JP2016199797A - 大気圧プラズマ成膜方法及び大気圧プラズマ成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】成膜に要する時間を短縮しながら、安定したプラズマ流を形成できる、大気圧プラズマ成膜方法の提供。【解決手段】裏面に導電板5を配した被成膜体Wの平面方向に対して垂直で互いに対向配置された一対の電極1間に交流電圧を印加しながら、大気圧雰囲気下において両電極1の間に不活性ガスIGのみを供給することでグロー放電プラズマを発生させ、両電極1と両電極1よりも不活性ガスIGの流動方向下流の被成膜体Wの間の放電電極外領域に成膜用の原料ガスRGを供給する大気圧プラズマ成膜方法。【選択図】図1
Description
本発明は、大気圧雰囲気下でグロー放電プラズマにより皮膜を成膜する大気圧プラズマ成膜方法と、これに使用する大気圧プラズマ成膜装置に関する。
従来から、金型、工具、摺動部材、半導体デバイスなどの表面には、これらを保護する保護膜(皮膜)として非晶質炭素膜やシリコン酸化膜が成膜されている。非晶質炭素膜はダイヤモンドライクカーボン(DLC)とも称され、ダイヤモンドと同じ結合状態の炭素原子を比較的多く含むことで、高硬度、低摩耗、低摩擦、表面平滑性に優れるという特徴を有する。一方、シリコン酸化膜は、高硬度、平滑性、絶縁性に優れる特徴を有する。当該非晶質炭素膜やシリコン酸化膜は、プラズマ化学蒸着法(プラズマCVD)によって成膜されることが多い。
しかし、従来のプラズマCVDによる成膜方法は、基本的に低圧(真空)雰囲気下でプラズマを発生させるため、広範囲に亘って均質なプラズマを得られ難く、均質な膜を形成できる領域が限られる。したがって、成膜の大面積化が困難であり、且つそもそも低圧雰囲気下で行うため成膜速度が遅く、広い範囲に亘って成膜する場合には長時間を要する問題があった。また、低圧雰囲気下でのプラズマCVDは真空容器を用いたバッチ式であるため、生産性に難点があるという問題もあった。
そこで、大気圧雰囲気下においてプラズマCVDを行う技術として、例えば下記特許文献1や特許文献2がある。特許文献1では、互いに対向配置された一対の電極間に交流電圧を印加しながら、大気圧雰囲気下において両電極の間に不活性ガスを供給することでグロー放電プラズマを発生させ、両電極よりも不活性ガスの流動方向下流に被成膜体を配置して、両電極と被成膜体の間の放電電極外領域に成膜用の原料ガスを供給している。このとき、電極として複数の貫通孔が全体的に穿設された金属基板を使用しており、両電極と被成膜体とを平行に配置している。そのうえで、不活性ガスを両電極に対して垂直に供給し、不活性ガスやプラズマを両電極の貫通孔を通して流動させている。
特許文献2では、大気圧雰囲気下において、対向する一対の電極間に交流電圧を印加しながら不活性ガスを供給して、両電極の隙間からプラズマ化した不活性ガスを噴出させ、当該プラズマ化した不活性ガスの噴出方向と交差する方向に反応ガスを供給して、反応ガスの一部を活性化させ、噴出方向の下流に設置した被成膜体に噴き付けている。
特許文献1では、一対の電極のうち上方の電極の貫通孔を通して不活性ガスを供給し、これにより生じたプラズマも下方の電極の貫通孔を通して流動させている。これでは、貫通孔以外の部分において不活性ガスやプラズマの流動が妨げられるので、プラズマ流が不安定となり、結果として求める物性の皮膜を的確に成膜できないおそれがある。
一方、特許文献2では、両電極の隙間からガスを噴出させるため特許文献1のようなガス流動の不均一は少ないが、原料ガスの活性状態(電離、ラジカル化)の寿命が短く、電極下面のプラズマ噴出口から基材までの距離が実質数mm程度でなければ、求める物性の被膜を的確に成膜できないおそれがある。
