JP2016175841A - リポソームと、細胞障害性t細胞活性を誘導するワクチン組成物 - Google Patents

リポソームと、細胞障害性t細胞活性を誘導するワクチン組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】カチオン性油脂リポソームに抗原タンパク質を混合分散させたCTL誘導ワクチン組成物の実用性を向上させるための新しい手段を提供する。【解決手段】(a)カチオン性油脂、(b)界面活性剤、および(c)コレステロール、1-オレオイル-rac-グリセリン、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、DOPG(1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール)、スクワレン、Mannide monooleate(二縮マンニトール一オレイン酸)からなる群より選択された1種以上を含む油脂組成物が蒸留水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に分散混合していることを特徴とするリポソームと、このリポソームに抗原タンパク質が混合分散されている、細胞障害性T細胞(CTL)活性を誘導するワクチン組成物。【選択図】なし

Description

本願発明は、病原体や腫瘍細胞に対する細胞障害性T細胞活性を誘導し、感染症や腫瘍の治療に有用なワクチン組成物と、このワクチン組成物の一成分であるリポソームに関する。
細胞障害性T細胞とワクチン
病原体(細菌、ウイルス、寄生虫など)や腫瘍細胞を標的とする治療方法として、細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL)の活性を誘導する方法が知られている。すなわち、病原体が感染したり腫瘍細胞が体内に生じた場合、病原体や腫瘍細胞のタンパク質断片(抗原ペプチド)が主要組織適合性抗原複合体(Major histocompatibility complex :MHC)と共に抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞)の表面に提示される。CTLは、抗原提示細胞表面のMHCクラスIに結合した抗原ペプチドを認識し、活性化・増殖し、感染細胞や腫瘍細胞に障害を生じさせる。この機構を利用して、感染症や腫瘍の治療手段としてのワクチン療法が開発されている。例えば、特許文献1には腫瘍細胞に由来する抗原ペプチドを含有し、CTLの腫瘍細胞障害活性を誘導するガンワクチンが開示されている。また特許文献2にはC型肝炎ウイルス(HCV)のタンパク質またはその部分ペプチドを含有し、HCV障害活性を誘導する抗HCVワクチンが開示されている。
リポソームワクチン
ワクチンの標的細胞への結合性を向上させることなどを目的として、ワクチン抗原(例えば、不活化ウイルス、抗原タンパク質、抗原ペプチド)をリポソーム(liposome)と共存させたワクチン(リポソームワクチン)が知られている。
リポソームは、細胞膜の脂質二重膜を模して、一つの分子上に親水性部分と疎水性部分とを持たせた分子から作られる小胞構造の複合体である。内部にDNAやタンパク質などの分子を封入し、細胞と融合させて内部の分子を細胞内に導入するため(リポフェクション)などにも利用されている。リポソームの標準的な調製方法は、有機溶媒に脂質を溶解し、有機溶媒を蒸発させて乾燥した脂質膜を適当な量の水性相中で水和させて、その混合物を脂質の相転位温度より高い温度に加熱して膨張させ、これを振盪して分散したリポソーム溶液とする。
このリポソームをワクチン抗原と共存させる方法は、一つには、ワクチン抗原とリポソームとを一定の条件でインキュベートし、表件相互作用(静電気的相互作用または疎水性相互作用)によって両者を結合させるか、あるいはワクチン抗原をリポソームの表面に化学的な架橋によって共有結合させる方法である。別の方法は、ワクチン抗原をリポソーム内に封入させる方法である。例えば、脂質膜に直接ワクチン抗原を添加した後に再水和したり、脂質膜からのリポソームの再水和に用いる緩衝液にワクチン抗原を添加することによってワクチン抗原をリポソーム内に封入する。あるいはまた、ワクチン抗原とリポソームとの混合物を凍結乾燥した後に再水和したり、混合物の凍結と加温を繰り返すことなどによってワクチン抗原をリポソーム内に封入する。
例えば、非特許文献1−3には、マンノースを含むリポソームにワクチン抗原(抗原ペプチドなど)を封入したリポソームワクチンによってCTL誘導が活性化されることが記載されている。また、非特許文献4には、ワクチン抗原とリポソームをホルムアルデヒドで架橋したリポソームワクチンがCTL活性を誘導することを記載している。
しかしながら、これら従来のCTL誘導リポソームワクチンは、抗原タンパク質の一部分(抗原ペプチド)をリポソームと共存(結合または封入)させている。病原体や抗原タンパク質それ自体をリポソームと共存させてもCTL活性を誘導することができなかったためである。抗原ペプチドは、抗原タンパク質の抗体結合部分(エピトープ)から調製されるが、このエピトープは個人差が大きいため、ワクチン効果を確保するためには、ワクチン投与者の個々に適した抗原ペプチドを用意するか、抗原ペプチドがそれぞれ異なる複数のワクチンセットが必要であり、ワクチン製造費用の増大は避けられない。
DDAとワクチン
DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)は、アジュバント(免疫増強物質)として知られているが(例えば、非特許文献5)、前記のリポソームの構成脂質の一つしても知られている。例えば、非特許文献6−9は、DDAとTDB(trehalose 6,6’-dibehenate)とを主要成分とするアジュバント・リポソームに抗原タンパク質(Ovalbumin:OVA)やその抗原ペプチドを封入したワクチンが記載されている。また特許文献3には、任意の抗原タンパク質の全アミノ酸配列にわたる隣接したオーバーラップペプチドからなるペプチド混合物を上記のアジュバント・リポソーム(DDA/TDB)に封入したワクチンが優れた免疫誘導能を有することが記載されている。
