以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.光学体について>
[1.1.光学体の構造]
まず、図1A〜図2を参照して、本発明の一実施形態に係る光学体の構造について説明する。図1Aは、本実施形態に係る光学体1を厚み方向に切断した際の断面形状を模式的に示す断面図である。図1Aに示すように、本実施形態に係る光学体1は、基材11の表面に形成されたマクロ凹凸構造13(第1の凹凸構造に相当する)と、マクロ凹凸構造13に対して重畳されたミクロ凹凸構造14(第2の凹凸構造に相当する)とを有する。
基材11は、透明性を有する材料で構成される。基材11を構成する材料として、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、またはポリメチルメタアクリレートなどの透明な樹脂、セルローストリアセテート(TAC)、または環状オレフィン・コポリマー(COC)などの樹脂フィルム、あるいは、石英ガラス、ソーダライムガラス、または鉛ガラスなどの透明なガラスなどを挙げることができる。なお、基材11を構成する材料は、上記の材料に限定されず、透明なものであれば公知の他の材料を用いてもよい。
なお、上記において「透明」とは、可視光帯域(おおよそ360nm〜830nm)に属する波長を有する光の透過率が高いことを意味し、例えば、当該光の透過率が70%以上であることを意味する。
マクロ凹凸構造13は、基材11上に形成される凹凸構造であり、図1Aに示したように、基材11の平坦面12に対して凹である谷部13Aと、基材11の平坦面12に対して凸である山部13Cと、を有する。また、互いに隣接する谷部13Aと山部13Cとの間には、斜面部13Bが形成される。本実施形態に係るマクロ凹凸構造13の凹凸の平均周期は、可視光帯域に属する波長よりも大きく(例えば、830nm超)、好ましくは、1μm以上100μm以下である。ここで、マクロ凹凸構造13における凹凸の平均周期は、図1Aに示した、隣り合う谷部13A、13A間、または、山部13C、13C間の平均距離P1に対応している。
かかるマクロ凹凸構造13は、例えば、凹凸の平均周期が1μm以上100μm以下である防眩(アンチグレア)構造であってもよい。また、マクロ凹凸構造13は、直径が1μm以上100μm以下である複数のレンズが図1A中のXY平面に2次元的に配列されたマイクロレンズアレイ構造であってもよい。なお、以下では、マクロ凹凸構造13が防眩(アンチグレア)構造である場合を例に挙げて、説明を行うものとする。
ミクロ凹凸構造14は、マクロ凹凸構造13に対して重畳形成された凹凸構造であり、図1Aに示したように、基材11の平坦面12の法線方向に伸長した複数の突起部141と、相隣接する突起部141、141の間に位置する底部143と、から構成される。本実施形態に係るミクロ凹凸構造14の凹凸の平均周期は、可視光帯域に属する波長以下(例えば、830nm以下)であり、好ましくは、100nm以上350nm以下である。ここで、ミクロ凹凸構造14における凹凸の平均周期は、図1Aに示した、互いに隣り合う突起部141、141の頂点間の平均距離P2に対応している。
かかる構造を有するミクロ凹凸構造14は、例えば、基材11の平坦面の法線方向に伸長した複数の突起部141が、図1Aに示す基材11のXY平面上に周期的に2次元配列されたモスアイ構造であってもよい。ここで、ミクロ凹凸構造14の突起部141の図1A中のXY平面における2次元配列は、所定の周期性を有する配列であってもよく、周期性を有さない無作為な配列であってもよい。ただし、突起部141のXY平面における2次元配列は、図2を参照して後述するように、所定の周期性を有する配列であることが好ましい。
ここで、本実施形態に係る光学体1では、ミクロ凹凸構造14を構成する全ての突起部141が基材11の平坦面12の法線方向(すなわち、Z方向)に伸長している。これにより、光学体1では、基材11全体にわたって、ミクロ凹凸構造14の突起部141の伸長方向が揃うため、強い外光が光学体1に入射した場合の反射防止能をさらに向上させることができる。
一方、図示はしないが、従来技術のように、突起部141がマクロ凹凸構造13の表面各位置における接平面の法線方向に伸長している場合、ミクロ凹凸構造14の突起部141は、マクロ凹凸構造13の谷部13A、斜面部13Bおよび山部13Cのいずれの表面上に形成されるかによって伸長する方向が変化する。このような光学体では、基材11全体において、突起部141の伸長方向が揃わないため、強い外光が光学体に入射した場合の反射防止能が低下してしまう。
次に、ミクロ凹凸構造14について、図1Bおよび図2を参照して、より具体的に説明する。図1Bは、図1Aの部分領域Xを拡大して模式的に示した拡大断面図である。また、図2は、本実施形態に係る光学体1の平面配列の一例を示す上面図である。
図1Bに示すように、ミクロ凹凸構造14の突起部141は、マクロ凹凸構造13の谷部13Aに形成された谷側突起部141Aと、マクロ凹凸構造13の斜面部13Bに形成された中間突起部141Bと、マクロ凹凸構造13の山部13Cに形成された山側突起部141Cと、を含む。
本実施形態に係る光学体1において、図1Bに模式的に示したように、中間突起部141Bの高さhBは、谷側突起部141Aの高さhAおよび山側突起部141Cの高さhCと異なることが好ましい。また、中間突起部141Bの高さhBは、谷側突起部141Aの高さhAおよび山側突起部141Cの高さhCよりも低いことがより好ましい。ミクロ凹凸構造14において反射を防止可能な光の波長帯域は、突起部141の高さに依存する。そのため、ミクロ凹凸構造14の突起部141が、谷側突起部141Aおよび山側突起部141Cと、これら突起部よりも高さの低い中間突起部141Bと、を含むことで、反射を防止することができる入射光の波長帯域を広げることができる。例えば、谷側突起部141Aの高さhAおよび山側突起部141Cの高さhCが、300nm以上400nm以下である場合、中間突起部141Bの高さhBは200nm以上300nm以下であることが好ましい。
ここで、図1Bに示したように、頂点TAの両側に位置する2つの底部143Aの間を仮想的に結んだベースラインを想定し、頂点TAから基材11の平坦面12の法線方向(Z方向)に沿って下ろした直線と、かかるベースラインとの交点を、BAとする。この際に、上記の谷側突起部141Aの高さは、頂点TA−交点BA間の距離に対応する。同様に、中間突起部141Bの高さは、図1Bに示した頂点TB−交点BB間の距離に対応し、山側突起部141Cの高さは、図1Bに示した頂点TC−交点BC間の距離に対応する。
また、図2に示すように、ミクロ凹凸構造14の突起部141は、図2中のY方向に所定の間隔PTを成す複数列のトラック(例えば、トラックT1、T2、T3など)に沿って配列される。また、各トラックTにおいて突起部141は、図2中のX方向に沿って一定周期で配列される。
ここで、突起部141は、例えば、互いに隣り合う突起部141の頂点間隔が可視光帯域に属する波長以下となるように配列される。具体的には、突起部141は、図2に示したように、各トラックにおける突起部141の配列間隔(ドットピッチ)PD、および突起部141の各トラック間の配列間隔(トラックピッチ)PTのそれぞれが可視光帯域に属する波長以下となるように配列される。
例えば、ドットピッチPDおよびトラックピッチPTは、それぞれ100nm以上350nm以下であり、好ましくは、それぞれ150nm以上280nm以下である。ここで、ドットピッチPDおよびトラックピッチPTのいずれかが100nm未満である場合、ミクロ凹凸構造14の形成が困難になるため好ましくない。また、ドットピッチPDおよびトラックピッチPTのいずれかが350nmを超える場合、可視光の回折が生じる可能性があるため好ましくない。なお、ドットピッチPDおよびトラックピッチPTの大きさは、互いに同一であってもよいし、相違していてもよい。