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、その目的は、大気圧雰囲気下でプラズマ成膜することで成膜に要する時間を短縮しながら、安定したプラズマ流を形成して原料ガスの活性状態を維持しながら、原料ガスの供給口より下流に向けて長い距離で被成膜体に成膜可能な大気圧プラズマ成膜方法とプラズマ成膜装置を提供することにある。
そのための手段として、本発明は、互いに対向配置された一対の電極間に交流電圧を印加しながら、大気圧雰囲気下において前記両電極の間に不活性ガスを供給することでグロー放電プラズマを発生させ、前記両電極よりも不活性ガスの流動方向下流に被成膜体を配置し、かつ前記被成膜体の裏面に導電材料からなる導電体を設置して、前記両電極と前記被成膜体の間の放電電極外領域に成膜用の原料ガスを供給する大気圧プラズマ成膜方法であって、前記両電極を前記被成膜体の平面方向に対して垂直に配置し、前記不活性ガスを前記両電極と並行して両電極の間に供給することを特徴とする。
このように、本発明では放電電極内領域へは成膜成分ではない不活性ガスのみを供給してグロー放電プラズマを発生させ、原料ガスは両電極と被成膜体の間の放電電極外領域へ供給している。したがって、電極へ成膜成分による汚れが付着することはない。これにより、電極のメンテナンスを行う頻度が低減し、作業負担やコストを低減することができる。
両電極間で発生したプラズマは、不活性ガスの供給圧(流動圧)を受けて、その下流に配された被成膜体に向けて流動していく。そして、当該両電極と被成膜体の間へ原料ガスを供給することで、原料ガスが分解(電離)・ラジカル化し、被成膜体の表面に所定の皮膜が成膜されていく。つまり、本発明は不活性ガスの供給圧(流動圧)を利用して成膜する「リモート方式の成膜方法」と称すことができる。これに対し、一対の電極の間(放電電極内領域)に直接被成膜体を配置するものは、「ダイレクト方式の成膜方法」と称すことができる。このように、成膜成分の供給源となる原料ガスは、電離状態が不安定な放電電極内領域ではなく、放電電極外領域の安定した空間において電離するため、成膜成分の電離密度が安定する。
また、被成膜体も放電電極外領域に配置したリモート方式の成膜方法であるため、被成膜体の厚みや表面形状が制限されない。これにより、厚みの大きい被成膜体や、表面に曲面や凹凸のある被成膜体へも安定して皮膜を成膜することができる。さらに、大気圧雰囲気下で成膜することで、低圧雰囲気下での成膜と比べて成膜範囲の拡大及び成膜速度を上げることができ、迅速な成膜も可能となる。
そのうえで、両電極を被成膜体の平面方向に対して垂直に配置したうえで、不活性ガスを両電極と並行して両電極の間に供給している。したがって、不活性ガス及びこれにより生じたプラズマは電極に衝突することなく円滑に流動していく。これにより、安定したプラズマ流が形成され求める物性の皮膜を的確に成膜することができる。なお、本発明では電極に貫通孔を設ける必要は無い。
また、被成膜体の裏面に導電材料からなる導電体を設置しているため、被成膜体が仮にプラスチックのような基本的に誘電性を有しない材料(絶縁体)であっても、電離したプラズマは導電体による吸引効果によって、活性化した原料ガスの活性が低下する前に被成膜体表面に到達、衝突し良好な膜を得ることができる。
このとき、前記導電体は接地することが好ましい。これにより、導電体による成膜成分の引き付け効果が向上し、より効率よく均一に皮膜を成膜することができる。また、被成膜体が絶縁体の場合、被成膜体の表面で沿面放電が起きるため、接地することで放電がさらに安定する。
また、被成膜体を加熱しながら成膜すれば、被成膜体表面が活性され、より迅速に皮膜を形成できる。この場合、前記導電体を金属製のヒータとすれば、ヒータを導電体として兼用することがきる。これにより、装置の大型化を避けされると共に、別途導電体を用意するコストも削減することができる。
