JP2016199809A - 銅多孔質焼結体及び銅多孔質複合部材 - Google Patents

銅多孔質焼結体及び銅多孔質複合部材 Download PDF

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Abstract

【課題】焼結時の収縮率が小さく寸法精度に優れるとともに十分な強度を有する銅多孔質焼結体を製造可能な銅多孔質焼結体を提供する。【解決手段】複数の銅繊維11が焼結されてなる銅多孔質焼結体10であって、銅繊維11は、銅又は銅合金からなり、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされており、前記銅繊維同士の結合部においては、ポーラスな構造の酸化還元層が一体に結合している。【選択図】図3

Description

本発明は、銅又は銅合金からなる銅多孔質焼結体、この銅多孔質焼結体が部材本体に接合されてなる銅多孔質複合部材に関するものである。
上述の銅多孔質焼結体及び銅多孔質複合部材は、例えば各種電池における電極及び集電体、熱交換器用部材、消音部材、フィルター、衝撃吸収部材等として使用されている。
例えば、特許文献1には、三次元網目状構造体をなす銅多孔質体を導電性金属の部材本体に一体被着した伝熱部材が提案されている。
ここで、特許文献1においては、三次元網目状構造体をなす金属焼結体(銅多孔質焼結体)の製造方法として、加熱により焼失する材質から成る三次元網目状構造体(例えばウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等連続気泡を持つ合成樹脂発泡体、天然繊維クロス、人造繊維クロス等)の骨格に粘着剤を塗布し、金属粉状物を被着した成形体を用いる方法や、加熱により焼失する材質から成り、かつ三次元網目状構造体を形成することができる材料(例えばパルプや羊毛繊維)に金属粉状物を抄き込んだシート状成形体を用いる方法等が開示されている。なお、この特許文献1においては、還元雰囲気で焼結を行っている。
特開平08−145592号公報
ところで、特許文献1に記載されたように、金属粉状物を用いて金属焼結体(銅多孔質焼結体)を成形する場合には、焼結時における収縮率が大きく、気孔率の高い銅多孔質焼結体を得ることが困難であるといった問題があった。
また、特許文献1に記載された金属焼結体(銅多孔質焼結体)においては、単に還元雰囲気で焼結を行っていることから、金属粉状物の表面が比較的平滑な面となっており、金属粉状物同士の接合面積が十分に確保できず、焼結強度が十分に確保できないといった問題があった。このように焼結強度が不十分であることから、金属焼結体(銅多孔質焼結体)としての伝熱特性及び導電性等の各種特性が低下するおそれがあった。
さらに、加熱によって焼失する材質から成る三次元網目状構造体を利用して金属焼結体(銅多孔質焼結体)を成形する場合、三次元網目状構造体が加熱によって焼失した際に、焼結が進行する前に成形体が変形してしまい、寸法精度に優れた金属焼結体(銅多孔質焼結体)を製造することができないおそれがあった。
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、焼結時の収縮率が小さく寸法精度に優れるとともに十分な強度を有する銅多孔質焼結体、この銅多孔質焼結体が部材本体に接合された銅多孔質複合部材を提供することを目的としている。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の銅多孔質焼結体は、複数の銅繊維が焼結されてなる銅多孔質焼結体であって、前記銅繊維は、銅又は銅合金からなり、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされており、前記銅繊維同士の結合部においては、ポーラスな構造の酸化還元層が一体に結合していることを特徴としている。
この構成の銅多孔質焼結体によれば、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされた銅繊維同士が焼結されることで構成されているので、銅繊維同士の間に十分な空隙が確保されるとともに、焼結時における収縮率を抑えることができ、気孔率の高く、かつ寸法精度に優れている。
また、前記銅繊維同士の結合部においては、ポーラスな構造の前記酸化還元層が一体に結合しているので、接合面積が確保されるとともに銅繊維同士が強固に接合されることになり、強度に優れている。
本発明の銅多孔質複合部材は、部材本体と、上述の銅多孔質焼結体と、が接合されてなることを特徴としている。
