以下、発明を実施するための形態について、複数の実施形態を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明する複数の実施形態に限定されることはない。本発明は、以下に説明する複数の実施形態に公知な技術などを適用して種々に変形をし、実施をすることが可能である。
(実施形態1)
図1Aおよび図1Bは、本発明の実施形態1に係るスピーカ制御装置の機能ブロック図である。図1Aの機能ブロック図により示すスピーカ制御装置は、デジタル電力量調整器(11)、駆動回路(Driver)(12)、時間デジタル変換器(TDC)(16)、電流検出器(Current Det.)(171)、入力検知回路(Input Det.)(18)、温度検出器(Temp Det.)(172)および制御回路(Cont)(173)を有する。デジタル電力量調整器(11)は、デジタル音声信号が入力される。駆動回路(12)は、デジタル電力量調整器(11)により調整されたデジタル信号を用いて、スピーカを駆動する。時間デジタル変換器(16)は、駆動回路(12)に接続されている。電流検出器(171)は、時間デジタル変換器(16)の出力により、スピーカ(15)のコイルに流れる電流を検出する。入力検知回路(18)は、デジタル電力量調整器(11)の出力により、スピーカ制御装置へのデジタル音声信号の入力を検知する。温度検出器(172)は、電流検出器(171)の出力信号と入力検知回路(18)の出力信号とにより、スピーカ(15)のコイルの温度を計算する。制御回路(173)は、デジタル電力量調整器を制御する。
また、図1Bには、デジタル電力量調整器(101)と、デジタル信号変調装置(102)と、デジタルスイッチマトリックス回路(103)と、複数の駆動スイッチング回路(104)と、時間デジタル変換器(106)と、モニター回路(107)と、入力検知回路(108)とを有するスピーカ制御装置を示している。
図1Aと図1Bとの対応関係は次の通りである。図1Aのデジタル電力量調整器(11)は、図1Bのデジタル電力量調整器(101)に対応する。図1Aの駆動回路(12)は、図1Bのデジタル信号変調装置(102)と、デジタルスイッチマトリックス回路(103)と、複数の駆動スイッチング回路(104)とに対応する。図1Aの時間デジタル変換器(16)は、図1Bの時間デジタル変換器(106)に対応する。図1Aの電流検出器(171)は、図1Bのモニター回路(107)の一部に対応する。図1Aの入力検知回路(18)は、図1Bの入力検知回路(108)に対応する。図1Aの例では、入力検知回路(18)は、デジタル電力量調整器(11)の出力信号を用いて、スピーカ制御装置へのデジタル音声信号の入力を検知する。一方、図1Bの例ではデジタル電力量調整器(11)に入力される前のデジタル音声信号を直接用いて、スピーカ制御装置へのデジタル音声信号の入力を検知する。図1Aの温度検出器(172)は、図1Bのモニター回路(107)の一部に対応する。図1Aの制御回路(173)は、図1Bのモニター回路(107)の一部に対応する。
また、スピーカ制御装置には、スピーカ(105)が接続される。図1Bに示すように、スピーカ(105)は、一つの振動子(または振動膜)に対して複数のコイルを用いて構成することができる。すなわち、複数のコイルにより、一つの振動子(または振動膜)を駆動することができる。このとき、複数のコイルそれぞれには、異なる信号を入力し、異なる信号の表わす値の和に応じて一つの振動子(または振動膜)を駆動することができる。これにより、複数のコイルそれぞれに入力されるデジタル信号を一つの振動子(または振動膜)により直接音声に変換し、入力されるデジタル信号が表わす音声信号に変換することができる。また、複数のコイルそれぞれには、3値(−1,0,+1)のデジタル信号を入力することができる。
デジタル電力量調整器(101)には、デジタル信号INが入力される。デジタル信号INは、スピーカから出力される音声を表わすデジタル信号である。デジタル信号INのビット数は、例えば1とすることもできる。デジタル電力量調整器(101)は、デジタル信号INの電力量を調整したデジタル信号をデジタル信号変調装置(102)に出力する。
デジタル信号変調装置(102)は、デジタル電力量調整器(101)が出力するデジタル信号を変調し、変調されたデジタル信号をデジタルスイッチマトリックス回路(103)に出力する。デジタル信号変調装置(102)は、ΔΣ変調器を用いて構成することが可能である。ΔΣ変調器を用いてデジタル信号変調装置(102)を構成することにより、オーバーサンプリングが可能である。デジタル信号変調装置(102)によりデジタル信号にノイズ成分が重畳されることがあるが、オーバーサンプリングにより、このノイズ成分を高周波領域に移動させることができる。言い換えると、ΔΣ変調器を用いてデジタル信号変調装置(102)を構成することにより、ノイズシェイピングを行うことができる。この意味で、デジタル信号変調装置(102)をノイズシェイパーと表記する場合がある。
