JP2016190940A - 金属酸化物粒子含有組成物、塗膜、塗膜付きプラスチックフィルム、表示装置 - Google Patents

金属酸化物粒子含有組成物、塗膜、塗膜付きプラスチックフィルム、表示装置 Download PDF

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有紀 釘本
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一也 鈴木
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哲朗 板垣
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Abstract

【課題】塗膜の色ムラと熱カールとを抑制し、さらに耐擦傷性に優れた塗膜を形成可能な金属酸化物粒子含有組成物を提供する。また、このような金属酸化物粒子含有組成物を用いて得られる塗膜、塗膜付きプラスチックフィルム、表示装置を提供する。【解決手段】金属酸化物粒子と、塩基性物質と、紫外線硬化樹脂成分と、を含有してなる金属酸化物粒子含有組成物であって、金属酸化物粒子は、加水分解性基を有する分散剤で表面処理され、紫外線硬化樹脂成分は、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含むアクリレート化合物である第1の成分と、樹枝構造を有する化合物である第2の成分と、を含み、樹枝構造は、エーテル結合またはエステル結合を含み、末端に(メタ)アクリロイル基が配置されており、水の含有量が金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下である金属酸化物粒子含有組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、金属酸化物粒子含有組成物、塗膜、塗膜付きプラスチックフィルム、表示装置に関する。
ジルコニア、チタニア、シリカ等の金属酸化物粒子は、樹脂等のバインダーに分散されて使用される。
例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等の表示装置で用いられるプラスチックフィルムには、透明性、屈折率、機械的特性等が求められる。そこで、プラスチックフィルムに、屈折率が高い無機微粒子と樹脂を混合した組成物を塗布して、機能性膜を設けること等が行われている。
金属酸化物粒子とバインダーとを複合化する方法としては、水の存在下でアルコキシド等の加水分解性基を有する分散剤が表面修飾された金属酸化物粒子を溶媒中に分散させた分散液と、バインダーとを混合する方法が一般的である。
アルコキシド等の加水分解性基は、酸性または塩基性下で水を共存させることによって加水分解された水酸基が、金属酸化物粒子に吸着・脱水縮合する性質がある。
金属酸化物粒子の表面は、通常、親水性であるため、バインダーと複合化して高い透明性を維持するためには、金属酸化物粒子の表面を分散剤等で疎水化し、金属酸化物粒子の有機溶媒に対する分散性を高めることが重要である。
このような分散液としては、加水分解触媒を添加して金属酸化物粒子をシランカップリング剤で表面処理した金属酸化物粒子分散液が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、金属酸化物微粒子をビーズミル処理時にシランカップリング剤で有機化し、超音波処理時に、その金属酸化物微粒子と、重合性官能基を有するイソシアネート化合物とを反応させることにより、金属酸化物微粒子を分散化させた分散体が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2000−256535号公報 特開2009−108123号公報 特開2010−254889号公報
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に記載されている分散液は、シランカップリング剤を加水分解処理して分散処理を行っているため、工程が多く、しかも、水が分散液に含有されてしまうため、シャープな粒度分布を有する分散液が得られなかった。そのため、分散液とバインダーを混合した組成物を、プラスチックフィルムに塗布して塗膜を形成した場合、その塗膜に光干渉によるリップルに起因する色ムラが生じることがあり、所望の透明性が得られないことがあった。
特許文献3に記載された分散体は、加水分解工程を経ていないので含有水量は少ないものの、一段階目の分散処理では所望の分散性が得られないため、イソシアネート化合物を添加して再度の分散処理が必要となり、工程が煩雑であった。また、イソシアネート化合物は水酸基と反応するため、使用できる溶媒が限定されてしまうという問題があった。
また、上記の塗膜を、例えば、タッチパネル部材として用いる場合、プラスチックフィルム上に上記の塗膜を設けた後に熱処理工程が必要な場合が多い。塗膜付きプラスチックフィルムは、熱処理工程を経ると、カールすることがあった。そのため、熱処理工程を経ても、塗膜付きプラスチックフィルムがカールすることを抑制することが可能な金属酸化物粒子含有組成物が求められていた。さらには、耐擦傷性にも優れた塗膜を形成できる樹脂組成物が求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、塗膜の色ムラと熱カールとを抑制し、さらに耐擦傷性に優れた塗膜を形成可能な金属酸化物粒子含有組成物を提供することを目的とする。また、このような金属酸化物粒子含有組成物を用いて得られる塗膜、塗膜付きプラスチックフィルム、表示装置を提供することをあわせて目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、金属酸化物粒子と、紫外線硬化樹脂成分と、を含有してなる金属酸化物粒子含有組成物であって、前記金属酸化物粒子は、加水分解性基を有する分散剤で表面処理され、前記紫外線硬化樹脂成分は、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含むアクリレート化合物である第1の成分と、樹枝構造を有する化合物である第2の成分と、を含み、前記樹枝構造は、エーテル結合またはエステル結合を含み、末端に(メタ)アクリロイル基が配置されており、水の含有量が前記金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下である金属酸化物粒子含有組成物を提供する。
本発明の一態様においては、前記第1の成分と前記第2の成分の質量比率が、5:95〜70:30の範囲内である構成としてもよい。
本発明の一態様においては、下記(a)〜(c)を満たす構成としてもよい。
(a)透過ヘーズ値1.2%であり、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面に、前記金属酸化物粒子含有組成物を用いて0.5μm厚となるように塗膜を形成した試験体について、前記塗膜の表面で、#0000のスチールウールを100g/cmの加重下にて10往復摺動させた場合の傷の本数が20本以下
(b)前記試験体の透過ヘーズ値が2.0%以下
(c)前記試験体を100mm×100mmの大きさの正方形状に切出した試験片について、150℃にて1時間静置した後、水平台の方向に凸となるように置いたとき、前記試験片の四隅と前記水平台との離間距離の算術平均値が20mm以下
また、本発明の一態様は、上記の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成された塗膜を提供する。
また、本発明の一態様は、プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面または両方の面に設けられた上記の塗膜と、を有する塗膜付きプラスチックフィルムを提供する。
また、本発明の一態様は、プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面に設けられた塗膜と、を有し、前記塗膜は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子を分散させる紫外線硬化樹脂とを含有し、下記(A)〜(C)を満たす塗膜付きプラスチックフィルムを提供する。
(A)前記塗膜の表面で、#0000のスチールウールを100g/cmの加重下にて10往復摺動させた場合の傷の本数が20本以下
(B)透過ヘーズ値が2.0%以下
(C)100mm×100mmの大きさの正方形状に切出した試験片について、150℃にて1時間静置した後、水平台の方向に凸となるように置いたとき、前記試験片の四隅と前記水平台との離間距離の算術平均値が20mm以下
また、本発明の一態様は、上記の塗膜および上記の塗膜付きプラスチックフィルムのいずれか一方または両方を備えた表示装置を提供する。
本発明の金属酸化物粒子含有組成物によれば、塗膜の色ムラと熱カールとを抑制し、耐擦傷性に優れた塗膜を形成な金属酸化物粒子含有組成物を提供することができる。
本発明の塗膜によれば、本発明の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成されているため、色ムラと熱カールとを抑制し耐擦傷性に優れた塗膜を得ることができる。
本発明の塗膜付きプラスチックフィルムによれば、本発明の塗膜が形成されているため、色ムラと熱カールとが抑制され、耐擦傷性に優れた塗膜付きプラスチックフィルムを得ることができる。
本発明の表示装置によれば、視認性に優れた表示装置を得ることができる。
