JP2016160248A - 糖誘導体、またはその塩、セレクチン結合剤、糖結合体、粒子状キャリア、および輸送方法 - Google Patents

糖誘導体、またはその塩、セレクチン結合剤、糖結合体、粒子状キャリア、および輸送方法 Download PDF

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Mitsuru Hashida
充 橋田
富義 山下
Tomiyoshi Yamashita
富義 山下
ゆり子 樋口
Yuriko Higuchi
ゆり子 樋口
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Shigeru Kawakami
茂 川上
ヨハン・ウンガ
Unga Johan
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Makoto Kiso
真 木曽
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Abstract

【課題】セレクチン結合能を有する新規な化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物。
Figure 2016160248

(Rはカルボキシアルキル基;RはH、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノアルキルオキシ基又はアジドアルキルオキシ基;RはH、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又はアセトアミド基;H及びヒドロキシ基は各々ハロゲン原子に置換されてもよい;ヒドロキシ基はそのHが各々Na又はKに置換されてもよい)
【選択図】図1

Description

本発明は、糖誘導体、またはその塩、セレクチン結合剤、糖結合体、粒子状キャリア、および輸送方法に関する。
生体に投与された薬剤の効果は、前記生体内の薬剤の作用部位に、適切な量の薬剤を適切な時間に輸送することで最大化することができる。このため、前記生体における薬剤の作用部位への輸送、生体内の濃度、輸送時間等を制御可能なドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発が試みられている(非特許文献1および2)。
前記薬剤の作用部位への輸送は、例えば、前記作用部位に発現している分子に対して選択的に結合する化合物と前記薬剤との併用が試みられている。例えば、がんの血管内皮細胞等の炎症組織へ輸送する場合、前記炎症組織に発現しているE−セレクチンに選択的に結合するシアリルルイスX(sLex)の使用が試みられている(非特許文献3)。
しかしながら、sLexは、天然物からの単離が困難であった。また、sLexをβ−D−ガラクトフラノシル(1→4)β−D−グルコピラノースを出発物質とし、化学的に合成する場合、42工程の合成および精製工程を経る必要があり、多量のsLexの取得が困難という問題があった(非特許文献4)。
Shigeru Kawakami et.al., "Glycosylation-mediated targeting of carriers", Journal of Controlled Release, 2014, vol.190, pp.542-555 Fumiyoshi Yamashita et.al., "Pharmacokinetic considerations for targeted drug delivery", Advanced Drug Delivery Reviews, 2013, vol.65, issue 1, pp.139-147 Masahiko Hirai et.al., "Accumulation of liposome with Sialyl Lewis X to inflammation and tumor region: Application to in vivo bio-imaging", Biochemical and Biophysical Research Communications, 2007, vol.353, pp.553-558 Akihiko Kameyama et.al., "SYNTHETIC STUDIES ON SIALOGLYCOCOJUGATES 22: TOTAL SYNTHESIS OF TUMOR-ASSOCIATED GANGLIOSDE, SIALYL LEWIS X1", J. Carbohydrate Chemistry, 1991, vol.10, number 4, pp.549-560
そこで、本発明は、セレクチン結合能を有する新たな糖誘導体の提供を目的とする。
本発明の糖誘導体、またはその塩は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
Figure 2016160248
前記一般式(1)において、
は、カルボキシアルキル基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノアルキルオキシ基、またはアジドアルキルオキシ基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、またはアセトアミド基であり、
前記一般式(1)における水素原子は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
前記一般式(1)におけるヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
前記一般式(1)におけるヒドロキシ基は、その水素原子が、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。
本発明のセレクチン結合剤は、前記本発明の糖誘導体、またはその塩を含むことを特徴とする。
本発明の糖結合体は、前記本発明の糖誘導体と、輸送対象物とを含み、
前記糖誘導体、またはその塩が、前記輸送対象物と直接的または間接的に結合していることを特徴とする。
本発明の粒子状キャリアは、前記本発明の糖結合体を含むことを特徴とする。
本発明の輸送方法は、セレクチン発現組織に輸送対象物を輸送する方法であって、
生体に、前記本発明の糖結合体および前記本発明の粒子状キャリアの少なくとも一方を投与する投与工程を含むことを特徴とする。
本発明の糖誘導体は、セレクチンに対する結合能を有するため、例えば、薬剤等を炎症組織に輸送する際に使用できる。また、本発明の糖誘導体は、例えば、前述のsLexの化学的合成方法と比較して、合成および精製工程の工程数が低減されている。このため、本発明の糖誘導体は、例えば、工業的な合成が可能である。したがって、本発明の糖誘導体は、例えば、医療分野等において極めて有用である。
図1は、実施例1Bにおける蛍光強度を示すグラフである。 図2は、実施例1Bにおける蛍光強度を示すグラフである。
本発明の糖誘導体、またはその塩は、特に記載しない限り、本発明の糖誘導体といい、本発明の糖誘導体とは、本発明の糖誘導体の塩と読み替え可能である。また、本発明において、各置換基の説明は、特に記載しない限り、互いにその説明を援用できる。
<糖誘導体、またはその塩>
本発明の糖誘導体、またはその塩は、前述のように、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
Figure 2016160248
前記一般式(1)において、
は、カルボキシアルキル基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノアルキルオキシ基、またはアジドアルキルオキシ基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、またはアセトアミド基であり、
前記一般式(1)における水素原子は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
前記一般式(1)におけるヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
前記一般式(1)におけるヒドロキシ基は、その水素原子が、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。