デジタルスイッチマトリックス回路(103)は、入力されるデジタル信号を複数の駆動スイッチング回路(104)相互に振り分ける。この場合、複数の駆動スイッチング回路(104)それぞれについて、デジタル信号が振り分けられた回数を算出しておく。例えば、積分回路などを用いて複数の駆動スイッチング回路(104)それぞれについて、デジタル信号が振り分けられた回数を積算する。そして、デジタル信号が振り分けられた回数が小さい駆動スイッチング回路(104)を選んでデジタル信号を振り分ける。これにより、複数の駆動スイッチング回路(104)それぞれおよび複数の駆動スイッチング回路(104)それぞれに接続されるコイルに特性のバラツキがあっても、そのバラツキをキャンセルすることができる。この意味で、デジタルスイッチマトリックス回路(103)をミスマッチシェイパーと表記する場合がある。
複数の駆動スイッチング回路(104)それぞれは、駆動電源であるVPP/VSS間に設置される。また、複数の駆動スイッチング回路(104)それぞれは、デジタルスイッチマトリックス回路(103)から振り分けられたデジタル信号を、デジタル駆動信号に変換する。デジタル駆動信号は、+1と-1とから2値となる場合や、例えば上述のように+1、0、-1からなる3値などの多値となる場合がある。複数の駆動スイッチング回路(104)それぞれが変換したデジタル駆動信号は、複数のコイルを有するスピーカ(105)に入力される。複数の駆動スイッチング回路(104)それぞれと複数のコイルそれぞれとが1対1に接続され、複数の駆動スイッチング回路(104)は、対応するコイルにデジタル駆動信号を供給する。したがって、デジタルスイッチマトリックス回路(103)は、スピーカ(105)の複数のコイルから、デジタル駆動信号が供給されるコイルを選択するとも言える。また、デジタルスイッチマトリックス回路(103)は、複数のコイルそれぞれを選択した回数を算出し、算出された回数の小さいコイルを優先して選択するとも言える。
時間デジタル変換器(106)は、駆動電源であるVPP/VSS間に設置される。時間デジタル変換器(106)は、駆動電源の電圧に応じて変化するデジタル情報を出力する。ここで、駆動電源から電圧供給を受ける複数の駆動スイッチング回路(104)が複数のコイルにデジタル駆動信号を供給することにより、スピーカの複数コイルに電流が流れる。そのため、時間デジタル変換器(106)は、駆動電源の電圧を介して、複数コイルに流れる電流の和の変化を感知することができる。時間デジタル変換器(106)は、例えば、電源電圧に応じて変化する周波数を発振する発振器の周波数を時間デジタル変換器(106)の内部でデジタル的にカウントし、カウントの結果(例えば一定時間長におけるカウント値)をデジタル情報として出力する。また、時間デジタル変換器(106)は、後に図8で説明するように、デジタル遅延器(800)と、レベル変換装置(803)と、デコーダ回路(804)と、を用いて構成することもできる。デジタル遅延器(800)は、駆動電源であるVPP/VSSに接続されたPMOSトランジスタ(801)とNMOSトランジスタ(802)で構成されるインバータ回路を複数段シリーズ状(直列)に接続することで構成されている。レベル変換装置(803)は、駆動電源であるVPP/VSS振幅のデジタル遅延器の出力をデジタル信号にレベル変換する。デコーダ回路(804)は、遅延信号をデジタル値に変換する。
図1において、時間デジタル変換器(106)は、複数の駆動スイッチング回路(104)と並列に接続されている。ただし、時間デジタル変換器(106)は、複数の駆動スイッチング回路(104)の全てと並列に接続される必要はない。すなわち、時間デジタル変換器(106)は、複数の駆動スイッチング回路(104)の一部と並列に接続されていてもよい。
入力検知回路(108)は、入力されるデジタル信号INが入力されているかどうかを検知する。また、入力検知回路(108)は、入力されるデジタル信号INが表わす音声がスピーカ(105)から再生された場合、音圧レベルが一定の値を上回るかどうかを判断する。さらに、入力検知回路(108)は、入力されるデジタル信号INが、完全に無音あるいは実質的に無音を表わしているかどうかを判断することもできる。
モニター回路(107)は、時間デジタル変換器(106)が出力するデジタル情報に基づいて、駆動電源VPP/VSSが供給する電流量を推測する。言い換えると、複数の駆動スイッチング回路(104)を介してスピーカ(105)の複数のコイルに供給される電流量を推測する。また、モニター回路(107)は、スピーカ(105)の複数のコイルに供給される電流量から、スピーカの温度を推測することもできる。スピーカ(105)の温度は、駆動電源VPP/VSSの電圧値とスピーカ(105)の複数のコイルに供給される電流量から、スピーカの複数のコイルを含む部分のインピーダンスと、温度係数とから推測することができる。また、デジタルスイッチマトリックス回路(103)により特定の駆動スイッチング回路(104)にデジタル信号が振り分けられたときの電流量から、その特定の駆動スイッチング回路(104)に対応するコイルの断線および短絡を検出することができる。したがって、モニター回路(107)は、電流・温度・接続状態を検知することができる。ここで、電流量・温度・接続状態は、スピーカ(105)の複数のコイルの電流量・温度・接続状態であり、また、場合によっては、複数のコイルそれぞれの電流量・温度・接続状態となる。