しかしながら、DDAなどのカチオン性油脂は水溶液の中では物理的に安定しておらず、保存中に凝集して沈殿するという大きな欠点を有している。特許文献4は、カチオン性油油脂に界面活性剤(Tween-80、ステアリルグリセロールなど)を添加することによってリポソームの安定性を向上させる技術が開示されている。また特許文献5には、カチオン性油脂に糖脂質(アルファ,アルファ’−トリハロース6,6’ジベヘネート(TDB)、アルファ,アルファ’−トリハロース6,6’ジミコレート(TDM)、グリセリン脂肪酸、コレステロールなど)を添加することによってリポソームが安定化すること、そしてこのリポソームを用いた結核ワクチンが特異抗体を誘導することが記載されている。
特表2010-519176号公報 特表2003-514872号公報 特表2009-541373号公報 特開昭60-72831号方法 特表2008-505131号公報
Ikehara H, et al. Cancer Res., 2006; 66(17):8740-8748 Ikehara, H. et al. Cancer Letters, 2008; 260:137-145 Ikehara, H. et al. J. Biomed. Biotechnol., 2010; 2010:242539. doi: 10.1155/2010/242539 Taneichi, M. et al. The Journal of Immunology, 2006; 177:2324-2330 Baechtel, F.S. and Prager, M. Cancer Research, 1982; 42:4959-4963 Milicic, A. et al. PLOS one, 2012; 7(3):e34255 Korsholm, K.S. et al. Immunology, 2007; 121:216-226 Gram, G.J. et al. PLOS one, 2009; 4(9):e6950 Davidsen, J. et al. Biochimica et Biophysica Acta, 2005; 1718:22-31
CTL活性を誘導することのできるワクチンは、感染症や腫瘍疾患の予防・治療手段として有効である(例えば、特許文献1、2)。また、リポソームワクチンは体内の病原体や腫瘍細胞へのワクチン結合性・導入性を向上させるという利点を有しており、CTL活性を誘導するリポソームワクチンも知られている(非特許文献1−4)。
しかしながら、従来のCTL誘導リポソームワクチンは、前記のとおり、抗原タンパク質の抗体結合部分(エピトープ)から調製される抗原ペプチドの使用を必須とすることの問題点を有している。
これに対して、本願発明者らは、DDAなどのカチオン性油脂フィルムを蒸留水やリン酸緩衝生理食塩水:PBS)中で攪拌するによってカチオン性油脂がミセル化したリポソームを調製し、このリポソームに抗原タンパク質(ペプチド断片化していないタンパク質それ自体)を混合分散させた組成物(リポソーム内への抗原タンパク質の封入操作、または両者の架橋操作などを行っていない)が優れたCTL活性誘導能を有することを見出した。
ただし、カチオン性油脂リポソームに抗原タンパク質を混合分散させたCTL誘導組成物は速やかに2層に分離してしまうため、組成物の治療用投与に時間的制限があり、また注射液の調製や注射方法にも熟練を必要とするといった問題点を有しており、ワクチンとしての実用性には乏しいことも見出した。
この出願は、カチオン性油脂リポソームに抗原タンパク質を混合分散させたCTL誘導ワクチン組成物の実用性を向上させるための新しい手段を提供することを課題としている。
本願発明者らは、個人差の大きいエピトープからなる抗原ペプチドではなく、抗原タンパク質全体をワクチン抗原とすることによってCTL活性の優れた誘導能を有するワクチンの安定性について、特に特許文献4および5の技術を検討した結果、以下の知見を得た。
[1]カチオン性油脂と界面活性剤(Tween-80など)からなる油脂フィルムを蒸留水やPBS中で攪拌するによってカチオン性油脂がミセル化したリポソームは、抗原タンパク質を混合分散させた場合の分散状態を少なくも30分間は維持することができ、ワクチンとしてのCTL活性誘導能も良好であること。ただし、カチオン性油脂と界面活性剤とを原料とするリポソームはそれ自体の保存性が良好ではなく、リポソーム作成後、24時間後にはゲル化してしまう。従って、特許文献4の技術を利用したリポソームは、抗原タンパク質との混合前に長期間保存することは困難である。
[2]カチオン性油脂と糖脂質(コレステロールなど)からなる油脂フィルムを蒸留水やPBS中で攪拌させたリポソームは、抗原タンパク質を添加して混合した場合には安定性が損なわれ、短時間で分離してしまうこと。従って、特許文献5の技術を利用したリポソームは、リポソームを調製後にタンパク質全体を抗原として混合分散させるCTL誘導ワクチンには不適切である。
[3]カチオン性油脂と界面活性剤とコレステロール等の添加物(コレステロール、1-オレオイル-rac-グリセリン、DOPC、DOPG、スクワレン、Mannide monooleateの少なくとも1種)を含有する油脂フィルムを蒸留水やPBS中で攪拌させたリポソームは、長期間(30日以上)放置し、不均一になった際に用手による振盪で作成時の状態に可逆的に作成時の状態に戻すことが可能であり、その後抗原タンパク質を添加混合させた場合の分散状態も少なくとも30分間は維持することができ、そしてこのワクチン組成物のCTL活性誘導能も良好であること。
この出願は、以上のとおりの知見に基づき、以下の発明を提供する。
(1)以下の成分(a)(b)(c):
(a)カチオン性油脂、
