使用する場合は、微生物の形状をある程度維持したまま炭化させる必要がある。そのため、上記工程(2)の一形態である熱処理により微生物を炭化し、当該微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分を回収することが好ましい。この場合、微生物の一部が炭化していればよく、微生物の30〜100%が炭化するように熱処理することが好ましい。
当該熱処理条件は、300〜700℃で4〜6時間当該微生物を焼成することが好ましく、400〜600℃で3〜5時間当該微生物を焼成することがより好ましい。
これにより、炭素材料に担持した金属触媒材料を一段階の工程で製造することができるため、微生物の炭化体自体を本発明に係る導電性材料として使用することができる。
また、上記熱処理工程の前に必要により公知の方法で金属成分を取り取り込み、かつ内部に固体金属成分を形成した微生物を分離する工程(例えば、遠心分離、濾過)を行ってもよい。
本発明に係る製造方法において、前記工程(1)の後、前記金属成分を取り込んだ前記微生物を多孔質支持体に担持する工程(3)を行い、かつ前記工程(2)として、前記多孔質支持体に担持された前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(4)により金属触媒材料を製造する方法であることが好ましい。
すなわち、本発明において、多孔質支持体に含まれた金属触媒材料を製造する場合、工程(1)で微生物に金属成分を取り込ませて内部で固体金属成分を形成した後、その微生物を多孔質支持体に担持させる工程(3)を行い、そして工程(2)により固体金属成分を回収することで、当該固体金属成分である金属触媒材料を製造するものである。
そのため、かかる製造方法で固体金属成分を回収する場合は、微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分を含んでも、または固体成分だけを回収してもよい。さらに、この際、多孔質支持体と固体金属成分とを回収しても、固体金属成分だけを回収してもよい。換言すると、工程(1)により微生物に金属成分を取り込ませて内部で固体金属成分を形成した後、その微生物を多孔質支持体に担持させる工程(3)を行い、工程(2)により固体金属成分を回収する場合、得られる金属触媒材料の形態は、5つある。すなわち、(I)多孔質支持体に固体金属成分が担持した形態、(II)多孔質支持体と微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分とを含む形態、(III)多孔質支持体由来の炭化体および固体金属成分を含む形態、(IV)多孔質支持体由来の炭化体と、微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分とを含む形態、(V)多孔質支持体が消失して固体金属成分だけの形態である。
以下、上記形態ごとに説明する。上記(I)の多孔質支持体に固体金属成分が担持した形態は、固体金属成分を回収する工程(2)として、多孔質支持体自体の材料や形態を変化させないものである。すなわち多孔質支持体として無機材料を使用し、かつ微生物を担持させた多孔質支持体を熱処理または細胞壁溶解剤を使用して内部の固体金属成分を回収する工程を行うことにより得られる。当該熱処理条件は、熱処理温度を300〜800℃が好ましく、600〜800℃がより好ましい。また、熱処理時間は30分〜8時間が好ましく、6時間〜8時間がより好ましい。
上記(II)の多孔質支持体と微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分とを含む形態は、固体金属成分を回収する工程(2)として、多孔質支持体として耐火性無機材料を使用する。そしてさらに、微生物を担持させた多孔質支持体を熱処理して内部の固体金属成分を回収する工程を行うことにより得られる。この場合、微生物由来の炭化体は導電性材料として使用することができる。当該熱処理条件は、熱処理温度300〜800℃が好ましく、400〜600℃より好ましい。また、熱処理時間は30分〜5時間が好ましく、3〜5時間より好ましい。
上記(III)多孔質支持体由来の炭化体および固体金属成分を含む形態は、固体金属成分を回収する工程(2)として、多孔質支持体として有機材料を使用する。そしてさらに、微生物を担持させた多孔質支持体を熱処理して内部の固体金属成分を回収する工程を行うことにより得られる。この場合、多孔質有機材料由来の炭化体を導電性材料として使用することができる。前記熱処理の条件は、熱処理温度300〜800℃が好ましく、400〜600℃より好ましい。また、熱処理時間は30分〜5時間が好ましく、3〜5時間より好ましい。
上記(IV)多孔質支持体由来の炭化体と、微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分とを含む形態は、固体金属成分を回収する工程(2)として、多孔質支持体として有機材料を使用する。そしてさらに、微生物を担持させた多孔質支持体を熱処理して内部の固体金属成分を回収する工程を行うことにより得られる。この場合、多孔質有機材料由来の炭化体および微生物由来の炭化体を導電性材料として使用することができる。前記熱処理の条件は、熱処理温度300〜800℃が好ましく、400〜600℃より好ましい。また、熱処理時間は30分〜5時間が好ましく、3〜5時間より好ましい。
