JP2016168770A - ウインドウフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、透明性が高く、成形性に優れたウインドウフィルムを提供することである。
【解決手段】本発明の曲面ガラスに貼合するウインドウフィルム(1)は、膜厚が5.0μm以上のフィルムA(2)と、曲面ガラスの凹面側に貼合される、膜厚が5.0μm以上のフィルムB(3)と、が積層された構成を有し、フィルムA(2)の吸湿膨張係数が、フィルムB(3)の吸湿膨張係数の1/4以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ウインドウフィルムに関する。より詳しくは、透明性が高く、成形性に優れたウインドウフィルムに関する。
一般に、ウインドウフィルム用の支持体として、ポリエステルフィルムが使われている。これは、ポリエステルフィルムが、透明性及び強度が高いことから、窓に貼られた場合に、視野を妨げることなく使用することできるためである(例えば、特許文献1及び2参照。)。
このようなポリエステルフィルムを支持体とするウインドウフィルムを曲面加工された自動車の窓に適用した場合、ヒートガン等を用いて熱成形する必要がある。しかしながら、この作業には、熟練を要するとともに、熱をかけすぎるとその部分でフィルムが縮れてしまい、新しいフィルムで再度作業をやり直さなければならないという問題があった。
一方で、透明性の高いセルロース系の支持体として、セルローストリアセテート(TAC)フィルムが知られている。TACフィルムは、透明性が高いため、ディスプレイ用に使用されている(例えば、特許文献3及び4参照。)。しかしながら、TACフィルムは、引裂き特性が弱いため、ウインドウフィルムの一つの機能である飛散防止ができないという問題があった。
特開2013−209246号公報 特開2010−215493号公報 特開2005−104148号公報 特開2005−104149号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、透明性が高く、成形性に優れたウインドウフィルムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ウインドウフィルムを構成するフィルムAとフィルムBとの吸湿膨張係数を特定の相関関係とすることにより、透明性が高く、成形性に優れたウインドウフィルムを提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.曲面ガラスに貼合するウインドウフィルムであって、
膜厚が5.0μm以上のフィルムAと、
前記曲面ガラスの凹面側に貼合される、膜厚が5.0μm以上のフィルムBと、
が積層された構成を有し、
前記フィルムAの吸湿膨張係数が、前記フィルムBの吸湿膨張係数の1/4以下であることを特徴とするウインドウフィルム。
2.前記フィルムAの膜厚(dA)と前記フィルムBの膜厚(dB)との比の値(dA/dB)が、50/50〜10/90の範囲内であることを特徴とする第1項に記載のウインドウフィルム。
3.前記フィルムAと前記フィルムBとの間に、近赤外線吸収層を有することを特徴とする第1項又は第2項に記載のウインドウフィルム。
4.前記フィルムA又は前記フィルムBの少なくともいずれかのフィルム中に、近赤外線吸収剤が含有されていることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のウインドウフィルム。
5.前記フィルムAと前記フィルムBとの間に、近赤外線反射層を有することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のウインドウフィルム。
本発明の上記手段により、透明性が高く、成形性に優れたウインドウフィルムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
ウインドウフィルムを窓に貼る場合、霧吹き等でウインドウフィルムを濡らし、水の表面張力を利用して窓に仮固定し、スクレーパーでスクイーズして気泡を抜く。その後、乾燥させることで窓に貼りつけられる(水貼りともいう。)。
ここで、本発明のウインドウフィルムは、フィルムAの吸湿膨張係数がフィルムBの吸湿膨張係数の1/4以下となっているため、水を含ませると吸湿膨張係数の小さいフィルムA側にカールすることになる。
すなわち、本発明のウインドウフィルムを自動車の窓等の曲面ガラスに適用すれば、特別な工程(ヒートガンの使用等)を必要とせずに、水貼りの際に、その水を利用して曲面ガラスに沿って貼合させることができるものと考えられる。
本発明のウインドウフィルムの構成の一例を示す概略断面図 本発明のウインドウフィルムの構成の一例を示す概略断面図 本発明のウインドウフィルムの構成の一例を示す概略断面図
本発明のウインドウフィルムは、フィルムAの吸湿膨張係数が、フィルムBの吸湿膨張係数の1/4以下であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、耐屈曲性の観点から、フィルムAの膜厚(dA)とフィルムBの膜厚(dB)と比の値が、50/50〜10/90の範囲内であることであることが好ましい。
また、近赤外線遮断効果を発現させる観点から、フィルムAとフィルムBとの間に、近赤外線吸収層を有すること、フィルムA又はフィルムBの少なくともいずれかのフィルム中に、近赤外線吸収剤が含有されていること、あるいはフィルムAとフィルムBとの間に、近赤外線反射層を有することが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《ウインドウフィルム》
図1に示すとおり、本発明のウインドウフィルム(1)は、少なくとも、膜厚5.0μm以上のフィルムA(2)と、膜厚5.0μm以上のフィルムB(3)とから構成されている。
本発明のウインドウフィルム(1)は、自動車(車両)の窓等の曲面ガラスに適用した際、フィルムB(3)側が曲面ガラスの凹面側となる(すなわち、フィルムBと曲面ガラスの凹面とが貼合されることとなる。)。
フィルムA(2)及びフィルムB(3)は、干渉膜としての機能を発現させるため、その膜厚が5.0μm以上となっている。
また、本発明のウインドウフィルム(1)は、フィルムA(2)の吸湿膨張係数が、フィルムB(3)の吸湿膨張係数の1/4以下であることを特徴とする。
なお、本発明において、吸湿膨張係数とは、環境を25℃・20%RHから25℃・80%RHまで変化させたときのフィルムの寸度変化率を意味する。すなわち、25℃・20%RHでのフィルムの大きさをL20、25℃80%RHでの大きさをL80としたときに、下記式(1)により算出される値とする。
式(1)
吸湿膨張係数(cm/cm/%RH)
={(L80−L20)/L20}/(80−20)
例えば、測定対象物となるフィルムを幅5cm、長さ28cmの長方形に裁断し、25℃・20%RH及び25℃・80%RHにおけるフィルム長さを測定することで求めることができる。
また、本発明のウインドウフィルム(1)は、フィルムA(2)とフィルムB(3)との間に、図2に示す近赤外線吸収層(4)や、図3に示す近赤外線反射層(5)を有することが好ましい態様である。また、フィルムA(2)又はフィルムB(3)の少なくともいずれかのフィルム中に、近赤外線吸収剤が含有されていてもよい。これらの構成は併用することもでき、例えば、近赤外線吸収層(4)と近赤外線反射層(5)とをともに有する場合、その積層順については特に制限されない。
以下、本発明のウインドウフィルムを構成する各部について、詳細に説明する。
《フィルムA(2)及びフィルムB(3)》
本発明に係るフィルムA及びフィルムBを構成する材料としては、フィルムAの吸湿膨張係数が、フィルムBの吸湿膨張係数の1/4以下となれば特に制限されることなく、公知の各種フィルムを用いることができる。
フィルムAとしては、例えば、ポリエステルフィルムを用いることができる。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのテレフタル酸を原料とするポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレンナフタレート(PPN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのナフタレンジカルボン酸を原料とするポリエステル樹脂、及びこれらに他の成分(例えば、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸類、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、水添ダイマージオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール類等)を共重合させた各種ポリエステル樹脂等が挙げられる。
フィルムBとしては、セルロース系のフィルム、例えば、セルローストリアセテート(TAC)フィルム、セルロースジアセテートフィルム、及びそれらの誘導体からなるフィルムを用いることができる。また、前述のポリエステル成分に第3の成分として、スルホイソフタル酸等の親水基を有する成分を5〜20質量%の範囲内で含有させることも好ましい。
フィルムAの吸湿膨張係数としては、1.0×10−6〜2.0×10−5cm/cm/%RHの範囲内であることが好ましい。
フィルムBの吸湿膨張係数としては、5.0×10−5〜1.0×10−4cm/cm/%RHの範囲内であることが好ましい。
また、本発明においては、フィルムA又はフィルムBの少なくともいずれかのフィルム中に、近赤外線吸収剤が含有されていてもよい。
近赤外線吸収剤としては、複合タングステン酸化物や後述する近赤外線吸収層に含有される無機系赤外線吸収剤や有機系赤外線吸収剤等が挙げられる。
(複合タングステン酸化物)
本発明でいう複合タングステン酸化物とは、赤外線波長域に吸収を持つ、光学吸収特性を有する化合物粒子である。本発明においては、赤外線領域、特に、波長1000nm以上の光を多く吸収し、遮熱する性能(遮熱性能)を有する複合タングステン酸化物を用いることが好ましい。
