JP2016199439A - 水素ガス生成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水素ガスを簡便で効率よく、多量に生成できる水素ガス生成方法を提供する。【解決手段】FeOOHを含む素材に、前記FeOOHがFe2O3に変化する処理を施し、水素ガスを発生させるに当たり、前記素材とFeを含む材料とを共存させ、かつ該Feを含む材料が、前記素材に含まれるFeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上となるように配置して、前記FeOOHがFe2O3に変化する処理を施すことを特徴とする水素ガス生成方法。【選択図】図1

Description

本発明は、水素ガスの生成方法に係り、とくに鉄系材料を素材として水素ガスを多量に、かつ効率よく生成できる簡便な、水素ガス生成方法に関する。
近年、地球環境の保全という観点から、炭酸ガス排出の削減が求められ、自動車向けや家庭向けとして、水素ガスを利用した燃料電池の開発が進められている。しかし、水素ガスを安定して確保することは、かなりの困難を伴う。現状では、水の電気分解、天然ガスの改質、製鉄所で発生するコークス還元ガスから水素を分離する、などの方法で、水素ガスを製造することができる。しかし、水の電気分解による方法や、天然ガスの改質による方法では、水素ガスを得るために多量のエネルギーを消費し、地球環境の保全という観点からは問題を残している。
また、製鉄所で発生するコークス還元ガスから水素を分離する方法は、製鉄所内自家発電用エネルギーを消費することになり、製鉄所内のエネルギー需給バランスを崩し、自家発電用エネルギーが不足することになる。これにより、外部から電力を購入するということになるという矛盾が生じる。
また、天然ガスから改質して水素ガスを得る方法では、天然ガスをもとに水素を作り出すエネルギーと、その水素を燃やして燃料電池から得られるエネルギーの和は、単に天然ガスを燃焼させて得られるエネルギーよりも低いとされている。
最近では、上記したような方法とは異なる、水素ガスの製造方法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、樹脂廃材からの水素の製造方法が提案されている。特許文献1に記載された技術は、樹脂を含有する廃棄物と水とを、含水酸化鉄粒子又は/及び酸化鉄粒子の存在下で反応させるに際し、含水酸化鉄粒子又は/及び酸化鉄粒子を含有する樹脂組成物と、樹脂を含有する廃棄物とを混合、好ましくは溶融混合させて反応させることに特徴がある。また、特許文献1に記載された技術では、含水酸化鉄としては、ゲーサイト(α−FeOOH)、レビッドクロサイト(γ−FeOOH)、δ−FeOOHのうちの1種または2種以上とすることが好ましいとしている。特許文献1に記載された技術によれば、廃棄物として処理に困っていた高分子廃材を再資源化し有効利用することができるとしている。
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、樹脂を含有する廃棄物の有効利用を目的としたものであり、含水酸化鉄粒子又は/及び酸化鉄粒子を含有する樹脂組成物と、樹脂を含有する廃棄物とを混合する際に、300〜2000℃という高温に保持する必要があり、多量のエネルギーを消費するという問題がある。また、特許文献1に記載された技術では、水素発生の主体は、高分子廃材であり、酸化鉄粒子は触媒的な働きをするとされている。
また、特許文献2には、水素ガス製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術は、電解質水溶液と酸素ガスを含む気体を入れた容器の中で、金属鉄を電解質水溶液に浸漬し、金属鉄から鉄イオンを溶解させ腐食生成物として沈殿させることにより水素ガスを発生させる水素ガス製造方法である。特許文献2に記載された技術によれば、電解質水溶液として海水を利用でき、100℃程度の比較的低温での簡便な操業が可能であるとしている。なお、特許文献2に記載された技術では、金属鉄が腐食により主としてオキシ水酸化鉄などの腐食生成物に変化していることにより、水素が発生するとしている。
特許文献2に記載された技術によれば、比較的低温での操業で水素ガスの製造が可能であるが、特許文献2に記載された技術では水素発生源はあくまでFeであり、腐食反応に基づいて水素ガスを発生させるとしている。このような現象は、すでに自然界で例えば海水中に沈んだ鉄などで水素ガスの発生が認められて然るべきであるが、そのような報告もなく、工業的規模での操業を実施するまでには、更なる検討を必要とするという問題がある。
また、特許文献3には、水及び保水剤を含み酸素との接触で発熱する発熱性組成物とアルミニウム粒子とを酸素存在下で混合状態として水素を発生させる水素発生方法が記載されている。特許文献3に記載された技術によれば、自己発熱により水素ガスを急速かつ安定的に発生させることができ、温度制御が不要で、燃料電池に水素を供給する装置に有用であるとしている。
しかし、特許文献3に記載された技術では、カイロ等で使用される発熱組成物とアルミニウム粒子とを利用しており、いずれも高価で、工業的規模で実施するまでには、更なる検討を必要とするという問題がある。
このような問題に対し、本発明者らの一部は、特許文献4に、錆を素材にした水素ガス発生方法を提案した。特許文献4に記載された技術は、FeOOHを含む素材に、FeOOHをFeOに変化させる処理、好ましくは100〜400℃の範囲の温度に加熱する処理を施して、水素ガスを発生させる方法である。特許文献4に記載された技術によれば、高価な素材を用いることなく、しかも簡便に、水素ガスを発生できるとしている。
特開2003−119474号公報 特開2006−45033号公報 特開2006−240931号公報 特開2013−53060号公報