この構成の銅多孔質複合部材によれば、上述の気孔率が高く寸法精度に優れているとともに強度に優れた銅多孔質焼結体が部材本体と強固に接合されていることから、表面積が大きく熱交換効率や保水性等の各種特性に優れた銅多孔体焼結体単体の特性に加え、銅多孔質複合部材として、優れた伝熱特性及び導電性等の各種特性を発揮する。
ここで、本発明の銅多孔質複合部材においては、前記部材本体のうち前記銅多孔質焼結体との接合面は、銅又は銅合金で構成され、前記銅多孔質焼結体を構成する前記銅繊維と前記部材本体の前記接合面との結合部においては、ポーラスな構造の酸化還元層が一体に結合していることが好ましい。
この場合、前記銅多孔質焼結体を構成する前記銅繊維と前記部材本体の前記接合面との結合部においては、ポーラスな構造の酸化還元層が一体に結合しているので、前記銅多孔質焼結体と前記部材本体とが強固に接合されることになり、銅多孔質複合部材として優れた強度、伝熱特性及び導電性等の各種特性を発揮する。
本発明によれば、焼結時の収縮率が小さく寸法精度に優れるとともに十分な強度を有する銅多孔質焼結体、この銅多孔質焼結体が部材本体に接合された銅多孔質複合部材を提供することができる。
本発明の第一の実施形態である銅多孔質焼結体の拡大模式図である。 図1に示す銅多孔質焼結体を構成する銅繊維同士の結合状態を示す観察写真である。 図1に示す銅多孔質焼結体を構成する銅繊維同士の結合の断面観察写真である。 図1に示す銅多孔質焼結体の製造方法の一例を示すフロー図である。 図1に示す銅多孔質焼結体を製造する製造工程を示す説明図である。 図1に示す銅多孔質焼結体を構成する銅繊維の観察写真である。(a)が焼結工程(酸化処理工程及び還元処理工程)前の銅繊維、(b)が焼結工程(酸化処理工程及び還元処理工程)後の銅繊維である。 本発明の第二の実施形態である銅多孔質複合部材の外観説明図である。 図7に示す銅多孔質複合部材の製造方法の一例を示すフロー図である。 本発明の他の実施形態である銅多孔質複合部材の外観図である。 本発明の他の実施形態である銅多孔質複合部材の外観図である。 本発明の他の実施形態である銅多孔質複合部材の外観図である。 本発明の他の実施形態である銅多孔質複合部材の外観図である。 本発明の他の実施形態である銅多孔質複合部材の外観図である。 本発明の他の実施形態である銅多孔質複合部材の外観図である。 本発明例2である銅多孔質焼結体の結合部の拡大観察写真である。 比較例5である銅多孔質焼結体の結合部の拡大観察写真である。
以下に、本発明の実施形態である銅多孔質焼結体及び銅多孔質複合部材について、添付した図面を参照して説明する。
(第一の実施形態)
まず、本発明の第一の実施形態である銅多孔質焼結体10及び銅多孔質焼結体10の製造方法について、図1から図6を参照して説明する。
本実施形態である銅多孔質焼結体10は、図1に示すように、複数の銅繊維11が焼結されて一体化されたものである。
ここで、銅繊維11は、銅又は銅合金からなり、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされている。本実施形態では、銅繊維11は、例えばC1100(タフピッチ銅)で構成されている。
なお、本実施形態では、銅繊維11には、ねじりや曲げ等の形状付与が施されている。また、本実施形態である銅多孔質焼結体10においては、その見掛け密度Dが銅繊維11の真密度Dの51%以下とされている。銅繊維11の形状については、前記見掛け密度Dが銅繊維11の真密度Dの51%以下となる限りにおいて、直線状、曲線状など任意であるが、銅繊維11の少なくとも一部に、ねじり加工や曲げ加工等により所定の形状付与加工をされたものを用いると、繊維同士の間の空隙形状を立体的かつ等方的に形成させることができ、その結果、銅多孔質焼結体の伝熱特性及び導電性等の各種特性の等方性向上に繋がる。
そして、本実施形態である銅多孔質焼結体10においては、図2及び図3に示すように、銅繊維11の表面に酸化還元層12が形成されており、銅繊維11、11同士の結合部においては、互いの表面に形成された酸化還元層12,12同士が一体に結合している。
なお、この酸化還元層12は、図3に示すようにポーラスな構造とされており、図2に示すように銅繊維11の表面に微細な凹凸を生じさせている。
次に、本実施形態である銅多孔質焼結体10の製造法について、図4のフロー図及び図5の工程図等を参照して説明する。
まず、図5に示すように、本実施形態である銅多孔質焼結体10の原料となる銅繊維11を、散布機31からステンレス製容器32内に向けて散布して嵩充填し、銅繊維11を積層する(銅繊維積層工程S01)。ここで、この銅繊維積層工程S01では、充填後の嵩密度Dが銅繊維11の真密度Dの50%以下となるように複数の銅繊維11を積層配置する。なお、本実施形態では、銅繊維11にねじり加工や曲げ加工等の形状付与加工が施されているので、積層時に銅繊維11同士の間に立体的かつ等方的な空隙が確保されることになる。
