JP2016167391A - 燃料電池のシミュレーション方法及びシミュレーション装置 - Google Patents

燃料電池のシミュレーション方法及びシミュレーション装置 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料電池の電池性能を算出する場合において、計算規模を小さくして計算時間を短くすることと、計算精度を維持することを両立させる。
【解決手段】電解質膜6の分断面13で燃料電池単セル1をアノード側とカソード側とに2つに分断した構成のアノード側またはカソード側の半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、半電池性能算出工程を含む、燃料電池のシミュレーション方法により、効率的な燃料電池の電池性能の算出が可能になる。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池のシミュレーション及び解析手法に関するものであり、燃料電池単セルの電池性能を効率的にシミュレーションする技術に関するものである。
家庭用燃料電池コージェネレーションシステムであるエネファーム(登録商標)の市場拡大や、2015年に燃料電池自動車の上市・普及が見込まれているなどの状況から、現在、セルを直列に積層して結合して成る燃料電池システムの心臓部である燃料電池スタックの性能向上に関係各社が力を注いでいる。
そのような状況の中にあって、燃料電池スタックの電池性能の算出をシミュレーションで行うことにより、効率的で高精度に電池性能の算出を行うことが期待されている。燃料電池シミュレーションの目的は、単セルや燃料電池スタックの構成、運転条件に基づき、燃料電池の性能算出を行うことである。
燃料電池に関係するシミュレーションとしては、触媒層の構造のシミュレーションや、その作成プロセスに関係するシミュレーション、さらに燃料電池単セルのシミュレーションなどが知られているが、そのスケールにより種々のアプローチが知られている。
上記の触媒層の構造のシミュレーションでは、実際の触媒層の構造をSEM(走査形電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)で観測した画像から、ボリュームレンダリングで構造を再現したり、触媒層の代表的なパラメータを抽出し、そこから仮想的な触媒構造を作成したりすることで、シミュレーションに必要な解析構造を決定し、物質輸送と電気化学反応を連立することで、触媒層の能力の算出が行われている。
また触媒層の作成プロセスに関係するシミュレーションにおいては、分子動力学、粗視化分子動力学、散逸粒子動力学などの適用により、材料及び作成プロセスと触媒層の構造との紐付けが報告され始めている。
燃料電池単セルの性能算出に関しては、市販ツールのAnsys Fluent(登録商標)のプラットフォーム化と各種構成則モデルの作り込みにより、精度よくシミュレーションできるようになっており、それを多段に積層した燃料電池スタックにおいても、特許文献1にあるような発明手法を利用することで、大規模なシミュレーションが可能となっている。
実際の燃料電池の設計開発にシミュレーションを適用する場合には、燃料電池スタックのシミュレーションは計算規模が大きくなることから、単セルのシミュレーションが良く用いられており、その関係で単セルのシミュレーションを高精度に効率的に解くことが求められている。
このような技術的な背景の中、特許文献1で提案されたものは、燃料電池単セルもしくはスタックを対象に、簡略化圧力損失体に代表される簡易燃料電池モデルを用いて、燃料電池スタック内のガスの流れ解析シミュレーションを実施してから個別のセルのガスの流れ解析シミュレーションを行うことで、シミュレーション時間の短縮と収束性の確保を図っている。
特開2007−305419号公報
しかしながら、特許文献1で提案されたものを、燃料電池単セルのシミュレーションに適用した場合においては、簡略化圧力損失体に代表される簡易燃料電池モデルを用いて、燃料電池スタック内のガスの流れ解析シミュレーションを実施してから電池性能のシミュレーションに適用することから、簡易燃料電池モデルの模擬の度合いにより計算精度と計算時間の間でトレードオフが存在するという問題を有していた。