また、突起部141が配列される複数列のトラックは、図2に例示したように直線状であってもよいが、本発明はかかる例示に限定されない。例えば、突起部141が配列される複数列のトラックは、曲線状であってもよい。
さらに、図2では、基材11のXY平面上において、突起部141が矩形格子状に配列される例を示したが、本発明はかかる例示に限定されない。例えば、突起部141は、隣接するトラック間において、突起部141の配列ピッチ(ドットピッチPD)が半ドットピッチずつずれた千鳥配置になっており、基材11のXY平面上に六角形状に配列されてもよい。なお、突起部141のXY平面上における充填率を高めるためには、突起部141は六角形状に配置されることがより好ましい。
[1.2.光学体の特性]
次に、上記にて説明した構造を有する本実施形態に係る光学体1の光学特性について説明する。
本実施形態に係る光学体1は、前述したように、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長よりも大きいマクロ凹凸構造13に対して、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長以下であるミクロ凹凸構造14が重畳されている。これにより、本実施形態に係る光学体1は、高い反射防止能と、高い防眩能とを併せ持つことができる。
具体的には、本実施形態に係る光学体1において、分光正視感反射率は0.3%以下であり、かつ、ヘイズ値は5%以上である。また、好ましくは、本実施形態に係る光学体1において、分光正視感反射率は0.3%以下であり、かつ、ヘイズ値は10%以上である。分光正視感反射率は、入射光に対する正反射光の色をYxy表色系にて表した場合のY値であり、正反射光の色の明度を表す。すなわち、分光正視感反射率が低いほど、反射防止能が高いことを示す。また、ヘイズ値は、光学体に入射した光の全光線透過率に対する拡散透過率の割合であり、ヘイズ値が高いほど、光学体の光散乱性が高く、防眩能が高いことを示す。本実施形態に係る光学体1は、低い分光正反射率を有することにより反射防止能を備え、かつ、高いヘイズ値を有することにより高い防眩能を備えることができる。
分光正視感反射率の値は、より小さいほうが好ましく、特に下限値は設けないが、例えば、0%よりも大きければよい。また、ヘイズ値の値は、用途により要求される値が異なるため、特に上限値は設けないが、例えば、100%未満であればよい。
また、本実施形態に係る光学体1は、前述のように、基材11の平坦面12の法線方向に対して突起部141の伸長方向が揃っているため、外光に対する正反射を抑制することができる。
具体的には、本実施形態に係る光学体1の20°(入射角度)における光沢度は4%以下であり、より好ましくは1%未満である。光沢度は、入射光に対する正反射光の程度を表した値であり、光沢度が低いほど、正反射が抑制されていることを示す。本実施形態に係る光学体1は、強い外光を受けた場合でも正反射を抑制し、ぎらつき等を防止することができる。
光沢度の値は、特に下限値は設けないが、例えば、0%よりも大きければよい。
以上にて、本実施形態に係る光学体1の構造および特性について詳細に説明した。本実施形態によれば、反射防止能を高めることにより光透過率が向上した光学体を実現することができる。
<2.光学体の製造方法について>
[2.1.第1の製造方法]
続いて、図3A〜図4を参照して、本実施形態に係る光学体1の第1の製造方法について説明する。図3A〜図3Hは、本実施形態に係る光学体1の第1の製造方法の各工程を説明する断面図である。
具体的には、本実施形態に係る光学体1の第1の製造方法は、まず、基材11に対してミクロ凹凸構造14を形成し、その後、マクロ凹凸構造13をミクロ凹凸構造14に対して重畳形成する。
第1の製造方法では、まず、図3Aに示すように、例えば石英ガラスなどの基材11上に、第1レジスト層15が成膜される。ここで、第1レジスト層15は、有機系レジストまたは無機系レジストのいずれも使用することできる。有機系レジストとしては、例えば、ノボラック系レジスト、または化学増幅型レジストなどを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、タングステン、またはモリブデンなどの1種または2種以上の遷移金属を含む金属酸化物を用いることができる。
次に、図3Bに示すように、露光装置により第1レジスト層15が露光され、第1レジスト層15に潜像15Aが形成される。具体的には、レーザ光、紫外線、X線、または電子線等の高エネルギーの電磁波20を第1レジスト層15に対して照射することにより、第1レジスト層15の電磁波20が照射された部位が変性し、潜像15Aが形成される。
続いて、図3Cに示すように、潜像15Aが形成された第1レジスト層15上に現像液が滴下され、第1レジスト層15が現像される。これにより、第1レジスト層15に所定のパターンが形成される。例えば、第1レジスト層15がポジ型レジストである場合、電磁波20で露光された露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増加する。そのため、図3Cに示すように現像処理により露光部(潜像15A)が除去され、潜像15Aの除去されたパターンが第1レジスト層15に形成される。一方、第1レジスト層15がネガ型レジストである場合、電磁波20で露光された露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が低下する。そのため、現像処理により非露光部が除去され、潜像15Aの残存したパターンが第1レジスト層15に形成される。
次に、図3Dに示すように、前工程にてパターン形成された第1レジスト層15をマスクとして利用して、基材11がエッチングされる。これにより、基材11に対してミクロ凹凸構造14(第2の凹凸構造)が形成される。なお、基材11に対するエッチング方法は、ドライエッチングまたはウェットエッチングのいずれも使用可能である。ただし、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長以下であるミクロ凹凸構造14を高アスペクト比にて形成するためには、垂直異方性を得やすいドライエッチングを用いることがより好ましい。
なお、基材11に対するエッチング条件は、基材11および第1レジスト層15の材質を考慮することで適切に設定することが可能である。例えば、基材11に石英ガラスを用いる場合、ミクロ凹凸構造14を形成するために、CF系ガスおよびHを含むガスを用いたドライエッチング、またはフッ化水素酸等を用いたウェットエッチングを利用することができる。
続いて、図3Eに示すように、ミクロ凹凸構造14が形成された基材11上に、第2レジスト層16が成膜される。第2レジスト層16は、例えば、光硬化型レジスト、熱可塑型レジストなどの有機レジストを基材11上に滴下することで形成される。また、第2レジスト層16として、金属酸化物またはスピンオングラス(spin on glass:SOG)などの無機レジストを用いることも可能である。
ただし、第2レジスト層16を構成する材料は、後述する基材11のエッチング工程において、第2レジスト層16のエッチングレートが基材11のエッチングレートと相違するように選択される。例えば、基材11が石英ガラスなどの無機材料である場合、第2レジスト層16は、有機レジストであることが好ましい。また、基材11が透明樹脂などの有機材料である場合、第2レジスト層16は、スピンオングラス等の無機レジストであることが好ましい。