本発明の金属酸化物粒子含有組成物、塗膜、塗膜付きプラスチックフィルム、表示装置を実施するための形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[金属酸化物粒子含有組成物]
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、金属酸化物粒子と、紫外線硬化樹脂成分と、を含有してなる金属酸化物粒子含有組成物であって、前記金属酸化物粒子は、加水分解性基を有する分散剤で表面処理され、前記紫外線硬化樹脂成分は、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含むアクリレート化合物である第1の成分と、樹枝構造を有する化合物である第2の成分と、を含み、前記樹枝構造は、エーテル結合またはエステル結合を含み、末端に(メタ)アクリロイル基が配置されており、水の含有量が前記金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下であるものである。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物の一実施形態として、金属酸化物粒子と、加水分解性基を有する分散剤と、塩基性物質と、紫外線硬化樹脂成分と、有機分散媒と、を含有してなる金属酸化物粒子含有組成物について説明する。
「金属酸化物粒子」
本実施形態における金属酸化物粒子は、特に限定されず、所望の特性を有する金属酸化物粒子が適宜選択されて用いられる。
例えば、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物に高屈折率性能を付与する場合には、屈折率が1.9以上の金属酸化物粒子が用いられる。このような金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ユーロピウム、酸化ハフニウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タングステン酸カルシウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物が好適に用いられる。これらの中でも、屈折率の高さ、着色による影響の少なさの点から、酸化ジルコニウム、酸化チタンが特に好ましい。
また、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物に耐候性を付与する場合には、金属酸化物粒子含有組成物に含まれる紫外線硬化樹脂成分の硬化を阻害しない範囲において、紫外線遮蔽性を有する金属酸化物粒子が適宜選択されて用いられる。このような金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム等が挙げられる。
また、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物に導電性を付与する場合には、導電性を有する金属酸化物が用いられる。このような金属酸化物としては、例えば、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、用途に応じて適宜選択すればよいが、透明性に優れた金属酸化物粒子含有組成物とするためには、1nm以上かつ30nm以下であることが好ましく、5nm以上かつ25nm以下であることがより好ましい。
金属酸化物粒子は、比表面積が60m/g以上かつ100m/g以下である粒子のみを用いることが好ましく、比表面積が70m/g以上かつ100m/g以下である粒子のみを用いることがより好ましい。この範囲内にある金属酸化物粒子を用いることで、後述するシャープな粒度分布を有する分散液を得ることができる。
本実施形態において、「平均一次粒子径」とは、個々の粒子そのものの粒子径を意味する。平均一次粒子径の測定方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、金属酸化物粒子それぞれの長径、例えば、100個以上の金属酸化物粒子、好ましくは500個の金属酸化物粒子それぞれの長径を測定し、その算術平均値を算出する方法が挙げられる。
金属酸化物粒子含有組成物中における金属酸化物粒子の含有量は、用途に応じて適宜調整すればよいが、10質量%以上かつ90質量%以下が好ましく、20質量%以上かつ80質量%以下がより好ましく、40質量%以上かつ70質量%以下がさらに好ましい。
金属酸化物粒子含有組成物中における金属酸化物粒子の含有量を、上記の範囲とすることにより、金属酸化物粒子含有組成物中における金属酸化物粒子の良好な分散安定性を得ることができる。
また、金属酸化物粒子含有組成物中の金属酸化物粒子の含有量は、用途に応じて適宜調整すればよいが、50質量%以上かつ80質量%以下が好ましく、55質量%以上かつ70質量%以下がより好ましい。
金属酸化物粒子含有組成物中における金属酸化物粒子の含有量を、上記の範囲とすることにより、金属酸化物粒子含有組成物中における金属酸化物粒子の良好な分散安定性を得ることができる。
「加水分解性基を有する分散剤」
本実施形態における加水分解性基を有する分散剤としては、加水分解性基を有し、金属酸化物粒子の表面に表面修飾されて粒子表面を疎水化し、金属酸化物粒子の溶媒や樹脂への分散性を向上させるものであれば特に限定されず、例えば、アルコキシ基を有する分散剤が好適に用いられる。
このようなアルコキシ基を有する分散剤としては、例えば、金属アルコキシド、シランカップリング剤、シリコーン化合物等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
金属アルコキシドとしては、特に限定されないが、アルコキシシランが好ましい。
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランが好ましい。
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、モノエトキシトリメトキシシラン、モノブトキシトリメトキシシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは、ケイ素(Si)の含有量が多く、溶媒に分散した場合に濃度を調整し易いこと、加水分解・縮合反応性が高いことから、好適に用いることができる。
これらのテトラアルコキシシランは、1種単独で用いてもよく、2種以上を同時に用いてもよい。
シランカップリング剤としては、1分子内に1〜3のアルコキシ基を有していれば特に限定されず、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8−メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8−アクリロオキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、シランカップリング剤としては、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエチルジエトキシシラン、p−スチリルエチルジメトキシシラン、p−スチリルエチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、アリルエチルジメトキシシラン、アリルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
さらに、シランカップリング剤としては、ビニルジエチルメトキシシラン、ビニルジエチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、p−スチリルジエチルメトキシシラン、p−スチリルジエチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、アリルジエチルメトキシシラン、アリルジエチルエトキシシラン等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を同時に用いてもよい。
シリコーン化合物としては、アルコキシ基を有していれば特に限定されず、メトキシ基やエトキシ基を有するシリコーンレジン等が用いられる。
加水分解性基を有する分散剤の添加量は、良好な分散性が得られる程度に適宜調整される。加水分解性基を有する分散剤の添加量は、例えば、金属酸化物粒子の全質量に対して、5質量%以上かつ120質量%以下であることが好ましく、10質量%以上かつ110質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上かつ100質量%以下であることがさらに好ましい。
「塩基性物質」
本実施形態における塩基性物質としては、水と混合した場合に水素イオン指数(pH)が7より大となる物質であり、かつ、金属酸化物粒子含有組成物の水の含有量が、金属酸化物粒子含有組成物に含まれる金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下であっても、均一に混合できる物質であれば、特に限定されない。
このような塩基性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類等が挙げられ、取り扱いが容易な点で、アミン類が好ましい。
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
アミン類としては、例えば、アミン、アミド、アミン系分散剤、アミン系界面活性剤、アミド型モノマー、アミン系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。
アミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミンのいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよいが、三級アミンを用いることがより好ましい。
アミド型モノマーとしては、例えば、アクリルアミド型モノマーやメタクリルアミド型モノマーが好適に用いられる。このようなアミド型モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド等が挙げられる。
塩基性物質の添加量は、所望の透明性が得られるように適宜調整される。塩基性物質の添加量は、金属酸化物粒子含有組成物に含まれる金属酸化物粒子の含有量に対して、0.15質量%以上かつ5質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以上かつ1.5質量%以下であることがより好ましい。
「紫外線硬化樹脂成分」
本実施形態における紫外線硬化樹脂成分は、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含むアクリレート化合物である第1の成分と、樹枝構造を有する化合物である第2の成分を含む。第2の成分の樹枝構造は、エーテル結合またはエステル結合を含み、末端に(メタ)アクリロイル基が配置されたものである。
(第1の成分)
第1の成分は、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含むアクリレート化合物であれば特に限定されず、ビニル基、アリル基、アリルエーテル基、スチリル基等を有していてもよい。第1の成分はモノマーであってもよく、オリゴマーであってもよい。第1の成分は、分子量が300以上10000以下の化合物を用いることが好ましく、400以上かつ5000以下の化合物を用いることがより好ましく、500以上かつ1000以下の化合物を用いることがさらに好ましい。
金属酸化物粒子含有組成物が紫外線硬化樹脂成分として第1の成分を有すると、塗膜を高硬度とすることができるため、塗膜の耐擦傷性を向上させることができる。
このような第1の成分としては例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等のアクリレート化合物を用いることができる。
また、これらのアクリレート化合物の、アルキル変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のアクリレート化合物も、第1の成分として用いることができる。
また、脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレートも第1の成分として用いることができる。
これらのアクリレート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アクリレート化合物の中でも、透明性が高く、かつ耐擦傷性に優れた塗膜が得られやすいため、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びトリペンタエリスリトール(メタ)アクリレートの群から選択される少なくとも1種を第1の成分として用いるのが好ましい。
(第2の成分)
第2の成分は、樹枝構造を有する化合物であり、樹枝構造がエーテル結合またはエステル結合を含み末端に(メタ)アクリロイル基が配置されたものであれば特に限定されない。
ここで、「樹枝構造を有する化合物」とは、枝分子を放射状に組み立てた球状の巨大分子を意味し、「デンドリティック高分子」とも呼称される。
デンドリティック高分子は、デンドリマー型とハイパーブランチポリマー型に大別される。デンドリマーは単一な分子構造を有しているのに対し、ハイパーブランチポリマーはランダムな分岐構造を有している。第2の成分としては、デンドリマー型の化合物を用いてもよく、ハイパーブランチポリマー型の化合物を用いてもよい。
デンドリティック高分子(第2の成分)は、一般的な直線状ポリマー(アクリレートポリマー)と比較して、反応性基が球状の巨大分子の最外面に高密度かつ集中的に配置されている。そのため、塗膜を作製する際の硬化反応速度が向上し、硬化時の未反応基が減少することが期待できる。これにより、後工程における熱処理などにおける未反応基の反応が抑制され、塗膜の熱収縮によるカール(熱カール)を低減することが期待できる。
また、デンドリティック高分子は、一般に「コア」と呼ばれる中心分子に、上述の枝分子が複数結合した構造を有している。このようなデンドリティック高分子が有する枝分子同士は、枝分子が一般的な直線状ポリマー分子の側鎖である場合と比較して、重合前から近接した位置に固定されている。そのため、デンドリティック高分子では、硬化前後において枝分子同士の距離の変化が小さくなり、硬化時の収縮そのものが抑制されると期待できる。したがって、金属酸化物粒子含有組成物が紫外線硬化樹脂成分として第2の成分を有すると、塗膜の収縮によるカールを低減することが期待できる。
また、金属酸化物粒子含有組成物に含まれる成分が、従来の一般的な鎖状ポリマーを形成する成分である場合、得られる鎖状ポリマーは重合時(硬化時)にはさながら紐が絡み合うようにネットワーク(またはドメイン)を形成する。そのため、重合が進行する過程では、組成物に含まれる金属酸化物粒子が樹脂のネットワーク(ドメイン)からはじきだされ、塗膜中で金属酸化物粒子が偏在するおそれがある。このような金属酸化物粒子の偏在化が起こると、光干渉による色ムラが発生するなどの問題があった。
しかし第2の成分は、樹枝構造を有する球状分子であるため、重合して得られる高分子が絡み合いにくく、上述したような粒子の偏在化が生じにくい。また、第2の成分同士が重合した場合、複数の球状分子同士が凝集することとなるが、球状分子の間には金属酸化物粒子が存在可能な隙間が生じやすい。これらより、塗膜中で金属酸化物粒子の偏在化が抑制され、塗膜全体にわたって、金属酸化物粒子が均一に存在することができる。そのため、塗膜のどの部分でも屈折率が均一であるため、干渉縞の発生が抑制され、光学特性に優れる塗膜を得ることもできる。
このような第2の成分(デンドリティック高分子)としては、例えば、大阪有機化学工業社製ビスコート#1000や、STAR−501(SIRIUS−501、SUBARU−501)等の市販品を用いることもできる。
ビスコート#1000は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するデンドリマー型ポリエステルアクリレートであり、分子量1,000〜2,000程度で、二重結合当量は約170((g/eq)である。
STAR−501は、ジペンタエリスリトールをコアとし、末端に(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチ型ポリアクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)連結型、第2の成分)を64質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(第1の成分)を36質量%含有する混合物である。
STAR−501の分子量は16,000〜24,000程度で、二重結合当量は約120(g/eq)である。
第1の成分と第2の成分の混合比率は、所望の耐擦傷性と熱カール性に応じて適宜調整すればよいが、例えば、第1の成分と第2の成分の質量比率は、5:95〜70:30の範囲内であることが好ましく、5:95〜50:50の範囲内であることがより好ましい。
第1の成分の混合比率が多くなりすぎた場合には、塗膜の熱収縮が大きくなり、良好な熱カール性を維持することができなくなるため好ましくない。一方で、第2の成分の混合比率が多くなりすぎた場合には、耐擦傷性に劣ることとなるため好ましくない。
紫外線硬化樹脂成分の重量平均分子量は、1000以上かつ28000以下であることが好ましく、3000以上かつ25000以下であることがより好ましく、15000以上かつ25000以下であることがさらに好ましい。
紫外線硬化樹脂成分の重量平均分子量を上記の範囲とすることにより、透明性、熱カール抑制および耐擦傷性に優れた、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物からなる塗膜を形成することができる。
紫外線硬化樹脂成分の重量平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)により測定することができる。
紫外線硬化樹脂成分の二重結合当量は500以下が好ましく、300以下がより好ましい。二重結合当量が500を超えた場合には、光重合(硬化)時の架橋点が不足して十分な塗膜強度を得ることができず、耐擦傷性に劣ることとなるため好ましくない。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物に含まれる紫外線硬化樹脂成分は、第1の成分と第2の成分以外の第3の成分を含んでいてもよい。第3の成分は特に限定されないが、例えば、エポキシ、ポリエステル、ウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、フェノール、ポリイミド、メラミン等を用いることができる。