なお、以下、前記一般式(1)において、ORが結合している環をA環と、RおよびRが結合している環をB環と、OR、RおよびRが結合していない環をC環ともいう。また、前記一般式(1)において、各環の「1〜5」は、各環における炭素原子の番号の表記であり、以下、1〜5位の炭素原子を、それぞれ、C1〜5ともいう。
前記一般式(1)中のRは、カルボキシアルキル基である。前記カルボキシアルキル基は、特に制限されず、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝カルボキシアルキル基があげられる。前記カルボキシアルキル基は、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシヘキシル基等があげられ、好ましくは、カルボキシルメチル基である。なお、「炭素数1〜8のカルボキシアルキル基」等というとき、示されている炭素数は、アルキル基の炭素数を意味し、カルボキシル基の炭素を含まない。
前記一般式の(1)中、Rは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノアルキルオキシ基、またはアジドアルキルオキシ基であり、好ましくは、ヒドロキシ基である。前記ハロゲン原子は、特に制限されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等があげられる。前記アミノアルキルオキシ基は、特に制限されず、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アミノアルキルオキシ基があげられる。前記アミノアルキルオキシ基は、例えば、アミノメチルオキシ基、アミノエチルオキシ基、アミノプロピルオキシ基、アミノブチルオキシ基、アミノペンチルオキシ基、アミノヘキシルオキシ基等があげられ、好ましくは、前記アミノメチルオキシ基である。前記アジドアルキルオキシ基は、特に制限されず、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アジドアルキルオキシ基があげられる。前記アジドアルキルオキシ基は、例えば、アジドメチルオキシ基、アジドエチルオキシ基、アジドプロピルオキシ基、アジドブチルオキシ基、アジドペンチルオキシ基、アジドヘキシルオキシ基等があげられ、好ましくは、前記アジドメチルオキシ基である。
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、またはアセトアミド基であり、好ましくは、ヒドロキシ基である。
前記一般式(1)における水素原子、例えば、炭素原子に結合している水素原子は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよい。前記置換される水素原子の位置は、特に制限されない。前記置換される水素原子の数は、特に制限されず、例えば、1個、2個、3個、4個、または全てである。複数の水素原子が置換される場合、置換後の置換基は、それぞれが、同一でもよいし、異なってもよい。
前記一般式(1)におけるヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよい。前記置換されるヒドロキシ基の位置は、特に制限されない。前記置換されるヒドロキシ基の位置は、例えば、前記A環のC2のヒドロキシ基、前記B環のC5のヒドロキシメチル基のヒドロキシ基、前記C環のC2のヒドロキシ基等があげられる。前記置換されるヒドロキシ基の個数は、特に制限されず、例えば、1個、2個、3個、4個、または全てである。複数のヒドロキシ基が置換される場合、置換後の置換基は、それぞれが、同一でもよいし、異なってもよい。
前記一般式(1)におけるヒドロキシ基は、その水素原子は、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。前記置換されるヒドロキシ基の位置は、特に制限されない。前記置換されるヒドロキシ基の位置は、例えば、前記カルボキシアルキル基のヒドロキシ基、前記A環のC2のヒドロキシ基、前記B環のC5のヒドロキシメチル基のヒドロキシ基、前記C環のC2のヒドロキシ基等があげられ、好ましくは、前記カルボキシアルキル基のヒドロキシ基である。前記置換されるヒドロキシ基の個数は、特に制限されず、例えば、1個、2個、3個、4個、または全てである。複数のヒドロキシ基が置換される場合、置換後の置換基は、それぞれが、同一でもよいし、異なってもよい。
前記一般式(1)において、各環に結合している各置換基の立体配座は、特に制限されない。前記各置換基は、例えば、前記一般式(1)の各環に対して、上側に配置されていてもよいし、下側に配置されてもよい。前記A環のC2に結合しているヒドロキシ基は、例えば、前記A環に対して、下記化学式(5)で表されるように配置されてもよいし、下記化学式(6)で表されるように配置されてもよいが、セレクチンへの結合能が向上することから、好ましくは、前者である。前記各置換基は、例えば、前記一般式(1)で表されるように配置されることが好ましい。
Figure 2016160248
前記一般式(1)において、Rは、カルボキシメチル基であり、Rは、ヒドロキシ基であることが好ましい。前記一般式(1)において、Rは、カルボキシメチル基であり、Rは、ヒドロキシ基であることが好ましい。前記一般式(1)において、RおよびRは、ヒドロキシ基であることが好ましい。前記一般式(1)において、Rは、カルボキシメチル基であり、RおよびRは、ヒドロキシ基であることがさらに好ましい。
本発明において、前記一般式(1)で表される糖誘導体は、理論上可能なすべての異性体(光学異性体、幾何異性体および互変異性体)であってもよい。以下、本明細書においては、一般式(1)で表される糖誘導体、そのすべての異性体を総称して、単に一般式(1)で表される糖誘導体ともいう。
本発明の糖誘導体の塩は、特に制限されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩、N,N-ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩等があげられる。前述した塩の中で、好ましい塩としては、例えば、薬理学的に許容される塩があげられる。また、本発明の糖誘導体は、前記一般式(1)で表される糖誘導体の溶媒和物または水和物であってもよい。
本発明の糖誘導体は、例えば、セレクチンに対して結合能を有する。このため、本発明の糖誘導体は、例えば、前記糖誘導体を後述する輸送対象物と結合させ、生体に投与することにより、前記輸送対象物をセレクチン発現組織に輸送できる。前記セレクチンは、特に制限されず、例えば、P−セレクチン、E−セレクチン等があげられ、好ましくは、E−セレクチンである。本発明の糖誘導体は、例えば、1種類のセレクチンに対して結合能を有していてもよいし、2種類以上のセレクチンに対して結合能を有していてもよい。
前記セレクチン発現組織は、特に制限されず、例えば、炎症組織、がん組織、免疫疾患部位等があげられる。前記免疫疾患部位は、例えば、アレルギー疾患部位、自己免疫疾患部位等があげられる。前記炎症組織は、例えば、炎症の生じた肝臓、気管支、皮膚、滑膜等の組織、リウマチ結節等があげられる。前記がんは、例えば、肝臓がん、乳がん、前立腺がん、胃がん、大腸がん、肺がん、膵臓がん等があげられる。前記免疫疾患部位は、例えば、前記炎症組織の例示等があげられる。
前記一般式(1)で表される本発明の糖誘導体の製造方法は、特に制限されず、例えば、下記参考文献および後述する実施例1Aのスキーム1を参照し、実施できる。本発明の糖誘導体の製造方法は、例えば、前述のsLexの化学的合成方法と比較して、合成および精製工程の工程数が低減されている。このため、本発明の糖誘導体は、例えば、工業的な合成が可能である。なお、前記スキーム1における各中間体の量、溶媒の種類および量、反応温度、反応時間等の合成ならびに精製条件は、一例であり、本発明の糖誘導体の製造方法は、前記一般式(1)で表される糖誘導体を製造できる範囲で、改変可能である。
