JP2008061212A - 直流帰還回路を使用した負性インピーダンスの生成技術 - Google Patents

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Abstract

【課題】定電圧増幅器で用いられる出力オフセット電圧除去用の直流帰還回路の定数および回路構成を見直す事でスピーカーの最低共振周波数周辺で発生する再生音圧の低下を補償する。スピーカーの重低音再生を実現する。
【解決手段】低周波領域の裸利得を極めて大きく設計した差動増幅器に反転積分型直流帰還回路(3)を組み合わせる。スピーカーの最低共振周波数周辺では機械インピーダンスが上昇する事で誘導性負荷としての性質が顕在化する為、差動増幅器出力は電圧位相が遅れる。反転積分型直流帰還回路(3)は遮断周波数以上での電圧位相が90度程度進むので、遮断周波数をスピーカーの最低共振周波数周辺に設定する事で正帰還が可能となる。直流帰還量を適切な値とする事で最低共振周波数周辺での増幅器動作を定電流増幅器に類似なものとして再生音圧の低下を補償する。
【選択図】図1

Description

本発明は電子音響装置に関するものであり、特定的にはスピーカー駆動時に発生する最低共振周波数(通称:fs)を抑圧する為に必用な負性インピーダンス発生器および方法に関するものである。
スピーカーの最低共振周波数では駆動コンプライアンスが低下する事で電気インピーダンスが上昇しQポイントが発生する(図6)。最低共振周波数におけるインピーダンス上昇は定格8Ωのスピーカーの場合60Ω前後になる。スピーカーは一般的に定電圧駆動される事から最低共振周波数周辺の再生音圧は定格インピーダンス領域で発生する再生音圧の8分の1程度に減少する。
入力音響信号の周波数特性を操作する事で最低共振周波数周辺での再生音圧低下を改善する方法としてトーンコントロール回路やイコライザーユニットが古くから使用されている。特殊な電力増幅器を使用する必要が無く利便性に長けるが音響信号が通過する増幅段数が増加する為、音質の変化や特性の劣化が発生する。更に入力音響信号の低音領域を増強する事からハウリングが発生する再生レベルと実使用再生レベルの差であるハウリングマージンが低下する事や最低共振周波数周辺のレベルを上昇させた事によるダイナミックレンジの低下を招く為、高忠実度再生では敬遠される傾向がある。
入力音響信号の周波数特性を操作せずに最低共振周波数周辺での再生音圧低下を改善する技術としてスピーカーの非直線動作をマイクロフォンやボイスコイル中に設けたセンサーコイルで検出し、増幅器に負帰還する事で特性改善を行うMFB方式(Motional Feed Back)が実用化され広く周知されている。
入力音響信号の周波数特性を操作せずに最低共振周波数周辺での再生音圧低下を改善する技術としてスピーカーを定電流駆動する事で特性改善を行う方法が広く周知されている。
最低共振周波数周辺での再生音圧低下を補償せず増幅器から見た負荷インピーダンスのみを補正する方式も考案され周知されている(図5)。
定電流増幅器の使用は古くから検討されているが、制動率の低下や安定度の問題、定電流駆動の理論上の正しさと現実に再生される音質の違和感等から一般化していない。
負性インピーダンスとは発振回路等に用いられる概念で負荷抵抗値と駆動電流値が比例関係となる様に制御する事で生成するインピーダンス成分である。
高い制動率は増幅器の性能を表す一つの目安とされている。しかし定電流増幅器を使用した場合の制動率は、その動作上きわめて低くなる。MFB増幅器の場合は、定電圧増幅器に専用回路を付加する形で実現する事が一般的であり、この場合、制動率は向上するが通常の定電圧増幅器に比較して回路の規模が大きくなり安定度の点でも不利になる。本発明では一般的に用いられる高負帰還型の定電圧電力増幅器と、出力オフセット電圧除去の為に利用される直流帰還回路の定数を再検討する事で定電圧増幅器の特徴である高い制動率を低下させずにスピーカーの最低共振周波数周辺での再生音圧低下を補償するものであり、重低音再生が可能な高品位音響増幅器を極めて安価に提供するものである。