タングステン酸化物において、酸素欠損を持つ三酸化タングステンや、三酸化タングステンにNa等の陽性元素を添加した、いわゆるタングステンブロンズは、導電性材料で自由電子を持つ材料であることが知られており、これら材料の単結晶等の分析により赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。そして、タングステンと酸素との化合物における組成範囲の特定部分において、近赤外線吸収剤として特に有効な範囲があり、可視光領域においては透明で、近赤外線領域においては吸収を持つ複合タングステン酸化物が見出され、当該複合タングステン酸化物を近赤外線吸収剤として用いる。
複合タングステン酸化物は、一般式(M)で表され、六方晶、正方晶、立方晶の結晶構造を有する場合に耐久性に優れることから、該六方晶、正方晶、立方晶から選ばれる一つ以上の結晶構造を含むことが好ましい。これらの中で、六方晶が可視光領域の吸収が最も少ないため、特に好ましい。例えば、六方晶の結晶構造を持つ複合酸化タングステンとしては、好ましいM(金属元素)として、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの各元素から選択される1種類以上の元素を含む複合タングステン酸化物が挙げられる。本発明においては、複合酸化タングステンとして、セシウム含有複合タングステン酸化物(CWO)が、遮熱性能及び耐候性などの観点から、好適である。
次に、金属元素MとW(タングステン)との組成比率を示すx/yの値について説明する。
x/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され目的とする遮熱効果を得ることができる。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、遮熱効率も上昇するが、x/yの値が1.0程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1.0より小さければ、当該近赤外線吸収剤中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
次に、酸素とW(タングステン)との組成比率を示すz/yの値について説明する。
z/yの値については、2.2以上であれば、近赤外線吸収剤としての化学的安定性を得ることができる。一方、上限としては、元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、3.0以下である。好ましくは、2.45≦z/y≦3.0である。
上記近赤外線吸収剤の粒子径は、その使用目的によって各々選定することができる。まず、透明性を保持することを目的として使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮熱することがなく、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することができるからである。
特に、可視光領域の透明性を重視する場合は、更に粒子による散乱を考慮することが好ましい。この粒子による散乱の低減を重視するとき、粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下である。この理由は、粒子の粒子径が小さければ、幾何学散乱若しくはミー散乱に起因する波長400〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、近赤外線吸収剤を含むフィルムのヘイズが高まり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。すなわち、粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱若しくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。さらに、粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さいことが好ましく、粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
上記粒子径を800nm以下とすることにより、近赤外線吸収剤を含有するフィルムを有するウインドウフィルムのヘイズ値は、可視光透過率85%以下においてヘイズ値2%以下とすることができる。ここで、ヘイズ値が2%よりも大きい値であると曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られない。
耐候性や分散性の観点から、近赤外線吸収剤の表面全体又は一部が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上の金属を含有する酸化物で被覆されていることが好ましい。被覆方法は特に限定されないが、当該近赤外線吸収剤を分散した溶液中へ、上記金属のアルコキシドを添加することで、近赤外線吸収剤の表面を被覆することが可能である。
複合タングステン酸化物は、フィルムA又はフィルムB材料である樹脂100質量部に対して、10〜40質量部の範囲内で添加することが好ましく、更に好ましくは15〜35質量部の範囲内である。10〜40質量部の範囲内にある場合は、優れた遮熱性や可視光透過率が得られる。
本発明に係る近赤外線吸収剤を分散液とする場合、溶剤は特に限定されることなく公知の有機溶剤を使用することができる。具体的には、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、3−メチル−メトキシ−プロピオネート(MMP)等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PEAC)等のグリコール誘導体、フォルムアミド(FA)、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。中でも、極性の低い有機溶剤が好ましく、特にMIBK、MEK等のケトン類や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、PGMEA、PEAC等のグリコールエーテルアセテート類等、疎水性の高いものがより好ましい。これら溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
《近赤外線吸収層(4)》
近赤外線吸収層に含まれる材料としては、特に制限されないが、例えば、近赤外線吸収剤、バインダー成分である紫外線硬化樹脂、光重合開始剤などが挙げられる。
近赤外線吸収層は、含まれるバインダー成分が硬化していることが好ましい。ここで、硬化とは、紫外線などの活性エネルギー線や熱などにより反応が進み硬化することを指す。
近赤外線吸収層に含まれ得る無機系近赤外線吸収剤としては、可視光線透過率、赤外線吸収性、樹脂中への分散適性等の観点から、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモン酸亜鉛、六ホウ化ランタン(LaB)、セシウム含有酸化タングステン(Cs0.33WO)等が好ましい。これらは、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
無機系近赤外線吸収剤の平均粒径は、5〜100nmの範囲内が好ましく、10〜50nmの範囲内がより好ましい。上記範囲内であれば、樹脂中の分散性や、近赤外線吸収性、可視光線透過率を低下させることない。
なお、平均粒径の測定は、透過型電子顕微鏡により撮像し、無作為に、例えば、50個の粒子を抽出して該粒径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
無機系近赤外線吸収剤の近赤外線吸収層における含有量は、近赤外線吸収層の全質量に対して、1〜80質量%の範囲内であることが好ましく、5〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が1質量%以上であれば、十分な近赤外線吸収効果が現れ、80質量%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
また、有機系近赤外線吸収剤としては、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物などが挙げられる。金属錯体系化合物、アミニウム系化合物(アミニウム誘導体)、フタロシアニン系化合物(フタロシアニン誘導体)、ナフタロシアニン系化合物(ナフタロシアニン誘導体)、ジイモニウム系化合物(ジイモニウム誘導体)、スクワリウム系化合物(スクワリウム誘導体)等が特に好ましく用いられる。
近赤外線吸収層においては、本発明の効果を奏する範囲内で、上記以外の金属酸化物や、有機系近赤外線吸収剤、金属錯体等の他の赤外線吸収剤を含んでもよい。このような他の赤外線吸収剤の具体例としては、例えば、ジイモニウム系化合物、アルミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物等が挙げられる。
紫外線硬化樹脂は、他の樹脂よりも硬度や平滑性に優れ、更にはITO、ATOや熱伝導性の金属酸化物の分散性の観点からも有利である。紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な層を形成するものであれば特に制限なく使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂等が挙げられる。より好ましくは、硬度、平滑性、透明性の観点からアクリル樹脂である。
アクリル樹脂は、硬度、平滑性、透明性の観点から、国際公開第2008/035669号に記載されているような、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むことが好ましい。
ここで、光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。