参考文献:Hasegawa, A., Ito, K., Ishida, H., & Kiso, M., “Synthetic Studies on Sialoglycoconjugates 70: Synthesis of Sialyl and Sulfo LewisX Analogs Containing a Ceramide or 2-(Tetradecyl) hexadecyl Residue.”, Journal of carbohydrate chemistry, 1995, vol. 14, number 3, pp. 353-368
<セレクチン結合剤>
本発明のセレクチン結合剤は、前述のように、前記本発明の糖誘導体、またはその塩を含むことを特徴とする。本発明のセレクチン結合剤は、前記本発明の糖誘導体、またはその塩を含むことを特徴とし、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明のセレクチン結合剤は、「糖誘導体、またはその塩」を、「セレクチン結合剤」に読み替えて、前記本発明の糖誘導体、またはその塩等の説明を援用できる(以下、同様)。
前述のように、本発明の糖誘導体は、例えば、前記セレクチンに対して結合能を有する。このため、本発明のセレクチン結合剤は、例えば、セレクチン発現組織指向性を有することが好ましい。前記セレクチン発現組織指向性は、特に制限されず、例えば、炎症組織指向性、がん組織指向性、免疫疾患部位指向性等があげられる。前記免疫部位指向性は、例えば、アレルギー疾患部位指向性、自己免疫疾患部位指向性等があげられる。前記セレクチン結合剤は、例えば、1種類の組織への指向性を有してもよいし、2種類以上の組織への指向性を有してもよい。
<糖結合体>
本発明の糖結合体は、前述のように、前記本発明の糖誘導体、またはその塩と、輸送対象物とを含み、前記糖誘導体、またはその塩が、前記輸送対象物と直接的または間接的に結合していることを特徴とする。本発明の糖結合体は、前記本発明の糖誘導体、またはその塩(以下、「糖誘導体」ともいう。)を含み、前記糖誘導体が、前記輸送対象物と直接的または間接的に結合していることが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の糖結合体は、例えば、前記本発明の糖誘導体、またはその塩等の説明を援用できる。
前記糖結合体において、前記糖誘導体は、例えば、前記本発明の糖誘導体でもよいし、前記本発明セレクチン結合剤でもよい。前記糖結合体は、例えば、1種類の糖誘導体を含んでもよいし、2種類以上の糖誘導体を含んでもよい。
前記輸送対象物は、特に制限されず、例えば、標的指向化素材、薬剤等があげられる。前記糖結合体において、前記輸送対象物は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。前記標的は、例えば、炎症組織、がん組織、免疫疾患部位等があげられる。前記免疫疾患部位は、例えば、アレルギー疾患部位、自己免疫疾患部位等があげられる。前記標的は、例えば、1種類の組織でもよいし、2種類以上の組織でもよい。
前記標的指向化素材の種類は、特に制限されず、例えば、ポリマー素材、タンパク質素材、ペプチド素材、脂質素材等があげられる。
前記ポリマー素材は、例えば、ポリ−L−リジン、PLGA(乳酸・グリコール酸共重合体)、ポリエチレングリコール、デキストラン、プルラン、キトサン等があげられる。
前記タンパク質素材は、例えば、ヒト血清アルブミン、αポリリジン、プロタミン等があげられる。
前記脂質素材は、例えば、リン脂質、糖脂質、セラミド、脂肪酸、ステロール等があげられ、好ましくは、前記リン脂質または前記ステロールである。前記リン脂質は、例えば、フォスファチジルコリン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジン酸、フォスファチジルグリセロール等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質等があげられ、好ましくは、フォスファチジルエタノールアミンである。前記フォスファチジルコリンは、例えば、ジミリストイルフォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、ジステアロイルフォスファチジルコリン等があげられる。前記フォスファチジルセリンは、例えば、ジミリストイルフォスファチジルセリン、ジパルミトイルフォスファチジルセリン、ジステアロイルフォスファチジルセリン等があげられる。前記フォスファチジルエタノールアミンは、例えば、ジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン等があげられる。前記フォスファチジン酸は、例えば、ジミリストイルフォスファチジン酸、ジパルミトイルフォスファチジン酸、ジステアロイルフォスファチジン酸、ジセチルリン酸等があげられる。前記フォスファチジルグリセロールは、ジミリストイルフォスファチジルグリセロール、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール、ジステアロイルフォスファチジルグリセロール等があげられる。前記糖脂質は、例えば、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等のグリセロ糖脂質;ガラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等のスフィンゴ糖脂質;ステアリルグルコシド、エステル化ステアリルグリコシド等があげられる。前記脂肪酸は、例えば、デカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、ドコサン酸等の炭素数10〜22の飽和または不飽和の脂肪酸等があげられる。前記ステロールは、例えば、コレステロール、コレステリルヘミスクシネート、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール、フィトステロール、フィトステロール、スチグマステロール、チモステロール、エルゴステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等があげられ、好ましくは、コレステロールである。
前記薬剤は、特に制限されず、例えば、治療薬、診断薬等があげられる。前記治療薬は、特に制限されず、例えば、炎症性疾患治療薬、がん治療薬、免疫疾患治療薬等があげられる。前記免疫疾患治療薬は、例えば、アレルギー疾患治療薬、自己免疫疾患治療薬等があげられる。前記薬剤が治療薬の場合、前記糖結合物は、例えば、治療用医薬品ということもできる。また、前記薬剤が診断薬の場合、前記糖結合物は、例えば、診断用医薬品ということもできる。
前記薬剤の種類は、特に制限されず、例えば、核酸、タンパク質、低分子化合物、金属等があげられる。具体例として、前記炎症性疾患治療薬は、例えば、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド系抗炎症薬等の公知の炎症性疾患治療薬があげられる。前記がん治療薬は、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍性抗生物質、抗腫瘍ホルモン、抗腫瘍サイトカイン、白金化合物、分子標的薬等の公知のがん治療薬があげられる。前記免疫疾患治療薬は、免疫抑制剤、免疫賦活剤、ステロイド系抗炎症薬、抗リウマチ薬等の公知の免疫疾患治療薬があげられる。
前記糖誘導体が前記輸送対象物と直接的に結合している場合、前記糖誘導体は、例えば、前記一般式(1)で表される糖誘導体おいて、ヒドロキシ基、R、およびRのいずれか1つ以上の置換基における水素原子、R、またはRにおいて、前記輸送対象物と結合している。前記糖結合体における糖誘導体は、例えば、前記糖結合体の前記セレクチンへの結合能が向上することから、下記一般式(1’)で表されることが好ましい。
Figure 2016160248
前記一般式(1’)において、例えば、Rは、カルボキシアルキル基であり
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、またはアセトアミド基であり、
前記一般式(1’)における水素原子は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
前記一般式(1’)におけるヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
