JP2016187817A - 2ワイヤ溶接のクレータ制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】2ワイヤ溶接のクレータ制御において、クレータ部を健全な形状に整形すること。
【解決手段】定常期間中は、溶接ワイヤと母材との間にアークを発生させると共に、このアークによって形成された溶融池に溶接ワイヤから後方の挿入位置にフィラーワイヤを送給して行う2ワイヤ溶接のクレータ制御方法において、クレータ制御期間中は、溶接ワイヤ及び前記フィラーワイヤの送給を継続し、アークを発生させたままで、溶接ワイヤの溶接狙い位置aを停止させ、フィラーワイヤの挿入位置bを溶接狙い位置aを中心点として破線で示す円周上を回転させながらクレータ制御を行う。これにより、フィラーワイヤを全円周方向から挿入することができるので、健全な形状のクレータ部を形成することができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、定常期間中は、溶接ワイヤと母材との間にアークを発生させると共に、このアークによって形成された溶融池に溶接ワイヤから後方の挿入位置にフィラーワイヤを送給して行う2ワイヤ溶接のクレータ制御方法に関するものである。
先行する消耗電極アークによって形成された溶融池に、斜め後方からフィラーワイヤを接触させながら送給して行う2ワイヤ溶接方法は、消耗電極アークの溶接ワイヤとフィラーワイヤとの2つのワイヤを使用するために高速溶接性及び高溶着性に優れている。特に、2ワイヤ溶接方法によって高速溶接を行うときには、ハンピングビードになるのを防止するために、フィラーワイヤを消耗電極アークよりも後方から溶融池に接触させて送給することが重要である。これは、フィラーワイヤを消耗電極アークの発生部内に送給して溶融すると、溶融池の冷却効果が小さくなり、かつ、フィラーワイヤによって溶融池の後半部の盛り上がりを抑えることもできないためにハンピングビードを抑制する効果はほとんどないからである。これに対して、フィラーワイヤをアークの発生部外の溶融池の後半部に接触させて送給し、溶融池の熱によって溶融するようにすれば溶融池が効率よく冷却され、かつ、フィラーワイヤによって溶融池後半部が抑えられてハンピングビードの形成を抑制することができる。以下の説明においては、消耗電極アークのワイヤを溶接ワイヤと記載し、フィラーワイヤとは区別することにする。消耗電極アークを発生させる溶接法としては、炭酸ガスアーク溶接法、マグ溶接法、ミグ溶接法、パルスマグ溶接法、パルスミグ溶接法、消耗電極交流パルスアーク溶接法等が使用される。
2ワイヤ溶接の溶接終了時は、溶接トーチを停止させた状態で、フィラーワイヤの送給を停止又は減速して消耗電極アークによってクレータ制御を行う。クレータ制御期間中にフィラーワイヤの送給を停止又は減速する理由は、以下のとおりである。クレータ制御期間中は、健全なクレータ部を形成するために、溶接ワイヤの送給速度を定常期間よりも40〜70%程度に減速する。この結果、消耗電極アークを通電する溶接電流の値も小さくなるので、溶融池の温度も定常期間よりも低下する。このために、クレータ制御期間中にフィラーワイヤを溶融池に定常期間中と同一の送給速度で送給すると充分に溶融することができずに、溶融不良となってしまう場合があるからである。したがって、2ワイヤ溶接では、クレータ制御期間中はフィラーワイヤの送給を停止又は減速してクレータ制御を行うのが一般的であった。
これに対して、特許文献1の発明では、クレータ制御期間中はフィラーワイヤに溶接電流を通電して加熱することによって、クレータ制御期間中も定常期間中と同一の送給速度でフィラーワイヤの送給を継続するものである。
特許文献2の発明では、クレータ制御期間中は溶接ワイヤとフィラーワイヤとのワイヤ間距離を短くしてアークに近づけることによって、クレータ制御期間中も定常期間中と同一の送給速度でフィラーワイヤの送給を継続するものである。
ここで、クレータ制御とは、溶接終了前に、消耗電極アークの圧力によって窪んだ状態にある溶融池に溶接ワイヤ及びフィラーワイヤを充填して健全なビード部を形成することである。