次に、ステンレス製容器32内に嵩充填された銅繊維11を焼結する(焼結工程S02)。この焼結工程S02においては、図4及び図5に示すように、銅繊維11の酸化処理を行う酸化処理工程S21と、酸化処理された銅繊維11を還元して焼結する還元処理工程S22と、を備えている。
本実施形態では、図5に示すように、銅繊維11が充填されたステンレス製容器32を加熱炉33内に装入し、大気雰囲気で加熱して銅繊維11を酸化処理する(酸化処理工程S21)。この酸化処理工程S21により、銅繊維11の表面に、例えば厚さ1μm以上、100μm以下の酸化物層が形成される。
本実施形態における酸化処理工程S21の条件は、保持温度が520℃以上、1050℃以下、保持時間が5分以上、300分以下の範囲内とされている。
ここで、酸化処理工程S21における保持温度が520℃未満の場合には、銅繊維11の表面に酸化物層が十分に形成されないおそれがある。一方、酸化処理工程S21における保持温度が1050℃を超える場合には、酸化によって形成された酸化銅(II)が分解してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、酸化処理工程S21における保持温度を520℃以上、1050℃以下に設定している。なお、銅繊維11の表面に酸化物層を確実に形成するためには、酸化処理工程S21における保持温度の下限を600℃以上、保持温度の上限を1000℃以下、とすることが好ましい。
また、酸化処理工程S21における保持時間が5分未満の場合には、銅繊維11の表面に酸化物層が十分に形成されないおそれがある。一方、酸化処理工程S21における保持時間が300分を超える場合には、銅繊維11の内部にまで酸化が進行し、銅繊維11が脆化して強度が低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、酸化処理工程S21における保持時間を5分以上、300分以下の範囲内に設定している。なお、銅繊維11の表面に酸化物層を確実に形成するためには、酸化処理工程S21における保持時間の下限を10分以上とすることが好ましい。また、銅繊維11の酸化による脆化を確実に抑制するためには、酸化処理工程S21における保持時間の上限を100分以下とすることが好ましい。
次に、本実施形態では、図5に示すように、酸化処理工程S21を実施した後、銅繊維11が充填されたステンレス製容器32を焼成炉34内に装入し、還元雰囲気で加熱して、酸化された銅繊維11を還元処理するとともに銅繊維11同士を結合する(還元処理工程S22)。
本実施形態における還元処理工程S22の条件は、雰囲気が窒素と水素の混合ガス雰囲気、保持温度が600℃以上、1080℃以下、保持時間が5分以上、300分以下の範囲内とされている。
ここで、還元処理工程S22における保持温度が600℃未満の場合には、銅繊維11の表面に形成された酸化物層を十分に還元できないおそれがある。一方、還元処理工程S22における保持温度が1080℃を超える場合には、銅の融点近傍にまで加熱されることになり、強度及び気孔率の低下がおこるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、還元処理工程S22における保持温度を600℃以上、1080℃以下に設定している。なお、銅繊維11の表面に形成された酸化物層を確実に還元するためには、還元処理工程S22における保持温度の下限を650℃以上とすることが好ましい。また、強度及び気孔率の低下を確実に抑制するためには、還元処理工程S22における保持温度の上限を1050℃以下とすることが好ましい。
また、還元処理工程S22における保持時間が5分未満の場合には、銅繊維11の表面に形成された酸化物層を十分に還元できないおそれがあるとともに、焼結が不十分となるおそれがある。一方、還元処理工程S22における保持時間が300分を超える場合には、焼結による熱収縮が大きくなるとともに強度が低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、還元処理工程S22における保持時間を5分以上、300分以下の範囲内に設定している。なお、銅繊維11の表面に形成された酸化物層を確実に還元するとともに焼結を十分に進行させるためには、還元処理工程S22における保持温度の下限を10分以上とすることが好ましい。また、焼結による熱収縮や強度低下を確実に抑制するためには、還元処理工程S22における保持時間の上限を100分以下とすることが好ましい。