それゆえ、特許文献1で提案されたものを、単セルのシミュレーションに適用したとしても、単セルの構造をある程度正確に模擬した場合においては、計算の規模自体は小さくはならず、結果としてシミュレーションの効率化には本質的に繋がらないという問題を有していた。
そこで、本発明は、燃料電池単セルのシミュレーションにおいて、計算規模を小さくして計算時間を短くすることと、計算精度を維持することを両立させることを目的としている。
上記従来の課題を解決するために本発明の燃料電池のシミュレーション方法は、電解質膜の部分で燃料電池をアノード側とカソード側とに2つに分断した構成の半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、半電池性能算出工程を含むのである。
半電池のモデルを用いて電池性能を算出することで、半電池のモデルを用いない場合(単セルの場合)に比べて、計算時間の短縮と、計算精度維持とを両立させることができ、効率的な燃料電池の電池性能の算出が可能となる。
本発明によれば、半電池の構成でアノード側とカソード側を個別に電池性能の算出することで、半電池のモデルを用いない場合(単セルの場合)に比べて、ほぼ半分のシミュレーション規模で効率的に電池性能を算出でき、またアノードおよびカソード側の半電池に適したメッシュの作成が独立に可能となり、結果としてシミュレーションの収束性が大幅に改善されることで、効率的な燃料電池の電池性能の算出が可能となる。
本発明の燃料電池のシミュレーション方法における境界の設定方法の概念を説明するための説明図 本発明の燃料電池のシミュレーション方法の実施の形態1の概念を示すフローチャート 本発明の燃料電池のシミュレーション方法の実施の形態2の概念を示すフローチャート
まず、発明を実施するための形態に至った発見的事実について述べる。本発明者は、燃料電池のシミュレーション結果に対し、鋭意検討を重ねた結果、次の二つの事実に着眼するに至った。
一つ目は、燃料電池スタック内のあるセルのセパレータ端面内で50ミリボルト程度の電位差が生じているような場合であっても、そのセルの電解質膜中心の積層面の電位分布
はほぼフラットで一定値になっていることである。
二つ目は、燃料電池スタック内のあるセルのセパレータの端面内で大きな電位差が同様に生じている場合には、アノード側で生じる面内電流を正確に打ち消す方向に、カソード側で電位が分布していること、言い換えれば、あるセルのセパレータ端面におけるアノード側の電位分布とカソード側の電位分布は電解質膜面の電位分布に対して鏡面対称の関係になっていることである。
当然、これらの電位分布に関する境界条件は、セパレータ端面内で電位差が生じないケースも包含しており、広く適用可能な条件となっている。
ここで、アノード側とカソード側で面内電流を打ち消すように各々の電位分布が決定される理由を簡単に考察する。燃料電池はセルを多数積層したものであるから、両端部のセルを除き、端部以外に位置するセルは、セルごとにおおよそ周期的な物理量の分布(例えば温度や電流密度)を持っていることが予測される。
しかしながら、仮にアノード側の面内電流とカソード側の面内電流が打ち消しあわなければ、そのセルで正味の面内電流が形成されることになり、積層方向に面内電流が蓄積されることになり、その周期性が崩れる。よって、端部以外に位置するセルが周期的な物理量の分布を持つためには両端面で面内電流が相殺される必要がある。
また、アノード側とカソード側の面内電流が打ち消しあうとき、アノード側の電位分布とカソード側の電位分布は電解質膜面の電位分布に対して鏡面対称の関係になっていることが予測されるので、燃料電池単セルの構成上、電解質膜の積層面中心の電位分布はほぼフラットで一定値になることも容易に説明できる。
次に、この発見的事実に基づき、燃料電池単セルのシミュレーションを効率的に行う本発明について述べる。ここでは、各シミュレーションステップの手順に沿って本発明の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
第1の発明は、アノード側触媒層およびアノード側ガス拡散層と、カソード側触媒層およびカソード側ガス拡散層と、アノード側触媒層とカソード側触媒層との間に配置された電解質膜と、前記アノード側ガス拡散層と接触する面に燃料流路が形成されたアノード側セパレータと、前記カソード側ガス拡散層と接触する面に酸化剤流路が形成されたカソード側セパレータとを備えた燃料電池の電池性能を算出する燃料電池のシミュレーション方法であって、前記電解質膜の部分で前記燃料電池をアノード側とカソード側とに2つに分断した構成の半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、半電池性能算出工程を含む、燃料電池のシミュレーション方法である。