次に、図3Fに示すように、第2レジスト層16にマクロ凹凸構造13(第1の凹凸構造)が形成される。ここで、第2レジスト層16に形成されるマクロ凹凸構造13は、上述したように、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長よりも大きい凹凸構造である。マクロ凹凸構造13は、例えば、マクロ凹凸構造13の凹凸が反転した構造が形成された転写フィルムを第2レジスト層16に対してインプリントすることによって形成されてもよい。また、マクロ凹凸構造13は、第2レジスト層16に対してサンドブラスト処理などの機械加工を施すことによって形成されてもよい。
続いて、図3Gに示すように、前工程にてパターン形成された第2レジスト層16をマスクとして利用し、基材11がエッチングされる。これにより、基材11にマクロ凹凸構造13とミクロ凹凸構造14との双方が重畳形成される。
ここで、本エッチング工程では、基材11に対するエッチングとして、垂直異方性を有するエッチングが用いられる。具体的には、第2レジスト層16をマスクとする基材11のエッチングには、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)を用いることが好ましい。このような垂直異方性を有するエッチングを用いることにより、本エッチング工程では、ミクロ凹凸構造14を消失させることなく、基材11に対してマクロ凹凸構造13を形成することができる。
一方、ウェットエッチング等の等方性を有するエッチングでは、ミクロ凹凸構造14の突起部141の側面に対しても垂直方向と同様にエッチングが進行する。その結果、エッチング中にミクロ凹凸構造14が消失してしまい、基材11にマクロ凹凸構造13とミクロ凹凸構造14とを重畳させることが困難となる。したがって、ウェットエッチング等の等方性を有するエッチングを用いることは、好ましくない。
また、基材11に対するエッチングにおいて、第2レジスト層16のエッチングレートと、基材11のエッチングレートとは、互いに相違することが好ましい。
(1)第1のエッチング条件
第1のエッチング条件において、第2レジスト層16のエッチングレートは基材11のエッチングレートよりも遅い。より詳細には、第2レジスト層16のエッチングレートと、基材11のエッチングレートとの比は、1:1.2〜1:20であることが好ましい。
例えば、第2レジスト層16に対する基材11のエッチングレート比が1.2未満の場合、エッチング後、基材11に形成されたミクロ凹凸構造14が消失してしまうため、好ましくない。また、第2レジスト層16に対する基材11のエッチングレート比が20を超える場合、エッチング後、マクロ凹凸構造13の凹凸深さが大きくなりすぎ、光学体1の光学特性が低下するため、好ましくない。
この第1のエッチング条件において、基材11が石英ガラスである場合、エッチングにて使用されるガスは、炭素原子、フッ素原子および水素原子を含むことが好ましい。エッチングに使用されるガスに炭素原子およびフッ素原子を含むことにより、石英(SiO2)をエッチングすることができる。また、エッチングに使用されるガスに水素原子を含むことによりエッチング中にエッチングパターンの側壁に炭化水素膜を生成することでパターンの側壁を保護し、エッチングの垂直異方性を高めることができる。第1のエッチング条件では、エッチングにより高い垂直異方性が必要とされるため、炭素原子、フッ素原子および水素原子を含むガスを使用し、エッチングの垂直異方性を高めることが好ましい。一方、エッチングに使用されるガスに水素原子が含まれない場合、エッチングの垂直異方性が十分ではなくなるため、好ましくない。
具体的には、基材11が石英ガラスである場合、CHF3、またはCH2F2ガスなどを使用することができる。また、CF4、C2F8、またはC3F8などのガスにH2を混合したガスを使用することも可能である。さらに、エッチングにて使用されるガスにArガス等の不活性ガスを添加することも可能である。ただし、O2ガス等の化学的に活性なガスは、エッチングの等方性を増加させて垂直異方性を低下させるため、好ましくない。
さらに、第1のエッチング条件におけるミクロ凹凸構造14に対するエッチングについてさらに説明する。
第1のエッチング条件において、ミクロ凹凸構造14は、第2レジスト層16によってエッチングから保護される。ここで、ミクロ凹凸構造14の突起部141は、底部143よりも速く上部の第2レジスト層16が除去されて、先に露出する。基材11へのエッチングレートは、第2レジスト層16へのエッチングレートよりも速いため、先に露出した突起部141は、より速くエッチングが進行し、エッチング完了時には、底部143よりも深くエッチングされる。したがって、エッチング完了時には、本エッチング工程前に突起部141の形成されていた位置に新たな底部が形成され、底部143の形成されていた位置に新たな突起部が形成されることになる。すなわち、本エッチング工程により、ミクロ凹凸構造14は、突起部141と底部143との位置が反転した状態で、マクロ凹凸構造13に重畳される。
さらに、図4を参照して、より具体的に上記のミクロ凹凸構造14の凹凸の反転について説明する。図4は、図3Gで示したエッチング工程におけるミクロ凹凸構造14のエッチングを説明する説明図である。
図4Aに示すように、本エッチング工程前において、基材11にミクロ凹凸構造14の突起部141および底部143が形成されており、底部143に相当する谷間に第2レジスト層16が充填されている。このようなミクロ凹凸構造14に対して、本エッチング工程を行った場合、図4Bに示すように、基材11は、上部の第2レジスト層16の厚みが薄い突起部141の部分から先に露出し、基材11のエッチングが進行する。ここで、基材11に形成された突起部141のほうが第2レジスト層16よりもエッチングレートが速いため、底部143に充填された第2レジスト層16よりもエッチング量が多くなる。さらに基材11のエッチングが進行した場合、図4Cおよび図4Dに示すように、先に露出した突起部141の方が、上部の第2レジスト層16が厚い底部143よりも深くエッチングされることになる。
そのため、図4Eに示すように、第2レジスト層16が消失するまでエッチングした場合、エッチング工程前の突起部141は、エッチング工程前の底部143よりも深くエッチングされ、新たな底部147になる。また、エッチング工程前の底部143は、エッチング工程前の突起部141よりもエッチング量が少ないため、新たな突起部145になる。
以上にて説明したように、第2レジスト層16のエッチングレートが基材11のエッチングレートよりも遅い場合、基材11に形成されたミクロ凹凸構造14は、突起部141と底部143との位置が反転した状態でマクロ凹凸構造13に対して重畳される。
(2)第2のエッチング条件
また、上記第1のエッチング条件とは逆に、第2レジスト層16のエッチングレートは、基材11のエッチングレートよりも速くなるようにしてもよい。より詳細には、基材11に対する第2レジスト層16のエッチングレート比は、1.5以上であってもよい。
例えば、基材11に対する第2レジスト層16のエッチングレート比が1.5未満の場合、エッチング後、基材11に形成されたミクロ凹凸構造14の凹凸深さが小さくなり、光学体1の光学特性が低下するため、好ましくない。また、基材11に対する第2レジスト層16のエッチングレート比の上限値は、特に設けないが、例えば、20以下であればよい。
この第2のエッチング条件において、基材11が石英ガラスである場合、使用されるガスは、炭素原子、およびフッ素原子を含むことが好ましい。炭素原子およびフッ素原子を含むガスをエッチングに使用することにより、石英(SiO2)をエッチングすることができる。