前記両電極と前記被成膜体との距離は1〜100mmとすることができる。従来でも、両電極と被成膜体との距離が比較的大きくても成膜すること自体は不可能ではなかったが、均質な皮膜を確実に成膜するには、両電極と被成膜体との距離は5mm程度が限界とされていた。これに対し本発明では、原料ガスを放電電極外領域へ供給すると共に、被成膜体の裏面に導電体を配置しているため、均質な皮膜を成膜できる両電極と被成膜体との距離範囲(以後、ワーキングディスタンスという)を拡大することができる。
また、本発明によれば、互いに対向配置される一対の電極と、該両電極間に交流電圧を印加して、両電極の間にグロー放電プラズマを発生させる電圧印加手段と、大気圧雰囲気下において、前記両電極の間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、成膜用の原料ガスを供給する原料ガス供給手段とを有し、被成膜体が前記両電極よりも不活性ガスの流動方向下流に配置され、被成膜体は導電材料からなる導電体上に載置され、前記原料ガスは、前記両電極と前記被成膜体との間の放電電極外領域に供給される大気圧プラズマ成膜装置であって、前記両電極が前記被成膜体の平面方向に対して垂直に配置され、前記不活性ガスが前記両電極と並行して両電極の間に供給される、大気圧プラズマ成膜装置も提案することができる。
本発明によれば、大気圧雰囲気下でプラズマ成膜することで成膜に要する時間を短縮しながら、安定したプラズマ流と長いワーキングディスタンスで良好に被膜を成膜できる。
以下、本発明について詳細に説明する。大気圧プラズマ成膜装置(以下、単に成膜装置と称す)は、図1に示すように、互いに対向配置される一対の電極1と、該両電極1間に交流電圧を印加する交流電源2と、不活性ガスIGを供給する不活性ガス供給管3と、成膜用の原料ガスRG等を供給する原料ガス供給ノズル4と、被成膜体Wを加熱するヒータ5とを備える。
電極1は矩形の平板状であって、導電材料からなる。なお、貫通孔は形成されていない。導電材料としては、従来からこの種のプラズマ放電用電極に使用されている公知の材料であれば特に限定されず、例えばアルミニウム、銅、真鍮等の金属材料や、カーボン等を挙げることができる。また、両電極1の表面(対となる電極1との対向面)は、誘電体6で被覆されている。両電極1が誘電体6で被覆されていることで、電圧印加時に絶縁破壊を起こしてアーク放電を発生するのを抑制できる。誘電体6は、別途形成した誘電体を電極1に接合してもよいし、電極1へ溶射等によって誘電体層を形成することもできる。
誘電体6は、誘電率が3以上あるものが好ましい。このような誘電体としては、例えばガラスや、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物などが挙げられる。中でも、誘電体6として誘電率が高い酸化アルミニウムや二酸化ジルコニウムを用いることで、効率的に両電極1の間へエネルギーを注入することができる。なお、両電極1の裏面(外面)には、プラズマ成膜処理中に冷媒等により電極1を冷却できる冷却手段を配しておくことが好ましい。
両電極1は、所定の放電ギャップ距離を介して互いに平行に対向配置され、被成膜体Wの平面方向に対しては垂直に配置されている。放電ギャップ距離は0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。この範囲で成膜工程を行うと、安定なガス流の保持とギャップ空間内の均一な放電が得られやすい。放電ギャップ距離が0.1mmより小さいと、部分的な異常放電が発生し易い。一方、放電ギャップ距離が5mmより大きいと、不活性ガスを電離するのに高電力が必要になる。
