JP2016198789A - 曲面プレート成形用の金型決定方法及び曲面プレートの製造方法 - Google Patents

曲面プレート成形用の金型決定方法及び曲面プレートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】作業者の技能に依存することなく適切な金型を決定して作業工数を低減する。
【解決手段】 上型との接触面積よりも加工面積が広いプレートを下型の上で移動させながら逐次プレスして曲面プレートを製造するための金型を決定する方法であって、曲面プレートの目標形状の曲率半径よりも小さい曲率半径の成形面を有するテスト金型を曲率半径を変えて複数種類設け、テスト金型によるプレートのテストプレスを複数種類のテスト金型ごとに行い、複数種類のテスト金型の各成形面の曲率半径と、テストプレスで夫々得られた各プレートのプレス後の曲率半径との間の複数の対応データから、成形面の曲率半径とプレス後の曲率半径との関係を表す近似曲線を求め、近似曲線を用いて、曲面プレートの目標形状の曲率半径と略一致するプレス後の曲率半径に対応する成形面の曲率半径を求め、求めた曲率半径を利用して実際の金型の成形面を決定する。
【選択図】図5

Description

本発明は、曲面プレート成形用の金型決定方法及び曲面プレートの製造方法に関するものである。
従来、地上式LNGタンクの内壁は、多数の金属プレートを繋ぎ合わせて形成されている。それら金属プレートのうち複曲面を有するナックルプレートは、上型との接触面積よりも加工面積が広いプレートを下型の上で移動させながら逐次プレスすることにより製造している。
特開平5−138258号公報
しかしながら、この逐次プレスで用いる金型やプレス手順は、過去の現場の経験などに基づいて決定しているのが現状であるため、作業者の技能により作業工数が左右されてしまい、作業日数が長期化する原因となっている。
そこで本発明は、作業者の技能に依存することなく、適切な金型を決定し、少ない工数でプレス作業を完了させることを目的としている。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る曲面プレートの金型決定方法は、上型との接触面積よりも加工面積が広いプレートを下型の上で移動させながら逐次プレスして曲面プレートを製造するための金型を決定する方法であって、前記曲面プレートの目標形状の曲率半径よりも小さい曲率半径の成形面を有するテスト金型を曲率半径を変えて複数種類設け、前記テスト金型によるプレートのテストプレスを前記複数種類のテスト金型ごとに行い、前記複数種類のテスト金型の各成形面の曲率半径と、前記テストプレスで夫々得られた各プレートのプレス後の曲率半径との間の複数の対応データから、前記成形面の曲率半径と前記プレス後の曲率半径との関係を表す近似線を求め、前記近似線を用いて、前記曲面プレートの目標形状の曲率半径と略一致する前記プレス後の曲率半径に対応する前記成形面の曲率半径を求め、前記求めた曲率半径を利用して実際の金型の成形面を決定することを特徴とする。
前記方法によれば、スプリングバックにより金型の成形面の曲率半径よりもプレス後のプレートの曲率半径が大きくなる場合であっても、テストプレスにより求められた成形面の曲率半径とプレス後の曲率半径との関係に基づいて実際の金型の成形面の曲率半径を決定しているため、プレス後のプレートを目標形状とするために好適な金型を容易に製作することができる。なお、スプリングバックとは、曲げ変形を与えた後、変形させるために加えていた外力を取り除くと、材料の有する弾性により弾性変形分だけ変形が戻る現象である。したがって、作業者の技能に依存することなく適切な金型を決定することが可能となり、作業工数低減に寄与することができる。
前記曲面プレートは、X方向の曲率半径がY位置ごとに一定で且つY方向の曲率半径がX位置ごとに異なる部分を有する複曲面プレートであり、前記実際の金型の成形面のX方向の曲率半径を前記複曲面プレートの目標形状よりも小さく設定してもよい。