また、紫外線硬化樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する有機化合物を含むものであってもよい。また、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。ここで、反応性シリカ粒子の平均粒子径は、0.001〜0.1μmの範囲内であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲内とすることにより、透明性、平滑性、硬度をバランスよく満たすことができる。
光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、単独でも又は2種以上の組み合わせでも使用することができる。
近赤外線吸収層の層厚は、0.1〜50μmの範囲内が好ましく、1〜20μmの範囲内がより好ましい。0.1μm以上であれば赤外線吸収能力が向上する傾向にあり、一方、50μm以下であれば塗膜の耐クラック性が向上する。
近赤外線吸収層の形成方法は特に制限されず、例えば、上記各成分を含む近赤外線吸収層用塗布液を調製した後、ワイヤーバー等を用いて塗布液を塗布し、乾燥することにより形成する方法等が挙げられる。
《近赤外線反射層(5)》
(金属薄膜)
本発明に係る近赤外線反射層としては、金属薄膜を用いることができる。
金属薄膜は、金属層、又は金属層と金属酸化物層及び/又は金属窒化物層とからなることが好ましい。金属を含有する金属層で赤外線反射機能を発現し、更に、必須ではないが、金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を併用することにより、可視光透過率を上昇させることができる。
本発明で用いることのできる金属層については、赤外線反射性能に優れる銀を主成分とし、少なくとも金及び/又はパラジウムを、金原子及びパラジウム原子の合計として2〜5質量%含むことが好ましい。これら金属の含有量が上記範囲内であれば、硫化による銀の腐食、亀裂を抑制する効果を発現し、かつコストと当該改善効果のバランスの観点で有利である。
金、パラジウムは、銀と比較して可視光の吸収が大きく、添加量が大きくなるにしたがい、積層フィルムとしての可視光透過性能が低下するため好ましくない。金とパラジウムとの比率については、金のみ、あるいはパラジウムのみを添加してもよいし、2〜5質量%の範囲内でこれらを併用してもよい。
金属層は、上述した比率で金、パラジウムを添加した銀合金1層でもよいし、金、パラジウムの比率が異なる銀合金を2層以上積層した多層構成としてもよい。
金属層の総層厚については、特に制限はないが、必要とする近赤外線反射性能と可視光透過性能とを考慮し、2〜8nmの範囲内で適宜選択することが好ましい。総層厚が薄いと透明性に優れるが、近赤外線反射性能が低下してしまう。逆に厚すぎると透明性が低下し、金属の使用量が増加し経済的にも好ましくない。
上述した金属層の金属組成は、ICP発光、XPS、XRFなど既知の分析方法を用いて定量することができる。例えば、ICP発光分析を用いれば、金属層の上にハードコート層などの保護層を設けた場合においても、各金属の組成を正確に分析することができ好ましい。
近赤外線反射層は、上述した金属層の上に金属酸化物層及び/又は金属窒化物層を積層した構造や、金属層を金属酸化物層及び/又は金属窒化物層でサンドイッチした構成であってもよい。本構成を採用することで、銀を含む金属層とフィルムA及びフィルムBと界面反射を抑制することができ、可視光透過率を向上させることが可能となる。つまり、銀単体の屈折率が0.3以下と低く、他の層との間で界面反射がおこり、可視光透過性能が低下するのに対し、屈折率が1.5〜3程度の金属酸化物、金属窒化物を積層した構成とすることにより、可視光線の界面反射を低減することができるためである。
これら物質としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウムドープ酸化スズ(ITO)などの金属酸化物、窒化ケイ素などの金属窒化物を挙げることができ、適宜選択して用いることができる。
層厚については、2〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜8nmの範囲内である。層厚が上記範囲内であれば、可視光透過性能を大幅に向上させることができる。これら金属酸化物(あるいは金属窒化物)については、金属層と併せて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など公知の技術を用い形成することができる。
(多層膜の近赤外線反射層)
本発明に係る近赤外線反射層の他の態様としては、多層膜を用いることができる。
多層膜による近赤外線反射層は、近赤外線成分を反射して遮断する機能を発現するもので、屈折率の異なる複数の屈折率層で構成されている。具体的には、高屈折率層と低屈折率層とを積層して構成される。本発明に用いられる光学反射層は、高屈折率層と低屈折率層とから構成される積層体(ユニット)を少なくとも一つ含む構成を有するものであればよいが、高屈折率層及び低屈折率層とから構成される上記積層体が二つ以上積層された構成を有することが好ましい。この場合、近赤外線反射層の最上層及び最下層は高屈折率層又は低屈折率層のいずれであってもよいが、最上層及び最下層の両者が低屈折率層であることが好ましい。最上層が低屈折率層であると塗布性が良くなり、最下層が低屈折率層であると密着性が良くなる観点から好ましい。
ここで、近赤外線反射層の任意の屈折率層が高屈折率層であるか低屈折率層であるかは、隣接する屈折率層との屈折率の対比によって判断される。具体的には、ある屈折率層を基準層としたとき、当該基準層に隣接する屈折率層が基準層より屈折率が低ければ、基準層は高屈折率層である(隣接層は低屈折率層である。)と判断される。一方、基準層より隣接層の屈折率が高ければ、基準層は低屈折率層である(隣接層は高屈折率層である。)と判断される。したがって、屈折率層が高屈折率層であるか低屈折率層であるかは、隣接層が有する屈折率との関係で定まる相対的なものであり、ある屈折率層は、隣接層との関係によって高屈折率層にも低屈折率層にもなり得る。
ここで、高屈折率層を構成する成分(以下、「高屈折率層成分」とも称する。)と低屈折率層を構成する成分(以下、「低屈折率層成分」とも称する。)が二つの層の界面で混合され、高屈折率層成分と低屈折率層成分とを含む層(混合層)が形成される場合がある。この場合、混合層において、高屈折率層成分が50質量%以上である部位の集合を高屈折率層とし、低屈折率層成分が50質量%を超える部位の集合を低屈折率層とする。具体的には、低屈折率層が、例えば、低屈折率層及び高屈折率層がそれぞれ異なる金属酸化物粒子を含む場合、これらの積層膜における層厚方向での金属酸化物粒子の濃度プロファイルを測定し、その組成によって、形成され得る混合層が、高屈折率層であるか低屈折率層であるかを決定することができる。
積層膜の金属酸化物粒子の濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度で深さ方向にスパッタし、原子組成比を測定することで観測することができる。また、低屈折率成分又は高屈折率成分に金属酸化物粒子が含有されておらず、水溶性樹脂のみから形成されている場合においても、同様にして、水溶性樹脂の濃度プロファイルにて、例えば、深さ方向での炭素濃度を測定することにより混合領域が存在していることを確認し、更にその組成をEDX(エネルギー分散型X線分光法)より測定することで、スパッタでエッチングされた各層が、高屈折率層又は低屈折率層とみなすことができる。
XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。
一般に、近赤外線反射層においては、低屈折率層と高屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で近赤外光反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本形態では、低屈折率層及び高屈折率層から構成される積層体(ユニット)の少なくとも一つにおいて、隣接する低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.35以上であることが更に好ましく、0.4超であることが特に好ましい。近赤外線反射層が高屈折率層及び低屈折率層の積層体(ユニット)を2以上の複数有する場合には、全ての積層体(ユニット)における高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、この場合でも光学反射層の最上層や最下層を構成する屈折率層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。
近赤外線反射層の屈折率層の層数(高屈折率層及び低屈折率層のユニット)としては、上記の観点から、100層以下、すなわち50ユニット以下であることが好ましく、40層(20ユニット)以下であることがより好ましく、20層(10ユニット)以下であることが更に好ましい。
上記隣接した層界面での反射は、層間の屈折率比に依存するので、この屈折率比が大きいほど反射率が高まる。また、単層膜で見たとき、層表面における反射光と、層底部における反射光の光路差を、n・d=波長/4、で表される関係にすると、位相差により反射光を強め合うよう制御でき、反射率を上げることができる。ここで、nは屈折率、dは層の物理膜厚である。この光路差を利用することで、反射を制御できる。この関係を利用して、各層の屈折率と膜厚を制御して、可視光や、近赤外光の反射を制御する。
すなわち、各層の屈折率、各層の膜厚、各層の積層の態様により、特定波長領域の反射率を高くすることができる。
本発明に用いられる近赤外線反射層は、反射率をアップさせる特定波長領域を変えることにより、紫外線反射層、可視光反射層とすることもできる。すなわち、反射率をアップさせる特定波長領域を紫外線領域に設定すれば紫外線反射層となり、可視光領域に設定すれば可視光反射層となる。
本発明に係る近赤外線反射層は、高分子フィルムに互いに屈折率が異なる膜を積層させた多層膜を形成し、JIS S 3107:2013で示される可視光透過率が50%以上で、かつ、波長900〜1400nmの領域に反射率40%を超える領域を有するように設計することが好ましい。