上記(V)多孔質支持体が消失して固体金属成分だけの形態は、固体金属成分を回収する工程(2)として、多孔質支持体として有機材料を使用する。そしてさらに、細胞壁溶解剤を使用して固体金属成分を回収する工程を行うことにより得られる。この場合、細胞壁溶解剤として、酸またはアルカリを使用し、かつ有機材料として脂質、糖質、タンパク質などを使用することにより、微生物の細胞壁だけでなく有機材料の多孔質支持体も溶解させることができる。
微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分を含む多孔質支持体を製造する場合の熱処理条件は、好ましくは300〜800℃、より好ましくは300〜700℃で、好ましくは30分〜〜5時間、より好ましくは4〜6時間当多孔質支持体ごと焼成することであり、400〜600℃で3〜5時間多孔質支持体ごと焼成することがさらに好ましい。
また、本発明に係る金属触媒材料を有する多孔質無機材料支持体の製造方法は、前記工程(1)の後、前記金属成分を取り込んだ前記微生物を多孔質無機材料支持体に担持する工程(3)と、前記多孔質無機材料支持体に担持された前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(5)と、を含むことが好ましい。
固体成分を含む多孔質支持体(換言すると炭化体を実質的に含まない)を製造する場合の熱処理条件は、300〜900℃で30分〜10時間多孔質支持体ごとを焼成することが好ましく、400〜800℃で6〜8時間多孔質支持体ごと焼成することがより好ましく、600〜800℃で6〜5時間多孔質支持体ごと焼成することがより好ましい。
また、本発明に係る熱処理は、開いた系での焼成、または閉じた系で焼成のいずれでもよいが、閉じた系での焼成がより好ましい。但し、意図的に金属を酸化させたい場合には開いた系で低温焼成することがより好ましい場合がある。
本発明に係る多孔質支持体としては、ジルコニア、チタニア、セリア、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライトなどの多孔質無機材料だけでなく、セルロース、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなどの多孔質有機材料が挙げられる。なかでも、ジルコニア、チタニア、セリア、シリカゲル、活性アルミナは耐火性無機材料として使用することができる。
本発明に係る多孔質支持体の微細孔径は、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。また、当該空孔率は30〜70%であることが好ましい。細孔径および空孔率はポロシメーター等で測定可能である。
以下、実施例により本発明を好適な一例について説明するが、本発明の範囲は当該実施例に限定されるものではない。
「金属触媒材料の製造」
<実験例1>
(微生物炭化体が残る形態(Mn系触媒金属))
(本発明に係る微生物の培養および当該微生物に金属成分を取り込ませる方法)
本発明で使用した微生物(Leptothrix discophora)は、以下のスクリーニング法により、神奈川県横須賀市夏島町1番地所在の、日産自動車株式会社内の土壌から採取した試料から単離した。なお、上記微生物は、寄託を行っていないが、本株は特許法施行規則第27条の3の条件を満足する分譲の請求があった場合は、出願人日産自動車株式会社において、同条の条件に従って分譲することを保証する。
すなわち、適当量の試料(土壌)を2mLの純水中で混濁したものを10μlずつ白金耳で、以下の組成で作製されたマンガンを含むLeptothrix寒天培地(pH:7.1)に塗抹し、この寒天培地を25℃で7〜10日間培養して、一次スクリーニングを行った。
Figure 2015027268
次に、Leptothrix寒天培地上に形成された茶色いコロニーを釣菌し、新しい一次Leptothrix寒天培地に再塗抹した。この操作を数回繰り返して菌株を純化した。このような一次スクリーニングによって、マンガン酸化能を有する菌が得られた。得られた菌を当該平板培地で、25℃14日間保持し、当該培養物から下記の表に示す組成の液体培地(25℃、pH7)に釣菌し、好気的に14日間培養した。
Figure 2015027268
(金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する方法)
上記培養した微生物含有サンプル液40mL採取し、遠心分離(10000rpm、10分間)した後、上澄み液を除き、沈降物を滅菌水にて10回洗浄し、HEPES緩衝溶液に懸濁して24時間振とうした。再度遠心分離(10000rpm、10分間)を行い、HEPES緩衝溶液に再懸濁した。その溶液50mLに500mg/LとなるようにMnSO水溶液を添加し、25℃にて24時間静置しサンプル液とした。
前記MnSO水溶液を接種して24時間経過後の微生物を含むサンプル液を遠心分離(10000rpm、10分間)にかけて前記微生物を回収した。
上記回収した微生物を焼成条件500℃、5時間で熱処理することにより、微生物を炭化し、当該微生物由来の炭化体に担持した金属触媒材料(MnOx、x=1〜2)を製造した。得られた金属触媒材料は平均粒子径50nmであった。
<実験例2>(金属触媒材料のみを焼成により回収する形態)
(本発明に係る微生物の培養および当該微生物に金属成分を取り込ませる方法)