熱カール性を向上できる観点より、ウレタンアクリレートを用いることが好ましい。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物における紫外線硬化樹脂成分の添加量は、所望の熱カール抑制効果および必要に応じて耐擦傷性が得られるように適宜調整される。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物における紫外線硬化樹脂成分の添加量は、金属酸化物粒子と紫外線硬化樹脂成分の質量比が1:9〜9:1となる範囲であることが好ましく、2:8〜8:2となる範囲であることがより好ましく、3:7〜7:3となる範囲であることがさらに好ましい。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、水の含有量が、金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下である。すなわち、金属酸化物粒子含有組成物中の金属酸化物粒子の含有量を100質量%とした場合、金属酸化物粒子含有組成中の水の含有量は、金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下である。なお、ここでの水の含有量とは、金属酸化物粒子の付着水、束縛水も含んだ量である。
水の含有量が、金属酸化物粒子の含有量の3質量%を超えると、金属酸化物粒子含有組成中の経時安定性を損なうおそれがある。また、水とアクリレートは相溶性が良好ではないため、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて塗膜を形成する際、その塗膜から溶媒が揮発するに伴って、金属酸化物粒子が凝集したり、偏析したりするおそれがある。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、加水分解性基を有する分散剤の加水分解に必要な量の水を含んでいれば、水の含有量はできる限り少ないことが好ましい。
ここで、加水分解性基を有する分散剤の加水分解に必要な水の量とは、加水分解性基を有する分散剤による金属酸化物粒子の表面処理に必要な加水分解が進行する量であり、全ての加水分解が進行する(加水分解率100%)のに必要な水の量よりも少なくてもよい。また、表面処理反応には、金属酸化物粒子の付着水、束縛水を用いることもできる。
使用する金属酸化物粒子が多量の付着水を含んでいる場合には、あらかじめ乾燥器等で水分を除去することが好ましい。一方で、金属酸化物粒子の付着水の量が少なすぎる場合には、必要量を添加することが好ましい。この場合、水の含有量は金属酸化物の含有量に対して、0.05質量%以上であることが好ましい。
「有機溶媒」
有機溶媒としては、上記の金属酸化物粒子を分散でき、上記の樹脂と相溶性がよいものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アミド系溶媒、エーテルエステル系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶媒の添加量は、後述する所望の金属酸化物粒子分散性や金属酸化物粒子含有組成物の粘度が得られるように適宜調整される。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物中には、発明の効果を阻害しない範囲内で、官能基が1個または2個以上であり、上記の樹脂には含まれないモノマーやオリゴマー、分散剤、重合開始剤、帯電防止剤、屈折率調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、重合開始剤等の一般的な各種添加剤が適宜含有されていてもよい。
分散剤としては、例えば、硫酸エステル系、カルボン酸系、ポリカルボン酸系等のアニオン型界面活性剤、高級脂肪族アミンの4級塩等のカチオン型界面活性剤、高級脂肪酸ポリエチレングリコールエステル系等のノニオン型界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アマイドエステル結合を有する高分子系界面活性剤等が挙げられる。
重合開始剤は、用いるモノマーの種類に応じて、適宜選択される。光硬化性樹脂のモノマーを用いる場合には、光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤の種類や量は、使用する光硬化性樹脂のモノマーに応じて適宜選択される。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ジケトン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、チオキサントン系、キノン系、ベンジルジメチルケタール系、アルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、フェニルフォスフィンオキサイド系等の公知の光重合開始剤が挙げられる。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、フィルムに塗布して塗膜を形成するものであることから、塗工を容易にするために、粘度が0.2mPa・s以上かつ500mPa・s以下であることが好ましく、0.5mPa・s以上かつ200mPa・s以下であることがより好ましい。
金属酸化物粒子含有組成物の粘度が0.2mPa・s以上であれば、塗膜にした時の膜厚が薄くなりすぎず、膜厚の制御が容易であるため好ましい。一方、金属酸化物粒子含有組成物の粘度が500mPa・s以下であれば、粘度が高すぎず塗工時における金属酸化物粒子含有組成物の取扱いが容易となるため好ましい。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、透過ヘーズ値1.2%であり、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面に、金属酸化物粒子含有組成物を用いて0.5μm厚となるように塗膜を形成した試験体について、下記のような物性値を有するものが好ましい。
「耐擦傷性」
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、上記試験体の塗膜の表面で、#0000のスチールウールを100g/cmの加重下にて10往復摺動させた場合の傷の本数が20本以下であることが好ましい。
これは、本発明における条件(a)に該当する。
「透明性」
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、上記試験体の透過ヘーズ値が2.0以下であることが好ましい。試験体の透過ヘーズ値は、1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。
これは、本発明における条件(b)に該当する。
試験体の透過ヘーズ値は、空気を基準として、ヘイズメーターNDH−2000(日本電色社製)を用い、日本工業規格JIS−K−7136に基づいて測定される。
「熱カール抑制」
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、上記試験体を100mm×100mmの大きさの正方形状に切出した試験片について、150℃にて1時間静置した後、水平台の方向に凸となるように置いたとき、試験片の四隅と前記水平台との離間距離の算術平均値が20mm以下であることが好ましい。以下の説明では、この「離間距離」のことを、「浮き上がり量」と称することがある。
これは、本発明における条件(c)に該当する。
浮き上がり量の算術平均値は、15mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましい。
浮き上がり量の算術平均値が20mm以下であることで、この塗膜付きプラスチックフィルムに熱を加える後工程、例えば、スパッタ工程やアニール工程での不具合を抑制することが可能となり、表示装置への実装の歩留りを上げることができる。
「成膜性」
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、上記試験体について500nm〜750nmの波長範囲で反射率を測定したとき、前記波長範囲における前記反射率の最大値と最小値の差が1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
500nm〜750nmの波長範囲内における最大値と最小値の差が1%以下であることにより、光干渉によるリップルの発生が抑制され、色ムラが抑制された成膜性のよい塗膜が得られるため好ましい。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて塗膜を形成した場合、その塗膜には、上述のような成膜性に優れた反射特性が得られる理由は次のように考えられる。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物では、塩基性物質を添加して水の含有量を減らすことで、シャープな粒度分布を有する金属酸化物粒子が得られる。換言すれば、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物中において、金属酸化物粒子の大きさがほぼ均一であるため、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物からなる塗膜中には、金属酸化物粒子が隙間なく均一に充填されやすい。そのため、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物は、塗膜の成膜性に優れ、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成された塗膜は、膜面内の全ての箇所での性能が均一となる。従って、例えば、塗膜の膜面内における屈折率がほぼ均一になるため、波長500nm〜750nmの範囲内で、塗膜の反射率がほぼ一定となり、光干渉によるリップルの発生が抑制される結果、塗膜の色ムラの発生が抑制される。よって、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成された塗膜が表示装置等に適用された場合、視認性を向上させることができると考えられる。