しかしながら、特許文献4に記載された技術では、水素ガスの発生効率が低いという問題があった。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、高価な素材を用いることなく、しかも簡便に効率よく、水素ガスを多量に生成できる、水素ガス生成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、FeOOHを含む素材を用いて水素ガスを発生させる技術において、生成する水素ガス量に影響する各種要因について、鋭意研究した。その結果、素材であるFeOOHを、Feを含む材料と共存させた状態で、FeOOHをFeOに変化させる処理を施すことにより、生成する水素量が顕著に増加することを見出した。なお、ここでいう「Feを含む材料」とは、酸化物等の化合物として固定された「Fe」ではなく、合金元素としてあるいは不純物元素としてフリーの状態であるFe(以下、「フリーのFe」ともいう)を含む材料をいうものとする。このような「Feを含む材料」としては、例えば、板状、粉末状、フレーク状、線状等の鋼材、すなわち鋼板、鉄粉、鉄線、鋼線等が例示できる。また、表面に錆が形成された鋼材や鉄酸化物である鉄鉱石、鉄錆粉でも、酸化物が還元されて表面にフリーのFeが形成されている場合や、その後に表面にフリーのFeを形成することができる場合には、本発明でいう「Feを含む材料」に該当する。
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
FeOOHを含む素材として、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)を用い、該試薬(粉末)を半円柱状でボード状の容器(石英ガラス製)におおよそ0.182g(容器にすりきり一杯分)入れて、ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速下の非酸化性雰囲気内で、室温から800℃まで加熱速度:200℃/hで加熱する加熱処理を施し、発生水素量を測定した(試験No.A)。加熱処理中、2.5min間隔で、ガスクロマトグラフィーにより、発生する水素量を測定した。なお、ガスクロ検出器は、TCD(Thermo−Conductivity−Detector)を用いた。
また、ガスクロマトグラフィー内で、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)をおおよそ0.271g入れた石英ガラス製容器とともに、該石英ガラス製容器の雰囲気ガス流の下流側に、冷延鋼板(大きさ:厚さ0.8mm×幅約10mm×長さ約50mm、質量:6.42g)1枚を入れたボード状の石英ガラス製容器を配置して、同様の測定を行った(試験No.B)。なお、比較として、ガスクロマトグラフィー内に、冷延鋼板(大きさ:厚さ0.8mm×幅約10mm×長さ約50mm、質量:6.42g)1枚を入れたボード状の石英ガラス製容器のみを配置して、同様の測定を行った(試験No.C)。
得られた結果を図1に示す。なお、図1の縦軸は、水素ガスの発生速度である。
図1から、発生した水素ガスの合計量(積分値)を求め、加熱処理前の鉄錆FeOOH(素材)の質量ppm当りの発生量(発生水素量の合計質量(質量ppm))として表1に示す。発生した水素ガスの合計量は、図1に示された水素ガスの発生速度を、時間単位で積分することにより、求めることができる。なお、試験No.Cでは、鉄錆FeOOH(素材)を装入しなかったので、発生水素量の合計は、加熱処理前の鉄錆FeOOH(素材)の質量ppm当りに代えて、冷延鋼板の質量ppm当りで表示している。
Figure 2016199439
図1から、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)(FeOOHを含む素材)に、100〜500℃または100〜800℃の範囲の温度に加熱する加熱処理を施すことにより、水素ガスが発生することがわかる(試験No.A)。さらに、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)に冷延鋼板の存在下で上記した加熱処理を施した場合(試験No.B)には、図1に示すように水素ガス発生速度のピーク値で1.5倍程度、表1に示すように100〜500℃の温度範囲における合計の水素ガス発生量で、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)のみの場合(試験No.A)に比べて、2.3倍程度と、発生水素量が顕著に増加することがわかる。なお、試験No.Cでは、発生した水素量は0.02質量ppmであり、冷延鋼板のみでは、ほとんど水素が発生していないことがわかる。
この具体的なメカニズムについては、現在のところ明確にはなっていないが、鉄錆FeOOHを冷延鋼板、すなわち、フリー状態の鉄(Fe)の存在下で、加熱処理を施すと、FeOOHがFeOに変化するに伴い、水素が発生する現象に加えて、フリー状態の鉄(Fe)による水分の還元作用、およびそれらの重畳作用により、発生する水素ガス量が顕著に増加したものと、本発明者らは考えている。
さらに、上記した鉄錆FeOOHを加熱する処理を、冷延鋼板に代えて鉄粉を用いて、同様に行い、発生する水素量を測定した。なお、鉄粉としては、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉を用いた。還元鉄粉は、ポーラス状を呈する粒子の集合体である。試験条件は下記のとおりとした。
試験No.Dは、ガスクロマトグラフィー内で、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)をおおよそ0.251g入れた石英ガラス製容器とともに、該石英ガラス製容器の雰囲気ガス流の下流側に、アトマイズ鉄粉(質量:3.53g)を入れたボード状の石英ガラス製容器を配置して、室温から800℃まで加熱速度:200℃/hで加熱する加熱処理を施した。加熱処理中、2.5min間隔で、ガスクロマトグラフィーにより、発生する水素量を同様に測定した。なお、ガスクロ検出器は同様に、TCD(Thermo−Conductivity−Detector)を用いた。