前記一般式(1’)におけるヒドロキシ基は、その水素原子が、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。
前記糖誘導体が前記輸送対象物と間接的に結合している場合、前記糖誘導体は、リンカーを介して間接的に前記輸送対象物と結合している。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、下記一般式(2)で表されるリンカー、下記一般式(7)で表されるリンカー等があげられる。
Figure 2016160248
前記一般式(2)おいて、例えば、
jは、1〜10の範囲の整数であり、
kは、1〜10の範囲の整数であり、
lは、1〜10の範囲の整数であり、
mは、1〜50の範囲の整数である。
前記一般式(2)おいて、jは、例えば、1〜10、1〜5、2〜4の範囲の整数であり、好ましくは、3である。kは、例えば、1〜10、1〜5、2〜4の範囲の整数であり、好ましくは、3である。lは、例えば、1〜10、1〜5、2〜4の範囲の整数であり、好ましくは、3である。mは、例えば、1〜50、1〜25、3〜12の範囲の整数である。
Figure 2016160248
前記一般式(7)において、例えば、
pは、1〜5の範囲の整数であり、
qは、1〜5の範囲の整数である。
前記一般式(7)において、pは、例えば、1〜5、1〜4、1〜3の範囲の整数であり、好ましくは、3である。qは、例えば、1〜5、1〜4、1〜3の範囲の整数であり、好ましくは、2である。
前記糖誘導体が前記輸送対象物と直接的に結合している場合、前記結合は、例えば、公知のグリコシル化反応により形成できる。前記糖誘導体がリンカーを介して間接的に前記輸送対象物と結合している場合、前記結合は、例えば、前記リンカーの種類に応じた方法により、適宜形成できる。
前記輸送対象物が前記脂質素材であり、前記糖誘導体が前記リンカーを介して間接的に前記輸送対象物と結合している場合、前記糖結合体は、例えば、下記一般式(3)で表されてもよいし、下記一般式(8)で表されてもよい。
Figure 2016160248
前記一般式(3)おいて、例えば、
は、前記糖誘導体、またはその塩であり、
は、前記輸送対象物であり、
jは、1〜10の範囲の整数であり、
kは、1〜10の範囲の整数であり、
lは、1〜10の範囲の整数であり、
mは、1〜50の範囲の整数である。
Figure 2016160248
前記一般式(8)において、例えば、
は、前記糖誘導体、またはその塩であり、
は、前記輸送対象物であり、
pは、1〜5の範囲の整数であり、
qは、1〜5の範囲の整数である。
前記一般式(3)で表される前記糖結合体は、例えば、下記化学式(4)で表される糖結合体等があげられる。
Figure 2016160248
前記化学式(4)において、例えば、
mは、1〜50の範囲の整数であり、
前記化学式(4)におけるヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
前記化学式(4)におけるヒドロキシ基は、その水素原子が、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。
前記一般式(8)で表される前記糖結合体は、例えば、下記化学式(9)で表される糖結合体等があげられる。
Figure 2016160248
前記化学式(9)において、例えば、ヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
前記化学式(9)におけるヒドロキシ基は、その水素原子が、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。
<粒子状キャリア>
本発明の粒子状キャリアは、前述のように、前記本発明の糖結合体を含むことを特徴とする。本発明の粒子状キャリアは、前記本発明の糖結合体を含むことを特徴とし、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の粒子状キャリアは、例えば、前記本発明の糖誘導体、またはその塩等の説明を援用できる。
前記粒子状キャリアは、特に制限されず、例えば、ミセル、リポソーム、エマルション、ニオソーム等があげられる。前記粒子状キャリアは、1種類の粒子状キャリアであってもよいし、2種類以上の粒子状キャリアであってもよい。
前記粒子状キャリアに含まれる前記糖結合体の数は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。前記粒子状キャリアは、例えば、前記標的指向化素材と前記糖誘導体とが結合した糖結合体を含むことが好ましい。前記粒子状キャリアに含まれる前記糖結合体の割合は、特に制限されず、例えば、前記糖結合体の種類に応じて適宜決定できる。前記粒子状キャリアに含まれる前記糖結合体の割合(モル%)は、例えば、1〜40モル%であり、好ましくは、5〜40モル%であり、より好ましくは、15〜40モル%である。前記糖結合体の割合は、例えば、1種類の糖結合体の割合でもよいし、2種類以上の糖結合体の割合の合計の割合でもよい。
前記粒子状キャリアは、さらに、その他の構成成分を含んでもよい。前記その他の構成成分は、特に制限されず、例えば、前述の前記脂質素材、前記ポリマー素材、前記タンパク質素材、前記ペプチド素材等があげられる。
前記粒子状キャリアの平均粒子径は、例えば、1〜1000nmであり、好ましくは、10〜1000nmであり、より好ましくは、10〜200nmである。前記平均粒子径は、例えば、動的光散乱法(Dynamic light scatteing)により測定できる。
前記粒子状キャリアが、さらに、薬剤を含み、前記粒子状キャリアが、前記薬剤を保持することが好ましい。前記粒子状キャリアは、例えば、その表面に前記薬剤を保持してもよいし、その内部に前記薬剤を保持してもよい。
前記粒子状キャリアは、例えば、公知の方法により調製できる。前記調製方法は、例えば、バンガム法(単純水和法、ソニケーション法、エクストルージョン法)、フレンチプレス法、有機溶媒注入法、逆相蒸発法、カルシウム融合法、凍結融解法、界面活性剤除去法、静置水和法、ヘキサン−span80透析法、有機溶媒小球蒸発法、メカノケミカル法等があげられる。
<輸送方法>
本発明の輸送方法は、前述のように、セレクチン発現組織に輸送対象物を輸送する方法であって、生体に、前記本発明の糖結合体および前記本発明の粒子状キャリアの少なくとも一方を投与する投与工程を含むことを特徴とする。本発明の輸送方法は、前記生体に投与する投与物として、前記本発明の糖結合体および前記本発明の粒子状キャリアの少なくとも一方を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は特に制限されない。本発明の輸送方法は、例えば、前記本発明の糖誘導体、またはその塩等の説明を援用できる。
前記投与物が前記治療薬を含む場合、本発明の輸送方法は、例えば、治療方法ということもできる。また、前記投与物が前記診断薬を含む場合、本発明の輸送方法は、診断方法ということもできる。本発明において、前記治療は、例えば、予防の意味も含む。
前記投与工程において、投与方法、投与量等の条件は、特に制限されず、前記糖結合体および前記粒子状キャリアの種類に応じて適宜決定できる。前記生体は、特に制限されず、例えば、ヒトまたは非ヒト動物があげられ、前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、マントヒヒ、チンパンジー等の非ヒト類動物があげられる。
以下に実施例を示して、本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1A]
本例では、糖誘導体を含む複合体(以下、sLex−mimic)を合成した。