(高屈折率層)
高屈折率層は、第1の水溶性バインダー樹脂及び第1の金属酸化物粒子を含有し、必要に応じて、硬化剤、その他のバインダー樹脂、界面活性剤、及び各種添加剤等を含んでもよい。
高屈折率層の屈折率は、好ましくは1.80〜2.50の範囲内であり、より好ましくは1.90〜2.20の範囲内である。
(第1の水溶性バインダー樹脂)
第1の水溶性バインダー樹脂は、該水溶性バインダー樹脂が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性バインダー樹脂の50質量%以内であるものをいう。
第1の水溶性バインダー樹脂の重量平均分子量は、1000〜200000の範囲内であることが好ましい。さらには、3000〜40000の範囲内がより好ましい。
本発明でいう重量平均分子量は、公知の方法によって測定することができ、例えば、静的光散乱、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)、飛行時間型質量分析法(TOF−MASS)などによって測定することができ、本発明では一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定する。
高屈折率層における第1の水溶性バインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、5〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。
高屈折率層に適用する第1の水溶性バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコールであることが好ましい。また、後述する低屈折率層に存在する水溶性バインダー樹脂も、ポリビニルアルコールであることが好ましい。従って、以下においては、高屈折率層及び低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールを併せて説明する。
〈ポリビニルアルコール〉
本発明において、高屈折率層と低屈折率層とは、ケン化度の異なる2種以上のポリビニルアルコールを含むことが好ましい。ここで、区別するために、高屈折率層で用いる水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(A)とし、低屈折率層で用いる水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(B)とする。なお、各屈折率層が、ケン化度や重合度が異なる複数のポリビニルアルコールを含む場合には、各屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコールをそれぞれ高屈折率層におけるポリビニルアルコール(A)、及び低屈折率層におけるポリビニルアルコール(B)と称する。
本発明でいう「ケン化度」とは、ポリビニルアルコール中のアセチルオキシ基(原料の酢酸ビニル由来のもの)とヒドロキシ基との合計数に対するヒドロキシ基の割合のことである。
また、ここでいう「屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコール」という際には、ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールであるとし、重合度を算出する。ただし、重合度1000以下の低重合度ポリビニルアルコールは、異なるポリビニルアルコールとする(仮にケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールがあったとしても同一のポリビニルアルコールとはしない。)。具体的には、ケン化度が90mol%、ケン化度が91mol%、ケン化度が93mol%のポリビニルアルコールが同一層内にそれぞれ10質量%、40質量%、50質量%含まれる場合には、これら三つのポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールとし、これら三つの混合物をポリビニルアルコール(A)又は(B)とする。また、上記「ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール」とは、いずれかのポリビニルアルコールに着目した場合に3mol%以内であれば足り、例えば、90mol%、91mol%、92mol%、94mol%のポリビニルアルコールを含む場合には、91mol%のポリビニルアルコールに着目した場合に、いずれのポリビニルアルコールのケン化度の差も3mol%以内なので、同一のポリビニルアルコールとなる。
ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の絶対値の差は、3mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましい。このような範囲であれば、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態が好ましいレベルになるため好ましい。また、ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の差は、離れていれば離れているほど好ましいが、ポリビニルアルコールの水への溶解性の観点から、20mol%以下であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のケン化度は、水への溶解性の観点で、75mol%以上であることが好ましい。さらに、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のうち一方がケン化度90mol%以上であり、他方が90mol%以下であることが、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態を好ましいレベルにするために好ましい。ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)のうち一方が、ケン化度95mol%以上であり、他方が90mol%以下であることがより好ましい。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
また、ケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールの重合度は、1000以上のものが好ましく用いられ、特に、重合度が1500〜5000の範囲内のものがより好ましく、2000〜5000の範囲内のものが更に好ましく用いられる。ポリビニルアルコールの重合度が、1000以上であると塗布膜のひび割れがなく、5000以下であると塗布液が安定するからである。なお、本発明において、「塗布液が安定する」とは、塗布液が経時的に安定することを意味する。ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の少なくとも一方の重合度が2000〜5000の範囲内であると、塗膜のひび割れが減少し、特定の波長の反射率が向上するため好ましい。ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)の双方が、2000〜5000であると上記効果はより顕著に発揮できるため好ましい。
本発明において、重合度(P)とは、粘度平均重合度を指し、JIS K 6726(1994)に準じて測定され、PVAを完全に再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から、下記式(2)により求められるものである。
式(2)
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(B)は、ケン化度が75〜90mol%の範囲内で、かつ重合度が2000〜5000の範囲内であることが好ましい。このような特性を備えたポリビニルアルコールを低屈折率層に含有させると、界面混合がより抑制される点で好ましい。これは、塗膜のひび割れが少なく、かつセット性が向上するためであると考えられる。
本発明で用いられるポリビニルアルコール(A)及び(B)は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。ポリビニルアルコール(A)及び(B)として用いられる市販品の例としては、例えば、PVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−235(以上、株式会社クラレ製)、JC−25、JC−33、JF−03、JF−04、JF−05、JP−03、JP−04JP−05、JP−45(以上、日本酢ビ・ポバール株式会社製)等が挙げられる。
本発明において、第1の水溶性バインダー樹脂は、本発明の効果を損なわない限りでは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、一部が変性された変性ポリビニルアルコールを含んでもよい。このような変性ポリビニルアルコールを含むと、膜の密着性や耐水性、柔軟性が改良される場合がある。このような変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10mol%の範囲内、好ましくは0.2〜5mol%の範囲内である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報及び同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシ基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
また、ビニルアルコール系ポリマーとして、エクセバール(登録商標、株式会社クラレ製)やニチゴGポリマー(登録商標、日本合成化学工業株式会社製)などが挙げられる。
変性ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することができる。
変性ポリビニルアルコールの含有量は、特に限定されるものではないが、各屈折率の全質量(固形分)に対し、好ましくは1〜30質量%の範囲内である。このような範囲内であれば、上記効果がより発揮される。