また、モニター回路(107)は、時間デジタル変換器(106)が出力するデジタル情報および入力検知回路(108)からの信号に基づいて、コイルの断線および短絡を検出することができる。したがって、モニター回路(107)は、入力検知回路(108)により、スピーカ(105)より音声が出力しているときに時間デジタル変換器(106)が出力するデジタル情報を受信して解析してもよい。例えば、入力されるデジタル信号INが、完全に無音あるいは実質的に無音を表わしていないことを表わす信号が、入力検知回路(108)から入力されたときに、モニター回路(107)が動作して、時間デジタル変換器(106)が出力するデジタル情報に基づいて、電流・温度・接続状態を検知するようにすることができる。
モニター回路(107)の検知の結果を表わす信号は、デジタル電力量調整器(101)と、デジタル信号変調装置(102)と、デジタルスイッチマトリックス回路(103)と、のいずれか1以上にフィードバックされる。これにより、モニター回路(107)の検知により、スピーカ(105)の複数のコイルにより消費される電力を制御することができる。例えば、スピーカ(105)の複数のコイルの温度が所定の温度を超えた場合には、スピーカ(105)の複数のコイルに供給される電流量を小さくするために、デジタル電力量調整器(101)により、入力されるデジタル信号INのゲインを小さくする。また、デジタル信号変調装置(102)の出力する信号の表わす音声を小さくするようにする。あるいは、デジタル信号変調装置(102)の利得を切り替えたり、デジタル信号変調装置(102)の出力信号の周波数特性を切り替えたり、デジタル信号変調装置(102)のオーバーサンプリングレートを変化させたりする。また、スピーカ(105)の複数のコイルのいずれかが断線または短絡した場合には、デジタルスイッチマトリックス回路(103)が、そのコイルを使用しないようにする。
本実施形態では、デジタル電力量調整器(101)でデジタル信号INのゲインを調整する。これにより、デジタル電力量調整器(101)が出力するデジタル信号の電力を調整する。この場合、ゲイン調整を、デジタル信号INの表わす音声の周波数によらずに行うことも可能であるし、あるいは、デジタル信号INの表わす音声の周波数成分のうち、特定の周波数以下の低い周波数成分のゲインを選択的に下げることも可能である。同様にデジタル信号のゲインを自動的に制御するAGC(Auto Gain Control)やDRC(Dynamic Range Control)の係数を制御して出力デジタル信号の電力を調整することも可能である。本発明の効果は、デジタル電力量調整器内(101)でのゲインの制御の構成の違いにより、失われることはない。
図2に本発明の一実施形態に係るスピーカ制御装置に使われる時間デジタル変換器の実施例を示す。図2に示した時間デジタル変換器は、発振器(リングオシレーター(200))と、レベル変換装置(203)と、カウンター回路(204)を含んでいる。リングオシレーター(200)は、駆動電源であるVPP/VSSに接続されたPMOSトランジスタ(201)とNMOSトランジスタ(202)で構成されるインバータ回路を奇数段のリング状に接続することで構成されている。レベル変換装置(203)は、駆動電源であるVPP/VSS振幅のオシレーターの発振信号をデジタル信号にレベル変換する。カウンター回路(204)は、発振周波数をデジタル値に変換する。
図2では、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成されるインバータ回路を使ったリングオシレーター(200)を時間デジタル変換器の構成要素としているが、例えば、差動入出力型の反転増幅器を使ったリングオシレーターやLCタンク回路を使った発振器のような電源電圧に依存した発振周波数を出力する回路を利用することも可能である。本発明の効果は、時間デジタル変換器の構成の違いにより、失われることはない。
本実施形態においては、駆動スイッチング回路(104)(またはアナログアンプ)が大振幅信号でスピーカを駆動するための大きな駆動電流を、駆動電源であるVPP/VSS間に流すことができる。一般にスピーカの定格インピーダンスは4〜8Ωであるので、駆動電源であるVPP/VSSを6Vとすれば、2W〜4W程度の出力が得られるが、その際に電源配線に流れる電流は1A〜0.5Aになる。
一般に、駆動電源であるVPP/VSSのLSI内部の配線抵抗やパッケージとLSIの接続に用いられるワイヤー等を合計した寄生抵抗は、10mΩ〜30mΩ程度で存在する。したがって、その抵抗に1A〜0.5A程度の電流が流れると5mV〜30mV程度の電圧降下が生じる。電源電圧を6Vとすれば電圧降下は約0.1%〜0.5%程度であるが、駆動電源であるVPP/VSS間に設置された発振器の発振周波数が十分に高ければ、電圧降下による周波数の変動を、カウンター回路(204)などによるカウントの結果(例えば一定時間長の時間区間におけるカウント値)などのデジタル情報により、測定することができる。
また、別の構成として、時間デジタル変換器を構成するカウンター回路を複数個設け、発振器からの信号を複数の異なるタイミングでデジタル値に変換することで、発振器の発振周波数を上げることなしに、カウンター値の精度を増やすこともできる。この構成によっても、電圧降下による周波数の変動を測定することができる。