(b)界面活性剤、および
(c)コレステロール、1-オレオイル-rac-グリセリン、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、DOPG(1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール)、スクワレン、Mannide monooleate(二縮マンニトール一オレイン酸)からなる群より選択された1種以上、
を含む油脂組成物が蒸留水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に分散混合していることを特徴とするリポソーム。
(2)カチオン性油脂がDDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DDA-Cl(ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド)、DODA(ジメチルジオクタデセニルアンモニウム)、DODAP(1,2−ジオレオイル−3ジメチルアンモニウムプロパン)、またはDOTMA(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム)である前記発明(1)のリポソーム。
(3)界面活性剤が、Tween-20、Tween-40、Tween-60、Tween-80、Tween-85およびNP-40からなる群から選択される少なくとも1種である前記発明(1)リポソーム。
(4)前記発明(1)から(3)のいずれかに記載のリポソームに抗原タンパク質が混合分散されている、細胞障害性T細胞(CTL)活性を誘導するワクチン組成物。
前記の各発明において、「CTL活性」とは、CTLが抗原提示細胞表面のHLAクラスIに結合した抗原タンパク質(前記発明の組成物に含まれる抗原タンパク質)を認識し、活性化・増殖し、病原体や腫瘍細胞に障害を生じさせる活性を意味する。CTL活性はまた、後記の試験例に記載したようなマウス実験での細胞障害活性率やクロミウム遊離率(いずれもTkakagi, A. et al. Clinical Vaccine Immunology, 2009, Vol. 16(10): 1383-1392)として規定することができる。すなわち、CTL活性とは、
in vivo細胞傷害活性(率):{1-[(number of CFSElowcells in healthy mice/number of CFSEhigh cells in healthy mice)/(number of CFSElow cells in immunized mice/number of CFSEhigh cells in immunized mice)]}x100
が20%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上を示すことを意味する。また、ワクチン組成物の投与後のクロミウム遊離率が界面活性剤による最大有利率の10以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは40%以上であることを意味する。さらにまた、腫瘍細胞に対するCTL活性は、ワクチン組成物の投与後の腫瘍組織の大きさ、重要などの顕著な減少(例えば、大きさや重量が25%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは75%以下)することを意味する。
「抗原タンパク質」は病原体や腫瘍などから産生されるタンパク質であり、特に断片化されていないタンパク質全体である。病原体や腫瘍細胞などから単離精製されたタンパク質であってもよく、あるいはタンパク質をコードするポリヌクレオチドで形質転換した大腸菌などに産生させた組換えタンパク質であってもよい。また、抗原タンパク質は、病原体の感染組織や腫瘍組織の一部(例えば、組織の細胞をホモジェナイズした溶液の沈殿物など)であってもよい。
本願発明に係るその他の概念や用語は、以下の実施形態や実施例の記載において具体的に定義する。
発明(1)〜(3)のリポソームは、必要であれば使用前に用手により振盪する事によって、その分散状態を長期間(30日以上)に渡って維持することができる。そして、抗原タンパク質を添加混合させた場合の分散状態も少なくとも30分間は維持することができ、このリポソームを用いて調製した発明(4)のワクチン組成物のCTL活性誘導能も良好である。
なお、細胞性免疫応答を誘導するアジュバントは、感染症や癌に対するワクチン成分として期待されている。細胞障害性T細胞(CTL)はMHCクラスIエピトープを認識して、標的細胞を除外し、その機能はTh1型ヘルパーT細胞がMHCクラスIIエピトープを用いて制御するが、細胞性免疫応答を誘導するアジュバント(例えば、フロインド完全アジュバント)を用いてタンパク質抗原を免疫しても、そのタンパク質に含まれるMHCクラスIエピトープを認識するCTLの誘導は甚だ困難である。一般にCTLを誘導するには抗原提示細胞(APC)のMHCクラスI複合体上にエピトープを提示させる必要があるが、APCは取り込んだタンパク質を通常クラスII複合体上に提示し、クラスI複合体上に提示するにはクロスプライミングという機構が必要とされている。しかし、このクロスプライミングの効率が非常に悪いことが、タンパク質抗原を用いたCTLの誘導が困難な理由とされている。このため癌に対するワクチンでは、一般的にクロスプライミングを経由せずに細胞外からMHCクラスI複合体上に提示させ得るエピトープペプチドを用いて、CTLをプライミングして誘導する。また、MHCクラスIIエピトープを認識するT細胞は、細胞性免疫応答を増長するTh1型と液性免疫応答を増長するTh2型に大まかに分ける事が出来る。この分類から見ると、Th1型ヘルパーT細胞を誘導するワクチンは細胞障害性免疫応答を誘導するワクチンに分類されるが、クラスIIエピトープに関するものであり、CTLの細胞障害活性の活性化(プライミング)には直接関与しない。CTLのプライミングがCTL誘導ワクチンに必須であり、Th1型ヘルパーT細胞はプライミングされたCTLの機能を増強するに過ぎない。この事が細胞障害性免疫応答の誘導という定義をあいまいにしている。