前記方法によれば、プレートのY方向の曲率半径を目標形状にするためにプレートをY方向に送りながら逐次プレスする際に、プレートのX方向の曲率半径が大きくなるように変形しても、金型のX方向の曲率半径を目標形状よりも小さく設定しているので、プレートをX,Y方向ともに目標形状に近づけることができる。よって、プレートのX方向の曲率半径の調整の手間が減り、作業工数低減に寄与することができる。
前記テスト金型による前記テストプレスをコンピュータシミュレーションにより行ってもよい。
前記方法によれば、テストプレスを短時間かつ低コストで行うことができる。なお、コンピュータシミュレーションとしては、例えばFEM解析などを用いると好適である。
また、本発明に係る曲面プレートの製造方法は、上型との接触面積よりも加工面積が広いプレートを下型の上で移動させながら逐次プレスして曲面プレートを製造する方法であって、前記プレートの中央部を前記曲面プレートの目標形状の曲率半径よりも小さい曲率半径となるようにプレスする中央部曲げ工程と、前記プレス後のプレートの中央部が前記下型のエッジ部分にかかるように配置された状態で、前記プレートの前記中央部に隣接した領域をプレスする調整工程と、を備えていることを特徴とする。
前記方法によれば、プレートの中央部を曲率半径が予め目標形状よりも小さくなるように予めプレスしておき、その後、プレートの中央部に隣接した領域をプレスする際に、下型のエッジ部分を利用してプレートの中央部を曲率半径が大きくなるように変形させることで、プレートを中央部及びそれに隣接する領域を同時に目標形状に近づけることができる。よって、曲がりにくい部位であるプレートの中央部を確実に曲げ加工しながらも、プレートのプレス回数を減らすことが可能となり、作業工数低減に寄与することができる。
前記曲面プレートは、X方向の曲率半径がY位置ごとに一定で且つY方向の曲率半径がX位置ごとに異なる部分を有する複曲面プレートであり、前記中央部曲げ工程の前に行われ、前記プレートを前記目標形状に向けて概略的にプレスする粗形状曲げ工程と、前記中央部曲げ工程と前記調整工程との間に行われ、前記プレートのY方向の両端部を前記目標形状にプレスする端部曲げ工程と、前記調整工程の後に行われ、前記プレートのX方向の曲率半径が前記目標形状の曲率半径となるように前記プレートをプレスする仕上げ工程と、をさらに備え、前記調整工程では、前記プレートのY方向の曲率半径が前記目標形状の曲率半径となるように前記プレートをプレスするようにしてもよい。
前記方法によれば、作業者の技能によらずに一定したプレス結果を効率的に得ることが可能となり、全体として作業工数低減に寄与することができる。
上型との接触面積よりも加工面積が広いプレートを下型の上で移動させながら逐次プレスして曲面プレートを製造するための前工程であって、該プレートを予め一定の曲率半径となるようにロール曲げしておいてもよい。
前記方法によれば、曲面プレートの粗形状がロール曲げにより一括して形成されるので、後工程での逐次プレスの作業工数を削減することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、作業者の技能に依存することなく、適切な金型を決定し、少ない工数でプレス作業を完了させることができる。
本発明の実施形態に係る複曲面プレートを示す図面である。 複曲面プレートを作製する際の全体的手順を示す斜視図である。 (a)は複曲面プレートを作製するためのテスト金型(縮小モデル)の下型を示す斜視図、(b)はその上型を示す斜視図である。 (a)はロール曲げ後の素材プレート(縮小モデル)の断面図、(b)はその平面図である。 テスト金型によるテストプレスの解析モデルを示す図面である。 複曲面プレートの目標形状(縮小モデル)を示し、(a)は複曲面プレートをLNGタンクに設置した状態における図面指定方向の曲率半径を示した図面、(b)は複曲面プレートを下型に設置した状態における鉛直方向の曲率半径を示した図面である。 (a)はテストプレスにおけるプレート中央部のプレスを説明する平面図、(b)はプレート端部のプレスを説明する平面図である。 中央部プレスの前後におけるプレートの断面形状を示すグラフである。 端部プレスの前後におけるプレートの断面形状を示すグラフである。 テスト金型の成形面の曲率半径(Y方向)とプレートのプレス後の曲率半径(Y方向)との関係を示すグラフである。 テスト金型の成形面の曲率半径(Y方向)とプレートのプレス後の曲率半径(X方向)の増加率との関係を示すグラフである。 粗形状曲げ工程を説明する図面である。 中央部曲げ工程を説明する図面である。 (a)(b)は木型による形状チェックを説明する断面図である。 端部曲げ工程を説明する平面図である。 端部曲げ工程を説明する断面図である。 調整工程を説明する模式断面図である。 (a)(b)は仕上げ工程を説明する断面図である。
