JP2016185087A - 濃縮海水を用いた藻類の培養方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストであり、かつ培養効率が優れた新規な藻類の培養方法及び藻類の培地を提供すること。【解決手段】濃縮海水を水で希釈することにより得られる塩分濃度を調整した海水を含む培地において藻類を培養することを含む、藻類の培養方法。【選択図】なし

Description

本発明は、濃縮海水を用いた藻類の培養方法、及び濃縮海水を用いた藻類の培養培地に関する。
藻類は、酸素を発生する光合成を行う生物のうち、地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものの総称である。藻類は、海水又は淡水で生活するものが多いが、土壌で生活するものや、気生藻として生活するものもある。小型の藻類は、水圏では植物プランクトンとして知られるものである。大型の海産の藻類は海藻とも呼ばれている。
藻類、特に海産の藻類の培養方法としては、天然海水を使用する方法がある。しかし、天然海水を用いた場合、取水された海水には浮遊物や微小生物等が混在しているため、そのまま培養に用いた場合、細菌及び動物性プランクトンなどのコンタミネーションが発生する原因となることが知られている。これを防ぐためにはフィルターによる濾過や高圧蒸気滅菌、紫外線殺菌を行う必要がある。しかしながらこれらの方法は高コストであり、藻類培養コストの大部分を占める。その一方で人工的に海水の組成を再現した人工海水も市販されているが、天然海水に比べるとコストが高い上に、粉末を溶解するのに手間がかかるという点が問題としてある。
本発明は、低コストであり、かつ培養効率が優れた新規な藻類の培養方法及び藻類の培地を提供することを課題とする。
淡水資源が限られている地域において淡水を確保するために海水から逆浸透法によって淡水を生産するプラントが世界中で稼働している。この海水淡水化プラントでは淡水の製造時に副産物として濃縮された海水が生産される。原料海水は逆浸透膜に送られる前に濾過処理を行われているため浮遊物や微生物等をほとんど含まないため、副生物の濃縮海水も浮遊物や微生物等をほとんど含まない。本発明者らは、上記の濃縮海水を直接もしくは淡水によって任意の割合で希釈して藻類の培養に用いることによって、滅菌コストおよび人工海水を用いる際にかかるコストを大幅に低減した方法で藻類を培養できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 濃縮海水を水で希釈することにより得られる塩分濃度を調整した海水を含む培地において藻類を培養することを含む、藻類の培養方法。
(2) 塩分濃度を調整した海水の塩分濃度が、50‰以下である、(1)に記載の藻類の培養方法。
(3) 塩分濃度を調整した海水の塩分濃度が、35‰以下である、(1)又は(2)に記載の藻類の培養方法。
(4) 濃縮海水が、逆浸透法によって濃縮された濃縮海水である、(1)から(3)の何れかに記載の藻類の培養方法。
(5) 前記培地がさらに、ビタミン及びアミノ酸を含む、(1)から(4)の何れかに記載の藻類の培養方法。
(6) 藻類がハプト藻又は珪藻である、(1)から(5)の何れかに記載の藻類の培養方法。
(7) 藻類が、ハプト藻Isochrysis sp. 、珪藻Skeletonema costatum、又は珪藻Chaetoceros sp. である、(1)から(6)の何れかに記載の藻類の培養方法。
(8) 濃縮海水を水で希釈することにより得られる塩分濃度を調整した海水を含む、藻類の培養培地。
(9) 塩分濃度を調整した海水の塩分濃度が、50‰以下である、(8)に記載の藻類の培養培地。
(10) 塩分濃度を調整した海水の塩分濃度が、35‰以下である、(8)又は(9)に記載の藻類の培養培地。
(11) 濃縮海水が、逆浸透法によって濃縮された濃縮海水である、(8)から(10)の何れかに記載の藻類の培養培地。
(12) 前記培地がさらに、ビタミン及びアミノ酸を含む、(8)から(11)の何れかに記載の藻類の培養培地。
(13) 藻類が、ハプト藻又は珪藻である、(8)から(12)の何れかに記載の藻類の培養培地。
(14) 藻類が、ハプト藻Isochrysis sp.、珪藻 Skeletonema costatum、又は珪藻Chaetoceros sp. である、(8)から(13)の何れかに記載の藻類の培養培地。
本発明による藻類の培養方法及び藻類の培養培地は、低コストであり、かつ培養効率が優れている。
図1は、濃縮海水を用いた培地に、ハプト藻Isochrysis sp. ,珪藻 Skeletonema costatum、又は珪藻Chaetoceros sp. を植藻し、培養試験を行った結果を示す。
以下、本発明について更に具体的に説明する。
