JP2016202477A - プリオン不活化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱に弱い物体や細い管状の物体が消毒対象となる場合でも、確実にプリオンを不活化できるようにする。
【解決手段】消毒対象物を入れた消毒庫1にホルムアルデヒド溶液を導入した後に、消毒庫1の庫内を高真空状態に移行させ、高真空状態でホルムアルデヒド溶液を気化させることによって消毒庫1の庫内にホルムアルデヒドガスを充満させる。この後、消毒庫1に空気を送り込んで消毒庫1の庫内を高真空状態から低真空状態に移行させ、低真空状態を所定時間維持する。消毒庫1の庫内のホルムアルデヒドガスは、低真空状態への移行のために送り込まれた空気により庫内で活発に流動して、プリオンの不活化効果が促進される。
【選択図】図1

Description

この発明は、物体に付着したプリオンを不活化するための方法に関する。
プリオン病は、プリオン(proteinaceous infectious particles)と呼ばれる蛋白質性の感染因子により引き起こされる致死性の神経変性疾患である。発症のメカニズムはいまだ明らかではないが、正常型プリオン蛋白質(PrP)から変性した異常型プリオン蛋白質(PrPSc)が疾患の主要原因であるという説が有力である。
プリオンは種々の病原体の中でも最も不活化が困難な病原体であり、手術器具や脳内電極などを介した二次感染の事例も報告されていることから、プリオンを確実に不活化することが重要課題となっている。医療用器具に関して厚生労働省が推奨しているのは、3%のドレシル硫酸ナトリウム溶液により100°C以上で3分間以上煮沸する方法(SDS処理)であり、このSDS処理を実用化する方法も提案されている(特許文献1を参照。)。
特開2007−175107号公報
SDS処理は、100°C以上の溶液での3分以上の煮沸処理を必要とするため、熱に弱い器具に適用するのは困難である。また煮沸の際には、消毒対象物のすべての面を上記の溶液に接触させる必要があるが、細い管状の器具が消毒対象となる場合には、溶液を管内全体に入り込ませるのが困難で、消毒が不十分になるおそれがある。
この発明は上記の問題に着目し、低い温度で気化させることが可能なホルムアルデヒドと消毒庫内の気圧の大幅な変化との相乗作用によって、熱に弱い物体や細い管状の物体が消毒対象となる場合でも、確実にプリオンを不活化できるようにすることを課題とする。
この発明による不活化方法は、プリオンが付着した消毒対象物を消毒庫に入れた後に、以下の第1〜第5の工程を実行するものである。第1工程では、前記消毒対象物を入れた消毒庫にホルムアルデヒド溶液を導入する。第2工程では、消毒庫の庫内を高真空状態に移行させる。第3工程では、高真空状態下でホルムアルデヒド溶液を気化させることによって前記消毒庫の庫内にホルムアルデヒドガスを充満させる。第4工程では、前記消毒庫に空気を送り込んで消毒庫の庫内を高真空状態から低真空状態に移行させる。第5工程では、前記低真空状態を所定時間維持する。
上記の方法によれば、高真空状態になった消毒庫の庫内でホルムアルデヒドガスを発生させた後に、庫内に空気を送り込んで庫内を高真空状態から低真空状態に移行させたとき、この送り込まれた空気により、庫内に充満するホルムアルデヒドガスが活発に流動し、庫内の隅々にまで行き渡る。また、細い管状の対象物を消毒する場合でも、その管の内部にくまなくホルムアルデヒドガスを入り込ませることが可能である。
上記方法の好ましい一実施態様では、前記第1工程から第5工程までを1サイクルとして、あらかじめ定めた複数サイクルを連続して実行する。このように複数サイクルの不活化処理を行うことによって、プリオンを完全に不活化することができる。