電解質膜の部分で燃料電池をアノード側とカソード側とに2つに分断した構成の半電池のモデルを用いて電池性能を算出することにより、半電池のモデルを用いない場合(単セルの場合)に比べて、ほぼ半分のシミュレーション規模で効率的に電池性能を算出でき、またアノードおよびカソード側の半電池に適したメッシュの作成が独立に可能となり、結果としてシミュレーションの収束性が大幅に改善されることで、効率的な燃料電池の電池性能の算出が可能となる。
第2の発明は、特に第1の発明における、半電池性能算出工程では、カソード側の半電池のモデルを用いて電池性能を算出するものであり、カソード側の半電池のモデルを用いて、効率的にカソード側の電池性能を算出することができる。
第3の発明は、特に第1の発明における、半電池性能算出工程では、アノード側の半電池のモデルを用いて電池性能を算出するものであり、アノード側の半電池のモデルを用いて、効率的にアノード側の電池性能を算出することができる。
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか一つの発明における、半電池性能算出工程では、半電池における分断面と分断面とは反対側のセパレータの端面のうちの一方の面の電流密度を規定すると共に他方の面の電位を規定して電池性能を算出するものであり、アノード側の半電池とカソード側の半電池を流れる電流量を等しく設定することが可能となり、各半電池で電流の保存が厳密に成立する燃料電池の電池性能を算出することが可能となる。
第5の発明は、特に第1〜第3のいずれか一つの発明における、半電池性能算出工程では、分断面の電位を規定すると共にセパレータの端面の電位を規定して電池性能を算出するものであり、規定面に電位を設定することが可能となり、特に集電板と接するセパレータの端面および電解質膜の積層方向の面内で等電位が仮定できる場合に、非常に高精度に半電池の電池性能を算出することが可能となる。
第6の発明は、特に第1〜第5のいずれか一つの発明における、半電池性能算出工程では、半電池に対して燃料流路または酸化剤流路の流路形状に応じたメッシュを設定したモデルを用いて電池性能を算出するものであり、アノードおよびカソード側の半電池に適したメッシュの作成が独立に可能となり、結果としてシミュレーションの収束性が大幅に改善され、効率的な燃料電池の電池性能の算出が可能となる。
第7の発明は、特に第1〜第6のいずれか一つの発明における、半電池性能算出工程でが、半電池の過電圧を分離して電池性能を算出する、過電圧分離工程を含むものであり、反応抵抗、拡散抵抗、電気抵抗などによる電圧の損失量を定量的に算出することが可能となり、電圧降下要因の推定が可能となる。
第8の発明は、アノード側触媒層およびアノード側ガス拡散層と、カソード側触媒層およびカソード側ガス拡散層と、アノード側触媒層とカソード側触媒層との間に配置された電解質膜と、アノード側ガス拡散層と接触する面に燃料流路が形成されたアノード側セパレータと、カソード側ガス拡散層と接触する面に酸化剤流路が形成されたカソード側セパレータとを備えた燃料電池の電池性能を算出する燃料電池のシミュレーション装置であって、電解質膜の部分で燃料電池をアノード側とカソード側とに2つに分断した構成の半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、半電池性能算出手段を備えた、燃料電池のシミュレーション装置である。
電解質膜の部分で燃料電池をアノード側とカソード側とに2つに分断した構成の半電池のモデルを用いて電池性能を算出することにより、半電池のモデルを用いない場合(単セルの場合)に比べて、ほぼ半分のシミュレーション規模で効率的に電池性能を算出でき、またアノードおよびカソード側の半電池に適したメッシュの作成が独立に可能となり、結果としてシミュレーションの収束性が大幅に改善されることで、効率的な燃料電池の電池性能の算出が可能となる。