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る複曲面プレート4を示す図面である。図1に示すように、LNGタンク内槽1は、多数の金属プレートを繋ぎ合わせて形成されており、本実施形態の複曲面プレート4は、そのLNGタンク内槽1のドーム状の屋根板2と円筒形の側板3とを繋ぐ位置に設置されるナックルプレートである。この複曲面プレート4は、高さ方向X(以下、X方向と称す)と周方向Y(以下、Y方向と称す)の2方向に曲率を有している。複曲面プレート4のX方向の曲率半径は、Y位置ごとに一定である。複曲面プレート4のY方向の曲率半径は、X位置ごとに異なる部分を有し、側板3から屋根板2に向かって連続的に小さくなっている。1枚の複曲面プレート4のX方向の弧長をW1、屋根板2側の端部におけるY方向の弧長をW2、側板3側の端部におけるY方向の弧長をW3とすると、例えば、W1=4438mm、W2=3985、W3=4189であり、60枚の複曲面プレート4でタンク全周が構成される。
図2は複曲面プレート4を作製する際の全体的手順を示す斜視図である。図2に示すように、まずは、バネ性を有する平板状の素材プレート4A(例えば、9%ニッケル鋼:SL9N590)をロール曲げして、X方向に一定の曲率半径となるように予め曲げ加工しておく。そして、このロール曲げ後のプレート4Bを金型8によりプレス加工して、Y方向の曲率半径を付与する。具体的には、金型8は、X方向を長手方向としてY方向の幅がプレート4Bよりも小さい雌状の下型6と、X方向を長手方向としてY方向の幅がプレート4B及び下型6よりも小さい雄状の上型7を有している。そして、プレート4Bを下型6の上でY方向に送りながら上型7を複数回押し下げる逐次プレスすることで、Y方向の曲率半径がX位置ごとに異なる複曲面プレート4を製造する。本発明は、このプレス曲げ工程の作業効率化を図るために、最適な金型8を決定し、その金型8を用いた最適なプレス方法を提供するものである。
[金型決定方法]
次に、最適な金型8を決定するまでの全体的な手順について説明する。まず、(1)コンピュータシミュレーション(例えば、FEM解析)により、成形面の曲率半径が異なる複数種類のテスト金型を用いてコンピュータ上でプレートを1回プレス(テストプレス)することで、制約条件(プレス機出力、金型サイズ、素材寸法)を考慮しつつ、目標形状が得られる適正金型形状の選定を行う。
次いで、(2)その選定された形状の縮小金型(1/12.5サイズ)を製作し、プレス曲げ試験(複数回プレス)を行い、成形結果から金型形状の最適化(形状修正)を行う。また、曲げ加工手順の最適化に反映するための基礎的な成形挙動データも蓄積する。次いで、(3)その最適化された形状の縮小金型(1/12.5サイズ)を用いて、プレス曲げ加工の諸元(プレス順序、ピッチ、回数など)をパラメータとした加工試験を実施し、成形を効率化するための曲げ加工手順を検討する。また、得られた結果からプレス曲げ施工指針を作成する。次いで、(4)以上の結果に基づいて実際の金型を製作し、実際のプレートを用いて試験的にプレス曲げ加工を行い、金型形状やプレス手順を再確認し、検討した手順の効果を検証する。最後に、(5)製品用のプレートを用いて実施工を行う。
次に、最適な金型8を決定するまでの詳細な手順について説明する。図3(a)は複曲面プレートを作製するためのテスト金型(縮小モデル)の下型6’を示す斜視図、(b)はその上型7’を示す斜視図である。図3に示すように、下型6’及び上型7’は、FEM解析で設定される縮小モデル(実寸法に対する縮尺=1/12.5)である。図3中、R1〜R4は成形面6a’,7a’における曲率半径を示している。具体的には、R1は、X方向の曲率半径でY位置ごとに一定であり、R2は、屋根板2側の端部におけるY方向の曲率半径であり、R3は、側板3側の端部におけるY方向の曲率半径であり、R4は、屋根板2側の端部と側板3側の端部との間の中央部におけるY方向の曲率半径である。なお、FEM解析においては、金型の成形面のみをモデル化している(剛体、板厚2.0mm)。
