JP2016176517A - サイクロイド減速機およびこれを備えたモータ駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイクロイド減速機の音響性能や耐久性の向上を図る。
【解決手段】偏心部25a,25bを有する入力軸25と、転がり軸受40を介して偏心部25a,25bの外周に保持された曲線板26a,26bとを備え、転がり軸受40が、内側軌道面42と外側軌道面43の間に介在する複数の円筒ころ44と、円筒ころ44の軸方向外側に隣接配置された円環状の鍔部46,46を有するサイクロイド減速機(減速部B)において、円筒ころ44の全長寸法Lに対する円筒ころ44の直径寸法Dの比(=L/D)を1.0以上2.0以下に設定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、サイクロイド減速機およびこれを備えたモータ駆動装置に関し、特に、運転走行用の駆動源として車両に搭載されるモータの回転を減速するための減速部に適用されるサイクロイド減速機、およびこれを備えたモータ駆動装置に関する。
上記のモータ駆動装置(車両用モータ駆動装置)は、装置全体がホイールの内部に収容され、あるいはホイール近傍に配置される関係上、その重量や大きさが車両のばね下重量(走行性能)や客室スペースの広さに影響を及ぼす。このため、車両用モータ駆動装置は、できるだけ軽量・コンパクト化する必要がある。その一方、車両用モータ駆動装置は、車輪を駆動するために大きなトルクを必要とする。これらの要請を同時に満足すべく、例えば下記の特許文献1には、駆動力を発生させるモータ部に、例えば15000min−1程度の回転速度で回転可能な高回転型のモータを採用すると共に、モータ部の回転を減速する減速部に、コンパクトで高い減速比が得られるサイクロイド減速機を採用した車両用モータ駆動装置としてのインホイールモータ駆動装置が提案されている。
サイクロイド減速機を適用した減速部は、偏心部を有し、モータ部の回転軸に連結される入力軸と、転がり軸受を介して偏心部の外周に回転自在に保持され、入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板と、公転運動中の曲線板に生じた曲線板の自転運動を出力軸の回転運動に変換する運動変換機構とを備える。このような構成を有する減速部では、モータ部が駆動されると入力軸が回転し、これに伴い、偏心部の外周に嵌合された転がり軸受(以下「偏心軸受」とも称す)には曲線板等を介して大きな荷重が繰り返し負荷される。このため、偏心軸受としては、高速回転に対応でき、かつ荷重負荷能力に優れた(負荷容量の大きい)円筒ころ軸受が好適に使用される。
特開2012−148725号公報
上記のとおり、入力軸の回転時、偏心軸受は高回転高荷重の過酷環境下で運転されることから、サイクロイド減速機の耐久性・信頼性を高めるためには、偏心軸受に必要十分の負荷容量を確保しておくことが重要となる。しかしながら、特許文献1では、偏心軸受に必要とされる負荷容量をいかにして確保するかについて何ら言及されていない。
上記の実情に鑑み、本発明の課題は、入力軸の偏心部に嵌合され、曲線板を回転自在に保持する転がり軸受を備えたサイクロイド減速機において、上記転がり軸受に必要とされる負荷容量を確保し、もって音響性能や耐久性に優れたサイクロイド減速機を実現することにある。
ところで、円筒ころ軸受の負荷容量は、円筒ころの直径寸法や全長寸法(軸方向寸法)に大きく影響される。すなわち、円筒ころ軸受の負荷容量は主に円筒ころの大きさに比例して増減することから、円筒ころ軸受の負荷容量を高めるには、円筒ころを大型化(大径化および/または長寸化)するのが有効である。しかしながら、円筒ころを大型化すると、上記の転がり軸受、ひいてはサイクロイド減速機も必然的に大型化するため、サイクロイド減速機を減速部に適用した車両用モータ駆動装置に対する軽量・コンパクト化の要請に反することとなる。
例えば、円筒ころの直径寸法を変えずに円筒ころを長寸化する、あるいは、円筒ころの全長寸法を変えずに円筒ころを大径化する、という対策を講じれば、円筒ころの直径寸法および全長寸法の双方を大きくする場合と比較して、サイクロイド減速機の大型化を可及的に防止しつつも偏心軸受の負荷容量を増すことができる。ところが、前者の対応を採った場合、スキュー(円筒ころの自転軸に対する傾き)の発生時におけるころ端部側のずれ量が相対的に大きくなるため、異音、振動および異常発熱等が生じ易くなる。また、後者の対応を採った場合、円筒ころの外径部における周速度が速まるため、円筒ころと、円筒ころを適正位置(転送面上)に保持するために円筒ころの軸方向外側に設けられる円環状の鍔部との摺動接触時に異音や異常発熱等が生じ易くなる。
以上から、転がり軸受(サイクロイド減速機)の大型化、さらには転がり軸受の音響性能および耐久性低下を回避しつつ、転がり軸受に必要とされる負荷容量を確保するためには、どのようなサイズの円筒ころを選択使用するかが極めて重要となる。
以上の知見に基づき、本発明では、偏心部を有する入力軸と、転がり軸受を介して偏心部の外周に回転自在に保持され、入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板と、公転運動中の曲線板に生じた曲線板の自転運動を出力軸の回転運動に変換する運動変換機構とを備え、転がり軸受が、内側軌道面と外側軌道面の間に転動自在に配された複数の円筒ころと、円筒ころの軸方向外側に隣接配置された円環状の鍔部とを有するサイクロイド減速機において、円筒ころの全長寸法Lに対する円筒ころの直径寸法Dの比(L/D)を、1.0以上2.0以下に設定したことを特徴とするサイクロイド減速機を提供する。なお、本発明でいう「転がり軸受」とは、上述した「偏心軸受」に対応する。