本発明の藻類の培養方法は、濃縮海水を水で希釈することにより得られる塩分濃度を調整した海水を含む培地において藻類を培養することを特徴とする。また本発明の藻類の培養培地は、濃縮海水を水で希釈することにより得られる塩分濃度を調整した海水を含むことを特徴とする。
本発明においては、海水を濃縮することによって濃縮海水を取得する。濃縮海水の塩分濃度は特に限定されないが、好ましくは50〜90‰であることが好ましく、60〜80‰であることがより好ましい。
海水を濃縮する方法は、特に限定されず、例えば、膜分離を利用した方法、又は相変化を利用した方法などを使用することができる。膜分離を利用した方法としては、逆浸透膜を用いる方法、ナノろ過膜を用いる方法、又は電気透析法などを使用することができる。相変化を利用した方法としては、多段フラッシュ式蒸発法、多重効用式蒸発法、蒸気圧縮式蒸発法、機械的蒸気再圧縮式蒸発法、真空多段蒸発濃縮式蒸発法、ガス水化物法またはヒートポンプ式冷凍法などを使用することができる。
上記の中でも好ましくは、膜分離を利用した方法であり、さらに好ましくは逆浸透膜を用いる逆浸透法である。逆浸透法とは、溶液と溶媒が半透膜で隔てられているとき、溶液側にその浸透圧以上の圧力を加えると、溶液中の溶媒が溶媒側に移動する現象を利用して、物質を分離する方法である。逆浸透法は、海水の淡水化、高純度の工業用水の生産などに使用されている。
なお、海水を濃縮する操作に先立って、海水を前処理してもよい。海水の前処理としては、砂ろ過、急速ろ過膜、マイクロフィルター濾過、ナノフィルター濾過、又はウルトラフィルター濾過などを挙げることができるが特に限定されない。
本発明においては、上記のようにして得られた濃縮海水を水で希釈することによって塩分を調整した海水を取得する。本発明においては、塩分を調整した海水の塩分濃度は、50‰以下であることが好ましく、40‰以下であることがより好ましく、35‰以下であることがさらに好ましく、31‰以下であることが特に好ましい。海水の塩分濃度の下限は特に限定されず、0.1‰以上、1‰以上、5‰以上又は10‰以上でもよい。
本発明の培養培地は、上記した濃縮海水のみからなるものでもよいし、他の追加成分を含むものでもよい。他の追加成分としては、例えば、ビタミン及び/又はアミノ酸を挙げることができる。ビタミン及びアミノ酸を含む添加物としては、例えば、藻類培養液KW21(第一製網)等の市販品を使用してもよい。
ビタミンとしては、例えば、ビタミンB12、ビオチン、チアミンなどを添加することができる。多くの藻類は上記の3種のビタミンを添加することにより増殖することができる。必要に応じ、上記以外の他のビタミンを添加してもよい。
アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどから選ばれる1種以上のアミノ酸を添加することができる。
ビタミン及びアミノ酸の培地における添加量は、特に限定されず、藻類の培養を好適に行うことができる量において使用することができる。
本発明で用いる培地には、上記以外に、増殖に必要な窒素、微量金属の無機塩(例えば、リン、カリウム、マグネシウム、鉄など)などを添加してもよい。培地にはさらに、炭素源、窒素源等の成分を適宜添加してもよい。
藻類の分類を以下に記載する。本発明で使用する藻類の種類は特に限定されず、以下の何れの藻類でもよい。
(1)藍色植物門 Cyanophyta:藍藻綱 Cyanophyceae
(2)原核緑色植物門 Prochlorophyta:原核緑色藻綱 Prochlorophyceae
(3)灰色植物門Glaucophyta:灰色藻綱 Glaucophyceae
(4)紅色植物門Rhodophyta:紅藻綱 Rhodophyceae
(5)緑色植物門Chlorophyta:プラシノ藻綱 Prasinophyceae、アオサ藻綱 Ulvophyceae、緑藻綱 Chlorophyceae、トレボキシア藻綱 Trebouxiophyceae、シャジクモ藻綱 Charophyceae
(6)クリプト植物門 Cryptophyta、クリプト藻綱Cryptophyceae
(7)クロララクニオン植物門Chlorarachniophyta:クロララクニオン藻綱Chlorarachniophyceae
(8)ユーグレナ植物門Euglenophyta:ユーグレナ藻綱 Euglenophyceae
(9)渦鞭毛植物門 Dinophyta:渦鞭毛藻綱 Dinophyceae
(10)黄色植物門Chromophyta:黄金色藻綱 Chrysophyceae 、ラフィド藻綱 Raphidophyceae 、真眼点藻綱 Eustigmatophyceae 、黄緑色藻綱 Xanthophyceae (Tribophyceae) 、
褐藻綱 Phaeophyceae (Fucophyceae)、珪藻綱Bacillariophyceae、ディクティオカ藻綱 Dictyochophyceae、ペラゴ藻綱 Pelagophyceae