試験No.Eは、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)をおおよそ0.127gと、アトマイズ鉄粉(質量:2.08g)とを混合して入れた石英ガラス製容器を、ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速下の非酸化性雰囲気内で、同様の加熱処理を施し、発生水素量を測定した。
試験No.Fは、アトマイズ鉄粉(質量:3.70g)のみを入れた石英ガラス製容器を、ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速下の非酸化性雰囲気内で、同様の加熱処理を施し、同様に発生水素量を測定した。なお、試験No.Fでは、鉄錆FeOOH(素材)を装入しなかったので、発生水素量の合計は、加熱処理前の鉄錆FeOOH(素材)の質量ppm当りに代えて、鉄粉(アトマイズ鉄粉)の質量ppm当りで表示している。
得られた結果を図2に示す。
つぎに、アトマイズ鉄粉に代えて、還元鉄粉を用い、同様の加熱処理を行った。
試験No.Gは、ガスクロマトグラフィー内で、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)をおおよそ0.254g入れた石英ガラス製容器とともに、該石英ガラス製容器の雰囲気ガス流の下流側に、還元鉄粉(質量:3.20g)を入れたボード状の石英ガラス製容器を配置して、室温から800℃まで加熱速度:200℃/hで加熱する加熱処理を施した。加熱処理中、2.5min間隔で、ガスクロマトグラフィーにより、発生する水素量を同様に測定した。なお、ガスクロ検出器は同様に、TCD(Thermo−Conductivity−Detector)を用いた。
試験No.Hは、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)をおおよそ0.148gと、還元鉄粉(質量:2.16g)とを混合して入れた石英ガラス製容器を、ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速下の非酸化性雰囲気内で、同様の加熱処理を施し、発生する水素量を測定した。
試験No.Iは、還元鉄粉(質量:3.13g)のみを入れた石英ガラス製容器を、ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速下の非酸化性雰囲気内で、同様の加熱処理を施し、発生する水素量を測定した。なお、試験No.Iでは、鉄錆FeOOH(素材)を装入しなかったので、発生水素量の合計は、加熱処理前の鉄錆FeOOH(素材)の質量ppm当りに代えて、鉄粉(還元鉄粉)の質量ppm当りで表示している。
得られた結果を図3に示す。
図2,3から、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)を、鉄粉とともに加熱処理を施すこと(試験No.D,No.E;No.G,No.H)により、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)単独の場合(図1試験No.A)に比べ、水素ガス発生速度のピークが複数存在するようになること、および、300℃付近の水素ガス発生速度のピーク値で比較するとそのピーク値が高くなることを見出した。また、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)を、鉄粉とともに加熱処理を施す際に、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)と鉄粉とを別々の容器に入れて処理(試験No.D,No.G)した方が、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)と鉄粉とを混ぜて(互いに接触させて)同じ容器に入れて処理(試験No.E,No.H)する場合より、発生する水素量が多くなることを見出した。なお、鉄粉単独で加熱処理を施した場合(試験No.F;No.I)には、発生する水素量は極く微量であった。
図1と同様に、図2および図3から、発生した水素ガスの合計量(積分値)を求め、加熱処理前の鉄錆FeOOH(素材)の質量ppm当りの発生量(発生水素量の合計質量(質量ppm))として表2に示す。なお、水素ガス発生速度のピークが複数存在するため、表2では、温度域を2〜3の区間に区切って、それぞれの温度域での合計量を示した。なお、水素ガス発生速度のピークが1つの場合には、温度域はRT〜500℃の範囲とした。
Figure 2016199439
表2から、加熱処理に際し、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)とともに使用する鉄粉を、還元鉄粉とした場合には、アトマイズ鉄粉とした場合に比べて、発生する水素量が格段に(全発生水素量で比較して約1.5倍)増加することを知見した。この理由については、現在のところ完全には明らかになっていないが、本発明者らは、還元鉄粉が、ポーラスで表面積が大きいことに起因しているものと推定している。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)FeOOHを含む素材に、前記FeOOHがFeOに変化する処理を施し、水素ガスを発生させるに当たり、前記素材とFeを含む材料とを共存させ、かつ該Feを含む材料が、前記素材に含まれるFeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上となるように配置して、前記FeOOHがFeOに変化する処理を施すことを特徴とする水素ガス生成方法。