上記の構成により、転がり軸受を大型化することなく、また、転がり軸受の音響性能および耐久性を低下させることなく、転がり軸受に必要とされる負荷容量を確保することができる。これにより、軽量・コンパクトでありながら、音響性能や耐久性に優れたサイクロイド減速機を実現することができる。
曲線板の内径面に外側軌道面を形成すれば、転がり軸受の外輪を省略することができるので、サイクロイド減速機の軽量・コンパクト化を図ることができる。
本発明に係るサイクロイド減速機は、モータ部と、モータ部の回転を減速する減速部とを備えたモータ駆動装置の減速部に好ましく適用することができる。上記のモータ駆動装置としては、例えば、車輪を回転自在に支持する車輪用軸受部が減速部の出力軸に連結されるもの(インホイールモータ駆動装置)や、減速部からの出力を車輪に回転動力を伝達するためのドライブシャフトが減速部の出力軸に連結され、装置全体が車体に搭載されるもの(オンボードタイプのモータ駆動装置)、などを挙げることができる。
以上より、本発明によれば、入力軸の偏心部に嵌合され、曲線板を回転自在に保持する転がり軸受を備えたサイクロイド減速機において、上記の転がり軸受を大型化等することなく、転がり軸受に必要とされる負荷容量を確保することができる。これにより、軽量・コンパクトでありながら、音響性能および耐久性に優れたサイクロイド減速機、およびこれを備えたモータ駆動装置を実現することができる。
本発明の実施形態に係るサイクロイド減速機を減速部に適用したモータ駆動装置のうち、減速部の出力軸に車輪用軸受部が連結されたインホイールモータ駆動装置の全体構造を示す図である。 (a)図は、図1に示すインホイールモータ駆動装置の減速部の部分拡大図、(b)図は、曲線板を回転自在に支持する転がり軸受を構成する円筒ころの拡大図である。 図1のX1−X1線矢視断面図である 曲線板に作用する荷重を示す説明図である。 回転ポンプの横断面図である。 本発明の実施形態に係るサイクロイド減速機を減速部に適用したモータ駆動装置のうち、減速部の出力軸にドライブシャフトが連結されたオンボードタイプのモータ駆動装置の全体構造を示す図である。 電気自動車の概略平面図である。 図7の電気自動車を後方から見た概略断面図である。
図7および図8に基づいて、モータ駆動装置としてのインホイールモータ駆動装置を搭載した電気自動車11の概要を説明する。図7に示すように、電気自動車11は、シャシー12と、操舵輪として機能する一対の前輪13と、駆動輪として機能する一対の後輪14と、左右の後輪14のそれぞれを駆動するインホイールモータ駆動装置21とを備える。図7および図8に示すように、後輪14は、シャシー12のホイールハウジング12aの内部に収容され、懸架装置(サスペンション)12bを介してシャシー12の下部に固定されている。なお、本明細書中でいう「電気自動車」とは、電力を駆動力として活用する全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等をも含む。
懸架装置12bは、左右に延びるサスペンションアームによって後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットによって、後輪14が路面から受ける振動を吸収してシャシー12の振動を抑制する。さらに、左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時等の車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられる。懸架装置12bは、路面の凹凸に対する追従性を向上し、後輪14の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式とするのが望ましい。
この電気自動車11では、左右のホイールハウジング12aの内部に、左右の後輪14それぞれを回転駆動させるインホイールモータ駆動装置21が組み込まれるので、シャシー12上にモータ、ドライブシャフトおよびデファレンシャルギヤ機構等を設ける必要がなくなる。そのため、この電気自動車11は、客室スペースを広く確保でき、しかも、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を備えている。
電気自動車11の走行安定性およびNVH特性を向上するためには、ばね下重量を抑える必要がある。また、電気自動車11の客室スペースを拡大するためには、インホイールモータ駆動装置21をできるだけ小型化する必要がある。そこで、図1に示すようなインホイールモータ駆動装置21を採用する。
図1〜図5に基づき、本発明の実施形態に係るサイクロイド減速機を減速部に適用したインホイールモータ駆動装置21を説明する。図1に示すように、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を後輪14(図7,8参照)に伝達する車輪用軸受部Cとを備え、これらはケーシング22に保持されている。ケーシング22は電気自動車11のホイールハウジング12a(図8参照)内に取り付けられる。
モータ部Aは、ケーシング22に固定されているステータ23aと、ステータ23aの内側に径方向の隙間を介して対向配置されたロータ23bと、外周にロータ23bを装着した中空構造の回転軸(モータ回転軸)24とを備えるラジアルギャップモータである。モータ回転軸24は最大15000min−1程度の回転速度で回転可能とされている。
モータ回転軸24は、その軸方向一方側(図1の右側であり、以下「インボード側」ともいう)および他方側(図1の左側であり、以下「アウトボード側」ともいう)の端部にそれぞれ配置された転がり軸受(図示例は、深溝玉軸受)36,36によってケーシング22に対して回転自在に支持されている。
車輪用軸受部Cは、中空構造のハブ輪32と、ハブ輪32をケーシング22に対して回転自在に支持する車輪用軸受33とを備える。ハブ輪32は、減速部Bの出力軸28に連結された円筒状の中空部32aと、中空部32aのアウトボード側の端部から径方向外向きに延びたフランジ部32bとを一体に有する。フランジ部32bにはボルト32cによって後輪14(図7,8参照)が連結固定されるので、ハブ輪32の回転時には後輪14がハブ輪32と一体回転する。