両電極1には、交流電源2が電気的に配線されている。交流電源2としては、例えば高圧パルス電源やRF電源などを使用できる。当該交流電源2が、本発明における電圧印加手段に相当する。交流電圧は1〜100kVが好ましく、5〜20kVがより好ましい。交流電圧が1kVより小さいと、不活性ガスが電離し難く、電離密度が小さくなる。これに伴い、放電電極外領域において原料ガスの電離やラジカル活性状態も弱くなるため、結果として効率よく成膜できなくなる。一方、交流電圧が100kVより大きいと、アーク放電を起こし易い。交流電圧の周波数は1kHz以上あればよい。
両電極1の間の放電電極内領域には、不活性ガスIGのみが供給される。不活性ガスIGとしては、例えばヘリウム、アルゴン、窒素が挙げられる。原料コストの面では窒素ガスを用いることが好ましい。一方、低エネルギーで成膜を行うためにはヘリウムを用いることが好ましい。これにより、ヘリウムを用いれば、同じ電気エネルギー準位でも、他の不活性ガス種を用いる場合と比べて両電極1と被成膜体Wとの距離を大きくできる。
本発明は、不活性ガスの供給圧(流動圧)を利用して成膜する「リモート方式の成膜方法」なので、放電電極内領域に被成膜体Wを直接配置する「ダイレクト方式」や、放電電極内領域へ原料ガスを直接供給する従来の成膜方法よりも、不活性ガスIGの供給圧を大きくすることが好ましい。具体的には、不活性ガスIGの流速は100〜5000mm/secが好ましく、より好ましくは300〜4000mm/sec、さらに好ましくは500〜3000mm/secである。不活性ガスIGの流速が100mm/secより小さいと、不活性ガスIGの供給圧(流動圧)が小さくて、的確に成膜するには両電極1と被成膜体Wとの距離をかなり小さくする必要が生じる。これに伴い、成膜範囲も減少する。一方、不活性ガスIGの流速が5000mm/secを超えると、ガス流の乱れや異常放電が発生し易くなる。
不活性ガスIGは、不活性ガス供給管3を通して放電電極内領域へ供給される。このとき、不活性ガスIGは両電極1と並行して両電極1の間に供給される。なお、図1には模式図で示しているが、実際には不活性ガス供給管3の先端は両電極1の間に直接接続され、不活性ガス供給管3から噴き出した不活性ガスIGが放電電極内領域以外の領域へ漏れ出さない構成となっている。不活性ガス供給管3の基端には、図外の不活性ガスボンベが気密状に連結されている。当該不活性ガス供給管3と不活性ガスボンベが、本発明の不活性ガス供給手段に相当する。
被成膜体Wは、最終的に所定の保護膜等が表面に成膜されるベースとなる基板である。当該被成膜体Wとしては、成膜中の温度によって熱変形しない程度の耐熱性を有するものであれば特に制限されない。特に、本発明では表面に凹凸を有するものや、部分的に曲面部を有するものでも適用可能である。被成膜体Wの具体例としては、例えば鉄鋼、非鉄金属、各種合金等の金属材の他、セラミックスや高分子材などを使用できる。
被成膜体Wは、両電極1よりも不活性ガスIGの流動方向下流の放電電極外領域に設置される。このとき、両電極1と被成膜体Wとの距離は1〜100mmとすることが好ましく、より好ましくは2〜50mm、さらに好ましくは3〜30mmとする。両電極1と被成膜体Wとの距離が小さいほど安定して成膜できる。一方、両電極1と被成膜体Wとの距離が大きくなるほど成膜範囲が拡大するメリットがあるが、その反面、成膜される保護膜の性状が不安定となる傾向がある。しかし、本発明によれば、従来のプラズマ成膜方法と比べて両電極1と被成膜体Wとの距離が大きくても、安定して成膜できる。
また、被成膜体Wは、導電材料からなる導電体上に載置される。これにより、電離された原料イオン等の引き付け効果が生じるため、より迅速且つ安定して成膜することができる。導電体としては、被成膜体Wを安定して載置できるように、フィルム状、シート状、又は板状のものが好ましい。導電材料としては、銅、銀、アルミニウム等の導電性金属のほか、カーボンを例示できる。なお、導電体は接地していることが好ましい。成膜成分の引き付け効果をより効果的に発揮することができるからである。