より好ましい実施態様では、複数サイクルの第1工程〜第5工程を実行した後に、消毒庫内のホルムアルデヒドガスを分解する第1浄化工程と、浄化後の前記消毒庫に導入する溶液を中和剤溶液に変更して前記第1工程〜第5工程を少なくとも1サイクル行う中和工程と、前記中和工程により消毒庫内で発生した中和剤ガスを分解する第2浄化工程とを実行する。このようにすれば、ホルムアルデヒドガスを無害化してから消毒庫を開けることができる。
さらに好ましい実施態様では、前記複数サイクルの第1工程〜第5工程から前記第2浄化工程までを1サイクルとして、あらかじめ定められた複数サイクルを連続して実行する。このようにすれば、プリオンを完全に不活化することができるとともに、ホルムアルデヒドを無害化してから消毒庫を開けることができる。
この発明によれば、高真空状態の消毒庫の庫内でホルムアルデヒドガスを充満させた後に、庫内に空気を送り込んで庫内を高真空状態から低真空状態に移行させることにより、ホルムアルデヒドガスを庫内で活発に流動させることができるので、細い管状の物体が消毒対象となる場合でも、その管の内部にくまなくホルムアルデヒドガスが入り込み、消毒対象物をまんべんなく消毒することができる。また、沸点が低いホルムアルデヒドを使用するので、消毒庫の庫内を高温にする必要がなく、熱に弱い物体でも、支障なく消毒することができる。
この発明によるプリオン不活化方法に用いられる消毒装置の概略構成を示す説明図である。 上記の消毒装置で実行される処理の手順を示すフローチャートである。 プリオンの不活化を検証する実験1の結果を示す図である。 プリオンの不活化を検証する実験2の結果を示す図である。 プリオンの不活化を検証する実験2の結果を示す図である。
図1は、この発明によるプリオン不活化方法に用いられる消毒装置の構成例を示すものである。この実施例の消毒装置は、前面に密封可能な扉(図示せず。)が設けられた消毒庫1を有し、適所に気体導出口(図1では点Aにより示す。)、気体導入口(図1では点Bにより示す。)、一対の溶液導入口(図1では点C,Dで示す。)が設けられている。消毒庫1の内部には、2個の気化皿10を備える気化装置11や庫内の気圧と温度を計測するための圧力センサ12や温度センサ13などが設けられている。
消毒庫1の各薬液導入口C,Dには、それぞれ薬液導入用の液管3,4を挿通させている。各液管3,4は、電磁弁31,41やポンプ32,42を介して溶液タンク30,40に連結されている。薬液導入口Cに対応する溶液タンク30にはホルムアルデヒド溶液が充填され、薬液導入口Dに対応する溶液タンク40には中和剤となるアンモニア溶液が充填されている。
消毒庫1の気体導出口Aと気体導入口Bとの間にはガス管路2が接続され、その管路途中には、気体導出口Aから気体導入口Bに向けて、真空ポンプ5,分解装置6,冷却装置7が順に設けられている。ガス管路2の冷却装置7と気体導入口Bとの間には、排気管21と吸気管22とを連通させている。ガス管路2の両端部には電磁弁81,82が、排気管21と吸気管22には電磁弁83,84が、それぞれ設けられている。
分解装置6は、酸化分解用の触媒や触媒を活性化させるための予熱器を備え、ガス管路2を通過するホルムアルデヒドガスやアンモニアガスに触媒を作用させて酸化反応を促す。この分解装置6を通過したホルムアルデヒドガスは水蒸気と炭酸ガスとに分解され、分解装置6を通過したアンモニアガスは水蒸気と窒素ガスとに分解される。冷却装置7は、分解処理後のガスを冷却する。
図1には示していないが、この実施例の消毒装置は、上記した構成のほかに、設定や始動指示などの操作を受け付ける操作部、実行中の工程の確認画面を表示する表示部、消毒庫1の庫内を温めるためのヒーター、装置内の各部の動作を制御する制御装置などを備えている。
