JP2016190205A - 攪拌装置および攪拌装置の制御方法 - Google Patents

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弘毅 竹田
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孝太 鴛渕
正樹 大河
Masaki Okawa
正樹 大河
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Abstract

【課題】幅広い粘度域の攪拌対象物を、より均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)できる攪拌装置及び攪拌装置の制御方法を提供する。【解決手段】容器2内に、粘性を有する攪拌対象物乃至半固形状の攪拌対象物が収容され、前記攪拌対象物内に被攪拌物を入れ、回転する攪拌羽根5で攪拌対象物を攪拌する攪拌装置1において、前記攪拌羽根5は、前記容器底面上を摺動し、前記容器底面に位置する前記攪拌対象物を移動させる底面摺動部5aと、前記容器内周面上を摺動し、前記容器内周面に位置する前記攪拌対象物を移動させる内周面摺動部5bと、攪拌対象物の前記容器内下方への流れを形成する下降流形成部5cと有し、更に、前記攪拌羽根5を回転させる羽根回転手段6と、前記容器を回転させる容器回転手段4とを備え、前記攪拌羽根5の回転中心O5が容器2の回転中心O2に対して偏心し、前記攪拌羽根5と前記容器2とが夫々個別に回転する。【選択図】図4

Description

本発明は攪拌装置および攪拌装置の制御方法に関し、例えば粘度の高い攪拌対象物を攪拌する場合にも、攪拌対象物をより均一に攪拌でき、攪拌対象物内に入れられた被攪拌物をより均一に分散させることができる攪拌装置および攪拌装置の制御方法に関する。
従来から、液体等の流動体あるいは半流動体等の攪拌対象物内に、液体あるいは粉状体等の固体からなる被攪拌物を入れ、攪拌羽根で攪拌対象物を攪拌する攪拌装置が知られている。
例えば、特許文献1では、粉体と液体を収容する容器の中心軸と,攪拌混合する攪拌羽根の中心軸とを、同一直線上に重ならないように配置し、一方の中心軸の回りに他方の中心軸を回動させる回動手段を備えた攪拌装置が提案されている。
また、特許文献2では、軸を有し容器を受容する容器ホルダと、軸を中心に回転可能であり、前記容器ホルダの上方に配置された攪拌機とを備え、前記攪拌機の回転軸が前記容器ホルダの軸からずれた状態で、前記攪拌機が前記容器内に選択的に位置決めされるように、前記容器ホルダは上方に移動可能な、容器内で食品を混合するための装置が提案されている。
更に、特許文献3には、攪拌すべき攪拌対象物を収容する容器と、容器内の攪拌対象物を攪拌するための攪拌羽根と、攪拌羽根を回転駆動するためのモータと、攪拌羽根を上下動させるための上下駆動手段と、を備えた攪拌機が提案されている。
このように、従来の攪拌装置において、容器の中心軸と攪拌羽根の中心軸とを、同一直線上に重ならないように配置し、攪拌羽根あるいは容器を上下動させ、攪拌対象物をより均一に攪拌することが提案されている。
実開平7−520号公報 特表2012−533297号公報 特開2009−190026号公報
しかしながら、従来の攪拌装置では、高粘度の攪拌対象物に、液体あるいは固体等の被攪拌物を入れて攪拌する場合、容器内周面及び容器底面に攪拌対象物が位置し(滞留し)、容器内の攪拌対象物全体を均一に攪拌ができず、被攪拌物を均一に分散(拡散)できないという技術的課題があった。
一方、攪拌装置の攪拌羽根の形状、攪拌羽根の回転数、容器の回転数、攪拌時間等によって、攪拌対象物内における被攪拌物の分散度合(混合度合)が異なる。即ち、同一の攪拌装置であっても、攪拌時間等によって被攪拌物の分散度合(混合度合)が異なり、攪拌装置自体の攪拌性能を評価することができないという技術的課題があった。
本発明者らは、上記技術的課題を解決するために、容器内周面及び容器底面に攪拌対象物が位置する場合も考慮して、容器内の攪拌対象物全体を均一に攪拌し、被攪拌物を均一に分散(拡散)できる攪拌装置を鋭意研究すると共に、攪拌装置自体の攪拌性能評価についても鋭意研究した。
その結果、攪拌羽根を所定の形状になすことにより、粘度の高い攪拌対象物であっても、より均一に攪拌でき、しかも被攪拌物をより均一に分散(拡散)できる(良好な攪拌性能を持つ)ことを想到し、本発明を完成した。
尚、攪拌性能評価は、新たな攪拌性能評価試験方法を用いることにより、客観的に評価できることを想到し、本発明を完成した。
本発明は、上記情況に鑑みなされたものであり、粘度の高い攪拌対象物であっても(幅広い粘度域の攪拌対象物(粘性を有するものから半固形状の攪拌対象物)を)、より均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)できる(良好な攪拌性能を持つ)攪拌装置及び攪拌装置の制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明にかかる攪拌装置は、容器内に、粘性を有するものから半固形状の攪拌対象物が収容され、前記攪拌対象物内に被攪拌物を入れ、回転する攪拌羽根で攪拌対象物を攪拌する攪拌装置において、前記攪拌羽根は、前記容器底面上を摺動し、前記容器底面に位置する前記攪拌対象物を移動させる底面摺動部と、前記容器内周面上を摺動し、前記容器内周面に位置する前記攪拌対象物を移動させる内周面摺動部と、攪拌対象物の前記容器内下方への流れを形成する下降流形成部と有し、更に、前記攪拌羽根を回転させる羽根回転手段と、前記容器を回転させる容器回転手段と、を備え、前記攪拌羽根の回転中心が容器の回転中心に対して偏心し、前記攪拌羽根と前記容器とが夫々個別に回転することを特徴としている。
このように、本発明にかかる攪拌装置の攪拌羽根は、前記容器底面上を摺動し、前記容器底面に位置する前記攪拌対象物を移動させる底面摺動部と、前記容器内周面上を摺動し、前記容器内周面に位置する前記攪拌対象物を移動させる内周面摺動部と、前記容器内の攪拌対象物に下降流を形成する下降流形成部とを備えているため、容器内周面及び容器底面に位置する攪拌対象物を移動させることができ、更に、攪拌対象物の前記容器内下方への流れを形成することできる。