また、成膜中は、被成膜体Wを加熱することも好ましい。これにより、被成膜体Wの表面が活性され、より迅速且つ安定して成膜することができる。そのため、被成膜体Wの裏面には、ヒータ5が配されている。ヒータ5としては、ニクロム線やタングステン線などの電気抵抗の大きい導線からなる抵抗線や、熱電対を使用できる。本実施形態では、銅板全体に熱電対が配されたヒータ5を使用している。これにより、ヒータ5が加熱手段と導電体とを兼用している。なお、ヒータ5は接地(アース)されていることが好ましい。これにより、ヒータ5側に正イオンが引きつけられやすい状態となり、被成膜体Wが例え絶縁材料の場合でも安定して成膜することができる。
成膜中の加熱温度はできるだけ高いことが好ましいが、当該加熱温度によって被成膜体Wが熱変形したり成膜された保護膜等が分解されない温度以下とする。具体的には、40〜300℃、好ましくは50〜250℃程度を目安とすればよい。成膜中の加熱温度が40℃未満では、加熱による反応促進効果が低く加熱効果を得られにくい。一方、300℃を超えると、被成膜体Wが熱変形したり、保護膜等が熱分解される可能性が高くなる。
そのうえで、両電極1よりも不活性ガスIGの流動方向下流であって、被成膜体Wの設置位置よりも不活性ガスIGの流動方向上流に、原料ガス供給ノズル4が設けられている。すなわち、両電極1と被成膜体Wとの間の放電電極外領域に、原料ガス供給ノズル4が設けられている。原料ガス供給ノズル4は、両電極1と被成膜体Wとの間にあれば成膜可能であるが、できるだけ両電極1に近い方が好ましい。両電極1と原料ガス供給ノズル4との距離が近いほど、放電電極内領域において発生したプラズマによる原料ガスRGの電離作用が強くなるからである。したがって、原料ガス供給ノズル4は、両電極1の直下(原料ガス供給ノズル4と電極1とが近接ないし接触する位置)に設けることが最も好ましい。
原料ガス供給ノズル4は、図外の原料ガスボンベに連結された原料ガス供給管の一部に形成されている。詳しくは、少なくとも両電極1と被成膜体Wとの間の領域では、原料ガス供給管が、電極1の幅方向(図1において手前・奥行き方向)と平行に、両電極1の下面に沿ってそれぞれ1本づつ対向状に配されている。そのうえで、当該原料ガス供給管同士の対向面に、原料ガスRGの噴出口となるスリット(開口)がそれぞれ貫通形成さることで、原料ガス供給ノズル4となっている。スリットとしては、1本線からなる長孔やミシン目状のほか、複数個の小孔が並設されていてもよい。原料ガス供給ノズル4(スリット)の軸方向長さは、両電極1の幅寸法と同じか若干小さい程度とする。原料ガス供給ノズル4の軸方向長さが両電極1の幅寸法より大きいと、供給された原料ガスRGの全てが成膜に使用されず、原料ガスロスが生じてコストの無駄が生じる。一方、原料ガス供給ノズル4の軸方向長さが両電極1の幅寸法より小さすぎると、成膜範囲が小さくなるばかりか、エネルギーロスによるコストの無駄が生じる。
原料ガス供給管の基端には、成膜する保護膜等の種類に応じた各種原料ガスがそれぞれ充填された複数本の原料ガスボンベ(図示せず)が気密状に連結されており、原料ガス供給ノズル4からは各種原料ガスが混合された混合ガスとして噴出される。また、原料ガスRGの噴出圧を調整するために、不活性ガスを混合することもできる。原料ガス供給ノズル4へは、原料ガス供給管の先端を閉口して、原料ガスRGを一方向(基端側)のみから供給することもできるし、先端側と基端側の両方向から原料ガスRGを供給させることもできる。また、各原料ガス供給ノズル4へは、それぞれ独立した径路(原料ガス供給管)から原料ガスRGが供給されてもよいし、1つの径路から分岐して原料ガスRGを供給することもできる。このような各種原料ガスボンベ、原料ガス供給管、及び原料ガス供給ノズル4を含む一連の径路が、本発明の原料ガス供給手段に相当する。