この酸化処理工程S21及び還元処理工程S22により、図2、図3及び図6に示すように、銅繊維11の表面には、酸化還元層12が形成され、微細な凹凸が生じることになる。
また、酸化処理工程S21によって銅繊維11の表面に酸化物層が形成され、この酸化物層によって複数の銅繊維11同士が架橋される。その後、還元処理S22を行うことで、銅繊維11の表面に形成された酸化物層が還元されて上述の酸化還元層12が形成されるとともに、この酸化還元層12同士が結合することにより、銅繊維11同士が焼結される。
以上のような製造方法により、本実施形態である銅多孔質焼結体10が製造される。
以上のような構成とされた本実施形態である銅多孔質焼結体10によれば、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされた銅繊維11が焼結されることで構成されているので、銅繊維11同士の間に十分な空隙が確保されるとともに、焼結時における収縮率を抑えることができ、気孔率の高く、かつ寸法精度に優れている。
さらに、本実施形態である銅多孔質焼結体10においては、銅繊維11、11同士が、互いの表面に形成された酸化還元層12、12同士が一体に結合することにより、接合されているので、焼結強度を大幅に向上させることができる。
また、本実施形態である銅多孔質焼結体10の製造方法によれば、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされた銅繊維11を、嵩密度Dが銅繊維11の真密度Dの50%以下となるように積層配置する銅繊維積層工程S01を備えているので、焼結工程S02においても、銅繊維11同士の間の空隙を確保することができ、収縮を抑えることが可能となる。これにより、気孔率の高く寸法精度に優れた銅多孔質焼結体10を製造することができる。
具体的には、嵩密度Dが銅繊維11の真密度Dの50%以下となるように積層配置して焼結することによって製造された銅多孔質焼結体10の見掛け密度Dが銅繊維11の真密度Dの51%以下とされているので、焼結工程S02における収縮が抑制されており、高い気孔率を確保することが可能となる。
ここで、銅繊維11の直径Rが0.02mm未満の場合には、銅繊維11同士の接合面積が小さく、焼結強度が不足するおそれがある。一方、銅繊維11の直径Rが1.0mmを超える場合には、銅繊維11同士が接触する接点の数が不足し、やはり、焼結強度が不足するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、銅繊維11の直径Rを0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内に設定している。なお、さらなる強度向上を図る場合には、銅繊維11の直径Rの下限を0.05mm以上とすることが好ましく、銅繊維11の直径Rの上限を0.5mm以下とすることが好ましい。
また、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rが4未満の場合には、積層配置したときに嵩密度Dが銅繊維11の真密度Dの50%以下とすることが難しく、気孔率の高い銅多孔質焼結体10を得ることが困難となるおそれがある。一方、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rが2500を超える場合には、銅繊維11を均一に分散させることができなくなり、均一な気孔率を有する銅多孔質焼結体10を得ることが困難となるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rを4以上、2500以下の範囲内に設定している。なお、さらなる気孔率の向上を図る場合には、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rの下限を10以上とすることが好ましい。また、確実に気孔率が均一な銅多孔質焼結体10を得るためには、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/R上限を500以下とすることが好ましい。
また、焼結工程S02では、銅繊維11を酸化させる酸化処理工程S21と、酸化された銅繊維11を還元するとともに銅繊維11同士を結合させる還元処理工程S22と、を備えているので、銅繊維11同士を強固に接合することが可能となる。本実施形態では、図2、図3及び図6に示すように、銅繊維11を酸化処理した後に還元することで、銅繊維11の表面に酸化還元層12が形成され、微細な凹凸が生じており、銅繊維11同士の結合部においては、これら酸化還元層12同士が一体に結合していることから、接合面積が確保されるとともに銅繊維11同士を強固に結合することが可能となる。