車輪用軸受33は、ハブ輪32の外径面に形成された内側軌道面33fおよび外径面の小径段部に嵌合された内輪33aを有する内方部材と、ケーシング22の内径面に嵌合固定された外輪33bと、内方部材と外輪33bの間に配置された複数のボール33cと、ボール33cを周方向に離間した状態で保持する保持器33dと、車輪用軸受33の軸方向両端部を密封する一対のシール部材33e,33eとを備えた複列アンギュラ玉軸受である。
減速部Bには、図2(a)にも拡大して示すように、モータ部Aにより回転駆動される入力軸25と、入力軸25と同軸配置された出力軸28と、入力軸25の回転を減速した上で出力軸28に伝達する減速機構とを備えたサイクロイド減速機が採用されている。出力軸28は、減速機構により減速された入力軸25の回転を車輪用軸受部Cに伝達する。
入力軸25は、そのインボード側の端部外周に形成したスプライン25g(セレーションを含む。以下同じ。)を、モータ回転軸24のアウトボード側の端部内周に形成したスプラインに嵌合する、いわゆるスプライン嵌合によってモータ回転軸24とトルク伝達可能に連結されている。
図2(a)にも拡大して示すように、入力軸25の軸方向二箇所には、軸心が入力軸25の回転軸心に対して偏心した偏心部25a,25bが一体又は別体(本実施形態では一体)に設けられている。2つの偏心部25a,25bは、偏心運動(偏心回転)によって生じる遠心力を互いに打ち消し合うために、位相を180°異ならせて設けられている。
入力軸25は、軸方向の二箇所に離間して配置された転がり軸受37a,37bによって減速部Bの出力側に対して回転自在に支持されている。転がり軸受37a,37bは、何れも、転動体としてボールを用いた玉軸受である。
出力軸28は、図1に示すように、軸部28bとフランジ部28aとを有する。フランジ部28aは、後述する内ピン31のアウトボード側の端部を固定した孔部(図示例は貫通孔)を有し、孔部は、出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に等間隔で複数形成されている。軸部28bは、スプライン嵌合によって車輪用軸受部Cのハブ輪32にトルク伝達可能に連結されている。出力軸28は、内ピン31の軸方向両側に配置された転がり軸受48,48のうち、アウトボード側の転がり軸受48を介して外ピンハウジング60に回転自在に支持されている。
減速機構は、図2(a)にも示すように、転がり軸受40,40を介して偏心部25a,25bの外周に回転自在に保持され、入力軸25の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板26a,26bと、外ピンハウジング60の固定位置に保持され、(公転運動中の)曲線板26a,26bの外周部と係合して曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる複数の外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を出力軸28の回転運動に変換する運動変換機構と、偏心部25a,25bの軸方向外側に隣接配置された一対のカウンタウェイト29,29とを備える。
図3に示すように、曲線板26aは、その外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有する。また、曲線板26aは、その両端面に開口する軸方向の貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26aの自転軸心を中心とする円周上に等間隔で複数設けられており、各貫通孔30aには後述する内ピン31が1本ずつ挿入される。貫通孔30bは、曲線板26aの中心に設けられており、偏心部25aの外周に転がり軸受40を介して嵌合される。
転がり軸受40は、図2(a)および図3に示すように、外径面に内側軌道面42を有し、偏心部25aの外径面に嵌合された内輪41と、曲線板26aの内径面(貫通孔30bを画成する内壁面)に直接形成された外側軌道面43と、内側軌道面42と外側軌道面43の間に転動自在に配置された複数の円筒ころ44と、円筒ころ44を周方向所定間隔で保持する保持器45(図3では省略)とを備えた円筒ころ軸受である。内輪41は、その軸方向両端部から径方向外側に延び、円筒ころ44の軸方向外側に隣接配置された円環状の鍔部46,46を一体に有する。
詳細な説明は省略するが、曲線板26bは、曲線板26aと同様の構造を有しており、曲線板26aを支持する転がり軸受40と同様の転がり軸受40を介して偏心部25bに対して回転自在に支持されている。
カウンタウェイト29は略扇形状で、入力軸25の外周に嵌合固定されている。各カウンタウェイト29は、曲線板26a,26bの回転によって生じる不釣合い慣性偶力を打ち消すために、軸方向に隣接する偏心部25a(又は25b)と180°位相を変えて配置される。
図3に示すように、外ピン27は、入力軸25の回転軸心を中心とする円周上に等間隔で複数設けられている。入力軸25が回転するのに伴って曲線板26a,26bが公転運動すると、曲線板26a,26bの外周部と外ピン27とが係合し、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。各外ピン27は、図2に示すように、その軸方向両端部に配された一対の転がり軸受(針状ころ軸受)61,61、および一対の針状ころ軸受61,61を内周に保持した外ピンハウジング60を介してケーシング22に回転自在に支持されている。かかる構成により、外ピン27と曲線板26a,26bとの間の接触抵抗が低減される。