上記実験例1と同様の方法で微生物を培養し、当該微生物に金属成分を取り込ませた。
(金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する方法)
上記実験例1と同様の方法で微生物を回収した後、焼成条件700℃、7時間で熱処理することにより、当該微生物由来の炭化体を残らないように微生物を焼成し、金属触媒材料を製造した。得られた金属触媒材料は、平均粒子径50nmであった。
<実験例3>(金属触媒材料のみを細胞壁溶解剤により回収する形態)
(本発明に係る微生物の培養および当該微生物金属成分を取り込ませる方法)
上記実験例1と同様の方法で微生物を培養し、当該微生物に金属成分を取り込ませた。
(金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する方法)
上記実験例1と同様の方法で微生物を回収した後、pH10の水酸化ナトリウム溶液(細胞壁溶解剤)に加えスターラーにより攪拌して20℃の条件下で12時間静置して微生物を溶解することで内部の固体状の金属触媒材料を回収した。得られた金属触媒材料は、平均粒子径60nmであった。
<実験例4>(実験例1とは異なる微生物炭化体が残る形態)
(本発明に係る微生物の培養および当該微生物に金属成分を取り込ませる方法)
上記実験例1の平板培地の代わりに、PDA培地で、スクリーニングした菌を25℃好気的に10日間培養した以外上記実験例1と同様の方法で微生物の培養し、当該微生物に金属成分を取り込ませた。
(金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する方法)
上記培養した微生物含有サンプル液40mL採取し、遠心分離(10000rpm、10分間)した後、上澄み液を除き、沈降物を滅菌水にて10回洗浄し、HEPES緩衝溶液に懸濁して24時間振とうした。再度遠心分離(10000rpm、10分間)を行い、HEPES緩衝溶液に再懸濁した。その溶液50mLに500mg/LとなるようにMnSO水溶液を添加し、25℃にて24時間静置しサンプル液とした。
前記MnSO水溶液を接種して24時間経過後の微生物を含むサンプル液を遠心分離(10000rpm、10分間)にかけて前記微生物を回収した。上記回収した微生物を、焼成条件500℃、5時間で熱処理することにより、微生物を炭化し、当該微生物由来の炭化体に担持した金属触媒材料を製造した。得られた金属触媒材料は平均粒子径50nmであった。
<実験例5>(金属触媒材料のみを焼成により回収する形態)
(本発明に係る微生物の培養および当該微生物金属成分を取り込ませる方法)
上記実験例4と同様の方法で微生物を培養し、当該微生物に金属成分を取り込ませた。
(金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する方法)
上記実験例4と同様の方法で微生物を回収した後、焼成条件700℃、7時間で熱処理することにより、当該微生物由来の炭化体を残らないように微生物を焼成し、金属触媒材料を製造した。得られた金属触媒材料は平均粒子径40nmであった。
<実験例6>(金属触媒材料のみを薬品処理により回収する形態)
(本発明に係る微生物の培養および当該微生物金属成分を取り込ませる方法)
上記実験例4と同様の方法で微生物を培養し、当該微生物に金属成分を取り込ませた。
(金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する方法)
上記実験例4と同様の方法で微生物を回収した後、pH10の水酸化ナトリウム溶液(細胞壁溶解剤)に加えスターラーにより攪拌して20℃の条件下で10時間静置して微生物を溶解することで内部の固体状の金属触媒材料を回収した。得られた金属触媒材料は、平均粒子径60nmであった。
以上の実験例1〜6において、微生物に金属成分を取り込ませることで、平均粒子径の揃った固体金属成分を含む金属触媒材料を製造することが確認された。以下、当該金属触媒材料を用いて電池用電極の製造し、かつその評価について説明する。
(実施例)
上記実験例1で作製した酸化マンガン粉末(MnOx、x=1〜1.5)と、カーボン粉末、およびバインダーとして使用するテトラフルオロエチレンディスパージョン(旭ガラス社製、30%分散液)を、適量の水及び分散剤とともに混合して、正極触媒スラリーを調製した。なお、当該正極触媒スラリーにおける質量比は、酸化マンガン粉末:カーボン粉末:バインダー=1:8:1となるように触媒スラリーを調製した。
テフロンシート上にスクリーンプリンターを用いて塗布し、大気中で330℃で1時間乾燥させることにより、テフロンシート上に正極触媒層(面積1cmあたりの酸化マンガン重量15mg)を作製した。
上記で作製した正極触媒層1枚と、負極として厚さ500μmのZn金属板(ニコラ株式会社製)とを、厚さ50μmのセパレータであるセルガード(ポリポア社製)(8N−KOH溶液含浸)の両側に配置した後、積層させた後にテフロンシートを剥がして接合体とした。正極触媒層側の面にカーボンペーパー基材中にPTFEを含む撥水層形成多孔質基材(W.L.Gore&Associa社製 厚さ100μm)を圧着し、さらに他方の面に集電体として金属メッシュ(太陽金網社製、200メッシュ)を貼り合わせ、空気電池用接合体である評価セルを得た。
(比較例)