具体的には、基材11が石英ガラスである場合、エッチングにて使用されるガスとして、CHF3、CH2F2、CF4、C2F8、またはC3F8ガス等を使用することができる。また、これらのガスに対して、H2ガス、またはArガス等を添加することも可能である。ただし、O2ガス等の化学的に活性なガスは、エッチングの等方性を増加させて垂直異方性を低下させるため、好ましくない。
さらに、第2のエッチング条件におけるミクロ凹凸構造14に対するエッチングについて説明する。
第2のエッチング条件において、ミクロ凹凸構造14は、第2レジスト層16によってエッチングから保護される。ここで、基材11へのエッチングレートは第2レジスト層16へのエッチングレートよりも遅いため、基材11に形成されるマクロ凹凸構造13は、第2レジスト層16に形成されたマクロ凹凸構造13よりも凹凸が小さくなる。一方で、基材11に対するマクロ凹凸構造13の凹凸の形成量が小さいため、本エッチング工程前に基材11に形成されていたミクロ凹凸構造14は、消失せずに残存する。したがって、本エッチング工程によっても、ミクロ凹凸構造14をマクロ凹凸構造13に対して重畳させることができる。
しかしながら、本エッチング条件では、ミクロ凹凸構造14の突起部141の高さがエッチング前よりも低くなるため、反射防止能が低下する可能性がある。そのため、第2のエッチング条件よりは、上記第2レジスト層16のエッチングレートが基材11のエッチングレートよりも遅い第1のエッチング条件を用いるほうがより好ましい。
次に、図3Hに示すように、マクロ凹凸構造13とミクロ凹凸構造14との双方が重畳された基材11から残存した第2レジスト層16を除去する。また、第2レジスト層16が除去された基材11を洗浄することで、本実施形態に係る光学体1が製造される。
以上にて説明した第1の製造方法によれば、本実施形態に係る光学体1を製造することが可能である。また、第1の製造方法により製造された光学体1は、図3Gで示したエッチング工程において、垂直異方性を有するエッチングが行われているため、ミクロ凹凸構造14の突起部141が基材11の平坦面12の法線方向に伸長する。したがって、該光学体1は、上述したように、強い外光に対する正反射を抑制することができる。
また、第1の製造方法では、図3Gで示したエッチング工程にて垂直異方性を有するエッチングが行われているため、ミクロ凹凸構造14の中間突起部141Bは、谷側突起部141Aおよび山側突起部141Cよりも高さが低くなる。したがって、第1の製造方法により製造された光学体1は、上述したように、より広い波長帯域の入射光の反射を防止することができる。
垂直異方性を有するエッチングでは、基材11の平坦面12に対して垂直にイオンが入射するため、イオンの入射方向に対して面が出ている谷部13Aおよび山部13Cのほうがエッチングに寄与するイオンのエネルギーを受けやすい。また、イオンの入射方向に対して角度を有している斜面部13Bは、エッチングに寄与するイオンのエネルギーが分散される。これにより、斜面部13Bのエッチングレートは、谷部13Aおよび山部13Cのエッチングレートよりも遅くなる。したがって、中間突起部141Bは、谷側突起部141Aおよび山側突起部141Cよりも高さが低くなる。
さらに、第1の製造方法では、ミクロ凹凸構造14が露光装置を用いたリソグラフィによってパターニングされるため、基材11の表面上に周期的に可視回折光が発生しない範囲にてミクロ凹凸構造14の突起部141を形成することができる。したがって、本実施形態に係る光学体1は、回折散乱による入射光の透過損失を抑制することができる。
[2.2.第2の製造方法]
続いて、図5〜図8を参照して、本実施形態に係る光学体1の第2の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る光学体1を製造するための光学体原盤1Aを説明する斜視図である。また、図6は、図5に示す光学体原盤1Aを製造する露光装置の一例を示した説明図であり、図7は、図5に示す光学体原盤1Aを製造するエッチング装置の一例を示した説明図である。さらに、図8は、本実施形態に係る光学体1を製造する転写装置の一例を示した説明図である。
具体的には、本実施形態に係る光学体1の第2の製造方法では、まず、マクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14が重畳された凹凸構造5が表面に形成された光学体原盤1Aを製造する。次に、製造した光学体原盤1Aを用いて、シート状の基材11に凹凸構造5を転写することにより、基材11の表面に凹凸構造5が形成された光学体1を連続的に製造する。
まず、図5を参照して、光学体原盤1Aについて説明する。図5に示すように、光学体原盤1Aは、例えば、中空円柱状の原盤基材3からなる。また、原盤基材3の外周面には、凹凸構造5が形成されている。
原盤基材3は、例えば、円筒形状のガラス体であり、例えば、石英ガラスで形成される。ただし、原盤基材3の材料は、SiO2純度が高いものであれば、特に限定されず、溶融石英ガラスまたは合成石英ガラス等であってもよい。また、原盤基材3の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、軸方向の長さが100mm以上であってもよく、外径が50mm以上300mm以下であってもよく、厚みが2mm以上50mm以下であってもよい。
凹凸構造5は、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長よりも大きいマクロ凹凸構造(第1の凹凸構造)に、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長以下であるミクロ凹凸構造(第2の凹凸構造)が重畳された構造である。ここで、マクロ凹凸構造は、例えば、凹凸の平均周期が1μm以上100μm以下のアンチグレア構造であってもよく、ミクロ凹凸構造は、例えば、凹凸の平均周期が100nm以上350nm以下のモスアイ構造であってもよい。
このような凹凸構造5が外周面に形成された光学体原盤1Aは、例えば、上記で第1の製造方法として説明した製造方法を用いることにより製造することができる。具体的には、光学体原盤1Aは、図6に示す露光装置2、および図7に示すエッチング装置4を用いることにより製造することができる。
ここで、図6および図7を参照して、光学体原盤1Aを製造するための露光装置2およびエッチング装置4について説明する。
まず、図6に示す露光装置2について説明する。図6に示す露光装置2は、図3Bを参照して説明した露光工程にて用いられるレーザ描画装置である。
図6に示すように、露光装置2は、レーザ光源21と、第1ミラー23と、フォトダイオード(Photodiode:PD)24と、集光レンズ26と、電気光学偏向素子(Electro Optic Deflector:EOD)29と、コリメータレンズ28と、制御機構37と、第2ミラー31と、移動光学テーブル32と、スピンドルモータ35と、ターンテーブル36とを備える。また、原盤基材3は、ターンテーブル36上に載置され、回転することができるようになっている。
レーザ光源21は、原盤基材3の表面に成膜されたレジスト層を露光するためのレーザ光20Aを発振する光源であり、例えば、400nm〜500nmの青色光帯域の波長のレーザ光を発する半導体レーザである。レーザ光源21から出射されたレーザ光20Aは、平行ビームのまま直進し、第1ミラー23で反射される。また、第1ミラー23にて反射されたレーザ光20Aは、集光レンズ26によって電気光学偏向素子29に集光された後、コリメータレンズ28によって、再度、平行ビーム化される。平行ビーム化されたレーザ光20Aは、第2ミラー31によって反射され、移動光学テーブル32上に水平かつ平行に導かれる。