第9の発明は、特に第8の発明において、半電池性能算出手段が、カソード側の半電池のモデルを用いて電池性能を算出するものであり、カソード側の半電池のモデルを用いて効率的にカソード側の電池性能を算出することができる。
第10の発明は、特に第8の発明における、半電池性能算出手段が、アノード側の半電池のモデルを用いて電池性能を算出するものであり、アノード側の半電池のモデルを用い
て、効率的にアノード側の電池性能を算出することができる。
第11の発明は、特に第8〜第10のいずれか一つの発明における、半電池性能算出手段が、半電池における分断面と分断面とは反対側のセパレータの端面のうちの一方の面の電流密度を規定すると共に他方の面の電位を規定して電池性能を算出するものであり、アノード側の半電池とカソード側の半電池を流れる電流量を等しく設定することが可能となり、各半電池で電流の保存が厳密に成立する燃料電池の電池性能を算出することが可能となる。
第12の発明は、特に第8〜第10のいずれか一つの発明における、半電池性能算出手段が、分断面の電位を規定すると共にセパレータの端面の電位を規定して電池性能を算出するものであり、規定面に電位を設定することが可能となり、特に集電板と接するセパレータの端面および電解質膜の積層方向の面内で等電位が仮定できる場合に、非常に高精度に半電池の電池性能を算出することが可能となる。
第13の発明は、特に第8〜第13のいずれか一つの発明における、半電池性能算出手段が、半電池に対して燃料流路または酸化剤流路の流路形状に応じたメッシュを設定したモデルを用いて電池性能を算出するものであり、アノードおよびカソード側の半電池に適したメッシュの作成が独立に可能となり、結果としてシミュレーションの収束性が大幅に改善され、効率的な燃料電池の電池性能の算出が可能となる。
第14の発明は、特に、第8〜第13のいずれか一つの発明における、半電池性能算出手段が、半電池の過電圧を分離して電池性能を算出する、過電圧分離工程を含むものであり、反応抵抗、拡散抵抗、電気抵抗などによる電圧の損失量を定量的に算出することが可能となり、電圧降下要因の推定が可能となる。
(実施の形態1)
図1は本発明の燃料電池のシミュレーション方法における境界の設定方法の概念を説明するための説明図である。
図1に示すように、燃料電池単セル1は、アノード側の集電板2、アノード側のセパレータ4、アノード側の電極層5、電解質膜6、カソード側の集電板3、カソード側の電極層7、カソード側のセパレータ8を備える。
また、燃料電池単セル1は、アノード側半電池とカソード側半電池を分割する分断面13、アノード側の半電池構成におけるアノード側の集電板2の基準面9、アノード側の分断面13における基準面10、カソード側の半電池構成におけるカソード側の分断面13における基準面11、カソード側の集電板3の基準面12を有する。
本実施の形態においては、まず、燃料電池単セル1の電解質膜6内に位置するアノード側の分断面13における基準面10と、カソード側の分断面13における基準面11とに対して、一定の電位を設定する。
電解質膜6内に位置する、アノード側の分断面13における基準面10と、カソード側の分断面13における基準面11とに、一定の値を設定できる理由は、燃料電池スタック内のあるセルのセパレータ端面内で50ミリボルト程度の電位差が生じているような場合であっても、そのセルの電解質膜6の中心の積層面の電位分布は、ほぼフラットになるという発見的事実に基づくものである。
次に、本実施の形態においては、燃料電池単セル1の分断面13により分割されたアノ
ード側半電池に対し、アノード側の集電板2の基準面9に一定の電位を設定し、アノード側の半電池の構成で電池性能のシミュレーション(算出)を行う。
ここで言及する電池性能のシミュレーションとは、電位、電流、圧力、温度、濃度を含む電池の内部物理量をシミュレーションすることを示すものとする。
本シミュレーションステップで最も注意しなければならないことは、アノード側の分断面13における基準面10が電解質膜6内に位置することから、電位の境界条件は、電子の電位ではなく、水素イオンの電位で設定することである。
次に、燃料電池単セル1を分断面13により分割されたカソード側半電池に対し、カソード側の集電板3の基準面12に一定の電位を設定し、カソード側の半電池の構成で電池性能のシミュレーション(算出)を行う。
ここで言及する電池性能のシミュレーションとは、電位、電流、圧力、温度、濃度を含む電池の内部物理量をシミュレーションすることを示すものとする。