1H NMRスペクトルを、核磁気共鳴スペクトル装置(AVANCE III 500、Bruker社製)によって取得した。化学シフトは、内部標準であるテトラメチルシランに対する相対値δ(ppm)として表される。カラムクロマトグラフィーには、シリカゲル(シリカゲルBW-80S、シリカゲルBW-300、富士シリシア化学株式会社製、およびワコーシル(登録商標)HC-N、和光純薬工業株式会社製)を充填剤として使用し、カラム径1cm、2cm、2.5cm、または3cmの長さ40cmのカラム管に充填し、作製したカラムを使用し、実施した。ゲルろ過クロマトグラフィーには、リサイクル分取液体クロマトグラフィー装置(LC-9225NEXT、日本分析工業社製)、およびカラムとしてゲル浸透クロマトグラフィーカラム(JAIGEL GS310、日本分析工業社製)を使用した。質量分析は、ESI-TOF-MS(飛行時間型質量分析装置)(micrOTOF、Bruker Daltonics社製)によって行った。各化合物の純度は、1H NMRスペクトルによって決定した(>95%)。以下の合成例において、特に断わらない限り、前記の条件が適用される。
糖誘導体を含む複合体は、下記式に示すスキーム1に従い、sLex−mimicを合成した。具体的には、ラクトースのヒドロキシ基を位置選択的に保護した後、フコースを導入した。さらに、脱保護を行い、中間体(8)を合成した。つぎに、前記中間体(8)へ位置選択的にカルボキシメチル基を導入後、脱保護を行った。そして、脂質との縮合を経て、sLex−mimicを合成した。なお、以下の実施例において、式中のCBzは、ベンジルオキシカルボニル基を、CSAは、カンファースルホン酸を、DMPは、1,1-ジメトキシプロパンを、TFAは、トリフルオロアセチル基またはトリフルオロ酢酸を、Meは、メチル基を、Etは、エチル基を、Bzは、ベンゾイル基を、Phは、フェニル基を、MPMは、p-メトキシベンジル基を、Acは、アセチル基を、NISは、N-ヨードスクシンイミドを、TfOHは、トリフルオロメタンスルホン酸を、MSは、モレキュラシーブスを、CPMEは、シクロペンチルメチルエーテルを、DDQは、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノベンゾキノンを、Buは、n-ブチル基を、DMAPは、4−(ジメチルアミノ)ピリジンを、NHSは、N-ヒドロキシスクシンイミド基を、PEGは、ポリエチレングリコール基を、DSPEは、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを、DMFは、N,N-ジメチルホルムアミドを表す。以下、各工程について、具体的に説明する。
Figure 2016160248
(1)N-(ベンジルオキシカルボニル)-3-アミノプロピル 3,4-O-イソプロピリデン-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシド(中間体(3))の合成
N-(ベンジルオキシカルボニル)-3-アミノプロピルβ-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシド(中間体(2))(Organic Letters、6巻、4415〜4417頁、2004年、Tetrahedron、61巻、4313〜4321頁、2005年参照)(92mg)と、1mLの2,2-ジメトキシプロパン、1mLのアセトニトリル、および1mLのアセトンとを含む混合液に、アルゴン雰囲気下、20℃でカンファースルホン酸(2mg)を添加した。20℃で1日攪拌した後、反応液に12μLのトリエチルアミンを添加し、減圧濃縮した。得られた残渣に、2mLのメタノールおよび0.2mLの水を含む混合液を添加し、80℃で1.5時間加熱撹拌した。前記加熱攪拌後の反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。溶出液(酢酸エチル:メタノール=90:10)による溶出で得られた溶液を減圧濃縮し、再度、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。そして、溶出液(酢酸エチル:メタノール=95:5)で溶出した後、減圧濃縮し、中間体(3)を得た(63mg、収率63%)。
(2)N-(トリフルオロアセチル)-3-アミノプロピル 3,4-O-イソプロピリデン-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシド(中間体(4))の合成
中間体(3)(631mg)と、10mLの1,4-ジオキサンおよび5mLの水とを含む混合液に、アルゴン雰囲気下、20℃で5%パラジウム−炭素(234mg)を添加し、水素雰囲気下、20℃で6時間攪拌した。前記攪拌後、反応液を濾過し、得られた母液を減圧濃縮した。得られた残渣に、10mLのメタノールを添加し、さらに、0.6mLのトリフルオロ酢酸メチルおよび1.5mLのトリエチルアミンを添加し、混合液を調製した。前記混合液を、アルゴン雰囲気下、20℃で4時間撹拌した。前記攪拌後の反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。そして、溶出液(酢酸エチル:メタノール=80:20)で溶出した後、減圧濃縮し、中間体(4)を得た(523mg、収率89%)。
(3)N-(トリフルオロアセチル)-3-アミノプロピル 2,6-ジ-O-ベンゾイル-3,4-O-イソプロピリデン-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-2,6-ジ-O-ベンゾイル- β-D-グルコピラノシド(中間体(5))の合成
中間体(4)(523mg)と、8mLのピリジンおよび11mLのトルエンとを含む混合液に、アルゴン雰囲気下、0℃で1mLの塩化ベンゾイルを添加し、さらに、0℃で1.5時間攪拌した。前記攪拌後の反応液にメタノールを添加し、減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルで希釈した後、分液ロートに移し、飽和重曹水、水、および飽和食塩水を使用し、この順で洗浄した。つぎに、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。第1の溶出液(トルエン:酢酸エチル=83:17)で溶出後、連続して、第2の溶出液(トルエン:酢酸エチル=80:20)で溶出し、これらの溶出で得られた目的化合物を含む分画を減圧濃縮し、再度、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。そして、溶出液(トルエン:酢酸エチル=83:17)で溶出した後、減圧濃縮し、中間体(5)を得た(651mg、収率64%)。以下に、中間体(5)のNMRおよび質量分析の結果を示す。
1H-NMR (CDCl3):δ 8.06-8.03 (4H, m, Ar), 8.01-7.99 (2H, m, Ar), 7.59-7.55 (2H, m, Ar), 7.45-7.41 (5H, m, Ar), 7.36 (1H, m, Ar), 7.31-7.24 (4H, m, Ar), 7.08 (1H, m, NH), 5.37 (1H, t, J = 7.8 Hz, H-2Gal), 5.15 (1H, dd, J1,2 = 8.2 Hz, J2,3 = 9.5 Hz, H-2Glc), 4.87 (1H, dd, J5,6 = 2.1 Hz, Jgem = 12.1 Hz, H-6Gal), 4.70 (1H, d, H-1 Gal), 4.64 (1H, brs, OH), 4.54 (1H, d, H-1Glc), 4.47-4.41 (3H, m, H-6Glc, H-6Gal, H-3Gal), 4.31-4.27 (2H, m, H-4Gal, H-5Gal), 4.18 (1H, dd, J5,6 = 3.7 Hz, Jgem = 12.1 Hz, H-6Glc), 4.00 (1H, m, H-3Glc), 3.79 (1H, ddd, J = 3.9 Hz, J = 7.4 Hz, Jgem = 10.0 Hz, CH2CH2O), 3.72-3.66 (2H, m, H-4Glc, H-5Glc), 3.58 (1H, ddd, J = 4.0 Hz, J = 7.1 Hz, CH2CH2O), 3.35 (1H, m, CH2CH2NH), 3.17 (1H, m, CH2CH2NH), 1.76-1.64 (2H, m, CH2CH2CH2), 1.64 (3H, s, Me), 1.36 (3H, s, Me).
ESI-TOF (高分解能): calcd for C48H48F3NNaO16 [M+Na]+: 974.2817 found; 974.2816.