(2)FeOOHを含む素材とFeを含む材料とを共存させ、かつ該Feを含む材料が、前記素材に含まれるFeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上となるように配置して、前記FeOOHがFeOに変化する処理を施し、水素ガスを発生させたのちに、前記FeOをFeOOHに変化させる錆処理を施し、ついで該錆処理を施されて生成した該FeOOHがFeOに変化する処理を、前記錆処理を施されて生成した前記FeOOHとFeを含む材料とを共存させ、かつ、前記Feを含む材料が、前記錆処理を施されて生成した前記FeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上となるように配置して施し、水素ガスを発生させる工程を、複数回繰返すことを特徴とする水素ガス生成方法。
(3)(1)または(2)において、前記共存させる前記Feを含む材料が、前記FeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で1.0以上となるように配置することを特徴とする水素ガス生成方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記共存させる前記Feを含む材料の形態が、板状、粉末状、チップ状、線状のいずれかであることを特徴とする水素ガス生成方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記FeOOHがFeOに変化する処理が、前記FeOOHを含む素材および前記Feを含む材料を100〜600℃の範囲の温度に加熱する処理であることを特徴とする水素ガス生成方法。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記FeOOHを含む素材が、FeOOHを含む鉄系材料であることを特徴とする水素ガス生成方法。
(7)(1)ないし(6)のいずれかにおいて、前記FeOOHがFeOに変化する処理が、非酸化性雰囲気中で行う処理であることを特徴とする水素ガス生成方法。
本発明によれば、高価な素材を用いることなく、しかも簡便で効率的に、水素ガスを多量に発生でき、産業上格段の効果を奏する。
試薬(鉄錆成分)を用いた水素発生速度と加熱温度との関係を示すグラフである。 アトマイズ鉄粉の共存下での、試薬(鉄錆成分)を用いた水素発生速度と加熱温度との関係を示すグラフである。 還元鉄粉の共存下での、試薬(鉄錆成分)を用いた水素発生速度と加熱温度との関係におよぼす鉄粉の影響を示すグラフである。
本発明では、FeOOHを含む素材に、FeOOHがFeOに変化する処理を施し、水素ガスを発生させるに当り、このFeOOHがFeOに変化する処理を、Feを含む材料を共存させて施す。ここでいう「Feを含む材料」は、化合物として固定されていない、フリーのFeを含む材料とする。
本発明では、水素発生源としてFeOOHを含む素材を用いる。
ここでいう「FeOOHを含む素材」とは、FeOOHを含むものであればよく、とくにその種類、形態は限定されない。なお、FeOOHは、α相、β相、γ相が知られており、なかでもα相の存在確率が高いが、本発明ではいずれの相であっても水素ガス発生源として利用でき、相の違いは問題にしない。また、ここでいう「FeOOH」は、「FeO・HO」と表記される物質と等価である。
FeOOHを含む素材としては、例えば、純FeOOH粉末や、錆としてFeOOHが形成された鉄鋼材料等の鉄系材料が例示できる。鉄鋼材料としては、赤錆の主成分であるFeOOHが形成できる組成であればよく、各種鋼材、各種鉄スクラップ等がいずれも適用でき、とくにその組成は限定されない。なお、鉄系材料としては、さらにFe基合金やFeを含有する合金、鉄鉱石等が例示できる。また、反応の容易さという観点から、素材の形態は、粉体や、チップ状、フレーク状に細かく切断されたものとすることが好ましい。
そして、本発明では、水素発生源であるFeOOHを含む素材に、FeOOHがFeOに変化する処理を施す。
FeOOHがFeOに変化する処理としては、FeOOHを含む素材を、少なくとも100〜600℃の温度域に加熱する処理とする。この温度域に、FeOOHを含む素材を加熱すれば、反応の詳細については明確になっていないが、FeOOHがFeOに変化する反応により水素ガスが発生する。なお、加熱する温度域は、好ましくは100〜500℃の温度域、より好ましくは250〜400℃の温度域である。
上記した範囲の温度域に加熱する処理としては、上記した範囲の一定温度に加熱し保持する処理(定温加熱)、あるいは、上記した範囲の温度域を所定の加熱速度で、昇温(加熱)する処理(連続加熱)のどちらでもよい。
なお、素材の加熱は、好ましくは非酸化性雰囲気中で、さらに好ましくは非酸化性雰囲気の容器内で行う。非酸化性雰囲気としては、純アルゴン等の不活性雰囲気とすることが好ましいが、それに限定されないことは言うまでもない。なお、加熱のための熱源は、とくに限定する必要はなく、ヒーター、バーナー等の常用の加熱手段がいずれも適用できる。
なお、発生する水素量は、素材に含まれるFeOOH量に依存する。このため、FeOOHを含む素材は、連続的に、あるいは間歇的(バッチ式)に、所望の水素ガス発生量となるように供給することが好ましい。
本発明では、FeOOHを含む素材に、FeOOHがFeOに変化する処理を施す際に、「Feを含む材料」を、同じ雰囲気中に存在(共存)させて、行う。ここでいう「Feを含む材料」とは、酸化物等の化合物として固定された「Fe」ではなく、合金元素としてあるいは不純物元素としてフリーの「Fe」を含む材料をいうものとする。例えば、Ni基合金に含まれるFeや、ステンレス鋼材のようなFe基合金中のFeはフリーのFeであるが、FeOにおけるFeはフリーのFeではない。そして、本発明では、「Feを含む材料」を、素材に含まれるFeOOH量(質量)に対する質量比で、フリーのFe(質量)換算で0.5以上となるように配置する。
本発明では、このような「Feを含む材料」を、FeOOHがFeOに変化して、水素ガスが発生する反応を促進する作用を担うものとして、FeOOHを含む素材と共存させる。上記した「Feを含む材料」を、FeOOHを含む素材と共存させることにより、水素ガスが発生する反応が促進するメカニズムについては、現在までのところ明確になっていないが、本発明者らは、次のように考えている。