図3に、本発明の一実施形態に係るスピーカ制御装置に使われる駆動スイッチング装置(104)の実施例を示す。図3に示した駆動スイッチング装置は、レベルシフト回路(301)と、出力反転回路(302)と、2つのインバータ回路(310)と、で構成される。レベルシフト回路(301)は、デジタル入力信号を駆動電源であるVPP/VSSの電圧振幅に対応させる。インバータ回路(310)は、駆動電源であるVPP/VSSに接続されたPMOSトランジスタ(303)およびNMOSトランジスタ(304)で構成される。一般的には、スピーカコイル(305)をOUT+とOUT-間に接続することでフルブリッジ型の駆動回路を構成している。したがって、本発明の一実施形態においては、スピーカのコイルそれぞれに、駆動電源であるVPP/VSSから供給される電流を流すことが可能となっている。
本実施形態では、スピーカ駆動回路の電源間に接続された時間デジタル変換器(TDC)のデジタル値により、スピーカの複数コイルに流れる電流の和の変化を感知する。スピーカ駆動回路内の電源間の電圧は、駆動している複数コイルに流れる電流の和に比例した電圧降下が生じる。電源電圧に応じて変化する周波数を発振する発振器の周波数を時間デジタル変換器(TDC)の内部でデジタル的にカウントすることで、複数コイルに流れる電流の和に比例したり、複数コイルに流れる電流の和に応じて変化したりするデジタル情報を取得する。このデジタル情報によって、スピーカの複数コイルに流れる電流の和を測定できる。
このような電源電圧に応じて変化する時間デジタル変換器の出力値を利用することで、それぞれのコイルのインピーダンスを独立に測定しなくても、複数のコイルを流れる電流の和を測定することができる。
さらに、複数のコイルを駆動している電圧のデジタル情報と複数コイルに流れる電流の和に応じて変化するデジタル情報との積を時間積分することでコイルに加わった実効的な電力量をデジタル的に計算できる。なお、複数のコイルを駆動している電圧のデジタル情報は、デジタルスイッチマトリックス回路(103)によるデジタル信号の振り分けにより取得することができる。また、複数コイルに流れる電流の和に応じて変化するデジタル情報は、時間デジタル変換器(106)から取得することができる。このように計算できる実効的な電力量はコイルのインピーダンスの温度変化に応じて変化する。一方デジタルスピーカ装置に入力されたデジタル情報の二乗積から、温度に依存しない理想的な電力がデジタル的に計算できるので、これを同じように時間積分することで温度に依存しない理想的な電力量がデジタル的に計算できる。これらの計算は、例えばモニター回路(107)が行うことができる。
入力されたデジタル情報に基づいて、コイル温度に応じて変化するデジタル電力量と温度に依存しない理想的な電力量とを算出し、これらの電力量を同じ時間間隔で比較する。これによれば、評価信号を用いなくともコイル温度に応じて変化するデジタル量を、入力されたデジタル情報のみから抽出することが可能である。言い換えると、コイル温度を算出することができる。これにより、評価信号の重畳による無音時の電力の増加や機械的な振動の発生を防ぐことができる。
電源電圧に比例した時間デジタル変換器の出力値を利用することでコイルの断線を動的に検出することも可能である。温度によるコイルのインピーダンスの変化が数%程度なのに比較して、断線による抵抗の変化は総数が4本コイルのうち1本のコイルが断線した場合で25%もあるので、理想的な電力量との比較により容易に断線を検出することが可能である。
断線コイルの同定も電源電圧に応じて変化する時間デジタル変換器の出力値を利用することで可能である。複数のコイルについて、1本ずつ独立してコイルに駆動信号を供給した状態で、、または、複数のコイルのうち1本ずつ独立してコイルへの駆動信号の供給を止めた状態で、電源電圧に比例した発振器の周波数変化を観察することによって、容易に断線したコイルを同定できる。
断線したコイルが同定できれば、断線したコイルを除いた残りのコイル(断線していないコイル)だけを使うようにデジタルスピーカ装置の駆動モードを動的に変化させる(例えば4本コイル用から3本コイル用に、デジタル信号変調装置(102)およびデジタルスイッチマトリックス回路(103)の設定を変える)。例えば、断線したコイルを選択しないようにデジタルスイッチマトリックス回路(103)の設定を行う。また、デジタル信号変調装置(102)の利得、出力信号の周波数特性および/またはオーバーサンプリングレートを変化させるなどを行うことによって、デジタル信号変調装置(102)とデジタルスイッチマトリックス回路(103)との両方の設定を変化させるのが好ましい。これにより、一部のコイルが断線した場合でも、電気−音響変換の再生品質の劣化を抑えることができる。
同様に、電源電圧に応じて変化する時間デジタル変換器の出力値を利用することでコイルの短絡を動的に検出することも可能である。温度によるコイルのインピーダンスが数%程度の変化であるのに対して、短絡による抵抗は1/10以上も小さくなるように変化するので、理想的な電力量との比較により容易に短絡したコイルを検出することが可能である。
本発明によれば、複数コイルを使ったデジタルスピーカ装置により自立的な故障回避が可能となる。単一コイルの断線による不良確率が、複数コイルのそれぞれのコイルの断線や短絡による不良確率と同程度であるならば、実使用状態での複数コイルを使ったデジタルスピーカ装置の致命的な市場不良の確率を、単一コイルを使った従来の電気−音響変換方式に比べて大幅に下げることが可能である。