例えば非晶質炭素膜(DLC)を成膜する場合、原料ガスとして炭化水素系ガスを使用する。当該炭化水素系ガスとしては、メタン、エタン、プロパン等の飽和炭化水素、エチレン、アセチレン等の不飽和炭化水素、又はベンゼン等の芳香族炭化水素などのガスを使用できる。一方、シリコン酸化膜を成膜する場合は、原料ガスとして有機シラン系ガスと酸素源ガスを使用する。有機シラン系ガスとしては、例えば珪酸エチル(TEOS)、トリメチルシラン(TMS)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、又はトリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)などの有機ケイ素化合物を気化したガスが挙げられる。酸素源ガスとしては、例えば酸素単体、空気、N2Oなどが挙げられる。なお、原料供給ガス管上には、必要に応じて液状の原料を気化する気化手段や、各種原料ガスの流量を個別に調節するバルブを設けておく。
次に成膜方法について説明する。被成膜体Wの表面へ保護膜等を成膜する際は、互いに対向配置された両電極1の間に交流電源2によって交流電圧を印加しながら、大気圧雰囲気下において不活性ガス供給管3から不活性ガスIGのみを供給することで、グロー放電プラズマを発生させる。このとき、両電極1は被成膜体Wの平面方向に対して垂直に配置され、不活性ガスIGは両電極1と並行して両電極1の間に供給されるので、安定したプラズマ流が発生する。
そのうえで、両電極1よりも下流の放電電極外領域に配された原料ガス供給ノズル4から各種原料ガスRGを混合ガスとして噴出させる。すると、不活性ガスIGの流動圧により原料ガスRGもプラズマの影響を受けて電離する。そして、当該電離した原料成分は、不活性ガスIGの流動圧を受けてさらに下流へと流動していくことで、被成膜体Wの表面に所定の膜が成膜されていく。このとき、導電体も兼ねるヒータ5によって被成膜体Wを加熱しておくことで、表面活性とイオン引き付け効果により、成膜精度が向上する。被成膜体Wが大型である場合は、図1の白抜き矢印で示すように、スライド移動可能な載置台上に被成膜体Wを載置し、載置台をスライドさせながら順次成膜していけばよい。
膜の組成は各種原料ガスRGの混合比率によって調整することができる。その膜厚は、スライド移動速度やプラズマ処理時間によって調整できる。混合ガスの混合比は、成膜中一定比率でもよいし、適宜変動させることもできる。成膜中に混合比を変動させた場合は、膜厚方向に物性の異なる複数種の膜を形成することができる。
本実施形態では、大気圧雰囲気下において成膜されることで、成膜が迅速に行われる。なお、大気圧雰囲気下とは、成膜を大気圧開放環境下で行うことを意味し、具体的には0.5気圧(約50kPa)〜2気圧(約203kPa)程度の範囲で変動し得る。また、原料ガスRGは放電電極外領域において電離するため、両電極1が汚染されることはない。また、原料ガスRGの電離状態も安定するため、所望の膜を的確に成膜することができる。
(実施例1)
図1に示す大気圧プラズマ成膜装置を用いて、実際に成膜した実施例について説明する。電極として縦20mm、横100mm、厚み5mmの銅製平板を用い、その表面に、誘電体として厚み1mmのアルミナ製平板を配設した。両電極の放電ギャップ距離は1mmとした。原料供給ノズルとして、テフロン(登録商標)管の一部に1本の長孔からなるスリットを100mm穿設し、これを両電極の直下へそれぞれ平行に対向して配した。また、加熱手段として、坂口電熱社製の高温面状発熱体「スーパーラピッド」を、導電体である接地された金属板に挟み込んだ、温度計測用のシース熱電対を使用した。そのうえで、下記条件にてシリコン酸化膜を大気圧雰囲気下で成膜した。