図4(a)はロール曲げ後の素材プレート4B(縮小モデル)の断面図、(b)はその平面図である。図4に示すように、ロール曲げ後でプレス前の素材プレート4Bは、X方向の長さW1(例えば、W1=4600mm)、Y方向の長さW2(例えば、4260mm)、板厚T(例えば、50mm)の矩形状の平板を、ロール曲げによって、X方向の曲率半径(R=4770)をY位置ごとに一定としたものであり、FEM解析での縮小モデルでは、それら寸法を1/12.5サイズに縮小し、X方向長さW1’(=368.0mm)、Y方向長さW2’、W3’(=340.8)、板厚T’(=4.0mm)、曲率半径R1’(=383.6mm:板厚中心)に設定している。
図5はテスト金型6’,7’によるテストプレスの解析モデルを示す図面である。図5に示すように、FEM解析には、例えば、汎用FEM解析プログラムであるLS−DYNAを使用し、金型(下型6’・上型7’)及び素材プレート4B’を縮小サイズ(1/12.5)でモデル化した。また、金型6’,7’は剛体、素材プレート4B’は弾塑性体とし、両者ともにシェル要素を用いてモデリング(寸法は板厚中心で決定)している。
図6は複曲面プレート4’の目標形状(縮小モデル)を示し、(a)は複曲面プレート4’をLNGタンクに設置した状態における図面指定方向の曲率半径を示した図面、(b)は複曲面プレート4’を下型6’に設置した状態における鉛直方向の曲率半径を示した図面である。図6(a)では、X方向曲率半径をr1、Y方向曲率半径(屋根板側)をr2、Y方向曲率半径(側板側)をr3、Y方向曲率半径(中央部)をr4とすると、r1は、曲率半径の方向を成形面の法線方向に設定し、r2〜r4は、複曲面プレート4’を鉛直断面で見て曲率半径の方向を水平方向に設定したものである。
ところで、プレス金型や成形品の形状においては、この方向で定義される曲率半径よりも、鉛直方向から見た曲率半径を用いた方が分かりやすい。そこで、図6(b)に示すように、本解析では、プレート4’を下型6’に置いた状態における前記r1〜r4に対応した鉛直方向から見た曲率半径をR1〜R4とし、これらの値が目標形状になるような金型の曲率半径寸法を選定する。
FEM解析におけるテスト金型6’,7’の成形面6a’,7a’の各曲率半径R1〜R4は、複曲面プレート4’の目標形状の曲率半径R1〜R4よりも小さい曲率半径となるように複数種類設けることとする。具体的には、表1に示すように、テスト金型6’,7’では、曲率半径r2〜r4を目標形状の20%、30%、40%の値の3種類の金型A,B,Cを用意し(上下型の曲率半径は、プレート板厚分だけオフセットしている)、その曲率半径r2〜r4(図6(a)参照)をR2〜R4(図6(b)参照)に座標変換する。なお、曲率半径R1は一定で、上下型はプレート板厚分オフセットした相型形状とする。
図7(a)はテストプレスにおけるプレート中央部のプレスを説明する平面図、(b)はプレート端部のプレスを説明する平面図である。図7に示すように、プレス位置は、Y方向の中央部を1回プレスするテストプレスと、Y方向の端部を1回プレスするテストプレスとを前記3種類のテスト金型ごとに行い、表2に示すように計6パターンのFEM解析を行う。
図8は中央部プレスの前後におけるプレートの断面形状を示すグラフである。図8では、プレス時(除荷前)およびスプリングバック後(除荷後)についてプレートのX方向各部(R2〜R4)における各Y位置でのZ位置が示されている。中央部プレスの成形現象としては、X方向中央(R4)では、下型6’のY方向のエッジ部分で折れ曲がった形状となっている(除荷後もその形状を維持)。これは、プレート中央付近は曲げ剛性が高いので、上型7’に接触する部分のみが下型6’に押し込まれるように変形するためである。また、X方向端部(R2,R3)では、金型形状に沿った変形をしており、下型6’のエッジ部分での折れ曲がりは生じていない。