FeOOHがFeOに変化して、水素ガスが発生する反応については、現在までのところ明確になっていないが、本発明者らは、次のように推定している。
FeOOHが、FeOに変化するに際し、次(1)式
2FeOOH→ FeO+H+1/2O……(1)
で示される直接反応で水素ガスが発生するか、あるいは次(2)式
2FeOOH→ FeO+HO ……(2)
で示される反応で形成された水HOの一部が、次式
HO→ H+1/2O……(2a)
で示される反応で解離して水素ガスが発生するか、あるいはそれらが重畳したものと推定できる。なお、(1)式、(2)式、(2a)式で示される反応では、水素ガスHと酸素ガスOがともに発生するが、発生した酸素ガスOは、多量に存在する鉄錆に吸収されて系外には出ず、発生した水素ガスHのみが検出されたものと推察している。
「Feを含む材料」をFeOOHを含む素材と共存させることにより、ある種の触媒作用が働き、上記した(1)式、(2)式、(2a)式で示される反応が促進されるものと推察される。
あるいはさらに、FeOOHがFeOに変化するに際し、とくに次(2)式
2FeOOH→ FeO+HO ……(2)
で示される反応で水HOが形成された場合には、Feが共存することにより、次(3)式
2Fe+3HO→ FeO+3H……(3)
で示される反応で、水が還元されて水素ガスHが発生する反応が進行するものと推定している。
このように、FeOOHを含む素材に、「Feを含む材料」を共存させることにより、上記した(1)式、(2)式、(2a)式で示される反応が促進されることに加えて、さらに(2)式、(3)式で示される反応が重畳して、「Feを含む材料」を共存させない場合に比べて、発生する水素ガス量が増加したものと推定される。
なお、共存させる「Feを含む材料」は、素材に含まれるFeOOH量(質量)に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上となるように配置する。本発明で素材と共存させる「Feを含む材料」は、フリーのFeを含む材料であればよく、その種類、形状は限定する必要はない。しかし、「Feを含む材料」がフリーのFe換算で、素材に含まれるFeOOH量(質量)に対する質量比で、0.5未満では、上記した、ある種の触媒作用や水の還元作用等が低下すると考えられる。
また、含まれるFeが酸化物、あるいはその他の化合物として固定されている場合には、上記した作用が期待できなくなる。このため、「Feを含む材料」では、フリーのFeとして作用できる状態のFe(フリーのFe)を含む材料とする必要がある。
なお、ここでいう「Feを含む材料」には、鉄板、鉄系合金板、鋼板などの鉄系板状材、あるいは鉄粉、鋼粉、合金鋼粉などの鉄系粉末、あるいは鉄線、鋼線、ワイヤウール等の鉄系線状材、鉄鋼材料等の削りくず等の鉄系チップ材、鉄系フレーク材等の、鉄系材料が例示できる。鉄系材料では、合金元素の含有、不純物元素の含有等で、フリーのFe含有量に相違がある場合があるが、通常、質量%で90%以上のフリーのFeを含有している。したがって、多くの鉄系材料では、ほぼその質量を、素材に含まれるFeOOH量に対応する質量とすることができる。なお、ステンレス鋼のように、Cr、Mo、Ni等を多量に含有する高合金鋼では、含有する合金元素量が多くなるが、残部はFeであり、含まれる合金元素量を差し引いた残部Feの質量を、素材に含まれるFeOOH量に対応するフリーのFeの質量とすることはいうまでもない。また、Ni基合金やCo基合金では、Fe含有量は少なく、そのFe含有量が素材に含まれるFeOOH量に対応するフリーのFeの質量となる。
なお、めっきなどの表面に被膜が厚く形成されている鋼板(鋼材)、酸化膜が表面に厚く形成された鋼板(鋼材)、鉄鉱石等は、表面にFeが露出することが考えにくいため、本発明でいう「Feを含む材料」には該当しないことが多い。また、発生する水素ガスにより、表面に形成された被膜や酸化膜が還元されて、フリーなFeが表面に露出することができる場合には、本発明でいう「Feを含む材料」に該当するとみなせる場合がある。例えば、プレスされてスクラップ状にされ下地鋼板が露出しためっき鋼板、あるいは表面に不動態被膜が薄く形成されたステンレス系鋼材は、本発明でいう「Feを含む材料」として問題のないことを確認している。なお、鉄鉱石でも、水素発生量が多い場合には、表面が還元されて、フリーなFeが表面に露出する場合があり、本発明でいう「Feを含む材料」に該当する場合も考えられる。
また、本発明でいう「Feを含む材料」は、反応の促進のためには表面積を大きくしたほうがよく、薄材、線状材、チップ状材、粉末等とすることがより好ましい。
「Feを含む材料」は、水素発生源である素材に含まれるFeOOH量(質量)に対応した量(質量)を共存させて、配置することが好ましい。「Feを含む材料」は、素材に含まれるFeOOH量(質量)に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上、好ましくは1.0(等量)以上となるように共存配置する。「Feを含む材料」が、素材に含まれるFeOOH量(質量)に対する質量比で、0.5未満では、いわゆる、ある種の触媒的作用や水の還元作用等が低下し、所望の水素ガス発生量を確保できなくなる。このため、FeOOHを含む素材と共存させる「Feを含む材料」は、下記式
(フリーFe換算でFe含有質量(g))/(素材に含まれるFeOOH量(質量)(g)
で定義される比(質量比)で、0.5以上となるように配置することとした。なお、上記した比の上限についてはとくに限定する必要はないが、上記した比が10を超えて「Feを含む材料」の量を増加させると、効果が飽和する傾向を示す。