また、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成された塗膜では、シャープな粒度分布を有する金属酸化物粒子が用いられているため、塗膜内に均一に金属酸化物粒子が充填され、塗膜内の空隙が少ない。そのため、例えば、屈折率が1.9以上の金属酸化物粒子を用いて屈折率を向上させたい場合に、従来よりも屈折率を向上させるのに必要な金属酸化物粒子の量を減らすことができる。従って、膜厚が10nm〜200nmのような薄膜であっても、塗膜全体に均質に金属酸化物粒子が充填されて、均質に塗膜内の空隙を減らすことができるため、塗膜の屈折率を向上させることができる。
また、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成された塗膜では、膜面内の全ての箇所での性能が均一となるため、膜厚が1μm以上の厚膜にしても、光学ムラの発生を抑制することができる。特に加水分解性基を有する分散剤が、重合性不飽和基を有する官能基を有する場合、金属酸化物粒子が硬化時にアクリレートと結合するため、硬化時に膜中で凝集したり、膜の表面と内部で粒子分布が異なることが抑制されたりするので好適であり、1μm以上の厚膜の場合は特に好適である。
すなわち、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成された塗膜は、屈折率を調整するための薄膜であってもよく、屈折率を調整でき、かつ、ハードコート性も有する厚膜であっても、用途に応じて適宜選択して用いることができる。
[金属酸化物粒子含有組成物の製造方法]
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物の製造方法としては特に限定されないが、金属酸化物粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、分散媒に分散されてなる分散液であって、塩基性物質を含み、水の含有量が金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下である金属酸化物粒子分散液と、上述した紫外線硬化樹脂成分と、有機溶媒と、を適宜機械的に混合する方法が挙げられる。
混合装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
[金属酸化物粒子分散液]
本実施形態における金属酸化物粒子分散液は、金属酸化物粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、分散媒に分散されてなる分散液であって、塩基性物質を含み、水の含有量が金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下である。
本実施形態における金属酸化物粒子分散液の水の含有量は、金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下であるが、2質量%以下であることが好ましい。
金属酸化物粒子分散液の水の含有量が金属酸化物粒子の含有量の3質量%を超えると、シャープな粒度分布を有する分散液が得られないばかりでなく、長期保管の安定性が悪くなるため、金属酸化物粒子分散液の水の含有量は出来る限り少ないことが好ましい。
なお、本実施形態における水の含有量は、カールフィッシャー水分計(型番:AQL−22320、平沼産業社製)で滴定された値を意味する。
本実施形態における金属酸化物粒子分散液において、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下であることが好ましく、1以上かつ3以下であることがより好ましく、1以上かつ2以下であることがさらに好ましい。ここで、粒度分布とは、金属酸化物粒子分散液に含まれる金属酸化物粒子の粒度分布のことである。
粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値を、上記の範囲内とすることにより、樹脂中に均一に金属酸化物粒子を分散させることが可能となり、膜内の屈折率分布を均一にすることができる。これにより、干渉縞といった色ムラを低減することが可能となる。また、粗大粒子が低減されるため、塗工時の異物発生を抑制できるといった効果もある。
なお、本実施形態におけるD50とD90は、動的光散乱方式を測定原理とする粒度分布計(商品名:マイクロトラックUPA150、日機装社製)で測定した値を意味する。
本実施形態において、金属酸化物粒子分散液におけるD50は、金属酸化物粒子分散液の透明性向上の観点から、1nm以上かつ45nm以下であることが好ましく、1nm以上かつ20nm以下であることがより好ましい。
本実施形態における金属酸化物粒子分散液の一実施形態として、金属酸化物粒子と、加水分解性基を有する分散剤と、塩基性物質と、分散媒と、を含有してなる、金属酸化物粒子分散液について説明する。
なお、金属酸化物粒子と、加水分解性基を有する分散剤と、塩基性物質については、上記で説明したのと全くの同様のものであるため、説明を省略する。
金属酸化物粒子分散液の金属酸化物粒子の含有量は、用途に応じて適宜調整されるが、5質量%以上かつ50質量%以下が好ましく、10質量%以上かつ40質量%以下がより好ましい。
金属酸化物粒子分散液の金属酸化物粒子の含有量を、上記の範囲とすることにより、金属酸化物粒子分散液中における金属酸化物粒子の良好な分散安定性を得ることができる。
加水分解性基を有する分散剤の添加量は、良好な分散性が得られる程度に適宜調整される。加水分解性基を有する分散剤の添加量は、例えば、金属酸化物粒子の全質量に対して、5質量%以上かつ120質量%以下であることが好ましく、10質量%以上かつ110質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上かつ100質量%以下であることがさらに好ましい。
塩基性物質の添加量は、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下となるように、適宜調整されればよいが、金属酸化物粒子分散液中に塩基性物質が0.01質量%以上かつ1質量%以下含有されることが好ましい。
金属酸化物粒子分散液が塩基性物質を含有することにより、水の含有量が1質量%以下と少量であっても、シランカップリング剤等のアルコキシ基を有する分散剤の加水分解が促進され、粒径が揃った状態で金属酸化物粒子を分散媒に分散させることができる。
「分散媒」
分散媒は、金属酸化物粒子が分散されやすく、かつ、水以外であれば特に限定されない。分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アミド系溶媒、エーテルエステル系溶媒、樹脂モノマー、樹脂オリゴマー等が挙げられる。
本実施形態における金属酸化物粒子分散液の製造方法としては、金属酸化物粒子分散液の構成要素として上述した各材料を、機械的に混合し、金属酸化物粒子を溶媒中に分散させる方法が挙げられる。
分散装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物によれば、金属酸化物粒子の分散処理において、塩基性物質を用いて、その金属酸化物粒子を表面処理、分散させることにより、金属酸化物粒子の吸着水といった最小限の水分量で表面処理を行い、かつ、熱カールを抑制し、かつ耐擦傷性に優れた樹脂を用いているため、塗膜の色ムラと熱カールとを抑制し、さらに耐擦傷性に優れた塗膜を形成できる。
[塗膜]
本実施形態の塗膜は、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成されてなる。
この塗膜の膜厚は、用途に応じて適宜調整されるが、通常0.01μm以上かつ20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上かつ10μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上かつ2μm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の塗膜の製造方法は、上記の金属酸化物粒子含有組成物を被塗布物上に塗工することで塗膜を形成する工程と、この塗膜を硬化させる工程とを有する。
塗膜を形成する塗工方法としては、例えば、バーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、グラビアコート法、吸上げ塗工法、はけ塗り法等、通常のウェットコート法が用いられる。
塗膜を硬化させる硬化方法としては、光硬化させる方法が用いられる。
光硬化に用いるエネルギー線としては、塗膜が硬化すれば、特に限定されないが、例えば、紫外線、遠赤外線、近紫外線、赤外線、X線、γ線、電子線、プロトン線、中性子線等のエネルギー線が用いられる。これらのエネルギー線の中でも、硬化速度が速く、装置の入手および取り扱いが容易である点から、紫外線を用いることが好ましい。
紫外線照射による硬化の場合、200nm〜500nmの波長帯域の紫外線を発生する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、100〜3,000mJ/cmのエネルギーにて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。