高利得、高安定度の反転型定電圧電力増幅器を使用し、スピーカー駆動時に発生する最低共振周波数周辺での駆動電流(駆動電圧)の位相回転と、出力オフセット電圧除去の為に組み込んだ反転積分型直流帰還回路出力における遮断周波数周辺で発生する位相回転を兼用する事で最低共振周波数周辺での正帰還を実現する。この結果、MFBや定電流増幅器を使用する事なくスピーカーの最低共振周波数周辺での再生音圧の低下を補償する。
図1の例では回路2での位相反転を補償する位相反転器(1)、駆動電力を発生させる反転型定電圧電力増幅器(2)、電力増幅器で発生する出力オフセット電圧を除去する反転積分型直流帰還回路(3)で構成される。反転型定電圧電力増幅器(2)は裸利得が十分大きな差動増幅器として設計し、かつ図4の容量性負荷補償回路(11)や誘導性負荷補償回路(12)を用いずに容量性負荷や誘導性負荷を安定に駆動可能な位相余裕度を有した回路構成とし、オーバーオール負帰還の使用で利得を設定する。
安定に設計され、オーバーオール負帰還を使用した差動増幅器では出力電流と出力電圧の位相差を吸収し出力電圧を入力電圧と同位相となる様に制御する。現実の差動増幅器では回路構成に伴う位相余裕度や利得余裕度の問題から誘導性負荷や容量性負荷を駆動する場合は、その値に応じて増幅器の位相余裕範囲内で位相差が発生する事になる。
反転型定電圧電力増幅器(2)として確認実験に使用した回路を図11に示す。この回路を用いて負荷5と5Aを駆動した場合、最低共振周波数周辺の駆動電流の振幅と位相は図7の様になり純抵抗負荷である負荷5Aに比較しスピーカーの簡略等価回路である負荷5では電流と電圧の積である再生電力が低下する事が確認出来る。
出力オフセット電圧を除去する反転積分型直流帰還回路(3)の遮断周波数は一般的に下限可聴音とされる20Hzよりも十分に低い周波数(通常1Hz以下)に設定する。図2の回路構成において反転積分型直流帰還回路(3)の遮断周波数をスピーカーの最低共振周波数周辺に設定した場合のD点とC点間の電圧位相は図8の様になる。従って同条件時の図1におけるA点とB点間の電圧位相は図9の様に同位相状態となり正帰還が成立する。
通常R1、R2は直流帰還の収束を安定化する分圧器を構成する。回路3の裸利得が十分に大きな場合は回路2の利得の逆数以下を分圧値とする事が一般的である。図1ではR1、R2で正帰還量の調整を兼用している。正帰還が成立する周波数は回路3の遮断周波数以上であり、その時の正帰還成分は図8の様に10dB程度減衰する。従って正帰還量は1未満となり図1の回路構成は発振せずに定電流増幅器(図10)と類似の動作をする事が理解出来る。
従来の技術による最低共振周波数周辺における再生音圧の低下を補償する手段としては定電流増幅器の使用、MFBの使用、イコライザーやトーンコントロールの使用が一般的である。しかし定電流増幅器の使用で得られる再生音圧は定電圧増幅器の逆特性となる為、最低共振周波数における再生音圧の低下が補償出来ても総合的な再生周波数特性はスピーカー設計時に期待した特性とならず、この為に周波数特性補償用の専用イコライザーを兼用する事が一般的である。又、定電圧増幅器に比較し制動率が極端に低下する事から聴感上も違和感が多いと言われている。MFBの利用はサブウーハーを中心に普及しているが構成が複雑になる事や、やはり聴感上の違和感があり専用のイコライザーを兼用する事が一般的である。本発明ではオーバーオール負帰還を使用した差動増幅器が本質的に内包している位相回転の問題を積極的に利用する事で定電圧増幅器の特徴である広帯域、高制動率を維持しながらスピーカーの最低共振周波数周辺における再生音圧低下を効果的に補償している。