さらに、本実施形態である銅多孔質焼結体10は、銅繊維11の表面に凹凸が形成されているので、表面積が大きくなり、例えば熱交換効率や保水性等の各種特性を大幅に向上させることが可能となる。
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態である銅多孔質複合部材100について、添付した図面を参照して説明する。
図7に、本実施形態である銅多孔質複合部材100を示す。この銅多孔質複合部材100は、銅又は銅合金からなる銅板120(部材本体)と、この銅板120の表面に接合された銅多孔質焼結体110と、を備えている。
ここで、本実施形態である銅多孔質焼結体110は、第一の実施形態と同様に、複数の銅繊維が焼結されて一体化されたものである。ここで、銅繊維は、銅又は銅合金からなり、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされている。本実施形態では、銅繊維は、例えばC1100(タフピッチ銅)で構成されている。
なお、本実施形態では、銅繊維には、ねじりや曲げ等の形状付与が施されている。また、本実施形態である銅多孔質焼結体110においては、その見掛け密度Dが銅繊維の真密度Dの51%以下とされている。
さらに、本実施形態においては、銅多孔質焼結体110を構成する銅繊維及び銅板120の表面に、後述するように酸化処理及び還元処理を行うことによって酸化還元層が形成されており、これにより、銅繊維及び銅板120の表面に微細な凹凸が生じている。
そして、銅多孔質焼結体110を構成する銅繊維と銅板120の表面との結合部においては、銅繊維の表面に形成された酸化還元層と銅板の表面に形成された酸化還元層とが一体に結合している。
次に、本実施形態である銅多孔質複合部材100を製造する方法について、図8のフロー図を参照して説明する。
まず、部材本体である銅板120を準備する(銅板配置工程S100)。次に、この銅板120の表面に銅繊維を分散させて積層配置する(銅繊維積層工程S101)。ここで、この銅繊維積層工程S101では、嵩密度Dが銅繊維の真密度Dの50%以下となるように複数の銅繊維を積層配置する。
次に、銅板120の表面に積層配置された銅繊維同士を焼結して銅多孔質焼結体110を成形するとともに銅多孔質焼結体110(銅繊維)と銅板120とを結合する(焼結工程S102及び接合工程S103)。この焼結工程S102及び接合工程S103においては、図8に示すように、銅繊維及び銅板120の酸化処理を行う酸化処理工程S121と、酸化処理された銅繊維及び銅板120を還元して焼結する還元処理工程S122と、を備えている。
本実施形態では、銅繊維が積層配置された銅板120を加熱炉内に装入し、大気雰囲気で加熱して銅繊維を酸化処理する(酸化処理工程S121)。この酸化処理工程S121により、銅繊維及び銅板120の表面に、例えば厚さ1μm以上、100μm以下の酸化物層が形成される。
ここで、本実施形態における酸化処理工程S121の条件は、保持温度が520℃以上、1050℃以下、望ましくは600℃以上、1000℃以下、保持時間が5分以上、300分以下、望ましくは10分以上、100分以下の範囲内とされている。
次に、本実施形態では、酸化処理工程S121を実施した後、銅繊維が積層配置された銅板120を焼成炉内に装入し、還元雰囲気で加熱して、酸化された銅繊維及び銅板120を還元処理し、銅繊維同士を結合するとともに銅繊維と銅板120とを結合する(還元処理工程S122)。
ここで、本実施形態における還元処理工程S121の条件は、雰囲気が窒素と水素の混合ガス雰囲気、保持温度が600℃以上、1080℃以下、望ましくは650℃以上、1050℃以下、保持時間が5分以上、300分以下、望ましくは10分以上、100分以下の範囲内とされている。
この酸化処理工程S121及び還元処理工程S122により、銅繊維及び銅板120の表面に酸化還元層が形成され、微細な凹凸が生じることになる。
また、酸化処理工程S121によって銅繊維及び銅板120の表面に酸化物層が形成され、この酸化物層によって複数の銅繊維同士及び銅板120が架橋される。その後、還元処理S122を行うことで、銅繊維及び銅板120の表面に形成された酸化物層が還元され、酸化還元層を介して銅繊維同士が焼結されるとともに銅繊維と銅板120とが結合させる。
以上のような製造方法によって、本実施形態である銅多孔質複合部材100が製造される。