(4)N-(トリフルオロアセチル)-3-アミノプロピル 2,3,4-トリ-O-アセチル-α-L-フコピラノシル-(1→3)-[2,6-ジ-O-ベンゾイル-3,4-O-イソプロピリデン-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)]-2,6-ジ-O-ベンゾイル-β-D-グルコピラノシド (中間体(7))の合成
中間体(5)(632mg)、フェニル 3,4-ジ-O-アセチル-2-O-p-メトキシベンジル-1-チオ-β-L-フコピラノシド(化合物(6))(Chemical Communications、9726〜9728頁、2011年参照)(459mg)、N-ヨードスクシンイミド(269mg)、およびモレキュラシーブス4A(3.32g)と、7mLのシクロペンチルメチルエーテルおよび7mLのジクロロメタンとを含む混合液に、アルゴン雰囲気下、−40℃で12μLのトリフルオロメタンスルホン酸を添加し、さらに、−40℃で1日攪拌した。前記攪拌後の反応液に飽和重曹水を添加し、さらに、酢酸エチルで希釈し、セライトろ過した。前記濾過後、母液を分液ロートに移し、有機層と水層とを分離した。つぎに、前記有機層を、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、水、および飽和食塩水を使用し、この順で洗浄した。つぎに、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。溶出液(トルエン:アセトン=90:10)で溶出した後、減圧濃縮し、得られた粗生成物を、20mLのジクロロメタンおよび2mLの水を含む混合液に溶解した。前記溶解後、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノベンゾキノン(334mg)を20℃で加え、6時間撹拌した。前記攪拌後の反応液を、酢酸エチルで希釈した後、分液ロートに移し、有機層と水層とを分離した。前記有機層を、飽和重曹水、水、および飽和食塩水を使用し、この順で洗浄した。前記洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。第1の溶出液(トルエン:酢酸エチル=80:20)で溶出した後、連続して、第2の溶出液(トルエン:酢酸エチル=75:25)で溶出し、目的化合物を含む分画を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、3.5mLのピリジンに溶解した。前記溶解後、アルゴン雰囲気下、20℃で3.5mLび無水酢酸および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(4mg)を添加し、20℃で2時間撹拌した。前記攪拌後の反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。第1の溶出液(トルエン:酢酸エチル=87:13)で溶出した後、連続して、第2の溶出液(トルエン:酢酸エチル=83:17)で溶出し、これらの溶出で得られた目的化合物を含む分画を減圧濃縮し、再度、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。溶出液(トルエン:アセトン=90:10)で溶出し、得られた溶液を、再度、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。溶出液(トルエン:酢酸エチル=80:20)で溶出した後、減圧濃縮し、中間体(7)を得た(397mg、収率49%)。以下に、中間体(7)のNMRおよび質量分析の結果を示す。
1H-NMR (CDCl3):δ 8.22-8.20 (2H, m, Ar), 8.11-8.09 (2H, m, Ar), 7.98-7.96 (2H, m, Ar), 7.86-7.85 (2H, m, Ar), 7.63-7.58 (4H, m, Ar), 7.56-7.51 (2H, m, Ar), 7.49-7.43 (4H, m, Ar), 7.33-7.30 (2H, m, Ar), 7.08 (1H, brt, J = 5.3 Hz, NH), 5.42-5.37 (3H, m, H-3Fuc, H-4Fuc, H-1Fuc), 5.31 (1H, dd, J1,2 = 8.1 Hz, J2,3 = 9.3 Hz, H-2Glc), 5.28 (1H, dd, J2,3 = 7.6 Hz, J1,2 = 8.4 Hz, H-2Gal), 5.16 (1H, q, J = 6.5 Hz, H-5Fuc), 5.07 (1H, dd, J1,2 = 4.1 Hz, J2,3 = 10.6 Hz, H-2Fuc), 4.97 (1H, dd, J5,6 = 4.3 Hz, Jgem = 12.0 Hz, H-6Gal), 4.82 (1H, dd, J5,6 = 8.7 Hz, Jgem = 12.0 Hz, H-6Gal), 4.67 (1H, dd, J5,6 = 1.5 Hz, Jgem = 12.4 Hz, H-6Glc), 4.57 (1H, d, H-1 Gal), 4.41 (1H, m, H-6Glc) 4.41 (1H, d, H-1Glc), 4.26 (1H, dd, J3,4 = 5.3 Hz, H-3Gal), 4.21 (1H, dd, J3,4 = 9.3 Hz, H-3Glc), 4.19 (1H, dd, J4,5 = 2.0 Hz, H-4Gal), 4.07 (1H, dd, J4,5 = 9.6 Hz, H-4Glc), 3.90 (1H, m, H-5Gal), 3.78 (1H, ddd, J = 3.9 Hz, J = 7.3 Hz, Jgem = 9.7 Hz, CH2CH2O), 3.35 (1H, m, H-5Glc), 3.45 (1H, ddd, J = 3.9 Hz, J = 7.4 Hz, CH2CH2O), 3.35 (1H, m, CH2CH2NH), 3.07 (1H, m, CH2CH2NH), 2.12 (3H, s, Ac), 1.86 (3H, s, Ac), 1.84 (3H, s, Ac), 1.72 (1H, m, CH2CH2CH2), 1.63 (1H, m, CH2CH2CH2), 1.60 (3H, s, C(CH3)2), 1.34 (3H, d, H-6Fuc)1.34 (3H, s, C(CH3)2).
ESI-TOF (高分解能): calcd for C60H64F3NNaO23 [M+Na]+: 1246.3713 found; 1246.3714.
(5)N-(トリフルオロアセチル)-3-アミノプロピル 2,3,4-トリ-O-アセチル-α-L-フコピラノシル-(1→3)-[2,6-ジ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)]-2,6-ジ-O-ベンゾイル- β-D-グルコピラノシド(中間体(8))の合成
中間体(7)(383mg)を含む16mLのジクロロメタン溶液に、アルゴン雰囲気下、0℃で8mLの80%トリフルオロ酢酸水溶液を添加し、0℃で30分攪拌した。前記攪拌後の反応液をトルエンで希釈し、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。第1の溶出液(トルエン:アセトン=83:17)で溶出した後、連続して、第2の溶出液(トルエン:アセトン=75:25)で溶出した後、減圧濃縮し、中間体(8)を得た(363mg、収率98%)。
(6)N-{N-[3-({2-アザ-5,7,11-トリオキサ-6-オキシド-1,6,12-トリオキソ-9-[(1-オキソオクタデシル)オキシ]-6-ホスファノナコシル}ポリエチレングリコール)プロピル]-5-アミノ-1,5-ジオキソペンチル}-3-アミノプロピル α-L-フコピラノシル-(1→3)-[3-O-カルボキシメチル-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)]- β-D-グルコピラノシド ナトリウム塩(化合物(4))の合成
中間体(8)(157mg)およびジ-n-ブチルすずオキシド(36mg)を含む7mLのトルエン溶液を、アルゴン雰囲気下、Dean-Stark装置を用いて、5時間加熱還流した。前記加熱還流後の反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物を3mLのトルエンに溶解した。さらに、89μLのブロモ酢酸エチルおよびテトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド(49mg)を20℃で添加し、アルゴン雰囲気下、80℃で5時間加熱した。前記加熱後の反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。第1の溶出液(トルエン:アセトン=93:7)で溶出した後、連続して、第2の溶出液(トルエン:アセトン=90:10)で溶出し、目的化合物を含む分画を減圧濃縮した。得られた粗生成物を2mLのピリジンに溶解後、アルゴン雰囲気下、20℃で2mLの無水酢酸および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(1mg)を添加し、20℃で6時間撹拌した。前記攪拌後の反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。溶出液(トルエン:アセトン=90:10)で溶出した後、減圧濃縮し、中間体(9)(30mg)および中間体(10)(68mg)を得た。そして、前記中間体(9)および450μLの1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を含む1.2mLのメタノール溶液、ならびに前記中間体(10)、1.1mLの1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を含む3mLのメタノール溶液を20℃で18時間撹拌した。前記攪拌後の反応液を減圧濃縮して粗生成物をゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。水で溶出した後、減圧濃縮し、得られた粗生成物を、2mLのN,N-ジメチルホルムアミドおよび0.5mLの水を含む混合液に溶解し、20℃でDSPE-PEG-NHS(SUNBRIGHT(登録商標)DSPE-020GS、NOF America Corporation社製)(351mg)を添加し、1時間撹拌した。前記攪拌後の反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。第1の溶出液(1%酢酸を含むクロロホルム: メタノール=80:20)および第2の溶出液(クロロホルム:メタノール=80:20)で溶出した後、さらに、第3の溶出液(クロロホルム:メタノール:水=58:39:3)で溶出し、溶出後の前記第3の溶出液を減圧濃縮し、化合物(4)を得た(228mg、収率48%)。前記化合物(4)の質量分析の結果を示す。
ESI-TOF: calcd for C165H316N3O75 [M/2]-: 1785.54 found; 1785.57.