したがって、本発明にかかる攪拌装置にあっては、仮に粘性の高い攪拌対象物であっても、より均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)でき、高い攪拌性能を有する。即ち、幅広い粘度域の攪拌対象物(粘性を有するものから半固形状の攪拌対象物)を、より均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)でき、高い攪拌性能を有する。また、短時間でばらつきなく攪拌することができる。
尚、本発明にかかる攪拌装置は、高粘性を有する攪拌対象物に対して好適に用いることができるが、本発明はこれに限定されること無く、粘性を有する攪拌対象物から半固形状の攪拌対象物まで、幅広い粘度域の攪拌対象物に対しても用いることができる。更に、粘性が変化する攪拌対象物、例えば、攪拌することにより粘度が高い状態から低い状態に変化する攪拌対象物に対しても好適に用いることができる。
ここで、前記攪拌対象物内における被攪拌物のばらつき率が、40%以下であることが望ましい。
このばらつき率は、攪拌装置自体が有している攪拌性能を評価するものであり、次の試験方法によって得られる。即ち、ばらつき率が、より小さい数値であることが、客観的に容器内全体をより均一に攪拌できることを表している。
この試験方法は、まず、円筒状容器に攪拌対象物を入れ、更に、被攪拌物である任意の粒状紛体を攪拌対象物内に入れる。そして、前記容器をセットし、攪拌を行う。前記攪拌終了後、容器内の所定のポイントをサンプリングし、攪拌対象物を抽出する。
前記抽出したサンプルを、顕微鏡等を用い拡大し、任意領域内の粒状紛体の個数を計測し、平均個数(平均値)及び標準偏差を算出する。
さらに攪拌対象物、被攪拌物の密度、体積及び任意領域の体積より任意領域内に収まる粒個数(理論値)値を算出する。
また、前記サンプルの被攪拌物の平均個数(平均値)に標準偏差を加えた個数(値)及び平均値から標準偏差を差し引いた個数(値)から前記理論粒個数値を差し引き、差分が大きい方をばらつき率の算出に用いる。
そして、(平均値に標準偏差を加えた値あるいは平均値から標準偏差を差し引いた値から理論値を差し引いた差分が大きい数値)/理論値×100からばらつき率を求める。
また、攪拌対象物の粘度が、3000〜500000mPa・sであることが望ましい。
また、前記攪拌羽根は、羽根部と、前記羽根部の上端部から上方に延設された軸部とを備え、前記羽根部は、前記羽根部の表裏面に形成された、上端部から下端部に向かって軸部の軸線方向に傾斜する傾斜面からなる下降流形成部と、前記羽根部の表裏面を繋ぐ側面に形成された、前記軸部の軸線と平行な線部を有する内周面摺動部と、前記羽根部の下端部に形成された底面摺動部と、を備えることが望ましい。
このように、前記攪拌羽根が特定の形状を有することにより、容器内周面及び容器底面に位置する攪拌対象物を移動させ、更に攪拌対象物の容器内の下方向への流れを形成するため、容器内の攪拌対象物全体をより均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)させることができる。
また、前記羽根部の表裏面に形成された、上端部から下端部に向かって軸部の軸線方向に傾斜する傾斜面が、前記軸線方向に凹んだ湾曲面として形成されていることが望ましい。
このように、前記羽根部の表裏面に形成された、上端部から下端部に向かって軸部の軸線方向に傾斜する傾斜面が、前記軸線方向に凹んだ湾曲面として形成されているため、容器内の上方向に位置する攪拌対象物を、容器内の下方向へ効率的に移動させることができ、容器内の攪拌対象物全体をより均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)させることができる。
また、前記攪拌羽根の羽根部と軸部は、弾性率が2〜10MPa(タイプAデュロメータ硬さ50〜80)の合成ゴム材によって一体に形成されていることが望ましい。
前記攪拌羽根の羽根部と軸部が、弾性率が2〜10MPa(タイプAデュロメータ硬さ50〜80)の合成ゴム材で形成されているため、前記羽根部が容器内周面上及び容器底面上を摺動する際、前記羽根部は容器の内部形状に対応した形状に変形し、また軸部も変形し、容器内周面及び容器底面に位置する攪拌対象物を残すことなく移動させることができる。
尚、弾性率が2MPa(タイプAデュロメータ硬さ50)未満の合成ゴム材にあっては変形し易く、攪拌対象物の粘度が高過ぎると、撹拌が不十分になりやすい。また、弾性率が10MPa(タイプAデュロメータ硬さ80)を超える合成ゴム材にあっては変形し難いため、容器内周面及び容器底面部に位置する攪拌対象物を残すことなく移動させることが困難なため好ましくない。
また、前記攪拌羽根の羽根部と軸部は、フッ素ゴム、あるいはシリコーンゴムで形成されていることが望ましい。これらゴム材は、耐熱性、耐薬品性を備えているため、より好ましい。
また、前記羽根回転手段と容器回転手段によって、前記攪拌羽根と前記容器とが夫々逆方向に回転することが望ましい。
このように、前記攪拌羽根と前記容器とが夫々逆方向に回転する場合には、攪拌羽根の相対回転数が大きくなるため、容器内の攪拌対象物全体をより均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)させることができる。
また、内周面摺動部及び底面摺動部と、容器内周面及び底面との相対速度が大きくなり、容器内周面及び容器底面に位置する攪拌対象物を移動させる回数も増すため、攪拌対象物全体をより均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)させることができる。