本シミュレーションステップで最も注意しなければならないことは、カソード側の分断面13における基準面11が電解質膜6内に位置することから、電位の境界条件は、電子の電位ではなく、水素イオンの電位で設定することである。
図2は本発明の燃料電池のシミュレーション方法の実施の形態1の概念を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートにおいて、S001でスタートし、S002で分断面13により燃料電池単セル1を分断し、S003でアノード側半電池の構成に適したシミュレーションのメッシュを作成し、S004でアノード側の分断面13における基準面10に一定の電位を設定し、S005でアノード側の集電板2の基準面9に一定の電位を設定し、S006でアノード側半電池の電位、電流、圧力、濃度を含む物理量を算出し、S007でアノード側半電池の過電圧を分離し、S008でカソード側半電池の構成に適したシミュレーションのメッシュを作成し、S009でカソード側の分断面13における基準面11に一定の電位を設定し、S010でカソード側の集電板3の基準面12に一定の電位を設定し、S011でカソード側半電池の電位、電流、圧力、濃度を含む物理量を算出し、S012でアノード側半電池の過電圧を分離し、S013で両半電池の結果を組み合わせて、単セル性能を算出し、S014でエンドとなる。
なお、図2のS005において、アノード側の分断面13における基準面10には水素イオンの電位を設定するため、そこで電位の基準が設けられることから、アノード側の集電板2の基準面9には電流密度を設定することも可能である。
同様に、図2のS010において、カソード側の分断面13における基準面11には水素イオンの電位を設定するため、そこで電位の基準が設けられることから、カソード側の集電板3の基準面12には電流密度を設定することも可能である。
本実施の形態では、アノード側の半電池の電池性能をシミュレーションした後に、カソード側の電池性能をシミュレーションしているが、アノード側の結果がカソード側のシミュレーションに必要ということはなく、カソード側から先にシミュレーションを行うことも可能である。
また、シミュレーションの目的によっては、一方の半電池の電池性能だけをシミュレー
ションすることも可能である。また、マシン環境によっては、アノード側とカソード側のシミュレーションを並行して行うことも可能である。
以上のように、本実施の形態では、燃料電池単セル1のシミュレーションにおいて、半電池の構成でシミュレーションすることにより、各半電池のシミュレーションにおいては単セルのほぼ半分の規模で電池性能のシミュレーションが可能となり、またアノードおよびカソード側半電池に適したメッシュの作成が独立に可能となり、結果として非常に効率的な燃料電池単セル1の電池性能のシミュレーションが可能となる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における燃料電池のシミュレーション方法における境界の設定方法の概念の説明には、実施の形態1と同様に図1を用いる。
本実施の形態においては、まず燃料電池単セル1の電解質膜6内に位置するアノード側の分断面13における基準面10と、カソード側の分断面13における基準面11とに対して、一定の電流密度を設定する。
電解質膜6内に位置する、アノード側の分断面13における基準面10と、カソード側の分断面13における基準面11とに、一定の値を設定できる理由は、燃料電池スタック内のあるセルのセパレータ端面内で50ミリボルト程度の電位差が生じているような場合であっても、そのセルの電解質膜6の中心の積層面の電位分布は、ほぼフラットになるという発見的事実に基づくものであり、そこから予測されるアノード側の電位分布とカソード側の電位分布は電解質膜6の中心の積層面に対して鏡面対称の関係になっていることに基づくものである。
次に、本実施の形態においては、燃料電池単セル1の分断面13により分割されたアノード側半電池に対し、アノード側の集電板2の基準面9に一定の電位を設定し、アノード側の半電池の構成で電池性能のシミュレーションを行う。
ここで言及する電池性能のシミュレーションとは、電位、電流、圧力、温度、濃度を含む電池の内部物理量をシミュレーションすることを示すものとする。