図1に示す大気圧プラズマ成膜装置を用いて、実際に成膜した実施例について説明する。電極として縦20mm、横100mm、厚み5mmの銅製平板を用い、その表面に、誘電体として厚み1mmのアルミナ製平板を配設した。両電極の放電ギャップ距離は1mmとした。原料供給ノズルとして、テフロン(登録商標)管の一部に1本の長孔からなるスリットを100mm穿設し、これを両電極の直下へそれぞれ平行に対向して配した。また、加熱手段として、坂口電熱社製の高温面状発熱体「スーパーラピッド」を、導電体である接地された金属板に挟み込んだ、温度計測用のシース熱電対を使用した。そのうえで、下記条件にてシリコン酸化膜を大気圧雰囲気下で成膜した。
印加電圧:交流電圧(周波数:10kHz 電源電圧:20kV)
不活性ガス:ヘリウム(流速:2000mm/sec)
原料混合ガス:トリメチルシラン/酸素/ヘリウム=1/50/200、合計流速:400mm/sec
基材(被成膜体):縦100mm、横100mm、厚み3mmのポリカーボネート製平板
加熱温度:100℃
電極と基材との距離:10mm
基材搬送速度:1mm/sec
成膜雰囲気:大気圧開放環境下(約101kPa)
不活性ガス:ヘリウム(流速:2000mm/sec)
原料混合ガス:トリメチルシラン/酸素/ヘリウム=1/50/200、合計流速:400mm/sec
基材(被成膜体):縦100mm、横100mm、厚み3mmのポリカーボネート製平板
加熱温度:100℃
電極と基材との距離:10mm
基材搬送速度:1mm/sec
成膜雰囲気:大気圧開放環境下(約101kPa)
上記の条件で得られた成膜体に対して、その膜硬度をナノインデンテーション法により測定した。ナノインデンターには、Agilent Technologies社製 Nano Indenter G200を用いた。なお、ナノインデンテーション法によれば、基材の影響を受けずに、薄膜そのものの硬度を測定することができる。その結果、得られた膜(膜厚500nm)の硬度は2GPaであった。
(実施例2)
実施例1と同じ大気圧プラズマ成膜装置を用いて、下記成膜条件とした以外は、実施例1と同じ条件で非晶質炭素膜を成膜した。
実施例1と同じ大気圧プラズマ成膜装置を用いて、下記成膜条件とした以外は、実施例1と同じ条件で非晶質炭素膜を成膜した。
不活性ガス:ヘリウム(流速:2000mm/sec)
原料混合ガス:アセチレン/ヘリウム=1/50、合計流速:400mm/sec
基材(被成膜体):縦50mm、横50mm、厚み3mmのハイス鋼製平板
加熱温度:230℃
原料混合ガス:アセチレン/ヘリウム=1/50、合計流速:400mm/sec
基材(被成膜体):縦50mm、横50mm、厚み3mmのハイス鋼製平板
加熱温度:230℃
得られた成膜体に対して、その膜硬度を実施例1と同様に測定した。その結果、得られた膜(膜厚1200nm)の硬度は4GPaであった。
(比較例1)
実施例1と同じ大気圧プラズマ成膜装置において、加熱手段として、坂口電熱社製の高温面状発熱体「スーパーラピッド」を、絶縁体であるセラミック板に挟み、それ以外は実施例1と同じ条件とした。
実施例1と同じ大気圧プラズマ成膜装置において、加熱手段として、坂口電熱社製の高温面状発熱体「スーパーラピッド」を、絶縁体であるセラミック板に挟み、それ以外は実施例1と同じ条件とした。
(実施例3)
実施例1と同じ大気圧プラズマ成膜装置において、加熱手段として、坂口電熱社製の高温面状発熱体「スーパーラピッド」を導電体である接地されていない金属板に挟み、それ以外は実施例1と同じ条件とした。
実施例1と同じ大気圧プラズマ成膜装置において、加熱手段として、坂口電熱社製の高温面状発熱体「スーパーラピッド」を導電体である接地されていない金属板に挟み、それ以外は実施例1と同じ条件とした。