制御装置は、真空ポンプ5の動作や電磁弁81〜84の開閉動作を制御することにより、消毒庫1の庫内を低真空状態と高真空状態とに切り換える。具体的には、ガス管路2の気体導出口Aの側の電磁弁81と排気管21の電磁弁83とを開放して真空ポンプ5を作動させ、消毒庫1内の空気を排気管21より外部に排出することにより、庫内が大気圧状態から約−10kPaの低真空状態に移行し、さらに低真空状態下で排気を行うことにより、庫内が約−80kPaの高真空状態に移行する。その後、真空ポンプ5を停止させて、ガス管路2の気体導出口Aの側の電磁弁81と排気管21の電磁弁83とを閉じると共に、気体導入口Bの側の電磁弁82と吸気管22の電磁弁84とを開き、吸気管22より消毒庫1に外気を取り込むことにより、庫内が高真空状態から低真空状態に戻る。
上記構成の消毒装置は、消毒庫1の庫内を低真空状態と高真空状態とに切り換えながら、庫内で殺菌機能を有するホルムアルデヒドガスを発生させて充満させることによって、消毒対象物に付着しているプリオンを不活化するものである。
図2は、プリオンが付着している物体(手術用具など)を対象に、上記構成の消毒装置を用いた消毒処理を行う場合の処理手順を示すもので、装置の立ち上げ直後の暖機運転(ステップS1)、ホルムアルデヒドガスによる不活化処理(ステップS2)、ホルムアルデヒドガスの浄化処理(ステップS3)、アンモニアガスを用いた中和処理(ステップS4)、アンモニアガスの浄化処理(ステップS5)を順に実行するものである。図2では、特に重要な不活化処理のステップS2と中和処理のステップS4とについて、詳細な手順を表している。以下、図2に示す流れに沿って、消毒処理の手順を詳細に説明する。
まず、作業者は、消毒庫1の扉を開けて消毒対象物を消毒庫1内に入れ、扉を閉じて消毒庫1を密封状態にし、始動操作を行う。この始動操作によりステップS1の暖機運転が開始される。暖機運転では、低真空状態と高真空状態とが短い時間間隔で交互に切り替えられ、この処理が所定回数繰り返される。この間に図示しない加温用のヒーターによって、消毒庫1の庫内の温度が50°Cに設定される。
暖機運転は低真空状態で終了し、ガス管路2、排気管21、および吸気管22の電磁弁81〜84が閉じられ、真空ポンプ5も停止した状態で、つぎの不活化処理(ステップS2)に進む。
この実施例の不活化処理は、5段階の工程(ステップS2,S2,S2,S2,S2とする。)を含む処理サイクルを、あらかじめ定められた回数(N回とする。)繰り返すものである。この処理サイクルの最初のステップS2では、暖機運転または前回のサイクルから引き継がれた低真空状態下において、液管3の電磁弁31を開き、溶液タンク30内のホルムアルデヒド溶液をポンプ32により吸い上げて、消毒庫1に導入する。導入されたホルムアルデヒド溶液は2個の気化皿10のうちの第1の気化皿10に注がれる。
つぎのステップS2では、ガス管路2の気体導出口Aの側の電磁弁81および排気管21の電磁弁83を開放して真空ポンプ5を動かすことにより、消毒庫1の庫内が低真空状態から高真空状態に移行する。圧力センサ12により庫内の気圧が−80kPaに達したことが検出されると、開放されていた電磁弁81,83が閉じられ、真空ポンプ5の動作を停止させる。
ステップS2では、高真空状態の庫内で気化装置11の内蔵ヒーターにより気化皿10を暖め、気化皿10のホルムアルデヒドを気化させる。ガス管路2、排気管21、および吸気管22の電磁弁81〜84は全て閉じられており、気化により生じたホルムアルデヒドガスは高真空状態の庫内に充満した状態となる。
高真空状態を所定時間継続させた後は、ステップS2へ進み、ガス管路2の気体導入口Bの側の電磁弁82および吸気管22の電磁弁84を開放することによって、消毒庫1に外部から空気を取り込み、消毒庫1の庫内を高真空状態から低真空状態に移行させる。庫内が低真空状態に戻ると、ステップS2へ進み、開放されていた電磁弁82,84を閉じて低真空状態を所定時間維持する。このときには気体導出口Aの側の電磁弁81や排気管21の電磁弁83も閉じており、真空ポンプ5は動作を停止しているので、ホルムアルデヒドガスは消毒庫1の庫内に閉じ込められ、気体導入口Bから庫内に入った空気と混ぜ合わせられる。
この実施例では、上記ステップS2からステップS2までの1サイクルを、約15分かけて実施するようにしている。N回目のサイクルの処理が終了すると、ステップS2が「YES」となり、不活化処理を終了する。