本願発明のリポソームを用いてタンパク質抗原を投与すると、著しく効率的に抗原内のクラスIエピトープを認識し、標的分子を除去するCTLが誘導される事が見いだされた。この事はタンパク質抗原を用いてCTLのプライミングが行われた事を意味し、本願発明のワクチン組成物はCTL誘導ワクチンといえるものであり、Th1型ヘルパーT細胞を誘導する細胞障害性免疫応答と明白に区別できるものである。
比較例1および比較例2のワクチン組成物のそれぞれをマウスに投与した8日後のCTL活性を示す。 1:比較例2、2:比較例4、3:比較例3、4:実施例1のそれぞれのワクチン組成物をToll様受容体リガンドODN2007とともにマウスに投与した6日後のCTL活性を示す。 実施例1のワクチン組成物を免疫した後の日数ごとのCTL活性を示す。 1:コントロール、2:実施例1、3:比較例8、4:実施例2のワクチン組成物それぞれをマウスに投与した5日後のCTL活性を示す。 実施例3と実施例1のワクチン組成物それぞれをマウスに投与した5日後のCTL活性を示す。 CTL活性に対する追加免疫の効果(ブースター効果)を以下の条件:1:測定の21日前に実施例1のワクチン組成物を投与2:測定の3日前に実施例1のワクチン組成物を投与3:測定の21日前と3日前に実施例1のワクチン組成物を投与4:測定の21日前に20μgのOVAタンパク質を完全フロインドアジュバント200 μlの油状懸濁液にして投与し、3日前に実施例1のワクチン組成物を投与5:測定の21日前に20μgのOVAタンパク質をCFA 200 μlの油状懸濁液にして投与で確認した結果である。 上がDDA/OCT/PBSリポソーム、下がDDA/T/PBSリポソームを室温で24時間放置した状態を示す写真像である。 1:DDA/PBSリポソーム、2: DDA/DWリポソーム、3:比較例1のワクチン組成物、4:比較例2のワクチン組成物、5:実施例1のワクチン組成物のそれぞれ調製後30分の写真像である。 1:比較例5、2:実施例5、3:比較例6、4:実施例6、5:比較例7、6:実施例1の各ワクチン組成物を調製後、室温で60分間放置した時の写真像である。 実施例1のワクチン組成物を投与したマウスの脾臓におけるクロミウム遊離率である。#1、2は免疫を行わなかったマウス、#3−5は免疫を行ったマウスの脾細胞を用いた測定値である。各サンプルの左は標的細胞:反応細胞が1:10、中は1:20、右は1:50である。 マウスに実施例1のワクチン組成物を投与から5日後、EG7-OVA細胞を背中に皮下注射し、その30日後にマウスの背中の腫瘍の大きさを計測した結果である。1:免疫群、2:コントロール群。 マウスにEG7-OVA細胞を背中に皮下注射し、翌日に実施例1のワクチン組成物を腹腔内投与した免疫群(1)とコントロール群(2)の腫瘍面積の経日変化である。 マウスにEG7-OVA細胞を背中に皮下注射し、腫瘍の直径が5mm〜6mmとなった時点に実施例1のワクチン組成物を腹腔内投与した免疫群(1)とコントロール群(2)の腫瘍重量を示す。 マウスにB16メラノーマ細胞を尾部静脈に投与した翌日に実施例4のワクチン組成物を腹腔内投与し、1カ月後の肺のメラノーマの状態を示す写真像である。左はコントロール群、右は免疫群の肺メラノーマである。
発明(1)のリポソームは、以下の成分(a)(b)(c):
(a)カチオン性油脂、
(b)界面活性剤、および
(c)コレステロール、1-オレオイル-rac-グリセリン、DOPC、DOPG、スクワレン、Mannide monooleateからなる群(以下、コレステロール等と記載することがある)より選択された1種以上、
を含む油脂組成物が蒸留水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に分散混合している。
より具体的には、上記の油脂組成物を溶媒(クロロホルムなど)に溶解させ、容器内で減圧下、溶媒を除去し、フィルム化する。ついで、蒸留水またはPBSを加え、振動分散させ、油脂組成物がミセル化したリポソームとする。加熱処理や超音波処理によって分散性を向上させてもよい。このように調製したリポソームは、γ線照射により滅菌し、低温(例えば4℃)で長期間(約30日間)の保存が可能である。なお、このリポソームの調製にPBSを使用する場合は、ヒト体液に等張程度の塩濃度であることが好ましい。
カチオン性油脂(a)は正電荷の極性と疎水性領域からなる分子であり、DDA、DDA-Cl、DOTAP、DODA、DODAPまたはDOTMAである。リポソーム中のカチオン性油脂量は、100μg/ml〜20mg/ml、好ましくは200μg/ml〜10mg/mlの範囲である。
界面活性剤(b)としては、Tween-20、Tween-40、Tween-60、Tween-80、Tween-85、NP-40等を使用することができ、特にTween-80が好ましい。界面活性剤として公知のTriton-X100、Nonident P-40(CA-630)およびSDSは安定性維持の点で好ましいものではなく、除外される。リポソーム中の界面活性剤量は、500μg/ml〜50mg/ml、好ましくは1mg/ml〜10mg/mlの範囲である。
コレステロール等(c)は、コレステロールの他、1-オレオイル-rac-グリセリン、DOPC、DOPG、スクワレン、Mannide monooleateなどであり、実施例に示したコレステロールおよび/または1-オレオイル-rac-グリセリンの使用が好ましい。リポソーム中のコレステロール等の含有量は、500μg/ml〜50mg/ml、好ましくは1mg/ml〜10mg/mlの範囲である。また、コレステロール等を2種類またはそれ以上使用する場合は、前記の範囲でそれぞれの略等量を使用することができる。