[実施例1B]
本例では、前記sLex−mimic(化合物(4))を含むリポソームの物性を確認し、さらに、前記リポソームが、炎症状態の血管内皮細胞に結合することを確認した。
(1)リポソームの調製
前記実施例1Aで合成したsLex−mimicを使用し、これを含む蛍光標識sLex−mimic修飾リポソームを以下のように調製した。まず、前記化合物(4)、DSPE−PEG−Fluorescein、DSPC、およびコレステロールを、それぞれ、0.888、1.0、2.172、および0.753mg/mLとなるように、混合液(クロロホルム:メタノール=1:1)に、溶解した。各溶液を、1mLずつ混合することで、モル比が、前記化合物(4):DSPE−PEG−Fluorescein:DSPC:コレステロール=5:1:55:39である混合液を調製した。つぎに、エバポレーターにより、前記混合液中の溶媒を減圧除去し、脂質膜層を形成させた。そこに、1mLのリン酸緩衝液(PBS)を添加し、20〜25℃で30分間静置した後、65℃の温浴中で30分間振盪した。その後、バス型ソニケーション(ASU−3M、アズワン社製)を用いて60℃で10分間ソニケーションを行った。さらに、チップ型ソニケーション(US300、Nissei社製)を用い、20〜25℃で3分間ソニケーションを行った。得られた溶液について、エクストルーダー(MiniExtruderSet、Avanti)を用い、65℃で、100nmの膜(Whatman社製)を31回通した。そして、ゲル濾過(NAP5、GEHealthcare社製)を行い、蛍光標識sLex−mimic修飾リポソーム(5mol%sLex−mimic)分散液を調製した。
(2)物性の確認
得られた分散液を使用し、sLex−mimic修飾リポソームの平均粒子径(Z−Ave)、多分散性指数(Poly dispersion Index、PdI)、および表面電荷(Zeta Potential、ZP)は、ZetaSizer Nano−ZS(Malvern社製)を用いて、測定した。
また、コントロール1(0mol% ligand)は、前記化合物(4)に代えて、DSPE−PEGを用い、コントロール2(5mol% sLex)は、前記化合物(4)に代えて、DSPE−PEG−sLexを用いた以外は同様にして、リポソームを作製し、前記リポソームの平均粒子径、多分散性指数、および表面電荷を測定した。なお、DSPE−PEG−sLexは、まず、前記非特許文献2の合成方法を参照し、sLexを合成した後、さらに、前記sLexとDSPE-PEG-NHSとを用い、前記実施例1A(6)と同様にして、合成した。
これらの結果を、表1に示す。前記表1に示すように、前記蛍光標識sLex−mimic修飾リポソーム(5mol% sLex-mimic)の平均粒子径、多分散性指数、および表面電荷は、それぞれ、100.90±0.75nm、0.12および−23.17±2.55mVであった。コントロール1(蛍光標識未修飾リポソーム、0mol% ligand)の平均粒子径、多分散性指数、および表面電荷は、それぞれ、114.17±0.57nm、0.19、および−0.02±0.06mVであった。コントロール2(5mol% sLex)の平均粒子径、多分散性指数、および表面電荷は、それぞれ、121.77±0.64nm、0.11、および−23.23±1.19mVであった。これらの結果から、前記蛍光標識sLex−mimic修飾リポソームが、コントロール1および2と同程度の平均粒子径および多分散性指数を有すること、ならびに前記蛍光標識sLex−mimic修飾リポソームが、コントロール2(5mol% sLex)と同程度の表面電荷を有することがわかった。
Figure 2016160248
(3)血管内皮細胞のsLex−mimic修飾リポソームの取り込みの評価
24ウェルプレートに、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC細胞、Lifeline CellTechnologyから入手)を、1×10cells/0.5mL 培養液/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO条件下で19時間培養した。前記培養液は、HuMediaEG2(KURABOU社製)を使用した。前記培養後、前記ウェルに、ヒトTNFα(Gibco社製)およびヒトIL−1β(Sigma社製)を、それぞれの最終濃度が100ng/mLおよび10ng/mLとなるように添加した。さらに、前記培養条件下で5時間培養することにより、HUVEC細胞を活性化した。
前記ウェルに、最終濃度が0.05μmol/lとなるように、前記蛍光標識sLex−mimic修飾リポソームを添加し、前記培養条件下で1、2、3、または4時間培養した。つぎに、0.025(w/v)%トリプシンを含むPBSを用いて細胞を回収し、フローサイトメーター(FACSCanto(商標)II、ベクトンデッィンソン社製)を用いて、蛍光強度を測定した(実施例1A)。また、コントロール1は、前記蛍光標識未修飾リポソームを用いた以外は同様にして、蛍光強度を測定した。
これらの結果を、図1に示す。図1において、縦軸は、蛍光強度を示し、横軸は、蛍光標識リポソームを添加後、細胞を回収するまでの時間を示す。図1に示すように、コントロール1では、いずれの時間においても蛍光が観察されず、HUVEC細胞にリポソームが取り込まれていなかった。これに対し、実施例1Aでは、経時的に蛍光強度が増強し、経時的にHUVEC細胞にリポソームが取り込まれていることがわかった。これらの結果から、本発明の糖誘導体を含むリポソームによれば、効率よく輸送対象物を、活性化した血管内皮細胞へと輸送できることがわかった。
(4)炎症の有無による血管内皮細胞のリポソームの取り込みの評価
前記蛍光標識未修飾リポソームおよび前記蛍光標識sLex−mimic修飾リポソームを、それぞれ添加後、3時間培養した以外は、前記実施例1B(3)と同様にして、蛍光強度を測定した(サイトカイン処理群)。また、HUVEC細胞に対して活性化処理を行わなかった以外は同様にして、蛍光強度を測定した(未処理群)。
これらの結果を、図2に示す。縦軸は、蛍光強度を示し、横軸は、用いたリポソームの種類を示す。図2に示すように、前記未処理群では、いずれのリポソームも、HUVEC細胞に取り込まれていないかった。他方、前記サイトカイン処理群では、前記蛍光標識未修飾リポソームは、HUVEC細胞に取り込まれていなかったのに対し、前記蛍光標識sLex−mimic修飾リポソームは、HUVEC細胞に取り込まれていた。また、HUVEC細胞等の血管内皮細胞は、サイトカイン処理等により活性化することで、E−セレクチン、P−セレクチン等のセレクチンを発現する。したがって、これらの結果から、本発明の糖誘導体がセレクチンに結合することがわかった。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
以上のように、本発明の糖誘導体は、セレクチンに対する結合能を有するため、例えば、薬剤等を炎症組織に輸送する際に使用できる。また、本発明の糖誘導体は、例えば、前述のsLexの化学的合成方法と比較して、合成および精製工程の工程数が低減されている。このため、本発明の糖誘導体は、例えば、工業的な合成が可能である。したがって、本発明の糖誘導体は、例えば、医療分野等において極めて有用である。

Claims (26)