本発明においては、屈折率の異なる層間ではケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールがそれぞれ用いられることが好ましい。
例えば、高屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40〜100質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60〜95質量%の範囲内がより好ましく、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40〜100質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60〜95質量%の範囲内がより好ましい。また、高屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40〜100質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60〜95質量%の範囲内がより好ましく、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40〜100質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60〜95質量%の範囲内がより好ましい。含有量が40質量%以上であると、層間混合が抑制され、界面の乱れが小さくなるという効果が顕著に現れる。一方、含有量が100質量%以下であれば、塗布液の安定性が向上する。
(その他のバインダー樹脂)
本発明において、高屈折率層では、ポリビニルアルコール以外の第1の水溶性バインダー樹脂としては、第1の金属酸化物粒子を含有した高屈折率層が塗膜を形成することができれば、いかなるものでも制限なく使用可能である。また、後述する低屈折率層においても、ポリビニルアルコール(B)以外の第2の水溶性バインダー樹脂としては、上記と同様に、第2の金属酸化物粒子を含有した低屈折率層が塗膜を形成することができれば、どのようなものでも制限なく使用可能である。ただし、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子(特にゼラチン、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー)が好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
高屈折率層において、水溶性バインダー樹脂として好ましく用いられるポリビニルアルコールとともに、併用する他のバインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、5〜50質量%の範囲内で用いることもできる。
本発明においては、有機溶媒を用いる必要がなく、環境保全上好ましいことから、バインダー樹脂は水溶性高分子から構成されることが好ましい。すなわち、本発明ではその効果を損なわない限りにおいて、上記ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールに加えて、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子をバインダー樹脂として用いてもよい。ここで、水溶性高分子とは、該水溶性高分子が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルター(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性高分子の50質量%以内であるものをいう。そのような水溶性高分子の中でも、特にゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、又は反応性官能基を有するポリマーが好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
(第1の金属酸化物粒子)
本発明において、高屈折率層に適用可能な第1の金属酸化物粒子としては、屈折率が2.0〜3.0の範囲内である金属酸化物粒子が好ましい。具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。また、複数の金属で構成された複合酸化物粒子やコア・シェル状に金属構成が変化するコア・シェル粒子等を用いることもできる。
透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層には、チタン、ジルコニウム等の高屈折率を有する金属の酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子及び/又は酸化ジルコニア微粒子を含有させることが好ましい。これらの中でも、高屈折率層を形成するための塗布液の安定性の観点から、酸化チタンがより好ましい。また、酸化チタンの中でも、特にアナターゼ型よりルチル型(正方晶形)の方が、触媒活性が低いために、高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、更に屈折率が高くなることからより好ましい。
また、高屈折率層に、第1の金属酸化物粒子としてコア・シェル粒子を用いた場合では、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と第1の水溶性バインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と隣接層の層間混合が抑制される効果から、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコア・シェル粒子が更に好ましい。
本発明においては、第1の金属酸化物粒子の含有量が高屈折率層の固形分100質量%に対して、15〜80質量%の範囲内であると、低屈折率層との屈折率差を付与するという観点で好ましい。さらに、20〜77質量%の範囲内であることがより好ましく、30〜75質量%の範囲内であることが更に好ましい。なお、当該コア・シェル粒子以外の金属酸化物粒子が、高屈折率層に含有される場合の含有量は、本発明の効果を奏することができる範囲であれば特に限定されるものではない。
本発明においては、高屈折率層に適用する第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmの範囲内であることがより好ましく、5〜15nmの範囲内であるのが更に好ましい。体積平均粒径が1〜30nmの範囲内であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
なお、第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2、…、di、…、dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2、…、ni、…、nk個存在する粒子状の金属酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
さらに、第1の金属酸化物粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式(3)で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%の範囲内である。
式(3)
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100(%)
〈コア・シェル粒子〉
高屈折率層に適用する第1の金属酸化物粒子としては、「含ケイ素の水和酸化物で表面処理された酸化チタン粒子」を用いることが好ましく、このような形態の酸化チタン粒子を「コア・シェル粒子」、あるいは「Si被覆TiO」と称する場合もある。
本発明において、コア・シェル粒子は、コアとなる酸化チタンに対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量がSiOとして3〜30質量%の範囲内であること好ましく、より好ましくは3〜10質量%の範囲内であり、更に好ましくは3〜8質量%の範囲内である。被覆量が30質量%以下であれば、高屈折率層の高屈折率化を達成することができ、また、被覆量が3質量%以上であれば、コア・シェル粒子の粒子を安定に形成することができる。
さらに、本発明において、コア・シェル粒子の平均粒径は、好ましくは1〜30nmの範囲内であり、より好ましくは5〜20nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜15nmの範囲内である。コア・シェル粒子の平均粒径が1〜30nmの範囲内であれば、近赤外線反射率や、透明性、ヘイズといった光学特性がより向上させることができる。
なお、本発明でいう平均粒径とは、一次平均粒径をいい、透過型電子顕微鏡(TEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
本発明に係る高屈折率層には、コア・シェル粒子以外にも、その他の金属酸化物粒子が含まれていてもよい。その他の金属酸化物粒子を併用する場合には、上記説明したコア・シェル粒子が電荷的に凝集しないよう、各種のイオン性分散剤や保護剤を用いることができる。コア・シェル粒子以外に用いることのできる金属酸化物粒子は、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第2鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。
本発明に用いられるコア・シェル粒子は、コアである酸化チタン粒子の表面全体を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよく、また、コアである酸化チタン粒子の表面の一部を含ケイ素の水和酸化物で被覆したものでもよい。
(硬化剤)