なお、ステップS2の低真空状態下でホルムアルデヒド溶液の導入を行っているのは、高圧環境下でホルムアルデヒド溶液を消毒庫1に導入するのが困難なためであるが、その結果、つぎのステップS2で低真空状態から高真空状態に移行させる間に、気化皿10内のホルムアルデヒド溶液の一部が気化してガス管路2に流出する可能性がある。しかし、ガス管路2に入ったホルムアルデヒドガスは、分解装置6により無害化されて外気に排出されるので、周囲の環境に影響が及ぶおそれはない。
つぎのステップS3のホルムアルデヒドガスの浄化処理では、ガス管路2の両端部の電磁弁81,82を開放する一方で、排気管21および吸気管22の各電磁弁83,84を閉じ、真空ポンプ5を動かすことによって、消毒庫1とガス管路2との間で気体を循環させる。気体中に含まれるホルムアルデヒドガスは分解装置6を通過する間に水蒸気と炭酸ガスとに分解されて無害化される。
ステップS3の詳細な手順は示していないが、浄化処理が開始されてからしばらくの間は、不活化処理の終了時の低真空状態が維持され、その後、高真空状態と低真空状態とが複数回切り替えられる。なお、浄化処理では真空ポンプ5が常時動いているので、低真空状態下の気圧は−10kPaよりやや低くなる。
つぎのステップS4のアンモニアガスによる中和処理は低真空状態下で開始される。最初のステップS4では、全ての電磁弁81〜84を閉じ、真空ポンプ5の動作も停止させる一方で、液管4の電磁弁41を開放し、溶液タンク40内のアンモニア溶液をポンプ42により吸い上げて、消毒庫1に導入する。導入されたアンモニア溶液は2個の気化皿10のうちの第2の気化皿10に注がれる。つぎのステップS4では、庫内の低真空状態を所定時間維持し、気化装置11の内蔵ヒーターにより気化皿10を温めることによりアンモニア溶液を気化させる。
この後、再びアンモニア溶液を導入し(ステップS4)、以下、不活化処理のステップS2〜S2と同様の手順の処理を進行させる。すなわち、消毒庫1の庫内を低真空状態から高真空状態に移行させ(ステップS4)、その高真空状態を所定時間維持してアンモニア溶液を気化し(ステップS4)、その後に庫内を高真空状態から低真空状態に戻し(ステップS4)、低真空状態を所定時間維持する(ステップS4)。ステップS4からS4までの処理も、1サイクルを約15分として、あらかじめ定められた回数(M回とする。)繰り返される。
つぎのステップS5のアンモニアガスの浄化処理では、ガス管路2の両端部の電磁弁81,82を開放する一方で、排気管21および吸気管22の電磁弁83,84を閉じ、真空ポンプ5を動かすことによって、消毒庫1とガス管路2との間で気体を循環させる。気体中に含まれるアンモニアガスは分解装置6を通過する間に水蒸気と窒素ガスとに分解され、無害化される。
上記のとおり、この実施例の不活化処理では、消毒庫1にホルムアルデヒド溶液を導入した後に、消毒庫1の庫内を高真空状態にすることにより庫内にホルムアルデヒドガスを充満させ、その後に消毒庫1に外部から消毒庫1に空気を送り込んで庫内を高真空状態から低真空状態に移行させる。高真空状態下で気化したホルムアルデヒドガスは、低真空状態への移行の間に送り込まれる空気と混合しながら庫内で活発に流動するので、ホルムアルデヒドガスを庫内の隅々にまで行き渡らせることができる。また、細い管状の物体が消毒対象となる場合でも、管の内部にくまなくホルムアルデヒドガスを入り込ませることが可能である。
なお、不活化処理における処理サイクルの回数Nおよび中和処理における処理サイクルの回数Mは、消毒対象物の種類や消毒庫の庫内の体積などに応じて、適宜、変更する。また、1サイクルの実行時間を上記実施例より長くし、各処理サイクルの回数M,Nを「1」に設定してもよい。
さらに、望ましい実施態様においては、不活化処理のステップS2からアンモニアの浄化処理のステップS5を1サイクルとし、これを複数サイクル連続して実行するものである。