本実施形態の塗膜によれば、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成されているため、塗膜の色ムラと熱カールとを抑制し、さらに耐擦傷性に優れた塗膜を得ることができる。
[塗膜付きプラスチックフィルム]
本実施形態の第1の塗膜付きプラスチックフィルムは、樹脂材料を用いて形成されたフィルム本体(プラスチックフィルム)と、フィルム本体の少なくとも一面に設けられた本実施形態の塗膜と、を有する。
また、本実施形態の第2の塗膜付きプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面に設けられた塗膜と、を有し、前記塗膜は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子を分散させる紫外線硬化樹脂とを含有し、下記(A)〜(C)を満たすものである。
(A)前記塗膜の表面で、#0000のスチールウールを100g/cmの加重下にて10往復摺動させた場合の傷の本数が20本以下
(B)透過ヘーズ値が2.0%以下
(C)100mm×100mmの大きさの正方形状に切出した試験片について、150℃にて1時間静置した後、水平台の方向に凸となるように置いたとき、前記試験片の四隅と前記水平台との離間距離の算術平均値が20mm以下
第1の塗膜付きプラスチックフィルムおよび第2の塗膜付きプラスチックフィルムは、本実施形態の金属酸化物粒子含有組成物を、公知の塗工法を用いて基体本体上に塗工することで塗膜を形成し、その塗膜を硬化させることにより得られる。
フィルム本体は、プラスチックフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、アクリル、アクリル−スチリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、塩化ビニル等のプラスチックから形成されたものが用いられる。
表示装置用途で用いる場合には、フィルム本体としては、光透過性を有するプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムは、塗膜面を#0000のスチールウールで100g/cmの加重下にて10往復摺動させた場合の傷本数が20本以下であることが好ましい。
本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムは、空気を基準として測定した場合に、透過ヘーズ値が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましいく、1.3%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムは、100mm×100mmの大きさの正方形状に切出した試験片について、150℃にて1時間静置した後、水平台の方向に凸となるように置いたとき、試験片の四隅と水平台との離間距離の算術平均値が20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、4mm以下であることがさらに好ましい。
ここで、「透過ヘーズ値」とは、全光線透過光に対する拡散透過光の割合(%)のことであり、空気を基準として、ヘイズメーターNDH−2000(日本電色社製)を用い、日本工業規格JIS−K−7136に基づいて測定した値を意味する。
本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムは、波長500nm〜750nmの範囲内における反射率の最大値と最小値の差が1%以下であることが好ましく、0.9%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムは、波長450nm〜800nmの範囲内における反射率の最大値と最小値の差が4%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。
ここで、「反射率」とは、分光光度計V−570(日本分光社製)で測定した反射スペクトルの値を意味する。
本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムと塗膜の間にハードコート膜を設けてもよく、塗膜とは屈折率等の性能が異なる膜を積層させてもよい。
本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムによれば、本実施形態の塗膜が形成されているため、塗膜の色ムラと熱カールとが抑制され、さらに耐擦傷性に優れた塗膜付きプラスチックフィルムを得ることができる。
[表示装置]
本実施形態の表示装置は、本実施形態の塗膜および本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムのいずれか一方または両方を備えてなる。「塗膜付きプラスチックフィルム」には、上述の第1の塗膜付きプラスチックフィルムと第2の塗膜付きプラスチックフィルムとが含まれる。
表示装置は、特に限定されないが、本実施形態ではタッチパネル用の液晶表示装置について説明する。
[タッチパネル]
タッチパネルはITO電極と透明基材(ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルム)との屈折率差が大きい場合には、ITO電極部分が見え易くなる、いわゆる骨見え現象が起こる。
そのため、屈折率が1.9以上の金属酸化物粒子を選択した本実施形態の塗膜を、透明基材とITO電極の間の層として設けることにより、透明基材とITO電極の屈折率差を緩和して、骨見え現象を抑制することができる。
本実施形態の塗膜および本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムのいずれか一方または両方をタッチパネルに設ける方法は、特に限定されず、公知の方法により実装すればよい。例えば、本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムの塗膜面に、ITO電極をパターニングし、配向膜、液晶層を積層した構造等が挙げられる。
本実施形態の表示装置によれば、塗膜の色ムラと熱カールとを抑制され、さらに耐擦傷性に優れた本実施形態の塗膜および本実施形態の塗膜付きプラスチックフィルムのいずれか一方または両方を備えているので、塗膜面内における光学特性のばらつきがほとんどないため、視認性に優れた表示装置を得ることができる。
以上、本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、後段の説明における記号は下記内容を示すものである。
本実施例では、下記表1に記載した化合物を適宜用いて金属酸化物粒子含有組成物を調製した。
Figure 2016190940
[実施例1]
「金属酸化物粒子分散液」
金属酸化物粒子である酸化ジルコニウム(IV)(平均一次粒子径12nm、住友大阪セメント社製)を40.0質量%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを6.0質量%、アルキルジメチルアミン(アミン価140)を0.3質量%、水を0.8質量%、メチルイソブチルケトンを52.9質量%混合した後、ビーズミルを用いて、分散処理を行って、金属酸化物粒子分散液Aを得た。
「金属酸化物粒子分散液の評価」
得られた金属酸化物粒子分散液の水分率を、カールフィッシャー水分計(型番:AQL−22320、平沼産業社製)で測定した結果、水の含有量は0.8質量%であった。
「金属酸化物粒子含有組成物」
得られた金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、SUBARU−501を30.4質量%、光重合開始剤(2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを3.6質量%混合し、実施例1の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、36:64であった。
「塗膜付きプラスチックフィルム」
得られた実施例1の金属酸化物粒子含有組成物を、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥膜厚が0.5μmとなるようにバーコーティング法で塗布し、90℃で加熱して乾燥させ、塗膜を形成した。
次いで、高圧水銀灯(最大負荷:120W/cm)を用い、塗膜に紫外線を250mJ/cmのエネルギーとなるように露光して、塗膜を硬化させて、実施例1の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
「透過ヘーズ値」
透過ヘーズ値を、下記試験片について、空気を基準として、ヘイズメーターNDH−2000(日本電色社製)を用い、日本工業規格JIS−K−7136に基づいて測定した。測定結果について、次の基準で透明性の評価を行った。
透過ヘーズ値の測定には、作製した塗膜付きプラスチックフィルム(試験体)から100mm×100mmの試験片を作製し、その試験片を用いた。評価結果を表2に示す。
評価結果が◎であるものが良品であり、○、△、×、となるに従い、透明性が低いものであることを示している。
◎:ヘーズ値1.3%以下
○:ヘーズ値1.3%を超え1.5%以下
△:ヘーズ値1.5%を超え2.0%以下
×:ヘーズ値2.0%を超える