第1ミラー23は、偏光ビームスプリッタで構成されており、偏光成分の一方を反射させ、偏光成分の他方を透過させる機能を有する。第1ミラー23を透過した偏光成分は、フォトダイオード24によって受光され、光電変換される。また、フォトダイオード24によって光電変換された受光信号は、レーザ光源21に入力され、レーザ光源21は、入力された受光信号に基づいてレーザ光20Aの変調を行う。
電気光学偏向素子29は、レーザ光20Aの照射位置を制御することが可能な素子である。露光装置2は、電気光学偏向素子29により、移動光学テーブル32上に導かれるレーザ光20Aの照射位置を変化させることも可能である。
移動光学テーブル32は、ビームエキスパンダ(Beam expader:BEX)33と、対物レンズ34とを備える。移動光学テーブル32に導かれたレーザ光20Aは、ビームエキスパンダ33により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ34を介して、原盤基材3の表面に成膜されたレジスト層に照射される。また、原盤基材3は、スピンドルモータ35に接続されたターンテーブル36上に載置され、回転することができるようになっている。
ここで、ターンテーブル36により原盤基材3を回転させながら、レーザ光20Aを原盤基材3の軸方向に移動させ、レジスト層へレーザ光を間欠的に照射することでレジスト層への露光が行われる。なお、レーザ光20Aの移動は、移動光学テーブル32を矢印R方向へ移動することによって行われる。
また、露光装置2は、レーザ光20Aによる照射位置を矩形格子状や六角格子状などの2次元パターンにするための制御機構37を備える。制御機構37は、フォーマッタ38と、ドライバ39とを備え、レーザ光20Aの照射を制御する。ドライバ39は、フォーマッタ38が生成した制御信号に基づいてレーザ光源21の出力を制御する。これにより、レジスト層15へのレーザ光20Aの照射が制御される。
なお、露光装置2は、2次元パターンがトラックごとに同期するように、1トラックごとにフォーマッタ38からの制御信号と、スピンドルモータ35のサーボ信号とを同期させている。そのため、ターンテーブル36の回転数、レーザ光20Aの変調周波数、および移動光学テーブル32の送りピッチなどを適切な値に設定することにより、露光装置2は、周期的な2次元パターンにてレジスト層へのレーザ光20Aの照射を行うことができる。
続いて、図7に示すエッチング装置4について説明する。エッチング装置4は、図3Dおよび図3Gを参照して説明したエッチング工程にて用いられる。図7に示すエッチング装置4は、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)装置である。
図7に示すように、エッチング装置4は、エッチング反応槽41と、カソード(陰極)である円柱電極42と、アノード(陽極)である対向電極43とを備える。円柱電極42は、エッチング反応槽41の中央に設けられ、原盤基材3を着脱可能に設けられる。円柱電極42は、例えば、原盤基材3と略同一または相似の円柱面を有し、原盤基材3の内周面によりも小さい円柱面を有することが好ましい。また、円柱電極42は、ブロッキングコンデンサ44を介して、例えば、周波数13.56MHzの高周波電源(RF)45に接続される。一方、対向電極43は、エッチング反応槽41の内側に設けられ、アースに対して接続される。
エッチング装置4では、高周波電源45により、対向電極43と円柱電極42との間に高周波電圧が印加されることで、対向電極43と円柱電極42との間にプラズマが発生する。ここで、対向電極43はアースに接続されているため、電位が変化しない。一方、円柱電極42は、ブロッキングコンデンサにより回路が遮断されているため、電圧降下が発生し、電位が負になる。これにより、エッチング反応槽41中には、円柱電極42の円柱面に垂直な方向に電界が発生するため、プラズマ中のプラスイオンは、原盤基材3の外周面に垂直に入射し、垂直異方性を有するエッチングを行うことができる。
以上にて説明した露光装置2およびエッチング装置4を用いて、第1の製造方法にて説明した工程を実行することにより、図5で示した光学体原盤1Aを製造することができる。
さらに、光学体原盤1Aの外周面に形成された凹凸構造5を基材11に転写することにより、本実施形態に係る光学体1を製造することができる。具体的には、本実施形態に係る光学体1は、図8に示す転写装置6を用いることにより製造することができる。
ここで、図8を参照して、光学体原盤1Aを用いて光学体1を製造するための転写装置6について説明する。図8に示す転写装置6は、例えば、ロールツーロール(roll−to−roll)方式のナノインプリント装置である。
図8に示すように、転写装置6は、光学体原盤1Aと、基材供給ロール51と、巻取ロール52と、ガイドロール53、54と、ニップロール55と、剥離ロール56と、塗布装置57と、光源58とを備える。
基材供給ロール51は、シート形態の基材11がロール状に巻かれたロールである。また、巻取ロール52は、凹凸構造5が転写された樹脂層62を積層した光学体1を巻き取るロールである。ガイドロール53、54は、基材11を搬送するロールであり、基材供給ロール51から巻取ロール52まで基材11を搬送可能となるように転写装置6内の搬送経路に配置される。
ニップロール55は、樹脂層62が積層された基材11を円筒形状の光学体原盤1Aに対して密着させるロールである。また、剥離ロール56は、凹凸構造5が樹脂層62に転写された後、樹脂層62が積層された基材11を光学体原盤1Aから剥離する。なお、基材供給ロール51、巻取ロール52、ガイドロール53、54、ニップロール55、および剥離ロール56の材質は、特に限定されないが、例えば、ステンレス等の金属、ゴム、シリコーン樹脂等を適宜選択して使用することができる。
塗布装置57は、コーターなどの塗布手段を備え、光硬化樹脂組成物を基材11に塗布し、樹脂層62を形成する。塗布装置57は、例えば、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーターなどであってもよい。また、光源58は、光硬化樹脂組成物を硬化可能な波長の光を発する光源であり、例えば、紫外線ランプなどであってもよい。
なお、光硬化性樹脂組成物は、所定の波長の光が照射されることにより流動性が低下し、硬化する樹脂である。具体的には、光硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂アクリレートなどの紫外線硬化樹脂であってもよい。また、光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、開始剤、フィラー、機能性添加剤、溶剤、無機材料、顔料、帯電防止剤、または増感色素などを含んでもよい。
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなど使用してもよい。フィラーとしては、無機微粒子または有機微粒子のいずれも使用可能であるが、例えば、無機微粒子として、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al2O3などの金属酸化物微粒子を使用することができる。また、機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、吸収剤、消泡剤などを使用することができる。