2ワイヤ溶接は、高溶着溶接が可能であるために、1.5m/min以上の高速溶接で使用されることが多い。高速溶接において、溶融地からの熱によってフィラーワイヤを安定して溶融するためには、アークに大電流を通電して大きな溶融池を形成する必要がある。このために、溶融池は消耗電極アークからの圧力によって大きく窪んだ状態となる。このような状態において、上述した従来技術のようにフィラーワイヤの送給速度を減速すると、大きな窪みを埋めることができずに、不健全な形状のクレータ部となる場合があった。特許文献1及び2の発明を適用すればフィラーワイヤを減速する必要がなくなり、大きな窪みを埋めることができる。しかし、特許文献1の発明を適用するためには、フィラーワイヤに溶接電流を通電するためにもう1台の溶接電源が必要になる。特許文献2の発明を適用するためには、ワイヤ間距離を短くするための駆動機構が必要になる。どちらの場合でも溶接装置が高額になるという問題があった。
特開2013−59767号公報 特開2013−75303号公報
そこで、本発明では、2ワイヤ溶接によって高速溶接を行うときに、特別な装置を追加することなく、クレータ部を健全な形状に整形することができる2ワイヤ溶接のクレータ制御方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
定常期間中は、溶接ワイヤと母材との間にアークを発生させると共に、このアークによって形成された溶融池に前記溶接ワイヤから後方の挿入位置にフィラーワイヤを送給して行う2ワイヤ溶接のクレータ制御方法において、
クレータ制御期間中は、前記溶接ワイヤ及び前記フィラーワイヤの送給を継続し、前記アークを発生させたままで、前記溶接ワイヤの溶接狙い位置を停止させ、前記フィラーワイヤの前記挿入位置を前記溶接狙い位置を中心点として回転させながらクレータ制御を行う、
ことを特徴とする2ワイヤ溶接のクレータ制御方法である。
請求項2の発明は、前記フィラーワイヤの前記挿入位置を、1回転させる、
ことを特徴とする請求項1記載の2ワイヤ溶接のクレータ制御方法である。
請求項3の発明は、前記フィラーワイヤの前記挿入位置を、1回転させた後に逆向きにもう1回転させる、
ことを特徴とする請求項1記載の2ワイヤ溶接のクレータ制御方法である。
請求項4の発明は、前記フィラーワイヤの前記挿入位置を、所定角度で一時停止させながら回転させる、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2ワイヤ溶接のクレータ制御方法である。
本発明によれば、クレータ制御期間中は、フィラーワイヤを、従来技術のように1方向から挿入するのではなく、全円周方向から挿入することができるので、フィラーワイヤが減速して溶着量が減少していても健全な形状のクレータ部を形成することができる。このときに、特別な装置の追加を必要としない。
本発明の実施の形態1に係る2ワイヤ溶接のクレータ制御方法を実施するための溶接装置の構成図である。 本発明の実施の形態1に係る2ワイヤ溶接のクレータ制御方法を説明するための図1における各信号のタイミングチャートである。 クレータ制御期間Tc中のフィラーワイヤの挿入位置bの回転の様子を示す溶接終了部の模式図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
実施の形態1の発明では、2ワイヤ溶接のクレータ制御方法において、クレータ制御期間中は、溶接ワイヤ及びフィラーワイヤの送給を継続し、消耗電極アークを発生させたままで、溶接ワイヤの溶接狙い位置を停止させ、フィラーワイヤの挿入位置を溶接狙い位置を中心点として回転させながらクレータ制御を行う。
図1は、本発明の実施の形態1に係る2ワイヤ溶接のクレータ制御方法を実施するための溶接装置の構成図である。以下、同図を参照して、各構成物について説明する。
本溶接装置は、破線で囲まれた溶接トーチWT、溶接電源PS、ロボット制御装置RC及びロボット(図示は省略)を備えている。
溶接トーチWTは、溶接ワイヤ1aに給電するための給電チップ4a、フィラーワイヤ1bを挿入位置にガイドするための送給ガイド4bを備えている。
溶接トーチWTの先端からは炭酸ガス、炭酸ガスとアルゴンガスとの混合ガス等のシールドガス(図示は省略)が噴出している。溶接トーチWTは、ロボット(図示は省略)によって保持されて、ロボット制御装置RC内に記憶されている作業プログラムに従って、溶接線に沿って移動される。したがって、溶接トーチWTの移動に伴い溶接ワイヤ1a及びフィラーワイヤ1bが共に移動する。以下の説明において、溶接トーチWTの移動と溶接ワイヤ1a及びフィラーワイヤ1bの移動とは同じことを意味している。