なお、塗膜を形成する前の「50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム」そのもののヘーズ値は、1.2%であった。
「色ムラ」
塗膜付きプラスチックフィルムの色ムラを、目視により評価した。具体的には、フィルムと目の間隔を30cmとし、目視により観察し、色ムラがない、または、ほとんど目立たなければ○、色ムラがあれば×として評価した。
評価結果を表2に示す。
「熱カール性」
塗膜付きプラスチックフィルムの熱カール性の評価には、作製した塗膜付きプラスチックフィルムから100mm×100mmの試験片を作製し、その試験片を用いた。
この試験片を150℃で1時間熱処理してから、水平な台の方向に凸となるように置き、フィルムの四隅と水平台との離間距離(水平台からフィルムの四隅までの浮き上がり量)を定規で測定し、浮き上がり量の算術平均値を算出した。算出した浮き上がり量の平均値について、次の基準で評価を行った。評価結果が◎であるものが良品であり、評価結果が○、△、×となるに従い、熱カールによるフィルムの浮き上がり量が大きくなり、熱カール性に劣ることを示している。
◎:浮き上がり量の平均値が4mm以下
○:浮き上がり量の平均値が4mmを超え15mm以下
△:浮き上がり量の平均値が15mmを超え20mm以下
×:浮き上がり量の平均が20mmを超える
評価結果を表2に示す。
「反射スペクトルの測定」
塗膜付きプラスチックフィルムの可視光領域の反射スペクトルを、分光光度計V−570(日本分光社製)を用いて測定した。
この反射スペクトルにおいて、500nm〜750nmの範囲内における反射率の最大値と最小値の差を求め、次の基準で評価を行った。
評価結果が◎であるものが良品であり、評価結果が○、△、×となるに従い、光干渉によるリップルが大きくなり、色ムラが悪化していることを示している。
◎:最大値と最小値の差が0.5%以下
○:最大値と最小値の差が0.5%を超え0.7%以下
△:最大値と最小値の差が0.7%を超え1.0%以下
×:最大値と最小値の差が1.0%を超える
評価結果を表2に示す。
「塗膜の耐擦傷性」
塗膜付きプラスチックフィルムの塗膜上で、#0000のスチールウールを100g/cmの加重下にて10往復摺動させた。往復後の塗膜の表面を目視で観察し、次の基準で耐擦傷性の評価を行った。
評価結果が◎であるものが良品であり、評価結果が○、△、×となるに従い、耐擦傷性が低いものであることを示している。
◎:傷10本以下
○:傷11−20本
△:傷20−30本
×:傷31本以上
評価結果を表2に示す。
[実施例2]
「金属酸化物粒子含有組成物、塗膜付きプラスチックフィルム」
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、SUBARU−501を21.3質量%、V#1000を4.6質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを8.1質量%混合し、実施例2の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
実施例2の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、25:75であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに実施例2の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、実施例2の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
実施例2の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[実施例3]
「金属酸化物粒子含有組成物、塗膜付きプラスチックフィルム」
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、SUBARU−501を15.2質量%、V#1000を7.6質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを11.2質量%混合し、実施例3の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
実施例3の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、18:82であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに実施例3の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、実施例3の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
実施例3の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[実施例4]
「金属酸化物粒子含有組成物、塗膜付きプラスチックフィルム」
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、SUBARU−501を6.0質量%、V#1000を12.2質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを15.8質量%混合し、実施例4の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
実施例4の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、7:93であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに実施例4の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、実施例4の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
実施例4の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[実施例5]
「金属酸化物粒子含有組成物、塗膜付きプラスチックフィルム」
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、SUBARU−501を27.4質量%、U−2PPAを1.5質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを5.1質量%混合し、実施例5の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
実施例5の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、36:64であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに実施例5の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、実施例5の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
実施例5の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[比較例1]
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、DPHAを15.2質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを18.8質量%混合し、比較例1の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
比較例1の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、100:0であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに比較例1の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、比較例1の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
比較例1の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[比較例2]
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、U−2PPAを15.2質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを18.8質量%混合し、第1の成分及び第2の成分を含まない比較例2の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに比較例2の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、比較例2の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
比較例2の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[比較例3]
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、ELS−818を30.4質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを3.6質量%混合し、比較例3の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