以上のような構成とされた本実施形態である銅多孔質複合部材100によれば、銅板120の表面に、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされた銅繊維が焼結されてなる気孔率が高く、強度や寸法精度に優れた銅多孔質焼結体110が接合されており、伝熱特性及び導電性等の各種特性に優れている。
さらに、本実施形態においては、銅多孔質焼結体110を構成する銅繊維及び銅板120の表面に酸化還元層が形成されており、銅多孔質焼結体110を構成する銅繊維と銅板120の表面との結合部においては、銅繊維の表面に形成された酸化還元層と銅板120の表面に形成された酸化還元層とが一体に結合しているので、銅多孔質焼結体110と銅板120とが強固に接合されることになり、接合界面の強度、伝熱特性及び導電性等の各種特性に優れている。
また、上述の酸化還元層によって、銅繊維及び銅板120の表面に微細な凹凸が生じており、銅多孔質焼結体110を構成する銅繊維と銅板120の表面との結合部において、接合面積が確保されることになり、銅多孔質焼結体110と銅板120との接合強度を向上させることができる。
本実施形態である銅多孔質複合部材100の製造方法によれば、銅板120の表面に、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされた銅繊維11を、嵩密度Dが銅繊維11の真密度Dの50%以下となるように積層配置する銅繊維積層工程S101を備えているので、焼結工程S102においても、銅繊維同士の間の空隙を確保することができ、収縮を抑えることが可能となる。これにより、気孔率の高く寸法精度に優れた銅多孔質焼結体110を成形することができる。よって、熱伝導性や導電性等の各種特性に優れた銅多孔質複合部材100を製造することが可能となる。
また、本実施形態である銅多孔質複合部材100の製造方法においては、銅及び銅合金からなる銅板120の表面に銅繊維を積層配置し、焼結工程S102及び接合工程S103を同時に実施しているので、製造プロセスを簡略化することが可能となる。
さらに、本実施形態では、焼結工程S102及び接合工程S103では、銅繊維及び銅板120の表面を酸化させた後、酸化された銅繊維及び銅板120の表面を還元するとともに銅繊維同士及び銅繊維と銅板120の表面を結合させる構成としているので、銅繊維同士の焼結強度、及び、銅繊維(銅多孔質焼結体110)と銅板120との接合強度を向上させることが可能となる。本実施形態では、銅繊維及び銅板120の表面を酸化処理した後に還元することで、銅繊維及び銅板120の表面に酸化還元層が形成され、微細な凹凸が生じていることから、接合面積が確保され、銅繊維同士及び銅繊維と銅板120とを強固に結合することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、図5に示す製造設備を用いて、銅多孔質焼結体を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の製造設備を用いて銅多孔質焼結体を製造してもよい。
焼結工程S02、S102、接合工程S103における酸化処理工程S21、S121の雰囲気については、所定温度で銅もしくは銅合金が酸化する酸化性雰囲気であればよく、具体的には、大気中に限らず、不活性ガス(例えば、窒素)に10vol%以上の酸素を含有する雰囲気であればよい。また、還元処理工程S22,S122の雰囲気についても、所定温度で銅酸化物が金属銅に還元もしくは酸化銅が分解する還元性雰囲気であればよく、具体的には、数vol%以上の水素を含有する窒素―水素混合ガス、アルゴン―水素混合ガス、純水素ガス、もしくは工業的によく用いられるアンモニア分解ガス、プロパン分解ガスなども好適に用いることができる。
また、第二の実施形態では、図7に示す構造の銅多孔質複合部材を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、図9から図14に示すような構造の銅多孔質複合部材であってもよい。
例えば、図9に示すように、銅多孔質焼結体210の中に、部材本体として複数の銅管220が挿入された構造の銅多孔質複合部材200であってもよい。
あるいは、図10に示すように、銅多孔質焼結体310の中に、部材本体としてU字状に湾曲された銅管320が挿入された構造の銅多孔質複合部材300であってもよい。
さらに、図11に示すように、部材本体である銅管420の内周面に銅多孔質焼結体410を接合した構造の銅多孔質複合部材400であってもよい。
また、図12に示すように、部材本体である銅管520の外周面に銅多孔質焼結体510を接合した構造の銅多孔質複合部材500であってもよい。
さらに、図13に示すように、部材本体である銅管620の内周面及び外周面に銅多孔質焼結体610を接合した構造の銅多孔質複合部材600であってもよい。