溶接ワイヤ1aは、溶接ワイヤ用送給モータWMに結合された溶接ワイヤ用送給ロール5aの回転によって溶接トーチWT内を溶接ワイヤ送給速度Wsで送給されて、母材2との間で消耗電極アーク3aが発生する。
フィラーワイヤ1bは、フィラーワイヤ用送給モータFMに結合されたフィラーワイヤ用送給ロール5bの回転によって送給ガイド4b内をフィラーワイヤ送給速度Fsで送給されて、溶融池2aの後半部に接触された状態で挿入される。同図の溶接部は、定常期間の状態を示している。
溶接ワイヤ1aと母材2との間には溶接電圧Vwwが印加されており、消耗電極アーク3a中を溶接電流Iwwが通電している。同図では、溶接方向は左方向となっている。先行する消耗電極アーク3aによって溶融池2aが形成される。フィラーワイヤ1bと母材2との間には電圧は印加されておらず、電流も通電していない。フィラーワイヤ1bは、溶融池2aの後半部に接触した状態で挿入されており、溶融池2aからの熱によって溶融される。フィラーワイヤ1bは、消耗電極アーク3aの発生部外を送給される。これは、上述したように、フィラーワイヤ1bが消耗電極アーク3aによって直接溶融されることを防止するためである。溶接ワイヤ1aの前進角は、0〜30°程度の範囲であり、同図では面直(0°)の場合である。フィラーワイヤ1bの前進角は、20〜50°の範囲である。すなわち、フィラーワイヤ1bは、斜め前方方向に挿入されることになる。
溶接ワイヤ1aの送給方向を示す中心線を一点鎖線で示しており、この中心線が母材2表面と交わる点が、溶接狙い位置aとなる。フィラーワイヤ1bの挿入位置は、挿入位置bとなっている。この挿入位置bは、消耗電極アーク3aの発生部よりも後方で、かつ、溶融池2aの後方端部よりも前方となる範囲に設定される。溶接狙い位置aと挿入位置bとの距離がワイヤ間距離Lw(mm)となる。ここで、溶接中の溶接トーチWTの位置は、上記の溶接狙い位置aとなる。
溶接電源PSは、給電チップ4aを介して溶接ワイヤ1aと母材2との間に、溶接電圧Vwwを印加することにより、溶接電流Iwwを通電して消耗電極アーク3aを発生させるための電源である。溶接電源PSからは、溶接ワイヤ用送給モータWMに対して溶接ワイヤ送給制御信号Wcが送られ、溶接ワイヤ送給速度Wsが制御されると共に、フィラーワイヤ用送給モータFMに対してフィラーワイヤ送給制御信号Fcが送られ、フィラーワイヤ送給速度Fsが制御される。溶接電源PSから給電チップ4aを介して溶接電圧Vwwが印加されるときは、溶接ワイヤ1aが+側とされる。給電チップ4aの先端と溶接狙い位置aとの距離が給電チップ・母材間距離Lt(mm)となる。溶接電源PSは、通常と同様に定電圧特性の電源である。したがって、溶接電流(平均値)Iwwは、溶接ワイヤ送給速度Ws及び給電チップ・母材間距離Ltによってその値が定まる。
ロボット制御装置RCは、起動信号On及びクレータ制御期間信号Tcsを上記の溶接電源PSに出力する。起動信号Onは、定常期間及びクレータ制御期間の間Highレベルになり、溶接電源の出力及び送給を制御する。クレータ制御期間信号Tcsは、溶接トーチWTが予め教示された溶接線上の溶接終了位置に到達した時点から予め定めたクレータ制御期間Tc中はHighレベルとなる。
図2は、本発明の実施の形態1に係る2ワイヤ溶接のクレータ制御方法を説明するための図1における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は起動信号Onの時間変化を示し、同図(B)はクレータ制御期間信号Tcsの時間変化を示し、同図(C)はフィラーワイヤの挿入位置の回転速度Sfの時間変化を示し、同図(D)は溶接ワイヤ送給速度Wsの時間変化を示し、同図(E)は溶接電流Iwwの時間変化を示し、同図(F)はフィラーワイヤ送給速度Fsの時間変化を示す。フィラーワイヤ1bには、定常期間及びクレータ制御期間の両期間共に電圧は印加しておらず、電流も通電していない。以下、同図を参照して説明する。
同図において、時刻t1以前は定常期間であり、溶接トーチWTは予め定めた溶接速度で溶接線に沿って移動しながら、後述するように定常溶接が行われる。時刻t1〜t2の期間が予め定めたクレータ制御期間Tcであり、後述するようにクレータ制御が行われる。時刻t2の後に、溶接ワイヤの溶着を防止するための50ms程度の短いアンチスティック処理を行う期間があるが、このアンチスティック処理については従来と同様であり、本発明とは直接には関係しないので、ここでは省略している。