転写装置6では、まず、基材供給ロール51からガイドロール53を介して、基材11が連続的に送出される。送出された基材11は、塗布装置57により光硬化樹脂組成物が塗布されることで樹脂層62が積層され、さらにニップロール55により、光学体原盤1Aと密着させられる。これにより、光学体原盤1Aの外周面(すなわち、転写面)に形成された凹凸構造5が樹脂層62に転写される。凹凸構造5が転写された後、樹脂層62は、光源58からの光の照射により硬化する。続いて、硬化した樹脂層62が積層された基材11(光学体1)は、剥離ロール56により光学体原盤1Aから剥離され、ガイドロール54にて搬送された後、巻取ロール52によって巻き取られる。
これにより、光学体原盤1Aに形成された凹凸構造5が転写されたシート状の光学体1を連続的に製造することができる。
以上にて説明した各装置を用いることにより、本実施形態に係る光学体の第2の製造方法を実施することができる。
具体的には、円筒形状の石英ガラスからなる原盤基材3の外周面に第1レジスト層15を成膜し、図6で示した露光装置2によってレーザ光による熱リソグラフィを行い、第1レジスト層15に潜像15Aを形成する。続いて、露光した原盤基材3を現像処理し、第1レジスト層15にパターンを形成した後、図7で示したエッチング装置4にて原盤基材3をエッチングし、原盤基材3の外周面にミクロ凹凸構造14を形成する。
次に、ミクロ凹凸構造14を形成した原盤基材3の外周面に第2レジスト層16を成膜し、第2レジスト層16に対してマクロ凹凸構造13を形成する。続いて、図7で示したエッチング装置4にて原盤基材3をエッチングし、原盤基材3の外周面にマクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14を重畳形成する。これらの工程により、マクロ凹凸構造13に対してミクロ凹凸構造14が重畳された光学体原盤1Aが製造される。
さらに、図8で示した転写装置6によって、上記で製造した光学体原盤1Aの外周面の凹凸構造5を基材11に転写することで、光学体1が製造される。
この第2の製造方法によれば、ロールツーロール方式のナノインプリント技術を用いて光学体原盤1Aから光学体1へ凹凸構造5を転写することができるため、大面積のシート状の光学体1を高速かつ連続的に製造することが可能である。
なお、上記では、光学体原盤1Aは、円筒形状のガラス体であるとして説明したが、本発明は、上記例示に限定されない。例えば、光学体原盤1Aは、平板形状のガラス体であってもよい。このような場合、枚葉方式の転写装置6を用いることにより、光学体原盤1Aから光学体1へ凹凸構造5を転写することができる
以上にて、本実施形態に係る光学体1の製造方法について説明した。
<3.実施例>
以下では、実施例および比較例を参照しながら、上記実施形態に係る光学体1について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、上記実施形態に係る光学体1およびその製造方法の実施可能性および効果を示すための一条件例であり、本発明の光学体1やその製造方法が以下の実施例に限定されるものではない。
[3.1.光学体の製造]
以下の工程により、光学体1を製造した。
(実施例1)
まず、円筒形状の石英ガラスからなる原盤基材3の外周面に、タングステン金属酸化物を含む第1レジスト層15を成膜した。次に、図6で示した露光装置2により、レーザ光による熱リソグラフィを行い、第1レジスト層15に六角格子状のドットアレイパターンの潜像15Aを形成した。
なお、露光したドットアレイパターンは、原盤基材3の周方向のトラックに沿って所定のドットピッチごとにドットが配列され、隣接するトラック同士は互い違いに半ドットピッチずつずれた配列(六角格子状の配列)である。また、同一トラックにおけるドットピッチは約230nmであり、原盤基材3の軸方向のトラックピッチは約150nmである。
続いて、原盤基材3をアルカリ現像液(東京応化工業社製NMD3)にて現像処理することで露光した部分のレジストを溶解させ、第1レジスト層15にドットアレイパターンを形成した。次に、第1レジスト層15をマスクにして、図7で示したエッチング装置4にてCHF3ガスを用いて原盤基材3をエッチングし、原盤基材3の外周面にミクロ凹凸構造14を形成した。なお、このエッチング工程では、ミクロ凹凸構造14の突起部141の高さが約250nmになるまで原盤基材3をエッチングした。
さらに、ミクロ凹凸構造14を形成した原盤基材3に対して、紫外線硬化型樹脂であるカチオン重合型ナノインプリントリソグラフィ用レジストを溶媒に溶解して塗布し、第2レジスト層16を形成した。その後、原盤基材3を100℃で5分間加熱し、第2レジスト層16中の溶媒を除去した。
ここで、第2レジスト層16に対して、マクロ凹凸構造13が形成された粗面フィルムを密着させ、紫外線を1000mJ/cm2にて照射することで、第2レジスト層16を硬化させた。その後、粗面フィルムを剥離し、第2レジスト層16にマクロ凹凸構造13を形成した。なお、粗面フィルムのマクロ凹凸構造13の算術平均粗さRaは0.449μmであった。なお、粗面フィルムの算術平均粗さRaは、小坂研究所社Surfcorder ET200を用いて、測定速度100μm/sec、測定力100μNにて測定した。
続いて、マクロ凹凸構造13が形成された第2レジスト層16をマスクにして、図7で示したエッチング装置4により、CHF3ガスを用いて、ガス圧0.5Pa、投入電力250Wにて原盤基材3を6時間エッチングした。本エッチングにおける第2レジスト層16のエッチングレートと、原盤基材3のエッチングレートとの比は、おおよそ1:2であった。
このエッチング工程により、原盤基材3の表面に対して、マクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14が重畳された。なお、エッチング後の原盤基材3の算術平均粗さRaは、0.707μmであった。
以上の工程により、マクロ凹凸構造13に対してミクロ凹凸構造14が重畳された光学体原盤1Aを製造した。続いて、図8で示した転写装置6にて、光学体原盤1Aの外周面に形成されたマクロ凹凸構造13およびミクロ凹凸構造14を樹脂層62に転写し、光学体1を製造した。なお、光学体1の基材11にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。樹脂層62には、紫外線硬化樹脂であるアクリル樹脂アクリレートを用い、1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた。
(実施例2)
実施例1において、第2レジスト層16に対して密着させた粗面フィルムの算術平均粗さRaを0.187μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて光学体1を製造した。なお、エッチング後の原盤基材3の算術平均粗さRaは、0.385μmであった。
(実施例3)
実施例1において、第2レジスト層16に対して密着させた粗面フィルムの算術平均粗さRaを0.606μmに変更し、また、マクロ凹凸構造13を原盤基材3に形成する際のエッチングにて用いたガスをCF4に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて光学体1を製造した。なお、本エッチングにおける第2レジスト層16のエッチングレートと、原盤基材3のエッチングレートとの比は、おおよそ3:1であり、エッチング後の原盤基材3の算術平均粗さRaは、0.271μmであった。
(実施例4)
実施例1において、第2レジスト層16に対して密着させた粗面フィルムの算術平均粗さRaを0.12μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて光学体1を製造した。なお、エッチング後の原盤基材3の算術平均粗さRaは、0.186μmであった。