また、上記攪拌装置の制御方法において、攪拌羽根回転数と、容器回転数と、前記攪拌羽根及び容器の回転時間とが異なる、複数の攪拌条件を用意する工程と、前記容器内に収容される攪拌対象物の粘度によって、前記複数の攪拌条件から少なくとも一つの攪拌条件を選択し、前記選択した攪拌条件によって攪拌条件パターンを構成する工程と、前記攪拌条件パターンによって、前記攪拌対象物を攪拌する工程を備えることが望ましい。
このように、攪拌対象物の粘度によって、前記複数の攪拌条件から少なくとも一つの攪拌条件を選択し、前記選択した攪拌条件によって構成される攪拌条件パターンによって、前記攪拌対象物を攪拌するため、攪拌対象物全体をより均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)させることができる。
また、前記容器内に収容される攪拌対象物の粘度によって、前記複数の攪拌条件から少なくとも一つの攪拌条件を選択し、前記選択した攪拌条件によって攪拌条件パターンを構成する工程において、前記複数の攪拌条件から異なる複数の攪拌条件を選択し、前記選択した攪拌条件を組み合わせることにより攪拌条件パターンを構成し、攪拌条件パターンによって、前記攪拌対象物を攪拌することが望ましい。
このように、複数の攪拌条件から異なる複数の攪拌条件を選択し、前記選択した攪拌条件を組み合わせることにより攪拌条件パターンを構成し、攪拌条件パターンによって、前記攪拌対象物を攪拌することにより、攪拌対象物全体をより均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)させることができる。
尚、前記選択した攪拌条件を組み合わせることにより、複数の攪拌条件パターンを構成し、複数の攪拌条件パターンから一つの攪拌条件パターンを選択し、選択した攪拌条件パターンによって、前記攪拌対象物を攪拌しても良い。
本発明によれば、粘度の高い攪拌対象物であっても(幅広い粘度域の攪拌対象物を)、より均一に攪拌でき、被攪拌物をより均一に分散(拡散)できる(良好な攪拌性能を持つ)攪拌装置及び攪拌装置の制御方法を得ることができる。また、本発明によれば、短時間でばらつきなく攪拌することができる。
図1は、本発明にかかる一実施形態の外観を示す斜視図である。 図2は、図1に示す一実施形態(攪拌羽根が上昇位置における)の外観を示す側面図である。 図3は、図1に示す一実施形態(攪拌羽根が下降位置における)の外観を示す側面図である。 図4は、本発明にかかる一実施形態を示す概略構成図である。 図5は、本発明にかかる一実施形態に用いられる攪拌羽根を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。 図6は、図5に示した攪拌羽根を示す図であって、(a)は平面図、(b)は底面図である。 図7は、図5に示した攪拌羽根を示す図であって、(a)は軸部方向からの斜視図、(b)は底面摺動部方向からの斜視図である。 図8は、図5に示した攪拌羽根を示す図であって、攪拌対象物の下方向への流れを説明するための図である。 図9は、図5に示した攪拌羽根が容器内に収容された状態を示す図であって、(a)は攪拌羽根に外力が作用していない状態を示す図、(b)は攪拌羽根に外力が作用し、底面摺動部及び内周面摺動部が、容器の底面及び内周面に圧接している状態を示す図である。 図10は、図5に示した攪拌羽根の回転領域を示す図であって、(a)は攪拌羽根の中心を容器の中心に配した状態を示す図、(b)は攪拌羽根の中心と容器の中心をずらして配置し、かつ攪拌羽根が容器内周面と接して摺動するように配置した状態を示す図である。 図11は、図5に示した攪拌羽根による、容器内周面に位置する攪拌対象物の移動状態を示す図であって、(a)は初期状態を示す図、(b)は攪拌羽根及び容器が所定角度回転した移動状態を示す図である。 図12は、攪拌性能評価試験におけるサンプリング位置を示す概略図である。 図13は、サンプルにおける計測するガラスビーズを示す概念図である。
本発明にかかる攪拌装置の一実施形態について図1乃至図11に基づいて説明する。
図1に示すように、この攪拌装置1は、攪拌対象物が収容される容器2を載置し、保持する容器保持部3と、前記容器保持部3を回転させるモータ等からなる容器回転手段4(図4参照)とを備えている。即ち、この攪拌装置1は、攪拌対象物が収容される容器2は、前記容器回転手段4によって、回転可能に構成されている。
また、この攪拌装置1は、容器内に入れられた攪拌対象物及び被攪拌物を攪拌する攪拌羽根5と、前記攪拌羽根5を回転させるモータ等からなる攪拌羽根回転手段6(図4参照)とを備えている。
また、前記攪拌羽根5及び攪拌羽根回転手段6を上下動させる昇降機構7を備えている。この昇降機構7は、例えば、リニアレール、ボールねじ等の公知の技術を用いることができる。
このように、前記攪拌羽根5及び攪拌羽根回転手段6は、この攪拌装置1本体に対して上下動可能に構成され、攪拌羽根5による攪拌時には、前記攪拌羽根5が容器2内に下降し、非攪拌時には容器2の上方に移動するように構成されている。
また、図2に示すように、前記昇降機構7は、上方から下方に向かって、徐々に容器に近づくように斜めに配置されている。前記攪拌羽根5の前記昇降機構7は、前記攪拌羽根5の下端部が容器2内の底面部に圧接する状態まで下降できるにように構成されている。
その結果、図3に示すように攪拌羽根5を下降させると、前記攪拌羽根5は斜めに下降し、容器2に対して斜めに挿入され、容器2の内周面及び底面に圧接する。即ち、昇降機構7によって、容器2の中央上方から容器2の底面及び内周面に対して攪拌羽根5が押し当てられる。
この圧接によって、前記攪拌羽根5は変形し、容器2の底面及び内周面と、攪拌羽根5の底面摺動部全体及び内周面摺動部全体とが隙間なく接する。この攪拌羽根5の変形については、更に後記する。
また、攪拌終了後は、攪拌羽根5は、容器2中心の上方に斜めに移動する。このとき、容器2の中心の上方に攪拌羽根5が移動するため、攪拌羽根5に付いた攪拌対象物及び被撹拌物が容器2の外に、たれ落ちるのを防止することができる。
また、前記攪拌装置1は、図4に示すように、前記容器回転手段4と攪拌羽根回転手段6を制御する制御処理部8を備えている。また、この攪拌装置1は、容器2の回転数と攪拌羽根5の回転数と前記容器2及び攪拌羽根5の回転時間とが異なる、複数の攪拌条件を記憶する記憶手段9と、攪拌装置1を操作する操作部10を備えている。