(1)時刻t1以前の定常期間
時刻t1以前の定常期間中は、溶接トーチWTが予め教示された溶接終了位置に到達していないので、同図(A)に示すように、起動信号OnはHighレベル(起動)となり、同図(B)に示すように、クレータ制御期間信号TcsはLowレベルとなる。定常期間中は、溶接トーチWTは予め定めた溶接速度で溶接線に沿って移動している。同図(D)に示すように、溶接ワイヤ送給速度Wsは予め定めた値Ws1となっている。同図(E)に示すように、溶接電流Iwwは、溶接ワイヤ送給速度Ws1によって定まる値I1となる。同図(F)に示すように、フィラーワイヤ送給速度Fsは予め定めた値Fs1となっている。フィラーワイヤ送給速度Fs1は、溶接ワイヤ送給速度Ws1の20〜40%程度である。同図(C)に示すように、フィラーワイヤの挿入位置の回転速度Sfは0であり、回転していない。
(2)時刻t1〜t2のクレータ制御期間Tc
時刻t1において、溶接トーチWTが上記の溶接終了位置に到達すると、同図(B)に示すように、クレータ制御期間信号TcsがHighレベルに変化し、クレータ制御期間Tcが経過後の時刻t2においてLowレベルに戻る。クレータ制御期間Tc中は、溶接トーチWTは溶接終了位置に停止する。したがって、溶接ワイヤ1aの溶接狙い位置aはも溶接終了位置で停止する。クレータ制御期間Tc中も消耗電極アーク3aは発生状態を継続しており、同図(D)に示すように、溶接ワイヤ送給速度Wsは定常期間中のWs1からWs2へと減速する。溶接ワイヤ送給速度Wsが減速するので、同図(E)に示すように、溶接電流Iwwは定常期間中のI1からI2へと小さくなる。同図(F)に示すように、フィラーワイヤ送給速度Fsは定常期間中のFs1からFs2へと減速する。上記のWs2は溶接電流I2によって溶け落ちが発生しない値に設定され、上記のFs2は溶接電流I2で安定して溶融する値に設定される。
クレータ制御期間Tc中は、消耗電極アーク3aを発生させた状態で、溶接狙い位置aは溶接終了位置に停止している。溶接狙い位置aを中心点として、ロボットの動作によって溶接トーチWTを回転させて、フィラーワイヤの挿入位置bを回転させる。このために、同図(C)に示すように、フィラーワイヤの挿入位置の回転速度Sfは、クレータ制御期間Tc中は正の値となる。Sfが正の値であることは時計回りに回転していることを示している。Sfが負の値であるときは、時計と逆回りに回転していることを示している。時計回りとは、母材2を上面(溶接ワイヤ1aの送給方向)から観察した場合である。
時刻t2において、クレータ制御期間Tcが終了すると、同図(B)に示すように、クレータ制御期間信号TcsはLowレベルに変化し、同図(A)に示すように、起動信号OnはLowレベルに変化する。起動信号OnがLowレベルになると、溶接電源PSは出力を停止するので、同図(D)に示すように、溶接ワイヤ送給速度Wsは0となり送給は停止し、同図(D)に示すように、溶接電流Iwwは0となり、通電は停止して消耗電極アーク3aは消弧する。同時に、同図(F)に示すように、フィラーワイヤ送給速度Fsも0となり、送給を停止する。同図(C)に示すように、フィラーワイヤの挿入位置の回転速度Sfは0となり、回転は停止する。
図3は、クレータ制御期間Tc中のフィラーワイヤの挿入位置bの回転の様子を示す溶接終了部の模式図である。同図は、母材2を上面から見た図であり、母材2上の溶接終了位置に溶融池2aが形成されており、その後方にはビードが形成されている。溶接終了位置が停止中の溶接狙い位置aとなり、黒点で示している。この溶接狙い位置aが回転の中心点となる。溶接狙い位置aを中心点として円が破線で描画されている。この円周が、フィラーワイヤの挿入位置bの回転軌跡となる。溶接狙い位置aから後方の円周上の位置が回転角0°となり、その対向位置が回転角180°となる。クレータ制御期間Tc中のフィラーワイヤの挿入位置bの回転方法は、以下の3つの方法から選択される。
1)第1の回転方法