図4には、本発明の一実施形態に係るスピーカ制御装置および複数個のコイルを有するスピーカを、スピーカ・ボックス(400)に格納する具体例を示している。複数個のコイルを有するスピーカ(401)と、スピーカ(401)を制御する制御PCB基板(402)は、構造材(403)により機械的に接続される。制御PCB基板(402)には、本実施形態を含む本発明のいずれかの実施形態に係るスピーカ制御装置が実施されている。すなわち、スピーカ(401)の背面に構造材(403)が配置され、構造材(403)を介して、制御PCB基板(402)がスピーカ(401)の背面に対向する。また、スピーカ(401)と制御PCB基板(402)とは、電気的には配線材(404)により電気的に接続されている。なお、図4に示す具体例において、スピーカ(401)は小型化されたマイクロスピーカとすることができる。
このように、スピーカ、特にマイクロスピーカ、の背面に対向させてデジタルスピーカ制御装置が実装された基板を平行に配置することができる。ここに平行とは、スピーカの背面とデジタルスピーカ制御装置が実装されたPCB基板の基板面などの一面とが平行になっていることをいう。一般にスピーカの背面は磁気回路を形成しているので機械的な強度が高い。スピーカの背面とデジタルスピーカ制御基板を平行して配置することで、スピーカとデジタルスピーカ制御基板との間をフレーム構造で機械的に接続する。フレーム構造はスピーカ・ボックスの容積に応じて長さを調整することができる。スピーカとの電気的な接続を、フレーム構造を介して接続することも可能である。
図4Aはスピーカ・ボックスの背面図である。図4Cはスピーカ・ボックスの正面図である。図4Bはスピーカ・ボックスのX−Y断面線における断面図である。図4Dは本発明の一実施形態に係る制御PCB基板(402)に含まれるスピーカ制御装置と、スピーカ(401)と、をスピーカ・ボックス(400)に格納するための分解斜視図を示している。
図4Dに示されているように、制御PCB基板(402)はスピーカ・ボックス(400)の背面構造材を兼ねると共に、構造材(403)を介して機械的にスピーカ・ボックス(400)の前面にスピーカ(401)を配置させる構造も兼ねている。このような構造を用いることにより、制御PCB基板(402)がスピーカ・ボックス(400)内の容積に与える影響を最小化することができる。また図4Dに示されているように、制御PCB基板(402)の裏面に外部接続端子(405)を設けることで、新たに外部接続端子をスピーカ・ボックス(400)に設ける必要がなくなる。
図4では、制御PCB基板(402)はスピーカ・ボックス(400)の背面の全ての部分を覆う背面構造材を兼ねているが、スピーカ・ボックス(400)の背面の一部分を覆う背面構造材を兼ねることも可能である。同様にスピーカ(401)とその制御PCB基板(402)を機械的に接続可能であれば、接続構造材の構造や素材としては任意の構造や素材が選択可能である。本発明の効果は、上記の説明を満たす限り、制御PCB基板(402)や接続構造材(403)の構造や素材として任意の構造や素材を用いても、失われることはない。
また、スピーカ(401)と制御PCB基板(402)とを機械的に接続したフレーム構造の間の距離(接続材(403)の長さ)を、スピーカ(401)を格納するスピーカ・ボックス(400)の深さに対して適当に調整することで、制御PCB基板(402)をスピーカ・ボックス(400)の裏面構造と兼ねることが可能になる。またスピーカ(401)と制御PCB基板(402)とは機械的に連結されている。そのため、デジタル制御PCB基板(402)をスピーカ・ボックス(400)の裏面構造となるように適当な力を加えて固定することで、スピーカ・ボックス(400)とスピーカ(401)の機械的な密着が可能となる。
このように、デジタルスピーカ制御基板(制御PCB基板(402))をスピーカ・ボックス(400)の裏面構造と兼ねることで、スピーカ・ボックス(400)の実効的な内部容量を減らさなくても、複数のコイルを使用するスピーカ(401)の近傍に、制御PCB基板(402)を配置することが可能になる。
また、制御PCB基板(402)をスピーカ・ボックス(400)の裏面構造と兼ねることで、制御PCB基板(402)への電源やデジタル信号の外部からの供給端子(外部接続端子(405))を制御PCB基板(402)の裏面に形成することが可能となり、新たな接続端子をスピーカ・ボックス(400)に形成する必要がなくなる。
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態に係るスピーカ制御装置の機能ブロック図を図5に示す。本実施形態に係るスピーカ制御装置は、デジタル線形補正器(501)と、デジタル信号変調装置(502)と、デジタルスイッチマトリックス回路(503)と、複数の駆動スイッチング回路(504)と、時間デジタル変換器(506)と、モニター回路(507)と、入力検知回路(508)と、を有する。
デジタル線形補正器(501)には、デジタル信号INが入力され、モニター回路(507)によるモニター結果に応じて、デジタル信号INの補正を行うことができる。また、後述のように、デジタル線形補正器(501)による補正が、BL特性とKx特性との伝達関数の逆関数となるようにすることもできる。