次に、前記攪拌羽根5について詳述する。
前記攪拌羽根5は、図5乃至図8に示すように、羽根部5Aと、前記羽根部5Aの上端部から上方に延設された軸部5Bとを有している。尚、前記軸部5Bの上部には、前記攪拌羽根回転手段5によって把持される把持部5B1が形成されている。
前記羽根部5Aは、前記容器底面上を摺動し、前記容器2の底面に位置する前記攪拌対象物を移動させる底面摺動部5aと、前記容器2の内周面上を摺動し、前記容器2の内周面に位置する前記攪拌対象物を移動させる内周面摺動部5bと、前記容器2内の攪拌対象物に下降流を形成する下降流形成部5cとを備えている。
具体的には、下降流形成部5cは、図5(b)に示すように、前記羽根部5Aの表裏面に形成された、上端部から下端部に向かって軸部5Bの軸線5B2方向に傾斜する傾斜面によって形成されている。また、前記傾斜面は、軸線方向に凹んだ湾曲面(図5(b)において破線で示すような、中央部分が軸線方向に凹んだ湾曲面)とするのが、攪拌対象物に対して下降流を形成する上で好ましい。
このように、下降流形成部5cが上端部から下端部に向かって軸部5Bの軸線5B2方向に傾斜する傾斜面によって形成されているため、図8に示すように、前記羽根部5Aが回転(矢印M5)すると、下降流形成部5c(傾斜面)に沿って攪拌対象物が流れ、矢印Fで示すような下降流が形成される。
また、内周面摺動部5bは、図5(a)、図7(a)に示すように、前記羽根部5Aの表裏面(下降流形成部5c)を繋ぐ側面であって、前記軸部5の軸線5B2と平行な線部から形成されている。
尚、内周面摺動部5bの断面形状(軸部5の軸線5B2と垂直方向の断面形状)は、円弧状あるいは三角形状に形成するのが好ましい。本実施形態にあっては、図6(a)に示すように、円弧状に形成されている。
また、底面摺動部5aは、図5(b)、図7(b)に示すように、前記羽根部5Aの表裏面(下降流形成部5c)の先端に形成された稜線、あるいは所定の幅を有する面であって、前記軸部5の軸線5B2と垂直に形成されている。本実施形態にあっては、図6(b)に示すように、所定の幅を有する面に形成されている。
前記攪拌羽根5の羽根部5Aと軸部5Bは、弾性率が2〜10MPa(タイプAデュロメータ硬さ50〜80)の合成ゴム材によって一体に形成されている。
このように、弾性率が2〜10MPa(タイプAデュロメータ硬さ50〜80)の合成ゴム材によって形成されているため、前記羽根部5Aが容器2の底面に圧接した際、羽根部5Aと軸部5Bが、容器2の内部形状に対応して変形する。
羽根部5Aと軸部5Bの変形について、図9に基づいて具体的に説明する。
容器2の内部は、容器によって種々の形状に形成されている。例えば、図9(a)に示すように、容器2の底面2aが内側に凸形状に形成されている場合、前記容器底面2aの凸形状の頂点部に接するように、前記羽根部5Aを位置させると、前記羽根部5Aの底面摺動部5a及び内周面摺動部5bと、容器底面2a及び容器内周面2bとの間に隙間S1、S2が生じる。
このように隙間S1、S2が生じた状態で、攪拌羽根5で攪拌しても、前記隙間S1、S2の部分は攪拌されず、攪拌が不十分な部分となる。
ここで、羽根部5Aと軸部5Bを、弾性率が2〜10MPa(タイプAデュロメータ硬さ50〜80)の合成ゴム材によって一体に形成することにより、図9(b)に示すように、昇降機構7から外力(押付け力)を受け、前記羽根部5Aが容器底面2aに圧接し、軸部5Bの軸線5B2が屈曲することにより、前記羽根部5Aの底面摺動部5aは、前記隙間S1内に進入し、前記隙間S1における容器底面2aにも圧接することで、前記隙間S1は消滅する。
また、昇降機構7から外力(押付け力)を受け、軸部5Bの軸線5B2が屈曲することにより、前記羽根部5Aの内周面摺動部5bは容器内周面2bと圧接し、前記隙間S2は消滅する。
前記したように攪拌羽根5を斜めに容器2内に挿入し、そして昇降機構7からの外力(押付け力)を与えることによって、容器2の底面2a及び内周面2bと、攪拌羽根5の底面摺動部5a全体及び内周面摺動部5b全体とが隙間なく接する。
この状態で、攪拌羽根5を回転させることにより、前記羽根部5Aの底面摺動部5a及び内周面摺動部5bによって、容器内周面及び容器底面に位置する攪拌対象物を残すことなく移動させることができ、攪拌対象物全体を均一に攪拌することができ、被攪拌物をより均一に分散(拡散)できる。
尚、弾性率が2MPa(タイプAデュロメータ硬さ50)未満の合成ゴム材にあっては変形し易く、攪拌対象物の粘度が高過ぎると、撹拌が不十分になりやすい。また、弾性率が10MPa(タイプAデュロメータ硬さ80)を超える合成ゴム材にあっては変形し難いため、容器内周面及び容器底面に位置する攪拌対象物を残すことなく移動させることが困難なため好ましくない。
前記羽根部5Aと軸部5Bの材質は合成ゴム材のうち、特にフッ素ゴム、あるいはシリコーンゴムであることが好ましい。
前記フッ素ゴムあるいはシリコーンゴムの場合、耐熱性、耐薬品性が得られるため好ましい。特に、攪拌羽根5が耐熱性を有する場合には蒸気滅菌を行うことができ、滅菌された攪拌羽根5で攪拌することができるため、好ましい。
また、図4、図10に示すように、攪拌羽根5の回転中心O5が容器2の回転中心O2に対して偏心した位置となるように、攪拌羽根5と容器2が配置される。
このように、攪拌羽根5の回転中心O5が容器2の回転中心O2に対して偏心した位置となるように、攪拌羽根5が配置されるため、図10(b)に示すように攪拌羽根5の攪拌領域Xを容器2の内部全体となすことができる。
具体的には、図10(a)に示すように、攪拌羽根5の回転中心O5が容器2の回転中心O2と同一である場合には、攪拌羽根5の幅Lが攪拌領域Xとなる。
一方、図10(b)に示すように、攪拌羽根5の回転中心O5が、容器2の回転中心O2に対して偏心した位置(攪拌羽根5の回転中心O5が容器2の回転中心O2と容器2の内周面2bとの間の位置)となるように、攪拌羽根5が配置されている場合には、前記幅Lの攪拌羽根5であっても、攪拌羽根5の攪拌領域Xを容器内部全体となすことができる。但し、前記幅Lは容器2の半径よりも大きな長さ寸法を有することが必要である。