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材11に用い、ヘイズ値が7%のAG(Antiglare)層をウェットコーティングによって基材11の片面に積層した。AG層上に、順にSiOx(膜厚3nm)、Nb2O5(膜厚20nm)、SiO2(膜厚35nm)、Nb2O5(膜厚35nm)、SiO2(膜厚100nm)の多層薄膜をスパッタリング法によって成膜し、反射防止層とすることにより、光学体を製造した。
(比較例2)
セルローストリアセテート(TAC)フィルムを基材11に用い、ヘイズ値が9%のAGハードコート層をウェットコーティングによって基材11の片面に積層した。次に、フィラーを含み、AGハードコート層上にAGハードコート層よりも屈折率が低い樹脂層をウェットコーティングによって積層し、反射防止層とすることにより、光学体を製造した。
(比較例3)
実施例1において、マクロ凹凸構造13が形成される前のミクロ凹凸構造14のみが形成された原盤基材3を光学体原盤1Aとして用いた以外は、実施例1と同様の方法にて光学体1を製造した。
(比較例4)
ヘイズ値が約20%のアンチグレア層と、ハードコート層とがポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層された市販の防眩フィルム(Daiso製)を購入し、光学体として用いた。
[3.2.光学体の評価結果]
(電子顕微鏡による光学体の観察結果)
まず、図9〜図12を参照して、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)および透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による光学体の構造観察の結果について説明する。
まず、SEMにて光学体の平面構造を観察した。その結果を図9および図10に示す。ここで、図9は、実施例1に係る光学体の表面のSEM画像であり、図10は、実施例3に係る光学体の表面のSEM画像である。また、図9Aおよび図10Aは、倍率5000倍のSEM画像であり、図9Bおよび図10Bは、倍率50000倍のSEM画像である。
図9Aおよび図10Aを参照すると、実施例1および3に係る光学体の表面には、マイクロメートルスケールの凹凸構造が形成されていることがわかる。このマイクロメートルスケールの凹凸構造が、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長よりも大きいマクロ凹凸構造(第1の凹凸構造)に相当する。また、実施例1および3に係る光学体のマクロ凹凸構造の表面上には、より微細なミクロ凹凸構造(第2の凹凸構造)が、マクロ凹凸構造に重畳されていることがわかる。
また、図9Bおよび図10Bを参照すると、実施例1および3に係る光学体の表面に形成されたミクロ凹凸構造において、突起部は、周期性を有する2次元配列にて形成されていることがわかる。具体的には、ミクロ凹凸構造における突起部の2次元配列は、突起部が均等な間隔で並んだ列が千鳥に配列されており、いわゆる六角格子状の周期性を有する配列であることがわかる。
次に、TEMにて光学体の断面構造を観察した。その結果を図11および図12に示す。図11は、実施例1に係る光学体のマクロ凹凸構造のTEM画像である。また、図12は、実施例1に係る光学体のミクロ凹凸構造のTEM画像である。このうち、図12Aは、マクロ凹凸構造の山部を拡大したTEM画像であり、図12Bは、マクロ凹凸構造の斜面部を拡大したTEM画像であり、図12Cは、マクロ凹凸構造の谷部を拡大したTEM画像である。
図11を参照すると、実施例1に係る光学体のミクロ凹凸構造の突起部は、基材の平坦面の法線方向に伸長しており、基材全体にわたって一方向に揃っていることがわかる。
さらに、図12A〜図12Cを参照すると、光学体のマクロ凹凸構造における山部、谷部、斜面部の表面には、それぞれミクロ凹凸構造の突起部が基材の平坦面の法線方向に伸長して形成されていることがわかる。また、マクロ凹凸構造の斜面部に形成された中間突起部の高さは、マクロ凹凸構造の谷部に形成された谷側突起部の高さ、およびマクロ凹凸構造の山部に形成された山側突起部の高さよりも低いことがわかる。具体的には、中間突起部の高さは、約270nm〜300nmであり、谷側突起部および山側突起部の高さは、約360〜390nmであった。
なお、図12A〜図12Cでは、ある突起部の頂点の両側に位置する2つの底部の間を仮想的に結んだベースラインを想定し、頂点から基材の平坦面の法線方向に沿って下ろした直線と、かかるベースラインとの交点との距離を突起部の高さとして測定した。
(光学体の反射防止能の評価)
続いて、図13A〜図15を参照して、本実施形態に係る光学体の反射防止能の評価結果について説明する。図13Aは、正反射分光測定の光学系を説明する説明図であり、図13Bは、拡散反射分光測定の光学系を説明する説明図である。また、図14は、正反射における分光正反射率の測定結果を示すグラフ図であり、図15は、拡散反射における分光拡散反射率の測定結果を示すグラフ図である。
まず、図13Aおよび図13Bを参照して、本実施形態に係る光学体の反射防止能の評価方法を説明する。図13Aに示すように、正反射分光測定では、光源71からの光72Aは、直接、試料77に照射される。試料77からの反射光72Bは、球面ミラー73にて集光され、積分球75へ導かれた後、積分球75内で多重反射して均質化した後、検出される。また、図13Bに示すように、拡散分光測定では、光源71からの光72Aは、球面ミラーにて反射した後、積分球75内に備えられた試料77に照射される。試料77からの反射光72Bは、積分球75内で多重反射して均質化した後、検出される。
ここで、正反射における分光正反射率の測定結果を図14に示し、拡散反射における分光拡散反射率の測定結果を図15に示す。なお、反射率測定には、日本分光製の分光光度計V550、および絶対反射率測定器ARV474Sを用いた。
図14に示すように、実施例1〜4に係る光学体は、比較例1〜4に対して、可視光帯域に属する波長のいずれにおいても分光正反射率が低く、正反射を防止可能であることがわかる。
一方、多層薄膜により反射防止能を付与した比較例1では、450nm以上650nm以下の限られた波長帯域の光しか正反射を防止することができず、450nm未満または650nmを越える波長帯域では、分光正反射率が増加することがわかる。また、樹脂層により反射防止能を付与した比較例2、および市販の防眩フィルムである比較例4は、実施例1〜4に対して、分光正反射率が高く、十分に正反射を防止することができないことがわかる。さらに、ミクロ凹凸構造のみを形成した比較例3は、可視光帯域に属する波長のいずれにおいても比較的分光正反射率が低いものの、実施例1〜4に対しては分光正反射率が高いことがわかる。
また、図15に示すように、実施例1〜4に係る光学体は、比較例1および2に対して、可視光帯域全体にわたって比較的、分光拡散反射率が低く、拡散反射を防止可能であることがわかる。
ただし、実施例3に係る光学体の分光拡散反射率は、実施例1および2に係る光学体の分光拡散反射率よりも高くなった。これは、実施例3では、マクロ凹凸構造にミクロ凹凸構造を重畳するエッチング工程において、レジスト層のエッチングレートが原盤基材のエッチングレートよりも速いことが原因と考えられる。実施例3では、上記のエッチング条件により、ミクロ凹凸構造の突起部の高さは、実施例1および2、比較例3よりも低くなる。これにより、実施例3では、反射防止能が低下し、分光拡散反射率が増加したものと考えられる。