デジタル信号変調装置(502)は、上述したデジタル信号変調装置(102)に対応する。デジタルスイッチマトリックス回路(503)は、上述したデジタルスイッチマトリックス回路(103)に対応する。複数の駆動スイッチング回路(504)は、上述した複数の駆動スイッチング回路(104)に対応する。時間デジタル変換器(506)は、上述した時間デジタル変換器(106)に対応する。また、スピーカ(505)は、上述したスピーカ(105)に対応する。したがって、デジタル信号変調装置(502)、デジタルスイッチマトリックス回路(503)、複数の駆動スイッチング回路(504)、時間デジタル変換器(506)、時間デジタル変換器(506)および入力検知回路(508)についての説明は省略する。
モニター回路(507)には、時間デジタル変換器(506)の出力信号が入力される。これにより、モニター回路(507)は、実施形態1と同様に、電流・温度・接続状態を検知する。モニター回路(507)には、実施形態1におけるように、入力検知回路(508)の出力信号も入力され得る。モニター回路(507)が検知した結果を表わす信号は、デジタル線形補正器(501)、デジタル信号変調装置(502)、デジタルスイッチマトリックス回路(503)および複数の駆動スイッチング回路(504)のいずれか1以上にフィードバックされる。
BL(磁束密度とコイル断面積)特性およびKx(機械コンプライアンス)特性は、スピーカのボイスコイルと磁気回路の間の距離に対して本来線形であるべきである。実際には、スピーカ(特にマイクロスピーカ)は構造上の制限により、BL(磁束密度とコイル断面積)特性や、Kx(機械コンプライアンス)特性がスピーカの振幅方向に対して平坦にならない。図6Aは、代表的なBL(磁束密度とコイル断面積)特性を振動方向(スピーカの振動板の位置X)に対してプロットした図である。図6Bは、Kx(機械コンプライアンス)特性を振動方向(スピーカの振動板の位置X)に対してプロットした図である。
図6Aのように、BL(磁束密度とコイル断面積)特性が平坦でない場合には、スピーカが再生する音声に歪が生じる。また、図6Bのように、Kx(機械コンプライアンス)特性が平坦でない場合にも、同じように、スピーカが再生する音声に歪が生じる。
図6Cに示されたように、スピーカを駆動する入力信号をXと表記して、スピーカからの出力音をYと表記する。この場合、入力信号Xは、BL特性とKx特性からなる伝達関数F(X)により変調され、出力音Yとなる。なお、ここでいう入力信号Xは、図5における駆動スイッチング回路(504)からの出力信号Ymに対応する。このため、図6A、図6Bにおいてスピーカの振動板の位置に対応しているXと、入力信号Xとは厳密には一致しない。
本実施形態では、デジタル線形補正器(501)は、デジタル信号の入力と出力の伝達関数の係数を調整することにより、出力されるデジタル信号の電力を調整する。この場合、伝達関数の係数は、周波数によらずに制御することも可能である。また、伝達関数Hを例えばBL特性やKx特性の逆関数F-1(IN)にすることで、スピーカの構造的な制限による歪を補正することも可能である。
図6Dは、従来技術におけるスピーカの入力と出力音声との関係を上部に示し、本発明の一実施形態に係るスピーカの入力と出力音声との関係を下部に示す。従来技術におけるスピーカの入力が、f(x)により表わされるBL特性やKx特性による歪が加わるとする。そこで、本発明は、f(x)の逆関数f-1(x)を入力信号に適用し、歪を解消している。
また、出力信号が比較的小さく、複数のコイルが全て使われていない時には、駆動していない(選択されていない)コイルに流れる電流はスピーカのコイルの動作速度(振動膜の振幅)に応じて変化する。このため、後述のように、コイルの動作速度に応じて変化するデジタル情報を取得することができ、このデジタル情報の積を時間積分することでコイルの位置(振動膜の位置)をデジタル的に計算できる。実効的なコイルの位置(振動膜の位置)は、スピーカのボイスコイルと磁気回路のBL(磁束密度とコイル断面積)特性や、振動膜のKx(機械コンプライアンス)特性に応じて変化する(つまりTHDが悪化する)。一方、デジタルスピーカ装置に入力されたデジタル信号から磁気回路や振動膜の影響がない理想的なコイルの動作速度がデジタル的に計算できるので、これを同じように時間積分することで理想的なコイルの位置(振動膜の位置)をデジタル的に計算できる。
入力されたデジタル信号INをデジタル線形補正器(501)により補正することにより、磁気回路や振動膜の影響を受けたデジタルコイル位置情報と、磁気回路や振動膜の影響を受けない理想的なデジタルコイル位置情報とを、同じ時間間隔で比較して補正することができる。これにより、磁気回路や振動膜の影響を受けない、音声信号再生が可能になる。
なお、一般的には、伝達関数は周波数特性を持ち得る。そのような場合、すなわち、デジタル信号INから入力信号Xへの伝達関数(デジタル信号INが入力されてからボイスコイルに供給されるまでの伝達関数)が周波数特性を持つ場合には、デジタル信号INから入力信号Xへの伝達関数Hを考慮して補正すればよい。そして、上述のように、BL特性やKxの逆関数を考慮して補正し、F-1(H(IN))が駆動スイッチング回路(504)からの出力信号Ym(入力信号X)となればよい。