また、図10(b)に示すように、前記容器2と前記攪拌羽根5とが夫々個別に回転(M2,M5)するように構成されている。
この容器2と前記攪拌羽根5の回転方向M2,M5は、同一方向あるいは逆方向のいずれでも良いが、特に、前記回転が逆方向の場合には、底面摺動部5a及び内周面摺動部5bと、容器底面2a及び容器内周面2bとの相対速度が大きくなり、容器底面2a及び容器内周面2bに位置する攪拌対象物を移動させる回数も増すため、より攪拌することができる。
図11に基づいて、前記攪拌羽根5の内周面摺動部5bが、容器2の内周面に位置する攪拌対象物が移動する状態を説明する。
図11(a)に示す、容器2の内周面全体に攪拌対象物Aが位置している初期の状態から、前記容器2及び前記攪拌羽根5が回転すると、図11(b)に示すように、攪拌羽根5の内周面摺動部5bが容器内周面2bを摺動し、容器内周面2bに位置する攪拌対象物Aが容器2の中心部方向に移動する。
更に、容器2の中心部方向に移動した攪拌対象物Aは、攪拌羽根5の下降流形成部5cによって下降し、攪拌がなされる。
次に、制御処理部8、記憶手段9について詳述する。
前記制御処理部8は、記憶手段9に記憶されている複数の攪拌条件から少なくとも一つの攪拌条件を選択し、その攪拌条件から攪拌条件パターンを形成し、攪拌条件パターンの容器の回転数、攪拌羽根の回転数、前記容器及び攪拌羽根の回転時間によって、前記容器回転手段4と攪拌羽根回転手段6を制御するように構成されている。
この記憶手段9には、前記容器内に収容される攪拌対象物の粘度ごとに、容器2の回転数、攪拌羽根5の回転数、前記容器2及び攪拌羽根5の回転時間が決められた、複数の攪拌条件が記憶されている。
前記容器2の回転は、容器内の攪拌位置を移動させる役割があり、攪拌対象物の粘度によって回転速度を決定する。例えば、攪拌対象物の粘度が高く、前記容器の回転速度及び攪拌羽根の回転速度が共に早い場合には、容器から攪拌対象物が溢れ出てしまうため、容器側の回転速度が遅くなるように設定される。
また、前記攪拌羽根5は、攪拌対象物と被攪拌物とを混ぜる役割があり、攪拌対象物の粘度が低く、攪拌羽根5の回転速度が速い場合には、攪拌対象物が飛び散るため、攪拌羽根5の回転速度が遅くなるように設定される。
このように、攪拌対象物の粘度により、容器の回転速度と攪拌羽根の回転速度を調整する必要があるため、攪拌対象物の粘度ごとに、容器2の回転数、攪拌羽根5の回転数、前記容器2及び攪拌羽根5の回転時間が決められる。
また、攪拌する際に、必ずしも一つの攪拌条件を選択し、一つの攪拌条件パターンを構成する必要はなく、複数の攪拌条件から異なる複数の攪拌条件を選択し、一つの攪拌条件パターンを構成し、この攪拌条件パターンにしたがって、攪拌装置を動作させても良い。
例えば、攪拌対象物の特定の粘度について、
攪拌条件1:容器2の回転数が400rpm、攪拌羽根5の回転数が2rpm,前記容器2及び攪拌羽根5の回転時間が30秒,
攪拌条件2:容器2の回転数が500rpm、攪拌羽根5の回転数が30rpm,前記容器2及び攪拌羽根5の回転時間が5秒,
攪拌条件3:容器2の回転数が300rpm、攪拌羽根5の回転数が10rpm,前記容器2及び攪拌羽根5の回転時間が5秒,
攪拌条件4:容器2の回転数が200rpm、攪拌羽根5の回転数が1rpm,前記容器2及び攪拌羽根5の回転時間が60秒,
を用意し、記憶手段9に記録する。
同様に、異なる粘度についても、複数の攪拌条件を用意し、記憶手段9に記録する。
そして、前記容器内に収容される攪拌対象物の粘度によって、特定の複数の(例えば、前記攪拌条件1〜4)のいずれかを選択し、前記選択した攪拌条件に基づいて攪拌条件パターンを構成し、前記攪拌対象物を攪拌する。
また、例えば、前記攪拌条件1〜4から異なる攪拌条件1,2,3を選択し、組み合わせることにより攪拌条件パターンP1を構成し、あるいは前記攪拌条件1〜4から異なる攪拌条件1,2,4を選択し、組み合わせることにより攪拌条件パターンP2を構成し、前記攪拌条件パターンP1、P2のいずれかを選択し、攪拌装置1により攪拌対象物を攪拌しても良い。
次に、本発明にかかる攪拌装置の動作、作用について説明する。
作業者は、攪拌対象物及び被攪拌物を収容した容器2を、攪拌装置1の容器保持手段3に載置し、保持させる。
続いて、作業者は、図1に示す操作部10の電源スィッチ10aを操作し電源を入れると共に、攪拌条件パターン選択レバー10bを操作し、攪拌対象物の粘度に応じた攪拌条件パターンを選択する。
その後、攪拌羽根5を手動で斜めに下降させ、容器2内に挿入し、図9(b)に示すように、前記羽根部5Aを容器底面2aに圧接させる。
このとき、前記軸部5Bの軸線5B2が屈曲し、羽根部5Aが変形することにより、前記羽根部5Aの底面摺動部5aは、容器底面2aと容器内周面2bとの間の隙間S1内に進入し、前記隙間S1における容器底面2aに圧接することで、前記隙間S1は消滅する。
また、昇降機構7から外力(押付け力)を受け、軸部5Bの軸線5B2が屈曲することにより、前記羽根部5Aの内周面摺動部5bは容器内周面2bと圧接し、前記隙間S2は消滅する。
このように攪拌羽根5を斜めに容器2内に挿入すると、容器2の底面2a及び内周面2bと、攪拌羽根5の底面摺動部5a全体及び内周面摺動部5b全体とが隙間なく接する。
そして、この状態で、図1に示す動作開始ボタン10cを押し、攪拌羽根回転手段6と、前記容器2を回転させる容器回転手段4を動作させ、前記攪拌条件パターンに基づいた、容器2の回転数、攪拌羽根5の回転数,前記容器2及び攪拌羽根5の回転時間(攪拌時間)で攪拌がなされる。
このとき、前記羽根部5Aの底面摺動部5a及び内周面摺動部5bによって、容器内周面2b及び容器底面2aに位置する攪拌対象物を残すことなく移動させながら、攪拌することができる。
攪拌時間終了後、攪拌羽根5を手動によって上昇させ、前記容器2と干渉しない位置に置く。このとき、攪拌羽根5は容器2中心の上方に斜めに移動する。即ち、容器2の中心の上方に攪拌羽根5が移動するため、攪拌羽根5に付いた攪拌対象物及び被撹拌物が容器2の外に、たれ落ちるのを防止することができる。