空気電池の正極触媒として使用する2酸化マンガン粉末(高純度科学研究所製 平均粒径2μm)と、カーボン粉末、およびバインダーとして使用するテトラフルオロエチレンディスパージョン(旭ガラス社製、30%分散液)を、適量の水及び分散剤とともに混合して、正極触媒スラリーを調製した。なお、当該正極触媒スラリーにおける質量比は、酸化マンガン粉末:カーボン粉末:電解質:バインダー=1:8:1となるように触媒スラリーを調製した。
テフロンシート上にスクリーンプリンターを用いて塗布し、大気中で330℃で1時間乾燥させることにより、テフロンシート上に正極触媒層(面積1cmあたりの酸化マンガン重量15mg)を作製した。
上記で作製した正極触媒層1枚と、負極として厚さ500μmのZn金属板(ニコラ株式会社製)とを、厚さ50μmのセパレータであるセルガード(ポリポア社製)の両側に配置して接合体とした。正極触媒層側の面にカーボンペーパー基材中にPTFEを含む撥水層形成多孔質基材(W.L.Gore&Associa社製 厚さ100μm)を圧着し、さらに他方の面に集電体としてステンレスメッシュ(太陽金網社製、200メッシュ)を貼り合わせ、空気電池用接合体である評価セルを得た。
(評価セルの出力特性)
上記実施例および比較例で作製した評価セルの、アノード側に燃料として水素を供給し、カソード側には酸化剤として空気を供給した。両ガスともセル出口圧力は大気圧とし、水素は58.6℃、R.H60%および0.261L/min、空気は55.0℃、R.H.50%、および1.041L/min、セル温度は70℃に設定し、水素利用率は60%、空気利用率は40%とした。この条件下で、電流密度100mA/cmにてセル電圧(V@100mA/cm2)を測定することで、セルの出力特性を評価した。
その結果を以下の表3に示す。
Figure 2015027268
1 空気電池、
2 正極集電体、
3 負極集電体
4 正極触媒層、
5 負極活物質層
6 電解質層
100 固体高分子型燃料電池
110 電解質膜
120a アノード触媒層、
120b カソード触媒層、
130a アノードガス拡散層、
130b カソードガス拡散層、
140a アノードセパレータ、
140b カソードセパレータ、

Claims (8)

  1. 微生物に金属成分を取り込ませる工程(1)と、
    前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(2)と、を含む金属触媒材料の製造方法。
  2. 前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(2)は、熱処理によりまたは微生物破壊処理により固体金属成分を回収する請求項1に記載の金属触媒材料の製造方法。
  3. Mn、Pt、Au、Cd、Pd、Ni、Co、Ge、Cu、Zn、In、Rh、Fe、およびSiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1または2に記載の金属触媒材料の製造方法。
  4. 前記微生物は、レプトスリックス ディスコフォラ(Leptothrix discophora)、トラメテス ベルシカラー(Trametes versicolor)、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、オルニチニ バチルス カリフォルニエンシス(Ornithine bacillus californiensis)、バチルス属(Bacillus sp.)、メタロゲニウム属(Metallogenium sp.)、プレクトスファエレラ属(Plectosphaerella sp.)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属触媒材料の製造方法。
  5. 前記金属成分を取り込んだ微生物から微生物破壊処理により固体金属成分を回収する工程(2)は、前記微生物の細胞壁を溶解する細胞壁溶解剤により内部の固体金属成分を回収する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属触媒材料の製造方法。
  6. 前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(2)は、熱処理により前記金属成分を取り込んだ前記微生物を炭化し、当該微生物由来の炭化体に担持した固体金属成分を回収する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属触媒材料の製造方法。
  7. 前記工程(1)の後、前記金属成分を取り込んだ前記微生物を多孔質材料支持体に担持する工程(3)と、
    前記多孔質材料支持体に担持された前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(4)と、を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属触媒材料の製造方法。
  8. 前記工程(1)の後、前記金属成分を取り込んだ前記微生物を多孔質無機材料支持体に担持する工程(3)と、
    前記多孔質無機材料支持体に担持された前記金属成分を取り込んだ微生物から固体金属成分を回収する工程(5)と、を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属触媒材料の製造方法。
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