したがって、デジタル線形補正器(501)では、F-1(H(IN))に対して、伝達関数Hの逆関数をさらに適用して補正すればよい。すなわち、図6Eに示すように、デジタル線形補正器(501)では、デジタル信号INに対して、H-1(F-1(H(IN)))となる伝達関数を適用すればよい。これによって、入力信号INから入力信号Xへの伝達関数が周波数特性を持つ場合であっても、スピーカの構造的な制限による歪を補正することが可能である。本発明の効果は、デジタル線形補正器内(501)での伝達関数の係数の制御の構成の違いにより、失われることはない。
図7A〜図7Cには、本発明の一実施形態に係るスピーカ制御装置に接続されるスピーカのコイルの巻き方を示す。スピーカは、複数の配線(巻線)が巻かれて複数個のコイルが構成されている。図7Aはスピーカの底面図(背面図)、図7Bはスピーカの断面図、図7Cはスピーカの斜視図である。図7A、図7B、図7Cでは4本(A,B,C,D)の配線を巻くことによる4つのコイルの構成を示している。図7Aに示されているように、4本の配線を均等にA-B-C-Dの順番で巻いていく。ただし、配線を整列させて巻き込んでいくためには、巻線の構成は、巻き始め側からD-C-B-Aの順番に巻かれていくことになる。1段目(1層目)に配線を巻き、4つのコイルが配置され、配線を1段目(1層目)の上に、2段目(2層目)として巻き込む。この場合は、図7Bおよび図7Cに示したように配線の巻き順をA-B-C-Dの順で巻き方向を逆転(反転)させることで、2段目(2層目)の反転端から順番にD-C-B-Aの順番に巻きこむことになる。
このように常に配線を巻き始めが側からD-C-B-Aの順番で巻き込むことで、図7Dに示したように、巻き始め側の入り口のリードの順番と2段目(2層目)の巻き終わり側のリード順番を合わせることが可能になる。したがって、どれか一つのリードが明らかになれば、そこを基準に全てのリードの接続関係が同定されるので後工程での接続が容易にできるという利点がある。例えば(A)リードだけリード長を長くすることで、それを基準に右回りにA-A’-B-B’-C-C’-D-D’の順に並んでいることを明らかにできる。
図8に本発明の一実施形態に係るスピーカ制御装置に使われる時間デジタル変換器の別の実施例を示す。図8に示した時間デジタル変換器は、デジタル遅延器(800)と、レベル変換装置(803)と、デコーダ回路(804)と、を含んでいる。デジタル遅延器(800)は、駆動電源であるVPP/VSSに接続されたPMOSトランジスタ(801)とNMOSトランジスタ(802)で構成されるインバータ回路(遅延器)を複数段シリーズ状(直列)に接続した遅延回路で構成されている。レベル変換装置(803)は、駆動電源であるVPP/VSS振幅のデジタル遅延器(800)の出力信号をデジタル信号にレベル変換する。デコーダ回路(804)は、遅延信号をデジタル値に変換する。
図8では、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成されるインバータ回路を使った遅延回路を時間デジタル変換器の構成要素としている。一方、電源電圧に依存した遅延信号を出力する回路、例えば、差動入出力型の反転増幅器を使った遅延回路、または電流制限型のインバータ回路を使った遅延器を利用することも可能である。本発明の効果は、時間デジタル変換器の構成の違いにより、失われることはない。
図9は、本発明の一実施形態に係るスピーカ制御装置に用いられる駆動スイッチング装置の実施例を示す。本実施例の駆動スイッチング装置は、時間デジタル変換器を用い、駆動していないコイルに流れる電流を測定することができる。この電流は、上述したようにコイルが駆動していない(選択されていない)ときに流れる電流である。
図9に示す駆動スイッチング装置は、デジタル入力信号INを駆動電源であるVPP/VSSの電圧振幅に対応させるレベルシフト回路(901)と、駆動電源であるVPP/VSSに接続されたPMOSトランジスタ(902)およびNMOSトランジスタ(903)で構成される2つのインバータ回路(910)と、で構成されている。レベルシフト回路(901)は、デジタル入力信号INを駆動電源であるVPP/VSSの電圧振幅に対応させる。インバータ回路(910)は、駆動電源であるVPP/VSSに接続されたPMOSトランジスタ(902)およびNMOSトランジスタ(903)で構成される。一方のインバータ回路の出力をOUT+とし、他方のインタバーター回路の出力をOUT-とする。このとき、VPPと出力端子OUT+との間に接続された第一の時間デジタル変換器(904)およびVPPともう一端の出力端子OUT-との間に接続された第二の時間デジタル変換器(905)が接続されている。一般的には、スピーカコイル(906)をOUT+とOUT-間に接続することでフルブリッジ型の駆動回路が構成される。第一および第二の時間デジタル変換器を駆動端子のそれぞれに接続することで、コイルを駆動していない状態(それぞれの駆動端子の電圧が同じ(例えば0V)状態)において、コイルを流れる電流をデジタル的に測定することが可能となる。すなわち、コイルを流れる電流によりTDC(904)が接続されているOUT+の電圧が変化する。この電圧の変化によりTDC(904)の出力する信号が変化するので、コイルを流れる電流をデジタル的に測定することが可能となる。同様にOUT-の電圧の変化によりTDC(905)の出力する信号が変化する。このようにデジタル的に測定を行い得られる情報が、上述の「コイルの動作速度に応じて変化するデジタル情報」である。