そして、攪拌羽根5が容器2と干渉しない位置に置かれた後、容器2は、攪拌装置1の容器保持手段3から取り外される。
尚、攪拌羽根5を手動で斜めに下降、上昇させる場合を例にとって説明したが、攪拌羽根5を自動で斜めに下降、上昇させるものであっても良い。
この攪拌装置1にあっては、攪拌羽根5によって、容器底面2a及び容器内周面2bに位置する攪拌対象物を移動させ、更に攪拌対象物の容器内下方向への流れを形成するため、容器2内の全体をより均一に攪拌できる。
特に、攪拌対象物が高粘度のものや半固形状のものの場合には、容器底面部2a及び容器内周面2bに攪拌対象物が位置し易く、均一に攪拌し難いが、攪拌羽根5によって前記攪拌対象物を移動させて、攪拌するため、より均一に攪拌することができる。
また、この攪拌装置1では、複数の攪拌対象物のサンプルを攪拌しても、各サンプルにおいて均一に攪拌でき、例えば作業者が硝子棒等を用いて複数のサンプルを手で攪拌する場合よりも効率的に均一に攪拌することができる。
尚、この攪拌装置1は、粘性のあるものから半固形状のもので、粘度が3000〜500000mPa・s、好ましくは3000〜300000mPa・sの攪拌対象物を対象とした、攪拌に好適に用いることができる。
攪拌対象物の粘度は、B型デジタル粘度計(芝浦セムテック株式会社販売)を用い、攪拌対象物50g、温度30±1℃であって、低粘度〜中粘度(例えば3000mPa・s)の場合にはVDA2型、12rpm、ローターNo.3で測定を行い、高粘度の場合にはVDH2型 10rpm、ローターNo.7で測定を行った場合の粘度である。
次に、攪拌装置の攪拌性能評価について説明する。
攪拌装置は、攪拌羽根の形状、攪拌羽根の回転数、容器の回転数、攪拌時間等によって、攪拌対象物内における被攪拌物の分散度合(混合度合)が異なる。
即ち、異なる形状の攪拌羽根を有する攪拌装置は当然のこと、同一の攪拌装置であっても、攪拌時間等によって被攪拌物の分散度合(混合度合)が異なり、攪拌装置自体の攪拌性能評価を客観的に判断することができなかった。更に言えば、攪拌装置自体の攪拌性能評価について具体的な基準が無く、作業者の主観により評価されていた。
ここでは、攪拌装置の攪拌性能評価を客観的に判断できる攪拌装置の攪拌性能評価試験を提案するものであり、本発明にかかる攪拌装置は、以下に説明する攪拌性能評価試験の結果、ばらつき率が40%以下の攪拌性能評価をもつものである。
この攪拌性能評価の試験方法は、円筒状容器に攪拌対象物を入れ、更に、被攪拌物である任意の粒状紛体を攪拌対象物内に入れるステップと、前記容器をセットし、攪拌を行うステップと、前記攪拌終了後、容器内の所定のポイントをサンプリングし、攪拌対象物を抽出するステップと、前記抽出したサンプルを、顕微鏡等を用い拡大し、任意領域内の粒状紛体の個数を計測し、平均個数(平均値)及び標準偏差を算出するステップと、攪拌対象物、被攪拌物の密度、体積及び任意領域の体積より任意領域内に収まる粒個数(理論値)値を算出し、前記サンプルの被攪拌物の平均個数(平均値)に標準偏差を加えた個数(値)及び平均値から標準偏差を差し引いた個数(値)から前記理論粒個数値を差し引き、差分が大きい方をばらつき率の算出に用い、(平均値に標準偏差を加えた値あるいは平均値から標準偏差を差し引いた値から理論値を差し引いた差分が大きい数値)/理論値×100からばらつき率を求めるステップとを備えている点に特徴がある。
前記攪拌性能評価試験は以下の条件下で行われる。
まず、内径45mm、深さ43mmの円筒状容器に、攪拌対象物として、粘度8000〜12000mPa・s、密度900〜1100kg/mのクリームを、30gを入れる。更に、被攪拌物である直径0.03〜0.07mm、平均直径0.04〜0.06mm、密度2200〜2500kg/mのガラスビーズ、1gを攪拌対象物内に入れる。尚、円筒状容器の底面は平面とし、底面が凹形状、あるいは凸形状のものは用いない。
次に、試験対象の攪拌装置に前記容器をセットし、攪拌を行う。
このとき、攪拌羽根の回転数を300〜500rpmとし、攪拌時間を1〜5分とする。尚、容器が回転する場合には、撹拌羽根の回転方向と逆方向に回転させ、回転数は20〜40rpmとする。
具体的には、まず、内径45mm、深さ43mmの円筒状容器に、粘度10000mPa・s、密度959kg/mのクリームを、30gを入れる。更に、直径0.0391〜0.0580mm、平均直径0.0486mm、密度2500kg/mのガラスビーズ、1gを攪拌対象物内に入れる。尚、円筒状容器の底面は平面とし、底面が凹形状、あるいは凸形状のものは用いない。
攪拌羽根の回転数は、400rpmとし、攪拌時間を1分とする。尚、容器が回転する場合には、撹拌羽根の回転方向と逆方向に回転させ、回転数は30rpmとする。
前記攪拌終了後、図12(a)に示すように、攪拌対象の底部外側(容器底面部内周面側)を所定間隔もって、サンプリングポイント8点(SA〜SH)において、攪拌対象物を0.01g抽出する、サンプリングを行う。
また、攪拌対象の上部外側(容器上部内周面側)を所定間隔もって、8点(SI〜SP)で、攪拌対象物を0.01g抽出する、サンプリングを行う。
尚、攪拌対象の底部のサンプリングは、図12(b)に示すように、容器底面内周面に近接した部分をサンプリングする。既に説明したように、容器底面内周面近傍は隙間が生じやすく、攪拌が不十分なるため、容器底面内周面に近接した部分をサンプリングポイントとしている。
また、攪拌対象の上部のサンプリングは、図12(c)に示すように、容器内周面からやや離れた中央部分をサンプリングポイントとしている。容器底面内周面からやや離れた中央部分が容器全体の攪拌状態をほぼ表しており、この部分の攪拌状態を評価することで、容器全体(容器底面、内周面に近接した部分を除く)の攪拌状態を評価することができる。
そして、図13に示すように、抽出したサンプルを10倍の顕微鏡で拡大し、2mm×2mmの領域内のガラスビーズgの個数を計測する。