なお、反応の促進のためには、「Feを含む材料」は、FeOOHを含む素材の近傍に配置して処理するほうが好ましい。また、「Feを含む材料」とFeOOHを含む素材とを混ぜ合わせて配置してもよいが、FeOOHを含む素材と「Feを含む材料」とは好ましくは別々の容器に入れて、好ましくはFeOOHを含む素材が入った容器の雰囲気ガス流の下流側に配置して処理したほうが、発生水素量の観点から好ましい。「Feを含む材料」とFeOOHを含む素材とを混ぜ合わせて、接触させると、水素ガスの発生量が低くなる。このようなことから、FeOOHを含む素材と「Feを含む材料」とは接触させずに、加熱処理を施したほうが好ましい。
上記したように、FeOOHを含む素材と「Feを含む材料」とを共存させることにより、水素ガスが発生する反応が促進される。しかし、生成したFeOが発生した水素ガスにより還元される反応、すなわち次式
3FeO+H→ 2FeO+HO ……(3)
あるいは、さらに
2FeO+2H→ 6FeO+2HO ……(4)
が生じ、発生した水素ガスが消費されることが推定される。このため、得られる水素ガス量が減少することになる。なお、発生した水の一部は再度、水素ガスの発生に寄与する可能性はあるが、すべての発生した水が水素ガス発生に利用されることはない。
このようなことから、「Feを含む材料」とFeOOHを含む素材とを混ぜ合わせて配置すると、発生した水素ガスが、FeOが密に存在する領域を通過することになり、上記した(3)の反応、さらには(4)の反応が生起して、得られる水素ガス量が少なくなる。このため、本発明では、「Feを含む材料」とFeOOHを含む素材とは、好ましくは別々の容器に入れて、好ましくはFeOOHを含む素材が入った容器の雰囲気ガス流の下流側に配置することが好ましい。
また、本発明では、上記したように、FeOOHを含む素材に、FeOOHがFeOに変化する処理を、「Feを含む材料」を共存させて施し、水素ガスを発生させたのちに、前記FeOをFeOOHに変化させる錆処理を施し、ついで該錆処理で生成されたFeOOHがFeOに変化する処理を、「Feを含む材料」の共存下で施し、水素ガスを発生させる工程とすることが好ましい。このような工程を複数回施すことがより好ましい。
ここでいう「錆処理」とは、FeOをFeOOHに変化させる処理を意味し、水素ガスを発生させた残渣であるFeOを、再び錆させFeOOHに変化させる処理をいう。錆処理の条件は、FeOをFeOOHに変化させることができる処理であればよく、とくに限定されないが、手軽な方法として、例えばまず、室温大気雰囲気中で、空気に触れさせながら水をかける方法、あるいは水噴霧する方法が挙げられる。また湿度:50%以上の湿潤雰囲気中、好ましくは100℃以下の温度域で、素材の重量、体積、表面積により適正範囲が異なるが、30min以上保持する処理とすることが好ましい。100℃を超える温度では、水素の発生が顕著となり、FeOOHがFeOと変化し、FeOOHの形成ができなくなる。
上記したような錆処理を施して、水素ガスを発生させた残渣であるFeOをFeOOHに変化させる。そして、得られたFeOOHに、さらにFeOに変化する処理を「Feを含む材料」の共存下で、FeOOHをFeOに変化させる処理を施せば、さらに多量の水素ガスを発生させることができる。このような工程を複数回繰り返せば、同一素材量当りの水素ガスの収量を増加させることができることになる。
なお、上記したような工程を複数回繰り返す場合には、FeOOHを含む素材と共存させる「Feを含む材料」は、FeOOHを含む素材と混ぜ合わせて配置しないかぎり、複数回繰り返し使用することは可能である。なお、素材と共存させる「Feを含む材料」は、錆処理を行わないことはいうまでもない。また、「Feを含む材料」は表面積が大きいほうが有利であることはいうまでもない。
以下、さらに実施例に基づき、本発明について説明する。
(実施例1)
鉄錆FeOOHの試薬(粉末)を、半円柱状でボード状の容器(石英ガラス製)に0.25g(容器すり切り一杯)入れて、ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速のもとで、室温から600℃まで、加熱速度:200℃/hで加熱する加熱処理を施し、試験No.1(比較例)とし、基準とした。
また、鉄錆FeOの試薬(粉末)を、同様に、半円柱状でボード状の容器(石英ガラス製)に0.31g入れて、同様に加熱処理を施し、試験No.2(比較例)とした。なお、加熱処理終了後の材料を素材として、さらに試験No.2と同様の加熱処理を施し、試験No.2A(比較例)とした。
また、ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速のもとで、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)0.19〜0.31gを入れた半円柱状でボード状の容器(石英ガラス製)と、該容器の雰囲気ガスの下流側に、「Feを含む材料」として、フリーのFe換算(質量)で、0.03〜15.87gの範囲で変化させた冷延鋼板(板厚:0.8mm)を配置し、室温から600℃(一部800℃)まで、加熱速度:200℃/hで加熱する加熱処理を施し、試験No.3〜9とした。なお、共存して配置される「Feを含む材料」中のフリーFe量(フリーのFe換算質量)と、素材に含まれるFeOOH量(質量)との質量比(=(フリーFe量(質量))/FeOOH量(質量))を算出して表3に併記した。
なお、試験No.8(本発明例)は、「Feを含む材料」としての冷延鋼板を、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)と接触させた状態で配置し、同様に加熱処理を施した。また、試験No.9(本発明例)は、冷延鋼板を鉄錆FeOOHの試薬(粉末)を入れた半円柱状でボード状の容器を覆うように配置し、同様に加熱処理を施した。