なお、図9では、時間デジタル変換器を駆動出力(OUT+、OUT-)とVPPとの間に接続しているが、駆動出力とVSSとの間に接続することも可能である。この場合は、コイルを駆動していない状態(それぞれの駆動端子の電圧が同じ(例えばVPP)状態)において、コイルを流れる電流をデジタル的に測定することが可能となる。
(実施形態3)
本発明の第3の実施形態に係るスピーカ制御装置の機能ブロック図を、図10に示す。本実施形態に係るスピーカ制御装置は、デジタル電力量調整器(1001)と、デジタル信号変調装置(1002)と、デジタルスイッチマトリックス回路(1003)と、複数の駆動スイッチング回路(1004)と、時間デジタル変換器(1006)と、モニター回路(1007)とを有する。
デジタル電力量調整器(1001)は、上述したデジタル電力量調整器(101)に対応する。デジタル信号変調装置(1002)は、上述したデジタル信号変調装置(502)およびデジタル信号変調装置(102)に対応する。デジタルスイッチマトリックス回路(1003)は、上述したデジタルスイッチマトリックス回路(503)およびデジタルスイッチマトリックス回路(103)に対応する。複数の駆動スイッチング回路(1004)は、上述した複数の駆動スイッチング回路(504)および複数の駆動スイッチング回路(104)に対応する。時間デジタル変換器(1006)は、上述した時間デジタル変換器(506)および時間デジタル変換器(106)に対応する。また、スピーカ(1005)は、上述したスピーカ(505)およびスピーカ(105)に対応する。したがって、デジタル電力量調整器(1001)、デジタル信号変調装置(1002)、デジタルスイッチマトリックス回路(1003)、複数の駆動スイッチング回路(1004)、時間デジタル変換器(1006)についての説明は省略する。
入力検知回路(1008)には、デジタル信号変調装置(1002)の出力信号が入力される。入力検知回路(1008)の出力信号と時間デジタル変換器(1006)の出力信号とは、モニター回路(1007)に入力される。モニター回路(1007)は、電流・温度・接続状態を検知する。また、モニター回路(1007)の出力信号は、デジタル信号変調装置(1002)とデジタルスイッチマトリックス回路(1003)にフィードバックされる。
第10の実施例では、デジタル信号変調装置(1002)からの信号をリファレンス信号として利用できるので、変調器による音声信号の周波数変調の変化を温度検出回路内で補償することが可能になる。
本実施形態では、デジタル電力量調整器(1001)でデジタル信号のゲイン調整をすることで出力されるデジタル信号の電力を調整する。このゲイン調整を、周波数によらずに制御することが可能である。また、特定の周波数以下の低い周波数の信号のゲインを選択的に下げることも可能である。同様にデジタル信号のゲインを自動的に制御するAGC(Auto Gain Control)やDRC(Dynamic Range Control)の係数を制御して出力デジタル信号の電力を調整することも可能である。本発明の効果は、デジタル電力量調整器内でのゲインの制御の構成の違いにより、失われることはない。
以上説明した構成は、電動モータのオーバーヒートを防止することに転用可能である。また、従来は、スピーカの分野においては、低周波のプローブ信号をスピーカから発する音声信号に加え、プローブ信号の強度とコイルのインピーダンスとの関数を用いて、コイルに流れる電流および印加される電圧を測定する構成が用いられている。しかしながら、このような構成では、以下の問題が発生する。プローブ信号を加えるためにスピーカを駆動するアンプの出力が増加し、このため、再生に利用可能な音声のダイナミックレンジが低下する。また、人間の可聴範囲外の低周波のプローブ信号であっても、余分な(unwelcome)振動が発生してしまう。このために、プローブ信号の低周波でスピーカの端子やback port が振動してしまう。また、スピーカの非線形な特性(non-linearity)により、プローブ信号の低周波の高次倍音が発生し、再生音声の品質が低下する。
一方、低周波のプローブ信号を用いずにコイルの状態などを現に(on the flyに)検出する構成を、本明細書において説明した。また、この構成を、さらに、図1A、図1B、図5、図10に対応する図11に示す。また、以上説明した構成、特にスピーカ制御装置にフィードバックを採用する構成、により、少なくともプラスマイナス摂氏5度の精度でコイルの温度を推定することができる。
また、スピーカの構造的、機構的な限界(mechanical limitation)をスピーカ制御装置によりキャンセルすることについても説明した。また、スピーカに入力される電力とスピーカ(のコイル)の機械的な位置との関数として、誤差をキャンセルするフィードフォワードの構成についても説明した。また、この構成は、スピーカの経年変化による劣化にも対応することができる。すなわち、図6Dに示す関数f(x)の経年変化を求めることに対応する。