また、攪拌対象物、被攪拌物の密度、体積及び任意領域の体積より任意領域内に収まる粒個数(理論値)値を算出する。この任意領域内の被攪拌物個数(理論値)を算出するためにまず、円筒容器に入れる攪拌対象物質量/攪拌対象物密度から円筒容器内に入れる攪拌対象物の体積を算出する。
即ち、円筒容器内に入れる攪拌対象物の体積は、下記式から算出される。
円筒容器内クリーム体積=円筒容器内のクリーム質量/クリーム密度
同様に、攪拌対象物に入れる被攪拌物質量/被攪拌物密度から攪拌対象物に入れる被攪拌物の体積を算出する。
即ち、攪拌対象物に入れる被攪拌物の体積は、下記式から算出される。
クリーム内ガラスビーズ体積=クリーム内ガラスビーズ質量/ガラスビーズ密度
次に、任意領域面積×任意領域厚さから任意領域の体積を算出する。このとき任意領域面積には計測範囲である2mm×2mm、任意領域厚さには攪拌対象物の最大直径を用いる。即ち、任意領域体積は、下記式から算出される。
任意領域体積=(2mm×2mm)×ガラスビーズ最大直径
そして、任意領域体積/(円筒容器内攪拌対象物体積+円筒容器内被攪拌物体積)×円筒容器内被攪拌物体積から任意領域内の被攪拌物体積を算出する。
即ち、任意領域内の被攪拌物体積は、下記式から算出される。
任意領域内ガラスビーズ体積=任意領域体積/(円筒容器内クリーム体積+円筒容器内ガラスビーズ体積)×(円筒容器内ガラスビーズ体積)
さらに、任意領域内被攪拌物体積/被攪拌物単位体積より任意領域内の被攪拌物個数を算出する。このとき被攪拌物単位体積には球の体積を算出する公式である4/3×π×(球半径)を用いる。
即ち、任意領域内の被攪拌物個数(理論値)は、下記式から算出される。
任意領域内のガラスビーズ個数=任意領域内ガラスビーズ体積/ガラスビーズ単位体積
尚、ガラスビーズ単位体積は、(4/3×π×(ガラスビーズ平均直径/2))で表される。
前記サンプルの被攪拌物の平均個数(平均値)に標準偏差を加えた個数(値)及び平均値から標準偏差を差し引いた個数(値)から前記理論粒個数値を差し引き、差分が大きい方をばらつき率の算出に用い、
(平均値に標準偏差を加えた値あるいは平均値から標準偏差を差し引いた値から理論値を差し引いた差分が大きい数値)/理論値×100からばらつき率を求める。
即ち、ばらつき率は、下記式から求められる。
ばらつき率=(平均値に標準偏差を加えた値あるいは平均値から標準偏差を差し引いた値から理論値を差し引いた差分が大きい数値)/理論値×100
このばらつき率について、表1を一例に挙げて具体的に説明する。
また、前記式を用い任意領域内のガラスビーズ個数を算出したところ、
円筒容器内クリーム体積は、円筒容器内クリーム質量(3.00×10−3kg)/クリーム密度(9.59×10kg/m)=3.13×10−5であった。
クリーム内ガラスビーズ体積は、クリーム内ガラスビーズ質量(1.00×10−3kg)/ガラスビーズ密度(2.5×10kg/m)=4.00×10−7であった。
任意領域体積は、(2mm×2mm)×ガラスビーズ最大直径(5.80×10−5)=2.32×10−10であった。
任意領域内ガラスビーズ体積は、任意領域体積(2.32×10−10)/(円筒容器内クリーム体積(3.13×10−5)+円筒容器内ガラスビーズ体積(4.00×10−7))×(円筒容器内ガラスビーズ体積(4.00×10−7))=2.93×10−12であった。
任意領域内のガラスビーズ個数は、任意領域内ガラスビーズ体積(2.93×10−12)/ガラスビーズ単位体積(4/3×π×(4.86×10−5m/2))=48.9個であった。
尚、(ガラスビーズ平均直径は、4.86×10−5mであった。
そして、試験対象の攪拌装置を用いて、上記評価試験を実施し、サンプルポイントSA〜SPのサンプルSa〜Spの16点におけるガラスビーズの個数を計測し、平均値及び標準偏差を算出する。その結果、平均値は53.0、標準偏差は9.6であった。
また、サンプルSa〜Spの16点におけるガラスビーズの平均個数(平均値)に標準偏差を加えた個数は62.6個であり、ガラスビーズの平均値から標準偏差を差し引いた個数は43.4個であった。
これら平均個数(平均値)に標準偏差を加えた個数、平均値から標準偏差を差し引いた個数から理論値を差し引き、差分が大きい数値(大差分)をばらつき率の算出に用いる。表1に示した場合は、平均個数(平均値)に標準偏差を加えた個数と理論値の差分が13.7、平均値から標準偏差を差し引いた個数と理論値の差分が5.5であるため、13.7を用いてばらつき率を求める。
即ち、試験対象の攪拌装置のばらつき率は、13.7/48.9×100=28%となる。
Figure 2016190205
このように、試験対象の攪拌装置を、同一条件で攪拌し、ガラスビーズのばらつき率を求めることにより、前記攪拌装置の攪拌性能の良し悪しを、客観的に評価することができる。
尚、上記した前記攪拌性能評価試験における、容器の内径、深さ、攪拌対象物としてのクリーム、被攪拌物としてのガラスビーズ、攪拌羽根の回転数、攪拌時間、容器の回転数、回転時間等は、一例であって、これに限定されるものではなく、変更しても良い。
但し、上記条件を変更した場合には、ばらつき率が異なった数値になるため、統一した条件下で、各攪拌装置の攪拌性能評価試験を行い、夫々の攪拌装置の攪拌性能の良し悪しを客観的に評価することが望ましい。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記に示す実施例により制限されるものではない。
(実施例1)
図1乃至図4に示す装置を用い、図5乃至図7に示す弾性率5.5MPa(タイプAデュロメータ硬さ70)のシリコーンゴムからなる攪拌羽根を用いて、容器の回転中心と攪拌羽根の回転中心をずらして配置し、攪拌羽根の底面摺動部と、内周面摺動部が、容器底面、容器内周面に接するように位置させた。そして、上記した攪拌性能評価試験の条件下で、攪拌性能評価試験を行ったところ、表1に示す結果となり、ばらつき率が28%であった。
(実施例2)
実施例1の攪拌羽根を、弾性率2MPa(タイプAデュロメータ硬さ50)のシリコーンゴムからなる攪拌羽根に変更した以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