図9は端部プレスの前後におけるプレートの断面形状を示すグラフである。図9では、プレス時(除荷前)およびスプリングバック後(除荷後)についてプレートのX方向各部(R2〜R4)における各Y位置でのZ位置が示されている。端部プレスの成形現象としては、X方向中央(R4)及びX方向端部(R2,R3)ともに、プレート中心寄りの下型6’のY方向のエッジ部分で折れ曲がった形状となる。その程度はR4の位置の方がR2,R3の位置よりも大きい。これも、プレート中央付近は曲げ剛性が高いためである。
図10はテスト金型6’,7’の成形面6a’,7a’の曲率半径R2’〜R4’(Y方向)とプレート4’のプレス後の曲率半径(Y方向)との関係を示すグラフである。なお、図10の1つのグラフに付された6つのプロットは、表2の6パターンのテストプレスに対応している。図10に示すように、同じ金型であっても素材プレートのプレス位置によって曲がり具合が異なる。中央部プレスと端部プレスとでは、端部プレスの方が曲がりにくい。ただし、X方向の中央(R4)ではプレス位置の影響は少ない。また、X方向の中央部(R4)はX方向の両端(R2,R3)に比べて曲がりにくい(特に中央部プレスの場合)。従って、金型の成形面の曲率半径は、X方向における中央部を端部よりも小さくする必要があると考えることができる。
そして、3種類のテスト金型6’,7’の各成形面6a’,7a’の曲率半径R2’〜R4’(金型曲率半径)と、6パターンのテストプレスで夫々得られた各プレート4のプレス後の曲率半径R2’〜R4’(成形曲率半径)との間の対応データから、金型曲率半径R2’〜R4’と成形曲率半径R2’〜R4 ’との関係を表す近似曲線B1〜B3,C1〜C3を求める。
ここで、中央部プレスと端部プレスとでは、端部プレスの場合の方が除荷後の曲がりが小さいので、1つの金型で中央部プレスと端部プレスとの両方を行おうと思えば、端部プレス時の結果を基にして金型形状を決定する必要がある。よって、近似曲線B1〜B3,C1〜C3のうち端部プレスの近似曲線C1〜C3を用いて、複曲面プレート4’の目標形状の曲率半径と略一致する成形曲率半径R2’〜R4’に対応する金型曲率半径R2’〜R4’を求める。即ち、近似曲線C1〜C3と目標形状線A1〜A3との交点における金型曲率半径R2’〜R4’を求める。そして、この求めた金型曲率半径R2’〜R4’を縮小金型に適用する。
このようにすることで、スプリングバックにより金型6’,7’の成形面6a’,7a’の曲率半径R2’〜R4 ’よりもプレス後のプレート4’の曲率半径R2’〜R4 ’が大きくなる場合であっても、テストプレスにより求められた成形面の曲率半径R2’〜R4 ’とプレス後の曲率半径R2’〜R4 ’との関係に基づいて金型の成形面の曲率半径R2’〜R4 ’を決定しているため、プレス後のプレート4を目標形状とするために好適な金型を容易に製作することができる。したがって、作業者の技能に依存することなく適切な金型を決定することが可能となり、作業工数低減に寄与することができる。
図11はテスト金型6’,7’の成形面6a’,7a’のY方向の曲率半径R2’〜R4’とプレート4’のプレス後のX方向の曲率半径R1’の増加率との関係を示すグラフである。図11に示すように、プレス後のプレートのX向曲の率半径R1’は、Y方向の曲げに影響を受けており、いずれもプレス前よりも曲率半径寸法が増加している。また、金型のY方向の曲率半径が小さい方が、プレートのX方向の曲率半径の増加は大きくなる傾向にある。従って、金型のX方向の曲率半径R1’の寸法は、複曲面プレート4’の目標形状の曲率半径よりも小さく設定することとする。これにより、プレート4’をX,Y方向ともに目標形状に近づけやすくなって、プレート4’のX方向の曲率半径R1’の調整の手間が減り、作業工数低減に寄与することができる。
以上により選定した縮小金型の形状は表3のとおりである。
次いで、この表3の形状をもつ縮小金型を製作し、その縮小金型を用いて実際にプレス試験を行う。その際には、上型とプレートとの間にウレタンシートを挟んで上型の成形面の曲率半径を調節し、上型の成形面の最適化を行う。このようにして実際の上型の成形面の曲率半径を最終的に決定する。