本シミュレーションステップで最も注意しなければならないことは、アノード側の分断面13における基準面10が電解質膜6内に位置することから、電位の境界条件は電子の電位ではなく、水素イオンの電位で設定することである。
次に、燃料電池単セル1を分断面13により分割されたカソード側半電池に対し、カソード側の集電板3の基準面12に一定の電位を設定し、カソード側の半電池の構成で電池性能のシミュレーションを行う。
ここで言及する電池性能のシミュレーションとは、電位、電流、圧力、温度、濃度を含む電池の内部物理量をシミュレーションすることを示すものとする。
本シミュレーションステップで最も注意しなければならないことは、カソード側の分断面13における基準面11が電解質膜6内に位置することから、電位の境界条件は電子の電位ではなく、水素イオンの電位で設定することである。
図3は、本発明の燃料電池のシミュレーション方法の実施の形態2の概念を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートにおいて、S101でスタートし、S102で分断面13により燃料電池単セル1を分断し、S103でアノード側半電池の構成に適したシミュレーションのメッシュを作成し、S104でアノード側の分断面13における基準面10に一定の電流密度を設定し、S105でアノード側の集電板2の基準面9に一定の電位を設定し、S106でアノード側半電池の電位、電流、圧力、濃度を含む物理量を算出し、S107でアノード側半電池の過電圧を分離し、S108でカソード側半電池の構成に適したシミュレーションのメッシュを作成し、S109でカソード側の分断面13における基準面11に一定の電流密度を設定し、S110でカソード側の集電板3の基準面12に一定の電位を設定し、S111でカソード側半電池の電位、電流、圧力、濃度を含む物理量を算出し、S112でアノード側半電池の過電圧を分離し、S113で両半電池の結果を組み合わせて、単セル性能を算出し、S114でエンドとなる。
なお、本実施の形態のフローチャートにおいては、アノード側の分断面13における基準面10およびカソード側の分断面13における基準面11に、電流密度つまりは水素イオンの電位勾配を設定するため、アノード側の集電板2の基準面9およびカソード側の集電板3の基準面12には共に電位を設定する必要がある。
以上、本実施の形態においては、アノード側の半電池の電池性能をシミュレーションした後にカソード側の電池性能をシミュレーションしているが、アノード側の結果がカソード側のシミュレーションに必要ということはなく、カソード側から先にシミュレーションを行うことも可能である。
また、シミュレーションの目的によっては、一方の半電池の電池性能だけをシミュレーションすることも可能である。また、マシン環境によっては、アノード側とカソード側のシミュレーションを並行して行うことも可能である。
以上のように、本実施の形態では、燃料電池単セル1のシミュレーションにおいて、半電池の構成でシミュレーションすることにより、各半電池のシミュレーションにおいては単セルのほぼ半分の規模で電池性能のシミュレーションが可能となり、またアノードおよびカソード側半電池に適したメッシュの作成が独立に可能となり、結果として非常に効率的な燃料電池単セル1の電池性能のシミュレーションが可能となる。
本発明の燃料電池のシミュレーション方法は、効率的な燃料電池の電池性能の算出が可能となるので、燃料電池スタック開発の、コスト削減、開発期間の削減の用途に好適である。
1 燃料電池単セル
2 アノード側の集電板
3 カソード側の集電板
4 アノード側のセパレータ
5 アノード側の電極層
6 電解質膜
7 カソード側の電極層
8 カソード側のセパレータ
9 アノード側の集電板2の基準面
10 アノード側の分断面13における基準面
11 カソード側の分断面13における基準面
12 カソード側の集電板3の基準面
13 分断面

Claims (14)

  1. アノード側触媒層およびアノード側ガス拡散層と、カソード側触媒層およびカソード側ガス拡散層と、アノード側触媒層とカソード側触媒層との間に配置された電解質膜と、前記アノード側ガス拡散層と接触する面に燃料流路が形成されたアノード側セパレータと、前記カソード側ガス拡散層と接触する面に酸化剤流路が形成されたカソード側セパレータとを備えた燃料電池の電池性能を算出する燃料電池のシミュレーション方法であって、