上記の界面活性剤(b)およびコレステロール等(c)を添加することによって、リポソームは不均一になった際に用手による振盪で作成時の状態に可逆的に作成時の状態に戻すことが出来るため、長期間(30日以上)に渡って保存でき、その調製からワクチン組成物の調製までに時間的制約を受けない。さらに、このリポソームは長期間の保存が可能であるため、大量に調製し、その一部をワクチン組成物の調製に使用することができる。このため、リポソームの組成が常に同一の状態であるワクチン組成物が提供される。
発明(4)のワクチン組成物は、前記発明(1)〜(3)のリポソームに抗原タンパク質が混合分散されている。具体的には、抗原タンパク質を蒸留水やPBSに混合して抗原タンパク質水溶液を調製し、この水溶液を前記のリポソームに加え、手動またはVoltex等振盪機を用いて混合分散してワクチン用組成物を調製する。組成物中の抗原タンパク質量は、10μg/ml〜10mg/ml、好ましくは100μg/ml〜1mg/mlである。
なお、一般的なリポソームワクチンではリポソーム調製時に抗原タンパク質をミセル内に封入するため脂質の融点以上の温度で加熱処理する工程が採用されることがあるが、この加熱処理によって抗原タンパク質がその高次構造の破壊に伴って変性を引き起こしやすい。本願発明のワクチン組成物の場合は、リポソームの調製時に加熱処理を行うことがあるが、抗原タンパク質をリポソームに混合分散される際には加熱処理を行わないため、その変性を引き起こすことはない。
またこのワクチン用組成物には、公知のアジュバントとして、例えば、Quil A、polyI:C、水酸化アルミニウム、フロイント不完全アジュバント、IFN-γ、IL-2、IL-12、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、TDB、ムラミールジペプチド(MDP)、CpG2007などのオリゴDNA等を適宜に加えてもよい。
この発明(1)のワクチン組成物は、注射によって、例えば皮下または筋肉内に投与する。ワクチン投与は1回でもよく、また2回以上であってもよい。
以下、実施例を示して本願発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本願発明は以下の例に限定されるものではない。
実施例1:ワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)の調製
DDA(東京化成)0.1g、1-オレオイル-rac-グリセリン[O](Sigma)0.05g、コレステロール[C]0.05g、Tween-80[T](東京化成)0.1gをクロロホルム(ナカライタスク)5mlに溶解させ、ナス型フラスコ内で減圧下、クロロホルムを除去し、フィルム化した。ついで、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)5mlを加え、更に65℃まで加熱し、Voltex攪拌機により混合分散させた後、超音波分散機(エスエムテー社:UH-50)を用いてさらに分散させてDDA/OCT/PBSリポソームを調製した。このリポソームにX線照射装置(日立メディコ:MBR-1520R)によりX線125Gyを照射して滅菌を行い、4℃で保存した。
次に、ニワトリ卵白由来アルブミン(OVA)(Sigma社)をPBSに溶解してOVA溶液を調製した。前記のDDA/OCT/PBSリポソーム100μlにOVA溶液100μlを加え、手で攪拌混合してワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)を調製した。
実施例2:ワクチン組成物(rOVA/DDA/OCT/PBS)の調製
抗原タンパク質としてニワトリから単離精製したOVAの代わりに、大腸菌で発現させた組換えOVA(rOVA)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりワクチン組成物(rOVA/DDA/OCT/PBS)を調製した。
組換えOVA(rOVA)は以下のとおりに調製した。OVAをコードするcDNAをpCold発現ベクター(Takara社)にサブクローニングしてOVA cDNA発現させるベクターを作成した。このベクターで大腸菌BL21を形質転換してアンピシリン耐性のクローンを得た。このクローンを1mMIPTG存在下15℃で培養し、ヒスチジンタグ付加OVAを発現させた。この大腸菌から、タンパク質を8N尿素存在下、ニッケルキレートカラムで精製し、溶出液をPBSバッファーで透析し、可溶化させ、0.45umのフィルターで濾過して、組換えOVAを得た。
実施例3:ワクチン組成物(OVA/DDOTAP/OCT/PBS)の調製
カチオン性油脂としてDDAの代わりにDOTAPを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりワクチン組成物(OVA/DOTAP/OCT/PBS)を調製した。
実施例4:ワクチン組成物(Mel-CpG/DDA/OCT/PBS)の調製
B16メラノーマ細胞1x106個をPBS緩衝液100μlに懸濁し、超音波プローブにより細胞を破砕し、この液に2μgのCpG2007を加えて抗原タンパク質とした以外は、実施例1と同様の方法によりワクチン組成物(Mel-CpG/DDA/OCT/PBS)を調製した。CpG2007はtcgtcgttgtcgttttgtcgtt(配列番号1)の配列を持つオリゴDNA(グライナージャパン社で合成)であり、滅菌したPBS溶液に溶解させた。
実施例5:ワクチン組成物(OVA/DDA/OT/PBS)の調製
PBS中にDDA 0.05g、1-オレオイル-rac-グリセリン[O]0.025gおよびTween-80[T]0.05gを混合分散させてDDA/OT/PBSリポソームを調製した以外は実施例1と同様の方法によってワクチン組成物(OVA/DDA/OT/PBS)を調製した。
実施例6:ワクチン組成物(OVA/DDA/CT/PBS)の調製