詳細な図示は省略しているが、外ピンハウジング60は、弾性支持機能を有する回り止め手段によってケーシング22に対してフローティング状態に支持されている。これは、車両の旋回や急加減速等によって生じる大きなラジアル荷重やモーメント荷重を吸収し、曲線板26a,26bの自転運動を出力軸28の回転運動に変換する運動変換機構の構成部品の損傷を防止するためである。
図2(a)および図3に示すように、本実施形態の運動変換機構は、曲線板26a,26bに設けた複数の貫通孔30aと、各貫通孔30aに1本ずつ挿入された複数の内ピン31とで構成される。内ピン31は、出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に配置されており、そのアウトボード側の端部が出力軸28のフランジ部28aに設けた孔部に固定されている。内ピン31のうち、貫通孔30aの内壁面との対向部には、針状ころ軸受31aが設けられている。貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(「針状ころ軸受31aを含む最大外径」を指す。以下同じ。)よりも所定寸法大きく設定されている。かかる態様で針状ころ軸受31aが設けられていることにより、内ピン31と曲線板26a,26bとの摩擦抵抗が低減されるため、運動変換機構におけるトルク損失が可及的に防止される。
図2(a)に示すように、減速部Bは、スタビライザ70をさらに有する。スタビライザ70は、円環形状の円環部70aと、円環部70aの内径面からインボード側に延びる円筒部70bとを有し、各内ピン31のインボード側の端部は円環部70aに固定されている。これにより、モータ部Aの駆動時(入力軸25の回転時)に曲線板26a,26bから一部の内ピン31に負荷される荷重は出力軸28およびスタビライザ70を介して全ての内ピン31によって支持される。
ここで、モータ部Aの駆動時に、曲線板26a、さらには入力軸25に作用する荷重の状態を図4に基づいて説明する。なお、モータ部Aの駆動時には、曲線板26bにも以下に説明するのと同様にして荷重が作用する。
入力軸25に設けられた偏心部25aの軸心Oは、入力軸25の軸心(回転軸心)Oから偏心量eだけ偏心している。偏心部25aの外周には転がり軸受40を介して曲線板26aが保持され、偏心部25aは、転がり軸受40を介して曲線板26aを回転自在に支持するので、軸心Oは曲線板26aの軸心でもある。曲線板26aの外周部は波形曲線で形成され、径方向に窪んだ凹部34を周方向等間隔に有する。曲線板26aの周囲には、凹部34と係合する外ピン27が入力軸25の軸心Oを中心として周方向に複数配設されている。
図4において、モータ部Aが駆動されるのに伴って入力軸25が紙面上で反時計周りに回転すると、偏心部25aおよびその外周に保持された曲線板26aは軸心Oを中心とする公転運動を行うので、曲線板26aの外周部に形成された凹部34が外ピン27と周方向に順次当接する。この結果、曲線板26aは、複数の外ピン27から図中矢印で示すような荷重Fiを受けて時計回りに自転する。
また、曲線板26aには貫通孔30aが軸心Oを中心として周方向に複数配設されており、各貫通孔30aには、入力軸25と同軸配置された出力軸28に対して固定的に設けられた内ピン31が挿入されている。貫通孔30aの内径は内ピン31の外径よりも所定寸法大きいため、内ピン31は、曲線板26aの公転運動の障害とはならず、自転している曲線板26aの貫通孔30aの内壁面と摺動接触することによって曲線板26aの自転運動を取り出し、出力軸28を回転させる(出力軸28の回転運動に変換する)。このとき、出力軸28は、入力軸25よりも高トルクかつ低回転数になり、曲線板26aは、複数の内ピン31から図中矢印で示すような荷重Fjを受ける。これらの複数の荷重Fi、Fjの合力Fsが転がり軸受40を介して入力軸25に作用する。
合力Fsの方向は、曲線板26aの外周部の形状や凹部34の数などの幾何学的条件の他、遠心力の影響により変化する。具体的には、自転軸心Oを通り、自転軸心Oと軸心Oとを結ぶ直線Yに対して90°の方向に延びる基準線Xと、合力Fsとがなす角度αは概ね30°〜60°で変動する。上記の複数の荷重Fi、Fjは、入力軸25が1回転する間に荷重の方向や大きさが変化し、その結果、入力軸25に作用する合力Fsも荷重の方向や大きさが変動する。そして、入力軸25が1回転すると、曲線板26aの凹部34が減速されて1ピッチ時計回りに回転し、図4の状態になり、これを繰り返す。
インホイールモータ駆動装置21は、主に図1および図2(a)中に白抜き矢印で示すような流れでモータ部Aおよび減速部Bの各所に潤滑油を供給する潤滑機構を有する。この潤滑機構は、ケーシング22の壁部内に設けた油路22a、モータ回転軸24に設けた油路24a,24b、入力軸25に設けた油路25c,25d1〜25d3,25e、スタビライザ70に設けた油路70c、内ピン31に設けた内部油路31c31b、ケーシング22に設けた排油口22b、ケーシング22の下方に設けられ、潤滑油を(一時的に)貯留する潤滑油貯留部22d、回転ポンプ51、および潤滑油貯留部22dと回転ポンプ51の間に設けた油路22eなどを含んで構成される。
モータ回転軸24に設けた油路24a,24bは、それぞれ、モータ回転軸24の内部を軸方向および径方向に延びており、油路24aには、入力軸25の内部を軸方向に延びた軸方向油路としての油路25cが接続されている。油路25d1〜25d3は、油路25cから入力軸25の外径面に向かって径方向に延びており、本実施形態の油路25d1〜25d3の外径端部は、それぞれ、入力軸25の外径面のうちスタビライザ70に設けた油路70cの内径側開口部と略同一の軸方向位置、偏心部25aの外径面、および偏心部25bの外径面に開口している。油路25eは、油路25cのアウトボード側の端部から軸方向に延び、入力軸25のアウトボード側の外端面に開口している。