本発明においては、高屈折率層に適用する第1の水溶性バインダー樹脂を硬化させるため、硬化剤を使用することもできる。第1の水溶性バインダー樹脂とともに用いることができる硬化剤としては、当該水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば特に制限はない。例えば、第1の水溶性バインダー樹脂として、ポリビニルアルコールを用いる場合では、硬化剤として、ホウ酸及びその塩が好ましい。ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用でき、一般的には、ポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウムミョウバン等が挙げられる。
ホウ酸及びその塩とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂との混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂との水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
本発明では、ホウ酸及びその塩、又はホウ砂を用いることが本発明の効果を得るためにはより好ましい。ホウ酸及びその塩、又はホウ砂を用いた場合には、金属酸化物粒子と水溶性バインダー樹脂であるポリビニルアルコールのOH基と水素結合ネットワークがより形成しやすく、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい近赤外遮断特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層及び低屈折率層の多層重層を湿式コーターで塗布後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やした後、膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
高屈折率層における硬化剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、2〜6質量%の範囲内であることがより好ましい。
特に、第1の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1〜600mgの範囲内が好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100〜600mgの範囲内がより好ましい。
〔低屈折率層〕
低屈折率層は、第2の水溶性バインダー樹脂及び第2の金属酸化物粒子を含み、更は、硬化剤、表面被覆成分、粒子表面保護剤、バインダー樹脂、界面活性剤、各種添加剤等を含んでもよい。
本発明に係る低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.10〜1.60の範囲内であり、より好ましくは1.30〜1.50の範囲内である。
(第2の水溶性バインダー樹脂)
低屈折率層に適用する第2の水溶性バインダー樹脂として、ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。さらに、上記高屈折率層に存在するポリビニルアルコール(A)のケン化度とは異なるポリビニルアルコール(B)が低屈折率層に用いられることがより好ましい。なお、ここでの第2の水溶性バインダー樹脂の好ましい重量平均分子量等、ポリビニルアルコール(A)及びポリビニルアルコール(B)についての説明は、上記高屈折率層の水溶性バインダー樹脂にて説明されており、ここでは説明を省略する。
低屈折率層における第2の水溶性バインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、20〜99.9質量%の範囲内であることが好ましく、25〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明に係る低屈折率層において適用が可能な、ポリビニルアルコール以外の水溶性バインダー樹脂としては、第2の金属酸化物粒子を含有した低屈折率層が塗膜を形成することができればどのようなものでも制限なく使用可能である。ただし、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子(特にゼラチン、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー)が好ましい。これらの水溶性高分子は、単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
低屈折率層において、第2の水溶性バインダー樹脂として好ましく用いられるポリビニルアルコールとともに、併用する他のバインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0〜10質量%の範囲内で用いることもできる。
低屈折率層において、セルロース類、増粘多糖類及び反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子を含有することもできる。これらセルロース類、増粘多糖類及び反応性官能基を有するポリマー類等の水溶性高分子は、上述した高屈折率層で説明した水溶性高分子と同様のものが用いられるため、ここでは説明を省略する。
(第2の金属酸化物粒子)
低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子としては、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましく、具体的な例として合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましい。また、屈折率をより低減させるため、低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いることが好ましい。
低屈折率層に適用する第2の金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmの範囲内であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmの範囲内であることがより好ましく、4〜10nmの範囲内であることがより好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
低屈折率層に適用する金属酸化物粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは低屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
本発明で用いられるコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、及び国際公開第94/26530号などに記載されているものである。
低屈折率層における第2の金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0.1〜70質量%の範囲内であることが好ましく、30〜70質量%の範囲内であることがより好ましく、45〜65質量%の範囲内であることが更に好ましい。
(硬化剤)
低屈折率層において、上記高屈折率層と同様に、硬化剤を更に含むことができる。低屈折率層に含まれる第2の水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば、特に制限されない。特に、低屈折率層に適用する第2の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを用いた場合の硬化剤としては、ホウ酸及びその塩及び/又はホウ砂が好ましい。また、ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用できる。
低屈折率層における硬化剤の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、2〜6質量%の範囲内であることがより好ましい。
特に、第2の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1〜600mgの範囲内が好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100〜600mgの範囲内がより好ましい。
また、硬化剤の具体例などは、上述した高屈折率層と同様であるため、ここでは説明を省略する。
(各屈折率層のその他の添加剤)
高屈折率層及び低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を用いることができる。また、高屈折率層における添加剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、0〜20質量%の範囲内であることが好ましい。当該添加剤の例を以下に記載する。
(界面活性剤)
本発明においては、高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、更に界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、両性イオン系、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれの種類も使用することができる。より好ましくは、ベタイン系両性イオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩系アニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、又はフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
本発明に用いられる界面活性剤の添加量としては、高屈折率層用塗布液又は低屈折率層用塗布液の全質量を100質量%としたとき、0.005〜0.30質量%の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.10質量%の範囲内であることがより好ましい。
(エマルジョン樹脂)