PBS中にDDA 0.05g、コレステロール[C]0.025gおよびTween-80[T]0.05gを混合分散させてDDA/CT/PBSリポソームを調製した以外は実施例5と同様の方法によってワクチン組成物(OVA/DDA/CT/PBS)を調製した。
比較例
比較例1:ワクチン組成物(OVA/DDA/PBS)の調製
DDA(0.1g)のみを用いてリポソーム(DDA/PBS)を調製した以外は実施例1と同様の方法によりワクチン組成物(OVA/DDA/PBS)を調製した。
比較例2:ワクチン組成物(OVA/DDA/DW)の調製
蒸留水(DW)を用いてリポソーム(DDA/DW)を調製した以外は、比較例1と同様の方法によってワクチン組成物(OVA/DDA/DW)を調製した。
比較例3:ワクチン組成物(OVA/DDA/T/PBS)の調製
PBS中にDDA 0.05gおよびTween-80(東京化成)0.05gを混合分散させてDDA/T/PBSリポソームを調製した以外は実施例1と同様の方法によってワクチン組成物(OVA/DDA/T/PBS)を調製した。
比較例4:ワクチン組成物(OVA/DDA/T/DW)の調製
PBSの代わりに蒸留水(DW)を用いてDDA/T/PBSリポソームを調製した以外は比較例3と同様の方法によってワクチン組成物(OVA/DDA/T/DW)を調製した。
比較例5:ワクチン組成物(OVA/DDA/O/PBS)の調製
PBS中にDDA 0.05gおよび1-オレオイル-rac-グリセリン[O]0.025gを混合分散させてDDA/O/PBSリポソームを調製した以外は実施例1と同様の方法によってワクチン組成物(OVA/DDA/O/PBS)を調製した。
比較例6:ワクチン組成物(OVA/DDA/C/PBS)の調製
PBS中にDDA 0.05gおよびコレステロール(C)0.025gを混合分散させてDDA/C/PBSリポソームを調製した以外は比較例5と同様の方法によってワクチン組成物(OVA/DDA/C/PBS)を調製した。
比較例7:ワクチン組成物(OVA/DDA/CO/PBS)の調製
PBS中にDDA 0.05g、1-オレオイル-rac-グリセリン[O]0.025gおよびコレステロール(C)0.025gを混合分散させてDDA/OC/PBSリポソームを調製した以外は比較例5と同様の方法によってワクチン組成物(OVA/DDA/CO/PBS)を調製した。
比較例8:ワクチン組成物(OVA-ep/DDA/OCT/PBS)の調製
抗原タンパク質としてOVAの代わりに、OVAエピトープペプチド(配列SIINFEKL:配列番号2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりワクチン組成物(OVA-ep/DDA/OCT/PBS)を調製した。
[試験例]
試験例1:ワクチン組成物のCTL活性
(1)方法
実施例1−3および比較例1−5のワクチン組成物200μl(20μgのOVA含有)を、それぞれC57BL/6Nマウス(三協ラボ)(8週令、♀)に腹腔内投与した。
ワクチン組成物の投与から所定の日数の後、10%牛胎児血清含有RPMI1640培地中のC57BL/6Nマウス由来の脾臓細胞1億個を2等分し、片側に合成したOVAエピトープペプチドDMSO溶液(Bex社:配列SIINFEKL)を最終濃度10μg/mlになるように加え、5%二酸化炭素濃度下、37℃で15分間培養した。
遠心操作により培地を除去し、さらに2回PBSにより細胞を洗浄し、各々5mlのPBS溶液に分散させた。ペプチドを加えた細胞懸濁液に、1μMのCFSE(Dojindo社)を加え、ペプチドを加えない細胞懸濁液には0.1μMのCFSEを加え、8分間室温で反応させた。反応後、牛胎児血清0.5mlを加え、遠心操作で上清を除去し、各細胞を5mlの10%牛胎児血清含有RPMI1640培地に懸濁し、両者を混合した後、培地を遠心操作で除去し、ラベルした脾細胞を2mlのPBSに懸濁した。
この細胞懸濁液0.2mlを、免疫しないマウスと免疫したマウスの尾静脈に注射し、5時間放置後、脾臓を摘出し、FACS(ミルテニーバイオテク社)により、CFSE陽性細胞を計測した。
免疫しないマウスのCFSEの強い陽性細胞の数CFSEHI-CTRLとCFSElow-CTRL、および免疫したマウスのCFSEの強い陽性細胞の数CFSEHIと弱い細胞の数CFSElowを計測し、細胞傷害活性(率)を100x(1-((CFSEHI/CFSElow)/(CFSEHI-CTRL/CFSElow-CTRL))として算出した。
また、場合によっては、2μgのToll様受容体リガンドであるCpG2007(tcgtcgttgtcgttttgtcgtt:配列番号1)を同時に免疫して細胞傷害活性を測定した。
(2)結果
図1は、比較例1のワクチン組成物(OVA/DDA/PBS)および比較例2のワクチン組成物(OVA/DDA/DW)のそれぞれをマウスに投与した8日後のCTL活性を示す。10μgのOVAを免疫した。いずれのワクチン組成物も同程度の良好なCTL活性を示した。
図2は、1:比較例2のワクチン組成物(OVA/DDA/DW)、2:比較例4のワクチン組成物(OVA/DDA/T/DW)、3:比較例3のワクチン組成物(OVA/DDA/T/PBS)、4:実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)のそれぞれをToll様受容体リガンドODN2007とともにマウスに投与した6日後のCTL活性を示す。OVA濃度は20μg/mlである。いずれのワクチン組成物も同程度の極めて良好なCTL活性を示した。
図3は、実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)を免疫した後の日数ごとのCTL活性を示す。20μgのOVAを免疫した。4日後にはCTL活性の上昇が認められ、少なくとも12日後まで良好なCTL活性が持続した。