また、ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速のもとで、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)を入れた半円柱状でボード状の容器(石英ガラス製)と、該容器の雰囲気ガスの下流側に、冷延鋼板に代えて、鉄錆FeOの試薬(純度:99%以上;粉末)を入れた半円柱状でボード状の容器(石英ガラス製)を配置し、同様に加熱処理を施し、試験No.10(比較例)とした。なお、鉄錆FeOは、Feは酸素Oに固定されており、本発明でいう「Feを含む材料」に該当しない。
また、FeOOHを含む素材として、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)に代えて、冷延鋼板に乾湿を繰り返す処理を施し表面に錆(FeOOH)を形成させた鋼板をFeOOHを含む素材として使用し、その下流側にほぼ同じ質量の冷延鋼板(「Feを含む材料」)を共存させて配置し、同様の加熱処理を施し、試験No.12(本発明例)とした。なお、「Feを含む材料」を配置しないで、同様の加熱処理を施し、試験No.11(比較例)とした。
いずれも、加熱処理を施しながら、2.5min間隔でガスクロマトグラフィーを用いて、各試験で発生する水素量を分析し、温度−水素発生速度スペクトルを求め、発生水素量をそれぞれ算出した。発生水素量は、水素発生速度を、時間単位で積分することにより、求めた。なお、ガスクロ検出器は、TCD(Thermo−Conductivity−Detector)を用いた。
得られた発生水素ガスの合計量(積分値)を、加熱処理前の鉄錆FeOOH(素材)の質量ppm当りの発生量(発生水素量の合計質量(質量ppm))として表3に示す。なお、発生した水素ガスの合計量(積分値)は、150〜500℃の温度領域とした。なお、500℃超えの領域でも水素ガスの発生が見られる場合にはRT〜800℃(一部はRT〜600℃)の全温度領域についても算出した。
そして、150〜500℃の温度領域で得られた発生水素ガスの合計量から、試験No.1の発生水素ガス合計量を基準として、発生水素ガス量の増加比率(=(FeOOH(素材)の質量ppm当りの発生水素量(質量ppm)/(試験No.1のFeOOH(素材)の質量ppm当りの発生水素量(質量ppm)))を算出した。
なお、試験No.11、No.12では、素材における加熱処理前の正確な鉄錆FeOOH量が不明であったので、発生水素ガスの合計量は、素材全量の質量ppm当りの発生量(発生水素量の合計質量(質量ppm))として表3に示す。そのため、試験No.12における発生水素量の増加比率は、試験No.11の発生水素量を基準とした比率とした。
Figure 2016199439
本発明例はいずれも、基準とした試験No.1における水素ガス発生量に比べて、1.3倍以上と多い水素ガス発生量を示しており、FeOOHを含む素材とともに、「Feを含む材料」を共存させることにより、水素ガスの発生が顕著に促進されていることがわかる。
なお、FeOOHを含む素材と共存させる「Feを含む材料」の量が、フリーのFe換算(質量)で、素材に含まれるFeOOH量(質量)の0.13で、「Feを含む材料」量が本発明範囲を外れる試験No.7(比較例)では、水素ガス発生量が基準である試験No.1における水素ガス発生量の1.1倍程度であり、水素ガス発生が著しく促進されているとはいいにくい。
また、FeOOHを含む素材と「Feを含む材料」である冷延鋼板とを接触させて共存させた場合(試験No.8)には、水素ガス発生量が基準である試験No.1における水素ガス発生量の1.3倍であり、接触させない場合(試験No.3)の1.7倍と比べて、水素ガス発生量が減少している。
また、試験No.10(比較例)では、「Feを含む材料」に代えて、鉄錆FeOをFeOOHを含む素材と共存させているが、基準とした試験No.1と同様の水素ガス発生量であった。これは、FeOOHを含む素材を加熱することにより、試験No.1と同様に水素ガスが発生するが、鉄錆FeOが水素ガス発生の促進作用を有しないため、試験No.1と同様の水素ガス発生量に留まったものと考えられる。
また、素材として、鉄錆FeOOH(粉末)に代えて、錆FeOOH付き鋼板を用いても、素材と共存して「Feを含む材料」(冷延鋼板)を配置して加熱処理を施す(試験No.12)と、「Feを含む材料」(冷延鋼板)を配置しない場合(試験No.11)に比して、1.4倍の水素ガス発生が認められた。
なお、試験No.2aでは、加熱温度-水素発生速度の関係図がほとんど平坦であり、水素ガスの発生はわずかであった。というのは、加熱処理終了後の材料を素材として使用したため、水素発生源であるFeOOHがほとんど残存していないことによると考えられる。
(実施例2)
ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速のもとで、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)0.26〜0.31gを入れた半円柱状でボード状の容器(石英ガラス製)と、該容器の雰囲気ガスの下流側に、重量を0.90〜0.25gの範囲で変化させたステンレス鋼製ワイヤウール(線径:0.3〜0.5mmφ)を配置し、実施例1と同様に、室温から600℃(一部800℃)まで、加熱速度:200℃/hで加熱する加熱処理を施し、試験No.21(本発明例)とした。また、「Feを含む材料」としてのステンレス鋼製ワイヤウールを、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)と接触させた状態で配置し、同様に加熱処理を施し、試験No.22(本発明例)とした。
なお、比較として、「Feを含む材料」であるステンレス鋼製ワイヤウールのみを配置して、同様の加熱処理を行い、試験No.23(比較例)とした。
なお、いずれも、実施例1と同様に、加熱処理を施しながら、2.5min間隔でガスクロマトグラフィーを用いて、発生する水素量を分析し、温度−水素発生速度スペクトルを求め、発生水素量をそれぞれ算出した。発生水素量は、水素発生速度を、時間単位で積分することにより、求めた。なお、ガスクロ検出器は、TCD(Thermo−Conductivity−Detector)を用いた。