  1. 下記一般式(1)で表されることを特徴とする、糖誘導体、またはその塩。
    Figure 2016160248
    前記一般式(1)において、
    は、カルボキシアルキル基であり、
    は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノアルキルオキシ基、またはアジドアルキルオキシ基であり、
    は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、またはアセトアミド基であり、
    前記一般式(1)における水素原子は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
    前記一般式(1)におけるヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
    前記一般式(1)におけるヒドロキシ基は、その水素原子が、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。
  2. 前記一般式(1)において、Rは、カルボキシメチル基である、請求項1記載の糖誘導体、またはその塩。
  3. 前記一般式(1)において、Rは、ヒドロキシ基である、請求項1または2記載の糖誘導体、またはその塩。
  4. 前記一般式(1)において、Rは、ヒドロキシ基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の糖誘導体、またはその塩。
  5. 前記一般式(1)において、Rは、カルボキシメチル基であり、
    およびRは、ヒドロキシ基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の糖誘導体、またはその塩。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の糖誘導体、またはその塩を含むことを特徴とする、セレクチン結合剤。
  7. 前記セレクチンが、E−セレクチンおよびP−セレクチンの少なくとも一方である、請求項6記載のセレクチン結合剤。
  8. 前記セレクチン結合剤が、炎症組織指向性、がん組織指向性、および免疫疾患部位指向性からなる群から選択された少なくとも1つの指向性を有する、請求項6または7記載のセレクチン結合剤。
  9. 請求項1から5のいずれか一項に記載の糖誘導体、またはその塩と、輸送対象物とを含み、
    前記糖誘導体、またはその塩が、前記輸送対象物と直接的または間接的に結合していることを特徴とする、糖結合体。
  10. 前記輸送対象物が、標的指向化素材および薬剤の少なくとも一方である、請求項9記載の糖結合体。
  11. 前記標的が、炎症組織、がん組織、および免疫疾患部位からなる群から選択された少なくとも1つの組織である、請求項10記載の糖結合体。
  12. 前記標的指向化素材が、ポリマー素材、タンパク質素材、ペプチド素材、および脂質素材からなる群から選択された少なくとも1つである、請求項10または11記載の糖結合体。
  13. 前記糖結合体において、前記糖誘導体、またはその塩が、下記一般式(1’)で表される、請求項9から12のいずれか一項に記載の糖結合体。
    Figure 2016160248
    前記一般式(1’)において、
    は、カルボキシアルキル基であり、
    は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、またはアセトアミド基であり、
    前記一般式(1’)における水素原子は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
    前記一般式(1’)におけるヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
    前記一般式(1’)におけるヒドロキシ基は、その水素原子が、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。
  14. 前記糖誘導体、またはその塩が、リンカーを介して間接的に前記輸送対象物と結合している、請求項9から13のいずれか一項に記載の糖結合体。
  15. 前記リンカーは、下記一般式(2)で表される、請求項14記載の糖結合体。
    Figure 2016160248
    前記一般式(2)おいて、
    jは、1〜10の範囲の整数であり、
    kは、1〜10の範囲の整数であり、
    lは、1〜10の範囲の整数であり、
    mは、1〜50の範囲の整数である。
  16. 前記糖結合体は、下記一般式(3)で表される、請求項9から15のいずれか一項に記載の糖結合体。
    Figure 2016160248
    前記一般式(3)おいて、
    は、前記糖誘導体、またはその塩であり、
    は、前記輸送対象物であり、
    jは、1〜10の範囲の整数であり、
    kは、1〜10の範囲の整数であり、
    lは、1〜10の範囲の整数であり、
    mは、1〜50の範囲の整数である。
  17. 前記糖結合体は、下記化学式(4)で表される、請求項9から16のいずれか一項に記載の糖結合体。
    Figure 2016160248
    前記化学式(4)において、
    mは、1〜50の範囲の整数であり、
    前記化学式(4)におけるヒドロキシ基は、それぞれ、ハロゲン原子に置換されてもよく、
    前記化学式(4)におけるヒドロキシ基は、その水素原子が、それぞれ、ナトリウムまたはカリウムに置換されてもよい。
  18. 前記糖誘導体またはその塩が、請求項6から8のいずれか一項に記載のセレクチン結合剤である、請求項9から17のいずれか一項に記載の糖結合体。
  19. 請求項9から18のいずれか一項に記載の糖結合体を含むことを特徴とする、粒子状キャリア。
  20. 前記糖結合体が、請求項10から18のいずれか一項に記載の糖結合体である、請求項19記載の粒子状キャリア。
  21. 前記粒子状キャリアが、ミセル、リポソーム、エマルション、およびニオソームからなる群から選択された少なくとも1つである、請求項19または20記載の粒子状キャリア。
  22. 前記粒子状キャリアが、さらに、薬剤を含み、
    前記粒子状キャリアが、前記薬剤を保持する、請求項19から21のいずれか一項に記載の粒子状キャリア。
  23. 前記薬剤が、治療薬および診断薬の少なくとも一方である、請求項22記載の粒子状キャリア。
  24. 前記治療薬が、炎症性疾患治療薬、がん治療薬、および免疫疾患治療薬からなる群から選択された少なくとも1つの治療薬を含む、請求項23記載の粒子状キャリア。
  25. セレクチン発現組織に輸送対象物を輸送する方法であって、
    生体に、請求項9から18のいずれか一項に記載の糖結合体および請求項19から24のいずれか一項に記載の粒子状キャリアの少なくとも一方を投与する投与工程を含むことを特徴とする、輸送方法。
  26. 前記セレクチン発現組織が、炎症組織、がん組織、および免疫疾患部位からなる群から選択された少なくとも1つの組織である、請求項25記載の輸送方法。

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