そして、上記攪拌性能評価試験を行ったところ、ばらつき率が25%であった。
(実施例3)
実施例1の攪拌羽根を、弾性率10MPa(タイプAデュロメータ硬さ80)のシリコーンゴムからなる攪拌羽根に変更した以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
そして、上記攪拌性能評価試験を行ったところ、ばらつき率が23%であった。
(比較例1)
実施例1の攪拌羽根を、弾性率1.5MPa(タイプAデュロメータ硬さ40)のシリコーンゴムからなる攪拌羽根に変更した以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
そして、上記攪拌性能評価試験を行ったところ、ばらつき率が44%であった。
(比較例2)
実施例1の攪拌羽根を、弾性率20MPa(タイプAデュロメータ硬さ90)のシリコーンゴムからなる攪拌羽根に変更した以外は、実施例1と同様にして試験を行った。
そして、上記攪拌性能評価試験を行ったところ、ばらつき率が59%であった。
(参考例1)
攪拌羽根を用いることなく、直径6mmの硝子棒を用いて、作業者の手により、容器内を1分間攪拌した。
その結果、ばらつき率が34%であった。
以上のように、前記攪拌羽根が、前記容器底面上を摺動し、前記容器底面に位置した前記攪拌対象物を移動させる底面摺動部と、前記容器側面上を摺動し、前記容器側面に位置した前記攪拌対象物を移動させる内周面摺動部と、前記容器内の攪拌対象物に下降流を形成する下降流形成部とを備えた攪拌装置は、ばらつき率が小さく、容器内全体が均一な攪拌がなされ、被攪拌物を均一に分散することができることが確認できた。
また、前記攪拌羽根の羽根部と軸部が、弾性率が2〜10MPa(タイプAデュロメータ硬さ50〜80)のシリコーンゴムで形成されている場合には、ばらつき率が小さく、容器内全体が均一な攪拌がなされ、均一に分散することができることが確認できた。
1 攪拌装置
2 容器
2a 底面
2b 内周面
3 容器保持部
4 容器回転手段
5 攪拌羽根
5A 羽根部
5B 軸部
5B2 軸線
5a 底面摺動部
5b 内周面摺動部
5c 下降流形成部
6 攪拌羽根回転手段
7 昇降機構
8 制御処理部
9 記憶手段
10 操作部

Claims (10)

  1. 容器内に、粘性を有する攪拌対象物乃至半固形状の攪拌対象物が収容され、前記攪拌対象物内に被攪拌物を入れ、回転する攪拌羽根で攪拌対象物を攪拌する攪拌装置において、
    前記攪拌羽根は、前記容器底面上を摺動し、前記容器底面に位置する前記攪拌対象物を移動させる底面摺動部と、前記容器内周面上を摺動し、前記容器内周面に位置する前記攪拌対象物を移動させる内周面摺動部と、攪拌対象物の前記容器内下方への流れを形成する下降流形成部と有し、
    更に、前記攪拌羽根を回転させる羽根回転手段と、前記容器を回転させる容器回転手段とを備え、前記攪拌羽根の回転中心が容器の回転中心に対して偏心し、前記攪拌羽根と前記容器とが夫々個別に回転することを特徴とする攪拌装置。
  2. 前記攪拌対象物内における被攪拌物のばらつき率が、40%以下であることを特徴とする請求項1記載の攪拌装置。
  3. 攪拌対象物の粘度が、3000〜500000mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の攪拌装置。
  4. 前記攪拌羽根は、羽根部と、前記羽根部の上端部から上方に延設された軸部とを備え、
    前記羽根部は、
    前記羽根部の表裏面に形成された、上端部から下端部に向かって軸部の軸線方向に傾斜する傾斜面からなる下降流形成部と、
    前記羽根部の表裏面を繋ぐ側面に形成された、前記軸部の軸線と平行な線部を有する内周面摺動部と、
    前記羽根部の下端部に形成された底面摺動部と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
  5. 前記羽根部の表裏面に形成された、上端部から下端部に向かって軸部の軸線方向に傾斜する傾斜面は、前記軸線方向に凹んだ湾曲面として形成されていることを特徴とする請求項4記載の攪拌装置。
  6. 前記攪拌羽根の羽根部と軸部は、弾性率が2〜10MPa(タイプAデュロメータ硬さ50〜80)の合成ゴム材によって一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の攪拌装置。
  7. 前記攪拌羽根の羽根部と軸部は、フッ素ゴム、あるいはシリコーンゴムで形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の攪拌装置。
  8. 前記羽根回転手段と容器回転手段によって、前記攪拌羽根と前記容器とが夫々逆方向に回転することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載された攪拌装置の制御方法において、
    攪拌羽根回転数と、容器回転数と、前記攪拌羽根及び容器の回転時間とが異なる、複数の攪拌条件を用意する工程と、
    前記容器内に収容される攪拌対象物の粘度によって、前記複数の攪拌条件から少なくとも一つの攪拌条件を選択し、前記選択した攪拌条件によって攪拌条件パターンを構成する工程と、
    前記攪拌条件パターンによって、前記攪拌対象物を攪拌することを特徴とする攪拌装置の制御方法。
  10. 前記容器内に収容される攪拌対象物の粘度によって、前記複数の攪拌条件から少なくとも一つの攪拌条件を選択し、前記選択した攪拌条件によって攪拌条件パターンを構成する工程において、
    前記複数の攪拌条件から異なる複数の攪拌条件を選択し、前記選択した攪拌条件を組み合わせることにより攪拌条件パターンを構成し、攪拌条件パターンによって、前記攪拌対象物を攪拌することを特徴とする請求項9に記載の攪拌装置の制御方法。
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