(11)ハプト植物門 Haptophyta:ハプト藻綱 Haptophy
本発明で使用する藻類は好ましくは、珪藻又はハプト藻であり、特に好ましくはハプト藻Isochrysis sp. ,珪藻 Skeletonema costatum、又は珪藻Chaetoceros sp. である。
藻類の培養は通常の方法で行うことができ、好ましくは、光の量、気体成分(CO2など)、及び温度などを調節できる培養装置で行うこともできる。培養装置の形状および大きさは特に限定されない。例えば、培養ビン、フラスコなどで培養を行うこともできるし、パイロットスケール又は工業生産スケールで実施する場合は、所望の大きさの培養槽を用いることができる。培養槽としては、ジャー型培養槽、チューブ型培養槽、エアドーム型培養槽、中空円筒型培養槽などを用いることができる。
培養は、静置培養でもよいし、振とう培養でもよい。
培養温度は、藻類が生育又は増殖できる温度であれば特に限定されないが、一般的には10〜40℃であり、好ましくは15〜35℃である。
光強度は、3000Luxから6000Lux程度とすることができ、適当な明暗サイクルの条件を設定することができる。一例としては、16時間明期8時間暗期の条件を挙げることができるが特には限定されない。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されることはない。
逆浸透法によって濃縮された濃縮海水(70‰)(‰は、体積千分率)を蒸留水を用いて31‰になるまで希釈した。これに藻類培養液KW21(第一製網)を希釈された濃縮海水1000mlあたり1ml加え藻類培養用培地とした。この培地にハプト藻Isochrysis sp. ,珪藻 Skeletonema costatum、珪藻Chaetoceros sp. を植藻し培養試験を行った。
培養はプラスチック製角型培養フラスコ(ベントキャップ 25平方cm Trueline 日本ジェネティクス) に培地を30ml加え静置培養にて行った。培養条件は温度26℃、光強度4400Lux、明暗サイクル16時間明期8時間暗期の条件で行った。細胞濃度の測定は24時間毎にクロロフィル蛍光量を測定することによって行った。測定には携帯型クロロフィル蛍光測定装置FluorPen FP-100のFt測定モードによって行った。装置の設定はパルス光強度を100%とした。4日間の測定の結果を図1に示す。
図1に示す結果から分かるように、ハプト藻Isochrysis sp. ,珪藻 Skeletonema costatum、珪藻Chaetoceros sp.のいずれの株においても良好に増殖することが確認できた。

Claims (14)

  1. 濃縮海水を水で希釈することにより得られる塩分濃度を調整した海水を含む培地において藻類を培養することを含む、藻類の培養方法。
  2. 塩分濃度を調整した海水の塩分濃度が、50‰以下である、請求項1に記載の藻類の培養方法。
  3. 塩分濃度を調整した海水の塩分濃度が、35‰以下である、請求項1又は2に記載の藻類の培養方法。
  4. 濃縮海水が、逆浸透法によって濃縮された濃縮海水である、請求項1から3の何れか一項に記載の藻類の培養方法。
  5. 前記培地がさらに、ビタミン及びアミノ酸を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の藻類の培養方法。
  6. 藻類がハプト藻又は珪藻である、請求項1から5の何れか一項に記載の藻類の培養方法。
  7. 藻類が、ハプト藻Isochrysis sp. 、珪藻Skeletonema costatum、又は珪藻Chaetoceros sp. である、請求項1から6の何れか一項に記載の藻類の培養方法。
  8. 濃縮海水を水で希釈することにより得られる塩分濃度を調整した海水を含む、藻類の培養培地。
  9. 塩分濃度を調整した海水の塩分濃度が、50‰以下である、請求項8に記載の藻類の培養培地。
  10. 塩分濃度を調整した海水の塩分濃度が、35‰以下である、請求項8又は9に記載の藻類の培養培地。
  11. 濃縮海水が、逆浸透法によって濃縮された濃縮海水である、請求項8から10の何れか一項に記載の藻類の培養培地。
  12. 前記培地がさらに、ビタミン及びアミノ酸を含む、請求項8から11の何れか一項に記載の藻類の培養培地。
  13. 藻類が、ハプト藻又は珪藻である、請求項8から12の何れか一項に記載の藻類の培養培地。
  14. 藻類が、ハプト藻Isochrysis sp.、珪藻 Skeletonema costatum、又は珪藻Chaetoceros sp. である、請求項8から13の何れか一項に記載の藻類の培養培地。
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