[複曲面プレート製造方法(プレス方法)]
次に、前記決定された金型6,7を用いた実際のプレス手順について説明する。プレス作業は、表4に示す5段階の工程にて行う。
図12は粗形状曲げ工程を説明する図面である。図12に示すように、まず初めに、ロール加工後のプレート4Bを目標形状に向けて概略的にプレスする粗形状曲げ工程を行う。具体的には、Y方向の一端から他端へ向かう方向へプレート全体を逐次プレスする。このプレスは、Y方向の端から端までの間を往復するように繰り返す(例えば、往復2回)。また、この逐次プレスでは、プレート4を下型6及び上型7に対してY方向へ相対移動させながらプレスを行うが、その際のプレスピッチは250mm程度とする。
図13は中央部曲げ工程を説明する図面である。図13に示すように、粗形状曲げ工程の後は、プレート4の中央部を目標形状の曲率半径よりも小さい曲率半径となるようにプレスする中央部曲げ工程を行う。具体的には、プレート4のY方向の両端から中央へ向かう方向へ逐次プレスを行うことで、Y方向中央付近を深く曲げて調整工程時の曲げ戻し対策をすると共に、形状の非対称性を小さくして調整し易くする。そして、この中央部曲げの後には、図14に示すように、木型で形状をチェックし、所定の曲がり量があればOKとして次工程へ移る一方、曲がり不足であればNGとして再プレスを行う。なお、木型による形状チェックは、他の工程でも適宜行うこととする。
図15は端部曲げ工程を説明する平面図である。図16は端部曲げ工程を説明する断面図である。図15及び16に示すように、中央部曲げ工程の後は、プレート4のY方向の両端部を目標形状にプレスする端部曲げ工程を行う。具体的には、図15のように、プレート4のY方向の両端部をX方向に三分割し、その分割長さ程度のウレタンシート10(例えば、厚さ6mm程度)をプレート4と上型7との間に敷いてプレスを行う。これにより、ウレタン部分を集中してプレスすることができる。なお、端部曲げの範囲は、プレート4のY方向両端から所定長さ(例えば、600mm)の範囲とする。
図17は調整工程を説明する模式断面図である。なお、図17では理解容易のためにプレートの曲率を強調して表示している。図17に示すように、端部曲げ工程の後は、プレート4のY方向の中央部に隣接した領域(中央部と端部との間の領域)をプレスする調整工程を行う。この調整工程は、プレート4のY方向の曲率半径が目標形状の曲率半径となるようにプレート4をプレスするものである。具体的には、Y方向の曲率半径が均一になるよう、曲がりが過小となっている中央部の端部との間の領域中間部をプレスする。その際、プレート4のY方向の中央部が下型6のエッジ部分にかかるように配置した状態で、曲がりが過大となっている中央部を下型エッジ部分による曲げ戻しを利用して目標形状に合わせる。
即ち、中央部曲げ工程においてプレート4の中央部を曲率半径が予め目標形状よりも小さくなるように予めプレスしておき、その後、この調整工程においてプレート4の中央部に隣接した領域をプレスする際に、下型6のエッジ部分を利用してプレート4の中央部を曲率半径が大きくなるように変形させることで、プレート4を中央部及びそれに隣接する領域を同時に目標形状に近づけることができる。よって、曲がりにくい部位であるプレート4の中央部を確実に曲げ加工しながらも、プレート4のプレス回数を減らすことが可能となり、作業工数低減に寄与することができる。
図18(a)(b)は仕上げ工程を説明する断面図である。図18に示すように、調整工程の後は、プレート4のX方向の曲率半径が目標形状の曲率半径となるようにプレート4をプレスする仕上げ工程を行う。具体的には、木型でX方向の曲がり過小部を探し、曲がり過小部の中心位置をプレスする。この際、図18(a)に示すように、プレート4の曲がり過小部の上にブロック11(例えば、アルミブロック等)を置いてプレスすることで、当該部分の曲率半径を減少させる。また、木型でX方向の曲がり過大部が見つかった場合には、図18(b)に示すように、プレーと4の曲がり過大部のX方向中心の下にブロック12を置くと共に、プレート4の曲がり過大部のX方向両側の上に一対のブロック13,14を置いてプレスすることで、当該部分の曲率半径を増加させる。そして、最終的に、複曲面プレート4のX方向及びY方向の曲げ形状を木型でチェックし、公差範囲内であることを確認する。