図2(a)に示すように、インボード側の偏心部25aに嵌合された転がり軸受40の内輪41は、その内径面および外径面(内側軌道面42)に開口した貫通孔41aを有し、この内輪41は、上記の貫通孔41aと、入力軸25の油路25d2との位相を合わせるようにして偏心部25aの外周に嵌合されている。かかる構成により、入力軸25の油路25cと偏心部25aに嵌合された転がり軸受40の内部空間とが、入力軸25の油路25d2および転がり軸受40の貫通孔41aを介して連通する。
また、アウトボード側の偏心部25bに嵌合された転がり軸受40の内輪41も、その内径面および外径面に開口した貫通孔41aを有し、この内輪41は、上記の貫通孔41aと、入力軸25の油路25d3との位相を合わせるようにして、偏心部25bの外周に嵌合されている。かかる構成により、入力軸25の油路25cと偏心部25bに嵌合された転がり軸受40の内部空間とが、入力軸25の油路25d3および転がり軸受40の貫通孔41aを介して連通する。
なお、図示は省略するが、例えば、偏心部25aの外径面のうち、油路25d2が設けられる軸方向位置には環状溝を設けても良い。この場合、油路25d2と内輪41の貫通孔41aとを環状溝を介して連通させることができるため、偏心部25aの外周に内輪41を嵌合する際に、油路25d2と貫通孔41aの位相合わせが不要となる。偏心部25bについても同様である。
図1に示すように、ケーシング22に設けた排油口22bは、減速部B内部の潤滑油を潤滑油貯留部22dに排出するものであって、ケーシング22のうち減速部Bを収容した部分の少なくとも1箇所に設けられている。排油口22bとモータ回転軸24の油路24aとは、潤滑油貯留部22d、油路22eおよび油路22aを介して接続されている。そのため、排油口22bから潤滑油貯留部22dに排出され、潤滑油貯留部22dに貯留された潤滑油は、油路22eや油路22a等を経由してモータ回転軸24の油路24aに再度流入する。
回転ポンプ51は、潤滑油貯留部22dに接続された油路22eと油路22aとの間に設けられている。回転ポンプ51をケーシング22内に配置することによって、インホイールモータ駆動装置21が全体として大型化するのを防止することができる。本実施形態の回転ポンプ51は、図5に示すように、出力軸28の回転を利用して回転するインナーロータ52と、インナーロータ52の回転に伴って従動回転するアウターロータ53と、両ロータ52,53間の空間に設けられた複数のポンプ室54と、油路22eに連通する吸入口55と、油路22aに連通する吐出口56とを備えるサイクロイドポンプである。インナーロータ52は、回転中心cを中心として回転し、アウターロータ53は、インナーロータ52の回転中心cとは異なる回転中心cを中心として回転する。また、インナーロータ52の歯数をnとしたとき、アウターロータ53の歯数を(n+1)としており、本実施形態ではn=5としている。そのため、出力軸28の回転に伴ってインナーロータ52が回転するとポンプ室54の容積は連続的に変化する。これにより、吸入口55からポンプ室54に流入した潤滑油は吐出口56から油路22aに圧送される。
潤滑機構は、主に以上の構成を有しており、以下のようにしてモータ部Aおよび減速部Bの各所を潤滑・冷却する。
まず、図1に示すように、モータ部Aのうち、ロータ23bおよびステータ23aは、主に、ケーシング22の油路22aを介してモータ回転軸24の油路24aに供給された潤滑油の一部が、モータ回転軸24の回転に伴って生じる遠心力および回転ポンプ51の圧力の影響を受けて油路24bの外径側開口部から吐出されることにより潤滑される。すなわち、油路24bの外径側開口部から吐出された潤滑油はロータ23bに供給され、その後、ステータ23aに供給される。また、モータ回転軸24のインボード側の端部を支持する転がり軸受36は、主に、油路22aを流れる潤滑油の一部がケーシング22とモータ回転軸24との間の隙間から滲み出ることにより潤滑される。さらに、モータ回転軸24のアウトボード側の端部を支持する転がり軸受36は、主に、油路24bから吐出され、ケーシング22のうち、モータ部Aを収容した部分のアウトボード側の内壁面を伝い落ちてきた潤滑油により潤滑される。
次に、モータ回転軸24の油路24aを経由して入力軸25の油路25cに流入した潤滑油は、図2(a)に示すように、入力軸25の回転に伴う遠心力や回転ポンプ51の圧力の影響を受けることにより、油路25d1〜25d3,25eを介して減速部Bの内部に供給される。
具体的に述べると、まず、油路25d2,25d3の外径端部から吐出された潤滑油は、各転がり軸受40の内輪41に設けた貫通孔41aを介して転がり軸受40の内部空間に供給され、軌道面42,43や円筒ころ44を潤滑する。軌道面42,43等を潤滑した潤滑油は、外側軌道面43と保持器45の外径面との間、および内輪41に設けた鍔部46の外径面と保持器45の内径面との間にそれぞれ形成される径方向隙間(詳細な図示は省略)を介して転がり軸受40の外部に排出され、その後、遠心力の作用により、曲線板26a,26bと内ピン31(針状ころ軸受31a)との接触部や、曲線板26a,26bと外ピン27との接触部等を潤滑しながら径方向外側に移動する。また、油路25eを介して入力軸25の外側に吐出された潤滑油は、遠心力の作用により、入力軸25のアウトボード側の端部を支持する転がり軸受37bを潤滑した後、転がり軸受40(特に偏心部25bに嵌合された転がり軸受40)や曲線板26a,26bと内ピン31との接触部等を潤滑しながら径方向外側に移動する。
一方、油路25d1の外径端部から吐出された潤滑油は、スタビライザ70の油路70c、および内ピン31の内部油路31bを介して針状ころ軸受31aに供給され、針状ころ軸受31aの軌道面や針状ころを潤滑する。このようにして針状ころ軸受31aの内部を潤滑した潤滑油は、曲線板26a,26bと内ピン31との接触部や、曲線板26a,26bと外ピン27との接触部などを潤滑しながら径方向外側に移動する。なお、油路25d1の外径端部から吐出された潤滑油は、入力軸25の軸方向略中央部を支持する転がり軸受37aの内部も潤滑する。また、本実施形態では、スタビライザ70の油路70cの外径側開口部の径方向外側に、油路70cの外径側開口部から吐出された潤滑油を内ピン31の内部油路31bに誘導する誘導部材71を設けているので、針状ころ軸受31a等に対して効率良く潤滑油を供給することができる。