あらゆる応用における基本構成は図1であり最良の形態となる。回路2、回路3が十分な裸利得を持ち十分に安定な設計であれば、あらゆるスピーカー駆動回路に利用可能である。従来回路の定数変更のみで新たな回路動作を追加している為、安価で小型に実現可能であるが高品位な重低音再生を極めて安定に実現可能な事から映画館や劇場での業務用機器への利用を期待するものである。
ディジタル増幅器やオーバーオール負帰還を行わない定電圧増幅器への応用では移相器(21)を追加する事で本発明を応用可能である(図12)
図1を参照
本発明の実施例である。 図1の構成中、負荷である回路5を変更したものである。 図1のブロック図表記である。 一般的な増幅器の構成例である。 最低共振周波数周辺でのインピーダンス上昇を相殺する補償回路例である。 最低共振周波数によるスピーカーのインピーダンス上昇例である。 最低共振周波数周辺でのスピーカー駆動電流と純抵抗負荷時の駆動電流比較例である。 反転積分型直流帰還回路(3)の遮断周波数以上で発生する位相差である。 反転積分型直流帰還回路(3)の遅れ位相相殺例である。 負荷電流帰還型の定電流電力増幅器構成例である。 特性確認に使用した反転型定電圧電力増幅器(2)と反転積分型直流帰還回路の詳細図である。 ディジタル増幅器やオーバーオール負帰還を行わない増幅器等、図9の位相関係が成立しない場合の応用例である。
符号の説明
1 位相反転器回路
2 反転型定電圧電力増幅器(パワーアンプ)回路
3 反転積分型直流帰還回路
4 スピーカー端子
5 スピーカーの簡略等価回路
5A 純抵抗負荷
6 位相反転器回路のブロック図表記
7 反転型定電圧電力増幅器(パワーアンプ)回路のブロック図表記
8 スピーカー端子のブロック図表記
9 スピーカーの簡略等価回路のブロック図表記
10 反転積分型直流帰還回路のブロック図表記
11 容量性負荷補償回路
12 誘導性負荷補償回路
13 最低共振周波数インピーダンス補正回路
14 回路5の最低共振周波数を図2に入力時、回路5Aに流れる電流波形
15 回路5の最低共振周波数を図1に入力時、回路5に流れる電流波形
16 図2、C点の波形
17 図2、D点の波形
18 回路5の最低共振周波数を図1に入力時のA点波形
19 回路5の最低共振周波数を図1に入力時のB点波形
20 電流検出抵抗
21 移相器
22 ディジタル増幅器等オーバーオール負帰還を行わない定電圧増幅器
A 回路5の最低共振周波数を図1に入力時の回路3出力
B 回路5の最低共振周波数を図1に入力時の回路2出力
C 回路5の最低共振周波数を図2に入力時の回路2出力
D 回路5の最低共振周波数を図2に入力時の回路3出力
R1 直流帰還回路の接地抵抗
R2 直流帰還回路の帰還抵抗
R3 スピーカーの純抵抗成分
R4 スピーカーの定格インピーダンス値

Claims (2)

  1. 図1の回路構成を用いた結果として、定電圧電力増幅器の特徴である高制動率を維持しながらも、極めて安定にスピーカーの最低共振周波数付近における再生音圧の低下を補正する事を特徴とする音響機器付加回路および装置。
  2. 請求項1の回路構成を用いた結果として実現される定電圧電力増幅器において、スピーカー駆動時の低音領域における制動率を可変する事で再生される音質を変更する事を特徴とする音響機器付加回路および装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010049605A (ja) * 2008-08-25 2010-03-04 Hochiki Corp 警報器
US11381908B2 (en) 2017-08-01 2022-07-05 Michael James Turner Controller for an electromechanical transducer

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