図4は、1:コントロール、2:実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)、3:比較例8のワクチン組成物(OVA-ep/DDA/OCT/PBS)、4:実施例2のワクチン組成物(rOVA/DDA/OCT/PBS)それぞれをマウスに投与した5日後のCTL活性を示す。抗原濃度は10μg/mlである。OVAのエピトープペプチドを抗原とする比較例8のワクチン組成物(OVA-ep/DDA/OCT/PBS)よりも、OVAタンパク質全長を抗原とする実施例1のワクチン組成物(OVS/DDA/OCT/PBS)は高いCTL活性を示した。さらに、組換えOVAを抗原とする実施例2のワクチン組成物(rOVA/DDA/OCT/PBS)は最も高いCTL活性を示した。
なお、OVAを抗原タンパク質とするCTL活性の誘導について幾つかの報告がなされているが、OVAはニワトリ由来の為、糖鎖構造が特殊であるためにCTL活性を誘導されやすいとの指摘がある。実施例2の大腸菌による組換えOVAを抗原タンパク質とするワクチン組成物が高いCTL活性を示したことによって、OVAによるCTL活性の誘導がその糖鎖構造の特殊性によるものではないことが確認された。
図5は、実施例3のワクチン組成物(OVA/DDOTAP/OCT/PBS)と実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)それぞれをマウスに投与した5日後のCTL活性を示す。抗原濃度は10μg/mlである。カチオン性油脂としてDOTAPを用いても、良好なCTL活性が確認された。
図6は、CTL活性に対する追加免疫の効果(ブースター効果)を以下の条件で確認した結果である。
1:測定の21日前に実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)を投与
2:測定の3日前に実施例1のワクチン組成物(OVS/DDA/OCT/PBS)を投与
3:測定の21日前と3日前に実施例1のワクチン組成物(OVS/DDA/OCT/PBS)を投与
4:測定の21日前に20μgのOVAタンパク質を完全フロインドアジュバント(CFA)200μlの油状懸濁液にして投与し、3日前に実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)を投与
5:測定の21日前に20μgのOVAタンパク質をCFA 200μlの油状懸濁液にして投与
本願発明のワクチン組成物は、追加免疫によってさらに強いCTL活性を誘導することが確認された。
試験例2:ワクチン組成物調製用のリポソームの安定性
比較例3のワクチン組成物(OVA/DDA/T/PBS)の調製に使用したDDA/T/PBSリポソーム(DDAおよおびTween-80含有)と、実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)の調製に使用したDDA/OCT/PBSリポソーム(DDA、1-オレオイル-rac-グリセリン[O]、コレステロール[C]およびTween-80[T]含有)を、室温で24時間放置した後、その状態を観察した。
図7は、上がDDA/OCT/PBSリポソーム、下がDDA/T/PBSリポソームの状態を示す写真像である。DDA/OCT/PBSリポソームが24時間後も良好な分散状態を維持しているのに対して、DDA/T/PBSリポソームは2層に分離した。
試験例3:ワクチン組成物の安定性
ワクチン組成物の調製から30分後の安定性を試験した。
図8は、1:比較例1のワクチン組成物(OVA/DDA/PBS)の調製に使用したDDA/PBSリポソーム、2:比較例2のワクチン組成物(OVA/DDA/DW)の調製に使用したDDA/DWリポソーム、3:比較例1のワクチン組成物(OVA/DDA/PBS)、4:比較例2のワクチン組成物(OVA/DDA/DW)、5:実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)のそれぞれの写真像である。OVA濃度は100μg/mlである。抗原タンパク質OVAを添加する前の1:DDA/PBSリポソームおよび2:DDA/DWリポソームは良好な分散状態を維持しているが、抗原タンパク質OVAを添加したワクチン組成物(OVA/DDA/PBS、OVA/DDA/DW)は30分後には2層に分離した。一方、1-オレオイル-rac-グリセリン[O]、コレステロール[C]およびTween-80[T]を含有する実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)は良好な分散状態を維持することが確認された。
図9は、1:比較例5のワクチン組成物(OVA/DDA/O/PBS)、2:実施例5のワクチン組成物(OVA/DDA/OT/PBS)、3:比較例6のワクチン組成物(OVA/DDA/C/PBS)、4:実施例6のワクチン組成物(OVA/DDA/CT/PBS)、5:比較例7のワクチン組成物(OVA/DDA/CO/PBS)、6:実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)のそれぞれを調製後、室温で60分間放置した時の写真像である。OVA濃度は100μg/mlである。本願発明のワクチン組成物(6:実施例1、2:実施例5、4:実施例6)は抗原タンパク質OVAを添加した後も、少なくとも60分間は安定な分散状態を維持した。これに対して、Tween-80[T]を含有しないワクチン組成物(1:比較例5、3:比較例6、5:比較例7)は抗原タンパク質OVAを添加した後に2層に分離し、安定性に乏しいことが確認された。
試験例4:クロミウム遊離試験