そして、遠心力の影響を受けて径方向外側に移動し、最終的にケーシング22の内壁面に到達した潤滑油は、重力によりケーシング22の下部に集まり、排油口22bから排出されて潤滑油貯留部22dに貯留される。このように、排油口22bと回転ポンプ51に接続された油路22eとの間に潤滑油貯留部22dが設けられているので、特に高速回転時などに回転ポンプ51によって排出しきれない潤滑油が一時的に発生しても、その潤滑油を潤滑油貯留部22dに貯留しておくことができる。その結果、減速部Bの各所における発熱やトルク損失の増加を防止することができる。一方、特に低速回転時などには、排油口22bに到達する潤滑油量が少なくなるが、このような場合であっても、潤滑油貯留部22dに貯留されている潤滑油をケーシング22の油路22a等を介してモータ回転軸24の油路24a、さらには入力軸25の油路25cに還流することができるので、モータ部Aおよび減速部Bに安定して潤滑油を供給することができる。
なお、減速部B内部の潤滑油は、遠心力に加え、重力によっても径方向外側に移動する。したがって、このインホイールモータ駆動装置21は、潤滑油貯留部22dがインホイールモータ駆動装置21の下部に位置するように、電気自動車11に取り付けるのが望ましい。
インホイールモータ駆動装置21の全体構造は前述したとおりであり、本実施形態のインホイールモータ駆動装置21は、その音響性能(静粛性)や耐久性を高めるために、サイクロイド減速機を採用した減速部Bにおいて以下に示すような特徴的な構成を採用している。
まず、曲線板26a,26bを回転自在に保持した転がり軸受(円筒ころ軸受)40において、図2(b)に示すように、円筒ころ44の全長寸法(軸方向寸法)をLとし、円筒ころ44の直径寸法をDとしたとき、Lに対するDの比(=L/D)を1.0以上2.0以下、より好ましくは1.3以上1.6以下に設定している。これは、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上記の比(L/D)を所定の数値範囲内に設定することが、サイクロイド減速機(減速部B)、ひいてはインホイールモータ駆動装置21の大型化を招来することなく、サイクロイド減速機の音響性能や耐久性を高める上で有効であることを見出したことに由来する。要するに、本発明者らが上記の比(=L/D)について調査したところ、下記の表1に示すような結果が得られた。なお、表1における「◎」は極めて良好であること(実用上全く問題がないこと)を意味し、「○」は良好であること(実用上問題がないこと)を意味し、「△」は使用条件によっては問題が生じる可能性が僅かながらにあることを意味し、「×」は実用上問題が生じる可能性が高いことを意味している。
Figure 2016176517
上記の表1からも明らかなように、例えば、比(L/D)が1.0を下回る程度にまで円筒ころ44を大径化すると、円筒ころ44の外径部における周速度が速まるため、円筒ころ44と、円筒ころ44の軸方向外側に設けられる円環状の鍔部46との摺動接触時に異音や異常発熱等が生じ易くなる。また、比(L/D)が1.0を下回る程度にまで円筒ころ44を大径化する(あるいは円筒ころ44の全長寸法を短縮する)と、円筒ころ44の加工性が低下するため、コスト面で問題が生じる。
一方、上記の比(L/D)が2.0を上回る場合、要するに、円筒ころ44の直径寸法Dに対して円筒ころ44の全長寸法Lが十分に大きくなると、円筒ころ44の加工性低下の問題や、円筒ころ44と鍔部46の摺動接触に起因した異音や異常発熱等の問題は顕在化しないものの、転がり軸受40、ひいてはサイクロイド減速機の軸方向寸法が過剰に拡大する他、スキュー(円筒ころ44の自転軸に対する傾き)の発生時における円筒ころ44端部側のずれ量が相対的に大きくなるため、異音、振動および異常発熱等が生じ易くなる。
これに対し、表1からも明らかなように、上記の比(L/D)を1.0以上2.0以下(好ましくは1.3以上1.6以下)の範囲内に設定すれば、円筒ころ44の加工性低下、円筒ころ44と鍔部46の摺動接触に由来した異音や異常発熱の発生、転がり軸受40(サイクロイド減速機)の大型化、およびスキュー発生時における異音、振動および異常発熱の発生等を可及的に防止しつつ、転がり軸受40に必要とされる負荷容量を確保することができる。これにより、軽量・コンパクトでありながら、音響性能および耐久性に優れたサイクロイド減速機(減速部B)、ひいてはインホイールモータ駆動装置21を実現することができる。
転がり軸受40のうち、軸方向で互いに対向する円筒ころ44の端面と鍔部46の端面の少なくとも一方の表面粗さはRa0.25μm以下、好ましくはRa0.13μm以下に設定する。上記の対向二面の少なくとも一方の表面粗さをRa0.25μm以下にすることは、特定の加工条件によって旋削することにより十分達成可能である。
このように、上記の対向二面の表面粗さをRa0.25μm以下に設定すれば、転がり軸受40が高回転高荷重の過酷環境下で使用されることに鑑みて、転がり軸受40の転動体に比較的大径の円筒ころ44を用いる必要がある場合でも、円筒ころ44と鍔部46の摺動接触に伴う異音・振動の発生を可及的に防止することができる。これにより、減速部B(サイクロイド減速機)、ひいてはインホイールモータ駆動装置21の音響性能や耐久性を一層高めることができる。