高屈折率層又は低屈折率層は、エマルジョン樹脂を更に含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなり、ガラスへの貼り付け等の加工性がよくなる。
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、ヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖又は末端にヒドロキシ基が置換されたものであり、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテルなどが挙げられる。
(その他の添加剤)
本発明に係る高屈折率層及び低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、特開昭62−261476号公報等に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
(近赤外線反射層の形成方法)
多層膜からなる近赤外線反射層の形成方法としては、湿式塗布方式を適用して形成することが好ましく、更には、本発明に係るフィルムA又はフィルムB上に、第1の水溶性バインダー樹脂及び第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層用塗布液と、第2の水溶性バインダー樹脂及び第2の金属酸化物粒子を含む低屈折率層用塗布液と、を湿式塗布する工程を含む製造方法が好ましい。
湿式塗布方法は、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、又は米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。また、複数の層を重層塗布する方式としては、逐次重層塗布方式でもよいし、同時重層塗布方式でもよい。
《粘着層》
本発明のウインドウフィルムは、曲面ガラスと貼合するフィルムB側に粘着層を設けることが好ましい。
粘着層に用いられる粘着剤は、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示することができる。
本発明のウインドウフィルムは、窓ガラスに貼り合わせる場合、窓に水を吹き付け、濡れた状態のガラス面にウインドウフィルムの粘着層を合わせる貼り方、いわゆる水貼り法が、貼り直し、位置直し等の観点で好適に用いられる。そのため、水が存在する湿潤下では粘着力が弱い、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
使用されるアクリル系粘着剤は、溶剤系及びエマルジョン系のいずれでもよいが、粘着力等を高めやすいことから、溶剤系粘着剤が好ましく、その中でも溶液重合で得られたものが好ましい。このような溶剤系アクリル系粘着剤を溶液重合で製造する場合の原料としては、例えば、骨格となる主モノマーとして、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクリルアクリレート等のアクリル酸エステル、凝集力を向上させるためのコモノマーとして、酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等、更に架橋を促進し、安定した粘着力を付与させ、また水の存在下でもある程度の粘着力を保持するために官能基含有モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。粘着層には、主ポリマーとして、特に高タック性を要するため、ブチルアクリレート等のような低いガラス転移温度(Tg)を有するものが特に有用である。
また、粘着層にはセパレータ(剥離シート)を貼合することが好ましく、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、紙等の基材にシリコンコート、ポリアルキレンコート、フッ素樹脂コートしたものが使用できるが、寸法安定性、平滑性、剥離安定性の点からポリエステルフィルムにシリコンコートしたものが特に好ましい。また、セパレータの厚さは10〜100μmの範囲内が好ましく、更に好ましくは20〜60μmの範囲内である。10μm以下では塗布、乾燥時の熱によりフィルムに搬送じわが生じやすいため好ましくなく、また、100μm以上では経済性の観点から好ましくない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、各フィルムの吸湿膨張係数は、フィルムを幅5cm、長さ28cmの長方形に裁断し、25℃・20%RHにおけるフィルム長さ(L20)及び25℃・80%RHにおけるフィルム長さ(L80)を測定し、下記式(1)により算出した。
なお、作製した各フィルムの吸湿膨張係数は、膜厚を変化させても変わらなかった。
式(1)
吸湿膨張係数(cm/cm/%RH)
={(L80−L20)/L20}/(80−20)
《ウインドウフィルムのサンプルの作製》
(1)サンプル101の作製
(1.1)ポリエステルフィルム(フィルムA)の作製
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートチップを280℃で溶融後、常法により、Tダイより冷却ドラム上に押し出し、次いで、縦方向に90℃に加熱したローラーを用いて、3.3倍に延伸後、テンター内で140℃で3.6倍に延伸後、230℃で熱固定した後、3.6%弛緩熱処理を行い、熱収縮率が0.6%の膜厚25.0μmポリエステルフィルムを得た。
このポリエステルフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、1.2×10−5cm/cm/%RHだった。
(1.2)セルローストリアセテートフィルム(フィルムB)の作製
セルローストリアセテート(置換度2.8、粘度平均重合度306、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度315mPas・s)16.4質量部、酢酸メチル67.7質量部、アセトン6.7質量部、エタノール5.85質量部、n−ブタノール3.3質量部、クエン酸モノエチルエステル0.05質量部からなるドープ液を、流延ダイを通して回転しているステンレス製のエンドレスバンドに流延し、乾燥温度140℃で乾燥させた後、エンドレスバンドから剥ぎ取り、更に100℃で乾燥させて、膜厚25.0μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
このセルローストリアセテートフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、6.0×10−5cm/cm/%RHだった。
(1.3)サンプル101の作製
作製したポリエステルフィルムに、IR吸収剤のセシウム含有複合タングステン酸化物(CWO)を1.4g/mとなるように混ぜ込んだ、層厚10.0μmのブチラール樹脂層を設け、その後セルローストリアセテートフィルムと80℃の温度で熱圧着させ、セルローストリアセテートフィルム側に、層厚10.0μmの粘着層を設け、その上に離形フィルムを貼り合わせて、サンプル101を作製した。
(2)サンプル102及び103の作製
サンプル101の作製において、Tダイ又は流延ダイの押出し量を制御して、ポリエステルフィルム及びセルローストリアセテートフィルムの膜厚を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、サンプル102及び103を作製した。
(3)サンプル104の作製
(3.1)ポリエステルフィルム(フィルムA)の作製
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートチップを280℃で溶融後、常法により、Tダイより冷却ドラム上に押し出し、次いで、縦方向に90℃に加熱したローラーを用いて、3.3倍に延伸後、テンター内で140℃で3.6倍に延伸後、230℃で熱固定した後、3.6%弛緩熱処理を行い、熱収縮率が0.6%の膜厚25.0μmポリエステルフィルムを得た。
このポリエステルフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、1.2×10−5cm/cm/%RHだった。
(3.2)近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルム(フィルムB)の作製
セルローストリアセテート(置換度2.8、粘度平均重合度306、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度315mPa・s)16.4質量部、YMF−02A(近赤外線吸収剤としてCWOを18質量%含有する、メチルイソブチルケトン分散液)3.9質量部、酢酸メチル63.8質量部、アセトン6.7質量部、エタノール5.85質量部、n−ブタノール3.3質量部、クエン酸モノエチルエステル0.05質量部からなるドープ液を、流延ダイを通して回転しているステンレス製のエンドレスバンドに流延し、乾燥温度140℃で乾燥させた後、エンドレスバンドから剥ぎ取り、更に100℃で乾燥させて、膜厚25.0μmの近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルムを得た。
この近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、5.0×10−5cm/cm/%RHだった。
(3.3)サンプル104の作製
作製したポリエステルフィルム上に、層厚10.0μmのブチラール樹脂層を設け、その後近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルムを80℃の温度で熱圧着させ、近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルム側に層厚10.0μmの粘着層を設け、その上に離形フィルムを貼り合わせて、サンプル104を作製した。
(4)サンプル105の作製
(4.1)ポリエステルフィルム(フィルムA)の作製