比較例3の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、100:0であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに比較例3の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、比較例3の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
比較例3の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[比較例4]
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、DPHAを13.7質量%、U−2PPAを1.5質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを18.8質量%混合し、比較例4の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
比較例4の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、100:0であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに比較例4の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、比較例4の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
比較例4の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[比較例5]
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、DPHAを7.6質量%、ELS−818を15.2質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを11.2質量%混合し、比較例5の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
比較例5の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、100:0であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに比較例5の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、比較例5の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
比較例5の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[比較例6]
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、V#1000を15.2質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを18.8質量%混合し、比較例6の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
比較例6の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、0:100であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに比較例6の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、比較例6の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
比較例6の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
[比較例7]
金属酸化物粒子分散液Aを62.0質量%、V#1000を13.7質量%、U−2PPAを1.5質量%、光重合開始剤を0.8質量%、イソプロピルアルコールを3.2質量%、メチルイソブチルケトンを18.8質量%混合し、比較例7の金属酸化物粒子含有組成物を得た。
比較例7の金属酸化物粒子含有組成物における第1の成分と第2の成分の質量比率は、0:100であった。
実施例1の金属酸化物粒子含有組成物の替わりに比較例7の金属酸化物粒子含有組成物を用いた以外は全く同様にして、比較例7の塗膜付きプラスチックフィルムを得た。
「塗膜付きプラスチックフィルムの評価」
比較例7の塗膜付きプラスチックフィルムについて、ヘーズ値、色ムラ、熱カール性、反射スペクトル、塗膜の耐擦傷性を、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表2に示す。
下記表2においては、色ムラ、熱カール性、塗膜の耐擦傷性のいずれにも「×」の評価がされていないものを良品と判断し「○」として示し、色ムラ、熱カール性、塗膜の耐擦傷性のいずれかに「×」の評価がされているものは不良品と判断し「×」として示した総合評価を合わせて記載した。
Figure 2016190940
評価の結果、実施例1〜5の金属酸化物粒子含有組成物においては、塗膜の色ムラと熱カールとを抑制し、さらに耐擦傷性に優れた塗膜や塗膜付きプラスチック基材を提供可能であることが分かった。
対して、比較例3,5の金属酸化物粒子含有組成物においては、形成する塗膜は色ムラを抑制することができなかった。
また、比較例1,4,5の金属酸化物粒子含有組成物においては、形成する塗膜の熱カールを抑制することができなかった。
また、比較例2,4,6,7の金属酸化物粒子含有組成物においては、形成する塗膜は耐擦傷性が劣るものであった。
以上の結果より、本発明が有用であることが確認できた。
本発明の金属酸化物粒子含有組成物は、従来、金属酸化物粒子分散液が使用されている全ての工業用途に適用することができ、例えば、光学フィルム用途、住宅外装用途、熱線遮蔽用途等に適用することができる。

Claims (7)

  1. 金属酸化物粒子と、紫外線硬化樹脂成分と、を含有してなる金属酸化物粒子含有組成物であって、
    前記金属酸化物粒子は、加水分解性基を有する分散剤で表面処理され、
    前記紫外線硬化樹脂成分は、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含むアクリレート化合物である第1の成分と、
    樹枝構造を有する化合物である第2の成分と、を含み、
    前記樹枝構造は、エーテル結合またはエステル結合を含み、末端に(メタ)アクリロイル基が配置されており、
    水の含有量が前記金属酸化物粒子の含有量の3質量%以下である金属酸化物粒子含有組成物。
  2. 前記第1の成分と前記第2の成分の質量比率が、5:95〜70:30の範囲内である請求項1に記載の金属酸化物粒子含有組成物。
  3. 下記(a)〜(c)を満たす請求項1または2に記載の金属酸化物粒子含有組成物。
    (a)透過ヘーズ値1.2%であり、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面に、前記金属酸化物粒子含有組成物を用いて0.5μm厚となるように塗膜を形成した試験体について、前記塗膜の表面で、#0000のスチールウールを100g/cmの加重下にて10往復摺動させた場合の傷の本数が20本以下
    (b)前記試験体の透過ヘーズ値が2.0%以下
    (c)前記試験体を100mm×100mmの大きさの正方形状に切出した試験片について、150℃にて1時間静置した後、水平台の方向に凸となるように置いたとき、前記試験片の四隅と前記水平台との離間距離の算術平均値が20mm以下
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属酸化物粒子含有組成物を用いて形成された塗膜。
  5. プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面または両方の面に設けられた請求項4に記載の塗膜と、を有する塗膜付きプラスチックフィルム。
  6. プラスチックフィルムと、
    前記プラスチックフィルムの一方の面に設けられた塗膜と、を有し、
    前記塗膜は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子を分散させる紫外線硬化樹脂とを含有し、
    下記(A)〜(C)を満たす塗膜付きプラスチックフィルム。
    (A)前記塗膜の表面で、#0000のスチールウールを100g/cmの加重下にて10往復摺動させた場合の傷の本数が20本以下
    (B)透過ヘーズ値が2.0%以下
    (C)100mm×100mmの大きさの正方形状に切出した試験片について、150℃にて1時間静置した後、水平台の方向に凸となるように置いたとき、前記試験片の四隅と前記水平台との離間距離の算術平均値が20mm以下
  7. 請求項4に記載の塗膜、請求項5に記載の塗膜付きプラスチックフィルムおよび請求項6に記載の塗膜付きプラスチックフィルムの少なくとも1つを備えた表示装置。
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