図2(c)に示すように、フィラーワイヤの挿入位置bを、クレータ制御期間Tc中に、0°から時計回りに360°回転(1回転)させる。すなわち、消耗電極アーク3aが溶接狙い位置aで発生している状態で、フィラーワイヤ1bが円周上を挿入されながら1回転してクレータ制御が行われる。回転方向は、反時計回りでも良い。この方法においては、クレータ制御期間Tc中に溶接ワイヤ1a及びフィラーワイヤ1bの送給速度を定常期間中よりも減速させて、送給を継続する。そして、フィラーワイヤの挿入位置bを消耗電極アーク3aを中心点として1回転させる。これにより、フィラーワイヤ1bを、従来技術のように1方向から挿入するのではなく、全円周方向から挿入することができるので、フィラーワイヤ1bが減速して溶着量が減少していても健全な形状のクレータ部を形成することができる。
2)第2の回転方法
フィラーワイヤの挿入位置bを、クレータ制御期間Tc中に、0°から時計回りに360°回転(1回転)させ、その後に逆回りにもう1回転させる。すなわち、消耗電極アーク3aが溶接狙い位置aで発生している状態で、フィラーワイヤ1bが円周上を挿入されながら1回転した後に逆回りにもう1回転してクレータ制御が行われる。1回転目の回転方向は反時計回りでも良い。この方法では、1)の方法の効果に加えて、溶接トーチWTのケーブルが1回転目にロボットの回転軸に巻きついた状態になるのを2回転目で戻すことができるので、次の溶接個所への移動がスムーズになる。
3)第3の回転方法
フィラーワイヤの挿入位置bを上記の第1又は第2の回転方法で回転中に、所定角度で一時停止させる。所定角度は、例えば0°及び180°である。この方法では、第1及び第2の回転方法の効果に加えて、一時停止している時間を調整することによってクレータ制御期間Tcの時間長さを簡単に調整することができるので、溶接条件の設定が容易になる。
上述した実施の形態1によれば、クレータ制御期間中は、溶接ワイヤ及びフィラーワイヤの送給を継続し、アークを発生させたままで、溶接ワイヤの溶接狙い位置を停止させ、フィラーワイヤの挿入位置を溶接狙い位置を中心点として回転させながらクレータ制御を行う。これにより、実施の形態1では、フィラーワイヤを、従来技術のように1方向から挿入するのではなく、全円周方向から挿入することができるので、フィラーワイヤが減速して溶着量が減少していても健全な形状のクレータ部を形成することができる。このときに、特別な装置を追加する必要はない。
1a 溶接ワイヤ
1b フィラーワイヤ
2 母材
2a 溶融池
3a 消耗電極アーク
4a 給電チップ
4b 送給ガイド
5a 溶接ワイヤ用送給ロール
5b フィラーワイヤ用送給ロール
a 溶接ワイヤの溶接狙い位置
b フィラーワイヤの挿入位置
Fc フィラーワイヤ送給制御信号
FM フィラーワイヤ用送給モータ
Fs フィラーワイヤ送給速度
Iww 溶接電流
Lt 給電チップ・母材間距離
Lw ワイヤ間距離
On 起動信号
PS 溶接電源
RC ロボット制御装置
Sf フィラーワイヤの挿入位置の回転速度
Tc クレータ制御期間
Tcs クレータ制御期間信号
Vww 溶接電圧
Wc 溶接ワイヤ送給制御信号
WM 溶接ワイヤ用送給モータ
Ws 溶接ワイヤ送給速度
WT 溶接トーチ

Claims (4)

  1. 定常期間中は、溶接ワイヤと母材との間にアークを発生させると共に、このアークによって形成された溶融池に前記溶接ワイヤから後方の挿入位置にフィラーワイヤを送給して行う2ワイヤ溶接のクレータ制御方法において、
    クレータ制御期間中は、前記溶接ワイヤ及び前記フィラーワイヤの送給を継続し、前記アークを発生させたままで、前記溶接ワイヤの溶接狙い位置を停止させ、前記フィラーワイヤの前記挿入位置を前記溶接狙い位置を中心点として回転させながらクレータ制御を行う、
    ことを特徴とする2ワイヤ溶接のクレータ制御方法。
  2. 前記フィラーワイヤの前記挿入位置を、1回転させる、
    ことを特徴とする請求項1記載の2ワイヤ溶接のクレータ制御方法。
  3. 前記フィラーワイヤの前記挿入位置を、1回転させた後に逆向きにもう1回転させる、
    ことを特徴とする請求項1記載の2ワイヤ溶接のクレータ制御方法。
  4. 前記フィラーワイヤの前記挿入位置を、所定角度で一時停止させながら回転させる、
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2ワイヤ溶接のクレータ制御方法。
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