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートチップを280℃で溶融後、常法により、Tダイより冷却ドラム上に押し出し、次いで、縦方向に90℃に加熱したローラーを用いて、3.3倍に延伸後、テンター内で140℃で3.6倍に延伸後、230℃で熱固定した後、3.6%弛緩熱処理を行い、熱収縮率が0.6%の膜厚25.0μmポリエステルフィルムを得た。
このポリエステルフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、1.2×10−5cm/cm/%RHだった。
(4.2)近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルム(フィルムB)の作製
セルローストリアセテート(置換度2.8、粘度平均重合度306、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度315mPas・s)16.4質量部、YMF−02A(近赤外線吸収剤としてCWOを18質量%含有する、メチルイソブチルケトン分散液)3.9質量部、酢酸メチル63.8質量部、アセトン6.7質量部、エタノール5.85質量部、n−ブタノール3.3質量部、クエン酸モノエチルエステル0.05質量部からなるドープ液を、流延ダイを通して回転しているステンレス製のエンドレスバンドに流延し、乾燥温度140℃で乾燥させた後、エンドレスバンドから剥ぎ取り、更に100℃で乾燥させて、膜厚25.0μmの近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルムを得た。
この近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、5.0×10−5cm/cm/%RHだった。
(4.3)近赤外線反射層の作製
200層の重層押し出しダイスから、ジカルボンサン成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノール(7:3)の組成のコポリエステルと、ジカルボンサン成分としてナフタレンジカルボン酸及びシクロヘキサンジカルボン酸(7:3)と、グリコール成分としてエチレングリコールの組成のコポリエステルとを交互に押し出し、波長1000nmに反射波長の中心がある近赤外線反射層を作製した。200層のポリエステルの各層の層厚は、0.1〜0.2μmであった。
(4.4)サンプル105の作製
この近赤外線反射層の両面に接着層を設け、一方の面にポリエステルフィルム、もう一方に面に近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルムを貼り付け、更に、近赤外線吸収剤含有セルローストリアセテートフィルム側に層厚10.0μmの粘着層を設け、その上に離形フィルムを貼り合わせ、サンプル105を作製した。
(5)サンプル106の作製
サンプル101の作製において、Tダイ又は流延ダイの押出し量を制御して、ポリエステルフィルム及びセルローストリアセテートフィルムの膜厚を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、サンプル106を作製した。
(6)サンプル107の作製
サンプル101におけるポリエステルフィルム(フィルムA)の作製において、Tダイの押出し量を制御して、膜厚50.0μmとした以外は同様にして、ポリエステルフィルム(フィルムA)のみからなるサンプル107を作製した。
(7)サンプル108の作製
サンプル101におけるセルローストリアセテートフィルム(フィルムB)の作製において、流延ダイの押出し量を制御して、膜厚50.0μmとした以外は同様にして、セルローストリアセテートフィルム(フィルムB)のみからなるサンプル107を作製した。
(8)サンプル109の作製
サンプル101の作製において、セルローストリアセテートフィルム(フィルムB)を膜厚12.5μmのポリカーボネート(PC)フィルム(帝人社製)に変更した以外は同様にして、サンプル109を作製した。
このポリカーボネートフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、3.0×10−5cm/cm/%RHだった。
(9)サンプル110の作製
(9.1)ポリエステルフィルム(フィルムA)の作製
市販のポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65)に、遮熱粒子としてLaB(ホウ化ランタン:住友金属鉱山社製)を混合後、常法に従い、2軸延伸熱固定を行い、得られたフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、1.0×10−5cm/cm/%RHであった。
(9.2)共重合ポリエステルフィルム(フィルムB)の作製
テレフタル酸ジメチル100質量部及びエチレングリコール64質量部に、エステル交換触媒として酢酸カルシウム水和物0.1質量部を添加し、常法に従ってエステル交換反応を行った。得られた生成物に、5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)32質量部、ポリエチレングリコール(数平均分子量:3000)8質量部、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.13質量部、及び水酸化ナトリウム0.02質量部を添加した。
次いで、徐々に昇温、減圧し、280℃、0.5mmHgで重合を行い、共重合ポリエステルを得た。共重合ポリエステル中には、上記重合反応時に副生するジエチレングリコールがグリコール成分として含まれていた。
得られた共重合ポリエステルを、常法に従い、2軸延伸熱固定を行い、得られたフィルムの吸湿膨張係数を測定したところ、8.0×10−5cm/cm/%RHであった。
(9.3)サンプル110の作製
共重合ポリエステルと市販のポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65)をそれぞれ150℃で真空乾燥した後、2台の押出機を用いて285℃で溶融押出しし、Tダイ内で層状に接合し、冷却ドラム上で急冷固化させ、積層未延伸フィルムを得た。次いで、85℃でタテ方向に3.5倍延伸し、更に95℃でヨコ方向に3.5倍延伸した後、210℃で熱固定して、膜厚50.0μmの二軸延伸フィルムを得た。
この二軸延伸フィルムの共重合ポリエステルフィルム側に、層厚10.0μmの粘着層を設け、その上に離形フィルムを貼り合わせて、サンプル110を作製した。
《サンプルの評価》
(1)仕上がり、シワの評価
作製した各サンプルを自動車のフロントガラスの外面に、フロントガラスの大きさに型取りし、離形フィルムを外側にして載せ、離形フィルムを剥がしながら、施工用の活性剤水溶液を、粘着面にかけ、再度離形フィルムを活性剤水溶液の上から載せ10分間放置後、離形フィルムを剥がしながら、施工液で湿らせたフロントガラスの内面に貼り合わせ、施工用へらで、水を扱き出した。貼合後の状態を以下の基準で評価した。
評価結果を表1に示す。
(仕上がり)
5:端部まで剥がれがなく、貼ることができる。
4:端部から0.5mmがところどころ浮く
3:端部から5mm程度が浮く
2:端部から5cm程度がシワになる
1:端部から15cm程度がシワになる
0:貼り合わせることができない
(シワ)
3:シワが入らない
2:端部にシワが入る
1:全面にシワが入る
(2)裂けの評価
作製した各サンプルを自動車のサイドガラスの外面に、サイドガラスの大きさに型取りし、離形フィルムを外側にして載せ、離形フィルムを剥がしながら、施工用の活性剤水溶液を、粘着面にかけ、再度離形フィルムを活性剤水溶液の上から載せ10分間放置後、離形フィルムを剥がしながら、施工液で湿らせたサイドガラスの内面に貼りあわせ、金属のへらで扱きながらドアの内袋にフィルムの端部を入れ、フィルムの裂けを評価した。
評価結果を表1に示す。
3:裂けない
2:端部が裂ける
1:全面が裂ける
(3)ヘイズ値の測定
作製した各サンプルを青板ガラスに貼り合わせ、ヘイズメーター(日本電色工業製HDH2000)を使用し、ヘイズ値(%)を算出した。
測定結果を表1に示す。
Figure 2016168770
(4)まとめ
表1から明らかなように、本発明のサンプルは、比較例のサンプルと比較して、仕上がり、シワ、裂け及びヘイズ値(透明性)の評価において、優れていることがわかる。
以上から、フィルムAの吸湿膨張係数が、フィルムBの吸湿膨張係数の1/4以下であることが、透明性が高く、成形性に優れたウインドウフィルムを提供することに有用であることが確認できた。
1 ウインドウフィルム
2 フィルムA
3 フィルムB
4 近赤外線吸収層
5 近赤外線反射層

Claims (5)

  1. 曲面ガラスに貼合するウインドウフィルムであって、
    膜厚が5.0μm以上のフィルムAと、
    前記曲面ガラスの凹面側に貼合される、膜厚が5.0μm以上のフィルムBと、
    が積層された構成を有し、
    前記フィルムAの吸湿膨張係数が、前記フィルムBの吸湿膨張係数の1/4以下であることを特徴とするウインドウフィルム。
  2. 前記フィルムAの膜厚(dA)と前記フィルムBの膜厚(dB)との比の値(dA/dB)が、50/50〜10/90の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のウインドウフィルム。
  3. 前記フィルムAと前記フィルムBとの間に、近赤外線吸収層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウインドウフィルム。
  4. 前記フィルムA又は前記フィルムBの少なくともいずれかのフィルム中に、近赤外線吸収剤が含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のウインドウフィルム。
  5. 前記フィルムAと前記フィルムBとの間に、近赤外線反射層を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のウインドウフィルム。
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