つぎに、上記図2に示した手順に沿った消毒処理によってプリオンが不活化されることを確認した検証実験について、説明する。
<実験1>
スクレイピープリオン感染マウスの脳組織の10%ホモジネート(以下、「基礎サンプル」という。)をカバーグラスに滴下して乾燥させた後、当該カバーガラスをプロセスチャレンジデバイス(PCD)と呼ばれる実験器具の内部に入れた。この実験器具ごと図1に示した構成の消毒装置の消毒庫1に入れ、消毒庫1の前面扉を閉じて密閉した後に、図2に示した手順に基づき消毒処理を開始した。
この消毒処理では、図2に示した不活化処理のステップS2〜S2の実行回数Nを12回、中和処理のステップS4〜S4の実行回数Mを2回とした。また、ステップS2〜S2の1サイクルの時間を180分、不活化後の浄化処理(ステップS3)の時間を35分、中和処理(ステップS4)の時間を50分、中和後の浄化処理(ステップS5)の時間を45分として、図2に示した手順全体(ステップS1〜S5)を4サイクル連続して実行した。
上記の消毒処理の完了後、消毒装置の消毒庫1から実験器具を取り出して、カバーガラスの基礎サンプルを水で回収し、その一部に正常型プリオン蛋白質を分解する機能を持つプロティナーゼKを添加した。以下、消毒後にプロティナーゼKを加えた基礎サンプルをPK(+)サンプルAと呼び、消毒したがプロティナーゼKを加えていない基礎サンプルをPK(−)サンプルAと呼ぶ。
上記の各サンプルと比較するために、消毒処理を施していない基礎サンプルについても、プロティナーゼKを加えたサンプル(以下、PK(+)サンプルBという。)と、プロティナーゼKを加えないサンプル(以下、PK(−)サンプルBという。)とを準備した。PK(+)サンプルBは異常型プリオン蛋白質のみを含むサンプルであり、PK(−)サンプルBは正常型プリオン蛋白質および異常型プリオン蛋白質の双方を含むサンプルである。
上記4種類のサンプルについて、それぞれ個別にウエスタンブロッティングを実施し、生きたプリオンの存在を示すバンドを含む転写結果が得られたか否かを確認した。なお、PK(+)サンプルA,PK(−)サンプルAについては、ホルムアルデヒドによりプリオンが固定されて泳動が抑制される可能性を考慮し、ホルムアルデヒド架橋を外す還元剤を投与した後にウエスタンブロッティングを実施した。
図3(1)は、PK(+)サンプルAの転写結果の写真とPK(+)サンプルBの転写結果の写真とを、比較できるように左右に並べたものである。図3(2)は、PK(−)サンプルAの転写結果の写真とPK(−)サンプルBの転写結果の写真とを、比較できるように左右に並べたものである。
プロティナーゼKが加えられたサンプル群については、図3(1)に示すように、消毒されていないPK(+)サンプルBではプリオンの存在を示すバンドが検出されたが、消毒されたPK(+)サンプルAでは、バンドは検出されなかった。プロティナーゼKが加えられなかったサンプル群についても同様に、消毒されていないPK(−)サンプルBではバンドが検出されたが、消毒されたPK(−)サンプルAでは、バンドは検出されなかった。
<実験2>
実験2では、実験1で用いられたのと同じ方法で作成されたPK(+)サンプルAおよびPK(+)サンプルB(プロティナーゼKが加えられたサンプル群)について、10倍希釈液を作成し、これらについて、さらに10倍希釈して超音波をあて、試験管内で48時間培養する処理(Protein misfolding cyclic amplificationを略して、以下「PMCA処理」という。)を3サイクル実施した。また、PMCA処理の開始前(以下、0サイクルという。)および各サイクル後の希釈液に対し、それぞれウエスタンブロッティングを実施して、プリオンの存在を示すバンドを含む転写結果が得られたか否かを確認した。