    前記電解質膜の部分で前記燃料電池をアノード側とカソード側とに2つに分断した構成の半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、半電池性能算出工程を含む、燃料電池のシミュレーション方法。
  2. 前記半電池性能算出工程では、カソード側の前記半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、請求項1に記載の燃料電池のシミュレーション方法。
  3. 前記半電池性能算出工程では、アノード側の前記半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、請求項1に記載の燃料電池のシミュレーション方法。
  4. 前記半電池性能算出工程では、前記半電池における分断面と前記分断面とは反対側のセパレータの端面のうちの一方の面の電流密度を規定すると共に他方の面の電位を規定して電池性能を算出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池のシミュレーション方法。
  5. 前記半電池性能算出工程では、前記分断面の電位を規定すると共に前記セパレータの端面の電位を規定して電池性能を算出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池のシミュレーション方法。
  6. 前記半電池性能算出工程では、前記半電池に対して前記燃料流路または前記酸化剤流路の流路形状に応じたメッシュを設定したモデルを用いて電池性能を算出する、請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池のシミュレーション方法。
  7. 前記半電池性能算出工程は、前記半電池の過電圧を分離して電池性能を算出する、過電圧分離工程を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料電池のシミュレーション方法。
  8. アノード側触媒層およびアノード側ガス拡散層と、カソード側触媒層およびカソード側ガス拡散層と、アノード側触媒層とカソード側触媒層との間に配置された電解質膜と、前記アノード側ガス拡散層と接触する面に燃料流路が形成されたアノード側セパレータと、前記カソード側ガス拡散層と接触する面に酸化剤流路が形成されたカソード側セパレータとを備えた燃料電池の電池性能を算出する燃料電池のシミュレーション装置であって、
    前記電解質膜の部分で前記燃料電池をアノード側とカソード側とに2つに分断した構成の半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、半電池性能算出手段を備えた、燃料電池のシミュレーション装置。
  9. 前記半電池性能算出手段は、カソード側の前記半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、請求項8に記載の燃料電池のシミュレーション装置。
  10. 前記半電池性能算出手段は、アノード側の前記半電池のモデルを用いて電池性能を算出する、請求項8に記載の燃料電池のシミュレーション装置。
  11. 前記半電池性能算出手段は、前記半電池における分断面と前記分断面とは反対側のセパ
    レータの端面のうちの一方の面の電流密度を規定すると共に他方の面の電位を規定して電池性能を算出する、請求項8から10のいずれか1項に記載の燃料電池のシミュレーション装置。
  12. 前記半電池性能算出手段は、前記分断面の電位を規定すると共に前記セパレータの端面の電位を固定して電池性能を算出する、請求項8から10のいずれか1項に記載の燃料電池のシミュレーション装置。
  13. 前記半電池性能算出手段は、前記半電池に対して前記燃料流路または前記酸化剤流路の流路形状に応じたメッシュを設定したモデルを用いて電池性能を算出する、請求項8から12のいずれか1項に記載の燃料電池のシミュレーション装置。
  14. 前記半電池性能算出手段は、前記半電池の過電圧を分離して電池性能を算出する、請求項8から13のいずれか1項に記載の燃料電池のシミュレーション装置。
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