一方、多層薄膜により反射防止能を付与した比較例1は、450nm以上650nm以下の限られた波長帯域の光の拡散反射しか防止することができないことがわかる。具体的には、比較例1は、450nm未満または650nmを越える波長帯域では、実施例1〜4に対して分光拡散反射率が増加することがわかる。また、樹脂層により反射防止能を付与した比較例2は、実施例1〜4に対して、分光拡散反射率が高く、十分に拡散反射を防止することができないことがわかる。さらに、ミクロ凹凸構造のみを形成した比較例3は、実施例1、2および4と同様の分光拡散反射率を示すことがわかる。
さらに、本実施形態に係る光学体の正反射光の色調を測定し、視感反射率(Y)および反射色度(a*,b*)を算出した。ここで、正反射光の視感反射率(分光正視感反射率ともいう)は、正反射光の色をYxy表色系にて表した際の(Y,x,y)のうちのY値であり、正反射光の色の明度を表す。すなわち、分光正視感反射率が低いほど、正反射光の明度が低く、正反射が抑制されていることを示す。また、反射色度(a*,b*)は、正反射光の色調を示す。正反射光の色調を測定には、村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM−150を用いた。測定結果を以下の表1に示す。
表1を参照すると、実施例1〜4に係る光学体は、比較例1〜4に係る光学体に対して、分光正視感反射率(Y値)が低く、正反射光の色の明度が低くなっていることがわかる。すなわち、実施例1〜4に係る光学体は、比較例1〜4に係る光学体に対して、正反射が抑制されていることがわかる。具体的には、実施例1〜4に係る光学体の分光正視感反射率(Y値)は、0.3%以下となることがわかる。一方、比較例1〜4に係る光学体の分光正視感反射率は0.3%よりも高くなっており、比較例1〜4に係る光学体は、正反射を抑制しきれていないことがわかる。
(光学体の透明性の評価結果)
続いて、本実施形態に係る光学体の透明性の評価結果について説明する。具体的には、実施例1〜4および比較例1〜4に係る光学体に対して、ヘイズ値および全光線透過率を測定した。ここで、ヘイズ値は、光学体の濁度(曇度)を表す指標であり、値が高いほど光学体の光散乱性が高く、防眩能が高いことを示す。また、全光線透過率は、光学体の透明性を表す指標である。なお、ヘイズ値および全光線透過率の測定には、村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM−150を用いた。測定結果を以下の表2に示す。
表2を参照すると、実施例1〜4に係る光学体は、比較例1〜4に係る光学体と同程度の全光線透過率を有し、かつヘイズ値が高いため、透明性が高く、かつ防眩能が高いことがわかる。具体的には、実施例1〜4のヘイズ値は、5%以上、より具体的には、10%以上となることがわかる。
以上の評価結果から、実施例1〜4に係る光学体は、反射防止能および防眩能を併せ持っていることがわかる。これは、実施例1〜4に係る光学体において、表面に凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長よりも大きいマクロ凹凸構造に対して、凹凸の平均周期が可視光帯域に属する波長以下であるミクロ凹凸構造が重畳されていることに起因する。一方、比較例1〜4に係る光学体は、このような重畳構造を有しないため、反射防止能と防眩能とを併せ持つことができない。
(光学体の光沢度の評価結果)
次に、本実施形態に係る光学体の光沢度の評価結果を説明する。具体的には、実施例1〜4および比較例1〜4に係る光学体に対して、光沢度を測定した。ここで、光沢度は、光学体の光沢感を表す指標であり、値が高いほど光学体の光散乱性が高く、艶消し度合が強なり、防眩能が高いことを示す。
なお、光沢度の測定には、村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM−150を用いた。また、20°光沢度は、入射角度20°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度20°の反射率を表し、60°光沢度は、入射角度60°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度60°の反射率を表し、80°光沢度は、入射角度80°にて光学体表面に光を投射した場合の受光角度80°の反射率を表す。測定結果を以下の表3に示す。
表3を参照すると、実施例1〜4に係る光学体は、比較例1〜4に係る光学体に対して、光沢度が低いため、光学体の光散乱性が高く、防眩能が高いことがわかる。具体的には、実施例1〜4に係る光学体の20°光沢度は4%以下、より具体的には、1%未満となることがわかる。また、実施例1〜4に係る光学体の60°光沢度は10%以下となることがわかる。
一方、比較例1〜4に係る光学体の20°光沢度は1%以上であり、また、60°光沢度は10%よりも高くなっていることから、比較例1〜4に係る光学体は、光散乱性が低く、防眩能が低いことがわかる。
[3.3.光学体の実機評価]
次に、図16および17を参照して、本実施形態に係る光学体を反射防止フィルムとして使用した場合の評価結果について説明する。具体的には、本実施形態に係る光学体が液晶表示ディスプレイ上に貼付された場合に、外光反射を防止し、液晶表示ディスプレイの視認性を向上させることができるか否かを評価した。
(実施例5)
iPodTouch(登録商標)の液晶表示ディスプレイに、屈折率1.5の接着層を介して本発明の実施例2に係る光学体を貼付し、実施例5とした。
(比較例5〜8)
実施例5と同様に、iPodTouchの液晶表示ディスプレイに、屈折率1.5の接着層を介して比較例1〜4に係る光学体を貼付し、比較例5〜8とした。
(比較例9)
何も貼付しないiPodTouchの液晶表示ディスプレイを比較例9とした。
実施例5、および比較例5〜9に係る液晶表示ディスプレイに対して、27Wの3波長形昼白色蛍光灯の光を正面から照射し、白表示部および黒表示部のそれぞれにて、正反射する光を輝度計にて測定した。また、外光照射時の白表示部の輝度を黒表示部の輝度にて除算することにより、液晶表示ディスプレイのコントラスト比を算出した。さらに、実施例5、および比較例5〜9に係る液晶表示ディスプレイに対して、外光を照射しない状態(暗所)での白表示部の輝度を測定した。なお、輝度測定には、コニカミノルタ製の輝度計CS1000を用いた。
上記にて測定した実施例5、および比較例5〜9に係る液晶表示ディスプレイの外光照射時のコントラスト比の評価結果、および暗所での白表示部の輝度の評価結果を下記の表4に示す。
表4を参照すると、実施例5に係る液晶表示ディスプレイは、比較例5〜9に係る液晶表示ディスプレイに対して、外光照射時における白表示部と黒表示部のコントラスト比が高いことがわかる。すなわち、実施例5に係る液晶表示ディスプレイは、比較例5〜9に係る液晶表示ディスプレイに対して、より外光反射を防止することができ、外光反射によるコントラスト比の低下を抑制することができることがわかる。
また、表4を参照すると、実施例5に係る液晶表示ディスプレイは、比較例5〜9に係る液晶表示ディスプレイに対して、暗所での輝度がほぼ同様の値となっている。したがって、実施例5に係る液晶表示ディスプレイは、高い反射防止能を備えつつも、液晶表示ディスプレイからの光については減衰させることなく透過させることがわかる。
以上の結果から、本実施形態に係る光学体は、反射防止フィルムとして好適に用いることができ、強い外光が照射される環境下において、液晶表示ディスプレイの視認性を向上させることが示された。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。