比較例1、実施例1、実施例3の成膜後の均一性と硬度を比較した結果、比較例1は膜表面の均一性が実施例1,3に比べ極めて劣り、その硬度は1GPa以下であって実用に耐えなかった。また、実施例1と実施例3を比較したところ、実施例1の方が膜の均一性に優れ、かつ硬度が10%以上高かった。
1 電極
2 交流原電
3 不活性ガス供給管
4 原料ガス供給ノズル
5 ヒータ
6 誘電体
IG 不活性ガス
RG 原料ガス
W 被成膜体
2 交流原電
3 不活性ガス供給管
4 原料ガス供給ノズル
5 ヒータ
6 誘電体
IG 不活性ガス
RG 原料ガス
W 被成膜体
Claims (7)
- 互いに対向配置された一対の電極間に交流電圧を印加しながら、大気圧雰囲気下において前記両電極の間に不活性ガスを供給することでグロー放電プラズマを発生させ、前記両電極よりも不活性ガスの流動方向下流に被成膜体を配置し、かつ前記被成膜体の裏面に導電材料からなる導電体を配置して、前記両電極と前記被成膜体の間の放電電極外領域に成膜用の原料ガスを供給する大気圧プラズマ成膜方法であって、
前記両電極を前記被成膜体の平面方向に対して垂直に配置し、
前記不活性ガスを前記両電極と並行して両電極の間に供給する、大気圧プラズマ成膜方法。 - 前記導電体が接地されている、請求項1に記載の大気圧プラズマ成膜方法。
- 前記導電体が金属製のヒータである、請求項1または請求項2に記載の大気圧プラズマ成膜方法。
- 前記両電極と前記被成膜体との距離が1〜100mmである、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の大気圧プラズマ成膜方法。
- 互いに対向配置される一対の電極と、
該両電極間に交流電圧を印加して、両電極の間にグロー放電プラズマを発生させる電圧印加手段と、
大気圧雰囲気下において、前記両電極の間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
成膜用の原料ガスを供給する原料ガス供給手段とを有し、
被成膜体が、前記両電極よりも不活性ガスの流動方向下流に配置され、
前記被成膜体は、導電材料からなる導電体上に載置され、
前記原料ガスが前記両電極と前記被成膜体との間の放電電極外領域に供給される、大気圧プラズマ成膜装置であって、
前記両電極は、前記被成膜体の平面方向に対して垂直に配置され、
前記不活性ガスが、前記両電極と並行して両電極の間に供給される、大気圧プラズマ成膜装置。 - 前記導電体が接地されている、請求項5に記載の大気圧プラズマ成膜装置。
- 前記導電体が、前記被成膜体を加熱する加熱手段を兼ねている、請求項5または請求項6に記載の大気圧プラズマ成膜装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015081767A JP2016199797A (ja) | 2015-04-13 | 2015-04-13 | 大気圧プラズマ成膜方法及び大気圧プラズマ成膜装置 |
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JP2015081767A Pending JP2016199797A (ja) | 2015-04-13 | 2015-04-13 | 大気圧プラズマ成膜方法及び大気圧プラズマ成膜装置 |
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JP (1) | JP2016199797A (ja) |
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2015
- 2015-04-13 JP JP2015081767A patent/JP2016199797A/ja active Pending
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