実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)200μl(OVA濃度10μg/ml)に2μgのCpG2007を加え、C57BL/6Nマウスに腹腔内投与して免疫を行った。5日後、脾臓を摘出し、赤血球を溶血操作により除去し、脾細胞を5x106の濃度になるように50uMのメルカプトエタノール、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地に懸濁した。OVAのエピトープペプチド(SIINFEKL:配列番号2)を1μM添加して6日間培養した。C57BL/6由来のEL-4マウスリンパ腫細胞に上記ペプチドとNa2 51CrO4でラベルし、過剰分を洗浄したものを標的細胞とした。標的細胞2x104個を96穴プレートに入れ、調製したエフェクター細胞を標的細胞の10倍、30倍、100倍を加え、4時間培養し、遠心後、培地中に遊離した51Crの量をβカウンターで計測した。2%NP-40をエフェクター細胞の代わりに用いて、最大遊離とし、エフェクター細胞を加えない培地を最小遊離とし、標的細胞の傷害活性を計測した。
結果は図10に示したとおりである。#1、2は免疫を行わなかったマウス、#3−5は免疫を行ったマウスの脾細胞を用いた測定値である。各サンプルの左は標的細胞:反応細胞が1:10、中は1:20、右は1:50である。免疫を行ったマウスでは、反応細胞の増加に従ってクロミウム遊離率が増加したことから、本願発明のワクチン組成物が標的細胞に対して優れたCTL活性を誘導することが確認された。
試験例5:腫瘍形成に対する予防効果
実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)200μl(OVA濃度10μg/ml)に2μgのCpG2007を加え、C57BL/6Nマウスに腹腔内投与して免疫を行った(免疫群)。コントロール群にはPBSを腹腔内投与した。5日後、両群のマウスに1x106個のEG7-OVA細胞を背中に皮下注射し、その30日後にマウスの背中の腫瘍の大きさを計測した。
結果を図11に示す。本願発明のワクチン組成物は腫瘍形成に対する優れた予防効果を有することが確認された。
試験例6:腫瘍治療効果(1)
C57BL/6Nマウスに1x106個のEG7-OVA細胞を背中に皮下注射した。翌日、実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)200μl(OVA濃度10μg/ml)に2μgのCpG2007を加え、C57BL/6Nマウスに腹腔内投与して免疫を行った(免疫群)。コントロール群にはPBSを腹腔内投与した。
図12は、1:コントロール群および2:免疫群の腫瘍面積の経日変化を示す。本願発明のワクチン組成物は腫瘍成長に対する明確な抑制効果(治療効果)を有することが確認された。
試験例6:腫瘍治療効果(2)
C57BL/6Nマウスに1x106個のEG7-OVA細胞を背中に皮下注射した。腫瘍の直径が5mm〜6mmとなった時点(細胞注射から4日後)に、実施例1のワクチン組成物(OVA/DDA/OCT/PBS)200μl(OVA濃度10μg/ml)に2μgのCpG2007を加え、C57BL/6Nマウスに腹腔内投与して免疫を行った(免疫群)。コントロール群にはPBSを腹腔内投与した。
図13は、免疫群およびコントロール群の腫瘍重量を示す。本願発明のワクチン組成物は腫瘍成長に対する明確な抑制効果(治療効果)を有することが確認された。
試験例7:腫瘍治療効果(3)
C57BL/6Nマウスに1x106個のB16メラノーマ細胞を尾部静脈に投与した。翌日、実施例4のワクチン組成物(Mel-CpG/DDA/OCT/PBS)200μl(10μgのMel-CpG含有)を腹腔内投与した(免疫群)。コントロール群にはPBSを腹腔内投与した。
1ヶ月後にマウスを麻酔死させ、肺を取り出し、メラノーマの状態を観察した。図14の左はコントロール群、右は免疫群の肺メラノーマである。本願発明のワクチン組成物はメラノーマ成長に対する明確な抑制効果(治療効果)を有することが確認された。

Claims (4)

  1. 以下の成分(a)(b)(c):
    (a)カチオン性油脂、
    (b)界面活性剤、および
    (c)コレステロール、1-オレオイル-rac-グリセリン、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、DOPG(1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール)、スクワレン、Mannide monooleate(二縮マンニトール一オレイン酸)からなる群より選択された1種以上、
    を含む油脂組成物が蒸留水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に分散混合していることを特徴とするリポソーム。
  2. カチオン性油脂がDDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DDA-Cl(ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド)、DODA(ジメチルジオクタデセニルアンモニウム)、DODAP(1,2−ジオレオイル−3ジメチルアンモニウムプロパン)、またはDOTMA(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム)、またはDOTMA(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム)である請求項1のリポソーム。
  3. 界面活性剤が、Tween-20、Tween-40、Tween-60、Tween-80、Tween-85およびNP-40からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1のリポソーム。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のリポソームに抗原タンパク質が混合分散されている、細胞障害性T細胞(CTL)活性を誘導するワクチン組成物。
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