なお、円筒ころ44は、軸受鋼からなり、浸炭窒化処理が施され、かつ表層部の残留オーステナイト量が20〜35%であることが好ましい。また、内輪41は、軸受鋼からなり、浸炭窒化処理が施され、表層の残留オーステナイト量が25〜50%であり、且つ、芯部の残留オーステナイト量が15〜20%であることが好ましい。このようにすれば、転動疲労寿命を向上させることができると共にクラックの発生およびその進展を抑制することができるので、転がり軸受40、ひいてはインホイールモータ駆動装置21の耐久性向上(長寿命化)を図ることができる。また、同程度の寿命を確保する上では、上記構成を具備しない軌道輪(内輪および外輪)を採用する場合に比べ、軌道輪の薄肉化を実現することができるので、サイクロイド減速機(減速部B)を小型・軽量化することができる。
また、詳細な図示は省略するが、曲線板26a,26bは、SCM415、SCM420、SCr420等の肌焼き鋼で形成し、これに熱処理としての浸炭焼入れ焼戻しが施されることにより形成された表面硬化層を有するものとするのが好ましい。
このようにすれば、曲線板26aの内径面に転がり軸受40の外側軌道面43を直接形成した本実施形態においても、円筒ころ44が外側軌道面43上を転送することによる摩耗や損傷を可及的に防止することができる。また、曲線板26a,26bの表層部に、浸炭焼入れ焼戻しに伴う硬化層が形成されていれば、曲線板26a,26bの外周部が、外ピン27から負荷される荷重によって変形したり、外ピン27との摺動に伴って摩耗したりするのを、また、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aの内壁面が、内ピン31から負荷される荷重によって変形したり、内ピン31(針状ころ軸受31a)との摺動に伴って摩耗したりするのを効果的に防止することができる。従って、曲線板26a,26b、ひいてはサイクロイド減速機(減速部B)の耐久性を高めることができる。
その一方、曲線板26a,26bとして上述のものを採用すれば、曲線板26a,26bの芯部には硬化層が形成されていないことになり、この場合、曲線板26a,26bは靱性を有する。これにより、例えば車両の運転走行時に車輪用軸受部Cを介して減速部Bに瞬間的な衝撃荷重が入力された場合でも、この衝撃荷重により曲線板26a,26bが変形・破損等する可能性を効果的に減じることができる。また、肌焼き鋼は、熱処理(浸炭焼入れ焼戻し)前の段階では比較的軟質で加工性に富むので、複雑形状の曲線板26a,26bを効率良く作製することができる。しかも、熱処理方法として選択した浸炭焼入れ焼戻しは、形状変更に対する柔軟性を有するので、曲線板26a,26bの新規作製および設計変更の際に必要となるコストは少なくて済む。
以上の構成を有するインホイールモータ駆動装置21の全体的な作動原理を、図1および図4を参照しながら説明する。
モータ部Aでは、例えば、ステータ23aのコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石又は磁性体によって構成されるロータ23bが回転する。これに伴って、モータ回転軸24に連結された入力軸25が回転すると、曲線板26a、26bは入力軸25の回転軸心を中心として公転運動する。このとき、外ピン27は、曲線板26a,26bの外周部に設けられた曲線形状の波形と周方向で係合し、曲線板26a、26bを入力軸25の回転方向とは逆向きに自転回転させる。
貫通孔30aに挿通された内ピン31は、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの内壁面と当接する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが出力軸28を介して車輪用軸受部Cに伝達される。このとき、入力軸25の回転が減速部Bによって減速された上で出力軸28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪(後輪)14に必要なトルクを伝達することが可能となる。
上記構成の減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZ、曲線板26a,26bの外周部に設けた波形(凹部34)の数をZとすると、(Z−Z)/Zで算出される。図3に示す実施形態では、Z=12、Z=11であるので、減速比は1/11と非常に大きな減速比を得ることができる。
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、外ピン27および内ピン31を回転自在に支持する転がり軸受(針状ころ軸受)61,31aを設けたことにより、曲線板26a,26bと外ピン27および内ピン31との間の摩擦抵抗が低減されるので、この点からも減速部Bにおける動力伝達効率が向上する。
上述したように、本実施形態のインホイールモータ駆動装置21は、装置全体として軽量・コンパクト化が図られている。そのため、このインホイールモータ駆動装置21を電気自動車11に搭載すれば、ばね下重量を抑えることができるので、走行安定性およびNVH特性に優れた電気自動車11を実現することができる。
以上、本発明の一実施形態に係るサイクロイド減速機を減速部Bに適用したインホイールモータ駆動装置21について説明を行ったが、インホイールモータ駆動装置21には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
例えば、以上では、潤滑機構を構成する回転ポンプ51としてサイクロイドポンプを採用したが、これに限ることなく、出力軸28の回転を利用して駆動するあらゆる回転ポンプを採用することができる。さらには、回転ポンプ51を省略して、遠心力のみによって潤滑油を循環させるようにしてもよい。
また、以上では、入力軸25の軸方向二箇所に偏心部25a,25bを設けたが、偏心部の設置個数は任意に設定することができる。例えば、偏心部は、入力軸25の軸方向三箇所に設けることができ、この場合、各偏心部は、入力軸25の回転に伴って生じる遠心力を打ち消し合うように120°位相を変えて設けるのが好ましい。