図4は、PK(+)サンプルA,Bについての0サイクルおよび1サイクルの転写結果の写真を、サイクル毎に左右に並べたものである。図5は、PK(+)サンプルA,Bについての2サイクルおよび3サイクルの転写結果の写真を、サイクル毎に左右に並べたものである。なお、図4では、0サイクルについてのみ、該当するサンプルの写真を2組ずつ提示している。
図4および図5に示すように、プロティナーゼKが加えられたサンプル群のうち消毒されたPK(+)サンプルAでは、0サイクルを含むいずれのサイクルでもバンドは認められなかった。これに対し、消毒されなかったPK(+)サンプルBでは、0サイクルのときからバンドが認められ、PMCA処理を行ってもバンドが維持された。
図4および図5に示した実験結果に図3に示した実験1の結果を合わせて勘案すると、PK(+)サンプルAには正常型プリオン蛋白質も異常型プリオン蛋白質も含まれていないと思われる。
<実験3>
この実験3では、16匹のマウスを3つのグループに分け、第1のグループ(4匹)には、基礎サンプルを乾燥させた後に実験1と同じ要領で消毒したものを脳内接種した。一方、第2のグループ(6匹)には、基礎サンプルそのものを消毒せずに脳内接種し、第3のグループ(6匹)には、基礎サンプルを乾燥させたものを消毒せずに脳内接種した。そして、接種後の各個体を、毎日体重を計測しながら生育した。
第2および第3のグループの12匹は、接種後、170日を経過したあたりから徐々に体重が低下し、235日目になるまでに全頭死亡した。一方、第1グループの4匹は体重が安定し、接種から340日目を超えても、なお生存した。
上記実験3の結果によれば、第1グループのマウスに接種されたサンプルは、消毒処理によりプリオンが不活化されていた可能性が高いと思われる。
上記のとおり、実験1〜3の結果は、いずれも、図2のステップS2〜S2による不活化処理がプリオンの不活化に有効であることを裏付けるものとなった。この不活化処理は、手術用具などの医療器具のほか、手術衣、シーツ、ベッドマットなど、プリオンにより汚染されている可能性がある種々の物品の消毒処理に適用することが可能である。
1 消毒庫
2 ガス管路
3,4 液管
5 真空ポンプ
6 分解装置
10 気化皿
11 気化装置
21 排気管
22 吸気管
30 ホルムアルデヒド溶液のタンク
40 アンモニア溶液のタンク
81,82,83,84 電磁弁
A 気体導出口
B 気体導入口
C,D 薬液導出口

Claims (4)

  1. プリオンが付着した消毒対象物を入れた消毒庫にホルムアルデヒド溶液を導入する第1工程と、前記消毒庫の庫内を高真空状態に移行させる第2工程と、高真空状態下で前記ホルムアルデヒド溶液を気化させることによって前記消毒庫の庫内にホルムアルデヒドガスを充満させる第3工程と、前記消毒庫に空気を送り込んで消毒庫の庫内を高真空状態から低真空状態に移行させる第4工程と、前記低真空状態を所定時間維持する第5工程とを順に実行することにより、前記消毒対象物に付着したプリオンを不活化することを特徴とするプリオン不活化方法。
  2. 請求項1に記載されたプリオン不活化方法であって、
    前記第1工程から第5工程までを1サイクルとして、あらかじめ定めた複数サイクルを連続して実行するプリオン不活化方法。
  3. 請求項2に記載されたプリオン不活化方法であって、
    前記複数サイクルの第1工程〜第5工程を実行した後に、消毒庫内のホルムアルデヒドガスを分解する第1浄化工程と、前記消毒庫に導入する溶液を中和剤溶液に変更して前記第1工程〜第5工程を少なくとも1サイクル行う中和工程と、前記中和工程により消毒庫内で発生した中和剤ガスを分解する第2浄化工程とを順に実行するプリオン不活化方法。
  4. 請求項3に記載されたプリオン不活化方法であって、
    前記複数サイクルの第1工程〜第5工程から前記第2浄化工程までを1サイクルとして、あらかじめ定められた複数サイクルを連続して実行するプリオン不活化方法。
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