なお、前述した実施形態では、金型決定のためのテストプレスをFEM解析にて行ったが、FEM解析の代わりに実試験で行ってもよい。また、本発明を適用するプレートは、複曲面からなるナックルプレートだけでなく、球形タンクを構成するプレートに適用してもよい。
以上のように、本発明に係る曲面プレートの金型決定方法及び製造方法は、作業者の技能に依存することなく、適切な金型を決定し、少ない工数でプレス作業を完了できる優れた効果を有し、多数の金属プレートからなるタンクの作製等に広く適用すると有益である。
4 複曲面プレート
6 下型
7 上型
8 金型

Claims (6)

  1. 上型との接触面積よりも加工面積が広いプレートを下型の上で移動させながら逐次プレスして曲面プレートを製造するための金型を決定する方法であって、
    前記曲面プレートの目標形状の曲率半径よりも小さい曲率半径の成形面を有するテスト金型を曲率半径を変えて複数種類設け、
    前記テスト金型によるプレートのテストプレスを前記複数種類のテスト金型ごとに行い、
    前記複数種類のテスト金型の各成形面の曲率半径と、前記テストプレスで夫々得られた各プレートのプレス後の曲率半径との間の複数の対応データから、前記成形面の曲率半径と前記プレス後の曲率半径との関係を表す近似線を求め、
    前記近似線を用いて、前記曲面プレートの目標形状の曲率半径と略一致する前記プレス後の曲率半径に対応する前記成形面の曲率半径を求め、
    前記求めた曲率半径を利用して実際の金型の成形面を決定することを特徴とする曲面プレートの金型決定方法。
  2. 前記曲面プレートは、X方向の曲率半径がY位置ごとに一定で且つY方向の曲率半径がX位置ごとに異なる部分を有する複曲面プレートであり、
    前記実際の金型の成形面のX方向の曲率半径を前記複曲面プレートの目標形状よりも小さく設定することを特徴とする請求項1に記載の曲面プレートの金型決定方法。
  3. 前記テスト金型による前記テストプレスをコンピュータシミュレーションにより行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の曲面プレートの金型決定方法。
  4. 上型との接触面積よりも加工面積が広いプレートを下型の上で移動させながら逐次プレスして曲面プレートを製造する方法であって、
    前記プレートの中央部を前記曲面プレートの目標形状の曲率半径よりも小さい曲率半径となるようにプレスする中央部曲げ工程と、
    前記プレス後のプレートの中央部が前記下型のエッジ部分にかかるように配置された状態で、前記プレートの前記中央部に隣接した領域をプレスする調整工程と、
    を備えていることを特徴とする曲面プレートの製造方法。
  5. 前記曲面プレートは、X方向の曲率半径がY位置ごとに一定で且つY方向の曲率半径がX位置ごとに異なる部分を有する複曲面プレートであり、
    前記中央部曲げ工程の前に行われ、前記プレートを前記目標形状に向けて概略的にプレスする粗形状曲げ工程と、
    前記中央部曲げ工程と前記調整工程との間に行われ、前記プレートのY方向の両端部を前記目標形状にプレスする端部曲げ工程と、
    前記調整工程の後に行われ、前記プレートのX方向の曲率半径が前記目標形状の曲率半径となるように前記プレートをプレスする仕上げ工程と、をさらに備え、
    前記調整工程では、前記プレートのY方向の曲率半径が前記目標形状の曲率半径となるように前記プレートをプレスすることを特徴とする請求項4に記載の曲面プレートの製造方法。
  6. 上型との接触面積よりも加工面積が広いプレートを下型の上で移動させながら逐次プレスして曲面プレートを製造するための前工程であって、該プレートを予め一定の曲率半径となるようにロール曲げしておくことを特徴とする請求項4又は5に記載の曲面プレートの製造方法。
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