得られた発生水素ガスの合計量(積分値)を、加熱処理前の鉄錆FeOOH(素材)の質量ppm当りの発生量(発生水素量の合計質量(質量ppm))として表4に示す。
なお、発生した水素ガスの合計量(積分値)は、150〜500℃(一部〜430℃)の温度領域で算出した。なお、500℃(一部430℃)超えの領域でも水素ガスの発生が見られる場合にはRT〜800℃の全温度領域についても算出した。
そして、150〜500℃の温度領域で得られた各試験No.の発生水素ガスの合計量から、実施例1で得られた試験No.1の発生水素ガス合計量を基準として、発生水素ガス量の増加比率(=(FeOOH(素材)の質量ppm当りの発生水素量(質量ppm)/(試験No.1のFeOOH(素材)の質量ppm当りの発生水素量(質量ppm)))を算出した。
Figure 2016199439
本発明例はいずれも、基準である試験No.1における水素ガス発生量に比べて1.5倍以上高い水素ガス発生量を示しており、FeOOHを含む素材とともに、ステンレス鋼製ワイヤウールを共存させることにより、水素ガスの発生が顕著に促進されていることがわかる。ステンレス鋼製ワイヤウールの表面には不動態皮膜が形成されているが、この程度の皮膜厚さの不動態皮膜では、水素ガスの発生反応の促進を阻害する悪影響を及ぼさないことがわかる。ステンレス鋼製ワイヤウールは本発明でいう「Feを含む材料」に該当する。なお、「Feを含む材料」であるステンレス鋼製ワイヤウールのみを配置して、同様の加熱処理を行った試験No.23では、水素ガスはほとんど発生しなかった。
(実施例3)
ガスクロマトグラフィー内で、純アルゴンガスをマスフローメータで制御した一定流速のもとで、鉄錆FeOOHの試薬(粉末)を0.25g入れた、半円柱状でボード状の容器(石英ガラス製)と、該容器の雰囲気ガス流の下流側に、アトマイズ鉄粉(質量:3.25g)を入れたボード状の石英ガラス製容器を配置して、室温から400℃まで、加熱速度:200℃/hで加熱し、400℃で2h保持する加熱処理を施し、FeOOHをFeOに変化させ、水素ガスを発生させた。
なお、実施例1と同様に、加熱処理を施しながら、2.5min間隔でガスクロマトグラフィーを用いて、放出される水素量を分析し、放出水素量を算出した。この処理による放出水素量は合計で21質量ppmであった。
ついで、水素を発生させた残渣(FeO)をRT〜50℃の温度域で、湿度:50〜100%に保持した雰囲気中で8h以上保持し、錆を発生させる錆処理を施し、FeOOHを生成させた。
得られたFeOOHを、新しいアトマイズ鉄粉(質量:3.11g)とともに、ガスクロマトグラフィー内で純アルゴン雰囲気中で、さらに加熱速度:200/hで、温度:400℃まで加熱し、400℃で2h保持する加熱処理を施し、水素を放出させた。ガスクロマトグラフィーを用いて、同様に、発生水素量を測定した。この処理による発生水素量は合計で16.3質量ppmであった。
上記した各処理を順次行う工程を、第1回目の工程とし、さらに第2回目として、同じ工程を繰り返し、同様に、放出水素量を測定した。この第2回目の工程で、放出された水素量は合計で37.3質量ppmであった。錆処理を行うことにより、繰り返し水素を発生させることができることがわかる。

Claims (7)

  1. FeOOHを含む素材に、前記FeOOHがFeOに変化する処理を施し、水素ガスを発生させるに当たり、前記素材とFeを含む材料とを共存させ、かつ該Feを含む材料が、前記素材に含まれるFeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上となるように配置して、前記FeOOHがFeOに変化する処理を施すことを特徴とする水素ガス生成方法。
  2. FeOOHを含む素材とFeを含む材料とを共存させ、かつ該Feを含む材料が、前記素材に含まれるFeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上となるように配置して、前記FeOOHがFeOに変化する処理を施し、水素ガスを発生させたのちに、前記FeOをFeOOHに変化させる錆処理を施し、ついで該錆処理を施されて生成した該FeOOHがFeOに変化する処理を、前記錆処理を施されて生成した前記FeOOHとFeを含む材料とを共存させ、かつ、前記Feを含む材料が、前記錆処理を施されて生成した前記FeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で0.5以上となるように配置して施し、水素ガスを発生させる工程を、複数回繰返すことを特徴とする水素ガス生成方法。
  3. 前記共存させる前記Feを含む材料が、前記FeOOH量に対する質量比で、フリーのFe換算で1.0以上となるように配置することを特徴とする請求項1または2に記載の水素ガス生成方法。
  4. 前記共存させる前記Feを含む材料の形態が、板状、粉末状、チップ状、線状のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の水素ガス生成方法。
  5. 前記FeOOHがFeOに変化する処理が、前記FeOOHを含む素材および前記Feを含む材料を100〜600℃の範囲の温度に加熱する処理であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の水素ガス生成方法。
  6. 前記FeOOHを含む素材が、FeOOHを含む鉄系材料であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の水素ガス生成方法。
  7. 前記FeOOHがFeOに変化する処理が、非酸化性雰囲気中で行う処理であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の水素ガス生成方法。
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