また、図14に示すように、部材本体である銅板720の両面に銅多孔質焼結体710を接合した構造の銅多孔質複合部材700であってもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
表1に示す焼結原料を用いて、上述の実施形態で示した製造方法により、幅30mm×長さ200mm×厚さ5mmの銅多孔質焼結体を製造した。なお、比較例5においては、酸化処理工程を省略し、還元雰囲気のみで焼結工程を実施した。
得られた銅多孔質焼結体の接合部の断面観察を行った。本発明例2の銅多孔質焼結体の断面観察写真を図15に示す。また、比較例5の銅多孔質焼結体の断面観察写真を図16に示す。
さらに、得られた銅多孔質焼結体について、見掛け密度、引張強度について評価した。評価結果を表1に示す。なお、評価方法を以下に示す。
(見掛け密度)
得られた銅多孔質焼結体の見掛け密度Dは、銅多孔質焼結体を構成する銅繊維の真密度Dに対する比率で評価した。
(引張強度)
得られた銅多孔質焼結体を幅10mm×長さ100mm×厚さ5mmの試験片に加工した後、インストロン型引張試験機を用いて引張試験を行い、最大引張強度(S)を測定した。前記測定により得られた最大引張強度は見掛け密度により変化するため、本実施例では、前記最大引張強度(S)を前記見掛け密度(D)で規格化した値(S/D)を相対引張強度として定義し、比較した。
本実施形態において製造された銅多孔質焼結体の結合部の断面観察を行った結果、図15に示される本発明例2の銅多孔質焼結体では、銅繊維同士の結合部において銅繊維の表面に形成された酸化還元層同士が一体に結合している。そして、酸化還元層によって微細な凹凸が生じており、この凹凸が複雑に絡み合って一体化していることが確認される。
これに対して、図16に示される酸化処理を行っていない比較例5の銅多孔質焼結体では、銅繊維の一部が結合しているのみであり、接合部における接合面積が本発明例に比べて著しく小さいことが確認される。すなわち、単に還元処理だけを行った場合においては、銅繊維の表面に酸化還元層が形成されず、表面状態は処理前と変化が無い比較的平滑な面であることから銅繊維同士の接合面積を十分に確保することができないのである。
また、表1に示すように、銅繊維の直径Rが0.01mmとされた比較例1及び銅繊維の直径Rが1.3mmとされた比較例2においては、銅多孔質焼結体の引張強度が低くなっていることが確認される。
また、銅繊維の長さLと直径Rとの比L/Rが2とされた比較例3においては、嵩密度Dが銅繊維の真密度Dの60%となっており、焼結後の見掛け密度Dも銅繊維の真密度Dの70%となっており、高い気孔率を確保することができなかった。
さらに、銅繊維の長さLと直径Rとの比L/Rが3500とされた比較例4においては、強度が低くなっている。これは、部分的に空隙が大きな箇所が存在し、局所的に強度が大幅に低下したためと推測される。
また、酸化処理を行わずに還元処理のみで焼結を実施した比較例5においては、銅多孔質焼結体の引張強度が低くなっていることが確認される。
これに対して、本発明例の銅多孔質焼結体においては、銅繊維を積層配置した際の嵩密度Dに対して、焼結後の見掛け密度Dが大きく変化しておらず、焼結時の収縮が抑えられていることが確認される。また、引張強度も高く、銅繊維同士が強固に結合していることが確認される。
以上のことから、本発明によれば、高い気孔率を有するとともに十分な強度を有する高品質の銅多孔質焼結体を提供可能であることが確認された。
10、110 銅多孔質焼結体
11 銅繊維
12 酸化還元層
100 銅多孔質複合部材
120 銅板(部材本体)

Claims (3)

  1. 複数の銅繊維が焼結されてなる銅多孔質焼結体であって、
    前記銅繊維は、銅又は銅合金からなり、直径Rが0.02mm以上、1.0mm以下の範囲内とされ、長さLと直径Rとの比L/Rが4以上、2500以下の範囲内とされており、
    前記銅繊維同士の結合部においては、ポーラスな構造の酸化還元層が一体に結合していることを特徴とする銅多孔質焼結体。
  2. 部材本体と、請求項1に記載の銅多孔質焼結体と、が接合されてなることを特徴とする銅多孔質複合部材。
  3. 前記部材本体のうち前記銅多孔質焼結体との接合面は、銅又は銅合金で構成され、
    前記銅多孔質焼結体を構成する前記銅繊維と前記部材本体の前記接合面との結合部においては、ポーラスな構造の酸化還元層が一体に結合していることを特徴とする請求項2に記載の銅多孔質複合部材。
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