また、以上では、主に、曲線板26a,26bに設けた貫通孔30aと、貫通孔30aの内壁面と摺動可能に出力軸28に固定された内ピン31とで運動変換機構を構成したが、運動変換機構は、これに限らず、曲線板26a,26bの自転運動を車輪用軸受部Cのハブ輪32に伝達可能な任意の構成とすることができる。
本実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから後輪14に伝達される。したがって、上述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。
また、モータ部Aに電力を供給してモータ部Aを駆動させ、モータ部Aからの動力を後輪14に伝達させる場合を示したが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、後輪14側からの動力を減速部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電するように構成することもできる。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、モータ部Aの駆動用電力や、車両に備えられた他の電動機器の作動用電力として活用することもできる。
また、以上で説明した実施形態では、モータ部Aにラジアルギャップモータを採用したが、本発明は、モータ部Aに、ステータとロータとを軸方向の隙間を介して対向させるアキシャルギャップモータを採用した場合にも好ましく適用できる。
さらに、本発明に係るインホイールモータ駆動装置21は、後輪14を駆動輪とした後輪駆動タイプの電気自動車11のみならず、前輪13を駆動輪とした前輪駆動タイプの電気自動車や、前輪13および後輪14を駆動輪とした4輪駆動タイプの電気自動車に適用することもできる。
また、本発明に係るサイクロイド減速機は、インホイールモータ駆動装置以外の電気自動車用のモータ駆動装置、例えば、減速部Bの出力側(出力軸28)にドライブシャフトがトルク伝達可能に連結され、装置全体が車体に搭載される、いわゆるオンボードタイプのモータ駆動装置の減速部にも好ましく適用することができる。
ここで、オンボードタイプのモータ駆動装置の一例を図6に基づいて説明する。同図に示すモータ駆動装置81は、駆動力を発生させるモータ部A’と、モータ部A’の回転を減速して出力する減速部B’と、減速部B’と駆動輪(後輪)14の間に介在するドライブシャフト100とを備え、モータ部A’、減速部B’およびドライブシャフト100は、左右一対の駆動輪14を個別に回転駆動するために2個ずつ設けられている。2個のモータ部A’は、同軸に背中合わせで隣接して配設されており、左右一対の減速部B’およびドライブシャフト100はモータ部A’と同軸に配設されている。このモータ駆動装置81のモータ部A’および減速部B’には、図1,2等に示すインホイールモータ駆動装置21に適用したモータ部Aおよび減速部Bと基本的に同様の構成を有するものを採用している。そのため、モータ部A’および減速部B’の構造や動作態様等についての詳細説明は省略する。
ドライブシャフト100は、駆動輪14側の固定式等速自在継手101と、減速部B’側の摺動式等速自在継手102と、両等速自在継手101,102を連結する中間シャフト103とを主な構成とする。減速部B’の出力軸は、摺動式等速自在継手101にスプライン嵌合によって連結されており、減速部B’の出力は、ドライブシャフト100を介して駆動輪14に伝達される。
図6に示すモータ駆動装置81では、左右の駆動輪14を個別に駆動するために、モータ部A’および減速部B’をそれぞれ2個ずつ配設すると共に、2個の減速部B’のそれぞれに本発明に係るサイクロイド減速機を適用しているが、本発明に係るサイクロイド減速機は、1個のモータ部A’と1個の減速部B’とを備えたオンボードタイプのモータ駆動装置の減速部B’にも好ましく適用することができる。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
11 電気自動車
21 インホイールモータ駆動装置
25 入力軸
25a,25b 偏心部
26a,26b 曲線板
27 外ピン
28 出力軸
40 転がり軸受
41 内輪
42 内側軌道面
43 外側軌道面
44 円筒ころ
46 鍔部
81 (オンボードタイプの)モータ駆動装置
100 ドライブシャフト
A モータ部
A’ モータ部
B 減速部(サイクロイド減速機)
B’ 減速部(サイクロイド減速機)
C 車輪用軸受部
D 円筒ころの直径寸法
L 円筒ころの全長寸法

Claims (4)

  1. 偏心部を有する入力軸と、転がり軸受を介して前記偏心部の外周に回転自在に保持され、前記入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板と、公転運動中の前記曲線板に生じた前記曲線板の自転運動を出力軸の回転運動に変換する運動変換機構とを備え、
    前記転がり軸受が、内側軌道面と外側軌道面の間に転動自在に配された複数の円筒ころと、該円筒ころの軸方向外側に隣接配置された円環状の鍔部とを有するサイクロイド減速機において、
    前記円筒ころの全長寸法Lに対する前記円筒ころの直径寸法Dの比(L/D)を、1.0以上2.0以下に設定したことを特徴とするサイクロイド減速機。
  2. 前記曲線板の内径面に前記外側軌道面が形成された請求項1に記載のサイクロイド減速機。
  3. モータ部と、モータ部の回転を減速する減速部とを備え、前記減速部に、請求項1又は2に記載のサイクロイド減速機が適用され、車輪を回転自在に支持する車輪用軸受部が前記出力軸に連結されたモータ駆動装置。
  4. モータ部と、モータ部の回転を減速する減速部とを備え、前記減速部に、請求項1又は2に記載のサイクロイド減速機が適用され、前記減速部からの出力を車輪に伝達するためのドライブシャフトが前記出力軸に連結されたモータ駆動装置。
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